以下、添付図面を参照して、超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。図1に例示するように、本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、装置本体10とを有する。
超音波プローブ1は、例えば、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送受信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
ここで、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、超音波により被検体Pを2次元で走査するとともに、被検体Pを3次元で走査することが可能な超音波プローブである。具体的には、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、一列に配置された複数の圧電振動子により、被検体Pを2次元で走査するとともに、複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで、被検体Pを3次元で走査するメカニカル4Dプローブである。或いは、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、複数の圧電振動子がマトリックス状に配置されることで、被検体Pを3次元で超音波走査することが可能な2Dプローブである。なお、2Dプローブは、超音波を集束して送信することで、被検体Pを2次元で走査することも可能である。
そして、第1の実施形態では、超音波プローブ1により超音波走査される領域に位置する組織を対象として、図1に示す穿刺針5を用いた穿刺が行なわれる。図1に示す穿刺針5は、例えば、穿刺部位に刺した針先からガイドワイヤーを押し出してカテーテルを目的とする部位まで挿入可能である。
ここで、図1に示すように、超音波プローブ1には位置センサ4が取り付けられ、穿刺針5には位置センサ6が取り付けられる。また、第1の実施形態では、装置本体10の近傍の任意の位置に、トランスミッター7が配置される。位置センサ4、位置センサ6及びトランスミッター7は、超音波プローブ1の位置情報と穿刺針5の位置情報とを検出するための位置検出システムである。例えば、位置センサ4は、超音波プローブ1に取り付けられる磁気センサである。位置センサ4は、例えば、超音波プローブ1の本体の端部に取り付けられる。また、例えば、位置センサ6は、穿刺針5に取り付けられる磁気センサである。位置センサ6は、例えば、穿刺針5の根元に取り付けられる。また、例えば、トランスミッター7は、自装置を中心として外側に向かって磁場を形成する装置である。
位置センサ4は、トランスミッター7によって形成された3次元の磁場の強度と傾きとを検出する。そして、位置センサ4は、検出した磁場の情報に基づいて、トランスミッター7を原点とする空間における自装置の位置(座標及び角度)を算出し、算出した位置を装置本体10に送信する。ここで、位置センサ4は、自装置が位置する3次元の座標及び角度を、超音波プローブ1の3次元位置情報として、装置本体10に送信する。
また、位置センサ6は、トランスミッター7によって形成された3次元の磁場の強度と傾きとを検出する。そして、位置センサ6は、検出した磁場の情報に基づいて、トランスミッター7を原点とする空間における自装置の位置(座標及び角度)を算出し、算出した位置を装置本体10に送信する。ここで、位置センサ6は、自装置が位置する3次元の座標及び角度を、穿刺針5の3次元位置情報として、装置本体10に送信する。
なお、本実施形態は、上記の位置検出システム以外のシステムにより、超音波プローブ1及び穿刺針5の位置情報を取得する場合であっても適用可能である。例えば、本実施形態は、ジャイロセンサや加速度センサ等を用いて、超音波プローブ1及び穿刺針5の位置情報を取得する場合であっても良い。
入力装置3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された各種画像データ等を表示したりする。
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置である。例えば、第1の実施形態に係る装置本体10は、超音波プローブ1が受信した2次元の反射波データに基づいて2次元の超音波画像データを生成可能な装置である。また、例えば、第1の実施形態に係る装置本体10は、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波データに基づいて3次元の超音波画像データを生成可能な装置である。以下、3次元の超音波画像データを「ボリュームデータ」と記載する。
装置本体10は、図1に示すように、送受信部11と、Bモード処理部12と、ドプラ処理部13と、画像生成部14と、画像メモリ15と、画像処理部16と、内部記憶部17と、制御部18とを有する。
送受信部11は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
なお、送受信部11は、後述する制御部18の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
また、送受信部11は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延部は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延部によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
第1の実施形態に係る送受信部11は、被検体Pを2次元走査するために、超音波プローブ1から2次元の超音波ビームを送信させる。そして、第1の実施形態に係る送受信部11は、超音波プローブ1が受信した2次元の反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、第1の実施形態に係る送受信部11は、被検体Pを3次元走査するために、超音波プローブ1から3次元の超音波ビームを送信させる。そして、第1の実施形態に係る送受信部11は、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
なお、送受信部11からの出力信号の形態は、RF(Radio Frequency)信号と呼ばれる位相情報が含まれる信号である場合や、包絡線検波処理後の振幅情報である場合等、種々の形態が選択可能である。
Bモード処理部12は、送受信部11から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
ドプラ処理部13は、送受信部11から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。本実施形態の移動体は、血管内を流動する血液や、リンパ管内を流動するリンパ液等の流体である。
なお、第1の実施形態に係るBモード処理部12及びドプラ処理部13は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理部12は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理部13は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。3次元のBモードデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに位置する反射源の反射強度に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。また、3次元のドプラデータは、3次元走査範囲の各走査線上で設定された複数の点(サンプル点)それぞれに、血流情報(速度、分散、パワー)の値に応じた輝度値が割り当てられたデータとなる。
画像生成部14は、Bモード処理部12及びドプラ処理部13が生成したデータから超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像データを生成する。Bモード画像データは、超音波走査された領域内の組織形状が描出されたデータとなる。また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。ドプラ画像データは、超音波走査された領域内を流動する流体に関する流体情報を示すデータとなる。
ここで、画像生成部14は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成部14は、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成部14は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成部14は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成部14が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
更に、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のBモード画像データを生成する。また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のドプラ画像データを生成する。3次元Bモードデータ及び3次元ドプラデータは、スキャンコンバート処理前のボリュームデータとなる。すなわち、画像生成部14は、「3次元のBモード画像データや3次元のドプラ画像データ」を「3次元の超音波画像データであるボリュームデータ」として生成する。以下では、3次元のBモード画像データをBモードボリュームデータと記載し、3次元のドプラ画像データをドプラボリュームデータと記載する。Bモードボリュームデータは、超音波により3次元走査された領域内の組織形状を示す組織ボリュームデータとなる。また、ドプラボリュームデータは、超音波により3次元走査された領域内を流動する流体に関する流体情報を示す流体ボリュームデータとなる。
更に、画像生成部14は、ボリュームデータをモニタ2にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行なう。画像生成部14が行なうレンダリング処理としては、断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)を行なってボリュームデータからMPR画像データを生成する処理がある。また、画像生成部14が行なうレンダリング処理としては、ボリュームデータに対して「Curved MPR」を行なう処理や、ボリュームデータに対して「Maximum Intensity Projection」を行なう処理がある。また、画像生成部14が行なうレンダリング処理としては、3次元の情報を反映した2次元画像データを生成するボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理がある。
ここで、ドプラデータを用いた画像の表示方法について説明する。ドプラデータを用いた画像の表示方法は、一般的には、カラードプラ法(CDI:Color Doppler Imaging)とパワードプラ法(PDI:Power Doppler Imaging)とに大別される。カラードプラ法では、画像生成部14は、血流の方向及び血流の速度の大きさに応じて色相を変化させたカラードプラ画像データを生成する。例えば、画像生成部14は、超音波プローブ1に向かってくる方向の血流を、血流の速度の大きさに応じて赤系色(赤から黄)の色相を割り当て、超音波プローブ1から遠ざかる方向の血流を、血流の速度の大きさに応じて青系色(青から青緑)の色相を割り当てたカラードプラ画像データを生成する。なお、カラードプラ法では、画像生成部14は、速度情報に分散情報を組み合わせた速度―分散表示を行なうためのカラードプラ画像データを生成する場合もある。
また、パワードプラ法では、画像生成部14は、ドプラ信号の強度であるパワーの値に応じて、例えば、赤色系の色相や明度、或いは、彩度を変化させたパワー画像データを生成する。
3次元走査でカラードプラ法を行なう場合、画像生成部14は、ドプラボリュームデータとして、3次元ドプラデータからカラードプラボリュームデータを生成する。また、3次元走査でパワードプラ法を行なう場合、画像生成部14は、ドプラボリュームデータとして、3次元ドプラデータから、ドプラ信号の強度であるパワーの値を3次元空間上にマッピングしたパワーボリュームデータを生成する。また、3次元走査が時系列に沿って繰り返し行なわれる場合、画像生成部14は、カラードプラボリュームデータやパワーボリュームデータを時系列に沿って順次生成する。
なお、カラードプラ法では、血流が存在する範囲の検出精度が、血流方向と超音波プローブ1との相対位置に依存する。具体的には、カラードプラ法では、超音波ビームの方向と直交する方向の血流の検出精度が低下する。一方、パワードプラ法では、血流の方向や速度に関する情報を検出できないが、血流が存在する範囲を、血流方向と超音波プローブ1との相対位置に依存することなく、検出することができる。
また、ドプラ画像データは、通常、Bモード画像データに重畳されて、モニタ2に出力される。送受信部11は、2次元走査や3次元走査において、1本の走査線で1回超音波ビームの送受信を行なうBモード用のスキャンと、1本の走査線で複数回超音波ビームの送受信を行なうドプラモード用のスキャンとを並行して行なう。ドプラ処理部13は、同一走査線の複数の反射波データに対して、MTIフィルタ処理、自己相関演算処理、速度・分散・パワー推定処理を行なうことで、ドプラデータを生成する。
図1に示す画像メモリ15は、画像生成部14が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ15は、Bモード処理部12やドプラ処理部13が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ15が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成部14を経由して表示用の超音波画像データとなる。
画像処理部16は、本実施形態において、穿刺針5を用いた穿刺を支援するために、装置本体10に設置される。画像処理部16は、図1に示すように、取得部161と、第1算出部162と、第2算出部163と、判定部164と、ガイド画像生成部165とを有する。なお、画像処理部16が有する各部が行なう処理については、後に詳述する。
内部記憶部17は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶部17は、必要に応じて、画像メモリ15が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、内部記憶部17が記憶するデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部の装置へ転送することができる。
制御部18は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部18は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部17から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信部11、Bモード処理部12、ドプラ処理部13、画像生成部14、画像処理部16の処理を制御する。また、制御部18は、画像メモリ15や内部記憶部17が記憶する表示用の超音波画像データをモニタ2にて表示するように制御する。また、制御部18は、画像処理部16の処理結果をモニタ2にて表示するように制御する。
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、例えば、穿刺針5を用いた血管穿刺が行なわれる場合に、医師等の操作者に参照されるガイド用の超音波画像データとして、Bモード画像データの生成表示を行なう。血管穿刺は、血管に刺した穿刺針から目的部位までカテーテルを挿入したり、目的部位で薬剤注入を行なったりする手技である。血管穿刺の一例としては、中心静脈カテーテル(central vein catheter)がある。中心静脈カテーテルを行なう場合、医師は、例えば、内頸静脈、鎖骨下静脈、大腿静脈等の穿刺部位に穿刺針を挿入し、穿刺針から中心静脈までカテーテルを押し進める。中心静脈は、右心房から約5cm以内の胸腔内の上大静脈及び下大静脈の領域である。
そして、医師は、中心静脈まで押し進めたカテーテルから、薬剤(高カロリー輸液、カテコラミン類、抗がん剤等)の投与や点滴を行なう。或いは、中心静脈カテーテルでは、医師は、カテーテルに取り付けた装置を用いて中心静脈圧の測定を行なって、循環血液量や心機能の評価を行なう。医師は、標的血管を含む領域を2次元走査することで、略リアルタイムで生成表示されるBモード画像データを参照して、穿刺針5と標的血管とを観察しながら、穿刺を行なう。図2は、血管穿刺を説明するための図である。
まず、操作者は、血管(例えば、鎖骨下静脈)を含む領域が2次元走査されるように、被検体Pの体表に超音波プローブ1を当接する。例えば、操作者は、図2の(A)の右図に示すように、血管を輪切りにした断層像が表示されるように、超音波プローブ1の当接角度を調整する。そして、操作者は、図2の(A)の左図に示すように、超音波プローブ1の当接面(被検体Pの体表)の近傍から穿刺針5の穿刺を開始する。
そして、操作者は、皮下組織に刺した穿刺針5を小刻みに動かして、穿刺針5に接する組織を動かす。操作者は、Bモード画像データを参照して、穿刺針5の動きにより動く組織を視認し、穿刺針5の存在位置を確認する。そして、操作者は、図2の(B)の左図に示すように、穿刺針5を穿刺部位となる血管の近傍まで刺し進める。これにより、穿刺針5は、超音波の走査断面まで挿入され、その結果、Bモード画像データには、図2の(B)に示すように、高反射体である穿刺針5が線形の高輝度領域として描出される。
そして、図2の(C)の左図に示すように、穿刺針5が血管の外壁に接触すると、Bモード画像データには、図2の(C)の右図に示すように、穿刺針5に対応する高輝度領域により血管の外壁がへこむ様相が描出される。操作者は、図2の(C)の右図に示す状態を確認して、スナップを効かせて穿刺針5を血管内に挿入する。
このように、従来の血管穿刺では、一般的な腹部穿刺等と同様に、2次元のBモード画像データがガイド用の超音波画像データとして用いられている。しかし、超音波ガイド下での血管穿刺は、以下の理由により、必ずしも有用でない場合があった。図3は、従来技術の課題を説明するための図である。
穿刺ガイド用に生成表示される超音波画像データは、上述したように、一般的には、2次元の断層像(2次元のBモード画像データ)である。これに対して、血管は、走査断面内を走行しているのではなく、実際には、立体的に走行している。このため、血管の走行方向は、断層像から医師が想像した方向と一致しない場合がある。例えば、図2の(A)〜(C)に示す断層像内には、輪切りにされた血管が描出されるが、医師は、かかる断層像を、血管の走行方向に直交する短軸像であり、この画像の手前から奥に向かって血管が走行していると認識して穿刺を行なう場合がある。
すなわち、医師は、血管の走行方向(図3の(A)に示す実線の矢印を参照)に対して傾斜した方向の走査断面で生成された断層像を、短軸像と認識してしまう。かかる場合、医師は、図3の(A)に示す点線の矢印の方向を、血管の走行方向と認識して穿刺を行なう場合がある。
また、超音波の走査線が非常に薄い平面であるため、医師が走査断面から外れないように穿刺針5を操作することは、困難である。例えば、ガイド用のBモード画像データとして、血管の走行方向に沿った長軸像を用いる場合、図3の(B)に示すように、穿刺針5が走査断面から外れると、医師は、穿刺針5の針先の位置を把握することが困難である。また、穿刺針5が走査断面から外れると、医師は、長軸像で高輝度に描出されている線形領域の先端を穿刺針5の針先と認識する場合がある。
このように、従来のように、2次元のBモード画像データをガイド用の超音波画像データとして用いると、血管穿刺が容易に行なえない場合があった。これに対して、従来、穿刺針5の挿入経路と穿刺部位との位置関係を取得して、取得した位置関係に基づく穿刺ガイドを表示したり、挿入経路が穿刺部位から外れた場合に、警告を行なったりする技術が知られている。
しかし、血管穿刺の場合、更に、以下の点を考慮する必要がある。すなわち、血管が弾性を有する組織であるため、刺入角度が浅すぎると、血管により弾かれて穿刺針5が刺さりにくい場合がある。また、刺入角度が深すぎると、穿刺針5が血管に刺さっても、カテーテルワイヤーを血管内に挿入することが困難である場合がある。換言すると、血管穿刺を行なう場合、医師は、血管と穿刺針5の挿入経路とがなす角度を、穿刺が円滑に行なえるように、穿刺部位や穿刺針5の種類に応じて、調整する必要がある。例えば、図3の(C)に示す角度φが最適な刺入角度であっても、従来の技術では、角度に関する情報を医師に提供することができなかった。なお、上記の課題は、血管穿刺を行なう場合でなく、リンパ節に対して穿刺を行なう場合でも同様に生じる。
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、穿刺を円滑に行なうための情報を提供するために、以下に説明する画像処理部16の処理が行なわれる。
図1に示す取得部161は、超音波により3次元走査された領域内を流動する流体に関する流体情報を示す流体ボリュームデータから、穿刺対象の組織の位置情報を取得する。また、取得部161は、この流体ボリュームデータにおける穿刺針5の位置情報を取得する。第1の実施形態に係る取得部161は、超音波プローブ1に取り付けられた位置センサ4と穿刺針5に取り付けられた位置センサ6とから送信された情報に基づいて、穿刺針5の位置情報を取得する。
ここで、取得部161による処理は、例えば、操作者が入力装置3を介して穿刺支援モードの開始要求が入力された場合に開始される。穿刺支援モードの開始要求を入力装置3から転送された制御部18は、以下の超音波走査が行なわれるように送受信部11を介して超音波プローブ1を制御する。図4及び図5は、第1の実施形態で行なわれる超音波走査の一例を示す図である。
まず、操作者は、図4に示すように、穿刺対象の組織(例えば、鎖骨下静脈)を含む3次元領域Aと、2次元領域Bとを設定する。3次元領域Aは、例えば、鎖骨下静脈を含む3次元領域であり、2次元領域Bは、例えば、鎖骨下静脈の血管の短軸像に近い断層像を撮影するための2次元領域である。
かかる設定が行なわれると、制御部18は、3次元領域Aでドプラモード用のスキャンを超音波プローブ1に実行させ、2次元領域BでBモード用のスキャンを超音波プローブ1に実行させる。これにより、送受信部11は、Bモード用の2次元の反射波データ及びドプラモード用の3次元の反射波データを生成する。Bモード処理部12は、Bモード用の2次元の反射波データから、2次元Bモードデータを生成し、ドプラ処理部13は、ドプラモード用の3次元の反射波データから3次元ドプラデータを生成する。そして、画像生成部14は、図5に示すように、2次元BモードデータからBモード画像データ200を生成し、3次元ドプラデータからドプラボリュームデータ100を生成する。
なお、第1の実施形態は、Bモード画像データ200を生成するためのスキャンと、ドプラボリュームデータ100を生成するためのスキャンとが交互に行なわれる場合であっても、Bモード画像データ200を生成するためのスキャンがドプラボリュームデータ100を生成するためのスキャンの途中に行なわれる場合であっても良い。Bモード画像データ200及びドプラボリュームデータ100は、時系列に沿って順次生成される。なお、制御部18は、超音波走査を制御することから、超音波プローブ1が被検体Pに当接される当接面と3次元領域Aと2次元領域Bとの相対的位置関係を取得可能である。
ここで、上述したように、血流等の流体が存在する範囲の検出精度は、CDIよりPDIの方が高い。このため、操作者は、ドプラボリュームデータ100として、パワーボリュームデータを収集するように指示する。すなわち、画像生成部14は、パワーボリュームデータをドプラボリュームデータ100として生成する。なお、第1の実施形態は、例えば、血管の走行方向により、血流が存在する範囲の検出精度が低下しないと判断されるならば、カラードプラボリュームデータをドプラボリュームデータ100として収集する場合であっても良い。
そして、取得部161は、ドプラボリュームデータ100から血管の位置情報を取得する。また、取得部161は、ドプラボリュームデータ100における穿刺針5の位置情報を取得する。図6及び図7は、第1の実施形態に係る取得部を説明するための図である。
例えば、取得部161は、パワーボリュームデータであるドプラボリュームデータ100を構成する複数のボクセルの中で、所定の輝度値以上の輝度値を有するボクセル群を抽出し、抽出したボクセル群を用いた領域拡張法等を行なう。これにより、取得部161は、図6に示すように、血液が存在する3次元領域である血管領域110を、ドプラボリュームデータ100から抽出する。そして、取得部161は、ドプラボリュームデータ100における血管領域110の位置を、血管の位置情報として取得する。血管領域110は、ドプラボリュームデータ100において標的血管内を流動する血液が存在する3次元領域である。換言すると、血管領域110は、ドプラボリュームデータ100から穿刺対象の組織(血管)を抽出した抽出ボリュームデータ(血管ボリュームデータ)となる。なお、取得部161は、ノイズ低減等を目的として、血管領域110の表面に対して平滑化フィルタ処理等の後処理を行なっても良い。
また、取得部161は、位置センサ4、位置センサ6及びトランスミッター7で構成される位置検出システムの制御を行なう。取得部161は、位置センサ4、位置センサ6及びトランスミッター7に対して、位置検出処理の開始指示を送出し、位置センサ4及び位置センサ6から位置情報を受信する。ここで、取得部161は、超音波プローブ1における位置センサ4の取り付け位置と、超音波プローブ1にて振動子群が配列される配列面の位置との相対的位置関係を示すオフセット情報を記憶している。振動子群の配列面は、超音波プローブ1が被検体Pに当接される当接面となる。取得部161は、位置センサ4から受信した3次元位置情報とオフセット情報とから、実空間における当接面の3次元位置を取得する。また、取得部161は、当接面と3次元領域Aと2次元領域Bとの相対的位置関係を制御部18から取得する。これにより、取得部161は、図7の(A)に示すように、実空間における3次元領域Aと2次元領域Bとの3次元座標を取得する。
また、取得部161は、穿刺針5における位置センサ6の取り付け位置と、穿刺針5の針先との相対的位置関係を示すオフセット情報を記憶している。取得部161は、位置センサ6から受信した3次元位置情報とオフセット情報とから、実空間において、穿刺針5が占める3次元座標を取得する。これにより、取得部161は、図7の(A)に示すように、実空間における針領域Cの3次元座標を取得する。
そして、取得部161は、画像生成部14が行なうスキャンコンバート処理を制御する制御部18から、例えば、実空間の座標系を画像空間の座標系に変換するための変換行列を取得する。取得部161は、かかる変換行列を用いて、図7の(B)に示すように、ドプラボリュームデータ100における針領域300の位置情報を取得する。なお、取得部161は、かかる変換行列を用いて、図7の(B)に示すように、ドプラボリュームデータ100におけるBモード画像データ200の位置情報も取得する。
図1に戻って、第1算出部162は、組織の位置情報を用いて、組織の表面の位置を特定して組織の中心経路を算出する。具体的には、第1算出部162は、取得部161が取得した血管の位置情報を用いて、血管表面の位置を特定して血管の中心経路を算出する。また、第1算出部162は、取得部161が取得した穿刺針5の位置情報を用いて、穿刺針5の挿入経路を算出する。図8は、第1算出部を説明するための図である。
例えば、第1算出部162は、血管領域110と、ドプラボリュームデータ100における血管領域110以外の領域との境界の位置を検出し、検出した境界の位置を、血管表面の位置として特定する。そして、第1算出部162は、図8に示すように、血管表面の位置から、ドプラボリュームデータ100における標的血管の中心経路111を算出する。また、例えば、第1算出部162は、針領域300の位置情報から、穿刺針5が挿入されると想定される予想経路(図8に示す挿入経路301)を算出する。
図1に戻って、第2算出部163は、挿入経路301と中心経路111との距離を算出する。また、第2算出部163は、挿入経路301の方向ベクトルと組織の表面(血管表面)の法線ベクトルとの角度を算出する。図9及び図10は、第2算出部を説明するための図である。例えば、第2算出部163は、中心経路111上に複数の点を設定する。以下、第2算出部163が設定する点を「設定点」と定義する。そして、第2算出部163は、設定点において、中心経路111に直交する断面を求める。そして、第2算出部163は、直交断面と挿入経路301との交点を求め、この交点と直交断面の設定点との距離を算出する。そして、第2算出部163は、複数の設定点それぞれの距離の中で、最も短い距離(最短距離)を、図9に示すように、挿入経路301と中心経路111との距離Lとして算出する。距離Lは、穿刺針5が標的血管に向かって挿入されているか否かを判定するための指標となる。
また、例えば、第2算出部163は、図10に示すように、血管領域110の血管表面と、挿入経路301との交点Pを求める。そして、第2算出部163は、図10に示すように、交点Pにおける血管表面の法線ベクトル112を算出する。そして、第2算出部163は、図10に示すように、挿入経路301の方向ベクトルと法線ベクトル112とがなす角度θを算出する。角度θは、刺入角度となり、穿刺針5による穿刺が標的血管に対して最適な刺入角度で行なわれているか否かを判定するための指標となる。なお、第2算出部163は、「90度−θ」を刺入角度として算出しても良い。ここで、第2算出部163は、穿刺針5が標的血管から外れて挿入されているために、交点Pが求められなかった場合、角度θが算出不可であるとして、以下に説明する判定部164に通知する。
図1に戻って、判定部164は、距離Lが第1閾値範囲内であるか、第1閾値範囲外であるかを判定し、角度θが第2閾値範囲内であるか、第2閾値範囲外であるかを判定する。第1閾値範囲は、穿刺における許容距離範囲であり、第2閾値範囲は、穿刺における許容角度範囲である。図11及び図12は、判定部の判定処理に用いられる情報の一例を示す図である。
例えば、第1閾値範囲(許容距離範囲)及び第2閾値範囲(許容角度範囲)は、穿刺針5の種類及び穿刺部位の少なくとも1つに基づいて、設定される。図11の(A)では、穿刺部位P1は、例えば、鎖骨下静脈を示し、穿刺部位P2は、例えば、大腿静脈を示す。また、図11の(A)では、種類K1は、例えば、カテーテル留置用の穿刺針5が用いられることを示し、種類K2は、例えば、カテーテルによる薬剤投与用の穿刺針5が用いられることを示す。
かかる場合、例えば、内部記憶部17は、図11の(A)に示すように、「穿刺部位:P1、種類:K1」では、許容距離範囲が「0≦L≦L11」であり、許容角度範囲が「θ111≦θ≦θ112」とする設定情報を記憶する。また、例えば、内部記憶部17は、図11の(A)に示すように、「穿刺部位:P1、種類:K2」では、許容距離範囲が「0≦L≦L12」であり、許容角度範囲が「θ121≦θ≦θ122」とする設定情報を記憶する。
また、例えば、内部記憶部17は、図11の(A)に示すように、「穿刺部位:P2、種類:K1」では、許容距離範囲が「0≦L≦L21」であり、許容角度範囲が「θ211≦θ≦θ212」とする設定情報を記憶する。また、例えば、内部記憶部17は、図11の(A)に示すように、「穿刺部位:P2、種類:K2」では、許容距離範囲が「0≦L≦L22」であり、許容角度範囲が「θ221≦θ≦θ222」とする設定情報を記憶する。図11の(A)に示す設定情報は、予めシステムに初期設定されている場合であっても、操作者により事前に設定されている場合であっても良い。
操作者は、穿刺支援モードの開始要求を入力する際に、穿刺部位と穿刺針5の種類とを入力する。例えば、操作者は、「穿刺部位:P1、種類:K1」を入力する。かかる場合、判定部164は、距離Lが「0≦L≦L11」であるか否かを判定し、角度θが「θ111≦θ≦θ112」であるか否かを判定する。
なお、操作者は、内部記憶部17が記憶する設定情報を、所定の係数を用いて、変更しても良い。例えば、操作者は、入力装置3が有するスライドバーを調整して、許容距離範囲用の係数や許容角度範囲用の係数を設定する。例えば、「0≦L≦L11」に対して許容距離範囲用の係数「α」が設定された場合、判定部164は、図11の(B)に示すように、距離Lが「0≦L≦αL11」であるか否かを判定する。また、例えば、「θ111≦θ≦θ112」に対して許容角度範囲用の係数「β」が設定された場合、判定部164は、図11の(B)に示すように、角度θが「βθ111≦θ≦βθ112」であるか否かを判定する。αやβは、判定基準を厳しくするか、緩やかにするかに応じて、操作者が任意に変更可能な緩衝用(バッファ用)の係数となる。
なお、判定部164は、上述したように予め設定された許容距離範囲を用いて判定処理を行なっても良いが、以下に説明するように、実際に穿刺が行なわれる血管に応じて適応的に設定される許容距離範囲を用いて判定処理を行なっても良い。すなわち、許容距離範囲は、組織の表面(血管表面)の位置と中心経路111とから算出される組織の口径(血管径)に基づいて設定されても良い。例えば、第1算出部162は、図12に示すように、血管領域110の表面の位置と、中心経路111とから、血管の平均半径Rを算出する。そして、判定部164は、例えば、「0≦L≦γR」を許容距離範囲として設定し、距離Lの判定処理を行なう。ここで、「γ」は、1以下の実数であり、例えば、予めシステムに初期設定されている場合であっても、操作者により設定される場合であっても良い。
そして、制御部18は、判定部164の判定結果、すなわち、距離Lと第1閾値範囲(許容距離範囲)とを比較した結果と、角度θと第2閾値範囲(許容角度範囲)とを比較した結果とを操作者に通知する。具体的には、制御部18は、距離Lが第1閾値範囲(許容距離範囲)の範囲外である第1の場合、角度θが第2閾値範囲(許容角度範囲)の範囲外である第2の場合、又は、距離Lが許容距離範囲の範囲外であり角度θが許容角度範囲の範囲外である第3の場合、操作者に警告を通知する。例えば、制御部18は、判定部164の判定結果が第1の場合、第2の場合、第3の場合のいずれかであるならば、モニタ2に警告を表示させたり、図示しないスピーカから警告音を発生させたりする。
図1に戻って、ガイド画像生成部165は、操作者に参照される超音波画像データである参照画像データと、穿刺対象の組織の位置情報を用いて流体ボリュームデータから組織を抽出した抽出ボリュームデータとを合成した合成画像データを、ガイド画像データとして生成する。或いは、ガイド画像生成部165は、合成画像データに、更に、挿入経路301を重畳した画像データをガイド画像データとして生成する。上記の参照画像データは、第1の実施形態では、超音波により3次元走査された領域内の断面を超音波により2次元走査して生成された超音波画像データ(Bモード画像データ200)である。また、上記の抽出ボリュームデータは、上述したように、第1算出部162が、穿刺対象の血管の位置情報を用いてドプラボリュームデータ100から血管を抽出した血管領域110(血管ボリュームデータ)である。図13は、第1の実施形態に係るガイド画像生成部を説明するための図である。
第1の実施形態に係るガイド画像生成部165は、例えば、取得部161が取得した位置情報に基づいて、参照画像データであるBモード画像データ200と、血管領域110と、挿入経路301とを仮想空間に配置する。そして、ガイド画像生成部165は、仮想空間で位置合わせされたBモード画像データ200と、血管領域110と、挿入経路301とをVR処理することで、図13に示すように、ガイド画像データ400を生成する。なお、図13に示す領域200Aは、VR処理されたBモード画像データ200に対応する領域であり、図13に示す領域110Aは、VR処理された血管領域110(血管ボリュームデータ)に対応する領域であり、領域301Aは、VR処理された挿入経路301に対応する領域である。
ここで、ガイド画像生成部165は、例えば、制御部18の制御により、ガイド画像データ400を生成する際に、領域200Aと領域110Aと領域301Aとを重畳する不透明度(opacity)を調整しても良い。かかる不透明度の調整は、Bモード画像データ200と血管領域110と挿入経路301との位置関係が明瞭に描出されたガイド画像データ400を生成表示するために必要な処理となる。なお、ガイド画像データ400は、画像生成部14により生成されても良い。
そして、制御部18は、上記の通知制御と並行して、参照画像データ(Bモード画像データ200)とともに、ガイド画像データ400をモニタ2に表示させる。図14は、第1の実施形態に係る制御部の処理の一例を示す図である。
例えば、距離Lが許容距離範囲内であり、且つ、角度θが許容角度範囲内である場合、モニタ2は、図11の(A)に示すように、穿刺が良好に行なわれていることを示す文字情報「OK」を表示し、Bモード画像データ200及びガイド画像データ400を表示する。なお、本実施形態は、スピーカから「OK」の音声を出力させても良い。
一方、判定部164の判定結果が第1の場合、第2の場合、第3の場合のいずれかである場合、モニタ2は、図11の(B)に示すように、穿刺が適切に行なわれていないことを示す文字情報「NG」を表示し、Bモード画像データ200及びガイド画像データ400を表示する。なお、本実施形態は、スピーカから「NG」の音声を出力させても良い。また、モニタ2は、制御部18の制御により、文字情報「NG」とともに、距離L及び角度θの値を表示したり、距離L及び角度θが許容距離範囲内及び許容角度範囲内となる具体的な指示を表示したりしても良い。また、本実施形態は、スピーカから、距離L及び角度θの値を音声で出力させたり、距離L及び角度θが許容距離範囲内及び許容角度範囲内となる具体的な指示を音声で出力させたりしても良い。
なお、ガイド画像データ400とともに表示される参照画像データは、Bモード画像データ200以外の超音波画像データであっても良い。例えば、参照画像データは、ドプラボリュームデータ100を2次元領域Bに対応する断面で切断したドプラ画像データであっても、Bモード画像データ200の一部の領域をこのドプラ画像データで置き換えた画像データであっても、Bモード画像データ200とこのドプラ画像データとを不透明度を調整して重畳した画像データであっても良い。
上記の通知処理及びガイド画像生成表示処理は、穿刺支援モードの終了要求を受け付けるまで、ドプラボリュームデータ100及びBモード画像データ200が新規に収集されるごとに、実行される。
次に、図15を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図15は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理例を説明するためのフローチャートである。なお、図15は、穿刺支援モードの開始要求を受け付けて、画像処理部16の処理が開始された後の処理を例示したフローチャートである。
図15に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置の取得部161は、ドプラボリュームデータ100が収集されたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、ドプラボリュームデータ100が新規に収集されていない場合(ステップS101否定)、取得部161は、新規にドプラボリュームデータ100が収集されるまで待機する。
一方、新規にドプラボリュームデータ100が収集された場合(ステップS101肯定)、取得部161は、ドプラボリュームデータ100から血管位置情報(標的血管の位置情報)を取得する(ステップS102)。そして、取得部161は、位置検出システムから受信した情報から、ドプラボリュームデータ100における針位置情報(穿刺針5の位置情報)を取得する(ステップS103)。なお、取得部161は、ステップS102の処理とステップS103の処理とを並列して行なっても良い。
そして、第1算出部162は、血管位置情報を用いて、血管の表面位置を特定して中心経路111を算出し、針位置情報を用いて、穿刺針5の挿入経路301を算出する(ステップS104)。そして、第2算出部163は、距離(L)及び角度(θ)を算出し(ステップS105)、判定部164は、距離(L)及び角度(θ)と許容距離範囲及び許容角度範囲とを比較して、判定を行なう(ステップS106)。
一方、ステップS105及びステップS106の処理と並行して、ガイド画像生成部165は、ガイド画像データ400を生成する(ステップS107)。
そして、制御部18の制御により、モニタ2は、現時点で収集された2次元のBモード画像データ200とガイド画像データ400とを、判定結果とともに表示し(ステップS108)、処理を終了する。なお、穿刺支援モードの終了要求を受け付けるまで、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、新規にドプラボリュームデータ100が収集されるごとに、ステップS102〜ステップS108の処理を繰り返す。
上述したように、第1の実施形態では、ドプラボリュームデータ100を用いて血管の位置情報を取得し、位置検出システムを用いてドプラボリュームデータ100における穿刺針5の位置情報を取得する。そして、第1の実施形態では、血管と穿刺針5との相対的位置関係(距離及び角度)から、穿刺針5の進路が血管を的確に捉えているか、穿刺針5の刺入角度が適切であるかを判定し、判定結果を操作者に通知する。
また、第1の実施形態では、血管と穿刺針5と参照画像データ(Bモード画像データ200)との相対的位置関係を、穿刺を行なう術者が直感的に把握できるガイド画像データ400を、参照画像データとは別に表示する。このように、第1の実施形態では、穿刺を円滑に行なうための情報を提供することができる。
なお、第1の実施形態は、判定結果に基づく通知のみを行なって、穿刺が適切に行なわれているか否かを操作者である医師が認識可能として、ガイド画像データ400の生成表示を行なわない場合であっても良い。また、第1の実施形態は、判定結果に基づく通知とともに表示されるガイド画像データ400に、挿入経路の情報を含めない場合でも良い。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した位置検出システムを用いずに、取得部161が穿刺針5の位置情報を取得する場合について、図16及び図17を用いて説明する。図16及び図17は、第2の実施形態を説明するための図である。
第2の実施形態に係る超音波診断装置は、位置センサ4、位置センサ6及びトランスミッター7で構成される位置検出システムを有さない点以外、図1に例示する第1の実施形態に係る超音波診断装置と同様に構成される。そして、第2の実施形態に係る画像処理部16は、図1に例示する第1の実施形態に係る画像処理部16と同様に構成される。
ただし、第2の実施形態では、取得部161は、以下の処理により、ドプラボリュームデータ100における穿刺針5の位置情報を取得する。第2の実施形態に係る取得部161は、穿刺対象となる組織(標的血管)を含む領域内に存在する組織の形状を示すボリュームデータであって、当該領域内に存在する反射源の反射強度に応じた輝度値が割り当てられた組織ボリュームデータを用いる。すなわち、第2の実施形態に係る取得部161は、Bモードボリュームデータを用いる。そして、第2の実施形態に係る取得部161は、Bモードボリュームデータから、所定の輝度値以上となる高輝度領域を抽出して、穿刺針5の位置情報を取得する。
例えば、第2の実施形態では、制御部18は、図4に示す3次元領域Aにおいて、Bモード用のスキャンとドプラモード用のスキャンとを交互に超音波プローブ1に実行させる。これにより、送受信部11は、Bモード用の3次元の反射波データ及びドプラモード用の3次元の反射波データを生成する。Bモード処理部12は、Bモード用の3次元の反射波データから、3次元Bモードデータを生成し、ドプラ処理部13は、ドプラモード用の3次元の反射波データから3次元ドプラデータを生成する。そして、画像生成部14は、図16に示すように、3次元BモードデータからBモードボリュームデータ500を生成し、3次元ドプラデータからドプラボリュームデータ100を生成する。なお、第2の実施形態では、Bモードボリュームデータ500を生成するための3次元走査領域と、ドプラボリュームデータ100を生成するための3次元走査領域とが異なる大きさであっても良い。
ここで、Bモードボリュームデータ500とドプラボリュームデータ100とは、当接位置及び当接角度が固定された状態の超音波プローブ1により3次元走査されることで生成される。従って、Bモードボリュームデータ500を構成する各ボクセルの座標とドプラボリュームデータ100を構成する各ボクセルの座標とは、同一の画像空間の座標系で表現される。
第2の実施形態に係る取得部161は、第1の実施形態で説明したように、ドプラボリュームデータ100から血管領域110(血管ボリュームデータ)を抽出することで、血管の位置情報を取得する(図16の左図を参照)。そして、第2の実施形態に係る取得部161は、Bモードボリュームデータ500から所定の輝度値を有する線形の高輝度領域510を抽出する(図16の右図を参照)。そして、第2の実施形態に係る取得部161は、Bモードボリュームデータ500において高輝度領域510が占める位置情報を、ドプラボリュームデータ100における穿刺針5の位置情報として取得する。
第2の実施形態に係る第1算出部162は、第1の実施形態と同様に、血管領域110と、ドプラボリュームデータ100における血管領域110以外の領域との境界の位置を検出し、検出した境界の位置を、血管表面の位置として特定する。そして、第1算出部162は、第1の実施形態と同様に、血管表面の位置から、ドプラボリュームデータ100における標的血管の中心経路111(図8を参照)を算出する。また、第2の実施形態に係る第1算出部162は、図16の左図に示すように、高輝度領域510の位置情報から、穿刺針5が挿入されると想定される予想経路(挿入経路511)を算出する。
第2の実施形態に係る第2算出部163は、第1の実施形態と同様に、挿入経路511と中心経路111との距離Lを算出する。また、第2算出部163は、第1の実施形態と同様に、挿入経路511の方向ベクトルと組織の表面(血管表面)の法線ベクトルとの角度θを算出する。そして、第2の実施形態に係る判定部164は、第1の実施形態と同様に、距離Lが第1閾値範囲内であるか、第1閾値範囲外であるかを判定し、角度θが第2閾値範囲内であるか、第2閾値範囲外であるかを判定する。
第2の実施形態に係るガイド画像生成部165は、図17に示すガイド画像データ410を生成する。ここで、第2の実施形態では、モニタ2に表示される参照画像データは、Bモードボリュームデータ500から生成された2次元画像データとなる。例えば、画像生成部14は、操作者の指示により、Bモードボリュームデータ500を2次元領域B(図4を参照)に対応する断面で切断した2次元Bモード画像データを、参照画像データとして生成する。或いは、例えば、画像生成部14は、操作者の指示により、この2次元Bモード画像データの一部の領域を、ドプラボリュームデータ100を2次元領域Bに対応する断面で切断したドプラ画像データで置き換えた画像データを、参照画像データとして生成する。或いは、例えば、画像生成部14は、操作者の指示により、Bモードボリュームデータ500のVR画像データを、参照画像データとして生成する。或いは、例えば、画像生成部14は、操作者の指示により、Bモードボリュームデータ500とドプラボリュームデータ100とを不透明度を調整して重畳したボリュームデータのVR画像データを、参照画像データとして生成する。
そして、ガイド画像生成部165は、取得部161が取得した位置情報に基づいて、参照画像データと、血管領域110と、挿入経路511とを仮想空間に配置する。そして、ガイド画像生成部165は、仮想空間で位置合わせされた参照画像データと、血管領域110と、挿入経路511とをVR処理することで、図17に示すように、ガイド画像データ410を生成する。なお、図17に示す領域500Sは、VR処理された参照画像データに対応する領域であり、図17に示す領域110Aは、VR処理された血管領域110(血管ボリュームデータ)に対応する領域であり、領域511Aは、VR処理された挿入経路511に対応する領域である。
ここで、ガイド画像生成部165は、第1の実施形態と同様に、例えば、制御部18の制御により、ガイド画像データ400を生成する際に、領域200Aと領域110Aと領域301Aとを重畳する不透明度(opacity)を調整しても良い。なお、ガイド画像データ410は、画像生成部14により生成されても良い。
制御部18は、第1の実施形態と同様に、判定部164による判定結果と、参照画像データと、ガイド画像データ410とを、モニタ2に表示させる。なお、制御部18は、判定部164による判定結果を音声で出力させても良い。
第2の実施形態においても、上記の通知処理及びガイド画像生成表示処理は、穿刺支援モードの終了要求を受け付けるまで、ドプラボリュームデータ100及びBモードボリュームデータ500が新規に収集されるごとに、実行される。また、第1の実施形態で説明した内容は、Bモードボリュームデータ500を用いて穿刺針5の位置情報を取得する点以外、第2の実施形態でも適用可能である。
上述したように、第2の実施形態では、位置検出システムを用いずに、Bモードボリュームデータ500を用いて穿刺針5の位置情報を取得することで、穿刺を円滑に行なうための情報を提供可能な超音波診断装置を、簡易な構成で製造することができる。
なお、第1の実施形態及び第2の実施形態では、血管穿刺を行なう場合について説明したが、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明した画像処理方法は、リンパ腺の穿刺を行なう場合でも適用可能である。
また、第1の実施形態及び第2の実施形態では、極端に湾曲していない血管に対して穿刺を行なう場合について説明した。すなわち、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明した画像処理方法は、穿刺針5の挿入経路に交差する血管が1箇所であるという前提に基づく方法である。しかし、仮に、穿刺対象が、曲がりくねっていて、穿刺針5の経路に交差する箇所が複数である場合、どの箇所が穿刺対象かを指定することが必要となる。かかる場合、例えば、操作者、又は、制御部18は、最初に穿刺針5の経路と交差する箇所を、穿刺対象として、上記の画像処理を実行させる。図18は、変形例を説明するための図である。
或いは、制御部18は、例えば、図18に示すように、穿刺針5の経路と交差する箇所が2箇所(点C1及び点C2)であることを、モニタ2に表示させる。操作者は、モニタ2を参照して、例えば、点C1を指定する。かかる場合、制御部18は、点C1を穿刺対象として、画像処理部16に、上記の画像処理を実行させる。これにより、上記の変形例では、穿刺針5の経路に交差する箇所が複数である場合でも、穿刺を円滑に行なうための情報を提供することができる。
なお、上記の第1の実施形態、第2の実施形態及び変形例の説明で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、第1の実施形態、第2の実施形態及び変形例で説明した画像処理方法は、あらかじめ用意された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD、USBメモリ及びSDカードメモリ等のFlashメモリ等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって非一時的な記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上、説明したとおり、第1の実施形態、第2の実施形態及び変形例によれば、穿刺を円滑に行なうための情報を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。