JP6091730B1 - 粒子線治療装置 - Google Patents

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Abstract

荷電粒子ビームを走査する走査電磁石と、走査電磁石により荷電粒子ビームを走査する照射対象での目標照射位置座標に対応する設定磁場の値を算出し、設定磁場の値と走査電磁石の磁気モーメントが逆方向に転換する折返し磁場からの所定の磁場変化量の値に基づいて、走査電磁石の設定電流値を算出する照射管理装置とを備えることで、事前の準備の時間を短縮化できるとともに、高精度なビーム照射を実現できる。

Description

この発明は、医療用や研究用に用いられる粒子線治療装置に関し、特にスポツトスキャニングやラスタースキャニングといった走査型の粒子線治療装置に関するものである。
従来の走査式照射を行う粒子線照射装置においては、荷電粒子ビームを走査するため、走査手段である走査電磁石の設定電流を時間的に変化させている。この走査電磁石の設定電流値は、走査電磁石の仕様、走査電磁石電源の仕様、及び照射ビームの仕様(照射エネルギ一、入射ビーム位置など)から理論式により求めることができる。しかし、この理論式により算出された走査電磁石の設定電流値は、走査電磁石の仕様、走査電源の仕様、及び照射ビーム仕様がまったく変動しないことを前提条件とした理論上の値であり、現実にはさまざまな要因で変動するため、照射位置がずれて誤照射を生じる可能性がある。
例えば、走査電磁石は一般に両極性電磁石であることから、電磁石のヒステリシスにより電磁石への供給電流がゼ口にもかかわらず磁場の残留により、ビーム照射位置が想定した位置よりずれる可能性がある。また、その他何らかの機器の経年変化により、同一の条件で照射したにもかかわらず、ビーム照射位置がずれる可能性もある。
そこで、特許文献1では、走査電磁石の設定電流値とビーム位置モニタで検出したビーム位置データとを記憶しておき、この記憶された設定電流値とビーム位置データとに基づき、変換テーブルを用いて走査電磁石の設定電流値を演算する方法が開示されている。また、特許文献2では、キャリブレーション時に実測する荷電粒子ビームの通過位置座標に基づき、多項式モデルを用いてスキャニング電磁石への指令値を計算する方法が開示されている。
特開2005−296162号公報(段落0039、図2) 国際特許公開WO2010/143267号公報(段落0043、図6)
しかしながら、特許文献1および特許文献2の方法では、治療前の患者QA(Quality Assurance)において荷電粒子ビームの調整前の照射位置を記憶しておく必要があり、患者QAに時間がかかるという問題があった。また、従来の1つの関数を用いる方法では、より複雑な対象領域に照射する場合には誤差が大きくなるという問題があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、事前の準備の時間を短縮化できるとともに、高精度なビーム照射を実現できる粒子線治療装置を提供することを目的としている。
この発明の粒子線治療装置は、荷電粒子ビームを走査する走査電磁石と、前記走査電磁石により走査する目標照射位置座標に対応する設定磁場の値を算出し、前記設定磁場の値と前記走査電磁石の磁気モーメントが逆方向に転換する折返し磁場からの所定の磁場変化量の値に基づいて、前記走査電磁石の設定電流値を算出する照射管理装置とを備えたことを特徴とするものである。
この発明によれば、折返し磁場からの所定の磁場変化量の値に基づいて、走査電磁石の設定電流値を算出することで、高精度なビーム照射を実現できる。
この発明の実施の形態1における粒子線治療装置の主要な構成を示すブロック図である この発明の実施の形態1における粒子線治療装置の全体の構成を示す図である。 この発明の実施の形態1における粒子線治療装置での走査電磁石の設定電流による制御方法について説明する図である。 この発明の実施の形態1における粒子線治療装置における走査電磁石の全体的な動作の流れを示すフローチャート図である。 この発明の実施の形態1における粒子線治療装置における走査電磁石の設定電流値の算出の流れを示すフローチャート図である。 この発明の実施の形態2における粒子線治療装置における走査電磁石の設定電流値の算出の流れを示すフローチャート図である。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による粒子線治療装置100の主要な構成のブロック図であり、図2は粒子線治療装置全体の概略構成の鳥瞰図である。実施の形態1による粒子線治療装置100は、図1および図2に示すように、ビーム発生装置52と、ビーム輸送系59と、2つの粒子線照射装置41a、41bなどを備えている。前段加速器53と、加速器54と、ビーム輸送系59と、ビーム加速輸送制御装置50と、粒子線照射装置41と、治療計画装置61とを備える。前段加速器53は、イオン源で発生させた荷電粒子を加速して荷電粒子ビーム1を発生させる。加速器54は、前段加速器53に接続され、発生した荷電粒子ビーム1を所定のエネルギーまで加速する。ビーム輸送系59は、加速器54で設定されたエネルギーまで、加速された後に出射される荷電粒子ビーム1を輸送する。ビーム加速輸送制御装置50は、前段加速器53、加速器54、ビーム輸送系59のそれぞれを制御する。粒子線照射装置41は、ビーム輸送系59の下流に設置され、荷電粒子ビーム1を照射対象15に照射する。治療計画装置61は、X線CT等で撮影した画像情報から患者の照射対象15を決定し、照射対象15に対する治療計画データである目標照射位置座標、目標線量、目標ビームサイズ、目標加速器設定、レンジシフタ挿入量等を生成する。目標加速器設定には、加速器54のビームエネルギー及びビーム電流の設定値を含んでいる。
粒子線照射装置41は、ビーム輸送系59から入射された入射荷電粒子ビーム1aを輸送するビーム輸送ダクト2と、入射荷電粒子ビーム1aに垂直な方向であるX方向及びY方向に入射荷電粒子ビーム1aを走査する走査電磁石3x、3yと、位置モニタ7と、位置モニタユニット8と、線量モニタ11と、線量モニタユニット12と、照射管理装置32と、走査電磁石電源4と、ビーム拡大装置16と、ビーム拡大制御装置17と、ベローズ18と、真空ダクト19と、リップルフィルタ20とレンジシフタ21と、レンジシフタユニット23とを備える。なお、図1に示したように入射荷電粒子ビーム1aの進行方向はZ方向である。
走査電磁石3xは、入射荷電粒子ビーム1aをX方向に走査するX方向走査電磁石であり、走査電磁石3yは、入射荷電粒子ビーム1aをY方向に走査するY方向走査電磁石である。位置モニタ7は、走査電磁石3x、3yで偏向された出射荷電粒子ビーム1bが通過する通過位置(重心位置)及びビームサイズを検出する。ここで、ビームサイズは出射荷電粒子ビーム1bのZ方向に垂直なXY面を通過する面積である。位置モニタユニット8は、位置モニタ7で検出した通過位置及び、ビームサイズを受け取り、その通過位置及びビームサイズをデジタルデータに変換し、測定位置座標及び測定ビームサイズを生成する。
線量モニタ11は、出射荷電粒子ビーム1bの線量を検出する。線量モニタユニット12は、線量モニタ11で検出した線量を受け取り、その線量をデジタルデータに変換し、測定線量を生成する。
ビーム拡大装置16は、出射荷電粒子ビーム1bのビームサイズを拡大する。真空ダクト19は出射荷電粒子ビーム1bを通過する真空領域を確保する。ベローズ18はビーム輸送ダクト2と真空ダクト19を伸縮自在に接続し、真空領域を照射対象15へ延長する。リップルフィルタ20は、リッジフィルタとも呼ばれ、凸形の形状をしている。リップルフィルタ20は、加速器54から送られてくるほぼ単一のエネルギーを有する単色ビームである荷電粒子ビーム1にエネルギー口スをさせ、エネルギーに幅を持たせる。
照射対象15における深さ方向(Z方向)の位置座標の制御は、加速器54の加速エネルギーを変更して入射荷電粒子ビーム1aのエネルギーを変更すること及びレンジシフタ21により出射荷電粒子ビーム1bのエネルギーを変更することにより行う。レンジシフタ21は、荷電粒子ビーム1の飛程を小刻みに調整する。大幅な荷電粒子ビーム1の飛程変更は加速器54の加速エネルギーの変更で行い、小幅な荷電粒子ビーム1の飛程変更はレンジシフタ21の設定変更で行う。
照射管理装置32は、照射制御装置5と照射制御計算機22を備える。照射制御計算機22は、治療計画装置61のサーバから治療計画データを読み出し、照射線量を制御するために分割された照射単位で、ある照射スポットの照射順番に並べ変えた設定データを生成する。すなわち設定データはシーケンス化された治療計画データである。設定データに基づいて各機器への指令で、ある設定データに出力する。
設定データの要素は目標照射位置座標、目標線量、目標ビームサイズ、標加速器設定、レンジシフタ挿入量であり、設定データの各要素はそれぞれ治療計画データの要素である目標照射位置座標、目標線量、目標ビームサイズ、目標加速器設定、レンジシフタ挿入量がシーケンス化されたデータである。設定データは、加速器設定指令、レンジシフタ指令、指令電流、指令電流、ビームサイズ指令、目標線量である。
照射制御計算機22は、患者がいない状態で行う事前照射における測定位置座標、測定線量、測定ビームサイズ等の照射記録を受信し、照射記録の評価を行う。照射制御計算機22は、測定位置座標に基づいて、指令電流を補正した指令電流を生成し、走査電磁石電源4に指令電流または指令電流を送信する。また、照射制御計算機22は、患者に実際に照射した本照射における測定位置座標、測定線量、測定ビームサイズ等の照射記録を受信し、本照射における照射記録を治療計画装置61のサーバに記憶する。
照射制御装置5は、トリガ信号、力ウント開始信号、ビーム供給指令、ビーム停止指令を出力し、照射対象15における照射スポット及び照射線量を制御する。照射制御装置5は、トリガ信号により各照射スポットに対する各機器の設定を変更し、カウント開始信号により照射スポットの照射線量の測定を開始し、測定線量が目標線量に達すると次の照射スポットに対する制御を行い、照射対象を複数に分割された照射区分(後述するスライス)のそれぞれに対する照射が終了すると、ビーム加速輸送制御装置50に対してビーム停止指令を出力し、荷電粒子ビームを停止させる。
走査電磁石電源4は、照射制御装置5から出力された走査電磁石3への制御入力である指令電流に基づいて走査電磁石3x、3yの設定電流を変化させる。ビーム拡大制御装置17はビーム拡大装置16に位置モニタ7におけるビームサイズを設定するビームサイズ指令を出力する。レンジシフタユニット23は、レンジシフタ21に出射荷電粒子ビーム1bのエネルギーを変更するレンジシフタ指令を出力する。
図3は、この発明の実施の形態1による粒子線治療装置100での走査電磁石3の設定電流による制御方法について説明する図である。図3(a)は、粒子線治療装置100における設定磁場と設定電流の関係を表すヒステリシス曲線を示し、図3(b)は、設定電流に対応する照射対象15に照射されたスポット位置60を示す。
図3に示すように、走査電磁石3の設定磁場と設定電流の関係は、折返し電流(図3の60−5、60−11に対応)から一定電流まで電流変化量に対する磁場変化量が変化しているが、一定の電流変化量を超えると、電流変化量に対して磁場の変化が比例の関係になることがわかる。
この関係より、照射対象15におけるスポット位置60の目標照射位置座標に対応する磁場を設定磁場として求めることができれば、設定電流を求めることができる。磁場BL、つまりBL積は磁場の強さBと操作電磁石の磁極の有効長lとの積である。電流値Iは、照射予定位置である目標照射位置座標Ps、出射荷電粒子ビームの運動エネルギーTおよび質量エネルギーm、走査電磁石の設置位置から照射位置Psまでの垂直距離Lにより求まる。荷電粒子ビームに働くローレンツ力を考慮して、荷電粒子ビームの位置座標から式(1)のようにBL積の値を求めることができる。
Figure 0006091730
ここで、cは光速、qは6価の電荷量である。出射荷電粒子ビームの運動エネルギーTおよび走査電磁石の設置位置から照射位置Psまでの垂直距離Lが一定であるとすると、BL積は目標照射位置座標(偏向量)Psに比例することから、簡単に式(2)と表すことができる。
Figure 0006091730
次に、上記式(2)で求めた目標照射位置座標に対応する設定磁場BLから、設定電流Iを求める。本計算方法では、設定磁場の折り返し点からの変化量を用いて、走査電磁石に流す電流値を計算する。走査電磁石の鉄心の磁気モーメントがほぼ完全に逆方向に転換する磁場変化量を境に、磁気モーメントが完全に転換していない状態と磁気モーメントが転換した状態とで、磁場BLと電流値Iの関係が変化するため、異なる計算式を用いる。
例えば、折返し磁場BLr(60−5に対応)から、磁場を上げるときには、設定磁場BLの増加が、磁気モーメントの転換に相当する所定の磁場変化量ΔBLmより小さい場合、設定電流値Iは、図3のAの曲線に対応する式(3)により計算する。
Figure 0006091730
設定磁場BLの増加が、所定の磁場変化量ΔBLm以上となった場合、設定電流値Iは、図3のBの直線に対応する式(4)により計算する。
Figure 0006091730
磁場を上げた後に磁場を負の方向に折返すときの折返し点の設定磁場をBLr(60−11に対応)からの磁場変化量の絶対値が、所定の磁場変化量ΔBLm未満の場合、すなわち|ΔBL|=|BL−BLr|<ΔBLmの場合、設定電流値Iは、図3のCの曲線に対応する式(5)により計算する。
Figure 0006091730
設定磁場BLの折返し磁場BLr(60−11に対応)からの変化量の絶対値が、所定の磁場変化量ΔBLm以上となった場合、すなわち|ΔBL|=|BL−BLr|≧ΔBLmの場合、設定電流値Iは、図3のDの直線に対応する式(6)により計算する。
Figure 0006091730
ここで、a、d、eは係数、bは定数であり、それぞれ磁場測定結果からフィッティングにより求める。
このように、比例関係の変わる磁場の変化量に基づき、対応するBL−Iの変換式を用いて設定電流値を求めることで、高精度なビーム照射を実現できる。
次に、この発明の実施の形態1による粒子線治療装置100の動作について説明する。図4および図5は、粒子線治療装置100における走査電磁石3の設定電流による制御のフロー図である。図4は、走査電磁石3の全体的な動作の流れを示し、図5は、走査電磁石3の設定電流値の算出の流れを示す。
まず、図4を用いて、全体的な動作の流れを説明する。最初に、粒子線治療装置100は、照射管理装置32の照射制御装置5により、走査電磁石の消磁を行なった後(ステップS401)、治療計画装置61の治療計画データに基づき、荷電粒子エネルギーを設定し(ステップS402)、目標位置座標の設定を行う(ステップS403)。
続いて、照射管理装置32の照射制御計算機22により、上記式(2)で目標照射位置座標に対応する設定磁場BLを算出し(ステップS404)、算出された設定磁場BLに基づき、対応するBL−Iの変換式(3)から(6)を用いることで、設定電流値Iを算出する(ステップS405)。このステップS404とステップS405は、この発明の特徴であり、ステップS405については、後段で詳細な流れを説明する。
次いで、照射管理装置32の照射制御装置5により、算出された設定電流値Iを走査電磁石の電流値として設定し(ステップS406)、粒子線の照射を行う(ステップS407)。スポットにおける照射が目標線量値に達するまで照射を続け(ステップS408:No)、スポットにおける照射が目標線量値に達すると(ステップS408:Yes)、次のスポットの照射を行い(ステップS409:No)、これを繰り返す(ステップS403からステップS409:No)。
照射スポットは、Z方向に分割した層であり、荷電粒子ビーム1の運動エネルギーに応じた層で、あるスライスと、各スライスにおけるXY方向に分割される。照射が一つのスライス内の最終スポットとなった場合(ステップS409:Yes)、次のスライスでのスポットの照射を行い(ステップS410:No)、これを繰り返す(ステップS403からステップS410:No)。そして最後に、最終のスライスの最終スポットを照射して(ステップS410:Yes)、粒子線の照射を終える。
次に、図5を用いて、走査電磁石3の設定電流値の算出(図4のステップS405)の流れを詳細に説明する。最初に、消磁後の1点目のスポット照射の場合(ステップS501:Yes)、折返し磁場はゼロとする(スポットS502、BL(i=0)=O)。この場合、折返し磁場の影響がないため、設定電流値Iは、式(7)により計算する(ステップS503)。
2点目以降のスポット照射においては(ステップS501:No)、まず、スポット照射が折返し磁場の直後か否かを判断する(ステップS504)。つまり、BL(i)>BL(i−1)かつBL(i−1)≦BL(i−2)、またはBL(i)<BL(i−1)かつBL(i−1)≧BL(i−2)であるかを判断する。スポット照射が折返し磁場の直後の場合は(ステップS504:Yes)、折返し磁場BLrを直前のスポットの磁場BLとし、折返し電流Irを直前のスポットの電流Iとする(ステップS505、折返し磁場=BL(i=0))。
続いて、スポット照射が磁場の上げ方向か否かを判断する(ステップS506)。つまり、BL(i)>折返し磁場BLrであるかを判断する。スポット照射が磁場の上げ方向で(ステップS506:Yes)、磁場が折返し磁場から所定磁場変化量ΔBLh以上離れていない場合、つまりBL(i)<BLr+ΔBLhの場合(ステップS507:No)、設定電流Iは、式(3)により計算する(ステップS508)。スポット照射が磁場の上げ方向で(ステップS506:Yes)、磁場が折返し磁場から所定磁場変化量ΔBLh以上離れている場合、つまりBL(i)≧BLr+ΔBLhの場合(ステップS507:Yes)、設定電流Iは、式(4)により計算する(ステップS509)。
スポット照射が磁場の下げ方向で(ステップS506:No)、磁場が折返し磁場から所定磁場変化量ΔBLh以上離れていない場合、つまりBL(i)<BLr+ΔBLhの場合(ステップS510:No)、設定電流Iは、式(5)により計算する(ステップS508)。スポット照射が磁場の下げ方向で(ステップS506:No)、磁場が折返し磁場から所定磁場変化量ΔBLh以上離れている場合、つまりBL(i)≧BLr+ΔBLhの場合(ステップS510:Yes)、設定電流Iは、式(6)により計算する(ステップS512)。
このように、比例関係の変わる磁場の変化量に基づき、対応するBL−Iの変換式を用いて設定電流値を求めることで、高精度なビーム照射を実現できる。
以上のように、この発明の実施の形態1における粒子線治療装置100は、照射管理装置により、目標照射位置座標に対応する設定磁場の値を算出し、前記磁場の値と走査電磁石の鉄心の磁気モーメントが逆方向に転換する折り返し点からの所定の磁場変化量の値に基づいて、設定電流値を算出するようにしたので、事前の準備の時間を短縮化できるとともに、高精度なビーム照射を実現できる。
実施の形態2.
実施の形態1では、折返し点において折返し磁場をそのまま用いたが、実施の形態2では、折返しの履歴を用いる場合について説明する。実施の形態2による粒子線治療装置の構成については、実施の形態1の粒子線治療装置100と同様であり、その説明を省略する。
この発明の実施の形態2による粒子線治療装置100の動作について説明する。基本的には、図4および図5に示すフローと同様であるが、図5のステップS505の代わりに、図6のフローに置き換えられる。
図5のステップS504でYesの場合、つまりスポット照射が折返し磁場の直後の場合で、履歴消去の所定の条件に合致する場合には(ステップS601:Yes)、該当する履歴を消去して設定磁場計算の基点となる折返し磁場を折返しの履歴、すなわち過去の折返しにおける設定磁場、設定電流値についての情報に再設定する(ステップS602)。
ある一つの折返しとその次の折返しの間の磁場変化量ΔBLの絶対値が、所定の磁場変化量ΔBLm未満の状態で折返した場合、磁気モーメントが完全に逆方向に転換していない状態での折返しとなる。このような場合に、磁場から電流値への変換をより精密に行うためには、現時点での磁気モーメントの転換状態を知る必要があるため、折返しの履歴、すなわち過去の折返しにおける設定磁場、設定電流値についての情報が必要となる。そのため、折返しにおける設定磁場BLr(n)、設定電流値Ir(n)を履歴として記録する。なお、折返しの方向を記録してもよいが、各折返しで磁場の増減の方向が反対となるため、現在の設定磁場の増減方向と直前の折返しが何番目の履歴に相当するかが判明すれば、各折返しにおける折返しの方向は必ずしも記録する必要はない。
履歴消去の条件としては、以下の場合がある。折返し設定磁場間の磁場変化量の絶対値が、所定の磁場変化量ΔBLm以上となったとき、磁気モーメントが完全に逆方向に転換する。このとき、過去の磁場BLの折返しの履歴が磁気モーメントの状態に与える影響はなくなるため、これまでの履歴情報を消去することができる。
また、ある折り返しの設定磁場よりも、当該折り返しにおける変化方向と逆方向に磁場BLが変化して、磁場BLと当該折返しの設定磁場との差の絶対値が、所定の磁場変化量ΔBLmより大きくなったとき、磁気モーメントが完全に順方向に転換する。この場合も、これまでの履歴情報を消去することができる。
また、現在の磁場BL(i)が正方向に増加中で、過去の磁場BLの極大値より大きくなれば、現在の磁場BL(i)より小さい過去の磁場BLの極大値は、過去の磁場BLの極大値による磁気モーメントの状態に与える影響はそれより大きい極大値または現時点の磁場により消去されるから、履歴から削除することができる。この場合、消去された極大値の前の極小値を、新しい折返し磁場とする。また、磁場BLが負の方向に変化している場合も同様に、過去の磁場BLの極小値の影響はそれより小さい極小値または現時点の磁場により消去される。この場合、消去された極小値の前の極大値を、新しい折返し磁場とする。
以上のように、この発明の実施の形態2における粒子線治療装置100は、照射管理装置により、スポット照射が折返し磁場の直後の場合で、履歴消去の所定の条件に合致する場合には、現時点の履歴を消去して折返し磁場を過去の折返し磁場および電流値に再設定するようにしたので、磁場から電流値への変換をより精密に行うことができる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
3、3x、3y 走査電磁石、32 照射管理装置、100 粒子線治療装置。

Claims (4)

  1. 照射対象に荷電粒子ビームを走査する走査電磁石と、
    前記走査電磁石により前記荷電粒子ビームを走査する前記照射対象での目標照射位置座標に対応する設定磁場の値を算出し、前記設定磁場の値と前記走査電磁石の磁気モーメントが逆方向に転換する折返し磁場からの所定の磁場変化量の値に基づいて、前記走査電磁石の設定電流値を算出する照射管理装置と
    を備えたことを特徴とする粒子線治療装置。
  2. 前記照射管理装置は、荷電粒子ビームの運動エネルギーT、質量エネルギーm0c2、走査電磁石の設置位置から照射位置Psまでの垂直距離L、光速c、および電荷qとすると、以下の式(1)により、前記目標照射位置座標に対応する前記設定磁場の値を算出することを特徴とする請求項1に記載の粒子線治療装置。
    Figure 0006091730
  3. 前記照射管理装置は、前記折返し磁場から磁場を上げるときには、前記設定磁場BLの増加が前記所定の磁場変化量ΔBL未満の場合には式(3)により、前記設定磁場BLの増加が、所定の磁場変化量ΔBL以上の場合には式(4)により、前記設定磁場を上げた後に前記設定磁場を負の方向に折返すときの前記折返し磁場の設定磁場からの前記設定磁場BLの減少が所定の磁場変化量ΔBL未満の場合には式(5)により、設定磁場BLの減少が、所定の磁場変化量ΔBL以上の場合には式(6)により、設定電流値を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粒子線治療装置。
    Figure 0006091730
    Figure 0006091730
    Figure 0006091730
    Figure 0006091730
    a、d、e:係数
    b:定数
    Ir:折返し磁場での電流値
  4. 前記照射管理装置は、前記走査電磁石による走査が前記折返し磁場の直後の場合、現時点の履歴を消去して前記折返し磁場を過去の折返し磁場および電流値に再設定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の粒子線治療装置。
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