本発明の第1の発明に係る金券識別装置は、筐体の前方に設けられ、金券の挿入を受け付ける挿入口と、
挿入口から挿入された金券を搬送する搬送部と、
筐体内部の所定位置に格納可能であって、搬送部によって搬送された金券を収納する収納器具と、
収納器具を、筐体の所定位置に格納する方向および筐体の外部に排出する方向の少なくとも一方に移動させる排出駆動手段と、
収納器具を、筐体へ挿入もしくは筐体から排出させる出口と、
排出駆動手段の駆動力を、収納器具に伝達する伝達手段と、
収納器具の所定の面の少なくとも一部に設けられ、伝達手段と嵌合して駆動力を受ける嵌合歯と、を備え、
伝達手段は、第1伝達部、第2伝達部、第3伝達部および第4伝達部を、備え、
第3伝達部は、排出駆動手段と動力伝達可能に接続し、回転可能であることで、排出駆動手段の回転を第4伝達部に伝達し、
第4伝達部は、第3伝達部と動力伝達可能に接続し、回転可能であることで、第3伝達部の回転を第1伝達部に伝達し、
第1伝達部は、第4伝達部と動力伝達可能に接続し、回転可能であることで、第4伝達部の回転を第2伝達部に伝達し、
第2伝達部は、第1伝達部および嵌合歯と動力伝達可能に接続し、回転可能であることで、第1伝達部の回転を嵌合歯に伝達し、
第1伝達部が回転する場合には、第2伝達部は回転するのに対して、第2伝達部が回転する場合には、第1伝達部は回転不可であり、
第3伝達部は、第1回転軸を有し、
第4伝達部は、第1回転軸と異なる第2回転軸を有し、第1回転軸と第2回転軸のそれぞれは、相互に独立しており、
排出駆動手段から、第3伝達部および第4伝達部の少なくとも一方が故障しうる圧力が加わると、第2回転軸が位置を移動させて、第3伝達部と第4伝達部との動力伝達が遮断される。
この構成により、排出駆動手段が適正に操作される場合には、収納器具の挿入および排出が適切になされるが、不適正な操作や動作の場合には、収納器具は、挿入もしくは排出が行われない。結果として故障や金券の盗難が防止される。
この構成により、金券識別装置の伝達手段は、排出駆動手段の駆動力で、収納器具を挿入したり排出したりできる。
本発明の第2の発明に係る金券識別装置では、第1の発明に加えて、排出駆動手段が回転による駆動力を第1伝達部に伝達する場合には、第1伝達部は回転して、当該回転による動力を、第2伝達部に伝達し、
収納器具に筐体への挿入および排出の少なくとも一方の動力が加わる場合には、第1伝達部は、回転しない。
この構成により、不正あるいは誤動作で、強引に収納器具を引き出そうとしても、排出駆動手段が回転せず、収納器具は、排出されることがない。結果、盗難が防止される。
この構成により、不正あるいは誤動作で、強引に収納器具を引き出そうとしても、排出駆動手段が回転せず、収納器具は、排出されることがない。結果、盗難が防止される。
本発明の第5の発明に係る金券識別装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、第1伝達部は、ウォームを用いる。
この構成により、第1伝達部での逆方向の回転が生じない。
この構成により、伝達手段は、更なる盗難防止の構成を有することができる。
この構成により、第1伝達部と第2伝達部とが、この第3伝達部と第4伝達部とによって動力伝達される。言い換えれば、第3伝達部と第4伝達部の遮断によって、伝達手段の動作が停止することになる。
この構成により、第3伝達部と第4伝達部が、第1伝達部と第2伝達部との間を、動力伝達することも動力遮断することも可能となる。
本発明の第9の発明に係る金券識別装置では、第6から第8のいずれかの発明に加えて、第3伝達部および第4伝達部のそれぞれは、歯車を有し、歯車同士が嵌合することで、第3伝達部から第4伝達部へ、排出駆動手段の回転による動力を伝達する。
この構成により、第3伝達部と第4伝達部が、第1伝達部と第2伝達部との間を、動力伝達することも動力遮断することも可能となる。
本発明の第10の発明に係る金券識別装置では、第8又は第9の発明に加えて、第2回転軸は、位置を移動可能であり、第3伝達部および第4伝達部の少なくとも一方に加わる圧力によって、第2回転軸は、当該位置を移動させる。
この構成により、第3伝達部と第4伝達部とが離れることになり、第1伝達部から第2伝達部への動力伝達ができなくなる。また、これら伝達部の損傷や損耗も防止できる。
この構成により、第3伝達部と第4伝達部とが離れることになり、第1伝達部から第2伝達部への動力伝達ができなくなる。また、これら伝達部の損傷や損耗も防止できる。
この構成により、所定値によって、排出駆動手段の暴走や不正動作が検出されて、伝達手段の遮断による収納器具の不正な排出や盗難が防止される。もちろん、伝達手段を構成する部材の損傷や損耗も防止できる。
本発明の第14の発明に係る金券識別装置では、第1から第13のいずれかの発明に加えて、収納器具は、金券を収納可能な保管部と、保管部の一方の開口部であって、金券識別装置の出口側の開口部(以下、「第1開口部」という)に設けられる回動可能な蓋と、を備え、蓋は、収納器具が金券識別装置内部に格納されている場合には、金券識別装置の露出面における出口を塞ぎ、蓋は、収納器具が、出口から排出された後で回動可能である。
この構成により、収納器具が、別部材として、金券識別装置の筐体から排出可能であっても、収納器具内部の金券の盗難が防止される。また、従来技術で必要だった、シャッターの開閉のためのモータやロックのためのソレノイドが不要である。
本発明の第15の発明に係る金券識別装置では、第14の発明に加えて、蓋は、収納器具が、筐体に格納されている場合には、金券識別装置の露出面であって、出口を形成する面と、略同一平面上に存在する。
この構成により、蓋が収納器具の蓋と筐体の出口の蓋とを兼用でき、外観上からも、盗難が防止されやすくなる。
本発明の第16の発明に係る金券識別装置では、第14又は第15の発明に加えて、出口の開口面積および蓋の面積および形状の少なくとも一方は略同一であるか、もしくは出口の開口面積は蓋の面積より小さい。
この構成により、蓋は、確実に出口を塞ぐことができる。
本発明の第17の発明に係る金券識別装置では、第14から第16のいずれかの発明に加えて、蓋は、収納器具が、筐体内部に格納されている場合には、回動不可である。
この構成により、蓋の無理なこじ開けによる金券の盗難が防止される。シャッターに比べて格段に優れている。
本発明の第18の発明に係る金券識別装置では、第17の発明に加えて、蓋は、収納器具が出口から排出された後では、手動および自動の少なくとも一方で回動可能である。
この構成により、排出された収納器具から、内部に収納されている金券が簡単に回収される。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
(全体概要)
まず、実施の形態1における金券識別装置の全体概要を説明する。図1は、本発明の実施の形態1における金券識別装置の斜視図である。図1に示される金券識別装置100は、内部に格納される収納器具1が可視状態となるように、金券識別装置100の筐体101の手前側の側面を取り払った状態を示している。この結果、図1は、金券識別装置100内部の一部が露出した状態を、示している。
金券識別装置100は、図1に示される状態で自動販売機や自動貸出機と合わせて設置される。例えば、自動販売機や自動貸出機に組み込まれた状態で設置される。あるいは、自動販売機や自動貸出機と連動しつつ別個に設置される。金券識別装置100が、パチンコ機やスロットマシン機などに必要な自動玉貸出機に必要である場合には、自動玉貸出機の内部もしくは一緒に設置される。このときには特に、金券識別装置100は、パチンコ機やスロットマシン機の間の隙間に設置される。このため、金券識別装置100は、図1に示されるように縦型に設置されることが多い。
パチンコ機やスロットマシン機などを多数設置して遊戯を提供する遊戯場は、多数のパチンコ機やスロットマシン機を、列ごとに並べている。あるパチンコ機の隣に次のパチンコ機が設置され、またその隣に次のパチンコ機が設置される。このため、パチンコ機同士の隣接する隙間や、スロットマシン機同士の隣接する隙間に、自動玉貸し機や自動コイン貸出機が設置されるようになる。多数並んでいるパチンコ機やスロットマシン機のそれぞれに着座している顧客が、その手元でパチンコ玉やコインを取り出したいと考える。
このため、列状に多数並んでいるパチンコ機やスロットマシン機であって、隣接するパチンコ機やスロットマシン機同士の間に、自動玉貸し機や自動コイン貸し出し機が設置される。ということは、図1に示される金券識別装置100は、同様に、列状に多数並んでいるパチンコ機やスロットマシン機であって、隣接するパチンコ機やスロットマシン機同士の間に、設置されることになる。当然ながら、隣接するパチンコ機やスロットマシン機同士の間(隙間)は、狭い。すなわち、遊戯場などに用いられる場合には(もちろん、それ以外でも)、非常に狭い空間に金券識別装置100が設置されなくてはならない。このため、金券識別装置100は、図1に示されるように非常に小型化・薄型化が求められる。
例えば、金券識別装置100は、パチンコ機やスロットマシン機同士の隙間に、縦置きで設置される。もちろん、パチンコ機やスロットマシン機などが多数並んでいる遊戯場だけでなく、カジノのような遊戯場や、自動販売機や自動貸出機にも、金券識別装置100が設置される。
(金券識別装置の構成・動作概要)
まず、金券識別装置100の概要について説明する。
金券識別装置100は、挿入口103、識別部104、搬送部105、収納器具1、排出駆動手段108、搬送駆動手段109と、を備える。また、金券識別装置100は、これらの要素を筐体101に格納する。金券識別装置100は、筐体101によってその外形を形成できる。ここで、筐体101は、一定の奥行きと高さを有しつつ、幅の小さい薄型かつ縦型である(縦型といっても必ず縦に設置される必要があるものではなく、横に設置されれば横型の筐体である)。このため、金券識別装置100も、幅の小さな薄型の外形を有するようになる。薄型の外形であることで、狭い隙間(隙間が縦方向であれば、縦方向に設置され、隙間が横方向であれば横方向に設置される)にも、金券識別装置100が、設置される。
挿入口103は、筐体101の前方に設けられ、金券の挿入を受け付ける。筐体101は、金券識別装置100の外形を形成するので、挿入口103は、設置された金券識別装置100の前方、すなわち、金券を投入する人に向く側に位置することになる。使用者は、この挿入口103に金券を投入する。金券は、紙幣、紙葉類、有価紙類、プリペイドカード、ICカードおよびIDカードの少なくとも一つを含む。一般的には紙幣が金券として、挿入口103に投入されることが多いが、専用の金券や電子マネーに対応するカード媒体や、プリペイドカード、その他が投入されてもよい。
挿入口103に挿入された金券を、搬送駆動手段109が、筐体101内部に一定の位置まで搬送する。この一定の位置においては、識別部104が備わっている。このため、挿入口103に挿入された金券は、この挿入口103の後段に備わる識別部104まで搬送されて到達する。
識別部104は、挿入された金券を識別する。金券が識別部104の位置まで到達しているので、識別部104は、金券を視認(反射光や透過光などの光を用いた識別ができる状態であることを意味する)することができ、この視認を介して金券の真贋および券種のそれぞれを識別できる。識別部104が、真贋や券種を識別できることで、金券識別装置100は、自動販売機や自動貸出機での処理を実行させることができる。
搬送部105は、挿入口103から収納器具1にかけて挿入された金券を搬送する。すなわち、搬送部105は、識別部104から収納器具1の間に設けられる。搬送部105は、挿入された金券を搬送するために、金券を移動させるローラーなどの回転機構を有しており、この回転機構を用いて金券を搬送する。また、搬送部105は、搬送部105と別の位置に設けられる搬送駆動手段109によって、動作させられる。搬送駆動手段109は、搬送部105に設けられる回転機構を駆動する。例えば、搬送駆動手段109は、モータとモータを制御する制御回路などを有しており、制御されるモータが、回転機構を回転させて、搬送部105での金券の搬送を実現する。
搬送部105は、挿入口103から挿入された金券を、最終的には、搬送部105の後段に設けられる収納器具1にまで搬送する。
収納器具1は、搬送部105で搬送された金券を一時的に保管するために収納する。収納器具1は、後で詳述するが、金券識別装置1に用いられると共に、金券識別装置1の外形を形成する筐体101内部に格納されると共に、筐体101の前面および後面の少なくとも一方に設けられる出口110から排出される。すなわち、収納器具1は、自動販売機や自動貸出機への支払いに用いられる金券を一時的に保管すると共に、運営者や管理者が、売上げとしての金券を、金券識別装置100から回収することができる機能を有している。
ここで収納器具1は、搬送部105によって搬送される金券を保管する。このため、図1に示されるように、搬送部105と収納器具1とは、挿入方向に略平行な同一平面状に配置される。言い換えれば、搬送部105と収納器具1とは、金券の挿入方向に沿って同一直線状に設けられる。更に言えば、挿入口103、識別部104、搬送部105および収納器具1とは、挿入された金券の挿入方向(搬送方向)に沿った直線状に並ぶようにして配置される。なお、ここでいう同一平面や同一直線とは、これらの要素が、大枠の中でほぼ重なる平面や直線上に位置することを意味する。すなわち、金券識別装置100全体が薄型・小型化されることが実現される意味であって、厳密に同じ直線や平面上に位置することを要求するものではない。
搬送された金券が、収納器具1に搬送されると、次第に収納器具1内部の保管部2(収納器具1の内部空間であって、実際に紙幣やプリペイドカードなどの金券が保管される空間)に、金券が溜まっていく。また、図1では明瞭に示されていないが、保管部2に収納される金券への押し当て圧力を付与する押し当て部3が、保管部2に搬送されてくる金券を、保管部2に押し当てて、多くの金券が収納できるようにする。このようにして、保管部2に、制限枚数はあるが、多くの金券が収納されるようになる。
保管部2の一方であって、出口110側には、収納器具1は、第1開口部4を有している。この第1開口部4には、後述する蓋5が備わっており、この蓋5が、第1開口部4を塞いだり開放したりできる。また、保管部2の他方は、保管部2に収納される金券の端部を押さえるために、開口していないことが好ましい。
このように、収納器具1は、保管部2という実際に金券を保管する内部空間を備える方形の部材である。この収納器具1が、筐体101内部に格納されたり、出口110から排出されたりする。
ここで、金券識別装置100は、上述のように、狭小空間に設置される必要がある。このため、金券識別装置100の筐体101内部に、識別部104、搬送部105、収納器具1が設けられる。図1からもわかる通り、金券識別装置100では、幅の小さな筐体101の奥行き方向に、挿入口103からスタートして、金券の搬送方向に沿って、識別部104、搬送部105、収納器具1の順序で配置される。すなわち、金券識別装置100は、金券の搬送と、金券の識別処理等とに無駄の無い構造を有している。この結果、金券識別装置100は、その幅を薄くできる。
また、このように収納器具1が筐体101内部で同一直線上(同一平面上)に備えられることで、収納器具1が出口110から排出される際にも、挿入方向と同様に、同一直線上(同一平面上)に、排出されることになる。収納器具1の排出は、運営者や管理者による金券の回収に用いられることになるが、これも同一直線上(同一平面上)となるので、狭小空間に設置された金券識別装置1からの、金券の回収が容易となる。もちろん、薄型化も実現される。
また、搬送部105での搬送を駆動する搬送駆動手段109と、収納器具1を排出(あるいは挿入)する排出駆動手段108とは、搬送部105および収納器具1に対して、略垂直の位置に配置される。図1に示されるように、搬送部105および収納器具1の下に、制御部120が備わっている。制御部120は、搬送駆動手段109および排出駆動手段108を格納する。加えて、これら搬送駆動手段109および排出駆動手段108の周辺部材を格納する
例えば、排出駆動手段108は、モータなどの回転による動力を、筐体101に収納器具1が挿入される場合および筐体101から収納器具1が排出される場合の前後移動の動作を伝達する伝達手段300を必要とする。制御部120は、この伝達手段300も格納している。伝達手段300は、複数の歯車やシャフトなどの機械部品、あるいはセンサなどの電子部品などを含んでおり、これらが、金券が搬送される空間である搬送部105や収納器具1の領域に格納されるのではなく、モータなどの電子部品を主とする排出駆動手段108や搬送駆動手段109などと共に、上記金券が搬送される空間と略垂直の空間である制御部120に格納されることが好適である。この結果、やはり、金券識別装置100の薄型化・小型化が図られる。
すなわち、排出駆動手段108および搬送駆動手段109に係る各種電子部品や機械部品が、搬送部105および収納器具1の下方の空間(もしくは上方の空間)に配置される制御部120に格納されることで、搬送部105や収納器具1の幅方向への悪影響が無くなる。
このように、機械部品や電子部品の多くが、金券を搬送させつつ保管する物理空間の下方の空間である制御部120に格納されることで、金券識別装置100は、幅方向を薄くできる。特に、制御部120が下方に格納されれば、金券識別装置100が横方向に設置される場合でも、高さ方向の厚みが薄くなる。この結果、実施の形態1における金券識別装置100は、狭い隙間に設置されやすくなる。
特に、パチンコ機やスロットマシン機の自動玉貸出機に合わせて設置される場合には、パチンコ機やスロットマシン機の間の隙間に設置される必要がある。特に、遊技場では、多数のパチンコ機やスロットマシン機が並んでいるが、多数のパチンコ機やスロットマシン機のそれぞれの間に設置されることとなる。このような隙間は小さい上に、隣接する隙間での吸収余力がない(隣接する隙間にも、金券識別装置が設置される必要があるので)。このため、金券識別装置100は、その厚みを薄くすることが重要である。
(1)金券の挿入、搬送、保管の一連の処理を実行する要素が、挿入方向に沿った直線上に配置され、(2)保管された金券の排出を実行する要素が(1)と同じ直線上に配置され、(3)処理の駆動や制御に関る機械部品や電子部品が、(1)と同じ直線上でありながら、垂直方向に位置する空間にまとめられる、ことで、金券識別装置100は、厚みを薄くできる。
このような構造上の工夫によって、金券識別装置100は、所定の大きさに収まるようになる。
(収納器具)
次に、上述で説明したような金券識別装置100に用いられる収納器具1について説明する。収納器具1は、上述のように、販売や貸し出しの際に使用者が挿入する金券を一時的に保管すると共に、一定量となった場合や一定時間たった場合に、運営者や管理者によって、回収される。この回収のために、収納器具1は、筐体101から排出される。格納と排出は、筐体101の前面および後面の少なくとも一方に設けられる出口110を介して、行われる。
図2は、実施の形態1における収納器具の斜視図であり、収納器具の裏側(保管部2の底面8となる)部分から見た図面である。図2からもわかる通り、収納器具1は、方形を有しており、第1開口部4および表面9以外は、基本として、底面8のように壁面で囲まれている。もちろん表面9も、開口していてもよいが、壁面で囲まれてもよい。
収納器具1は、図2、図3に示されるように、方形状の立体を有している。金券を収納可能な形状および内部空間である保管部2を有している。保管部2は、少なくとも底面8と、収納器具の移動方向に沿った側壁部材7と、第1開口部4および第1開口部4と対向する端部部材6と、で形成される。また、底面8と対向する表面9も有する。底面8と表面9とは、収納器具1が実際に金券を収納する内部空間である保管部2において、金券を支える支持面(底側)となるのか、搬送部105から搬送される金券が挿入される際に押し当て部3によって押し当てられる面(開口面)となるのかは、いずれがなっても構わない。
もちろん、開口面がなく、紙幣は、底面8および表面9とに挟まれて、底面8もしくは表面9が可動であることで、押し当て部3が金券を圧縮してもよい。このため、底面8および表面9は、確定された役割によって示される名称ではなく、金券を収容しつつ取り出しできる保管部2の対向する面であると、把握されればよい。なお、底面8および表面9の両方は、板材のような面で保管部2を囲んでいてもよいし(この場合には、金券は、第1開口部4から取り出される)、いずれか一方が開口していてもよい。後者の場合には、開口している底面8および表面9のいずれかから金券が取り出される。更には、押し当て部3が、この開口している側に圧力を押し当てて多くの金券が、保管部2に保管されるようにされればよい。
なお、図2、図3では、底面8が図において見える側に示されているが、底面としての板状などの部材が存在せず、開口した状態(すなわち、底面としての物理的な部材が存在しない)であって、図2、図3においては、この底面8から保管部2に収納されている金券が見えている状態であるとみなしてもよい。
もちろん、逆に、底面8は、物理的な部材として示されており、図2、図3の裏面であって図では見えない表面9が開口しており、この表面9から金券が見えている状態であるとみなしてもよい。
これらによって、収納器具1の大まかな立体が形成される。これに、図2、図3のように蓋5が取り付けられる。この蓋5は、第1開口部4を塞ぐが、図2、図3のように、一定の離隔距離を有していてもよい。これは、収納器具1の排出後に蓋5が回動して、保管部2の金券を取り出しやすいためである。
表面9が開口されている場合には、挿入口103に挿入されて搬送部105によって搬送された金券が保管部2に収納されやすくなる。搬送してそのまま押し当て部3によって底面8に押しつけられて金券が、保管部2に収納されるからである。加えて、収納器具1が出口110から排出された後で、この開口されている表面から金券を取り出しやすいメリットもある。
一方、表面9が塞がれていてもよい。表面9に板材が設けられており、この板材と底面8との間に、搬送部5によって搬送された金券が収納されて保管される。表面9を塞ぐ板材は、底面8に対して上下に可動でき、押し当て部3が、この可動する板材を押し当てることで、保管部2内部(底面8と板材との間の空間)に金券が効率よく保管される。この場合には、出口110から排出された収納器具1から、不用意に金券が零れ落ちることがなく、金券の紛失などの事故を防止できる。
また、この場合には、排出された収納器具1からは、第1開口部4(蓋5が開くことで、第1開口4が露出する)を介して、金券が取り出されればよい。
このように、収納器具1は、金券識別装置100に格納されている場合には、搬送される金券を効率よく収納する機能・構造を有し、金券識別装置100から排出される場合には、効率よく金券を取り出して回収する機能・構造を有することが好適である。
また、上述の通り、第1開口部4に蓋5が設けられる。蓋5は、回動可能であり、第1開口部4を開放したり閉じたりするように回動する。図3は、本発明の実施の形態1における収納器具の斜視図である。図3は、蓋5が、第1開口部4を開放するように回動している状態を示している。このため、図3のように、蓋5は、収納器具1の長手方向(出口110に対する挿入方向もしくは排出方向)に交差する方向に回動することが好ましい。また、回動も、収納器具1に対して底面8側にも表面9側にもいずれにも偏るように行われても良いし、一方向だけ(例えば、図3に示されるように、表面9側だけに回動してもよい)に回動して、第1開口部4を開放したり、閉鎖したりしてもよい。
なお、蓋5は、収納器具1が筐体101に格納されている状態では回動しないが、筐体101から排出された後では、回動する。この回動においては、手動で回動しても良いし自動で回動してもよい。
図1に示されるように、蓋5は、収納器具1が筐体101内部に格納されている場合には、筐体101の出口(ここから収納器具1が排出される)を塞ぐ。すなわち、筐体101内部への侵入を防止する。筐体101内部には、金銭的価値のある金券が保管されているからである。すなわち、蓋5は、従来技術におけるシャッターの代わりを行う。
ここで、従来技術では、このシャッターが開いて、内部に格納されている金券が取り出されていたが、実施の形態1の収納器具1では、収納器具1そのものが、出口110から排出される。このため、蓋5は、収納器具1が筐体101に格納されている限りは(金券が筐体101内部に収納されている限りは)、開閉することはない。このため、蓋5は、出口110を不用意に開放することがないので、金券識別装置100が備える出口110からの盗難器具の挿入や、シャッターをこじ開けることでの盗難が防止される。
また、収納器具1は、出口110から筐体101内部に挿入されて格納されるが、収納器具1の奥行きは、筐体101が収納器具1を格納する内部空間の奥行きに合っている。このため、蓋5は、筐体101の前面(筐体101の前方の露出面)と略同一平面上に、その表面を合わせるようになる。言い換えれば、蓋5が押し込まれても、収納器具1が筐体101の内部空間の更に奥に入ることはない。もちろん、排出動作が実行されなければ、蓋5が、出口110の外側にはみ出たり突出したりすることもない。
蓋5は、回動可能であるが、図3に示されるように、蓋5そのものが一定の厚みを持って、収納器具1の排出方向に交差する方向に回動する。このため、収納器具1が出口110から筐体101内部に格納されている場合には、出口110と略同一面上にその表面を合わせているので、盗難者が、蓋5を引っ張ったり押したりしても、出口110の空間内で、蓋5が回動することはない。
このようにして、収納器具1が、筐体101内部に格納されている限りは、蓋5が回動することがないので、内部に収納されている金券の盗難が防止される。
蓋5は、図3に示されるように、出口110から排出された後で、初めて回動可能となる。この結果、第1開口部4が開放されて、収納器具1の保管部2に収納されている金券が回収されるようになる。
また、蓋5は、上述の通り、筐体101内部に格納されている場合には、金券識別装置100の露出面(例えば、前面)と、略同一の平面上に存在する。すなわち、蓋5は、いわゆる表面とつらいちである状態である。蓋5は、筐体101内部に格納される収納器具1の第1開口部の蓋となるだけでなく、金券識別装置100の出口110の蓋も兼用することになる。
加えて、蓋5は、筐体101の出口110の開口面積と略同一の面積、略同一の形状を有しており、蓋5は、収納器具1が筐体101内部に格納されている場合には、蓋5は、筐体101の出口110(この出口110から収納器具1が、金券を収納したままで排出される)を、完全に塞ぐことができる。また、既に述べてきたように、実施の形態1の収納器具1は、金券識別装置100に用いられるだけでなく、筐体101の出口110(収納器具1の挿入と排出を行う出口)から排出されて、金券の回収にも使用される(逆に言えば、金券の保管にも使用される)。
このように、排出後に始めて回動する蓋5と、蓋5をシャッターと開口の兼用とする方形立体の収納器具1と、収納器具1そのものが、筐体101に格納および筐体101からの排出が行われる本発明によって、次のような作用・機能を生じさせる。
(1)シャッターを用いないことで、出口が無理やりこじ開けられたりして、筐体内部に収納されている金券が、盗難される心配が減少する。
(2)シャッターを用いず、蓋5ごと収納器具1を出口1から排出させることで、シャッターを開閉させるためだけのモータと周辺部品が不要となる。
(3)(2)に合わせて、シャッターのこじ開け防止(ロック)のために必要となるソレノイドとその周辺部品が不要となる。
(4)一定の厚みのある蓋が、シャッター代わりとして、収納器具1が筐体101内部に格納されている場合には、回動することがそもそも不可能であることで、こじ開け等による盗難が防止される。加えて、蓋5は、出口110の面積と略同一の面積を有しているので、蓋5は、出口110を確実に塞ぐことができる。これにより、隙間などからの金券の取り出しなども防止される。
(5)蓋5が、収納器具1の排出後に始めて回動することで、排出後には、容易に金券が回収されるようになる。収納器具1が排出された後では、蓋5は、自動もしくは手動で回動する。この回動によって、収納器具1の第1開口部4が開放されて、この第1開口部4から、金券が取り出し可能となる。
(6)収納器具1が、金券を保管した状態で、そのまま排出されるので、金券の回収が確実かつ容易となる。金券だけを押し出して排出する場合に比べて、排出時に金券が出口や排出経路で引っ掛かったり、詰まったりすることもなくなる。もちろん、収納器具1が格納されている状態では、きちんと金券が収納されて、金券が収納器具1内部であふれたりすることもない。
このように、実施の形態1の収納器具は、部品点数を削減してコストダウンし、当然ながら小型化や薄型化を実現し、更には、盗難防止および金券の定期的回収容易性を高めることができる。
(伝達手段)
次に、伝達手段について説明する。収納器具1は、格納と排出との動作をするために、排出駆動手段108からの駆動力を受ける。ここで、排出駆動手段108はモータのように回転力を生み出す部材であるので、収納器具1は、排出駆動手段108の動力を直接受けて移動動作しない。モータなどによる排出駆動手段108の回転力を、収納器具1に与える必要がある。
図4は、本発明の実施の形態1における金券識別装置の内部斜視図である。内部特に制御部120に関する部分が露出して可視状態となって見えるようになっている。
図4に示されるように、まず収納器具1は、排出駆動手段108からの駆動力を、前後移動の動作とするための嵌合歯11を備えている。また、この嵌合歯11と排出駆動手段108との間には、伝達手段300が備わっており、この伝達手段300が、排出駆動手段108の駆動力を嵌合歯11に伝達する。すなわち、伝達手段300は、その一部が、嵌合歯11と勘合することで、排出駆動手段108の駆動力を収納器具1に伝達する。この伝達によって、収納器具1は、排出駆動手段108の駆動力によって排出されたり格納されたりする。
ここで、伝達手段300は、排出駆動手段108と嵌合歯11との間に介在して相互に嵌合して回転可能な第1伝達部301と第2伝達部302とを、有している。第1伝達部301が回転する場合には、この回転をうけて第2伝達部302が回転するのに対して、第2伝達部302が回転する場合には、この回転を受けても、第1伝達部301は、回転しない。
第1伝達部301は、排出駆動手段108動力伝達可能に(すなわち、直接的もしくは間接的でも直接的と同様の意味合いで)接続する。これに対して、第2伝達部302は、排出駆動手段108からみれば、第1伝達手段301よりも遠い位置に存在し、嵌合歯11に動力伝達可能に接続している。また、第1伝達部301と第2伝達部302とは、直接的もしくは間接的に動力伝達可能に接続している。
このような構造を有することで、例えばモータなどである排出駆動手段108が回転してその回転動力を第1伝達部301に与える場合には、第1伝達部301はこの動力を第2伝達部302に伝達して、第2伝達部302が回転する。この回転に合わせて、第2伝達部302と直接的もしくは間接的に嵌合する嵌合歯11に前後移動の動力が加わり、収納器具1が前後動作する。結果的に、収納器具1は、出口110から排出されたり、挿入されたりする。
一方、収納器具1を無理やり引っ張り出そうとしたりして、嵌合歯11が第2伝達部302に動力を与えて回転させたとしても、第1伝達部301は回転しない。第1伝達部301が回転しなければ、モータなどである排出駆動手段108の動作に係らず、伝達手段300全体では、動力伝達が遮断されてしまう。この遮断によって、嵌合歯11は、第2伝達部302による前後動作を生じさせることができなくなる。
すなわち、排出駆動手段108が回転による駆動力を第1伝達部301に伝達する場合には、第1伝達部301は回転する。第1伝達部301は、この回転を第2伝達部302に伝達して、第2伝達部302も回転する。この回転によって、第2伝達部302は、自身と嵌合する収納器具1の嵌合歯11を移動させ、収納器具1は、前後移動の動作を行う。第2伝達部302の回転は、収納器具1を出口110から排出させたり、出口110から筐体101内部に挿入させたりできる。排出されれば、当然に、収納器具1が収納する金券が回収される。
逆に、上述の通り、誤動作や不正動作によって、収納器具1が無理に引き出されるような前後移動の動作の際には、嵌合歯11から第2伝達部302に動力が伝わる。しかしながら、第2伝達部302の回転の動力が生じても、第1伝達部301は、回転しない。すなわち、第1伝達部301が、ストッパー(ブレーキ)となって、結局第2伝達部302も嵌合歯11も動くことがなくなる。結局、収納器具1は、前後移動することがなくなる。つまり、収納器具1は、排出も挿入も無理にはなされない。
もちろん、第1伝達部301が回転しない場合には、第2伝達部302も回転しない。このときも、収納器具1は、排出も挿入も無理にはなされない。
このように、誤動作や不正動作によって、排出されることがなくなる。すなわち、保管部2に保管されている金券の盗難が防止される。
なお、第1伝達部301、第2伝達部302は、回動しても、回転してもよい。要は、モータなどの回転駆動力を受けて、嵌合歯11を前後動作させるための動力伝達ができれば、第1伝達部301および第2伝達部302のそれぞれは、歯車のように回転するものであってもよいし、蝶番構造部材のように回動する物であってもよい。もちろん、歯車であって、完全に回転せず一部のみが往復回転、すなわち回動するものであってもよい。
ここで、第1伝達部301は、ウォームといわれる部材が用いられることが公的である。このウォームといわれる部材は、歯車と直角に交わっている場合には、ウォームから歯車を回転させることができるが、歯車からウォームを回転させることはできない。このような特性を有するウォームといわれる部材が、第1伝達部301に用いられることで、上述のような一方回転のみとなって、不正者が、収納器具1を無理に引っ張り出すことが防止される。
なお、ここでは、収納器具1が、筐体101から完全に排出される金券識別装置1において独立した部材であることを前提に説明した。しかし、例えば、収納器具1の一部(大部分であってもよい)が、出口110から突出するように排出され、完全に取り出される構造でなくてもよい。すなわち、本明細書で述べる「収納器具1の出口110からの排出は、筐体101の外部に完全に取り出される場合と、筐体101内部に一部を残した状態で突出される場合」と、を含む。
前者のように、収納器具1が、筐体101から完全に取り出される場合には、運営者や管理者によって、金券の回収作業が容易となる。あるいは、収納器具1のままで回収され、回収された複数の収納器具1が集められてから、金券の回収と会計処理が済まされるというメリットがある。この場合には、回収を行う作業者の不正を、遊戯場や金券識別装置を備える装置や施設の管理者が、防止できるメリットを生じさせる。
後者のように、収納器具1が、筐体101から完全に取り出されない場合には、収納器具1からの金券の回収の容易性は若干下がるが、収納器具1が紛失したり故障したりする(落下などにより)、ことが防止される。もちろん、収納器具1そのものの盗難も防止されるメリットもある。
(動作手順)
次に、収納器具1の動作および金券識別装置100の動作手順について説明する。図5は、本発明の実施の形態1における金券識別装置100の動作状態を示す説明図である。
(挿入)
使用者は、挿入口103に金券を挿入する。金券の例として紙幣について説明する。挿入口103は、紙幣51の大きさに合わせた形状と大きさを有したスリット状であり、使用者が紙幣51を所定方向(長さ方向)に挿入しやすくなっている。また、一度に挿入できる枚数を制限する厚みを有している。挿入口103は、挿入された紙幣51を識別部104に到達させる程度まで、挿入された紙幣51が移動できるように、奥行きを有している。挿入された紙幣51は、その先端を識別部104に到達させることができる。もちろん、挿入口103から挿入された紙幣51が、搬送部105の働きによって識別部104の位置まで搬送されて、識別部104に紙幣51が到達してもよい。
(識別処理)
識別部104は、到達した紙幣51を識別するために、複数の発光部およびこの発光部に対応する複数の受光部を備える。
識別部104は、複数の発光部と複数の受光部とを有する。この複数の発光部および複数の受光部は、それぞれ発光部と受光部の組み合わせとなったり、一つの素子で発光部と受光部を構成したりする。識別部104は、挿入される紙幣51の真贋と券種を、これらの発光部と受光部の組み合わせに基づいて識別する。
複数の発光部および受光部の少なくとも一部は、挿入検知センサーを構成する。加えて、複数の発光部および受光部の少なくとも一部が、識別用センサーを構成する。挿入検知センサーは、紙幣51が挿入されたことを検知し、識別用センサーは、挿入された紙幣51の真贋および券種を識別する。
また、識別用センサーは、発光部から紙幣51を透過した透過光を利用したり、発光部から紙幣51を反射した反射光を利用したりして、挿入された紙幣51の真贋や券種を識別する。このとき、透過光や反射光の光量の変化、波長の変化、周波数の変化など(あるいはこれらの組み合わせ)を利用して、識別を実行する。
加えて、挿入検知センサーや識別用センサーは、透過光や反射光を、種々に組み合わせて使用するので、複数の発光部や受光部のそれぞれは、紙幣51に対して、片方側だけに備わる場合と両方に備わる場合とがある。すなわち、挿入された紙幣51の表面側(一方側)と裏面側(他方側)の片方だけに、複数の発光部や受光部が備わる場合もあるし、紙幣51の表面側と裏面側のそれぞれに、複数の発光部と受光部とが分かれて配置されることもある。
識別部104は、このように紙幣51が挿入されたことを検知する挿入検知センサーと、紙幣51の真贋および券種を識別する識別用センサーとの機能を有する。この2つの機能によって、識別部104は、挿入された紙幣51を識別して、自動販売機や自動貸出機での販売や貸し出し処理を実現できる。
挿入検知センサーは、上述の通り、複数の発光部と受光部とで検出される光量の変化、あるいは波長や周波数の変化で、紙幣51の挿入をまず検知する。次に、識別用センサーは、挿入された紙幣51の真贋を判定する。反射光や透過光の光量の変化に基づく識別においては、予め紙幣51によって想定される変化を閾値や参考値として記憶しておくことで、識別部104の識別用センサーは、紙幣51の真贋を識別する。
識別部104は、このように光量の変化を閾値や参考値と比較することで、紙幣51の真贋を判定する。例えば、紙幣51の種類(1、000円札、2,000円札、5,000円札、10,000円札)のいずれにも該当しない周波数(波長)を、反射光や透過光が示す場合には、挿入口103から挿入されたこの紙幣51は、偽札である可能性がある。
紙幣51は、紙の種類、印刷の凸凹、印刷インクの種類などを様々に工夫してあり、反射光や透過光において、特定の周波数(波長)を示すはずだからである。本来のあるべき周波数(波長)のいずれにも合致しないということは、挿入された紙幣51が偽札である可能性が高い。識別部104は、偽札と識別する。
次に、識別センサーは、これら券種に対応する光量、波長、周波数などによって、挿入された紙幣51の券種を識別する。この券種識別によって、金券識別装置100と接続される自動販売機や自動貸出機は、どの金額の商品を提供してよいかを決定できるようになる。このように、識別センサーが、挿入された紙幣51は、搬送部105によって、収納器具1に搬送される。このとき、搬送部105に設けられるローラー(紙幣51を送るのに用いられる)などは、搬送駆動手段109によって駆動される。すなわち、識別部104は、挿入された紙幣51が真券であると識別した場合には、当該結果を搬送駆動手段109に通知し、搬送駆動手段109が、この搬送部105を動作させて、紙幣51を収納器具1の保管部2に向けて搬送する。
ここで、識別センサーは、複数の発光部から発光された光の、透過光(紙幣51を透過して対向する受光部に到達する光)および反射光(紙幣51で反射して、発光部と同じ側に設けられる受光部に到達する光)の少なくとも一部を用いて、紙幣51の真贋と券種を識別する。あるいは、透過光と反射光の一方を用いて、紙幣51の真贋と券種を識別する。このとき、識別センサーは、光量、波長、周波数、振幅などの、光に関する様々なパラメータの少なくとも一部を用いてもよいし、これらのパラメータの組み合わせを用いてもよい。
予め、券種ごとに用意されているこれらの閾値テーブルなどと比較することで、識別センサーは、上記のように、光量、波長、周波数、振幅などの、光に関する様々なパラメータの少なくとも一部を用いてもよいし、これらのパラメータの組み合わせを用いてもよく、真贋と券種を識別する。
一方、識別部104が、挿入された紙幣51が偽札であると判断した場合には、識別部104はその識別結果を搬送駆動手段109に通知する。通知を受けた搬送駆動手段109は、逆方向の駆動力を生じさせる。この逆方向の駆動力によって、識別部104は、偽札と識別した紙幣51を、挿入口103から筐体101の外部に押しだす。使用者が、悪意で偽札を使用した場合であれば、当然ながら窃盗防止や犯罪防止となるからである。あるいは、使用者が気付かずに偽札を使用した場合でも、被害防止になるからである。
なお、ここでは紙幣51を金券の一例として説明したが、専用引換券、プリペイドカード、ICカードなどのいずれであっても、識別部104が贋物であると判断する場合には、搬送駆動手段109の逆駆動力を利用して、挿入された金券を、挿入口103から筐体101の外部に押し出す。
(搬送処理)
搬送部105は、挿入口103から挿入された紙幣51を収納器具1にかけて搬送する。搬送駆動手段109は、上述のように、真贋や券種の識別が終わった紙幣51を、収納器具1の保管部に搬送する。
搬送部105は、制御部120に備えられる搬送駆動手段109によって、紙幣51を搬送する。このとき、搬送部105は、搬送駆動手段109によって回転される回転部材を用いることで、紙幣51を収納器具1に向けて搬送する。回転部材は、ローラーであってモータイヤ状のものであってもよい。例えば、紙幣51を痛めない柔軟性のある素材で形成されたローラーやタイヤであって、搬送駆動手段109によって回転させさられる。回転部材は、順方向回転と逆方向回転とを、可能である。真券の場合には順方向回転を行って、紙幣51を収納器具1に搬送し、偽札の場合には、逆回転方向を行って、紙幣51を挿入口103から外に排出させる。
搬送部105は、独立した要素としてとらえられる必要があるものではなく、搬送駆動手段109の駆動力によって、挿入口103に挿入された紙幣51を、収納器具1にまで搬送する機能を発揮する要素としてとらえられればよい。すなわち、搬送部105は、収納器具1の一部としての外見を有していてもよい。要は、搬送駆動手段109の駆動力によって、紙幣51を搬送する機能を発揮しつつ、紙幣51の搬送空間が、挿入口103と収納器具1とを結ぶ直線上にあることが適当である。この結果、金券識別装置1が薄型化・小型化されるからである。
なお、搬送部105は、紙幣51を収納器具1に搬送する際に必要とする駆動力を、搬送部105および収納器具1の上方もしくは下方にある制御部120より得る。このため、紙幣51が実際に移動する移動空間においては、電子回路、回路基板、電子部品などが設けられず、金券識別装置100の薄型化が実現される。搬送部105は、紙幣51の搬送方向においては(すなわち、金券識別装置100の奥行き方向において)回転部材55などの物理的部材と物理的空間のみとなる。このため、金券識別装置100の幅は、保管する複数の紙幣51の厚みのみで決定されるようになる。これも合わせて、金券識別装置1の薄型化・小型化が実現される。
搬送部105は、紙幣51が収納器具1に到達すると、搬送処理を終了させる。
(保管処理)
収納器具1は、搬送部105によって搬送された紙幣51を、その保管部2に保管する。収納器具1は、図1など明らかなように、搬送部105と同一直線上に形成される部材であり、既述したように、筐体101の出口110から筐体101内部の所定の位置に格納される。加えて、筐体101の出口110から筐体101の出口から排出されて完全に筐体101の外側に取り出される、もしくは筐体101に一部が残っている状態で排出される部材である。
保管部2は、紙幣51を始めとした種々の金券を保管可能なサイズを有している。但し、非常に小型の金券と一般的な紙幣51とでは、大きさに大きな違いがあるので、いずれも保管できるサイズを有していてもよいが、保管や回収時の確実性を考慮して、使用される現場での要望に応じて、収納器具1の保管部2の大きさ(すなわち収納器具1の大きさ)、様々に用意されていることも好適である。
収納器具1は、保管部2に搬送されて到達した紙幣51を、収納しやすいように保管部2の底面8もしくは表面9に押し当てる押し当て部3を有する。図6は、本発明の実施の形態1における収納器具の斜視図である。図6は、保管部2とそこに入ってくる紙幣51を底面8に押し当てる押し当て部3を示している。押し当て部3は、弾性体31も用いて紙幣51に圧力を付与して、保管部2内部により多くの紙幣51が保管されるようにする。紙幣51同士の隙間がなくなるからである。なお、上述の通り、底面8と表面9のそれぞれは、便宜的なものであり、いずれ側から紙幣51から押し当てられるのか、いずれ側が押し当てられた紙幣51を受けるのかは、特段の区別を行う必要はない。
押し当て部3は、紙幣51への圧力付与をしやすいように、平面的な押し当て板材をもって、紙幣51を底面8に押し付ける。この結果、保管部2において、多くの紙幣51が保管されて、収納器具1は、予定可能な数量の金券を収納でき、収納器具1の出口110からの排出による回収の頻度や回数を減少させることができる。この点でも、盗難や事故を防止できる。
(排出処理)
収納器具1は、その幅によって制限される所定枚数の紙幣51(金券)を保管する。
しかしながら、所定枚数の紙幣51が挿入されてしまうと、収納器具1での保管に限界が生じる。収納器具1での保管ができなくなり、挿入口103は、紙幣51の挿入を受け付けなくなることもある。挿入を受け付けないと、当然ながら金券識別装置100は、その作業を停止しなくてはならない。
また、所定枚数以上の保管が生じているだけでなく、収納器具1は、一時的な保管を行うに過ぎないので、所定の時期には、保管されている紙幣51が回収される必要がある。売上げ計算のためである。例えば、所定時間ごとに回収されたり、夜間などの営業時間外に、運営者や管理者によって、収納器具1に保管されている金券が回収されたりする。
収納器具1は、図2、図3を用いて既に述べた通り、略方形の立体形状を有しているので、出口110から挿入する際には、筐体101内部の専用の空間に簡単に挿入して格納させることができる。同様に、収納器具1に対して、外部もしくは内部から排出の指示を受けると、排出駆動手段108が動作して、収納器具1を、出口110から排出させる。蓋5が、出口110を塞ぐことを兼ねているので、排出されることで出口110が開放されることになる。
排出に際しては、制御部120に設けられている排出駆動手段108が、収納器具1の筐体101外部への排出を駆動する。排出駆動手段108は、搬送駆動手段109と同様に、制御に必要な電子回路、電子部品、ソフトウェア、モータなどを備えており、モータなどの往復駆動を可能とする部材によって、収納器具1を、筐体101の外部に排出できる。
(蓋)
図2、図3で説明したように、収納器具1は、その一端に蓋5を有している。蓋5は、紙幣51などの金券を先端から取り出し可能な第1開口部4を、閉じることも開放することもできる。蓋5は、回動可能であり、出口110から収納器具1が排出されることで、回動できるようになる。このとき、蓋5は、収納器具1の挿入方向に交差する方向に回動し、自動で回動しても良いし、手動で回動してもよい。図3のように回動して第1開口部4が開放されれば、この第1開口部4から金券が取り出されるようになる。
ここで、蓋5は、収納器具1の第1開口部4(収納されている金券の取り出し口となる)と、その面積および形状の少なくとも一方において、略同一であることが好ましい。もちろん、面積については、蓋5の面積が大きいことも構わないが、要は、蓋5は、最初の役割として、収納器具1の第1開口部4を、塞ぐ(離隔距離があっても見た目上で塞いでおればよい)。
更に、蓋5は、金券識別装置100の筐体101の出口110の面積および形状の少なくとも一方(できれば両方)と、略同一であることが好ましい。こうすることで、蓋5は、第2の役割として、金券識別装置100の筐体101の出口110から、収納器具1が排出されることを前提としたときに、この出口110を完全に塞ぐことができるからである。加えて、述べたように、収納器具1が格納されている間は、蓋5が上下左右に、出口110の内部で動くことがないので、無理にこじ開けられることもない。また、筐体101の露出面(図1では、前方の面であって、通常、金券識別装置100が設置される場合に前方に来る面)において、出口110を形成する付近の面と、略同一平面上となることが好ましい。こうすることで、蓋5が目立たなくなり、盗難防止にも繋がるからである。
なお、前方の面であっても、図1に示されるように、挿入口103などが別平面になるように突出することは構わない。
また、蓋5は、回動方向の一方に圧力を付与する弾性体を有することも好適である。例えば、図3では、蓋5は、回動のための駆動部分を、両端に有している。この両端あるいは片側にバネ等の弾性体が設けられることで、蓋5が回動する。このような弾性体は、回動方向の一方の方向に圧力を付与する。この圧力によって、例えば、蓋5は、常に第1開口部4を塞ぐ位置に保たれることも好適である。このようであると、排出された収納器具1は、常に第1開口部4が塞がれた状態である。この場合には、第1開口部4から、金券がおちてしまうなどの問題もない。この状態から、手動で蓋5を回動させて、第1開口部4から金券が回収される。
あるいは、逆に、弾性体は、蓋5を第1開口部4を露出させる位置に保たれるように弾性力を付与することもよい。こうなると、収納器具1が出口110から排出されると、即座に蓋5が開いて第1開口部4が露出することになる。このため、排出後即座に、運営者や管理者は、収納器具1に収納されている金券を回収できる。
ここで、蓋5は、回動可能であるが、第1開口部4の前方で一周するほどの回転を必要とはしない。蓋5は、シャッター代わりに、出口110を塞ぎつつ収納部1の第1開口部4を塞ぎ、排出後には、収納器具1の保管部2に保管されている金券を取り出せるようにできればよい。このため、蓋5は、第1開口部4に対して、ある方向だけに所定角度まで回動するだけでもよいし、第1開口部4に対して、上下方向のそれぞれに所定角度まで回動することでもよい。
なお、排出駆動手段108によって収納器具1が排出されるということは、保管されている紙幣51が回収されるということである。金券識別装置100の設置者や管理者が、紙幣51を回収することは問題ないが、無関係者が回収することは、盗難や犯罪に繋がる。このため、排出処理は、所定の鍵や暗証番号を必要条件として行われることが好適である。
以上のように、回収処理が行われれば、金券識別装置100に保管されている紙幣51(金券)が回収されて売上げ処理がなされる。当然ながら、紙幣51が回収されれば、収納器具1は、空になる。空になることで、収納器具1は、再び紙幣51を保管できるようになり、金券識別装置100の処理動作ができるようになる。
以上のように、実施の形態1の金券識別装置100用の収納器具1は、金券識別装置100の小型化と薄型化を実現しつつ、格納と排出で、売上げである金券の回収を容易とする。加えて、収納器具1の蓋5が、金券識別装置100の出口110のシャッターと収納器具1の蓋とを兼用することで、盗難にも強くなる。収納器具1が格納されている間では、蓋5が開閉することがないからである。
また、出口のシャッターと異なり、蓋5は、シャッターの開閉のためのモータやロックのためのソレノイド(及び周辺部材)を必要としないので、部品点数を削減して、低コスト化、小型化も、実現できる。この結果、自動販売機などはもちろん、パチンコ機やスロットマシン機などの遊戯場でも、好適に使用されるようになる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
実施の形態2では、実施の形態1で説明した第1伝達部301と第2伝達部302と同様に、盗難者の不正動作(モータである排出駆動手段108を不正動作させたり、収納器具1を工具等を使って強引に取り出そうとしたりする動作)や、排出駆動手段108の誤動作によって、金券を収納している収納器具1が盗難されることがありえる。また、排出駆動手段108の備えるモータは、外部からの不正動作だけでなく、故障やその他の要因(不測の過電流が付与されるなど)で暴走するかのような回転を生じさせることもある。
このように、排出駆動手段108が備えるモータの不正動作や誤動作が生じたり、更に進んで暴走するかのように高速回転したりする場合には、(1)不必要であるにも係らず収納器具1が排出されてしまう(あるいは格納が終わっているのに、更に筐体101の奥により挿入が進んでしまう)、(2)所定回転数以上の高速回転によって、収納器具1はもちろんのこと、伝達手段300に強すぎる負荷が加わって、故障(例えば第1伝達部301や第2伝達部302の歯車が欠けてしまうなど)も生じてしまう。
実施の形態2の金券識別装置100は、このような問題を防止する工夫を説明する。
(第3伝達手段と第4伝達手段)
図7は、本発明の実施の形態2における金券識別装置の斜視図である。図7は、金券識別装置100の内部の一部が見えるようにして示している。つまり、視認上の便宜のために、筐体101の一部を取り除いた状態で示している。特に、制御部120内部を、可視状態にして示している。
排出駆動手段108と、収納器具1(特に嵌合歯11)との間には、排出駆動手段108の駆動力を伝達する伝達手段300が備わっている。実施の形態1で説明した通り、伝達手段300は、第1伝達部301と第2伝達部302とを備えており、第1伝達部301が排出駆動手段108の駆動力を受けて、第1伝達部301が第2伝達部302に駆動力を伝達する。第2伝達部302が嵌合歯11と嵌合して、収納器具1を前後移動させる。
実施の形態2の金券識別装置100では、更にこの排出駆動手段108と第1伝達部301との間に、第3伝達部305と第4伝達部306を更に備える。第3伝達部305および第4伝達部306のそれぞれは、単数もしくは複数の歯車で構成されれば良い。もちろん、歯車以外の機械部品や電子部品が用いられてもよい。いずれにしても、第3伝達部305と第4伝達部306のそれぞれは、排出駆動手段108の駆動力を、第1伝達部301に伝達させる。
ここで、第3伝達部305は、排出駆動手段108の回転を、第4伝達部306に伝達する。更に、第4伝達部306は、伝達された回転を、ウォームなどの部品で構成される第1伝達部301に伝達する。このように、実施の形態1で説明した盗難防止に用いられるウォームなどの部品で構成される第1伝達部301は、このように、第3伝達部305と第4伝達部306によって、排出駆動手段108の駆動力を伝達される。ここで、第3伝達部305および第4伝達部306のそれぞれは、歯車を有し、第3伝達部305の歯車と第4伝達部306の歯車のそれぞれが嵌合することで、第3伝達部305から第4伝達部306へ、排出駆動手段108の回転駆動力が伝達される。
この結果、第4伝達部306から第1伝達部301に回転駆動力が伝達される。こうして、排出駆動手段108の駆動力が、嵌合歯11を通じて、収納器具1に伝達される。こうして、第3伝達部305および第4伝達部306は、排出駆動手段108の回転駆動力で、伝達手段300全体で、収納器具1を挿入もしくは排出する。
また、第3伝達部305は、直接的もしくは間接的であるがほぼ直接的と同義で、排出駆動手段108に接続している。このため、第3伝達部305は、排出駆動手段108の回転軸と同軸の第1回転軸401を有する。第3伝達部305は、この第1回転軸401を、回転軸として回転する。
一方、第4伝達部306は、第1回転軸401と異なる軸となる第2回転軸402を有しており、第4伝達部306は、この第2回転軸402を、回転軸として回転する。なお、第1回転軸401と第2回転軸402は、その回転軸としての位置が異なることで、相互に独立している。
(通常動作)
図8は、本発明の実施の形態2における通常動作での伝達手段の斜視図である。通常状態では、伝達手段300は、このように第1回転軸401および第2回転軸402が本来の位置にあり、全ての伝達部が相互に嵌合して、排出駆動手段108の回転駆動力が、収納器具1に伝達される。結果として、あるべき状態で、収納器具1の前後移動の動作が行われる。
第1回転軸401と第2回転軸402は、通常状態では、第3伝達部305と第4伝達部306とが相互に嵌合して回転力を伝達できる位置にある。この場合には、排出駆動手段108を構成するモータが回転すると、第1回転軸401が回転して、この第1回転軸401に繋がっている第3伝達部305が回転する。
第3伝達部305は、歯車を有しており、この歯車の歯の部分は、第4伝達部306を構成する歯車の歯に嵌合している。この結果、第3伝達部305の回転が第4伝達部306を回転させる。このとき、第4伝達部306は、第2回転軸402を軸として回転する。上述の通り、第1回転軸401と第2回転軸402は異なる位置で独立しているので、異なる直線上で、第1回転軸401と第2回転軸402が、それぞれが個々に回転する。
第4伝達部306は、その回転によって、第1伝達部301に回転を付与して、既に述べた通り、最終的に収納器具1の前後移動の動作を生じさせる。
排出駆動手段108が正常に動作する場合(運営者や管理者によって、正式に収納器具1の排出処理がされる場合)には、伝達手段300を構成するそれぞれの部材が相互に接続および嵌合して、収納器具1の排出もしくは挿入がきちんと実行される。
図9は、本発明の実施の形態2における通常状態での伝達手段の側面図である。図9は、図8と同じ状態を側面から見た状態を示している。図9から明らかな通り、第1回転軸401と第2回転軸402のそれぞれは、あるべき本来の位置にあり、第3伝達部305と第4伝達部306とが嵌合して回転駆動力が伝達される。結果として、第1伝達部301、第2伝達部302が回転して、収納器具1が、排出もしくは挿入される。
ここで、第1回転軸401と第2回転軸402が通常状態において、第3伝達部305と第4伝達部306とが嵌合するあるべき位置に存在するのは、図8、図9に示される弾性体410の弾性力による。
弾性体410は、第1回転軸401と第2回転軸402が相互に近づくように弾性力を付与する。相互に近づく弾性力が付与されても、第1回転軸401には第3伝達部305が取り付けられており、第2回転軸402には第4伝達部306が取り付けられていて、側面等に設けられる歯車の歯同士が嵌合するので、それ以上に近づきすぎない。この弾性力によって、第3伝達部305と第2伝達部306同士がきちんと嵌合する位置に、第1回転軸401と第2回転軸402の相対位置が維持されるようになる。
(異常動作)
一方、上述したように、不正者が、何らかの電気信号や機械的動作を与えて、排出駆動手段108を強引に動作させることもありえる。また、排出駆動手段108そのものが、誤動作や過剰動作してしまい(故障や他の要因による)、排出駆動手段1が、所定回転数以上、所定回転以外、所定回転力以上および所定回転時間以上の少なくとも一つの場合を生じさせることがある。このような状態では、第3伝達部305および第4伝達部306の少なくとも一方に、異常な圧力が加わってしまう。
このような異常な圧力が加われば、(1)歯車やモータで構成される伝達手段300の一部もしくは全部が故障してしまう、(2)伝達手段300が故障すれば、運営者や管理者が、金券を収納している収納器具1を排出させて、金券を回収できないことが起こりうる、あるいは挿入できないことが起こりうる、(3)伝達手段300の故障によって、逆に嵌合歯11と伝達手段300との嵌合が外れ、不正者が、出口110から収納器具1を強引に引き出してしまい、金券を盗難してしまうこともありえる。
以上のように、排出駆動動手段108の異常動作、誤動作、不正動作は、上記(1)〜(3)のような様々な問題を引き起こし、金券の盗難や金券識別装置100そのものの故障などのシビアな問題を生じさせる。
図10は、本発明の実施の形態2における異常状態での伝達手段の斜視図である。図8と同じ角度から見た図であるが、異常動作などによって、異常状態となった伝達手段300の図面である。
上記のような排出駆動手段108の異常動作、誤動作、不正動作などによって、第3伝達部305および第4伝達部306の少なくとも一方に強い回転数が生じてしまったりすると、少なくとも一方に強い圧力が付与される。この圧力によって、弾性体410の弾性力よりも、この圧力が強くなって、第1回転軸401と第2回転軸402同士を近づけようとする弾性が押し戻されるようになる。
この第1回転軸401と第2回転軸402同士を近づけようとすると弾性が押し戻される状況になると、第1回転軸401と第2回転軸402との間が、離れるような力関係となってしまい、第1回転軸401および第2回転軸402同士の相対位置が変化する。
ここで、第2回転軸402は、図10から明らかな通り、受け口420においてその位置を変化可能である。受け口420は、第2回転軸402の一端は、この受け口420で受けられる。受け口420は、楕円形であったり長径と短径を有する形状であったりする。この結果、第2回転軸402の一端は、この受け口420内部でその位置を変えることができる。
図10では、第2回転軸402の一端は、受け口420において、外側(第1回転軸401より遠い側)に動いていることがわかる。図8では、逆に、第2回転軸402の一端は、受け口420において、内側(第1回転軸401に近い側)に位置している。図10のような状態となると、当然に、第1回転軸401と第2回転軸402とが離れるようになる。つまり、伝達手段300において動力伝達が(特に、第3伝達部305と第4伝達部306との間の動力伝達が)、遮断される。
このように、第1回転軸401と第2回転軸402とが離れると、第3伝達部305と第4伝達部306との嵌合が消失するので、第3伝達部305や第4伝達部306(もちろん、第1伝達部301、第2伝達部302)が、所定以上の回転を生じさせることがなくなる(場合によっては回転しない)。この結果、これら伝達部の歯車の歯に損傷が生じることがなくなり、伝達手段300の故障が防止される。もちろん、収納器具1が不用意に排出されたり、強引に引き出されたりすることもなくなり、金券の盗難も防止される。
図11は、本発明の実施の形態2における異常状態での伝達手段の側面図である。図11は、図10を側面から見た状態を示している。図11からも明らかな通り、弾性体420の弾性力を超えて第2回転軸402が位置を変化させて、第3伝達部305と第4伝達部306との嵌合が外れている。こうして、伝達手段300での動力伝達が遮断される。
以上のように、実施の形態2における金券識別装置100は、排出駆動手段108における不正動作や誤動作に基づく暴走回転などによる、伝達手段300の故障や損傷、収納器具1の不正あるいは誤った排出が防止される。結果として、盗難や故障による損害が防止されるので、金券識別装置100を導入する企業等にとって、好適である。
(実施の形態3)
(その他)
また、嵌合歯11の動作を抑えるロック部材が設けられることも好適である。図12、図13は、本発明の実施の形態3における収納器具とロック部材との関係を示す斜視図である。
図12、図13には、収納器具1の側面であって、嵌合歯11が設けられる側面に、挿入部53が備わっている。挿入部53には、収納器具1の往復運動(排出の移動方向への移動)をロックするロック部材51が挿入される。このロック部材51は、収納器具1の外部に備わっており、例えば、制御部120の一部に設けられて、収納器具1の外部から収納器具1の移動をロックもしくは開放する役割を果たす。
ロック部材51は、金属、合金、樹脂などの硬質で耐久性と強度を有する棒状もしくは板状などの部材であり、挿入部53にその少なくとも一部が挿入されたり、挿入部53から取り出されたりする。ロック部材51の少なくとも一部が、挿入部53に挿入されると、ロック部材51の剛性によって収納器具1の排出(もちろん挿入格納も)が阻止される。これは、排出駆動手段108の駆動力が付与される場合であっても同じである。
図12では、ロック部材51が、挿入部53に挿入されておらず、収納器具1は、ロック部材51から開放されている。この結果、収納器具1は、ロック部材51の影響を受けることなく、排出駆動手段108の駆動力によって、排出される。排出された後の収納器具1は、図2、図3のように、蓋5が開閉されて、第1開口部4が開放されて、内部に収納されている金券が取り出されるようになる。
一方、図13では、ロック部材51が挿入部53に挿入されており、収納器具1が移動できない状態である。ロック部材51の一方は、金券識別装置100に固定されており(例えば制御部120を形成する壁面や柱などの構造物に固定されている)、他方が図13のように、挿入部53に挿入されることで、収納器具1の移動が押しとどめられる。
例えば、排出駆動手段108のモータが故障や誤動作によって暴走してしまう場合でも、ロック部材51が挿入部53に挿入されていることで、収納器具1の往復運動が阻止されて、排出も阻止される。
ロック部材51には、図12、図13に示されるように、挿入部53に挿入される方向に圧力を付与させる弾性体54を備えている。図12、図13で示される弾性体54は、ロック部材51の一部(特に、挿入部53と逆側)にまきつけられたばねであり、このばねによって、ロック部材51は通常状態においては、押し出される力を受ける。この押し出される力は、ロック部材51を挿入部53に挿入させる方向に向かわせる。
ここで、弾性体54によるロック部材51の前後の移動(挿入部53に入る移動と、挿入部53から出る移動)は、弾性体54が、ロック部材51の側面に突出しているピン57を押したり引いたりすることで、実現される。図12、図13に示されるように、ロック部材51のある部分に、横に突出するように、ピン57が設けられている。このピン57に対して弾性体54が引っ掛かるようになっている。この引っ掛かりによって、弾性体54は、ピン57を押したり引いたりできる。
弾性体54がピン57を押し出すときには、この動きに合わせてロック部材51が挿入部53に向かって移動して挿入される。すなわち、収納器具1は、ロックされて排出や挿入の動きができないロック状態となる。逆に、弾性体54がピン57を引くときには(押し戻すときには)、この動きに合わせてロック部材51が挿入部53から遠ざかるようになり、挿入部53からロック部材51が外れる。こうなると、収納器具1が排出や挿入の動きをできるようになり、ロックが解除される。
また、弾性体54の位置を変化させる回動部材52が、更に備えられる。回動部材52は、図12、図13に示されるように、収納器具1の外側に設けられる。回動部材52は、所定の位置に突起を有している。この突起55は、ピン57の位置を移動させる。このピン57の位置が移動することで、ロック部材51の周囲に巻き付けられている弾性体54の位置が挿入部53より遠いほうへ変化する。この結果、ロック部材51は、挿入部53から抜け出るようになる。逆に、突起55が、ピン57の位置を別の方向に移動させるときには、ロック部材51の周囲に巻きつけられている弾性体54の位置は、挿入部53に近いほうに移動する。この結果、ロック部材51は、挿入部53に入り込む。入り込めば、当然に、収納器具1は、ロック部材51によってロックされて動けなくなる。
突起55は、回動部材52の一部であるので、回動部材52の回転によって、突起55の位置が変化する。例えば、突起55が第1位置に設定される場合と、第1位置と異なる第2位置に設定される場合とがある。例えば、回動部材52は、収納器具1の排出指示や挿入指示のない「通常状態」である指示を受ける。この指示は、金券識別装置100に対する機械的指示であったり、電気的指示であったりする。
あるいは、回動部材52は、同じような機械的指示や電気的指示によって、収納器具1の排出を命じられることもある。これは、「排出状態」である。例えば、運営者や管理者が所定の暗号を入力したり、所定のボタンを操作したりすることで、通常状態もしくは排出状態が設定される。
このとき、通常状態では、回動部材52は、突起55を第1位置に設定する。図13は、この第1位置に、突起55が設定されている状態を示している。突起55が第1位置に設定されると、ピン57が挿入部53側に押し出される。この結果、ロック部材51も挿入部53側に押し出される。押し出されれば、ロック部材51の一部が挿入部53に挿入されるので、収納器具1には、ロックが掛かった状態となる。このため、排出駆動手段108が駆動力を与えても、収納器具1は、排出されることがない。
通常状態では、このように、ロック部材51が挿入部53に挿入されるように、回動部材52が突起55の位置を設定するので、収納器具1は、排出駆動手段108の誤動作、暴走、故障による不測の事態であっても、不正操作での排出駆動手段1の駆動が行われても収納器具1が排出されることがない。このため、収納器具1が事故で排出されたり不正に排出されたりして、収納器具1が収納する金券が紛失したり盗難されたりすることが防止される。
一方、排出状態では、回動部材52は、突起55を第2位置に設定する。図12は、排出状態であるので、回動部材52は、突起55を第2位置に設定している。第2位置に設定される場合には、図12に示されるように、突起55は、弾性体54を、手前側(挿入部53よりも遠い側)に引き戻す。この結果、弾性体54の引き戻しに合わせて、ピン57の戻りにあわせて、ロック部材51も挿入部53から遠ざかるようになり、挿入部53からロック部材51が外れる。ロック部材51が挿入部53から外れることで、排出状態で、収納器具1は、排出駆動手段108の駆動に従って、排出される。
このように、排出状態では、ロック部材51が設けられていても、排出を必要とする排出状態では、きちんと排出されて、運営者や管理者が、収納器具1に収納されている金券を回収することができる。
なお、回動部材52は、突起55を第1位置と第2位置とに設定を切り替える。このとき、例えば光学センサーなどによって、突起55の第1位置と第2位置との対応性を把握して、回動部材52は、突起55の位置を切り替える。
また、回動部材52は、突起55を第1位置と第2位置との間を往復させることを目的としている。このとき、第1位置と第2位置とは、大きく離れていることは少ない。第1位置は、ピン57と離れていればよく、第2位置は、ピン57と接触していればよいからである。このため、回動部材52は、一周分回転する必要は無く、第1位置と第2位置との間を往復運動する程度で十分である。
この程度の往復運動で済むことで、通常状態と排出状態との切り替えが即座に行われるメリットがある上に、回動部材52を回転させるための別途の駆動手段が不要となるメリットもある。
また、実施の形態1〜3で説明された機能が全てあるいは複数組み合わされて、一つの金券識別装置100に組み込まれることも好適である。より、盗難や故障への耐性が、高まるからである。
なお、実施の形態1〜3で説明された金券識別装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。