JP6080042B2 - 路面状態判別報知装置 - Google Patents
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Description
従来、送信器から超音波を空中に発信し、対象物で反射した超音波を受信器で検知することで、対象物の存在判別や対象物までの距離の測定等に用いられている。通常、超音波センサから得られる情報は、測定範囲内の対象物の有無、もしくは対象物との距離情報のみである。
しかし、前方の障害物を検知するだけでは、歩行者が実際に歩く路面の危険性等を検知して知らせることができないなどの問題があった。
しかし、この手法では対象物を判別可能な距離がほぼ固定であることや、位相のズレによって判別が不可能になるなどの問題点があるため、応用範囲が非常に限られる。
しかし、その路面状態検出手段(図1〜3に示されるセンサ部10)は、杖2の下方先端方向に超音波を出力する送信素子22、反射してくる超音波を電気信号に変換する受信素子24及び杖2の下方先端側からの入射光を受光してその色成分を判別する色判別センサ26を備え、杖2の下方先端付近の路面状態しか検知できないものである。
また、送信素子22及び受信素子24は超音波によってセンサ部10から杖2の下方先端付近の路面までの距離を計測し、その変化量に基づいて路面に段差があるか否かを判断するものであり、色判別センサ26は杖2の下方先端付近の路面色を認識し、路面に敷設された歩行路案内用の表示物を検出するものであって、いずれも路面の表面が滑らかか粗いかといった状態を検出し報知するものではない。
しかし、超音波センサ10は路面の凹凸、すなわち、超音波センサ10から路面までの距離を検知するものであり、路面判別部11は、路面の凹凸情報にもとづいて、路面の状態を判別するものである。
しかし、この装置はしきい値の設定や再設定を頻繁に行うために、車速センサ9、温度センサ10、降雨センサ11等を備えており、制御が複雑であるとともに非常に高価なものとなる。
また、そのための路面状態判別報知装置を一つの筐体に納め、既存の車椅子や杖に取り付けて使えるようにすることも、本発明の解決しようとする課題の一つである。
また、請求項3に係る発明の路面状態判別報知装置によれば、安全でない水たまりの判別も可能である。
いずれの場合も、その前方の路面3に向けて超音波を発射し、反射してくる超音波を受信して強度を測定し、その強度に基づいて路面状態を判別し、車椅子に乗っている人、車椅子を押している人又は杖を持って歩いている人に路面状態又は路面状態の変化を報知するようになっている。
すなわち、発信器5から実験対象面8に向けて超音波を発射し、実験対象面8から反射してくる超音波を受信器6で受信し、測定器7で受信した超音波の強度を測定し記録するものである。
超音波の測定には送受信独立型超音波センサ(中心周波数:40k±1kHz)を用いた。測定距離(発信器5及び受信器6と実験対象面8との距離)は、車椅子や杖への搭載を想定し、50cm及び70cmとした。実験対象面8の材質は、アスファルト、砂利、芝生、砂、泥、木材及び水たまりの計7種類を用いた。水たまり以外の材質は、濡れていない乾いた状態のものを用い、実験時の気温は29℃であった。
各材質における反射波強度の波形の代表的なものを図4〜図10に示し、反射波強度の最大値の平均値及び標準偏差を図11に示した。
また、図11に基づいて、材質を2.0V(図中のVth)を境に“反射波強度が強いもの”と“反射波強度が弱いもの”に分類すれば、前者にはアスファルト、木材、水たまりが属し、後者には砂利、芝生、砂、泥が属する。分類後の材質をみると、反射波強度が強い材質は表面が滑らかで、反射波強度が弱い材質は表面が粗い特徴があることが分かる。
車椅子の走行を想定した場合、水たまりを除けば単純に“反射波強度が強いもの=安全な材質”と判断することが出来る。この結果をもとに危険検知システムを構成すれば、およそ想定される危険は避けることができる。
ただし、ここで問題となるのは水たまりの測定結果である。図11より、水たまりの最大電圧はアスファルトと近い値となっている。しかし、図10の水たまりの波形を見ると、他の波形と違い反射波が複数観測されていることが分かる。これは、水たまりの波による反射時間のずれによるものだと推定される。そして、波形の違いを利用すれば、安全でない水たまりの判別も可能である。
以上のことから、測定距離が変わったとしても、測定距離の変化がそれほど大きくない場合には路面状態の判別に格別の支障をきたすことはなく、測定距離の変化が大きい場合であっても測定距離は超音波を発射してから反射波が受信されるまでの時間を用いて計測することができるので、計測された距離を考慮してしきい値を計算しておくことにより、路面状態の判別を行うことが可能である。
なお、超音波の入射角度によっても反射波強度は変化するが、入射角度の変化がそれほど大きくない場合には路面状態の判別に格別の支障をきたすことはなく、入射角度の変化が大きい場合であっても角度センサを用いて入射角度を測定できるようにすれば、測定された入射角度に応じてしきい値を計算することにより、路面状態の判別を行うことが可能である。
本発明の路面判別手段では、この材質による反射波強度や反射波波形の違いを利用して路面状態の判別を行い、また、継続的に反射波強度を測定し、その強度や波形に変化が生じたことを判定して、路面状態が変化したことを判別する。
路面状態判別報知装置1は、超音波センサ、路面判別手段、路面状態報知手段及びバッテリーが一つの筐体に内蔵されたものであり、その筐体は車椅子2の左又は右のアームレスト前方に着脱可能とするためのベルト、挟持体又は取り付け金具等の固定部材を有している。
筐体の形状はどのようなものでも良いが、筐体の下面又は後面に、アームレスト前方の上面又は前面を覆うことのできるコの字状の凹部を設け、その凹部をアームレスト前方の上面又は前面を覆うように配置した時、超音波センサの発信器からの超音波が路面に45度から85度の所定角度で入射するようにしておけば、取り付け角度の調整を容易かつ確実に行うことができる。
その後は1秒間に2回から50回程度の間隔で、発信器から間歇的に超音波を発射し、受信器で反射してくる超音波を所定期間(例えば、超音波発射後20msec経過時まで)受信し、測定器で受信した超音波の強度を測定し、路面判別手段で超音波強度の最大値がスイッチ投入直後に計算したしきい値より大きいか否かを比較する。最大値の抽出は、1〜100μsec程度の周期でサンプリングされた超音波強度の時系列データを処理することで行うが、サンプリングされた順に順次それまでに記憶されている最大値と比較し、比較したサンプリング値の方が大きければ、そのサンプリング値を最大値に置き換えて記憶し、それまでに記憶されている最大値の方が大きければ、そのまま次のサンプリング値との比較を行っていって、最終的に記憶されている値を最大値として抽出すれば良い。
そして、最大値としきい値を比較した結果、最大値がしきい値より大きい場合には格別の報知を行わないか、路面状態報知手段から小さく短い音を発音し、車椅子前方の路面の表面が滑らかであることを報知する。逆にその比較結果が小さい場合には路面状態報知手段から大きく短い音を発音して車椅子前方の路面の表面が粗いことを報知する。
なお、最大値として抽出された値が、所定値(例えば0.3V)未満であるときや異常に高い値(例えば7.0V以上)であるときには検出エラーとし、検出エラーが連続する場合には何らかの異常(装置の故障又は車椅子や杖を持つ人の転倒、杖の落下等)があると判断して、エラー報知を行ったり救助を求める音を発生させたりすると良い。
そして、第1、第2の最大値候補がともに所定値(例えば0.3V)以上の値であれば、極大値が2回発生していると判定し、いずれか一つだけが所定値以上の値であれば、極大値が1回だけ発生していると判定する。
その結果、極大値が2回発生している場合には、超音波強度の最大値がしきい値より大きいか否かにかかわらず、路面状態報知手段から大きく長い音を発音して車椅子前方の路面に水たまりがあることを報知する。
なお、この判定を行う場合には、抽出された第1、第2の最大値候補のうち高い方の値を最大値とすることができるので、最大値の抽出処理を単独で行う必要はない。
また、報知音は単純な音に限ることはなく、それぞれの路面状態に対応した音程、音色、メロディー又はメッセージを発音しても良い。
実施例1と同様に、路面状態判別報知装置1は、超音波センサ、路面判別手段、路面状態報知手段及びバッテリーが一つの筐体に内蔵されたものであり、その筐体は杖4の把持部の下に着脱可能とするためのベルト、挟持体又は取り付け金具等の固定部材を有している。
筐体の形状はどのようなものでも良いが、杖4のシャフト部を挿入できるU字状の凹部を設け、その凹部を、杖4を持つ人の前方となる方向から挿入した時、超音波センサの発信器からの超音波が路面に45度から85度の所定角度で入射するようにしておけば、取り付け角度の調整を容易かつ確実に行うことができる。
路面判別手段は、超音波を発射してから反射波を受信するまでの時間に基づいて、超音波センサから超音波入射地点までの距離をまず計測し、“反射波強度が強いもの”と“反射波強度が弱いもの”に分類するためのしきい値(図11のVth)を計算する。実施例2においては、超音波を発射する時の杖の角度がまちまちで、超音波センサから超音波入射位置までの距離が毎回変化するため、超音波を発射するたびに超音波センサから超音波入射位置までの距離を計測して、しきい値を計算する必要がある。
なお、杖の角度が変化すると超音波の入射角度も変化するが、杖の場合には角度の変化はそれほど大きくないため、実施例2においては杖の角度の変化を考慮せずにしきい値の計算を行っている。
しきい値を計算した後の、路面判別手段における超音波強度の最大値の抽出、その最大値と計算したしきい値との比較、その比較結果に応じて路面状態報知手段から前方の路面の表面が滑らかであるか粗いかについての報知については、実施例1と同様である。
(1)実施例1においては、車椅子に路面状態判別報知装置1を取り付けて使用したが、手押し車型の杖に装着しても同様に使用することが可能である。
(2)実施例1の構成に加えて、超音波センサ、路面判別手段及び路面状態報知手段を内蔵する筐体に水準器を設け、その水準器を水平にセットした時、筐体の取り付け状態が最適となるようにしておけば、路面状態を正確に判別できる。
(3)実施例1においては、路面が平面の場合には超音波センサから超音波入射位置までの距離がほとんど変化しないので、超音波を発射した時から反射波を受信するまでの時間はほぼ一定となる。
したがって、その時間を計測しておき計測結果に変化が認められた場合には、車椅子前方の路面が平面ではないこと、例えば、段差、障害物、突起又はくぼみ等が存在することを検知できる。
そのため、車椅子前方の路面状態又は路面状態の変化を報知するだけでなく、車椅子前方の路面が平面ではないことも報知することができる。
なお、車椅子前方の路面が平面ではないことを報知する場合、反射波強度には変化が生じることが多いので、路面状態又は路面状態の変化については報知せず、路面状態又は路面状態の変化を報知する際の報知音とは異なる音を発音するようにした方が良い。
(4)実施例2においては、超音波を発射する時の杖の角度がまちまちで、超音波センサから超音波入射位置までの距離が毎回変化するため、路面は平面であると仮定した上で、超音波を発射するたびに超音波センサから超音波入射位置までの距離を計測して、しきい値を計算している。
しかし、超音波センサの杖に対する取付角度が小さい場合には、杖が路面に対して垂直な場合と路面に対して傾いた場合で、超音波センサから超音波入射位置までの距離に大きな差は生じない。
例えば、超音波センサの杖に対する取付角度を15度、取付高さを1mとしたとき、杖が路面に対して垂直な場合は1.03m、前方に30度傾いた場合は0.90m、後方に30度傾いた場合は1.22mとなり、最大32cmの差しか生じない。
そのため、スイッチ投入時又は事前に計算したしきい値をそのまま用いて、前方の路面状態又は路面状態の変化を判別することも可能である。
(5)実施例2においては、超音波を発射する時の杖の角度がまちまちで、超音波センサから超音波入射位置までの距離が毎回変化するため、路面は平面であると仮定した上で、超音波を発射するたびに超音波センサから超音波入射位置までの距離を計測して、しきい値を計算している。
しかし、路面状態判別報知装置に姿勢検知装置を追加し、杖4が路面に対してほぼ垂直になっている時だけに発信器から超音波を発射できるようにすれば、路面が平面である場合には、超音波を発射した時から反射波を受信するまでの時間はほぼ一定となる。そうすると、車椅子の場合と同様に前方の路面が平面ではないことも検知でき、前方の路面状態又は路面状態の変化を報知するだけでなく、前方の路面が平面ではないことも報知することができる。
その場合、路面状態判別報知装置1を使用する際には、杖4を路面に対して垂直に立て、杖4を持つ人の前方が平面であることを確認してからスイッチを投入する。その後は、車椅子の場合と同様スイッチ投入時のみに、路面判別手段は超音波センサから超音波入射地点までの距離を計測してしきい値を計算し、前方の路面が平面ではないことの検知も、上記(3)と同様に行うことができる。
姿勢検知装置としては、杖4の先端部に路面の水平に対する傾きを検知する傾斜計、路面状態判別報知装置1に超音波センサの水平に対する傾きを検知する傾斜計を設け、両傾斜計の検知した傾斜角度の差が超音波センサの杖4に対する取付角度と一致した時点を杖4が路面に対して垂直になっている状態と判定するものが一例である。
(6)実施例1及び上記(5)においては、路面判別手段は、スイッチを投入した時、超音波を発射してから、反射波を受信するまでの時間に基づいて、超音波センサから超音波入射地点までの距離を計測し、“反射波強度が強いもの”と“反射波強度が弱いもの”に分類するためのしきい値を計算したが、路面判別手段で距離を計測するのに代えて、筐体の設置高さ(車椅子の場合アームレストの路面からの高さ、杖の場合筐体の設置位置から下方先端までの長さ)を使用者が事前に入力又は選択することでその距離を求め、しきい値を計算するようにしても良い。
(7)実施例2においては、路面状態判別報知装置1を杖4に装備したが、杖4を持つ人の頭に装着しても良い。その場合筐体の背面は額にマッチする形状とし、ベルトやバンドで頭に固定できるようにすると良い。また、ヘッドランプに内装する形態としても良い。頭に装着できるようにした場合には、目の良く見えない人だけではなく、暗がりで行動する人に対しても、路面状態、路面状態の変化又は障害物の有無を報知できるので、適用の幅が広がる。
(8)実施例1及び2においては、反射波強度の最大値をしきい値と比較して路面の表面が滑らかであるか粗いかを判定しているが、反射波強度の平均値や反射波強度波形の面積と適宜のしきい値とを比較して、路面の表面が滑らかであるか粗いかを判定したり、複数のパラメータの比較結果を総合して、路面の材質について判定したりすることも可能である。
(9)実施例1及び2においては、原則として前方の路面の表面が滑らかであるか粗いかについて継続的に報知しているが、前方の路面の状態が変化すると判定した時にだけ、報知する態様としても良い。例えば、前方の路面の状態が滑らかから粗い又は水たまりに変化すると判定した時、その後5秒間だけ注意を促すメッセージを出力し、逆に、前方の路面の状態が粗い又は水たまりから滑らかに変化すると判定した時、その後5秒間だけもう少しの辛抱であることを告げるメッセージを出力といった態様が考えられる。
(10)実施例1及び2においては、車椅子や杖の前方の路面状態又は路面状態の変化を音で報知しているが、音に代えて又は音に加えて、ランプの点灯、点滅、体表面に対する振動、あるいは体表面の複数箇所を押圧することによって報知しても良い。
(11)実施例1及び2においては、路面状態判別報知装置の電源としてバッテリーを用いているが、太陽電池や車椅子が動くと発電する発電機等を電源としても良い。
2 車椅子
3 路面
4 杖
5 発信器
6 受信器
7 測定器
8 実験対象面
Claims (4)
- 車椅子又は杖を持つ人の前方の路面に向けて超音波を発射する発信器と、反射してくる超音波を受信する受信器と、受信した超音波の強度を測定する測定器からなる超音波センサと、超音波を発射してから反射波を受信するまでの時間に基づいて超音波センサから超音波入射地点までの距離を計測し、しきい値を計算するしきい値計算手段と、前記超音波センサから得られる超音波の強度と前記しきい値計算手段で計算されたしきい値との比較に基づいて路面状態を判別する路面判別手段と、該路面判別手段の判別結果に応じて路面状態又は路面状態の変化を報知する路面状態報知手段を備える路面状態判別報知装置。
- 角度センサを備え、前記しきい値計算手段は、前記角度センサを用いて測定された超音波の入射角度に応じてしきい値を計算することを特徴とする請求項1記載の路面状態判別報知装置。
- 前記路面判別手段は、前記発信器から超音波を発射した後の所定期間において前記受信器で測定された強度を記憶し、記憶した強度の最大値、平均値若しくは強度波形の面積と前記しきい値計算手段で計算されたしきい値との比較又は強度波形の所定期間における極大値の発生回数に基づいて、路面状態を判別することを特徴とする請求項1又は2記載の路面状態判別報知装置。
- 前記超音波センサ、前記しきい値計算手段、前記路面判別手段及び前記路面状態報知手段が一つの筐体に内蔵されており、該筐体が車椅子又は杖に着脱可能となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されている路面状態判別報知装置。
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