JP6084312B2 - 制御モデルのパラメータと外乱との同時推定方法、及びこの同時推定方法を用いた制御対象の制御方法。 - Google Patents
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また、アクチュエータの飽和を避けるために、制御モデルに加わる外乱も同時に精度よく知る必要がある。その理由としては、例えば、外乱が大きいと、フィードバックゲインを大きくすることができず、アクチュエータの飽和を避けることができないため、外乱も精度よく推定する必要がある。
このような、制御モデルに基づいて制御系を制御する技術としては、特許文献1〜特許文献12、非特許文献1〜非特許文献5に開示された技術がある。
特許文献1には、外乱推定オブザーバによる衝突検出方法において、速度ループに対して構成された外乱推定オブザーバを用いて外乱を推定して、この推定した外乱に基づいて産業用ロボット等の衝突を検出する方法が開示されている。すなわち、特許文献1は、外乱のみを推定する技術である。
特許文献3には、連続鋳造の鋳型内湯面レベル制御方法において、外乱オブザーバで外乱を推定し、推定した外乱を打ち消すようにオブザーバ出力を計算し、オブザーバ出力を加算した開度指令値で、タンディッシュのスライディングノズルの開度を制御する方法が開示されている。すなわち、特許文献3は、外乱のみを推定して(パラメータは推定せず)、スライディングノズルの開度指令値を算出する技術である。
ところで、特許文献6は、逐次的に同定するため、同文献の段落[0044]に記載されているように、収束時間が短縮されるとはいえ、実際にはモデルパラメータの最適値への収束時間がかかるものとなっている。すなわち、同文献で得られる外乱やパラメータは、時間的に遅れた値となる。また、同文献の式(2)は線形の式であり、非線形の場合は開示されていない。また、同文献の式(2)のような1つの式で表せない場合、例えば、むだ時間を有する場合や、モデルパラメータに対して、線形式で表せない場合には、対応するものとはなっていない。
特許文献12には、PID調整装置およびPID調整プログラムにおいて、PSO(Particle Swarm Optimization)により、PID調節器の比例ゲイン、積分時間、微分時間を調整する方法が開示されている。ところで、特許文献12は、外乱を用いているものの、その外乱は推定されたものではない。
非特許文献2には、独立成分分析によるパラメータと外乱の同時推定において、独立成分分析によるパラメータと外乱の同時推定に関する技術が開示されている。ところで、非特許文献2は、信号の統計的性質に差があること等、独立成分分析を適用するための条件を満たす必要がある。
非特許文献4には、外乱によって生成された入出力データを用いた外乱抑制FRIT法において、大きさが未知の外乱のパラメータと制御器のパラメータを同時推定している。ところで、非特許文献4の外乱は、インパルス状外乱であり、制限があるので、実際の外乱と異なることが考えられる。
例えば、ハンチングが生じたり、定常偏差が生じたり、収束が遅かったりするなどの制御異常が発生している場合、異常の原因が制御系に起因するものか、又は外乱に起因するものかを知る必要がある。なぜならば、異常の原因によって、講じる対策が異なるためである。例えば、制御系起因ならゲインを下げる必要があり、外乱起因ならゲインを上げる必要がある。
さらに、制御系では、コントローラの目標値(SV)、制御量(PV)、操作量(MV)は、操業データとして保存されていることが多いが、その他の値は保存されていないことが多い。
そして、パラメータ推定に関し、ステップ信号、M系列信号、インパルス信号などの信号を、対象に加えることは、生産設備等においては製品の品質維持等の観点から、難しい場合がある。また、不安定系など、開ループでのパラメータ推定(あるいは同定)は困難である。
操業の初期状態は、定常状態になるまでの前であったり、外乱が印加した状態であったりするので、得られた操業データ(制御量(PV)、操作量(MV)等)の初期値は、定常値とは異なる値となっている。これらの初期値も一致させなければ、制御モデルを用いたシミュレーションで、実績値を再現することはできない。
ここで、偏差系とは、[長縄明大、矢田晴義、「最適サーボ設計における重み行列決定の一手法」電気学会論文誌C、120巻、12号、平成12年、P.2101]に記載されているように、「定常時との偏差を新たに変数とした系」をいうものとする。
ところで、制御対象は、線形系とは限らない。例えば、ゲインが変化する場合や、切り換えを含む場合等、非線形な場合がある。また、シミュレーションが可能であっても、線形系に関する推定(あるいは同定)理論が使えない場合もある。
そこで、本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、外乱とパラメータとを同時且つより精確に推定することができる制御モデルのパラメータと外乱との同時推定方法、及び、この同時推定方法で推定された結果を用いて制御系の制御を行うことのできる制御方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明の制御モデルのパラメータと外乱との同時推定方法は、制御モデル内のパラメータと当該制御モデルが表す制御対象へ入力される外乱とを同時に推定する方法であって、前記外乱を時系列変数値として、前記制御モデルに与えることとし、前記制御対象における実績データの時系列値と、前記制御モデルをシミュレーションすることで得られたシミュレーション結果のデータの時系列値を含む評価関数が、最大又は最小となるように、前記外乱と前記パラメータとを同時に推定することを特徴とする。
本発明においては、得られる実績データの項目が、目標値(SV)、制御量(PV)、操作量(MV)のように限られていても、パラメータと外乱を推定することが可能である。本発明は、設計支援、運転管理支援、シナリオシミュレーション、ソフトウエアセンサー・オブザーバ、モデルベース制御、短期のプロセス最適化、長期のプロセス最適化、教育/運転訓練等に用いることが可能である。本発明によれば、独立成分分析を適用するための条件を満足することなく、パラメータと外乱を推定することが可能である。
好ましくは、前記評価関数には、実績データおよびシミュレーション結果のデータとして、制御量(PV)、操作量(MV)の少なくとも一つが与えられているとよい。
好ましくは、前記外乱に周波数成分が存在する場合には、当該周波数成分をカットするフィルタを適用した後の外乱が前記評価関数へ含まれるとよい。
好ましくは、前記パラメータとして、未知の初期値が採用されるとよい。
好ましくは、前記パラメータとして、未知の定常値が採用されるとよい。
この構成を有する本発明によれば、制御モデルが偏差系の場合であっても、推定することができる。
この構成を有する本発明によれば、制御モデルに加わる外乱がランプ状の場合であっても、より精確に推定することができる。
本発明によれば、制御対象を制御する際に、精確なパラメータや外乱を用いているので、制御性能を向上させることが可能である。すなわち、本発明においては、フィードバック補償、フィードフォワード補償、ゲインテーブル等を制御モデルや外乱に基づいて適正化しているので、制御性能を向上させることが可能である。
まず、制御モデルについて、説明する。
図1に、対象が連続系の場合の制御モデルを示す。
例えば、後述する具体例のように、高炉17の炉頂圧の制御系を、状態方程式(ガスの質量を求める時間積分計算を含む。)・弁の流量特性・制御の切り換え機能等で表したり、連続鋳造機30の湯面レベルの制御系を、積分器・一次遅れ等で表したりしたものである。この制御モデルは、以下に示す連続系で表現されたり、後述する離散系で表現されたりする。また、制御モデルに、微分方程式だけでなく、微分代数方程式を含んでもよい。さらに、制御モデルは、集中定数系だけでなく、分布定数系でもよい。
tは、時刻を示す。
x(t)は、時系列関数のmx行1列のベクトルである。成分は、シミュレーション可能な制御モデルの中のすべての状態量の関数を示す。状態量とは、任意の時点でシステム全体の状態を表せるシステム変数群の最小の部分集合である。例えば線形系の場合は、積分器の出力信号となる。また、状態変数と呼ばれることもある。
x0は、mx行1列のベクトルであり、x(t)の初期値である。
pは、mp行1列のベクトルであり、調整すべきパラメータである。本発明においては、調整の必要に応じて、制御モデルに含まれるゲイン、時定数、むだ時間、定常値、状態量の初期値等を含むこととする。なお、コントローラ7〜9,40のゲインが未知のときは、このゲインを含めることもできる。また、pを、時系列の値とすれば、時間とともに変化するパラメータとすることもできる。さらに、偏差に応じた折れ線ゲインをパラメータとすること等も可能である。
fc()は、連続系において、状態量を計算する制御モデルである。例えば、線形系の場合には、3つの要素から構成され、その3つの要素はそれぞれ、微分方程式(微分代数方程式を含む)、出力方程式と、外乱に対してフィルタや積分等の操作する式となる。
cceq()は、mcceq行1列の関数のベクトルであり、等式制約式である。
なお、上記の制御モデルは、r(t)、d(t)を入力とし、y(t)、dd(t)を出力とするシミュレーション可能なモデルであれば、特に限定はしない。
i(i=0,…,L−1)は、実績データのサンプリング時間毎のカウントを示す。本実施形態では、シミュレーション結果を実績データと同じ時間間隔で保存するものとする。
j(j=0,…,M−1)は、外乱のサンプリング時間毎のカウントを示す。なお、(i=0)と(j=0)は、初期時刻に相当し、(i=L−1)と(j=M−1)は、最終時刻に相当するものとする。
これら状態量は、自動制御の分野では、制御対象の状態量を表すことが多いが、本実施形態では、制御モデルの構成要素すべての状態量を表すこととする。すなわち、本実施形態においては、制御対象の状態量に加えて、必要に応じて、コントローラ7〜9,40の状態量や、最適化時に付加するフィルタや積分器等の状態量を含むこととする。
x0は、mx行1列のベクトルであり、xiの初期値である。
riは、mr行1列のベクトル(i=0,…,L−1)であり、制御モデルに加えられる入力のうち、既知のものを示す。各成分は、カウントiでの、例えば、目標値や、既知の外乱、制御モデルに影響を与える既知の値(例えば、高炉17の炉頂圧制御での定常時の高炉ガス流量、すなわち、公称高炉ガス流量や、連続鋳造機30の鋳造速度。)等である。
pは、mp行1列のベクトルであり、調整すべきパラメータである。本発明においては、調整の必要に応じて、制御モデルに含まれるゲイン、時定数、むだ時間、定常値、状態量の初期値等を含むこととする。なお、コントローラ7〜9,40のゲインが未知のときは、このゲインを含めることもできる。また、pを、時系列の値とすれば、時間とともに変化するパラメータとすることもできる。さらに、偏差に応じた折れ線ゲインをパラメータとすること等も可能である。
fd()は、離散系において、状態量を計算する制御モデルであり、上記した連続系のfc()に対応している。
cdeq()は、mcdeq行1列の関数のベクトルであり、等式制約式である。
なお、上記した制御モデルは、ri、djを入力とし、yi、ddiを出力とするシミュレーション可能なモデルであれば、特に限定しない。
後の説明のため、離散系の制御モデルの場合を例に挙げてパラメータと外乱の最適化を説明するが、連続系の制御モデルの場合も同様の処理過程を有する。
なお、連続系の制御モデルから離散系の制御モデルへの変換は、公知の手法、例えば、双一次変換や0次ホールドを用いて変換することができる。
ここで、図4に示すように、外乱dj(j=0,…,M−1)は、時系列のデータの各点を変数とした時系列変数値である。すなわち、外乱dj(j=0,…,M−1)の値が、推定すべき変数である。なお、(j=0)が初期時刻、(j=M−1)が、最終時刻に対応する。
次に、i=0(j=0と同時刻、初期時刻に相当)から、i=L−1(j=M−1と同時刻、最終時刻に相当)までのシミュレーションを、式(5)〜式(8)を用いて行う。シミュレーションには、例えば、公用ソフトウェアであるThe MathWorks,Inc.製のSimulink(Simulinkは、The MathWorks,Inc.の登録商標)を用いて行うことができる。
yactual iは、my行1列のベクトル(i=0,…,L−1)である。各成分は、時系列の実績データと、時系列のシミュレーション結果のデータとを一致させる場合の、カウントiでの、実績データの変数である。なお、yiが、シミュレーション結果のデータの変数となる。
Wddは、md行md列の行列であり、外乱にフィルタや積分等の操作を行った後の変数の重みを示す。本実施形態においては、対称な準正定行列とする。
ところで、最適化計算は、公知の方法、例えば逐次二次計画法を用いて行うこととしている。例えば、公用ソフトウェア、The MathWorks,Inc.製のMatlab(Matlabは、The MathWorks,Inc.の登録商標)のOptimization Toolbox(Optimization Toolboxは、The MathWorks,Inc.の登録商標)を用いて、最適化計算を行うとよい。
最適化計算の結果、評価関数Jが収束していれば、得られたdjを外乱の最適値dj optとし、pをパラメータの最適値poptとして、計算を終了する。
なお、ローカルミニマムに陥る場合には、外乱djの初期値と、パラメータpの初期値との組み合わせを複数個設定し、図3のフローを実行し、評価関数の値が最も小さい場合の外乱の最適値dj optとパラメータの最適値poptとを採用すればよい。
さらに、得られた外乱の最適値dj optとパラメータの最適値poptを利用して、制御系の設計が可能である。
また、本実施形態においては、精確なモデルが得られているため、例えば、公知の方法を用いてフィードフォワード補償が可能となる。
さらに、上記の実績データの時系列値が複数群、存在する場合においては、パラメータを実績データの全ての群にて共通する値をもつパラメータと、実績データの各群に連動する値をもつパラメータとに分離した上で、評価関数へ導入すると共に、外乱を実績データの各群に連動する時系列変数値として評価関数へ導入することとしている。
また、上記の外乱がランプ状である場合には、外乱の微分値を評価関数へ導入すると共に、外乱の微分値を積分した上で、当該積分値を記制御モデルに与えることとしている。
以上述べた方法に従って、制御モデルのパラメータ及び、制御対象へ入力される外乱を推定することで、同時、且つより精確に推定することができる。
続いて、本実施形態の制御モデルのパラメータと外乱との同時推定方法を用いて制御対象を制御する方法を、3つの具体例を挙げて説明する。
[1例目]
1例目は、鉄鋼プロセスの1つである高炉17の炉頂圧発電設備1におけるバイパス弁6a,6bの操作方法について、外乱とパラメータとを同時推定し、フィードフォワード補償量を決定する方法について説明する。
図5に示すように、高炉17の炉頂圧発電設備1は、高炉17の炉頂で排出されたガス(高炉ガス)を回収し、回収した高炉ガスを用いて発電を行うもので、高炉ガスを回収する高炉ガス流路4を備えている。
高炉ガス流路4には、高炉ガスに含まれるダスト等を除去する集塵設備が接続されている。この集塵設備は、ダストキャッチャー(図示省略)やリングスリットウォッシャー(RSW)であり、これらの内部に高炉ガスを通すことにより、ダスト等を除去することができる。このうち、リングスリットウォッシャー(RSW)は、複数(例えば、3つ)のリングスリットエレメント2(RSE)を並列に接続することにより構成されている。
図8に示すように、RSE2は、高炉ガスが流れる円錐管10と、この円錐管10に挿入された移動自在なコーン状(円錐状)の可動部11とを備えている。可動部11は、図5に示す炉頂圧コントローラ7により制御される。具体的には、炉頂圧コントローラ7は、炉頂圧の実績値と、炉頂圧の目標値とに基づき、可動部11の操作量を求め、この操作量に基づいて可動部11を移動させる。即ち、炉頂圧コントローラ7は、円錐管10と可動部11との間隔を操作し、炉頂圧が目標値になるように、通過する高炉ガス流量を調整する。
図6に示すように、TRT3(発電部)は、発電機13に直結するタービンの軸14(ロータ)に設けられた動翼15と、ケーシング12側に固定された静翼16とを備えている。
図7に示すように、バイパス弁6a,6bは、バタフライ弁と呼ばれる弁であり、円状のディスクを軸芯周りで回動させて角度を変更することにより、当該バイバス弁の開度(弁開度という)を変更することができる。バイパス弁6a,6bでは、図5に示すバイパス弁前圧コントローラ9が、前圧の実績値と前圧の目標値とに基づき、バイパス弁6a,6bの操作量を求め、この操作量に基づいて弁開度を変更することによって、バイバス流路5を通過するガス流量を調整する、即ち、前圧を目標値に制御する。
ここで、TRT3の保守作業を行うために、TRT3に流す高炉ガスを停止する状況が発生する。その場合には、徐々に時間をかけ、高炉ガスをバイパス流路へ流すようにする。このとき、バイパス弁6a,6bは通常のFF補償及びFB補償によりコントロールされる。
そのため、本発明では、TRT3を緊急停止した場合でも、前圧、即ち、炉頂圧の上昇を抑えて、緊急停止による炉頂圧の変動が発生しない対策を講じている。詳しくは、本発明では、緊急停止する前の高炉ガスの流量を計算する。そのうえで、緊急停止時には、バイパス弁6a,6bのフィードフォワード補償による流量が、計算して得られた発電部3内を流れる高炉ガスの流量と等しくなるように、バイパス弁6a,6bのCV値を用いて、バイパス弁6a,6bの開度のフィードフォワード補償量を算出し、算出したフィードフォワード補償量をバイパス弁6a,6bに適用することで、緊急停止時の高炉ガスをバイパス弁6a,6b側に逃がすこととしている。
続いて、緊急停止時における処理について、TRT緊急停止前に、バイパス弁6a,6bに流れる流量が0(ゼロ)の場合を詳しく説明する。
図9〜11は、それぞれ、TRT3、バイパス弁6a,6b、RSE2のCV値またはCV値相当の値の例を示している。ここで、開度は、翼弁16aの角度、バタフライ弁の角度、RSE2における弁機構16a(可動部11及び円錐管10)における間隙(変位量)である。なお、開度は、TRT3、バイパス弁6a,6b、RSE2のそれぞれの角度や変位を正規化し、パーセント表示で表してもよい。
CV値は、公知文献の「改訂第2版,工業プロセス用調節弁の実技ハンドブック,(株)山武,調節弁ハンドブック編纂委員会,日本工業出版,2012年」のP.52に記されているように、容量係数と呼ばれる値であり、比重1の水を弁差圧1[psi]として通過する体積流量を[USgal/min]であらわした数値である。なお、本発明でのC V 値は、定義にかかわらず、少なくとも弁機構(翼弁16a、バイパス弁6a,6b、RSE2等)の開度と、入側の圧力と、弁機構16aを流れる流体の流量との関係を示し、開度から流量を求めることができ、あるいは、流量から開度を求めることができる値であればよい。
また、弁機構16aの入側の圧力または出側の圧力は、流路を構成する配管やサイレンサ18を間に含めた場合の圧力を含むこととする。理由は、入側の圧力または出側の圧力の箇所にセンサがなく、配管の上流側や下流側にセンサがあったり、さらに途中の配管に弁やサイレンサ18が設置されている場合があったりするからである。
TRT3を緊急停止する場合は、当該TRT3の上流側に設けられた遮断弁(非表示)が閉じ、同時に、翼弁16aの開度が0(ゼロ)まで閉じ、TRT3を流れる高炉ガス流量は0となる。翼弁16aが閉じると同時に、バイパス弁6aは、フィードフォワード補償により開く。バイパス弁6bは、前圧目標値と前圧実績値が一致するようなフィードバック補償がなされ、TRT3に流れていたガスと同流量のガスがバイパス弁6a、6bに流れるようになるまで、バイパス弁6bを開けていくこととなる。
図13は、本発明のバイパス弁6a,6bの制御のブロック図を示している。
本発明では、従来の手法とは異なり、バイパス弁6a,6bへのフィードフォワード補償量を、TRT3のCV値と、バイパス弁6a,6bのCV値とを用いて定量的に定めている。また、従来ではフィードフォワード補償量を1つのバイパス弁のみに適用していたが、本発明では、複数のバイパス弁6a,6bに適用している。
TRT3の緊急停止前は、バイパス弁6a,6bは閉鎖していて、高炉ガスの全量がTRT3側に流れる状況である。本発明では、翼弁16aの開度(翼弁開度という)を取得し、図9により、翼弁16aのCV値(翼弁CV値という)を計算する。ここが図14のSTEP1である。
具体的には、式(10)を用いて、高炉ガスの流量(QT[−])を求める。
次に、翼弁CV値(CVT)及び高炉ガスの流量(QT)を算出した後、バイパス弁6a,6bの開度を計算する。ここが図14のSTEP3である。
第2バイパス弁6bの開度が42%であるため、図10に示す開度及びCV値(CVB)の関係から、第2バイパス弁6bのCV値であるCVB2を得ることができる。そして、図10により得られたCVB2と、T,P1,G,aBを、式(11)に代入して、第2バイパス弁6bの流量であるQB2を求めることができる。
なお、この実施形態では、各流量は、標準状態での流量[Nm3/h]を無次元化したもの、あるいは、質量の流量[kg/s]を無次元化したものとしている。このように、緊急停止前の高炉ガス流量と等しくすることによって、同じ状態での流量が等しいことを意味する。
なお、2つ以上のバイパス弁6a,6bを1つのバイパス弁6として扱うスプリットレンジ制御(例えば、改訂第2版 工業プロセス用調節弁の実技ハンドブック,(株)山武,調節弁ハンドブック編纂委員会P.237)を行っている場合には、1つのバイパス弁6とみなした場合のCV値を求めることで、同様に計算することができる。
第1バイパス弁6a、第2バイパス弁6bそれぞれについて、TRT緊急停止前の開度が0(ゼロ)の場合、「フィードフォワード補償量=計算された開度」となる。また、TRT緊急停止前に、オフセット等により、バイパス弁6a,6bの開度に0でない開度初期値が存在する場合には、バイパス弁6a,6bそれぞれについて、「バイパス弁のフィードフォワード補償量=計算された開度−TRT緊急停止前の開度初期値」とすればよい。
以上、上記した実施形態では、発電部3(TRT)が、当該発電部3内を流れる高炉ガスの流量(QT)を調整可能とする弁機構16a(翼部)を備えており、発電部3の弁機構16aの開度とCV値とを基に、発電部3を緊急停止する前の高炉ガスの流量を計算している。そして、バイパス弁6a,6bのフィードフォワード補償による流量が、計算して得られた発電部3内を流れる高炉ガスの流量と等しくなるように、バイパス弁6a,6bのCV値を用いて、バイパス弁6a,6bの開度のフィードフォワード補償量を算出し、算出したフィードフォワード補償量をバイパス弁6a,6bに適用している。
本発明では、第2バイパス弁6bのフィードフォワード補償量(図15中の最下段)と、第1バイパス弁6aのフィードフォワード補償量(図15中の下から2つ目)が適正化され、TRT3側に流れていた高炉ガスの全量が、フィードフォワード補償により速やかに、バイパス流路に流れることになる。このため、図15に示すように、前圧の変動(図15中の上から2つ目)が抑制され、さらに、炉頂圧の変動(図15中の最上段)を抑制することができる。
図16に、炉頂圧および前圧の制御モデルを示す。なお、炉頂圧および前圧の制御モデルは、連続系の制御モデルである式(1)、式(2)に相当するが、実際には、公用ソフトウェアであるThe MathWorks,Inc.製のSimulink(Simulinkは、The MathWorks, Inc.の登録商標)を用いてシミュレーションを行うと、離散化されるので、式(5)、式(6)に対応していることとなる。
なお、炉頂圧SVは炉頂圧目標値であり、前圧SVは前圧目標値である。
一方、RSE公称流量特性として、図11に示す公称CV値を用いる。なお、RSE2では、図11の縦軸のCV値は流量[1/s]そのものを指すものとする。なお、流量は、標準状態での流量、または、質量の流量としているが、前述のように質量は無次元化している。炉頂圧MVを入力すれば、RSE2の流量が出力される。
第2バイパス弁流量特性として、図10に示す公称CV値を用いる。バイパス弁前圧MVを入力し、CV値を求め、このCV値と式(11)とから、第2バイパス弁6bの流量が出力される。
なお、公称流量は、既知の公称高炉ガス流量である。この公称流量は、高炉ガス流量の定常値とし、一定の値とする。この定常値に対して、原料装入時等に外乱が印加することとなる。
すなわち、上記のフィルタを用いることで、最適化の際に、フィルタ適用前の高周波外乱の値は大きくなることができ、推定可能となる。
以上をまとめると、外乱として、主に高周波域の外乱が、大きな値として推定されることとなる。
なお、KCR,KCB2は、PIDコントローラ7,9に未知のゲインがある場合を想定している。また、KR,KT,KBは、RSE2、TRT3、バイパス弁6a,6bの特性に補正係数が必要な場合を想定している。
図4に示すように、高炉ガス流量外乱を、時系列の各時刻の値に対応したカウントでの値を変数とする。
式(18)の第1項〜第5項は、yiについて、シミュレーション値を実績値に一致させるための項であり、具体的には、制御量(PV)と、操作量(MV)を、実績とシミュレーションで一致させるための項である。なお、式(18)の第6項は、フィルタ適用後の外乱を、0(ゼロ)に近づけるための項である。
以上をまとめると、本具体例における炉頂圧制御は、一般形を具体化した形となっている。
次に、本具体例における炉頂圧制御について、具体的に説明する。
また、各PIDコントローラ7〜9のIゲインの積分器の初期値は、時刻が0のときの操作量(MV)が得られているため、Pゲイン、Dゲインを近似的に無視すると、操作量(MV)から逆算できるため、この値を採用する。例えば、「Iゲイン×積分器=操作量(MV)」であり、Iゲイン、積分器の順に掛け算がなされて操作量(MV)が得られる場合には、その得られた操作量(MV)が初期値となる。
dj(未知の入力)は、推定すべき外乱であり、公称高炉ガス流量に印加する、高炉ガス流量外乱である。この場合、md=1である。なお、M=41とした。
yi(一致すべき変数)の成分は、炉頂圧の制御量(PV)と、前圧の制御量(PV)、炉頂圧の操作量(MV)、TRT前圧の操作量(MV)、バイパス弁前圧の操作量(MV)としている。my=5である。
fd()は、離散系において、状態量を計算する制御モデルであり、図16に示すモデルが離散化されたモデルである。ここでは、公用ソフトウェアであるThe MathWorks,Inc.製のSimulink(Simulinkは、The MathWorks,Inc.の登録商標)を用いて、離散化と計算を行っている。
cdineq()は、不等式制約式であり、上記の式(19)である(mcdineq=92)。
cdeq()は、等式制約式であるが、本具体例では用いていない(mcdeq=0)。
このように、式(22)に基づいて、CV値を補正し、精確なフィードフォワード補償量を得ることができる。
なお、図19A〜E、図19Gの各グラフに、他の実績データ(実線)とシミュレーション結果のデータ(破線)を示す。図19Aの炉頂圧の制御量(PV)の実績データ、及びシミュレーション結果のデータを示すグラフを参照すると、目標の炉頂圧が1.325[−]であるので、炉頂圧変動が、図18A中の0.036から、図19A中の0.011へと低減されていることがわかる。
[変形例]
図20に、第1バイパス弁6aを閉じたまま、第2バイパス弁6bを徐々に閉めていく場合の例の結果を示す。図20Fのグラフ(太破線)には、推定された外乱が示されている。外乱の定常偏差はほぼ0(ゼロ)であり、また、周期が約40秒の高周波域の外乱が推定されていることがわかる。なお、図20A〜E、図20Gの各グラフには、他の実績値(実線)とシミュレーション結果(破線)が示されている。
なお、第2バイパス弁6bの操作量(MV)には、実績値を与えているため、KCB2は、推定すべきパラメータに含まれない。このことから、KCB2をcdeq()(等式制約式)で次のように設定しておけばよい。
[2例目]
続いて、具体例の2例目について、説明する。2例目は、鉄鋼プロセスの1つである連続鋳造機30の鋳型31内にある溶鋼Xの湯面レベルを制御する方法について、外乱とパラメータとを同時推定し、制御偏差が生じる原因を特定し、さらに、制御系を調整する方法について説明する。
図22において、CFB(z)がフィードバックコントローラであり、遅延要素z−1の関数である。なお、遅延要素がない場合(動特性がない場合)も含むものとする。アクチュエータ39や湯面レベル計38は、それぞれ「一次遅れ+むだ時間」で表され、シミュレーション時には、離散化される。
図23に、湯面レベルが定常偏差を持ってハンチングしている異常状態の一例を示す。
時刻0〜約50秒の間は、コントローラA(40)が制御している。時刻約50〜160秒の間は、コントローラB(40)が制御している。湯面レベルのグラフを見てわかるように、周期が約40秒のハンチングを生じている。さらに、湯面レベル目標値(湯面レベルSV)が、−1.02[−](一点鎖線)であるのに対して([−]は無次元化した値であることを示す。)、湯面レベル実績値は、約−0.95[−]を中心に振動しており、レベル偏差にオフセットを生じている。これらのハンチングと定常偏差が制御上の問題である。
図24に、連続鋳造機30の湯面レベル制御系の制御モデルと外乱を示す。
図24中のフィルタsは、図25に示すようなバンドストップフィルタとしている。具体的には、(s2+ωb 2)/(s2+2ζbωbs+ωb 2),ωb=2π/13.5,ζb=0.8としている。すなわち、湯面レベル外乱の周期は、13.5秒近傍としている。湯面レベルの外乱の主な成分は、バルジングと呼ばれる凝固殻が、鋳型31下方のロール32の間で膨らんだり凹んだりすることで、鋳型31の湯面高さが変わることによる外乱(バルジング外乱)であり、この外乱の周波数は、鋳造速度/ロール32間隔である。
図24中のフィルタcは、図26に示すように、コントローラ40に加わる外乱の微分値(コントローラ外乱の微分値)に適用するフィルタである。フィルタの形は、図25と同じとしている。外乱の微分値に周期が13.5秒近傍の成分が含まれていると予想して推定することとなる。なお、後述のように、結果として、この周期のコントローラ外乱は存在しないと推定された。すなわち、周期13.5秒近傍の外乱は、湯面レベル外乱であることが確認された。コントローラ40に加わる外乱は、図27に示すように、積分され、ランプ状の外乱を表現することができる。
コントローラA,B(40)は、k=0,1に対応する。ここで、コントローラA(40)で制御している場合と、コントローラB(40)で制御している場合を、それぞれ別のデータとして切出すこととする。すなわち、実績データの時系列値が複数群存在する場合である。この例では、2つの群が存在することとなる。コントローラA,B(40)は、次の式で表される。
ここで、各係数は既知であり、次の値としている。
制御対象のゲインである流量係数/鋳型断面積は、次のように決定した。
次の一次遅れは、制御対象の一次遅れ成分を意味し、一次遅れ「1/(Tlag・s+1)」で表され、時定数Tlagがパラメータであり、状態量を1つ含んでいるため、出力の初期値をlevellaginit_k(k=0,1)とする。
次のむだ時間要素は、制御対象のむだ時間の成分を意味し、むだ時間Tdelay[s]前の値を現在の値とする要素である。シミュレーションの初期には、過去の値を初期値として与える必要があり、過去のTdelay[s]前までの初期値をleveldelayinit_k(k=0,1)とするものとする。
ゲインkplantは、制御対象の未知のゲインを示し、本具体例では、流量係数Kfの変動分や他の動特性による変動分を合わせた制御対象全体の未知ゲインを表す。kplantは、制御モデルと一致していれば1である。
本具体例では、図24などに示されている「湯面レベル目標値」、「湯面レベル」、「バルブ開度」が、それぞれ、レベル制御系の「湯面レベルSV」、「湯面レベルPV」、「湯面レベルMV」となる。
この中で、kcon,Tlag,Tdelay,kplantが、共通パラメータであり、残りが個別のパラメータとなる。ここで、共通パラメータとは、複数の実績データを用いるときに、モデル内で共通の値として用いられるパラメータである。すなわち、実績データのすべての群にて共通する値をもつパラメータである。個別のパラメータとは、複数の実績データを用いるときに、モデル内で個別の値として用いられるパラメータである。すなわち、実績データの各群に連動する値をもつパラメータである。
続いて、本具体例において、推定すべき外乱は、湯面レベルに加わる外乱と、スライドバルブ開度に加わるランプ状の外乱との2つである。
図23に示すように、2つ目の外乱は、湯面レベルが定常偏差を持っていることから、ランプ状の外乱であると推定されたものである。なお、この2つ目の外乱は、調査により、操作信号の伝達経路で信号が欠落することにより発生したことが後程確認された。
そして、制御モデル内のパラメータの評価関数としては、次の式(28)を用いた。
以上をまとめると、本具体例における湯面レベル制御は、データ数が1つの場合を、データ数が複数の場合に拡張した一般形を、具体化した形となっている。
次に、本具体例における湯面レベル制御について、具体的に説明する。
xki(状態量)は、各k(k=0,1)について、コントローラ40の遅延要素の8個(分子4+分母4)、鋳型31の積分器1個に対応する遅延要素(離散化の方法に依存する)、一次遅れの積分器1個に対応する遅延要素(離散化の方法に依存する)、むだ時間要素の遅延要素(数は、離散化のサンプリング時間に依存する)、コントローラ外乱に対する積分器1個に対応する遅延要素である(状態量の数はシミュレーション方法に依存する。)。
rki(既知の入力)は、各kに対応した湯面レベルSV(レベル目標値)である。
パラメータとしては、図4のように、時系列の各時刻の値を変数とし、M0=20,M1=40とした。外乱の変数の時間間隔が、実績データやシミュレーション結果のデータのサンプリング周期1秒より長いのは、外乱の変数を減らすことを可能とするためである。例えば、外乱の時間的変化が滑らかと予想される場合には、外乱の変数の時間間隔を長くとることができ、最適化のための計算量を減らすことができる。
ddkiは、外乱にフィルタや積分等の操作を行った後の値であり、コントローラ外乱の微分値にローパスフィルタを適用した後の値(フィルタ後コントローラ外乱微分値)と、レベル外乱にバンドストップフィルタを適用した後の値(フィルタ後レベル外乱)である。
なお、本具体例の離散系の方程式は、固定サンプリング周期で解くことを前提として説明しているが、上記ソフトウェアで可能なように、サンプリング周期は可変でよい。また、制御モデル内の積分器は、上記ソフトウェアにおいて、離散化されて計算されることとなる。
cdeq()は、等式制約式であるが、本具体例では用いていない(mcdeq=0)。
制御モデル内のパラメータの評価関数は、式(9)を、複数の実績データに対応して、拡張した次の式(30)となる。
Nは、実績データの数である。
yactual k iは、k番目のデータの、myk行1列のベクトル(i=0,・・・,Lk−1)。各成分は、カウントiでの、時系列の実績データと、シミュレーション結果のデータとを一致させる場合の、実績データである。
Wddkは、mdk行mdk列の行列。外乱にフィルタや積分等の操作を行った後の値の重みを示す。本具体例では、対称な準正定行列とする。
具体的な数値は、次のようになる。
として、ランプ状の外乱と、重畳した周期約40秒の小さな外乱が印加していると推定されている。これらの周波数帯域の外乱は、外乱微分値が存在すると予想した周波数帯域外にあり、外乱微分値が小さな値として推定されていることとなる。なお、存在すると予想した周期約13.5秒近傍の外乱は、推定されておらず、周期13.5秒近傍の外乱は、コントローラ外乱ではなく、レベル外乱であると推測される。
なお、図29A〜図29Dは、実績データ(実線)とシミュレーション結果のデータ(破線)である。一点鎖線は、目標値を示している。
また、周期約40秒の振動は、主に、制御対象の位相遅れによる制御起因であると推定される。
その結果、図30に示すように、この周期約40秒の大きな振動はなくなり、レベル精度を向上させることができた。
なお、制御モデル内のパラメータと、その制御モデルに加わる外乱が得られているので、従来のPID制御を適用する場合に、ゲイン調整を行い、制御することも、既述のように可能である。
[3例目]
さて、具体例の3例目について、3つ例を挙げて説明する。この3例目は、評価関数に外乱の時系列変数値を含まない例である。
(3例目の1)
まず、3例目の1は、図31に示すように、ゲインK、時定数Tの一次遅れ、むだ時間Lで構成された制御対象である。なお、コントローラとしてPI制御が使用され、比例ゲインをKP、積分ゲインをKIとする。また、一次遅れの初期値をlaginit_tv、むだ時間の初期値をdelayinit_tv、コントローラの積分要素の初期値をIinit_tvとする。また、連続系の要素は、シミュレーション時に離散化されることとなる。また、外乱をd(t)とおく。
を考えている。なお、実績データの外乱は、ランプ状外乱やオフセットを含んでいることとしている。
また、式(37)の第1項〜第2項は、yiについて、シミュレーション値を実績値に一致させるための項であり、具体的には、制御量(PV)と、操作量(MV)を、実績とシミュレーションで一致させるための項である。
制約条件については、次の式(38)の通りであり、式(7)に対応する。
以上をまとめると、本具体例は、一般形を具体化した形となっている。以下に、本具体例の詳細を説明する。
xi(状態量)の成分は、まず、時定数の積分器、PIDコントローラの積分器を離散化した場合の状態量である。さらに、むだ時間を離散化した場合の状態量、例えば、むだ時間1秒をサンプリング時間0.1秒で離散化した場合には過去の10点の10個の状態量がある。mxは、離散化方法やむだ時間により異なることとなる。なお、L=51とした。
ri(既知の入力)の成分は、目標値(SV)である。この場合、mr=1である。
dj(未知の入力)は、推定すべき外乱である。この場合、md=1である。なお、M=26とした。
yi(一致すべき変数)の成分は、PVとMVとしている。my=2である。
fd()は、離散系において、状態量を計算する制御モデルであり、図31に示すモデルが離散化されたモデルである。ここでは、公用ソフトウェアである、The MathWorks,In
c.製のSimulink(Simulinkは、The MathWorks,Inc.の登録商標)を用いて、離散化と計算を行っている。
cdineq()は、不等式制約式であり、上記の式(38)である(mcdineq=68)。
cdeq()は、等式制約式であるが、本具体例では用いていない(mcdeq=0)。
なお、このときの初期値は、次の式(41)の通りである。
図33A〜Dに示すように、評価関数値が0.00となっていることからわかるように、PV,MVについては、実績とシミュレーションの時系列値が一致している。得られた制御モデルのパラメータは、次の式(42)の通りである。
(3例目の2)
続いて、3例目の1の例において、さらに評価関数が外乱の時系列変数値を含む場合の推定の例、すなわち3例目の2について説明する。なお、検討する理由としては、2例目の場合のように、外乱の時系列変数値を評価しないと、精確なパラメータや外乱を推定できない場合があるからである。
なお、制御モデルのパラメータ、外乱の真値は、式(36)と同じとする。図32A〜Dが、真値のパラメータと、真値の外乱の場合の実績データを示す。なお、実績データの外乱は、ランプ状外乱やオフセットを含んでいる。
評価関数としては、次の式(43)を用いた。
以上をまとめると、本具体例は、一般形を具体化した形となっている。既述の3例目の1との違いのみを、以下に説明する。
ddiは、外乱djと、同時刻で同じ値を持っている。なお、djからddiを求めるには、補間等を行うとよい。
なお、このときの初期値は、次の式(45)の通りである。
ては、実績とシミュレーションの時系列値が一致している。得られたパラメータは次の式(46)の通りである。
また、外乱についても、図35Dのグラフに示すように、推定された外乱は、実績の外乱と誤差があることがわかる。
なお、外乱に対する重みWddを小さくすると、外乱の推定値の精度が良くなるが、最適化の収束に時間がかかる傾向にある。
(3例目の3)
続いて、3例目の2の例において、外乱に周波数が存在する場合に、当該周波数成分をカットするフィルタを適用し、評価関数が、フィルタ適用後の外乱の時系列変数値を含む場合の推定の例、すなわち3例目の3について説明する。
図36に示すように、フィルタ適用後の外乱を評価する場合を説明する。フィルタは、時定数30[s]の一次遅れ要素である。
制御モデルのパラメータ、外乱の真値は、式(36)と同じとする。図32A〜Dが、真値のパラメータと、真値の外乱の場合の実績データを示す。なお、実績データの外乱は、ランプ状外乱やオフセットを含んでいる。
また、制約条件については、式(38)と同じである。
以上をまとめると、本具体例は、一般形を具体化した形となっている。既述の3例目の2との違いのみを、以下に説明する。
評価関数の重みは、それぞれ、式(39)と、以下の式(48)のようになる。
なお、このときの初期値は、次の式(49)の通りである。
また、外乱についても、図37Dのグラフにあるように、推定された外乱は、ランプ状であっても、ほぼ一致している。
したがって、本具体例では、外乱にフィルタを適用して評価した場合、外乱を精度よく推定可能であることがわかる。
2 リングスリットエレメント(RSE)
3 発電部(TRT、炉頂圧発電機)
4 高炉ガス流路
5 バイバス流路
6 バイパス弁
6a 第1バイパス弁
6b 第2バイパス弁
7 炉頂圧コントローラ
8 TRT前圧コントローラ
9 バイパス弁前圧コントローラ
10 円錐管
11 可動部
12 ケーシング
13 発電機
14 タービンの軸(ロータ)
15 動翼
16 静翼
16a 翼弁(弁機構)
17 高炉
18 サイレンサ
30 連続鋳造機
31 鋳型
32 ロール
33 タンディッシュ
34 溶鋼孔
35 浸漬ノズル
36 スライドバルブ
36a 上プレート
36b 下プレート
36c 中間プレート
37 流下孔(バルブ)
38 湯面レベル計
39 電気油圧シリンダ(アクチュエータ)
40 制御部(コントローラ)
X 溶鋼
Claims (9)
- 制御モデル内のパラメータと当該制御モデルが表す制御対象へ入力される外乱とを同時に推定する方法であって、前記外乱を時系列変数値として、前記制御モデルに与えることとし、前記制御対象における実績データの時系列値と、前記制御モデルをシミュレーションすることで得られたシミュレーション結果のデータの時系列値を含む評価関数が、最大又は最小となるように、前記外乱と前記パラメータとを同時に推定することを特徴とする制御モデルのパラメータと外乱との同時推定方法。
- 制御モデル内のパラメータと当該制御モデルが表す制御対象へ入力される外乱とを同時に推定する方法であって、前記外乱を時系列変数値として、前記制御モデルに与えることとし、前記制御対象における実績データの時系列値と、前記制御モデルをシミュレーションすることで得られたシミュレーション結果のデータの時系列値と、前記外乱の時系列変数値とを含む評価関数が、最大又は最小となるように、前記外乱と前記パラメータとを同時に推定することを特徴とする制御モデルのパラメータと外乱との同時推定方法。
- 前記評価関数には、実績データおよびシミュレーション結果のデータとして、制御量(PV)、操作量(MV)の少なくとも一つが与えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御モデルのパラメータと外乱との同時推定方法。
- 前記外乱に周波数成分が存在する場合には、当該周波数成分をカットするフィルタを適用した後の外乱が前記評価関数へ含まれることを特徴とする請求項2に記載の制御モデルのパラメータと外乱との同時推定方法。
- 前記実績データの時系列値が複数群、存在する場合においては、前記パラメータを前記実績データの全ての群にて共通する値をもつパラメータと、前記実績データの各群に連動する値をもつパラメータとに分離した上で、シミュレーション結果のデータの時系列値を評価関数へ導入すると共に、前記外乱を実績データの各群に連動する時系列変数値として評価関数へ導入することを特徴とする請求項2に記載の制御モデルのパラメータと外乱との同時推定方法。
- 前記パラメータとして、未知の初期値が採用されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の制御モデルのパラメータと外乱との同時推定方法。
- 前記パラメータとして、未知の定常値が採用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の制御モデルのパラメータと外乱との同時推定方法。
- 前記外乱がランプ状である場合には、前記外乱の微分値を評価関数へ導入すると共に、前記外乱の微分値を積分した上で、当該積分値を前記制御モデルに与えることを特徴とする請求項2に記載の制御モデルのパラメータと外乱との同時推定方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載された制御モデルのパラメータと外乱との同時推定方法で推定されたパラメータと外乱とのうち少なくともパラメータを用いて、前記制御対象を制御することを特徴とする制御対象の制御方法。
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