本発明の第1〜第3の実施例における回転機は、回転軸から径方向あるいはパラレルに向いた磁束を発生する回転子と、回転子の径方向にギャップを隔てて回転子と対峙した固定子であって、回転子の径方向に沿った電流成分が流れる巻線が設けられた固定子と、を備え、回転子の径方向に沿った電流成分の全てもしくは一部により回転軸方向の力が発生して、上記力の反作用力として回転子の回転軸方向に作用する力が発生する。
上記固定子は、回転子の径方向に沿った電流成分、および回転子の回転軸方向に沿った電流成分が流れる巻線が設けられ、回転子の径方向に沿った電流成分のすべてもしくは一部により回転子に回転軸方向に作用する力が発生し、回転子の回転軸方向に沿った電流成分により、回転子の回転トルクとなる力が発生する。
回転子の径方向に沿った電流成分が流れる第1の巻線部分と、回転子の回転軸方向に沿った電流成分が流れる第2の巻線部分と、回転子の径方向に沿った電流成分および回転軸方向に沿った電流成分が流れる第3の巻線部分とのうち少なくとも2つ以上を備えるようにしてもよい。
また、第1の巻線部分に電流が流れ、当該電流により磁束を発生する鉄心が軸方向に構成され、鉄心端部もしくは中間部分に歯が構成され、回転子の発生する磁束の粗密によりマクスウェル力が発生し、ローレンツ力の反作用力とマクスウェル力との合成力として、回転子を回転軸方向に非接触に支持する支持力が発生するようにしてもよい。
また、第1の巻線部分は、少なくともギャップに面する側において、回転子の回転軸の方向に向けて略凸形状となるように巻かれるようにしてもよい。
また、第1の巻線部分は、少なくともギャップに面する側において、回転子の回転軸の方向の電流成分を有するよう角度をなして巻かれるようにしてもよい。
また、回転子の回転軸方向の中心は、第2の巻線部分の、回転子の回転軸方向の中心とはずれた位置にあるようにしてもよい。
また、回転子は永久磁石により励磁され、永久磁石とは極性が反対のさらなる永久磁石が設けられた回転子が回転軸方向に連結されるようにしてもよい。
また、上記回転機において、回転機の回転部分の段差がない円筒状であってもよい。
また、後述するベアリングレスモータは、上記回転機に、主軸の回転軸方向の位置を検出するセンサを備え、センサの信号に基づいて、径方向電流成分を調整するコントローラを備え、径方向に受動的に支持する受動型磁気軸受を備え、非接触で磁気支持する。
このベアリングレスモータは、回転子は回転子に設置された永久磁石により励磁され、もしくは固定子に設置された永久磁石により励磁され、もしくは固定子に設置された巻線により励磁され、永久磁石型、誘導型、リラクタンス型、ホモポーラ型、もしくはコンシクエントポール型の回転子により励磁されるようにしてもよい。
このベアリングレスモータは、d軸電流により軸方向力が制御され、q軸電流によりトルクが制御され、1台のインバータで非接触磁気支持とトルク制御、もしくは回転速度制御もしくは回転位置制御が行われるようにしてもよい。
また、後述する非接触磁気力支持ポンプは、上記ベアリングレスモータを備え、このベアリングレスモータに隔壁が設けられ、インペラーを構成してよい。
以下、図面を参照して、本発明の第1〜第3の実施例によるベアリングレスモータについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータにおける1相分の巻線構造を説明する図であって、(a)は回転子の軸方向(+z軸方向)からみた断面図であり、(b)は−y方向からみた側面図であり、(c)は−x方向からみた側面図である。これ以降、ベアリングレスモータの回転子の回転軸14の方向をz方向とする。また、図2は、本願図面において示される巻線電流の向き、力の向き、永久磁石による磁束の向き、および電磁石による磁束の向きを示す図である。本願図面において、巻線電流の向きについては、紙面の裏側から表側に貫く向きを丸印に黒点を付したもので示し、紙面の表側から裏側に貫く向きを丸印に×印を付したもので示す。また、力の向きについては、紙面の裏側から表側に貫く向きを四角印に黒点を付したもので示し、紙面の表側から裏側に貫く向きを四角印に×印を付したもので示す。また、永久磁石により発生する磁束の向きについては破線の矢印で示し、電磁石により発生する磁束の向きについては一点鎖線の矢印で示す。
第1の実施例によるベアリングレスモータは、インナーロータ型であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、アウターロータ型のものであってもよい。アウターロータ型の場合については後述する。また、第1の実施例によるベアリングレスモータは、回転子の表面に永久磁石を貼り付けた表面磁石(SPM:Surface Permanet Magnet)型のモータとするが、本発明はこれに限定されるものではなく、回転子の内部に永久磁石を埋め込んだ埋込磁石内蔵型(IPM:Interior Permanet Magnet)型、ホモポーラ型、ランデル型、櫛形、インセット型、リラクタンス型、スイッチトリラクタンス(SR)型、ハイブリッド型、誘導機型、界磁巻線型、コンシクエント型、などその他のモータであってもよい。
図1(a)〜図1(c)に示すように、固定子側の巻線12は、鉄心11の周りをバームクーヘン状に旋回するように巻かれ、特に永久磁石13を有する回転子に対向する側(すなわち回転子と固定子との間のギャップに面する側)には、回転軸14の方向(+z方向)に向けて凸となるように巻かれる。より具体的にいうと次の通りである。図1(a)は+z方向からみたxy平面を示しているが、ギャップ付近において巻線12が軸方向(+z方向)に向けて凸となるように巻かれると、図示のようにバームクーヘン状に巻かれた巻線12を時計回りに電流が流れる場合には、鉄心11のギャップに面する側(以下、単に「ギャップ側」とも称する。)に設けられる巻線部分では電流は紙面裏側から表側へ貫く向きに流れた後に紙面表側から裏側へ貫く向きに電流が流れる。図1(b)は−y方向からみた(すなわちギャップ側から鉄心12の方向を見た)xz平面を示しているが、ギャップ側に設けられる巻線部分は+z方向に向けて凸になっている。図1(c)は−x方向から見た(すなわち図1(a)において紙面左側から右側をみた)yz平面を示しているが、ギャップ側に設けられる巻線部分は+z方向に向けて凸になっている。なお、本発明の第1実施例ならびに後述する第2および第3の実施例では、鉄心を設けたが、鉄心は必ずしも必要ではなく、コアレス構造としてもよい。
このような鉄心11の周りをバームクーヘン状に旋回するように巻かれ、特にギャップ側においては軸方向(+z方向)に向けて凸となるように巻かれる巻線12に、図1(a)に示す実線矢印の向きに電流が流れると、ギャップ側において軸方向(+z方向)に向けて凸になるように成形された巻線部分に流れる電流は、回転子の軸方向に沿って流れる電流成分(すなわちz方向に流れる電流成分)であるit(以下、「z軸方向成分電流」と称する。)と、回転子の軸の周りを流れる電流成分(すなわちxy平面上を流れる電流成分)であるiz(以下、「周方向成分電流」と称する。)とに分解できる。後述するように、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータにおいては、回転子の軸方向の支持力は周方向成分電流izを制御することにより発生し、回転子のトルクはz軸方向成分電流it制御することにより発生する。すなわち、本発明の第1の実施例においては、鉄心11に巻かれる巻線12について、特にギャップ側においては軸方向(+z方向)に向けて凸となるように巻くことによって、回転子の軸方向の支持力に起因する周方向成分電流izと、回転子のトルクに起因するz軸方向成分電流itとを生み出している。
なお、本発明の第1の実施例では、上述した巻線12が巻かれる鉄心11は、その両端に、ギャップに面する側に凸となる突起部(以下、「鉄心突起部」と称する。)11Tを有する。詳細については後述するが、鉄心11の両端に鉄心突起部11Tを設けることにより、回転子の軸方向の支持力が増す。
図3は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータ全体の巻線構造を示す図であって、(a)は回転子の軸方向(+z軸方向)からみた断面図であり、(b)はU−U’相についての分解斜視図である。
図示の例では、図3(a)に示すように、xy平面において、+y方向をα軸の+方向とし−x方向をβ軸の+方向とした静止座標系のαβ座標平面を定義する。α軸およびβ軸から反時計回りに進んだ位置をそれぞれd軸およびq軸とする。また、回転座標系であるdq座標平面の位相(すなわちα軸に対するd軸の位相)をθで表す。
本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータは三相モータであるので、図3(a)に示すように、図1に示した巻線12を巻回した鉄心11が、円周状に6個配置され、したがって巻線群も6個設けられる。ここでは、U相の巻線12を+α軸方向に配置している。このとき、U相、U’相、V相、V’相、W相、W’相における各巻線12は、ギャップ側において、+z方向に向けて凸となるようにそれぞれ成形される。図3(a)のxy平面に示すように、z軸方向成分電流itは、いわゆる6スロット集中巻の巻線構造と同等の電流成分が生じるため、q軸電流を流すことによりトルクが発生する。図3(a)のxy平面に示すU相およびU’相の、ギャップ側の巻線12における周方向成分電流izは、図2(b)の斜視図では、紙面表側から裏側に流れる電流として表現できる。
次に、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータにおける、回転子の軸方向の支持力の発生原理を説明する。図4は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータにおける、回転子の軸方向の支持力の発生原理を説明する図であって、(a)はローレンツ力の発生原理を示す+x軸方向からみた断面図であり、(b)はマクスウェル力の発生原理を示す+x軸方向からみた断面図である。
ここでは、U−U’相の巻線12において、図示したような向きに電流が流れた場合を考える。
図4(a)に示すように、回転子の軸14の表面に設けられた永久磁石13により発生する磁束(図中、破線の矢印で示す。)と周方向成分電流izとの相互作用により、−z方向にローレンツ力Flが発生する。この結果、固定子側に発生したローレンツ力Flの反作用として回転子には+z方向に支持力Fcが発生することになる。永久磁石13による磁束は鉄心11により遮断されることから、鉄心11より径方向外側にある巻線部分には、永久磁石13による磁束が鎖交せず、したがってローレンツ力は発生しない。
図4(b)に示すように、巻線12に図示の向きに電流が流れると、鉄心11は、その右端がN極、左端がS極の電磁石となる。この電磁石により発生する磁束(図中、一点鎖線の矢印で示す。)は鉄心11中を+z方向から−z方向に貫き、鉄心11の右端(−z方向側にある端部)から出て径方向外側と径方向内側をループを描きながら+z方向に向かい、鉄心11の左端(+z方向側にある端部)に流入する。ここで、鉄心11は、その両端に設けられる鉄心突起部11Tにより鉄心11中の字路がギャップ側に拡張され、径方向外側を通る磁束に比べ、径方向内側を通る磁束が増加する。回転子の軸の表面に設けられた永久磁石11の左右両端部分では、永久磁石11のN極からS極に流入する磁束により軸方向の磁束成分が生じており、左端の鉄心突起部11Tの近傍の領域では巻線12に電流が流れることにより鉄心11が電磁石になることにより発生する磁束と永久磁石13による磁束のベクトルが略同一方向になり、磁束が密(図中、Ad)となる一方で、右端の鉄心突起部11Tの近傍の領域ではそれぞれの磁束のベクトルが略反対方向になり磁束が疎(図中、As)になる。このように磁束の疎密差から、回転子には+z方向にマクスウェル力Fmが生じる。このように、回転子の永久磁石13上のd軸が対向する位置に存在する巻線12に流れる電流(d軸電流)により、ローレンツ力Flおよびマクスウェル力Fmともに同じ向き+z方向に発生することで、+z方向に回転子の軸方向の支持力Fcが発生する。
図5は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータの制御ブロック図である。本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータ1においては、回転子の軸方向の支持力は周方向成分電流izを制御することにより発生し、回転子のトルクはz軸方向成分電流itを制御することにより発生する。ベアリングレスモータ1は、q軸電流により回転子の回転トルクのみが発生し、d軸電流により回転子の軸方向の支持力のみが発生する構造であるが、1台の三相インバータB9でベアリングレスモータ1の回転子の軸方向位置の能動制御と回転制御とを低コストで実現する。
制御装置100において、回転子の軸方向の支持力発生制御として、軸方向位置の指令値z*と、ベアリングレスモータ1の回転子の軸方向の検出変位zとから比較器B1で偏差を計算し、PID制御部B2でPID制御を行い、d軸電流指令値id *を作成する。また、ベアリングレスモータ1の回転子の回転駆動制御として、q軸電流指令値iq *を指令する。
dq座標系と三相座標系との変換式は式1で表される。
比較器B3においてd軸電流指令値id *とd軸電流検出値idとの偏差が計算され、PI制御部B4でPI制御が行われ、d軸電圧指令値Vd *が作成される。また、比較器B5においてq軸電流指令値iq *とq軸電流検出値iqとの偏差が計算され、PI制御部B6でPI制御が行われ、q軸電圧指令値Vq *が作成される。
dq−αβ変換部B7は、ベアリングレスモータ1の回転子の位相角θを用いてd軸電圧指令値Vd *およびq軸電圧指令値Vq *をdq−αβ変換してα軸電圧指令値Vα *およびβ軸電圧指令値Vβ *を出力する。
dq−αβ変換部B7は、ベアリングレスモータ1の回転子の位相角θを用いてd軸電圧指令値Vd *およびq軸電圧指令値Vq *をdq−αβ変換してα軸電圧指令値Vα *およびβ軸電圧指令値Vβ *を出力する。
αβ−三相変換部B8は、α軸電圧指令値Vα *およびβ軸電圧指令値Vβ *をαβ−三相変換してuvw各相の電圧指令値Vu *、Vv *およびVw *を出力する。
uvw各相の電圧指令値Vu *、Vv *およびVw *は三相インバータB9に入力され、三相インバータB9はこれに従って、ベアリングレスモータ1に駆動電圧を印加し、これにより、ベアリングレスモータ1の巻線12に三相電流iu、ivおよびiwが流れる。
三相インバータB9からベアリングレスモータ1の巻線12に流れる三相電流iu、ivおよびiwは検出されてフィードバックされる。三相−αβ変換部B10は、検出された三相電流iu、ivおよびiwを三相−αβ変換して回転子の軸方向の支持力に起因する周方向成分電流izと、回転子のトルクに起因するz軸方向成分電流itとを出力する。
αβ−dq変換部B11は、ベアリングレスモータ1の回転子の位相角θを用いて周方向成分電流izおよびz軸方向成分電流itをαβ−dq変換してd軸電流検出値idとq軸電流検出値iqとを出力する。
本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータにおいては、回転子の軸方向の支持力は、q軸電流ではなくd軸電流により発生する。これについて、回転子の位相θが0度の場合は図6〜図8を、回転子の位相θが30度の場合は図9〜図11を、それぞれ用いて説明する。図6は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータにおける、回転子の位相θが0のときにおけるd軸電流による支持力発生原理を説明する図であって、(a)は回転子の軸方向(+z軸方向)からみた断面図であり、(b)は+x軸方向からみたU−U’断面図である。回転子の軸14の表面に設けられた永久磁石13のN極は+y軸方向(U相の方向)にあり、S極は−y軸方向(U’相の方向)にある場合、回転子の位相θは「0度」であるとする。このとき、d軸電流を流すとU−U‘相の巻線12の電流は最大になる。
図6(a)に示すように、回転子の軸14の表面に設けられた永久磁石13により発生する磁束(図中、破線の矢印で示す。)と周方向成分電流izとの相互作用により、U−U’相の巻線12において−z方向にローレンツ力Flが発生する。永久磁石13による磁束は鉄心11により遮断されることから、鉄心11より径方向外側にある巻線部分には、永久磁石13による磁束が鎖交せず、したがってローレンツ力は発生しない。
また、図6(b)に示すように、巻線12に図示の向きに電流が流れると、鉄心11は、その右端がN極、左端がS極の電磁石となる。この電磁石により発生する磁束(図中、一点鎖線の矢印で示す。)は鉄心11中を+z方向から−z方向に貫き、鉄心11の右端(−z方向側にある端部)から出て径方向外側と径方向内側をループを描きながら+z方向に向かい、鉄心11の左端(+z方向側にある端部)に流入する。ここで、鉄心11は、その両端に設けられる鉄心突起部11Tにより鉄心11中の字路がギャップ側に拡張され、径方向外側を通る磁束に比べ、径方向内側を通る磁束が増加する。回転子の軸の表面に設けられた永久磁石11の左右両端部分では、永久磁石11のN極からS極に流入する磁束により軸方向の磁束成分が生じており、左端の鉄心突起部11Tの近傍の領域では巻線12に電流が流れることにより鉄心11が電磁石になることにより発生する磁束と永久磁石13による磁束のベクトルが略同一方向になりで磁束が密(図中、Ad)となる一方で、右端の鉄心突起部11Tの近傍の領域ではそれぞれの磁束のベクトルが略反対方向になり磁束が疎(図中、As)になる。このように磁束の疎密差から、回転子には+z方向にマクスウェル力Fmが生じる。
このように、回転子の永久磁石13上のd軸が対向する位置に存在するU−U’相の巻線12に正の電流がd軸電流として流れることにより、ローレンツ力Flの反作用力Fcとマクスウェル力Fmとがともに同じ向きに発生することで、+z軸方向にこれらの力を併せた回転子の軸方向の支持力が発生する。
図7は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータにおける、回転子の位相θが0度のときにおけるq軸電流による支持力の相殺原理を説明する図であって、回転子の軸方向(+z軸方向)からみた断面図である。また、図8は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータにおける、回転子の位相θが0度のときにおけるq軸電流による支持力の相殺原理を説明する図であって、(a)は図7のV−V’断面図であり、(b)は図7のW−W’断面図である。図7および図8に示すように、V−V’相の巻線12に負の電流、W−W’相の巻線12に正の電流がそれぞれ流れるとする。回転子の位相θが0度の場合、q軸電流iqは式2で表わされる。
図7に示すように、V−V’相の巻線12に負の電流、W−W’相の巻線12に正の電流がそれぞれ流れることにより、V−V’相の巻線12には+z方向に、W−W’相の巻線12には−z方向に、それぞれ回転子の軸方向のローレンツ力Flが働く。これら全てのローレンツ力Flを足し合わせると力は相殺し、回転子の軸の方向に働く力は無くなる。
図8(a)に示すようにV−V’相の巻線12には負の電流が、図8(b)に示すようにW−W’相の巻線12には正の電流がそれぞれ流れることにより、鉄心11の両端の鉄心突起部11Tの各領域に磁束の疎密(図中、As、Ad)が発生し、V−V’相の回転子の軸14には−z方向に、W−W’相 の回転子の軸14には+z方向に、それぞれマクスウェル力Fmが働く。これら全てのマクスウェル力Fmを足し合わせると力は相殺し、回転子の軸の方向に働く力は無くなる。
図9は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータにおける、回転子の位相θが30度のときにおけるd軸電流による支持力発生原理を説明する図であって、回転子の軸方向(+z軸方向)からみた断面図である。図10は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータにおける、回転子の位相θが30度のときにおけるd軸電流による支持力発生原理を説明する図であって、(a)は図9のU−U’断面図であり、(b)は図9のW−W’断面図である。回転子の軸14の表面に設けられた永久磁石13のN極は+y軸方向(U相の方向)から30度反時計回りの位置にあり、S極は−y軸方向(U’相の方向)から30度反時計回りの位置にある場合、すなわち回転子の位相θが「30度」である場合、d軸電流idは式3で表わされる。
図9に示すように、回転子の軸14の表面に設けられた永久磁石13により発生する磁束(図中、破線の矢印で示す。)と周方向成分電流izとの相互作用により、U−U’相およびW−W’相の各巻線12において−z方向にローレンツ力Flが発生する。永久磁石13による磁束は鉄心11により遮断されることから、鉄心11より径方向外側にある巻線部分には、永久磁石13による磁束が鎖交せず、したがってローレンツ力は発生しない。
また、図10(a)および図10(b)に示すように、U−U’相およびW−W’相の各巻線12に図示の向きに電流が流れると、鉄心11は、その右端がN極、左端がS極の電磁石となる。この結果、各鉄心11の両端の鉄心突起部11Tの各領域に磁束の疎密(図中、As、Ad)が発生し、回転子には図9の+z方向にマクスウェル力Fmが生じる。
このように、回転子が位相30度の位置にある場合はU−U’相およびW−W’相の各巻線12にd軸電流idが流れることにより、ローレンツ力Flの反作用力Fcとマクスウェル力Fmとがともに同じ向きに発生することで、+z軸方向にこれらの力を併せた回転子の軸方向の支持力が発生する。
図11は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータにおける、回転子の位相θが30度のときにおけるq軸電流による支持力の相殺原理を説明する図であって、(a)は回転子の軸方向(+z軸方向)からみた断面図であり、(b)は(a)のV−V’断面図である。図10に示すように、V−V’相の巻線12に正の電流が流れるとする。回転子の位相θが30度の場合、q軸電流iqは式4で表わされる。
図11(a)および図11(b)に示すように、V−V’相の巻線12にiq軸電流が流れてもローレンツ力マクスウェル力ともに発生しない。
以上、図6〜図11を用いて説明したように、回転子の軸方向の支持力は、q軸電流ではなくd軸電流により発生する。
次に、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータにおける回転子のトルクの発生原理を説明する。これについて、回転子の位相θが0度の場合は図12を、回転子の位相θが30度の場合は図13を、それぞれ用いて説明する。
図12は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータにおいて回転子の位相回転子の位相θが0度のときにおける、回転子のトルクの発生原理を説明する図であって、(a)はd軸電流によるローレンツ力の発生原理を示す+z軸方向からみた断面図であり、(b)はq軸電流によるローレンツ力の発生原理を示す+z軸方向からみた断面図である。ここでは、U−U’相の巻線12において、図示したような向きに電流が流れた場合を考える。回転子の位相θが0度の場合、d軸電流idは式5で表わされ、q軸電流iqは式6で表わされるとする。
図12(a)に示すように、d軸電流idを流すことによってU−U’相の巻線12に電流が流れるが、巻線12はギャップ側においては軸方向(+z方向)に向けて凸となるように成形されているので、+z軸方向に流れるz軸方向成分電流itと−z軸方向に流れるz軸方向成分電流itとが発生する。発生したz軸方向成分電流itは永久磁石13により発生する磁束と鎖交し、回転子の回転方向のローレンツ力Flが生じる。例えばU相の巻線12において、+z軸方向に流れるz軸方向成分電流itにより発生するローレンツ力Flは反時計回りの向きであり、−z軸方向に流れるz軸方向成分電流itにより発生するローレンツ力Flは時計回りの向きである。U’相の巻線12についても同様のことがいえる。したがって、全てのローレンツ力Flを足し合わせると、回転方向の力はゼロになるため、回転子に働く反作用力は発生しない。
図12(b)に示すように、q軸電流iqを流すことによってV−V’相およびW−W’相の各巻線12に電流が流れるが、巻線12はギャップ側においては軸方向(+z方向)に向けて凸となるように成形されているので、+z軸方向に流れるz軸方向成分電流itと−z軸方向に流れるz軸方向成分電流itとが発生する。式6よりV−V’相の巻線12には負の電流が、W−W’相には正の電流がそれぞれ流れる。V−V’相およびW−W’相の各巻線12には、永久磁石による磁束がz軸方向成分電流izに鎖交することにより、それぞれの電流と磁束の向きから、図12(b)に示すような径方向成分と回転方向成分とを有するローレンツ力Flが生じる。全てのローレンツ力Flを足し合わせると、径方向成分の力はゼロになり、回転方向成分は時計回りのローレンツ力が生じる。回転子には反作用力が働き、反時計回りのトルクTが発生する。
図13は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータにおいて回転子の位相回転子の位相θが30度のときにおける、回転子のトルクの発生原理を説明する図であって、(a)はd軸電流によるローレンツ力の発生原理を示す+z軸方向からみた断面図であり、(b)はq軸電流によるローレンツ力の発生原理を示す+z軸方向からみた断面図である。ここでは、U−U’相およびW−W’相の巻線12において、図示したような向きに電流が流れた場合を考える。回転子の位相θが30度の場合、d軸電流idは式7で表わされ、q軸電流iqは式8で表わされるとする。
図13(a)に示すように、d軸電流idを流すことによってU−U’相およびW−W’相の各巻線12に電流が流れるが、巻線12はギャップ側においては軸方向(+z方向)に向けて凸となるように成形されているので、+z軸方向に流れるz軸方向成分電流itと−z軸方向に流れるz軸方向成分電流itとが発生する。巻線12はギャップ側においては軸方向(+z方向)に向けて凸となるように成形されているので、U−U’相およびW−W’相の各巻線12に電流が流れることにより、+z軸方向に流れるz軸方向成分電流itと−z軸方向に流れるz軸方向成分電流itとが発生する。発生したz軸方向成分電流itは永久磁石13により発生する磁束と鎖交し、回転子の回転方向のローレンツ力Flが生じる。例えばU相の巻線12において、+z軸方向に流れるz軸方向成分電流itにより発生するローレンツ力Flは反時計回りの向きであり、−z軸方向に流れるz軸方向成分電流itにより発生するローレンツ力Flは時計回りの向きである。U’相の巻線12についても同様のことがいえる。またW−W’相の各巻線12も同様である。したがって、全てのローレンツ力Flを足し合わせると、回転方向の力はゼロになるため、回転子に働く反作用力は発生しない。
図13(b)に示すように、q軸電流iqを流すことによってV−V’相の巻線12に電流が流れるが、巻線12はギャップ側においては軸方向(+z方向)に向けて凸となるように成形されているので、+z軸方向に流れるz軸方向成分電流itと−z軸方向に流れるz軸方向成分電流itとが発生する。V−V’相の巻線12には、永久磁石による磁束がz軸方向成分電流izに鎖交することにより、電流と磁束の向きから、図13(b)に示すような回転方向成分を有するローレンツ力Flが生じる。全てのローレンツ力Flを足し合わせると、回転方向成分は反時計回りのローレンツ力が生じる。回転子には反作用力が働き、時計回りのトルクTが発生する。
以上、図12および図13を用いて説明したように、回転子のトルクは、d軸電流ではなくq軸電流により発生する。
続いて、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータ1の試作機の動作について実験およびシミュレーションによる検証結果について説明する。図14は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータ1の試作機の構造を示す断面図である。1台の三相インバータ2で電動機制御と軸方向の1自由度の制御が行われるラジアルギャップ型のベアリングレスモータ1において、回転子23の半径rを5mm、磁気的なギャップgを1mとし、ワイドギャップ(g/r=0.2)を構成した。このベアリングレスモータ1を中央に配置し、その左右には4自由度を受動的に支持する受動型磁気軸受3を配置した。また、回転子23の軸14の図中左端には2極の角度検出出用永久磁石21を設け、固定子側のx軸上、y軸上にはそれぞれホール素子22を配置して、回転子23の回転角度検出を行った。また、回転子23のz方向の変位を検知する変位センサ24も設けた。シミュレーション解析には電磁界解析ソフトJMAG(JSOL社)を用いた。
図15は、図14に示す試作機のd軸電流による回転子の軸方向の支持力の発生の検証結果を説明する図である。図15では、d軸電流に対する支持力Fzの、3D−FEM解析値、実験値についてそれぞれ示す。この実験では、回転子23をフォースゲージに押し当てた状態で、フォースゲージにかかる力と、d軸電流を流したときにフォースゲージにかかる力との差を、支持力Fzとした。図15に示すように、実験値は3D−FEM解析値に比べて6%ほど小さいが概ね一致していることがわかる。
図16は、図14に示す試作機の回転子の変位zの実験結果を示す図である。ベアリングレスモータをポンプなどのアプリケーションとして用いる際に、回転子23と固定子に隔壁を施すことを考慮し、磁気的ギャップ1mmに対し、機械的ギャップを0.1mm程度とした。図16より、変位0.13mmでタッチダウンした状態から、0.1秒のところでベアリングレスモータの制御装置においてPID制御を開始したことで、回転子23がz方向の中心付近(変位0mm付近)で安定的に浮上できていることが確認できる。
図17は、図14に示す試作機の回転子が700rpmで浮上回転しているときの回転子の変位zの実験結果を示す図である。図17より、回転子23の変位zは、z方向の中心付近の±0.09mm以内に収まっていることから、回転子23が固定子に対して非接触で浮上回転していることが確認できる。
次に、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータの適用例について説明する。
図18は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータをケミカルポンプに適用した例を示す断面図である。本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータ1は、特に円筒状の回転子を有する構造を持つポンプ用途に適している。回転子23の軸14の両端近傍には4自由度を受動的に支持する磁気軸受4が配置され、図中左端には2極の角度検出出用永久磁石21が設けられ、固定子25側のx軸上、y軸上には回転子23の角度検出のためのホール素子22がそれぞれ配置される。回転子23のz方向の変位を検知する変位センサ24が軸14の図中右端に設けられる。軸14の図中左端には羽車31が設けられ、回転子23と共にハウジング32内に収容される。ハウジング32は内部に流体を収容するので、流体中に羽車31および回転子23が存在することになる。腐食性の溶液を流体として用いる場合があるため、回転子23と固定子25との間には、隔壁を設ける必要がある。
回転子23の表面には円筒の茶筒状の隔壁が施される。また、固定子25の内周にも円筒の茶筒状の隔壁が施される。従来は、スラスト力を発生するためには、円盤状の直径が大きいスラスト磁気軸受を構成した。この場合、回転子を覆う隔壁は段差がついた円筒状になってしまう。段差がついた円筒ではつなぎ目が必要となり、つなぎ目から溶液が漏れる恐れがあり、信頼性が低下する。このため、応用上、円筒形の隔壁で覆うことが可能なベアリングレスモータが要求されている。既に5軸能動制御型などでは東京理科大学、北海道大学などで試作例がある。また、円筒形に適した2軸能動制御型ではレビトロニクス、ETH、静岡大学など試作例が多い。しかし、1軸能動制御では円筒形の隔壁を持つ物は少なく、ラジアル剛性を得るため段差がついたものが多い。既に提案されているシングルドライブのベアリングレスモータも主軸両端部に円盤状の直径が大きいベアリングレスモータが構成されている。本発明は、ラジアル磁束型であるため、段差がない円筒形であることが大きな特長である。このため、細長い円筒状の構造を持つことが可能である特長がある。この特長は図18以外の多くの図の構成で特長を生かす設計が可能である。なお、インペラー部分は容器に強い隔壁と類似の構成物質により構成されるため、段差があっても問題とならない。図18は回転型のポンプについて描いているが、容積型へ適用することも可能である。すなわち、主軸を回転軸方向に一定位置に能動支持するだけでなく、主軸を回転軸方向に能動的に振動させ、この振動により容積を変化し、容積型ポンプとして動作することができる。ポンプだけでなく、非接触磁気浮上振動モータとして各種応用に適用できる。
図19は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータを冷却用ファンに適用した例を示す断面図である。本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータは、インナーロータ型であるが、後述するようにアウターロータ型として構成することもできる。回転子23の直径は大きくし、磁気軸受分の直径を小さく構成することで、扁平なモータが用いられる冷却用ファンなどのような用途に適した構造を実現する。回転子23にはプロペラ33が設けられる。固定子25には、支持力巻線12−1がバームクーヘン状に巻かれるとともに、集中巻のトルク成分巻線12−2が巻かれる。巻線12−1により支持力成分電流izを発生させ、トルク成分巻線12−2によりitを発生させる。固定子25には外周方向に支持力巻線12−1が配置されており、この巻線により軸方向力を発生する。支持力巻線は軸方向に凸に構成してトルク成分電流を発生させるようにしてよい。また、その内側には径方向の起磁力を発生するトルク成分巻線12−2が巻がれている。トルク成分巻線12−2には回転子23の回転に伴い交流磁束が鎖交し、トルクを発生する巻線として機能する。このトルク成分巻線は周方向にいくつか分割されており、短節集中巻でもよく、あるいは分布巻線でもよい。図示の鉄心11について省略してもよく、省略すると不平衡吸引力が減少して受動型磁気軸受の負担が軽減できる。一方、鉄心を構成し、歯を多数も受けることによって、スラスト方向力を増加することもできる。図19では磁気軸受として小径のものが描かれているが、径を大きくして回転子を円筒構造としてもよい。
図20は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータをアクチュエータに適用した例を示す断面図である。本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータ1を、軸方向の位置と回転方向の位置を同時に位置決めするアクチュエータとして用いてもよい。この場合,径方向・傾き方向は磁気軸受で磁気浮上させてもよい。また、磁気浮上させずに中小の軸受で支持しても良い。回転角度検出は回転角度センサレス化により省略しても良い。これは他の図面でも同様である。
次に、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータの巻線の変形例について説明する。本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータの巻線を分布巻やトロイダル巻で実現してもよい。
図21は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータの周方向成分電流を発生させる巻線を分布巻にした第1の具体例を示す断面図である。上述のように第1の実施例では巻線12を短節集中巻で構成したが、図21に示すように、分布巻で構成してもよい。図21ではU−U’相の巻線について示すが、U相およびU’相それぞれについて3個の鉄心11の周囲を囲むように同一の巻線12が巻かれている。鉄心のギャップ側に巻かれる巻線についてはz軸方向に向けて凸となるように巻く。なお、図21には示していないが、V−V’相についてはU−U’相に対して120度ずれた位置に巻かれ、W−W’相についてはU−U’相に対して240度ずれた位置に巻かれる。
図22は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータのz軸方向成分電流を発生させる巻線を集中巻にした第1の具体例を示す断面図であって、(a)は回転子の軸方向(+z方向)からみた断面図であり、(b)は+x方向からみた断面図である。支持力成分巻線12−1がバームクーヘン状に巻かれ、さらに軸方向に積み重ねられる。また、支持力成分巻線12―1と同一の巻線で、支持力成分巻線12−1の周りにトルク成分巻線12−2を集中巻で構成する。あるいは、支持力成分巻線12−1の周りにトルク成分巻線12−2を集中巻で構成し、支持力成分巻線12−1とトルク成分巻線12−2とを並列に接続する。つまり、1相分における支持力成分巻線12−1とトルク成分巻線12−2とは直列もしくは並列に接続され、同一巻線として構成される。支持力成分巻線12−1により周方向成分電流izを発生させ、トルク巻線12−2によりz軸方向成分電流itを発生させる。本具体例は、軸方向の電磁力とトルクの調整が巻線巻回数で分離できるため、製作しやすい利点がある。
図23は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータのz軸方向成分電流を発生させる巻線を分布巻にした第1の具体例を示す断面図であって、(a)は回転子の軸方向(+z方向)からみた断面図であり、(b)は+x方向からみた断面図である。第1の具体例は、図22を参照して説明した集中巻にした第1の具体例における集中巻のz軸方向成分電流itを発生させる巻線を、図23に示すように分布巻のトルク成分巻線12−2に置き換えたものである。なお、図22には示していないが、V−V’相についてはU−U’相に対して120度ずれた位置に巻かれ、W−W’相についてはU−U’相に対して240度ずれた位置に巻かれる。
図24は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータのz軸方向成分電流を発生させる巻線を集中巻にした第2の具体例を示す断面図であって、+x方向からみた断面図である。図25は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータのz軸方向成分電流を発生させる巻線を集中巻にした第2の具体例を示す断面図であって、(a)は図24のa−a’断面図であり、(b)は図24のb−b’断面図である。第2の具体例では、周方向成分電流izを発生させる巻線12−1(以下、「支持力成分巻線12−1」と称する。)とは別に、z軸方向成分電流itを発生させる巻線12−2(以下、「トルク成分巻線12−2」と称する。)を集中巻で構成する。2組の支持力成分巻線12−1がバームクーヘン状に巻かれ、これら2組の支持力成分巻線12−1の間に、集中巻の巻線12−2が巻かれる。1相分における2組の支持力成分巻線12−1と巻線12−2とは直列に接続され、すなわちこれらは同一巻線として構成される。支持力成分巻線12−1により支持力成分電流である周方向成分電流izを発生させ、トルク成分巻線12−2によりトルク成分電流であるz軸方向成分電流itを発生させる。図24および図25に示す第2の具体例では、回転子を1つのコンポーネントとして構成したが、この変形例として、回転子自体を、支持力成分巻線12−1が巻かれた支持力発生部分とトルク成分巻線12−2が巻かれたトルク発生部分とで分けて2組で構成してもよく、これら各部分の極対数は互いに異なってもよい。また、2組に限らず複数の組を軸方向に構成してもよい。個の場合、軸方向にタンデムに多段化することにより回転子の軸方向の支持力、および回転子の径方向のトルクを増加することができる。また、適切にギャップ部に固定子歯を設けることによって回転子の軸方向の支持力、および回転子のトルクを増加することができる。歯の先端は図示のようにまっすぐであってもよいが、広げるようにして構成してもよく、この場合、脈動を低減し、磁束密度を向上することができる。また、鉄心材質もパウダーコアのような材料を適用してもよいし、無垢の鉄、炭素鋼、薄板、ケイ素鋼板等を適用してもよい。
図26は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータのz軸方向成分電流を発生させる巻線をトロイダル巻にした第1の具体例を示す断面図であって、+x方向からみた断面図である。図27は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータのz軸方向成分電流を発生させる巻線をトロイダル巻にした第1の具体例を示す断面図であって、(a)は図26のa−a’断面図であり、(b)は図26のb−b’断面図である。この第1の具体例では、周方向成分電流izを発生させる支持力成分巻線12−1とは別に、z軸方向成分電流itを発生させるトルク成分巻線12−2をトロイダル巻で構成する。なお、図26および図27に示す第1の具体例では、回転子を1つのコンポーネントとして構成したが、この変形例として、回転子を、支持力成分巻線12−1が巻かれた支持力発生部分とトルク成分巻線12−2が巻かれたトルク発生部分とで分けて構成してもよく。これら各部分の極対数は互いに異なってもよい。
図28は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータの巻線を集中巻にした第3の具体例を示す断面図であって、+x方向からみた断面図である。図29は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータのz軸方向成分電流を発生させる巻線を集中巻にした第3の具体例を示す断面図であって、(a)は図28のa−a’断面図であり、(b)は図28のb−b’断面図である。鉄心11がトルク発生部分と支持力発生部分に分かれていてもよい。各相の巻線は全て同一の巻線で構成する。図中左側の支持力発生部分と、図中右側の支持力発生部分の巻線は、流れる電流の正方向の向きを逆にする。すなわち、正の電流を流した時に、図中左側の鉄心は、永久磁石に近い側がS極になり、図中右側の鉄心は、N極になり、磁束の疎密差が発生する。また左右の支持力巻線ともに、永久磁石と鎖交する片側コイルエンドからローレンツ力が発生する。
図30は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータの、1歯当たりの鉄心を2つに分けて構成した場合を説明する図であって、(a)は+z方向からみた断面図であり、(b)は−y方向からみた鉄心および巻線の側面図であり、(c)は図1を参照して説明した例のU相の鉄心および巻線の側面図である。U相を例に説明すると、図30(c)に示したように鉄心11のギャップ側の巻線12については+z軸方向に向けて凸となるように鉄心11に巻くことによって、回転子の軸方向の支持力に起因する周方向成分電流izと、回転子のトルクに起因するz軸方向成分電流itとを生み出したが、この変形例として、図30(a)および図30(b)に示すように、U相をU1相およびU2相の2つに分け、各鉄心11−1および11−2に分け、U1相の鉄心11−1のギャップ側に巻かれる巻線12−3については図中右上方向に向かうように、U2相の鉄心11−2のギャップ側に巻かれる巻線12−4については図中右下方向に向かうように、それぞれ巻くことによって、各巻線12−3および12−4を電流が流れることによりそれぞれ生じるz軸方向成分電流itおよび周方向成分電流izについての各合成ベクトルが、図30(c)に示したU相単独で生じるz軸方向成分電流itおよび周方向成分電流izと同じになるようにする。すなわち、図30(a)および図30(b)の変形例では、図30(c)に示した巻き方の巻線12により生じるz軸方向成分電流itおよび周方向成分電流izを2つの鉄心11−1および11−2それぞれに巻いた巻線12−3および12−4により発生させるものである。したがって、図30(c)の場合は鉄心が6個必要であったが、図30(a)および図30(b)の変形例では鉄心は12個必要である。この変形例では巻線を斜めに傾けるだけですむので生産が容易であり、大量生産に適している。このほかにも、鉄心よりやや大きいサイズで円形、楕円形、もしくは多角形状にコイルを構成し、そのコイルを鉄心に挿入後傾けるように構成することが可能である。また、2つに分割するだけでなく、3つ以上に分割してコギングトルクを減少することができる。例えば3つに分割する場合などは両端は斜めに構成し、中心は斜めにしないことも可能であり、あるいは、従来型の凹型を構成してもよい。
図31は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータの、巻線の巻き方のさらなる変形例を説明する図であって、(a)は−y方向からみた鉄心および巻線の側面図であり、(b)は−x方向からみた鉄心および巻線の側面図である。図1などに示したように鉄心11のギャップ側の巻線12については+z軸方向に向けて凸となるように鉄心11に巻いたが、この変形例として、鉄心11のギャップ側の巻線12については斜めになるように(図31(b)に示す例では、右上方向に向かうように)巻くようにしてもよく、このような巻き方によってもz軸方向成分電流itおよび周方向成分電流izを発生させることができる。すなわち、鉄心のギャップ側の巻線については、回転子の回転軸の方向にベクトル成分を有するよう角度をなして巻かれる。本変形例によれば製作が容易である利点があるが、トルク成分電流である周方向成分電流izは図1を参照して説明した例よりも小さくなる。
図32は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータの、巻線の巻き方のさらなる変形例を説明する図であって、(a)は+z方向からみた断面図であり、(b)は−y方向からみた鉄心および巻線の側面図であり、(c)は−x方向からみた鉄心および巻線の側面図である。本変形例は、鉄心11のギャップ側の巻線12については+z軸方向に向けて凸となるように鉄心11に巻くだけではなく、鉄心11の径方向外側の巻線についても+z軸方向に向けて凸となるように巻いたものである。このような巻き方によってもz軸方向成分電流itおよび周方向成分電流izを発生させることができる。鉄心11に巻線12を巻いた後、巻いた巻線12を図示のように折り曲げるだけで容易に製作することができる利点がある。
図33は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータの鉄心の形状を説明する図であって、(a)は+z方向からみた断面図であり、(b)は−y方向からみた鉄心および巻線の側面図である。鉄心11の+z方向からみた断面の形状は上述した台形に限定されるものではなく、軸方向に磁束を通す形状であれば例えば円、楕円、多角形などの形状であってもよい。また、上述の第1の実施例では、図33(b)に示すような鉄心突起部11Tを設けたが、これを備えなくてもよい。また、上述の第1の実施例ならびに後述の第2および第3の実施例では鉄心を設けたが、鉄心を設けずにベアリングレスモータを実現してもよい。ただし、鉄心を設けない場合は、マクスウェル力は発生せず、ローレンツ力にのみ起因して回転子の回転軸方向の支持力が発生する。上述の鉄心の形状のバリエーションについては、図28および図29を除く例に適用可能である。
図34は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータの回転子の形状を説明する図であって、(a)は埋込磁石内蔵型の回転子を示し、(b)は表面磁石型の回転子を示す図である。本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータの回転子は、図34(a)に示すような軸14の周りの鉄心11の内部に永久磁石13を埋め込んだ埋込磁石内蔵型(IPM:Interior Permanet Magnet)型であってもよく、図34(b)に示すような軸14の表面に永久磁石13を貼り付けた表面磁石(SPM:Surface Permanet Magnet)型であってもよい。後述の第2および第3の実施例についても同様である。また、いずれの場合であっても極対数の数は本発明を限定するものではない。回転子は、回転子に設置された永久磁石により励磁され、もしくは固定子に設置された永久磁石により励磁され、もしくは固定子に設置された巻線により励磁され、永久磁石型、誘導型、リラクタンス型、ホモポーラ型、コンシクエントポール型などの回転子でよい。
図35は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータの回転子の形状を説明する断面図である。上述の本発明の第1の実施例では回転子を内側に、固定子を外側に配置するインナーロータ型としたが、回転子23を外側に配置し、固定子25を内側に配置するアウターロータ型でも本発明を実現することができる。この場合、外側の固定子25に永久磁石13が設けられ、内側の回転子23に巻線12が設けられる。固定子25の外側にギャップが存在するので、巻線12が+z軸方向に向けて凸となるように設けられる側は、固定子25の外側(すなわちギャップ側)表面になる。アウターロータ型で構成すれば、図19を参照して説明した冷却用ファンを実現することができる。なお、図35に示す例は、表面磁石(SPM)型のロータを示したが、埋込磁石内蔵型(IPM)型のロータであってもよい。また、回転子の外周にヨークを構成してもよく、永久磁石はハルバッハ構造であってもよく、また、パラレルに着磁されていてもよい。
図36は、本発明の第1の実施例によるベアリングレスモータの固定子のスロット数を説明する断面図である。上述した第1の実施例およびその各具体例および各変形例ならびに後述する第2および第3の実施例の全ての構造について、スロット数は、それぞれの回転子の極対数に対して、トルクが発生する極対数の起磁力を発生させるものであればよい。スロット数やインバータの相数を変えても本発明は適用可能である。
続いて、本発明の第2の実施例について説明する。図37は、本発明の第2の実施例における1相分の巻線構造を説明する図であって、(a)は回転子の軸方向(+z軸方向)からみた断面図であり、(b)は分解斜視図である。巻線は支持力発生部41とトルク発生部42とで構成される。本発明の第2の実施例によれば、巻線のコイルエンドを支持力発生部41とし、回転子の周りに設けられた永久磁石13により発生する磁束が支持力発生部41に鎖交することで、支持力発生部41にローレンツ力が発生する。一般に回転子の軸14の周りに設けられる永久磁石13の、軸方向の中心(すなわち永久磁石の軸方向の長さの中間点)が、トルク発生部42の軸方向の中心と一致するように設置すると、トルク発生部42の両端に設けられた各支持力発生部41により発生する各ローレンツ力は同じ大きさで方向が逆向きとなるので互いに打ち消しあい、その結果、回転子の軸方向の支持力は発生しない。そこで、本発明の第2の実施例では、回転子の軸14の周りに設けられる永久磁石13を、その軸方向の中心が、トルク発生部42の軸方向の中心から敢えてずらして、一方のコイルエンドには永久磁石の磁束が鎖交しないようにするとともにもう一方のコイルエンドのみに永久磁石のコイルエンドが鎖交するようにすることによって、一方の支持力発生部41により発生するローレンツ力が、もう一方の支持力発生部41により発生するローレンツ力より大きになるようにする。これにより、回転子の軸方向の支持力Fcを発生させる。トルクは2つの支持力発生部41の間にはさまれたトルク発生部42で発生させる。なお、本発明の第2の実施例における巻線の巻き方は、集中巻、分布巻、あるいはトロイダル巻のいずれであってもよい。また、図37に示す例は、表面磁石(SPM)型のロータを示したが、埋込磁石内蔵型(IPM)型、その他のロータであってもよい。また、図中の導体(巻線)は軸方向、径方向のいずれかに構成されているが、傾いて斜め方向に構成されていてもよい。あるいは、通常のモータでよく適用されるようにコイルがスキューされ、径方向の電流成分と軸方向の電流成分の両方を混在して持つ構成としてもよい。回転子の極対数は本発明を限定するものではない。スロット数は、それぞれの回転子の極対数に対して、トルクが発生する極対数の起磁力を発生させるものであればよい。スロット数やインバータの相数を変えても本発明は適用可能である。
図38は、本発明の第3の実施例における1相分の巻線構造を説明する図であって、(a)は回転子の軸方向(+z軸方向)からみた断面図であり、(b)は分解斜視図である。本発明の第3の実施例は、図37を参照して説明した本発明の第2の実施例における永久磁石に、極性が反対の永久磁石をさらに連結したものである。すなわち、図38(b)に示すように、永久磁石13−1が設けられた回転子に、永久磁石13−1とは極性が反対の永久磁石13−2が設けられた回転子を回転軸方向にさらに連結する。本発明の第3の実施例によれば、トルク発生部42の両端に設けられた各支持力発生部41により発生する各ローレンツ力の向きは同じとなり、その結果、回転子の軸方向には、本発明の第2の実施例の場合における支持力よりも大きな支持力Fcが発生する。なお、図38に示す例は、表面磁石(SPM)型のロータを示したが、埋込磁石内蔵型(IPM)型のロータであってもよい。また、図中の導体(巻線)は軸方向、径方向のいずれかに構成されているが、傾いて斜め方向に構成されていてもよい。あるいは、通常のモータでよく適用されるようにコイルがスキューされ、径方向の電流成分と軸方向の電流成分の両方を混在して持つ構成としてもよい。回転子の極対数は本発明を限定するものではない。スロット数は、それぞれの回転子の極対数に対して、トルクが発生する極対数の起磁力を発生させるものであればよい。スロット数やインバータの相数を変えても本発明は適用可能である。
図39は、本発明の第2および3の実施例におけるコイルエンドの巻き数の制限について説明する図であって、(a)は回転子の軸方向(+z軸方向)からみた断面図であり、(b)は分解斜視図である。トルク発生部42の両端(コイルエンド)における支持力発生部41は、その大きさに限界があり、したがって支持力発生部41のスロットには巻き数の制限がある。したがって、本発明の第2および第3の実施例は、鉄心のギャップ側の巻線の巻き方に特徴がある本発明の第1の実施例よりも、発生できる回転子の回転軸方向の支持力の大きさに制限を受ける。
上述の第1の実施例およびその各具体例および各変形例、ならびに第2および第3の実施例の全ての構造に対して、巻線は丸線や角線のいずれも問わず適用可能である。
なお、ベアリングレスモータは一般には非接触磁気浮上するモータであり、磁気軸受機能とモータ機能を磁気的一体化したものと定義されている。本発明はベアリングレスモータにかぎらない。すなわち、磁気浮上をすることなく、一部を機械的、あるいは流体的な物質により接触してもよい。あるいは軸方向の力は軸方向に発生する振動を抑制する機能として適用してもよい。またあるいは、軸方向に振動を発生する振動モータであってもよい。