JP6087287B2 - タンパク質の精製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タンパク質吸着能を有する高分子で基材表面が被覆された多孔膜によるタンパク質の精製方法に関する。
近年、バイオテクノロジー産業において、タンパク質を効率的に大量産生及び大量精製することができる技術の確立が望まれている。
一般的に、タンパク質は、動物由来の細胞株や大腸菌などの菌体を使用した培養によって産生されるので、目的とするタンパク質(以下、「目的タンパク質」と記載する場合がある。)を培養液から分離し、かつ精製する必要がある。特に抗体を利用した医薬品(抗体医薬品)を実用化するためには、細胞デブリなどの濁質成分、及び細胞由来の溶存するタンパク質などの非濁質成分を細胞培養液から除去し、人間の治療用途にとって十分な純度にまで精製する必要がある。該精製工程において、タンパク質吸着多孔膜又はビーズ(粒子状の吸着材)などのタンパク質吸着材が用いられる。
このようなタンパク質吸着材として、特許文献1乃至5及び非特許文献1に記載されるようなタンパク質吸着多孔膜が挙げられる。
最近、抗体医薬品への需要が急速に増加しており、抗体医薬品となるタンパク質の大量産生が指向されている。そして、培養技術の急速な進歩に伴い、精製工程の能力向上も課題となっており、特に、高流速処理が可能であるタンパク質吸着多孔膜の能力向上に期待が寄せられている。
国際公開第2009/054226号 特開2009−53191号公報 特表2006−519273号公報 米国特許第6780327号明細書 米国特許第5547575号明細書
Kyoichi Saito,CHARGED POLYPER BRUSH GRAFTED ONTO POROUS HOLLOW−FIBER MEMBRANE IMPROVES SEPARATION AND REACTION IN BIOTECNOLOGY,Separation Science and Technology,ENGLAND,Taylar & Francis,2002,37(3),535−554
一般的に、タンパク質吸着多孔膜は、吸着対象となるタンパク質を含有する原液(以下、「原液」と記載する場合がある。)をタンパク質吸着多孔膜に通液し、タンパク質を吸着させた後、吸着したタンパク質(以下、「被吸着タンパク質」と記載する場合がある。)を溶出させ、精製の目的を果たすと廃棄される。しかし精製工程の能力向上を目的として、繰り返し使用の要求がある。
従来技術の処理によってタンパク質吸着多孔膜を再生させ、使用を繰り返していくと、徐々に吸着能力が低下していく傾向がある。
また、上述したように、近年は大量生産、大量精製の需要から、タンパク質吸着多孔膜の吸着能力をより大きくすることが望まれている。吸着能力を大きくする方法として、限られた膜の細孔表面にタンパク質を多層に吸着させる方法が有効であるが、より多くのタンパク質を限られた膜の細孔表面に多層に吸着させればさせるほど、タンパク質吸着多孔膜を再生させ、使用を繰り返す際の吸着能力が低下するという課題がより顕著になる。
吸着能力の低下の原因の一つは、全ての被吸着タンパク質が完全には溶出されないことである。そこで、被吸着タンパク質の溶出効率を上げることができれば、タンパク質吸着多孔膜を再生し、繰返し使用することによる吸着能力の低下を抑制することが可能となる。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、少なくとも1種の溶出液を、吸着工程における吸着対象タンパク質を含有する原液の通液方向とは反対方向に通液することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。加えて、本発明者らは、多層にタンパク質を吸着するタンパク質吸着多孔膜で、上記手段がより効果的に作用することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
タンパク質吸着能を有する高分子で基材表面が被覆された多孔膜によるタンパク質の精製方法であって、
前記多孔膜に吸着対象タンパク質を含有する原液を通液させ、該吸着対象タンパク質を前記高分子に吸着させる吸着工程と、
前記多孔膜に溶出液を通液させ、前記高分子に吸着された前記吸着対象タンパク質を該溶出液へ溶出させる溶出工程とを含み、
前記溶出工程において、少なくとも1種の溶出液を、前記吸着工程における前記原液の通液方向とは反対方向に通液する、タンパク質の精製方法。
[2]
前記溶出液が、塩を含む水溶液、pHが調整された水溶液、水、有機溶剤、及びこれらの混合溶液からなる群から選ばれる、[1]に記載のタンパク質の精製方法。
[3]
前記溶出工程において、前記吸着工程における前記原液の通液方向の順方向及び反対方向に前記溶出液を通液する、[1]又は[2]に記載のタンパク質の精製方法。
[4]
前記高分子が前記基材表面にグラフトされ、かつ、前記高分子のグラフト率が5%以上200%以下である、[1]乃至[3]のいずれかに記載のタンパク質の精製方法。
[5]
前記高分子のグラフト率が30%以上90%以下である、[4]に記載のタンパク質の精製方法。
[6]
前記多孔膜がイオン交換膜であり、かつ、前記溶出液が塩を含む水溶液又はpHが調整された水溶液を含む、[1]乃至[5]のいずれかに記載のタンパク質の精製方法。
[7]
前記多孔膜の多層度が1.1以上である、[1]乃至[6]のいずれかに記載のタンパク質の精製方法。
[8]
前記多孔膜が、弱塩基性陰イオン交換膜又は弱酸性陽イオン交換膜であり、かつ、
前記溶出工程が、
前記吸着対象タンパク質の等電点と前記多孔膜の等電点の間以外にpHが調整された水溶液を通液する工程、及び、
塩を含む水溶液を通液する工程、を含み、
いずれかの工程において、前記吸着工程における前記原液の通液方向とは反対方向に通液する、[6]又は[7]に記載のタンパク質の精製方法。
[9]
pHが調整された水溶液を通液する前記工程、及び、塩を含む水溶液を通液する前記工程において、前記吸着工程における前記原液の通液方向の反対方向に通液する、[8]に記載のタンパク質の精製方法。
[10]
前記多孔膜が、弱塩基性陰イオン交換膜又は弱酸性陽イオン交換膜であり、かつ、
前記溶出工程が、
塩を含む水溶液を通液する第一の工程、
前記吸着対象タンパク質の等電点と前記多孔膜の等電点の間以外にpHが調整された水溶液を通液する第二の工程、及び、
塩を含む水溶液を通液する第三の工程、を含み、
前記第一の工程において、前記吸着工程における前記原液の通液方向の順方向に通液し、
前記第二の工程及び前記第三の工程において、吸着工程における前記原液の通液方向の反対方向に通液する、[6]又は[7]に記載のタンパク質の精製方法。
[11]
前記溶出液が前記吸着対象タンパク質の安定pHで調整される、[1]乃至[10]のいずれかに記載のタンパク質の精製方法。
[12]
前記溶出液が0.3mol/L以上の中性塩を含む水溶液である、[1]乃至[11]のいずれかに記載のタンパク質の精製方法。
[13]
前記多孔膜が、液体又は蒸気により湿潤化した状態で50〜110℃に加熱する処理を行って製造される、[1]乃至[12]のいずれかに記載のタンパク質の精製方法。
本発明によれば、タンパク質吸着多孔膜を用いたタンパク質の精製方法において、タンパク質の吸着能力の低下を抑制する、被吸着タンパク質の溶出方法を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態のタンパク質の精製方法は、吸着工程と、溶出工程とを含み、溶出工程において、少なくとも1種の溶出液を、吸着工程における吸着対象タンパク質を含有する原液の通液方向とは反対方向に通液する方法である。
本実施形態において用いられる多孔膜は、基材と、該基材の表面に被覆されたタンパク質吸着能を有する高分子と、を含む膜であり、「タンパク質吸着多孔膜」と記載する場合がある。
なお、本実施形態においては、「タンパク質吸着多孔膜」とは、モノリスと呼ばれる、中空部を1本あるいは複数本有する円筒状の多孔質焼結体に、タンパク質吸着能を有する高分子が被覆された形態をも含む概念として用いている。したがって、本実施形態においては、「タンパク質吸着能を有する高分子で基材表面が被覆された多孔膜」とは、タンパク質吸着能を有する高分子で表面が被覆された、モノリス(中空円筒状の多孔質焼結体)をも包含する。
本実施形態においては、「タンパク質吸着多孔膜」との記載による例示により、かかる高分子で被覆されたモノリス(中空円筒状の多孔質焼結体)についてもその要旨の範囲内に包含する。
本実施形態において、タンパク質吸着多孔膜に吸着対象タンパク質を含有する原液を通液することによって、吸着対象タンパク質がタンパク質吸着多孔膜に吸着する。吸着対象タンパク質を含有する原液とは、タンパク質吸着多孔膜に吸着するタンパク質を含む溶液であり、該膜を通過する前の溶液を意味する。
本実施形態においては、該膜を通過した後の溶液は「透過液」と記載する。
通常、医薬品を製造する際の実製造ラインでは、原液には、目的タンパク質の他に、不用なタンパク質、菌体、ウイルス、濁質成分などが含まれる。前処理によって、原液から濁質成分かつ/または菌体が除かれる場合もある。本実施形態においては、目的タンパク質を吸着対象としてタンパク質吸着多孔膜に吸着させ、その他の成分を透過させたのち、目的タンパク質のみを溶出させて回収する精製方法であってもよく、その他のタンパク質(例えば不用なタンパク質)を吸着対象として吸着させ、目的タンパク質を透過させて回収する精製方法であってもよい。すなわち、「吸着対象タンパク質」とは、タンパク質吸着多孔膜に吸着するタンパク質であり、目的タンパク質に限定されるものではない。精製方法に応じて、目的タンパク質でもよく、不用なタンパク質でもよい。また、原液に含まれる吸着対象タンパク質は1種であってもよく、またそれ以上であってもよい。
本実施形態において、「吸着」とは、タンパク質がタンパク質吸着多孔膜の細孔表面との相互作用によってくっつくことを意味し、ただ単に接触しているだけの「付着」とは区別する。
本実施形態において、タンパク質吸着多孔膜に、吸着対象タンパク質を含有する原液を通液して、吸着対象タンパク質を吸着させる工程を、「吸着工程」と記載する場合がある。
続いて、タンパク質吸着多孔膜に「付着」する成分(すなわち、吸着対象ではないタンパク質(非吸着タンパク質)や濁質成分)を洗い流す工程が行われることがある。この工程を「洗浄工程」と記載し、後述の「溶出工程」とは区別する。洗浄工程によって、タンパク質吸着多孔膜表面には、「吸着」したタンパク質が存在する。
最後に、タンパク質吸着多孔膜に吸着される被吸着タンパク質は、溶出液によりタンパク質吸着多孔膜より溶出され回収される。ここでいう溶出液とは、被吸着タンパク質を溶出させるための液であり、タンパク質吸着多孔膜を通過して出てきた溶液の意味では用いていない。
本実施形態において、タンパク質吸着多孔膜に、溶出液を通液して、被吸着タンパク質をタンパク質吸着多孔膜から溶出させる工程を、「溶出工程」と記載する場合がある。
本実施形態においては、溶出工程とは、タンパク質吸着多孔膜から被吸着タンパク質が溶出されるだけではなく、タンパク質吸着多孔膜を再生するために、溶出液を通液する工程であってもよい。すなわち、溶出工程における、被吸着タンパク質の溶出液における含有量は特に問題とされない。
溶出工程において、少なくとも1種の溶出液を、吸着工程における原液の通液方向とは反対方向に通液することにより、タンパク質を精製し、タンパク質吸着多孔膜を再生することができる。
本実施形態においては、タンパク質吸着能を有する高分子で基材表面が被覆された多孔膜によるタンパク質の精製方法において、タンパク質の吸着能力の低下を抑制する、被吸着タンパク質の溶出方法を提供するだけではなく、被吸着タンパク質の溶出は、タンパク質吸着多孔膜の再生処理の一部であるので、タンパク質吸着多孔膜の再生方法を提供することができると言い換えることもできる。
本実施形態のタンパク質の精製方法におけるメカニズムの詳細は不明であるが、以下のように考察することができる。
通常、溶出工程において、溶出液は、吸着工程における原液の通液方向に順方向で通液される。
以下の理論に拘泥されるものではないが、本実施形態におけるように、少なくとも1回は、溶出液の流れ方向を、原液の通液方向とは反対方向に変えて通液することによって、タンパク質吸着多孔膜における基材の表面に導入されたタンパク質吸着能を有する高分子鎖が、揺り動かされる効果により、被吸着タンパク質を溶出することができると考えられる。すなわち、タンパク質は隣接する高分子鎖の間に入り込むように、多層に積み重なって吸着されることがあり、奥深くに潜りこんだタンパク質は、溶出されにくい。高分子鎖は吸着工程において、原液の流れ方向にたなびいていると考えられる。したがって、溶出工程において原液の流れ方向とは反対方向に溶出液を流すことで、高分子鎖が逆撫でされ、奥深くに潜りこんだタンパク質が効率的に溶出されるので、繰り返し使用する際に吸着能力の低下が抑制された膜として、タンパク質吸着多孔膜を再生することができると考えられる。
タンパク質吸着材として、タンパク質吸着多孔膜の他にもタンパク質吸着ビーズを用いてたんぱく質の精製が行われることがある。タンパク質吸着ビーズを用いる場合、筒状のケース(カラム)に、タンパク質吸着ビーズが充填された状態でタンパク質の精製が行われる。再生方法として、ケースに対して原液の通液方向とは、反対向きに液を流すことがあるが、濁質の除去や圧密化されたビーズを解きほぐす目的で行われる。ケースに対して反対向きに液を流しても、各ビーズ粒子の表面の液の流れを制御することが困難であるし、ビーズ表面から内部へとつながる細孔部内のタンパク質の移動は拡散が律速となるため、ケースに対しての液の流れの向きは溶出に影響せず、本実施形態はタンパク質吸着多孔膜に対して特に有効な再生方法であるといえる。
タンパク質吸着多孔膜の形状としては、平膜、中空糸膜などが挙げられる。
平膜とは、シート状の膜であり、シートの表面と裏面とが、貫通孔である細孔によって連続しているものを意味する。
中空糸膜とは、中空部分を有する円筒状又は繊維状の膜であり、中空糸膜の中空側(内側)と外側とが貫通孔である細孔によって連続しているものを意味する。
タンパク質吸着多孔膜の形状は、貫通孔によって、表面から裏面又は裏面から表面に、また、内側から外側又は外側から内側に、液体又は気体が透過することが可能であれば、特に限定されない。
通常、タンパク質吸着多孔膜は、膜のみでは有効に使用できず、通液を行うためにモジュールと呼ばれる梱包容器に収納された状態で使用するが、モジュール成型した際の流路構造が単純で、吸着工程における原液の通液方向とは反対方向への通液が容易となることから中空糸膜が好ましい。モジュール構造はそれぞれのタンパク質吸着多孔膜の形状に対応する公知の構造であればよく、本実施形態において特に限定されるものではない。
本実施形態において、タンパク質吸着多孔膜の寸法は、モジュール設計、膜の製造方法、使用用途に応じて、自由に選択可能である。例えば、平膜であれば、モジュールに成型可能であり、通液が可能であれば、シートの厚み、大きさを自由に設計可能である。中空糸膜又はモノリスであれば、外径及び内径は物理的に多孔膜が形状を保持することができれば、自由に寸法を設計可能である。
本実施形態において、タンパク質吸着多孔膜の基材として、タンパク質の精製において用いられる接触する液に対して耐性があれば、公知技術の素材を用いることができる。
例えば、高分子材料、無機材料、及び有機無機ハイブリット材料などがあげられるが、成形性の観点から高分子材料を用いた高分子基材が好ましい。
高分子基材を用いる場合は、機械的性質保持の観点から、高分子基材は、ポリオレフィン系重合体から構成されていることが好ましい。
ポリオレフィン系重合体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィンの単独重合体、該オレフィンの2種以上の共重合体などが挙げられる。
溶出液としてアルカリ性溶液が用いられる場合は、これらの中でも、機械的強度が特に優れ、アルカリ耐性があるポリエチレンがより好ましい。
高分子基材は、熱誘起相分離法、非溶媒相分離法、電子線照射法などの公知技術により多孔膜として製造することができる。
熱誘起相分離法は、ポリオレフィン系重合体などの高分子の溶液を高温で溶解し、その後冷却する方法である。冷却過程において、高分子溶液が、高分子と溶媒とに網目状に相分離するので、冷却後に溶媒を除去すると多孔膜が得られる。細孔径分布の小さい多孔膜が得られることが特徴である。
非溶媒相分離法は、高分子溶液を非溶媒中に浸漬する方法である。非溶媒が高分子溶液に浸透することで、高分子の溶解度が低下し、高分子が網目状に析出し、多孔膜が得られる。細孔径の傾斜が付いた多孔膜が得られることが特徴である。
電子線照射法は、膜状にした高分子に電子線を照射し、複数の貫通孔を作り、多孔膜を得る方法である。均一な細孔径の多孔膜が得られる。
本実施形態では、これらの方法から作製するタンパク質吸着多孔膜の設計に応じて適当なものを選ぶことができる。
本実施形態における、基材の平均細孔径は、吸着対象タンパク質の種類、混在する濁質成分、溶液の粘度などを勘案し、プロセスに必要な分離・精製度及び通液速度が達成可能であれば特に限定されない。濁質成分を除去可能なように平均細孔径の上限が設計され、所望の通液速度を達成可能なように平均細孔径の下限が設計されるが、該平均細孔径は、好ましくは0.001μm〜10μmであり、より好ましくは0.01μm〜10μmであり、さらに好ましくは0.1μm〜1μmである。
基材中の細孔の占める体積比率である空孔率は、タンパク質吸着多孔膜の形状を保持しかつ通液速度が達成可能な範囲であれば特に限定されない。形状保持が可能なように空孔率の上限が設計され、所望の通液速度を達成可能なように平均細孔径の下限が設計されるが、該空孔率は、好ましくは5%〜99%であり、より好ましくは10%〜95%であり、実用上、さらに好ましくは30〜90%である。
平均細孔径及び空孔率の測定は、例えば、Marcel Mulder著「膜技術」(株式会社アイピーシー)に記載されているような、当業者にとって通常の方法により行うことができる。測定法の具体例としては、電子顕微鏡による観察、バブルポイント法、水銀圧入法、透過率法などが挙げられる。
本実施形態において、基材の表面は、好ましくは、細孔の少なくとも一部は、タンパク質吸着能を有する高分子で被覆されている。
高分子としては、例えば、直鎖状高分子、架橋型の高分子などが挙げられる。反対向きの溶出液の流れが、高分子鎖の間に入り込んだタンパク質を効率的に溶出させることが可能であることから、直鎖状高分子が好ましい。
タンパク質吸着多孔膜は、基材表面を被覆する高分子の官能基によって、イオン交換膜、群特異アフィニティ吸着膜、個別特異アフィニティ吸着膜、疎水性相互作用吸着膜に分類される。イオン交換膜は、強酸性陽イオン交換膜、弱酸性陽イオン交換膜、強塩基性陰イオン交換膜、及び弱塩基性陰イオン交換膜に細分類される。
本実施形態において、これらの官能基は、被吸着タンパク質の種類、好ましくは、目的タンパク質の種類、要求する精製度などに応じて適当なものを選ぶことができる。
強酸性陽イオン交換膜の官能基として、例えば、スルホン酸基(−SO )などが挙げられ、弱酸性陽イオン交換膜の官能基として、例えば、カルボン酸基(−COO)などが挙げられる。
強塩基性陰イオン交換膜の官能基としては、例えば、四級アンモニウム基(Q、−N)、四級アミノエチル基(QAE、−(CH−N)などが挙げられる。ここで、Rは特に限定されず、同一のNに結合するRが同一又は異なっていてもよく、好ましくは、アルキル基、アリール基などの炭化水素基を表す。より具体的には、トリメチルアミノ基(TMA、−NMe)などが挙げられる。
弱塩基性陰イオン交換膜の官能基としては、例えば、1級アミノ基(−NH)、2級アミノ基(−NHR)、3級アミノ基(−NR)などが挙げられ、具体的には、ジエチルアミノエチル基(DEAE、−(CH−NEt)、ジエチルアミノプロピル基(DEAP、−(CH−NEt)などが挙げられる。ここでも、Rは特に限定されず、同一のNに結合するRが同一又は異なっていてもよく、好ましくは、アルキル基、アリール基などの炭化水素基を表す。
群特異性アフィニティ吸着膜の官能基としては、例えば、Cibacron Blue F3G−A、Protein A、コンカナバリンA、ヘパリン、タンニン、金属キレート基などが挙げられる。
個別特異型アフィニティ吸着膜の官能基としては、例えば、抗原、抗体類などが挙げられる。
疎水性相互作用吸着膜の官能基として、例えば、アルキル基や芳香族系官能基が挙げられる。アルキル基は、より疎水性の相互作用を高め、吸着能力を上げる観点から炭素原子4つ以上であることが好ましい。
本実施形態において、基材表面を被覆するタンパク質吸着能を有する高分子を基材表面に導入する方法については、例えば、化学反応又は高分子塗布などが挙げられる。本実施形態では、基材の材質、タンパク質吸着多孔膜の使用用途、製造方法などの観点から最適な方法を選ぶことができ、モノリスと呼ばれる多孔質焼結体にも適用可能である。
化学反応によって、タンパク質吸着能を有する高分子で基材表面を被覆する方法としては、例えば、放射線グラフト重合法などが挙げられる。放射線グラフト重合法は、基材にγ線などの放射線を照射し、基材表面を活性化させてモノマーを重合させる方法である。後述する高分子塗布による被覆方法と比べて、基材と基材表面を被覆する高分子との強固な結合が期待できる。さらに、重合開始剤等の試薬が不要なことから、反応後にそれらの試薬を洗浄する負荷を軽減することができる観点から、好ましく用いられる。
放射線グラフト重合法には、(1)タンパク質吸着能を有する官能基を有するモノマーを直接基材にグラフト重合させる方法、又は、(2)タンパク質吸着能を有する官能基を導入可能な官能基を含むモノマーを基材にグラフト重合し、続いて、タンパク質吸着能を有する官能基を導入する方法があるが、いずれも採用することができる。
本実施形態において、グラフト重合によって導入された高分子を「グラフト鎖」と呼ぶ場合がある。
上記(1)として示す方法は、一段階の反応でタンパク吸着能を有する高分子の被覆層が得られることから、簡便で好ましい方法である。
(1)の方法において用いられる上記モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、メタクリレート誘導体、ビニル化合物、アリル化合物などが挙げられ、具体的には、ジエチルアミノエチルメタクリレート、スルホプロピルメタクリレート、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルアミンなどが挙げられる。
上記(2)として示す方法は、種々のタンパク質吸着能を有する官能基のバリエーションを揃えやすい、又はタンパク質吸着能を有する官能基の導入率(以下、「リガンド転化率」と記載する場合がある。)のバリエーションを揃えやすいという観点から好ましい方法である。
(2)の方法において用いられる上記モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、反応性の高いエポキシ基を有するグリシジルメタクリレート(GMA)などが挙げられる。
放射線グラフト重合法によってタンパク質吸着能を有する高分子を導入した場合、グラフト鎖の量(以下、「グラフト率」と記載する場合がある。)及びリガンド転化率は、タンパク質吸着多孔膜の吸着能力及び機械的強度に影響を及ぼすことがある。
本実施形態において、グラフト率(dg[%])は、放射線グラフト重合前後の、基材に対する増加重量に基づいて定義され、下記式(1)により求めることができる。
Figure 0006087287
0:基材重量(g)
1:放射線グラフト重合後の重量(g)
本実施形態において、リガンド転化率(T[%])は、グラフト鎖中のタンパク質吸着能を有する官能基を導入可能な官能基に対する、タンパク質吸着能を有する官能基の存在割合で定義され、下記式(2)により求めることができる。
Figure 0006087287
0:基材重量(g)
1:放射線グラフト重合後の重量(g)
2:タンパク質吸着能を有する官能基導入後の全体重量(g)
1:グラフト鎖モノマー単位の分子量(g/mol)
2:タンパク質吸着能を有する官能基の分子量(g/mol)
a:グラフト鎖モノマー1分子あたりの、タンパク質吸着能を有する官能基を導入可能な官能基数
上記式(2)において、タンパク質吸着能を有する官能基を導入可能な官能基を含むモノマーとしてGMAを用いてグラフト鎖を導入した場合、該モノマー中に、官能基を導入可能な官能基はエポキシ基1つであるので、a=1となる。
本実施形態において、グラフト率は、限られた細孔表面に大量のタンパク質を吸着せしめるためにより大きなグラフト率であることが好ましい。しかしながらグラフト率を大きくすると、グラフト鎖が細孔空間を横切り、対向する細孔表面に接触してしまい、通液方向を変えることによるグラフト鎖の揺り動きが減少し、被吸着タンパク質の溶出の効率が低下することがあるので、グラフト率は、好ましくは5%〜200%である。加えて、グラフト鎖を大きくすると、細孔空間が小さくなるため通液圧が上昇し、所望の通液速度が達成できなくなることがあるので、より好ましくは20%〜150%である。また、グラフト鎖を大きくすると機械的強度も低下することがあるので、実用上の観点から、さらに好ましくは30%〜90%である。
リガンド転化率は、より高い吸着容量を得るという観点から、好ましくは20%〜100%であり、より好ましくは50%〜100%であり、さらに好ましくは70%〜100%である。
リガンド導入後は、タンパク質吸着多孔膜の乾燥工程、モジュール成形工程と製造工程が続くが、タンパク質吸着多孔膜として、機械的強度、吸着性能などについて実用性能上の影響がなければ、それぞれの工程において適当な手段を選ぶことができる。また適宜追加の工程を加えてもよいし、省略してもよい。
例えば、モジュール成形工程の後、タンパク質吸着多孔膜に液体又は蒸気により湿潤化した状態で加熱する処理(湿熱処理)工程を実施してもよい。該湿熱処理によって、吸着能力が向上することがあるので、該湿熱処理を実施するのが好ましい。
該湿熱処理に用いられる液体は、好ましくは純水又は水溶液である。水溶液は無機塩を含む水溶液であれば、特に限定されない。処理装置の保全の観点、水溶液調整の作業負荷軽減の観点から純水を用いることが好ましい。
また、該湿熱処理の温度は、50〜110℃が好ましく、純水を使用した場合の作業性及び該湿熱処理の効果の観点から60〜95℃がより好ましい。
化学反応によって、タンパク質吸着能を有する高分子で基材表面を被覆する方法として、重合開始剤を用いたグラフト重合法も挙げられる。重合開始剤を用いて基材を活性化させて、モノマーを重合させ、基材表面にグラフト鎖を導入する方法である。放射線による活性化が困難である基材に対してもグラフト重合が可能となりうる点及び、放射線照射設備が不要な点から、好ましく用いられる。例えば、公知技術によって製造されたモノリスなどの多孔質焼結体を基材とした場合に、その表面を被覆する方法として用いられることがある。
高分子塗布によって、タンパク質吸着能を有する高分子で基材表面を被覆する方法としては、例えば、タンパク吸着能を有する官能基を含む高分子を基材へ塗布し、架橋剤によって高分子を基材表面に固定する方法などが挙げられる。かかる方法として、例えば、特許文献4に具体的方法が開示されている。他には基材表面に重合体又は重合体前駆体の被膜を形成させ、その被膜を構成する高分子を重合開始点として新たなグラフト重合体を得る方法などが挙げられる。かかる方法として、例えば、特許文献5に具体的方法が開示されている。
本実施形態のタンパク質の精製方法が適用可能なタンパク質吸着多孔膜として、例えば、特許文献1〜5に記載の膜などが挙げられる。
特許文献1では、細孔表面にグラフト鎖を有し、このグラフト鎖にアニオン交換基が固定される多孔膜が示されている。イオン交換基を有するポリマーブラシ(直鎖状のグラフト鎖)が細孔表面に導入された、特許文献1と同様な多孔質中空糸膜に、タンパク質が多層に吸着したことが報告されている(非特許文献1)。
すなわち、特許文献1に記載の膜は、反対方向に溶出液を流して、ポリマー鎖を逆撫でし、被吸着タンパク質を効率的に溶出する本精製方法が特に効果的に作用する膜といえる。
特許文献2では、多孔質基材が第1アミン基の結合した架橋重合体を有する吸着材料で覆われた多孔質吸着媒体が示されている。基材を覆う皮膜重合体は、「蛋白質及び他の不純物は、当該皮膜の奥底に捕捉され、」と記載されている。特許文献2に記載の膜は、本精製方法が効果的に作用する膜といえる。
特許文献3では、複数の孔が延在している支持体構成部材及び、該支持体構成部材の孔中に配置されかつ該支持体構成部材の孔を満たしているマクロ多孔質架橋ゲルを含んでなる複合材が示されている。
特許文献4では、陽イオン官能基(本実施形態においては、「陰イオン交換型の官能基」を意味する)を有する架橋被膜と、多孔質基材と、からなる正に帯電した多孔質膜が示されている。製造方法の一例としては、例えば、以下の方法が示されている。まず、ジアリルアミンと、4級アンモニウム型の官能基を有するメタクリレート誘導体と、の共重合体に、エポキシ基を有する試薬(例えばエピクロロヒドリン)を添加することによって活性化させる。別途、ペンタエチレンヘキサミンとグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドとからなる架橋剤を調合する。そして、基材となる多孔膜を、活性化させた共重合体と架橋剤の溶液に浸漬することで、タンパク質吸着膜が得られる。
特許文献5では、高分子多孔質基材膜表面に、N−ハロゲン化された化合物(重合体又は重合体前駆体)の被膜を形成させ、グラフト開始剤とモノマーとを接触させて、基材上でグラフト重合した膜が示されている。具体例として、セルロース製の多孔質膜に、前記N−ハロゲン化された化合物としてN−ハロゲン化されたナイロン66を用い、前記モノマーとしてGMAを用いてグラフト重合させ、その後、スルホン酸イオンでの処理によるエポキシ基のスルホン化によって得られる膜が記載されている。また、GMAのエポキシ基に二級/三級アミンによる、三級アミノ基/四級アンモニウム基が導入された膜が記載れている。
これら、特許文献1乃至5及び非特許文献1に開示される膜は、本実施形態のタンパク質吸着多孔膜によるタンパク質の精製方法において、好適に用いることのできるタンパク質吸着多孔膜の例示として挙げられる。
本実施形態において、多層度とは、タンパク質吸着多孔膜の限られた細孔表面への被吸着タンパク質の吸着形態を表す指標である。タンパク質がタンパク質吸着多孔膜の細孔表面に吸着する際、細孔表面にタンパク質がのっただけの単層吸着と、吸着したタンパク質の上にさらに別のタンパク質が積層して吸着される多層吸着がある。タンパク質吸着多孔膜の細孔表面のタンパク質吸着能を有する高分子の構造が、被吸着タンパク質の吸着形態に影響を及ぼすので、多層度は細孔表面の高分子構造を間接的に示す指標と言える。本実施形態における多層度とは、タンパク質吸着多孔膜の細孔表面上に、タンパク質が最密充填で平衡吸着量まで吸着したときのBSA(ウシ血清アルブミン)換算層数とする。すなわち、任意のタンパク質で平衡吸着量を測定し、測定に用いた任意のタンパク質がBSAの粒子サイズとした場合の換算積層数が多層度であり、評価対象のタンパク質吸着多孔膜に応じて任意のサイズのタンパク質を用いて測定を行った場合にも、細孔表面の高分子構造を比較できる指標とした。
多層度の概念自体は、degree of multilayer binding of proteinとして、例えば、非特許文献1に掲載されており、当業者にとって既知の概念である。
本実施形態において、多層度は下記式(3)で求められる値である。
Figure 0006087287
「平衡吸着容量」とは、タンパク質吸着多孔膜の吸着能力を表す用語として、当業界では広く用いられている。タンパク質吸着多孔膜に吸着対象タンパク質を含む原液を通液した際に、原液の透過液のタンパク質濃度が、原液のタンパク質の濃度と平衡に達する時点(吸着平衡)までの吸着容量を指し、下記式(4)で求められる。
「吸着容量」とは、吸着量を単位膜量当たりの値に換算した数値を意味し、「吸着量」とは、タンパク質吸着多孔膜が吸着する被吸着タンパク質の重量を意味する。
なお、吸着容量を評価する際は、実際の製造ラインに用いる場合とは違い、精製されたタンパク質を溶液にした原液で評価することが一般的である。
Figure 0006087287
:原液のタンパク質の濃度[g/L]
C:原液透過液のタンパク質濃度[g/L]
Q:累積の原液透過液量[L]
:吸着平衡に達したときの原液透過液量[L]
W:タンパク質吸着多孔膜の重量[g]
平衡吸着容量の測定は、市販の実験用タンパク質を用いて行い、これをBSAのタンパク質の多層度に換算する(詳しくは後述する)。測定に用いるタンパク質は、タンパク質吸着多孔膜に応じて任意に選ぶことができる。例えば、強塩基性陰イオン交換膜及び弱塩基性陰イオン交換膜には、BSAが好適に用いられる。一方で、強酸性陽イオン交換膜及び弱酸性陽イオン交換膜にはリゾチームが好適に用いられる。
評価に用いるタンパク質溶液のpHは、タンパク質がタンパク質吸着多孔膜に吸着し、タンパク質が変性せず安定的なpH領域であればよい。例えば、イオン交換膜の場合、タンパク質の等電点(pI)とイオン交換膜のpIの間のpHに調整された、タンパク質を含む原液が用いられる。タンパク質のpIとイオン交換膜pIの関係について、詳しくは後述する。
「理論単層吸着容量」とは、タンパク質吸着多孔膜の比表面積をタンパク質1分子の占有面積で割ることによって、理論的に表面に最密配列されるタンパク質の数を算出し、アボガドロ数(N)とタンパク質の分子量(M)を使って下記式(5)で求められる。
Figure 0006087287
:タンパク吸着多孔膜の比表面積[m/g]
:タンパク質1分子の占有面積[m
:BSAの分子量[g/mol]
:アボガドロ数[/mol]
本実施形態においては、上記のように、多層度を、BSA換算の積層数とする。したがって、理論単層吸着容量は、BSA換算の理論単層吸着容量とする。すなわち、式(5)において、タンパク質1分子の占有面積SはBSAの粒子サイズ(4.0nm×4.0nm×11.5nm)より、S=4.0nm×4.0nm=16nm、分子量Mは、67500を用いる。
タンパク質吸着多孔膜の比表面積SMは窒素吸着法(BET法)で測定することができる。
多層度は、タンパク質吸着多孔膜の細孔表面の高分子鎖のたなびきやすさ(すなわち、溶出の効果の大きさ)がより大きいほうが好ましい。ただし、多層度が多くなることによって、通液圧が上昇し、所望の通液速度が達成しにくくなるので多層度は15以下とするのが好ましく、多層度は1.1〜15がより好ましく、2〜15がさらに好ましく、3〜15がよりさらに好ましい。
本実施形態において、吸着工程は、一般的なタンパク質吸着多孔膜を用いた精製方法と同様にして実施することができるが、(1−1)緩衝液によるタンパク質吸着多孔膜の平衡化、(1−2)吸着対象タンパク質を含有する原液の通液によるタンパク質吸着多孔膜へのタンパク質吸着という手順で行われる。
上記(1−1)工程は、緩衝液を通液することにより、タンパク質吸着機能を担う高分子の状態(電荷状態など)を平衡化させる工程であり、タンパク質吸着の準備手順として行われる。
上記(1−2)工程は、平衡化されたタンパク質吸着多孔膜に対し、吸着対象タンパク質を含有する原液を通液することにより、吸着対象タンパク質をタンパク質吸着多孔膜へ吸着させる工程であり、本実施形態における吸着工程として必須手順として行われる。
(1−2)工程においては、吸着させるタンパク質は、適宜選択されるが、目的タンパク質を吸着させ、後から溶出回収する方法と、不用なタンパク質を吸着させ、目的タンパク質を通過させて回収する方法とが挙げられる。
本実施形態において用いられる緩衝液は、精製プロセス、吸着対象タンパク質の種類、タンパク質吸着能を有する官能基の種類(疎水性相互作用膜、イオン交換膜、群特異アフィニティ吸着膜、個別特異アフィニティ吸着膜)に応じて適切なものを選べば特に限定されず、適宜選択可能である。例えば、塩酸−塩化カリウム緩衝液、グリシン−塩酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸−リン酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液などが挙げられ、吸着対象タンパク質及び精製プロセスに応じて、適切なものを選ぶことが可能である。
本実施形態において、吸着対象タンパク質の分子量は、該タンパク質がタンパク質吸着多孔膜の細孔表面に吸着可能であれば、任意に選択可能である。溶出液によって溶出可能であり、タンパク質吸着多孔膜の細孔径より小さく、細孔内を通過可能な分子サイズであればよく、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がより好ましく、1,000〜300,000がさらにより好ましい
洗浄工程は、これに続く溶出工程で回収されるタンパク質の精製純度を高めるために、必要に応じて実施される。例えば、被吸着タンパク質を回収する場合に、タンパク質吸着多孔膜に付着した原液に含まれる濁質成分や、不用なタンパク質を予め洗い流すことにより、続く溶出工程で回収されるタンパク質に混入するのを避けたい場合に実施される。
本実施形態において、溶出工程では、溶出液の通液による被吸着タンパク質の溶出がおこなわれる。被吸着タンパク質が目的タンパク質である場合は、タンパク質吸着多孔膜を透過した、溶出液の透過液を回収する。また、被吸着タンパク質が不用なタンパク質である場合は、タンパク質吸着多孔膜を透過した、溶出液の透過液は廃棄してもよい。
いずれの場合においても、本実施形態においては、溶出工程において、溶出液は、1種又は複数種の溶出液を切り替えて通液してもよく、少なくとも1種の溶出液を吸着工程における原液の通液方向とは反対方向に通液することにより、タンパク質吸着多孔膜が再生される。
本実施形態のタンパク質の精製方法は、基材と、該基材の表面に被覆されたタンパク質吸着能を有する高分子と、を含むタンパク質吸着多孔膜を用いた精製方法であって、吸着工程後の溶出工程で、少なくとも1種の溶出液でタンパク質吸着多孔膜を通液する際に、前記溶出液のうち、少なくともいずれか1種の溶出液を、吸着工程における原液の通液方向とは反対方向に通液するタンパク質の精製方法であってもよい。
本実施形態においては、溶出工程において、複数回溶出が行われる場合には、そのうちの少なくとも1回、吸着工程における原液の通液方向とは反対方向に溶出液が通液されればよく、反対方向に溶出液が通液される回数は、特に限定されず、複数回反対方向に通液されてよい。複数回の溶出全てにおいて、吸着工程における原液の通液方向とは反対方向に溶出液が通液されてもよい。
本実施形態において、「反対方向に通液する」とは、タンパク質吸着多孔膜が平膜であって、吸着工程で表面(一方の面)から裏面(他方の面)へ通液した場合は、裏面(他方の面)から表面(一方の面)への通液することを意味する。タンパク質吸着多孔膜が中空糸膜であって、吸着工程で中空糸膜の内側(一方の面)から外側(他方の面)へ通液した場合は、外側(他方の面)から内側(一方の面)へ通液することを意味し、吸着工程で中空糸膜の外側(他方の面)から内側(一方の面)へ通液した場合は、内側(一方の面)から外側(他方の面)へ通液することを意味する。本実施形態において、モジュールを用いて反対方向に通液する場合は、吸着工程における通液のモジュール入り口と出口を、入れ替えて出口側から入り口側へと通液することにより行うことができる。なお、モジュール入り口側と出口側の切り替えは、モジュールを取り付けた装置の配管の弁の切り替えによっても可能であるし、また、装置から一旦取り外してモジュールの取り付け向きを入れ替えることでも可能である。
本実施形態の溶出工程で用いられる溶出液は、被吸着タンパク質が溶出可能であれば、特に限定されない。
溶出液としては、塩を含む水溶液、pHが調整された水溶液、水、有機溶剤、及びこれらの混合溶液からなる群から選択されるが、被吸着タンパク質の種類、分離目的、タンパク質吸着能を有する官能基の種類(疎水性相互作用膜、イオン交換膜、群特異アフィニティ吸着膜、個別特異アフィニティ吸着膜)などそれぞれのプロセスに応じて適切なものを1種以上選ぶことができる。吸着工程における原液の通液方向とは反対方向に通液する少なくとも1種の溶出液は、上記溶出液から選択される。
「混合溶液」としては、塩を含む水溶液、pHが調整された水溶液、又は水と、有機溶媒とを所望の割合で混合した混合溶液が挙げられる。
「有機溶媒」としては、通常、タンパク質の精製において用いられる有機溶媒が挙げられ、例えば、エタノールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒などが挙げられる。
「pHが調整された水溶液」として、アルカリ(例えば、NaOH水溶液)や酸(例えば、塩酸)によってpHが調整されている水溶液が挙げられる。また、所望のpHに調整された緩衝液が挙げられる。詳しくは後述するが、中性塩を含む緩衝液などは、「pHが調整された水溶液」に分類しない。中性塩を含む緩衝液は、本実施形態において便宜上「塩を含む水溶液」に分類するが、溶出液として実質的な溶出の効果の違いを分類するものではない。
なお、被吸着タンパク質を回収する必要がある場合は、被吸着タンパク質の安定pHで調整された溶出液を用いるのが好ましい。安定pHとは、被吸着タンパク質が変性しないpH領域を意味する。
「pHが調整された水溶液」を用いた場合は、溶出工程における通液方向が、吸着工程における原液の通液方向とは、順方向であっても、反対方向であっても、その後に中和操作を行うのが好ましい。斯かる中和操作における通液も、順方向であっても、反対方向であってもよい。中和操作は、「塩を含む水溶液」として所望のpHに調整した塩を含む緩衝液を用いてもよいし、「pHが調整された水溶液」として、所望のpHに調整した緩衝液を用いることも可能である。
「塩を含む水溶液」の「塩」とは、中性塩を意味し、好ましくはNaCl(塩化ナトリウム)やKCl(塩化カリウム)などの塩である。
単なる塩を含む水溶液は、酸性・塩基性のどちらでもなく、中性となるが、本実施形態における「塩を含む水溶液」としては、中性塩を含み、さらに、pH調節された緩衝液であってもよい。すなわち、中性塩を含む緩衝液は「塩を含む水溶液」に分類する。
特許文献1に記載のように低濃度の塩を含む溶液中であれば、タンパク質の吸着が可能であることから、塩濃度はより効率的な溶出を施すために、好ましくは0.3mol/L以上であり、より好ましくは0.5mol/L以上であり、さらに好ましくは0.8mol/L以上であり、よりさらに好ましくは1mol/L以上である。0.3mol/L以上で、タンパク質吸着多孔膜の機械的強度及び形状が保持され、通液圧などの使用上問題がない濃度以下の中性塩を含む水溶液が、本実施形態においては、好適に通液されるが、かかる通液は、順方向であっても反対方向に通液されてもよい。
塩濃度とは、中性塩の濃度であり、他の溶質の濃度は問わない。したがって単なる中性塩水溶液、中性塩を含む緩衝液などから適当なものを選ぶことができる。
溶出工程において、タンパク質吸着多孔膜を平衡化のために緩衝液を通液させることが一般に行われるので、再度吸着工程に移ることを考慮し、操作の簡略化の観点から、溶出工程における原液と同じpHに調節された、塩を含む緩衝液を用いることが好ましい。
群特異性アフィニティ吸着膜又は個別特異型アフィニティ吸着膜のタンパク質吸着多孔膜では、pH変化による被吸着タンパク質の溶出が可能であり、適切なpHが調整された水溶液を用いるのが好ましい。
上述してきたように、本実施形態において、イオン交換膜とは、タンパク質吸着能を有する官能基がイオン交換型の官能基であるタンパク質吸着多孔膜である。タンパク質吸着多孔膜としてのイオン交換膜は汎用性が高いことから、本実施形態の精製方法による課題解決において好適に用いることができる。
以下、イオン交換膜における本実施形態をより具体的に説明する。
イオン交換膜では、溶出工程の溶出液として、少なくとも、「塩を含む水溶液」又は「pHが調整された水溶液」を含む溶出液が選ばれ得る。
イオン交換膜のうち、強酸性陽イオン交換膜、弱酸性陽イオン交換膜、強塩基性陰イオン交換膜、及び弱塩基性陰イオン交換膜の全てで、「塩を含む水溶液」を溶出液として使用可能であり、特に弱酸性陽イオン交換膜、弱塩基性陰イオン交換膜においては「pHが調整された水溶液」も溶出液として使用可能である。
通常、タンパク質は水溶液中で、等電点(pI)のpHではタンパク質の総電荷はゼロであり、pIを超えるpHでは負、pI未満のpHでは正に帯電した状態となる。また、弱酸性陽イオン交換膜及び弱塩基性陰イオン交換膜もpHに依存する。
弱酸性陽イオン交換膜では、膜のpI以下では電荷の偏りがなく、pIを超えると負に帯電する。したがって、タンパク質のpI以上かつ膜のpI以上のpH領域では両者とも負に帯電するため、被吸着タンパク質は溶出する。また、タンパク質のpI以下かつ膜のpI以下でも、両者の静電的な相互作用はなくなるため、被吸着タンパク質は溶出する。すなわち、タンパク質が膜に吸着しうるpH領域はタンパク質のpIと膜のpIの間であり、それ以外のpH領域に「pHが調整された水溶液」は溶出液として用いることができる。
弱塩基性陰イオン交換膜でも同様に、弱塩基性陰イオン交換膜は膜のpI以上では電荷の偏りがなく、pI未満になると正に帯電する。したがって、タンパク質のpI以上かつ膜のpI以上のpH領域では、両者の静電的な相互作用はなくなるため、被吸着タンパク質は溶出する。また、タンパク質のpI以下かつ膜のpI以下でも、両者ともに正に帯電するため、被吸着タンパク質は溶出する。すなわちタンパク質が膜に吸着しうるpH領域はタンパク質のpIと膜のpIの間であり、それ以外のpH領域に「pHが調整された水溶液」は溶出液として用いることができる。ここで、膜のpIは流動電位法によって求めることができる。
以上により、本実施形態において、タンパク質吸着多孔膜が、弱塩基性陰イオン交換膜又は弱酸性陽イオン交換膜である場合は、「pHが調整された水溶液」は、pHが吸着するタンパク質の等電点と前記タンパク質吸着多孔膜の等電点の間以外にある溶出液として用いることができる。ただし、効率的な溶出のために、pH閾値からより離れたpHの溶出液を用いるのが好ましく、具体的には、好ましくはpH閾値±1であり、より好ましくはpH閾値±2であり、さらに好ましくはpH閾値±3以上である。また、pHを調整する溶質として、NaOH又はHClを用いるのが好ましい。ここで、pH閾値とは、タンパク質のpI又は膜のpIのいずれかのpHのことを意味する。
タンパク質吸着多孔膜として、弱塩基性陰イオン交換膜又は弱酸性陽イオン交換膜を用いた場合、溶出工程で「pHが調整された水溶液」を用いた場合(工程(B))、その後、「塩を含む水溶液」、好ましくは塩を含む緩衝液を通液すること(工程(C))が好ましい。工程(B)及び工程(C)によって、膜の電荷状態を、少量の通液量でタンパク質吸着のための平衡化状態に戻すことが可能となる。
本実施形態においては、「塩を含む水溶液」を通液する工程(A)の後に、「pHが調整された水溶液」を通液する工程(B)を行い、次いで再度「塩を含む水溶液」を通液する工程(C)を行うことが、より好ましい。
タンパク質吸着状態でいきなりpHを変えて溶出させてもよいが、pH変化による被吸着タンパク質の変性を防止する観点から、工程(A)を行って、工程(B)を行うことで、被吸着タンパク質の溶出効率を上げることができる。
本実施形態においては、工程(A)、工程(B)、工程(C)のいずれかの工程において、吸着工程における原液の通液方向とは反対方向に通液されていることが好ましいが、より好ましくは、工程(B)及び工程(C)のいずれかにおいて反対方向に通液され、さらに好ましくは、工程(B)及び工程(C)の両方の溶出液を、吸着工程における原液の通液方向とは反対方向に通液することが、溶出の効率がよい。
溶出工程で、溶出液をタンパク質吸着多孔膜に通液する通液速度は、被吸着タンパク質が溶出する速度以上であり、タンパク質吸着多孔膜及びそのモジュールが形状維持し、吸着機能が維持できる速度以下の範囲で、任意に設定可能である。
モジュール成型した中空糸状タンパク質吸着多孔膜の場合、内圧式(内側から外側への通液)で通液する場合は、好ましくは1MV/min〜110MV/minであり、より好ましくは3MV/min〜40MV/minであり、さらに好ましくは4MV/min〜15MV/minである。外圧式(外側から内側への通液)で通液する場合は、好ましくは1MV/min〜15MV/minであり、より好ましくは3MV/min〜10MV/minであり、さらに好ましくは4MV/min〜10MV/minである。ここで、MVとは膜体積を意味する。つまり1MV/minとは1分間に膜体積と同量の液量を通液することを意味する。膜体積の算出方法について詳しくは後述する。
溶出工程で、溶出液をタンパク質吸着多孔膜に通液する通液量は、被吸着タンパク質が十分に溶出される量であれば、任意に設定できる。複数の溶出液を切り替えて通液する場合は、置換に必要な量も考慮にいれる必要がある。モジュール成型した中空糸状タンパク質吸着多孔膜の場合、各溶出液について、好ましくは10MV以上であり、より好ましくは25MV以上であり、さらに好ましくは30MV以上である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明について具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[製造例1]高分子基材としての中空糸多孔膜の製造
微粉ケイ酸(アエロジル(登録商標)R972グレード)27.2質量部、ジブチルフタレート(DBP)54.3質量部、及びポリエチレン樹脂粉末(旭化成ケミカルズ株式会社製サンファイン(商標)SH−800グレード)18.5質量部を予備混合し、2軸押出し機で中空糸状に押出して、中空糸状の膜を得た。次いで、この膜を塩化メチレン及び水酸化ナトリウム水溶液に順次浸漬することにより、ジブチルフタレート(DBP)及びケイ酸を抽出し、その後、水洗、乾燥処理を施し、ポリエチレン製の中空糸多孔膜を得た。
バブルポイント法で測定した得られた中空糸多孔膜の平均細孔径は0.3μmであった。測定は、ASTM規格のF316−86に記載されている平均孔径の測定方法(別称:ハーフドライ法)に準拠して測定した。6cm長の中空糸多孔膜に対し、液体としてエタノール、加圧用気体として窒素を用いて行った。得られたハーフドライ平均圧力に対して、平均細孔径は、下記式(6)により算出した。
空孔率は69%であった。空孔率は、下記式(7)により算出した。
Figure 0006087287
γ:表面長力(dynes/cm)
p:ハーフドライ平均圧力(Pa)
Figure 0006087287
wet:水湿潤時の中空糸多孔膜の重量(g)
dry:乾燥時の中空糸多孔膜の重量(g)
ρ:測定時の水温における水の密度(g/mL)
V:中空糸の円環断面積体積(mL)
なお、平膜の場合、Vは、膜体積を表し、膜体積は、膜面積と膜厚みを掛け合わせた値として求められる。ここで、中空糸の円環断面積体積(V)は、下記式(8)により算出した。
Figure 0006087287
L:測定に用いた中空糸の長さ(cm)
o:中空糸の外径(cm)
i:中空糸の内径(cm)
[製造例2]吸着能力を有する中空糸多孔膜の製造
製造例1で製造したポリエチレン製の中空糸多孔膜を密閉容器にいれ、容器内を窒素置換した。次いで、中空糸多孔膜が入った密閉容器をドライアイスとともに発泡スチロール製の箱に入れ、冷却しながらγ線200kGyを照射し、ポリエチレンにラジカルを発生させ、中空糸多孔膜を活性化させた。
活性化された中空糸多孔膜を、窒素雰囲気の密閉容器内で室温まで戻した。その後、中空糸多孔膜を反応容器に投入し、密閉して真空状態(100Pa以下)にした。グリシジルメタクリレート(GMA)5質量部とメタノール95質量部とを混合し、窒素バブリングして予め準備した反応液を、真空状態の反応容器内に圧力差を利用して送液した。送液された反応液を40℃で4時間循環し、一終夜静置後、反応液を排出した。メタノール、次いで水によって中空糸多孔膜を十分に洗浄し、ポリエチレン主鎖にグリシジルメタクリレートがグラフト重合したグラフト中空糸多孔膜を得た。
得られたグラフト中空糸膜の一部を採取し、乾燥させて重量を測定し、式(1)でグラフト率を算出すると、グラフト率は66〜73%であった。
グラフト中空糸多孔膜の入った反応容器に、50体積濃度のジエチルアミン水溶液を入れ、30℃で5時間を循環し、一終夜静置後、ジエチルアミン水溶液を排出した。次いで中空糸多孔膜を水で十分に洗浄し、乾燥させ、グラフト鎖にジエチルアミノ基を有するグラフト中空糸多孔膜をタンパク質吸着多孔膜として得た。
得られたタンパク質吸着多孔膜の一部を採取し、乾燥させて重量を測定し、式(2)でリガンド転化率を算出すると、リガンド転化率は91%であった。
またタンパク質吸着多孔膜の外径は3.6mm、内径は2.2mmであった。
[製造例3]モジュール成型
製造例2で製造したタンパク質吸着多孔膜を、糸有効長9.4cm、糸本数1本入りのモジュールに成型した。
[タンパク質吸着多孔膜の吸着能力評価]
タンパク質吸着多孔膜の吸着能力を表す用語として、「平衡吸着容量」(又は「静的吸着容量」)と「動的吸着容量」とがあり、当業界では広く用いられている。
「動的吸着容量」とは、タンパク質吸着多孔膜に対してタンパク質を含む原液を通液させる際に、その原液の透過液のタンパク質濃度が基準濃度に達する時点までの吸着容量を指す。この基準濃度は破か点と呼び、一般的に破か点としては通液する原液のタンパク質濃度に対する、その原液の透過液のタンパク質濃度が5%〜20%の範囲から選ぶ。
なお、一般には、吸着量は重量や体積やモル数などその特性を表すのに適した単位を用いることができる。また、タンパク質吸着多孔膜の単位量として表される吸着容量についても、単位体積だけでなく、単位重量などその特性を表すのに適した単位を用いることができる。
吸着容量を求めるに当たって、膜体積は、前記式(8)で算出される円環断面体積(V)において、式中のLに、吸着に寄与する有効膜長を代入して求められる体積である。有効膜長は、測定に使用する中空糸の長さから、装置に接続するためのコネクターなどの接触部分の長さ(吸着に寄与しない長さ)を差し引いて算出する。なお、平膜の場合の膜体積は、有効膜面積と膜厚みを掛け合わせた値である。
製造例3に従って製造したモジュールに対して、平衡吸着容量及び動的吸着容量の測定は、汎用HPLCシステム(GEヘルスケアジャパン AKTAexplorer100)に接続して行った。製造例1、2で製造した同一バッチのタンパク吸着多孔膜から、製造例3に従ってモジュールを複数本作成し、平衡吸着容量の測定と動的吸着容量の測定は別のモジュール個体を用いた。平衡吸着容量及び動的吸着容量のいずれの場合も、原液の透過液の吸光度をモニターし、得られたクロマトグラムを数値解析して求めた。なお、動的吸着容量は、タンパク質原液(1mg/mL)の吸光度の10%に到達した原液透過液量を破か点とし、算出した。
[評価例1]多層度
製造例2で得られたタンパク質吸着多孔膜の比表面積Sは、6.8m/gであった。なお、測定にはBECKMAN COULTER株式会社製比表面積・細孔分布測定装置(コールターSA3100シリーズ)を用いて、BET法にて行った。
BSA1分子の占有面積S=16×10−18(m)、分子量M=67500(g/mol)、アボガドロ数N=6.02×1023(/mol)を式(5)に代入して計算し、理論単層吸着容量4.8×10−2(g/g)と算出した。
平衡吸着容量は、BSAを用いて行い、原液の透過液の280nm吸光度をモニターした。BSAの平衡吸着量(式4の分子)は45mgであり、モジュール成形したタンパク質吸着多孔膜の重量Wは226mgであった。従って、式(4)により平衡吸着容量は、0.20g/gであった。
したがって、多層度は式(3)により、4.2と算出された。
[評価例2]繰り返し動的吸着容量の評価
モジュールを上述の汎用HPLCシステムに接続し、吸着工程、洗浄工程及び溶出工程を繰り返し行って、吸着工程における動的吸着容量を算出した。なお測定には、BSAを用い、原液の透過液の280nm吸光度をモニターした。
吸着工程後は、洗浄工程、溶出工程を経て吸着容量を測定するという手順を複数回繰返し、その都度の動的吸着容量を測定した。1回目の動的吸着容量(すなわち、タンパク質を初めて吸着させた際の動的吸着容量)を100として、溶出工程後の吸着時における動的吸着容量の比を「保持率(%)」として算出し、溶出方法による効果の度合いを比較した。保持率が100に近いほど、溶出効果が大きいといえる。
なお、動的吸着容量は、動的吸着量(mg)を、式(8)で求められる膜体積V(mL)で割り、単位はmg/mLとした。
本実施例では、以下の試薬などを用いた。
<トリス塩酸塩緩衝液(緩衝液)>
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(ナカライテスク株式会社製)4.84gを超純水約1.9Lに溶解し、塩酸を加えpH8に調整後、メスアップして2Lとして濃度20mmol/L(pH8)とした。その後、孔径0.45μmのフィルターを通したものを用いた。
<BSA溶液>
モデルタンパク質として一般に用いられるBSA(牛血清アルブミン、シグマアルドリッチ製)を用いた。バイオテクノロジーの精製装置の性能表示を行う際、精製されたタンパク質溶液をモデルとして用いられるのは一般的である。
20mmol/L(pH8)トリス塩酸緩衝液1Lに対しBSA1gを溶解させ、孔径0.45μmのフィルターを通したものを用いた。
<塩緩衝液>
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(ナカライテスク株式会社製)4.84gを超純水約1.9Lに溶解し、次いでNaCl(和光純薬工業株式会社製試薬特級)117gを溶解後、塩酸を加えpH8に調整した。メスアップして2Lとして濃度1mol/Lの塩化ナトリウムを含む緩衝液を調製した。その後、孔径0.45μmのフィルターを通したものを用いた。
<水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ)>
1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製試薬特級)を使用した。
溶出工程における溶出液の流れ方向を、吸着工程における流れ方向に対して、同一の方向で通液した場合を「順方向」、反対の方向で通液した場合を「反対方向」として記述した。また、評価流速は全ての実施例及び比較例において、いずれの工程でも5MV/minで行った。
[実施例1]
製造例1〜3で得られたタンパク質吸着膜多孔膜のモジュールに対して、吸着工程(緩衝液30mL、BSA溶液40mL)を内圧式(中空部内側から外側への通液)で行い、その後洗浄工程として、緩衝液10mLを順方向で通液した。そして、溶出工程として、塩緩衝液(15mL、順方向)、水酸化ナトリウム水溶液(20mL、反対方向)、塩緩衝液(20mL、反対方向)を通液した。
吸着1回目の動的吸着容量は47.7mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着容量は45.9mg/mLで保持率は96%であった。
[実施例2]
製造例1〜3で得られたタンパク質吸着膜多孔膜のモジュールに対して、吸着工程(緩衝液30mL、BSA溶液40mL)を内圧式(中空部内側から外側への通液)で行い、その後洗浄工程として、緩衝液10mLを順方向で通液した。そして、溶出工程として、塩緩衝液(15mL、順方向)、水酸化ナトリウム水溶液(20mL、順方向)、塩緩衝液(20mL、反対方向)を通液した。
吸着1回目の動的吸着容量は58.6mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着容量は50.5mg/mLで保持率は86%であった。
[実施例3]
製造例1〜3で得られたタンパク質吸着膜多孔膜のモジュールに対して、吸着工程(緩衝液30mL、BSA溶液40mL)を内圧式(中空部内側から外側への通液)で行い、その後洗浄工程として、緩衝液10mLを順方向で通液した。そして溶出工程として、塩緩衝液(15mL、順方向)、水酸化ナトリウム水溶液(20mL、反対方向)、塩緩衝液(20mL、順方向)を通液した。
吸着1回目の動的吸着容量は51.4mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着容量は43.5mg/mLで保持率は85%であった。
[比較例1]
製造例1〜3で得られたタンパク質吸着膜多孔膜のモジュールに対して、溶出工程で、全て順方向にて通液した以外は、実施例1と同じ溶出液、通液順、及び通液量で通液した。
吸着工程(緩衝液30mL、BSA溶液40mL)を内圧式(中空部内側から外側への通液)で行い、その後洗浄工程として、緩衝液10mLを順方向で通液した。そして溶出工程として、塩緩衝液(15mL、順方向)、水酸化ナトリウム水溶液(20mL、順方向)、塩緩衝液(20mL、順方向)を通液した。
吸着1回目の動的吸着容量は51.2mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着容量は40.0mg/mLで保持率は78%であった。
[比較例2]
製造例1〜3で得られたタンパク質吸着膜多孔膜のモジュールに対して、製造例1〜3で得られたタンパク質吸着膜多孔膜のモジュールを、吸着工程(緩衝液30mL、BSA溶液40mL)を内圧式(中空部内側から外側への通液)で行い、その後洗浄工程として、緩衝液10mLを反対方向に、次いで緩衝液10mLを順方向に通液した。そして溶出工程として、塩緩衝液(15mL、順方向)、水酸化ナトリウム水溶液(20mL、順方向)、塩緩衝液(20mL、順方向)を通液した。
吸着1回目の動的吸着容量は55.5mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着容量は42.7mg/mLで保持率は77%であった。
実施例1〜3及び比較例1、2の結果を表1に示す。
Figure 0006087287
比較例1では、保持率が78%であったのに対し、実施例1では保持率96%、実施例2では保持率86%、実施例3では保持率85%であり、溶出液を吸着方向とは反対方向に通液することによる効果が実証された。
比較例2において、洗浄工程で緩衝液を反対方向に通液通液した場合、10回繰り返し後に吸着容量の保持率が77%であった。実施例1〜3で、溶出液を反対方向に通液することによる効果が実証された。
[実施例4]
1種類の溶出液として、塩緩衝液を用いて溶出工程を行った場合の実施例を示す。
製造例1〜3で得られたタンパク質吸着膜多孔膜のモジュールに対して、吸着工程(緩衝液30mL、BSA溶液40mL)を内圧式(中空部内側から外側への通液)で行い、その後洗浄工程として、緩衝液10mLを順方向に通液した。そして、溶出工程として、塩緩衝液(20mL、反対方向)を通液した。
吸着1回目の動的吸着容量は49.5mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着容量は42.2mg/mLで保持率は85%であった。
[比較例3]
製造例1〜3で得られたタンパク質吸着膜多孔膜のモジュールに対して、溶出工程で、順方向にて通液した以外は、実施例4と同じ溶出液及び通液量で通液した。
吸着工程(緩衝液30mL、BSA溶液40mL)を内圧式(中空部内側から外側への通液)で行い、その後洗浄工程として、緩衝液10mLを順方向に通液した。そして溶出工程として、塩緩衝液(20mL、順方向)を通液した。
吸着1回目の動的吸着容量は38.7mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着容量は27.5mg/mLで保持率は71%であった。
実施例4及び比較例3の結果を表2に示す。
Figure 0006087287
比較例3では、保持率が71%であったのに対し、実施例4では保持率85%と、溶出液を吸着方向とは反対方向に通液することによる効果が実証された。
以下実施例5〜11、比較例4〜10において、種々のグラフト率及び多層度のタンパク質吸着多孔膜に対して、反対方向への溶出液を通液した場合の結果を示す(結果を表3にまとめて示す)。
Figure 0006087287
[実施例5]
製造例1で製造したポリエチレン製中空糸多孔膜を基材として、グラフト反応により、タンパク質吸着多孔膜を得た。グラフト反応は、反応液中のグリシジルメタクリレート(GMA):メタノールの混合比を13.9質量部:86.1質量部とした以外は、製造例2に従った。得られたタンパク質吸着多孔膜のグラフト率は195%、リガンド転化率は98%であった。また、外径は4.4mm、内径は2.8mmだった。
得られたタンパク質吸着多孔膜を3本採取し、それぞれ製造例3と同様にモジュール(5A,5B,5C)を成形した。
モジュール5Aを評価例1に従って測定を実施し、多層度を算出すると、5.5であった。
モジュール5Bを評価例2に従って繰り返し動的吸着容量の評価を実施した。吸着工程(緩衝液30mL、BSA溶液40mL)を内圧式(中空部内側から外側への通液)で行い、その後洗浄工程として、緩衝液10mLを順方向で通液した。そして、溶出工程として、塩緩衝液(15mL、順方向)、水酸化ナトリウム水溶液(20mL、反対方向)、塩緩衝液(20mL、反対方向)を通液した。
吸着1回目の動的吸着容量は73.9mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着容量は69.5mg/mLで保持率は94%であった。
[比較例4]
実施例5で製造したモジュール5Cに対して、溶出工程において、塩緩衝液(15mL、順方向)、水酸化ナトリウム水溶液(20mL、順方向)、塩緩衝液(20mL、順方向)と、溶出液をすべて順方向に通液した以外は、実施例5と同じように評価を行った。
吸着1回目の動的吸着容量は75.0mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着量は52.7mg/mLで保持率は70%であった。
多層度5.5の場合、比較例4の保持率70%に対して、実施例5で保持率94%と保持率が向上した。なお、保持率の向上度を、(反対方向での溶出実施時の保持率)/(順方向のみでの溶出実施時の保持率)で表すと、134%となった。
[実施例6]
製造例1で製造したポリエチレン製中空糸多孔膜を基材として、グラフト反応により、タンパク質吸着多孔膜を得た。グラフト反応は、反応液中のグリシジルメタクリレート(GMA):メタノールの混合比を9.4質量部:90.6質量部とした以外は、製造例2に従った。得られたタンパク質吸着多孔膜のグラフト率は131%、リガンド転化率は97%であった。また、外径は4.1mm、内径は2.5mmだった。
得られたタンパク質吸着多孔膜を3本採取し、それぞれ製造例3と同様にモジュール(6A,6B,6C)を成形した。
モジュール6Aを評価例1に従って測定を実施し、多層度を算出すると、4.5であった。
モジュール6Bを評価例2に従って繰り返し動的吸着容量の評価を実施した。評価における通液液種、通液順、通液量、通液方向は実施例5と全く同じで行った。(すなわち、溶出工程において、反対方向への通液を行った。)
吸着1回目の動的吸着容量は56.4mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着容量は54.1mg/mLで保持率は96%であった。
[比較例5]
実施例6で製造したモジュール6Cに対して、評価例2に従って繰り返し動的吸着容量の評価を実施した。評価における通液液種、通液順、通液量、通液方向は比較例4と全く同じで行った。(すなわち、溶出工程において溶出液をすべて順方向に通液した。)
吸着1回目の動的吸着容量は56.0mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着量は40.9mg/mLで保持率は73%であった。
多層度4.5の場合、比較例5の保持率73%に対して、実施例6で保持率96%と保持率が向上した。保持率の向上度は131%となった。
[実施例7]
製造例1で製造したポリエチレン製中空糸多孔膜を基材として、グラフト反応により、タンパク質吸着多孔膜を得た。グラフト反応は、反応液中のグリシジルメタクリレート(GMA):メタノールの混合比を6.1質量部:93.9質量部とした以外は、製造例2に従った。得られたタンパク質吸着多孔膜のグラフト率は85%、リガンド転化率は95%であった。また、外径は3.8mm、内径は2.4mmだった。
得られたタンパク質吸着多孔膜を3本採取し、それぞれ製造例3と同様にモジュール(7A,7B,7C)を成形した。
モジュール7Aを評価例1に従って測定を実施し、多層度を算出すると、4.3であった。
モジュール7Bを評価例2に従って繰り返し動的吸着容量の評価を実施した。評価における通液液種、通液順、通液量、通液方向は実施例5と全く同じで行った。(すなわち、溶出工程において、反対方向への通液を行った。)
吸着1回目の動的吸着容量は55.0mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着容量は53.9mg/mLで保持率は98%であった。
[比較例6]
実施例7で製造したモジュール7Cに対して、評価例2に従って繰り返し動的吸着容量の評価を実施した。評価における通液液種、通液順、通液量、通液方向は比較例4と全く同じで行った。(すなわち、溶出工程において溶出液をすべて順方向に通液した。)
吸着1回目の動的吸着容量は54.4mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着量は41.0mg/mLで保持率は75%であった。
多層度4.3の場合、比較例6の保持率75%に対して、実施例7で保持率98%と保持率が向上した。保持率の向上度は130%となった。
[実施例8]
製造例1で製造したポリエチレン製中空糸多孔膜を基材として、グラフト反応により、タンパク質吸着多孔膜を得た。グラフト反応は、反応液中のグリシジルメタクリレート(GMA):メタノールの混合比を3.6質量部:96.4質量部とした以外は、製造例2に従った。得られたタンパク質吸着多孔膜のグラフト率は50%、リガンド転化率は98%であった。また、外径は3.4mm、内径は2.1mmだった。
得られたタンパク質吸着多孔膜を3本採取し、それぞれ製造例3と同様にモジュール(8A,8B,8C)を成形した。
モジュール8Aを評価例1に従って測定を実施し、多層度を算出すると、3.8であった。
モジュール8Bを評価例2に従って繰り返し動的吸着容量の評価を実施した。評価における通液液種、通液順、通液量、通液方向は実施例5と全く同じで行った。(すなわち、溶出工程において、反対方向への通液を行った。)
吸着1回目の動的吸着容量は46.0mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着容量は44.6mg/mLで保持率は97%であった。
[比較例7]
実施例8で製造したモジュール8Cに対して、評価例2に従って繰り返し動的吸着容量の評価を実施した。評価における通液液種、通液順、通液量、通液方向は比較例4と全く同じで行った。(すなわち、溶出工程において溶出液をすべて順方向に通液した。)
吸着1回目の動的吸着容量は46.4mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着量は35.9mg/mLで保持率は77%であった。
多層度3.8の場合、比較例7の保持率77%に対して、実施例8で保持率97%と保持率が向上した。保持率の向上度は125%となった。
[実施例9]
製造例1で製造したポリエチレン製中空糸多孔膜を基材として、グラフト反応により、タンパク質吸着多孔膜を得た。グラフト反応は、反応液中のグリシジルメタクリレート(GMA):メタノールの混合比を2.3質量部:97.7質量部とした以外は、製造例2に従った。得られたタンパク質吸着多孔膜のグラフト率は32%、リガンド転化率は96%であった。また、外径は3.3mm、内径は2.0mmだった。
得られたタンパク質吸着多孔膜を3本採取し、それぞれ製造例3と同様にモジュール(9A,9B,9C)を成形した。
モジュール9Aを評価例1に従って測定を実施し、多層度を算出すると、2.3であった。
モジュール9Bを評価例2に従って繰り返し動的吸着容量の評価を実施した。評価における通液液種、通液順、通液量、通液方向は実施例5と全く同じで行った。(すなわち、溶出工程において、反対方向への通液を行った。)
吸着1回目の動的吸着容量は21.1mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着容量は20.7mg/mLで保持率は98%であった。
[比較例8]
実施例9で製造したモジュール9Cに対して、評価例2に従って繰り返し動的吸着容量の評価を実施した。評価における通液液種、通液順、通液量、通液方向は比較例4と全く同じで行った。(すなわち、溶出工程において溶出液をすべて順方向に通液した。)
吸着1回目の動的吸着容量は21.4mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着量は18.5mg/mLで保持率は86.6%であった。
多層度2.3の場合、比較例8の保持率77%に対して、実施例9で保持率98%と保持率が向上した。保持率の向上度は113%となった。
[実施例10]
製造例1で製造したポリエチレン製中空糸多孔膜を基材として、グラフト反応により、タンパク質吸着多孔膜を得た。グラフト反応は、反応液中のグリシジルメタクリレート(GMA):メタノールの混合比を1.0質量部:99.0質量部とした以外は、製造例2に従った。得られたタンパク質吸着多孔膜のグラフト率は14%、リガンド転化率は97%であった。また、外径は3.2mm、内径は1.9mmだった。
得られたタンパク質吸着多孔膜を3本採取し、それぞれ製造例3と同様にモジュール(10A,10B,10C)を成形した。
モジュール10Aを評価例1に従って測定を実施し、多層度を算出すると、1.6であった。
モジュール10Bを評価例2に従って繰り返し動的吸着容量の評価を実施した。評価における通液液種、通液順、通液量、通液方向は実施例5と全く同じで行った。(すなわち、溶出工程において、反対方向への通液を行った。)
吸着1回目の動的吸着容量は10.4mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着容量は10.1mg/mLで保持率は97%であった。
[比較例9]
実施例10で製造したモジュール10Cに対して、評価例2に従って繰り返し動的吸着容量の評価を実施した。評価における通液液種、通液順、通液量、通液方向は比較例4と全く同じで行った。(すなわち、溶出工程において溶出液をすべて順方向に通液した。)
吸着1回目の動的吸着容量は10.6mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着量は9.9mg/mLで保持率は93%であった。
多層度1.6の場合、比較例9の保持率93%に対して、実施例10で保持率97%と保持率が向上した。保持率の向上度は104%となった。
[実施例11]
ナイロン6(0.2g)、塩化メチレン(10g)、蟻酸(0.1g)を室温で撹拌し、そこにt−ブチル次亜塩素酸ナトリウム(2g)を添加し、ナイロン6が溶解するのを待った。得られた溶液にさらに塩化メチレンを、全体質量が100gとなるように加えて、コーティング層形成のためのN−クロロ−ナイロン6溶液を得た。
孔径0.45μm、膜厚0.15mmのセルロース誘導体からなる多孔質平膜(日本ミリポア株式会社製)をN−クロロ−ナイロン6溶液に浸漬し、多孔質部に溶液が含浸するのを待った。溶液を含浸させた多孔質平膜から余剰の溶液を除去し、この膜をまず室温で乾燥し、次いで80℃の熱風循環乾燥器内で更に乾燥し、最後に140℃で15分間加熱することで、セルロース誘導体の多孔質平膜及びその表面を覆うN−クロロ−ナイロン6の被膜を有する平膜状の基材を得た。
グリシジルメタクリレート(GMA)5%、Tween80(関東化学株式会社製)0.3%及び亜ジチオン酸ナトリウム0.1%の組成を有するリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を反応容器内でよく撹拌した。このリン酸ナトリウム緩衝液に、上記の平膜状の基材を投入して、室温で12分間のグラフト重合反応を行った。反応後の膜を、純水、アセトンの順に洗浄の後、80℃で乾燥させることで、GMAがグラフト重合して形成されたグラフト鎖を有するグラフト多孔質平膜を得た。グラフト率は8%であった。
なお、このグラフト率は、N−クロローナイロン6で被膜される前の膜重量に対する、グラフト鎖重量で定義した。すなわちグラフト率は、上述の式(1)を変形した下記式(1)’により算出した。
Figure 0006087287
0:被膜する前の膜重量(g)
’:グラフト鎖導入前の基材重量(g)
1:グラフト重合後の重量(g)
グラフト多孔質平膜の入った反応容器に、50体積濃度のジエチルアミン水溶液を入れ、30℃で5時間を循環し、一終夜静置後、ジエチルアミン水溶液を排出した。次いで多孔質平膜を水で十分に洗浄し、乾燥させ、グラフト鎖にジエチルアミノ基を有するグラフト多孔質平膜をタンパク質吸着多孔膜として得た。上述の式(2)より求められるリガンド転化率は96%であった。
この多孔質平膜を用いて、平膜モジュール(11A,11B,11C)を成形した。
モジュール11Aを評価例1に従って測定を実施し、多層度を算出すると、1.2であった。
モジュール11Bを評価例2に従って繰り返し動的吸着容量の評価を実施した。すなわち、評価流速は、いずれの工程でも5MV/minで行った。吸着工程において、平膜の表面から裏面へと通液し、その後洗浄工程として、緩衝液を表面から裏面(順方向)へと通液した。そして、溶出工程として、塩緩衝液(順方向)、水酸化ナトリウム水溶液(反対方向)、塩緩衝液(反対方向)を通液した。ここで、反対方向とは、平膜の裏面から表面へと通液したことを意味する。
吸着1回目の動的吸着容量は7.7mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着容量は7.5mg/mLで保持率は97%であった。
[比較例10]
実施例11で製造したモジュール11Cに対して、上記実施例11と同様に繰り返し動的吸着容量を評価した。ただし、通液方向はすべて順方向で行った。
吸着1回目の動的吸着容量は8.4mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着量は7.9mg/mLで保持率は94%であった。
多層度1.2の場合、比較例10の保持率94%に対して、実施例11で保持率97%と保持率が向上した。保持率の向上度は103%となった。
[実施例12]
製造例1〜3で得られたタンパク質吸着膜多孔膜のモジュール3本に対して、90℃の熱水を1時間通液する処理を施した(モジュール12A,12B,12C)。
モジュール12Aを評価例1に従って測定を実施し、多層度を算出すると、4.7であった。 モジュール12Bを評価例2に従って繰り返し動的吸着容量の評価を実施した。吸着工程(緩衝液30mL、BSA溶液40mL)を内圧式(中空部内側から外側への通液)で行い、その後洗浄工程として、緩衝液10mLを順方向で通液した。そして、溶出工程として、塩緩衝液(15mL、順方向)、水酸化ナトリウム水溶液(20mL、反対方向)、塩緩衝液(20mL、反対方向)を通液した。
吸着1回目の動的吸着容量は58.5mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着容量は56.7mg/mLで保持率は97%であった。
[比較例11]
実施例12で製造したモジュール12Cに対して、溶出工程において、塩緩衝液(15mL、順方向)、水酸化ナトリウム水溶液(20mL、順方向)、塩緩衝液(20mL、順方向)と、溶出液をすべて順方向に通液した以外は、実施例5と同じように評価を行った。
吸着1回目の動的吸着容量は58.6mg/mLであり、10回繰返し後の動的吸着量は42.2mg/mLで保持率は72%であった。
90℃の熱水処理によって製造例1〜3の多層度は4.2から4.7へと大きくなった。また、比較例11の保持率72%に対して、実施例12で保持率97%と保持率が向上した。なお、保持率の向上度は、135%となった。
実施例12及び比較例11の結果を表4に示す。
Figure 0006087287
本出願は、2011年9月30日出願の日本特許出願(特願2011−217856号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明は、タンパク質吸着多孔膜を用いた、効率的なタンパク質の精製方法を提供することができる。そして、本発明は、抗体医薬を効率的に大量産生する上で、目的タンパク質の精製において産業上の利用可能性を有する。

Claims (13)

  1. タンパク質吸着能を有する高分子で基材表面が被覆された多孔膜によるタンパク質の精製方法であって、
    前記多孔膜の形状が中空糸膜であり、
    前記多孔膜の一方の面から他方の面に吸着対象タンパク質を含有する原液を通液させ、該吸着対象タンパク質を前記高分子に吸着させる吸着工程と、
    前記多孔膜に溶出液を通液させ、前記高分子に吸着された前記吸着対象タンパク質を該溶出液へ溶出させる溶出工程とを含み、
    前記溶出工程において、少なくとも1種の溶出液を前記他方の面から前記一方の面に通液させて、前記吸着工程における前記原液の通液方向とは反対方向に通液する、タンパク質の精製方法。
  2. 前記溶出液が、塩を含む水溶液、pHが調整された水溶液、水、有機溶剤、及びこれらの混合溶液からなる群から選ばれる、請求項1に記載のタンパク質の精製方法。
  3. 前記溶出工程において、前記吸着工程における前記原液の通液方向の順方向及び反対方向に前記溶出液を通液する、請求項1又は2に記載のタンパク質の精製方法。
  4. 前記高分子が前記基材表面にグラフトされ、かつ、前記高分子のグラフト率が5%以上200%以下である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のタンパク質の精製方法。
  5. 前記高分子のグラフト率が30%以上90%以下である、請求項4に記載のタンパク質の精製方法。
  6. 前記多孔膜がイオン交換膜であり、かつ、前記溶出液が塩を含む水溶液又はpHが調整された水溶液を含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のタンパク質の精製方法。
  7. 前記多孔膜の多層度が1.1以上である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のタンパク質の精製方法。
  8. 前記多孔膜が、弱塩基性陰イオン交換膜又は弱酸性陽イオン交換膜であり、かつ、
    前記溶出工程が、
    前記吸着対象タンパク質の等電点と前記多孔膜の等電点の間以外にpHが調整された水溶液を通液する工程、及び、
    塩を含む水溶液を通液する工程、を含み、
    いずれかの工程において、前記吸着工程における前記原液の通液方向とは反対方向に通液する、請求項6又は7に記載のタンパク質の精製方法。
  9. pHが調整された水溶液を通液する前記工程、及び、塩を含む水溶液を通液する前記工程において、前記吸着工程における前記原液の通液方向の反対方向に通液する、請求項8に記載のタンパク質の精製方法。
  10. 前記多孔膜が、弱塩基性陰イオン交換膜又は弱酸性陽イオン交換膜であり、かつ、
    前記溶出工程が、
    塩を含む水溶液を通液する第一の工程、
    前記吸着対象タンパク質の等電点と前記多孔膜の等電点の間以外にpHが調整された水溶液を通液する第二の工程、及び、
    塩を含む水溶液を通液する第三の工程、を含み、
    前記第一の工程において、前記吸着工程における前記原液の通液方向の順方向に通液し、
    前記第二の工程及び前記第三の工程において、吸着工程における前記原液の通液方向の反対方向に通液する、請求項6又は7に記載のタンパク質の精製方法。
  11. 前記溶出液が前記吸着対象タンパク質の安定pHで調整される、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のタンパク質の精製方法。
  12. 前記溶出液が0.3mol/L以上の中性塩を含む水溶液である、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のタンパク質の精製方法。
  13. 前記多孔膜が、液体又は蒸気により湿潤化した状態で50〜110℃に加熱する処理を行って製造される、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のタンパク質の精製方法。
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