コアを構成する材料として、電磁鋼板を用いた場合、電磁鋼板は、その特性上、薄板であるため、コアとしての所望の特性を得るためには、上述したように、電磁鋼板を積層する必要がある。このため、磁束の流れが板面方向になるように磁気回路を設計する必要があり、設計の自由度が低くなってしまう。
また、圧粉成形により得られた圧粉コアは、磁気等方性が高いため、3次元磁気回路を構成することができる。このため、圧粉コアは、設計の自由度が高く、高効率、小型化、及び低コストの全てに調和のとれた優れたものが得られることが期待されている。
一方、圧粉コアで、所望の磁気特性を得ようとする場合、圧粉成形での成形密度を向上させて、高密度化させることが重要となる。しかしながら、高密度化された圧粉成形を適用すると、軟磁性材料粉末自体に過大な歪が蓄積され、得られた圧粉コアの磁気特性が劣化してしまう。このため、得られた圧粉コアに対して、歪を除去するための熱処理を施すのが一般的である。この熱処理は、軟磁性材料粉末の歪を除去するとともに、構造物としての圧粉コアの残留歪も開放される効果を発揮するために、圧粉コアに寸法変化が発生してしまう。例えば、リアクトルで要求される、インダクタンス−電流の特性を調整するために、ギャップ材等を挟み込んだコアの場合、この寸法変化が、リアクトルの性能のばらつきを生じる重大な要因となるという問題が発生する。
また、特許文献1及び特許文献2に記載されているような、磁性粉末と樹脂成分とを混合させた混合物を、所定の形状に成形した後、樹脂成分を硬化させることによって得られたコアは、形状の自由度が高いだけではなく、樹脂成分を硬化させるので、得られたコアの寸法ばらつきの発生を充分に抑制できる。
一方、このようなコアを得るためには、所定の形状に成形する際、前記混合物の流動性が高いことが求められる。例えば、樹脂成分として、液状のものを用いたとしても、磁性粉末を含有させた混合物の流動性を確保するために、磁性粉末の含有量を高めることができない。このような混合物を用いて得られたコアは、密度が低くなり、透磁率が低くなってしまう。このため、所望のインダクタンスを得るためには、製品寸法を大きくする必要があった。また、流動性が低い混合物を用いてコアを作製すると、所望の形状のコアが得られないといった問題が発生した。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、磁性材料の含有量が多くても、形状欠陥の発生が充分に抑制されたコアを備える巻線素子を提供することを目的とする。また、本発明は、磁性材料の含有量が多くても、所望の形状のコアを有する巻線素子を製造できる巻線素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る巻線素子は、コイルと、前記コイルを内包するコアとを備え、前記コアが、磁性粉末を絶縁皮膜で被覆した絶縁処理済磁性粉末と、複数の前記絶縁処理済磁性粉末を用いて所定の形状になるように成形した小型成形体と、樹脂とを含有することを特徴とする。
このような構成によれば、磁性材料の含有量が多くても、形状欠陥の発生が充分に抑制されたコアを備える巻線素子を提供することができる。このことは、以下のことによると考えられる。まず、小型成形体は、上記のように、複数の絶縁処理済磁性粉末を用いて、前記絶縁処理済磁性粉末より大きい所定の形状になるように成形した成形体であるので、磁性材料として用いることができる。そして、磁性材料として、絶縁処理済磁性粉末だけではなく、この小型成形体を用いるので、絶縁処理済磁性粉末の含有量が多いことによる形状欠陥の発生が充分に抑制できると考えられる。よって、磁性材料の含有量が比較的多くても、形状欠陥の発生が充分に抑制されたコアを備える巻線素子を得ることができると考えられる。
また、前記小型成形体は、複数の前記絶縁処理済磁性粉末を用いて、前記絶縁処理済磁性粉末より大きい所定の形状になるように成形したものであるので、密度の高いものである。そして、磁性材料として、絶縁処理済磁性粉末だけではなく、この小型成形体を用いることによって、樹脂を含有していても、高密度のコアが得られる。このことから、コアを小型化することができる。
さらに、上記コアは、樹脂を含むので、磁性粉末を圧粉成形して得られる圧粉コアと比較して、寸法変化を抑制することができる。このことから、例えば、コアとして、ギャップ等が設けられたものを備える巻線素子であっても、コアの寸法変化が少ないので、安定した性能を発揮することができる。
また、前記巻線素子において、前記コイルが、長尺な帯状の導体部材を、前記導体部材の幅方向が前記コイルの軸方向に沿うように巻き回されていることが好ましい。
このような構成によれば、コイルに給電した場合に生じる磁束がコイルの軸方向に略沿うことになる。このため、上記構成のコイルは、導体部材の幅方向が、コイルの径方向に沿うように巻き回されて構成されるコイルに比べて、いわゆる渦電流を低減することができる。よって、上記構成のコイルを備える巻線素子は、コイルを内包するコアを小型化することができるので、巻線素子を小型化することができる。
また、前記巻線素子において、前記小型成形体が、熱処理が施されたものであることが好ましい。
このような構成によれば、コアに含まれる小型成形体が、小型成形体を作製する際に内部に発生した歪を予め除去したものである。このため、磁性材料として、絶縁処理済磁性粉末だけでなく、上記のような内部の歪を除去した小型成形体を用いることによって、密度が高いだけではなく、内部の歪の少ないコアが得られる。このことから、コアを小型化することができるだけではなく、コアの寸法変化をより抑制できる。よって、より小型化され、より安定した性能を発揮できる巻線素子が得られる。
また、本発明の他の一態様に係る巻線素子の製造方法は、前記巻線素子の製造方法であって、成形型内の所定の位置に、前記コイルを配置する工程と、前記コイルを配置した成形型内に、前記絶縁処理済磁性粉末と前記小型成形体とを充填する第1充填工程と、前記絶縁処理済磁性粉末と前記小型成形体とを充填した成形型内に、硬化処理により前記樹脂になる液状素材を、減圧下で注入する工程と、前記成形型内に注入された液状素材を硬化させる工程とを備えることを特徴とする。
このような構成によれば、絶縁処理済磁性粉末と小型成形体とを充填した成形型内に、液状素材を減圧下で注入することによって、絶縁処理済磁性粉末と小型成形体とが充填された成形型内に好適に注入される。また、成形型内に予め充填させておく、絶縁処理済磁性粉末及び小型成形体の充填量が多すぎる場合であっても、上記方法によれば、成形型内に液状素材を好適に注入することができる。絶縁処理済磁性粉末及び小型成形体の充填量が多すぎる場合とは、例えば、液状素材に含有された場合、その液状素材の流動性が、コアを形成できない程に高くなるような充填量等である。すなわち、絶縁処理済磁性粉末及び小型成形体の充填量、このような充填量であっても、上記方法によれば、成形型内に液状素材を好適に注入することができる。
これらのことは、以下のことによると考えられる。絶縁処理済磁性粉末と小型成形体とが充填された成形型内に液状素材を注入する際、減圧しているので、それが駆動力となり、液状素材が注入されやすくなると考えられる。このことにより、絶縁処理済磁性粉末及び小型成形体が充填された成形型内に、好適に液状素材を注入することができると考えられる。
そして、絶縁処理済磁性粉末と小型成形体とが充填されている成形型内に、液状素材が好適に注入された状態で、液状素材を硬化させる。また、成形型内には、所定の位置に予めコイルが配置されている。これらのことから、磁性材料の含有量が多くても、所望の形状のコアを有する巻線素子を製造できる。
以上のことから、上記の構成によれば、磁性材料の含有量が多くても、所望の形状のコアを有する巻線素子を製造できる巻線素子の製造方法を提供することができる。
また、前記巻線素子の製造方法において、前記第1充填工程が、前記コイルを配置した成形型内に、前記小型成形体を充填する工程と、前記小型成形体を充填した成形型を振動させながら、前記成形型内に、前記絶縁処理済磁性粉末を充填する工程とを備えることが好ましい。
このような構成によれば、小型成形体を充填した成形型内に、絶縁処理済磁性粉末を好適に充填することができる。このことは、成形型に振動を加えながら、絶縁処理済磁性粉末を充填させることで、成形型内の小型成形体やコイルの隙間に、絶縁処理済磁性粉末が入り込むためと考えられる。
そして、絶縁処理済磁性粉末が成形型に好適に充填されるので、磁性材料の含有量のより多いコアを備える巻線素子が得られる。
また、本発明の他の一態様に係る巻線素子の製造方法は、前記巻線素子の製造方法であって、成形型内の所定の位置に、前記コイルと配置する工程と、前記コイルを配置した成形型内に、前記小型成形体を充填する第2充填工程と、前記小型成形体を充填した成形型を振動させながら、前記成形型内に、前記絶縁処理済磁性粉末と、硬化処理により前記樹脂になる粉状素材とを充填する第3充填工程と、前記成形型内に充填された粉状素材を硬化させる工程とを備えることを特徴とする。
このような構成によれば、小型成形体を充填した成形型内に、絶縁処理済磁性粉末と粉状素材とを好適に充填することができる。このことは、成形型に振動を加えながら、絶縁処理済磁性粉末及び粉状素材を充填させることで、成形型内の小型成形体やコイルの隙間に、絶縁処理済磁性粉末及び粉状素材が入り込むためと考えられる。また、小型成形体の充填量がある程度多くても、成形型に振動を加えながらの充填であれば、絶縁処理済磁性粉末と粉状素材とを好適に充填することができる。さらに、絶縁処理済磁性粉末及び粉状素材を充填させる際、粉状素材に対する絶縁処理済磁性粉末の比率を高めることで、絶縁処理済磁性粉末の充填量を増やすことができる。このことから、粉状素材の硬化により、コアを形成できる程度であれば、粉状素材の充填量を減らし、絶縁処理済磁性粉末の充填量を増やすことができる。
そして、コイルが所定の位置に配置され、小型成形体、絶縁処理済磁性粉末、及び粉状素材が内部に充填された状態で、粉状素材を硬化させる。そうすることによって、磁性材料の含有量が多くても、所望の形状のコアを形成できる。
以上のことから、上記の構成によれば、磁性材料の含有量が多くても、所望の形状のコアを有する巻線素子を製造できる巻線素子の製造方法を提供することができる。
また、前記巻線素子の製造方法において、前記第3充填工程が、前記絶縁処理済磁性粉末と、前記粉状素材とを混合する工程と、前記小型成形体を充填した成形型を振動させながら、前記成形型内に、前記混合により得られた混合物を充填する工程とを備えることが好ましい。
このような構成によれば、絶縁処理済磁性粉末と記粉状素材とを成形型内に充填する第3充填工程において、絶縁処理済磁性粉末と粉状素材とを個別に充填するより、予め絶縁処理済磁性粉末と粉状素材とを混合して、その混合物を充填したほうが、得られたコア内における、絶縁処理済磁性粉末と粉状素材とのむらの発生を抑制できる。このことにより、より安定した性能を発揮できる巻線素子が得られる。
本発明によれば、磁性材料の含有量が多くても、形状欠陥の発生が充分に抑制されたコアを備える巻線素子を提供することができる。また、本発明によれば、磁性材料の含有量が多くても、所望の形状のコアを有する巻線素子を製造できる巻線素子の製造方法を提供することができる。
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
本発明の第1の実施形態に係る巻線素子は、コイルと、前記コイルを内包するコアとを備える。具体的には、図1に示すように、巻線素子1は、外部に引き出される一対の端子部5を備えるコイル3と、コイル3に通電(給電)した場合にコイル3によって生じた磁束を通すコア2とを備える。そして、このコア2が、磁性粉末を絶縁皮膜で被覆した絶縁処理済磁性粉末と、複数の前記絶縁処理済磁性粉末を用いて所定の形状になるように成形した小型成形体と、樹脂とを含有する。このような巻線素子1は、1個のコイルを備えて構成される場合は、例えば、リアクトルとして機能し、また、複数のコイルを備えて構成される場合は、例えば、トランスとして機能する。ここでは、リアクトルとして機能する巻線素子を例示するが、トランスとして機能する巻線素子も同様に構成することが可能である。なお、図1は、本発明の実施形態に係る巻線素子の構成を示す概略断面図である。
上記のようなコアを備える巻線素子は、コア内の磁性材料の含有量が多くても、形状欠陥の発生が充分に抑制されたコアを備えるものである。すなわち、このようなコアは、コア内の磁性材料の含有量を増やすことによって、磁性粉末を圧粉成形して得られる圧粉コアが有する、優れた磁気等方性を発揮できる。そして、このコアは、圧粉コアが有すると期待されていた、設計の自由度が高く、高効率、小型化、及び低コストの全てに調和のとれた優れたものが得られる。さらに、このコアは、後述するように、小型成形体を含有することで、高密度化を達成でき、樹脂を含有することで、圧粉コアで発生しうる寸法変化も抑制することができる。
また、コア内の磁性材料の含有量が多くても、形状欠陥の発生が充分に抑制されたコアとなる理由は、以下のことによると考えられる。まず、小型成形体は、上記のように、複数の絶縁処理済磁性粉末を用いて、前記絶縁処理済磁性粉末より大きい所定の形状になるように成形した成形体であるので、磁性材料として用いることができる。そして、磁性材料として、絶縁処理済磁性粉末だけではなく、この小型成形体を用いるので、磁性材料の含有量が多くても、絶縁処理済磁性粉末自体の含有量を減らすことができ、絶縁処理済磁性粉末の含有量が多いことによる形状欠陥の発生が充分に抑制できると考えられる。よって、磁性材料の含有量が比較的多くても、形状欠陥の発生が充分に抑制されたコアになると考えられる。
また、前記小型成形体は、複数の前記絶縁処理済磁性粉末を用いて、前記絶縁処理済磁性粉末より大きい所定の形状になるように成形したものであるので、密度の高いものである。そして、磁性材料として、絶縁処理済磁性粉末だけではなく、この小型成形体を用いることによって、樹脂を含有していても、高密度のコアが得られる。このことから、コアを小型化することができる。
さらに、上記コアは、樹脂を含むので、磁性粉末を圧粉成形して得られる圧粉コアと比較して、寸法変化を抑制することができる。このことから、例えば、コアとして、ギャップ等が設けられたものを備える巻線素子であっても、コアの寸法変化が少ないので、安定した性能を発揮することができる。
次に、巻線素子の各構成について、説明する。
コイル3は、絶縁状態で長尺の導体部材を所定の回数だけ巻き回したものであり、通電することによって、磁場を発生するものであれば、特に限定されない。例えば、コイル3は、断面丸形(○形)や断面矩形(□形)等の絶縁被覆した長尺な導体部材を巻回することによって構成される。また、コイル3は、長尺な帯状の導体部材を、前記導体部材の幅方向が前記コイルの軸方向に沿うように巻き回されていることが好ましい。すなわち、コイル3は、フラットワイズ構造のものが好ましい。このような構成のコイルは、コイルに給電した場合に生じる磁束がコイルの軸方向に略沿うことになる。このため、このようなフラットワイズ構造のコイルは、導体部材の幅方向が、コイルの径方向に沿うように巻き回されて構成される、いわゆるエッジワイズ型のコイルに比べて、いわゆる渦電流を低減することができる。よって、上記のようなフラットワイズ構造のコイルを備える巻線素子は、コイルを内包するコアを小型化することができるので、巻線素子を小型化することができる。また、本実施形態では、コイル3は、絶縁した帯状の導体部材を、前記導体部材の幅方向がコイル3の軸方向に沿うように巻回することによって構成された、フラットワイズ構造である。コイル3の具体例としては、純銅からなる導体部材を絶縁フィルムで巻き込むことで絶縁したものを、フラットワイズ構造にしたコイル等が挙げられる。
なお、帯状とは、導体部材の厚さ(径方向の長さ)tよりも幅(軸方向の長さ)Wのほうが大きい場合をいう。すなわち、帯状とは、幅Wと厚さtとの間に、W>t(W/t>1)の関係が成り立つ場合をいう。
そして、コイル3には、外部の回路等と電気的に接続するための端子部が設けられていることが一般的である。本実施形態では、コイルの導体部材における長尺方向の両端のそれぞれには、外部の回路とコイル3とを電気的に接続するための一対の端子部5が設けられている。端子部5は、導体線材を、例えば、溶接や半田付け等で導体部材の両端部に取り付けることによって形成されていてもよい。また、端子部5は、コイル3の端部を折り曲げることによって、コイル3の軸方向に直交する平面に交差方向に引き出された部分であってもよい。
また、コイル3は、図1に示すように、その外周に、絶縁膜7を配置してもよい。すなわち、コイル3とコア2との間に、絶縁膜7を介在させてもよい。具体的には、コイル3を絶縁膜7で被覆してもよい。絶縁膜7としては、特に限定されないが、絶縁性及び放熱性の向上の観点から、例えば、窒化ホウ素セラミックス等からなる層や、絶縁性及び良熱伝導性の樹脂からなる層等が挙げられる。絶縁膜7として用いられる樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)等が挙げられる。この絶縁膜7の存在により、コイル3とコア2との間の絶縁性が向上する。そして、この絶縁膜7の存在により、コイル3の軸方向(上下方向)の熱伝導性が向上するとともに、コイル3に発生するジュール熱が前記絶縁膜7を介してコア2に熱伝導し、この結果、このような構成の巻線素子1は、効率良く外部に廃熱することが可能となる。また、このため、より具体的には、外部からコアを冷却することによって、巻線素子内部が高温になるのを防止することができる。
また、コア2は、所定の磁気特性を有することが求められる。すなわち、コア2は、コイル3に通電した場合に、コイル3に生じる磁場による磁束を通す部材であり、磁気的に(例えば、透磁率が)等方性を有していることが求められる。そして、コア2は、具体的には、上記のように、前記絶縁処理済磁性粉末と、前記小型成形体と、前記樹脂とを含有して構成される。このようなコアにすることによって、比較的高い透磁率等の、所望の磁気特性の実現容易性、及び所望の形状の成形容易性を優れたものとすることができる。
また、絶縁処理済磁性粉末は、磁性粉末に絶縁処理を施したものであって、巻線素子のコアの材料として用いられうるものであれば、特に限定されない。また、絶縁処理としては、例えば、磁性粉末の表面を、リン酸系化成皮膜等の絶縁皮膜や、ガラス状の絶縁被膜で被覆する処理等が挙げられる。また、磁性粉末としては、例えば、小さな磁場の印加で大きな磁束密度を得ることができ、外部からの磁界変化に対して敏感に反応できる磁気的特性を有する点で、軟磁性粉末等が好ましく用いられる。また、軟磁性粉末としては、例えば、Fe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、及びパーマロイ等の鉄基合金粉末、純鉄粉、及びアモルファス金属からなる粉末等が挙げられる。また、これら軟磁性粉末は、例えば、アトマイズ法等によって製造することができる。
また、絶縁処理済磁性粉末の粒子径は、絶縁処理済磁性粉末の種類や、求められるコアの性能等によって異なるが、例えば、20〜100μmであることが好ましく、30〜60μmであることがより好ましい。絶縁処理済磁性粉末が小さすぎると、コアの製作時に、絶縁処理済磁性粉末の凝集等が発生しやすく、コア内に絶縁処理済磁性粉末を均一に分散することが困難になる傾向がある。また、絶縁処理済磁性粉末が大きすぎても、大きいことが理由で、コア内に絶縁処理済磁性粉末を均一に分散することが困難になる傾向がある。これらのことから、絶縁処理済磁性粉末の粒子径が上記範囲内であれば、絶縁処理済磁性粉末をコア内に均一に分散することができ、得られたコアが、コアとしての効果を好適に発揮できる。
また、絶縁処理済磁性粉末の含有量も、絶縁処理済磁性粉末の種類や、求められるコアの性能等によって異なるが、例えば、コア100質量部に対して、10〜50質量部であることが好ましく、20〜40質量部であることがより好ましい。絶縁処理済磁性粉末の含有量が少なすぎると、得られたコアが、コアとしての効果を充分に発揮できない傾向がある。また、絶縁処理済磁性粉末の含有量が多すぎると、相対的に、小型成形体や樹脂の含有量が減り、小型成形体や樹脂を含有させた効果が充分に発揮されない傾向がある。すなわち、得られたコアの形状欠陥が発生しやすくなる傾向がある。これらのことから、絶縁処理済磁性粉末の含有量が上記範囲内であれば、得られたコアの、コアとしての効果をより好適に発揮でき、さらに、コアの形状欠陥が発生をより抑制できる。
また、小型成形体は、複数の絶縁処理済磁性粉末を用いて、この絶縁処理済磁性粉末より大きい所定の形状となるように成形したものであれば、特に限定されない。小型成形体としては、例えば、複数の絶縁処理済磁性粉末を、圧粉成形等により、所定の形状となるように成形したもの等が挙げられる。小型成形体は、このように、絶縁処理済磁性粉末を用いて、所定の形状になるように成形して得られるものなので、密度の高いものである。このような小型成形体をコアに含有させることによって、高密度のコアが得られる。
また、小型成形体の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、回転楕円体状、円柱状、及び四角柱状や六角柱状等の多角柱状等が挙げられる。また、小型成形体の大きさは、複数の絶縁処理済磁性粉末からなるものであるので、絶縁処理済磁性粉末より大きく、例えば、球状であれば、直径が、1〜7mmであることが好ましく、3〜5mmであることがより好ましい。また、他の形状であっても、球状と同程度の体積となるような大きさであることが好ましい。また、小型成形体が円柱状である場合、直径が、3〜5mmであり、高さが、3〜5mmであることが好ましい。小型成形体が小さすぎると、小型成形体を含有させることにより発揮される効果を充分に発揮できなくなる傾向がある。また、小型成形体が大きすぎると、大きいことが理由で、コア内に小型成形体を均一に配置することが困難になる傾向がある。これらのことから、小型成形体の大きさが上記範囲内であれば、小型成形体を含有させることにより発揮される効果をより発揮でき、磁性材料の含有量が多くても、所望の形状のコアを形成することができる。
また、小型成形体の含有量は、求められるコアの性能等によって異なるが、例えば、コア100質量部に対して、50〜90質量部であることが好ましく、60〜80質量部であることがより好ましい。小型成形体の含有量が少なすぎると、小型成形体を含有させることにより発揮される効果を充分に発揮できなくなる傾向がある。また、小型成形体の含有量が多すぎると、相対的に、樹脂の含有量が減り、コアの形状を維持することが困難になる傾向がある。これらのことから、小型成形体の含有量が上記範囲内であれば、得られたコアの、コアとしての効果をより好適に発揮でき、さらに、コアの形状欠陥が発生をより抑制できる。
また、小型成形体は、所定の形状に成形された後に、熱処理が施されたものが好ましい。熱処理を施すことによって、所定の形状に成形する際に小型成形体の内部に発生する歪を除去することができる。このような内部の歪を熱処理によって除去した小型成形体をコアに含有させることによって、密度が高いだけではなく、内部の歪の少ないコアが得られる。このことから、コアを小型化することができるだけではなく、寸法変化の発生がより抑制されたコアが得られる。
また、樹脂は、絶縁処理済磁性粉末及び小型成形体と共存することにより、コアの形状を維持することができるものであれば、特に限定されない。樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂等の硬化樹脂が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ化合物等の熱硬化性化合物を、熱硬化等により、硬化させた熱硬化性樹脂等が挙げられる。
また、樹脂の含有量は、コアの形状を維持することができれば、少ないほうが好ましいが、少なすぎると、コアの形状を維持することが困難になる傾向がある。樹脂の含有量としては、樹脂の種類等によっても異なるが、例えば、コア100質量部に対して、2〜10質量部であることが好ましく、3〜7質量部であることがより好ましい。
上記のような本実施形態に係る巻線素子は、例えば、電鉄車両、電気自動車、ハイブリッド自動車、無停電電源、太陽光発電等の産業用インバータ用として好適に利用することができるだけではなく、エアコン、冷蔵庫、洗濯機等の大出力家電用インバータ用としても好適に利用することができる。
なお、本実施形態に係る巻線素子は、コイル3及びコア2が円柱状である場合に限定されない。コイル3やコア2が、例えば、多角柱状であってもよい。前記多角柱状としては、例えば、四角柱状、六角柱状及び八角柱状等が挙げられる。また、コイル3及びコア2の一方が、円柱状で、他方が、多角柱状であってもよい。例えば、コイル3が円柱状で、コア2が多角柱状である場合等が挙げられる。
次に、巻線素子の製造方法について説明する。
前記巻線素子を製造する方法としては、巻線素子の製造時における硬化処理により前記樹脂になる成分として、液状素材を用いる場合と、粉状素材を用いる場合とが挙げられる。
まず、液状素材を用いる場合について説明する。
具体的には、本発明の第2の実施形態に係る巻線素子の製造方法は、成形型内の所定の位置に、前記コイルを配置する工程と、前記コイルを配置した成形型内に、前記絶縁処理済磁性粉末と前記小型成形体とを充填する第1充填工程と、前記絶縁処理済磁性粉末と前記小型成形体とを充填した成形型内に、硬化処理により前記樹脂になる液状素材を、減圧下で注入する工程と、前記成形型内に注入された液状素材を硬化させる工程とを備える。
上記各工程を備える製造方法であれば、磁性材料の含有量が多くても、所望の形状のコアを有する巻線素子を製造できる。すなわち、絶縁処理済磁性粉末と小型成形体とを充填した成形型内に、液状素材を減圧下で注入することによって、絶縁処理済磁性粉末と小型成形体とが充填された成形型内に好適に注入される。また、成形型内に予め充填させておく、絶縁処理済磁性粉末及び小型成形体の充填量が多すぎる場合であっても、上記方法によれば、成形型内に液状素材を好適に注入することができる。絶縁処理済磁性粉末及び小型成形体の充填量が多すぎる場合とは、例えば、液状素材に含有された場合、その液状素材の流動性が、コアを形成できない程に高くなるような充填量等である。すなわち、絶縁処理済磁性粉末及び小型成形体の充填量、このような充填量であっても、上記方法によれば、成形型内に液状素材を好適に注入することができる。
これらのことは、以下のことによると考えられる。絶縁処理済磁性粉末と小型成形体とが充填された成形型内に液状素材を注入する際、減圧しているので、それが駆動力となり、液状素材が注入されやすくなると考えられる。このことにより、絶縁処理済磁性粉末及び小型成形体が充填された成形型内に、好適に液状素材を注入することができると考えられる。
そして、絶縁処理済磁性粉末と小型成形体とが充填されている成形型内に、液状素材が好適に注入された状態で、液状素材を硬化させる。また、成形型内には、所定の位置に予めコイルが配置されている。これらのことから、磁性材料の含有量が多くても、所望の形状のコアを有する巻線素子を製造できる。
以上のことから、上記の製造方法は、磁性材料の含有量が多くても、所望の形状のコアを有する巻線素子を製造できる。
また、コイルを配置する方法は、図2に示すように、成形型12内の所定の位置に、コイル14を配置することができれば、特に限定されない。コイル14は、上記巻線素子1におけるコイル3である。なお、図2は、本発明の実施形態に係る巻線素子の製造方法の一例を説明するための図である。
また、成形型12は、巻線素子のコアの外形を規定することができれば、特に限定されない。すなわち、この成形型12内で、コアを形成させれば、コアの形状を規定することができる。このような成形型12内の所定の位置に、コイル14を配置することによって、所定の位置にコイル14が配置されたコアが得られる。また、成形型12には、後述する液状素材を、成形型12内に注入するための注入口12aを備えている。
次に、前記第1充填工程は、図2に示すように、コイル14を配置した成形型12内に、前記絶縁処理済磁性粉末16と前記小型成形体15とを充填することができれば、特に限定されない。前記第1充填工程は、具体的には、絶縁処理済磁性粉末16と小型成形体15と予め混合して、その混合物を、コイル14を配置した成形型12内に充填する方法や、絶縁処理済磁性粉末16と小型成形体15とを、個別にコイル14を配置した成形型12内に充填する方法等が挙げられる。この中でも、コイル14を配置した成形型12内に、まず、小型成形体15を充填し、その後、小型成形体15を充填した成形型12を振動させながら、成形型12内に、絶縁処理済磁性粉末16を充填する方法が好ましい。すなわち、前記第1充填工程が、コイル14を配置した成形型12内に、小型成形体15を充填する工程と、小型成形体15を充填した成形型12を振動させながら、成形型12内に、絶縁処理済磁性粉末16を充填する工程を備えることが好ましい。そうすることによって、小型成形体15を充填した成形型12内に、絶縁処理済磁性粉末16を好適に充填することができる。このことは、成形型12に振動を加えながら、絶縁処理済磁性粉末16を充填させることで、成形型12内の小型成形体15やコイル14の隙間に、絶縁処理済磁性粉末16が入り込むためと考えられる。このような充填方法を用いることによって、絶縁処理済磁性粉末16が成形型12に好適に充填されるので、磁性材料の含有量のより多いコアを備える巻線素子を好適に製造することができる。
また、成形型12を振動させる方法は、絶縁処理済磁性粉末16の充填性を高めることができれば、特に限定されない。成形型12を振動させる方法としては、例えば、成形型12を振動させながら、絶縁処理済磁性粉末16を徐々に充填させる場合、その振動として、先に徐々に充填された絶縁処理済磁性粉末16が流動する程度の振動である方法等が挙げられる。また、その振動の強さは、前記のように、絶縁処理済磁性粉末16が流動する程度の振動であることが好ましく、成形型12の中で絶縁処理済磁性粉末16を動かすことのできる強さ以上であって、絶縁処理済磁性粉末16がわずかに振動することを目視で確認できる程度の強さがより好ましい。また、振動は、成形型12に対して、振動装置等の機械を用いて与えてもよいし、成形型12を、プラスチックハンマー等で叩いて与えてもよいし、成形型12を手で持ち上げて、基台等の上に置く動作を繰り返して与えてもよい。
なお、前記絶縁処理済磁性粉末16は、上記巻線素子1における絶縁処理済磁性粉末であり、前記小型成形体15は、上記巻線素子1における小型成形体である。
次に、成形型12内に液状素材17を注入する工程は、減圧下で注入する工程であれば、特に限定されない。具体的には、まず、絶縁処理済磁性粉末16と小型成形体15とを充填した成形型12を、減圧装置の減圧室11内に載置する。そして、減圧室11内を減圧する。なお、減圧室11としては、例えば、真空チャンバ等が挙げられる。そして、成形型12の注入口12aには、弁18を備えた流路19を介して、液状素材17を貯留した容器と接続されている。この弁18を開放することによって、成形型12内に液状素材17が注入される。上述したように、この減圧室11での減圧が駆動力となり、絶縁処理済磁性粉末16と小型成形体15との間にも、液状素材17が好適に入り込むように、成形型12内に液状素材17が注入される。
また、減圧室11の減圧度は、成形型12内に液状素材17が好適に注入される程度の減圧度であればよい。また、減圧室11の減圧度は、液状素材17の種類や絶縁処理済磁性粉末16及び小型成形体15の充填度等によっても異なるが、例えば、300〜2000Paであることが好ましい。
また、液状素材17は、硬化処理により前記樹脂になる液状素材であれば、特に限定されない。ここでの樹脂は、上記巻線素子1における樹脂である。すなわち、液状素材17は、樹脂が硬化される前の原料である。また、この液状素材17は、硬化処理により前記樹脂になる液状素材からなるものが好ましいが、絶縁処理済磁性粉末16が含有されていてもよい。
また、成形型12内に液状素材17を注入する工程は、図3及び図4に示すような、以下の工程であってもよい。なお、図3及び図4は、本発明の実施形態に係る巻線素子の製造方法の他の一例を説明するための図である。
具体的には、まず、上記の方法と同様、絶縁処理済磁性粉末16と小型成形体15とを充填した成形型12を、減圧装置の減圧室11内に載置した後、減圧室11内を減圧する。そして、液状素材17を貯留した容器に接続された流路20の吐出口20aが、図3に示すように、成形型12に充填された絶縁処理済磁性粉末16と小型成形体15との上方に位置するように配置する。そして、流路20に備えられた弁18を開放することによって、成形型12内に液状素材17が注入される。上述したように、この減圧室11での減圧が駆動力となり、絶縁処理済磁性粉末16と小型成形体15との間にも、液状素材17が好適に入り込むように、成形型12内に液状素材17が注入される。なお、この場合、成形型12には、前記注入口12aを備えていなくてもよい。
また、他の方法としては、図4に示すように、絶縁処理済磁性粉末16と小型成形体15とが充填された成形型12内に、液状素材17を流し込む。そして、この液状素材17を流し込んだ成形型12を、上記の方法と同様、減圧装置の減圧室11内に載置した後、減圧室11内を減圧する。このような方法によっても、減圧室11での減圧が駆動力となり、絶縁処理済磁性粉末16と小型成形体15との間にも、液状素材17が好適に入り込むように、成形型12内に液状素材17が注入される。この方法によれば、好適な巻線素子が、より簡便な方法で得られる。なお、この場合も、成形型12には、前記注入口12aを備えていなくてもよい。
次に、成形型12内に注入された液状素材17を硬化させる工程は、液状素材17が硬化して、前記樹脂になる処理を施すのであれば、特に限定されない。前記樹脂になる硬化処理としては、例えば、液状素材17が熱硬化性化合物である場合は、硬化温度以上の加熱処理である。このような工程によって、絶縁処理済磁性粉末、小型成形体及び樹脂を含有し、コイルを内包するコアが得られる。
なお、コイル14は、上述したように、上記巻線素子1におけるコイル3である。また、コイル14は、上記巻線素子1におけるコイル3と同様、外周に、絶縁膜13を配置したものであってもよい。また、この絶縁膜13は、上記巻線素子1における絶縁膜7である。このような絶縁膜7を備える場合、本実施形態に係る製造方法は、コイル14を配置する前に、コイル14に、絶縁膜13を形成する工程をさらに備える。この工程は、コイル14の外周に、絶縁膜13が形成できれば、特に限定されず、例えば、インサート成形等が挙げられる。
次に、粉状素材を用いる場合について説明する。
具体的には、本発明の第3の実施形態に係る巻線素子の製造方法は、成形型内の所定の位置に、前記コイルと配置する工程と、前記コイルを配置した成形型内に、前記小型成形体を充填する第2充填工程と、前記小型成形体を充填した成形型を振動させながら、前記成形型内に、前記絶縁処理済磁性粉末と、硬化処理により前記樹脂になる粉状素材とを充填する第3充填工程と、前記成形型内に充填された粉状素材を硬化させる工程とを備える。
上記各工程を備える製造方法であれば、磁性材料の含有量が多くても、所望の形状のコアを有する巻線素子を製造できる。すなわち、小型成形体を充填した成形型内に、絶縁処理済磁性粉末と粉状素材とを好適に充填することができる。このことは、成形型に振動を加えながら、絶縁処理済磁性粉末及び粉状素材を充填させることで、成形型内の小型成形体やコイルの隙間に、絶縁処理済磁性粉末及び粉状素材が入り込むためと考えられる。また、小型成形体の充填量がある程度多くても、成形型に振動を加えながらの充填であれば、絶縁処理済磁性粉末と粉状素材とを好適に充填することができる。さらに、絶縁処理済磁性粉末及び粉状素材を充填させる際、粉状素材に対する絶縁処理済磁性粉末の比率を高めることで、絶縁処理済磁性粉末の充填量を増やすことができる。このことから、粉状素材の硬化により、コアを形成できる程度であれば、粉状素材の充填量を減らし、絶縁処理済磁性粉末の充填量を増やすことができる。
そして、コイルが所定の位置に配置され、小型成形体、絶縁処理済磁性粉末、及び粉状素材が内部に充填された状態で、粉状素材を硬化させる。そうすることによって、磁性材料の含有量が多くても、所望の形状のコアを形成できる。
以上のことから、上記の製造方法によれば、磁性材料の含有量が多くても、所望の形状のコアを有する巻線素子を製造できる。
また、コイルを配置する方法は、図5(a)に示すように、成形型12内の所定の位置に、コイル14を配置することができれば、特に限定されない。すなわち、コイルを配置する方法は、成形型12に注入口12aを備える必要がないこと以外、上記の第2の実施形態と同様である。なお、本発明の実施形態に係る巻線素子の製造方法の他の一例を説明するための図である。また、図5(a)は、前記第3充填工程の前を示し、図5(b)は、前記第3充填工程の後を示す。
次に、前記第2充填工程は、図5(a)に示すように、コイル14を配置した成形型12内に、小型成形体15を充填することができれば、特に限定されない。この小型成形体15の充填方法としては、成形型12内に小型成形体15を投入する方法であればよい。また、成形型12内に小型成形体15を充填する際に、前記第1充填工程における絶縁処理済磁性粉末を充填する工程と同様、成形型12に振動を加えてもよい。そうすることによって。成形型12内に小型成形体15がより均一に充填される。
次に、前記第3充填工程は、小型成形体15を充填した成形型12を振動させながら、成形型12内に、絶縁処理済磁性粉末と粉状素材とを充填することができれば、特に限定されない。成形型12を振動させる方法は、絶縁処理済磁性粉末及び粉状素材の充填性を高めることができれば、特に限定されない。成形型12を振動させる具体的な方法としては、前記第1充填工程における、成形型12を振動させる方法と同様の方法が挙げられる。また、前記第3充填工程は、絶縁処理済磁性粉末と粉状素材とを同時に成形型12に投入してもよいが、図5(b)に示すように、絶縁処理済磁性粉末と粉状素材と予め混合して、その混合物21を成形型12に投入することが好ましい。すなわち、前記第3充填工程が、絶縁処理済磁性粉末と粉状素材とを混合する工程と、小型成形体15を充填した成形型12を振動させながら、成形型12内に、前記混合により得られた混合物21を充填する工程とを備えることが好ましい。そうすることによって、絶縁処理済磁性粉末と粉状素材とを個別に充填するより、予め絶縁処理済磁性粉末と粉状素材とを混合して、その混合物21を充填したほうが、得られたコア内における、絶縁処理済磁性粉末と粉状素材とのむらの発生を抑制できる。このことにより、より安定した性能を発揮できる巻線素子が得られる。
また、粉状素材は、硬化処理により前記樹脂になる粉状素材であれば、特に限定されない。ここでの樹脂は、上記巻線素子1における樹脂である。すなわち、粉状素材は、樹脂が硬化される前の原料である。
次に、成形型12内に注入された粉状素材を硬化させる工程は、粉状素材が硬化して、前記樹脂になる処理を施すのであれば、特に限定されない。前記樹脂になる硬化処理としては、例えば、粉状素材が熱硬化性化合物である場合は、硬化温度以上の加熱処理である。このような工程によって、絶縁処理済磁性粉末、小型成形体及び樹脂を含有し、コイルを内包するコアが得られる。また、粉状素材の硬化処理は、コアの密度を高めるために、加圧下で行ってもよい。
上記各製造方法によれば、上記巻線素子1を製造することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(コイル)
実施例及び比較例で用いるコイルは、導電部材及び巻数等がそれぞれ共通するコイルである。具体的には、まず、導電部材としては、幅20mm厚さ0.3mmの純銅製の導電部材を用いた。そして、この導電部材を用いて、巻数30ターンのフラットワイズ構造のコイル形状にした。なお、この導電部材における巻回部分については、絶縁フィルムで包み込むことで、巻回部分の絶縁処置を施した。さらに、この絶縁処理を施し、コイル状にした導電部材の周囲をインサート成形によりポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)で被覆した。このようにPPS樹脂で被覆したものを、実施例及び比較例で用いるコイルとした。
(小型成形体)
実施例で用いる小型成形体としては、絶縁処理済磁性粉末として、絶縁皮膜処理を施した純鉄粉を用い、直径4mm高さ4mmの円柱状になるように成形した後、内部の歪を除去するための熱処理を施したものを用いた。
[実施例1]
まず、成形型としては、図2に示すような、内径90mmで、内部の高さ60mmであって、下部付近に、液状素材を注入するための注入口を備えたものを用いた。この成形型の底から10mmの高さの位置に、前記コイルを配置した。その後、コイルの周囲に、前記小型成形体を1000g敷き詰めた。それから、小型成形体を敷き詰めた成形型の側面を、プラスチックハンマーで叩きながら、その成形型内に、絶縁処理済磁性粉末である、絶縁皮膜処理を施した純鉄粉400gを投入し、成形型内に、絶縁処理済磁性粉末を充填させた。その後、絶縁処理済磁性粉末及び小型成形体が充填された成形型を、真空チャンバに収納した。そして、真空チャンバ内を、真空ポンプを用いて減圧した。その減圧下で、成形型の注入口に接続したチューブから、成形型内部に、液状素材である、液状のエポキシ化合物50gを注入した。その後、前記エポキシ化合物を注入させた後の成形型を、前記エポキシ化合物が硬化する条件で加熱処理した。そうすることによって、巻線素子(リアクトル)が得られた。
この得られたリアクトルを目視で確認したところ、形状欠陥を確認できなかった。また、このリアクトルを、LCRメータを用いてインダクタンスを計測したところ、900μHであった。また、リアクトルのコアの密度は、5.2g/m3であった。
[実施例2]
まず、成形型として、内径90mmで、内部の高さ60mmのアルミニウム製の型を用意した。この成形型の底から10mmの高さの位置に、前記コイルを配置した。その後、コイルの周囲に、前記小型成形体を1000g敷き詰めた。
一方、上記操作とは別に、まず、絶縁処理済磁性粉末として、絶縁皮膜処理を施した純鉄粉を用意した。この絶縁処理を施した純鉄粉と、粉体素材であるエポキシ粉体塗料とを、質量比4:1で混合した。
そして、小型成形体を敷き詰めた成形型の側面を、プラスチックハンマーで叩きながら、その成形型内に、上記混合によって得られた混合物500gを投入した。なお、絶縁処理済磁性粉末が400g、エポキシ粉体塗料が100g投入されたことになる。その後、前記混合物を投入した後の成形型を、前記エポキシ粉体塗料が硬化する条件で加熱処理した。そうすることによって、巻線素子(リアクトル)が得られた。
この得られたリアクトルを目視で確認したところ、形状欠陥を確認できなかった。また、このリアクトルを、LCRメータを用いてインダクタンスを計測したところ、800μHであった。また、リアクトルのコアの密度は、4.8g/m3であった。
[比較例1]
まず、成形型として、内径90mmで、内部の高さ60mmのアルミニウム製の型を用意した。この成形型の底から10mmの高さの位置に、前記コイルを配置した。そして、絶縁処理済磁性粉末として、絶縁皮膜処理を施した純鉄粉800gと、液状のエポキシ化合物400gとを予め混合した。この混合によって得られた混合物を、コイルが配置された成形型に流し込んだ。その後、前記混合物を流し込んだ後の成形型を、前記エポキシ化合物が硬化する条件で加熱処理した。そうすることによって、巻線素子(リアクトル)が得られた。
この得られたリアクトルを目視で確認したところ、形状欠陥を確認できなかった。また、このリアクトルを、LCRメータを用いてインダクタンスを計測したところ、400μHであった。また、リアクトルのコアの密度は、3.8g/m3であった。
[比較例2]
絶縁処理済磁性粉末とエポキシ化合物との混合物として、磁性材料の含有量が、実施例1や実施例2と同程度となるような混合物を用いたこと以外、比較例1と同様にして行った。具体的には、絶縁処理済磁性粉末とエポキシ化合物との混合物として、絶縁処理済磁性粉末1400gとエポキシ化合物100gとを混合したものを用いる以外、比較例1と同様にして行った。
しかしながら、混合物の粘度が高まりすぎて、所望の形状のコアを形成することができなかった。
以上のことから、上記小型成形体を用いた場合(実施例1及び実施例2)では、磁性材料の含有量が多くても、適切な形状のコアを形成することができた。また、得られたリアクトルは、コア内の磁性材料の含有量が多いので、リアクトルとして適切な性能を示すことができることがわかった。
これに対して、上記比較例1によれば、磁性材料の含有量を減らせば、上記小型成形体を用いなくても、所望の形状のコアを形成できる。しかしながら、比較例1に係るリアクトルは、コア内の磁性材料の含有量が少ないので、リアクトルとしての性能が、実施例1及び実施例2と比較して低いことがわかった。また、単に磁性材料の含有量を増やしただけでは、比較例2からわかるように、所望の形状のコアを形成できなかった。