JP6083224B2 - 石油樹脂製造用触媒およびそれを用いた石油樹脂の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な石油樹脂製造用触媒およびそれを用いた石油樹脂の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、色相および原料油のモノマー重合転化率に優れ、ゲル分の少ない石油樹脂、特にジシクロペンタジエン類を多く含有する原料油を用いることをも可能とする新規な石油樹脂製造用触媒およびそれを用いた石油樹脂の製造方法に関するものである。
石油類の分解、精製の際に得られる不飽和炭化水素含有留分を原料油として、フリーデルクラフツ型触媒の存在下に重合を行い、石油樹脂を製造する方法は良く知られている。そして、その際の不飽和炭化水素含有留分としては、沸点範囲が20〜110℃の不飽和炭化水素留分(脂肪族系炭化水素留分、C5留分ということもある。)と、沸点範囲が140〜280℃の不飽和炭化水素留分(芳香族系炭化水素留分、C9留分ということもある。)の2種類が一般的であり、該C5留分から得られる脂肪族石油樹脂、該C9留分から得られる芳香族石油樹脂、並びに該C5留分と該C9留分とを共重合して得られる脂肪族/芳香族共重合石油樹脂等が知られている。また、ジシクロペンタジエン類を熱重合することで得られる脂環族石油樹脂も知られている。
該脂環族石油樹脂の原料となるジシクロペンタジエン類としては、具体的にはジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等が知られている。そして、該ジシクロペンタジエン類をフリーデルクラフツ型触媒の存在下で重合した場合、モノマー重合転化率が上がらない、不飽和結合が樹脂中に多量に存在することから樹脂の色相悪化やゲル生成により品質が低下するという課題が発生する。そのため、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合石油樹脂等を製造する際は、ジシクロペンタジエン類を蒸留等により除去した留分により製造することが一般的である。
石油樹脂は、一般的にゴム加工助剤、塗料、接着剤、インキ、アスファルト等の用途で使用され、これらの用途で併用されるゴム、ロジン系樹脂等の配合物と相溶する必要があるため、ゲル分が少ないことが望まれる。
そして、石油樹脂を製造する際の重合活性や樹脂物性を改良する試みとして、三フッ化ホウ素を主触媒とし、共触媒の存在下で炭化水素樹脂を製造する方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。また、色相を改良するため、C9留分とC5留分をフリーデルクラフト型触媒の存在下、低温で重合する石油樹脂の製造方法が提案されている(例えば特許文献2参照。)。
また、未利用留分の利用という観点から、ジシクロペンタジエン類を原料としてフリーデルクラフツ型触媒の存在下で重合反応を行い、石油樹脂を製造する方法も検討され、ジシクロペンタジエンを5%以上含有するC9留分を三フッ化ホウ素、又は三フッ化ホウ素錯体の存在下に、低温で重合する方法(例えば特許文献3参照。)、C9留分とジシクロペンタジエンとを、フリーデルクラフツ型触媒の存在下に重合する方法(例えば特許文献4〜6参照。)、C5留分とジシクロペンタジエンとを、フリーデルクラフツ型触媒の存在下に重合する方法(例えば特許文献7参照。)、等が提案されている。
石油樹脂の貯蔵時のゲル化を防止する為、石油樹脂にアミン系安定剤を添加する方法が提案されている(例えば特許文献6、7参照。)。
特開昭56−106912号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特開昭61−197616号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特開昭62−064811号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特開平07−033951号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特開平08−034824号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特開2011−127006号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特開2010−006901号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
しかしながら、特許文献1に提案された方法においては、単独の共触媒の効果については述べられているが、複数の共触媒を使用する効果については何ら検討がなされておらず、重合時のゲル化防止、モノマー重合転化率向上、色相改良のすべてを同時に満たす石油樹脂、その製造については何ら検討のなされていないものであった。特許文献2,3に提案された方法においては、低温で重合を行うためモノマー重合転化率が低下する、冷凍設備を必要とする、等の生産性、コスト面に課題を有する。また、特許文献4、5に提案された方法においては、重合触媒について詳細に述べられておらず、重合時のゲル化防止、モノマー重合転化率向上、色相改良のすべてを同時に満たすことができない。また、特許文献6、7に提案された方法においては、貯蔵時のゲル化を防止するためのものであり、重合時のゲル化については何ら検討がなされていない。重合触媒についても詳細に述べられておらず、重合時のゲル化防止、モノマー重合転化率向上、色相改良のすべてを同時に満たすことができない。
そこで、本発明は、色相およびモノマー重合転化率に優れ、ゲル分の少ない石油樹脂を製造するための石油樹脂製造用触媒、それを用いた石油樹脂、特にジシクロペンタジエン類の多い原料油を使用した石油樹脂の製造方法を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の特性を有する三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール複合錯体が、色相およびモノマー重合転化率に優れ、ゲル分の少ない石油樹脂を製造する石油樹脂製造用触媒として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、三フッ化ホウ素、フェノールおよびプロパノールからなる石油樹脂製造用触媒であって、該石油樹脂製造用触媒は、三フッ化ホウ素100重量部に対するフェノールとプロパノールの合計が50〜300重量部であり、その際のフェノール/プロパノール(重量比)が0.2/1〜6/1の範囲内である、三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール複合錯体であり、重クロロホルム中、室温下で測定したH−NMRスペクトルにおけるフェノールおよびプロパノールの水酸基に由来するピークが、7.3〜8.9ppmの間で単一ピークを示すものであることを特徴とする石油樹脂製造用触媒、およびそれを用いた石油樹脂の製造方法に関するものである。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の石油樹脂製造用触媒は、三フッ化ホウ素、フェノールおよびプロパノールからなる新規な石油樹脂製造用触媒であり、三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール複合錯体からなるものである。また、重クロロホルム中、室温下で測定したH−NMRスペクトルにおける水酸基に由来するピークが7.3〜8.9ppmの間で単一のピークとなるものである。
本発明の石油樹脂製造用触媒は、三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール複合錯体からなることにより、原料油のモノマー重合転化率に優れ、得られる石油樹脂は、色調に優れ、ゲル分の少ない石油樹脂を提供する触媒となるものであり、特にジシクロペンタジエン類を多く含有する原料油を用いることをも可能となる石油樹脂製造用触媒となるものである。ここで、三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール複合錯体ではない錯体、例えば三フッ化ホウ素・フェノール錯体又は三フッ化ホウ素・プロパノール錯体等の単一錯体を触媒として用いた場合、原料油のモノマー重合転化率に劣り、得られる石油樹脂は、色調に劣り、ゲル分の多い石油樹脂となる。そして、その傾向は、ジシクロペンタジエン類を多く含有する原料油を用いる場合にはより顕著なものとなる。
そして、本発明の石油樹脂製造用触媒が、三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール複合錯体からなることは、重クロロホルム中、室温下で測定したH−NMRスペクトルにおける水酸基(フェノールおよびプロパノールに由来する水酸基。)に由来するピークが単一のピークとなることにより確認することができる。三フッ化ホウ素フェノールの水酸基に由来するピークは本来9.5ppmに観測され、三フッ化ホウ素プロパノールの水酸基に由来するピークは本来8.0ppmに観測されるものではあるが、本発明の石油樹脂製造用触媒は、三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール複合錯体からなることにより、これらの位置に二本のピークを示すものではなく、単一のピークとなるものである。
本発明の石油樹脂製造用触媒は、重クロロホルム中、室温下で測定したH−NMRスペクトルにおける水酸基(フェノールおよびプロパノールに由来する水酸基。)に由来するピークが7.3〜8.9ppmに単一ピークを示すものである。ここで、該ピークが7.3ppm未満である触媒、又は8.9ppmを越える触媒である場合、モノマー重合転化率の低い触媒となり、得られる石油樹脂は、色相に劣ったり、ゲル分の多いものとなる。
本発明の石油樹脂製造用触媒の調製方法としては、重クロロホルム中、室温下で測定したH−NMRスペクトルにおけるフェノールおよびプロパノールの水酸基に由来するピークが7.3〜8.9ppmに単一ピークを示す三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール複合錯体からなる触媒を調製することが可能であれば如何なる方法を用いることも可能であり、例えば三フッ化ホウ素フェノール錯体と三フッ化ホウ素プロパノール錯体とを混合する方法;三フッ化ホウ素、フェノールおよびプロパノールを混合する方法;石油樹脂の原料油に、三フッ化ホウ素フェノール錯体と三フッ化ホウ素プロパノール錯体とを混合する方法;石油樹脂の原料油にフェノール、プロパノールおよび三フッ化ホウ素を添加する方法;等が例示される。石油樹脂の原料油中で触媒を調製する場合、石油樹脂の品質に影響を与えない範囲内であれば、これらの触媒原料を原料油に分割して添加してもよい。
そして、本発明の石油樹脂製造用触媒を調製する際の各成分(三フッ化ホウ素、フェノール、プロパノール)の使用量については本発明の石油樹脂製造用触媒が製造可能である限りにおいて任意であり、その中でも、モノマー重合転化率に優れ、得られる石油樹脂が分子量、軟化点、色相、ゲルの生成量に優れる触媒となることから、三フッ化ホウ素100重量部に対するフェノールとプロパノールの合計が50〜300重量部であり、その際のフェノール/プロパノール(重量比)が0.2/1〜6/1であることが好ましい。
本発明の石油樹脂製造用触媒は、例えば石油類の熱分解及び/又は精製により得られる不飽和炭化水素含有留分である原料油の重合反応に用いることにより、分子量、軟化点、色相に優れ、ゲルの生成量の少ない石油樹脂を生産効率よく製造することができる。
その際の原料油としては、例えば石油類の熱分解および精製により得られる、沸点範囲20〜110℃のC5留分、沸点範囲140〜280℃のC9留分、ジシクロペンタジエン留分、等を挙げることができる。
該C5留分としては、一般的に石油類の熱分解および精製により得られる沸点範囲20〜110℃の留分として知られているものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えばイソプレン、トランス−1,3−ペンタジエン、シス−1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン等に代表される炭素数4〜6の共役ジオレフィン性不飽和炭化水素類;ブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンテン等に代表される炭素数4〜6のモノオレフィン性不飽和炭化水素類;シクロペンタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族系飽和炭化水素;これらの混合物、等が挙げられる。
該C9留分としては、一般的に石油類の熱分解および精製により得られる沸点範囲140〜280℃の留分として知られているものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えばスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、インデンのアルキル誘導体等に代表される炭素数8〜10のビニル芳香族炭化水素類;炭素数10以上のオレフィン類;炭素数9以上の飽和芳香族類;ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等のジシクロペンタジエン類;これらの混合物、等が挙げられる。
該ジシクロペンタジエン留分は、一般的に石油類の熱分解および精製により得られるものであれば如何なるものを用いることも可能であり、該C9留分を更に精製したもの、該C5留分中のシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンを二量化し精製したもの、等が挙げられる。
本発明の石油樹脂製造用触媒を用いて得られる石油樹脂は、特に色相に優れ、ゲル生成が少ないものとなることから、原料油としてはジシクロペンタジエン類を10%以上含むものであることが好ましい。その際のジシクロペンタジエン類としては、一般的に石油類の熱分解および精製により得られるジシクロペンタジエン類として知られているものであれば如何なるものでもよく、例えばジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン、これらの混合物等が挙げられる。
該原料油として、該C5留分を主成分として用いた場合、得られる石油樹脂は脂肪族系石油樹脂と称されるものとなる。また、該C9留分を主成分として用いた場合、得られる石油樹脂は芳香族系石油樹脂と称されるものとなる。該C5留分と該C9留分の混合物(その際の混合割合は任意である。)を用いた場合、得られる石油樹脂は脂肪族/芳香族系石油樹脂と称されるものとなる。さらに、ジシクロペンタジエン類を用いた場合、得られる石油樹脂は脂環族石油樹脂と称されるものとなる。
そして、石油樹脂の製造する際の製造条件としては、本発明の石油樹脂製造用触媒の存在下で重合を行うこと以外の如何なる制限を受けることはなく、例えば原料油に本発明の石油樹脂製造用触媒を加え加熱し重合することにより石油樹脂を製造することができる。
その際の重合温度としては、任意であり、特に色相に優れる石油樹脂を生産効率よく製造できることから、0〜100℃が好ましく、特に0〜80℃であることが好ましい。ここで、色相の優れる石油樹脂を製造する際には、一般的には重合温度を0℃未満とする低温重合法がとられているが、低温重合法は、モノマー重合転化率が低く生産効率に劣るという課題を有する。本発明の石油樹脂製造用触媒を用いることにより、0℃以上の条件下であっても、色相に優れる石油樹脂を生産効率よく製造することが可能となる。また、該石油樹脂製造用触媒の添加量としては、任意であり、その中でも特に生産効率に優れた製造方法となることから、該原料油100重量部に対して0.1〜2重量部であることが好ましい。さらに、重合時間としては、0.1〜10時間の範囲が好ましい。反応圧力は大気圧〜1MPaが好ましい。
石油樹脂の重合反応の後には、石油樹脂製造用触媒の除去を行うことも可能であり、その際は、塩基による中和処理、水洗、溶媒による留去等の常法を選択することも可能である。
そして、得られる石油樹脂は、色相およびモノマー重合転化率に優れ、ゲル分の少ないことを特徴とするものであり、特に色相10以下、全モノマーの平均重合転化率が70重量%以上であることが好ましい。また、軟化点60〜160℃、特に70〜150℃を有するものであることが好ましい。特に加工性に優れるものとなることから重量平均分子量(Mw)500〜5000である石油樹脂が好ましい。
色相および原料油のモノマー重合転化率に優れ、ゲル分の少ない石油樹脂、特にジシクロペンタジエン類を多く含有する原料油を用いることをも可能とする新規な石油樹脂製造用触媒およびそれを用いた石油樹脂の製造方法を提供するものである。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限を受けるものではない。尚、実施例、比較例において用いた原料油、得られた石油樹脂の分析方法は下記の通りである。
<原料油>
ナフサの分解・精製により得られた沸点範囲140〜280℃のC9((A)、(B))留分(表1)、ジシクロペンタジエン留分(表2)、沸点範囲20〜110℃のC5留分(表3)のそれぞれの組成を表1〜3に示す。なお、表1〜3中のDCPDはジシクロペンタジエン、CPDはシクロペンタジエンの略記である。
Figure 0006083224
Figure 0006083224
Figure 0006083224
<石油樹脂製造用触媒成分>
三フッ化ホウ素:(大陽日酸(株)製)
フェノール:(和光純薬(株)製、試薬特級)
プロパノール:(和光純薬(株)製、試薬特級)
メタノール:(和光純薬(株)製、試薬特級)
〜分析方法〜
<各原料油中の成分分析>
JIS K−0114(2000年)に準拠してガスクロマトグラフ法を用いて分析した。
<石油樹脂製造用触媒のH−NMR測定>
三フッ化ホウ素とアルコール成分を混合したサンプルを調製し、重クロロホルム中で核磁気共鳴測定装置(日本電子製、(商品名)GSX400、周波数400MHz)によりH−NMRスペクトルを測定し、アルコール成分の水酸基に由来するピークの観察をした。
<モノマー重合転化率の測定>
JIS K−0114(2000年)に準拠してガスクロマトグラフ法により重合前後の油中の全モノマー量の測定を行い、モノマー重合転化率を算出した。
<重量平均分子量(Mw)の測定>
ポリスチレンを標準物質とし、JIS K−0124(1994年)に準拠してゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した。
<軟化点の測定>
JIS K−2531(1960)(環球法)に準拠した方法で測定した。
<色相(ガードナー)の測定>
得られた石油樹脂を50重量%トルエン溶液として、ASTM D−1544−63Tに従って測定した。
実施例1
三フッ化ホウ素0.90g、フェノール1.58gおよびプロパノール0.43gを混合(三フッ化ホウ素100重量部に対し、フェノールとプロパノールの合計が223重量部、フェノール/プロパノール(重量比)=3.7/1に相当。)とし、石油樹脂製造用触媒の調製を行った。得られた石油樹脂製造用触媒は、H−NMR測定により8.5ppmに水酸基に由来する単一ピークを有する三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール複合錯体であることを確認した。
内容積2リットルのガラス製オートクレーブに、原料油としてナフサの分解により得たC9(A)留分(表1参照。)400gとDCPD留分(表2参照。)100gを仕込んだ(C9留分/DCPD留分=80/20(重量%))。次に、窒素雰囲気下で40℃に加熱した後、得られた石油樹脂製造用触媒2.91g(原料油100重量部に対して、0.58重量部に相当。)を加えて40℃で3時間重合した。仕込条件(割合)を表4に示す。
重合反応終了後、苛性ソーダ水溶液を添加して中和した後、ろ過によりゲル分を回収し、乾燥してゲル分の重量を測定した。また、油層の未反応油を蒸留して石油樹脂を回収した。
得られた石油樹脂の物性を表6に示す。モノマー重合転化率は75%であり、得られた石油樹脂はゲルを含まず、色相も8と優れるものであった。
比較例1
三フッ化ホウ素0.90g、フェノール1.96gおよびプロパノール0.23gを混合(三フッ化ホウ素100重量部に対し、フェノールとプロパノールの合計が243重量部、フェノール/プロパノール(重量比)=8.5/1に相当。)とし、石油樹脂製造用触媒の調製を行った。得られた石油樹脂製造用触媒は、H−NMR測定により9.3ppmに水酸基に由来するピークを有する三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール錯体であることを確認した。
得られた触媒3.09gを用いた以外は、実施例1と同様の方法により石油樹脂の製造を行った。仕込条件(割合)を表5に示す。
得られた石油樹脂の物性を表7に示す。モノマー重合転化率は64%であり、得られた石油樹脂は色相12と悪いものであった。
実施例2
三フッ化ホウ素1.20g、フェノール2.10gおよびプロパノール0.57gを混合(三フッ化ホウ素100重量部に対し、フェノールとプロパノールの合計が223重量部、フェノール/プロパノール(重量比)=3.7/1に相当。)とし、石油樹脂製造用触媒の調製を行った。得られた石油樹脂製造用触媒は、H−NMR測定により8.4ppmに水酸基に由来する単一ピークを有する三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール複合錯体であることを確認した。
内容積2リットルのガラス製オートクレーブに、原料油としてナフサの分解により得たC9(B)留分(表1参照。)400gとC5留分(表3参照。)100gを仕込んだ(C9留分/C5留分=80/20(重量%))。次に、窒素雰囲気下で40℃に加熱した後、得られた石油樹脂製造用触媒3.87g(原料油100重量部に対して、0.77重量部に相当。)を加えて40℃で2時間重合した。仕込条件(割合)を表4に示す。
重合反応終了後、苛性ソーダ水溶液を添加して中和した後、ろ過によりゲル分を回収し、乾燥してゲル分の重量を測定した。また、油層の未反応油を蒸留して石油樹脂を回収した。
得られた石油樹脂の物性を表6に示す。モノマー重合転化率は79%であり、得られた石油樹脂はゲルを含まず、色相も9と優れるものであった。
比較例2
三フッ化ホウ素1.20g、フェノール2.80gおよびプロパノール0.21gを混合(三フッ化ホウ素100重量部に対し、フェノールとプロパノールの合計が251重量部、フェノール/プロパノール(重量比)=13.3/1に相当。)とし、石油樹脂製造用触媒の調製を行った。得られた石油樹脂製造用触媒は、H−NMR測定により9.4ppmに水酸基に由来するピークを有する三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール錯体であることを確認した。
得られた触媒4.21gを用いた以外は、実施例2と同様の方法により石油樹脂の製造を行った。仕込条件(割合)を表5に示す。
得られた石油樹脂の物性を表7に示す。モノマー重合転化率は72%であり、得られた石油樹脂は、ゲル分を有し、色相も13と悪いものであった。
実施例3
三フッ化ホウ素1.00g、フェノール1.00gおよびプロパノール0.81gを混合(三フッ化ホウ素100重量部に対し、フェノールとプロパノールの合計が181重量部、フェノール/プロパノール(重量比)=1.2/1に相当。)とし、石油樹脂製造用触媒の調製を行った。得られた石油樹脂製造用触媒は、H−NMR測定により7.7ppmに水酸基に由来する単一ピークを有する三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール複合錯体であることを確認した。
内容積2リットルのガラス製オートクレーブに、原料油としてナフサの分解により得たC9(B)留分(表1参照。)400gとC5留分(表3参照。)100gを仕込んだ(C9留分/C5留分=80/20(重量%))。次に、窒素雰囲気下で40℃に加熱した後、得られた石油樹脂製造用触媒2.81g(原料油100重量部に対して、0.56重量部に相当。)を加えて40℃で2時間重合した。仕込条件(割合)を表4に示す。
重合反応終了後、苛性ソーダ水溶液を添加して中和した後、ろ過によりゲル分を回収し、乾燥してゲル分の重量を測定した。また、油層の未反応油を蒸留して石油樹脂を回収した。
得られた石油樹脂の物性を表6に示す。モノマー重合転化率は80%であり、得られた石油樹脂はゲルを含まず、色相も8と優れるものであった。
比較例3
三フッ化ホウ素1g、フェノール2gを混合し、触媒の調製を行った。得られた触媒は、H−NMR測定により9.5ppmにフェノールの水酸基に由来する単一ピークを有する三フッ化ホウ素フェノール錯体であることを確認した。
得られた触媒3gを用いた以外は、実施例3と同様の方法により石油樹脂の製造を行った。仕込条件(割合)を表5に示す。
得られた石油樹脂の物性を表7に示す。モノマー重合転化率は72%であり、得られた石油樹脂は、ゲル分を有し、色相も14と悪いものであった。
実施例4
内容積2リットルのガラス製オートクレーブに、原料油としてナフサの分解により得たC9(B)留分(表1参照。)300gとC5留分(表3参照。)200gを仕込んだ(C9留分/C5留分=60/40(重量%))。次に、窒素雰囲気下で40℃に加熱した後、
三フッ化ホウ素1.20g、フェノール2.10gおよびプロパノール0.57g(実施例2で得られた石油樹脂製造用触媒に相当する配合割合)を加えて40℃で2時間重合した。仕込条件(割合)を表4に示す。
重合反応終了後、苛性ソーダ水溶液を添加して中和した後、ろ過によりゲル分を回収し、乾燥してゲル分の重量を測定した。また、油層の未反応油を蒸留して石油樹脂を回収した。
得られた石油樹脂の物性を表6に示す。モノマー重合転化率は81%であり、得られた石油樹脂はゲルを含まず、色相も7と優れるものであった。
比較例4
三フッ化ホウ素1.20g、フェノール2.10gおよびプロパノール0.57gの代わりに、三フッ化ホウ素1.20g及びプロパノール2.27gを用いた以外は、実施例4と同様の方法により石油樹脂の製造を行った。仕込条件を表5に示す。
なお、別途三フッ化ホウ素1.20g及びプロパノール2.27gを混合(三フッ化ホウ素100重量部に対し、プロパノールが189重量部に相当。)し、三フッ化ホウ素プロパノール錯体の調製を行い、得られた三フッ化ホウ素プロパノール錯体が、H−NMR測定により8.0ppmにプロパノールの水酸基に由来する単一ピークを有することを確認した。
得られた石油樹脂の物性を表7に示す。モノマー重合転化率は66%と低く、得られた石油樹脂は、ゲル分を有するものであった。
実施例5
三フッ化ホウ素1.20g、フェノール2.10gおよびプロパノール0.57gの代わりに、三フッ化ホウ素1g、フェノール0.75g及びプロパノール0.20gを用いた以外は、実施例4と同様の方法により石油樹脂の製造を行った。仕込条件を表4に示す。
なお、別途三フッ化ホウ素1g、フェノール0.75gおよびプロパノール0.20gを混合(三フッ化ホウ素100重量部に対し、フェノールとプロパノールの合計が95重量部、フェノール/プロパノール(重量比)=3.8/1に相当。)し、三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール複合錯体の調製を行い、得られた三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール複合錯体が、H−NMR測定により8.5ppmに水酸基に由来する単一ピークを有することを確認した。
得られた石油樹脂の物性を表6に示す。モノマー重合転化率は76%であり、得られた石油樹脂はゲルを含まず、色相も8と優れるものであった。
比較例5
三フッ化ホウ素1g、フェノール0.75g及びプロパノール0.20gの代わりに、三フッ化ホウ素1g、フェノール0.75gおよびメタノール0.25gを用いた以外は、実施例5と同様の方法により石油樹脂の製造を行った。仕込条件を表5に示す。
なお、別途三フッ化ホウ素1g、フェノール0.75gおよびメタノール0.25gを混合(三フッ化ホウ素100重量部に対し、フェノールとメタノールの合計が100重量部、フェノール/メタノール(重量比)=3/1に相当。)し、三フッ化ホウ素・フェノール・メタノール錯体の調製を行い、得られた三フッ化ホウ素・フェノール・メタノール錯体が、H−NMR測定により9.1ppmに水酸基に由来するピークを有することを確認した。
得られた石油樹脂の物性を表7に示す。モノマー重合転化率は62%と低く、得られた石油樹脂は、ゲル分を有し、色相の12と悪いものであった。
比較例6
三フッ化ホウ素1g、フェノール0.75g及びプロパノール0.20gの代わりに、三フッ化ホウ素1g及びプロパノール1.89gを用いた以外は、実施例5と同様の方法により石油樹脂の製造を行った。仕込条件を表5に示す。
なお、別途三フッ化ホウ素1g及びプロパノール1.89gを混合(三フッ化ホウ素100重量部に対し、プロパノールが189重量部に相当。)し、三フッ化ホウ素プロパノール錯体の調製を行い、得られた三フッ化ホウ素プロパノール錯体が、H−NMR測定により8.0ppmにプロパノールの水酸基に由来する単一ピークを有することを確認した。
得られた石油樹脂の物性を表7に示す。モノマー重合転化率は52%と低く、得られた石油樹脂は、ゲル分を有するものであった。
実施例6
三フッ化ホウ素0.9g、フェノール1.05g及びプロパノール0.85gを混合(三フッ化ホウ素100重量部に対し、フェノールとプロパノールの合計が211重量部、フェノール/プロパノール(重量比)=1.2/1に相当。)し、石油樹脂製造用触媒の調製を行った。得られた石油樹脂製造用触媒は、H−NMR測定により7.7ppmに水酸基に由来する単一ピークを有する三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール複合錯体であることを確認した。
内容積2リットルのガラス製オートクレーブに、原料油としてナフサの分解により得たC9(B)留分(表1参照。)500gを仕込んだ。次に、窒素雰囲気下で40℃に加熱した後、得られた石油樹脂製造用触媒2.8g(原料油100重量部に対して、0.56重量部に相当。)を加えて40℃で3時間重合した。仕込条件(割合)を表4に示す。
重合反応終了後、苛性ソーダ水溶液を添加して中和した後、ろ過によりゲル分を回収し、乾燥してゲル分の重量を測定した。また、油層の未反応油を蒸留して石油樹脂を回収した。
得られた石油樹脂の物性を表6に示す。モノマー重合転化率は74%であり、得られた石油樹脂はゲルを含まず、色相も9と優れるものであった。
比較例7
三フッ化ホウ素0.9g、フェノール1.05g及びプロパノール0.85gの代わりに、三フッ化ホウ素0.9g、フェノール2.10gを用いた以外は、実施例6と同様の方法により石油樹脂の製造を行った。仕込条件を表5に示す。
なお、別途三フッ化ホウ素0.9g、フェノール2.10gを混合(三フッ化ホウ素100重量部に対し、フェノールが233重量部に相当。)し、三フッ化ホウ素フェノール錯体の調製を行い、得られた三フッ化ホウ素フェノール錯体が、H−NMR測定により9.5ppmにフェノールの水酸基に由来する単一ピークを有することを確認した。
得られた石油樹脂の物性を表7に示す。モノマー重合転化率は65%と低く、得られた石油樹脂は、色相が13と悪いものであった。
Figure 0006083224
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Figure 0006083224
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色相および原料油のモノマー重合転化率に優れ、ゲル分の少ない石油樹脂、特にジシクロペンタジエン類を多く含有する原料油を用いることをも可能とする新規な石油樹脂製造用触媒およびそれを用いた石油樹脂の製造方法を提供するものであり、その産業的価値は極めて高いものである。

Claims (4)

  1. 三フッ化ホウ素、フェノールおよびプロパノールからなる石油樹脂製造用触媒であって、該石油樹脂製造用触媒は、三フッ化ホウ素100重量部に対するフェノールとプロパノールの合計が50〜300重量部であり、その際のフェノール/プロパノール(重量比)が0.2/1〜6/1の範囲内である、三フッ化ホウ素・フェノール・プロパノール複合錯体であり、重クロロホルム中、室温下で測定したH−NMRスペクトルにおけるフェノールおよびプロパノールの水酸基に由来するピークが、7.3〜8.9ppmの間で単一ピークを示すものであることを特徴とする石油樹脂製造用触媒。
  2. 石油類の熱分解及び/又は精製により得られる不飽和炭化水素含有留分である原料油を請求項1に記載の石油樹脂製造用触媒を用い、重合することを特徴とする石油樹脂の製造方法
  3. 原料油が、ジシクロペンタジエン類を10重量%以上含む原料油であることを特徴とする請求項2に記載の石油樹脂の製造方法。
  4. 原料油が、沸点範囲20〜110℃のC5留分、沸点範囲140〜280℃のC9留分及びジシクロペンタジエン留分からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載の石油樹脂の製造方法。
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