以下、実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(第1の実施形態)
本実施形態では、モーター制御装置と、このモーター制御装置を用いたロボットハンドの特徴的な例について、図1〜図6に従って説明する。
(ロボットハンド)
図1(a)は、ロボットハンドの構成を示す模式平面図であり、図1(b)は、ロボットハンドの構成を示す模式側面図である。図1(c)はロボットハンドの指部を示す要部模式拡大図である。図1(a)及び図1(b)に示すように、ロボットハンド1は直方体状のハンド本体2を備えている。ハンド本体2の長手方向をY方向とし、Y方向と直交する方向をX方向とする。そして、X方向及びY方向と直交するハンド本体2の厚み方向をZ方向とする。
ハンド本体2の−X側の面においてハンド本体2は腕部3と接続し、腕部3は図示しないロボット本体と接続されている。ハンド本体2のX方向且つY方向の角にはX方向に延在する固定指部4が設置されている。固定指部4は角柱状であり、中央にて折れ曲がった形状となっている。固定指部4の先端部4aはXY平面視で円弧状となっている。
ハンド本体2のX方向且つ−Y方向の角にはモーター5が設置されている。モーター5の回転軸5aはモーター5のZ方向及び−Z方向に突出している。モーター5の−Z方向には検出部としてのエンコーダー6が設置され、エンコーダー6は回転軸5aの回転角度に応じた信号を出力する。
モーター5のZ方向には減速装置7が設置されている。回転軸5aの一端は減速装置7に挿入されている。そして、減速装置7のZ方向には出力軸7aが設置され、減速装置7は回転軸5aの回転速度を減速した回転速度にて出力軸7aを回転させる。この出力軸7aは可動部及び第1可動部としての可動指8と接続されている。
可動指8は凹部8aを備え、凹部8aにモーター5、エンコーダー6及び減速装置7が位置している。凹部8aには出力軸7aの中心軸を同じく中心軸とする回転軸8bが設置されている。そして、エンコーダー6の−Z方向には回転軸8bを受ける軸受け9が設置されている。これにより、可動指8はハンド本体2と回転可能に設置されている。そして、モーター5が回転するとき可動指8は出力軸7a及び回転軸8bを中心として回転する。
可動指8は固定指部4と同様に角柱状であり、中央にて折れ曲がった形状となっている。可動指8の先端部8cは先端部4aと同様にXY平面視で円弧状となっている。そして、モーター5が可動指8を回転させるとき、先端部8cは先端部4aと接触するようになっている。先端部4aと先端部8cとの間に把持対象物10をおいて先端部8cが先端部4aに接近するように回転軸5aを回転させる。このとき、先端部4aと先端部8cとを把持対象物10に押圧することによりロボットハンド1は把持対象物10を把持することができる。
ロボットハンド1は制御装置11を備え、制御装置11にはモーター5の回転と停止を制御するモーター制御装置12が配線13により接続されている。そして、制御装置11はモーター制御装置12にモーター5を駆動させて可動指8を開閉するようになっている。
図1(c)に示すように、ロボットハンド1は把持対象物10を固定指部4と可動指8とで挟んで把持する。固定指部4と可動指8とが把持対象物10と接触する場所を通る方向の把持対象物10の幅を把持対象物幅10aとする。そして、可動指8の移動目標場所14を図中2点鎖線にて示す。制御装置11は可動指8が移動目標場所14に移動するようにモーター制御装置12にモーター5を駆動させる。
固定指部4と移動目標場所14との間隔を目標間隔15とする。このとき、目標間隔15は把持対象物幅10aより狭い間隔となっている。これにより、可動指8は移動目標場所14に到達するまえに把持対象物10と接触する。従って、制御装置11がモーター制御装置12にモーター5を駆動する指示を変更するまで固定指部4と可動指8とで把持対象物10を押圧して把持することができる。
(モーター制御装置)
図2は制御装置の構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置11はモーター制御装置12の他にリセット指示部としての統合制御部16、検出部としての速度検出部17、角度検出部18を有している。統合制御部16はロボットハンド1のモーター5に加えて他のモーターも制御する機能を備えている。そして、各モーターが駆動する可動部を統合して管理する。速度検出部17はエンコーダー6が出力する信号を入力して回転軸5aの回転速度を検出する機能を備えている。エンコーダー6からは回転軸5aの回転角度に応じたパルス信号が出力される。エンコーダー6の分解能は特に限定されないが、例えば本実施形態では、回転軸5aが0.1度回転する毎の1つのパルス信号が出力される。速度検出部17はパルス信号の間隔の時間を計測することにより回転軸5aの回転速度を検出する。
角度検出部18はエンコーダー6が出力する信号を入力して回転軸5aの回転角度を検出する機能を備えている。角度検出部18はパルス信号の入力数を積算することにより回転軸5aの回転角度を検出する。尚、エンコーダー6、速度検出部17及び角度検出部18等により回転検出器19が構成されている。
モーター制御装置12は第1加算器22を備えている。統合制御部16は第1加算器22に目標とするモーター5の回転角度を示す角度指令23を出力する。この角度指令23は可動指8が移動目標場所14に到着したときの回転軸5aの回転角度を示している。さらに、角度検出部18は回転軸5aの角度を示す角度データ信号24を第1加算器22に出力する。第1加算器22は角度指令23から角度データ信号24を減算した動作角度信号25を演算する。そして、可動指8が移動目標場所14に到着するまでに回転軸5aを回転させる角度である動作角度信号25を出力する。
第1加算器22と接続して位置制御部26が配置され、位置制御部26には動作角度信号25が入力される。位置制御部26は動作角度信号25を用いて速度指令27を演算して出力する。速度指令27は動作角度信号25が示す回転軸5aの回転角度を判定角度と比較する。そして、回転角度が判定角度より大きいとき速度指令27を最大速度に設定して出力する。回転角度が判定角度より小さいときには速度指令27を回転角度に応じた速度に設定して出力する。つまり、回転角度が大きいときには高速回転させる速度指令27を出力し、回転角度が小さいときには低速回転させる速度指令27を出力する。この速度指令27は回転軸5aの目標回転速度を示している。
位置制御部26と接続して第2加算器28が配置され、第2加算器28には速度指令27が入力される。さらに、第2加算器28には速度検出部17が接続され、速度検出部17が出力する回転速度信号29が第2加算器28に入力される。回転速度信号29は、エンコーダー6と速度検出部17とが検出した回転軸5aの回転速度を示す信号である。
第2加算器28は速度指令27から回転速度信号29が示す回転速度を減算して速度差信号30を出力する。速度差信号30は速度指令27に対する回転軸5aの回転速度の差である。速度指令27が示す回転方向に回転軸5aが回転しているとき、回転軸5aの回転速度より速度指令27が大きいときには速度差信号30は正の値を示す。回転軸5aの回転速度より速度指令27が小さいときには速度差信号30は負の値を示す。
第2加算器28と接続して、速度制御部31が配置されている。速度制御部31は比例制御部32、積分制御部33及び加算器としての第3加算器34を備えている。比例制御部32及び積分制御部33は第2加算器28と接続され、さらに、第3加算器34と接続されている。比例制御部32には第2加算器28から速度差信号30が入力される。比例制御部32は速度差信号30に所定の定数を乗算した第1トルク指令信号35を演算して第3加算器34に出力する。
積分制御部33にも第2加算器28から速度差信号30が入力される。積分制御部33は増幅器33a及び積分器33bを備えている。そして、積分制御部33に入力された速度差信号30は増幅器33aに入力される。増幅器33aは速度差信号30に所定の定数を乗算した増幅速度差信号30aを算出して積分器33bに出力する。積分器33bは乗算された速度差信号30を時間軸にて積分した第2トルク指令信号36を演算して第3加算器34に出力する。
第3加算器34は第1トルク指令信号35と第2トルク指令信号36とを加算して第3トルク指令信号37を出力する。第2加算器28及び速度制御部31は回転速度信号29が速度指令27に近づくようにPI制御を行う構成となっている。つまり、比例制御部32は速度差信号30に比例した第1トルク指令信号35を出力することにより回転速度信号29を速度指令27に近づけている。そして、積分制御部33は第1トルク指令信号35によって回転軸5aが駆動されるときに生じるオフセットを解消するようにモーター5を制御する。
第3加算器34と接続してトルク限定制御部としての限定制御部38が配置され、限定制御部38には第3トルク指令信号37が入力される。限定制御部38はトルク限定値を記憶しており、限定制御部38はトルク限定値と第3トルク指令信号37とを比較する。トルク限定値は、限定制御部38が出力するトルク指令信号44の示すトルクを所定のトルク以下に限定するために比較する値である。そして、第3トルク指令信号37がトルク限定値を超えるとき、限定制御部38は第3トルク指令信号37からトルク限定値を減算した値に相当する超過トルク信号としての帰還トルク信号39を算出して飽和増幅器42に出力する。
飽和増幅器42は帰還トルク信号39に所定の定数を乗算した増幅帰還信号39aを算出し、増幅帰還信号39aを積分器33bに出力する。積分器33bは増幅速度差信号30aから増幅帰還信号39aを減算した信号を積分した積分値を算出して第2トルク指令信号36とする。
積分値の符号が反転するときには積分器33bは、第2トルク指令信号36を切り換えてトルクを印加しない信号にする。つまり、第2トルク指令信号36のレベルを”0”にリセットする。そして、帰還トルク信号39が入力する間はリセットした第2トルク指令信号36を維持する。これにより、モーター5の回転軸5aを反転駆動するときに制御装置11は応答性良く回転軸5aを反転させることができる。
限定制御部38にはモーター駆動部43が接続されている。第3トルク指令信号37がトルク限定値を超えないとき、限定制御部38は第3トルク指令信号37をトルク指令信号44としてモーター駆動部43に出力する。一方、第3トルク指令信号37がトルク限定値を超えるとき、限定制御部38はトルク限定値のトルク出力を指令する信号をトルク指令信号44としてモーター駆動部43に出力する。従って、トルク指令信号44はトルク限定値を超えない信号が出力される。
そして、モーター駆動部43は限定制御部38からトルク指令信号44を入力しモーター5に駆動信号45を出力する。モーター駆動部43はトルク制御及び駆動回路等を備えトルク指令通りのトルクを発生するようにモーターを駆動する。
統合制御部16、速度検出部17及び限定制御部38と接続して限定値設定部46が配置されている。統合制御部16は限定値設定部46に回転軸5aの状態に応じたトルク限定値等を含むトルク限定信号47を出力する。限定値設定部46はメモリー等の記憶部を有し、回転軸5aの状態に応じたトルク限定値のデータを記憶する。回転軸5aの状態は、例えば、加速回転時、高速での一定速度回転時、減速回転時、停止時の状態が含まれている。
限定値設定部46は速度検出部17から回転速度信号29を入力する。そして、回転軸5aの回転状態を判断して回転軸5aの各回転状態に応じた限定トルク設定信号48を限定制御部38に出力する。限定制御部38は限定トルク設定信号48を入力してトルク限定値を設定する。
位置制御部26は速度指令27を演算するとき、加速回転、減速回転のどのモードに該当するかを認識する。そして、モードが切り替わるとき位置制御部26は加速回転、減速回転のどのモードに切り替わるかを伝達するモード信号49を限定値設定部46に出力する。そして、限定値設定部46は位置制御部26が切り換えるモードに対応してトルク限定値を設定することが可能になっている。
統合制御部16は角度データ信号24、回転速度信号29を入力している。これにより、統合制御部16は回転軸5aが回転中か停止しているかを認識する。さらに、回転軸5aが回転しているときには回転軸5aの回転角度や回転速度を認識することができる。統合制御部16は飽和増幅器42から増幅帰還信号39aを入力する。統合制御部16は増幅帰還信号39aを用いて第3トルク指令信号37がトルク限定値に達しているかを認識することができる。そして、統合制御部16はモーター5の状況を認識した上でトルク限定信号47を出力し、トルク限定値を設定する。また、統合制御部16はトルク指令信号44やモーター5の実際の電流値を駆動状態の判断に利用してもよい。
次に、積分器33bの構造及び機能について詳細に説明する。積分器33bはCPU(中央演算装置)によって駆動され機能が実現されている。従って、図示しないメモリーに記憶されたプログラムの記述に従ってCPUが駆動されることにより機能が実現されている。
図3は、積分器の構造を示すブロック図である。図3に示すように積分器33bは増幅器33a及び第3加算器34と接続する積分第1加算器50を備え、積分第1加算器50は積分第2加算器51と接続されている。積分第2加算器51は飽和増幅器42と接続されている。さらに、積分第2加算器51は積分第1記憶部52と接続され、積分第1記憶部52は符号比較部53と接続されている。符号比較部53は積分第2記憶部54と接続され、積分第2記憶部54は積分第1加算器50と接続されている。
積分第2記憶部54には演算に用いる積算データ55が記憶されている。積算データ55はこれまでの増幅速度差信号30aが積算されたデータである。そして、積分第2記憶部54は積算データ55を積分第1加算器50に出力する。積分第1加算器50は増幅速度差信号30a及び積算データ55を入力し、増幅速度差信号30aと積算データ55とを加算する。そして、積分第1加算器50は演算結果を第2トルク指令信号36として第3加算器34に出力する。
さらに、積分第1加算器50は第2トルク指令信号36を積分第2加算器51に出力する。積分第2加算器51は第2トルク指令信号36及び増幅帰還信号39aを入力し、第2トルク指令信号36から増幅帰還信号39aを減算する。そして、積分第2加算器51は演算結果を帰還演算データ56として積分第1記憶部52に出力する。
第3トルク指令信号37がトルク限定値を超えていないときには増幅帰還信号39aの信号は”0”の信号となっている。尚、”0”の信号とは回転軸5aを駆動するトルクに影響を及ぼさない信号を示す。従って、このときには帰還演算データ56は第2トルク指令信号36と同じ値となる。
符号比較部53は積分第1記憶部52から帰還演算データ56を入力し、積分第2記憶部54から積算データ55を入力する。さらに、符号比較部53は飽和増幅器42から増幅帰還信号39aを入力する。そして、符号比較部53は積算データ55と帰還演算データ56とを比較する。積算データ55と帰還演算データ56との符号が異なるとき、符号比較部53は増幅帰還信号39aが”0”の信号でないか否かを確認する。そして、積算データ55と帰還演算データ56との符号が異なり、且つ、増幅帰還信号39aが”0”の信号でないときには符号比較部53は積分第2記憶部54に記憶された積算データ55を”0”の信号に変更してリセットする。
これにより、第3トルク指令信号37がトルク限定値を超えたときにも、帰還トルク信号39により積算データ55の符号が変わることがない。従って、帰還トルク信号39により第3トルク指令信号37の符号が変わるのを防止している。その結果、帰還トルク信号39により回転軸5aの回転方向が反転することを防止することができる。
積分第2記憶部54にはリセットフラグ57と称するデータが記憶されている。リセットフラグ57の初期値は”0”である。そして、積算データ55と帰還演算データ56との符号が異なり、且つ、増幅帰還信号39aが”0”の信号でないときには符号比較部53は積分第2記憶部54に記憶されたリセットフラグ57を”1”に変更する。つまり、リセットフラグ57は積算データ55が”0”の信号のとき、増幅帰還信号39aの影響を受けて積算データ55が”0”の信号に設定されたのか、増幅帰還信号39aに関係せずに”0”の信号となっているかを見分けるデータとなっている。
そして、符号比較部53はリセットフラグ57及び増幅帰還信号39aを入力する。リセットフラグ57が”1”であり、且つ、増幅帰還信号39aが”0”の信号でないときには符号比較部53は積分第2記憶部54に記憶された積算データ55をリセットされた”0”の信号のまま維持する。増幅帰還信号39aが”0”の信号のときには符号比較部53は積分第2記憶部54に記憶された積算データ55を帰還演算データ56に変更する。さらに、符号比較部53はリセットフラグ57を”0”の信号に変更する。
積算データ55と帰還演算データ56との符号が同じとき、符号比較部53は積分第2記憶部54に記憶された積算データ55を帰還演算データ56に変更する。以上の動作により、増幅帰還信号39aの値が”0”のときには、積分器33bは増幅速度差信号30aを積分した信号を第2トルク指令信号36として出力する。そして、増幅帰還信号39aの値が”0”でないときに、第2トルク指令信号36の符号が反転するときには積分器33bは増幅速度差信号30aを第2トルク指令信号36として出力する。
次に、上述したロボットハンド1を用いて、把持対象物10を把持する方法について図4〜図7にて説明する。図4(a)は、ロボットハンドの把持作業を示すフローチャートである。図4(b)は、モーターを制御する手順を示すフローチャートであり、把持作業の各工程においてモーターを制御する手順を示している。図5及び図6は、把持作業における把持方法を説明するためのタイムチャートである。
(モーターの駆動方法)
図4(a)に示すフローチャートにおいて、ステップS1は、初期設定工程に相当する。この工程は、モーターの設定を初期値に設定する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は、接近移動工程に相当する。この工程は、可動指8を移動させて把持対象物10に接近させる工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は把持工程に相当する。この工程は、可動指8が把持対象物10を把持する工程である。次にステップS4に移行する。ステップS4は離反準備工程に相当する。この工程は、可動指8を把持対象物10から離反させる準備をする工程である。次にステップS5に移行する。ステップS5は、離反移動工程に相当する。この工程は、可動指8が把持対象物10から離れる方向に移動する工程である。以上の工程によりロボットハンド1の把持作業が終了する。
図4(b)に示すフローチャートにおいて、ステップS11は、パラメーター設定工程に相当する。この工程は、目標速度やトルク限定値を設定する工程である。次にステップS12及びステップS13に移行する。ステップS12及びステップS13は並行して行われる。ステップS12は、第1トルク演算工程に相当する。この工程は、比例制御部32が速度差信号30を入力し、速度差信号30に所定の定数を乗算した第1トルク指令信号35を演算して第3加算器34に出力する工程である。次にステップS14に移行する。
ステップS13は、第2トルク演算工程に相当する。この工程では、増幅器33aが速度差信号30に所定の定数を乗算した増幅速度差信号30aを算出して積分器33bに出力する。そして、積分器33bが乗算された速度差信号30を時間軸にて積分した第2トルク指令信号36を演算して第3加算器34に出力する工程である。次にステップS14に移行する。
ステップS14は、加算工程に相当する。この工程では、第3加算器34が第1トルク指令信号35と第2トルク指令信号36とを加算して第3トルク指令信号37を出力する工程である。次にステップS15に移行する。ステップS15は、トルク限定工程に相当する。この工程では、限定制御部38がトルク限定値と第3トルク指令信号37とを比較する。そして、第3トルク指令信号37がトルク限定値を超えないときには限定制御部38がトルク指令信号44を第3トルク指令信号37と同じ信号にする。そして、第3トルク指令信号37がトルク限定値を超えるとき、限定制御部38はトルク指令信号44をトルク限定値にする。次にステップS16に移行する。
ステップS16は、トルク指令出力工程に相当する。この工程は、限定制御部38がモーター駆動部43にトルク指令信号44を出力し、モーター駆動部43がモーター5を駆動する工程である。以上の工程によりモーターの制御が行われる。
次に、図5及び図6を用いて、図3及び図4(a),(b)に示したステップと対応させて、ロボットハンドの把持作業におけるモーターの制御を詳細に説明する。図5及び図6に示すタイムチャートは図5(a)〜図6(d)の9つのタイムチャートにより構成されている。各段のタイムチャートにおいて横軸は時間の推移を示しており、ステップS1〜ステップS5の順に推移する。
図5(a)におけるタイムチャートの縦軸は指部の位置を示し、図中上側は把持対象物に接近する方向を示している。そして、指部推移線60は可動指8の先端部8cの位置を示している。可動指8と接続する出力軸7aは減速装置7を介してモーター5の回転軸5aと接続されているので、指部推移線60は回転軸5aの回転角度と略同じ推移となっている。指部目標推移線61は統合制御部16が指示する先端部8cの移動目標位置である。従って、指部推移線60は指部目標推移線61の示す位置に向かって移動するように制御される。
図5(b)におけるタイムチャートの縦軸はモーターの回転軸5aを駆動する速度指令27を示している。図中速度が”0”となる線の上側は可動指8が把持対象物10に接近するように移動させるために回転軸5aが回転するときの速度を示し、上側は下側より高い速度を示す。そして、図中速度が”0”となる線の下側は可動指8が把持対象物10から離れるように回転軸5aが回転するときの速度を示し、下側は上側より高い速度を示す。そして、速度指令推移線62は位置制御部26が出力する速度指令27の推移を示している。尚、速度指令27は回転軸5aの目標回転速度を示す信号となっている。
図5(c)におけるタイムチャートの縦軸は回転軸5aの回転速度を示している。図中の縦軸と横軸とは図5(b)と同じであり説明を省略する。そして、回転速度推移線63は回転軸5aが回転する速度の推移を示している。接触判定速度64は、可動指8が把持対象物10に接触したか否かを判定するときに用いる速度を示している。
図5(d)におけるタイムチャートの縦軸は第1トルク指令信号35を示している。図中トルクが”0”となる線の上側は可動指8が把持対象物10に接近するように移動させるために回転軸5aを回転させるときのトルクを示し、上側は下側より高いトルクを示す。そして、図中トルクが”0”となる線の下側は可動指8が把持対象物10から離れるように回転軸5aを回転させるときのトルクを示し、下側は上側より高いトルクを示す。そして、第1トルク指令推移線65は比例制御部32が第3加算器34に出力する第1トルク指令信号35の推移を示している。
図5(e)におけるタイムチャートの縦軸と横軸とは図5(d)と同様であり説明を省略する。尚、縦軸は第2トルク指令信号36を示している。そして、第2トルク指令推移線66は積分制御部33が第3加算器34に出力する第2トルク指令信号36の推移を示している。
図6(a)におけるタイムチャートの縦軸と横軸とは図5(d)と同様であり説明を省略する。尚、縦軸は第3トルク指令信号37を示している。そして、第3トルク指令推移線67は第3加算器34が限定制御部38に出力する第3トルク指令信号37の推移を示している。
図6(b)におけるタイムチャートの縦軸は回転軸5aを駆動するトルクのトルク限定値の絶対値を示している。図中上側は下側より高いトルクを示す。そして、トルク限定値推移線68は限定値設定部46が限定制御部38に出力する限定トルク設定信号48の推移を示している。
図6(c)におけるタイムチャートの縦軸は帰還トルク信号39を示している。図中上側は下側より高いトルクを示す。そして、トルク超過推移線69は限定制御部38が飽和増幅器42に出力する帰還トルク信号39の推移を示している。
図6(d)におけるタイムチャートの縦軸と横軸とは図5(d)と同様であり説明を省略する。尚、縦軸はトルク指令信号44を示している。そして、トルク指令推移線70は限定制御部38がモーター駆動部43に出力するトルク指令信号44の推移を示している。
図5及び図6においてステップS1の初期設定工程では統合制御部16が制御に用いるパラメーターを初期値に設定する。つまり、可動指8を動作させるための準備を行う。例えば、統合制御部16が角度指令23やトルク限定値を出力するための準備をする。
ステップS2の接近移動工程では、統合制御部16が可動指8を移動目標場所14に移動するようにモーター制御装置12に指示を出力する。これにより、指部目標推移線61は把持対象物10の方に移動する。具体的にはステップS11のパラメーター設定工程において統合制御部16が第1加算器22に角度指令23を出力する。これにより、角度検出部18が出力する角度データ信号24と角度指令23とに差が生じるので第1加算器22は指部目標推移線61の変化に対応する動作角度信号25を位置制御部26に出力する。
位置制御部26は動作角度信号25に対応する速度指令27を演算して第2加算器28に出力する。これにより速度指令推移線62が示すように速度指令27は加速して高い速度に到達するように設定される。次に、所定の速度で等速移動する。次に、減速して接近することにより、可動指8が把持対象物10に接触するときの衝撃を小さくする。第2加算器28は速度指令27と回転速度信号29との差に相当する速度差信号30を速度制御部31に出力する。
次に、ステップS12の第1トルク演算工程において、比例制御部32が速度差信号30に比例する第1トルク指令信号35を出力する。第1トルク指令推移線65は速度指令推移線62と回転速度推移線63との差に比例して推移する。速度指令推移線62が上昇するときには第1トルク指令信号35は接近方向に加速させる信号となる。そして、速度指令推移線62が下降するときには第1トルク指令信号35は離反方向に加速することにより回転軸5aの回転速度を減速させる信号となる。
ステップS13の第2トルク演算工程では積分制御部33が第1トルク指令推移線65を積分した第2トルク指令信号36を出力する。従って、ステップS2では第2トルク指令推移線66は台形の形状となる。
ステップS14の加算工程では第1トルク指令信号35と第2トルク指令信号36とが加算される。従って、第3トルク指令推移線67に示すように、加速、等速、減速の順に推移する第3トルク指令信号37が限定制御部38に出力される。
ステップS15のトルク限定工程では第3トルク指令信号37とトルク限定値とを比較する。ステップS2ではトルク限定値推移線68が示すトルク限定値は第3トルク指令信号37より高いトルク限定値としての第1トルク限定値68aに設定されている。従って、第3トルク指令信号37はトルク限定値未満であり、トルク超過推移線69が示すように帰還トルク信号39は”0”の信号となっている。
ステップS16のトルク指令出力工程では第3トルク指令信号37がそのままトルク指令信号44としてモーター駆動部43に出力される。従って、トルク指令推移線70は第3トルク指令推移線67と同様に推移する。
先端部8cが把持対象物10に接触するときステップS2の接近移動工程からステップS3の把持工程に移行する。統合制御部16は回転速度信号29を監視する。そして、回転速度信号29が接触判定速度64より低い速度となったときに統合制御部16は可動指8が把持対象物10に接触したと判断する。
ステップS3においてステップS11のパラメーター設定工程では、指部目標推移線61に示すように、可動指8がさらに把持対象物10の方向に移動するように目標が維持される。従って、速度指令推移線62に示すように位置制御部26は可動指8をさらに把持対象物10に接近させる回転速度信号29を出力する。
可動指8が把持対象物10に接触しているので、回転速度推移線63が示すように回転軸5aの回転速度は”0”となっている。これにより、ステップS12の第1トルク演算工程では第1トルク指令推移線65が示すように一定のトルクを出力する第1トルク指令信号35が出力される。
ステップS13の第2トルク演算工程では速度差信号30が積分されるので第2トルク指令推移線66が示すように第2トルク指令信号36が上昇する。その結果、ステップS14の加算工程では第3トルク指令推移線67が示すように第3トルク指令信号37も上昇する。
ステップS15のトルク限定工程では、第3トルク指令信号37が第1トルク限定値68aを超えるとき、トルク指令信号44を第1トルク限定値68aにする。これにより、トルク指令信号44は第1トルク限定値68a以下のトルクを指令する信号となる。
そして、限定制御部38はトルク超過推移線69が示すように第1トルク限定値68aを超える分を抽出した帰還トルク信号39を飽和増幅器42に出力する。そして、飽和増幅器42は増幅帰還信号39aを積分器33bに出力する。その結果、第2トルク指令信号36が減算されるので、第2トルク指令推移線66に示すように第2トルク指令信号36は上昇せずに信号を維持する。これにより、第3トルク指令信号37は第1トルク限定値68aに近い値を維持する。
ステップS16のトルク指令出力工程ではトルク指令推移線70に示すように第1トルク限定値68aを超えないトルク指令信号44がモーター駆動部43に出力される。
統合制御部16は可動指8を把持対象物10から離反させる前にステップS4の離反準備工程を行う。統合制御部16は限定値設定部46にトルク限定信号47を出力し、限定値設定部46は限定トルク設定信号48を限定制御部38に出力する。これにより、トルク限定値推移線68が示すようにトルク限定値に第2トルク限定値68bが設定される。第2トルク限定値68bは第1トルク限定値68aより小さい値となっている。
これにより、トルク超過推移線69に示すように第3トルク指令信号37が第2トルク限定値68bを超える値が大きくなる。そして、限定制御部38から帰還トルク信号39が飽和増幅器42に出力され、飽和増幅器42から増幅帰還信号39aが積分器33bに出力される。その結果、第2トルク指令信号36が減算され、第2トルク指令推移線66に示すように第2トルク指令信号36は下降する。そして、第3トルク指令推移線67が示すように第3トルク指令信号37も下降して第2トルク限定値68bに近い値を維持する。続いてステップS5に移行する。
ステップS5の離反移動工程では可動指8を把持対象物10から離す動作を行う。まず、ステップS11のパラメーター設定工程においてトルク限定値推移線68に示すように限定値設定部46はトルク限定値に第1トルク限定値68aを設定する。これにより、トルク超過推移線69に示すように帰還トルク信号39は”0”の信号となる。次に、指部目標推移線61に示すように統合制御部16は角度指令23を変更する。位置制御部26は角度指令23を入力して速度指令推移線62に示すように速度指令27を変更する。速度指令27は加速、等速、減速の順に推移する。
速度指令推移線62と回転速度推移線63との差に相当する速度差信号30を第2加算器28が比例制御部32及び積分制御部33に出力する。そして、ステップS12の第1トルク演算工程において第1トルク指令推移線65に示すように比例制御部32が可動指8を把持対象物10から離す方向に回転軸5aを回転させる第1トルク指令信号35を第3加算器34に出力する。
ステップS13の第2トルク演算工程において第2トルク指令推移線66に示すように積分制御部33は速度差信号30を積分して第2トルク指令信号36を第3加算器34に出力する。ステップS14の加算工程において第3加算器34は第1トルク指令信号35と第2トルク指令信号36とを加算し、第3トルク指令推移線67に示すように第3トルク指令信号37を限定制御部38に出力する。
ステップS15のトルク限定工程ではトルク限定値推移線68に示すようにトルク限定値には第1トルク限定値68aが設定されている。そして、第3トルク指令信号37は第1トルク限定値68aを超えないので、第3トルク指令信号37がそのままトルク指令信号44としてモーター駆動部43に出力される。そして、トルク超過推移線69に示すように帰還トルク信号39は”0”の信号が維持される。
指部推移線60に示すように可動指8が目標位置に到達したとき、ロボットハンド1の把持作業が終了する。
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、限定制御部38は第3トルク指令信号37により駆動される回転軸5aのトルクとトルク限定値とを比較する。そして、第3トルク指令信号37により駆動される回転軸5aのトルクがトルク限定値を超えるとき、限定制御部38は第3トルク指令信号37を変えてトルク指令信号44を出力する。従って、回転軸5aが回転しているときにも停止しているときにも速度制御を行いつつトルク限定値を超えないトルクで回転軸5aを動作させることができる。
(2)本実施形態によれば、帰還トルク信号39が出力されるときは第3トルク指令信号37がトルク限定値を超えているときである。このとき、飽和増幅器42が増幅帰還信号39aを積分器33bに出力する。そして、積分器33bは積分値から増幅帰還信号39aを減算する。これにより、積分器33bが積分することにより蓄積された第2トルク指令信号36は小さいトルクに変更される。従って、モーター5を反転するときにも応答性良くトルク指令信号44を制御することができる。その結果、モーター5の回転速度を品質良く制御することができる。
(3)本実施形態によれば、ロボットハンド1は可動指8を駆動するモーター5を備えている。そして、ロボットハンド1は制御装置11を備えている。制御装置11はモーター制御装置12を有し、モーター制御装置12はモーター5の回転角度や回転速度を制御する。そして、回転軸5aが回転しているときにも停止しているときにもモーター5に要求されるトルクに応じたトルクで回転軸5aを駆動することができる。その結果、可動指8を移動して停止するときにも、応答性良く可動指8を駆動することができる。
(4)本実施形態によれば、モーター制御装置12は固定指部4と可動指8との幅が把持対象物10の幅より狭くなるように動作する。そして、固定指部4と可動指8とが把持対象物10を挟む。固定指部4及び可動指8が把持対象物10を挟んだ後、回転軸5aのトルクは下がることなく上昇する。従って、固定指部4及び可動指8を移動させる動作から把持対象物10を挟む動作に続けて移行することができる。
(5)本実施形態によれば、第3トルク指令信号37がトルク限定値になるとき、限定制御部38は積分器33bに積分演算を停止させている。従って、第2トルク指令信号36が大きくなるのを防止することができる。その結果、トルク指令信号がトルク限定値より小さくなるとき、回転速度に追従した応答性の良い制御を行うことができる。
(第2の実施形態)
次に、モーター制御装置と、このモーター制御装置を用いたロボットハンドの特徴的な例の一実施形態について図7の把持作業における把持方法を説明するためのタイムチャートを用いて説明する。
本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、増幅速度差信号30aから増幅帰還信号39aを減算したときに符号が反転するときに第2トルク指令信号36は”0”の信号を出力する点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
図7(a)におけるタイムチャートの縦軸と横軸とは図5(d)と同じであり説明を省略する。そして、第2トルク指令推移線71は積分制御部33が第3加算器34に出力する第2トルク指令信号36の推移を示している。第2トルク指令推移線71は第1の実施形態の第2トルク指令推移線66に対応する推移線である。
図7(b)におけるタイムチャートの縦軸と横軸とは図6(a)と同じであり説明を省略する。そして、第3トルク指令推移線72は第3加算器34が限定制御部38に出力する第3トルク指令信号37の推移を示している。第3トルク指令推移線72は第1の実施形態の第3トルク指令推移線67に対応する推移線である。
図7(c)におけるタイムチャートの縦軸は回転軸5aを駆動するトルクのトルク限定値の絶対値を示している。図中上側は下側より高いトルクを示す。そして、トルク限定値推移線68は限定値設定部46が限定制御部38に出力する限定トルク設定信号48の推移を示している。尚、図7(c)のトルク限定値推移線68は第1の実施形態と同じ推移を示している。
図7(d)におけるタイムチャートの縦軸はトルクのトルク限定値を越えたトルク信号を示している。図中上側は下側より高いトルクを示す。そして、トルク超過推移線73は限定制御部38が飽和増幅器42に出力する帰還トルク信号39の推移を示している。トルク超過推移線73は第1の実施形態のトルク超過推移線69に対応する推移線である。
図7(e)におけるタイムチャートの縦軸と横軸とは図6(d)と同じであり説明を省略する。そして、トルク指令推移線74は限定制御部38がモーター駆動部43に出力するトルク指令信号44の推移を示している。トルク指令推移線74は第1の実施形態のトルク指令推移線70に対応する推移線である。第2トルク指令推移線71、第3トルク指令推移線72、トルク超過推移線73、トルク指令推移線74のステップS4の離反準備工程以外の推移は第1の実施形態と同じ推移を示し説明を省略する。
すなわち、本実施形態では、図7(c)に示すようにステップS4の離反準備工程においてトルク限定値が第1トルク限定値68aから第2トルク限定値68bに変更される。これにより、トルク超過推移線73に示すように帰還トルク信号39が急上昇する。そして、積分器33bにおいて積分第2加算器51は第2トルク指令信号36から増幅帰還信号39aを減算して帰還演算データ56を出力する。符号比較部53は帰還演算データ56の符号を判定する。そして、帰還演算データ56の符号が変わるときには積算データ55を”0”にして、リセットフラグ57を”1”に変更する。
これにより、第2トルク指令信号36には増幅速度差信号30aが出力される。つまり、第2トルク指令推移線71に示すように第2トルク指令信号36は小さい値となる。そして、第2トルク指令信号36が第2トルク限定値68bより小さくなるので、トルク超過推移線73が示すように帰還トルク信号39は”0”となる。
これにより、増幅帰還信号39aが”0”となり、第2トルク指令信号36の符号が変わっていないので、符号比較部53はリセットフラグ57を”0”に変更する。そして、積分器33bは積分する演算を開始する。この後においては、第1の実施形態のときと同様に積分器33bは増幅速度差信号30aから増幅帰還信号39aを減算して積分する。その結果、第3トルク指令推移線72に示すように、第3トルク指令信号37は小さくなる。そして、トルク指令推移線74に示すようにトルク指令信号44には第2トルク限定値68bの信号が出力される。
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、積分制御部33は、積分値から増幅帰還信号39aを減算する。減算することにより、第2トルク指令信号36の符号が反転することがある。尚、符号が反転するとは回転軸5aを回転させる方向が反転することを示す。増幅帰還信号39aが積分値を減算しすぎるときには回転軸5aの回転が不安定となる。そこで、増幅帰還信号39aが入力するときに積分値をリセットする。さらに、増幅帰還信号39aが入力する間は増幅帰還信号39aを減算しない信号に維持している。これにより、第2トルク指令信号36を減少させて増幅帰還信号39aを減少させることができる。その結果、回転軸5aの回転を安定して維持することができる。
(第3の実施形態)
次に、モーター制御装置と、このモーター制御装置を用いたロボットハンドの特徴的な例の一実施形態について図8及び図9を用いて説明する。図8は制御装置の構成を示すブロック図である。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、統合制御部16が積分器33bに積分値のリセット指示を行う点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
図8に示すように、ロボットハンド77はロボットハンド77を制御する制御装置78を備えている。そして、制御装置78はモーター制御装置79を備え、モーター制御装置79はロボットハンド77に設置されたモーター5を制御する。
モーター制御装置79には第1加算器22、位置制御部26、第2加算器28、速度制御部80、限定制御部38、モーター駆動部43がこの順に接続されている。速度制御部80には比例制御部32、第3加算器34、積分制御部81が設置されている。第2加算器28が出力する速度差信号30は比例制御部32及び積分制御部81に入力される。
比例制御部32は速度差信号30を入力して第1トルク指令信号35を第3加算器34に出力する。積分制御部81は速度差信号30を入力して第2トルク指令信号36を第3加算器34に出力する。第3加算器34は第1トルク指令信号35及び第2トルク指令信号36を入力して第3トルク指令信号37を限定制御部38に出力する。
限定制御部38は第3トルク指令信号37を入力してトルク指令信号44をモーター駆動部43に出力する。第3トルク指令信号37がトルク限定値を超えるとき、限定制御部38は第3トルク指令信号37をトルク限定値に変形する演算を行ってトルク指令信号44を出力する。第1の実施形態と異なり限定制御部38は積分制御部81に帰還トルク信号39を出力しない。
積分制御部81は増幅器81a及び積分器81bを備えている。増幅器81aは速度差信号30を入力して増幅速度差信号30aを積分器81bに出力する。積分器81bは増幅速度差信号30aを積分して算出した第2トルク指令信号36を第3加算器34に出力する。増幅器81aは第1の実施形態における増幅器33aと同様の機能を備えている。積分器81bは増幅帰還信号39aを減算する機能は無く、統合制御部16が出力するリセット信号82を入力して第2トルク指令信号36を”0”の信号にリセットする機能を備えている。
次に、図9を用いてモーターを制御する手順を説明する。図9は、把持作業における把持方法を説明するためのタイムチャートである。図9(a)におけるタイムチャートの縦軸と横軸とは図5(e)と同じであり説明を省略する。そして、第2トルク指令推移線83は積分制御部81が第3加算器34に出力する第2トルク指令信号36の推移を示している。第2トルク指令推移線83は第1の実施形態の第2トルク指令推移線66に対応する推移線である。
図9(b)におけるタイムチャートの縦軸と横軸とは図6(a)と同じであり説明を省略する。そして、第3トルク指令推移線84は第3加算器34が限定制御部38に出力する第3トルク指令信号37の推移を示している。第3トルク指令推移線84は第1の実施形態の第3トルク指令推移線67に対応する推移線である。
図9(c)におけるタイムチャートの縦軸は回転軸5aを駆動するトルクのトルク限定値の絶対値を示している。図中上側は下側より高いトルクを示す。そして、トルク限定値推移線68は限定値設定部46が限定制御部38に出力する限定トルク設定信号48の推移を示している。尚、図9(c)のトルク限定値推移線68は第1の実施形態と同じ推移を示している。
図9(d)におけるタイムチャートの縦軸と横軸とは図6(d)と同じであり説明を省略する。そして、トルク指令推移線85は限定制御部38がモーター駆動部43に出力するトルク指令信号44の推移を示している。トルク指令推移線85は第1の実施形態のトルク指令推移線70に対応する推移線である。第2トルク指令推移線83、第3トルク指令推移線84、トルク指令推移線85のステップS4の離反準備工程以外の推移は第1の実施形態と同じ推移を示し説明を省略する。
ステップS4の離反準備工程において、トルク限定値推移線68に示すように統合制御部16は限定制御部38のトルク限定値を第1トルク限定値68aから第2トルク限定値68bに変更する。そして、第2トルク指令推移線83に示すように統合制御部16は積分器81bにリセット信号82を出力して第2トルク指令信号36を”0”の信号にする。第3トルク指令推移線84が示すように第2トルク指令信号36が小さくなることにより、第3トルク指令信号37が小さくなる。これにより、モーター5が第2トルク指令信号36の影響を受けることを防止することができる。
第3トルク指令信号37が第2トルク限定値68bを超えるときにはトルク指令信号44を第2トルク限定値68bとする。これにより、トルク指令推移線85が示すようにトルク指令信号44は第2トルク限定値68b以下に維持される。
ステップS5の離反移動工程において、統合制御部16がトルク限定値を第1トルク限定値68aまで上昇させて、角度指令23を変更する。そして、統合制御部16は積分器81bにリセット信号82を出力するのを停止して第2トルク指令推移線83に示すように第2トルク指令信号36を積分器81bが積分した信号にする。このとき、第2トルク指令推移線83が示すように第2トルク指令信号36が小さくなっているので、第3トルク指令推移線84に示すように第3トルク指令信号37を応答性良く変化させることが可能となる。
そして、トルク限定値が第1トルク限定値68aとなっているので、トルク指令推移線85に示すように第3トルク指令信号37をトルク指令信号44としてモーター駆動部43に出力することができる。
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、統合制御部16がリセット信号82を積分器81bに出力して第2トルク指令信号36をリセットしている。回転軸5aを反転するとき、第2トルク指令信号36が大きいときには第1トルク指令信号35が第2トルク指令信号36をこえるまで反転するトルク指令信号44が出力できない。本適用例では、統合制御部16が第2トルク指令信号36の出力をリセットする。従って、回転軸5aを反転するときにも応答性良くトルク指令信号44を制御することができる。その結果、モーター5に要求されるトルクに応じたトルクでモーターの回転速度を制御することができる。
(第4の実施形態)
次に、ロボットハンドとロボットハンドを備えたロボットの特徴的な例の一実施形態について図10及び図11を用いて説明する。図10(a)は、ロボットハンドの構成を示す模式平面図であり、図10(b)はロボットハンドの指部を示す要部模式拡大図である。図11は、ロボットハンドを備えたロボットの構成を示す模式平面図である。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、複数の可動指が把持対象物を挟んで把持する点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
すなわち、本実施形態では、図10(a)に示すようにロボットハンド88は直方体状のハンド本体89を備えている。ハンド本体89の長手方向をY方向とし、Y方向と直交する方向をX方向とする。そして、X方向及びY方向と直交するハンド本体89の厚み方向をZ方向とする。
ハンド本体89の−X側の面においてハンド本体89は腕部3と接続し、腕部3は図示しないロボット本体と接続されている。ハンド本体89のX方向且つ−Y方向の角には第1の実施形態と同様にモーター5、エンコーダー6、減速装置7、可動指8、軸受け9が設置され、可動指8はモーター5により回転させられるようになっている。ハンド本体89のX方向且つY方向の角には可動指8と同様にモーター5、エンコーダー6、減速装置7、可動部及び第2可動部としての可動指90、軸受け9が設置され、可動指90はモーター5により回転させられるようになっている。
可動指8と可動指90とはXY平面視で対称形になっており、可動指8と可動指90とで把持対象物10を挟んで保持することが可能になっている。そして、ロボットハンド88は制御装置91を備え、制御装置91には可動指8を駆動するモーター5を制御するモーター制御装置12と可動指90を駆動するモーター5を制御するモーター制御装置92とが設置されている。モーター制御装置12及びモーター制御装置92は第1の実施形態におけるモーター制御装置12と同様の装置となっている。
図10(b)に示すように、ロボットハンド88は把持対象物10を可動指8と可動指90とで挟んで把持する。可動指8と可動指90とが把持対象物10と接触する場所を通る方向の把持対象物10の幅を把持対象物幅10aとする。そして、ロボットハンド88が把持対象物10を把持するとき、可動指8を図中2点鎖線で示す移動目標場所14に移動させる。さらに、可動指90を図中2点鎖線で示す移動目標場所93に移動させる。制御装置91は可動指8が移動目標場所14に移動し、可動指90が移動目標場所93に移動するようにモーター制御装置12,92に各モーター5を駆動させる。
可動指8の移動目標場所14と可動指90の移動目標場所93との間隔を目標間隔94とする。このとき、目標間隔94は把持対象物幅10aより狭い間隔となっている。これにより、可動指8が移動目標場所14に到達し可動指90が移動目標場所93に到達するまえに可動指8及び可動指90は把持対象物10と接触する。従って、制御装置91がモーター制御装置12及びモーター制御装置92にモーター5を駆動する指示を変更するまで可動指8と可動指90とで把持対象物10を押圧して把持することができる。
そして、可動指8と可動指90とが把持対象物10を抑えているときに把持対象物10に外力が作用して把持対象物10が可動指8と可動指90との間から抜けることがある。このときにも、可動指8と可動指90とはそれぞれ移動目標場所14と移動目標場所93とに移動して停止するので可動指8と可動指90とが衝突して損傷することが防止できる。
図11に示すように、ロボット95は本体96を備え、本体96には2つの腕部97が接続されている。そして、各腕部97にはロボットハンド88が設置されている。尚、腕部97には第1の実施形態に記載したロボットハンド1が設置されていても良い。そして、ロボット95にはロボットハンド88及び腕部97を制御する制御装置91を備えている。従って、制御装置91は可動指8及び可動指90を駆動するモーター5の速度制御を行いつつトルクを制御することが可能になっている。
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、可動指8を制御するモーター制御装置12と可動指90を制御するモーター制御装置92とは第1の実施形態と同様のモーター制御装置が設置されている。従って、回転軸5aが回転しているときにも停止しているときにもモーター5に要求されるトルクに応じたトルクで回転軸5aを駆動することができる。その結果、可動指8または可動指90が移動して停止するときにも所定の力を維持して可動指8及び可動指90を駆動することができる。
(2)本実施形態によれば、可動指8と可動指90とはそれぞれ移動目標場所14と移動目標場所93とに移動して停止するので可動指8と可動指90とが衝突して損傷することが防止できる。
(3)本実施形態によれば、ロボット95はロボットハンド88を備えている。従って、ロボット95が備えるロボットハンド88は可動指8及び可動指90が移動して停止するときにも所定の力を維持して可動指8及び可動指90を駆動することができる。
(比較例)
次に、ロボットハンドを制御する比較例の一実施形態について図12の把持作業における把持方法を説明するためのタイムチャートを用いて説明する。
本実施形態が第2の実施形態と異なるところは、増幅速度差信号30aから増幅帰還信号39aを減算したときに符号が反転するときにも第2トルク指令信号36を”0”の信号にせずに出力する点にある。尚、第1及び第2の実施形態と同じ点については説明を省略する。
図12(a)におけるタイムチャートの縦軸と横軸とは図7(a)と同じであり説明を省略する。そして、第2トルク指令推移線98は積分制御部33が第3加算器34に出力する第2トルク指令信号36の推移を示している。第2トルク指令推移線98は第2の実施形態の第2トルク指令推移線71に対応する。
図12(b)におけるタイムチャートの縦軸と横軸とは図7(b)と同じであり説明を省略する。そして、第3トルク指令推移線99は第3加算器34が限定制御部38に出力する第3トルク指令信号37の推移を示している。第3トルク指令推移線99は第2の実施形態の第3トルク指令推移線72に対応する。
図12(c)におけるタイムチャートの縦軸は回転軸5aを駆動するトルクのトルク限定値の絶対値を示している。図中上側は下側より高いトルクを示す。そして、トルク限定値推移線68は限定値設定部46が限定制御部38に出力する限定トルク設定信号48の推移を示している。尚、図12(c)のトルク限定値推移線68は第2の実施形態と同じ推移を示している。
図12(d)におけるタイムチャートの縦軸はトルクのトルク限定値を越えたトルク信号を示している。図中上側は下側より高いトルクを示す。そして、トルク超過推移線100は限定制御部38が飽和増幅器42に出力する帰還トルク信号39の推移を示している。トルク超過推移線100は第2の実施形態のトルク超過推移線73に対応する。
図12(e)におけるタイムチャートの縦軸と横軸とは図7(e)と同じであり説明を省略する。そして、トルク指令推移線101は限定制御部38がモーター駆動部43に出力するトルク指令信号44の推移を示している。トルク指令推移線101は第2の実施形態のトルク指令推移線74に対応する。第2トルク指令推移線98、第3トルク指令推移線99、トルク超過推移線100、トルク指令推移線101のステップS4の離反準備工程以外の推移は第2の実施形態と同じ推移を示し説明を省略する。
すなわち、本実施形態では、図12に示すようにステップS4の離反準備工程においてトルク限定値推移線68に示すようにトルク限定値が第1トルク限定値68aから第2トルク限定値68bに変更される。これにより、トルク超過推移線100に示すように帰還トルク信号39が急上昇する。そして、積分器33bにおいて積分第2加算器51は第2トルク指令信号36から増幅帰還信号39aを減算して帰還演算データ56を出力する。
第2の実施形態では符号比較部53が帰還演算データ56の符号を判定して、帰還演算データ56の符号が変わるときには積算データ55を”0”にした。積算データ55を”0”にしないときには、第2トルク指令推移線98に示すように第2トルク指令信号36が可動指8を離反方向に駆動する信号となる。
これにより、第3トルク指令推移線99に示すように第3トルク指令信号37が可動指8を離反方向に駆動する信号となる。そして、トルク指令推移線101が示すようにトルク指令信号44が可動指8を離反方向に駆動する信号となる。従って、可動指8が把持対象物10を押圧する力が減少するので、把持対象物10が固定指部4と可動指8との間から離脱する可能性が高くなる。
第2の実施形態では、帰還演算データ56の符号が変わるときには積算データ55を”0”にした。これにより、把持対象物10が固定指部4と可動指8との間から離脱しないように制御することができる。
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第4の実施形態では、制御装置91は第1の実施形態におけるモーター制御装置12を備えたが、第3の実施形態におけるモーター制御装置79を備えても良い。この場合にも速度制御を行いながらトルク制御を行うことができる。
(変形例2)
前記第4の実施形態では、ロボットハンド88には可動指8と可動指90との2つの可動指が設置されている。可動指の数は2つに限らず3つ以上でも良い。その場合にも、各可動指を駆動するモーターの制御に第1の実施形態または第2の実施形態の方法を用いることにより、品質良く把持対象物10を把持することができる。