以下、図面を参照して本発明によるブランケットセット、転写ロールおよび印刷装置の実施形態を説明する。
図1に、本実施形態のブランケットセット10の模式図を示す。ブランケットセット10は、ベース12と、ブランケット14とを備える。後述するように、ブランケットセット10はコアに取り付けられ、コアとともに回転する。
ブランケット14は比較的柔らかいのに対して、ベース12はブランケット14よりも固い。ブランケット14は、例えばゴムから形成され、具体的には、ブランケット14は、シリコーンのゴムから形成される。ベース12は、例えばスチールまたはアルミニウムから形成される。
ベース12は、内周面12sおよび外周面12tを有している。例えば、ベース12は円筒形状であり、ベース12の内周面12sは、円柱形状または円筒形状の外周面に対応する形状を有している。ブランケットセット10は、この円柱または円筒の中心軸を回転中心として回転する。
ベース12は複数のベース部12aを有している。ここでは、互いに隣接するベース部12aは接触しているが、ベース部12aは分離可能である。図1に示したブランケットセット10では、ベース12は2つのベース部12aを有している。各ベース部12aは半円筒形状であり、各ベース部12aは内周面12asおよび外周面12atを有している。例えば、ベース部12aは金型を用いて作製される。
ブランケット14は、複数のベース部12aのうちの少なくとも1つの外周面12atに設けられている。ここでは、ブランケット14は、2つのベース部12aの一方の外周面12atに設けられている。例えば、ブランケット14の厚さは6mm以上である。
ブランケットセット10において、ブランケット14は、ベース部12aの外周面12atの一部を覆い、かつ、互いに隣接するベース部12aの境界を覆わないように設けられている。ブランケットセット10においてベース部12aとブランケット14とは一体的に取り扱い可能である。
ブランケットセット10は、例えば以下のように作製される。例えば、ブランケットセット10は、所定の形状に切り出したブランケット14をベース部12aの外周面12atに貼り付けることによって作製される。この場合、ブランケット14は、ベース12と接着性の高い材料から形成されることが好ましい。
あるいは、金型にベース部12aを設置した後に、ブランケットの材料(例えば、ゴム)を金型内の所定の空間に流し込み、成形することによってブランケット14を作製してもよい。この場合、ブランケット14は、ベース部12aと一体的に作製される。なお、ブランケットの材料の流し込みは、真空下で行うことが好ましい。また、ブランケット14がシリコーンゴムから形成される場合、ベース部12aの外周面12atにブランケット14を形成する前に、カップリング剤を塗布してもよい。カップリング剤をベース部12aの外周面12atに塗布することにより、ベース部12aの外周面12atが改質し、ベース部12aとブランケット14との接着性が向上する。
あるいは、ベース部12aおよびブランケット14をそれぞれ作製した後に、ブランケット14をベース部12aに接着剤で接着させてもよい。ただし、この場合、ベース部12aとブランケット14との界面に空気や異物によって凹凸が発生し、これに伴い、ブランケット14の表面に凹凸が発生することがある。このため、ベース部12aとブランケット14との接着は上述したようにカップリング剤を用いて行うことが好ましい。
本実施形態のブランケットセット10では、ブランケット14がベース部12aの外周面12atに設けられている。このため、ブランケット14および対応するベース部12aを取り外し、新たなブランケット14および対応するベース部12aを取り付けることによってブランケット14の交換を簡便に行うことができる。また、ブランケット14は、ベース12の外周面12t全体を囲むのではなくベース12の外周面12tの一部に設けられており、これにより、ブランケット材の使用量を低減させることができる。
ここで、図2を参照して、本実施形態の転写ロール20を説明する。図2(a)に転写ロール20の模式的な側面図を示し、図2(b)に転写ロール20の模式的な斜視図を示す。
転写ロール20は、ブランケットセット10と、コア22とを備えている。例えば、コア22は、鉄、アルミ、または、強度の高いプラスチック(例えば、熱硬化性樹脂、一例としてベークライト)から形成される。例えば、コア22は、円筒形状の2つの底面(平面)のそれぞれから延びるシャフト(図示せず)を有しており、転写ロール20は両端で保持されたシャフトとともに回転する。または、コア22は円筒形状を有しており、コア22の内周面にシャフト(図示せず)を取り付けられた転写ロール20がシャフトとともに回転してもよい。なお、ここでは、回転軸に垂直な断面において、ベース12およびブランケット14の厚さはほぼ一定であり、コア22の半径もほぼ一定である。
コア22の外周面22tは、ブランケットセット10のベース12の内周面12sと整合する。ベース12の内周面12sおよびコア22の外周面22tのいずれも凹凸のすくない滑らかな面であることが好ましい。必要に応じてベース12の内周面12sを研磨してもよく、また、コア22の外周面22tを研磨してもよい。転写ロール20において、コア22からブランケットセット10を取り外すことが容易な構成にすることにより、使用によって摩耗および劣化したブランケット14を容易に交換することができる。
ベース部12aおよびブランケット14の中心角(回転軸方向に平行な方向から回転軸方向に垂直な断面を見た、ベース部12aおよびブランケット14の中心角)に着目する。ベース部12aでは、内周面12asの中心角は外周面12atの中心角とほぼ等しく、ベース部12aは円筒を中心軸に通るように分断した形状を有している。ここでは、2つのベース部12aのそれぞれの内周面12asに対応する中心角はいずれも180°である。このように、ベース部12aの内周面12asに対応する中心角が180°以下であると、ブランケット14の交換をさらに簡便にできる。ここでは、ブランケット14に対応する中心角はベース部12aに対応する中心角よりも小さい。また、複数のベース部12aは、回転軸方向に平行な方向から垂直な断面を見てほぼ対称となるように配置されていることが好ましく、これにより、転写ロール20の回転の安定性を向上させることができる。
ブランケットセット10では、ブランケット14がベース部12aの外周面12atの一部に設けられており、これにより、ブランケット材料の使用量を低減させることができる。特に、印刷面積が転写ロール20の外周面の面積と比べて小さい場合、不要なブランケット部分を低減させることができ、印刷を効率的に行うことができる。
図3に、転写ロール20を備える印刷機100の模式図を示す。印刷機100は、転写ロール20と、版ロール30とを備えている。転写ロール20および版ロール30はいずれも回転可能に取り付けられている。例えば、転写ロール20および版ロール30はいずれも円柱形状または円筒形状であり、版ロール30は転写ロール20とほぼ外接するように、転写ロール20の周囲に設けられている。
版ロール30の表面は金属メッキで処理されている。典型的には、版ロール30には、所定のパターンに凹溝が形成されている。このパターンは、被印刷物(図3では図示せず)に印刷される線・図形・模様その他に対応する。
なお、図3では、転写ロール20の直径は版ロール30の直径とほぼ等しいが、転写ロール20の直径は版ロール30と異なってもよい。例えば、転写ロール20の直径は版ロール30の直径よりも大きくてもよい。この場合、転写ロール20の直径は版ロール30の直径のほぼ整数倍であることが好ましい。
版ロール30は、外部から供給されたインク(図示せず)を転写ロール20に転写する。その後、転写ロール20は、被印刷物にインクを印刷する。なお、インクは版ロール30に形成されたパターンに対応している。その後、典型的には、インクは加熱される。このような印刷はオフセット印刷とも呼ばれる。
印刷機100では、ブランケット14がベース12の外周面12tの一部に設けられており、転写ロール20の半径は回転中心からの方向に応じて異なる。具体的には、回転軸からブランケット14の表面までの距離は、回転軸からブランケット14の設けられていないベース12の外周面12tまでの距離よりも長い。このため、印刷機100は、被印刷物の印刷面が凹面であっても印刷を行うことができる。なお、上述した距離の差が大きいと、被印刷物の凹面が比較的深くても印刷を適切に行うことができる。
図4に、印刷機100を備える印刷装置200の模式図を示す。印刷装置200は、印刷機100と、被印刷物Sを搬送するコンベア210とを備える。印刷装置200は加熱装置220をさらに備えてもよい。
まず、回転するコンベア210の上に被印刷物Sが載置され、コンベア210は被印刷物Sを搬送する。コンベア210によって搬送された被印刷物Sが印刷機100の下に到達すると、印刷機100は被印刷物Sにインクを印刷する。
その後、コンベア210はインクの印刷された被印刷物Sを加熱装置220に搬送する。被印刷物Sは加熱装置220内において加熱され、インクが焼成される。
なお、インクは、文字、画像等を再現するためのいわゆる印刷用のインクであってもよい。あるいは、インクは、導電性材料を含むインクであってよい。この場合、印刷装置200を用いて電子機器が好適に作製される。
また、上述した印刷装置200では、被印刷物Sは固定された印刷機100に対して移動したが、本発明はこれに限定されない。固定された被印刷物Sに対して印刷機100が移動してもよい。このように、被印刷物Sおよび印刷機100は相対的に移動する。このような印刷装置200は高速印刷に適している。
なお、ブランケットセット10とコア22との固定は、固定部材を用いて行ってもよい。図5に示すように、転写ロール20では、ベース部12aに貫通穴12oが設けられており、この貫通穴12oに設けられた固定部材12pによってブランケットセット10はコア22に固定される。例えば、コア22の外周面22tがねじ切られており、ブランケットセット10の固定はねじを用いて行われてもよい。
上述したブランケットセット10では、ブランケット14は、ベース部12aの外周面12atの一部に設けられており、ブランケット14に対応する中心角はベース部12aに対応する中心角よりも小さかったが、本発明はこれに限定されない。
図6に示すように、回転軸方向に垂直な断面を見た場合、ブランケット14は、ベース部12aの外周面12atの全面にわたって設けられてもよい。この場合、ブランケット14に対応する中心角はベース部12aに対応する中心角と等しい。
また、上述したブランケットセット10では、ベース12は2つのベース部12aに分離可能であり、各ベース部12aの内周面12asに対応する中心角はいずれも180°と等しかったが、本発明はこれに限定されない。
図7に示すように、転写ロール20において、2つのベース部12aの内周面12asに対応する中心角は異なってもよい。この場合、ブランケット14は、中心角が180°未満のベース部12aの外周面12atに設けられることが好ましい。これにより、ブランケット14の交換をさらに容易に行うことができる。このように、交換されないブランケット14に対応するベース部12aの対応する中心角は180°を超えてもよいが、交換されるブランケット14に対応するベース部12aの対応する中心角は180°未満であることが好ましい。
上述したブランケットセット10では、ベース12の外周面12tに1つのブランケット14が設けられていたが、本発明はこれに限定されない。ベース12の外周面12tに複数のブランケット14が設けられてもよい。
図8(a)に、本実施形態のブランケットセット10の模式図を示す。ブランケットセット10は、複数のブランケット14を備える点を除いて図1を参照して上述したブランケットセット10と同様の構成を有しており、冗長を避けるために重複する説明を省略する。このブランケットセット10では、2つのブランケット14が設けられている。ここでは、2つのブランケット14は、2つのベース部12aの外周面12atにそれぞれ設けられており、2つのブランケット14は互いに分離されている。
図8(b)に、図8(a)に示したブランケットセット10を備えた転写ロール20の模式図を示す。転写ロール20は、ブランケットセット10と、コア22とを備えている。転写ロール20では、2つのブランケット14が設けられていることにより、転写ロール20の1回転あたりに印刷を2回行うことができ、印刷時間を短縮できる。
図9に、図8(b)に示した転写ロール20を備える印刷機100の模式図を示す。印刷機100は、転写ロール20と、版ロール30a、30bとを備える。転写ロール20、版ロール30a、30bはいずれも回転可能である。版ロール30a、30bは転写ロール20とほぼ外接するように、転写ロール20の周囲に設けられている。
なお、版ロール30a、30bのパターンは異なってもよいが、版ロール30a、30bのパターンはほぼ等しくてもよい。版ロール30a、30bのパターンがほぼ等しい場合、版ロール30a、30bの回転速度および位相を調整することにより、積層構造を形成することができる。
また、図9では、転写ロール20の直径は版ロール30a、30bの直径よりも大きいが、転写ロール20の直径は版ロール30a、30bと等しくてもよい。なお、転写ロール20の直径は版ロール30a、30bの直径のほぼ整数倍であることが好ましい。
版ロール30a、30bの直径に対する転写ロール20の直径の比は転写ロール20に設けられるブランケット14の数と等しいことが好ましい。例えば、転写ロール20の直径は版ロール30a、30bの直径の2倍であり、ブランケットセット10には2つのブランケット14が設けられている。ここでは、転写ロール20の直径はほぼ200mmであり、版ロール30a、30bの直径はほぼ100mmである。
印刷機100の印刷は以下のように行われる。まず、版ロール30aはインク(図示せず)を転写ロール20の一方のブランケット14に転写し、次に、版ロール30bはインク(図示せず)を転写ロール20の同じブランケット14に転写する。例えば、版ロール30bは先に転写されたインクと少なくとも一部が積層するようにインクを転写する。その後、転写ロール20は、被印刷物Sに、積層されたインクを印刷する。なお、インクは、それぞれ、版ロール30a、30bに形成されたパターンに対応している。その後、典型的には、インクは加熱される。
図10に、印刷機100を備える印刷装置200の模式図を示す。この印刷装置200は、転写ロール20の構成および2つの版ロール30a、30bが設けられている点を除いて図4を参照して上述した印刷装置200と同様の構成を有しており、冗長を避けるために重複する説明を省略する。
まず、回転するコンベア210の上に被印刷物Sが載置され、コンベア210は被印刷物Sを搬送する。コンベア210によって搬送された被印刷物Sが印刷機100の下に到達すると、印刷機100は被印刷物Sにインクを印刷する。
その後、コンベア210はインクの積層された被印刷物Sを加熱装置220に搬送する。被印刷物Sは加熱装置220内において加熱され、インクが焼成される。これにより、インクが固化される。
なお、版ロール30a、30bにはほぼ等しいパターンが設けられており、版ロール30a、30bのそれぞれが導電性材料を含むインクを互いに重なるように転写する場合、比較的細く、かつ、低抵抗の導電性積層構造を形成できる。例えば、版ロール30a、30bは、転写ロール20に導電性材料を含むインクを転写する。導電性材料は、例えば銀、銅、金、炭素、コバルト、チタン、ニッケル、アルミニウム等の単体またはその混合物である。なお、版ロール30a、30bのインクに含まれる導電性材料は互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。このように、版ロール30a、30bから転写ロール20に転写されるインクを積層することにより、低抵抗の電極を形成することができる。
図11に、パネルPの模式図を示す。パネルPは、表面Saを有する被印刷物Sと、被印刷物Sの表面Saの上に設けられた積層構造Lとを備える。ここでは、被印刷物Sは基板であり、積層構造Lは2層構造の電極として用いられており、電極Lは、基板Sの表面Saに接する導電層Laと、導電層Laの上に設けられた導電層Lbとを有している。導電層Laは版ロール30aに供給されたインクから形成され、導電層Lbは版ロール30bに供給されたインクから形成される。パネルPはソーラーパネルとして好適に用いられる。あるいは、パネルPは、タッチパネル、電磁波防止パネル、有機ELパネル等であってもよい。
なお、上述した説明では、積層構造Lは導電層から構成されたが、本発明はこれに限定されない。積層構造は、導電層に加えて絶縁層を有していてもよい。例えば、図9に示した印刷機100において、版ロール30aは導電性材料を含むインクを転写し、版ロール30bは絶縁性材料を含むインクを転写してもよい。この場合、版ロール30aに形成されるパターンは、版ロール30bに形成されるパターンと異なることが好ましい。
図12に、パネルPの模式図を示す。パネルPは、基板Sと、基板Sの表面Saの上に設けられた積層構造Lとを備える。ここでは、積層構造Lは、基板Sの表面Saに接する導電層Laと、導電層Laを覆う絶縁層Lbとを有している。
このような印刷機100は半導体装置の作製に好適に用いられる。印刷機100における複数の版ロール30のうちの少なくとも1つが導電性材料を含むインクを転写すればよい。印刷機100は、トランジスタの作製に好適に用いられる。
図13に、本実施形態の印刷機100の模式図を示す。この印刷機100において、インク(図示せず)は、版ロール30a、30bの上部から垂らされる。この印刷機100において、版ロール30aの周囲には、版ロール30aと接触するようにスクレーパ32aが設けられている。版ロール30aの外周面に垂らされたインクのうちの余分なインクはスクレーパ32aによって版ロール30aの外周面から除去される。なお、スクレーパ32aはエアシリンダに取り付けられており、版ロール30aに対するスクレーパ32aの圧力は、エアシリンダによって調整される。エアシリンダは保持部材33aに取り付けられ、保持部材33aは、ベアリングメタルによって回転および摺動可能である。スクレーパ32aの摺動により、版ロール30aとスクレーパ32aとの接触領域を移動させることができ、摩耗時間を延ばし、インクの筋の発生を抑制することができる。また、同様に、版ロール30bの周囲には、版ロール30bと接触するようにスクレーパ32bが設けられている。スクレーパ32bを調整するエアシリンダも保持部材33bに取り付けられている。
印刷機100は、クリーニングロール34をさらに備える。クリーニングロール34により、転写ロール20が被印刷物Sに印刷を行った後に転写ロール20に残ったインクを除去することができる。なお、クリーニングロール34は、転写ロール20よりもインクに対して高い濡れ性を示すことが好ましい。
なお、ここでは、インクは、版ロール30a、30bの上部から垂らされることによって供給されたが、インクの供給はこれに限定されない。インクはインク貯めから供給されてもよく、または、インクはノズルから版ロールに向かって噴出されてもよい。
また、上述したように、ブランケットセット10とコア22との固定は、固定部材を用いて行ってもよい。図14に転写ロール20の模式的な断面を示し、図15にこの転写ロール20の模式的な上面を示す。転写ロール20では、ベース部12aに貫通穴12oが設けられており、この貫通穴12oに固定部材12pを設けることによってブランケットセット10はコア22に固定される。例えば、コア22の外周面22tに、ねじ切りがされており、ブランケットセット10の固定はねじを用いて行われてもよい。また、ここでは、固定部材12pは、異なるブランケット14の間に配置されている。
なお、図14および図15に示した転写ロール20では、ブランケット14は、ベース部12aの外周面12atの一部に設けられており、ブランケット14に対応する中心角はベース部12aに対応する中心角よりも小さかったが、本発明はこれに限定されない。
図16(a)に示すように、回転軸方向に垂直な断面を見た場合、ブランケット14は、ベース部12aの外周面12atの全面にわたって設けられていてもよい。この場合、ブランケット14に対応する中心角はベース部12aに対応する中心角と等しい。また、この場合、図16(b)に示すように、固定部材12pは、ブランケット14に対して回転軸方向に沿って両側に配置される。
なお、ブランケットセット10のコア22への取り付け時および転写ロール20の使用時の位置ずれを抑制するために、ベース12の内周面12sおよびコア22の外周面22tの一方に凸部を設け、他方に凸部と整合する凹部を設けてもよい。
以下、図17を参照して、ベース12の内周面12sおよびコア22の外周面22tに凸部および凹部を設けた転写ロール20の一例を説明する。図17に、転写ロール20のコア22とブランケットセット10との界面部分の一部分解図を示す。図17に示した転写ロール20において、回転軸は紙面と平行である。
転写ロール20において、コア22の外周面22tに凸部22wが形成され、ベース12の内周面12sに凹部12wが形成される。コア22の外周面22tの凸部22wとベース12の内周面12sの凹部12wはほぼ同様のサイズで互いに整合する形状を有しており、これにより、ブランケットセット10とコア22との位置ずれを抑制することができる。例えば、コア22の外周面22tの凸部22wは円柱形状または円筒形状の部材に対して旋盤で凸部を残すように削ることによって作製できる。
なお、コア22の外周面22tの凸部22wおよびベース12の内周面12sの凹部12wは点状であってもよく、この場合、上記凸部22wおよび凹部12wは外周面22t、内周面12sにそれぞれ複数設けられてもよい。
あるいは、コア22の外周面22tの凸部22wおよびベース12の内周面12sの凹部12wは線状であってもよい。このようなベース12の内周面12sの凹部は案内溝とも呼ばれる。上記凸部22wおよび凹部12wが転写ロール20の回転方向に沿って設けられている場合、印刷が被印刷物の搬送方向に対して直交する方向にずれることを抑制することができる。
なお、上述した説明では、ブランケットセット10におけるベース部12aの数は2であったが、本発明はこれに限定されない。また、上述した説明では、ブランケット14の数は1または2であったが、本発明はこれに限定されない。
図18に示すように、ベース12が3つのベース部12aを有し、3つのブランケット14が3つのベース部12aの外周面12atにそれぞれ設けられてもよい。なお、このような転写ロール20を印刷機100(図9参照)に用いる場合、版ロール30の数はブランケット14の数と等しく、かつ、版ロール30の数は、版ロール30の直径に対する転写ロール20の直径の比とほぼ等しいことが好ましい。
また、このような転写ロール20は、積層セラミックコンデンサの作製に用いられる。積層セラミックコンデンサは、例えば、図18に示した転写ロール20を用いて作製される。この場合、1番目の版ロール30は導電性材料を含むインクを転写ロール20に転写し、2番目の版ロール30は絶縁性材料を含むインクを転写ロール20に転写し、3番目の版ロール30は導電性材料を含むインクを転写ロール20に転写する。これにより、コンデンサを作製することができる。以上のように印刷機100は電子機器の作製に好適に用いられる。
また、ブランケットセット10におけるベース部12aの数は4以上であってもよく、ブランケット14の数は4以上であってもよい。また、上述した説明では、1つのベース部12aに多くて1つのブランケット14が設けられたが、1つのベース部12aに複数のブランケット14が設けられてもよい。
なお、上述した説明では、互いに隣接するベース部12aは接触していたが、本発明はこれに限定されない。図19に示すように、隣接するベース部12aは互いに接触しなくてもよい。また、この場合も、複数のベース部12aは、回転軸方向に平行な方向から垂直な断面を見てほぼ対称となるように配置されていることが好ましく、これにより、転写ロール20の回転の安定性を向上させることができる。
なお、上述した説明では、印刷装置200は1つの印刷機100を備えていたが、本発明はこれに限定されない。印刷装置200は複数の印刷機100を備えていてもよい。
図20に、本実施形態の印刷装置200の模式図を示す。印刷装置200は、2つの印刷機100a、100bを備えている。印刷機100aは導電層La、Lbの積層された積層構造L1を基板Sに転写し、印刷機100bは導電層Lc、Ldの積層された積層構造L2を積層構造L1の少なくとも一部と重なるように転写する。
印刷機100aは、転写ロール20aと、版ロール30a、30bとを備えている。印刷機100bは、転写ロール20bと、版ロール30c、30dとを備えている。
なお、印刷機100aは、図9を参照して上述した印刷機100と同様の構成を有しており、冗長を避けるために重複する説明を省略する。また、印刷機100bは、印刷機100aと同様の構成を有しており、冗長を避けるために重複する説明を省略する。なお、印刷機100の版ロール30c、30dのパターンは所定の形状と整合するように形成されている。なお、導電層Lc、Ldに含まれる導電性材料は互いに等しくてもよいし、異なっていてもよい。また、導電層Lc、Ldに含まれる導電性材料は、導電層La、Lbに含まれる導電性材料と等しくてもよいし、異なっていてもよい。
なお、図20に示した印刷装置200は2つの印刷機100a、100bを備えていたが、本発明はこれに限定されない。印刷装置200は3以上の印刷機を備えていてもよい。
また、上述したように、ブランケット14がベース12の外周面12tの一部に設けられており、転写ロール20の半径は回転中心からの方向に応じて異なる。具体的には、回転軸からブランケット14の表面までの距離は、回転軸からブランケット14の設けられていないベース12の外周面12tまでの距離よりも長い。これらの距離の差が大きいと、被印刷物Sの凹面が比較的深くても印刷を適切に行うことができる。
上述した説明では、ベース12の厚さ、ブランケット14の厚さ、および、コア22の半径はそれぞれほぼ一定であったが、本発明はこれに限定されない。ベース12の外周面12tおよびブランケット14の表面、および、コア22の外周面22tの少なくとも1つに段差が設けられてもよい。段差により、回転軸からの距離の差をさらに大きくすることができ、被印刷物Sの凹面が比較的深くても、ブランケット14と被印刷物Sとが印刷面以外で接触(衝突)することを抑制することができ、印刷を適切に行うことができる。なお、被印刷物Sの凹面への印刷は、必要に応じて平坦な底面を有する平坦化部材の上に被印刷物Sを置いた状態で行われる。例えば、被印刷物Sは自動車のリアウィンドウであってもよい。
図21に、転写ロール20の模式図を示す。ここでは、ブランケット14の厚さおよびコア22の半径はほぼ一定であるが、ブランケット14の設けられたベース部12aに段差が設けられている。具体的には、ベース部12aは、厚さt1の領域12a1と、厚さt1よりも大きい厚さt2の領域12a2とを有している。ここで、厚さは回転軸方向に対して垂直な断面におけるベース部12aの内周面12asと外周面12atとの間の間隔である。図21では、ブランケット14は、厚さt1よりも大きい厚さt2の領域12a2に設けられている。このように、ベース部12aに段差を設けることにより、被印刷物Sの凹面が比較的深くても印刷を適切に行うことができる
図21に示した転写ロール20では、ベース12に段差が設けられていたが、本発明はこれに限定されない。コア22に段差が設けられてもよい。
図22に、転写ロール20の模式図を示す。ここでは、ベース12の厚さおよびブランケット14の厚さはほぼ一定であるが、コア22の外周面22tに段差が設けられている。具体的には、コア22は、半径r1の領域22uと、半径r1よりも大きい半径r2の領域22vとを有している。ここで、半径は回転中心からコア22の外周面22tまでの距離である。図22では、ブランケット14は、半径r1よりも大きい半径r2の領域22vにベース12を介して設けられている。このように、コア22に段差を設けることにより、被印刷物Sの凹面が比較的深くても印刷を適切に行うことができる。なお、ブランケット14の交換の観点から、ブランケット14の設けられるベース部12aの中心角は、コア22の領域22vの中心角よりも小さいことが好ましい。
なお、図22に示した転写ロール20では、コア22に段差が設けられていたが、本発明はこれに限定されない。ブランケット14に段差が設けられてもよい。
図23に、転写ロール20の模式図を示す。ここでは、ベース12の厚さおよびコア22の半径はほぼ一定であるが、ブランケット14の表面14tに段差が設けられている。具体的には、ブランケット14は、厚さt1の領域14uと、厚さt1よりも大きい厚さt2の領域14vとを有している。ここで、厚さは回転軸方向に対して垂直な断面におけるベース12の外周面12tとブランケット14の表面14tとの間の間隔である。このように、ブランケット14に段差を設けることにより、被印刷物Sの凹面が比較的深くても印刷を適切に行うことができる。
なお、図1から図23に示した転写ロール20では、ベース12は複数のベース部12aを有していたが、本発明はこれに限定されない。ベース12は一体的に形成されてもよい。
図24に、転写ロール20Aの模式図を示す。この転写ロール20Aは、ブランケットセット10Aと、コア22とを備えている。ここで、ブランケットセット10Aは、ベース12およびブランケット14を有しており、このベース12はコア22の外周面22tを囲むように一体的に設けられている。
この転写ロール20Aでは、ベース12の外周面12tに段差が設けられている。具体的には、ベース12は、厚さt1の領域12uと、厚さt1よりも大きい厚さt2の領域12vとを有している。図24では、ブランケット14は、厚さt1よりも大きい厚さt2の領域12vに設けられている。このように、ベース12に段差を設けることにより、被印刷物Sの凹面が比較的深くても印刷を適切に行うことができる。
なお、図24に示した転写ロール20Aでは、ベース12に段差が設けられていたが、本願発明はこれに限定されない。コア22に段差が設けられてもよい。
図25に、転写ロール20Aの模式図を示す。ここでは、ベース12の厚さおよびブランケット14の厚さはほぼ一定であるが、コア22の外周面22tに段差が設けられている。具体的には、コア22は、半径r1の領域22uと、半径r1よりも大きい半径r2の領域22vとを有している。ここで、半径は回転中心からコア22の外周面22tまでの距離である。図25では、ブランケット14は、半径r1よりも大きい半径r2の領域22vにベース12を介して設けられている。このように、コア22に段差を設けることにより、被印刷物Sの凹面が比較的深くても印刷を適切に行うことができる。
なお、図25に示した転写ロール20Aでは、コア22に段差が設けられていたが、本願発明はこれに限定されない。ブランケット14に段差が設けられてもよい。
図26に、転写ロール20Aの模式図を示す。ここでは、ベース12の厚さおよびコア22の半径はほぼ一定であるが、ブランケット14の表面14tに段差が設けられている。具体的には、ブランケット14は、厚さt1の領域14uと、厚さt1よりも大きい厚さt2の領域14vとを有している。このように、ブランケット14に段差を設けることにより、被印刷物Sの凹面が比較的深くても印刷を適切に行うことができる。
なお、図24から図26に示した転写ロール20Aでは、コア22の外周面22t、ベース12の外周面12tおよびブランケット14の表面14tのいずれかに段差が設けられていたが、本発明はこれに限定されない。コア22の外周面22t、ベース12の外周面12tおよびブランケット14の表面14tのうちの2以上に段差が設けられてもよい。
また、上述した説明では、転写ロール20、20Aにおいてコア22とブランケット14との間にベース12が設けられていたが、本発明はこれに限定されない。ブランケット14はベース12を介することなくコア22に設けられてもよい。
図27に、転写ロール20Bの模式図を示す。転写ロール20Bは、ブランケット14と、コア22とを備えている。ここで、ブランケット14は、コア22の外周面22tに設けられており、ブランケット14の厚さはほぼ一定である。
転写ロール20Bでは、コア22の外周面22tに段差が設けられている。具体的には、コア22は、半径r1の領域22uと、半径r1よりも大きい半径r2の領域22vとを有している。ここで、半径は回転中心からコア22の外周面22tまでの距離である。図27では、ブランケット14は、半径r1よりも大きい半径r2の領域22vに設けられている。このように、コア22に段差を設けることにより、被印刷物Sの凹面が比較的深くても印刷を適切に行うことができる。
なお、図27に示した転写ロール20Bでは、コア22の外周面22tに段差が設けられていたが、本願発明はこれに限定されない。
図28に、転写ロール20Bの模式図を示す。ここでは、コア22の半径はほぼ一定であるが、ブランケット14の表面14tに段差が設けられている。具体的には、ブランケット14は、厚さt1の領域14uと、厚さt1よりも大きい厚さt2の領域14vとを有している。このように、ブランケット14に段差を設けることにより、被印刷物Sの凹面が比較的深くても印刷を適切に行うことができる。
なお、図27および図28に示した転写ロール20Bでは、コア22の外周面22tおよびブランケット14の表面14tの一方に段差が設けられていたが、本発明はこれに限定されない。コア22の外周面22tおよびブランケット14の表面14tの両方に段差が設けられてもよい。
また、図21から図28に示した転写ロール20、20A、20Bでは、1つのブランケットが設けられていたが、本発明はこれに限定されない。転写ロール20、20A、20Bに複数のブランケット14が設けられてもよい。