JP6071320B2 - 圧電デバイス、塵埃除去装置、撮像装置、及び電子機器 - Google Patents
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このような電気エネルギーと機械エネルギーとの可逆的な変換が可能である性質を利用し、各種のセンサやフィルタ、アクチュエータなどの圧電デバイスに用いられている。
従来、デバイスに使用されてきた圧電体材料の主なものは鉛を含有しており、例えば代表的なものとして、ABO3型ペロブスカイト構造を持つPbTiO3とPbZrO3を固溶したチタン酸ジルコン酸鉛がある。
チタン酸ジルコン酸鉛は優れた圧電特性と、良好な温度特性を有することから、広い領域で利用されている。
しかしながら近年、鉛の人体へ与える悪影響が懸念されており、各国ではRoHS指令等でガラスや高温はんだに対する鉛の使用が規制され始めている。そのため、各種デバイスに使用されている圧電体材料においても、現存する材料の代替として鉛を使用しない非鉛材料が求められている。
室温付近に存在する斜方晶−正方晶構造相転移温度(Tr)を室温付近から降下させる一つの方策としては、チタン酸カルシウム(CaTiO3)を微量添加する方法が挙げられる。
特許文献1では、このようにチタン酸カルシウム(CaTiO3)を微量添加した際、チタン酸バリウムに対するチタン酸カルシウムの添加量に応じて、相転移温度が逐次低温側に移行することが開示されている。
すなわち、上記従来例のもののようにチタン酸バリウムにチタン酸カルシウムを微量添加しても、依然として相転移温度はデバイスの駆動温度付近に存在する。このため、鉛系の圧電材料と比較して圧電定数の温度変化が大きいままとなる。具体的には、室温から低温になるに従い、圧電定数が増大してしまう。
このような圧電材料をアクチュエータなどに適用した際、室温から低温になるに従い、変位が増大していくという問題が生じる。
したがって、従来ではこのような圧電アクチュエータの変位の温度変化を補正するため、温度または変位を検知し、駆動周波数や印加電圧で制御する必要があった。
前記弾性部材に固定され、該弾性部材に振動を発生させる電気−機械エネルギー変換素子と、
前記弾性部材を支持する支持部材と、を備える圧電デバイスであって、
前記電気−機械エネルギー変換素子は、前記圧電デバイスの使用温度範囲において、圧電定数が温度の上昇と共に減少する圧電材料で構成され、
前記弾性部材を支持する支持部材は、前記圧電デバイスの使用温度範囲において、Q値が温度の上昇と共に増加する材料で構成されており、
前記圧電材料の圧電定数に、前記弾性部材及び前記電気−機械エネルギー変換素子を有する振動体のQ値を乗じた値が、前記使用温度範囲において、一定に近くなることを特徴とする。
前記交番電圧の印加によって前記弾性部材に生じる振動により、前記弾性部材に付着している塵埃を除去することを特徴とする。
また、本発明の撮像装置は、上記した塵埃除去装置と、前記塵埃除去装置の前記弾性部材を透過した光束が入射する位置に設けられた撮像素子と、を備えることを特徴とする。
実施例1として、本発明を適用した圧電デバイスを用いて構成された塵埃除去装置の構成例について、図1を用いて説明する。
本実施例の圧電デバイスは、弾性部材と、弾性部材に固定され、該弾性部材に振動を発生させる電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子と、弾性部材を支持する支持部材と、を備える。
本実施例の塵埃除去装置は、このような圧電デバイスを用いて構成されている。具体的には、本実施例の塵埃除去装置は図1(a)(b)に示すように、弾性部材である光学部材1と、電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子2と、支持部材3と、駆動回路4と、を備える。光学部材1は、カバーガラス、赤外線カットフィルタ、あるいは、光学ローパスフィルタ等の透過率の高い光学部材で構成されている。
光学部材1の長手方向端部には、圧電素子2が接着され、支持部材3とともに振動体(圧電デバイス)5を構成している。
支持部材3は、光学部材1に粘着材料により固定されている。
また、図1(c)に示すように、撮像ユニットは、振動体5と、保持部材7と、撮像素子6と、を少なくとも備える。支持部材3は、保持部材7と光学部材1との相対的な位置決めをすると共に、光学部材1を保持部材7に支持している。支持部材5により、光学部材1と保持部材7との間の光路中に、外部の塵埃が侵入するのを防止することができる。
また、図1(c)に示すように、光学部材1の撮像素子6側に、必要に応じて光学ローパスフィルタ等の別の光学部材11を設けることもできる。光学部材1の撮像素子6側に、別の光学部材11を設けた場合は、支持部材3より光学部材1と別の光学部材11との間を密閉するとよい。
保持部材7は、光学部材1を保持するが、上述したように、光学部材1とは別の光学部材11を設けた場合、この別の光学部材11を介して光学部材1を保持してもよい。
また、撮像ユニットは、付勢部材9を備えることが好ましい。付勢部材9により、光学部材1を撮像素子側に付勢することができる。具体的には、金属等のばね性を有する材料によって単一部材として形成されており、付勢部材9の四隅に光学部材1の四隅が固着される。
この交番電圧の周波数を、振動体5の固有振動数の近傍とすることで、小さな印加電圧でも大きな振幅を得ることができ、効率がよい。
また、振動体5の固有振動数は複数存在し、各々の固有振動数で電圧を印加すると各々異なる次数の振動モードで振動させることができる。
第1の振動モードA又は第2の振動モードBの振動によって、光学部材1に付着した塵埃の付着力以上の加速度が、塵埃に加えられたとき、塵埃は光学部材1から剥離される。
このように、振動体5に第1の振動モードAの振動を生じさせることにより、第1の振動モードAの振動の腹位置の光学部材1に付着した塵埃を剥離する機能を有する。
更に、振動体4に第2の振動モードBの振動を生じさせることにより、第1の振動モードAの振動の節近傍の光学部材1に付着した塵埃を剥離する機能を有する。
以上のように、光学部材1の表面上に付着した塵埃を除去するためには付着力以上の加速度を与える必要がある。
周波数が同じ場合、振動振幅によって加速度が決まる。
つまり、同じ構成の振動体においては、振動振幅によって塵埃の除去能力が決定されるといえる。
本発明で使用する圧電素子2の特性について、図3を用いて説明する。圧電素子2は非鉛圧電材料であるチタン酸バリウムを主成分とするセラミックスで構成されている。
チタン酸バリウムは本来、室温付近(約5℃)に温度増加とともに結晶構造が斜方晶から正方晶へと相転移する、相転移温度を有する。
この相転移温度において、圧電定数が極大値となる。高温側ではキュリー温度に近づくに従い、温度の上昇とともに圧電定数が増加し始める(図3、曲線C)。圧電定数とは圧電素子に印加する電界あたりの圧電素子の歪を表す定数である。つまり、圧電定数が大きい圧電素子では振動体5の振動振幅が大きくなる。
よって相転移温度では振動体の振動振幅が極大値となり、さらにその付近の温度で急峻な振動振幅の変化を示すために、塵埃の除去能力が大きな変化をしてしまうことになる。
この構成により、図3に示す相転移温度が−30以下の領域にシフトされることにより、振動体5の使用温度範囲−30〜45℃において、圧電定数を温度の上昇と共に減少させ、相転移温度が存在しないようにすることが可能となる(図4、曲線D)。これにより振動体5の塵埃除去能力の急峻な変化をなくすことができる。
このような課題について、塵埃除去の際の電圧の設定を例にとり、更に説明する。
曲線Cにおいては、低温から高温にかけて、圧電定数が緩やかに減少している。このとき振動体5の振動振幅も温度とともに緩やかに減少する。
このため、仮に高温側で所望の塵埃除去性能となる電圧に設定した場合、図4のようにシフトさせない図3の曲線Cに比して、低温側では余分なエネルギーを消費することとなる。
反対に、低温側で所望の塵埃除去性能となる電圧に設定した場合、高温側では性能を満足させることができない。
これらに対処するため、従来では振動体付近に温度センサを設け、環境温度によって印加電圧や周波数を制御することが必要とされていた。
本実施例では、Q値が温度と共に増加する材料が支持部材3に用いられる。具体的には発砲プラスチックやゴムなどの高分子材料が用いられる。Q値とは固有振動を起こした時の共振周波数付近の機械的な振動の鋭さを表す定数であり、共振周波数において、振動振幅は非共振状態(静的な変位)のQ倍となる。
Q値の測定方法としては、例えば、インピーダンスアナライザを用いる手法がある。インピーダンスアナライザにより、振動体5中の圧電素子2の共振周波数付近のアドミタンスと、電流−電圧間の位相を測定し、これらを複素数で表したとき、その実部がコンダクタンス、虚部がサセプタンスとなる。ここでサセプタンスが極大、極小になる周波数をそれぞれf1、f2とし、コンダクタンスが最大となる周波数をfsとしたとき、fs/(f1−f2)の値がQ値となる。振動体5のQ値を各温度で測定し、その後、振動体5から支持部材3を除いた状態で同様に各温度のQ値を測定することで、振動体5に与える支持部材3のQ値の影響を知ることができる。
前述のように支持部材3のQ値は温度と共に増加し、また支持部材3は光学部材1に接着されて、圧電素子2とともに振動体5を形成しているために、結果として振動体5のQ値も温度の上昇と共に増加する。
一方、本実施例では上記したように圧電定数は温度の上昇と共に減少するように構成されていることから、圧電定数による振動振幅の増加分とQ値による振動振幅の減少分が相殺され、振動体の振動振幅の温度変化を低減することが可能となる。
以上のQ値と温度との関係を図5に示す。
なお、本実施例において圧電素子2の主成分がチタン酸バリウムの場合について言及しているが、同様に室温付近に相転移温度を有し、その相転移温度が調節可能な圧電材料、例えばニオブ酸ナトリウムカリウムを主成分とする電気−機械エネルギー変換素子である圧電素子でも同様の効果が期待できる。
また本発明は塵埃除去装置に留まらず、超音波モータなど、圧電材料と使用し、かつ共振周波数付近の周波数で駆動するアクチュエータにも適用可能である。
さらに、上記塵埃除去装置は、撮像装置に用いることができる。その際、例えば塵埃除去装置の弾性部材を透過した光束が入射する位置に、撮像素子を設けるようにした構成を採ることができる。
図7は、撮像装置であるデジタル一眼レフカメラを被写体側より見た正面側斜視図であり撮影レンズを外した状態(上図)と、カメラを撮影者側より見た背面側斜視図(下図)である。
カメラ本体21内には、不図示の撮影レンズを通過した撮影光束が導かれるミラーボックス25が設けられており、ミラーボックス25内にメインミラー(クイックリターンミラー)26が配設されている。上記実施例で説明した塵埃除去装置を備えた撮像ユニットは、不図示の撮影レンズを通過した撮影光軸上に設けられている。
メインミラー26は、撮影者がファインダ接眼窓23から被写体像を観察するために撮影光軸に対して45°の角度に保持される状態と、撮像素子の方向へ導くために撮影光束から退避した位置に保持される状態と、を取り得る。
カメラ背面には、塵埃除去装置を駆動するためのクリーニング指示スイッチ24が設けられており、撮影者がクリーニング指示スイッチ24を押すと、塵埃除去装置を駆動するよう駆動回路に指示する。
実施例2として、支持部材の構成が実施例1と異なる構成例について説明する。
本実施例は、支持部材3にデバイスの使用温度範囲である駆動温度領域(−30〜45℃)内に、ガラス転移温度Tgを有する材料が用いられている以外の、光学部材1、圧電素子2、駆動回路4の構成は実施例1と同様である。
図6に、本実施例における振動体5のQ値と温度との関係を示す。
ここで、ガラス転移温度Tgとは、支持部材3に使用しているゴムや発砲プラスチックなどの剛性や粘度が低く、流動性が高い非晶質の固体が、低温では結晶なみに堅く流動性が小さい固体(ガラス状態)となるような温度である。
ガラス転移温度Tg以下ではQ値は温度の下降と共に上昇する。このため圧電定数が増加する、低温での振動振幅は上昇することになる。
しかし、このような場合でも高温のQ値は上昇するので、支持部材3が一定の場合よりも、高温の圧電定数低下による振動振幅の減少分は相殺される。
したがって、本実施例の構成においても振動体の振動振幅の温度変化を低減する効果は期待できる。
2:圧電素子
3:支持部材
4:駆動回路
5:振動体
Claims (6)
- 弾性部材と、
前記弾性部材に固定され、該弾性部材に振動を発生させる電気−機械エネルギー変換素子と、
前記弾性部材を支持する支持部材と、を備える圧電デバイスであって、
前記電気−機械エネルギー変換素子は、前記圧電デバイスの使用温度範囲において、圧電定数が温度の上昇と共に減少する圧電材料で構成され、
前記弾性部材を支持する支持部材は、前記圧電デバイスの使用温度範囲において、Q値が温度の上昇と共に増加する材料で構成されており、
前記圧電材料の圧電定数に、前記弾性部材及び前記電気−機械エネルギー変換素子を有する振動体のQ値を乗じた値が、前記使用温度範囲において、一定に近くなることを特徴とする圧電デバイス。 - 前記電気−機械エネルギー変換素子は、チタン酸バリウムまたはニオブ酸ナトリウムカリウムを主成分とする圧電材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。
- 前記支持部材は、高分子材料で構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧電デバイス。
- 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電デバイスと、前記電気−機械エネルギー変換素子に交番電圧を印加する駆動回路と、を有し、
前記交番電圧の印加によって前記弾性部材に生じる振動により、前記弾性部材に付着している塵埃を除去することを特徴とする塵埃除去装置。 - 請求項4に記載の塵埃除去装置と、前記塵埃除去装置の前記弾性部材を透過した光束が入射する位置に設けられた撮像素子と、を備えることを特徴とする撮像装置。
- 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電デバイスを有した電子機器。
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