JP6083711B2 - 駆動軸へのダイヤフラムの固定構造及び電磁式制御弁 - Google Patents
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Description
本発明は、例えば圧力バランス方式の電磁式制御弁において基布が埋設された可撓性のダイヤフラムを駆動軸の端部に固定する駆動軸へのダイヤフラムの固定構造及び電磁式制御弁に関する。
従来、電磁式制御弁として、例えば国際公開第2013/157292号(特許文献1)に開示されたものがある。この電磁式制御弁は、弁ハウジング内に弁体を有する弁棒を配設し、電磁コイルへの通電により発生する電磁力で弁棒を軸方向に変位させ、上記弁体により弁ポートの開度調節を行うものである。また、高圧側の一次室に連通された均圧室と低圧の二次室に連通された低圧室との差圧を、ダイヤフラムを介して弁棒に作用させることで一次室と二次室との差圧が弁棒の弁体に作用する力を相殺(キャンセル)するようにしたものである。これにより、この圧力バランス方式の電磁式制御弁では、一次室側圧力と二次室側圧力との差圧の影響を受けず、定電流時においては、一定の弁開度を維持した安定した流量制御を行うことが可能になる。
また、特許文献1のものでは、弁体の下端のダイヤフラムは求心作用を有し、このダイヤフラムに弁体を接続する事により、本体等にガイド部を設ける事なく、弁体を本体の中心軸上に位置させている。さらに、このダイヤフラムの接続方法は、ダイヤフラムの中央部に穴を開けずに弁体の一端の針状突起にダイヤフラムを貫通させた後、フラムガイドを挿入し、弁体の下端をかしめて、弁体とダイヤフラムが接続されている。
特許文献1のものでは、ダイヤフラムを接続する弁体の一端の針状突起が細いため、ダイヤフラムを容易に貫通させることができるが、このダイヤフラムを接続する駆動軸の径が太い場合、上述した固定構造では、以下のような問題が生じる。すなわち、このダイヤフラムを接続する駆動軸の径が太い場合、ダイヤフラムのゴムの中に埋設された基布を針状突起で太い駆動軸径まで押し広げるのが困難であり、広げる際に基布の糸が傷付き切れた形となる。また、押し広げられたゴム膜が駆動軸の弁との当接部にバリ状に残ると弁体のかしめ固定時に弁体が傾くという問題がある。
また、一般に基布入りのゴム製ダイヤフラム等ではゴム部で気密性を持たせ、基布部で耐圧性を持たせている。ダイヤフラムの耐圧強度は基布の強度に依存するので、基布が切られた状態で高圧で使用すると、加圧された事によりゴムが伸び、基布も引っ張られ、切られた部位のゴム層から基布が抜けると、ダイヤフラムの耐圧性が著しく低下しダイヤフラムが破損してしまう。ダイヤフラムが破損すると制御弁は制御不能となる。また、弁体のかしめ時に弁体が傾くと、弁漏れの原因ともなる。
本発明は、上述の如き問題点を解消するためになされたものであり、駆動軸へのダイヤフラムの固定構造を改良し、例えばダイヤフラムを用いて差圧により弁体に作用する力をキャンセルするようにした電磁式制御弁において、ダイヤフラムの耐圧性、耐久性を向上させることを課題とする。
請求項1の駆動軸へのダイヤフラムの固定構造は、ゴム層に基布が埋設されたダイヤフラムを駆動軸に固定する駆動軸へのダイヤフラムの固定構造であって、前記ダイヤフラムとして、中心に前記駆動軸の径より小さな径を有する拡径予備孔が形成されたダイヤフラムが用いられ、前記駆動軸に前記ダイヤフラムが挿通されるダイヤフラム嵌着部を備え、前記駆動軸に前記ダイヤフラムの前記拡径予備孔が挿通されて該駆動軸が該ダイヤフラムに貫通され、前記拡径予備孔の周囲のゴム層及び基布により円環状の伸張部分が形成され、前記駆動軸に固定部材が固着されて、前記ダイヤフラムが前記駆動軸の前記ダイヤフラム嵌着部に固定されていることを特徴とする。
請求項2の駆動軸へのダイヤフラムの固定構造は、請求項1に記載の駆動軸へのダイヤフラムの固定構造であって、前記駆動軸は、該駆動軸の径より大きなボス部から突出して設けられるとともに、該ボス部に対する該駆動軸の前記ダイヤフラム嵌着部の付け根部分に収納溝を有し、前記ゴム層及び基布による円環状の伸張部分が前記収納溝に収納されて、前記ダイヤフラムが前記駆動軸の前記ダイヤフラム嵌着部に固定されていることを特徴とする。
請求項3の駆動軸へのダイヤフラムの固定構造は、請求項1または2に記載の駆動軸へのダイヤフラムの固定構造であって、前記駆動軸が前記ダイヤフラムに貫通される前のダイヤフラムの部品の状態で、前記駆動軸の前記ダイヤフラム嵌着部の径φA、前記拡径予備孔の径φB、前記基布の伸び率Cとの関係が、
0.7≦A/(B×C)≦3.0
であることを特徴とする。
0.7≦A/(B×C)≦3.0
であることを特徴とする。
請求項4の駆動軸へのダイヤフラムの固定構造は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動軸へのダイヤフラムの固定構造であって、前記固定部材が、前記駆動軸を嵌合する連結孔が形成された押え部材であり、該押え部材の前記連結孔に嵌合された前記駆動軸の端部がかしめられて該駆動軸に押え部材が固着されていることを特徴とする。
請求項5の電磁式制御弁は、第1のポートと第2のポートとの間に弁室と弁ポートとが形成され、前記弁室内の弁体を電磁駆動部で駆動して前記弁ポートを開閉する電磁式制御弁であって、第1のポートと第2のポートとの差圧により弁体に作用する力を、感圧部に加わる弁室と均圧室との差圧により前記弁体に作用する力で相殺するとともに、前記電磁駆動部の電磁力と調整ばねのばね力とのつり合いにより、前記弁ポートの開度を比例的に変化させる電磁式制御弁において、前記電磁駆動部、前記調整ばね、前記均圧室及び前記感圧部が、前記弁ポートの軸線上で前記弁体に対して前記弁ポートとは反対側に設けられ、前記弁体が、前記電磁駆動部に連結される連結部の駆動軸に固定され、前記感圧部が、ゴム層に基布が埋設され前記弁室と前記均圧室との間に配設されたダイヤフラムであって、中心に前記駆動軸の径より小さな径を有する拡径予備孔が形成されたダイヤフラムであり、前記駆動軸に前記ダイヤフラムが挿通されるダイヤフラム嵌着部を備え、前記駆動軸に前記ダイヤフラムの前記拡径予備孔が挿通されて該駆動軸が該ダイヤフラムに貫通され、前記拡径予備孔の周囲のゴム層及び基布により円環状の伸張部分が形成され、前記駆動軸に前記弁体が固着されて、前記ダイヤフラムが前記駆動軸の前記ダイヤフラム嵌着部に固定されていることを特徴とする。
請求項6の電磁式制御弁は、請求項5に記載の電磁式制御弁であって、前記駆動軸が前記ダイヤフラムに貫通される前のダイヤフラムの部品の状態で、前記駆動軸の前記ダイヤフラム嵌着部の径φA、前記拡径予備孔の径φB、前記基布の伸び率Cとの関係が、
0.7≦A/(B×C)≦3.0
であることを特徴とする。
0.7≦A/(B×C)≦3.0
であることを特徴とする。
請求項7の電磁式制御弁は、請求項5または6に記載の電磁式制御弁であって、前記弁体及び前記連結部に前記弁ポートと前記均圧室とを導通する均圧路が形成されていることを特徴とする。
請求項1の駆動軸へのダイヤフラムの固定構造によれば、ダイヤフラムとして、中心に駆動軸の径より小さな径を有する拡径予備孔が形成されたダイヤフラムが用いられている。そして、駆動軸にダイヤフラムの拡径予備孔が挿通されて該駆動軸がダイヤフラムに貫通され、拡径予備孔の周囲のゴム層及び基布により円環状の伸張部分が形成されている。したがって、駆動軸を拡径予備孔に挿通するときに拡径予備孔の分だけゴムと基布が無く、この拡径予備孔の周囲の部分が、駆動軸のダイヤフラム嵌着部の径よりも拡径予備孔の径の小さな分だけが伸びるので、基布の繊維が容易に伸びることができ、円環状の伸張部分で基布の繊維の切れを防止することができる。また、円環状の伸張部分は、伸びたゴムと基布が駆動軸(ダイヤフラム嵌着部)の周囲で該駆動軸を締め付ける作用をしているので、この伸張部分のゴムと基布が駆動軸から抜けにくくなり、ダイヤフラムの耐圧性、耐久性を向上させることができる。
請求項2の駆動軸へのダイヤフラムの固定構造によれば、請求項1の効果に加えて、駆動軸はダイヤフラム嵌着部の付け根部分に収納溝を有し、前記ゴム層及び基布による円環状の伸張部分が収納溝に収納されるので、この伸張部分が駆動軸の固定部材との当接部分にバリ状に残り、固定部材が駆動軸に対して傾いて固定されることがなくなる。したがって、固定部材によってダイヤフラムが均一に圧縮されることとなり、ダイヤフラムの耐圧性を向上させることができる。ダイヤフラムを駆動軸に対して、さらに堅牢に固定することができる。
請求項3の駆動軸へのダイヤフラムの固定構造によれば、請求項1または2の効果に加え、駆動軸のダイヤフラム嵌着部の径φAに応じて、基布の伸び率Cあるいは拡径予備孔の径φBを設定でき、設計自由度を確保しながら、駆動軸を拡径予備孔に挿通するときに伸びる基布の繊維の切断を確実に防止することができ、ダイヤフラムを駆動軸に対して、さらに堅牢に固定することができる。
請求項4の駆動軸へのダイヤフラムの固定構造によれば、請求項1乃至3の効果に加えて、駆動軸に対してダイヤフラムと共に、押え部材を堅牢に固定することができる。
請求項5の電磁式制御弁によれば、ダイヤフラムの耐圧性、耐久性が高い電磁式制御弁が得られる。
請求項6の電磁式制御弁によれば、請求項5の効果に加えて、駆動軸のダイヤフラム嵌着部の径に応じて、基布の伸び率Cあるいは拡径予備孔の径φBを設定でき、設計自由度を確保しながら、駆動軸を拡径予備孔に挿通するときに伸びる基布の繊維の切断を確実に防止することができ、ダイヤフラムを駆動軸に対して、さらに堅牢に固定することができる。
請求項7の電磁式制御弁によれば、請求項5または6の効果に加えて、弁体及び連結部に均圧路が形成されているので、別部分に均圧路を設ける必要がなく、電磁式制御弁の小型化が図れるとともに、均圧路により連結部の駆動軸の径が大きな電磁式制御弁となっても、ダイヤフラムの耐圧性、耐久性を確保できる。
次に、本発明の実施形態について説明する。図1は実施形態の電磁式制御弁の弁閉状態の縦断面図である。この実施形態の電磁式制御弁は下本体1と上本体2からなる弁ハウジングHを有している。下本体1は上本体2の下部の嵌合孔2aに嵌合され、嵌合孔2aの開口端部をかしめることにより、下本体1と上本体2とが一体に固着されている。
下本体1には、矢印のように流体が流入する高圧側の第1のポート11と、矢印のように流体が流出する低圧側の第2のポート12と、第1のポート11に連通する弁室13と、第2のポート12と弁室13とを連通する弁ポート14が形成されている。弁ポート14は軸線Lを中心とする水平断面形状が円形であり、その弁室13側の開口周囲は弁座14aとなっている。また、上本体2には均圧室21が形成され、この均圧室21の上部に後述の電磁駆動部5のケースとしてのプランジャケース51及びカバー6が嵌合固着されている。
弁室13及び均圧室21内には軸線Lに沿った方向に変位可能な弁部材3が延在されている。弁部材3は、弁室13内に位置して弁座14aに対して離接が可能な円筒状の「固定部材」としての弁体31、弁体31の上方に延設された連結部32とで構成されている。連結部32は、下端部に弁体31を結合する結合軸321と、結合軸321より径が大きく均圧室21内に位置するボス部322と、ボス部322の上方に延設された連結ロッド323と、結合軸321と共に駆動軸をなすダイヤフラム嵌着部324とを有している。
弁体31とボス部322との間には後述するゴム製のダイヤフラム4が配設されている。ダイヤフラム4はコンボリューション部41と、その内側の内ビード部42と、コンボリューション部41の外側の外ビード部43とを有している。また、弁体31は、中心に円筒形状の開口孔31aと、開口孔31aに連なる連結孔31bと、弁座14aに当接するシール部31cを有している。そして、連結部32の「駆動軸」としての後述のダイヤフラム嵌着部324が、ダイヤフラム4の内ビード部42の開口を貫通して結合軸321が弁体31の連結孔31b内に嵌合され、弁体31の端面とボス部322の端面とで内ビード部42を圧縮し、結合軸321の下端部をかしめることにより、弁体31とダイヤフラム4及び連結部32が一体に固定されている。なお、これらの弁体31、ダイヤフラム4及び結合軸321の組み付け方については後述する。
ダイヤフラム4の外ビード部43は、下本体1の上端と上本体2の均圧室21の下部開口端部との間に圧縮するようにして挟持されている。なお、弁体31の上端(弁部材3の下方寄り)は、圧力が加わることで発生するダイヤフラム4の復元力による自動求心作用により、通常は軸線L上に保持される。
連結部32において、ボス部322には、弁体31の開口孔31a側から軸線L方向に伸びる第1の均圧路32aが形成されるとともに、第1の均圧路32aと交差して均圧室21に開口する第2の均圧路32bが形成されている。この第1の均圧路32a、第2の均圧路32b及び弁体31の開口孔31aは均圧路を構成しており、弁ポート14と均圧室21は、開口孔31a、第1の均圧路32a及び第2の均圧路32bにより導通されている。
ダイヤフラム4は可撓性を有し、ダイヤフラム4の弁室13側に作用する第1のポート11の圧力(P1)と、均圧室21側に作用する第2のポート12の圧力(P2)との差圧により発生した力を弁部材3(弁体31)に伝達する感圧部を構成している。また、ダイヤフラム4は均圧室21と弁室13とを気密に区画している。
弁ハウジングHの上部には、電磁駆動部5が設けられている。電磁駆動部5は、円筒状のプランジャケース51と、プランジャケース51の上端に固定された磁性体からなる吸引子52と、プランジャケース51内に設けられた磁性体からなるプランジャ53と、プランジャケース51の外周に配置されボビン54aに巻線が巻回された電磁コイル54とを備えている。なお、プランジャケース51と吸引子52は溶接等により固定されている。吸引子52には軸線Lと同軸な挿通孔52aが形成されるとともに、挿通孔52aとは他方の側には、挿通孔52aより径の大きな調整部用孔52bが形成されている。
プランジャ53には、軸線Lと同軸な円筒状のプランジャばね室53aと挿通孔53bが形成されるとともに、挿通孔53bの横にプランジャ均圧路53cが形成されている。なお、吸引子52とプランジャ53は、プランジャ均圧路53c以外は、それぞれ軸線Lを軸にして回転対称な形状となっている。
プランジャケース51の下部には、均圧室21に対して電磁駆動部5側に位置するカバー6が配設されている。カバー6はプランジャケース51の下端と上本体2とに挟持されて固定されている。カバー6の中心には、軸線Lと同軸な挿通孔6aが形成されている。なお、カバー6は弁ハウジングH(本体)に対して動くことがなければ固定方法はどのような構成でもよい。このように、弁部材3に対してカバー6が軸線L方向に相対的に固定されているので、プランジャ53等の可動部品は流体の動圧の影響を受けることがない。
弁部材3の連結ロッド323は、カバー6の挿通孔6a、プランジャ53の挿通孔53bに挿通されている。また、吸引子52の挿通孔52a内で、連結ロッド323の端部に非磁性体からなるボール受け7が嵌め込まれている。ボール受け7と連結ロッド323の端部とは溶接により固着されている。ボール受け7はプランジャ53側の端部に鍔状部を有し、この鍔状部は、プランジャ53の吸引子52側の対向面53dに接触した状態で、この対向面53dと吸引子52のプランジャ53側の対向面52dとの間に位置する。
プランジャ53と連結ロッド323の段部323aとの間にはプランジャばね531が圧縮した状態で配設されている。これにより、プランジャ53は対向面53dをボール受け7に対して常時当接された状態となり、このプランジャ53が吸引子52方向に吸引されると、このプランジャ53と共に弁部材3が弁開方向に変位する。弁部材3は、この弁部材3の一部である連結ロッド323によりプランジャ53と連結されている。プランジャ53の挿通孔53bと弁部材3の連結ロッド323とのクリアランスは、プランジャ53とプランジャケース51とのクリアランスより大きく設定されており、プランジャ53が軸線Lと直交する方向に変位しても、弁部材3とプランジャ53は接触しない。
吸引子52の前記調整部用孔52b内には設定調整部8が配設されている。この設定調整部8は、調整ねじ81、ばね受け82、調整ばね83、ボール84を有している。調整ばね83は調整ねじ81とばね受け82との間に圧縮状態で配設されており、ボール84はばね受け82に当接した状態で軸線L上の吸引子52の挿通孔52a内に配設されている。そして、調整ばね83は、ばね受け82を介してボール84をボール受け7の上端に当接するように付勢している。また、調整ねじ81は、その外周の雄ねじ部811を吸引子52の上部内周面に形成された雌ねじ部52eに螺合することにより、吸引子52に取り付けられている。
ボール84と吸引子52の挿通孔52aとの間には僅かにクリアランスが設けられており、ボール84は軸線Lに沿って挿通孔52a内で変位可能となっている。また、ボール受け7はボール84に対して球面接触される。これにより、ボール受け7(及び弁部材3)の上端は、常に軸線L上に位置決めされる。
電磁駆動部5の電磁コイル54への通電により、磁気回路が形成されて吸引子52とプランジャ53との間に磁気による吸引力が発生する。この吸引力は電磁コイル54へ通電する電流に応じたものとなる。
以上の構成により、実施形態の電磁式制御弁は次のように作用する。設定調整部8は、調整ばね83によりばね受け82、ボール84及びボール受け7を介して弁部材3を弁座14a側に付勢している。電磁コイル54を励磁することにより、プランジャ53が吸引子52に吸引され、弁部材3は調整ばね83の付勢力に抗して弁座14aから離れる方向に変位し、弁閉から弁開となるとともに弁体31(シール部31c)と弁座14aとの軸線Lに沿った方向の位置関係により、弁ポート14の開度が制御される。なお、プランジャ53が最上端位置で弁開度が全開となるのは、ボール受け7の鍔状部が吸引子52の対向面52dに当接した位置である。このように、ボール受け7により、プランジャ53が吸引子52に吸着(密着)されるのを防止する。
また、電磁コイル54の励磁を無くすことにより弁体31が弁座14aに着座し、弁閉となる。なお、調整ねじ81の追い込み量により、調整ばね83が弁部材3に加える付勢力が調整され、弁開に必要な電磁力(吸引力)を調節できる。このように、電磁コイル54が生じる電磁力と、調整ばね83のばね力との平衡関係によって弁部材3が軸線Lに沿った方向に変位し、弁体31で弁ポート14の開度を変化させる。
また、弁体31には前述のように弁室13の圧力と第2のポート12の圧力の差圧が作用して弁閉方向に力が加わる。一方、均圧室21は第1の均圧路32a、第2の均圧路32b及び開口孔31a(均圧路)によって弁ポート14及び第2のポート12と連通されているので、均圧室21に作用する第2のポート12の圧力と弁室13の圧力との差圧がダイヤフラム4に作用し、弁部材3には弁開方向の力が加わる。そして、弁体31の有効受圧径D1(この実施例の場合、弁ポート14の内径)と、ダイヤフラム4の有効受圧径D2とは等しいので、弁部材3に対しては、差圧による力は互いにキャンセル(相殺)され、弁体31の開閉に差圧の影響を受けない。
このように、電磁駆動部5の印加電流に応じた電磁力と調整ばね83のばね力とのつり合いをとるとともに、第1のポート11と第2のポート12との差圧により弁体31に作用する力を、ダイヤフラム4(感圧部)に加わる弁室13と均圧室21との差圧により弁体31に作用する力でキャンセル(相殺)することにより、差圧により弁体31に作用する力の影響を無くし、少ない通電量で弁ポート14の開度を比例的に変化させることができる。
なお、この実施形態では、弁ポート14の下部には第2のポート12を設けるだけの構造となっているので、弁ハウジングHの軸線L方向の長さを小さくすることができ、電磁式制御弁自体を小型化することができる。また、第2のポート12を弁ポート14に対して同軸で連通するようにしているので、第2のポート12での圧力損失も低減し、流体がスムーズに流れる。
図2はダイヤフラム4の弁部材3(連結部32)への固定前の概略平面図(図2(A))及び断面図(図2(B))である。ダイヤフラム4は、ゴム層4B内にトリコット編みで編み込まれた基布4Aを埋設したものである。この固定前のダイヤフラム4は、コンボリューション部41の部分が円錐台の側面の形状をしており、このコンボリューション部41の内側に内ビード部42が位置している。内ビード部42は、その内側にダイヤフラム嵌着部324(駆動軸)を貫通する駆動軸接続孔42aを有している。この駆動軸接続孔42aの径φA′は取り付け対象であるダイヤフラム嵌着部324の径φA(図5参照)に整合する径となっている。また、ダイヤフラム4は、内ビード部42の内側に肉薄の円盤部44を有し、この円盤部44の中央に拡径予備孔44aが形成されている。すなわち、内ビード部42は、拡径予備孔44aの周囲の円盤部44より厚みを持たせてある。なお、コンボリューション部41の内側において円盤部44の外周には、内ビード部42に沿うように凸条部45が形成されている。
ダイヤフラム嵌着部324の径φAと、拡径予備孔44aの径φBと、基布4Aの伸び率Cとの関係は、
0.7≦A/(B×C)≦3.0…(1)
となっている。なお、基布4Aの伸び率Cは、JIS L1096の8.14に規定される布の伸び率である。
0.7≦A/(B×C)≦3.0…(1)
となっている。なお、基布4Aの伸び率Cは、JIS L1096の8.14に規定される布の伸び率である。
図3はダイヤフラム4を成形するための成形金型の断面図であり、下金型10と上金型20とで構成されている。ダイヤフラム4の成形時には、図3のように下金型10と上金型20を合わせて形成されるキャビティ30内に生ゴムが充填される。また、生ゴムが充填されたキャビティ30内には基布4Aが配設される。そして、加圧したゴムを加熱して硫化し、ダイヤフラム4が成形される。
下金型10の中央には結合軸321のダイヤフラム嵌着部324の径φAに整合する径で薄型円柱状の台部10Aを有している。上金型20の中央には台部10Aに対向する天井部20Aを有している。そして、下金型10の台部10Aと上金型20の天井部20Aとが基布4Aを介して対向する。これによって、図4に示すように、駆動軸接続孔42aと、円盤部44′を有するダイヤフラム4の中間部材4′を成形する。そして、円盤部44′の中心のゴム層と基布を打ち抜いて除去し、前記図2に示すダイヤフラム4が製造される。
図5は結合軸321のダイヤフラム嵌着部324の詳細を示す一部破砕拡大図である。「駆動軸」としてのダイヤフラム嵌着部324は、ダイヤフラム嵌着部324より径の大きなボス部322から突出して設けられている。また、ダイヤフラム嵌着部324は、結合軸321より径の大きな径φAを有する大径部324aと、ボス部322に対する付け根部分に大径部324aよりも太さを絞った収納溝324bを有している。そして、後述のように、ダイヤフラム4を固定したとき、この収納溝324b内に後述の円盤部44による伸張部分44A(図6(C),(D)参照)が収納される。なお、ボス部322の底部には、ダイヤフラム4の前記凸条部45に対応する位置に凸条部322aが形成されている。
図6は実施形態の電磁式制御弁の要部の組立工程を説明する図であり、「押え部材」としての弁体31、ダイヤフラム4及び「駆動軸」としての結合軸321のダイヤフラム嵌着部324の固定は以下のように行う。図6(A)に示すように、結合軸321にその外径がダイヤフラム嵌着部324の大径部324aと略同径の針状キャップ40を嵌め込む。図6(B)に示すように、この針状キャップ40とダイヤフラム嵌着部324にダイヤフラム4の拡径予備孔44aを挿通し、針状キャップ40及びダイヤフラム嵌着部324をダイヤフラム4に貫通させる。このとき、針状キャップ40及びダイヤフラム嵌着部324により、円盤部44が押し拡げられる。そして、ダイヤフラム4の内ビード部42の駆動軸接続孔42aを結合軸321のダイヤフラム嵌着部324まで挿通する。
次に、図6(C)に示すように、針状キャップ40を取り外し、連結部32の結合軸321に弁体31の連結孔31bを嵌合させる。そして、連結孔31bのダイヤフラム嵌着部324側の開口周囲をダイヤフラム嵌着部324に当接させた状態で、図6(D)に示すように、結合軸321の下端部をかしめることにより、弁体31とダイヤフラム4及び連結部32を一体に固定する。なお、ダイヤフラム嵌着部324は連結部32に対する弁体31の位置決めをする部材でもある。
ここで、拡径予備孔44aは、中心のゴム層4Bと基布4Aとを打ち抜いて除去することにより形成されているが、この拡径予備孔44a内に駆動軸を貫通した時に、拡径予備孔44aの周囲にある円盤部44が外側に押し拡げられることにより、図6(D)の拡大図に示すように、円盤部44のゴム層と基布による円環状の伸張部分44Aが形成される。このとき、伸張部分44Aでは、基布4Aの繊維が切れていない状態で伸張され、同時に伸張されたゴム層と共に緊張した状態となっている。したがって、伸張部分44Aは、駆動軸を締め付ける作用をする。
このように、ダイヤフラム4を連結部32に固定した状態で、ダイヤフラム4のゴム層及び基布による円環状の伸張部分44Aがダイヤフラム嵌着部324の収納溝324bに均一に収納される。また、弁体31とボス部322とで内ビード部42が圧縮されて固定されている。円環状の伸張部分44Aは、伸びたゴム層と基布がダイヤフラム嵌着部324の周囲でこのダイヤフラム嵌着部324(収納溝324b)を締め付ける作用をしている。したがって、この伸張部分44Aのゴムと基布がダイヤフラム嵌着部324から抜けにくくなり、ダイヤフラムの耐圧性、耐久性を向上させることができる。また、拡径予備孔44aが駆動軸(ダイヤフラム嵌着部324)の径よりも小さな分だけ基布4Aの繊維が切られた数も少ない。このことも、ダイヤフラム4の耐圧性、耐久性の向上に寄与している。なお、円盤部44の外周の凸条部45に対して、ボス部322の底部の凸条部322aが食い込まれるので、内ビード部42が半径方向へ拡がることがさらに防止される。
ダイヤフラム嵌着部324の径φA、拡径予備孔44aの径φB、基布4Aの伸び率Cとは、前掲の条件(1)の関係にある。この条件範囲内の数値を一定にし、ダイヤフラム嵌着部324の径φAを一定とした場合、基布の伸び率Cが大きい場合には、拡径予備孔44aの径φBを小さくできることを示している。逆に、基布の伸び率Cが小さい場合には、拡径予備孔44aの径φBをダイヤフラム嵌着部324の径φA以下で大きくすればよいことを示している。このように、条件(1)の関係は、駆動軸の径に応じて、基布の繊維が切れない範囲を規定している。これにより、駆動軸の径に応じて、基布の素材や織り方の種類、拡径予備孔44aの径φBを、好適なものに選択することができる。
実施形態では基布4Aの織り方はトリコット織りであり、伸び性が高く針状キャップ40を基布4Aに刺し、押し広げやすい。基布4Aの織り方の種類は、伸び性が高い丸編みでもよい。
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。駆動軸は電磁制御弁の弁部材3(弁棒)のものに限らず、軸線方向に移動される駆動軸にダイヤフラムを固定するものであれば、他の装置、他の構造物にも適用でき、ダイヤフラムの高い耐圧性、耐久性が得られる。
1 下本体
2 上本体
11 第1のポート
12 第2のポート
13 弁室
14 弁ポート
21 均圧室
3 弁部材
31 弁体
32 連結部
321 結合軸(駆動軸)
324 ダイヤフラム嵌着部(駆動軸)
4 ダイヤフラム
4A 基布
4B ゴム層
41 コンボリューション部
42 内ビード部
42a 駆動軸接続孔
43 外ビード部
44 円盤部
44a 拡径予備孔
44A 伸張部分
5 電磁駆動部
H 弁ハウジング
L 軸線
2 上本体
11 第1のポート
12 第2のポート
13 弁室
14 弁ポート
21 均圧室
3 弁部材
31 弁体
32 連結部
321 結合軸(駆動軸)
324 ダイヤフラム嵌着部(駆動軸)
4 ダイヤフラム
4A 基布
4B ゴム層
41 コンボリューション部
42 内ビード部
42a 駆動軸接続孔
43 外ビード部
44 円盤部
44a 拡径予備孔
44A 伸張部分
5 電磁駆動部
H 弁ハウジング
L 軸線
Claims (7)
- ゴム層に基布が埋設されたダイヤフラムを駆動軸に固定する駆動軸へのダイヤフラムの固定構造であって、
前記ダイヤフラムとして、中心に前記駆動軸の径より小さな径を有する拡径予備孔が形成されたダイヤフラムが用いられ、
前記駆動軸に前記ダイヤフラムが挿通されるダイヤフラム嵌着部を備え、
前記駆動軸に前記ダイヤフラムの前記拡径予備孔が挿通されて該駆動軸が該ダイヤフラムに貫通され、前記拡径予備孔の周囲のゴム層及び基布により円環状の伸張部分が形成され、前記駆動軸に固定部材が固着されて、前記ダイヤフラムが前記駆動軸の前記ダイヤフラム嵌着部に固定されていることを特徴とする駆動軸へのダイヤフラムの固定構造。 - 前記駆動軸は、該駆動軸の径より大きなボス部から突出して設けられるとともに、該ボス部に対する該駆動軸の前記ダイヤフラム嵌着部の付け根部分に収納溝を有し、
前記ゴム層及び基布による円環状の伸張部分が前記収納溝に収納されて、前記ダイヤフラムが前記駆動軸の前記ダイヤフラム嵌着部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の駆動軸へのダイヤフラムの固定構造。 - 前記駆動軸が前記ダイヤフラムに貫通される前のダイヤフラムの部品の状態で、前記駆動軸の前記ダイヤフラム嵌着部の径φA、前記拡径予備孔の径φB、前記基布の伸び率Cとの関係が、
0.7≦A/(B×C)≦3.0
であることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動軸へのダイヤフラムの固定構造。 - 前記固定部材が、前記駆動軸を嵌合する連結孔が形成された押え部材であり、該押え部材の前記連結孔に嵌合された前記駆動軸の端部がかしめられて該駆動軸に押え部材が固着されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駆動軸へのダイヤフラムの固定構造。
- 第1のポートと第2のポートとの間に弁室と弁ポートとが形成され、前記弁室内の弁体を電磁駆動部で駆動して前記弁ポートを開閉する電磁式制御弁であって、第1のポートと第2のポートとの差圧により弁体に作用する力を、感圧部に加わる弁室と均圧室との差圧により前記弁体に作用する力で相殺するとともに、前記電磁駆動部の電磁力と調整ばねのばね力とのつり合いにより、前記弁ポートの開度を比例的に変化させる電磁式制御弁において、
前記電磁駆動部、前記調整ばね、前記均圧室及び前記感圧部が、前記弁ポートの軸線上で前記弁体に対して前記弁ポートとは反対側に設けられ、
前記弁体が、前記電磁駆動部に連結される連結部の駆動軸に固定され、
前記感圧部が、ゴム層に基布が埋設され前記弁室と前記均圧室との間に配設されたダイヤフラムであって、中心に前記駆動軸の径より小さな径を有する拡径予備孔が形成されたダイヤフラムであり、
前記駆動軸に前記ダイヤフラムが挿通されるダイヤフラム嵌着部を備え、
前記駆動軸に前記ダイヤフラムの前記拡径予備孔が挿通されて該駆動軸が該ダイヤフラムに貫通され、前記拡径予備孔の周囲のゴム層及び基布により円環状の伸張部分が形成され、前記駆動軸に前記弁体が固着されて、前記ダイヤフラムが前記駆動軸の前記ダイヤフラム嵌着部に固定されていることを特徴とする電磁式制御弁。 - 前記駆動軸が前記ダイヤフラムに貫通される前のダイヤフラムの部品の状態で、前記駆動軸の前記ダイヤフラム嵌着部の径φA、前記拡径予備孔の径φB、前記基布の伸び率Cとの関係が、
0.7≦A/(B×C)≦3.0
であることを特徴とする請求項5に記載の電磁式制御弁。 - 前記弁体及び前記連結部に前記弁ポートと前記均圧室とを導通する均圧路が形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の電磁式制御弁。
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