JP6079423B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は微細孔径を有するポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体およびその製造方法に関する。
ポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、PPSと言うことがある。)に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、PASと言うことがある。)は、耐熱性、耐薬品性に優れ、電気電子部品、自動車部品、給湯器部品、繊維、フィルム用途等に幅広く用いられている。中でも、ポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体を用いた中空糸膜や分離膜、多孔質フィルムは、優れた耐熱性や耐薬品性を活かして、半導体製造における不純物除去のための薬液ろ過や、医薬品製造、食品製造、化学工業品製造における合成原料や有機溶剤のろ過などへの利用が期待されている。
このようなポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体の製造方法として、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂と、該樹脂を溶解する溶媒の混合物を高温下で均質粘性流体とした後、押出、冷却固化させ、次いで溶媒を抽出除去する方法が知られている(特許文献1)。しかし、該方法はポリアリーレンスルフィド樹脂自体の溶融粘度が低いため、均質粘性流体の粘度が低く、加工性に劣り、例えば、中空糸状に押出した際、溶液粘度が低いため固化するまで形状を保持できず、糸切れを生じるという問題があった。また、冷却固化の際に溶媒の蒸発と混合物の固化が競争的に生じるために多孔質体表面に孔を形成できないという問題点もあった。さらに、これらの問題点により、多孔質自体も表面積が小さく、かつ最大貫通孔径も大きいものとなり、微細な孔径を数多く有するPAS多孔質体が得られなかった。
このため、透過性能や分画性能が十分でなく、特に、医療分野、例えば透析で用いられるとき限外ろ過膜では、有害な物質の放出がないという本質的な特徴を有さなければならないことから、平均孔径が小さいだけでなく、表面積が大きく、かつ最大貫通孔径の小さいPAS多孔質体が求められていた。
特表平7−500527号公報
そこで本発明が解決しようとする課題は、加工性に優れ、表面積が大きく、かつ平均孔径および最大貫通孔径の小さいポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体およびその製造方法を提供することにある。
本願発明者らは種々の検討を行った結果、溶融粘度の高いポリアリーレンスルフィド樹脂を用いることによって、成形性が優れるだけでなく、表面積が大きく、かつ平均孔径および最大貫通孔径の小さいポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、溶融粘度が800〔Pa・s〕以上の分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)と、融点が100℃以下で、かつ該ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶解可能な溶媒(b)とを加熱溶解させて相溶した溶解物を得る工程1、前記溶解物を押し出す工程2、押し出した押出物を冷却固化させ、前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)と前記溶媒(b)とを相分離させる工程3、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂が溶解ないし膨潤しない溶媒で、かつ前記溶媒(b)と相溶する溶媒(c)を用いて、得られた押出物から前記溶媒(b)を除去する工程4、を必須工程として有するポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体の製造方法に関する。
また、本発明は、溶融粘度が800〔Pa・s〕以上の分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)からなり、BET比表面積が50〜250〔m/g〕の範囲であり、かつ最大貫通孔径が0.1〜200〔nm〕の範囲であるポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体に関する。
本発明により、加工性に優れ、表面積が大きく、かつ平均孔径および最大貫通孔径の小さいポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体およびその製造方法を提供することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体の製造方法は、
溶融粘度が800〔Pa・s〕以上の分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)と、融点が100℃以下で、かつ該ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶解可能な溶媒(b)とを加熱溶解させて相溶した溶解物を得る工程1、
前記溶解物を押し出し工程2、
押し出した押出物を冷却固化させ、前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)と前記溶媒(b)とを相分離させる工程3、
前記ポリアリーレンスルフィド樹脂が溶解ないし膨潤せず、かつ前記溶媒(b)と相溶する溶媒(c)を用いて、得られた押出物から前記溶媒(b)を除去する工程4、を必須工程として有する。以下、詳述する。
本発明の製造方法は、まず始めに、溶融粘度が800〔Pa・s〕以上の分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)と、融点が100℃以下で、ハンセン溶解パラメータが24.0〜48.0〔MPa1/2〕の範囲で、かつ該ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶解可能な溶媒(b)とを加熱溶解させて相溶した溶解物を得る工程(以下、工程1と言うことがある)を有する。
ここで、本発明に使用する分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)は、芳香族環と硫黄原子とが結合した構造を繰り返し単位とする樹脂構造を有するものであり、具体的には、下記式(1)
Figure 0006079423
(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基を表す。)で表される構造部位と、下記式(2)
Figure 0006079423
で表される3官能性の構造部位と、を繰り返し単位とする樹脂である。下記式(8)で表される3官能性の構造部位は、他の構造部位との合計モル数に対して、0.001〜3モル%が好ましく、特に0.01〜1モル%であることが好ましい。
ここで、前記式(1)で表される構造部位は、特に該式中のR及びRは、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の機械的強度の点から水素原子であることが好ましく、その場合、下記式(3)で表されるパラ位で結合するもの、及び下記式(4)で表されるメタ位で結合するものが挙げられる。
Figure 0006079423
これらの中でも、特に繰り返し単位中の芳香族環に対する硫黄原子の結合は前記構造式(3)で表されるパラ位で結合した構造であることが前記ポリアリーレンスルフィド樹脂の耐熱性や結晶性の面で好ましい。
また、前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)は、前記式(1)や式(2)で表される構造部位のみならず、下記の構造式(5)〜(8)
Figure 0006079423
で表される構造部位を、前記式(1)と式(2)で表される構造部位との合計の30モル%以下で含んでいてもよい。特に本発明では上記式(5)〜(8)で表される構造部位は10モル%以下であることが、ポリアリーレンスルフィド樹脂の耐熱性、機械的強度の点から好ましい。前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)中に、上記式(5)〜(8)で表される構造部位を含む場合、それらの結合様式としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体の何れであってもよい。
また、前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)は、その分子構造中に、
ナフチルスルフィド結合などを有していてもよいが、他の構造部位との合計モル数に対して、3モル%以下が好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。
分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば1)ジハロゲノ芳香族化合物と、ポリハロゲノ芳香族化合物と、更に必要ならばその他の共重合成分とを、硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、2)ジハロゲノ芳香族化合物と、ポリハロゲノ芳香族化合物と、更に必要ならばその他の共重合成分とを、極性溶媒中でスルフィド化剤等の存在下に、重合させる方法、3)p−クロルチオフェノールと、更に必要ならばその他の共重合成分とを自己縮合させる方法、等が挙げられる。これらの方法のなかでも、2)の方法が汎用的であり好ましい。反応の際に、重合度を調節するためにカルボン酸やスルホン酸のアルカリ金属塩を添加したり、水酸化アルカリを添加しても良い。上記2)方法のなかでも、加熱した有機極性溶媒とジハロゲノ芳香族化合物と、ポリハロゲノ芳香族化合物とを含む混合物に含水スルフィド化剤を水が反応混合物から除去され得る速度で導入し、有機極性溶媒中でジハロゲノ芳香族化合物と、ポリハロゲノ芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させること、及び反応系内の水分量を該有機極性溶媒1モルに対して0.02〜0.5モルの範囲にコントロールすることによりポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する方法(特開平07−228699号公報参照。)や、固形のアルカリ金属硫化物及び非プロトン性極性有機溶媒の存在下でジハロゲノ芳香族化合物と、ポリハロゲノ芳香族化合物、アルカリ金属水硫化物及び有機酸アルカリ金属塩を、硫黄源1モルに対して0.01〜0.9モルの有機酸アルカリ金属塩および反応系内の水分量を非プロトン性極性有機溶媒1モルに対して0.02モルの範囲にコントロールしながら反応させる方法(WO2010/058713号パンフレット参照。)で得られるものが特に好ましい。ジハロゲノ芳香族化合物との具体的な例としては、p−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、o−ジハロベンゼン、2,5−ジハロトルエン、1,4−ジハロナフタレン、1−メトキシ−2,5−ジハロベンゼン、4,4’−ジハロビフェニル、3,5−ジハロ安息香酸、2,4−ジハロ安息香酸、2,5−ジハロニトロベンゼン、2,4−ジハロニトロベンゼン、2,4−ジハロアニソール、p,p’−ジハロジフェニルエーテル、4,4’−ジハロベンゾフェノン、4,4’−ジハロジフェニルスルホン、4,4’−ジハロジフェニルスルホキシド、4,4’−ジハロジフェニルスルフィド、及び、上記各化合物の芳香環に炭素原子数1〜18のアルキル基を核置換基として有する化合物が挙げられ、ポリハロゲノ芳香族化合物として1,2,3−トリハロベンゼン、1,2,4−トリハロベンゼン、1,3,5−トリハロベンゼン、1,2,3,5−テトラハロベンゼン、1,2,4,5−テトラハロベンゼン、1,4,6−トリハロナフタレンなどが挙げられる。また、上記各化合物中に含まれるハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子であることが望ましい。
重合工程により得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を含む反応混合物の後処理方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、(1)重合反応終了後、先ず反応混合物をそのまま、あるいは酸または塩基を加えた後、減圧下または常圧下で溶媒を留去し、次いで溶媒留去後の固形物を水、反応溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、更に中和、水洗、濾過および乾燥する方法、或いは、(2)重合反応終了後、反応混合物に水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素などの溶媒(使用した重合溶媒に可溶であり、且つ少なくともポリアリーレンスルフィドに対しては貧溶媒である溶媒)を沈降剤として添加して、ポリアリーレンスルフィドや無機塩等の固体状生成物を沈降させ、これらを濾別、洗浄、乾燥する方法、或いは、(3)重合反応終了後、反応混合物に反応溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)を加えて撹拌した後、濾過して低分子量重合体を除いた後、水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、その後中和、水洗、濾過および乾燥をする方法等が挙げられる。
尚、上記(1)〜(3)に例示したような後処理方法において、ポリアリーレンスルフィド樹脂の乾燥は真空中で行なってもよいし、空気中あるいは窒素のような不活性ガス雰囲気中で行なってもよい。
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂は、酸素濃度が5〜30体積%の範囲の酸化性雰囲気中あるいは減圧条件下で熱処理を行い、酸化架橋させることもできる。
本発明に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂(a)は、分岐型の分子構造を有するものであれば、特に限定されるものではないが、その非ニュートン指数が1.26〜2.50の範囲のものを用いることが好ましく、さらに1.30〜1.95の範囲がより好ましく、特に1.35〜1.90の範囲がさらに好ましい。また、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂は、300℃で測定した溶融粘度(V6)が800〔Pa・s〕以上の範囲のものであれば特に限定されるものではないが、800〜3,500〔Pa・s〕の範囲が好ましく、さらに900〜2,700〔Pa・s〕の範囲がより好ましい。
ただし、300℃で測定した溶融粘度(V6)とは、フローテスターを用いて、温度300℃、荷重1.96MPa、オリフィス長とオリフィス径との、前者/後者の比が10/1であるオリフィスを使用して6分間保持した後の溶融粘度を表す。また、非ニュートン指数(N値)は、キャピログラフを用いて300℃、オリフィス長(L)とオリフィス径(D)の比、L/D=40の条件下で、剪断速度及び剪断応力を測定し、下記式を用いて算出した値である。
Figure 0006079423
[ただし、SRは剪断速度(秒−1)、SSは剪断応力(ダイン/cm)、そしてKは定数を示す。]N値は1に近いほどポリアリーレンスルフィドは線状に近い構造であり、N値が高いほど架橋が進んだ構造であることを示す。
次に、前記溶媒(b)としては、融点が100℃以下で、かつポリアリーレンスルフィド樹脂を溶解可能な溶媒であれば特に限定されるものではないが、融点が100℃以下で、ハンセン溶解パラメータ(以下、SP値ということがある)が24.0〜48.0〔MPa1/2〕の範囲の溶媒が、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を分子レベルで相溶させることができるため、好ましい溶媒として挙げられる。ただし、本発明で用いるハンセン溶解パラメータは、溶媒とポリアリーレンスルフィド樹脂の親和性を評価するために用いられるパラメータであり、溶剤の溶解パラメータを定義する方法として当業者には良く知られており、例えば「INDUSTRIAL SOLVENTSHANDBOOK」(pp.35−68、Marcel Dekker, Inc.、1996年発行)や、「HANSEN SOLUBILITY PARAMETERS:A USER’S HANDBOOK」(pp.1−41,CRC Press,1999)「DIRECTORYOF SOLVENTS」(pp.22−29、Blackie Academic & Professional、1996年発行)などに記載されている。本発明においてハンセン溶解度パラメータは、溶媒の化学構造に基づいてハンセン溶解度パラメータを算出してもよいし、また前記参考文献中に記載された値のものを用いてもよい。溶媒の化学構造に基づいてハンセン溶解度パラメータを算出する場合には、HSPソフトに溶媒の構造式を入力して、計算することができる。具体的には、チャールズハンセンらによって開発されたソフトフェア(ソフト名:Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP)Version 3.0.38)で求めることができる。算出は、溶媒温度を25℃として行うものとする。
このような溶媒(b)として、具体的にはベンゾフェノン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド、4,4’−ジブロモビフェニル、1−フェニルナフタレン、2,5−ジフェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジフェニルオキサゾール、トリフェニルメタノール、N,N−ジフェニルホルムアミド、ベンジル、アントラセン、4−ベンゾイルビフェニル、ジベンゾイルメタン、2−ビフェニルカルボン酸、ジベンゾチオフェン、ペンタクロロフエノール、1−ベンジル−2−ピロリジオン、9−フルオレノン、2−ベンゾイルナフタレン、1−ブロモナフタレン、1,3−ジフェノキシベンゼン、フルオレン、1−フェニル−2−ピロリジノン、1−メトキシナフタレン、1−エトキシナフタレン、1,3−ジフェニルアセトン、1,4−ジベンゾイルプタン、フェナントレン、4−ベンゾイルビフェニル、1,1−ジフェニルアセトン、0,0’−ビフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、トリフェニレン、2−フェニルフェノール、チアントレン、3−フェノキシベンジルアルコール、4−フェニルフェノール、9,10−ジクロロアントラセン、トリフェニルメタン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、9,10−ジフェニルアントラセン、フルオランテン、ジフェニルフタレート、ジフェニルカルボネート、2,6−ジメトキシナフタレン、2,7−ジメトキシナフタレン、4−ブロモジフェニルエーテル、ピレン、9,9’−ビ−フルオレン、4,4’−イソプロピルリデン−ジフェノール、イプシロン−カプロラクタム、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ジフェニルイソフタレート及びジフェニルーターフタレート、1−クロロナフタレンからなる群から選ばれる1種以上の溶媒が挙げられる。
このうち、沸点が255℃以上と高く、SP値がポリアリーレンスルフィド樹脂(SP値42.2)に近く、相溶性が優れることから好ましい。例えば、ベンゾフェノン(SP値41.2)、ジフェニルエーテル(SP値40.0)、ジフェニルスルフィド(SP値40.2)、1,3−ジフェニルアセトン(SP値42.4)、4−ブロモジフェニルエーテル(SP値44.7)、4−ブロモビフェニル(SP値42.4)、2−ベンゾイルナフタレン(SP値45.1)、2−フェニルフェノール(SP値46.8)からなる群から選ばれる1種以上の溶媒であることが好ましい。特に、常温で固体であることからベンゾフェノン、1,3−ジフェニルアセトン、4−ブロモビフェニル、2−ベンゾイルナフタレン、2−フェニルフェノールが好ましい。
常温(23℃)で固体である溶媒を用いると、例えば液浴や冷却ロールに落とした際にすぐに固化し、溶媒相の液浴や冷却ロールへの流出が無いため、表面に固化した溶媒相が形成するため好ましい。表面に固化した溶媒相が形成すると、次に、その溶媒をアセトン等で抽出除去することによって、外表面に孔が形成し貫通孔が出来やすくなる。
さらに上記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)と前記溶媒(b)に加え、本発明の特性を損ねない範囲で他の添加剤、例えば、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑材、顔料、染料、有機ないし無機の微粒子、充填材、核剤などを配合することもできる。
工程1は、前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)と、前記溶媒(b)とを加熱溶解させて相溶した溶解物を得る。ここで、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)と前記溶媒(b)との加熱溶解は、非酸化性雰囲気下で行っても良い。なお、非酸化性雰囲気とは気相の酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指す。また、加熱溶解の温度としては、前記溶媒(b)の融点以上の範囲であるが、200〜350〔℃〕の範囲であることが好ましい。
さらに、前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)と前記溶媒(b)との配合割合は、前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)と前記溶媒(b)の合計100質量部に対して、分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)が10〜90質量部の範囲で、かつ前記溶媒(b)が、90〜10質量部の範囲であることが好ましく、さらに分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)が20〜50質量部の範囲で、かつ前記溶媒(b)が、80〜50質量部の範囲であることがより好ましい。前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)が10質量部未満だと均質流体粘度が極端に低くなる傾向にあるため好ましくなく、一方、90質量部超だと、貫通孔が形成しない傾向にあるため好ましくない。
前記加熱溶解は、公知の混練技術および混練装置や撹拌混合技術および撹拌混合装置が利用できる。具体的には、加熱装置を有する、一軸押出機、二軸混練押出機や攪拌翼付きの混合槽、溶解槽などが使用できる。
続いて、本発明は、前記工程1で得られた溶解物を押し出す工程(以下、工程2と言うことがある)を有する。溶解物は、押出機先端や溶解槽の釜底に取り付けたヘッドと呼ばれる部分に導かれ、押し出される。必要に応じて空気加圧や窒素加圧が行われる。このヘッド内の押出し口には、溶解物を所定の形状に押し出すための口金を装着することで所定の形状に溶解物を成形して押し出すことができる。ストランド状に押し出す場合には、ストランドダイを用い、またシート状またはフィルム状に押し出す場合にはTダイを用い、さらに、中空糸状に押し出す場合には中空糸成形用紡口を用いればよい。
続いて、本発明は、工程2で押し出した押出物を冷却固化させ、前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)と前記溶媒(b)とを相分離させる工程(以下、工程3と言うことがある)を有する。
工程3では、前記工程2のヘッドから空中に押し出された溶解物が、(1)そのまま、ストランド状、中空糸状ないしフィルム状またはシート状で直接、液浴や冷却ロールに導かれ、液浴または冷却ロール通過中に、押出物中の分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)が固化する温度まで冷却されるか、(2)一旦、溶融物を平面上にキャストした後、250〜300〔℃〕の範囲、0.01〜20〔MPa〕の熱プレスを行い、シートないしフィルム状に賦形したものを、液浴に浸漬して分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)が固化する温度まで冷却されることで、熱誘起相分離が生じることとなる。液浴により冷却する場合、液浴の組成は、押出物と反応性を有さない液体でれば特に限定されることはなく、水、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられるが、通常は冷却能力が高い水を用いることが好ましい。また、押出物が240〔℃〕以下の範囲、好ましくは20〜230〔℃〕の範囲となる様、液浴の温度を90〔℃〕以下、好ましくは−10〜80〔℃〕の範囲、さらに好ましくは−10〜30〔℃〕の範囲で、かつ、用いる液体の熱容量を加味して、溶解物を240〔℃〕以下、好ましくは220〜0〔℃〕の範囲まで冷却するに十分な量を用いればよい。
また、冷却固化する際の冷却速度は、特に限定されるものではないが、溶解物が、その溶解温度〔℃〕から液浴通過中に20〔℃〕以下まで冷却する間に要した時間〔秒〕として算出される値と定義した時に、50〜500〔℃/秒〕の範囲であることが好ましく、さらに100〜200〔℃/秒〕の範囲であることがより好ましい。50〔℃/秒〕以上であれば、外表面の開孔性が向上し、微細な貫通孔が形成可能なため好ましい。一方、500〔℃/秒〕以下であれば、温度調整が安定的にできるため好ましい。
なお、ヘッドから空中に押し出された溶解物が、液浴または冷却ロールに導かれるまでの間に、エアーギャップにより冷却されるため、ヘッドから空中に押し出された溶解物が、液浴または冷却ロールに導かれるまでの時間は0.1〜60〔秒〕の範囲であることが好ましい。0.1〔秒〕以上であれば温度調整が安定的にできるため好ましく、一方、60〔秒〕以下であれば、外表面の開孔性が向上し、微細な貫通孔が形成可能なため好ましい。
本発明は、工程3で冷却固化させた押出物を、続いて、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂が溶解ないし膨潤しない溶媒で、かつ前記溶媒(b)と相溶する溶媒(c)を用いて、得られた押出物から前記溶媒(b)を除去する工程(以下、工程4と言うことがある)を有する。
工程4において、押出物中の前記溶媒(b)の除去は、ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶解または膨潤させずかつ溶媒(b)と相溶する、揮発性の溶媒(c)で抽出除去し、その後乾燥して押出物中に残存する前記溶媒(c)を揮発除去することで実施できる。このような溶媒(c)の例としては、アセトン、メタノール、エタノール等の脂肪族アルコール、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。
このように本発明の製造方法によれば、溶融粘度が800〔Pa・s〕以上の分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)と、融点が100℃以下で、かつ該ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶解可能な溶媒(b)、特に好ましくは特定範囲のハンセン溶解パラメータを有する溶媒(b)を組合せることによって、冷却固化後の押出物表面および内部に微細形状の溶媒(b)の固化相を形成させることができ、さらに、溶解物を急冷固化させることで、外表面の溶媒(b)の蒸発を防ぎ、外表面に溶媒(b)の固化相を残して、孔の閉塞を抑制できることから、続く溶媒(b)の除去工程を経て、ポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体に対し、微細な貫通孔を形成することができる。
上記製造方法によって得られた前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)からなる多孔質体は、BET比表面積が50〜250〔m/g〕の範囲であり、より好ましくは100〜200〔m/g〕の範囲を有する。さらに、最大貫通孔径は0.1〜200〔nm〕の範囲であり、より好ましくは1〜150〔nm〕の範囲であり、さらに好ましいくは5〜100〔nm〕の範囲を有する。このように本発明の前記ポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体は、最大貫通孔径が小さいにも関わらず、BET比表面積が大きく、微細な孔径を数多く有する連続多孔質構造を有しているものと解される。なお、本発明の多孔質体の表面および内部をSEM観察した結果からは、表面平均孔径が0.005〜1.5〔μm〕の範囲であり、好ましくは0.01〜1.1〔μm〕の範囲である。さらに内部平均孔径は0.01〜2.0〔μm〕の範囲であり、好ましくは0.1〜1.5〔μm〕の範囲である。
また、本発明の多孔質体の空孔率は20〜80%の範囲であり、より好ましくは45〜75%の範囲である。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体は、耐熱性、耐薬品性に優れるだけでなく、表面積が大きく、かつ平均孔径および最大貫通孔径が小さく、透過性または分画性に優れるため、半導体製造における不純物除去のための薬液ろ過膜や、医薬品製造、食品製造、化学工業品製造における合成原料や有機溶剤のろ過膜、電池セパレータや電気絶縁材、フィルター、抄紙カンバスなどに好適に用いることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
(ポリフェニレンスルフィド樹脂の溶融粘度の測定)
参考例で製造したポリフェニレンスルフィド樹脂を島津製作所製フローテスター、CFT−500Cを用い、300℃、荷重:1.96×10Pa、L/D=10/1にて、6分間保持した後に測定した。
(ポリフェニレンスルフィド樹脂の非NT指数の測定)
(非ニュートン指数測定法)
非ニュートン指数(N値)は、キャピログラフを用いて300℃、オリフィス長(L)とオリフィス径(D)の比、L/D=40の条件下で、剪断速度及び剪断応力を測定し、下記式を用いて算出した。
Figure 0006079423
ただし、SRは剪断速度(秒−1)、SSは剪断応力(ダイン/cm)、Kは定数を示す。N値は1に近いほどPPS樹脂は線状に近い構造であり、N値が高いほど分岐が進んだ構造であることを示す。
(ポリフェニレンスルフィド樹脂多孔質体の平均孔径の測定)
実施例で得られたポリフェニレンスルフィド樹脂多孔質体をSEM観察して孔径測定を行った。表面観察では試料(ストランド状)の表面にプラチナ蒸着を施し、観察および孔径測定を行った。内部観察においては、試料を液体窒素で凍結させた後破壊し、その破壊面をプラチナ蒸着させ、観察および孔径測定を行った。平均孔径は、SEM測定で得られた画像上で任意の10箇所を選択し、それら10箇所の孔径の平均値を試験片の平均孔径とした。
(多孔質体の空孔率の測定)
以下の式を用いて空孔率を算出した。
Figure 0006079423
式中の記号は以下の通りである。
A:空孔率(%)
Wwet:溶媒相を除去する前の重量、
Wdry:溶媒相を除去した後の重量、
ρpoly:ポリマーの密度
ρsol:溶媒の密度
(最大貫通孔の測定)
最大貫通孔径はパームポロメータ(Porous Materials,Inc.社製「CFP−1200AELS」)を使用し、ASTM F316−86に準拠してバブルポイント法によって測定した。Wet測定にはGalwickを使用した。
(BET表面積の測定)
BET表面積の測定にはオートソーブ(Quantachrome Instruments社製「AUTOSORB−1」)を使用した。試料をセルに入れた後、脱気した後ヘリウム置換、冷却し、窒素置換させることによってBET表面積を測定した。
(参考例1:分岐型ポリフェニレンスルフィド樹脂の製造)
圧力計、温度計、コンデンサ、デカンター、精留塔を連結した撹拌翼付き150リットルオートクレーブにp−ジクロロベンゼン(以下、「p−DCB」と略記する。)33.222kg(226モル)、NMP2.280kg(23モル)、47.23質量%NaSH水溶液27.300kg(NaSHとして230モル)、及び49.21質量%NaOH水溶液18.533g(NaOHとして228モル)を仕込み、撹拌しながら窒素雰囲気下で173℃まで5時間掛けて昇温して、水27.300kgを留出させた後、オートクレーブを密閉した。脱水時に共沸により留出したp−DCBはデカンターで分離して、随時オートクレーブ内に戻した。脱水終了後のオートクレーブ内は微粒子状の無水硫化ナトリウム組成物がp−DCB中に分散した状態であった。この組成物中のNMP含有量は0.069kg(0.7モル)であったことから、仕込んだNMPの97モル%(22.3モル)がNMPの開環体(4−(メチルアミノ)酪酸)のナトリウム塩(以下、「SMAB」と略記する。)に加水分解されていることが示された。オートクレーブ内のSMAB量は、オートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.097モルであった。仕込んだNaSHとNaOHが全量、無水Na2Sに変わる場合の理論脱水量は27.921gであることから、オートクレーブ内の残水量621g(34.5モル)の内、401g(22.3モル)はNMPとNaOHとの加水分解反応に消費されて、水としてオートクレーブ内に存在せず、残りの220g(12.2モル)は水、あるいは結晶水の形でオートクレーブ内に残留していることを示していた。オートクレーブ内の水分量はオートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.053モルであった。
上記脱水工程終了後に、内温を160℃に冷却し、1,3,5−トリクロロベンゼン(1,3,5−TCB)25.0g(0.14モル、オートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.06モル%)をNMP47.492kg(479モル)に含む溶液を仕込み、185℃まで昇温した。オートクレーブ内の水分量は、工程2で仕込んだNMP1モル当たり0.025モルであった。ゲージ圧が0.00MPaに到達した時点で、精留塔を連結したバルブを開放し、内温200℃まで1時間掛けて昇温した。この際、精留塔出口温度が110℃以下になる様に冷却とバルブ開度で制御した。留出したp−DCBと水の混合蒸気はコンデンサで凝縮し、デカンターで分離して、p−DCBはオートクレーブへ戻した。留出水量は179g(9.9モル)で、オートクレーブ内水分量は41g(2.3モル)で、脱水後に仕込んだNMP1モル当たり0.005モルで、オートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.010モルであった。オートクレーブ内のSMAB量は脱水時と同じく、オートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.097モルであった。次いで、内温200℃から230℃まで3時間掛けて昇温し、230℃で3時間撹拌した後、250℃まで昇温し、1時間撹拌した。内温200℃時点のゲージ圧は0.03MPaで、最終ゲージ圧は0.30MPaであった。冷却後、得られたスラリーの内、6.5kgを30リットルの水に注いで80℃で1時間撹拌した後、濾過した。このケーキを再び30リットルの温水で1時間撹拌し、洗浄した後、濾過した。この操作を4回繰り返し、濾過し、熱風乾燥機を用いて120℃で一晩乾燥して白色の粉末状の分岐型PPS樹脂(以下、PPS−1)を得た。得られたポリマーの溶融粘度は505Pa・s、非ニュートン指数1.21であった。
(参考例2:分岐型ポリフェニレンスルフィド樹脂の製造)
1,3,5−TCBを45.9g(0.25モル、オートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.11モル%)を用いた以外は参考例1と同様に行い、分岐型PPS樹脂(以下、PPS−2)を得た。得られたポリマーの溶融粘度は843Pa・s、非ニュートン指数は1.36であった。
(参考例3:分岐型ポリフェニレンスルフィド樹脂の製造)
1,3,5−TCBを66.8g(0.37モル、オートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.16モル%)を用いた以外は参考例1と同様に行い、分岐型PPS樹脂(以下、PPS−3)を得た。得られたポリマーの溶融粘度は1403Pa・s、非ニュートン指数は1.65であった。
(参考例4:分岐型ポリフェニレンスルフィド樹脂の製造)
1,3,5−TCBを104.3g(0.57モル、オートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.25モル%)を用いた以外は参考例1と同様に行い、分岐型PPS樹脂(以下、PPS−4)を得た。得られたポリマーの溶融粘度は3550Pa・s、非ニュートン指数は2.05であった。
(参考例5:リニア型ポリフェニレンスルフィド樹脂の製造)
1,3,5−TCBを用いなかった以外は参考例1と同様に行い、PPS樹脂(以下、PPS−5)を得た。得られたポリマーの溶融粘度は270Pa・sであった。
Figure 0006079423
(実施例1〜7/比較例1〜7)
・工程1
表2、3に記載した組成分、配合比でポリアリーレンスルフィド樹脂と、溶媒とを混ぜ合わせた後、小型二軸押出機(DSM Explore社製「Compounder15」)を用いて混練温度270 ℃、回転数250 rpm、滞留時間1分にて混練を行い、ポリアリーレンスルフィド樹脂と溶媒が相溶した溶融物となったことを確認した。
・工程2
続いて、前記小型二軸押出機に取り付けたヘッドから溶融物をストランド状に押出した。
・工程3
ストランド状に押出した押出物は、次いで3.5cmのエアーギャップを通過させた後、20℃のイオン交換水を充分量満たした液浴へ導き、冷却固化させた。なお、この冷却固化過程では、押出物を270℃から20℃まで1.25〔秒〕または2.5〔秒〕で冷却固化させ、冷却速度が200〔℃/秒〕または100〔℃/秒〕となるよう調整した。
・工程4
その後、得られたストランドをアセトン浸漬により溶媒除去し、50℃の真空乾燥機を用いて3時間乾燥して、ストランド状のポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体を得た。得られたポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体について各測定を行った結果を表1、2に記載した。
Figure 0006079423
※表中の記号は次のものを表す。DPK:ベンゾフェノン、DPE:ジフェニルエーテル、PhP:2−フェニルフェノール
Figure 0006079423
※表中の記号は次のものを表す。DPK:ベンゾフェノン、p−TP:p−ターフェニル、PTZ:フェノチアジン
※表中、NGはストランド切れを起こし、測定不可を表す。
なお、比較例1、2はストランド切れを起こし、測定サンプルが得られなかった。
また、比較例3、4は目視したところ、混和した溶融物が得られるものの、溶媒除去後に得られたストランド表面のSEM観察結果では、孔が開いておらず、分子レベルで相溶していないものであった。そして、得られたストランドは、ガスや液体が透過せず、最大貫通孔径を測定することができなかった。
(実施例8〜10/比較例5、6)
・工程1
表4に記載した組成分、配合比でポリアリーレンスルフィド樹脂と、溶媒とを混ぜ合わせた後、小型二軸押出機(DSM Explore社製「Compounder15」)を用いて混練温度270 ℃、回転数250rpm、滞留時間1分にて混練を行い、ポリアリーレンスルフィド樹脂と溶媒が相溶した溶融物となったことを確認した。
・工程2
続いて、前記小型二軸押出機に取り付けたヘッドから溶融物をストランド状に押出した。
・工程3
ストランド状に押出した押出物は、次いでアルミ板の上に、ポリイミドフィルム、厚み50μmのポリイミドフィルムの型枠の順に重ね、その型枠の中に押出物を乗せ、更に上にポリイミドフィルム、アルミ板を被せた。ポリイミドフィルムで挟んだサンプルを熱プレス機を用いて温度290℃、圧力0.05MPaで1分間プレスしたのち、熱プレス機から取り出し、20℃の水浴に浸漬させることで急冷固化させた。なお、この冷却固化課程では、押出物を290℃から20℃まで1.35〔秒〕または2.7〔秒〕で冷却固化させ、冷却速度が200〔℃/秒〕または100〔℃/秒〕となるよう調整した。
・工程4
次いで、サンプルを水浴から取り出し、アルミ板、ポリイミドフィルム剥がして得たフィルム状物をアセトンに浸漬し、溶媒を抽出除去した。その後、50℃の真空乾燥機を用いて3時間乾燥して、ポリフェニレンスルフィド樹脂多孔質フィルムを得た。得られたポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質フィルムについて各測定を行った結果を表3に記載した。
Figure 0006079423
※表中の記号は次のものを表す。DPK:ベンゾフェノン

Claims (10)

  1. 溶融粘度が800〔Pa・s〕以上の分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)と、融点が100℃以下で、かつ該ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶解可能な溶媒(b)とを加熱溶解させて相溶した溶解物を得る工程1、
    前記溶解物を押し出す工程2、
    押し出した押出物を冷却固化させ、前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)と前記溶媒(b)とを相分離させる工程3、
    前記ポリアリーレンスルフィド樹脂が溶解ないし膨潤しない溶媒で、かつ前記溶媒(b)と相溶する溶媒(c)を用いて、得られた押出物から前記溶媒(b)を除去する工程4、を必須工程として有するポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体の製造方法。
  2. 前記溶媒(b)はハンセン溶解パラメータが24.0〜48.0〔MPa1/2〕の範囲である請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体の製造方法。
  3. 前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)の非ニュートン指数が1.26〜2.5の範囲である請求項1又は2記載のポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体の製造方法。
  4. 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶解可能な溶媒(b)が、ベンゾフェノン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィドおよび1,3−ジフェニルアセトンからなる群から選ばれる1種以上の溶媒である請求項1〜3の何れか一項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体の製造方法。
  5. 前記溶媒(b)と相溶する溶媒(c)は、アセトン、メタノール及びエタノール、N−mメチル−2−ピロリドンからなる群から選ばれる1種以上の溶媒である請求項1〜4の何れか一項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体の製造方法。
  6. 前記工程1において、前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)と前記溶媒(b)の合計100質量部に対して、前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)が10〜90質量部の範囲であり、前記溶媒(b)が90〜10質量部の範囲である請求項1〜5の何れか一項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体の製造方法。
  7. 前記工程3において、冷却固化が50〜500〔℃/sec〕の範囲となる冷却速度である請求項1〜6の何れか一項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体の製造方法。
  8. 前記工程3において冷却固化が、前記溶媒(b)に対する前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)の溶解温度から、少なくとも90〔℃〕まで冷却する請求項1〜7の何れか一項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体の製造方法。
  9. 溶融粘度が800〔Pa・s〕以上の分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)からなり、BET比表面積が50〜250〔m/g〕の範囲であり、かつ最大貫通孔径が0.1〜200〔nm〕の範囲であるポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体。
  10. 前記分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂(a)の非ニュートン指数が1.26〜2.5の範囲である請求項9記載のポリアリーレンスルフィド樹脂多孔質体。
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