以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態のスライドアシスト装置は、戸車付きの非吊下式の引戸に適用したものであるが、本発明のスライドアシスト装置は戸車なしの非吊下式引戸や、吊下式引戸等、その他の引戸にも適用することができる。また、本実施形態のスライドアシスト装置は、引戸に対し閉止方向についてスライドアシスト力を付与するものとなされているが、開方向についてアシスト力を付与するものであってもよい。もちろん、開閉各方向についてスライドアシスト力を付与するスライドアシスト装置を引戸に設けるものであってもよい。
図1は本実施形態のスライドアシスト装置を一部分解した状態で示す斜視図であり、図2は同装置を一部切り欠いた状態で示す正面図である。なお、以下、便宜上、各図における+X方向を右方向、+Y方向を後方向、+Z方向を上方向として説明するが、これらの方向の表現については特に限定されるものではなく、単に本実施形態の装置内における相対的な位置関係を表したものである。
まず、本実施形態のスライドアシスト装置1が取り付けられる引戸Dの構造について簡単に説明する。引戸構造は、構造物の開口部を開閉する引戸Dと、この引戸Dが内側でスライド移動する戸枠(不図示)とを備える。引戸Dは、戸本体D1と、戸本体D1の下部に取り付けられた左右一対の戸車(不図示)とを備える。なお、この戸車には高さ調節機構(不図示)が設けられ、例えば経年によって戸枠(特に側部内面)との間に隙間が生じた場合でも戸本体D1を傾斜させて閉め残しを解消することができるものとなされている。
一方、戸枠(構造物に含まれる)は、鴨居下面に設けられ引戸Dのスライド方向をガイドするガイドレールLと、敷居に設けられ引戸Dの戸車が案内される案内溝(不図示)とを含み、このガイドレールLおよび案内溝に沿って引戸Dが開閉される。すなわち、引戸Dは、その頂部に配設された後述の第1および第2のガイドユニット10,11がガイドレールLに挿通されることにより上部が案内されるとともに、その下部の戸車が上記案内溝に挿通されることにより下部が案内される。
そして、本実施形態のスライドアシスト装置1は、この引戸Dの頂部に配設された第1ガイドユニット10と、ガイドレールLの天面に固定される受け部材5とを備えて構成されている。
第1ガイドユニット10は、引戸Dに固定された引戸固定体2と、この引戸固定体2に連結部23を介して取り付けられ引戸Dのスライドアシスト機能を有するアシスト装置本体3とを備え、第2ガイドユニット11とともに引戸Dのスライド移動を案内するものとなされている。第2ガイドユニット11は、引戸Dに固定された第2引戸固定体12と、この第2引戸固定体12に取り付けられたガイドローラユニット13とを備え、高さ調節機構14によってガイドローラユニット13の引戸Dからの突出高さ位置を調整し得るものとなされている。なお、本実施形態のような下支え形式の引戸Dにおいては、この第2ガイドユニット11を適宜省略することもできる。
このスライドアシスト装置1は、アシスト装置本体3(以下、単に「装置本体」という)と受け部材5とが協働して付勢力を蓄積または解放可能に構成され、引戸Dの閉止速度が速い場合など付勢力が解放される際に装置本体3に受け部材5が係合して装置本体3に制動力が作用するようになされているとともに、上記解放された付勢力をスライドアシスト力として引戸Dに対して付与されるようになっている。以下、具体的に説明する。
引戸固定体2は、既に公知であるので詳細な説明は省略するが、装置本体3を引戸Dに固定するためのものであり、連結部23を介して装置本体3の第1エッジブロック312に固定されている。引戸固定体2の引戸Dに対する固定構造についても、既に公知であるのでここでは詳しい説明を省略する。
装置本体3は、図1および図2に示すように、引戸固定体2に取り付けられた枠体31と、この枠体31内に一端(本実施形態では右端)がフリー状態で収容される引きバネ32(弾性部材に相当)と、枠体31内に一端(本実施形態では右端)がフリー状態でかつ引きバネ32と並列に収容されたダンパー部材33と、この引きバネ32およびダンパー部材33のフリー端部に取り付けられたスライド部材34とを備え、上記付勢力としての引きバネ32の弾性力を蓄積または解放可能に構成されている。
具体的には、装置本体3は、角筒状の枠体31と、枠体31内であって第2エッジブロック313に一端が固定された引きバネ32と、枠体31内でこの引きバネ32と前後に並設されるとともに第2エッジブロック313に一端が固定されたダンパー部材33と、この引きバネ32およびダンパー部材33の他端であるフリー端部に取り付けられ、枠体31内をその長手方向に沿ってスライド可能なスライド部材34とを備える。なお、図1では、引きバネ32は、ダンパー部材33の前後に一対配設されているが、ダンパー部材33の前後いずれか一方に一本の引きバネ32を備えるものとしても良い。
枠体31は、左右方向(引戸Dの開閉方向)に細長い角筒状の枠本体311と、この枠本体311の長手方向一端部(右端部)に嵌め込まれる第1エッジブロック312と、枠本体311の長手方向他端部(左端部)に嵌め込まれる第2エッジブロック313とを備え、第1エッジブロック312において引戸固定体2の連結部23に連結されている。
この第1エッジブロック312には、ガイドレールL内を転動する左右一対のガイドローラ316が設けられており、第2エッジブロック312に設けられたガイドローラ317とともに装置本体3をガイドレールL内で円滑にスライドし得るように構成されている。
一方、枠本体311に戻って、枠本体311は、図4(b)に二点鎖線で示すように、上下各部枠体からなり、下部枠体の底板は前後方向中央部が下方に突出して構成されており、この突出部分も含めて底板上をスライド部材34が摺動し得るものとなされている。この枠本体311には、図1に示すように、その上面壁に左右方向に細長く延びるガイドスリット311aと、このガイドスリット311aに連設され、ガイドスリット311aに対して拡幅された姿勢切換孔311b(本実施形態では角形)とが設けられている。ガイドスリット311aは、枠本体311の上面壁の左右方向の中央部を始点にして右方へ延設されている。このガイドスリット311aの前後幅は、スライド部材34の後述する係合ブロック82における受け係合部821の前後幅よりも狭く設定され、スライド部材34の係合ブロック82がこのスリット311aを通じて枠本体311内に没入しないように構成されている。
なお、図2に示すように、ガイドスリット311aと姿勢切換孔311bとの間のガイドスリット311aを挟む枠体部分311cはそれぞれ下方に舌状に垂下して構成され、この枠体部分311cに係合ブロック82が後述する解除姿勢において係合するものとなされている。
また、姿勢切換孔311bは、ガイドスリット311aの右端部に連設されている。この姿勢切換孔311bは、ガイドスリット311aよりも前後に拡幅して構成され、係合ブロック82の受け係合部821よりも幅広に構成されている。従って、この姿勢切換孔311bは、スライド部材34がこの姿勢切換孔311bに至った場合にスライド部材34の係合ブロック82がこの姿勢切換孔311bを通してその一部(具体的には受け係合部821)が枠本体311内に進退可能に構成されている。
引きバネ32は、第2エッジブロック313とスライド部材34との間に介設され、スライド部材34に付勢力を付与するためのものである。具体的には、引きバネ32の一端部は第2エッジブロック313の右端部に係止されることにより枠体31に固定され、フリー端部である他端部がスライド部材34の係合ブロック82の左端部に係止され、これにより引きバネ32が各部材313,34間に張設されている。なお、この引きバネ32に代えて、天然ゴムや合成樹脂等からなる弾性部材(例えばゴムバンド)を用いても良い。
ダンパー部材33は、シリンダと該シリンダ内に嵌め込まれるピストンロッドとを備えた直動式ダンパーであり、引きバネ32の付勢力または引戸Dのスライド力に対して緩衝効果を付与するものである。このダンパー部材33は、第2エッジブロック313とスライド部材34の間に架設され、引きバネ32の間において該引きバネ32と並列に配置されている。具体的には、ダンパー部材33の一端部は第2エッジブロック313の右端部に係止されることにより枠体31に固定され、フリー端部である他端部がスライド部材34の後述するスライドブロック80の左端部に係止され、これによりダンパー部材33が各部材313,34の間に架設されている。
スライド部材34は、ダンパー部材33のフリー端部が係止されるスライドブロック80(スライド本体に相当)と、引きバネ32のフリー端部が係止され、スライドブロック80に対して引戸Dの開閉方向(以下単に「開閉方向」という)にスライド可能に取り付けられた係合ブロック82(係合体に相当)とを備えている。このスライド部材34は、ガイドスリット311aの左端部に対応する初期位置と、枠体31の姿勢切換孔311bに対応する所定の保持位置との間を引戸Dの開閉操作に伴って枠体31に対して相対的にスライド移動するようになされている。なお、スライド部材34が初期位置にある場合には、引戸Dは閉止位置にあるようになされている。
図3はスライド部材を分解して示す斜視図であり、図4、図5はそれぞれスライドブロック、係合ブロックとを示す正面図及び側面図である。
スライドブロック80は、枠本体311内を摺動可能に構成されている。具体的には、このスライドブロック80は、開閉方向(左右方向)に沿って延びる支承部801と、支承部801の中間部に上方に突出する態様で立設された係合突出部802と、支承部801の左端部に設けられたダンパー取付部803と、支承部801の右端部に設けられた連係部804と、ダンパー取付部803の支承部801側に取り付けられるクッション体805とを備え、枠本体311の底面上に摺接可能に構成されている。
支承部801は、後述する解除姿勢にある係合ブロック82を上縁部において下方から支承するものであり、偏平長尺のブロック形状を呈する。この支承部801は、長手方向中間部において高さが変更されている。すなわち、支承部801は、右側の低位支承部801aと、左側の高位支承部801bとを有し、各支承部801a、801bの双方で、解除姿勢の係合ブロック82を支承するものとなされている。
係合突出部802は、開放状態にある引戸Dの閉操作時の移動速度が速い場合に受け部材5と係合し、ダンパー部材33の緩衝効果によってその移動速度を減殺するものである。この係合突出部802は、その前後幅がガイドスリット311aよりも小さく構成された角柱状を呈し、スライドブロック80が枠本体311に内装された状態でガイドスリット311aを通じて枠本体311から上方に突出するようになされている。
この係合突出部802は、支承部801の低位支承部801aと高位支承部801bとの境界部に垂直に立設され、係合ブロック82のガイド孔部823aに挿入されている。本実施形態の係合突出部802は、連係部804を補助する補助連係部(他の連係部に相当)としての役目も兼ね備える。すなわち、係合突出部802は、スライドブロック80が受け部材5と係合して係合ブロック82に対して相対的にスライド移動した場合に、左側面(作用面)802aが解除姿勢にある係合ブロック82、具体的には後述する補強突出部824aの右側面824a(及びガイド孔部823aの一端部内面823c)と所定の角度をもって片当たりすることにより、係合ブロック82に対し受け部材5側のモーメントを作用させ、該係合ブロック82を係合姿勢に切り換えるものとなされている。そして、作用面802aは、係合ブロック82を係合姿勢に切り換えた状態で、上記右側面824a及び一端部内面823cと密着状態に当接するものとなされている。この作用面802aは、支承部801に対して垂直に立設された平面として構成されている。この作用面802aの具体的な作用については、連係部804の作用とともに後述する。
ダンパー取付部803は、ダンパー部材33のフリー端部が取り付けられるものであり、スライドブロック80の姿勢を安定させる機能を併せもつ。このダンパー取付部803は、支承部801の左端部に取り付けられた摺動部803aと、摺動部803aの上方に突設された取付本体部803bとを有する。
摺動部803aは、その底面が枠本体311の内底面形状に沿って略逆ハット状に構成され、これにより前後に摺動翼部を有する。なお、この摺動翼部の下面は、枠本体311の下部突出部を挟む両側の底板部分に摺接するものとなされ、これによりスライドブロック80の姿勢を安定させている(図4(b)参照)。また、この摺動翼部における下面の高さ位置は、支承部801の低位支承部801aの上縁高さと一致している。一方、取付本体部803bは、直方体状を呈し、右端部に平面視T字状のクッション取付孔803cが上下に延設されている。このクッション取付孔803cには、上記したように、クッション体805が嵌着される。
ダンパー取付部803は、図4に明示するように、クッション取付孔803cと反対側の端部(左端部)に左方を開口させた状態でダンパ取付孔803dが設けられている。このダンパ取付孔803dは、ダンパー部材33の一端部を下方から差し込むことができるように下方に開口しており、左右方向の奥部が前後方向に拡幅してダンパー部材33を係止可能に構成されている。
連係部804は、スライドブロック80が受け部材5と係合して係合ブロック82に対して相対的にスライド移動した場合に、解除姿勢にある係合ブロック82と係合して該係合ブロック82を係合姿勢に切り換えるものであり、本実施形態では支承部801と一体に設けられている。
連係部804は、右端部に向かって上方に傾斜する傾斜部804aを有し、正面視三角形状を呈する。言い換えると、傾斜部804aは、係合突出部802から離反する方向に向かって受け部材5側(上方)に傾斜し、これにより正面視において上方向及び左方向の成分を含む法線を有する。この結果、支承部801に解除姿勢にある係合ブロック82が支承されている場合にスライドブロック80が係合ブロック82に対し離反方向へ移動した場合には、係合ブロック82の先端部(右端部)が傾斜部804aに差しかかって、この傾斜部804aに沿って上方、すなわち受け部材5側に押し出され、この係合ブロック82が係合姿勢に変更される。
傾斜部804aは、係合ブロック82と接触して係合ブロック82を押し出すものであり、本実施形態では平面として構成されているが、曲面、波面等、その他の面であってもよく、また面に代えて先端に向かうテーパーを有するように構成してもよく、例えば直線、曲線、波線等により構成されるものであっても良い。要は、傾斜部804aに沿って係合ブロック82を押し出し可能であれば、その具体的構成は種々変更可能である。
また、傾斜部804aの支承部801の延長線に対する傾斜角度αは、本実施形態では約45度に設定されている。この傾斜角度は、大きすぎると係合ブロック82の円滑な押し出しに支障をきたす虞があり、小さすぎるとスライドブロック80と係合ブロック82との相対的なスライド量が大きくなるので全体的に大きくなってコンパクトに構成し難くなる。従って、傾斜部804aの傾斜角度としては20度〜70度の範囲で設定されるのが好ましい。
クッション体805は、軟質合成樹脂の一体成形品であり、平面視T字状を呈する。このクッション体805は、取付本体部803bのクッション取付孔803cに先端部(右端部)が突出した状態で嵌入されている。これによりクッション体805は、係合ブロック82と取付本体部803bとの間に介在して係合ブロック82のスライドブロック80に対する衝突を緩和するものとなされている。
係合ブロック82は、引戸Dの開放動作に伴いスライド部材34の初期位置から保持位置に至るまでの間、受け部材5に係合し(係合姿勢)、スライド部材34が保持位置に至ることにより姿勢切換孔311bを通じて枠体31内に没入することにより受け部材5との係合状態が解除される(解除姿勢)ものであり、この解除姿勢では枠本体311と係合してスライド部材34をその保持位置に停止保持させるためのものである。すなわち、係合ブロック82は、受け部材5と係合する係合姿勢及びその係合状態を解除する解除姿勢を切換可能に構成されている。
また、係合ブロック82は、引戸Dの閉止動作に伴い受け部材5と再係合し、スライド部材34の停止保持状態を解除するとともに受け部材5と協働して上記解除に伴い引きバネ32の弾性力を引戸Dにスライドアシスト力として付与するように機能する。
この係合ブロック82は、開閉方向に沿って延び、正面視で右方に向かって先細り状に構成された正面視略三角形状を呈し(図5(a)参照)、スライドブロック80の支承部801に開閉方向にスライド可能に支承されている。
具体的には、係合ブロック82は、受け部材5と係合する受け係合部821と、この受け係合部821の下方に配置された首部822と、首部822の左端部に配置されスライドブロック80に開閉方向にスライド可能に取り付けられる取付基体823と、この取付基体823の左部上面に突設された補強突出部824と、取付基体823の前後両側面における下端部から左端部にかけて前後方向に突設された翼状部825とを備え、これらが一体に成形されている。
受け係合部821は、受け部材5に対して係脱する部材であり、右端部が先端に向かって下方に傾斜するように構成されている。この受け係合部821は、その前後幅がガイドスリット311aの前後幅よりも大きく、かつ、姿勢切換孔311bの前後幅よりも小さく寸法設定されているとともに、左右寸法が姿勢切換孔311bの左右寸法よりも短く設定されている。受け係合部821の左側面は、係合姿勢で垂直面となるように構成されており、この垂直面が受け部材5に当接することにより受け部材5に係合するものとなされている。
受け係合部821は、ガイドスリット311aの範囲内にあるとき、ガイドスリット311aから上方に突出した状態にあり、この状態で受け部材5に係合している。また、受け係合部821は、係合ブロック82が姿勢切換孔311bに至ることにより、姿勢切換孔311bを通じて枠本体311内に没入するように構成され、この没入に伴い受け部材5との係合状態が解除されるとともに、解除姿勢で枠本体311の下方に垂下した枠体部分311cと係合するものとなされている。
首部822は、係合ブロック82の係合姿勢で、取付基体823の上縁に対して上方で受け係合部821を支持する部材である。この首部822は、受け係合部821に対して狭幅に構成され、その前後幅がガイドスリット311aよりも小さくなるように寸法設定されている。首部822は、係合姿勢において、先端(右端)に向かって上方に傾斜する傾斜面822aを有し、この傾斜面822aが連係部804に係合するものとなされている。
取付基体823は、上記したように、スライドブロック80に対して開閉方向にスライド可能に取り付けるためのものである。この取付基体823は、解除姿勢で受け係合部821を枠本体311内に没入させるために、底面が右端部に向けて上方に傾斜して構成されている。
この取付基体823は、左右方向の中央部やや左寄りに、スライドブロック80の係合突出部802を遊嵌させるためのガイド孔部823aが上下に貫通して設けられている。このガイド孔部823aは、平面視において左右方向に細長い矩形状の孔であり、このガイド孔部823a内を係合突出部802が相対的に移動することにより、係合ブロック82がスライドブロック80に対して開閉方向にスライド可能に取り付けられている。従って、ガイド孔部823aの前後幅は、係合突出部802の前後幅と同等ないしは若干大きく寸法設定され、左右長さは、係合突出部802の左右長さよりも長く寸法設定されている。
このガイド孔部823aの前後左右の内面のうち、左側内面823cは、受け係合部821の左側面と平行に配置され、係合ブロック82の係合姿勢において垂直面となるように設定されている。これにより、左側内面823cは、解除姿勢では支承部801に対して傾斜するように構成されている。この左側内面823cは、後述する補強突出部824の右側面と連続して形成されており、この右側面及び係合突出部802と協働して、係合ブロック82の姿勢を切り換えるものとなされているが、その具体的な作用については、後述する。
取付基体823の左端下面には、スライドブロック80の高位支承部801bが遊嵌される支承溝部823bが下方に開口した状態で左右に延設されている。この支承溝部823bは、右端部がガイド孔部823aに連通しており、この支承溝部823bの奥底面は、解除姿勢において、高位支承部801bに当接しており、これにより係合ブロック82は高位支承部801bにおいても支承されている。
補強突出部824は、スライドブロック80の係合突出部802に係合姿勢で当接して係合突出部802に作用する外力を分散させるためのものであり、正面視台形状を呈する。この補強突出部824は、ガイド孔部823aの左方に連続して設けられ、右側面824aがガイド孔部823aの左側内面823cに連続して設けられている。すなわち、この補強突出部824の右側面824aも、受け係合部821の左側面と平行に配置され、係合ブロック82の係合姿勢において垂直面となるように設定されている。これにより、この右側面824aは、解除姿勢では支承部801に対して傾斜するように構成され、スライドブロック80が相対移動した場合に、係合突出部802の左側面802aに当接するものとなされている。すなわち、ガイド孔部823aの左側内面823c、及び補強突出部824の右側面824aが本発明にいう姿勢切換面に相当する。
翼状部825は、引きバネ32が取り付けられるとともに、係合ブロック82の解除姿勢において枠本体311の底板に当接するものである。翼状部825は、上記したように、取付基体823の前後両側面における下端部から左端部にかけて前後方向に突設されている。この翼状部825の上端部には、引きバネ32が係止されるバネ係止溝825aが前後一対設けられている。このバネ係止溝825aは、左右方向に延び、側面視長円形の溝部を構成し(図5(b)参照)、引きバネ32のフリー端部を係止し得るものとなされている。
この係合ブロック82は、次のようにしてスライドブロック80に開閉方向にスライド可能に組み付けられる。すなわち、図3に示すように、係合ブロック82の受け係合部821をスライドブロック80の連係部804に対応させた状態で、係合ブロック82のガイド孔部823aにスライドブロック80の係合突出部802を挿入する。この状態では、図6に示すように、係合突出部802の上端部が係合ブロック82から突出し、係合ブロック82はガイド孔部823a内を左右方向に移動可能であることから、係合ブロック82はスライドブロック80に対し開閉方向(左右方向)にスライド可能に構成されている。
受け部材5は、装置本体3、詳しくは装置本体3の係合突出部802または受け係合部821と係合して、装置本体3に制動力やスライドアシスト力を付与するものである。この受け部材5は、図1に示すように左右方向に細長い板状体を曲折された形状を呈し、下方に突出する受け突部51が構成されている。この受け突部51の左右幅は、スライド部材34の係合突出部802と受け係合部821との間隔よりも小さく形成されている。
以上のように構成されたスライドアシスト装置1の作用について、図6を用いて説明する。図6はスライド部材の姿勢(作用)を示す概念図であり、(a)は係合ブロックが解除姿勢にある状態を示し、(b)は同ブロックが途中姿勢にある状態を示し、(c)は同ブロックが係合姿勢にある状態を示している。
引戸Dのスライドアシスト力の作用について説明しつつ、係合ブロック82の姿勢切換の作用についても合わせて説明する。
まず、閉止状態にある引戸Dを開放する場合の機能について説明する。
スライド部材34は、引戸Dの閉止状態において初期位置にあり、ガイドスリット311aの左端部に位置している。この引戸の閉止状態において、図2に示すように、スライド部材34の係合ブロック82は、その受け係合部821がガイドスリット311aを通じて枠体31から上方に突出した係合姿勢に設定されている(図6(c)参照)。この係合姿勢では、受け係合部821の左端面が受け部材5の受け突部51の右側面に係合した状態になっている。
そして、この閉止状態から引戸Dを左方へ移動させて開放していくと、この開放に伴い装置本体3も左方へ移動するが、受け係合部821が受け突部51に係合しているため、スライド部材34の移動が妨げられる。このため、スライド部材34は、ガイドスリット311aに沿って枠体31に対して相対的に右方に移動する。このスライド部材34の移動に伴い引きバネ32が伸長し、これによりスライド部材34に引きバネ32の付勢力が蓄積される。
引戸Dを継続して開放していくと、引戸Dが所定の開閉途中位置に達し、このときスライド部材34の受け係合部821が姿勢切換孔311bに達する。この状態からさらに引戸Dが開放されると、受け係合部821が受け突部51によって右方へ向かって押圧され、受け係合部821が連係部804の傾斜部804aに沿ってスライドブロック80を右方に押しのけながら(係合ブロック82がスライドブロック80に相対的にスライドしながら)、姿勢切換孔311bを通じて枠本体311内に没入する(図6(b)、(c)参照)。受け係合部821が没入すると、これによって、係合ブロック82は、受け突部51との係合状態が解除された解除姿勢へ姿勢変更する(図6(a)参照)。
このとき、解除姿勢に姿勢変更された受け係合部821は、引きバネ32の付勢力で左方へ引っ張られ、受け係合部821の左端面が姿勢切換孔311bの左端縁に位置する枠体部分311cに係止する(図6(a)参照)。これによって、スライド部材34は、姿勢切換孔311bに対応する保持位置に停止保持される。
次に、開放状態にある引戸Dを閉止する場合の機能について説明する。
全開状態の引戸Dを右方へ移動させて閉めていくと、引戸Dは上記開閉途中位置に達する。このとき、スライドブロック80の係合突出部802の右側面が受け突部51に係合し、さらに、引戸が右方へ移動すると、係合突出部802が受け突部51によって左方に押し込まれ、スライドブロック80が係合ブロック82に対して相対的に左方にスライドする。
このスライドブロック80の相対的なスライドに伴い、図6(a)に示す解除姿勢にある係合ブロック82は、図6(b)に示すように、その先端部である首部822の傾斜面822aが連係部804の傾斜部804aに係合して、該傾斜部804aに沿って受け部材5側、すなわち上方に押し出される。このように、係合ブロック82の押し出しの際に、係合ブロック82の先端部である首部822にスライドブロック80が係合するものとなされているので、比較的小さい力で係合ブロック82を押し出すことができる。
また、係合ブロック82は、解除姿勢で係合突出部802の左側面802aに対し傾斜した状態で離隔配置されていた補強突出部824の右側面824aの上端が、図6(b)に示すように、係合突出部802の作用面802aに当接し、スライドブロック80が更に左方に押し込まれることにより、係合ブロック82に対し、受け部材5側へ押し出すモーメントが作用する。
これらによって係合ブロック82は、受け係合部821が、姿勢切換孔311bを通じて上方に押し出され、当該受け係合部821の左端部が枠本体311の枠体部分311cへ係止されていた状態が強制的に解消される。すなわち、係合ブロック82は、図6(c)に示すように、受け突部51に対する解除姿勢から係合姿勢へと姿勢変更する。
このように、スライド部材34がスライドブロック80と係合ブロック82との2部材を含んで構成され、スライドブロック80は、受け部材5と係合して左方にスライドしながら、解除姿勢にある係合ブロック82の先端部と係合して係合ブロック82を係合姿勢に切り換える連係部804を具備するので、スライドブロック80を含むスライド部材34の損傷を効果的に抑制することができ、これに伴いスライドアシスト装置1の耐久性を向上させることができる。
すなわち、このスライドアシスト装置1によれば、連係部804を具備するので、引戸Dの閉止動作時に受け部材5とスライドブロック80の係合突出部802が接触して係合すると、スライドブロック80は左方にスライドしつつ、連係部804の傾斜部804aに沿って係合ブロック82を解除姿勢から係合姿勢に切り換える。このように、受け部材5とスライドブロック80とが係合するのと同時にスライドブロック80はスライドを始めるので、受け部材5との衝突に伴う衝撃力を逃がしつつ、係合ブロック82の姿勢を変更することができ、これによりスライド部材34の損傷を、簡単な構成でその作用を阻害することなく、効果的に抑制することができる。
また、この係合ブロック82の姿勢変更を、スライドブロック80の連係部804だけでなく、補助連係部である補強突出部824の右側面824a、及びガイド孔部823aの左側内面823cによっても補助されるので、より適切に姿勢変更を行うことができる。すなわち、補助連係部である補強突出部824の右側面824a、及びガイド孔部823aの左側内面823cが係合突出部802に当接することにより作用するモーメントによっても、係合ブロック82の姿勢を切り換えるので、より適切に姿勢変更を行うことができる。
そして、この姿勢変更に伴い引きバネ32の付勢力が開放されてスライド部材34に作用し、スライド部材34は、ダンパー部材33によって一定の抵抗が付与されつつ、ガイドスリット311aに沿って枠体31に対して相対的に上記保持位置から初期位置に向かって移動する。このとき、スライド部材34は受け部材5の受け突部51に係合しているため、引きバネ32の付勢力はスライドアシスト力として引戸Dの閉止方向に作用する。
なお、以上に説明したスライドアシスト装置1は、本実施形態に係るアシスト装置の一実施形態であり、その具体的構成等については適宜変更可能である。以下、本実施形態の変形例を説明する。
(1)上記実施形態では、スライド部材の連係部804について、傾斜部804aを有して構成されるとともに、補助連係部(第2の連係部)として、係合突出部802の左側面802aを有して構成されているが、本発明の連係部の具体的構成はこれに限定されるものではない。
例えば、図7に示すように、スライドブロック180の連係部について、傾斜部804aを省略して、係合突出部802の左側面802aを含む作用面を有して構成されるものであってもよい。
この場合には、引戸Dの閉止動作に伴い、スライドブロック180の係合突出部802と、受け部材5の受け突部51とが係合すると、スライドブロック180が係合ブロック82に対して相対的に左方にスライドする。このスライドに伴い、補強突出部824の右側面824a及びガイド孔部823aの左側内面823cを含む姿勢切換面の上端が係合突出部802の左側面802a(作用面)に当接して、これにより係合ブロック82について受け係合部821を上方に押し出すようにモーメントが作用する。
このように、作用面802aと姿勢切換面824a,823cとの当接によるモーメントのみによって、係合ブロック82の姿勢変更を行っても良い。
また、この変形例について、例えば補強突出部824を省略して、ガイド孔部823aの左側内面823c(姿勢切換面)の上端が係合突出部802の左側面802aに当接するように構成してもよい。このように構成しても、上記変形例と同様に、さらにスライドブロック820が左方に相対的にスライドすることによって、係合ブロック82の受け係合部821を上方に押し出すようにモーメントを作用させるようにしても良い。
なお、これらの変形例について、上記実施形態と同様の構成を有する場合には、上記実施形態と同一の符号を付してその詳細な説明を省略している。
(2)上記各実施形態では、装置本体3について単一のスライド部材34が設けられ、引戸Dの閉止方向についてアシストするスライドアシスト装置について説明しているが、例えば装置本体3について、引戸Dの開方向についてアシストするもの、或いはそれぞれ逆方向に動作するスライド部材を2つ備え、引戸の開閉いずれの方向についてもアシストするスライドアシスト装置としても良い。
このように2つのスライド部材を設けた場合、各スライド部材について、それぞれ引きバネ(弾性部材)及びダンパー部材(緩衝部材)を別個に設けるようにしてもよいが、各スライド部材について引きバネ及びダンパー部材を兼用するものとしてもよい。このとき、引きバネ32及びダンパー部材33の一端部が他方のスライド部材(この部材は所定の保持位置で保持されている。)に係止されることにより枠体31に間接的に固定される。
(3)また、係合ブロック82がスライドブロック80に対して開閉方向にスライド可能に取り付けられているので、例えば引戸Dの開閉操作等に伴い当該引戸Dに衝撃力が作用すると、所定の保持位置にあるスライド部材に影響を与える(具体的には外力が作用する)ことがあり、場合によっては当該影響により解除姿勢にあるスライド部材の係合ブロックが不測に解除姿勢から係合姿勢に切り換わって所定の保持位置から移動してしまうことがある。特に、2つのスライド部材を設け、各スライド部材について引きバネやダンパー部材を兼用させた場合に、当該引きバネやダンパー部材を通じて、他方のスライド部材の動作による一方のスライド部材に与える影響が顕著になることがある。
そこで、このような場合には、スライド部材における係合ブロック(係合体)の適正な姿勢変更を担保しつつ不測に姿勢変更されないように構成されるのが好ましい。
例えば、図8に示すようなスライド部材234を用いるのが好ましい。
具体的には、この実施形態に係るスライド部材234は、スライドブロック280(スライド本体)の具体的構成において上記各実施形態と異なる。すなわち、この実施形態におけるスライドブロック280は、係合突出部282及びダンパー取付部283のそれぞれに、左右方向について係合ブロック82の補強突出部824側に突出する逆モーメント発生突部282b,283cを備えるとともに、係合突出部282が補強突出部824側に弾性変形により傾倒可能に構成されている。以下、このスライドブロック280の具体的構成について詳述する。なお、スライドブロック280については、引戸Dの閉操作時にアシスト機能を発揮するものと、同開操作時にアシスト機能を発揮するものとの2種類存在するが、これらは動作が開閉逆になるだけで基本的構成は同一であるから、説明の便宜上、ここでは閉操作時にアシスト機能を発揮するものを中心に説明する。
このスライドブロック280は、開閉方向(左右方向)に沿って延び上縁部において係合ブロック82を支承する支承部281と、支承部281の中間部に上方に突出する態様で立設された係合突出部282と、支承部281の左端部に設けられたダンパー取付部283と、支承部281の右端部に設けられた回動補助突片284とを備え、係合突出部282の左側面が作用面282c(連係部)として機能するものとなされている。なお、本実施形態では、スライドブロック280は、硬質合成樹脂から一体成形されているが、複数部材が組み付けられて構成されるものであってもよく、この場合例えば係合突出部282について異なる素材から構成されるものであっても良い。
支承部281は、解除姿勢にある係合ブロック82を下方から支承するものであり、長尺ブロック形状を呈する。この支承部281は、長手方向中間部において高さが変更されている。すなわち、支承部281は、右側の低位延出部281aと、左側の高位支承本体281bとを有し、高位支承本体281bの上縁部で解除姿勢の係合ブロック82を支承するものとなされている。
この高位支承本体281bの右端部(係合突出部282側の端部)には、下方に向けて円弧状の切欠き部281cが設けられ、この切欠き部281cによって係合突出部282がダンパー取付部283側に弾性的に傾倒し易く構成されている。この切欠き部281cの形状や深さは特に限定されるものではなく、係合突出部282が弾性によって傾倒して後述する作用を発揮できるように適宜設定されるが、本実施形態では円弧形状で、低位延出部281aの上縁に対応する深さに設定されている。
一方、低位延出部281aは、係合突出部282の弾性傾倒に応じて回動し、回動補助突片284を上方に変位させるものとなされている。この低位延出部281aは、その下面が先端部(右端部)に向けて上方に傾斜しており、これにより係合突出部282の弾性回復に応じて枠本体311と接触して衝撃音が発生するのを抑制するものとなされている。
係合突出部282は、上記各実施形態と同様に、開放状態にある引戸Dの閉操作時の移動速度が速い場合に受け部材5と係合して緩衝効果を発揮するものである。この係合突出部282の具体的構成については、上記各実施形態と同様の点は説明を省略し、ここでは異なる点を重点的に説明する。
本実施形態の係合突出部282は、支承部281の低位延出部281a及び高位支承本体281bの境界部に垂直に立設された突出本体部282aと、この突出本体部282aの左側面(ダンパー取付部283側の側面)に左方に向かって突設された第1逆モーメント発生突部282bとを備え、突出本体部282aはスライドブロック280の高位支承本体281bに対し弾性変形して傾倒可能に構成されている。
突出本体部282aは、上記各実施形態の係合突出部802と同様に構成されているので、ここではその説明を省略するが、本実施形態では、この突出本体部282aの左側側面が作用面282cとして機能する。この突出本体部282aの作用面282cが本発明にいう連係部に相当する。
一方、第1逆モーメント発生突部282bは、突出本体部282aが弾性変形していない状態で、係合ブロック82がスライドして当接した場合に、該係合ブロック82に対して解除姿勢となる側(図例では反時計側)にモーメントを作用させるものであり、一方、突出本体部282aが受け部材5により弾性的に傾倒した状態で、係合ブロック82がスライドしても当接しないように設定されている。このように係合突出部282を構成することにより、係合ブロック82の適正な姿勢変更を担保しつつ、他方のスライド部材の動作に伴う不測の姿勢変更を抑制するものとなされている。
具体的には、第1逆モーメント発生突部282bは、その最高突出部(頂部)が、解除姿勢にある係合ブロック82の姿勢切換面823c、824aの高さ方向中央よりも低い位置になるように設定され、突出本体部282aが傾倒していない状態で姿勢切換面823c、824aが当接すると係合ブロック82に解除姿勢側(反時計回り)にモーメントが作用されるにように設定されている。本実施形態では、第1逆モーメント発生突部282bの頂部が突出本体部282aの高さ方向中央よりも若干下寄りに位置するように設定されている。
この第1逆モーメント発生突部282bの高さは、突出本体部282aが受け部材5に係合することにより所定角度傾倒した状態で、突出本体部282aに先立って係合ブロック82の姿勢切換面823c、824aに当接しないように設定されている。すなわち、突出本体部282aが傾倒した状態では、スライド移動する係合ブロック82の姿勢切換面823c、824aに対して、突出本体部282aの上端隅部が第1逆モーメント発生突部282bに先立って当該姿勢切換面の上部824aに当接し、これにより係合ブロック82に係合姿勢側(時計回り)にモーメントが作用するように設定されている。具体的には、第1逆モーメント発生突部282bの高さは、突出本体部282aが垂線に対して少なくとも2.0度傾倒した状態で、引戸Dの開閉方向(左右方向)について突出本体部282aの上端左隅部よりも右側に位置するように設定されている。
また、第1逆モーメント発生突部282bは、突出本体部282aから左方に突出して係合ブロック82に対して所定のモーメントを発生させることができるものであれば、その具体的形状は問わないが、本実施形態では、図8に示すように、正面視三角形のブロック状を呈し、上面が下面に比べて緩やかに傾斜するものとなされている。
ダンパー取付部283は、上記各実施形態と同様の構成を有するが、摺動部及び取付本体部283bに加え、取付本体部283bの右側面に係合突出部282側(右側)に突出する第2逆モーメント発生突部283cを備え、この第2逆モーメント発生突部283cは第1逆モーメント発生突部282bとともに係合ブロック82の不測の姿勢変更が発生しないようになされている。
第2逆モーメント発生突部283cは、係合ブロック82により当接押圧された場合に、該係合ブロック82に対して解除姿勢となる側(図例では反時計側)にモーメントを作用させるものである。
具体的には、第2逆モーメント発生突部283cは、その最高突出部(頂部)が、解除姿勢にある係合ブロック82における背面の高さ方向中央よりも高い位置になるように設定され、係合ブロック82が当接して押圧されたとしても、係合ブロック82に解除姿勢側(反時計回り)にモーメントが作用されるにように設定されている。本実施形態では、第2逆モーメント発生突部283cの頂部が取付本体部283bの上縁に位置するように設定されている。
この第2逆モーメント発生突部283cの高さや形状は適宜設定されるが、その正面視形状については本実施形態のように下方に向かって取付本体部283b側に傾斜する三角形状とするのが好ましい。このように構成すれば、係合ブロック82に対してより適切に解除姿勢側にモーメントを作用させることができる。
次に回動補助突片284について説明する。
回動補助突片284は、支承部281の右端部に該支承部281と一体に設けられている。この回動補助突片284は、係合突出部282が傾倒した場合に係合ブロック82の先端部を上方に押し出して、解除姿勢にある係合ブロック82を係合姿勢に姿勢変更する場合の動作を補助するものである。
回動補助突片284は、右端部に向かって上方に傾斜しており、正面視三角形状を呈する。従って、回動補助突片284は、係合突出部282が傾倒した場合に係合ブロック82を上方に押し出すだけでなく、係合ブロック82がスライドして当接した場合に傾斜に沿って当該係合ブロック82を係合姿勢に導くことができる。この回動補助突片284の傾斜角度は、上記実施形態における傾斜部804aと同様に設定され、20度〜70度の範囲で設定されるのが好ましい。
以上に説明したスライドブロック280に対して、係合ブロック82を以下のように組み付けることができる。すなわち、係合ブロック82のガイド孔部823a(図3参照)にスライドブロック280の係合突出部282を挿入する。この状態では、図8(a)に示すように、係合突出部282の上端部が係合ブロック82から突出し、係合ブロック82はガイド孔部823a内を左右方向に移動可能であり、これにより係合ブロック82はスライドブロック280に対し開閉方向にスライド可能に構成されている。
この場合、図8(a)に示すように、係合ブロック82の解除姿勢において、係合ブロック82の姿勢切換面824aと係合突出部282の突出本体部282aとの間に隙間Sが存し、この隙間Sを利用して係合ブロック82がスライドブロック280に対して左右方向にスライド可能に構成されている。この隙間Sは微小寸法でも、衝撃力を逃がしつつ、係合ブロック82の姿勢変更が可能でその機能を発揮することができ、例えば0.1mm〜10.0mmの範囲で適宜設定することができる。
この変形例にかかるスライドブロック280を用いた場合の係合ブロック82の姿勢切り換えの作用について説明する。なお、係合姿勢にある係合ブロック82が解除姿勢に姿勢変更する場合の作用については上記各実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略し、係合ブロック82が解除姿勢から係合姿勢に切り換わる場合の作用、並びに他方のスライド部材が動作した場合の作用について説明する。
すなわち、全開状態の引戸Dを右方へ移動させて閉めていくと、引戸Dは開閉途中位置に達する。このとき、スライドブロック280の係合突出部282の右側面が受け突部51に衝突係合し、さらに引戸Dが右方へ移動すると、係合突出部282が受け突部51によって左方に押し込まれ、スライドブロック280が係合ブロック82に対して相対的に左方にスライドする。このスライド動作と同時に、上記衝突による衝撃力によって係合突出部282が反時計回り(ダンパー取付部283側)に弾性変形によって傾倒する。この傾倒によって、係合突出部282における突出本体部282aの上端左隅部が係合ブロック82の姿勢切換面824aに当接するとともに、回動補助突片284が係合ブロック82の先端部に当接する。
このスライドブロック280の相対的なスライド、及び係合突出部282の傾倒、並びに回動補助突片284の当接に伴い、図8(a)に示す解除姿勢にある係合ブロック82は、図8(b)に示すように、係合突出部282により係合姿勢側にモーメント(受け部材5側に押し出すモーメント)が作用するとともに、回動補助突片284により上方に押圧され、これらの作用により先端部が上方に押し出される。
これらによって係合ブロック82は、受け係合部821が、姿勢切換孔311bを通じて上方に押し出され、当該受け係合部821の左端部が枠本体311の枠体部分311cへ係止されていた状態が強制的に解消される。すなわち、係合ブロック82は、図8(c)に示すように、受け突部51に対する解除姿勢から係合姿勢へと姿勢変更する。
このように、スライド部材234がスライドブロック280と係合ブロック82との2部材を含んで構成され、スライドブロック280は、受け部材5と係合して左方にスライドしながら、解除姿勢にある係合ブロック82の姿勢切換面824aと係合して係合ブロック82を係合姿勢に切り換える係合突出部282の作用面282cを具備するので、スライドブロック280を含むスライド部材234の損傷を効果的に抑制することができ、これに伴いスライドアシスト装置1の耐久性を向上させることができる。
一方、このスライド部材234と逆の作用、すなわち開操作時にアシスト機能を発揮するスライド部材(他方のスライド部材)が動作する場合に、兼用する引きバネ32やダンパー部材33を通じて、当該一方のスライドブロックが不測にスライドすることがある。
この場合でも、この実施形態では、スライドブロック280に第1及び第2逆モーメント発生突部282b、283cを備えるので、係合ブロック82がこれらの逆モーメント発生突部282b、283cに当接して、これらの突部282b、283cから解除姿勢側にモーメントが作用するように構成されているので、係合ブロック82の不測の姿勢変更を効果的に抑制することができる。
具体的には、例えば図8(d)に示すように、スライドブロック280が不測にスライドして、係合ブロック82が相対的に不測に右方にスライドした場合でも、係合ブロック82の姿勢切換面823cに第1逆モーメント発生突部282bが当接し、これにより係合ブロック82に時計方向側へのモーメントを作用させることができることから、係合ブロック82の不測の姿勢変更を効果的に抑制することができる。
(4)上記実施形態では、第1および第2のガイドユニット10,11について、ガイドローラが設けられたものについて説明しているが、このガイドローラに代えて、ガイドレールL内をスライドする滑り部材を設けてもよい。