JP6091884B2 - 地上風計測システム - Google Patents
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Description
移動体に作用する流体の流速を検出する検出器としては、飛行機等の高速移動体で採用されているピトー管が知られている。ピトー管は、内側の管と外側の管を二重構造とし、内側の管には、流体流れに正対する先端部分に開口部が設けられ、外側の管には、側面に穴が形成され、両管を内部において圧力計を挟んで連結し、その圧力差を計測することで、動圧を抽出し、流体の流速を計測することができるようになっている。
具体的には、移動方向先端側に向かうほど断面積が縮小する先端部を、車両の移動方向前端に有する車両において、この先端部の最先端と、この最先端を挟んで水平に対称な位置で検出された圧力から、3孔ピトー管の原理を用いて、車両表面の風速を検出し、この風速に基づいて車両速度を検出している。
このように、移動方向先端側に向かうほど断面積が縮小する先端部を備えた車両形態を利用して、車両周辺の表面圧力に基づいて風速を検出することにより、車両周辺の流れに乱れを与えることなく、車両速度を計測できる。
しかし、例えば、突風や竜巻は、きわめて限定された地域に発生するため、地上に風速計を設置する方法では、車両の進行経路(沿線)に沿って、数多くの風速計を設置して、地上風を逐次計測する必要があり、大きな設備費用、保守費用が生じるおそれがある。
このため、上記特許文献2に示されているように、ピトー管で移動体の速度を計測することが考えられるが、ピトー管は、圧力を導入するための孔が複数個設けられているために、条件によっては、移動方向と交差する孔により気流が乱され、空力音が発生し、騒音の原因となりうることもあると考えられる。
しかし、特許文献1においては、検出した風速に基づいて車両速度を検出することを目的としており、地上座標における地上風の風速、風向を検出することを目的としたものではない。
また、計測点が、移動方向先端側に向かうほど断面積が縮小する先端部を、車両の移動方向前端に有する車両の先端部の3点と限定されている。
まず、本実施例に基づく地上風計測システムの構成について、図1〜図3を用いて説明する。
図1は、地上風を検出するためのブロック図であり、図2は、本実施例の鉄道車両1の斜視図、図3は、地上風を検出するための原理を説明するための風ベクトル表示図である。
この地上風計測システムにおいては、図1に示すように、鉄道車両1の表面における圧力検出点P1、P2(図2参照)には、ピトー管式の第1圧力検出器S1、第2圧力検出器S2が設置されており、これらの検出値がインターフェース5を介して、演算回路8に入力されている。
この演算回路8は、CPU、ROM、RAM等のメモリからなるマイクロコンピュータにより構成されたものであり、後述するように、実験により求めた、圧力検出点P1、P2での各圧力検出値と迎角の関係をマップ化した迎角データベース10、鉄道車両1に配備された速度センサ20、位置検出器30、線路データベース40、報知装置50、そして、計測した地上風の風向と風速を記録する地上風データベース60等を備えている。
鉄道車両1には、全体として、走行風ベクトルaと地上風ベクトルbを加算した風ベクトルcが作用し、その迎角は、図3の場合、αとなる。
第1圧力検出器S1の検出部が、鉄道車両1の最先端部で、その接線方向が進行方向に対し直角となるP1において、その法線、すなわち、鉄道車両1の長さ方向に向けて設置され、第2圧力検出器S2の検出部が、鉄道車両1の先頭車両の側壁にあるP2における法線、すなわち、鉄道車両1の長さ方向に直交する方向(幅方向)に向けて設置されているとする。
このとき、第1圧力検出器S1に作用する圧力は、鉄道車両1が受ける風ベクトルcに、COSαを積算した成分が主となる。これに対し、第2圧力検出器S2に作用する圧力は、鉄道車両1が受ける風ベクトルcに、Sinαを積算した成分が主となる。
なお、第2圧力検出器S2が取り付けられた車両側面の反対側の側面にも第3の圧力検知器を設置すれば、さらに、正確な地上風の風速と迎角の算出が可能となる。
そこで、風洞実験や数値シミュレーション等により、予め、鉄道車両1を所定の走行速度(一般的には、最高営業速度)で走行させたときの走行風を与えた状態で、様々な迎角、風速の地上風を加え、第1圧力検出器S1、第2圧力検出器S2の両検出値と、地上風ベクトルbの迎角βの関係をデータベース化しておき、実際の走行時に、第1圧力検出器S1、第2圧力検出器S2の検出値に基づいて、この迎角データベースにアクセスすることにより、地上風ベクトルの迎角をまず求めるのが効率的である。
まず、S100において圧力検出点P1、P2において、第1圧力検出器S1、第2圧力検出器S2で検出された圧力信号p1、p2を取得する。
S110で、各圧力検出点S1、S2で検出された圧力信号の比(例えば、p2/p1)を演算し、迎角データベース10に格納されている、迎角αとこの圧力信号の比(p2/p1)との関係式から、迎角αが算出される。
ここで、迎角データベース10は、予め鉄道車両1の走行中を模擬した風洞実験や数値解析で調べておいた、図6のような、圧力検出点P1、P2における第1圧力検出器S1、第2圧力検出器S2の検出値に基づいて、それぞれの圧力係数Cpと鉄道車両1の進行方向に対する鉄道車両1が受ける風の流れる風向である迎角αとの関係を格納している。なお、圧力係数Cpは、以下の式で表される。
Cp=p/(ρU2/2)
ただし、ρ:空気の密度、U:鉄道車両周りの空気の流速である。
圧力検出点を2点としたときは、図7に示されるように、圧力検出点P1、P2での圧力係数の比(例えばCp2/Cp1、すなわち、各圧力検出点P1、P2において、第1圧力検出器S1、第2圧力検出器S2で検出された圧力信号p1、p2の比)と迎角αの関係式についても、迎角データベース10に格納しておく。
なお、圧力検出点を3点以上とした場合には、各検出圧力に基づいて、地上風の影響を最も受けている圧力検出器を選定し、この圧力検出器に対応して、圧力係数の比と迎角αの関係を示す迎角データベース10を選択するようにすればよい。
一方、S130において、鉄道車両1に搭載された速度センサ20によって、走行速度を検出する。
速度センサ20としては、例えば、鉄道車両1の台車の輪軸に取り付けた速度発電機から、単位時間当たりの輪軸の回転数に応じた電圧を検出することによって走行速度を検出するものを使用する。
S140において、位置検出器30から鉄道車両1の走行位置を検出する。例えば、走行位置は、車上のD−ATC装置が予め備える位置情報と列車の台車に備えられる速度発電機から出力される速度情報から算出される。
なお、S130、S140において、GPSを使って走行速度、走行位置を検出することも可能である。
これにより、鉄道車両1の進行方向に流れる走行風ベクトルaの大きさは、鉄道車両1の走行速度と同一であることを利用して、S110で算出された鉄道車両1の進行方向に対する車両が受ける風の風向である迎角αと、S120で検出された、鉄道車両1が受ける風ベクトルcの風速、S130で得られた鉄道車両1の走行速度を用いてベクトル演算をすることで、S160で、地上風ベクトルbの風速、鉄道車両1の進行方向に対する迎角βを検出する。
このように、地上座標での地上風の風向・風速を逐次算出することにより、鉄道路線の地上風の風速・風向を地上風データベース60として保存する。なお、車上装置と地上装置が交信するたびに、車上装置から地上装置に、この地上風データベース60のデータを送信すれば、地上でも車上で観測された地上座標での地上風の風向・風速を取得することが可能となる。
実施例2について、図9〜図11に基づいて説明する。図9は、本発明の第2実施例である鉄道車両1の斜視図であり、図10は、図9A部の拡大図、図11は、図9B部の拡大図である。
実施例1における第1圧力検出器S1、第2圧力検出器S2の取り付け位置を変更して、本実施例2では、図9のように、第1圧力検出器S1、第2圧力検出器S2を、車両の屋根に設置された静電アンテナ2、あるいは静電アンテナ2と同様に、鉄道車両1の進行方向に沿うように設けた突起部4に設置したものである。静電アンテナ2や突起部4は、天井部に、鉄道車両の進行方向に対し、異なる角度で交差する面を備えており、図10に示しているように、突起部4先端に第1圧力検出器S1、その側面に第2圧力検出器S2を配置することで、実施例1と同様に地上座標での地上風の風速、風向が検出できる。
Claims (5)
- 鉄道車両の少なくとも2箇所に設置され、該鉄道車両の表面に向かって空気流に対し、互いに異なる向きで、圧力を検出する圧力検出手段と、
走行風と地上風により前記鉄道車両が受ける風の角度である迎角と、前記圧力検出手段のそれぞれにより検出した圧力検出値との関係を、予め解析や実験から求めることにより作成した、迎角データベースと、
前記鉄道車両の走行中、前記圧力検出手段で得られたそれぞれの圧力検出値と、前記迎角データベースに基づいて、該鉄道車両が走行風と地上風により受ける風の前記迎角を算出するとともに、算出した迎角と、前記圧力検出手段のひとつの検出値に基づいて、前記鉄道車両が走行風と地上風により受ける風の風速を算出する、迎角・風速算出手段と、
前記鉄道車両の走行速度を検出する速度検出手段と、
前記鉄道車両の走行位置を検出する位置検出手段と、
前記迎角・風速算出手段により算出された、前記鉄道車両が走行風と地上風により受ける風の迎角及び風速と、
前記速度検出手段と前記位置検出手段により求めた、前記鉄道車両の進行方向と、速度検出手段で検出された走行速度と、位置検出手段で算出された走行位置とに基づいて、地上風の風速と風向を算出する地上風風速風向算出手段
とを備え、
走行位置での地上風の風速、鉄道車両の進行方向に対する風向を車両座標系において算出する地上風計測システム。 - 前記地上風風速風向算出手段は、前記位置検出手段で検出された走行位置と線路情報取得手段によって取得された走行位置での線路の曲率情報から、地上座標での走行位置、進行方向を検出し、地上座標における地上風の風速と風向を算出する、請求項1に記載の地上風計測システム。
- 迎角・風速算出手段は、2箇所に設置された前記圧力検出手段で検出された圧力の比を取ることで、鉄道車両が受ける流体の風速と鉄道車両の進行方向に対する向きを算出することを特徴とする、請求項1または2に記載の地上風計測システム。
- 前記鉄道車両に設置した突起部の互いにずれた位置の少なくとも2点以上の圧力検出手段を備えた、請求項1〜3のいずれか一項に記載された地上風計測システム。
- 前記鉄道車両に設置した静電アンテナの互いにずれた位置の少なくとも2点以上の圧力検出手段を備えた、請求項1〜3のいずれか一項に記載の地上風計測システム。
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