JP6072434B2 - コンクリート構造物表面の長さ変化測定方法及び装置 - Google Patents

コンクリート構造物表面の長さ変化測定方法及び装置 Download PDF

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Description

本発明は、コンクリート供試体やコンクリート構造物の表面付近の長さ変化量の測定に用いるコンクリート構造物表面の長さ変化測定方法及び装置に関する。
従来のコンクリート供試体の長さ変化量の測定方法としては、JIS A 1129-2「モルタルおよびコンクリートの長さ変化測定方法−第2部:コンタクトゲージ法」、JIS A 1129-3「モルタルおよびコンクリートの長さ変化測定方法−第3部:ダイヤルゲージ法」に規定された方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
コンタクトゲージ法は、ダイヤルゲージを付属した測定器(コンタクトストレインゲージ)を用いて、コンクリート供試体の表面の長さ変化を測定するもので、この方法では、供試体の表面にゲージプラグを貼り付け又は埋め込み、このケージプラグにコンタクトストレインゲージを押し付けて、コンクリート供試体の長さ変化を測定する。
ダイヤルゲージ法は、ダイヤルゲージを付属した測定器(測長枠)を用いて、コンクリート供試体の中心軸の長さ変化を測定するもので、この方法では、供試体の上下各面の中心にゲージプラグを埋め込み、供試体を測長枠に嵌め込んで、供試体の各ゲージプラグと測定器上下のスピンドルとを接触させて、供試体の長さ変化を測定する。
また、他の測定方法として、ひずみゲージを用いて、供試体のひずみを電気的に測定する技術が普及されている。この方法では、供試体の表面にひずみゲージを貼り付け、又は供試体の中にひずみゲージ式変換器(ひずみ計)を埋設して、供試体の長さの変化に応じて変化するひずみゲージの抵抗値を読み取ることにより、コンクリート供試体の長さ変化を測定する。
特開2011−95115公報(段落0002、段落0003) 特開平10−339601公報(段落0002−段落0004)
ところで、上記従来のコンクリート供試体の長さ変化量の測定方法では、屋外のコンクリート構造物の長さ変化を測定する場合に、次のような検討すべき課題がある。
(1)屋外のコンクリート構造物の測定では、コンクリート中の粗骨材の分布と偏り、水分量や空気泡の不均一さなどに起因する長さ変化量のばらつきの影響をできるだけ低減して、安定した正確な長さ変化量を測定することが求められるため、測定する標点の間隔は可能な限り長いことが望ましい。
これに対して、ダイヤルゲージ法は、標点の間隔が400mmとなる角柱供試体の長さ変化量を測定する方法で、供試体の測定に限られており、現場の実構造物への適用はできない。
コンタクトゲージ法では、ゲージプラグ(標点)を200mmピッチで複数個所に直列配置することで、それぞれの標点間隔の変化をダイヤルゲージで読み取ることができ、現場の実構造物への適用が可能であるものの、測定する標点の間隔が短く、測定作業が煩雑になり、多くの時間を必要とする。また、この方法を現場で実施する場合、コンタクトストレインゲージのケージプラグへの当て方に個人差が出やすく、長さ変化量を正確に測定するためには、熟練者による測定が必要である。
ひずみゲージ法では、ゲージの長さが最大120mm、ひずみ計で最大200mであるため、現場の実構造物への適用を考えると、測定する標点の間隔は短く、測定作業が煩雑になる。
(2)屋外のコンクリート構造物の測定においては、当然のことながら、屋外での測定となるため、屋外での測定の可否が重要である。
これに対して、ダイヤルゲージ法は、角柱供試体の長さ変化に限られる室内試験であるため、現場の実構造物に適用することができない。
コンタクトゲージ法は、供試体の寸法に制限されず、また、標準尺に熱膨張率の小さいインバー鋼が用いられることから、屋外での使用は可能である。
ひずみゲージ法では、ゲージ自体に絶縁低下を防ぐ処置を行え、また、防水型の製品を使用できるので、屋外での使用が可能である。
(3)屋外のコンクリート構造物の測定においては、測定期間は、一般に、長期間に亘り、例えば、乾燥収縮に起因する長さ変化を測定する場合、6か月程度の測定が必要となる。
これに対して、特にひずみゲージ法では、電源を常に確保して測定を維持する必要があるところ、建設現場では、足場の盛り換えや配電盤の頻繁な移動によって、電源を一時的に停止することが多く、この場合、電源再開時の測定値がシフトすることがある。
従来のコンクリート供試体の長さ変化量の測定方法を現場の実構造物に適用することを考えた場合、上記(1)−(3)により、次のように結論付けられる。
(a)ダイヤルゲージ法では、供試体の測定に限られるため、現場の実構造物に適用することができない。
(b)コンタクトゲージ法では、コンクリート構造物の長さ変化を測定するには、標点の間隔が短く、測定作業が煩雑になる。特に、この方法の場合、熟練者による測定が必須である。
(c)ひずみゲージ法では、コンクリート構造物の長さ変化を測定するには、標点の間隔が短く、測定作業が煩雑になる。特に、この方法の場合、長期間に亘る電源の確保が難しい。
よって、屋外のコンクリート構造物に生じる長さ変化量を長期間に亘って測定するには、いずれの方法も満足できるものではない。
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種のコンクリート構造物表面の長さ変化測定方法及び装置において、特に、標点間隔を従来になく長くすること、測定精度を数マイクロと極めて高くすること、実構造物に生じた表面ひずみの測定から、ひび割れ発生の危険度の判定を可能とすること、電気的計測器を用いることなく、安定的に長期間の屋外測定を可能とすること、を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、コンクリート構造物表面の長さ変化を測定するコンクリート構造物表面の長さ変化測定方法であって、一端に標点を設けた所定の長さからなる一対の測定尺を、当該各測定尺の一端を所定の小さい間隔を介して近接させ、当該各測定尺の長さ方向を前記コンクリート構造物の表面の長さ測定方向に向け、当該各測定尺の他端を、当該各測定尺の他端にボルト通し孔を穿ち取付ボルトを挿通し、前記コンクリート構造物の型枠脱型後の表面のコンクリート内部に通されたセパレータのねじ部に長ナットを介して締結して、前記セパレータのねじ部に固定することにより、前記コンクリート構造物の表面に設置し、前記各測定尺の前記各標点間の間隔長さを測定する、ことを要旨とする。
この場合、各測定尺の一端間に2mmから5mmまでの間隔を設け、各標点の外を20mm以内とすることが好ましい。
また、各標点間の間隔長さの測定にマイクロメータを含む変位測定装置を用い、前記各標点の外を0.001mm単位で測定することが好ましい。
また、上記目的を達成するために、本発明は、コンクリート構造物表面の長さ変化を測定するコンクリート構造物表面の長さ変化測定装置であって、一端に標点を有し、他端にボルト通し孔を有し、所定の長さからなる一対の測定尺と、前記コンクリート構造物の型枠脱型後の表面の、コンクリート内部に通されたセパレータのねじ部に締結可能な長ナット、及び前記各測定尺の他端のボルト通し孔に挿通し、前記長ナットに螺合可能な取付ボルトを有し、前記各測定尺の他端を前記コンクリート構造物の表面に支持固定するための一対の支持装置とを備え、前記各測定尺は、当該各測定尺の一端が所定の小さい間隔を介して近接され、当該各測定尺の長さ方向を前記コンクリート構造物の表面の長さ測定方向に向けられ、当該各測定尺他端が前記各支持装置により前記セパレータのねじ部に固定されて、コンクリート構造物の表面に設置され、前記各測定尺の前記各標点間の間隔長さを測定する、ことを要旨とする。
また、この長さ変化測定装置は各部に次のような構成が採用されることが好ましい。
(1)測定尺は線膨張係数が既知の鋼材からなる。
(2)標点は突起状の部材からなる。
(3)支持装置は測定尺の自重による回転方向の動きを規制する手段を併せて有する。
(4)標点間の間隔長さの測定にマイクロメータを含む変位測定装置が採用される。
本発明の長さ変化測定方法及び装置によれば、上記のとおり、実コンクリート構造物の表面にセパレータのねじ部を介して一対の測定尺を設置して、各測定尺の一端に設けた2つの標点間の間隔長さをマイクロメータなどの変位測定装置により測定して、一対の測定尺の2つの支持点(セパレータのねじ部)間の変位量、すなわち、実コンクリート構造物表面の長さ変化を測定するので、実コンクリート構造物の現場で、測定用の器具の取り付けを容易に行え、実コンクリート構造物の表面の長さ変化を、長期の測定期間に亘り、実コンクリート構造物の表面の長さ変化を測定するための2測定点間の距離を十分に長くして、簡易に、しかも数マイクロの精度で正確に測定することができる、という本願発明固有の格別な効果を奏する。
本発明に基づくコンクリート構造物表面の長さ変化測定方法を示す図 図1中のB部を拡大して示す図 一般の実コンクリート構造物及びこれに設置されるセパレータを示す図 本発明に基づくコンクリート構造物表面の長さ変化測定装置を示す図((イ)は平面図(ロ)は(イ)図中のA部を示す拡大断面図) 本発明に基づく長さ変化測定装置(試験測定器)の試験結果を示す図
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。図1及び図2にこの発明に基づくコンクリート構造物表面の長さ変化測定方法を示している。
図1に示すように、このコンクリート構造物表面の長さ変化測定方法は、コンクリート構造物の表面に2つの標点を設け、これら標点間の間隔長さを測定して、コンクリート構造物表面の長さ変化を測定するものであり、特に、この方法では、一端に標点11を設けた所定の長さからなる2本一対の測定尺1を、各測定尺1の一端を所定の小さい間隔を介して近接させ、各測定尺1の長さ方向を実コンクリート構造物C(以下、単に実構造物Cという。)の表面の長さ測定方向に向けて、各測定尺1の他端を実構造物Cの表面に支持固定することにより、実構造物Cの表面に設置して、この一対の測定尺1の各標点11間の間隔長さを測定する。
この場合、一対の測定尺1をそれぞれ、曲げ変形が生じない程度の剛性を有する材料により、細長い板状又は棒状に形成し、各測定尺1の一端に突起状の標点11を設ける。
また、この場合、図2に示すように、各測定尺1の実構造物Cの表面への設置に際し、各測定尺1の一端間に2mm乃至5mmの間隔を設け、各標点11の外側の間隔を20mm以内とする。
また、この方法では、図1に示すように、各測定尺1の実構造物Cの表面への支持固定に、型枠脱型後の実構造物Cの表面の、コンクリート内部に通された複数のセパレータSのねじ部S1を利用した。
図3に示すように、この種の実構造物Cは、幅が一定に仕上がるように、通常、型枠を貫通して複数のセパレータSが設置される。このセパレータSの設置間隔は、一般に、コンクリートの側圧に対抗できるように設計されており、型枠せき板の剛性などを考慮して、各セパレータSが450mmピッチ若しくは600mmピッチに配置されることが多い。
そこで、型枠脱型後の実構造物の複数のセパレータSのねじ部S1を使って、一対の測定尺1を支持固定する。
この場合、各測定尺1の長さ(実測部)をセパレータSの配置ピッチに概ね合わせて、約450mm前後乃至600mm前後とし、支持固定側になる他端にボルト通し孔12を穿孔する。このボルト通し孔12に取付ボルト22を挿通する。そして、実構造物C表面の長さを測定しようとする位置に配置される左右方向又は上下方向に連続する例えば3個のセパレータSのうち、両端となる各セパレータSのねじ部S1からプラスチックコーン(図示省略)を撤去した後、当該両端のねじ部S1にそれぞれ長ナット21を締結して、一方の測定尺1を一方端のセパレータSと中央となるセパレータSとの間に配置し、他端に通した取付ボルト22を一方端のセパレータSの長ナット21に螺合して、一方の測定尺1の他端を一方端のセパレータSのねじ部S1に固定する。同様にして、他方の測定尺1の他端を他方端のセパレータSのねじ部S1に固定する。
このようにして一対の測定尺1をそれぞれ、実構造物Cの表面に、左右方向又は上下方向に連続する例えば3個のセパレータSのねじ部S1のうち両端のねじ部S1を利用して、中央のセパレータSのねじ部S1を中心に左右対称又は上下対称に設置し、各測定尺1の標点11を有する一端を相互に対向させる。
このようにこの方法では、実構造物Cの表面にセパレータSのねじ部S1を介して一対の測定尺1を設置して、実構造物Cの表面に2つの標点11を設け、これら2標点11間の間隔長さを1/1000mm読みのマイクロメータなどの変位測定装置により測定して、一対の測定尺1の2つの支持点(両端のセパレータSのねじ部S1)間の変位量、すなわち、実構造物C表面の長さ変化を測定する。
この方法によると、実構造物Cの表面に、セパレータSのねじ部S1を利用して一対の測定尺1を設置し、この一対の測定尺1間の2つの標点11間の間隔長さを変位測定装置により測定するので、実構造物Cの現場で、測定用の器具の取り付けを容易に行え、実構造物Cの表面の長さ変化を簡易に測定することができる。
また、この方法では、各標点11の外側の間隔が20mm程度で、一対の測定尺1の2つの支持点(両端のセパレータSのねじ部S1)間の距離を概ね900mm〜1200mmとしているので、2標点11間の間隔長さは(従来に比べて)短く、実構造物Cの表面の長さ変化を測定するための2測定点間の距離は(従来に比べて)大幅に長尺化される。したがって、この方法では、2標点11間の間隔長さを測定して、概ね900mm〜1200mm離れた一対の測定尺1の2つの支持点間の変位量を測定するので、実構造物Cの表面の長さ変化を、2測定点間の距離を十分に長くして、正確に測定することができる。そして、実構造物Cに生じた表面ひずみの測定から、ひび割れ発生の危険度を判定することができる。
さらに、この方法では、僅か20mm程度の2標点11間の間隔長さを測定するので、この2標点11間の間隔長さの測定に1/1000mm読みのマイクロメータを用い、2標点11間の間隔長さを1/1000mm単位で読み取ることで、実構造物Cの表面の長さ変化を、簡易に、数マイクロの精度で正確に測定することができる。
またさらに、この方法では、一対の測定尺1間の2つの標点11間の間隔長さを変位測定装置により測定するだけでよく、電気式の計測器を用いることがないので、電源を不要として、実構造物Cの表面の長さ変化(量)を、長期間に亘り、安定的に測定することができる。したがって、実構造物Cの長さ変化(量)の測定は、測定の目的に合致するように設定した初回の測定時期(初期値)の測定以降、測定間隔は指数的に長期化させる。例えば乾燥収縮による長さ変化を測定する場合、最初の1か月は1週間に1回、2、3か月の間は2週間に1回、4か月から6か月の間は1月に1回程度の測定頻度で目的は達成される。
以上説明したように、この方法によれば、実構造物Cの表面の長さ変化を、現場で、長期の測定期間に亘り、実構造物Cの表面の長さ変化を測定するための2測定点間の距離を十分に長くして、簡易に、しかも数マイクロの精度で正確に測定することができる。
なお、この長さ変化測定方法では、一対の測定尺1を実構造物CのセパレータSのねじ部S1を利用して取り付けるものとしたが、一対の測定尺1の取り付けに他の手段を用いてもよいことは勿論である。
図4にこの種のコンクリート構造物の長さ変化を測定するのに適した長さ変化測定装置を示している。
図4に示すように、この長さ変化測定装置Mは、コンクリート構造物の表面に2つの標点を設け、これら標点間の間隔長さを測定して、コンクリート構造物表面の長さ変化を測定する形式の装置で、特に、この装置Mは、一端に標点11を有し、他端に被支持部を有し、所定の長さからなる2本一対の測定尺1と、各測定尺1の他端を実構造物Cの表面に支持固定するための一対の支持装置2とを備えて構成される。
また、この装置Mは、型枠脱型後の実構造物Cの表面の、コンクリート内部に通された複数のセパレータSのねじ部S1を利用して取り付けられる形式が採用される。
一対の測定尺1はそれぞれ、線膨張係数が既知の鋼材など剛性を有する材料からなる。この場合、各測定尺1はステンレス鋼により細長い板状に形成され、片持ちばり状態で長期間支持されても曲げ変形が生じない程度の剛性と形状を有している。各測定尺1の長さ(実測部)は、セパレータSの配置ピッチに概ね合わせて、約450mm前後乃至600mm前後としてある。また、この場合、各測定尺1は、周囲の温度変化の影響を確認できるように、線膨張係数が、17.3×10-6/℃のものを使用する。
これらの測定尺1の一端に標点11が形成され、他端にボルト通し孔12が穿たれる。この場合、各標点11は突起状の部材からなり、ここでは特に、硬質のプラスチック棒やステンレス鋼など、半年程度の屋外の腐食環境に置かれても腐食しにくい材料により、円筒状又は角筒状に形成される。各標点11は、各測定尺1の一方の側面の一端に当該側面に対して直角方向に突状に設けられる。また、ボルト通し孔12は後述する支持装置2の取付ボルト22が挿通可能に形成される。
支持装置2は、実構造物Cの複数のセパレータSのねじ部S1が利用され、セパレータSのねじ部S1に締結可能な長ナット21と、測定尺1他端のボルト通し孔12を挿通され、長ナット21に螺合可能な取付ボルト22とを備える。
この場合、長ナット21、取付ボルト22のいずれも、硬質のプラスチック棒やステンレス鋼など、半年程度の屋外の腐食環境に置かれても腐食しにくい材料からなるものが好ましい。
また、この支持装置2は、各測定尺1の自重による回転方向の動きを規制する手段、すなわち、各測定尺1の一端の垂れ下がりによるズレを防止する手段として、各測定尺1の一端を支持するための支持プレート23(図2参照)と、各測定尺23の回り止め用のワッシャ24とを併せて備える。この場合、支持プレート23はアングル鋼により形成されて、断面L字形の2面からなり、実構造物Cの表面に取り付けられて、各測定尺1の一端を支持するようになっている。ワッシャ24は凹凸形状の面を有するタイプのもので、取付ボルト22をこのワッシャ24を介して測定尺1の他端に通して、長ナット21に締結することにより、取付ボルト22と測定尺1との間に介在され、測定尺1の回転方向の動きを規制するようになっている。
また、各測定尺の回転方向の動きを規制する他の手段として、カウンタウェイトが用いられてもよく、この場合、各測定尺の他端にカウンタウェイトを吊り下げて、測定尺の回転方向の動きを規制するようにしてもよい。
長さ変化測定装置Mはかかる構成を備え、各測定尺1の一端が所定の小さい間隔を介して近接され、各測定尺1の長さ方向を実構造物Cの表面の長さ測定方向に向けて、各測定尺1他端の被支持部(ボルト通し孔12)が、各支持装置2により実構造物CのセパレータSのねじ部S1に支持固定されて、実構造物Cの表面に設置される。
すなわち、実構造物Cの表面の長さを測定しようとする位置に配置される左右方向又は上下方向に連続する例えば3個のセパレータSのうち、両端となる各セパレータSのねじ部S1からプラスチックコーン(図示省略)が撤去され、当該各ねじ部S1に長ナット21が締結される。一方の測定尺1は一方端のセパレータSと中央となるセパレータSとの間に配置され、他端に通した取付ボルト22を一方端のセパレータSの長ナット21に螺合して、一方の測定尺1の他端が一方端のセパレータSのねじ部S1に固定される。同様にして、他方の測定尺1は他端が他方端のセパレータSのねじ部S1に固定される。このようにして一対の測定尺1はそれぞれ、実構造物Cの表面に、左右方向又は上下方向に連続する例えば3個のセパレータSのねじ部S1のうち両端のねじ部S1を利用して、中央のセパレータSのねじ部S1を中心に左右対称又は上下対称に設置され、各測定尺1の標点11を有する一端が相互に対向される。
なお、この場合、各測定尺1の一端間に2mm乃至5mmの間隔が設定され、各標点11の外側の間隔が20mm以内に設定される。
また、この場合、回り止め用のワッシャ24が各取付ボルト22と各測定尺1の他端との間に介在されており、また、支持プレート23が実構造物Cの表面(中央のセパレータ付近)に取り付けられて、各測定尺1の一端が支持されるので、各測定尺1の回転方向の動きが規制され、各測定尺1のブレが防止される。
このようにして長さ変化測定装置Mは実構造物Cの表面に設置され、一対の測定尺1の2つの標点11間の間隔長さを1/1000mm読みのマイクロメータなどの変位測定装置を用いて測定することにより、一対の測定尺1の2つの支持点間の変位量、すなわち、実構造物C表面の長さ変化を測定するようになっている。
この長さ変化測定装置Mにより、既述の長さ変化測定方法を実施することができ、当該測定方法と同様の作用効果が得ることができる。
なお、各測定尺1は測定中の気温によって熱膨張することがある。例えば、5℃の温度変化によって50μ程度のひずみ変化が生じた場合、コンクリートのひび割れ発生限界ひずみ100μから150μに対して無視できない。そこで、この装置Mによる実構造物Cの表面の長さ変化測定においては、0.1℃の読み取り精度を有する温度計によって初回の測定時期から温度変化量を読み取り、各測定尺1の温度変化に伴う長さ変化量を補正する。
また、この装置Mでは、一対の測定尺1が実構造物CにセパレータSのねじ部S1を利用して取り付けられる形式としたが、一対の測定尺1の取り付けに他の手段が用いられてもよい。
(本発明に基づく長さ変化測定装置の精度の確認)
本願出願人は、既述の長さ変化測定装置の試験測定器を作り、この試験測定器で、既述の長さ変化測定装置の精度の確認を行った。
(1)目的
本願出願人は、コンクリート構造物の型枠を取り外した後の給水養生に、水中養生と同様の養生効果が期待できる浸水養生システム(以下、アクアカーテンシステムという。)を実用化させている。なお、アクアカーテンシステムは、コンクリートの表面に被着する浸水養生シートと、給水ポンプ、及びこの給水ポンプから延び、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間に配置される給水用の配管を有し、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間に養生水を供給する給水装置と、吸引機、この吸引機から延び、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間に配置される吸引用の配管、及びこの配管上に介在され、空気と養生水及び当該養生水に含まれる粉塵や小径の石などを分離して排出する除水除塵機を有し、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間の空気を養生水とともに吸引する吸引装置とを備え、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間を空気の吸引により負圧にして密着させ、その隙間に養生水を流すことにより、コンクリートの表面を水膜で覆うようにしたものである。
実構造物にこのアクアカーテンシステムを適用する目的の一つとして、収縮ひび割れの抑制効果を挙げる。この効果は、部材の収縮ひずみを高精度に測定することにより、定量的に評価できると考えられる。かかる測定を実現するには、実構造物の長さ変化を、現場で、長期の測定期間に亘り、測定点間の距離を十分長くして、測定できる方法及び装置が必要となる。
従来のコンタクトゲージ法(JIS A 1129-2)では、基長を20cmとし、連続した測定点数を増やすことによって測定点間の距離を長尺化できる。しかし、現場での測定は試験室での測定と異なり、測定に多くの時間がかかる。これに対して、試験測定器は、測定点間の距離を900〜1200mmとし、変位測定に1/1000mm読みのマイクロメータを使用し、支点間の変位量を読み取ることで、数マイクロの精度で変位を測定することができると考える。
そこで、実構造物でのひずみ測定に先立ち、幅10cm、高さ10cm、長さ120cmの正方形断面の角柱供試体に対して、コンタクトゲージ法、ダイヤルゲージ法(JIS A 1129-3)、試験測定器による比較計測を実施し、試験計測器の精度の確認を行った。
(2)試験測定器による測定方法
試験測定器は、長さ450〜600mmの2本の測定尺と支持装置とからなる。Pコン撤去後のセパレータのねじ部を利用して、2本の測定尺を取付ボルトで固定し、また、供試体の中央に支持プレートを設け、この支持プレートで各測定尺の相互に対向する端部を支持して、各測定尺のブレを防止する。コンクリートの収縮によって、各測定尺間の変位を測定する。各測定尺の温度変化による変位は線膨張係数により補正する。
(3)試験方法
コンクリートの配合と測定方法を表1に、養生方法を表2に示す。なお、表1中、長尺ひずみ測定器は試験測定器を指す。試験環境は、温度20℃、相対湿度60%である。長さ変化の測定は、型枠取り外し時、アクアカーテン終了時、その後1週間間隔、2週間間隔で実施した。
Figure 0006072434
Figure 0006072434
(4)試験結果及び考察
図5にセメントの種類及び養生方法毎に得られたひずみを示した。試験測定器により測定されたひずみの増加速度は、他の二つのJIS法と同程度になっている。したがって、実構造物の長さ変化を測定するために検討した試験測定器は、十分な測定精度を有していると考えられる。ただし、ひずみの大きさは、コンタクトゲージ法>ダイヤルゲージ法>試験測定器の順となっている。この理由として、コンタクトゲージ法は、供試体の収縮が最も大きい表面での測定であり、ダイヤルゲージ法は、中心軸の長さ変化であることから10cm×10cmの正方形断面の平均ひずみでの測定、試験測定器は、Pコンの長さの2.5cmを差し引いた断面での平均ひずみの測定と考えると、先の順位は説明できる。
(5)まとめ
試験測定器の精度は他の二つのJIS法と同程度であり、実構造物の測定に適用することができる。実構造物の測定では、実構造物のセパレータのねじ部を利用して、まったく同様の手順で長さ変化量を測定することになる。
M 長さ変化測定装置
1 測定尺
11 標点
12 ボルト通し孔
2 支持装置
21 長ナット
22 取付ボルト
23 支持プレート
24 ワッシャ
C 実コンクリート構造物
S セパレータ
S1 ねじ部

Claims (8)

  1. ンクリート構造物表面の長さ変化を測定するコンクリート構造物表面の長さ変化測定方法であって
    一端に標点を設けた所定の長さからなる一対の測定尺を、
    当該各測定尺の一端を所定の小さい間隔を介して近接させ、当該各測定尺の長さ方向を前記コンクリート構造物の表面の長さ測定方向に向け、当該各測定尺の他端を、当該各測定尺の他端にボルト通し孔を穿ち取付ボルトを挿通し、前記コンクリート構造物の型枠脱型後の表面のコンクリート内部に通されたセパレータのねじ部に長ナットを介して締結して、前記セパレータのねじ部に固定することにより、
    前記コンクリート構造物の表面に設置し、
    前記各測定尺の前記各標点間の間隔長さを測定する、
    ことを特徴とするコンクリート構造物表面の長さ変化測定方法。
  2. 各測定尺の一端間に2mmから5mmまでの間隔を設け、各標点の外を20mm以内とする請求項1に記載のコンクリート構造物表面の長さ変化測定方法。
  3. 標点間の間隔長さの測定にマイクロメータを含む変位測定装置を用い、前記各標点の外を0.001mm単位で測定する請求項1又は2に記載のコンクリート構造物表面の長さ変化測定方法。
  4. コンクリート構造物の表面の長さ変化を測定するコンクリート構造物表面の長さ変化測定装置であって、
    一端に標点を有し、他端にボルト通し孔を有し、所定の長さからなる一対の測定尺と、
    前記コンクリート構造物の型枠脱型後の表面の、コンクリート内部に通されたセパレータのねじ部に締結可能な長ナット、及び前記各測定尺の他端のボルト通し孔に挿通し、前記長ナットに螺合可能な取付ボルトを有し、前記各測定尺の他端を前記コンクリート構造物の表面に支持固定するための一対の支持装置と、
    を備え、
    前記各測定尺は、当該各測定尺の一端が所定の小さい間隔を介して近接され、当該各測定尺の長さ方向を前記コンクリート構造物の表面の長さ測定方向に向けられ、当該各測定尺他端が前記各支持装置により前記セパレータのねじ部に固定されて、コンクリート構造物の表面に設置され、
    前記各測定尺の前記各標点間の間隔長さを測定する、
    ことを特徴とするコンクリート構造物表面の長さ変化測定装置。
  5. 各測定尺は線膨張係数が既知の鋼材からなる請求項4に記載のコンクリート構造物表面の長さ変化測定装置。
  6. 各標点は突起状の部材からなる請求項4又は5に記載のコンクリート構造物表面の長さ変化測定装置。
  7. 各支持装置は測定尺の自重による回転方向の動きを規制する手段を併せて有する請求項4乃至のいずれかに記載のコンクリート構造物表面の長さ変化測定装置。
  8. 各標点間の間隔長さの測定にマイクロメータを含む変位測定装置が採用される請求項乃至7のいずれかに記載のコンクリート構造物表面の長さ変化測定装置。
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