JP6085240B2 - 芯材、及び、上側芯材撤去方法 - Google Patents
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土留め壁を用いる地下構造物の施工では、例えば、まず、SMW工法やTRD工法を用いて、地表面から不透水層に達するソイルモルタル製の土留め壁を構築する。この土留め壁の構築では、硬化前のソイルモルタル内に、H形鋼材からなる複数本の芯材(応力部材)を、互いに間隔を空けて並列に建て込む。ソイルモルタルの硬化後には、腹起し・切梁を掛けながら、施工場所の掘削を進める。次に、掘削された施工場所にて地下構造物の構築を行う。そして、地下構造物の構築後に、埋戻しを行いながら、腹起し・切梁の撤去を行う。
この点、特許文献1には、芯材の上側部分を撤去するための技術の一例が開示されている。
図1(A)は本発明の第1実施形態における土留め壁の概略構成を示しており、図1(B)のI−I断面に対応している。図1(B)は、土留め壁の平面図である。
尚、本実施形態では、後述するソイルモルタル製の土留め壁を例にとって本発明に係る土留め壁の説明を行うが、土留め壁はこれに限らない。
また、図1(A)及び(B)に示す土留め壁の高さ方向hと水平延在方向wと厚さ方向tとは、互いに直交しているとして、以下説明する。
土留め壁1は、地表面G2から不透水層G3まで到達するように構築されている。
芯材4は、地表面G2側から下方に向かって延在している。この延在方向は、土留め壁1の高さ方向hと平行である。
上側芯材11はH形鋼材からなり、ウェブ11aの両端部にフランジ11bを有する。換言すれば、上側芯材11は、互いに間隔を空けて対向する一対のフランジ11bと、これらフランジ間に位置してこれらフランジ同士をつなぐウェブ11aとを備える。
上側芯材11の上端面は地表面G2上に位置する。上側芯材11の下端面は、下側芯材12の上端面に対接する(換言すれば接触する)。
ここで、上側芯材11及び下側芯材12に用いられるH形鋼材の寸法としては、例えば、H−400×200、H−500×200、H−600×200を挙げることができるが、H形鋼材の寸法はこれらに限らない。
連結手段13の構成の詳細については後述する。
上側芯材11の長手方向の長さ(すなわち土留め壁1の高さ方向hでの長さ)については、芯材4のうち、地下構造物2の構築後、埋戻しが完了した後に撤去が要求される深さに基づいて設定される。本実施形態では、上側芯材11の長手方向の長さが、例えば1〜5m程度の範囲内である。
同様に、下側芯材12については、その一対のフランジ12b同士が、土留め壁1の厚さ方向tにて互いに対向するように、土留め壁1内に設置されている。また、隣り合う2つの下側芯材12については、一方の芯材12のウェブ12aの表面と、他方の芯材12のウェブ12aの表面とが、土留め壁1の水平延在方向wにて互いに対向するように、土留め壁1内に設置されている。
図2(A)は、連結手段13の側面図である。図2(B)は、連結手段13の正面図であり、図1(A)の部分P1に対応している。尚、図2(A)及び(B)では、図示簡略化のため、土留め壁1の図示を省略している。
第1固定板15、15は、上側芯材11の各フランジ11bの外面の下端部にそれぞれ配置されて固定されている。ここで、上側芯材11のフランジ11bの外面が、本発明の「上側芯材の側面」に対応する。第1固定板15は矩形板状であり、上側芯材11のフランジ11bと略同等の幅を有している。第1固定板15は、その内面15aが、上側芯材11のフランジ11bの外面の下端部に面接触している。第1固定板15は、その上端縁及び下端縁にて、上側芯材11のフランジ11bの外面の下端部に溶接固定されている。
第2固定板16は、上側芯材11のフランジ11b及び下側芯材12のフランジ12bの略同等の幅を有している。第2固定板16は、その下端縁にて、下側芯材12のフランジ12bの外面の上端部に溶接固定されている。
ワイヤー17は、地表面G2側から下方に向かい、溝部20にその上端部23から挿入されて、溝部20の下端部24に至るように延在している。ここで、ワイヤー17にはグリス等が予め塗布され得る。
板状部材26は、土留め壁1の厚さ方向tに延在し、その両端が、第2固定板16、16の上部の側部に溶接固定されている。従って、板状部材26は、下側芯材12の一対のフランジ12b、12bにそれぞれ固定された第2固定板16、16の上部同士を接続するように延在している。一対の板状部材26により、第2固定板16、16間の開きが抑制される。
図3は、上側芯材11の撤去方法を示す図である。尚、図3(A)及び(B)では、図示簡略化のため、土留め壁1の図示を省略している。
図4(A)は、本参考例における芯材4の連結手段30の概略構成を示す正面図である。図4(B)は、連結手段30の上面図である。図5(A)は、第1定着具35の断面図であり、図4(A)の部分P2に対応している。図5(B)は、第2定着具36の断面図であり、図4(A)の部分P3に対応している。
図1〜図3に示した第1実施形態と異なる点について説明する。
連結手段30は、上側芯材11の上端に設けられた水平矩形板状の金属製の第1エンドプレート31と、上側芯材11の下端に設けられた水平矩形板状の金属製の第2エンドプレート32と、下側芯材12の上端に設けられた水平矩形板状の金属製の第3エンドプレート33と、複数本(本参考例では10本)のPC鋼線(シングルストランド)34と、PC鋼線34用の複数個(本参考例では10個)の第1定着具35と、PC鋼線34用の複数個(本参考例では10個)の第2定着具36と、を含んで構成される。尚、連結手段30を構成する第1エンドプレート31、第2エンドプレート32、第3エンドプレート33、PC鋼線34、第1定着具35、及び第2定着具36の個数は、芯材4を構成するH形鋼材の寸法や、必要とされる強度に応じて、適宜設定される。
第1エンドプレート31には、上下方向に貫通する複数個(本参考例では10個)の第1貫通孔37が形成されている(図5(A)参照)。第1貫通孔37は、その内径が、PC鋼線34の外径よりも若干大きい。本実施形態では、第1エンドプレート31のうち、その周縁部と上側芯材11のウェブ11aの各表面との間の部分に、それぞれ、2個の第1貫通孔37が、上側芯材11のウェブ11aの表面に沿うように、互いに間隔を空けて形成されている。また、第1エンドプレート31のうち、その周縁部と上側芯材11の各フランジ11bの外面との間の部分に、それぞれ、3個の第1貫通孔37が、上側芯材11のフランジ11bの外面に沿うように、互いに間隔を空けて形成されている。
第1エンドプレート31の上面のうち第1貫通孔37に対応する部分には、第1定着具35が載置される。
第2エンドプレート32には、上下方向に貫通する複数個(本参考例では4個)の第2貫通孔38が形成されている(図5(B)参照)。第2貫通孔38は、その内径が、PC鋼線34の外径よりも若干大きい。本実施形態では、第2エンドプレート32のうち、その周縁部と上側芯材11のウェブ11aの各表面との間の部分に、それぞれ、2個の第2貫通孔38が、上側芯材11のウェブ11aの表面に沿うように、互いに間隔を空けて形成されている。これら第2貫通孔38の上方には、第1貫通孔37が位置している。すなわち、第2貫通孔38は、第2エンドプレート32のうち第1貫通孔37に対応する部分に形成されている。
第3エンドプレート33は、その下面が下側芯材12の上端面に接触した状態で下側芯材12に溶接固定されている。
第3エンドプレート33には、上下方向に貫通する複数個(本参考例では10個)の第3貫通孔39が形成されている(図5(B)参照)。第3貫通孔39は、その内径が、PC鋼線34の外径よりも若干大きい。本実施形態では、第3エンドプレート33のうち、その周縁部と下側芯材12のウェブ12aの各表面との間の部分に、それぞれ、2個の第3貫通孔39が、下側芯材12のウェブ12aの表面に沿うように、互いに間隔を空けて形成されている。また、第3エンドプレート33のうち、その周縁部と下側芯材12の各フランジ12bの外面との間の部分に、それぞれ、3個の第3貫通孔39が、下側芯材12のフランジ12bの外面に沿うように、互いに間隔を空けて形成されている。これら第3貫通孔39の上方には、第1貫通孔37が位置している。すなわち、第3貫通孔39は、第3エンドプレート33のうち第1貫通孔37に対応する部分に形成されている。
第3エンドプレート33の下面のうち第3貫通孔39に対応する部分には、第2定着具36の、後述する第2アンカーヘッド43が、その上端部の単数又は複数箇所(例えば2ヶ所)にて点付溶接で固定されている。
同様に、第2定着具36は、PC鋼線34を貫通させる孔を有する第2アンカーヘッド43と、この第2アンカーヘッド43の孔内に挿入されてPC鋼線34を周囲から把持する第2くさび44と、を備える。
地下構造物2の構築後、埋戻しが完了すると、まず、各芯材4の連結手段30を構成する各PC鋼線34をジャッキ等で地表面G2側から引き上げて、第1くさび42を第1アンカーヘッド41の孔内から除去して、PC鋼線34の緊張力を解除する。これにより、第1定着具35によるPC鋼線34の第1エンドプレート31への固定が解除される。このときには第1アンカーヘッド41も撤去され得る。
次に、地表面G2側から上側芯材11を引き上げる。この上側芯材11の引き上げ時には、上側芯材11の上端部に油圧ショベル等により水平力を加えることで、ソイルモルタルにひびが入り付着が切れるので、土留め壁1内から上側芯材11を簡単に引き抜くことができる。
図6(A)は、本参考例における芯材4の連結手段50の概略構成を示す側面図である。図6(B)は、連結手段50を構成する連結板51の概略構成を示す図である。図6(C)は、図6(A)のII−II断面の一部を示す図である。尚、図6(A)及び(C)では、図示簡略化のため、土留め壁1の図示を省略している。
図1〜図3に示した第1実施形態と異なる点について説明する。
本参考例において、芯材4は、連結手段13に代えて、連結手段50を含んで構成されている。
連結板51は、長辺51a及び短辺51bからなる矩形状であり、長辺51aが、鉛直方向(土留め壁1の高さ方向h)に沿うように配置されている。
連結板51には、その下側の短辺51bの中央部から上方に延びて連結板51の上部に至るようにスリット部55が形成されている。
貫通孔56は、連結板51の下部に形成されており、その内径が、ボルト52の雄ねじ部52aの外径よりも若干大きい。
第1スリット部57はスリット部55の上部をなす。第1スリット部57は、その下端が貫通孔56の上端部に連続して上方に延びている。第1スリット部57は、その幅が、ボルト52の雄ねじ部52aの外径よりも小さい。第1スリット部57は、上方に向かうほど狭幅となるような逆Y字状をなしている。従って、第1スリット部57と貫通孔56とにより形成される貫通部は、ティアドロップ状をなしている。
第2スリット部58はスリット部55の下部をなす。第2スリット部58は、その上端が貫通孔56の下端部に連続して下端が連結板51の下端(下側の短辺51bの中央部)に達するように延びている。第2スリット部58は、その幅が、ボルト52の雄ねじ部52aの外径よりも小さい。
また、上側芯材11の各フランジ11bの外面の下端部に、それぞれ、2枚の連結板51が、その上部にて溶接固定されている。これら連結板51は、上側芯材11のフランジ11bの外面の下端部と下側芯材12のフランジ12bの外面の上端部とに跨るように配置されている。
尚、図6(A)は、2枚の連結板51を上側芯材11のウェブ11aの一方の表面の下端部に溶接固定している例を示しているが、この他、2枚の連結板51の一方を上側芯材11のウェブ11aの一方の表面の下端部に溶接固定し、他方の連結板51を上側芯材11のウェブ11aの他方の表面の下端部に溶接固定してもよい。
連結板51の貫通孔56及び前記貫通孔60にボルト52を挿入してナット53で止めることで、連結板51が下側芯材12の上端部にボルト固定される。
ここで、ボルト52が、本参考例における「下側芯材12の上端部に設けられて外方に突出する突出部」に対応する。
地下構造物2の構築後、埋戻しが完了すると、まず、地表面G2側から上側芯材11の上端部に下向きの荷重を加えて上側芯材11を3〜4cm程度押し下げることにより、ボルト52を介して、スリット部55(貫通孔56、第1スリット部57、及び第2スリット部58)を押し広げる。ここで、図7は、スリット部55が押し広げられた状態(連結板51が塑性変形した状態)を示している。このように連結板51が塑性変形してスリット部55が押し広げられることにより、幅狭な第2スリット部58の上端部にて係止されていたボルト52の雄ねじ部52aの係止状態が解除されるので、連結手段50による上側芯材11と下側芯材12との連結が解除される。
尚、地表面G2側から上側芯材11の上端部に下向きの荷重を加える手法としては、上側芯材11の上端部をハンマーで叩く手法や、上側芯材11の上端部からジャッキで押し込む手法等を挙げることができる。
本変形例では、下側芯材12の上端面と上側芯材11の下端面との間(空隙S1)に、圧縮変形可能なスペーサー部材70が介装されている。スペーサー部材70は、発泡スチロール等の樹脂によって形成され得る。
例えば、土留め壁1を構築する方法として、まず、土留め壁1の構築予定場所に対応する掘削孔を地盤に形成する。この掘削孔については、地表面G2側から地下に向けて地盤を掘削することにより形成される。次に、芯材4を掘削孔内に設置する。次に、掘削孔内に、ソイルモルタルを充填して土留め壁1を構築する。
2 地下構造物
4 芯材
11 上側芯材
11a ウェブ
11b フランジ
12 下側芯材
12a ウェブ
12b フランジ
13 連結手段
15 第1固定板
15a 内面
15b 外面
16 第2固定板
16a、16b 内面
17 ワイヤー
20 溝部
21 第1溝部
22 第2溝部
23 上端部
24 下端部
26 板状部材
30 連結手段
31 第1エンドプレート
32 第2エンドプレート
33 第3エンドプレート
34 PC鋼線
35 第1定着具
36 第2定着具
37 第1貫通孔
38 第2貫通孔
39 第3貫通孔
41 第1アンカーヘッド
42 第1くさび
43 第2アンカーヘッド
44 第2くさび
50 連結手段
51 連結板
51a 長辺
51b 短辺
52 ボルト
52a 雄ねじ部
53 ナット
55 スリット部
56 貫通孔
57 第1スリット部
58 第2スリット部
60 貫通孔
70 スペーサー部材
Claims (7)
- 地表面側から下方に向かって延在する芯材であって、
上下方向に延在して前記芯材の上部をなす上側芯材と、
上下方向に延在し、前記芯材の下部をなして、上端面が前記上側芯材の下端面に対接する下側芯材と、
前記上側芯材と前記下側芯材とを連結する連結手段と、
を含んで構成され、
前記連結手段は、
前記上側芯材の側面の下端部に内面が接触して固定される一方、前記上側芯材の側面に垂直な方向で見て、水平面に対して傾斜するように延びる第1溝部が外面に形成された第1固定板と、
前記下側芯材の側面の上端部に固定されて、前記第1固定板の外面に内面が接触し、かつ、この内面のうち前記第1溝部に対向する部分に第2溝部が形成された第2固定板と、
前記第1溝部及び前記第2溝部からなる溝部に挿入されるワイヤーと、
を備え、
前記ワイヤーは、地表面側から下方に向かい、前記溝部にその上端部から挿入されて、前記溝部の下端部に至るように延在する、芯材。 - 前記上側芯材と前記下側芯材とは、各々が、互いに間隔を空けて対向する一対のフランジとこれらフランジ同士をつなぐウェブとからなる形鋼材によって構成され、
前記第1固定板が固定される前記上側芯材の側面は、前記上側芯材のフランジ外面であり、
前記第2固定板が固定される前記下側芯材の側面は、前記下側芯材のフランジ外面であり、
前記第1溝部は、前記上側芯材のフランジ外面に垂直な方向で見て、水平面に対して傾斜するように延びる、請求項1に記載の芯材。 - 前記連結手段は、前記下側芯材の一対のフランジにそれぞれ固定された前記第2固定板の上部同士を接続するように延在する板状部材を更に備える、請求項2に記載の芯材。
- 前記第1溝部及び前記第2溝部は、各々の断面形状が半円状である、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の芯材。
- 前記溝部と前記水平面とがなす角の角度は20°以上45°以下の範囲内である、請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の芯材。
- 前記芯材は土留め壁内に設置される、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の芯材。
- 請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の芯材の前記上側芯材を前記下側芯材から撤去する方法であって、
地表面側から前記ワイヤーを引き上げて前記溝部内のワイヤーを除去することにより、前記第1固定板と前記第2固定板との連結を解除する工程と、
地表面側から前記上側芯材を引き上げる工程と、
を含む、上側芯材撤去方法。
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