図面を用いて本発明の実施例について説明する。
図1は内燃機関100の概略構成図である。図2は可変噴孔ノズルであるノズル130を示す図である。図2では、右半分で第1および第2の噴孔131a、131bから燃料を噴射する状態を示し、左半分で第1の噴孔131aから燃料を噴射する状態を示す。図1に示す内燃機関100は、筒内噴射を行う内燃機関、より具体的にはディーゼル内燃機関である。内燃機関100は4気筒である。内燃機関100は、シリンダヘッド101aとシリンダブロック101bを備えたエンジン本体101を備え、そのエンジン本体101に♯1気筒〜♯4気筒を備える。
燃料噴射装置1は、内燃機関100に組み込まれている。燃料噴射装置1は、♯1気筒〜♯4気筒に対応して、♯1インジェクタ107−1〜♯4インジェクタ107−4を備える。具体的に、♯1気筒には、♯1インジェクタ107−1が装着され、♯2気筒には♯2インジェクタ107−2が装着されている。♯3気筒には♯3インジェクタ107−3が装着され、♯4気筒には♯4インジェクタ107−4が装着されている。♯1インジェクタ107−1〜♯4インジェクタ107−4はそれぞれコモンレール120に接続され、コモンレール120から高圧の燃料が供給される。各インジェクタ107は、シリンダヘッド101aに装着されている。各インジェクタ107は、シート部を介してシリンダヘッド101aとの間で熱の授受を行う。インジェクタ107は図2に示すノズル130を先端部に備えている。ノズル130については後述する。
内燃機関100は、エンジン本体101に取り付けられたインテークマニホールド102、エキゾーストマニホールド103を備える。インテークマニホールド102には吸気管104が接続されている。エキゾーストマニホールド103には排気管105が接続されている。
内燃機関100は外部EGR装置110を備えている。外部EGR装置110はEGR通路111、EGRバルブ112、EGRクーラ113、バイパス通路114およびバイパスバルブ115を備えている。EGR通路111の一端は、エキゾーストマニホールド103に接続されている。EGR通路111の他端は、吸気管104に接続されている。EGR通路111には、排気ガス(EGRガス)の流通状態を制御するEGRバルブ112が設けられている。EGR通路111には、EGRガスを冷却するEGRクーラ113が設けられている。EGR通路111には、EGRクーラ113をバイパスするバイパス通路114が設けられている。EGR通路111には、EGR通路111およびバイパス通路114のうちいずれかにEGRガスの流通経路を決定するバイパスバルブ115が設けられている。外部EGR装置110は少なくともEGR通路111とEGRバルブ112とを備える構成であってもよい。
図2に示すように、ノズル130はノズルボディ131と、第1のニードルであるアウタニードル132と、第2のニードルであるインナニードル133と、第1のスプリングであるアウタニードルセットスプリング134と、第2のスプリングであるインナニードルセットスプリング135とを備えている。
ノズルボディ131はノズル130の筐体部であり、先端部に第1の噴孔131aおよび第2の噴孔131bを備えている。第1の噴孔131aの燃料噴射方向は、第2の噴孔131bの燃料噴射方向よりもシリンダヘッド101a側を向くように設定されている。換言すれば、第2の噴孔131bの燃料噴射方向は、第1の噴孔131aの燃料噴射方向よりも下側(ピストン側)を向くように設定されている。
噴孔131a、131bの燃料噴射方向それぞれの間には、噴射間角度αが設定されている。噴射間角度αは第1の噴孔131aがノズル130の中心軸となす鋭角から、第2の噴孔131bがノズル130の中心軸となす鋭角を引いて算出される角度であり、正の値となっている。噴孔131a、131bは周方向に沿ってそれぞれ複数設けられている。第1の噴孔131aは第2の噴孔131bよりも、ノズル130の中心軸方向においてシリンダヘッド101a側に設けられている。ノズルボディ131には、噴孔131a、131bのほか燃料供給通路131cが設けられている。燃料供給通路131cは、噴孔131a、131bに燃料を供給する。
アウタニードル132は、ノズルボディ131に摺動自在に収容され、第1の噴孔131aを開閉する。アウタニードル132は筒状の形状を有している。インナニードル133は、アウタニードル132に摺動自在に挿通され、第2の噴孔131bを開閉する。アウタニードルセットスプリング134は、第1の噴孔131aを閉止する方向にアウタニードル132を付勢する。インナニードルセットスプリング135は、第2の噴孔131bを閉止する方向にインナニードル133を付勢する。
ノズル130は背圧室136を有している。背圧室136に連通する燃料流路は、背圧制御部である背圧制御弁140によって切り替えられる。背圧制御弁140はECU150に電気的に接続されている。背圧制御弁140が背圧室136と供給側流路141とを連通すると、高圧燃料が背圧室136に導入され、ニードル132、133が背圧により閉孔方向に付勢される。背圧制御弁140が背圧室136と排出側流路142とを連通すると、背圧室136から高圧燃料が排出される。結果、ニードル132、133にかかる背圧が低下する。
背圧による付勢力と、アウタニードルセットスプリング134の付勢力との和が、燃料供給通路131cを介して供給される燃料の燃圧に基づく付勢力よりも小さくなると、まずアウタニードル132が第1の噴孔131aを開放する方向に移動を始める。結果、第1の噴孔131aからの燃料噴射が始まる。続いてアウタニードル132の係合部132aがインナニードル133の係合部133aに係合すると、インナニードル133が開孔方向に移動を始め、第2の噴孔131bからの燃料噴射が始まる。
図3はノズル130が行う燃料噴射の基本態様を示す図である。縦軸は燃料噴射率、横軸は時間を示す。燃料噴射率は、燃料噴射に応じて変化する瞬時の燃料噴射量である。ハッチング部は第1の噴孔131aが噴射する燃料噴射量を示す。ノズル130は、上述したように噴孔131a、131bを段階的に開放する。このため、ノズル130は開弁時にまず第1の噴孔131aによって燃料を噴射する。そしてその後、さらに第2の噴孔131bによって燃料を噴射する。ノズル130は閉弁時にはまず第2の噴孔131bによる燃料噴射を停止する。結果、噴孔131a、131bのうち第1の噴孔131aが燃料を噴射する。そしてその後、さらに第1の噴孔131aによる燃料噴射を停止することで、燃料噴射が終了する。
図4(a)から図4(c)はノズル130で実現可能な燃料噴射態様を例示する図である。図4(a)は第1の燃料噴射態様例を、図4(b)は第2の燃料噴射態様例を、図4(c)は第3の燃料噴射態様例を示す。ここで、ノズル130は噴孔131aおよび131bのうち第1の噴孔131aからの燃料噴射を可能にする。かかる燃料噴射は、第1の噴孔131aが開放された後、第2の噴孔131bが開放される前に、背圧室136に高圧燃料を導入することで行うことができる。ノズル130は背圧室136に導入される高圧燃料の燃圧を調整することで、燃料噴射期間を変更することもできる。燃圧調整は例えばコモンレール120で行うことができる。燃圧調整は例えば別途設けたレギュレータで行ってもよい。
このため、ノズル130は例えば図4(a)に示すように、第1の噴孔131aからパイロット噴射として少量の燃料噴射を行った後、メイン噴射として基本態様で燃料噴射を行うことができる。また、例えば図4(b)に示すように、第1の噴孔131aから行うパイロット噴射を多段化し、メイン噴射の燃料噴射期間を短くすることもできる。また、例えば図4(c)に示すように、第1の噴孔131aからパイロット噴射を行った後、開弁時における第1の噴孔131aの燃料噴射期間を長くしたメイン噴射を行うことができる。
ノズル130は、第1の噴孔131aからのパイロット噴射の有無や、第1の噴孔131aの燃料噴射期間の長短によって、第1の噴孔131aの燃料噴射率(具体的には、時間に応じた燃料噴射率の変化態様)を変更可能となっている。具体的には、ノズル130は第1の噴孔131aからパイロット噴射を行うことで、パイロット噴射を行わない場合よりも、第1の噴孔131aの使用度合いが高まるように、第1の噴孔131aの燃料噴射率を変更することができる。また、第1の噴孔131aの燃料噴射期間を長くすることで、第1の噴孔131aの燃料噴射期間を長くしない場合よりも、第1の噴孔131aの使用度合いが高まるように第1の噴孔131aの燃料噴射率を変更することができる。
図1に戻り、吸気管104にはエアフロメータ106が接続されている。エアフロメータ106は、ECU150に電気的に接続されている。ECU150には、インジェクタ107−i(iは気筒番号を示す)、具体的には♯1インジェクタ107−1から♯4インジェクタ107−4や、コモンレール120が電気的に接続されている。
ECU150には、内燃機関100の回転数NEを測定するNEセンサ161、冷却水の水温Twを測定する水温センサ162、燃料の温度を測定する燃温センサ163、およびクランク角センサ164が電気的に接続されている。ECU150には、EGR率マップ、結露判定マップ、噴射制御マップ、その他のマップ類が格納されている。噴射制御マップには、機関運転状態に応じた燃料噴射制御が設定されている。噴射制御マップには具体的には、後述するノズル腐食防止制御実行時以外のとき(以下、通常時と称す)に用いる第1の噴射制御マップと、ノズル腐食防止制御実行時に用いる第2の噴射制御マップとの2種類のマップがある。ECU150は内燃機関の制御装置であり、内燃機関周辺の種々の制御を行う。ECU150が行う制御については後述する。
ところで、前述したようにインジェクタ107は先端部にノズル130を備えている。ノズル130には、噴孔131a、131b(以下、単に噴孔Hとも総称する)が設けられている。このようなノズル130の先端部に酸が結露し、付着すると腐食が発生する可能性がある。噴孔Hの周辺が腐食すると、噴孔Hの噴孔径が変化する可能性がある。噴孔径が変化すると、燃料噴射に影響を与えることになる。そこで、ECU150は少なくとも次に説明するヘッド熱量Qに基づき、噴孔Hの腐食を判定する。
図5はノズル先端温度Tnzlの低下速度の説明図である。実線はシリンダヘッド101aが保有する熱量が相対的に大きい場合を示し、破線はシリンダヘッド101aが保有する熱量が相対的に小さい場合を示す。
ここで、機関停止時のノズル先端温度Tnzlが同じであっても、シリンダヘッド101aが保有する熱量によっては、機関停止後のノズル先端温度Tnzlの低下速度は異なってくる。具体的には、実線の場合には破線の場合と比較して、ノズル130(具体的にはノズルボディ131)からシリンダヘッド101aへの放熱は小さくなる。このため、実線の場合のほうが破線の場合よりもシリンダヘッド101aヘの放熱速度が遅い分、機関停止後のノズル先端温度Tnzlの低下速度は遅くなる。結果、実線の場合のほうが破線の場合よりも、露点到達時間tは長くなる。
実線と破線とでノズル先端温度Tnzlの低下速度が異なるのは、機関停止前のノズル受熱量が異なるためと考えられる。図5を参照すると、実線と破線とでは、ノズル先端温度Tnzlの履歴が異なっている。結果、図5中、ハッチングを施して示した分だけ、実線の方が破線よりもノズル受熱量が多い。そして、このノズル受熱量の差が、機関停止後のノズル先端温度Tnzlの低下速度の差として現れていると考えられる。
かかる現象は、換言すれば、シリンダヘッド101aの熱量であるヘッド熱量Qの差が、機関停止後のノズル先端温度Tnzlの低下速度の差として現れているといえる。本発明において、「シリンダヘッドにおける熱量」は、ヘッド熱量Qである場合だけでなく、ノズル受熱量である場合や、ヘッド熱量Qおよびノズル受熱量である場合を含む。ノズル受熱量は具体的には、ノズル130(具体的にはここではノズルボディ131)の瞬時の熱量の積算値となっている。
ECU150は、ノズル先端温度Tnzlとヘッド熱量Qとのうち少なくともいずれかに基づき、インジェクタ107の噴孔Hの腐食を判定する。次にこの点について説明する。
図6(a)から図6(c)は判定方法の説明図である。図6(a)は機関始動後の経過時間t1が所定時間trよりも短い場合の判定方法を示す。図6(b)は経過時間t1が所定時間tr以上で、且つ水温Twが所定値Twr以上の場合の判定方法を示す。図6(c)は経過時間t1が所定時間tr以上で、且つ水温Twが所定値Twrよりも低い場合の判定方法を示す。図6(a)から図6(c)では、結露発生条件を示すマップを用いて判定方法を説明する。このマップでは、ノズル先端温度Tnzlとヘッド熱量Qとに応じて、結露発生領域R1と結露回避領域R2とが設定されている。図6(a)、図6(b)では、判定方法が領域R1、R2に基づく判定方法ではないことを示すために、結露発生領域R1を破線で示す。
ここで、ノズル先端温度Tnzlは水温Twに比例する。このため、機関停止直後は、ヘッド熱量Qが噴孔Hの腐食に対して大きな影響を及ぼす。これに鑑み、機関始動後の経過時間t1が所定時間trよりも短い場合には、図6(a)に示すように、ヘッド熱量Qが所定値Qr以下である場合に、噴孔Hの腐食が発生する状態であると判定する。所定値Qrは噴孔Hの腐食を回避可能な熱量であり、予め設定しておくことができる。所定時間trは機関始動時の水温Tw0に応じて決定する。
マップが示すように、ノズル先端温度Tnzlが十分高い場合には、ヘッド熱量Qは考慮不要となる。これに鑑み、経過時間t1が所定時間tr以上で、且つ水温Twが所定値Twr以上の場合には、図6(b)に示すように、ノズル先端温度Tnzlが所定値Tnzlrよりも低い場合に、噴孔Hの腐食が発生する状態であると判定する。所定値Tnzlrは噴孔Hの腐食を回避可能な温度であり、予め設定しておくことができる。かかる判定を行うにあたっては、ノズル先端温度Tnzlの代わりに例えば水温Twを用いてもよい。
経過時間t1が所定時間tr以上で、且つ水温Twが所定値Twrよりも低い場合には、判定精度上、ノズル先端温度Tnzlおよびヘッド熱量Qいずれの影響も無視すべきではない。このためこの場合には、図6(c)に示すように、ノズル先端温度Tnzlおよびヘッド熱量Qに基づき、噴孔Hの腐食が発生する状態であるか否かを判定する。具体的には、ノズル先端温度Tnzlおよびヘッド熱量Qが結露発生領域R1にある場合に、噴孔Hの腐食が発生する状態であると判定する。
以下、図7を参照しつつ、内燃機関100の制御の一例について説明する。図7は内燃機関100の制御の一例を示すフロー図である。内燃機関100の制御はECU150によって行われる。
ステップS1では、機関始動時の水温Tw0を取得する。ステップS2では、所定値trを決定する。所定値trは、一例として以下の式1によって決定される。
Tr=f(Tw0) 式1
ステップS3では、ノズル先端温度Tnzlを算出する。ここで、ノズル先端温度Tnzlは、その時点時点、すなわち、瞬時のノズル先端温度である。ノズル先端温度Tnzlは、一例として、以下の式2によって算出、推定される。
Tnzl
=f(NE、IT、TQ)−f(Tw、Tf) 式2
NE:回転数 IT:噴射時期 TQ:噴射量
Tw:水温 Tf:燃温
ステップS4では、ヘッド熱量dQを算出する。ヘッド熱量dQはシリンダヘッド101aの瞬時の熱量である。ヘッド熱量dQは、一例として、以下の式2によって算出、推定される。
dQ
=(a・NE+b・IT+c・TQ)×α−d・Tw+e 式3
第1項は燃焼ガスからの受熱の影響を示し、第2項は放熱の影響を示す。a、b、c、dおよびeは定数である。αは第1の噴孔131aの燃料噴射率の制御による蓄熱補正係数である。
ステップS5では、ヘッド熱量Qを算出する。ヘッド熱量Qはシリンダヘッド101aの受熱量であり、具体的にはヘッド熱量dQの積算値である。ヘッド熱量Qはヘッド熱量dQを一定期間τ分、積算した値として求めることができる。一定期間τは任意に設定することができる。ヘッド熱量Qは、一例として、以下の式4によって算出、推定される。
Q=ΣdQ 式4
ステップS6では、機関始動後の経過時間t1が所定時間tr以上であるか否かが判定される。経過時間t1が所定時間trであることは、経過時間t1が所定時間trよりも短い場合に加えてもよい。このことは、他の判定についても同様である。否定判定であればステップS8に進む。ステップS8では、ヘッド熱量Qが所定値Qr以下であるか否かが判定される。そして、否定判定であればステップS1に戻り、肯定判定であればステップS11に進む。ステップS11では、ノズル腐食防止制御が行われる。ノズル腐食防止制御は、サブルーチンとなっており、これについては後に詳述する。
ステップS6で肯定判定であればステップS7に進む。ステップS7では、水温Twが所定値Twr以上であるか否かが判定される。肯定判定であればステップS9に進む。ステップS9では、ノズル先端温度Tnzlが所定値Tnzlr以上であるか否かが判定される。そして、肯定判定であればステップS1に戻り、否定判定であればステップS11に進む。
ステップS7で否定判定であればステップS10に進む。ステップS10では、結露が発生するか否かが判定される。具体的には、ステップS10ではノズル先端温度Tnzlとヘッド熱量Qとが結露発生領域R1にあるか否かが判定される。そして、肯定判定であればステップS11に進み、否定判定であればステップS1に戻る。
図8はノズル腐食防止制御の一例を示すフロー図である。図8では、ステップS8で肯定判定された場合のノズル腐食防止制御の一例を示す。なお、ステップS9で否定判定された場合や、S10で肯定判定された場合には、図8に示すノズル腐食防止制御と異なるノズル腐食防止制御が行われてよく、図8に示すノズル腐食防止制御が行われてもよい。
ステップS11a1では、機関運転状態を取得する。機関運転状態は、噴射制御マップから噴射制御を決定するのに必要なパラメータであり、具体的には例えば回転数NE、噴射量TQおよび水温Tw等である。ステップS11a2では、ステップS11a1で取得した機関運転状態に基づき第2の噴射制御マップを参照し、噴射制御を決定する。このとき、第1の噴孔131aの燃料噴射量や燃料噴射回数が決定される。ステップS11a3では、ステップS11a2で決定した噴射制御を行う。このとき、噴孔Hの腐食が発生しないと判定する場合(すなわち、第1の噴射制御マップに基づき噴射制御を行う場合)と比較して、第1の噴孔131aの使用度合いが高まるように第1の噴孔131aの燃料噴射率が制御される。したがって、かかる燃料噴射率の制御は具体的には、第2の噴射制御マップに基づき行われる。
ステップS11a2では具体的には例えば、噴孔Hの腐食が発生しないと判定する場合よりも多くのパイロット噴射を第1の噴孔131aから行うことで、噴孔Hの腐食が発生しないと判定する場合と比較して、第1の噴孔131aの使用度合いが高まるように、第1の噴孔131aの燃料噴射率を制御できる。また例えば、第1の噴孔131aの燃料噴射期間を噴孔Hの腐食が発生しないと判定する場合よりも長くすることで、噴孔Hの腐食が発生しないと判定する場合と比較して、第1の噴孔131aの使用度合いが高まるように第1の噴孔131aの燃料噴射率を制御できる。
ステップS11a3の後には、図7に示すフローチャートのステップS1に戻る。そしてその後も、経過時間t1が所定時間trよりも短い間は、ステップS6で否定判定される。また、ヘッド熱量Qが所定値Qrよりも大きくなるまでの間は、ステップS8で否定されることで、図8に示すノズル腐食防止制御が行われることになる。すなわち、上述した燃料噴射率の制御が行われることになる。
ECU150は、図7のフローチャートにおけるステップS8やステップS10に示す処理を行うことで、少なくともヘッド熱量Qに基づき、噴孔Hの腐食を判定する判定部として機能する。また、図8のフローチャートにおけるステップS11a1からS11a3に示す処理を行うことで、噴孔131a、131bのうち少なくとも第1の噴孔131aの燃料噴射率を制御する制御部として機能する。
図9(a)から図9(c)は、ノズル腐食防止制御における第1の噴孔131aの燃料噴射を例示する図である。図10は、要求噴射量とスモーク発生量の関係を示す図である。図11は、単発噴射量とペネトレーション(貫徹力)の関係を示す図である。図9(a)は要求噴射量が小さい場合を、図9(b)は要求噴射量が大きい場合を、図9(c)は要求噴射量がさらに大きい場合を示す。
図9(a)に示すように、要求噴射量が小さい場合には、第1の噴孔131aから3回に分けてパイロット噴射を行うことができる。図9(b)に示すように、要求噴射量が大きい場合には、第1の噴孔131aから2回に分けてパイロット噴射を行うことができる。図9(c)に示すように、要求噴射量がさらに大きい場合には、燃料噴射の分割を回避し、噴孔131a、131bから基本態様で燃料噴射を行うことができる。
これは、図10に示すように要求噴射量が大きい場合ほどスモーク発生量が増大する一方、図11に示すように単発噴射量が大きい場合ほどペネトレーションが増大することを考慮したものである。図9(c)に示すように燃料噴射を行うことで、燃料噴霧の適切な配置によるスモーク低減を図ることができる。結果、スモークを許容値以下に抑制しつつ、ノズル腐食防止制御を行うことができる。なお、この場合でも第1の噴孔131aの燃料噴射期間を長くすることで、第1の噴孔131aの燃料噴射率を前述したように制御できる。
図12(a)、図12(b)はヒートバランスで効果を説明する図である。図13は噴射制御に応じたヘッド熱量Qの変化で効果を説明する図である。図12(a)は通常時のヒートバランスの内訳を示し、図12(b)はノズル腐食防止制御実行時のヒートバランスの内訳を示す。図13では通常時の変化を破線の矢印で示し、ノズル腐食防止制御実行時の変化を実線の矢印で示す。
図12(a)、図12(b)に示すように、ノズル腐食防止制御実行時には通常時よりも、シリンダヘッド101aの冷却損失が増加し、その他の冷却損失が減少する。シリンダヘッド101aの冷却損失の増加は、換言すればヘッド熱量Qの増加である。その他の冷却損失は例えばシリンダボアやピストンの冷却損失である。
図13に示すように、通常時にはヘッド熱量Qが所定値Qrを上回らず、機関停止によって噴孔Hに腐食が発生する状態となる。ノズル腐食防止制御実行時には、ヘッド熱量Qが所定値Qrを上回る結果、機関停止によって噴孔Hに腐食が発生する事態を回避できる。したがって、内燃機関100はヘッド熱量Qを高めることで、噴孔Hの腐食を防止或いは抑制できる。
上記実施形態は本発明を実施するための一例にすぎない。よって本発明はこれらに限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。