以下、本発明を、電子写真方式の複写機(以下、単に複写機という)に適用した実施形態について説明する。
まず、実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、画像形成装置としての画像形成部1と、シート供給装置40と、画像読取ユニット50とを備えている。画像読取装置としての画像読取ユニット50は、画像形成部1の上に固定されたスキャナ150と、これに支持されるシート搬送装置としての原稿自動搬送装置(以下、ADFという)51とを有している。
シート供給装置40は、ペーパーバンク41内に多段に配設された2つの給紙カセット42、給紙カセットから記録シートを送り出す送出ローラ43、送り出された記録シートを1枚ずつに分離する分離ローラ45等を有している。また、画像形成部1の搬送路としての給紙路37に対して、シート部材としての記録シートを搬送する複数の搬送ローラ対46等も有している。
給紙カセット42は、複数の記録シートを重ねたシート束の状態で内部に収容している。そして、一番上の記録シートに対して送出ローラ43を押し当てている。送出ローラ43が回転すると、シート束の一番上の記録シートが給紙カセット42から送り出される。
給紙カセット42の付近では、搬送ローラ対46の第1搬送ローラと、これの側方(図中右側方)に配設された第2搬送ローラとが互いに当接して搬送ニップを形成している。また、第1搬送ローラの下方には、分離ローラ45が配設されており、第1搬送ローラに対して下方から当接して分離搬送ニップを形成している。
送出ローラ43の回転駆動によって給紙カセット42から送り出された記録シートは、搬送ローラ対46の第1搬送ローラと、これの下方に配設された分離ローラ45との当接による分離搬送ニップに進入する。この分離搬送ニップでは、記録シートの上面に当接する第1搬送ローラが図中反時計回り方向に回転駆動しながら、記録シートに対して給紙カセット42側から給送路44側に向かう搬送力を付与する。これに対し、記録シートの下面に当接する分離ローラ45が図中反時計回り方向に回転駆動しながら、記録シートに対して給送路44側から給紙カセット42側に向かう搬送力を付与して、記録シートを給紙カセット42に戻そうとする。
給紙カセット42から記録シートが1枚だけの状態で送り出された場合、分離搬送ニップにおいて、第1搬送ローラと分離ローラ45とが記録シートに対して互いに逆方向に向かう搬送力を付与することで、分離ローラ45の駆動伝達系に所定の閾値を超える負荷がかかる。すると、その駆動伝達系内に配設されたトルクリミッターが作動して、図示しないDCブラシレスモーターからの駆動力の分離ローラ45に対する伝達を切る。これにより、分離ローラ45が第1搬送ローラによって搬送される記録シートに連れ回るようになって、記録シートが分離搬送ニップから給送路44に向けて排出される。
一方、給紙カセット42から記録シートが複数枚重なった状態で送り出された場合、分離搬送ニップにおいて、第1搬送ローラが一番上の記録シートに対して給紙カセット42側から給送路44側に向かう搬送力を付与して、一番上の記録シートを分離搬送ニップから給送路44側に向けて送り出す。これに対し、分離ローラが下側に位置している記録シートに対して給送路44側から給紙カセット側に向かう搬送力を付与して、下側の記録シートを分離搬送ニップ内から給紙カセット42側に逆戻りさせる。これにより、分離搬送ニップでは、一番上の記録シートが他の記録シートから分離されて1枚の状態で給送路44に送り出される。
給送路44に進入した記録シートは、搬送ローラ対46の搬送ニップに進入して、鉛直方向下方側から上方側に向かう搬送力を付与される。これにより、給送路44内では、記録シートが画像形成部1の給紙路37に向けて搬送される。
画像形成手段としての画像形成部1は、光書込装置2や、黒,イエロー,マゼンタ,シアン(K,Y,M,C)のトナー像を形成する4つの作像ユニット3K,Y,M,C、転写ユニット24、紙搬送ユニット28、レジストローラ対33、定着装置34、スイッチバック装置36、給紙路37等を備えている。そして、光書込装置2内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の4つの感光体4K,Y,M,Cに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。
図2は、画像形成部1の内部構成の一部を拡大して示す部分構成図である。また、図3は、4つの作像ユニット3K,Y,M,Cからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図である。なお、4つの作像ユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、図3においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。
作像ユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ、感光体とその周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、画像形成部1本体に対して着脱可能になっている。黒用の作像ユニット3Kを例にすると、これは、感光体4の周りに、帯電装置23、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電ランプ22等を有している。本複写機では、4つの作像ユニット3K,Y,M,Cを、後述する中間転写ベルト25に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設した、いわゆるタンデム型の構成になっている。
感光体4としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
現像装置6は、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ12に供給する攪拌部7と、現像スリーブ12に担持された二成分現像剤中のトナーを感光体4に転移させるための現像部11とを有している。
攪拌部7は、現像部11よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本の搬送スクリュウ8、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像ケース9の底面に設けられたトナー濃度センサー10などを有している。
現像部11は、現像ケース9の開口を通して感光体4に対向する現像スリーブ12、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ13、現像スリーブ12に先端を接近させるドクタブレード14などを有している。現像スリーブ12は、非磁性の回転可能な筒状になっている。マグネットローラ12は、ドクタブレード14との対向位置からスリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部7から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ13表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
磁気ブラシは、現像スリーブ12の回転に伴ってドクタブレード14との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体4に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ12に印加される現像バイアスと、感光体4の静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像に寄与する。更に、現像スリーブ12の回転に伴って再び現像部11内に戻り、マグネットローラ13の磁極間に形成される反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部7内に戻される。攪拌部7内には、トナー濃度センサー10による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。なお、現像装置6として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。
ドラムクリーニング装置15としては、弾性体からなるクリーニングブレード16を感光体4に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体4に接触させる接触導電性のファーブラシ17を、図中矢印方向に回転自在に有する方式のものを採用している。このファーブラシ17は、図示しない固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体4表面に塗布する役割も兼ねている。ファーブラシ17にバイアスを印加する金属製の電界ローラ18を図中矢示方向に回転自在に設け、これにスクレーパ19の先端を押し当てている。ファーブラシ17に付着したトナーは、ファーブラシ17に対してカウンタ方向に接触して回転しながらバイアスが印加される電界ローラ18に転位する。そして、スクレーパ19によって電界ローラ18から掻き取られた後、回収スクリュウ20上に落下する。回収スクリュウ20は、回収トナーをドラムクリーニング装置15における図紙面と直交する方向の端部に向けて搬送して、外部のリサイクル搬送装置21に受け渡す。リサイクル搬送装置21は、受け渡されたトナーを現像装置15に送ってリサイクルする。
除電ランプ22は、光照射によって感光体4を除電する。除電された感光体4の表面は、帯電装置23によって一様に帯電せしめられた後、光書込装置2による光書込処理がなされる。なお、帯電装置23としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4に当接させながら回転させるものを用いている。感光体4に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
先に示した図2において、4つの作像ユニット3K,Y,M,Cの感光体4K,Y,M,Cには、これまで説明してきたプロセスによってK,Y,M,Cトナー像が形成される。
4つの作像ユニット3K,Y,M,Cの下方には、転写ユニット24が配設されている。ベルト駆動装置としての転写ユニット24は、複数のローラによって張架した中間転写ベルト25を、感光体4K,Y,M,Cに当接させながら図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体4K,Y,M,Cと、無端状のベルト部材である中間転写ベルト25とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップが形成されている。K,Y,M,C用の1次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写ローラ26K,Y,M,Cによって中間転写ベルト25を感光体4K,Y,M,Cに向けて押圧している。これら1次転写ローラ26K,Y,M,Cには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体4K,Y,M,C上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってK,Y,M,C用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各1次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
転写ユニット24の図中下方には、駆動ローラ30と2次転写ローラ31との間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。そして、自らの2次転写ローラ31と、転写ユニット24の下部張架ローラ27との間に、中間転写ベルト25及び紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ31には図示しない電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット24の下部張架ローラ27は接地されている。これにより、2次転写ニップに2次転写電界が形成されている。
この2次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対33が配設されている。また、レジストローラ対33のレジストニップの入口付近には、図示しないレジストローラセンサーが配設されている。図示しないシート供給装置からレジストローラ対33に向けて搬送されてくる記録シートは、その先端がレジストローラセンサーに検知された所定時間後記録シートの搬送が一時停止し、レジストローラ対33のレジストニップに先端を突き当てる。
記録シートの先願がレジストニップに突き当たると、レジストローラ対33は、記録シートを中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングでローラ回転駆動を再開して、記録シートを2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートに一括2次転写され、記録シートの白色と相まってフルカラー画像となる。2次転写ニップを通過した記録シートは、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置34へと搬送される。
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、2次転写ニップで記録シートに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置によって掻き取り除去される。
定着装置34に搬送された記録シートは、定着装置34内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着装置34から排紙ローラ対35に送られた後、機外へと排出される。
先に示した図1において、紙搬送ユニット22および定着装置34の下には、スイッチバック装置36が配設されている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた記録シートが、切換爪で記録シートの進路を記録シート反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
画像形成部1の上に固定されたスキャナ150やこれの上に固定されたADF51は、固定読取部や移動読取部152を有している。移動読取部152は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第2コンタクトガラスの直下に配設されており、光源や、反射ミラーなどからなる光学系を図中左右方向に移動させることができる。そして、光学系を図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第2コンタクトガラス上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させて、スキャナ本体に固定された画像読取センサー153で受光する。
一方、固定読取部は、スキャナ150の内部に配設された第1面固定読取部151と、ADF51内に配設された図示しない第2面固定読取部とを有している。光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサーなどを有する第1面固定読取部151は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第1コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、後述するADF51によって搬送される原稿MSが第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサーで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSの第1面を走査する。また、第2面固定読取部は、第1面固定読取部151を通過した後の原稿MSの第2面を走査する。
スキャナ150の上に配設されたADF51は、本体カバー52に、読取前の原稿MSを載置するための原稿載置台53、シート部材としての原稿MSを搬送するための搬送ユニット54、読取後の原稿MSをスタックするための原稿スタック台55などを保持している。図4に示されるように、スキャナ150に固定された蝶番159によって上下方向に揺動可能に支持されている。そして、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ150の上面の第1コンタクトガラス154や第2コンタクトガラス155を露出させる。原稿束の片隅を綴じた本などの片綴じ原稿の場合には、原稿を1枚ずつ分離することができないため、ADFによる搬送を行うことができない。そこで、片綴じ原稿の場合には、ADF51を図4に示すように開いた後、読み取らせたいページが見開かれた片綴じ原稿を下向きにして第2コンタクトガラス154上に載せた後、ADFを閉じる。そして、スキャナ150の図1に示した移動読取部152によってそのページの画像を読み取らせる。
一方、互いに独立した複数の原稿MSを単に積み重ねた原稿束の場合には、その原稿MSをADF51によって1枚ずつ自動搬送しながら、スキャナ150内の第1面固定読取部151やADF51内の第2面固定読取部に順次読み取らせていくことができる。この場合、原稿束を原稿載置台53上にセットした後、図示しないコピースタートボタンを押す。すると、ADF51が、原稿載置台53上に載置された原稿束の原稿MSを上から順に搬送ユニット54内に送り、それを反転させながら原稿スタック台55に向けて搬送する。この搬送の過程で、原稿MSを反転させた直後にスキャナ150の第1面固定読取部151の真上に通す。このとき、原稿MSの第1面の画像がスキャナ150の第1面固定読取部151によって読み取られる。
図5は、ADF51の要部構成をスキャナ150の上部とともに示す拡大構成図である。ADF51は、原稿セット部A、分離給送部B、レジスト部C、ターン部D、第1読取搬送部E、第2読取搬送部F、排紙部G、スタック部H等を備えている。
原稿セット部Aは、原稿MSの束がセットされる原稿載置台53等を有している。また、分離給送部Bは、セットされた原稿MSの束から原稿MSを一枚ずつ分離して給送するものである。また、レジスト部Cは、給送された原稿MSに一時的に突き当たって原稿MSを整合した後に送り出すものである。また、ターン部Dは、C字状に湾曲する湾曲搬送部を有しており、この湾曲搬送部内で原稿MSを折り返しながらその上下を反転させるものである。また、第1読取搬送部Eは、第1コンタクトガラス155の上で原稿MSを搬送しながら、第1コンタクトガラス155の下方で図示しないスキャナの内部に配設されている第1固定読取部151に原稿MSの第1面を読み取らせるものである。また、第2読取搬送部Fは、第2固定読取部95の下で原稿MSを搬送しながら、原稿MSの第2面を第2固定読取部95に読み取らせるものである。また、排紙部Gは、両面の画像が読み取られた原稿MSをスタック部Hに向けて排出するものである。また、スタック部Hは、スタック台55の上に原稿MSをスタックするものである。
原稿MSは、原稿MSの束の厚みに応じて図中矢印a、bの方向に揺動可能な可動原稿テーブル54の上に原稿先端部が載せられるとともに、原稿後端側が原稿載置台53の上に載せられた状態でセットされる。このとき、原稿載置台53上において、その幅方向(図紙面に直交する方向)の両端に対してそれぞれ図示しないサイドガイドが突き当てられることで、幅方向における位置が調整される。このようにしてセットされる原稿MSは、可動原稿テーブル54の上方で揺動可能に配設されたレバー部材62を押し上げる。すると、それに伴って原稿セットセンサー63が原稿MSのセットを検知して、検知信号を図示しないコントローラに送信する。そして、この検知信号は、コントローラからI/Fを介してスキャナの読取制御部に送られる。
原稿載置台53には、原稿MSの搬送方向の長さを検知する反射型フォトセンサー又はアクチュエーター・タイプのセンサーからなる第1長さセンサー57、第2長さセンサー58が保持されている。これら長さセンサーにより、原稿MSの搬送方向の長さが検知される。
可動原稿テーブル54の上に載置された原稿MSの束の上方には、カム機構によって上下方向(図中矢印c,d方向)に移動可能に支持されるピックアップローラ80が配設されている。このカム機構は、ピックアップモーター56によって駆動することで、ピックアップローラ80を上下移動させることが可能である。ピックアップローラ80が上昇移動すると、それに伴って可動原稿テーブル54が図中矢印a方向に揺動して、ピックアップローラ80が原稿MSの束における一番上の原稿MSに当接する。更に可動原稿テーブル54が上昇すると、やがてテーブル上昇検知センサー59によって可動原稿テーブル54の上限までの上昇が検知される。これにより、ピックアップモーター56が停止するとともに、可動原稿テーブル54の上昇が停止する。
複写機の本体に設けられたテンキーやディスプレイ等からなる本体操作部に対しては、操作者によって両面読取モードか、あるいは片面読取モードかを示す読取モード設定のためのキー操作や、コピースタートキーの押下操作などが行われる。コピースタートキーが押下されると、図示しない本体制御部からADF51のコントローラに原稿給紙信号が送信される。すると、ピックアップローラ80が給紙モーター76の正転によって回転駆動して、可動原稿テーブル54上の原稿MSを可動原稿テーブル54上から送り出す。
両面読取モードか、片面読取モードかの設定に際しては、可動原稿テーブル54上に載置された全ての原稿MSについて一括して両面、片面の設定を行うことが可能である。また、1枚目及び10枚目の原稿MSについては両面読取モードに設定する一方で、その他の原稿MSについては片面読取モードに設定するなどといった具合に、個々の原稿MSについてそれぞれ個別に読取モードを設定することも可能である。
送出部材としてのピックアップローラ80によって送り出された原稿MSは、分離搬送部Bに進入して、給紙ベルト84との当接位置に送り込まれる。この給紙ベルト84は、駆動ローラ82などによって張架されており、給紙モーター76の正転に伴う駆動ローラ82の回転によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。この給紙ベルト84の下部張架面には、給紙モーター76の正転によって図中時計回りに回転駆動される分離ローラ85が当接している。当接部においては、給紙ベルト84の表面が給紙方向に移動する。これに対し、分離ローラ85は、給紙ベルト84に所定の圧力で当接しており、給紙ベルト84に直接当接している際、あるいは当接部に原稿MSが1枚だけ挟み込まれている際には、ベルト又は原稿MSに連れ回る。但し、当接部に複数枚の原稿MSが挟み込まれた際には、連れ回り力がトルクリミッターのトルクよりも低くなることから、連れ回り方向とは逆の図中時計回りに回転駆動する。これにより、最上位よりも下の原稿MSには、分離ローラ85によって給紙とは反対方向の移動力が付与されて、数枚の原稿から最上位の原稿MSだけが分離される。
給紙ベルト84や分離ローラ85の働きによって1枚に分離された原稿MSは、レジスト部Cに進入する。そして、突き当てセンサー72の直下を通過する際にその先端が検知される。このとき、ピックアップモーター56の駆動力を受けているピックアップローラ80がまだ回転駆動しているが、可動原稿テーブル54の下降によって原稿MSから離間するため、原稿MSは給紙ベルト84の無端移動力のみによって搬送される。そして、突き当てセンサー72によって原稿MSの先端が検知されたタイミングから所定時間だけ給紙ベルト84の無端移動が継続して、原稿MSの先端がプルアウト駆動ローラ86とこれに当接しながら回転駆動するプルウト駆動ローラ87との当接部に突き当たる。
プルアウト従動ローラ87は、原稿MSを原稿搬送方向下流側の中間ローラ対66まで搬送する役割を担っており、給紙モーター76の逆転によって回転駆動される。給紙モーター76が逆転すると、プルアウト従動ローラ87と、互いに当接している中間ローラ対66における一方のローラとが回転を開始するとともに、給紙ベルト84の無端移動が停止する。また、このとき、ピックアップローラ80の回転も停止される。
プルアウト従動ローラ87から送り出された原稿MSは、原稿幅センサー73の直下を通過する。原稿幅センサー73は、反射型フォトセンサー等からなる紙検知部を複数有しており、これら紙検知部は原稿幅方向(図紙面に直交する方向)に並んでいる。どの紙検知部が原稿MSを検知するのかに基づいて、原稿MSの幅方向のサイズが検知される。また、原稿MSの搬送方向の長さは、原稿MSの先端が突き当てセンサー72によって検知されてから、原稿MSの後端が突き当てセンサー72によって検知されなくなるまでのタイミングに基づいて検知される。
原稿幅センサー73によって幅方向のサイズが検知された原稿MSの先端は、ターン部Dに進入して、中間ローラ対66のローラ間の当接部に挟み込まれる。この中間ローラ対66による原稿MSの搬送速度は、後述する第1読取搬送部Eでの原稿MSの搬送速度よりも高速に設定されている。これにより、原稿MSを第1読取搬送部Eに送り込むまでの時間の短縮化が図られている。
ターン部D内を搬送される原稿MSの先端は、原稿先端が読取入口センサー67との対向位置を通過する。これによって原稿MSの先端が読取入口センサー67によって検知されると、その先端が搬送方向下流側の読取入口ローラ対(89と90との対)の位置まで搬送される間での間に、中間ローラ対66による原稿搬送速度が減速される。また、図示しない読取モーターの回転駆動の開始に伴って、読取入口ローラ対(89,90)における一方のローラ、読取出口ローラ対92における一方のローラ、第2読取出口ローラ対93における一方のローラがそれぞれ回転駆動を開始する。
ターン部D内においては、原稿MSが中間ローラ対66と読取入口ローラ対(89、90)との間の湾曲搬送路で搬送される間に上下面が逆転されるとともに、搬送方向が折り返される。そして、読取入口ローラ対(89、90)のローラ間のニップを通過した原稿MSの先端は、レジストセンサー65の直下を通過する。このとき原稿MSの先端がレジストセンサー65によって検知されると、所定の搬送距離をかけながら原稿搬送速度が減速されていき、第1読取搬送部Eの手前で原稿MSの搬送が一時停止される。また、図示しない読取制御部に対してレジスト停止信号が送信される。
レジスト停止信号を受けた読取制御部が読取開始信号を送信すると、ADF51のコントローラの制御により、原稿MSの先端が第1読取搬送部E内に到達するまで、読取モーターの回転が再開されて所定の搬送速度まで原稿MSの搬送速度が増速される。そして、読取モーターのパルスカウントに基づいて算出された原稿MSの先端が第1固定読取部151による読取位置に到達するタイミングで、コントローラから読取制御部に対して原稿MSの第1面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第1固定読取部151による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第1面が第1固定読取部151によって読み取られる。
第1読取搬送部Eを通過した原稿MSは、後述の読取出口ローラ対92を経由した後、その先端が排紙センサー61によって検知される。片面読取モードが設定されている場合には、後述する第2固定読取部95による原稿MSの第2面の読取が不要である。そこで、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知されると、排紙モーターの正転駆動が開始されて、排紙ローラ対94における図中下側の排紙ローラが図中時計回り方向に回転駆動される。また、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知されてからの排紙モーターパルスカウントに基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対94のニップを抜け出るタイミングが演算される。そして、この演算結果に基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対94のニップから抜け出る直前のタイミングで、排紙モーターの駆動速度が減速せしめられて、原稿MSがスタック台55から飛び出さないような速度で排紙される。
一方、両面読取モードが設定されている場合には、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知された後、第2固定読取部95に到達するまでのタイミングが読取モーターのパルスカウントに基づいて演算される。そして、そのタイミングでコントローラから読取制御部に対して原稿MSの第2面における副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第2固定読取部95による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第2面が第2固定読取部95によって読み取られる。
読取手段としての第2固定読取部95は、密着型イメージセンサー(CIS)からなり、原稿MSに付着している糊状の異物が読取面に付着することによる読取縦スジを防止する目的で、読取面にコーティング処理が施されている。第2固定読取部95との対向位置には、原稿MSを非読取面側から支持する原稿支持手段としての第2読取ローラ96が配設されている。この第2読取ローラ96は、第2固定読取部95による読取位置での原稿MSの浮きを防止するとともに、第2固定読取部95におけるシェーディングデータを取得するための基準白部として機能する役割を担っている。
上述したように、図1のシート供給装置40の給送路44では、記録シートに対して搬送ローラ対46の搬送ニップで上方に向かう搬送力が付与されて、記録シートが画像形成部1の給紙路37に向けて搬送される。
図6は、搬送ローラ対46の第1搬送ローラ46aを回転駆動させるためのモーター駆動装置を示す平面構成図である。このモーター駆動装置は、モーター制御回路200と、インナーロータ型のDCブラシレスモーターからなる搬送モーター210と、減速機225とを有している。
モーター制御回路200は、後述するモーターエンコーダーによる検知結果に基づいて、搬送モーター210の回転駆動を制御する制御手段として機能している。搬送モーター210の駆動によって搬送モーター210のモーター軸214が回転すると、モーター軸214に固定されたモーターギヤ213の回転速度が減速機225によって減速された後、被駆動体としての第1搬送ローラ46aに伝達される。
減速機225は、モーターギヤ213に噛み合う第1減速ギヤ221と、これに噛み合う第2減速ギヤ222と、これに噛み合う第3減速ギヤ223と、第1搬送ローラ46aと同一の回転軸線で回転するように第1搬送ローラ46aの軸部材に固定された状態で第3減速ギヤ223に噛み合う第4減速ギヤとを有している。
次に、実施形態に係る複写機の特徴的な構成について説明する。図7は、モーター駆動装置の搬送モーター210を前方から示す拡大斜視図である。また、図8は、搬送モーター210を後方から示す拡大斜視図である。これらの図に示すように、搬送モーター210のモーター軸213は、モーター本体を前後方向に貫いた状態で、モーター本体の前部においてモーター本体から前方に向けて突出しているとともに、モーター本体の後部においてモーター本体から後方に向けて突出している。
モーター本体の後側面には、ドライバ基板216が固定されており、このドライバ基板216には、搬送モーター210の3相のコイルを所定の順序で励磁するためのドライバ回路を搭載している。モーター軸213は、このドライバ基板216も貫いて後方に向けて突出している。
モーター軸213におけるドライバ基板216よりも後方の箇所には、回転量検知手段としてのモーターエンコーダー211のコードホイール211aが固定されており、モーター軸213の回転に伴ってモーター軸213と同じ回転軸線上で回転する。コードホイール211aは、図9に示されるように、回転方向に所定のピッチで並ぶ複数のスリットSLを具備している。コードホイール211aの回転に伴ってそれらのスリットSLを順次検知するように、透過型フォトセンサーからなる光学センサー211bが、搬送モーター210のドライバ基板216に固定されている(図8参照)。なお、便宜上、図示を省略しているが、搬送モーター210のモーター本体における後端部には、ドライバ基板216やモーターエンコーダー211を覆うカバー部材が嵌め込まれている。
温度変化に伴う伸縮が生じてもコードホイール211aを確実にモーター軸213に同期させて回転させるように、コードホイール211aについては、モーター軸213に圧入するだけでなく、接着剤によってモーター軸213に接着することが望ましい。
コードホイール211aとしては、金属板の打ち抜き加工によってホイール本体及びスリットSLを加工したものを用いている。かかるコードホイール211aは、金属製であることから、温度変化に伴う伸縮を抑えて、スリットピッチの経時変動を軽減することができる。しなしながら、打ち抜き加工のときに生じたバリに埃などの異物を付着させ易い。そこで、図9に示されるコードホイール211aに代えて、図10に示されるコードホイール211aを用いてもよい。このコードホイール211aは、回転方向に所定のピッチでならぶ複数の暗部DPを目印として具備している。暗部DPは、フォトリソグラフィー法を用いたハーフエッチング加工によって形成されたものである。基材として表面に鏡面仕上げ層が被覆されたものを用い、ハーフエッチングによって鏡面仕上げ層を除去して暗部層を露出させている箇所が暗部DPになっている。暗部DPを高精度で加工することができる。但し、ハーフエッチング加工によってコスト高になる。また、油脂に弱いために取り扱いに注意を要する。
図10に示されるコードホイール211aを用いる場合には、光学センサー211bとしては、透過型フォトセンサーからなるものに代えて、反射型フォトセンサーからなるものを用いて、光反射性の違いによって暗部DPを検知させるようにすればよい。
このように、実施形態に係る複写機においては、ドライバ回路、及び回転量検知手段たるモーターエンコーダー211を、搬送モーター210に搭載している。
図11は、モーター駆動装置における電気回路の要部を示すブロック図である。DCブラシレスモーターからなる搬送モーター210の駆動を制御するモーター制御回路200は、搬送モーター210とは別体として形成されており、画像形成部(図1の1)の本体に固定されている。
図12は、モーター制御回路200によって駆動制御される搬送モーター210の駆動開始からの経過時間と、モーター回転速度との関係を示すグラフである。このグラフにおける原点は、搬送モーター210に対して駆動用の電圧が出力され始めた駆動開始時点を示している。搬送モーター210は、駆動開始時点からある程度のタイムラグが経過するまでの起動期間では、回転を開始していない。起動期間が過ぎると、回転を開始して、比較的低い加速で回転速度を上昇させる第1加速期間に移行する。その後、第1加速期間よりも高い加速度で回転速度を上昇させる第2加速期間と、モーター軸を等速で回転させる等速回転期間と、回転速度を減速させてやがて回転を停止させる減速期間とに順次移行する。
図13は、搬送モーター210の駆動開始からの経過時間と、搬送モーター210のコイルに対する出力電圧との関係を示すグラフである。モーター制御回路200は、起動期間において駆動開始処理を実施する。この駆動開始処理では、駆動開始事件まで電圧を出力していなかったドライバ回路212からモーターコイルに対して「駆動開始用電圧」を出力させる。この「駆動開始用電圧」は、第1加速時間において出力される「第1加速用電圧」よりも大きな値になっている。図示のように、起動期間が終了すると、「駆動開始用電圧」の出力が終了するが、仮に、起動期間が経過した後も「駆動電圧用電圧」を出力し続けると、やがて、搬送モーター210のモーター軸が勢い良く回転を開始する。すると、搬送モーター210がバックラッシュして停止していた場合には、モーターギヤの歯が勢い良く従動ギヤに衝突するおそれがある。そこで、起動期間は、「駆動開始用電圧」の出力を開始してから、モーター軸が回転し始めるまでのタイムラグよりも僅かに短い時間に設定されている。そのタイムラグは、予めの試験によって測定が可能である。
また、モーター制御回路200は、駆動開始からのタイミングが起動期間から第1加速期間に移行すると、第1加速処理を実施する。そして、第1加速処理では、搬送モーター210の回転速度を所定の第1加速特性で加速させるために、比較的低い値の「第1加速用電圧」をドライバ回212からモーターコイルに出力させる。これにより、第1加速期間では、搬送モーター210の回転速度が比較的ゆっくりと加速していく(図12参照)。
なお、起動期間と、第1加速期間とを合わせた起動〜第1加速期間は、「最大バックラッシュ量回復期間」と同じ長さに設定されている。具体的には、「最大バックラッシュ量回復期間」は、次のようにして測定される。即ち、搬送モーター210を意図的に最大バックラッシュの状態で停止させている状態から、「駆動開始用電圧」を出力する起動期間を経た後、「第1加速用電圧」を出力する第1加速処理を実施して、モーター軸が最大バックラッシュ量と同じ量だけ回転するまでに要する時間を測定する。その時間が、「最大バックラッシュ量回復期間」である。
次に、モーター制御回路200は、駆動開始からのタイミングが第1加速期間から第2加速期間に移行すると、第2加速処理を実施する。そして、第2加速処理では、搬送モーター210の回転速度を第1加速特性よりも加速性の優れた第2加速特性で加速させるために、比較的高い値の「第2加速用電圧」をドライバ回路212からモーターコイルに出力させる。これにより、搬送モーター210の回転速度が、第1加速期間よりも急に上昇し始める(図12参照)。
なお、モーター制御回路200は、モーターエンコーダー211から送られてくるパルス信号の周波数が所定の目標周波数になった後、即ち、モーターの回転速度が所定の目標速度になった後には、パルス信号の周波数をその目標周波数で安定させるように、ドライバ回路212からの出力電圧を制御する。このような等速回転処理により、等速回転期間においては、搬送モーター210を目標速度で安定して回転させる。
また、モーター制御回路200は、搬送モーター210の停止処理を開始すべき所定のタイミングが到来すると、ドライバ回路212からの出力電圧を徐々に低下させて、やがて出力停止させるための減速処理を実施する。これにより、減速期間では、搬送モーター210の回転速度が減速されて、やがて回転が停止する。
このような一連のモーター制御において、第1加速期間で、搬送モーター210の回転を低い加速度で加速しながら、バックラッシュによって従動ギヤから離間していた状態のモーターギヤの歯を従動ギヤに対して従来よりもゆっくりとした速度で衝突させることで、バックラッシュに起因するギヤの低寿命化を抑えることができる。また、第2加速期間で、搬送モーター210の回転をより高い加速度で加速することで、第1加速期間と同等の低い加速度のままで目標値に到達させる場合に比べて、「加速所要時間」を短縮することができる。また、起動期間において、第1加速期間における「第1加速用電圧」よりも高い値の「駆動開始用電圧」を出力することで、「第1加速用電圧」で駆動開始する場合に比べて上記タイムラグを短縮して、モーター軸を迅速に回転させることができる。
なお、「駆動開始用電圧」として、「第2加速用電圧」と同等の値のものを採用した例について説明したが、「第2加速用電圧」よりも大きい値のものや、「第2加速用電圧」よりも小さい値のものを採用してもよい。但し、「駆動開始用電圧」>「第1加速用電圧」という条件や、「第1加速用電圧」<「第2加速用電圧」という条件については、必ず具備させる必要がある。
また、起動期間において、一定の値の「駆動開始用電圧」を出力する例について説明したが、「駆動開始用電圧」の値を変化させてもよい。この場合、起動期間における「駆動開始用電圧」の平均値を、「第1加速用電圧」よりも大きくする必要がある。また、一定の値の「第1加速用電圧」を出力する例について説明したが、「第1加速用電圧」を変化させてもよい。この場合、第1加速期間における「第1加速用電圧」の平均値を、「駆動開始電圧」や「第2加速用電圧」よりも低くすればよい。また、一定の値の「第2加速用電圧」を出力する例について説明したが、「第2加速用電圧」を変化させてもよい。この場合、第2加速期間における「第2加速用電圧」の平均値を、「第1加速用電圧」よりも高くすればよい。
ところで、従来より、画像形成装置内に搭載される紙搬送装置など、定量的な動作が必要になる駆動系においては、交流モーターの一種であるステッピングモーターを用いるのが一般的であった。しかし、ステッピングモーターは、制御装置から発せられたパルス数に正確に対応する量だけ回転するので、定量的な駆動に非常に適したモーターである。しなしながら、脱調の発生を防止するために、最大負荷の1.3倍程度、あるいは平均負荷の2倍程度、の負荷がかかっても回転周期を乱さないほどトルクに余裕のある条件で駆動することから、無駄な電力を消費してしまうという不具合があった。
一方、特許文献1に記載のモーター駆動装置は、被駆動体たるローラの回転量をエンコーダーによって検知した結果に基づいて、駆動源たるDCブラシレスモーターの駆動量を調整することで、ローラの定量的な回転駆動を実現している。DCブラシレスモーターは、コイルに対して負荷トルクに応じた電流が流れるため、ステッピングモーターのような電流のロスがない。このため、ステッピングモーターを用いる場合に比べて、無駄な電力消費を抑えることができる。
しかしながら、特許文献1に記載のモーター駆動装置においては、ホール素子などからドライバ回路に送られるホール信号(回転センシング信号)にノイズを混入させることによるモーター回転の不安定化を引き起こすおそれがある。具体的には、ドライバ回路からDCブラシレスモーターに対しては、各コイルに対してそれぞれ励磁電圧を個別に供給する必要がある。励磁対象となるコイルは非常に短時間のうちに切り替わるため、各コイルにそれぞれ励磁電圧を個別に導くための複数の駆動電源用電線においては、モーターの回転に応じて、励磁電流の流れる駆動電源用電線が高速で切り替わる。すると、複数の駆動電源用電線とともに這い回されている信号用電線によって交信されるホール信号にノイズが混入して、DCブラシレスモーターの回転を不安定にしてしまうのである。
そこで、本複写機においては、ドライバ回路212をDCブラシレスモーターからなる搬送モーター210に搭載している。これにより、特許文献1に記載のモーター駆動装置に比べて、ドライバ回路とモーターコイルとの距離を近づけている。そして、複数の駆動電源用電線や信号用電線を束ねたハーネスをドライバ回路212とモーター本体との間に設けることなく、回路基板上の電極によってドライバ回路212からモーターコイルに励磁電圧を供給したり、ホール素子217からドライバ回路212にホール信号を送信したりする。この結果、励磁対象となるコイルを高速で切り替える際のノイズの発生を抑えたり、発生したノイズのホール信号への混入を抑えたりすることで、ホール信号へのノイズの混入に起因するモーター回転の不安定化を抑えることができる。
次に、実施形態に係る複写機に、より特徴的な構成を付加した実施例の複写機について説明する。なお、以下に特筆しない限り、実施例に係る複写機の構成を実施形態と同様である。
[実施例]
図14は、実施例に係る複写機のモーター駆動装置における電気回路の要部を示すブロック図である。同図において、モーター制御回路200は、目標位置・速度計算回路201、位置・速度追従制御回路202、モーター回転量・速度計算回路203などを有している。
目標信号生成手段250は、モーター駆動装置とは別体として構成されたものであり、プリントジョブの進行状況に応じて、第1搬送ローラ(46a)の目標回転量、目標回転速度、目標回転停止位置などの目標信号を生成する。画像形成部(1)内の各種機器の全体的な制御を司るメイン制御部を目標信号生成手段250として機能させてもよい。
モーター制御回路200としては、1チップマイコンからなるもの、あるいは制御用ASIC(Application Specific Integrated Circuit)からなるものが用いられている。
目標信号生成手段250からモーター制御回路200に送られた目標信号は、モーター制御回路200の目標位置・速度計算回路201に入力される。目標位置・速度計算回路201は、入力された目標信号に基づいて、第1搬送ローラ(46a)を目標の回転姿勢で停止させるための目標モーター停止位置を算出し、その結果を目標位置信号として出力する。また、目標信号に基づいて、第1搬送ローラ(46a)を目標の回転速度で回転させるための目標モーター回転速度を算出し、その結果を目標速度信号として出力する。
搬送モーター210に搭載されたモーターエンコーダー211の光学センサーとしては、スリットSL透過後の光を受光する受光部を2つ具備する2チャンネル光学センサーを用いている。2つの受光部は、次のような条件を具備するように配設されている。即ち、コードホイール211aのスリットSLが第1受光部に対向したときに、第2受光部がそのスリットSLの脇に存在するホイール非スリット部に対向する条件である。第1受光部による受光量と、第2受光部による受光量との比率の変化に基づいて、それぞれの受光部に対してコードホイール211のスリットSLをずれなく対向させた瞬間が高精度に把握される。第1受光部は受光量に応じた電圧をパルス信号Aとして出力する。また、第2受光部は、受光量に応じた電圧をパルス信号Bとして出力する。
光学センサー211bから出力されるパルス信号Aやパルス信号Bは、モーター制御回路200のモーター回転量・速度計算回路203に入力される。モーター位置・速度計算経路203は、パルス信号A、パルス信号Bについてそれぞれパルス立ち上がり数やパルス周波数を演算した結果に基づいて、モーター回転量を算出し、その結果をモーター回転量信号として出力する。また、モーター回転速度を算出し、その結果をモーター回転速度信号として出力する。
位置・速度追従制御回路202は、ドライバ回路212に対して、GND(−電源)を常時供給している。また、必要に応じて励磁用+電源(+24V)や、信号用+電源(+5V)をドライバ回路212に供給する。更には、必要に応じてブレーキ信号、PWM信号、方向信号(CW,CCW)をそれぞれ個別にドライバ回路212に出力する。方向信号としては、正転命令を行うための正転信号、逆転命令を行うための逆転信号の何れかを出力する。PWM信号は、ドライバ回路212から搬送モーター210のコイルに対して出力される励磁電圧値を指示するためのものである。
搬送モーター210は、ホール素子217を有している。回転角度検知手段たるホール素子は、搬送モーター210のモーター軸213の回転角度姿勢について、基準となる0[°](360°)になったことや、120[°]、240[°]になったことを示すためのホール信号をドライバ回路212に出力する。
ドライバ回路212は、モーター制御回路200の位置・速度追従制御回路202から出力されるPWM信号に基づいて搬送モーター210のコイルに対する励磁電圧の出力を調整する出力調整部と、搬送モーター210における3相のコイルのうち、励磁電圧を出力するコイルを切り替えるコイル切替部とを具備している。出力調整部は、PWM信号に基づいて、コイル切替部に対する+24[V]の電圧の出力をオンオフすることで、コイル切替部を介してコイルに流れる単位時間あたりの励磁電圧の値を調整する。また、コイル切替部は、プリドライバや複数のFET(フィールドエフェクトトランジスタ)などを具備している。複数のFETとしては、少なくとも、1相目のコイルに励磁するためのU励磁電圧の出力をオンオフするための第1FET、2相目のコイルに励磁するためのV励磁電圧の出力をオンオフするための第2FET、及び3相目のコイルに励磁するためのW励磁電圧の出力をオンオフするための第3FETを具備している。それらFETには、FETによるスイッチングを制御するためのゲート電圧がプリドライバからそれぞれ個別に出力される。プリドライバは、ホール素子217からのホール信号に基づいて、3つのFETに対するゲート電圧のオンオフを個別に制御することで、搬送モーター210に出力する励磁電圧を、U励磁電圧と、V励磁電圧と、W励磁電圧とで切り替える。この切り替えにより、搬送モーター210のモーター軸213に対して磁界の切り替えによる回転力が付与される。
位置・速度追従制御回路202は、モーター回転量・速度計算回路203から送られてくるモーター回転速度信号の目標速度信号からのずれ量を算出し、そのずれ量に基づいてPWM信号を調整することで、搬送モーター210に対する励磁電圧を調整して、搬送モーター210の回転速度を目標の回転速度に制御するための速度調整処理を実施する。この速度調整処理により、搬送モーター210によって駆動される被駆動体たる第1搬送ローラ46aの回転速度を自在に調整することができる。かかる速度調整処理については、PID制御を利用したフィードバック制御によって行われる。
モーター駆動装置は、搬送モーター210によって回転駆動される第1搬送ローラ46aの回転速度を検知することなく、図8に示されるように、搬送モーター210に搭載されたモーターエンコーダー211によって搬送モーター210の回転速度を直接的に検知する。かかる構成では、第1搬送ローラ46aの回転速度変化に基づいて搬送モーターの回転速度の変化を間接的に検知していた特許文献1に記載のモーター駆動装置に比べて、搬送モーター210の回転速度の変化を迅速に検知する。そして、その検知結果に応じて、搬送モーター210の回転速度を元の速度に素速く戻すことで、負荷変動に起因する第1搬送ローラ46aの回転速度不安定化を抑えることができる。
また、このモーター駆動装置においては、ドライバ回路212が組み込まれたドライバ基板216を搬送モーター210に搭載したことで、ドライバ回路212を搬送モーター210から離れた位置に配設していた従来に比べて、ドライバ回路210と搬送モーター210のコイルとの距離を近づけている。これにより、複数の駆動電源用電線や信号用電線を束ねたハーネスをドライバ回路212と搬送モーター210との間に設けることなく、ドライバ基板216上の電極によってドライバ回路212からモーターコイルに励磁電圧を供給したり、搬送モーター210からドライバ回路212にセンシング信号としてのホール信号を送信したりすることが可能になる。この結果、励磁対象となるコイルを高速で切り替える際のノイズの発生を抑えたり、発生したノイズのホール信号への混入を抑えたりすることで、ホール信号へのノイズの混入に起因するモーター回転の不安定化を抑えることができる。
なお、ドライバ回路212とモーター制御回路200との間には、励磁用+電源、GND、ブレーキ信号、PWM信号、方向信号、信号用+電源、パルス信号A、及びパルス信号Bをそれぞれ個別に導くための8本の電線からなるハーネスを這い回している。このハーネスにおいては、励磁電圧の元になる励磁用+電源を導くための電線を1本しか設けておらず、この電線には長期に渡って+24Vが安定して供給される。ドライバ回路212と搬送モーター210との間とは異なり、励磁対象となるコイルの切り替えに伴う+24V導通線の高速切り替えが行われないため、高速切り替えに起因するノイズの発生は起こらない。このため、励磁用+電源を導くための電線と、パルス信号Aを導くための電線と、パルス信号Bを導くための電線とを一緒に這い回していても、パルス信号Aやパルス信号Bへのノイズ混入は起こらない。
位置・速度追従制御回路202は、モーター回転量・速度計算回路203から送られてくるモーター回転量信号に基づいて、搬送モーター210について、起動時からの総回転量を把握する。そして、把握結果と、目標位置信号との比較に基づいて、搬送モーター210について、目標の回転量になる制動タイミングを把握し、その制動タイミングでドライバ回路212に対するPWM信号の出力を停止するとともに、ブレーキ信号を出力して、搬送モーター210を目標の回転角度姿勢で停止させる目標停止処理を実施する。これにより、搬送モーター210によって駆動される第1搬送ローラ46aや、これに連れ回る第2搬送ローラ46bを、目標の回転角度姿勢で停止させることができる。かかる目標停止処理については、PID制御を利用してフィードバック制御によって行われる。
搬送モーター210を停止させている状態において、位置・速度追従制御回路202は、ホールド処理を行う。このホールド処理では、モーター回転量・速度計算回路203から送られてくるモーター回転量信号に基づいて、モーター軸213の正転や逆転の有無を監視する。そして、正転を検知した場合には、正転量に応じた量だけ搬送モーター210を逆転駆動する一方で、逆転を検知した場合には逆転量に応じた量だけ搬送モーター210を正転駆動する。これにより、搬送モーター210の回転駆動力によって駆動される第1搬送ローラ(46a)を目標の回転姿勢に拘束する。かかる構成では、ハス歯ギヤの付設によらず、ホールド制御によって搬送モーター210を所望の回転角度姿勢に拘束することで、装置の小型化、及び装置構成の簡素化を図ることができる。
光学センサー211としては、分解能が45[LPI]であるものを用いている。また、コードホイール211aとしては、1周あたりにスリットSLを100個設けたものを用いている。このようにしたのは、次に説明した理由による。即ち、従来、搬送ローラ対の駆動源としては、HB型ステッピングモーターが一般的に用いられていた。HB型ステッピングモーターの基本分解能は200パルス(2相励磁)である。1−2相励磁で400パルス、W1−2相励磁で800パルスである。かかる分解能と同様の能力を、DCブラシレスモーターからなる搬送モーター210で得ることが望ましい。DCブラシレスモーターは、ステッピングモーターに比べて2倍以上の回転速度で用いられるのが一般的であるので、減速比を考慮すると、基本分解能は半分の100パルスで、ステッピングモーターの基本分解能(2相励磁)と同様の能力を発揮することが可能になる。また、光学センサー211bの2つの受光部からそれぞれ出力されるパルス信号A及びBを利用することで、モーター1周につき、2逓倍の200パルスや、4逓倍の400パルスを生成することが可能であるため、ステッピングモーターの1−2相励磁時やW1−2相励磁時の分解能とそれぞれ同様の能力を発揮することも可能である。そこで、1周あたり100個のスリットSLを設けたコードホイール211aを用いたのである。
また、光学センサー211bとして、分解能が45[LPI]であるものを用いることで、100個のスリットSLを設けるコードホイール211aの中心円径φを17.97[mm]に留める。これにより、コードホイール211aを搬送モーター210の径内に収めて、コードホイール211aを搭載することによる搬送モーター210の径の大型化を回避することができる。なお、コードホイールパルスを2倍の200パルスにすると、コードホイール211aの中心円径φは35.93[mm]まで大型化してしまう。この中心円形φを、搬送モーター210の径内に収めることは非常に困難である。また、コードホイールパルスを1.5倍の150パルスにしても、応答周波数が使用限界を超えないことから、分解能は45[LPI]であることが望ましい。
図8において、ドライバ基板216には、コネクター215が固定されている。このコネクター215に対しては、モーター制御回路200から這い回されてくるハーネスの末端に設けられたハーネスコネクターが係合せしめられる。コネクター215のピン数は、励磁用+電源受入用ピン、GND受入用ピン、ブレーキ信号受入用ピン、PWM信号受入用ピン、方向信号受入用ピン、信号用+電源受入用ピン、パルス信号A出力用ピン、及びパルス信号受入用ピンの8個である。なお、図11では、便宜上、図示が省略されているが、ドライバ回路212から光学センサー211bに対して、+5[V]の電源配線と、GND配線とが延びている。
コネクター215におけるピンの配設ピッチは1.5[mm]である。また、ピンの配列順序は、次の通りである。即ち、1番ピン=励磁用+電源受入用ピン、2番ピン=GND受入用ピン、3番ピン=ブレーキ信号受入用ピン、4番ピン=PWM信号受入用ピン、5番ピン=方向信号受入用ピン、6番ピン=信号用+電源受入用ピン、7番ピン=パルス信号A出力用ピン、8番ピン=パルス信号受入用ピン。24[V]の励磁用+電源受入用ピン(1番)に対して、パルス信号A出力用ピン(7番)及びパルス信号受入用ピン(8番)の組み合わせを最も遠ざけることで、パルス信号へのノイズの混入を効率的に抑えることができる。
HB型ステッピングモーターと同等の制御性を搬送モーター210に発揮させるためには、スリットSLや暗部DPの読み取りを高精度に行わせる必要がある。そのために、モーターに組み付いた状態でのコードホイール211aの1回転内におけるセンサー読取位置での回転方向の位置誤差を0.3[%]以下に留める必要がある。かかる位置誤差は、コードホイール211aの寸法精度、モーター軸213に対するコードホイール211aの組み付け精度、モーター軸の真直度などを、厳密に管理した各部品を用いることが望ましい。
図14において、位置・速度追従制御回路202は、上述した駆動開始処理、第1加速処理、第2加速処理、等速回転処理、及び減速処理を実施する。図示しないROMを具備しており、このROMの中に、上述した「駆動用電圧」の値、「第1加速用電圧」の値、「第2加速用電圧」の値、第1加速特性を示す第1アルゴリズム、第2加速特性を示す第2アルゴリズム、減速処理における減速電圧パターンのデータなどを記憶している。
上述した駆動開始処理(起動期間)において、位置・速度追従制御回路202は、ROMに記憶している「駆動用電圧」をドライバ回路212から出力させるためのPWM信号を、予めROMに記憶している起動期間の長さだけ出力する。
図15は、第1アルゴリズムによって表される第1加速特性を示すグラフである。また、図16は、第2アルゴリズムによって表される第2加速特性を示すグラフである。これらの加速特性は、パルス周波数[Hz]の値を示す縦軸と、モーター起動時からの経過時間[s]を示す横軸との2次元座標におけるグラフの傾きによって表される。パルス周波数は、光学センサー211bから出力されるパルス信号Aやパルス信号Bの周波数であり、それらはモーターの回転周波数を表している。グラフの傾きが大きいほど、加速性に優れている。図15、図16からわかるように、第1加速特性は第2加速特性よりも加速性に劣っている(図15のグラフの傾き<図16のグラフの傾き)。
なお、図15のグラフの原点は、第1加速期間の始期を示している。また、図16のグラフの原点は、第2加速期間の始期を示している。第2加速期間は、既に第1加速期間によって回転速度がある程度立ち上がっている状態からスタートするので、図16に示されるように、グラフの原点でパルス周波数が0よりも大きな値から立ち上がっている。
位置・速度追従制御回路202は、上述した第1加速処理を開始すると、まず、計時処理をスタートするとともに、「第1加速用電圧」に対応するPWM信号を出力する。予め決められた値、あるいは決められたパターンで出力電圧を決定するフィードフォワード制御を行うのである。但し、単純にフィードフォワード制御だけを行うのではなく、フィードバック制御を組み合わせる。具体的には、次のような処理を定期的に繰り返し行う。即ち、計時結果のタイミングにおけるパルス周波数を目標周波数(目標回転速度)として第1アルゴリズム(図15のグラフ)から特定する。そして、モーターエンコーダー211から送られてくるパルス信号の周波数と、目標周波数との差分に相当する電圧を、「第1加速用電圧」に対して重畳するフィードバック制御を行う。これにより、モーターの加速性を第1加速特性に追従させる。
また、位置・速度追従制御回路202は、第1加速期間から第2加速期間に移行するタイミングを、前述の差分に基づいて決定する。具体的には、モーターエンコーダー211から送られてくるパルス信号の周波数が目標周波数よりも小さく、且つ両者の差分が閾値を超えたタイミングで、第1加速期間から第2加速期間に移行する。これは次に説明する理由による。即ち、減速機を用いた駆動伝達系では、減速比を優先してギヤ周長や歯数が決定されることから、モーターギヤとこれに噛み合う従動ギヤとの間に比較的大きな隙間が発生する。この大きな隙間により、バックラッシュ時にモーターギヤの歯が従動ギヤの歯から大きく離間してしまう。実施形態に係るモーター駆動装置でも、モーターギヤ213の歯と、従動ギヤとしての第1減速ギヤ221の歯とが離間した状態になる。第1加速期間において、モーターギヤの歯が従動ギヤに衝突するタイミング(以下、噛み合いタイミングという)は、まちまちである。但し、そのタイミングでは、図12の時点t1のように、モーター回転速度が急激に低下する。これは、ギヤの噛み合いの開始に伴ってモーターに対する負荷トルクが急激に上昇するからである。即ち、第1加速期間において、パルス信号の周波数が急激に低下し、且つ前述の差分が閾値を超えた場合には、第1加速期間の終期を迎える前に、噛み合いタイミングを迎えたことになる。この場合、第1加速期間の終期を待たずに、すぐに第2加速期間に移行して加速度をより高めることで、「加速所要時間」をより短縮することができる。
第2加速期間において、位置・速度追従制御回路202は、搬送モーター210の回転速度を第1加速特性よりも加速性に優れた第2加速特性に従って一気に加速させる。具体的には、所定の時間間隔で、次のような処理を繰り返し実施する。即ち、パルス信号に基づいてモーター回転周波数実測値を演算し、演算結果と目標周波数(第2加速特性の縦軸値)との差分を求める。そして、この差分に応じてPWM信号のデューティ比を調整して、差分に応じた励磁電圧の増減を生じせしめる。これにより、モーターの加速性を第2加速特性に追従させる。なお、第2加速期間においても、第1加速期間と同様に、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを組み合わせて行う。
図17は、モーター制御回路の位置・速度追従制御回路182における内部構成の一部を示すブロック図である。位置・速度追従制御回路182は、第1加速期間や第2加速期間では、図示の内部回路を利用してPWM信号を出力する。この内部回路は、位置フィードフォワード制御回路182a、速度フィードフォワード制御回路182b、位置フィードバック制御回路182c、速度フィードバック制御回路182d、速度検出回路182e、第1加減算回路182f、第2加減算回路182g、加算回路182hなどを具備している。DCブラシレスモーターからなる搬送モーター(210)は、ステッピングモーターに比べて、どうしても起動時や停止時の位置追従性や速度追従性が劣ってしまう。そこで、搬送モーターの起動時や停止時の動作特性を予め調査しておき、その動作特性に基づいて、起動時や停止時の位置追従性や速度追従性を向上させるための位置追従プロファイルや速度追従プロファイルを構築して、目標位置・速度計算回路(181)に記憶させている。目標位置・速度計算回路は、それらのプロファイルに基づいて、目標位置信号や目標速度信号を生成する。
位置・速度追従制御回路182に受信された目標位置信号は、第1加減算回路182fに対して加算値として入力される。この第1加減算回路182fに対しては、モーターエンコーダーからのパルス信号に基づいて構築される位置検知信号が減算値として入力される。実際のモーター回転位置(位置検知信号)と目標回転位置(目標位置信号)とが同じである場合には、合計値がゼロになる。これに対し、実際のモーター回転位置が目標回転位置よりも進んでいる場合には、合計値がマイナスになる。また、実際のモーター回転位置が目標回転位置よりも遅れている場合には、合計値がプラスになる。合計値は、位置フィードバック制御回路182cに入力される。位置フィードバック制御回路182cは、入力された合計値を位置から速度に変換して第1フィードバック信号として出力する。
また、位置・速度追従制御回路182に受信された目標位置信号は、位置フィードフォワード制御回路182aにも入力される。位置フィードフォワード制御回路182aは、目標位置を速度に変換して第1フィードフォワード信号として出力する。位置フィードバック制御回路182cから出力された第1フィードバック信号や、位置フィードフォワード制御回路182aから出力された第1フィードフォワード信号は、それぞれ第2加減算回路182gに対して加算値として入力される。
また、位置・速度追従制御回路182に受信された位置検知信号は、速度検出回路182eにも入力される。速度検出回路182eは、入力される位置検知信号の時間変化に基づいてモーターの回転速度を算出し、その結果を速度検出信号として出力する。この速度検出信号は、第2加減算回路182gに対して減算値として入力される。
第2加減算回路182gにおける合計値は、速度フィードバック回路182dに入力される。速度フィードバック回路182dは、入力された速度の合計値を、その速度の増減(プラス符号の場合には増加、マイナス符号の場合には減少)を実現するための電圧値に変換して加算回路182hに出力する。
一方、位置・速度追従制御回路182に受信された目標速度信号は、速度フィードフォワード制御回路182bに入力される。速度フィードフォワード制御回路182bは、入力された目標速度を、それを実現するための電圧値に変換して加算回路182bに出力する。そして、加算回路182bにおける電圧の加算結果が、PWM信号としてドライバ回路に出力される。
かかる構成では、位置追従プロファイルや速度追従プロファイルに基づくフィードフォワード制御値に対し、速度検知結果と目標速度との差に基づくフィードバック制御値と、位置検知結果と目標位置との差に基づくフィードバック制御値とを加算することで、ステッピングモーターに匹敵するほどの位置追従性と速度追従性とをDCブラシレスモーターに発揮させることができる。
図5に示されるADF51においては、既に述べたように、読取入口ローラ対(89,90)における一方のローラ、読取出口ローラ対92における一方のローラ、及び第2読取出口ローラ対93における一方のローラが、それぞれ読取モーターを駆動源として回転する。この読取モーターは、搬送モーター210と同様の構成のDCブラシレスモーターからなる。また、読取モーターを駆動するためのモーター駆動装置は、搬送モーター210を駆動するためのモーター駆動装置と同様の構成になっている。つまり、読取モーターを駆動するためのモーター駆動装置も、本発明を適用したものである。
図18は、読取入口ローラ89等を回転駆動させるためのモーター駆動装置を示す平面構成図である。このモーター駆動装置は、モーター制御回路300と、DCブラシレスモーターからなる読取モーター310と、減速機とを有している。
モーター制御回路300は、モーターエンコーダー311による検知結果に基づいて、読取モーター310の回転駆動を制御する制御手段として機能している。読取モーター310の駆動によってモーター軸313が回転すると、モーター軸に固定された図示しないモーターギヤの回転速度が減速機によって減速された後、被駆動体としての読取入口ローラ89に伝達される。減速機225は、モーターギヤに噛み合う第1減速ギヤ321と、これに噛み合う第2減速ギヤ322と、これに噛み合う第3減速ギヤ323と、これに噛み合う第4減速ギヤ324と、読取入口ローラ89と同一の回転軸線で回転する第5減速ギヤ325とを有している。
ADF51の排紙ローラ対94は、排紙モーターを駆動源として回転する。この排紙モーターは、搬送モーター210と同様の構成のDCブラシレスモーターからなる。また、排紙モーターを駆動するためのモーター駆動装置は、搬送モーター210を駆動するためのモーター駆動装置と同様の構成になっている。つまり、排紙モーターを駆動するためのモーター駆動装置も、本発明を適用したものである。
次に、実施例に係る複写機の一部構成を改良した各変形例に係る複写機について説明する。なお、以下に特筆しない限り、各変形例に係る複写機の構成は、実施例と同様である。
[第1変形例]
図19は、第1変形例に係る複写機の搬送ローラ対を駆動するためのモーター駆動装置に用いられている搬送モーター210を正面から示す斜視図である。また、図20は、搬送モーター210を背面から示す斜視図である。第1変形例では、搬送モーター210として、アウターロータ型のDCブラシレスモーターからなるものが用いられている。モーターエンコーダー211は、搬送モーター210のアウターロータ219に一体形成されたコードロータ部211cと、コードロータ部211cに設けられた複数のスリットを検知する反射型フォトセンサーからなる光学センサー211bとを有している。
アウターロータ型のDCブラシレスモーターは、優れた等速性が要求される条件下で使用するのに適したモーターであり、内蔵しているFG信号発電器から発したFG信号の周波数を、外部から入力される目標周波数に合わせるためのPLL回路を具備しているのが一般的である。第1変形例においては、搬送モーター210を目標速度で回転させるときには、そのPLL回路を利用する。このため、位置・速度追従制御回路202は、上述した速度調整処理を実施する代わりに、FG信号目標値を搬送モーター210に出力する。
なお、コードロータ部211cとしては、図19に示したような複数のスリットを設けたものの他、図21に示すように、目印として複数の暗部を設けたものを採用することも可能である。
[第2変形例]
図22は、第2変形例に係る複写機の画像形成部1を示す概略構成図である。この画像形成部1は、給紙カセット42と搬送ローラ対46とを内蔵している。搬送ローラ対46を駆動するためのモーター駆動装置は、実施形態に係る複写機のシート供給装置40の搬送ローラ対を駆動するためのモーター駆動装置と同様の構成になっている。
[第3変形例]
図23は、第3変形例に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、作像ユニットとして、黒用の作像ユニット3を1つだけ備えている。そして、作像ユニット3の感光体と、転写ローラとの当接による転写ニップに記録シートを通す際に、感光体上のトナー像を記録シートに転写する。画像形成部1に記録シートを供給するシート供給装置40は、実施形態と同様の構成になっている。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
DCブラシレスモーター(例えば搬送モーター210)と、前記DCブラシレスモーターのコイルを励磁するためのドライバ回路(例えばドライバ回路212)と、前記DCブラシレスモーターの励磁コイルの切り替えタイミングを前記ドライバ回路に把握させるために前記DCブラシレスモーターの回転角度を検知する回転角度検知手段(例えばホール素子217)と、前記ドライバ回路を介してDCブラシレスモーターの駆動を制御する制御手段(例えばモーター制御回路200)とを有するモーター駆動装置において、
前記DCブラシレスモーターの回転速度を所定の第1加速特性で加速させるために、比較的低い電圧を前記ドライバ回路から前記コイルに出力させる第1加速処理と、前記第1加速処理の後、前記回転速度を前記第1加速特性よりも加速性の優れた第2加速特性で加速させるために、比較的高い電圧を前記ドライバ回路から前記コイルに出力させる第2加速処理と、前記第1加速処理に先立って、電圧を出力していなかった前記ドライバ回路から、前記第1加速処理における前記比較的低い電圧よりも高い値の電圧を前記コイルに対して出力させて、前記DCブラシレスモーターの駆動を開始する駆動開始処理とを実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記ドライバ回路と、前記DCブラシレスモーターの回転量を前記回転角度検知手段よりも高精度に検知する回転量検知手段(例えばモーターエンコーダー211)とを前記DCブラシレスモーターに搭載し、前記第1加速処理を実施しているときにおける前記回転量検知手段による検知結果に基づいて、前記第2加速処理の実施開始タイミングを決定する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、回転センシング信号(例えばホール信号)へのノイズの混入に起因するモーター回転の不安定化を抑えることができる。また、第1加速期間の終期を迎える前に、噛み合いタイミングを迎えた場合に、第1加速期間の終期を待たずに、すぐに第2加速期間に移行して加速度をより高めることで、「加速所要時間」をより短縮することができる。
[態様C]
態様Cは、態様Bにおいて、前記DCブラシレスモーターの目標回転速度と前記回転量検知手段による検知結果との差分を、前記励磁コイルに対する出力電圧の制御にフィードバックさせるためのフィードバック手段(例えば、位置・速度追従制御回路202)と、予め決められた値の電圧を前記励磁コイルに出力するためのフィードフォワード手段(例えば位置・速度追従制御回路202)とを前記制御手段に設け、前記第1加速処理や前記第2加速処理にて、それぞれ、前記フィードフォワード手段によって決定した出力電圧値を、前記フィードバック手段によるフィードバック制御で補正する処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、ステッピングモーターに匹敵するほどの位置追従性と速度追従性とをDCブラシレスモーターに発揮させることができる。
[態様D]
態様Dは、態様Cにおいて、ドライバ回路として、制御手段から出力されるPWM信号に基づいてコイルに対する励磁電圧の出力を調整する出力調整部と、DCブラシレスモーターにおける複数のコイルのうち、励磁するコイルを所定の順序で切り替えるコイル切替部とを具備するものを用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、市販のドライバ回路を採用して低コスト化を図ることができる。
[態様E]
また、態様Eは、態様C又はDにおいて、回転量検知手段として、モーター軸に固定されたコードホイール、及びコードホイールに設けられた複数の目印(例えばスリットSLや暗部DP)を光学的に検知する光学センサーを具備するものを用いるとともに、回転量検知手段をカバー部材で覆ったことを特徴とするものである。かかる構成では、光学センサーの受光部に対する異物の付着をカバー部材によって抑えることで、異物の付着に起因する検知精度の低下を抑えることができる。
[態様F]
態様Fは、態様C〜Eにおいて、DCブラシレスモーターとして、インナーロータ型のものを用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、インナーロータ型のDCブラシレスモーターの良好な加速調整性により、被駆動体の加速度を自在に調整することができる。
[態様G]
態様Gは、態様C〜Eにおいて、DCブラシレスモーターとして、アウターロータ型のものを用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、アウターロータ型のDCブラシレスモーターに搭載されたPLL回路を利用して、速度調整処理を実施することができる。