JP6078844B2 - 癌免疫療法のためのペプチド及びその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、腎臓癌の免疫療法に有用な腎臓癌特異的細胞傷害性リンパ球を誘導しうるペプチドと、そのペプチドの利用に関する。詳細には、腎臓癌に特異的な抗原蛋白質、その部分ペプチド、それらをコードするDNA、抗原蛋白質をエピトープとする抗体、誘導活性された免疫細胞、腎臓癌ワクチン、腎臓癌診断薬、腎臓癌発症素因評価方法、更には、腎臓癌等の免疫療法に有用な標的遺伝子の探索方法に関する。
癌は、発生機序の解明や、診断法、治療法が進歩しつつあるが、多くの進行癌を治療できないのが現状である。これを改善するために、有効な早期診断法と治療法の開発が求められている。
腎臓癌には、特異的な腫瘍マーカーがないのが現状であるので、早期診断が困難である。
癌の治療法のひとつに免疫療法がある。従来の免疫療法は非特異的免疫療法を中心として行われてきたが、近年、T細胞が生体内での腫瘍拒絶に重要な役割を果たすことが明らかになり、細胞傷害性T細胞(CTL:Cytotoxic T Lymphocyte)を誘導しうるT細胞認識腫瘍抗原の単離とMHCクラスI拘束性エピトープの特定が求められている。しかし、多くの腫瘍抗原の単離として細胞傷害性T細胞を用いたcDNA発現クローニング法が行われてきたが、腫瘍の細胞株化と細胞傷害性T細胞の樹立が必要であることから、メラノーマ以外の癌腫からの腫瘍抗原の単離は困難であった。
ペプチドワクチンを利用した免疫療法は、肺癌に対するSART、MAGEペプチドワクチン療法や、脾臓癌に対するHLA−A24SARTペプチドワクチン療法や、血液悪性腫瘍・消化器・胸部・泌尿器・生殖器等の殆どの固形癌に対するWT1ペプチドワクチン療法など、多数の報告があり、腎臓癌に関連するものも下記の文献がある。
非特許文献1〜3は、CA9ペプチドワクチン療法を開示している。ワクチン接種により特異的細胞傷害性T細胞は誘導できるものの、極めて限られた臨床効果であり、23例の患者のうち癌の部分的縮小を2名で認めたのみである。CA9は腎臓癌(淡明細胞癌)でほぼ100%の発現であるが、ワクチンとしての有用性は現時点では高くない。
非特許文献4は、変異VHLペプチドワクチン療法を開示している。腎臓癌患者では高率にVHL遺伝子の変異が認められる。この変異VHL遺伝子由来のペプチドを用いて腎臓癌患者リンパ球より、細胞傷害性T細胞の誘導が可能であると示されているが、臨床効果は不明である。
非特許文献5は、WT1ペプチドワクチン療法を開示している。WT1遺伝子由来で細胞傷害性T細胞の誘導可能なペプチドを用いたワクチン療法である。少数例の臨床試験の報告があるが、臨床効果は限定的である。
非特許文献6は、HIFPH3ペプチドによる細胞傷害性T細胞の誘導を開示している。HIFPH3は高率に腎臓癌に発現している。特異的細胞傷害性T細胞の誘導が証明されているものの、臨床での検討はこれからである。
関連する従来技術には、特許文献1〜6もある。
特許文献1は、主に食道癌に関するものであるが、cDNAマイクロアレイを用いて食道癌の抗原を発見し、その抗原アミノ酸配列由来のペプチドを用いたワクチン療法を開示している。腎臓癌にも適用可能との記載もあるが、高いE:T比(大量のCTL)での癌細胞に対する細胞傷害活性である。
特許文献2〜6も、腎臓癌またはワクチンに関連するものである。しかしながら、従来技術では、腎臓癌の免疫療法に有用なペプチドは発見されず、ワクチンや早期診断方法も得られていない。
このように臨床効果が限られている理由は、癌抗原に対する免疫が、実際には生体でうまく機能していないからであると考えられる。癌組織での発現量の多さでスクリーニングされた抗原は、実際には免疫療法の良いターゲットであるとは限らない。
WO2005/014819「食道癌の抗原およびその利用」 特開2009−137857「癌ワクチン」 特開2009−148264「膀胱癌、卵巣癌、肺癌、および腎臓癌の診断および治療に有用な腫瘍抗原」 特表2009−502112「腎細胞癌を診断および処置するための方法」 特開2010−159257「癌抗原及びその利用」 特表2010−534627「腫瘍関連ペプチドおよび関連抗癌ワクチンの組成物」 PCT/JP2012/59878「癌免疫療法のためのペプチド及びその利用」
Hirotsugu Uemura, KiyohideFujimoto, Motoyoshi Yoshikawa, YoshihikoHirao, Shigeya Uejima, Kazuhiro Yoshikawa, KyogoItoh: A phase I trial ofvaccination of CA9-derivedpeptides for HLA-A-24-positive patients withcytokine-refractory metastaticrenal cell carcinoma. Clin Cancer Res 12,1768-1775,2006 植村天受: 腎癌に対するCA9ペプチドワクチン療法. 泌尿器外科20,17-23, 2007 植村天受: 腎癌ワクチン療法.臨泌63,233-239, 2009 Rahma OE, Ashtar E, Ibrahim R, Toubaji A, Gause B, Herrin VE,Linehan WM,Steinberg SM, Grollman F, Grimes G, Bernstein SA, Berzofsky JA,Khleif SN:A pilot clinical trial testing mutant von Hippel-Lindau peptide as anovel immune therapy inmetastatic renal cell carcinoma. J Transl Med 8,8, 2010 Iiyama T, Udaka K, Takeda S, Takeuchi T, Adachi YC, OhtsukiY, TsuboiA, Nakatsuka S,Elisseeva OA, Oji Y, Kawakami M, Nakajima H, NishidaS, ShirakataT, Oka Y, ShuinT, Sugiyama H: WT1 (Wilms' tumor 1) peptideimmunotherapy forrenal cell carcinoma. MicrobiolImmunol 51, 519-530, 2007 Eiji Sato, Toshihiko Torigoe, Yoshihiko Hirohashi, Hiroshi Kitamura,Toshiaki Tanaka, Ichiya Honma, Hiroko Asanuma,Kenji Harada, Hideo Takasu,NaoyaMasumori, Naoki Ito, Tadashi Hasegawa, Taiji Tsukamoto, and Noriyuki Sato:Identification of animmunogenic CTL epitope of HIFPH3 for immunotherapyof renalcell carcinoma. Clin Cancer Res 14,6916-6923, 2008 大水総一、有川智博、加藤茂樹、山内清明、平島光臣:ガレクチン9による免疫抑制. 月刊臨床免疫 アレルギー科51, 512-518, 2009 Yanwu Yang, Xiaoxia Wang, Cheryl A. Hawkins, Kan Chen, JuliaVaynberg, Xian Mao,Yizeng Tu, Xiaobing Zuo, Jinbu Wang, Yun-xing Wang, ChuanyueWu, Nico Tjandra and Jun Qin: Structural basis of focal adhesion localizationof LIM-only adaptor PINCHby Integrin-linked kinase. JBiol Chem 284,5836-5844,2009
そこで、本発明は、腎臓癌の免疫療法に有用なペプチドを見出し、有効な治療法や早期診断方法を提供すること、更には、腎臓癌等の免疫療法に有用な標的遺伝子の探索方法を提供することを課題とする。
本発明のペプチドは、下記(1)〜(2)のいずれかのアミノ酸配列から成り、免疫誘導活性を有することを特徴とするペプチド。
ILCEAHCLKV ‥‥‥(1)
VIEGDVVSAL ‥‥‥(2)
上記(1)〜(2)のいずれかのアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加を含むアミノ酸配列から成り、免疫誘導活性を有するペプチドでもよい。
本発明の蛋白質は、上記のいずれかに記載のペプチドを含み、腎臓癌抗原蛋白質を認識する細胞傷害性T細胞を活性化しうることを特徴とする。
本発明の細胞は、上記のいずれかに記載のペプチドまたはそれらの混合物を用いてインビトロ刺激により誘導されたことを特徴とするヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、または、インビトロでパルスされたことを特徴とする抗原提示細胞、樹状細胞、或いは、これらを含む免疫細胞集団である。
本発明の腎臓癌ワクチンは、上記のいずれかに記載のペプチドを含むことを特徴とする。
本発明の抗体は、上記のいずれかに記載のペプチドに対して抗原抗体反応を生じ得ることを特徴とする。
本発明の腎臓癌診断薬は、上記の抗体を含むことを特徴とする。
本発明の腎臓癌発症素因評価方法は、腎臓癌を発症する素因を有するか否かを評価する方法であって、被験者由来の生体試料において請求項1に記載のペプチド関連遺伝子の発現レベルを求めるステップと、その発現レベルを正常対照レベルと比較し所定の閾値より高ければ、腎臓癌を発症する素因が高いと評価するステップとを有することを特徴とする。
本発明の標的遺伝子の探索方法は、免疫療法に有用な標的遺伝子の探索方法であって、 サイトカイン療法が有効であった癌患者から血清を採取するステップと、その血清をプローブとして用いたSEREX法によりcDNA発現ライブラリーをスクリーニングするステップとを有することを特徴とする。
本発明によると、腎臓癌に有効な免疫療法と腎臓癌の発症素因評価方法が得られるので、腎臓癌の治療や予防に寄与する。
標的遺伝子の解析結果を示す写真 (a)は、遺伝子36-6-1由来の配列(1)に基づくペプチドにおけるHLA−A*0201拘束性と抗原特異的細胞傷害活性を示し、腎癌細胞TUHR−10TKBに対する高い細胞傷害活性を示すグラフ (b)は、遺伝子113-3-1由来の配列(2)に基づくペプチドにおけるHLA−A*0201拘束性と抗原特異的細胞傷害活性を示し、腎癌細胞TUHR−10TKBに対する高い細胞傷害活性を示すグラフ
以下に、本発明の実施形態を説明する。実施形態は、前記特許文献など従来公知の技術を援用して適宜設計変更可能であり、また、薬剤等の製造方法及び装置についても従来公知の技術を適宜適用可能である。
進行性腎臓癌では、少数ながらサイトカイン療法が著効する患者がいる。このような患者の血清には、癌免疫にかかわる抗体があると考えられる。実際に今まで報告されたペプチドワクチン療法奏功例では、IgGレベルが高いという報告が多い。
本発明者は、腎臓癌の中のどの蛋白質が抗原となり免疫に関わる抗体を産生するに至ったかを解明するために、サイトカイン療法が奏功した患者の血清と反応する抗原蛋白質を探索した。そして、特許文献7において、2種類の抗原遺伝子(36-6-1,
113-3-1)を同定し、これら抗原より高い活性を有する特異的細胞傷害性T細胞を誘導する6種類のペプチドを見出した。
その研究を進め、今回、更に、2種類の抗原遺伝子(36-6-1, 113-3-1)より、高い活性を有する特異的細胞傷害性T細胞を誘導する2種類のペプチドを見出して、本発明を完成するに至った。
先行技術文献における細胞障害性T細胞を誘導するペプチドは、本発明によるペプチドとは異なった方法でスクリーニングされた遺伝子由来であり、癌患者血液(免疫前駆細胞があると考えられている)のリンパ球を刺激して、特異的細胞傷害性T細胞の誘導を証明している。本発明によるペプチドでは、正常人リンパ球から、高い活性の特異的細胞傷害性T細胞が誘導できている。
サイトカイン療法が有効であった進行性腎臓癌患者血清を用いた解析は、本発明が初めてである。従来の着想では、当該遺伝子の発見には至らず、本発明は得られなかったと考えられる。
本発明によるペプチド及び蛋白質は、以下の通りである。
本発明のペプチドは、下記(1)〜(2)のいずれかのアミノ酸配列から成り、免疫誘導活性を有することを特徴とするペプチド。
ILCEAHCLKV ‥‥‥(1)
VIEGDVVSAL ‥‥‥(2)
本発明の蛋白質は、上記(1)〜(2)のいずれかのアミノ酸配列を含み、免疫誘導活性を有する。
ここで、上記(1)〜(2)のいずれかのアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加を含んでもよい。
特に、腎臓癌抗原蛋白質を認識する細胞傷害性T細胞を活性化しうるものが好ましい。
上記(1)は、細胞性免疫にかかわる糖鎖結合蛋白質ガレクチン9(36-6-1)(非特許文献7) のアミノ酸配列由来のペプチドA02/10m-278である。ガレクチン9は腎臓癌の大多数を占める淡明細胞癌において、正常組織に比して著しく高発現している。遺伝子の配列は公知であるが、このペプチドは公知でなく、また用途も公知でない。
上記(2)は、細胞接着のシグナリングに関するアダプター蛋白PINCH(113-3-1)(非特許文献8)のアミノ酸配列由来のペプチドA02/10m-258である。PINCHも、腎臓癌の大多数を占める淡明細胞癌において、正常組織に比して著しく高発現し、遺伝子の配列は公知であるが、このペプチドは公知でなく、また用途も公知でない。
これらの腎臓癌抗原蛋白質は、例えば、腎臓癌患者から採取した癌細胞からcDNAマイクロアレイ解析法などにより検出することができる。なお、cDNAマイクロアレイ解析法とは、被験者から摘出された組織を癌部と非癌部とに分けてmRNAを調製し、それから蛍光標識したcDNAを作成し、そのcDNAを全遺伝子を所定割合スポットしてあるスライドガラスに載せ、ハイブリダイズ後、スキャナーでシグナルを取込み、遺伝子発現を解析する方法である。
腎臓癌抗原蛋白質の製造方法は特に限定されず、天然由来の蛋白質でも、化学合成した蛋白質でも、遺伝子組み換え技術により作成した組み換え蛋白質でもよい。比較的容易な操作で大量に製造できるという点では、組み換え蛋白質が好ましい。
天然由来の蛋白質を入手する場合には、その蛋白質を発現している細胞または組織から蛋白質の単離精製方法を適宜組み合わせて単離することができる。化学合成の蛋白質を入手する場合には、Fmoc法やtBoc法などの化学合成法に従って合成することができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して合成することもできる。
組み替え蛋白質として産生するには、その蛋白質をコードする塩基配列を有するDNAまたはその変異体または相同体を入手し、好適な発現系に導入することにより製造することができる。
発現ベクターとしては、好ましくは宿主細胞において自立複製可能であるか、宿主細胞の染色体中へ組込み可能であるものであればよく、遺伝子を発現できる位置にプロモーターを含有しているものが使用される。また、蛋白質をコードする遺伝子を有する形質転換体は、発現ベクターを宿主に導入することにより作製することができる。宿主は、細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞のいずれでもよく、また宿主への発現ベクターの導入は、各宿主に応じた従来公知の定法により行えばよい。遺伝子を有する形質転換体を培養し、培養物中に所望の蛋白質を生成蓄積させ、培養物より蛋白質を採取することにより組み換え蛋白質を単離することができる。
形質転換体が大腸菌等の原核生物、酵母菌等の真核生物である場合、これら微生物を培養する培地は、微生物が資化しうる炭素原、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば、天然培地でも合成培地でもよい。また、培養条件も微生物を培養するのに通常用いられる条件で行なえばよい。培養後、所望の蛋白質を単離精製するには、従来公知の蛋白質の単離精製法を用いればよい。
なお、上記(1)〜(2)に記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸の置換、欠損、挿入及び/又は付加を含むアミノ酸配列を有する蛋白質は、そのアミノ酸配列をコードするDNA配列の情報に基づいて従来公知の定法により製造することができる。すなわち、所望のアミノ酸配列を有する蛋白質をコードする塩基配列を有する変異遺伝子は、化学合成、遺伝子工学的手法、突然変異誘発などで作製することもできる。例えば、変位前のDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的手法を用いて行なうことができる。
ペプチドの合成は、通常のペプチド化学において用いられる方法に準じて行うことができる。例えば、Fmoc法やtBoc法等の化学合成法に従って合成することができる。また、各種の市販ペプチド合成機を利用して本発明のペプチドを合成することもできる。本発明によるペプチドは、HLA−A*0201に対する結合モチーフを有する。このようなHLA−A*0201に対する結合モチーフを有するペプチドの選択は、種々のペプチドとHLA抗原との結合親和性の算出を含め、従来公知の定法に基づいて行うことができる。
本発明によるDNAは、以下の通りである。
本発明のDNAは、上記に記載した蛋白質またはペプチドをコードするDNAであり、好ましくは、下記(a)、(b)、(c)のいずれかに記載のDNAである。
(a)上記(1)〜(2)のいずれかに記載の塩基配列を有するDNA。
(b)前記(a)のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、免疫誘導活性を有する蛋白質またはペプチドをコードするDNA。
(c)前記(a)または(b)のDNAの部分配列を有し、免疫誘導活性を有する蛋白質またはペプチドをコードするDNA。
なお、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするとは、DNAをプローブとして使用し、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、サザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるDNAの塩基配列を意味し、従来公知の定法によって同定でき、プローブとして使用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有するDNAが挙げられる。
DNAの取得方法は特に限定されず、上記(1)〜(2)のいずれかに記載の配列情報に基づいて適当なプローブやプライマーを調製し、それらを用いてヒトなどのcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより単離することができる。また、PCR法により取得することもでき、ヒト染色体DNA又はcDNAライブラリーを鋳型として使用し、所望の塩基配列を増幅できるように設計した1対のプライマーを用いてPCRを行い、次いで、増幅されたDNA断片を、大腸菌等の宿主で増幅可能な適切なベクター中にクローニングすることができる。
本発明による抗体及び細胞傷害性細胞は、以下の通りである。
本発明は、本発明の蛋白質またはペプチドの一部もしくは全部をエピトープとして認識する抗体、並びに、本発明の蛋白質またはペプチドを用いてインビトロ刺激により誘導された細胞傷害性T細胞にも関する。一般的には、細胞傷害性T細胞の方が抗体よりも強い抗腫瘍活性を示す。
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよく、また、その断片、更に、抗体の標識抗体でもよい。その作製は従来公知の定法により行うことができる。
ポリクローナル抗体は、本発明の蛋白質を抗原として哺乳動物を免疫感作して血液を採取し、採取した血液から抗体を分離精製することにより得られる。
哺乳動物としては、マウス、ハムスター、モルモット、ニワトリ、ラット、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシなどが挙げられ、例えば、抗原約0.05〜2mg程度を7〜30日間隔で2〜3回投与する。抗原は完全フロインドアジュバントや水酸化アルミニウム等のアジュパントを含有する適当な緩衝液に溶解して用い、投与経路としては、皮下投与、皮内投与、腹膜腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与などが挙げられる。免疫感作した哺
乳動物から血液を採取して、遠心分離、硫酸アンモニウムやポリエチレングリコールを用いた沈殿、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーなどによって分離精製することによりポリクローナル抗血清として、本発明の蛋白質を認識するポリクローナル抗体を得ることができる。
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマを調製して得ることができる。
例えば、抗体産生細胞とミエローマ細胞株との細胞融合によりハイブリドーマが得られる。抗体産生細胞としては、免疫された動物からの脾細胞、リンパ節細胞、Bリンパ球等を使用する。抗原としては、本発明の蛋白質またはペプチドを使用する。免疫動物としては、マウス、ラット等を用い、アジュバントと抗原の蛋白質またはペプチドとの懸濁液を動物の静脈、皮下、皮内、腹腔内に数回投与することによって動物を免疫する。免疫動物から抗体産生細胞として例えば脾細胞を取得し、これとミエローマ細胞とを従来公知の定法により融合してハイブリドーマを作製する。細胞融合に使用するミエローマ細胞株としては、例えばマウスではP3X63Ag8、P3U1株、Sp2/0株などが挙げられる。細胞融合に際しては、ポリエチレングリコール、センダイウイルスなどの融合促進剤を用い、細胞融合後のハイブリドーマの選択にはヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン培地などを使用する。細胞融合により得られるハイブリドーマは限界希釈法等によりクローニングする。酵素免疫測定法でスクリーニングを行うことにより、所望の蛋白質を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する細胞株を得ることができる。
ハイブリドーマから目的とするモノクローナル抗体を製造するには、細胞培養法や腹水形成法によりハイブリドーマを培養し、培養上清あるいは腹水からモノクローナル抗体を精製する。精製には、硫安分画、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて使用する。
本発明の抗体は標識して使用することもできる。例えば、酵素標識、蛍光標識、呈色物質による標識、アフィニティ標識、同位体標識などを挙げることができる。本発明の標識抗体を用いた蛋白質またはペプチドの分析には、酵素抗体法、免疫組織染色法、免疫ブロット法、直接蛍光抗体法、間接蛍光抗体法などが挙げられる。
本発明はまた、本発明の蛋白質またはペプシドを用いたインビトロ刺激により誘導された活性化T細胞に関する。例えば、末梢血リンパ球や腫瘍浸潤リンパ球を、本発明の蛋白質またはペプチドでインビトロ刺激すると、腫瘍反応性活性化T細胞が誘導され、この活性化されたT細胞は免疫療法に有効に用いることができる。また本発明の蛋白質またはペプチドを、強力な抗原提示細胞である樹状細胞にインビボまたはインビトロで発現させて、その抗原発現樹状細胞の投与により免疫誘導を行うこともできる。
本発明によるワクチンは、以下の通りである。
本発明の蛋白質、ペプチド、DNAは、抗原特異的に腎臓癌細胞株を傷害することのできるT細胞を誘導することができるので、腎臓癌の治療薬、予防薬として使用可能である。例えば、本発明のDNAを適当なベクターに組み込み、組換えDNAで形質転換されたBCG菌の細菌、または本発明のDNAをゲノムに組込まれたワクシニアウイルス等のウイルスをワクチンとする。アジュバントとしては、フロイントの不完全アジュバント、BCG、トレハロースダイマイコレート、リポ多糖、ミョウバンアジュバント、シリカアジュバント等が挙げられる。
本発明による腎臓癌診断用プローブ、診断薬は、以下の通りである。
本発明のDNAは、腎臓癌のDNAを取り出してその相同性を調べることで診断用プローブとして使用することができ、また、このプローブや上記抗体を使用し、腎臓癌診断薬として使用することもできる。
診断用プローブとしては、本発明の蛋白質をコードするDNAまたはRNAのアンチセンス鎖の全部または一部であり、プローブとして成立する程度の長さを有するものが好ましい。例えば、アンチセンス鎖を用いて検体から得られた腎臓癌抗原のmRNAを検出することにより診断が可能となる。検出に用いられる検体としては、被験者の腎臓等の細胞や、血液、尿、唾液、組織等の生検から得ることができるゲノムDNAや、RNAなどを挙げられる。
本発明の蛋白質やペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体等の免疫特異的な抗体は、腎臓癌の診断に利用することができる。
本発明の蛋白質、ペプチド、または抗体をそのまま、或いは医薬的に許容される担体や希釈剤や補助剤と共に、注射や経皮吸収などで投与可能である。
本発明による腎臓癌予防薬、治療薬は、以下の通りである。
本発明の蛋白質またはペプチドは、T細胞エピトープとして腎臓癌細胞特異的細胞傷害性T細胞を誘導できるので、腎臓癌の予防薬、治療薬として有用である。細胞傷害性T細胞の誘導活性を高めるための補助剤としては、サポニン系のQS−21、リポソーム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。また、レンチナン、シゾフィラン、ピシバーニールなどの免疫賦活剤を補助剤として用いることもできる。また、IL−2、IL−4、IL−12、IL−1、IL−6、TNF、IFNなどのT細胞の増殖、分化を増強するサイトカイン等も補助剤として用いることができる。
また、腎臓癌患者から採取した細胞、または、同一のHLAパプロタイプをもつ細胞に試験管内で抗原ペプチドを加え、抗原提示させた後、患者血管内に投与し、患者体内で効果的に細胞障害性T細胞を誘導することもできる。また、患者末梢血リンパ球に抗原ペプチドを加えて試験管内で培養することにより試験管内で細胞傷害性T細胞を誘導した後に患者血管内に戻すこともできる。
特異的抗腫瘍免疫療法の標的抗原となるためには、その抗原が細胞傷害性T細胞の認識抗原であることが必要である。本発明の抗原は欧米人に多く日本人にもHLA−A*2402の次に多いHLA−A*0201において、インビトロにおけるキラーT細胞誘導活性を増大させるので、本発明の抗原を体内に注入することにより、細胞傷害性T細胞を誘導活性化し抗腫瘍に用いられる。また、本発明の抗原で刺激するとインビトロにおいて活性化T細胞が誘導されるので、活性化されたT細胞を体内に注入することによる免疫療法にも有効に用いることができる。
本発明によるRNAiは、以下の通りである。
本発明の蛋白質の発現をRNAi現象により抑制できる核酸としては、siRNA、shRNA、またはそれらの発現ベクターなどが挙げられる。
本発明の抗腫瘍剤は、必要に応じて薬学的に許容可能な添加剤を配合することができる。薬学的に許容可能な添加剤としては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、キャリア、賦形剤、薬学的アジュバントなどが挙げられる。
また、本発明のペプチドは、ペプチド誘導体として提供してもよい。
この誘導体には、合成や精製を促進するための修飾、物理、化学的安定化を促進するための修飾、生体内の代謝に対する安定性と不安定性、条件付けの等の活性化修飾などを含む。
ペプチド誘導体におけるその他の修飾には、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、交差架橋、環化、ジスルフィド結合、脱メチル化、交差架橋共有結合形成、シスチン形成、ピログルタメート形成、ホルミル化、ガンマーカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質加水分解プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、脂質結合、硫酸化、セレノイル化などが含まれる。
具体的には、ペプチド誘導体は、本発明のペプチドの活性を破壊せず、またこれを含有する組成物に毒性を与えない範囲において、残基の側鎖またはN末端基またはC末端基として生じる機能性基として調製することができる。例えば、体液中でペプチドの残存を延長するポリエチレングリコール側鎖を含む誘導体、カルボキシル基の脂肪族エステル、アンモニアまたはアミンと反応することによるカルボキシル基のアミド、アシル部分と形成されるアミノ酸残基の遊離アミノ基のN−アシル誘導体またはアシル部分と形成される遊離の水酸基のO−アシル誘導体などが挙げられる。
また、薬理学的に許容し得る塩としてペプチドを提供してもよい。
この塩には、ポリペプチドのカルボキシル基の塩とアミノ基の酸付加塩の双方を含む。
カルボキシル基の塩は、例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄、亜鉛などの無機塩や、トリエタノールアミン、アルギニン、リジン、ピペリジン、プロカインなどのアミンを用いて形成された有機塩基との塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば塩酸や硫酸などの鉱酸との塩、酢酸やシュウ酸などの有機酸との塩が挙げられる。
本発明による腎臓癌発症素因評価方法は、以下の通りである。
被験者由来の生体試料において、本発明のペプチド関連遺伝子の発現レベルを求めるステップと、その発現レベルを正常対照レベルと比較し所定の閾値より高ければ、腎臓癌を発症する素因が高いと評価するステップとを有する。生体試料としては、腎臓細胞や血液などが挙げられ、その採取調製方法やペプチド関連遺伝子の発現レベルの測定方法や評価方法は、従来公知の定法が利用できる。
サイトカイン療法が有効であった進行性腎臓癌患者から採取した血清に、治療奏効に関わる抗体を想定し、SEREX法を用いて淡明細胞癌の発現ライブラリーをスクリーニングすることによって、免疫療法に有用な標的遺伝子を探索した。
なお、SEREX(serological analysis of cancer antigens by recombinant cDNA expression cloning)法とは、癌患者より摘出した癌組織から直接mRNAを抽出し、作製したcDNA発現ライブラリーから癌患者の血清を用いて癌抗原を検索する方法である。マイクロアレイ等とは異なった網羅的解析法であり、データベースにSEREX抗原として多くの遺伝子が登録されているが殆どは未評価で、腎臓癌での報告は極めて少ない。
具体的には、次のようにSEREX法を活用して免疫療法に有用な標的遺伝子を探索した。
E coli phage lysateにニトロセルロース(NC)膜を浸し、E coliやファージで発現している蛋白質をNC膜に吸着させた。そのNC膜を、TBSTで5倍に希釈した腎臓癌患者血清に浸して取り出し、血清中から大腸菌やファージと交差反応する抗体を除去して、SEREX法によるスクリーニングに使用した。
ライブラリーは、患者の腎癌細胞(淡明細胞癌)を細胞培養株にして樹立したもの(OCUU1)よりRNAを抽出し、mRNAを分離した後、λZAPにクローニングされた形のcDNAライブラリーを作製した(Stratagene社製、ZAP-cDNA synthesis kit、Gigapack III gold cloning kit)。
大腸菌細胞XL1-Blue MRF’をホストセルとして、10×14cmのNZYプレート1枚当たり19000プラークとなるようにcDNAライブラリーを播いた。42℃で4.5時間培養後、IPTGを含ませたNC膜をプレートに乗せ更に37℃で3.5時間培養し、ファージのプラークで蛋白質発現をさせた。4℃で一晩冷やし、NC膜をプレートより剥がして、プラークリフトを取った。
TBSTで洗浄の後1時間ブロッキングを行い、1次抗体として100倍希釈の上記処理済みの患者血清と室温で2時間反応させた。TBSTで洗浄のあと、2次抗体としてgoat anti-huma IgG (ALP-conjugated)と室温で1時間反応させた。TBST及びTBSで洗った後、BCIP及びNBTを用いて発色させた。プラークリフトを取った元のファージのプレートより、NC膜で陽性のシグナルが出ている場所と一致する場所のプラークを含む培地を打ち抜いて、SMバッファーに浮かべ、2次スクリーニングに供した。
2次スクリーニングとして、直径10cmのNZYプレートに1プレート当たり500個になるようにファージを播き、同様の操作でスクリーニングを行った。
3次スクリーニングで単一のクローンを得て、ファージよりin-vivo excisionを行い、プラスミド(pBluescript)に遺伝子がクローニングされている形にして、シーケンスを行った。
その結果、230万個のプラークをスクリーニングし(1次スクリーニングでは121枚のプレート)、重複も含めて43個の陽性クローンを得た。それらはchromatin modulator、ubiquitin関連、癌抑制遺伝子関連、mitosis関連、接着関連蛋白など15の遺伝子をコードしていた。その中にIFN治療有効例の血清とのみ反応する遺伝子蛋白が1つ、腎癌組織において正常腎組織とくらべ著しく発現の亢進している遺伝子が15種類得られた。
得られた遺伝子について、腎臓癌組織と正常腎臓組織との発現の比較、また、各組織における発現をRT−PCR法により調べた。
その結果、全ての臨床検体の腎臓癌組織において、正常腎臓組織と比べて著しく発現の亢進している遺伝子が2種類得られた。
図1は、その遺伝子のRT−PCRを示す。遺伝子36-6-1は、細胞性免疫にかかわる糖鎖結合蛋白質ガレクチン9(非特許文献7) の遺伝子と同一であり、もう一方の遺伝子113-3-1は、細胞接着のシグナリングに関するアダプター蛋白PINCH(非特許文献8)の遺伝子と同一であることが分かった。いずれも、遺伝子の配列は公知であるが、このペプチドは公知でなく、また用途も未知のものであった。
PCRのプライマーには、36-6-1のFW及びRVについて、それぞれ下記(3)及び(4)の配列を用い、変性94℃、30秒、アニーリング65℃、30秒、ポリメラゼーション72℃、 3分、30サイクル行った(TaKaRa社製、RNA PCR kit)。
ATGGCCTTCAGCGGTTCCCAG ‥‥‥(3)
CTATGTCTGCACATGGGTCAG ‥‥‥(4)
113-3-1のFW及びRVについては、それぞれ下記(5)及び(6)の配列を用い同様に、変性94℃、30秒、アニーリング55℃、30秒、ポリメラゼーション72℃、 3分、33サイクル行った。
AAGATAATTCGCAGTGATGTGAA ‥‥‥(5)
GTAGATCAAGACAAGTAATGTTG ‥‥‥(6)
図1では、腎臓癌の特定の培養細胞株のデーターを参考に示しているが、培養細胞株では、ある一定の条件で培養され続けることにより、遺伝子発現に選択がかかり、発現がなくなってしまう蛋白質もありうる。36-6-1は、そのような蛋白質、遺伝子であり、113-3-1は、培養の継続にも関わらず比較的いつまでも残る蛋白質、遺伝子と考えられる。
なお、図1では、正常部分と腎臓癌部分の遺伝子の発現を比較した5例のみの結果を示したが、症例を15例に増やして検討しても、36-6-1及び113-3-1も同様の結果であった。
なお、サイトカイン療法が有効であったことに関しては、36-6-1は、腎臓癌の多発性骨転移があり、インターフェロンαで完全に骨転移が消失した稀な症例の血清を用いてスクリーニングして得られたものである。113-3-1は、クローニングするのに用いた血清が、腎臓癌の肺転移がインターフェロンαで明らかに縮小した患者由来のものである。
この2種の遺伝子36-6-1(ガレクチン9)及び113-3-1(PINCH)に基づいて、それぞれペプチドを合成した。36-6-1由来のペプチドA02/10m-278(配列(1)、113-3-1由来のペプチドA02/10m-258(配列(2)を用いて正常人末梢血単核球(PBMC)より誘導した細胞傷害性T細胞について、HLA−A*0201拘束性と抗原特異的細胞傷害活性を調べた。なお、HLA−A*0201は、日本人で約20%の人が有し、欧米人でも多いタイプのHLAである。
その結果、図2(a)及び(b)に示すように、各抗原を発現している腎臓癌細胞株TUHR−10TKBにおいて、誘導された細胞傷害性T細胞により、HLA−A*0201拘束性に障害されることが明らかになった(10TKB:A*0201/A*2402,antigen(+)は腎臓癌、10RGB:A*0206/A*2402,antigen(+)は腎臓癌、NEC8:A*2402/A*2402,antigen(-)は精巣腫瘍、MCF7:A*0201/A*0201,antigen(-)は乳癌の培養細胞株)。
なお、HLA−A*0206を有する10RGB細胞に対する細胞傷害活性も認められるが、HLA−A*0201とHLA−A*0206は血清学的には区別のできない同一のタイプであり、これらのものに対しては同様に活性が認められても矛盾しない。
従来の細胞障害性T細胞を誘導するペプチドは、本発明のペプチドとは異なった方法でスクリーニングされた遺伝子由来であり、腎臓癌患者血液のリンパ球を刺激して細胞障害性T細胞の誘導を示していたが、本発明のペプチドでは、正常人のリンパ球から、高い活性の細胞障害性T細胞を誘導できた。
具体的には、次のように細胞傷害性T細胞を誘導した。
HLA−A*0201/A*3303の健常人の血液(少なくとも片方のアレルがHLA−A*0201)より、Ficoll-Paque PLUS(GE Healthcare Bio-Science AB)を使用してPBMCを分離した(responder細胞)。
抗原提示細胞は、EB virusにより形質変換させ不死化したB-cellであるRBRC-HEV0041(HLA-A*0201/A*2402)を用いた。
HLA−A*0201ドナーよりPBMCを分離し、24wellプレートに3 x 106/ml/well個ずつ分注し、ペプチドを5μM濃度で添加し、5日間培養した。
RBRC-HEV0041細胞を用いて刺激を入れた。すなわちRBRC-HEV0041細胞を回収し、セルをカウントし0.8 x 106 /mlの密度に調製した後、ペプチドを3μM濃度で添加した(ペプチドパルス)。増殖しないように放射線照射したRBRC-HEV0041細胞を500μLずつ、上述のresponder細胞に重層し共培養した。2日後より、2日毎にIL2を最終濃度20IU/mLになるように調製した。
その後、7〜14日間隔で、同様の刺激を4回(ここからの刺激より各wellのrespondor細胞を2x106/mL/well個に調製する)入れ、次いで、responder細胞中のCD8+T細胞を90%程度まで濃縮し、ペプチドでパルスしたRBRC-HEV0041細胞を用いて同様に刺激した。最終刺激の5〜6日後に、51Cr releasing assayにてCD8+T細胞のターゲット細胞に対する細胞傷害活性を測定した。
細胞傷害試験には、腫瘍細胞(4種類)をプレートより回収し、各々5×106cells/mlとして51Crを加え、インキュベーター内で培養し腫瘍細胞に51Crを取り込ませ、試料を調製した。
誘導したCTLであるエフェクター細胞を回収し、2×106cells/mlの細胞濃度の液を用いて96 wellのマイクロプレートに希釈系列を作った(2×106 cells/ml、その3/10及び1/10)。51Crでラベルした標的細胞100μlをエフェクター細胞に加え、4時間共培養した後、CTLの攻撃を受けて傷害された標的細胞から遊離される放射活性を求めた。
また、図2(a)及び(b)に示すように、各細胞障害性T細胞によるTUHR−10TKBに対する細胞傷害活性は、低いE:T比でも高い値であった。本発明の2つのペプチドによる正常人末梢血リンパ球より誘導した細胞障害性T細胞はいずれも、低いE:T比(10:1)で50%を超える程度の癌細胞の傷害活性が認められ、従来技術の報告(例えば、特許文献1においては、E:T比(40:1)で約20〜50%)などに比べても、著しく有効性の高いペプチドである。
このことは、これら抗原が、腎臓癌抗原として高い抗原性を有し、有用な免疫療法の標的であることを示すものである。なお、本発明の2つのペプチドは、併用も可能である。
また、本発明において同定された2種類の遺伝子は、図1にも示したように、腎臓癌細胞において高発現しているため、RT−PCR法を用いた循環血中の腎臓癌細胞の検出など、診断にも適用可能である。なお、細胞障害性T細胞を強く誘導しうる複数のペプチドの併用も可能である。
本発明の抗原蛋白、ペプチド、或いはそれらをコードするDNAは自己傷害性等の副作用が少なく優れた腎臓癌ワクチンとして使用することができる。また、抗体は診断薬として使用することができ、抗原により刺激、活性化された細胞障害性T細胞は抗癌剤として使用でき、本発明の抗原の発現を抑制するRNAiは、本発明の抗原を高発現している腎臓癌の治療に使用できる。また、本発明の探索方法は、癌免疫療法に有用な標的遺伝子の探索に有用である。
そのため、腎臓等の癌の治療や早期発見に寄与し、産業上有用である。

Claims (4)

  1. 下記(1)〜(2)のいずれかのアミノ酸配列から成り、進行性腎臓癌特異的細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有する
    ことを特徴とするペプチド。
    ILCEAHCLKV ‥‥‥(1)
    VIEGDVVSAL ‥‥‥(2)
  2. 請求項1に記載のペプチドが有効成分である
    ことを特徴とする進行性腎臓癌ワクチン。
  3. 請求項1に記載のペプチドを抗原として哺乳動物(ヒトを除外する)を免疫感作し、その哺乳動物(ヒトを除外する)から血液を採取し、採取した血液から抗体を分離精製する
    ことを特徴とするポリクローナル抗体の製造方法。
  4. 請求項1に記載のペプチドを抗原として哺乳動物(ヒトを除外する)を免疫感作し、その哺乳動物(ヒトを除外する)から抗体産生細胞を採取し、その抗体産生細胞とミエローマ細胞との細胞融合によりハイブリドーマを得て、そのハイブリドーマを培養し精製する
    ことを特徴とするモノクローナル抗体の製造方法。
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