本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。なお、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
なお、ある一つの実施の形態の中で述べる内容(一部の内容でもよい)は、その実施の形態で述べる別の内容(一部の内容でもよい)、または/および、一つもしくは複数の別の実施の形態で述べる内容(一部の内容でもよい)に対して、適用、組み合わせ、または置き換えなどを行うことが出来る。
なお、図において、大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
なお、図は、理想的な例を模式的に示したものであり、図に示す形状または値などに限定されない。例えば、製造技術による形状のばらつき、誤差による形状のばらつき、ノイズによる信号、電圧、もしくは電流のばらつき、または、タイミングのずれによる信号、電圧、もしくは電流のばらつきなどを含むことが可能である。
また、電圧は、ある電位と、基準の電位(例えば接地電位(GND)またはソース電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧を電位と言い換えることが可能である。
本明細書においては、「電気的に接続する」と表現される場合であっても、現実の回路においては、物理的な接続部分がなく、配線が延在しているだけの場合もある。
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶縁体」は境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。従って、本明細書に記載の「半導体」は、「絶縁体」と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「絶縁体」は、「半導体」と言い換えることができる場合がある。
また、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分高い場合は「導電体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「導電体」は境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。従って、本明細書に記載の「半導体」は、「導電体」と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「導電体」は、「半導体」と言い換えることができる場合がある。
なお、半導体層の不純物とは、例えば、半導体層を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1atomic%未満の元素は不純物である。不純物が含まれることにより、例えば、半導体層にDOS(Density of State)が形成されることや、キャリア移動度が低下することや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体層が酸化物半導体層である場合、半導体層の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第14族元素、第15族元素、主成分以外の遷移金属などがあり、特に、例えば、水素(水にも含まれる)、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。酸化物半導体の場合、不純物の混入によって酸素欠損を形成する場合がある。また、半導体層がシリコン層である場合、半導体層の特性を変化させる不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第15族元素などがある。
また、本明細書において、過剰酸素とは、例えば、化学量論的組成を超えて含まれる酸素をいう。または、過剰酸素とは、例えば、加熱することで放出される酸素をいう。過剰酸素は、例えば、膜や層の内部を移動することができる。過剰酸素の移動は、膜や層の原子間を移動する場合と、膜や層を構成する酸素と置き換わりながら玉突き的に移動する場合とがある。また、過剰酸素を含む絶縁膜は、例えば、加熱処理によって酸素を放出する機能を有する絶縁膜である。
<トランジスタの構造および作製方法について>
以下では、トランジスタの構造および作製方法について説明する。
<トランジスタ構造(1)>
まず、トップゲートトップコンタクト型のトランジスタの一例について説明する。
図1は、トランジスタの上面図および断面図である。図1(A)は、トランジスタの上面図を示す。図1(A)において、一点鎖線A1−A2に対応する断面図を図1(B)に示す。また、図1(A)において、一点鎖線A3−A4に対応する断面図を図1(C)に示す。
図1(B)に示すトランジスタは、基板100上の下地絶縁膜102と、下地絶縁膜102上の酸化物半導体膜106と、酸化物半導体膜106と接するソース電極116aおよびドレイン電極116bと、酸化物半導体膜106、ソース電極116aおよびドレイン電極116b上のゲート絶縁膜112と、ゲート絶縁膜112上のゲート電極104と、を有する。なお、基板100および下地絶縁膜102は、損傷した領域である損傷領域152を有する。好ましくは、ゲート絶縁膜112およびゲート電極104上に、保護絶縁膜118を設ける。
なお、トランジスタは、下地絶縁膜102を有さなくても構わない。この場合、損傷領域152は基板100のみに設けられる。
損傷領域152は、基板100の全体に設けられていてもよいし、基板100の一部に設けられていてもよい。また、損傷領域152は、下地絶縁膜102の全体に設けられていてもよいし、下地絶縁膜102の一部に設けられていてもよい。
損傷領域152では、原子間の結合が弱まっている場合や、歪んでいる場合や、切断されている場合などがある。従って、損傷領域152に含まれる元素の一部は、ガスとなり放出しやすい状態となっている。例えば、基板100または/および下地絶縁膜102が酸化物を含む場合、酸化物を構成する酸素が、酸素原子を有するガスとなり、外部へ放出しやすくなる。
なお、酸素原子を有するガスとしては、酸素分子(O2)、水(H2O)、酸化窒素(NOX)、酸化炭素(COX)などが挙げられる。
酸化物半導体膜中で酸素欠損は欠陥準位となり、トランジスタの電気特性を劣化させる要因となる。酸素欠損は、酸素原子によって埋められることで消滅する。つまり、損傷領域152から放出された酸素原子を含むガスが酸素欠損を埋めることで、欠陥準位が消滅し、トランジスタに安定した電気特性を付与することができる。
なお、ゲート電極104は、図1(A)に示すように、上面図においてチャネル形成領域が内側に含まれるように設けられる。こうすることで、ゲート電極104側から光が入射した際に、チャネル形成領域中で光によってキャリアが生成されることを抑制することができる。即ち、ゲート電極104は遮光膜としての機能を有する。ただし、ゲート電極104の外側までチャネル形成領域が設けられても構わない。
基板100は、例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを、基板100として用いればよい。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI(Silicon On Insulator)基板などを適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板100として用いてもよい。
また、基板100として、第5世代(1000mm×1200mmまたは1300mm×1500mm)、第6世代(1500mm×1800mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2500mm)、第9世代(2400mm×2800mm)、第10世代(2880mm×3130mm)などの大型ガラス基板を用いる場合、半導体装置の作製工程における加熱処理などで生じる基板100の縮みによって、微細な加工が困難になる場合ある。そのため、前述したような大型ガラス基板を基板100として用いる場合、加熱処理による縮みの小さいものを用いることが好ましい。例えば、基板100として、400℃、好ましくは450℃、さらに好ましくは500℃の温度で1時間加熱処理を行った後の縮み量が10ppm以下、好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは3ppm以下である大型ガラス基板を用いればよい。
また、基板100として、可とう性基板を用いてもよい。
下地絶縁膜102は、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を、単層で、または積層で用いればよい。
下地絶縁膜102は、例えば、過剰酸素を含む絶縁膜であっても構わない。
過剰酸素を含む絶縁膜とは、加熱処理などによって酸素を放出することができる絶縁膜をいう。また、過剰酸素を含む絶縁膜は、加熱処理によって酸素を放出する機能を有する絶縁膜である。
過剰酸素を含む絶縁膜は、酸化物半導体層中の酸素欠損量を低減することができる。例えば、下地絶縁膜102から放出された酸素により、酸化物半導体層106aの酸素欠損量を低減することができる。
以下では、酸化物半導体膜106に適用可能な酸化物半導体について説明する。
酸化物半導体は、例えば、インジウムを含む。インジウムを含む酸化物半導体は、キャリア移動度(電子移動度)が高くなる。また、酸化物半導体は、元素Mを含むと好ましい。元素Mとして、例えば、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどがある。元素Mは、例えば、酸素との結合エネルギーが高い元素である。元素Mは、例えば、酸化物半導体のエネルギーギャップを大きくする機能を有する元素である。また、酸化物半導体は、亜鉛を含むと好ましい。酸化物半導体が亜鉛を含むと、結晶質の酸化物半導体となりやすい。また、酸化物半導体の価電子帯上端のエネルギー(Ev)は、例えば、亜鉛の原子数比によって制御できる場合がある。
ただし、酸化物半導体は、インジウムを含まなくてもよい。酸化物半導体は、例えば、Zn−Sn酸化物、Ga−Sn酸化物であっても構わない。
なお、酸化物半導体は、InとMの原子数比率をInが50atomic%未満、Mが50atomic%以上、またはInが25atomic%未満、Mが75atomic%以上であるIn−M−Zn酸化物としてもよい。また、酸化物半導体は、InとMの原子数比率をInが25atomic%以上、Mが75atomic%未満、またはInが34atomic%以上、Mが66atomic%未満であるIn−M−Zn酸化物としてもよい。
また、酸化物半導体は、エネルギーギャップが大きい。酸化物半導体のエネルギーギャップは、2.7eV以上4.9eV以下、好ましくは3eV以上4.7eV以下、さらに好ましくは3.2eV以上4.4eV以下とする。
トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減し、高純度真性化することが有効である。なお、酸化物半導体において、主成分以外(1atomic%未満)の軽元素、半金族元素、金族元素などは不純物となる。例えば、水素、リチウム、炭素、窒素、フッ素、ナトリウム、シリコン、塩素、カリウム、カルシウム、チタン、鉄、ニッケル、銅、ゲルマニウム、ストロンチウム、ジルコニウムおよびハフニウムは酸化物中で不純物となる場合がある。従って、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。
例えば、酸化物半導体中にシリコンが含まれることで不純物準位を形成する場合がある。また、酸化物半導体の表層にシリコンがあることで不純物準位を形成する場合がある。そのため、酸化物半導体の内部、表層におけるシリコン濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)において、1×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは2×1018atoms/cm3未満とする。
また、酸化物半導体中で水素は、不純物準位を形成し、キャリア密度を増大させてしまう場合がある。そのため、酸化物半導体膜の水素濃度はSIMSにおいて、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm3以下とする。また、酸化物半導体中で窒素は、不純物準位を形成し、キャリア密度を増大させてしまう場合がある。そのため、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
酸化物半導体は、例えば非単結晶を有してもよい。非単結晶は、例えば、CAAC(C Axis Aligned Crystal)、多結晶、微結晶、非晶質部を有する。
酸化物半導体は、例えばCAACを有してもよい。なお、CAACを有する酸化物半導体を、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)と呼ぶ。
CAAC−OSは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像で、結晶部を確認することができる場合がある。CAAC−OSに含まれる結晶部は、例えば、TEMによる観察像で、一辺100nmの立方体内に収まる大きさであることが多い。また、CAAC−OSは、TEMによる観察像で、結晶部と結晶部との境界を明確に確認できない場合がある。また、CAAC−OSは、TEMによる観察像で、粒界(グレインバウンダリーともいう。)を明確に確認できない場合がある。CAAC−OSは、例えば、明確な粒界を有さないため、不純物が偏析することが少ない。また、CAAC−OSは、例えば、明確な粒界を有さないため、欠陥準位密度が高くなることが少ない。また、CAAC−OSは、例えば、明確な粒界を有さないため、電子移動度の低下が小さい。
CAAC−OSは、例えば、複数の結晶部を有し、当該複数の結晶部においてc軸が被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃っている場合がある。また、CAAC−OSは、例えば、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用い、out−of−plane法による分析を行うと、配向を示す2θが31°近傍のピークが現れる場合がある。また、CAAC−OSは、例えば、電子線回折像で、スポット(輝点)が観測される場合がある。なお、特に、ビーム径が10nmφ以下、または5nmφ以下の電子線を用いて得られる電子線回折像を、極微電子線回折像と呼ぶ。また、CAAC−OSは、例えば、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが揃っていない場合がある。CAAC−OSは、例えば、c軸配向し、a軸または/およびb軸はマクロに揃っていない場合がある。
CAAC−OSに含まれる結晶部は、例えば、c軸がCAAC−OSの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向になるように揃い、かつab面に垂直な方向から見て金属原子が三角形状または六角形状に配列し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、80°以上100°以下、好ましくは85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−10°以上10°以下、好ましくは−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
また、CAAC−OSは、例えば、欠陥準位密度を低減することで形成することができる。CAAC−OSを形成するためには、例えば、酸化物半導体に酸素欠損を生じさせないことが重要となる。従って、CAAC−OSは、欠陥準位密度の低い酸化物半導体である。または、CAAC−OSは、酸素欠損の少ない酸化物半導体である。
不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる場合がある。従って、当該酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない場合がある。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。従って、当該酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる場合がある。なお、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
また、高純度真性または実質的に高純度真性であるCAAC−OSを用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。
酸化物半導体は、例えば多結晶を有してもよい。なお、多結晶を有する酸化物半導体を、多結晶酸化物半導体と呼ぶ。多結晶酸化物半導体は複数の結晶粒を含む。
酸化物半導体は、例えば微結晶を有してもよい。なお、微結晶を有する酸化物半導体を、微結晶酸化物半導体と呼ぶ。
微結晶酸化物半導体は、例えば、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することができない場合がある。微結晶酸化物半導体に含まれる結晶部は、例えば、1nm以上100nm以下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、例えば、1nm以上10nm以下の微結晶をナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶ。ナノ結晶を有する酸化物半導体を、nc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)と呼ぶ。また、nc−OSは、例えば、TEMによる観察像では、結晶部と結晶部との境界を明確に確認できない場合がある。また、nc−OSは、例えば、TEMによる観察像では、明確な粒界を有さないため、不純物が偏析することが少ない。また、nc−OSは、例えば、明確な粒界を有さないため、欠陥準位密度が高くなることが少ない。また、nc−OSは、例えば、明確な粒界を有さないため、電子移動度の低下が小さい。
nc−OSは、例えば、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する場合がある。また、nc−OSは、例えば、結晶部と結晶部との間で規則性がないため、巨視的には原子配列に周期性が見られない場合、または長距離秩序が見られない場合がある。従って、nc−OSは、例えば、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。nc−OSは、例えば、XRD装置を用い、結晶部よりも大きいビーム径のX線でout−of−plane法による分析を行うと、配向を示すピークが検出されない場合がある。また、nc−OSは、例えば、結晶部よりも大きいビーム径(例えば、20nmφ以上、または50nmφ以上)の電子線を用いる電子線回折像では、ハローパターンが観測される場合がある。また、nc−OSは、例えば、結晶部と同じか結晶部より小さいビーム径(例えば、10nmφ以下、または5nmφ以下)の電子線を用いる極微電子線回折像では、スポットが観測される場合がある。また、nc−OSの極微電子線回折像は、例えば、円を描くように輝度の高い領域が観測される場合がある。また、nc−OSの極微電子線回折像は、例えば、当該領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
nc−OSは、微小な領域において原子配列に周期性を有する場合があるため、非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OSは、結晶部と結晶部との間で規則性がないため、CAAC−OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
なお、酸化物半導体が、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体、微結晶酸化物半導体、非晶質酸化物半導体の二種以上を有する混合膜であってもよい。混合膜は、例えば、非晶質酸化物半導体の領域、微結晶酸化物半導体の領域、多結晶酸化物半導体の領域、CAAC−OSの領域、のいずれか二種以上の領域を有する場合がある。また、混合膜は、例えば、非晶質酸化物半導体の領域、微結晶酸化物半導体の領域、多結晶酸化物半導体の領域、CAAC−OSの領域、のいずれか二種以上の領域の積層構造を有する場合がある。
酸化物半導体は、多層膜で構成されていてもよい。例えば、酸化物半導体層(S1)と、酸化物半導体層(S2)とが、この順番で形成された多層膜であってもよい。
このとき、例えば、酸化物半導体層(S2)の伝導帯下端のエネルギー(Ec)を、酸化物半導体層(S1)よりも低くする。具体的には、酸化物半導体層(S2)として、酸化物半導体層(S1)よりも電子親和力の0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さらに好ましくは0.15eV以上0.4eV以下大きい酸化物半導体を用いる。なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。
または、例えば、酸化物半導体層(S2)のエネルギーギャップを、酸化物半導体層(S1)よりも小さくする。なお、エネルギーギャップは、例えば、光学的な手法により導出することができる。具体的には、酸化物半導体層(S2)として、酸化物半導体層(S1)よりもエネルギーギャップの0.1eV以上1.2eV以下、好ましくは0.2eV以上0.8eV以下小さい酸化物半導体を用いる。
または、酸化物半導体は、例えば、酸化物半導体層(S1)と、酸化物半導体層(S2)と、酸化物半導体層(S3)とが、この順番で形成された多層膜であってもよい。
または、例えば、酸化物半導体層(S2)の伝導帯下端のエネルギー(Ec)を、酸化物半導体層(S1)および酸化物半導体層(S3)よりも低くする。具体的には、酸化物半導体層(S2)として、酸化物半導体層(S1)および酸化物半導体層(S3)よりも電子親和力の0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さらに好ましくは0.15eV以上0.4eV以下大きい酸化物半導体を用いる。
または、例えば、酸化物半導体層(S2)のエネルギーギャップを、酸化物半導体層(S1)および酸化物半導体層(S3)よりも小さくする。具体的には、酸化物半導体層(S2)として、酸化物半導体層(S1)および酸化物半導体層(S3)よりもエネルギーギャップの0.1eV以上1.2eV以下、好ましくは0.2eV以上0.8eV以下小さい酸化物半導体を用いる。
または、例えば、トランジスタのオン電流を高くするためには、酸化物半導体層(S3)の厚さは小さいほど好ましい。例えば、酸化物半導体層(S3)は、10nm未満、好ましくは5nm以下、さらに好ましくは3nm以下とする。一方、酸化物半導体層(S3)は、電流密度の高い酸化物半導体層(S2)へ、ゲート絶縁膜112を構成する元素(シリコンなど)が入り込まないようブロックする機能も有する。そのため、酸化物半導体層(S3)は、ある程度の厚さを有することが好ましい。例えば、酸化物半導体層(S3)の厚さは、0.3nm以上、好ましくは1nm以上、さらに好ましくは2nm以上とする。
また、酸化物半導体層(S1)は厚く、酸化物半導体層(S2)は薄く、酸化物半導体層(S3)は薄く設けられることが好ましい。具体的には、酸化物半導体層(S1)の厚さは、20nm以上、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上とする。酸化物半導体層(S1)の厚さを、20nm以上、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上とすることで、絶縁膜と酸化物半導体層(S1)との界面から電流密度の高い酸化物半導体層(S2)までを20nm以上、好ましくは30nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上離すことができる。ただし、半導体装置の生産性が低下する場合があるため、酸化物半導体層(S1)の厚さは、200nm以下、好ましくは120nm以下、さらに好ましくは80nm以下とする。また、酸化物半導体層(S2)の厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上80nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
例えば、酸化物半導体層(S1)の厚さは酸化物半導体層(S2)の厚さより厚く、酸化物半導体層(S2)の厚さは酸化物半導体層(S3)の厚さより厚くすればよい。
酸化物半導体膜106には、以上に示したような酸化物半導体を適用することができる。
図1に示すソース電極116aおよびドレイン電極116bは、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電膜を、単層で、または積層で用いればよい。好ましくは、ソース電極116aおよびドレイン電極116bは、銅を含む層を有する多層膜とする。ソース電極116aおよびドレイン電極116bを銅を含む層を有する多層膜とすることで、ソース電極116aおよびドレイン電極116bと同一層で配線を形成する場合、配線抵抗を低くすることができる。なお、ソース電極116aとドレイン電極116bは同一組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
ゲート絶縁膜112は、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を、単層で、または積層で用いればよい。
ゲート電極104は、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電膜を、単層で、または積層で用いればよい。
保護絶縁膜118は、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を、単層で、または積層で用いればよい。
<トランジスタ構造(1)の作製方法>
以下では、トランジスタ構造(1)の作製方法の一例について説明する。
図2は、図1(B)に対応する断面図である。
まず、基板100を準備する。
次に、下地絶縁膜102を形成する。下地絶縁膜102は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法またはパルスレーザ堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法を用いて形成すればよい。
次に、下地絶縁膜102側から電磁波150を照射する(図2(A)参照)。電磁波150としては、紫外線、好ましくはX線を用いる。紫外線としては、例えば、10nm以上280nm以下の紫外線を用いればよい。X線は、超軟X線、軟X線、X線および硬X線に分類される。電磁波150としては、硬X線を用いると、特に好ましい。また、X線の照射は、例えば、80keVなどのX線管を用いて行えばよい。このとき、電力、時間を調整し、X線量を10Gy以上2000Gy以下とすると好ましい。
下地絶縁膜102側から電磁波150を照射すると、基板100および下地絶縁膜102において、原子間の結合を弱める場合や、歪ませる場合や、切断する場合がある。そのため、基板100および下地絶縁膜102には、損傷領域152が形成される(図2(B)参照。)。損傷領域152に含まれる元素の一部は、ガスとなり放出しやすい状態となっている。例えば、基板100または/および下地絶縁膜102が酸化物を含む場合、酸化物を構成する酸素が、酸素原子を有するガスとなり、外部へ放出しやすくなる。
損傷領域152は、低エネルギーでも酸素原子を有するガスを放出することができる。例えば、100℃以上300℃以下、または150℃以上250℃以下の、比較的低い温度でも酸素原子を有するガスを放出することができる。そのため、当該トランジスタは、300℃以下または250℃以下程度の低温プロセスによっても、安定した電気特性を有するトランジスタが作製できる。
なお、図2では、下地絶縁膜102を形成した後で、電磁波150を照射しているが、この順番に限定されるものではない。例えば、下地絶縁膜102を形成する前に、基板100の表面側から電磁波150を照射しても構わない。また、電磁波150を複数回照射しても構わない。例えば、下地絶縁膜102を形成する前に、基板100の表面側から電磁波150を照射し、その後、下地絶縁膜102を形成した後で、再び下地絶縁膜102側から電磁波150を照射しても構わない。
また、図2では、下地絶縁膜102を設けた例について説明しているが、下地絶縁膜102を設けなくても構わない場合がある。
次に、酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜を形成する。酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて形成すればよい。
酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜として、In−M−Zn酸化物をスパッタリング法で成膜する場合、ターゲットの原子数比は、In:M:Znが3:1:1、3:1:2、3:1:4、1:1:0.5、1:1:1、1:1:2、1:3:1、1:3:2、1:3:4、1:3:6、1:6:2、1:6:4、1:6:6、1:6:8、1:6:10、1:9:2、1:9:4、1:9:6、1:9:8、1:9:10などとすればよい。元素Mは、例えば、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどである。
酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜をスパッタリング法で成膜する場合、酸素を含む雰囲気で成膜する。例えば、雰囲気全体に占める酸素の割合を、10volume%以上、好ましくは20volume%以上、さらに好ましくは50volume%以上、より好ましくは80volume%以上とする。特に、雰囲気全体に占める酸素の割合を、100volume%とすると好ましい。雰囲気全体に占める酸素の割合を、100volume%とすると、酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜に含まれる、希ガスなどの不純物濃度を低減することができる。
酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜をスパッタリング法で成膜する場合、ターゲットの原子数比からずれた原子数比の膜が形成される場合がある。例えば、亜鉛は、酸素を含む雰囲気で成膜すると、ターゲットの原子数比よりも膜の原子数比が小さくなりやすい場合がある。具体的には、ターゲットに含まれる亜鉛の原子数比の40atomic%以上90atomic%程度以下となる場合がある。また、例えば、インジウムは、酸素を含む雰囲気で成膜すると、ターゲットの原子数比よりも膜の原子数比が小さくなりやすい場合がある。
酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜を形成した後で、第1の加熱処理を行うと好ましい。第1の加熱処理は、70℃以上450℃以下、好ましくは100℃以上300℃以下、さらに好ましくは150℃以上250℃以下で行えばよい。第1の加熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1volume%以上もしくは10volume%以上含む雰囲気で行う。第1の加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、第1の加熱処理の雰囲気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを0.001volume%以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。第1の加熱処理によって、酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜から水素や水などの不純物を除去することができる。また、第1の加熱処理によって、酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜の高純度真性化ができる。
次に、酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜の一部をエッチングし、酸化物半導体膜106を形成する(図2(C)参照。)。
次に、ソース電極116aおよびドレイン電極116bとなる導電膜を形成する。ソース電極116aおよびドレイン電極116bとなる導電膜は、ソース電極116aおよびドレイン電極116bとして示した導電膜から選択して形成すればよい。ソース電極116aおよびドレイン電極116bとなる導電膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて形成すればよい。
次に、ソース電極116aおよびドレイン電極116bとなる導電膜の一部をエッチングし、ソース電極116aおよびドレイン電極116bを形成する(図2(D)参照。)。
次に、第2の加熱処理を行うと好ましい。第2の加熱処理は、第1の加熱処理で示した条件から選択して行えばよい。第2の加熱処理を行うことで、第1の加熱処理を行わなくてもよい場合がある。
次に、ゲート絶縁膜112を形成する。ゲート絶縁膜112は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて形成すればよい。
次に、ゲート電極104となる導電膜を形成する。ゲート電極104となる導電膜は、ゲート電極104として示した導電膜から選択して形成すればよい。ゲート電極104となる導電膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて形成すればよい。
次に、ゲート電極104となる導電膜の一部をエッチングし、ゲート電極104を形成する(図2(E)参照。)。
次に、保護絶縁膜118を形成する。保護絶縁膜118は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて形成すればよい。
次に、第3の加熱処理を行うと好ましい。第3の加熱処理は、第1の加熱処理で示した条件から選択して行うか、第1の加熱処理および第2の加熱処理よりも低温で行えばよい。
以上のようにして、図1に示したトランジスタを作製することができる。
<トランジスタ構造(2)>
次に、ボトムゲートトップコンタクト型のトランジスタの一例について説明する。
図3は、トランジスタの上面図および断面図である。図3(A)は、トランジスタの上面図を示す。図3(A)において、一点鎖線B1−B2に対応する断面図を図3(B)に示す。また、図3(A)において、一点鎖線B3−B4に対応する断面図を図3(C)に示す。
図3(B)に示すトランジスタは、基板200上のゲート電極204と、ゲート電極204上のゲート絶縁膜212と、ゲート絶縁膜212上の酸化物半導体膜206と、酸化物半導体膜206と接するソース電極216aおよびドレイン電極216bと、を有する。なお、好ましくは、酸化物半導体膜206上、ソース電極216a上およびドレイン電極216b上の保護絶縁膜218を設ける。なお、基板200上には下地絶縁膜を設けてもよい。基板200または/および下地絶縁膜は、損傷した領域である損傷領域252を有する。
なお、ゲート電極204は、図3(A)に示すように、上面図においてチャネル形成領域が内側に含まれるように設けられる。こうすることで、ゲート電極204側から光が入射した際に、チャネル形成領域中で光によってキャリアが生成されることを抑制することができる。即ち、ゲート電極204は遮光膜としての機能を有する。ただし、ゲート電極204の外側までチャネル形成領域が設けられても構わない。
基板200は、基板100の記載を参照する。
酸化物半導体膜206は、酸化物半導体膜106の記載を参照する。ただし、酸化物半導体膜206に多層膜を適用する場合、酸化物半導体膜106で例示した多層膜とは上下を入れ替えると好ましい。
保護絶縁膜218は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルを一種以上含む絶縁膜を、単層で、または積層で用いればよい。
保護絶縁膜218は、例えば、1層目を酸化シリコン層とし、2層目を窒化シリコン層とした多層膜とすればよい。この場合、酸化シリコン層は酸化窒化シリコン層でも構わない。また、窒化シリコン層は窒化酸化シリコン層でも構わない。酸化シリコン層は、欠陥密度の小さい酸化シリコン層を用いると好ましい。具体的には、電子スピン共鳴(ESR:Electron Spin Resonance)分析にてg値が2.001の信号に由来するスピンの密度が3×1017spins/cm3以下、好ましくは5×1016spins/cm3以下である酸化シリコン層を用いる。窒化シリコン層は水素ガスおよびアンモニアガスの放出量が少ない窒化シリコン層を用いる。水素ガス、アンモニアガスの放出量は、昇温脱離ガス分析(TDS:Thermal Desorption Spectrometry)にて測定すればよい。また、窒化シリコン層は、水素、水および酸素を透過しない、またはほとんど透過しない窒化シリコン層を用いる。
または、保護絶縁膜218は、例えば、1層目を第1の酸化シリコン層318aとし、2層目を第2の酸化シリコン層とし、3層目を窒化シリコン層とした多層膜とすればよい。この場合、第1の酸化シリコン層または/および第2の酸化シリコン層は酸化窒化シリコン層でも構わない。また、窒化シリコン層は窒化酸化シリコン層でも構わない。第1の酸化シリコン層は、欠陥密度の小さい酸化シリコン層を用いると好ましい。具体的には、ESR分析にてg値が2.001の信号に由来するスピンの密度が3×1017spins/cm3以下、好ましくは5×1016spins/cm3以下である酸化シリコン層を用いる。第2の酸化シリコン層は、過剰酸素を含む酸化シリコン層を用いる。窒化シリコン層は水素ガスおよびアンモニアガスの放出量が少ない窒化シリコン層を用いる。また、窒化シリコン層は、水素、水および酸素を透過しない、またはほとんど透過しない窒化シリコン層を用いる。
過剰酸素を含む絶縁膜は、酸化物半導体膜206中の酸素欠損量を低減することができる。
また、ゲート電極204は、ゲート電極104の記載を参照する。ゲート絶縁膜212は、ゲート絶縁膜112の記載を参照する。ソース電極216aおよびドレイン電極216bは、ソース電極116aおよびドレイン電極116bの記載を参照する。
<トランジスタ構造(2)の作製方法>
以下では、トランジスタ構造(2)の作製方法の一例について説明する。
図4は、図3(B)に対応する断面図である。
まず、基板200を準備する。
次に、基板200の表面側から電磁波250を照射する(図4(A)参照)。電磁波250については、電磁波150の記載を参照する。
基板200の表面側から電磁波250を照射すると、基板200において、原子間の結合を弱める場合や、歪ませる場合や、切断する場合がある。そのため、基板200には、損傷領域252が形成される(図4(B)参照。)。損傷領域252については、損傷領域152の記載を参照する。
なお、図4では、基板200の表面側から電磁波250を照射しているが、この順番に限定されるものではない。例えば、下地絶縁膜を形成し、下地絶縁膜側から電磁波250を照射しても構わない。また、電磁波250を複数回照射しても構わない。例えば、下地絶縁膜を形成する前に、基板200の表面側から電磁波250を照射し、その後、下地絶縁膜を形成した後で、再び下地絶縁膜側から電磁波250を照射しても構わない。
次に、ゲート電極204となる導電膜を形成する。ゲート電極204となる導電膜の形成方法は、ゲート電極104となる導電膜の記載を参照する。
次に、ゲート電極204となる導電膜の一部をエッチングし、ゲート電極204を形成する。
次に、ゲート絶縁膜212を形成する。ゲート絶縁膜212の形成方法は、ゲート絶縁膜112の形成方法を参照する。
ゲート絶縁膜212は、例えば、プラズマを用いたCVD法により形成すればよい。CVD法では、基板温度を高くするほど、緻密で欠陥密度の低い絶縁膜が得られる。ゲート絶縁膜212が緻密で欠陥密度が低いほどトランジスタの電気特性は安定となる。
次に、酸化物半導体膜206となる酸化物半導体膜を形成する。酸化物半導体膜206となる酸化物半導体膜の形成方法は、酸化物半導体膜106となる酸化物半導体膜の形成方法を参照する。
次に、第1の加熱処理を行うと好ましい。第1の加熱処理は、トランジスタ構造(1)の作製方法の記載を参照する。
次に、酸化物半導体膜206となる酸化物半導体膜の一部をエッチングし、酸化物半導体膜206を形成する(図4(C)参照。)。
次に、ソース電極216aおよびドレイン電極216bとなる導電膜を形成する。ソース電極216aおよびドレイン電極216bとなる導電膜の形成方法は、ソース電極116aおよびドレイン電極116bとなる導電膜の記載を参照する。
次に、ソース電極216aおよびドレイン電極216bとなる導電膜の一部をエッチングし、ソース電極216aおよびドレイン電極216bを形成する(図4(D)参照。)。
次に、第2の加熱処理を行うと好ましい。第2の加熱処理は、トランジスタ構造(1)の作製方法の記載を参照する。
次に、保護絶縁膜218を形成する。保護絶縁膜218の形成方法は、保護絶縁膜118の形成方法の記載を参照する。
次に、第3の加熱処理を行うと好ましい。第3の加熱処理は、トランジスタ構造(1)の作製方法の記載を参照する。
以上のようにして、図3に示したトランジスタを作製することができる。
<表示装置>
本項では、上述したトランジスタを適用した表示装置について説明する。
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう。)、発光素子(発光表示素子ともいう。)などを用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機ELなどを含む。また、電子インク、電気泳動素子など、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も表示素子として適用することができる。以下では、表示装置の一例としてEL素子を用いた表示装置および液晶素子を用いた表示装置について説明する。
なお、以下に示す表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むICなどを実装した状態にあるモジュールとを含む。
また、以下に示す表示装置は画像表示デバイス、表示デバイス、または光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPC、TCPが取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュールまたは表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
<EL表示装置>
まずはEL素子を用いた表示装置(EL表示装置ともいう。)について説明する。
図5は、EL表示装置の画素の回路図の一例である。
なお、本明細書等においては、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(容量素子、抵抗素子など)などが有するすべての端子について、その接続先を特定しなくても、当業者であれば、発明の一態様を構成することは可能な場合がある。つまり、接続先を特定しなくても、発明の一態様が明確であり、本明細書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。特に、端子の接続先が複数のケースが考えられる場合には、その端子の接続先を特定の箇所に限定する必要はない。従って、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(容量素子、抵抗素子など)などが有する一部の端子についてのみ、その接続先を特定することによって、発明の一態様を構成することが可能な場合がある。
なお、本明細書等においては、ある回路について、少なくとも接続先を特定すれば、当業者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。または、ある回路について、少なくとも機能を特定すれば、当業者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。つまり、機能を特定すれば、発明の一態様が明確であり、本明細書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。従って、ある回路について、機能を特定しなくても、接続先を特定すれば、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。または、ある回路について、接続先を特定しなくても、機能を特定すれば、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。
図5に示すEL表示装置は、スイッチ素子743と、トランジスタ741と、キャパシタ742と、発光素子719と、を有する。
なお、図5などは、回路構成の一例であるため、さらに、トランジスタを追加して設けることが可能である。逆に、図5の各ノードにおいて、追加してトランジスタ、スイッチ、受動素子などを設けないようにすることも可能である。例えば、nodeA、nodeB、nodeC、nodeD、nodeE、nodeF、または/および、nodeGにおいて、直接的に接続されたトランジスタを、これ以上は設けないようにすることが可能である。従って、例えば、nodeCにおいて、直接的に接続されているトランジスタはトランジスタ741のみであり、他のトランジスタはnodeCと直接的に接続されていない、というような構成にすることが可能である。
トランジスタ741のゲートはスイッチ素子743の一端およびキャパシタ742の一端と電気的に接続される。トランジスタ741のソースは発光素子719の一端と電気的に接続される。トランジスタ741のドレインはキャパシタ742の他端と電気的に接続され、電源電位VDDが与えられる。スイッチ素子743の他端は信号線744と電気的に接続される。発光素子719の他端は定電位が与えられる。なお、定電位は接地電位GNDまたはそれより小さい電位とする。
なお、トランジスタ741は、上述したトランジスタを用いる。当該トランジスタは、安定した電気特性を有する。そのため、表示品位の高いEL表示装置とすることができる。
スイッチ素子743としては、トランジスタを用いると好ましい。トランジスタを用いることで、画素の面積を小さくでき、解像度の高いEL表示装置とすることができる。また、スイッチ素子743として、上述したトランジスタを用いてもよい。スイッチ素子743として当該トランジスタを用いることで、トランジスタ741と同一工程によってスイッチ素子743を作製することができ、EL表示装置の生産性を高めることができる。
図5(B)は、EL表示装置の上面図である。EL表示装置は、基板200と、基板700と、シール材734と、駆動回路735と、駆動回路736と、画素737と、FPC732と、を有する。シール材734は、画素737、駆動回路735および駆動回路736を囲むように基板200と基板700との間に設けられる。なお、駆動回路735または/および駆動回路736をシール材734の外側に設けても構わない。
図5(C)は、図5(B)の一点鎖線M−Nに対応するEL表示装置の断面図である。FPC732は、端子731を介して配線733aと接続される。なお、配線733aは、ゲート電極204と同一層である。
なお、図5(C)は、トランジスタ741とキャパシタ742とが、同一平面に設けられた例を示す。このような構造とすることで、キャパシタ742をトランジスタ741のゲート電極、ゲート絶縁膜およびソース電極(ドレイン電極)と同一平面に作製することができる。このように、トランジスタ741とキャパシタ742とを同一平面に設けることにより、EL表示装置の作製工程を短縮化し、生産性を高めることができる。
図5(C)では、トランジスタ741として、図3に示したトランジスタと同様の構造のトランジスタを適用した例を示す。
図3(C)に示したトランジスタは、しきい値電圧の変化の小さいトランジスタである。従って、僅かなしきい値電圧の変化によっても階調ずれの生じる場合がある、EL表示装置に好適なトランジスタである。
トランジスタ741およびキャパシタ742上には、絶縁膜720が設けられる。ここで、絶縁膜720および保護絶縁膜218には、トランジスタ741のソース電極216aに達する開口部が設けられる。
絶縁膜720上には、電極781が設けられる。電極781は、絶縁膜720および保護絶縁膜218に設けられた開口部を介してトランジスタ741のソース電極216aと接する。
電極781上には、電極781に達する開口部を有する隔壁784が設けられる。隔壁784上には、隔壁784に設けられた開口部で電極781と接する発光層782が設けられる。発光層782上には、電極783が設けられる。電極781、発光層782および電極783の重なる領域が、発光素子719となる。
<液晶表示装置>
次に、液晶素子を用いた表示装置(液晶表示装置ともいう。)について説明する。
図6は、液晶表示装置の画素の構成例を示す回路図である。図6に示す画素750は、トランジスタ751と、キャパシタ752と、一対の電極間に液晶の充填された素子(以下液晶素子ともいう)753とを有する。
トランジスタ751では、ソースおよびドレインの一方が信号線755に電気的に接続され、ゲートが走査線754に電気的に接続されている。
キャパシタ752では、一方の電極がトランジスタ751のソースおよびドレインの他方に電気的に接続され、他方の電極が共通電位を供給する配線に電気的に接続されている。
液晶素子753では、一方の電極がトランジスタ751のソースおよびドレインの他方に電気的に接続され、他方の電極が共通電位を供給する配線に電気的に接続されている。なお、上述のキャパシタ752の他方の電極が電気的に接続する配線に与えられる共通電位と、液晶素子753の他方の電極に与えられる共通電位とが異なる電位であってもよい。
なお、液晶表示装置も、上面図はEL表示装置と概略同様である。図5(B)の一点鎖線M−Nに対応する液晶表示装置の断面図を図6(B)に示す。図6(B)において、FPC732は、端子731を介して配線733aと接続される。なお、配線733aは、ゲート電極204と同一層である。
図6(B)には、トランジスタ751とキャパシタ752とが、同一平面に設けられた例を示す。このような構造とすることで、キャパシタ752をトランジスタ751のゲート電極、ゲート絶縁膜およびソース電極(ドレイン電極)と同一平面に作製することができる。このように、トランジスタ751とキャパシタ752とを同一平面に設けることにより、液晶表示装置の作製工程を短縮化し、生産性を高めることができる。
トランジスタ751としては、上述したトランジスタを適用することができる。図6(A)においては、図3に示したトランジスタと同様の構造のトランジスタを適用した例を示す。
なお、トランジスタ751は極めてオフ電流の小さいトランジスタとすることができる。従って、キャパシタ752に保持された電荷がリークしにくく、長期間に渡って液晶素子753に印加される電圧を維持することができる。そのため、動きの少ない動画や静止画の表示の際に、トランジスタ751をオフ状態とすることで、トランジスタ751の動作のための電力が不要となり、消費電力の小さい液晶表示装置とすることができる。
トランジスタ751およびキャパシタ752上には、絶縁膜721が設けられる。ここで、絶縁膜721および保護絶縁膜218には、トランジスタ751のドレイン電極216bに達する開口部が設けられる。
絶縁膜721上には、電極791が設けられる。電極791は、絶縁膜721および保護絶縁膜218に設けられた開口部を介してトランジスタ751のドレイン電極216bと接する。
電極791上には、配向膜として機能する絶縁膜792が設けられる。絶縁膜792上には、液晶層793が設けられる。液晶層793上には、配向膜として機能する絶縁膜794が設けられる。絶縁膜794上には、スペーサ795が設けられる。スペーサ795および絶縁膜794上には、電極796が設けられる。電極796上には、基板797が設けられる。
本実施例では、石英基板にX線を照射し、ESR分析を行った例を示す。
本実施例では、X線照射による条件を変えた計4試料に対し、ESR分析によるスピン状態の評価を行った。試料としては、厚さが0.5mmの石英基板を準備し、X線量が0Gy(比較例試料1、X線照射なし)、100Gy(実施例試料1)、500Gy(実施例試料2)または1000Gy(実施例試料3)となるようX線照射したものを準備した。
X線量が100Gyとなる実施例試料1では、50mm離れた位置から、80keVのX線管を用い、1mWにて、4100秒間、X線照射を行った。また、X線量が500Gyとなる実施例試料2では、50mm離れた位置から、80keVのX線管を用い、1mWにて、20500秒間、X線照射を行った。また、X線量が1000Gyとなる実施例試料3では、50mm離れた位置から、X線管電圧80keV、1mWにて、41000秒間、X線照射を行った。
次に、準備した試料のESR分析によるスピン状態の評価を行った。ESR分析は、室温(25℃)にて、磁場の向きを試料面と平行とし、マイクロ波パワーを0.005mWとして行った。なお、この条件におけるスピン数の検出下限は4.4×1011個である。
次に、各試料に対して熱処理を行った後、再び、ESR分析によるスピン状態の評価を行った。熱処理は、窒素雰囲気において、250℃で1時間行った。
結果を図7に示す。図7の上段はESR分析によって得られる信号を示す。ここで、g値が2.000に現れる対称性を有する信号は、E´センターと呼ばれる欠陥を示す。E´センターを示す信号のフィッティングカーブを太線で示す。当該フィッティングカーブから、E´センターのスピン数を見積もった結果を図7の下段に示す。なお、図7の左列は熱処理前の試料の結果を示し、右列は熱処理後の試料の結果を示す。
図7より、E´センターのスピン数は、X線量とともに増加していくことがわかった。即ち、X線を照射することにより、石英基板に含まれるSi−O結合が切れ、E´センターが形成されたことがわかる。
また、図7より、E´センターのスピン数は、熱処理によって低減することがわかった。
本実施例では、石英基板と、石英基板上に設けられた絶縁膜を有する試料にX線を照射し、ESR分析を行った例を示す。
本実施例では、X線照射による条件を変えた計4試料に対し、ESR分析によるスピン状態の評価を行った。試料としては、厚さが0.5mmの石英基板上に厚さが400nmの窒化シリコン膜と、その上に設けられた厚さが50nmの酸化窒化シリコン膜を形成し、X線量が0Gy(比較例試料2、X線照射なし)、100Gy(実施例試料4)、500Gy(実施例試料5)または1000Gy(実施例試料6)となるようX線照射したものを準備した。
X線量が100Gyとなる実施例試料4では、50mm離れた位置から、80keVのX線管を用い、1mWにて、4100秒間、X線照射を行った。また、X線量が500Gyとなる実施例試料5では、50mm離れた位置から、80keVのX線管を用い、1mWにて、20500秒間、X線照射を行った。また、X線量が1000Gyとなる実施例試料6では、50mm離れた位置から、80keVのX線管を用い、1mWにて、41000秒間、X線照射を行った。
次に、準備した試料のESR分析によるスピン状態の評価を行った。ESR分析は、室温(25℃)にて、磁場の向きを試料面と平行とし、マイクロ波パワーを0.005mWとして行った。なお、この条件におけるスピン数の検出下限は4.4×1011個である。
結果を図8に示す。図8の上段はESR分析によって得られる信号を示す。ここで、g値が2.000に現れる対称性を有する信号は、E´センターと呼ばれる欠陥を示す。E´センターを示す信号のフィッティングカーブを太線で示す。当該フィッティングカーブから、E´センターのスピン数を見積もった結果を図8の下段に示す。
図8より、E´センターのスピン数は、X線量とともに増加していくことがわかった。即ち、X線を照射することにより、石英基板や絶縁膜に含まれるSi−O結合が切れ、E´センターが形成されたことがわかる。
本実施例では、石英基板と、石英基板上に設けられた酸化窒化シリコン膜を有する試料にX線を照射し、TDSを行った例を示す。
本実施例では、X線照射による条件を変えた試料に対し、TDSを行った。試料としては、厚さが0.5mmの石英基板上に厚さが400nmの窒化シリコン膜と、その上に設けられた厚さが50nmの酸化窒化シリコン膜を形成し、X線量が0Gy(比較例試料3、X線照射なし)または1000Gy(実施例試料7)となるようX線照射したものを準備した。
X線量が1000Gyとなる実施例試料7では、50mm離れた位置から、80keVのX線管を用い、1mWにて、41000秒間、X線照射を行った。
次に、準備した試料のTDSを行った。TDSでは、質量電荷比(M/z)が2(H2に相当)、16(Oに相当)、17(OHまたはNH3に相当)、18(H2Oに相当)、32(O2に相当)、44(N2OまたはCO2に相当)の測定を行った。結果を図9に示す。
比較例試料3(initial)と比べて、実施例試料7(1000Gy)は、酸素原子を有するガスの放出量が増加することがわかった。実施例1および実施例2のESR分析結果を勘案すると、X線によりSi−Oの結合が切れることにより、酸素原子を有するガスの放出量が増加した可能性がある。また、比較例試料3(initial)と比べて、実施例試料7(1000Gy)は、水素ガスの放出量が少ないことがわかった。
従って、実施例試料7上に(または実施例試料7を一部に含んで)酸化物半導体を用いたトランジスタを作製することで、酸化物半導体の酸素欠損量の低減されたトランジスタとすることができることが示唆された。