次に、上述した課題を解決するための本発明の具体的な構成について、以下に実施例に基づき説明する。なお、以下に示す実施例は一例であって、この発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、実施例1の高電圧発生用電源(以下、高圧電源という)の電源回路の構成を示した図である。図1の電源回路において、インダクタL100とコンデンサC100で電圧共振回路が構成される。インダクタL100は、スイッチング素子と電源電圧Vcc(本実施例では+24V)との間に接続された素子であって、スイッチング素子の駆動により断続的に電圧が印加されるインダクタンス成分を有する素子の一例である。また、コンデンサC100は接地される。このインダクタL100とコンデンサC100からなる電圧共振部としての電圧共振回路の出力は、整流平滑回路によって正電圧に整流平滑される。整流平滑回路は、順方向に電流を流すダイオードD101と、ダイオードD101のカソード端子と電源電圧Vcc間に接続されて電荷のチャージを担うコンデンサC101によって、正極性のフライバック電圧が取り出される。インダクタL100に対するダイオードD101とコンデンサC101の接続関係を説明すると次のとおりである。ダイオードD101のアノード端子がインダクタL100とコンデンサC100との接続部に接続される。そして、ダイオードD101カソード端子がインダクタL100の他端(電源電圧側)に接続される。さらに、ダイオードD102、D103、D104、D105及びコンデンサC102、C103、C104、C105によって多段に整流回路が形成され、その出力は平滑用コンデンサC106を介して接地されて出力電圧の波形が平滑される。この多段の整流回路の出力電圧は、電圧出力部としての出力端子104(Vout)から出力される。
また、出力電圧(Vout)は、電圧検出抵抗R101、分圧抵抗R102、R103、保護用抵抗104、ノイズ除去用コンデンサC107を介して、オペアンプQ100の非反転入力端子(+端子)に入力される。この回路は出力電圧検出回路である。オペアンプQ100の反転入力端子(−端子)には、コントローラ(不図示)から入力端子103(Vcont)に入力されたアナログ信号(高圧電源の出力電圧を制御するための制御信号)が、抵抗R105を介して入力される。オペアンプQ100、抵抗R105及びコンデンサC108は、積分回路として機能する。すなわち、抵抗R105とコンデンサC108の部品定数によって決まる積分時定数に応じて平滑化された制御信号Vcontが、オペアンプQ100に入力される。この回路では、オペアンプQ100の非反転入力端子(+端子)に入力される出力電圧検出回路からのフィードバック電圧が、反転入力端子(−端子)に入力されるコントローラからのアナログ電圧と等しくなるように調整される。
オペアンプQ100の出力端は、スイッチング部(スイッチング素子)としての電界効果トランジスタQ101の駆動周波数を制御する周波数制御部としての電圧制御発振器(VCO)101に接続されている。この電圧制御発振器110は、入力された制御信号(Vcont)と検出されてフィードバックされる出力電圧(Vout)に応じて、電界効果トランジスタQ101の駆動周波数を制御する周波数信号(以下、出力信号という)の周波数を可変設定する発振器の一例である。さらに、電圧制御発振器101からの周波数信号としての出力信号は、電界効果トランジスタQ101のゲート端子に入力される。電界効果トランジスタQ101は、電圧制御発振器101のパルス状の出力信号によって駆動されるスイッチング素子の一例である。電界効果トランジスタQ101のドレイン端子は、上記のL100とC100からなる電圧共振回路に接続され、インダクタL100を介して電源電圧Vccに接続されるとともに、コンデンサC100を介して接地されている。なお、電界効果トランジスタQ101のソース端子は接地される。
このように、インダクタL100とコンデンサC100により構成される電圧共振部としての電圧共振回路によって増幅された電圧を整流部としての整流回路によって直接整流する。この整流回路の多段に構成(複数接続)して、出力を高電圧に昇圧して出力する。そして、制御信号と出力電圧に応じて電圧制御発振器(VCO)で出力信号の周波数を制御して、負荷の状態に応じたて適正な出力電圧に調整することができる。
次に、図1の電源回路を動作させた際の各部の動作波形を図2に示す。ここで、2Aは電圧制御発振器101から電界効果トランジスタQ101のゲートに印加される電圧波形であり矩形波信号である。電界効果トランジスタQ101がオンした場合、電源電圧VccからインダクタL100に電流が流れる。この時の電界効果トランジスタQ101に流れるドレイン電流を表した波形が2Bである。すなわち、電流の流れる時間に応じて、インダクタL100にエネルギーが蓄積される。次に、電界効果トランジスタQ101がオフした場合、コンデンサC100とインダクタL100の間で電圧共振が起こる。この時の電界効果トランジスタQ101のドレイン電圧波形が2Cである。この電圧波形で示される電圧は、一般的にフライバック電圧と呼ばれる。電圧共振により、共振回路のフライバック電圧の最大値V1aは、電源電圧Vccの数倍の電圧値になる。また、この共振電圧が0V以下で次の電界効果トランジスタQ101のオン時間が始まるようにオフ時間を設定することにより、所謂ハードスイッチングせずに効率良く後段の回路に電圧を供給することが可能になる。この共振回路で生成された電圧は、後段の多段の整流回路で段数分、昇圧されることになる。整流回路の最終段に配置されたダイオードD105のアノード端子の電圧波形が2Dである。この電圧波形は、電圧最大値V1bであり、フライバック電圧V1aが重畳された電圧知である。また、ダイオードD105のカソード端子の電圧は一定電圧V1bとなり、それを平滑用コンデンサ106で平滑して安定化したものが、出力端子104(Vout)において2Eで表される電圧波形になる。
次に、整流平滑回路の動作を詳細に説明する。電界効果トランジスタQ101がオフした時に、インダクタL100とコンデンサC100の共振回路により発生した正極性のフライバック電圧は、ダイオードD101を介してコンデンサC101に電荷がチャージされることで最大電圧Vmax1がホールドされる。ダイオードD101とコンデンサC101が1段目の整流回路として機能する。なお、コンデンサC101を1段目のダイオードのカソード端子と電源電圧の間に接続することで、1段目のピーク電圧波形を安定化できるという効果がある。次に、電界効果トランジスタQ101がオンすると、インダクタL100で逆起電圧が発生する。今度は、ダイオードD102を介して電荷が移動し、コンデンサC102に電荷がチャージされる。これにより、コンデンサC101での最大電圧Vmax1を基準として、コンデンサC102においてフライバック電圧Vmax1が加えられ、最大電圧Vmax2(≒Vmax1×2)に増幅される。このダイオードD102とコンデンサC102が2段目の整流回路として機能する。さらに、電界効果トランジスタQ101がオフするタイミングで、コンデンサ102にチャージされた電荷は、ダイオード103を介して移動し、コンデンサC103に電荷がチャージされる。これにより、コンデンサC103では最大電圧Vmax3(≒Vmax1×3)にホールドされる。以下、同様に、コンデンサC104とダイオードD104、コンデンサC105とダイオードD105による電圧ホールドとフライバック電圧分の電圧加算を整流回路の段数分、繰返して電圧が増幅される。なお、電圧を増幅する際は、コンデンサやダイオードの容量分による損失が生じるので、共振回路のフライバック電圧が整流回路の段数倍に増幅できるものではないが、予めコンデンサやダイオードの容量分による損失を考慮しておくことで目標の電圧出力が得られる。整流回路の最終段である、ダイオードD105カソードとコンデンサC105の接続部に発生した電圧は、平滑用のコンデンサC106により平滑され、出力端子104(Vout)から安定した電圧として出力される。なお、本実施例1では、出力信号の周波数は可変制御しているが、周波数のデューティー比(オン時間とオフ時間の比)は固定に設定している。上記したように電界効果トランジスタQ101がハードスイッチングしないように設定している。
なお、図12に、本実施例における代表的な回路の負荷特性を示す。図12で示す付加特性は、電源電圧が24V、共振回路のL=220μH、C=330pF、整流回路のC=330pFのとした場合の特性である。負荷が100MΩ以上の高抵抗において具体的な数値を用いて説明する。周波数fが160kHzの場合、電圧共振回路のフライバック電圧のピーク電圧はおよそ180Vとなり、整流回路が4段の場合はその約3倍、つまり約540Vが出力される。また、整流回路が10段の場合はその約6倍、つまり約1080Vが出力される。また、出力電圧は入力する周波数によって、共振回路のフライバック電圧を可変して制御することが可能である。例えば、整流回路が4段の場合、周波数fを約2倍の300kHzにすると、出力電圧は約1/2になる。このように、電源電圧に対して、十分に高い電圧を発生することができ、さらに、整流回路の段数、また、制御信号と出力電圧とに応じて出力信号の周波数を可変制御することによって、容易に出力電圧を調整でき、かつ、負荷変動に応じて出力電圧を適正な値に調整することができる。
以上、本実施例では、正電圧を出力可能な高圧電源の回路構成と回路動作、動作による電圧及び電流波形について説明した。なお、負の高電圧を出力可能な高圧電源の回路構成としては、例えば、図3で示すような回路で構成可能である。図3において、正電圧を出力可能な図1の回路構成と異なる点は、整流回路のダイオードの極性を反転するように接続したことである。これとは別に、出力電圧検出回路や電圧制御発振器101についても、負の高電圧に対応した回路定数及び仕様にすればよい。また、整流回路が多段の場合には、正電圧を出力する場合に対して、全てのダイオードの極性を反転させる必要がある。このことは、図1と図3を比較すれば、ダイオードD101、D102、D103、D104、D105が反転していることからも理解される。このように電源回路を構成することにより、出力端子104(Vout)において、負極性の安定した高電圧を発生することが可能となる。
なお、本実施例で説明した高圧電源の出力対象となる負荷の一例としては、前述した電子写真方式の画像形成装置における高電圧の出力対象に適用することができる。例えば、レーザビームプリンタにおける像担持体としての感光ドラムを帯電する帯電部(帯電ローラ)、感光ドラム上に形成に露光されて形成された静電潜像を現像する現像部(現像ローラ)、感光ドラムに現像された画像を記録材に転写する転写部(転写ローラ)等が負荷として適用可能である。また、画像形成装置以外にも、高電圧が必要な負荷であって環境の変化によって負荷の状態が変動するものであれば適用可能である。
以上説明したように、本実施例によれば、トランスを用いない高圧電源において、負荷変動に応じて出力電圧を適切に調節することが可能となる。
次に、図4の動作波形に基づいて実施例2の高圧電源を説明する。なお、実施例1の高圧電源の回路と重複する個所については説明を省略する。実施例2の回路は、図1で示される実施例1の回路と同様であるが、出力電圧の制御の方法が異なる。実施例2では、出力電圧を制御する方法として、電界効果トランジスタQ101のゲート端子に入力される制御信号のオフ時間(図4のtoff時間)を固定とし、オン時間(図4のton時間)のみを可変として出力電圧を制御する点である。
図4は、実施例1と同様の図1に示した回路における各部の動作波形であり、かつ実施例2に係る動作波形である。低電圧出力時(図4(a))と高電圧出力時(図4(b))について別々に図示している。まず、4A及び4Eは電圧制御発振器101から電界効果トランジスタQ101のゲート端子に印加される電圧波形である。電界効果トランジスタQ101がオンした場合、電源電圧VccからインダクタL100に電流が流れる。この時の電界効果トランジスタQ101に流れるドレイン電流を表した波形が4B及び4Fである。すなわち、電流の流れる時間に応じて、インダクタL100にエネルギーが蓄積される。次に、電界効果トランジスタQ101がオフした場合、コンデンサC100とインダクタL100の間で電圧共振が起こる。この時の電界効果トランジスタQ101のドレイン電圧波形が4C及び4Gである。この電圧波形は、一般的にフライバック電圧と呼ばれる。電圧共振により、共振回路のフライバック電圧の最大値V2a(4C)、V2c(4G)は、電源電圧Vccの数倍の電圧値になる。また、この共振電圧が0V以下で次の電界効果トランジスタQ101のオン時間が始まるように設定することにより、ハードスイッチングせずに効率良く後段の回路に電圧を供給することが可能になる。この共振回路で生成された電圧は、後段の整流回路で整流段の段数分、昇圧される。整流回路を経た電圧波形を平滑用コンデンサC106で平滑して安定化したものが、出力端子104(Vout)において4D及び4Hで表される電圧波形となり、電圧V2b(4D)、V2d(4H)が出力される。
次に、電圧制御発振器101から電界効果トランジスタQ101のゲート端子に入力される制御信号の周波数を可変制御した場合の動作について説明する。周波数による出力電圧制御は、出力電圧を高くしたい場合は周波数を低くし、出力電圧を低くしたい場合は周波数を高くすることで出力電圧の制御が可能である。より詳細に説明すると、周波数が低くなると、電界効果トランジスタQ101のオン時間tonが長くなるのに応じて、よりインダクタL100にエネルギーが蓄えられるようになり、共振回路のフライバック電圧波形の最大値も大きくなる。即ち、出力端子104から出力される電圧は高くなる。逆に、周波数が高くなると、電界効果トランジスタQ101のオン時間tonが短くなるのに応じて、インダクタL100に蓄えられるエネルギーが低下し、共振回路のフライバック電圧波形の最大値も小さくなる。即ち、出力端子104から出力される電圧は低くなる。このようにして、周波数を変化させて出力電圧を制御することが可能である。
この動作に対して、制御信号のデューティー比(オン時間とオフ時間の比)を固定した状態で周波数を高くすると、電界効果トランジスタQ101のオン時間tonとオフ時間toffが同じように短くなる。オン時間tonとオフ時間toffが同じように短くなると周波数がある値まで高くなると、電界効果トランジスタQ101のドレイン電圧が電位をもったままQ101がオンされてしまう。つまり、電界効果トランジスタQ101がハードスイッチングすることになり、スイッチング動作による損失が大きくなる。このように、ドレイン電圧が高い状態でハードスイッチングが発生した場合、Q101をオンした瞬間にドレイン−ソース間に電流が流れることによって損失が大きくなる。
そこで、本実施例2では、図4に示すように、フライバック電圧が発生するオフ時間toffは固定にしておき、フライバック電圧が0V以下にまで低下してからオンするように、そして、オン時間tonのみを可変する制御にしている。なお、オフ時間toffは、インダクタL100とコンデンサC100により構成される電圧共振回路の共振周波数で決まるフライバック電圧波形の時間幅よりも長くしておく。また、低電圧出力時のオン時間ton1と高電圧出力時のオン時間ton2の関係は、ton1 < ton2 となるように制御する。
なお、実施例1で説明したように制御信号のデューティ比を固定して周波数を可変制御する方式でも、ハードスイッチングしない周波数範囲で可変制御することができるが、より周波数の可変制御の範囲を広範囲にする場合に本実施例2は有効である。
以上説明したように、本実施例によれば、トランスを用いない高圧電源において、負荷変動に応じて出力電圧を適切に調節することでき、かつ、ハードスイッチングの発生を防止し、回路損失を抑え、安定した高電圧を出力することが可能となる。
次に、図5及び図6に基づいて実施例3を説明する。ただし、実施例1の高圧電源の回路と重複する個所については説明を省略する。本実施例3の高圧電源の回路と実施例1の回路との相違点は、出力電圧を制御する方法として、周波数制御に加えて供給電圧も可変制御して出力電圧を変化させる点である。
まず、図5に基づいて本実施例3の回路構成及び動作について説明する。オペアンプQ100の反転入力端子(−端子)には、コントローラ(不図示)から入力端子105に入力されたアナログ信号(高圧電源装置の制御信号(Vin))が、抵抗R106を介して入力される。オペアンプQ100、抵抗R106及びコンデンサC109は、積分回路として機能する。すなわち、抵抗R106とコンデンサC109の部品定数によって決まる積分時定数に応じて平滑化された制御信号Vinが、オペアンプQ100に入力される。一方、出力端子104に発生した出力電圧は、電圧検出抵抗R101、分圧抵抗R102、R103、保護用抵抗104、ノイズ除去用コンデンサC107を介して、出力電圧検出手段を構成しながらオペアンプQ100の非反転入力端子(+端子)に入力される。そして、オペアンプQ100の非反転入力端子(+端子)に入力される出力電圧検出手段からのフィードバック電圧が、反転入力端子(−端子)に入力されるコントローラからのアナログ電圧と等しくなるように制御される。
オペアンプQ100の出力電圧は、抵抗R107を介してトランジスタQ102のベースの電位を変化させ、さらにトランジスタQ102のベース−エミッタ間の電圧分、低下した電圧がインダクタL100に供給される電圧となる。なお、ダイオードD106は、コンデンサC111はインダクタL100への供給電圧の安定化のため、及び、トランジスタQ102の保護のために接続している。このインダクタL100に供給される電圧を可変にする電圧可変部としての回路構成が本実施例3の特徴である。
また、電界効果トランジスタQ101のゲート端子には、周波数入力端子106(Vclk)から制御周波数が入力されている。この制御周波数は、デューティ比は固定値でもよいし、実施例2で説明したような可変設定でも構わない。本実施例3では、予め電界効果トランジスタQ101がハードスイッチングしないように決定した周波数をコントローラ(不図示)から周波数入力端子106(Vclk)を介して制御信号を入力し、目標の出力電圧になるようにインダクタL100への供給電圧が可変制御されるものとする。本実施例3では、制御信号(周波数可変)をコントローラから入力しているが、実施例1で説明したように電圧制御発振器(VCO)を用いて可変制御してもよい。
図6は、図5に示した回路の各部の動作波形であり、低電圧出力時(図6(a))と高電圧出力時(図6(b))について夫々図示している。まず、6A及び6Fは電圧制御発振器101から電界効果トランジスタQ101のゲートに印加される電圧波形である。低電圧出力時と高電圧出力時の夫々のオフ時間、toff3時間とtoff4時間の関係、及び低電圧出力時と高電圧出力時の夫々のオン時間ton3時間とton4時間の関係は、toff3 < toff4,ton3 < ton4 としている。なお、実施例1と同様、デューティー比は固定としている。また、6B及び6Gは、本実施例3の特徴である供給電圧可変手段により、インダクタL100に供給される電圧である。低電圧出力時の供給電圧V3aと、高電圧出力時の供給電圧V3dの関係は、V3a < V3d である。
次に、電界効果トランジスタQ101がオンした場合、電源電圧VccからインダクタL100に電流が流れる。この時の電界効果トランジスタQ101に流れるドレイン電流を表した波形が6C及び6Hである。ドレイン電流は供給電圧に応じて変化する。次に、電界効果トランジスタQ101がオフした場合、コンデンサC100とインダクタL100の間で電圧共振が起こる。この時の電界効果トランジスタQ101のドレイン電圧波形が6D及び6Iである。このドレイン電圧は供給電圧とドレイン電流に応じて変化する。このとき、共振電圧が0V以下で次の電界効果トランジスタQ101のオンが始まるように、前述の低電圧出力時のオン時間toff3は設定される。これにより、ハードスイッチングさせることなく効率良く後段の回路に電圧を供給することが可能になる。
共振回路で生成されたフライバック電圧は、後段の整流回路で整流段の段数分昇圧されることになる。整流回路を経た電圧波形を平滑用コンデンサC106で平滑して安定化したものが、出力端子104(Vout)において6E及び6Jで表される電圧波形となる。低電圧出力時の供給電圧V3cと、高電圧出力時の供給電圧V3fの関係は、V3c < V3f である。
以上説明したように、本実施例によれば、トランスを用いない高圧電源において、負荷変動に応じて出力電圧を適切に調節することでき、かつ、供給電圧の可変制御と周波数可変制御を組み合わせて制御する電圧範囲を広くすることできる。なお、本実施例3では、供給電圧の可変制御と周波数可変のみ合わせについて説明したが、周波数を固定して供給電圧を可変制御して出力電圧を制御する方法も有効である。
次に、図7及び図8に基づいて本発明の実施例4を説明する。ただし、実施例1の高圧電源の回路と重複する個所については説明を省略する。本実施例4と前述の実施例1との相違点は、図7の回路で示すように、電圧共振回路を構成するインダクタL100とコンデンサC100の接続部と、整流回路の間にインダクタL101を直列に挿入し、その後段のダイオード及びコンデンサの容量特性によって電流共振回路を形成したことである。
図8は、図7に示した各部の動作波形である。ここで、8Aは電界効果トランジスタQ101のゲート端子に印加される電圧である。また、電界効果トランジスタQ101に流れるドレイン電流を表した波形が8Bである。電界効果トランジスタQ101のドレイン電圧波形が8Cである。電圧共振により、フライバック電圧の最大値V4aは、電源電圧Vccの数倍の電圧値に増幅される。8Dは、インダクタL101に流れる電流波形である。なお、この電流波形は、回路の定数に依存して変化する。インダクタL101に流れる電流には、一定の周波数をもつ正弦波状の電流振幅I4aが重畳される。これは、後段の整流回路におけるダイオードの容量特性とインダクタL101の定数によって決まる周波数成分である。ダイオードの容量特性は一般的に低容量であるため、共振周波数は高くなる。8Eは、インダクタL101の出力側の電圧であり、その電圧最大値V4bは、前述のフライバック電圧の最大値V4aとほぼ同じである。しかしながら、インダクタL101を介すことで電圧波形が変化し、フライバック電圧の実効値は増加する。さらに、8Eで発生した高い周波数の電流振幅により、フライバック電圧が0Vとなる領域には電圧振幅V4cが重畳される。この回路動作によって、フライバック電圧はより実効値の高い電圧波形(略正弦波上の電圧波形)に変換される。8Fは、整流回路の最終段に配置されたダイオードD105のアノード端子の電圧波形である。その電圧波形は、電圧最大値V4dで、理想的には前述の振幅電圧V4bが重畳される。また、ダイオードD105のカソード端子の電圧は一定電圧V4dとなり、それを平滑用コンデンサC106で平滑して安定化したものが、出力端子104(Vout)において8Gで表される電圧波形になる。
以上説明したように、本実施例によれば、以上説明したように、本実施例によれば、トランスを用いない高圧電源において、負荷変動に応じて出力電圧を適切に調節することでき、かつ、フライバック電圧の実効値を増加することができるので、より高い出力電力を得ることが可能となる。
次に、図9、図10、及び図11に基づいて実施例5を説明する。ただし、実施例1の高圧電源の回路と重複する個所については説明を省略する。本実施例4と前述の実施例1との相違点は、実施例1のようにインダクタとコンデンサを並列接続した電圧共振回路ではなく、スイッチング部(スイッチング素子)としてのNPNトランジスタQ102とPNPトランジスタQ103のベース同士、エミッタ同士を接続してプッシュプル方式の電流増幅回路を構成する点である。さらに、電流増幅回路の出力部と整流回路との間にコンデンサC110を挿入し、かつ、インダクタL110と抵抗R110を接地に対して直列に接続してLCR直列共振回路を構成する。本実施例3では、コンデンサC110、インダクタL110、抵抗R110を用いた回路を電流共振回路の一例として示している。
この電流共振回路の周波数特性を図10に示す。共振周波数f0においてゲイン(dB)は最大になり、インダクタL110とコンデンサC110の定数によりf0は決まる。また、この回路は高いQをもった特性であることがわかる。制御性をよくするために、抵抗R110を挿入して回路のQを最適化することが望ましい。したがって、共振周波数f0付近に制御周波数を設定することにより、回路の出力能力を向上させることができる。
図11は、図9に示した回路の各部の動作波形である。ここで、11AはNPNトランジスタQ102とPNPトランジスタQ103の互いに接続されたゲート端子に印加されるベース電圧である。11Bは、NPNトランジスタQ102とPNPトランジスタQ103の互いに接続されたエミッタ端子のエミッタ電圧である。電流増幅回路を形成しているので、ゲート端子とエミッタ端子の電圧は略等しい。11Cは、コンデンサC110に流れる電流波形である。この電流波形は、11Aで示されるゲート端子の電圧波形に対して位相が45度進む。11Dは、電流共振回路を構成するコンデンサC110とインダクタL110の接続部の電圧であり、電流共振回路によって振幅電圧V5aの正弦波に変換される。11Aで示されるゲート端子の電圧波形に対して位相が45度遅れ、11Cで示されるコンデンサC110の電流波形に対しては、位相が90度遅れる。整流回路の最終段に配置されたダイオードD105のアノード端子の電圧波形が11Eである。その電圧波形は、電圧最大値V5bで、理想的には前述の振幅電圧V5aが重畳される。また、ダイオードD105のカソード端子の電圧は一定電圧V5bとなり、それを平滑用コンデンサC106で平滑して安定化したものが、出力端子104(Vout)において11Fで表される電圧波形になる。
以上説明したように、本実施例によれば、プッシュプル方式の電流共振回路により電流増幅し、高いゲインを持つ電流共振回路の特性を生かすために共振周波数f0付近で制御する。そして、さらに、多段の整流回路により電圧を増幅することで、トランスを用いない高圧電源において、負荷変動に応じて出力電圧を適切に調節することでき、より高い出力電力を得ることができる。また、本実施例5の回路構成では、電源電圧のまま電流増幅をするので、耐圧の高いトランジスタを使う必要がないことも利点である。
次に、図13に基づいて本実施例6の高圧電源について説明する。ただし、実施例1の高圧電源の回路と重複する個所については説明を省略する。本実施例6と前述の実施例1との相違点は、本実施例の回路が出力電圧について第1の出力電圧(Vout1)と第2の出力電圧(Vout2)の2系統を備えていることである。さらに、第1の出力電圧は整流部たる整流回路の最終段から得ており、第2の出力電圧は整流回路の最終段より前から得ている点が特徴である。例えば、整流回路が2段構成であれば、第1の電圧出力部からの電圧(Vout1)は、最終段である第2の整流部としての2段目の整流回路からの出力となり、第2の電圧出力部からの電圧(Vout2)は第1の整流部としての1段目の整流回路からの出力となる。
回路構成及び動作について図13に基づいて説明する。実施例1で説明した通り、整流回路の理想的な動作によれば、フライバック電圧Vmaxをn倍した直流出力を得ることが可能になる(但し、nは整数)。より詳細には、図13のD103のカソード側ではVmaxの2倍の出力を得ることが可能である。今、図13の回路のD105のカソード側でVmaxのn倍の出力が得られるとすると、つまりVout1の出力がnかVmax×nである整流回路を構成すれば、Vout2の出力はVmaxの(n−1)倍となる。よって、図13の回路では下記に示しとおり2つの任意の電圧出力を得ることができる。
Vout1 = n × Vmax ・・・(式1)
Vout2 = (n−1) × Vmax ・・・(式2)
(nは整数)
また、Voutに野を出力するために使用した部品はC11二のみという簡素かつ安価な回路構成である。なお、本実施例6では、出力電圧の系統を2系統の場合について説明したが、出力電圧の系統は2系統に限るものではなく、3系統以上を備える構成とすることができる。この場合の多数の出力電圧は、各整流段の夫々から得るように構成すればよい。
以上説明したように、本実施例によれば、トランスを用いない高圧電源において、負荷変動に応じて出力電圧を適切に調節することでき、かつ、複数の高電圧出力を得ることができる。
次に、図14に基づいて本実施例7の高圧電源を説明する。ただし、実施例1の高圧電源の回路と重複する個所については説明を省略する。本実施例7と前述の実施例6との相違点について以下に説明する。
実施例6で説明した図13の回路では、(式2)のとおり、Vout2の出力電圧は、フライバック電圧の最大ピーク電圧Vmaxのn倍の値しか得ることはできなかった。図14で示される本実施例7では、抵抗分圧回路を適用して、n倍以外の任意の電圧を得ることを可能にしたものである
本実施例7の回路構成及び動作について図14を用いて説明する。図14の回路のD105のカソード側でVmaxのn倍の電圧出力を得る、つまり、Vout1の出力がn×Vmaxである整流回路を構成すると、D105のカソード側電圧はVmaxの(n−1)倍となる。そして、Vout2の出力はD104のアノード側の電圧をR108とR109で抵抗分圧した電圧になる。このVout2は、(R109/R108+R109)×(n−1)×Vmaxとなる。つまり、図14の回路では、下記の式に示すように2つの任意の電圧出力を得ることができる。
Vout2 =
(R109/R108+R109) × (n−1) × Vmax
・・・(式3)
さらに、Vmaxの整数倍ではない任意の出力Vout2を出力するための回路としてはR108とR109とC112という簡素かつ安価な回路構成である。なお、本実施例7では、出力電圧の系統を2系統の場合について説明したが、出力電圧の系統は2系統に限るものではなく、3系統以上を備える構成とすることができる。この場合の多数の出力電圧は、各整流段の夫々から得るように構成すればよい。
以上説明したように、本実施例によれば、トランスを用いない高圧電源において、負荷変動に応じて出力電圧を適切に調節することでき、かつ、複数の高電圧出力を得ることができる。
次に、図15に基づいて本実施例8を説明する。ただし、実施例1の高圧電源の回路と重複する個所については説明を省略する。本実施例8と前述の実施例7との相違点について以下に説明する。
実施例7で説明した図14の回路では、(式3)に示すとおり、Vout2の出力電圧は、R108とR109の抵抗分圧で任意の電圧を得ている。本実施例8では、定電圧素子としてのツェナーダイオードD106を使用することで、任意の電圧を得ることを特徴とする。
回路構成及び動作について図15を用いて説明する。図15の回路のD105のカソード側でVmaxのn倍の電圧出力を得る、つまり、Vout1の電圧出力がn×Vmaxである整流回路を構成すると、D104のアノード側電圧はVmaxの(n−1)倍となる。そして、Vout2の出力はD104のアノード側の電圧をツェナーダイオードD106のツェナー電圧Vzだけ減じた値となるので、Vout2は(n−1)×Vmax−Vzとなる。つまり、図15の回路では、下記示すとおり、2つの任意の電圧出力を得ることができる。
Vout2 = (n−1) × Vmax − Vz ・・・(式4)
さらに、Vmaxの整数倍ではない任意の出力Vout2を出力するための回路としてはD106とC112とR110という簡素かつ安価な回路構成である。
なお、図15中のR110はD105のツェナー電圧を保証するために使用するものであり、接続される負荷でツェナー電圧を保証できる場合は削除可能である。なお、本実施例8では、出力電圧の系統を2系統の場合について説明したが、出力電圧の系統は2系統に限るものではなく、3系統以上を備える構成とすることができる。この場合の多数の出力電圧は、各整流段の夫々から得るように構成すればよい。また、本実施例8では定電圧素子としてツェナーダイオードを用いたが、バリスタを用いることも可能である。
以上説明したように、本実施例によれば、トランスを用いない高圧電源において、負荷変動に応じて出力電圧を適切に調節することでき、かつ、複数の高電圧出力を得ることができる。
次に、図16に基づいて実施例9の電源を説明する。ただし、実施例1の高圧電源の回路と重複する個所については説明を省略する。本実施例9と前述の実施例8との相違点について以下に説明する。
実施例8で説明した図15の回路では、出力電圧の変動を補正するためにオペアンプQ100にフィードバックするフィードバック電圧をVout1から得ていた。しかし、本実施例9は、フィードバック電圧をVout2から得ている。この構成により、フィードバック電圧の経路に使用する部品の耐電圧を小さくすることができる。具体的には、R111の耐電圧を小さくでき、低コスト化を実現できる。
また,図13、図14に記載の回路においても、本実施例9と同様に、フィードバック電圧をVout2から得ることで低コスト化を実現可能である。なお、本実施例9では、出力電圧の系統を2系統の場合について説明したが、出力電圧の系統は2系統に限るものではなく、3系統以上を備える構成とすることができる。この場合の多数の出力電圧は、各整流段の夫々から得るように構成すればよい。
以上説明したように、本実施例によれば、トランスを用いない高圧電源において、負荷変動に応じて出力電圧を適切に調節することでき、かつ、複数の高電圧出力を得ることができる。