以下、本発明にかかる画像加熱装置と、これを備えた画像形成装置とを図面に則して説明する。なお、実施例で取り上げる数値は、参考数値であって、本発明を限定するものではない。
《実施例1》
<画像形成装置>
図2は本発明に従う画像加熱装置を第1と第2の定着装置15Aと15Bとして搭載したタンデム定着方式の画像形成装置1の一例の構成略図である。この画像形成装置1は、パソコン等のホスト装置200(図4)から制御部100に入力するプリントジョブに基づいて動作してシート(記録材)Pに画像を形成することができる、中間転写方式、インライン方式のカラー電子写真プリンタである。このプリンタ構成は公知に属するのでその説明は簡単にとどめる。
2は画像形成部であり、4つの作像ユニットU(UY・UM・UC・UK)と中間転写ベルトユニット9を有する。各作像ユニットUは、それぞれ、感光ドラム3、帯電器4、レーザースキャナ5、現像器6、一次転写帯電器7、クリーナ8等を有し、感光ドラム3に、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、ブラック(K)色のトナー像を形成する。そして、各作像ユニットUの感光ドラム3から中間転写ベルト10に対して上記4色のトナー像が順次に所定に重畳されて一次転写されることでベルト10上にフルカラーのトナー像が形成される。
ここで、本実施例の画像形成装置で使用するトナーは、離型剤としてのパラフィン、もしくはポリオレフィンからなるワックスや、シリコーンオイルを含有(内包)している、シャープメルトトナーである。
そのトナー像がベルト10と二次転写ローラ14との圧接部である二次転写ニップ部においてシート(以下、用紙と記す)Pに対して二次転写される。用紙Pは給紙カセット11から一枚分離給紙され、レジストローラ対13を含む搬送路12により二次転写ニップ部に対して所定の制御タイミングで導入される。そして、トナー像の転写を受けた用紙Pが第1の定着装置(以下、第1の定着器と記す)15Aに導入されて用紙上(シート上)のトナー像の熱圧定着を受ける。
第1の定着器15Aを出た用紙Pは予めのモード選択に基づくフラッパー16の切替えで第1の定着器15Aよりも用紙搬送方向下流側の第2の定着装置(以下、第2の定着器と記す)15Bに導入される。もしくは、第2の定着器15Bを通さない迂回路18に導入される。
第2の定着器15Bは第1の定着器15Aにより定着された用紙上のトナー像に対してグロスを付加したり、定着性を確保したりする目的で配設されている。用紙Pの種類(紙種)によっては第2の定着器15Bを通す必要が無いものも存在する。この場合には第1の定着器15Aを出た用紙Pはエネルギー消費低減の目的で上記の迂回路18に導入される。
第2の定着器15Bまたは迂回路18を通った画像定着済みの用紙Pは搬送路17のフラッパー19の上面側を通ってトレイ20に排出される。両面印刷の場合は第2の定着器15Bまたは迂回路18を通った1面目画像形成済みの用紙Pがフラッパー19の切替えにより両面搬送機構21に導入され、再び搬送路12を経由して二次転写ニップ部に対して表裏反転された状態で搬送される。これにより、両面画像形成された用紙がトレイ20に排出される。
<定着装置>
本実施例の画像形成装置1は上記のように第1の定着器15Aと第2の定着器15Bの2つの定着器(定着部)を搭載しているタンデム定着方式である。本実施例においてはその2つの定着器15Aと15Bは同構成の熱ローラ対方式、オイルレス定着方式の装置である。図3は第1と第2の定着器15A・15Bの要部の拡大横断面模式図、図4は第1と第2の定着器15A・15Bの制御系統のブロック図である。
第1の定着器15Aは、画像形成部2の側から搬送された用紙Pを加熱するための第1のニップ部N1を形成する第1の回転体対としての定着ローラ(加熱回転体)40Aと加圧ローラ(加圧回転体)41Aを有する。また、その定着ローラ40Aと加圧ローラ41Aのうちの一方の回転体、本実施例では定着ローラ40Aに摺擦処理を行いその表面性を実質回復させる第1の摺擦回転体51Aを有する。また、その第1の摺擦回転体51Aに向けてエアー(気体)を吹き付けることにより摺擦回転体51Aをクリーニングする第1の吹き付け部としてのエアー吹き付け機構50Aを有する。
第2の定着器15Bは、第1の定着器15Aの第1のニップ部N1から搬送された用紙Pを加熱するための第2のニップ部N2を形成する第2の回転体対としての定着ローラ40Bと加圧ローラ41Bを有する。また、その定着ローラ40Bと加圧ローラ41Bのうちの一方の回転体、本実施例では定着ローラ40Bに摺擦処理を行いその表面性を実質回復させる第2の摺擦回転体51Bを有する。また、その第2の摺擦回転体51Bに向けてエアーを吹き付けることにより摺擦回転体51Bをクリーニングする第2の吹き付け部としてのエアー吹き付け機構50Bを有する。
第1と第2の定着器15A・15Bにおける定着ローラ40A・40Bは、それぞれ、アルミニウム製円筒の芯金40aの外周面に厚さ3mmの弾性層40bを配置して直径60mmに構成されている。弾性層40bの下層は、HTV(高温加硫型)シリコンゴム層であり、HTVシリコンゴム層の外周面に、画像面に接触させる耐熱弾性層としてのRTV(室温加硫型)シリコンゴム層が配置されている。
定着ローラ40A・40Bは、それぞれ、両端部が定着器筐体60A・60Bの対向側板間にボールベアリング(不図示)を介して回転可能に支持されて定置配設されている。定着ローラ40A・40B内の回転中心部には、それぞれ、定着ローラを内側から加熱するための熱源としてのハロゲンヒータ40cが非回転に配置される。
42aは定着ローラ40A・40Bの表面温度を検知する温度センサとしてのサーミスタである。制御部100はサーミスタ42aから入力する検知温度が所定の設定温度に立ち上げられて維持されるように給電部101からハロゲンヒータ40cへの供給電力を制御して定着ローラ40A・40Bをそれぞれ温調する。
本実施例においては、用紙の搬送方向aにおいて、第1の定着器15Aにおける定着ローラ40Aが上流側の回転体であり、第2の定着器15Bにおける定着ローラ40Bが下流側の回転体である。
第1と第2の定着器15A・15Bにおける加圧ローラ41A・41Bは、それぞれ、アルミニウム製円筒の芯金41aの外周面に厚さ1mmの弾性層41bを配置して直径60mmに構成されている。弾性層41bの下層は、HTVシリコンゴム層であり、HTVシリコンゴム層の外周面にフッ素樹脂層が配置されている。
第1の回転体対40A・41A、第2の回転体対40B・41Bとして、上述した層構成の定着ローラと加圧ローラとを組み合わせることによって、シャープメルトトナーに対する離型性をより一層高めている。また、両面画像を定着させるために、定着ローラ40A・40Bだけでなく加圧ローラ41A・41Bの表面にも、トナー離型効果の高いRTVまたはLTV(低温加硫型)シリコンゴムを用いている。
加圧ローラ41A・41Bは、それぞれ、定着ローラ40A・40Bの下側に定着ローラに平行に配列されて、両端部がそれぞれ定着器筐体60A・60Bの対向側板間にボールベアリング(不図示)を介して回転可能に支持されて配設されている。加圧ローラ41A・41B内の回転中心部には、それぞれ、加圧ローラを内側から加熱するための熱源としてのハロゲンヒータ41cが非回転に配置される。
42bは加圧ローラ41A・41Bの表面温度を検知する温度センサとしてのサーミスタである。制御部100はサーミスタ42bから入力する検知温度が所定の設定温度に立ち上げられて維持されるように給電部101からハロゲンヒータ41cへの供給電力を制御して加圧ローラ41A・41Bを温調する。
加圧ローラ41A・41Bの両端部のボールベアリングは定着器筐体60A・60Bの対向側板にそれぞれ定着ローラ40A・40Bに向かう方向にスライド移動する移動自由度をもって配設されている。そして、加圧ローラ40A・40Bは制御部100で制御される第1と第2の定着接離機構102A・102Bにより定着ローラ40A・40Bに対して所定の加圧力で圧接した着動作と、定着ローラ40A・40Bから離間した脱動作とに転換される。
第1と第2の定着接離機構102A・102Bの具体例は図に省略したけれども、加圧ばねと、制御部100で制御されるカムとレバーなどを有する機構等を用いることができる。
本実施例では加圧ローラ41A・41Bは着動作で定着ローラ40A・40Bに対して総圧力約784N(約80kg)で圧接して定着ローラ40A・40Bとの間に用紙搬送方向aにおいて所定幅のニップ部N1・N2が形成される。
定着ローラ40A・40B及び加圧ローラ41A・41Bは、それぞれの一端側に固定された歯車が歯車機構(不図示)によって相互に連結されている。その歯車機構に制御部100で制御される駆動源(モータ)Mの駆動力が伝達されて定着ローラ40A・40Bと加圧ローラ41A・41Bが、それぞれ、矢印R40A・R40B、R41A・R41Bの方向に所定の周速度で回転する。
制御部100は画像形成装置1の待機時(スタンバイ時)には、第1と第2の定着器15A・15Bについては、それぞれ、加圧ローラ41A・41Bを脱動作に保持し、定着ローラ40A・40B及び加圧ローラ41A・41Bの回転駆動を停止している。この状態において、制御部100は定着ローラ40A・40B及び加圧ローラ41A・41Bをそれぞれ表面温度が所定の定着時温度よりも低い所定の待機時温度にて維持されるようにスタンバイ温調している。
この状態において、制御部100にホスト装置200からプリントジョブが入力すると、制御部100は、第1と第2の定着器15A・15Bについては、加圧ローラ41A・41Bを着動作させる。また、定着ローラ40A・40B及び加圧ローラ41A・41Bを回転駆動する。そして、制御部100は定着ローラ40A・40B及び加圧ローラ41A・41Bをそれぞれ表面温度が所定の定着時温度に立ち上げられて維持されるように温調する。本実施例では、定着ローラ40A・40Bの定着時温度は約165℃、加圧ローラ41A・41Bの定着時温度は約140℃の設定である。
この状態において、画像形成部2の側から未定着のトナー像Tを担持した用紙Pが第1の定着器15Aに導入される。用紙Pは未定着トナー像Tの担持面側が定着ローラ40Aに対面してニップ部N1に進入して挟持搬送され、ニップ部N1においてトナー像Tが用紙Pの面に熱と圧力で定着される。ニップ部N1を通った用紙Pは定着ローラ40Aから分離されて、第1の定着器15Aから出る。
第1の定着器15Aを出た用紙Pは、前述したように、予めのモード選択に基づくフラッパー16の切替えにより第2の定着器15Bに導入されるか、第2の定着器15Bを通さない迂回路18に導入される。
なお、制御部100は用紙Pを第2の定着器15Bに導入しないプリントジョブである場合には、第2の定着器15Bについては、前記の待機時状態に保持してエネルギー消費の低減を図る。また、第1と第2の定着器15A・15Bには、それぞれ、定着ローラ40A・40Bと加圧ローラ41A・41Bに対してはそれぞれ表面汚れを除去するクリーニング機構が設けられているが図には省略した。
<摺擦回転体>
第1と第2の定着器15A・15Bにおいて、定着ローラ40A・40Bの表面は通紙によるアタック(コバ傷)や、紙粉、オフセットトナーなどの汚れにより、徐々に荒れてくる。そして、高グロスで高画質の画像の形成のためには、定着ローラ40A・40Bの表面を所望の状態に安定的に維持することが重要になってきている。
そこで、第1と第2の定着器15A・15Bには、それぞれ、摺擦材を備えた摺擦部材としての第1と第2の摺擦回転体であるリフレッシュローラ51A・51Bを具備させている。即ち、定着ローラ40A・40B上に細かい摺擦傷を重ねるリフレッシュローラ51A・51Bを用いることで、定着ローラ表層の荒れ方の差により生じる画像光沢ムラを画像上に見えにくくして、画像上光沢スジの問題が大きく改善する。
リフレッシュローラ51A・51Bによる摺擦処理は、定着ローラ40A・40Bの表面性を未使用状態にまで十分に回復させるレベルだけでなくてもよい。定着ローラ40A・40Bの表面の荒れが画像上において目立たなくなる程度に定着ローラ40A・40Bの表面性を良化(回復)させるレベルでも良い。つまり、定着ローラ40A・40Bの表面性を実質回復させるとは、定着ローラ40A・40Bの表面性がこのようなレベルの範囲内に維持されるように定着ローラ40A・40Bの表面性を改善させることを言う。
なお、リフレッシュローラ51A・51Bを用いて定着ローラ40A・40Bの表面性を実質回復させること自体は特許文献1や2で公知であるからここでの詳細な説明は省略する。
本実施例では、特許文献1に示された構成のリフレッシュローラと同等の構成のリフレッシュローラを用いた。具体的には、リフレッシュローラ51A・51Bは、外径12mmのSUS304(ステンレススチール)の芯金上に、接着層を介して、摺擦材としての砥粒を密に接着して形成した摺擦層を設けたものである。本実施例では摺擦材として、平均粒径が約12μmであるホワイトアランダム(WA)を用いた。
リフレッシュローラ51A・51Bは、それぞれ、芯金の両端部側に配設されたアーム59間に回転自在に支持されている。アーム59が制御部100で制御される第1と第2の接離機構103A・103Bで揺動される。その揺動により、リフレッシュローラ51A・51Bは、それぞれ、定着ローラ40A・40Bに対して加圧ばね(不図示)による所定の加圧力で圧接した着動作(図5)と、定着ローラ40から離間した脱動作(図3)とに転換される。
また、リフレッシュローラ51A・51Bは、それぞれ、制御部101で制御される駆動源(モータ)M51A・M51Bによって回転駆動可能とされている。
リフレッシュローラ51A・51Bによる定着ローラ40A・40Bのリフレッシュ動作(表面改質動作モード)の際には、図5のように、定着ローラ40A・40Bがそれぞれ回転駆動される。そして、リフレッシュローラ51A・51Bが本実施例においては総合加圧力30Nで定着ローラ40A・40Bに対して着動作される。リフレッシュローラ51A・51Bが、それぞれ、定着ローラ40A・40Bに対して所定の周速差をもって本実施例では矢印R51の方向に回転駆動される。これにより、定着ローラ40A・40Bのリフレッシュ動作が実行される。
<エアー吹き付け機構>
リフレッシュローラ51A・51Bは、それぞれ、定着ローラ40A・40Bのリフレッシュ動作の実行に伴いその表層に徐々に異物が付着し、表面性が変わっていく課題が生じる。そこで、本実施例では、リフレッシュローラ51A・51Bの清掃方法として、エアー吹き付け機構50A・50Bを配設している。そして、リフレッシュローラ51A・51Bにそれぞれエアーを吹き付け、異物の堆積を防止するエアー清掃(クリーニングモード)を行うようにしている。これにより、安定したリフレッシュ動作が可能になり、長期にわたる定着ローラ40A・40Bの表面性維持を可能としている。
図6は第1の定着器15Aと第2の定着器15Bの各リフレッシュローラ51A・51Bに対する第1と第2のエアー吹き付け機構50A・50Bの模式図である。第1と第2のエアー吹き付け機構50A・50Bは、それぞれ、リフレッシュローラ51A・51Bを清掃するためのエアーを吹き付ける清掃部材53A・53Bを有する。
本実施例において、各清掃部材53A・53Bはリフレッシュローラ51A・51Bにエアーを吹き付けるためのエアーノズル(穴)54を具備させた中空パイプ部材である。清掃部材53A・53Bとしての中空パイプ部材は、リフレッシュローラ51A・51Bの長さにほぼ対応した長さとしてあり、長手に沿って所定の一定間隔でエアー吹き出し口としてのエアーノズル54が一列に設けられている。即ち、リフレッシュローラ51A・51Bの軸線方向の異なる位置に向けてエアーを吹き付ける複数の開口部であるエアーノズル54を備えている。
各清掃部材53A・53Bは、それぞれ、図5のように定着ローラ40A・40Bに当接された状態のリフレッシュローラ51A・51Bに対してエアーノズル54側をリフレッシュローラに対向させてリフレッシュローラに近接させて平行に配設されている。各清掃部材53A・53Bの一方端側から中空内に高圧エアーが供給されることにより各エアーノズル54からリフレッシュローラ51A・51Bに向ってエアーが噴出してリフレッシュローラの全長域に対するエアーを吹き付けがなされる。
図5、図6において、Aは各清掃部材53A・53Bのエアーノズル54からリフレッシュローラ51A・51Bへの噴出エアーを示している。
本実施例においては各清掃部材53A・53Bに対するエアー供給部(気体供給部)としてエアーポンプ(コンプレッサー:気体を所定の圧力に圧縮する圧縮部)58を使用している。そして、エアーポンプ58で発生させた高圧エアーを第1と第2の電磁弁56a・56bを配したエアー配管(気体流路)57・55a・55bを介して第1の定着器15A側の清掃部材53Aと第2の定着器15B側の清掃部材50Bに供給する構成である。
第1と第2の電磁弁56a・56bはエアーポンプ58のエアーを開放するか否かを切替える切替え部である。エアーポンプ58、電磁弁56a・56bは制御部100により制御される。
制御部100はエアーポンプ58で高圧のエアーを発生させ、それをエアー配管57から第1と第2の電磁弁56a、56bに導く。第1と第2の電磁弁56a、56bは、エアーポンプ58からのエアーのON/OFFを制御するスイッチであり、第1の定着器15Aと第2の定着器15Bのそれぞれの清掃部材53A・53Bのエアーノズル54からのエアーの噴射と噴射停止を制御できる。
第1の電磁弁56aが開かれることで、エアー配管57がエアー配管55aに対して連通して、第1の定着器15Aの清掃部材53Aにエアーが供給される。これにより、清掃部材53Aの各エアーノズル54からリフレッシュローラ51Aに向ってエアーが噴出してリフレッシュローラ51Aの全長域に対するエアー吹き付けがなされる。
また、第2の電磁弁56bが開かれることで、エアー配管57がエアー配管55bに対して連通して、第2の定着器15Bの清掃部材53Bに対してエアーが供給される。これにより、清掃部材53Bの各エアーノズル54からリフレッシュローラ51Bに向ってエアーが噴出してリフレッシュローラ51Bの全長域に対するエアー吹き付けがなされる。
図7は清掃部材53A・53Bのノズル部の部分拡大図である。本実施において、エアーノズル54の直径mは1mmであり、穴同士の間隔nは5mmに設定した。リフレッシュローラ51A・51Bの長手方向330mmの幅に均一に配置されたエアーノズル穴の数は67個である。
エアーポンプ58は0.15MPaに設定することにより、第1と第2の電磁弁56a、56bが共に閉口(閉鎖)されている時におけるエアー配管57の内圧は0.15MPaとなる。配管57の内圧が0.15MPaに達した時点で第1の電磁弁56aもしくは第2の電磁弁56bを開口する。
エアー配管57の高圧のエアーは減衰しながら配管を通過し、清掃部材53Aもしくは53Bに到達し、エアーノズル穴54から放出される。このとき、1つのエアーノズル穴54からリフレッシュローラ51A・51Bの表面に吹きつけられるエアー圧力は5kPaである。
配管55a・55b、配管57は全て耐熱性である。配管55a・55bはそれぞれの側の定着器の定着ローラや加圧ローラからの熱伝導により150℃程度の高温になる。このことから耐熱性のあるフッ素ゴム製の内径φ8、長さ800mmを使用している。配管57はエアーポンプ58からの熱で70〜80℃程度の温度になるので、耐熱性のあるポリウレタン製の内径φ8、長さ1500mmを使用している。
リフレッシュローラ51A・51Bとエアーノズル54の開口部とのギャップg(図5)は3mmとし、風圧測定も3mmのギャップを設けおこなっている。エアーノズル54の数は多いほうがリフレッシュローラ51A・51Bの長手を均一に清掃可能だが、ピーク圧力が減少してしまう。この場合には、元のエアーポンプ58の圧力を高くするか、一度に噴射するノズルの数を減らすなどの対策をとる。
<リフレッシュ動作>
制御部100は、第1の定着器15A、または第2の定着器15B、もしくはその両方について、所定の制御タイミングにおいてリフレッシュ動作(表面改質動作)を実行する。即ち、リフレッシュローラ51A・51Bによる定着ローラ40A・40Bのリフレッシュ動作を実行する。
本実施例においてリフレッシュ動作は次のようになされる。第1の定着器15Aにおけるリフレッシュ動作と第2の定着器15Bにおけるリフレッシュ動作は同様であるので、以下においては第1の定着器15Aにおけるリフレッシュ動作を代表して説明する。
即ち、図5のように、リフレッシュローラ51Aが定着ローラ40Aに着動作される。定着ローラ40Aは矢印R40Aの方向に周速度100mm/sで回転駆動される。リフレッシュローラ51Aを矢印R51の方向に周速度400mm/sで回転駆動される。
これにより、定着ローラ40Aの表面に対してリフレッシュローラ51Aが300mm/sの速度差を持って摺擦して、定着ローラ40Aの表面の改質がなされる。リフレッシュ動作は所定時間実行される。その所定時間後にリフレッシュローラ51Aが脱動作されるとともに回転駆動が停止される。定着ローラ40Aの回転駆動も停止される。
リフレッシュローラ51Aは、定着ローラ40Aのリフレッシュ動作を行うことで、定着ローラの表層を微量に研磨するために、PFAのカスや、残留トナー、紙粉などの異物が、砥粒の間に異物が堆積する。このために、そのままだと砥粒の粗さが低下していき、リフレッシュローラ51Aの定着ローラ40Aに対する表面改質動作の能力が低下する。
そこで、前述したエアー吹き付け機構50Aによるリフレッシュローラ51Aに対するエアー噴射を行う。このエアー噴射により、砥粒間の異物を取り除くことで、リフレッシュローラ51Aの表面の粗さを保つことが可能となる。このため、定着ローラ40Aの表面改質の能力を持続することができる。
ただし、エアー噴射でのリフレッシュローラ51Aの清掃能力は、ある程度のエアー圧力が加わらなければ砥粒の間に詰まった異物を取り除くことができない。実験測定の結果では、図8に示すように、リフレッシュローラ表面に吹きつけられる風圧が5kPa以上のところで、清掃能力が発揮され、定着ローラ40Aのコバ部に付いた紙コバ傷の粗さを解消することができた。この効果を出すために必要なリフレッシュローラ51Aの粗さRzは、約4〜5μm以上であった。
ところで、プリント中にリフレッシュ動作を行った場合、定着ローラ40Aの表層にオフセットしたトナーがリフレッシュローラ51Aの表層に付着するリスクが考えられる。このため、徐々にトナーがリフレッシュローラ51Aに付着すると、エアー清掃が困難な程度の粘性があるために、砥粒の間がトナーで詰まり、表面粗さの低下がみられることがある。このため、用紙Pのプリント中はリフレッシュローラ51Aは脱動作させて定着ローラ40Aから離間していることが望ましい。
本実施例では、制御部100はプリントジョブの実行による用紙Pの通紙枚数のカウンタ104を有している。そして、制御部100は、プリントジョブ終了時に、カウンタ104における用紙Pの通紙枚数の累積カウントが所定枚数以上のときに、第1の定着器15A、または第2の定着器15B、もしくはその両方について、上記のリフレッシュ動作を実行する。
これは、定着ローラ40A・40Bの紙コバ傷は、複数の用紙の紙バリ部が連続して定着ローラ40A・40Bの表層にアタックすることによって発生する問題である。同じ種類の用紙であれば、通紙枚数が一定枚数を超えると画像の光沢差が許容レベルを超えてしまうことよる。そのため、制御部100は、プリントジョブの終了時に、カウンタ104における用通紙枚数の累積カウント枚数を判定し、500カウントを超えた場合にリフレッシュ動作を開始する。
図9の制御フローに沿って説明する。この制御フローは第1と第2の定着器15A・15Bのそれぞれに共通である。
プリントジョブ終了時(S1)にカウンタ104の通紙カウントが500枚以上か判定を行う(S2)。500枚に満たない場合には、制御部100は通常の後回転動作を実行して(S3)、画像形成装置1を次のプリントジョウを受け付けるスタンバイ状態に移行する(S4)。
定着器については、定着ローラと加圧ローラの回転を停止させ、加圧ローラは脱動作させ、定着ローラと加圧ローラの温調はスタンバイ温調に移行する。
ステップS2において、カウントが500以上の場合には、リフレッシュ動作を開始する(S5)。まず、定着ローラの回転駆動を停止し(S6)、加圧ローラを脱動作させる(S7)。次に、リフレッシュローラを定着ローラに対して着動作させる(S8)。また、清掃部材からのエアー噴射を開始する(S9)。そして、定着ローラの回転駆動と、リフレッシュローラの回転駆動を開始することで、リフレッシュ動作をしながらリフレッシュローラのエアー清掃が実行される(S10)。
このリフレッシュ動作は所定時間、本実施例では20秒間実行される(S11)。20秒の経過後に、リフレッシュローラが脱動作される(S12)。そして、定着ローラとリフレッシュローラの回転駆動が停止される(S13)。清掃部材からのエアー噴射も停止される(S14)。そして、カウンタ104の通紙カウントがクリア(リセット)される(S15)。これにより、リフレッシュ動作が終了となる(S16)。その後に、画像形成装置1はステップS3の後回転動作を経て、ステップS4のスタンバイ状態に移行する。
また、リフレッシュローラのエアー清掃時に、使用したエアーポンプ58の特性で、エアーを吹き続けると、圧力が低下する。この問題を解決するため、エアーの吹き付けを間欠動作にすることで、圧力の高いエアーを噴射可能にしている。間欠吹付け動作に関しては、電磁弁56のON・OFFにより制御をおこなう。約1秒解放、約1秒停止の繰り返し動作を行う。
<第1の定着器、第2の定着器が並行してリフレッシュ動作する場合>
第1の定着器15Aと第2定着器15Bのカウンタが通紙中に、両方とも500を超えた場合、プリントジョブの終了後に、第1の定着器15Aおよび第2の定着器15Bとが並行してリフレッシュ動作に入る。
しかし、第1の電磁弁56aと第2の電磁弁56bを同時に開くと、エアーポンプ58の容量に上限があるため、第1の定着器15A側の清掃部材53Aと第2の定着器15B側の清掃部材53Bは共にエアーノズル54から出る風圧が低下してしまう。
具体的には、清掃部材53A・53Bに同時にエアーを供給して両者のエアーノズル54からエアーを吐出させた場合(同時に吹いた場合)、清掃部材53A・53Bのエアーノズル54から突出する風圧は共に2.5kPaまで低下する。これによって、図8のグラフからリフレッシュローラ51A・51Bの表面粗さは、Rz1.8程度まで低下し、定着ローラ40A・40Bを研磨する性能が著しく低下してしまう。
この対策として、第1の定着器15Aと第2の定着器15Bで別々にリフレッシュ動作をおこなうことも考えられるが、倍の時間がかかってしまう。即ち、まず、第1の定着器15Aのリフレッシュ動作をおこなう。その終了後に、第2の定着器15Bのリフレッシュ動作をおこなう。この場合には、両定着器15A・15Bで同時にリフレッシュ動作をおこなう場合と比較して、倍の時間がかかる。そのため生産性が低下するという問題が発生する。
そこで、第1の定着器15Aと第2の定着器15Bで並行してリフレッシュ動作をおこなう場合には、第1の定着器15A側と第2の定着器15B側でエアーの吹き付けタイミングを交互にずらす対策をとる。
具体的には、制御部100は、第1の定着器15Aの側のリフレッシュローラ51Aと第2の定着器15Bの側のリフレッシュローラ51Bの清掃部材53Aと53Bによるクリーニングモードを同時進行で行う際は、次のような制御をする。即ち、清掃部材53Aと53Bにおいてエアーが同タイミングで吹き出さないように第1と第2の電磁弁56a・56bの開放タイミングを異ならせる。
制御部100は、リフレッシュローラ51A・51Bにエアーを吹き付ける際、エアーを断続的に吹き付けるように第1と第2の電磁弁56a・56bのエアーの開放と閉鎖の制御を繰り返し行う。制御部100は、各清掃部材53Aと53Bが交互にエアーを吹き出すように第1と第2の電磁弁56a・56bのエアーの開放と閉鎖の制御を行う。つまり、制御部100は、第1の定着器15Aにおけるリフレッシュローラ51Aによる定着ローラリ40Aの摺擦処理と、第2の定着器15Bにおけるリフレッシュローラ51Bによる定着ローラリ40Bの摺擦処理を並行して行う場合は次のように制御する。
即ち、エアー吹き付け機構50A(第1の吹き付け部)によるエアーポンプ58(圧縮部)の開放が終了してから、エアー吹き付け機構(第2の吹き付け部)50Bによるエアーポンプ58の開放を開始する制御を行う。制御部100は、エアー吹き付け機構50Aによるエアーポンプ58の開放とエアー吹き付け機構50Bによるエアーポンプ58の開放を所定の間隔をあけて交互に行う制御を行う。
図1に上記制御のタイミングチャート例を示した。制御部100は、第1の定着器15Aと第2の定着器15Bで並行してリフレッシュ動作をおこなう場合には、
a)第1の電磁弁56aをまず1秒間開く。これにより第1の定着器15Aでリフレッシュ動作が1秒間おこなわれる。その後、第1電磁弁56aを閉じて、1秒間配管内圧(配管57の内圧)が上がるまで待つ。一度エアーを開放すると、配管57内の圧が所定圧0.15MPaになるまで時間が必要で、所定圧に達するまで1秒かかる。
b)1秒間待機した後、今度は第2の定着器15Bの第2の電磁弁56bを1秒間開く。これにより第2の定着器15Bでリフレッシュ動作が1秒間おこなわれる。その後、第2電磁弁56bを閉じて、配管内の圧が0.15MPaになるまで1秒間待機する。
そして、第1の定着器15Aの第1の電磁弁56aを開くというように、上記のa)とb)の所定の回数の繰り返し制御で第1および第2電磁弁56a・56bを交互に開閉する。即ち、エアー吹き付け機構50Aによるエアーポンプ58の開放とエアー吹き付け機構50Bによるエアーポンプ58の開放を所定の間隔をあけて交互に行う制御を行う。
このように、第1の定着器15A側と第2の定着器15B側でエアーの吹き付けタイミングを交互にずらす対策によって、第1の定着器15Aと第2の定着器15Bとの2箇所のリフレッシュ動作を風圧を落とさずに並行してかけることが可能になる。
ここで、第1の定着器15A側と第2の定着器15B側でエアーの吹き付けタイミングを交互にずらすので、第1と第2の定着器15A・15Bの一方の側のリフレッシュローラにエアーを吹き付ける周期が4秒に一回となり、清掃周期が長くなってしまう。しかし、図10のように、周期が2秒から4秒に変化しても、リフレッシュローラの表面粗さRzは同等であり、清掃能力が維持できていることがわかる。
図1の例では、第1の定着器15A側の清掃部材53Aと第2の定着器15B側の清掃部材53Bの2箇所の清掃部材に対して1回ずつ交互にエアー吹き付けしている。しかし、その2箇所の清掃部材に対するエアーの吹き付けタイミングは、一方を2回、もう一方を2回の繰り返しや、一方を3回、もう一方を1回の繰り返しなども考えられる。すなわち、エアーの吹き付けタイミングが、複数同時ではなく、単体でタイミングをずらして電磁弁のON・OFFをおこなえば、清掃部材からの風圧が一定以上となり、清掃能力を維持できる。
《実施例2》
図11のように、第1または第2の定着器15A(15B)もしくはその両方において、第1の回転体としての定着ローラ40A(15B)側だけでなく、第2の回転体としての加圧ローラ41A(41B)側にもリフレッシュローラ51C(第2の摺擦回転体)を設置する。また、そのリフレッシュローラ51Cに向けてエアー(気体)を吹き付けることによりリフレッシュローラ51Cをクリーニングするエアー吹き付け機構50C(第2の吹き付け部)を設置する。
これにより、加圧ローラ41A(41B)についてもリフレッシュ動作をおこなう構成にすることもできる。
このように、1つの定着器15A(15B)内で2個以上(定着ローラ40A(40B)側と加圧ローラ41A(41B)側)において並行してリフレッシュ動作をおこなう際も、実施例1と同様の制御を行う。即ち、実施例1の第1の定着器15Aと第2の定着器15Bの場合と同様にエアーの吹き付けタイミングを交互にずらす。
つまり、制御部100は、1つの定着器において、リフレッシュローラ51A(51B)による定着ローラ40A(40B)の摺擦処理とリフレッシュローラ51Cによる加圧ローラ41A(41B)の摺擦処理を並行して行う場合は次のように制御する。
即ち、エアー吹き付け機構50A(50B)によるエアーポンプ58の開放が終了してから、エアー吹き付け機構50Cによるエアーポンプ58の開放を開始する制御を行う。制御部100は、エアー吹き付け機構50A(50B)によるエアーポンプ58の開放とエアー吹き付け機構50Cによるエアーポンプ58の開放を所定の間隔をあけて交互に行う制御を行う。
これによって、エアーの風圧を落とすことなく、定着ローラ40A(40B)側と加圧ローラ41A(41B)側のリフレッシュ動作をおこなうことが可能である。
実施例1や2のように、複数個所同時にリフレッシュ動作をおこなう場合でも、風圧を落とすことなく、リフレッシュローラを清掃できる。即ち、リフレッシュローラ表層の摺擦材の間に異物が堆積することを防止し、リフレッシュローラ表層の粗さを維持することが可能となる。これにより、複数のリフレッシュ動作を同時にかけることが可能となり、生産性を落とすことなく、長期にわたる定着ローラ40A(40B)や加圧ローラ41A(41B)の表面性維持が可能となる。
非接触のエアー清掃機構を設けることで、汚れが堆積せずに、メンテナンスフリーの構成を実現できる。さらに定着部材の表面性を保つことで、成果物の品位の向上が期待でき、安定した連続プリント動作を可能にする。
《その他の事項》
1)画像加熱装置において、ニップ部N1・N2を形成する回転体対40A(40B)・41A(41B)は実施例のように両者共にローラ部材の組み合わせ構成の他、ローラ部材とエンドレスベルト部材との組み合わせ構成とすることもできる。また、エンドレスベルト部材とエンドレスベルト部材との組み合わせ構成とすることもできる。
2)摺擦回転体は一つの回転体に対して複数個配設する構成とすることもできる。
3)気体にはエア(空気)以外にも窒素ガス、炭酸ガスなど他の気体も含むものとする。