以下、本発明にかかる画像加熱装置としての定着装置と、この定着装置を備えた画像形成装置とを図面に則して説明する。なお、本実施形態で取り上げる数値は、参考数値であって、本発明を限定するものではない。実施例は本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
<画像形成装置例>
図1は本実施例における画像形成装置100の概略構成を示す模式図である。この画像形成装置100は、インライン(タンデム)方式、中間転写方式の電子写真フルカラーレーザープリンタである。即ち、パソコン等のホスト装置200から制御回路部(制御手段)101に入力する電気的画像情報に従って記録材(以下、記録紙と記す)Pにフルカラー画像を形成することができる。
画像形成装置100の装置本体100A内には図面上において左から右に第1〜第4の4つの画像形成部U(UY、UM、UC、UK)が所定の間隔をおいて一列に水平に配置されている。各画像形成部Uは互いに形成する画像の色を異にするが共に同様の電子写真プロセス機構である。
即ち、各画像形成部Uは、矢印の反時計方向に所定の周速度で回転駆動される像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、ドラムと記す)1を有する。また、ドラム1に作用するプロセス手段としての、帯電器(帯電ローラ)2、現像器4、1次転写帯電器(1次転写ローラ)5、ドラムクリーナ6を有する。
帯電器2はドラム1の表面を所定の極性と電位に一様に帯電する。現像器4はドラム1に形成された静電潜像を現像剤(以下、トナーと記す)で現像する。1次転写帯電器5はドラム1に形成されたトナー画像を後述する転写ベルト8に1次転写する。ドラムクリーナ6は転写ベルト8に対するトナー画像転写後のドラム面を清掃する。
第1の画像形成部UYは現像器4にイエロー(Y)色のトナーが収容されており、ドラム1にY色のトナー画像を形成する。第2の画像形成部UMは現像器4にマゼンタ(M)色のトナーが収容されており、ドラム1にM色のトナー画像を形成する。第3の画像形成部UCは現像器4にシアン(C)色のトナーが収容されており、ドラム1にC色のトナー画像を形成する。第4の画像形成部UKは現像器4にブラック(K)色のトナーが収容されており、ドラム1にK色のトナー画像を形成する。
第1〜第4の画像形成部Uの上方部にはレーザースキャナ3が配設されている。レーザースキャナ3は各画像形成部Uのドラム1に画像情報に対応した露光を行い、ドラム1に静電潜像を形成する。図には省略したけれども、その内部には光源装置とポリゴンミラーが設けられており、光源装置から発せられたレーザー光をポリゴンミラーの回転により走査する。そして、その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、fθレンズにより各画像形成部Uのドラム1の母線上に集光して主走査露光する。これにより、各画像形成部Uのドラム1にそれぞれ画像信号に応じた潜像が形成される。
第1〜第4の画像形成部Uの下方部には中間転写ベルトユニット7が配設されている。このユニット7は、第1画像形成部UYの側の駆動ローラ9と、第4画像形成部UKの側のテンションローラ10と、駆動ローラ9よりも下位の2次転写対向ローラ11を有する。そして、これら3本のローラ9〜11間に懸回張設された可能性を有するエンドレスベルトである中間転写ベルト(以下、ベルトと記す)8を有する。
各画像形成部Uの1次転写帯電器5はベルト8の内側に配設されており、それぞれ、ベルト8の上行側ベルト部分を介して対応するドラム1の下面に当接している。各画像形成部Uにおいてドラム1とベルト8の接触部が1次転写部である。ベルト8は駆動ローラ9により矢印の時計方向にドラム1の回転周速度とほぼ同じ速度で回動される。2次転写対向ローラ11にはベルト8を介して2次転写ローラ12が当接している。ベルト8と2次転写ローラ12の接触部が2次転写部である。
駆動ローラ9のベルト懸回部にはベルトクリーナ13が配設されている。このクリーナ13はベルト8から記録紙Pに対するトナー画像の2次転写後のベルト面をクリーニングウエブ(不織布)13aで清掃する。中間転写ベルトユニット7の下方部には記録紙Pを収容した給紙カセット14および記録紙搬送機構15が配設されている。
フルカラー画像の形成動作は次のとおりである。画像形成装置100が画像形成動作することで、第1の画像形成部UYのドラム1にはフルカラー画像のY色成分に対応するY色トナー画像が形成される。そのトナー画像が1次転写部においてベルト8に1次転写される。第2の画像形成部UMのドラム1にはフルカラー画像のM色成分に対応するM色トナー画像が形成される。そのトナー画像が1次転写部においてベルト8にすでに転写されているY色トナー画像に重畳されて1次転写される。
第3の画像形成部UCのドラム1にはフルカラー画像のC色成分に対応するC色トナー画像が形成される。そのトナー画像が1次転写部においてベルト8にすでに転写されているY色+M色のトナー画像に重畳されて1次転写される。第4の画像形成部UKのドラム1にはフルカラー画像のK色成分に対応するK色トナー画像が形成される。そのトナー画像が1次転写部においてベルト8にすでに転写されているY色+M色+C色のトナー画像に重畳されて一次転写される。
各画像形成部Uのドラム1からベルト8へのトナー画像の1次転写は1次転写帯電器5に対してトナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加されることでなされる。このようにして、ベルト8にはY色+M色+C色+K色の4色フルカラーの未定着の合成カラートナー画像が形成される。合成カラートナー画像は、記録紙Pの4辺端部より一定の余白部を残して形成される。本実施例では、先端余白部は2〜3mm程度である。
一方、給紙カセット14から所定の制御タイミングで記録紙Pが一枚分離給送されて記録紙搬送機構15の紙パス15aから紙パス15bを通ってレジストローラ対16に送られる。そして、レジストローラ対16により所定の制御タイミングで2次転写部に導入される。これにより、記録紙Pが2次転写部で挟持搬送されていく過程で、ベルト8の4色重畳のトナー画像が記録紙Pの面に順次に一括して二次転写される。この2次転写は2次転写ローラ12に対してトナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加されることでなされる。
そして、トナー画像の2次転写を受けた記録紙Pは紙パス15cを通って画像加熱装置としての定着装置20に導入されて定着処理を受け、フルカラー画像形成物として紙パス15d、紙パス15e、排紙口16を通って排紙トレイ17へ排出される。
画像形成装置100は、上記のフルカラー画像形成に限られず、モノクロ画像などの所望の単色またはマルチカラーの画像を形成することもできる。この場合には、第1〜第4の画像形成部Uのうち、所望の単色またはマルチカラーの画像を形成するために必要とする画像形成部だけが画像形成動作する。不必要な画像形成部についてはドラム1の回転駆動はなされるが画像形成動作はしないように制御される。
両面印刷も可能である。この場合は、定着装置20から出た片面画像形成済みの記録紙Pはフラッパー18により進路が紙パス15fに変更されて反転パス(スイッチバックパス)15gを経由して両面パス(再搬送紙パス)15hに導入される。そして、再び紙パス15bに導入されて表裏反転状態で2次転写部に送られる。これにより、記録紙Pのもう一方の面に対するトナー画像の2次転写がなされる。以後は、片面印刷の場合と同様の経路、即ち、紙パス15c、定着装置20、紙パス15d、紙パス15e、排紙口16を通って両面画像形成物として排紙トレイ17へ排出される。
ここで、本実施例の画像形成装置100が備えている定着装置20は離型剤を含有したトナーを用いて記録材上に形成されたトナー画像を加熱、加圧することによりオイルレスで定着するようになっている。
画像形成に使用するトナーは、離型剤としてのパラフィン、もしくはポリオレフィンからなるワックスや、シリコーンオイルを含有(内包)している。具体的には、本実施例では粉砕トナーの内部にワックス成分と顔料が微分散されたトナーを用いている。なお、このようなワックス成分を含有した重合トナーを用いる構成としても構わない。以下の説明では、離型剤としてワックスを例に説明するが、上述したように離型剤としてシリコーンオイルを使用する場合であっても同様である。
<定着装置>
図2は本実施例における定着装置20の拡大横断面模式図である。図3はこの定着装置20の制御系統のブロック図である。この定着装置20は熱ローラ対方式、オイルレス定着方式であり、加熱回転体(本実施例では第1の回転体:加熱部材)としての定着ローラ21と加圧回転体(本実施例では第2の回転体:加圧部材)としての加圧ローラ22との圧接ローラ対を有する。このローラ対21・22により記録材上のトナー像(画像)を加熱するニップ部Nが形成されている。
定着ローラ21は表層に離型層を有する。離型層の厚さは10μm以上60μm以下であり、その硬度はショアー硬度計でD40以上D90以下である。離型層はフッ素樹脂などである。本実施例の定着ローラ21は、アルミニウム製の円筒芯金21aの外周面に厚さ3mmの弾性層21bを配置した直径60mmの中空ローラである。弾性層21bは、下層と、記録紙Pの画像面に接触させる耐熱弾性層(離型層)としての上層と、の複合層構造である。下層はHTV(高温加硫型)シリコンゴム層である。上層はこの下層の外周面に配置されており、RTV(室温加硫型)シリコンゴム層である。
定着ローラ21は両端部がそれぞれ定着装置筐体23の対向側板間にボールベアリング(不図示)を介して回転可能に水平に支持されて定置配設されている。定着ローラ21内の回転中心部には、定着ローラ21を内側から加熱するためのハロゲンヒータ21cが非回転に配置される。
加圧ローラ22はアルミニウム製の円筒芯金22aの外周面に厚さ1mmの弾性層22bを配置して直径60mmに構成されている。弾性層22bは、下層と、記録紙Pの裏面に接触させる上層と、の複合層構造である。下層はHTVシリコンゴム層である。上層はこの下層の外周面に配置されており、フッ素樹脂層である。
加圧ローラ22は定着ローラ21の下側において定着ローラ21に平行に配列させてあり、両端部がそれぞれ定着装置筐体23の対向側板間にボールベアリング(不図示)を介して回転可能に支持されて配設されている。加圧ローラ22内の回転中心部には、加圧ローラ22を内側から加熱するためのハロゲンヒータ22cが非回転に配置される。
加圧ローラ22の両端部のボールベアリングは定着装置筐体23の対向側板にそれぞれ定着ローラ21に向かう方向にスライド移動する移動自由度をもって配設されている。加圧ローラ22は付勢部材(不図示)により定着ローラ21の方向に移動付勢されている。
これにより、加圧ローラ22が定着ローラ21に対して弾性層21b・22bの弾性に抗して所定の押圧力で圧接してローラ21と22との間に記録紙(記録材)Pの搬送方向aに関して所定幅の定着ニップ部(加熱ニップ部)Nが形成されている。本実施例においては加圧ローラ22を総圧力約784N(約80kg)で定着ローラ21に圧接させている。
定着ローラ21及び加圧ローラ22は、それぞれの一方の軸端に固定された歯車が歯車機構によって相互に連結されており、制御回路部101で制御される駆動部102から駆動力の伝達を受ける。これにより、定着ローラ21及び加圧ローラ22が記録紙Pをニップ部Nにて挟持搬送する方向にそれぞれ矢印R21とR22の方向に所定の周速度で回転駆動される。
また、加圧ローラ22は、所定の制御条件下において、制御回路部101で制御される定着離間機構110により上記の付勢部材の付勢力に抗して下方へ移動されて定着ローラ21から離間された状態に保持される(加圧ローラ脱動作)。即ち、定着ニップ部Nの形成が解除された状態に保持される。定着離間機構110の具体例は図に省略したけれども、制御回路部101で制御されるカムとレバーを有する機構等を用いることができる。
定着ローラ21と加圧ローラ22のハロゲンヒータ21cと22cはそれぞれ電源部103、104(図3)から電力供給を受けて発熱する。この発熱により定着ローラ21と加圧ローラ22がそれぞれ内部加熱されて表面温度が上昇する。定着ローラ21と加圧ローラ22の表面にはそれぞれのローラの表面温度を検出するサーミスタ(温度検知手段)21dと22dが当接されて配設されている。そして、各サーミスタ21dと22dで検出される温度情報が制御回路部101の温度調整回路部105と106に入力する。
温度調整回路部105はサーミスタ21dによって検出される定着ローラ21の表面温度が所定の温度(本実施例では約165℃)に収束して温調されるように電源部103からハロゲンヒータ21cへの供給電力を調整する。温度調整回路部106はサーミスタ22dによって検出される加圧ローラ22の表面温度が所定の温度(本実施例では約140℃)に収束して温調されるように電源部104からハロゲンヒータ22cへの供給電力を調整する。
加圧ローラ22が定着ローラ21に当接され(加圧ローラ着動作)、定着ローラ21と加圧ローラ22が駆動され、またそれぞれの表面温度が所定の温度に立ち上げられて温調される。この状態において、画像形成部側から未定着トナー画像(未加熱トナー像)Tが形成された記録紙Pが定着装置20に導入される。24は入口側の記録紙ガイド板である。
記録紙Pは未定着トナー画像担持面側が定着ローラ21に対面してニップ部Nに進入して挟持搬送され、ニップ部Nにおいて未定着トナー画像Tが記録紙Pの面に固着画像として熱と圧力で定着される。ニップ部Nを通った記録紙Pは定着ローラ21から分離されて、出口側の記録紙ガイド板25に沿って定着装置20から出る。
上述した層構成の定着ローラ21と加圧ローラ22とを組み合わせることによって、シャープメルトトナーに対する離型性をより一層高めている。また、両面画像を定着させるために、定着ローラ21だけでなく加圧ローラ22の表面にも、トナー離型効果の高いRTVまたはLTV(低温加硫型)シリコンゴムを用いている。
<紙コバ傷>
定着ローラ21の表面改質の目的に関わる紙コバ傷について説明する。記録紙Pのコバ部では紙を切断するときに発生するバリがある。そのため、コバ部に対応する定着ローラ領域ではコバ部以外の領域よりも記録紙Pによるアタックがより大きく、この領域の定着ローラ21の表面粗さRzは1.0μm〜2.0μm程度まで徐々に大きくなっていく。紙のバリは、大判からの裁断工程で、裁断する刃が磨耗して切れ味が低下したときなどに発生し易い。コバ部以外の領域では、初期状態からの表面粗さ変化量が少なく、定着ローラ長手方向でコバ部と非コバ部での粗さの差が生じることになる。
次に、定着ローラ21の表面状態と画像上のグロスムラに関して説明する。未定着のトナー画像を記録材Pに定着する時、定着装置20は、記録材Pに圧力及び熱を与える。このとき、定着ローラ21の微小な表面状態が定着後のトナー画像の表面に転写される。定着ローラ上の表面状態が異なると、それに対応してトナー画像上に表面状態の差が生じ、その結果、画像上の光沢ムラ(グロスムラ)が生じる。
従って、特に、高画質を要求される高光沢のコート紙等に画像を定着するような場合には、定着ローラ21のコバ部に対応する位置(荒れた位置)に低光沢のスジが付くことで、画像上にグロスムラが生じる。
そこで、本実施例の定着装置20においては、摺擦材を備えた摺擦部材としての摺擦回転体であるリフレッシュローラ51を具備させている。このリフレッシュローラ51を加熱回転体としての定着ローラ21に対し当接させて定着ローラ21を摺擦することによりその表面性を実質回復させる表面改質動作モード(摺擦処理:リフレッシュ動作)を実行させる。
なお、本例では、リフレッシュローラによる摺擦処理により、定着ローラの表面性を未使用状態にまで十分に回復させるレベルだけでなく、上述したコバ傷が画像上において目立たなくなる程度に定着ローラの表面性を良化(回復)させるレベルでも良い。つまり、定着ローラの表面性を実質回復させるとは、定着ローラの表面性がこのようなレベルの範囲内に維持されるように定着ローラの表面性を改善させることを言う。
即ち、リフレッシュローラ51は定着ローラ21の表面を摺擦することによりその表面性を回復させる部材であり、記録紙Pの通過によって荒れた定着ローラ21の表面と、荒れていない表面の両方に対して細かい摺擦傷を多数付ける。これにより、画像上のグロス差を視認できないようにする。
リフレッシュローラ51は、定着ローラ21の表面を実質的に削り取らずに摺擦傷を付ける。リフレッシュローラ51を用いて定着ローラ21の表面を所望のレベルで荒らして、表面状態を均す(均一化する)ことで、画像上のグロス差を解消できるようになっている。つまり、リフレッシュローラ51による摺擦で定着ローラ21の表面に細かい摺擦傷が重ねられることで、定着ローラ表層の荒れ方の差により生じる画像光沢ムラが画像上に見えにくくなる。
より具体的には、例えば、表層にフッ素樹脂等の離型層を備えた定着ローラ21では、荒れていない定着ローラ21の表面の表面粗さRzが0.1μm〜0.3μm程度、荒れた表面(方向性の無い凹部)の表面粗さRzが0.5μm〜2.0μm程度である。
これに対して、本実施例では、リフレッシュローラ51による摺擦動作により、定着ローラ21に、表面粗さRzが0.5μm以上2.0μm以下となるような摺擦傷(方向性のある細い凹部)を定着ローラ21の回転方向に沿って付ける。しかも、摺擦材51A(図4)による幅が10μm以下とされる摺擦傷(凹部)が回転軸線方向に100μmあたり10本以上形成されるようにする。これにより、定着ローラ21の表面は修復される。
また、リフレッシュローラ51に対してエアーを吹き付けてリフレッシュローラ51の表面粗さを維持するリフレッシュクリーニングモード(クリーニング処理)を備えている。これにより、上記のリフレッシュローラ51による定着ローラ21の表面改質動作モードを複数回繰り返した後にも、リフレッシュローラ表層の摺擦材の間に異物が堆積することが緩和されて、リフレッシュローラ表層の粗さを維持することが可能となる。
従って、安定したリフレッシュ動作が可能になり、長期にわたる定着ローラ21の表面性維持が可能となる。また、リフレッシュローラ51や後述するリフレッシュローラ清掃部材(摺擦部材清掃部材)80(図16)のメンテナンス間隔が大幅に削減可能となる。
<摺擦回転体>
本実施例における摺擦回転体としてのリフレッシュローラ51の構成を説明する。図4はリフレッシュローラ51の構成模式図である。リフレッシュローラ51は、外径12mmのSUS304(ステンレススチール)の芯金(基材)51a上に、接着層(中間層)51bを介して、摺擦材53Aとしての砥粒を密に接着して形成した摺擦層(表層)51cを設けたものである。
リフレッシュローラ51の表層である摺擦層51cを構成している摺擦材51Aとしての砥粒の大きさ(粒径)は、5μm以上20μm以下であることが好ましい。砥粒51Aは表層51cに密に設けられる。従って、リフレッシュローラ51の表層51cは、粒径が5μm以上20μm以下の粒子で構成され、5μm以上20μm以下の厚さを有する層であることが好ましい。この範囲未満であると、リフレッシュローラ51による摺擦効果が低減してしまう。逆にこの範囲を超えると、定着ローラ21の表面に、画像上に影響する程度の傷を付けてしまう虞がある。
砥粒51Aとしては、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化チタン、ジルコニア、リチウムシリケート、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化鉄、酸化クロム、酸化アンチモン、ダイヤモンド等が挙げられる。及びこれらの混合物の何れかの砥粒を接着層51bで接着処理したもの等が挙げられる。
本実施例では摺擦材51Aとして、平均粒径が約12μmであるホワイトアランダム(WA)を用いた。アルミナ(酸化アルミニウム)系(「アランダム」又は「モランダム」とも称される)は最も幅広く用いられる砥粒で、定着ローラ21に比べて十分硬度が高く、鋭角形状のため切削性に優れており、摺擦材51Aとして好適である。ここで、砥粒の粒径は、走査型電子顕微鏡S−4500(日立製作所(株)製)を用いてランダムに100個以上抽出した砥粒を、画像処理解析装置Luzex3(ニレコ(株)製)を用いて個数平均粒径を算出することにより得ることができる。
リフレッシュローラ51は芯金51aの長手方向(回転軸線方向)両端部に設けられた支持部材52によって回転自在に支持されている。そして、その支持部材52が制御回路部101で制御される離接機構53による揺動されることで定着ローラ21に対して当接・離間可能に設置されている。また、リフレッシュローラ51は、制御回路部101で制御される駆動手段としてのモータM51によって回転駆動可能とされている。
リフレッシュローラ51は、定着ローラ21に対する当接、回転動作時には、長手方向両端部の支持部材52が付勢手段としての加圧バネ(不図示)によって本実施例においては総圧30Nで付勢される。リフレッシュローラ51の当接圧力は、50g/cm以上150g/cm以下の範囲が好ましい。これによって、リフレッシュローラ51は、定着ローラ21に加圧されてリフレッシュローラ51と定着ローラ21との間にそれぞれの表面移動方向において所定幅の摺擦ニップ(当接ニップ)N51が形成される。
リフレッシュローラ51は、定着ローラ21との摺擦ニップN51において、リフレッシュローラ51と定着ローラ21のそれぞれの表面移動方向が順方向、逆方向のいずれになるように回転させてもよい。好ましくは、定着ローラ21とリフレッシュローラ51との間には周速差が設けられる。
例えば、リフレッシュローラ51を定着ローラ21に対してカウンター方向(逆方向)に70%の周速差(周速比率)で回転させるとは、次のようなことを意味する。例えば、定着ローラ21の周速度が220mm/secの場合に、リフレッシュローラ51を定着ローラ21との摺擦ニップN51にてカウンター方向に移動するように66mm/secで回転させることを意味する。
定着ローラ21の周速度をV[mm/sec]、リフレッシュローラ51の周速度をv[mm/sec]とする。又、定着ローラ21の周速度Vを正の値として、リフレッシュローラ51の周速度vは、定着ローラ21とリフレッシュローラ51との摺擦ニップN51で表面移動方向が定着ローラ21と同方向である場合は正の値、逆方向の場合は負の値とする。このとき、(|V−v|/V)×100で計算される値を上記周速比率とする。
又、リフレッシュローラ51の当接圧力[g/cm]は、面圧力測定分布システムI−S CAN(ニッタ(株)製)により当接圧を測定し、これを当接幅(回転軸線方向)で割ることにより得ることができる。なお、測定は、定着ローラ21、リフレッシュローラ51を共に停止させた状態で行った。
リフレッシュローラ51の定着ローラ21に対する周速差(周速比率)は、表面移動方向が摺擦ニップN51にて定着ローラ21と逆方向であれば50%以上100%以下の範囲が好ましい。一方、リフレッシュローラ51の定着ローラ21に対する周速差は、表面移動方向が摺擦ニップN51にて定着ローラ21と同一方向であれば250%以上300%以下の範囲が好ましい。リフレッシュローラ51の定着ローラ21に対する摺擦力は、リフレッシュローラ51と定着ローラ21との周速差が重要であると考えられ、所望の周速差であればリフレッシュローラ51の回転方向はどちらでも構わない。
上記のように、リフレッシュローラ51は、基材51aと、中間層51bと、表層51cとを含む少なくとも3層以上の層構成を有する。表層51cは摺擦材51Aとしての砥粒を有する。中間層51bは弾性層である。本実施例では、中間層51bである接着層(接着剤層)が弾性層として機能する。
リフレッシュローラ51は表層51cである摺擦材層によって、定着ローラ21の表面を均一に摺擦することができると共に、次のような効果を奏し得る。即ち、中間層51bが弾性層であるために、摺擦動作中にリフレッシュローラ51と定着ローラ21との間に異物が混入したときでも、弾性層51bで異物を包み込む効果がある。これにより、紙粉や、外部から混入する異物等により定着ローラ21上に突発性の鋭い傷が生じることを抑制する働きがある。
これにより、この傷が画像に転写されることで、画像上に顕在化して画像不良となることを防止することができる。又、弾性層51bによって、リフレッシュローラ51と定着ローラ21との摺擦ニップN51を広く設けることができ、より良好な摺擦特性を維持することができる。本実施例では、リフレッシュローラ51の表層51cの微小硬度は0.07GPaであった。
リフレッシュローラ51の表層51cの微小硬度は、0.03GPa以上1.0GPa以下とされる。微小硬度が0.03GPa〜1.0GPaの場合は、ニップ部N51で砥粒51Aが接着剤層51bに埋没しないために、良好な耐久特性を得ることができた。一方、微小硬度が2.0GPa、3.0GPaの場合には、リフレッシュローラ51と定着ローラ21とのニップ部N51に耐久によって混入する異物(例えば、紙紛や現像キャリア等)による傷が定着ローラ21上に発生した。
これにより、画像上で画像スジが顕在化した。この結果から、リフレッシュローラ51の表層の微小硬度[GPa]は0.03以上1.0以下であることが望ましい。
弾性層51bの材料(弾性材ゴム、エラストマー)としては、例えば、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴムが挙げられる。また、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンが挙げられる。
また、エピクロロヒドリン系ゴム、シリコーン、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系が上げられる。また、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等が挙げられる。
そして、上記のような材料群より選ばれる1種類或いは2種類以上を使用することができる。但し、上記材料に限定されるものではない。また、弾性層51bは、厚さが20μm以上60μm以下で、JIS−A硬度(1kg加重)が40°以上70°以下の弾性体から成る層であることが好ましい。これにより、耐久で定着ローラ21とリフレッシュローラ51との間に混入する異物を包み込んで、定着ローラ21の表面上の傷の発生を防ぐことができる。本実施例では、JIS−A硬度が40°のシリコーンゴムを弾性層51bとして用いた。又、本実施例では、この弾性層51bの厚さは40μmとした。
ここで、リフレッシュローラ51の表層の微小硬度の測定には、図5の(a)のようなHYSIT RON社のTriboScopeを用いた。微小硬度を測定する測定端子には、Berk ovichチップ(142.3°)を用いた。測定の加重は、50μNとした。5秒間で指定した加重まで加圧し、5秒間かけて加重を解除した。図5の(b)には、加重を50μNとしたときの、加重曲線を示す。このときの硬度Hは、以下のように求める。
H=Pmax/A
ここでPmaxは、プローブにかかる最大応力、Aはプローブの接触面積である。接触面積Aは、ここで用いたプローブの場合、
A=24.5hc2
である。hcはプローブのリフレッシュローラへの侵入量である。本実施例のリフレッシュローラ51を測定したところ、加重50μNのときに、硬度H=0.07GPaであった。
定着ローラ21へのリフレッシュローラ51の荷重をP[N]、定着ローラ21の周速をV[mm/sec]、リフレッシュローラ51の周速をv[mm/sec]、定着ローラ21の微小硬度をH[GPa]、砥粒の半頂角をθ[°]とする。このとき、
7×10-3≦(P/πHtanθ)・(|V−v|/V)≦68×10-3
を満たすことが好ましい。
これにより、リフレッシュローラ51の摺擦動作により、定着ローラ21は、表面粗さRzが0.5μm以上2.0μm以下となり、且つ、砥粒による幅が10μm以下とされる凹部が回転軸線方向において100μmあたり10本以上形成される。
<エアー清掃部材>
リフレッシュローラ51の表面粗さを維持するためにリフレッシュローラ51に対してエアーを吹き付けてクリーニングするエアーを吹き付け機構としてのエアー清掃部材50について説明する。本実施例において、エアー清掃部材50はリフレッシュローラ51にエアーを吹き付けるためのエアーノズル(穴)54を具備させたエアーダクト(中空パイプ状部材)である。
このエアー清掃部材50は、リフレッシュローラ51の長さにほぼ対応した長さとしてあり、長手に沿って所定の一定間隔でエアー吹き出し口としてのエアーノズル(穴)54を一列に設けてある(図6)。即ち、リフレッシュローラ51の軸線方向の異なる位置に向けてエアーを吹き付ける複数の開口部であるエアーノズル54を備えている。
エアー清掃部材50は定着ローラ21に当接された状態のリフレッシュローラ51に対してエアーノズル54側をリフレッシュローラ51に対向させてリフレッシュローラ51に近接させて平行に配設されている。このエアー清掃部材50の一方端側から中空内に高圧エアーが供給されることにより各エアーノズル54からリフレッシュローラ51に向ってエアーが噴出してリフレッシュローラ51の全長域に対するエアーを吹き付けがなされる。図2においてAはエアー清掃部材50からリフレッシュローラ51への噴出エアーを示している。
エアー吹き付けのために、高圧エアーの供給が必要となるが、吹き付け圧力や動作が満足できれば、エアーポンプの種類は問わない。例えば、大型のコンプレッサを使用した集中エアー配管を利用することや、空気や窒素のボンベを利用して高圧エアーを供給させてもよい。本実施例では、制御回路部101で制御されるエアーポンプ58と電磁弁56を組み合わせ、吹き出し口には一定間隔の穴を空けたエアーノズル54を用い、エアー圧力が大きくなる構成にした。
図6はエアー清掃部材50とエアーポンプ58との連絡系統図である。初めにエアーポンプ58で高圧のエアーを発生させ、それをエアー配管57から電磁弁56に導く。電磁弁56はエアーポンプ58からエアー清掃部材50への高圧エアーのON/OFFを制御するスイッチであり、エアー清掃部材50のノズル54からのエアーの噴出をON/OFF制御できる。
電磁弁56からエアー配管55を通り、定着装置20内にエアーが導入され、エアー清掃部材50の内部に均等に圧力がかかる。そして、各エアーノズル54からエアーが噴射されることになる。図7の模式図のように各エアーノズル54の穴の直径mは1mmであり、穴同士の間隔nは5mmに設定した。リフレッシュローラ51の長手方向330mmの幅に均一の間隔で一列に配置されたエアーノズル54の数は67個である。
エアーポンプ58は0.15MPaに設定することにより、電磁弁56の閉口時に配管57の内圧が0.15MPaとなる。配管57の内圧が0.15MPaに達した時点で、電磁弁56を開口する。高圧のエアーは減衰しながら配管55を通過し、エアー清掃部材50に到達し、エアーノズル54から放出される。このとき、1つのエアーノズル54からリフレッシュローラ51の表面に吹き付けられるエアー圧力は5kPaである。
配管55は、150℃程度の高温になることから耐熱性のあるフッ素ゴム製の内径φ8、長さ800mmを使用し、配管57は、常温で使用するのでポリウレタン製の内径φ8、長さ1500mmを使用している。リフレッシュローラ51とエアーノズル54の開口部とのギャップl(図8)は3mmとし、風圧測定も3mmのギャップを設けおこなっている。
エアーノズル54の数は多いほうが長手を均一に清掃可能だが、ピーク圧力が減少してしまう。この場合には、元のエアーポンプ58の圧力を高くするか、一度に噴射するノズル54の数を減らすなどの対策をとる。
<リフレッシュ動作>
リフレッシュ動作(表面改質動作モード)は、定着ローラ21が回転駆動されている状態において、離接機構53によりリフレッシュローラ51を着動作させる。これにより、リフレッシュローラ51が定着ローラ21に加圧当接して摺擦ニップN51が形成される。また、リフレッシュローラ51が定着ローラ21に対して周度差をもって回転駆動される。
本実施例においてはリフレッシュローラ51は摺擦ニップN51において定着ローラ21と同方向に周速差をもって回転駆動される。具体的には、定着ローラ21の周速度が100mm/s、リフレッシュローラ51の周速度が400mm/sである。定着ローラ21の表面に対してリフレッシュローラ51が300mm/sの速度差を持って摺擦することで定着ローラ21の表面を改質している。
リフレッシュローラ51は表面改質動作を行うことで、定着ローラ21の表層を微量に研磨するために、PFAのカスや、残留トナー、紙粉などの異物が砥粒51Aの間に堆積する。このために、そのままだと砥粒51Aの粗さが低下していき、リフレッシュローラ51の定着ローラ21に対する表面改質動作の能力が低下する。
そこで、前記のようにエアー清掃部材50のエアーノズル54からリフレッシュローラ51へのエアーの噴射(リフレッシュクリーニングモード)により砥粒間の異物を取り除くことで、リフレッシュローラ51の表面の粗さを保つようにしている。このため、定着ローラ21の表面改質の能力を持続することができる。
ただし、エアー吹き付けでのリフレッシュローラ51の清掃能力は、ある程度のエアー圧力が加わらなければ砥粒の間に詰まった異物を取り除くことができない。実験時の測定の結果では、図9に示すように、リフレッシュローラ表面に吹き付けられる風圧が5kPa以上のところで、清掃能力が発揮され、定着ローラ21のコバ部に付いた紙コバ傷の粗さを解消することができた。即ち、エアーのリフレッシュローラ51に対する風圧の最大値が5kPaを上回ることが好ましい。この効果を出すために必要なリフレッシュローラ51の粗さRzは、約4〜5μm以上であった。
図10はエアー圧を変えた際にリフレッシュローラ51の粗さの推移がどのように変化するかをプロットした図である。この試験は、一定の圧力のエアーを吹き付けながら定着ローラ21に対しての表面改質動作を連続で行った場合の、リフレッシュローラ51の表面粗さRzの推移を計測した。この試験でも、本条件での定着ローラ21のコバ傷解消に必要なリフレッシュローラ51の粗さを保つために、エアーの圧力は5kPa必要ということがわかる。
ところで、プリント中、即ち定着ニップ部Nに記録紙Pが存在するタイミングにおいては、リフレッシュ動作を行った場合、定着ローラ表層にオフセットしたトナーがリフレッシュローラ51の表層51cに付着するリスクが考えられる。このため、徐々にトナーがリフレッシュローラ51に付着すると、エアー清掃が困難な程度の粘性があるために、砥粒の間がトナーで詰まり、表面粗さの低下がみられることがある。
このため、画像形成装置のプリント中(画像形成動作時)にはリフレッシュローラ51が定着ローラ21に対して離間していることが望ましい。即ち、ニップ部Nに記録紙Pが存在するタイミングには、表面改質動作モードおよびリフレッシュクリーニングモードを実行しないことが望ましい。
本実施例では、定着ローラ21に対するリフレッシュ動作は、プリントジョブ終了時に、記録紙Pの通紙枚数の累積カウントが所定枚数以上のときに実行される。また、このリフレッシュ動作中にリフレッシュローラのエアー清掃を同時に行った。即ち、制御回路部101は、リフレッシュローラ51による定着ローラ21の摺擦処理とエアー清掃部材50によるリフレッシュローラ51のクリーニング処理を並行して実行させる。
これは、前述のように、紙コバ傷とは、複数の記録紙の紙バリ部が連続して定着ローラ21の表層にアタックすることによって発生する問題である。同じ種類の記録紙であれば、通紙枚数が一定枚数を超えると画像の光沢差が許容レベルを超えてしまうことによる。そのためプリントジョブの終了時に、通紙枚数の累積カウント枚数を判定し、所定の閾値、本実施例では500カウントを超えた場合にリフレッシュ動作を開始する。
図11の制御フロー図に沿って説明すると、制御回路部101は、プリントジョブの終了時ごとに(ステップS1)、通紙枚数の累積カウントが500枚以上か判定を行う(S2)。500枚に満たない場合には、画像形成装置100に通常のプリント終了時動作(後回転動作)を実行(S3)してから装置動作を停止させて、次のプリントジョブ信号が入力するまで装置をスタンバイ状態(S4)にする。定着装置20については、ローラ駆動を停止させ、加圧ローラ22の脱動作を行い、ローラ21、22のスタンバイ温調に移行する。
カウントが500以上の場合にはリフレッシュ動作を開始する(S5)。まず、定着ローラ21の駆動を停止し(S6)、加圧ローラ22を定着ローラ21に対して脱する(S7)。次にリフレッシュローラ51が定着ローラ21に対して着動作を行い(S8)、エアー清掃部材50のエアーノズル54からのエアー噴射を開始する(S9)。そして、定着ローラ21の駆動と、リフレッシュローラ51の駆動を開始する(S10)。
これにより、定着ローラ21に対する表面改質動作モードとリフレッシュローラ51に対するリフレッシュクリーニングモードが同時に実行される。即ち、制御回路部101は、リフレッシュローラ51による定着ローラ21の摺擦処理とエアー清掃部材50によるリフレッシュローラ51のクリーニング処理を並行して実行させる。
20秒間リフレッシュを行った後に(S11)、リフレッシュローラ51の脱動作(S12)、定着ローラ21とリフレッシュローラ51の駆動停止(S13)、エアー噴射停止(S14)の順に動作を行い、リフレッシュ作業を停止する。そして、通紙カウントをクリアし(S15)、リフレッシュ動作終了(S15)となる。その後に、画像形成装置100に通常のプリント終了時動作(後回転動作)を実行(S3)してから装置動作を停止させて、次のプリントジョブ信号が入力するまで装置をスタンバイ状態(S4)にする。定着装置20については、ローラ21、22のスタンバイ温調に移行する。
また、使用したエアーポンプ58の特性で、エアーを吹き続けると、圧力が低下する問題を解決するため、エアーの吹き付けを間欠動作にすることで、圧力の高いエアーを噴射可能にしている。間欠吹付け動作に関しては、電磁弁56のON・OFFにより制御をおこなう。本実施例ではエアーの吹き付けは図12のタイミングチャートに示したように、約2秒解放、約2秒停止の繰り返し動作を行った。
即ち、エアー清掃部材(エアー吹き付け機構)50はリフレッシュクリーニングモードの実行時におけるリフレッシュローラ51に対してエアーの吹き付けを断続的に行うことを特徴としている。
表1は本実施例1と、従来例を含めた様々な比較例との効果の対比表である。記録紙PはInternational Paper社のハンマーミル75gsmのLTRサイズを用いた。この記録紙Pを用いた連続通紙を行った後に、各枚数のポイントで、高グロスの記録紙(例えば、OKトップコート157gsm、330×483mm(13×19インチ))を用いて、Bk単色画像を通紙した。その際の、LTRサイズ紙幅の光沢帯(紙コバ傷)の画像レベルを目視評価したものである。これを次の三段階の指標で評価した。
○:黒ベタ部ではほとんど認識できないレベル
△:注意すると認識可能だが、自然画だと問題にならないレベル
×:画像上に光沢帯として認識できるレベル
本実施例1:100万枚の通紙でも、コバ傷の発生は無かった。
比較例1:特許文献2の清掃ローラ(外径8mmのSUS(ステンレススチール)製のローラ(芯金)の表層に、弾性層として厚さ1mmのシリコンゴム層を有する清掃ローラを用いる。これをリフレッシュローラに対して当接させ、従動回転可能に配置した場合の事例を比較した。10万枚未満の通紙までは、良好だが、それ以上の通紙ではリフレッシュローラの異物が取りきれずにコバ傷が発生した。なお、10万枚毎にリフレッシュローラと清掃ローラの定期清掃を行うことで、100万枚まで良好な画像を得ることができた。
比較例2:リフレッシュローラ51に対して、約100μm太さの耐熱繊維を約5本/1mmの密度で先端が接触するように配置した。5万枚程度を過ぎたところで、リフレッシュローラ51の表層51cの砥粒削れや脱落が発生し、定着ローラ上の荒れムラが発生してしまった。
比較例3:5000枚毎の定期清掃を実施した。清掃はエタノールを含ませた不織布で表面の異物をふき取る作業を繰り返し行った。リフレッシュローラ表面は清掃を行うと、元の粗さに戻るため、定着ローラの表面改質動作の効果も持続し、良好な画像が得られた。しかし、この場合は5000枚毎にジョブを中断して清掃メンテが必要となるため、本実施例の方が優れている。
比較例4:清掃部材を用いない場合の比較を行った。5000枚程度で紙コバ傷が目立つようになり、10万枚程度で画像キズとなった。
以上のように、定着ローラ表面改質動作中にリフレッシュローラ表層をエアーで圧力を加えて清掃することで、リフレッシュローラ表層の表面粗さを高く保つことが可能となり、画像の品質を保ちながら、メンテ間隔の短縮が可能となった。即ち、非接触のエアー清掃機構を設けることで、汚れが堆積せずに、メンテナンスフリーの構成を実現できる。さらに定着部材の表面性を保つことで、成果物の品位の向上が期待でき、安定した連続プリント動作を可能にする。
上記においては、リフレッシュ動作中にリフレッシュローラのエアー清掃を同時に行った。これに限らず、リフレッシュローラ51の駆動が定着ローラ21の駆動に連動せずにリフレッシュローラ51の面にエアーが噴射可能であれば、スタンバイ動作中やプリント動作中にもリフレッシュローラ51のエアー清掃動作を行ってもよい。
平均1000枚の通紙ジョブが、連続で繰り返す条件での耐久試験を行い、その際の効果の計測を行った。このとき、各ジョブ終了後に一律60秒間のエアー噴射を行う。数回のリフレッシュ動作で砥粒の間に異物が詰まったリフレッシュローラ51でも、エアーの噴射を行うことで、表層51cの粗さの回復が実施例1と同様に見られ、定着ローラ21の紙コバ傷の解消能力が100万枚の通紙でも持続し、効果がみられた。
この際、リフレッシュローラ51の駆動速度は問わないが、エアー清掃中は回転していることが望ましい。例えば、エアーの噴射位置をリフレッシュローラ51の中心軸からずらして噴射することで、エアー圧によりリフレッシュローラ51が回転する構成でも良い。
<移動機構>
エアーポンプ58が供給できるエアー流量には限界があり、エアーノズル54からのエアー流量がエアーポンプ58の能力を超えてしまうと、風圧が低下し、清掃不良が発生する。エアー流量を節約するために、エアーノズル54の個数を減らしノズル間ピッチn(図7)を拡大すると、エアー清掃部材50のエアーノズル54の直下の清掃能力は高いが、隣接するエアーノズル54との中間地点の清掃能力は低い。そのため、その中間地点に対応するリフレッシュローラ部分は汚れが吹き溜まりやすくなり、清掃にムラができる。これにより、定着ローラ21の表面粗さにムラができ画像弊害となる。
そこで、エアー清掃部材50をリフレッシュローラ51の長手方向に穴ピッチ分のストロークで往復移動かしながら、エアー吹き付けをおこなう移動機構(以下、スライド駆動機構と記す)を用いる。即ち、スライド駆動機構はエアー清掃部材50をリフレッシュローラ51の軸線方向に往復移動させる。スライド駆動機構は一定の速度と所定のストロークをもってエアー清掃部材50を往復移動させる。この構成によりリフレッシュローラ51の全長域を均一に清掃することができ、定着ローラ21の表面粗さのムラに起因する画像弊害を解消することができる。
図13に本実施例におけるエアー清掃部材50のスライド駆動機構70〜74の構成を示した。制御回路部101で制御されるDCモータM70が回転駆動することにより、モータM70に取り付けられたウォームギア73を介し、カムとギアが一体型になったカムギア71を回転駆動させる。エアー清掃部材50の一端部に設置されたレシプロ当接板72はエアー清掃部材50の他端部に設置されたバネ74によってカムギア71に押し付けられて当接している。
図14の(a)、(b)に示すように、カムギア71の回転によって、当接しているレシプロ当接板72及びエアー清掃部材50が長手方向にスライド動作する。エアーノズル54の間隔が10mmに設定していることから、エアー清掃部材50の駆動距離(移動ストローク)が10mm必要となり、カムギア71の変位も10mmに設定する。カムギア71の変位曲線は、図15に示すように、一定速度を保つように設定している。速度を一定にすることによって、不均一な清掃を防止している。
ここで、カムの回転速度は5rpsとし、エアー清掃部材50のスライド速度は4mm/sとする。また、エアーノズル54の風圧は5kPaとする。エアー清掃部材50を駆動させない場合、60分間のリフレッシュローラ51と定着ローラ21の摺擦動作により、エアーノズル54の直下でのリフレッシュローラ表面粗さはRz=8.5μmとなる。また、隣接するエアーノズル54の中間地点においては、Rz=2.0μmとなる。即ち、表面粗さにムラが発生する。
そこで、本実施例を用いること、同条件において、リフレッシュローラ51の表面全域がRz=7.5μmとなり、リフレッシュローラ51にムラなく清掃が可能となった。これによって、エアーポンプ58のエアー流量に制約がある場合においても、エアー清掃部材50をスライド駆動させることによって、リフレッシュローラ51にムラなく清掃ができ、定着ローラ21の表面粗さムラによる画像弊害の発生を改善することができる。
[実施例2]
実施例1の定着装置構成において、更に、図16のように、リフレッシュローラ51の表面に接触してクリーニングするクリーニング部材としてのクリーニングローラ80を具備させた定着装置構成にすることもできる。
クリーニングローラ80は、金属製の芯軸(基層)81上に、弾性層82を設けて形成されている。本実施例では、クリーニングローラ80は、SUS(ステンレススチール)製のローラ(芯金)81の表層に、弾性層82としてシリコーンゴム層を有するローラである。
クリーニングローラ80は、芯金81の長手方向(回転軸線方向)両端部に設けられた支持部材(不図示)によって回転自在に支持されている。又、クリーニングローラ80の長手方向両端部の支持部材が付勢手段としての加圧バネ(図示せず)によってそれぞれ付勢されることによって、クリーニングローラ80は、リフレッシュローラ51に所定の圧力で加圧されている。これにより、リフレッシュローラ51とクリーニングローラ80との間に、それぞれの表面移動方向において所定幅のニップN80が形成される。
本実施例では、クリーニングローラ80は、リフレッシュローラ51に対して総圧5Nで加圧されており、リフレッシュローラ51に従動回転する。但し、これに限定されるものではなく、クリーニングローラ80は特別の駆動手段によって駆動されてもよい。又、場合によっては、クリーニングローラ80は、リフレッシュローラ51との間に周速差が設けられてもよく、リフレッシュローラ51との当接部(清掃部)において、それぞれの表面移動方向が順方向、逆方向のいずれになるように回転させてもよい。
又、本実施例では、クリーニングローラ80とリフレッシュローラ51とは、同一のユニットに取り付けられている。従って、リフレッシュローラ51が定着ローラ21に加圧される場合には、クリーニングローラ80も同期して動くので、常にリフレッシュローラ51とクリーニングローラ80とは加圧されている。
又、クリーニングローラ80は、加圧力が低く、駆動を持たないために、取り外し簡易な構成とすることが可能である。リフレッシュローラ51が汚れた場合にリフレッシュローラ51を交換するよりも、リフレッシュローラ51の汚れをクリーニングローラ80に蓄積させた後にこれを交換することによって、メンテナンス性に優れており、ランニングコストも抑えられる。本実施例においては、リフレッシュローラ51はエアー清掃部材50による非接触のエアー噴射清掃を受けることからクリーニングローラ80は長持ちする。従って、クリーニングローラ80のメンテナンス間隔が大幅に削減可能となる。
本実施例では、トナーとの親和性が、定着ローラ表層<リフレッシュローラ表層<クリーニングローラ表層の順に高くなっている。即ち、リフレッシュローラ51のトナーに対する親和性は定着ローラ21のトナーに対する親和性よりも高く、且つ、クリーニングローラ80のトナーに対する親和性はリフレッシュローラ51のトナーに対する親和性よりも高い。
定着ローラ21の表層が離型性に優れたPFAチューブで形成されており、又リフレッシュローラ51の表面粗さが定着ローラ21の表面粗さよりも粗いことから、トナーは定着ローラ21よりもリフレッシュローラ51の表面に付着し易い。又、クリーニングローラ80の表層にシリコーンゴムを用いることで、リフレッシュローラ51の表面よりもトナーとの親和性を高くすることが可能であり、トナーはリフレッシュローラ3よりもクリーニングローラ80に付着し易くなる。
従って、定着ローラ21にオフセットしたトナーが、リフレッシュローラ51に付着しても、このトナーはリフレッシュローラ51の表面からクリーニングローラ80に移る。そのため、リフレッシュローラ51の表面上には、トナーが融着され難い。即ち、リフレッシュローラ51の表面にトナーが付着しても、このトナーはクリーニングローラ80に転移して付着する。そのため、リフレッシュローラ51の表面に付着したトナーが熱変性によってリフレッシュローラ51の表面に固着したり、紙粉などの異物と混ざって凝集隗が発生したりすることは抑制される。
従って、リフレッシュローラ51にトナーなどの汚れ(異物)が付着することで定着ローラ21の表層にキズを発生させたり、定着ローラ21の表面状態を所望の状態にできなくなったりすることを抑制することができる。
表層とトナーとの親和性を比較するには、定着ローラ21の温調温度である160℃の状態で、トナーを強制的にオフセットさせる。そして、オフセットしたトナーが2つのローラ51、80のニップを通過した後に、どちらのローラに付着するかを観察する。
本実施例においては、定着ローラ21の表面にオフセットしたトナーは、リフレッシュローラ51とのニップ部N51を通過した後には、殆どのトナーがリフレッシュローラ51に付着した。又、リフレッシュローラ51の表面に付着したトナーは、クリーニングローラ80とのニップ部N80を通過した後には、殆どのトナーがクリーニングローラ80に付着した。
このように、リフレッシュローラ51の表面のトナーをクリーニングローラ80に付着(融着)させることで、リフレッシュローラ51の、定着ローラ21の表面状態を改変する能力を長期に渡って維持することが可能である。又、クリーニングローラ80を比較的簡易に定着装置20に対して着脱可能な構成とすることで、メンテナンス性に優れ、ランニングコストも抑えられる。
本実施例では、クリーニングローラ80の表層はシリコーンゴムから成る弾性層とした。例えば、本実施例のように、改変部材である表面に砥粒を備えるリフレッシュローラ51の接触清掃を行うためには、この他、フッ素ゴムなどの耐熱性のある弾性体を好適に用いることができる。クリーニングローラ80に対してもエアーを吹き付ける構成にすることも有効である。
[実施例3]
実施例1、2までの説明では摺擦回転体であるリフレッシュローラ51として、摺擦材51Aを含む構成を説明した。しかし、定着ローラ(定着部材)21への前述した微細な傷が許容できる構成であれば、金属のローラ、例えばSUSまたはAlのローラ表層に対して、ブラスト処理または、凹形状の穴や溝を切って荒らした形態の摺擦回転体であってもよい。
微小な傷が許容できる構成の例として、定着装置の下流に第二の定着装置(第2の画像加熱装置)を配置した構成、さらには、定着装置の下流に成果物の表面に対してコート処理やラミネート処理を行う装置を配置した場合が考えられる。つまり、最初の定着処理時に画像に付いてしまった傷が、2回目の定着処理(画像加熱処理)や画像表面処理において目立たなくすることができるからである。
この場合、定着ローラ21に対してのリフレッシュローラ51の加圧力は軽圧であるほうが好ましく、本例では20g/cm以上70g/cm以下の圧力に設定している。また、リフレッシュローラ51の表面粗さRzは、約1〜5μm程度にするのが好ましい。
なお、加圧力を低めに設定する理由は、金属ローラで直接に定着ローラ21の表層を摺擦するために、駆動トルクが高くなる傾向にあり、軽圧にするのが好ましいからである。これは、摺擦処理時のリフレッシュローラ51の変形量が上記実施例(弾性層付きのリフレッシュローラ)に比して少ないために、定着部材に対して深い傷をつけやすいことに依るものである。
また、本例では、摺擦処理による定着ローラ21の表層の粗さを長期に亘り均一に維持する能力は、上述した実施例における摺擦剤を含むリフレッシュローラ51よりも劣る傾向にあるが、構成自体は簡易にすることができる。そのためリフレッシュローラ51の表面の劣化が少なく、摺擦処理を頻繁に実行することが可能である。
このように、表面粗さや定着ローラ21への当接圧が低い本例の構成であっても、定着ローラ21の表面性を長期に亘り維持することが可能である。
なお、本例の場合の懸念点としては、定着ローラ21のトナー離型層を構成しているPFA樹脂の削れカスや、オフセットトナー、紙粉等の異物がリフレッシュローラの凹部に詰まり易くなることが考えられる。しかし、本例においても、上述した実施例と同様に、エアーをリフレッシュローラ51に吹き付けて異物を取り除くことができるため、定着ローラ21に対する摺擦処理を長期に亘り適切に行うことが可能となる。
[その他の事項]
1)以上では、リフレッシュローラ51により定着ローラを摺擦することにより、定着ローラの表面性を実質回復させる(長手方向において表面粗さが所定の範囲内に維持する)実施例について説明したが、本発明はこのような例だけに限られない。例えば、リフレッシュローラ51により第1の回転体として加圧ローラを摺擦することにより、加圧ローラの表面性を実質回復させる例にも、本発明を同様に適用することが可能である。
2)本発明に係る画像加熱装置は実施例のような定着装置としての使用に限られない。記録材に半定着又は定着済みトナー画像を再加熱することにより画像の表面光沢を調整する光沢度調整装置(画像改質装置)としても使用できる。
3)記録材上の画像を加熱する加熱回転体はローラ部材に限られない。円筒状の可撓性を有するベルト部材や、複数の懸架部材間に張設されて回転駆動される可撓性を有するエンドレスベルトであってもよい。
4)加熱回転体とニップ部を形成する加圧回転体もローラ部材に限られない。ベルト部材であってもよい。また、回転体でなくてもよい。即ち、加熱回転体や記録材との当接面である表面の摩擦係数が小さいパッドや板状部材などの非回転部材の形態のものにすることもできる。
5)加熱回転体や加圧部材を加熱する加熱機構は実施例のハロゲンヒータに限られない。セラミックヒーター、電磁誘導コイル、赤外線ランプなどの他の内部加熱方式或いは外部加熱方式の加熱手段を用いることもできる。
6)実施例において定着装置は、実施例のカラー電子写真プリンタ以外の画像形成装置、モノクロ複写機、ファクシミリ、モノクロプリンタ、これらの複合機等で実施されてもよい。即ち、実施例の定着装置及びカラー電子写真プリンタは、上述した構成部材の組み合わせには限定されず、それぞれの代替部材で一部又は全部を置き換えた別の実施形態で実現してもよい。
7)画像形成装置の画像形成部の画像形成方式は電子写真方式に限られない。静電記録方式や磁気記録方式の画像形成部であってもよい。また、転写方式に限られず、記録材に対して直接方式で未定着画像を形成する構成のものであってもよい。
8)本発明において、エアーには、空気以外にも、窒素ガス、炭酸ガスなどの他の気体も含むものとする。