(実施形態1)
以下、図1〜図4を参照して本発明の第1実施形態を説明する。
この実施形態は、無線ICデバイス(例えば、非接触ICカード)からアンテナを介して電波を受信する通信端末装置として、ICカードリーダ付きのゲート装置(自動改札装置)に適用した場合を例示したもので、図1(1)は、通信端末装置としての自動改札装置の外観図であり、図1(2)は、その自動改札装置の基本的な構成要素を示したブロック図である。
この自動改札装置は、特定施設(例えば、鉄道の無人駅など)の入退場兼用口に設置される簡易型の自動改札装置であり、図1(1)に示すように、図中、右側をホーム側とし、また、左側を駅舎側とすると、ユーザは入場時に、図中、左側から右側方向に移動して、無線ICデバイスとしての非接触ICカード(交通カード)を自動改札装置の上面部(後述するICカードリーダの対応する部分)にかざしながら又は滑らせながら入場するようにし、また、退場時には図中、右側から左側方向に移動して、非接触ICカード(交通カード)を自動改札装置の上面部にかざしながら又は滑らせながら退場するようにしている。
この簡易型の自動改札装置は、CPU1を中核として動作するもので、CPU1は、電源部(図示省略)からの電力供給によって動作し、記憶部2内の各種のプログラムに応じてこの自動改札装置の全体動作を制御する。記憶部2は、例えば、ROM、ハードディスク、フラッシュメモリのいずれかを使用し、又はそれらを組み合わせた構成で、プログラム記憶部M1、入出管理情報記憶部M2などを有している。プログラム記憶部M1は、図4に示した動作手順に応じて本実施形態を実現するためのプログラムや各種のアプリケーションなどが格納されているほか、それらに必要となる各種の情報が記憶されている。入出管理情報記憶部M2は、入場処理や退場処理の実行結果などを集計管理するためのメモリである。
RAM3は、フラグ情報、後述する電波強度データ、表示データなど、自動改札装置が動作したり、必要としたりする各種の情報を一時的に記憶するワーク領域である。表示部4は、例えば、高精細液晶、有機EL(Electro Luminescence)、電気泳動型ディスプレイ(電子ペーパ)のいずれかを使用して、各種の案内情報や入出管理情報などを表示する。入力部5は、図示省略したが、押しボタン形式の各種のキーとして、例えば、電源をオン/オフさせるキー、入出管理情報の呼び出しキー、その他のファンクションキーなどを備えたキー操作部であり、CPU1は、この入力部5からの入力操作信号に応じた処理として、電源オン/オフ処理、入出管理情報出力処理などを実行する。
ICカードリーダ6は、自動改札装置の上面部側に向けて取り付けられたもので、利用者は、非接触ICカード(交通カード)10を自動改札装置の上面部にかざしながら又は滑らせながら入場したり、退場したりするが、その際、非接触ICカード10との間で近距離通信(非接触通信)を行うことにより、非接触ICカード10からアンテナ7を介して受信した電波に基づいて、そのカード情報を読み取るようにしている。なお、ICカードリーダ6は、例えば、密着型(通信距離は2mmまで)、近接型(通信距離は10cmまで)、近傍型(通信距離は70cmまで)のいずれかであるが、通信距離は、これに限らず、任意である。非接触ICカード10は、カード内部にアンテナ(図示省略)を有し、自動改札装置から発信する弱い電波を利用してデータを送受信するもので、カード自体の駆動用電力をも受信電波から生成するパッシブ型であるが、電池を内蔵するアクティブ型などであってもよい。
ここで、CPU1は、このICカードリーダ6によって読み取られたカード情報に基づいて入出管理処理としての入場処理又は退場処理を実行するようにしている。電波強度検出部8は、非接触ICカード10からアンテナ7を介して受信した電波の強度を検出するもので、CPU1は、非接触ICカード10がICカードリーダ6に近付いて来てからそれが遠ざかるまでの間、電波強度検出部8から電波強度を逐次取得して、一連の電波強度データとしてRAM3内に一時記憶させるようにしている。
図2は、アンテナ7の一部分に電磁波減衰シート9を取り付けた状態を示した図である。
アンテナ7は、図2(1)に示すように、同一平面上に配置されていて全体が矩形枠(長方形枠)に設けられた平面ループアンテナで、その略半分の領域毎に電波感度が異なるようにするために、図中、アンテナ7の左半分領域には、電磁波減衰シート9が取り付けられている。この電磁波減衰シート9は、アンテナ7が感知する電波強度を変化(減衰)させるためのもので、非接触ICカード10からの電波の一部を反射する反射型又は吸収する吸収型の電磁波減衰シートであるが、その構成は問わない。
例えば、電磁波減衰シート9は、電磁波を遮断する導電繊維(銀繊維)をメッシュ状に編み上げることで電磁波を減衰したり、軟磁性体が自然共鳴して電磁波を熱エネルギーに変えることで電磁波を減衰したりするもので、シート全体の減衰率は均一となっている。本実施形態において、電磁波減衰シート9の減衰率は略40%としているが、その値は40%に限らず、任意であってもよい。また、電磁波減衰シート9は、アンテナ7の全体よりも大きめの矩形サイズで、アンテナ7の左半分領域とその周辺を含む領域を覆うように取り付けられているが、アンテナ7のみを覆うものであってもよい。
図2(2)、(3)は、非接触ICカード10の通過方向(カード移動方向)を示している。すなわち、図2(2)は、図中、左側から右側方向への移動方向(A)、つまり、入場時における移動方向を示し、図2(3)は、図中、右側から左側方向への移動方向(B)、つまり、退場時における移動方向を示している。この場合、図2(1)に示すように電磁波減衰シート9は、アンテナ7の左半分領域を覆うように取り付けられているので、非接触ICカード10がアンテナ7上を移動する際に、その移動方向(A)の場合には、電磁波減衰シート9が取り付けられている部分(シート部分)から電磁波減衰シート9が取り付けられていない部分(非シート部分)を通過することになり、移動方向(B)の場合には、非シート部分からシート部分に移動することになる。
図3は、電波強度検出部8から逐次取得した電波強度の時間的な推移を示した図で、縦軸が電波強度、横軸が時間を示している。図3(1)は、図2(2)に示したように非接触ICカード10の移動方向が(A)の場合、図3(2)は、図2(3)に示したように非接触ICカード10の移動方向が(B)の場合である。この場合、電波強度は、非接触ICカード10が近付いて来るか、遠ざかるかに従って変化すると共に、非接触ICカード10が電磁波減衰シート9の取り付け領域に近いか、それ以外の領域に近いかに応じて変化するようになる。図3(1)において、図中、T1は、非接触ICカード10が電磁波減衰シート9の取り付け領域側に近付いて来る状態での電波強度の時間的な推移を示し、電磁波減衰シート9による影響が強い区間、つまり、電波強度の弱い(低い)区間を示し、また、T2は、非接触ICカード10が電磁波減衰シート9の取り付け領域以外の領域に近付いて来る状態での電波強度の時間的な推移を示し、電磁波減衰シート9による影響が無い区間、つまり、電波強度の強い(高い)区間を示している。
区間T1内において電波強度は、非接触ICカード10が近付いて来るに従って徐々に強くなるが、本来の値の略40%程度に減衰されたものとなる。この区間T1を過ぎると、電波強度は、非接触ICカード10が近付いて来るに従って徐々に強くなって、ピーク点に達するようになる。その後、電磁波減衰シート9による影響の無い区間T2となり、非接触ICカード10が遠ざかるかに従って電波強度は徐々に弱くなる。ここで、電波強度のピーク点を基準として一定時間(例えば、0.2秒)前の電波強度(区間T1内の電波強度L1)と、一定時間(例えば、0.2秒)後の電波強度(区間T2内の電波強度L2)とは、L1<L2の関係となる。
これに対して非接触ICカード10の移動方向が(B)の場合には、図3(2)に示すように、ピーク点の一定時間前の電波強度L1(区間T1内の電波強度L1)とその一定時間後の電波強度(区間T1内の電波強度L2)とは、L1>L2の関係となる。このように非接触ICカード10の移動方向が(A)の場合と(B)の場合とでは、電波強度L1、L2の関係が異なるために、CPU1は、非接触ICカード10がICカードリーダ6に近付いて来てから遠ざかるまでの間、アンテナ7を介して受信した電波の強度を電波強度検出部8から逐次取得すると、この逐次取得した電波強度を示す一連のデータの中に含まれていて電磁波減衰シート9による影響を受けているデータ部分を参照することによりアンテナ7に対する非接触ICカード10の動き(移動方向)を認識するようにしている。
この場合、CPU1は、逐次取得した電波強度を示す一連のデータの中からピーク点を検出すると共に、このピーク点を基準として一定時間前の電波強度L1と、一定時間後の電波強度L2を検出してそれらの大小を比較することにより非接触ICカード10の動き(移動方向)を認識するようにしている。言い換えれば、逐次取得した電波強度を示す一連のデータのうち、電磁波減衰シート9による影響を受けているデータ部分とそれ以外のデータ部分との位置関係に応じてアンテナ7に対する非接触ICカード10の移動方向を認識するようにしている。すなわち、CPU1は、図2(2)に示すように左側から右側方向への移動方向(A)、つまり、入場時における移動方向であるかを認識したり、図2(3)に示すように右側から左側方向への移動方向(B)、つまり、退場時における移動方向であるかを認識したりする。そして、CPU1は、認識した非接触ICカード10の動き(移動方向)に応じて所定の入出管理処理(入場処理、退場処理)の実行を指示するようにしている。
次に、第1実施形態における自動改札装置の動作概念を図4に示すフローチャートを参照して説明する。ここで、このフローチャートに記述されている各機能は、読み取り可能なプログラムコードの形態で格納されており、このプログラムコードに従った動作が逐次実行される。また、ネットワークなどの伝送媒体を介して伝送されてきた上述のプログラムコードに従った動作を逐次実行することもできる。このことは、後述する他の実施形態においても同様であり、記録媒体のほかに、伝送媒体を介して外部供給されたプログラム/データを利用して本実施形態特有の動作を実行することもできる。
図4は、非接触ICカード10の認識処理に関する自動改札装置の動作概要を示したフローチャートである。なお、図4は、自動改札装置の全体動作のうち、本実施形態の特徴部分の動作概要を示したフローチャートであり、この図4のフローから抜けた際には、全体動作のメインフロー(図示省略)に戻る。
先ず、CPU1は、電波強度検出部8からの検出結果に基づいて非接触ICカード10を認識することができたか、つまり、非接触ICカード10がICカードリーダ6に近付いて来たかを判別しながら非接触ICカード10を認識できるまで待機状態となる(ステップA1)。
ここで、非接触ICカード10が近付いて来たことにより非接触ICカード10を認識することができたときには(ステップA1でYES)、電波強度検出部8から電波強度を逐次取得して(ステップA2)、一定時間(サンプリング時間)毎に電波強度データとしてRAM3内に一時記憶させる(ステップA3)。そして、非接触ICカード10内に記憶されているカード情報をICカードリーダ6から読み出し取得したかを調べ(ステップA4)、カード情報を取得するまで(ステップA2でNO)、上述のステップA2に戻り、電波強度を逐次取得しながらRAM3内に一時記憶させる動作を繰り返す。ここで、非接触ICカード10内のカード情報をICカードリーダ6から読み出し取得したときには(ステップA4でYES)、このカード情報をRAM3内に一時記憶させた後(ステップA5)、非接触ICカード10がICカードリーダ6から遠ざかるまで電波強度検出部8から電波強度を逐次取得し(ステップA6)、一定時間(サンプリング時間)毎に電波強度データとしてRAM3内に一時記憶させる(ステップA7)。
そして、電波強度検出部8からの検出結果に基づいて非接触ICカード10を認識することができなくなったか、つまり、非接触ICカード10がICカードリーダ6から遠ざかったかを判別する(ステップA8)。そして、非接触ICカード10が遠ざかるまで(ステップA8でYES)、上述のステップA6に戻り、電波強度を逐次取得して、RAM3内に一時記憶させる動作を繰り返す(ステップA7)。いま、非接触ICカード10が遠ざかることによりそれを認識することができなくなった場合には(ステップA8でNO)、非接触ICカード10がICカードリーダ6に近付いて来てから遠ざかるまでの間、逐次取得した電波強度を示す一連のデータをRAM3から読み出して、そのピーク点を検出すると共に(ステップA9)、このピーク点を基準として一定時間(例えば、0.2秒)前の電波強度L1と一定時間(例えば、0.2秒)後の電波強度L2をそれぞれ検出する(ステップA10)。
次に、上述のようにして検出した一定時間前の電波強度L1と一定時間後の電波強度L2との大小を比較して、L1≦L2の関係にあるか、L1>L2の関係にあるかを調べる(ステップA11)。いま、一定時間後の電波強度L2が一定時間前の電波強度L1以上で、L1≦L2の関係が成り立つ場合には、図2(2)に示すように、左側から右側方向への移動方向(A)、つまり、入場時における移動方向であると認識して(ステップA12)、入場処理の実行を指示する(ステップA13)。また、一定時間前の電波強度L1が一定時間後の電波強度L2よりも大きく、L1>L2の関係が成り立つ場合には、図2(3)に示すように、右側から左側方向への移動方向(B)、つまり、退場時における移動方向であると認識して(ステップA14)、退場処理の実行を指示する(ステップA15)。その後、最初のステップA1に戻り、次の非接触ICカード10がICカードリーダ6に近付いて来るまで待機状態となる。
以上のように、第1実施形態においてCPU1は、電波強度検出部8から逐次取得した電波強度を示す一連のデータのうち、電磁波減衰シート9による影響を受けているデータ部分を参照することにより、アンテナ7に対する非接触ICカード10の動きを認識し、この非接触ICカード10の動きに応じて所定の処理を実行させるようにしたので、非接触ICカード10とアンテナ7との距離関係やアンテナ7の設置状態に拘わらず、アンテナ7に対する非接触ICカード10の動きに応じて所定の処理を適切に実行させることができ、実用性に富んだものとなる。
電磁波減衰シート9は、非接触ICカード10の移動方向に応じてアンテナ7の一部分に設けられた電波強度を変化させるための物質であり、CPU1は、逐次取得した電波強度を示す一連のデータのうち、電磁波減衰シート9による影響を受けているデータ部分とそれ以外のデータ部分との位置関係に応じてアンテナ7に対する非接触ICカード10の移動方向を認識するようにしたので、図2(2)に示すように左側から右側方向への入場時の移動方向(A)と、図2(3)に示すように右側から左側方向への退場時の移動方向(B)を容易かつ適切に認識することができる。
アンテナ7は、平面ループアンテナであり、電磁波減衰シート9を平面ループアンテナ7の一部分に取り付けるようにしたので、例えば、点状や線状のアンテナに比べて非接触ICカード10の移動方向を適切に認識することができる。
CPU1は、認識した非接触ICカード10の移動方向に応じて所定の入出管理処理(入場処理、退場処理)を実行させるようにしたので、利用者にあっては別途のキーボードから操作を行う必要がなく、自動改札装置の上面部(ICカードリーダの対応部分)にかざしながら又は滑らせながら入場したり、退場したりすればよく、ユーザの負担を軽減することができる。
なお、上述した第1実施形態においては、アンテナ7の左半分の領域に電磁波減衰シート9を取り付けるようにしたが、これに限らず、アンテナ7の右半分の領域に電磁波減衰シート9を取り付けるようにしてもよく、また、アンテナ7の半分領域に限らず、1/3、1/4の領域など、電磁波減衰シート9を取り付ける広さも任意である。
上述した第1実施形態においては、アンテナ7を平面ループアンテナとしたが、例えば、一部分に電磁波減衰シート9を取り付けた棒状アンテナや線状のアンテナであってもよい。この場合、棒状アンテナや線状のアンテナの長さ方向が利用者の進行方向に沿うように、そのアンテナを配置するようにすればよい。
上述した第1実施形態においてCPU1は、逐次取得した電波強度を示す一連のデータの中からピーク点を検出すると共に、このピーク点を基準として一定時間前の電波強度L1と、一定時間後の電波強度L2をそれぞれ検出してそれらの大小を比較することにより非接触ICカード10の移動方向を認識するようにしたが、ピーク点の前後の電波強度の変化度合いを算出し、変化の大きい方を電磁波減衰シート9による影響を受けている側であると判断するようにしてもよい。また、非接触ICカード10の移動方向に応じて変化する電波強度の変化パターンを予め実測しておいた標準パターンとして用意しておき、実際の利用時に検出した電波強度の変化パターンと上述の標準パターンとを比較するパターンマッチングにより非接触ICカード10の移動方向を認識するようにしてもよい。
また、上述した第1実施形態においては、非接触ICカード(交通カード)10を使用する自動改札装置に適用した場合を例示したが、会社、劇場、映画館などの施設への入出管理装置に適用するようにしてもよい。
上述した第1実施形態においては、非接触ICカード10の移動方向を認識することにより入出管理処理(入場処理、退場処理)の実行を指示するようにしたが、非接触ICカード10の移動方向に応じた処理としては、入出管理処理に限らず、非接触ICカード10の移動方向に応じて所定の情報(文字、コマンド)を入力する情報入力処理の実行を指示するようにしてもよい。このように非接触ICカード10の移動方向に応じて所定の情報を入力可能とすれば、利用者にあっては別途のキーボードから操作を行う必要はなく、非接触ICカード10を所持して移動するだけで所定の情報を入力することができ、さらに利便性の向上を期待することができる。
(第2実施形態)
以下、この発明の第2実施形態について図5〜図8を参照して説明する。
なお、上述した第1実施形態においては、非接触ICカード10の1次元的な動き(移動方向)を認識して入出管理処理(入場処理、退場処理)の実行を指示するようにした自動改札装置に適用した場合を示したが、この第2実施形態においては、通信端末装置として、ハンディターミナル(データ収集端末)に適用した場合を示したもので、非接触ICカード10の2次元的な動きを認識し、この2次元的な動きに応じて所定の情報(文字、コマンド)を入力する情報入力処理を実行するようにしたものである。なお、両実施形態において基本的あるいは名称的に同一のものは、同一符号を付して示し、その説明を省略すると共に、以下、第2実施形態の特徴部分を中心に説明するものとする。
ハンディターミナルは、例えば、スケジュール機能、在庫管理機能などの各種のアプリケーションを有し、図示省略するが、その基本構成は、自動改札装置と同様に、CPU1を中核として動作するもので、CPU1、記憶部2、RAM3、表示部4、入力部5、ICカードリーダ6、アンテナ7、電波強度検出部8を有し、CPU1は、電源部(図示省略)からの電力供給によって動作し、記憶部2内の各種のプログラムに応じてこのハンディターミナルの全体動作を制御する。さらにアンテナ7には2枚の電磁波減衰シート9A、9Bが取り付けられている。
図5は、第2実施形態においてアンテナ7の一部分に電磁波減衰シート9A、9Bを取り付けた状態を示した図である。
アンテナ7は、第1実施形態と同様に、同一平面上に配置されていて全体が矩形枠(長方形枠)に設けられた平面ループアンテナで、このアンテナ7上には、電波強度の変化量(電波減衰レベル)がそれぞれ異なる複数枚(2枚)の電磁波減衰シート9A、9Bがそれらの一部分を重ね合わせた状態で取り付けられている。なお、電磁波減衰シート9A、9Bは、第1実施形態と同様に、シート全体の減衰率は均一となっているが、電磁波減衰シート9Aの減衰率と電磁波減衰シート9Bの減衰率とはそれぞれ異なっている。
この場合、図中、アンテナ7の略右半分の領域には、電磁波減衰シート9Aが取り付けられ、また、アンテナ7の略上半分の領域には、電磁波減衰シート9Bが取り付けられている。そして、電磁波減衰シート9Aの略上半分の領域と電磁波減衰シート9Bの略右半分の領域とは、重ね合わせられた状態で取り付けられている。このようにアンテナ7に2枚の電磁波減衰シート9A、9Bを取り付けることによりアンテナ7は、電波感度の異なる4つの領域に区分されることになる。
電磁波減衰シート9A、9Bは、第1実施形態で説明したようにアンテナ7が感知する電波強度を変化(減衰)させるためのもので、電波の一部を反射する反射型又は吸収する吸収型の電磁波減衰シートである。この場合、電磁波減衰シート9Aの減衰レベルと電磁波減衰シート9Bの減衰レベルがA<Bの関係にあるものとすると、アンテナ7上の4つの領域を領域No.“0”〜“3”で示すと、各領域に対応する電波強度の減衰レベルは、“No.0”<“No.1”<“No.2”<“No.3”の関係となる。すなわち、領域No.“0”の領域は、電磁波減衰シート9A、9Bが取り付けられていない部分(非シート部分)で、電波強度減衰が無しの領域となっている。領域No.“1”の領域は、電磁波減衰シート9Aが取り付けられている部分(シート部分)で、電波強度減衰が弱の領域となっている。領域No.“2”の領域は、電磁波減衰シート9Bが取り付けられている部分(シート部分)で、電波強度減衰が中の領域となっている。領域No.“3”の領域は、電磁波減衰シート9Aと電磁波減衰シート9Bが重なり合った部分(シート重合部分)で、電波強度減衰が強の領域となっている。
このように電波感度の異なる4つの領域にアンテナ7を区分することによりアンテナ7上での非接触ICカード10の動きを認識することができる。CPU1は、非接触ICカード10の2次元的な動きに応じて所定の情報(例えば、文字、数字、コマンド)を入力する情報入力処理の実行を指示するようにしている。すなわち、アンテナ7上での非接触ICカード10の2次元的な動きを、情報を入力するための入力操作としているが、利用者は、アンテナ7が取り付けられているハンディターミナルの上面部側に非接触ICカード10をかざしながら又は滑らせながら非接触ICカード10を2次元的に動かすようにしている。
図6は、第2実施形態においてアンテナ7上での非接触ICカード10の2次元的な動きに応じて、どのような情報が入力されるのかを説明するための図である。
「動きパターン」は、非接触ICカード10の2次元的な動き(移動軌跡)の種類を示し、4つの領域のうち、いずれか2つの領域を通る直線的な動きに応じて12種類の動きパターン(1)〜(12)に分かれている。すなわち、4種類の横方向の動きと、4種類の縦方向の動きと、4種類の斜め方向の動きに分かれている。例えば、動きパターン(1)は、領域No.“0”から領域No.“1”の領域への横方向(図中、左から右)の動き(移動軌跡)を示している。動きパターン(2)は、領域No.“0”から領域No.“2”の領域への縦方向(図中、下から上)の動きを示し、…、動きパターン(12)は、領域No.“3”から領域No.“0”の領域への斜め方向(図中、右上から左下)の動きを示している。
「電波強度変化パターン」は、非接触ICカード10の2次元的な動きに応じた電波強度の時間的な推移を示し、4つの領域のうち、いずれか2つの領域を通る直線的な動きに応じて電波強度が2段階に変化するパターンである。ここで、アンテナ7上の4つの領域に対応した電波強度レベルは、“No.0”>“No.1”>“No.2”>“No.3”の関係となっている。例えば、動きパターン(1)に対応する「電波強度」は、電波強度が最も高いレベルから2番目に高いレベルの2段階に推移する波形となっている。また、動きパターン(2)に対応する「電波強度変化パターン」は、電波強度が最も高いレベルから3番目に高いレベルの2段階に推移する波形となり、…、動きパターン(12)に対応する「電波強度変化パターン」は、電波強度が最も低いレベルから最も高いレベルの2段階に推移する波形となっている。
「入力情報」は、非接触ICカード10の2次元的な動きに応じてどのような情報が入力されるかを示したものである。すなわち、非接触ICカード10の2次元的な動きに応じた入力情報として「大文字のアルファベット文字」が入力される場合、「大文字/小文字のアルファベット文字」が入力される場合、「数値」が入力される場合、「コマンド」が入力される場合のうち、どのような情報を入力情報とするかは、予めユーザ操作により任意に選択可能となっている。
例えば、入力情報として「大文字のアルファベット文字」が選択されている場合には、動きパターン(1)〜(12)に対応して文字“A”〜“L”が入力され、「大文字/小文字のアルファベット文字」が選択されている場合には、動きパターン(1)〜(12)に対応して文字“a”〜“d”、“A”〜“D”、“e”、“f”、“E”、“F”が入力される。また、入力情報として「数値」が選択されている場合には、動きパターン(1)〜(12)に対応して“1”〜“12”が入力され、「コマンド」が選択されている場合には、動きパターン(1)〜(12)に対応してコマンド“Start”、“Up”、“End”、…“Cancel”が入力される。
図7は、第2実施形態において情報の入力開始を指示する指示操作に応答して実行開始される情報入力処理を示したフローチャートである。なお、図7は、ハンディターミナルの全体動作のうち、本実施形態の特徴部分の動作概要を示したフローチャートであり、この図7のフローから抜けた際には、全体動作のメインフロー(図示省略)に戻る。
先ず、CPU1は、情報の入力開始が指示されてからの経過時間を計測する入力時間タイマ(図示省略)の計測動作を開始させた後(ステップB1)、電波強度検出部8からの検出結果に基づいて非接触ICカード10を認識することができたか、つまり、非接触ICカード10がICカードリーダ6に近付いて来たかを判別する(ステップB2)。ここで、非接触ICカード10を認識することができなければ(ステップB2でNO)、上述の入力時間タイマがタイムアウトになったかを調べ(ステップB3)、タイムアウトとなっても非接触ICカード10を認識することができなかったときには(ステップB3でYES)、図7のフローの終了となる。
また、タイムアウトになる前に非接触ICカード10を認識することができたときには(ステップB2でYES)、電波強度検出部8から電波強度を逐次取得して(ステップB4)、一定時間(サンプリング時間)毎に電波強度データとしてRAM3内に一時記憶させる(ステップB5)。そして、非接触ICカード10内のカード情報をICカードリーダ6から取得した後(ステップB6)、電波強度検出部8からの検出結果に基づいて非接触ICカード10を認識することができなくなったか、つまり、非接触ICカード10がICカードリーダ6から遠ざかったかを判別する(ステップB7)。そして、非接触ICカード10が遠ざかるまで、上述のステップB4に戻り、電波強度を逐次取得してRAM3内に一時記憶させる動作を繰り返す。
いま、非接触ICカード10がICカードリーダ6から遠ざかり、それを認識することができなくなったときには(ステップB7でNO)、情報を入力する操作が終わったものと判断してステップB8に移り、RAM3内のカード情報に基づいて、文字入力用のICカードであるか、コマンド入力用のICカードであるかを調べる(ステップB9)。なお、この第2実施形態において非接触ICカード10には、文字入力用かコマンド入力用かを示すカード情報が記憶されている。なお、文字入力用のICカードとは、図6の「大文字のアルファベット文字」、「大文字/小文字のアルファベット文字」、「数値」のいずれかを入力する非接触ICカード10である。ここで、非接触ICカード10が文字入力用のICカードであれば(ステップB8でYES)、非接触ICカード10の2次元的な動きに応じたパターンを判定するパターン判定処理の実行に移る(ステップB10)。
図8は、パターン判定処理(図7のステップB10)を詳述するためのフローチャートである。
先ず、RAM3から電波強度を示す一連のデータを読み出して(ステップC1)、それを解析することにより2段階の電波強度であるか、つまり、アンテナ7上における4つの領域のうち、いずれか2つの領域を通る直線的な動きに応じて変化する電波強度であるかを調べ(ステップC2)、2段階の電波強度であれば(ステップC2でYES)、情報入力用としての非接触ICカード10の正規な動きであると判断してステップC3に移り、12種類の動きパターンのうち、どの種類の動きパターンであるかを判定して、該当するパターンの有無を調べ、該当するパターンが無ければ(ステップC3でNO)、図8のフローの終了となるが、該当するパターンがあれば(ステップC3でYES)、そのパターンNo.を取得する(ステップC4)。
なお、2段階の電波強度でない場合(ステップC2でNO)又は該当するパターンを判定することができなかった場合には(ステップC3でNO)、予め実測して記憶させておいた標準パターンを読み出し(ステップC5)、今回の情報入力時に検出された電波強度の変化パターンと上述の標準パターンとを比較するパターンマッチングを行うことにより、12種類のパターンのうち、どの種類のパターンに近似しているかを判定し(ステップC6)、該当するパターンNo.を取得する(ステップC4)。なお、どのような標準パターンにも近似していなければ(ステップC6でNO)、図8のフローの終了となる。
このようなパターン判定処理(図7のステップB10)が終了すると、所定のアプリケーション(例えば、スケジュール機能、在庫管理機能など)に対して文字入力処理の実行を指示し、上述の判定処理により取得したパターンNo.対応の文字データを読み出して(ステップB11)、上述の所定のアプリケーションに入力文字として送る(ステップB12)。例えば、入力情報として「大文字のアルファベット文字」が選択されている場合には、動きパターン(1)〜(12)に対応して文字“A”〜“L”が入力文字となり、「大文字/小文字のアルファベット文字」が選択されている場合には、動きパターン(1)〜(12)に対応して文字“a”〜“d”、“A”〜“D”、“e”、“f”、“E”、“F”が入力文字となり、「数値」が選択されている場合には、動きパターン(1)〜(12)に対応して“1”〜“12”が入力文字となる。そして、RAM3内に一時記憶させたデータを消去した後(ステップB13)、上述のステップB2に戻る。
一方、コマンド入力用のICカードであれば(ステップB9でYES)、非接触ICカード10の2次元的な動きに応じたパターンを判定するパターン判定処理を実行する(ステップB14)。この場合のパターン判定処理も図8のフローチャートに従って実行される。そして、所定のアプリケーション(例えば、スケジュール機能、在庫管理機能など)に対してコマンド入力処理の実行を指示し、上述の判定処理により取得したパターンNo.対応のコマンドを読み出して(ステップB15)、上述の所定のアプリケーションに入力コマンドとして送る(ステップB16)。
この場合、動きパターン(1)〜(12)に対応してコマンド“Start”、“Up”、“End”、…“Cancel”が入力コマンドとなる。そして、RAM3内に一時記憶させたデータを消去した後(ステップB13)、上述のステップB2に戻る。なお、認識した非接触ICカード10が文字入力用のICカードではなく(ステップB8でNO)、しかもコマンド入力用のICカードでもなければ(ステップB9でNO)、文字入力処理やコマンド入力処理を実行させる場合でないので、RAM3内に一時記憶させたデータを消去した後(ステップB13)、上述のステップB2に戻る。
以上のように、第2実施形態においては、電波強度の変化量(電波減衰レベル)がそれぞれ異なる複数枚の電磁波減衰シート9A、9Bでアンテナ(平面ループアンテナ)7をマトリックス状に複数の領域に区分することにより、アンテナ7の領域毎に電波感度が異なるようにしたので、このアンテナ7に対する非接触ICカード10の2次元的な動きを適切に認識することができ、アンテナ7に対する非接触ICカード10の動きに応じて所定の処理を適切に実行することができる。
電波強度の変化量(電波減衰レベル)がそれぞれ異なる複数枚(2枚)の電磁波減衰シート9A、9Bがそれらの一部分を重ね合わせた状態でアンテナ(平面ループアンテナ)7に取り付けるようにしたので、2枚の電磁波減衰シート9A、9Bを使用するだけで、電波感度がそれぞれ異なるマトリックス状の複数の領域に簡単に区分することができ、その製造も容易なものとなる。
アンテナ7に対する非接触ICカード10の2次元的な動きに応じて所定の情報(文字、コマンド)を入力する情報入力処理の実行を指示するようにしたから、アンテナ7に対して非接触ICカード10を動かすだけで、その動きに応じて所定の情報(文字、コマンド)を入力することができ、利便性の高いものとなる。
認識した非接触ICカード10が文字入力用のICカードであることを条件に、文字入力処理の実行を指示し、コマンド入力用のICカードであることを条件に、コマンド入力処理の実行を指示するようにしたので、特別なキー操作を行わなくても、非接触ICカード10の種類に応じた処理を実行することができる。
なお、上述した第2実施形態においては、アンテナ7を4つの領域に区分するようにしたが、これに限らず、例えば、3×3の9つの領域に区分したり、4×4の16の領域に区分したりするようにしてもよい。このように区分数を多くすると、それに応じて入力対象の情報数も多くすることができる。
上述した第2実施形態においては、アルファベット文字を入力するようにしたが、片仮名、平仮名、漢字などの文字を入力するようにしてもよい。また、上述した第2実施形態においては、非接触ICカード10の1回の動きで1文字を入力する場合を例示したが、これに限らず、非接触ICカード10の1回の動きで名前、住所、パスワードなどの文字列を入力するようにしてもよい。
(第3実施形態)
以下、この発明の第3実施形態について図9及び図10を参照して説明する。
なお、上述した第2実施形態においては、ハンディターミナルにおいて、非接触ICカード10の2次元的な動き(移動軌跡)の種類として、2つの領域を通る直線的な動きに応じて12種類のパターン(1)〜(12)を示したが、この第3実施形態においては、例えば、3つの領域を跨る動きや4つの領域を跨る動きなど、各領域間を自由に動きながら情報を連続的に入力できるようにしたハンディターミナルに適用したものである。
図9(1)は、第3実施形態において、アンテナ7の一部分に電磁波減衰シート9A、9Bを取り付けた状態を示すと共に、アンテナ7に対する非接触ICカード10の動きを示した図である。アンテナ7は、第2実施形態と同様に、平面ループアンテナであるが、このアンテナ7上に、電波強度の変化量(電波減衰レベル)がそれぞれ異なる複数枚(2枚)の電磁波減衰シート9A、9Bがそれらの一部分を重ね合わせて取り付けることにより、アンテナ7は、電波感度が異なる4つの領域に区分されている。
図9(2)は、アンテナ7に対する非接触ICカード10の2次元的な動きとして、2つの領域に跨って移行された場合の電波強度変化パターンを示した図で、アンテナ7上のどの領域からどの領域に移行されたかの移行箇所の前後における電波強度変化パターンを示している。ここで、移行箇所とは、電波強度が変化(減少又は増加)している箇所を示している。図示のようにマトリックス状の表内において、その縦方向には領域No.“0”〜“3”が配置され、また、横方向にも領域No.“0”〜“3”が配置されている。また、図示の横方向の破線は、アンテナ7上の4つの領域に対応した電波強度レベルを示し、各電波強度レベルは、“No.0”>“No.1”>“No.2”>“No.3”の関係となっている。また、図示の横方向の実線は、ICカードリーダ6の周囲に非接触ICカード10が存在していない状態での電波強度レベルを示している。
そして、縦方向の領域は、移行前の領域、横方向の移行後の領域を示している。例えば、領域No.“0”の領域から領域No.“3”の領域に移行させた場合の電波強度変化パターンは、図中、右上角部(縦“0”と横“3”の交差部)のパターンとなり、最も強い電波強度から最も弱い電波強度に変化するパターンとなる。続けて、領域No.“3”の領域から領域No.“2”の領域させた場合の電波強度変化パターンは、縦“3”と横“2”の交差部のパターンとなる。また、領域No.“2”の領域から領域No.“1”の領域させた場合の電波強度変化パターンは、縦“2”と横“1”の交差部のパターンとなり、さらに領域No.“1”の領域から領域No.“3”の領域させた場合の電波強度変化パターンは、縦“1”と横“3”の交差部のパターンとなる。
このようにアンテナ7に対する非接触ICカード10の2次元的な動きとして、複数の領域を跨る動きが行われた場合に、CPU1は、アンテナ7上のどの領域からどの領域に移行されたかに応じて、移行箇所毎にその領域に関する情報を入力するようにしている。すなわち、移行箇所の前後における領域のうち、移行前の領域No.を入力情報としている。従って、上述したように、領域No.“0”、“3”、“2”、“1”、“3”のように複数の領域を跨る動きが行われた場合には、入力される情報は、領域No.“0、3、2、1、3”となる。
図10は、第3実施形態において情報の入力開始を指示する指示操作に応答して実行開始される情報入力処理を示したフローチャートである。なお、図10は、ハンディターミナルの全体動作のうち、本実施形態の特徴部分の動作概要を示したフローチャートであり、この図10のフローから抜けた際には、全体動作のメインフロー(図示省略)に戻る。
先ず、CPU1は、情報の入力開始が指示されてからの経過時間を計測する入力時間タイマ(図示省略)の計測動作を開始させた後(ステップD1)、電波強度検出部8からの検出結果に基づいて非接触ICカード10を認識することができたか、つまり、非接触ICカード10がICカードリーダ6に近付いて来たかを判別する(ステップD2)。ここで、非接触ICカード10を認識することができなければ(ステップD2でNO)、上述の入力時間タイマがタイムアウトになったかを調べ(ステップD3)、タイムアウトになっても非接触ICカード10を認識することができなかったときには(ステップD3でYES)、図10のフローの終了となる。
また、タイムアウトになる前に非接触ICカード10を認識することができた場合には(ステップD2でYES)、電波強度検出部8から電波強度を逐次取得して(ステップD4)、一定時間(サンプリング時間)毎に電波強度データとしてRAM3内に一時記憶させる(ステップD5)。そして、非接触ICカード10内のカード情報をICカードリーダ6から取得した後(ステップD6)、認識した非接触ICカード10は、文字入力用のICカードであるかを調べ(ステップD7)、文字入力用のICカードでなければ(ステップD7でNO)、図10のフローの終了となる。また、文字入力用のICカードであれば(ステップD7でYES)、電波強度検出部8からの検出結果に基づいて非接触ICカード10を認識することができなくなったか、つまり、非接触ICカード10がICカードリーダ6から遠ざかったかを判別する(ステップD8)。そして、非接触ICカード10が遠ざかるまで、上述のステップD4に戻り、電波強度を逐次取得してRAM3内に一時記憶させる動作を繰り返す。
いま、非接触ICカード10がICカードリーダ6から遠ざかり、それを認識することができなくなったときには(ステップD8でYES)、情報を入力する操作が終わったものと判断してステップD9に移り、RAM3から電波強度を示す一連のデータを読み出して、それを解析することにより、各移行箇所のうち、先頭の移行箇所を指定する。そして、指定した移行箇所の前後の電波強度は、図9(2)に示した表内のどの電波強度変化パターンに該当するかを判定し、その移行前の領域No.を取得する(ステップD10)。そして、所定のアプリケーション(例えば、スケジュール機能、在庫管理機能など)に対して文字入力処理の実行を指示し(ステップD11)、上述の判定処理により取得した移行前の領域No.を、上述の所定のアプリケーションに送る(ステップD12)。
そして、RAM3から読み出した電波強度を示す一連のデータの中に未指定の移行箇所(電波強度が変化している箇所)があるか、つまり、全ての移行箇所を指定し終わったかを調べ(ステップD13)、全ての移行箇所を指定し終わっていなければ(ステップD13でNO)、次の移行箇所を指定する(ステップD14)。その後、上述のステップD10に戻り、どの電波強度変化パターンに該当するかを判定し、以下、全ての移行箇所を指定し終わるまで上述の動作を繰り返すが、全ての移行箇所を指定し終わったときには(ステップD13でYES)、図10のフローの終了となる。
以上のように、第3実施形態においては、複数枚の電磁波減衰シート9A、9Bによりアンテナ7が領域毎に電波感度が異なるように区分されている状態において、CPU1は、アンテナ7に対する非接触ICカード10の2次元的な動きとして、アンテナ7上のどの領域からどの領域に移行されたかの移行箇所を認識し、移行箇所毎にその移行箇所の領域に関する情報を入力するようにしたので、例えば、ユーザにあっては、アンテナ7に対する非接触ICカード10の2次元的な動きとして、各領域間を自由に動かすことにより情報を連続的に入力させることができ、アンテナ7に対する非接触ICカード10の動きに応じて所定の処理を適切に実行することが可能となる。
なお、上述した第3実施形態においては、アンテナ7を4つの領域に区分するようにしたが、これに限らず、例えば、3×3の9つの領域に区分したり、4×4の16の領域に区分したりするようにしてもよい。このように区分数を多くすると、それに応じて入力対象の情報数も多くすることが可能となる。
上述した第3実施形態においては、アンテナ7を区分した領域No.を入力情報とするようにしたが、領域No.に対応する文字、コマンドのほか、名前、住所、パスワードなどの文字列を入力するようにしてもよい。また、領域No.の組み合わせに応じて、文字、コマンドのほか、文字列を入力するようにしてもよい。
また、第3実施形態においては、アンテナ7に対する非接触ICカード10の2次元的な動きとして、複数の領域を跨る複雑な動きを認識することができるが、その複雑な動き自体で本人認証を行うようにしてもよい。すなわち、予め登録されている電波強度の変化パターンと本人認証時に検出された電波強度の変化パターンとを比較することにより本人認証を行うようにしてもよい。
上述した各実施形態においては、アンテナ7が感知する電波強度を変化させるために、アンテナ7に電磁波減衰シート9を取り付けるようにしたが、アンテナ7が感知する電波強度を増幅させるために、アンテナ7に電磁波増幅シートを貼り付けるようにしてもよい。また、電磁波増幅シートと電磁波減衰シートを組み合わせるようにしてもよい。つまり、電波強度を変化(増幅、減衰)させるものであればよく、また、アンテナ7の所定の領域内を一律に減衰や増幅する場合に限らず、同じ領域内でも電波強度を変化させるようにしてもよい。また、電磁波減衰シートや電磁波増幅シートは、アンテナ7の一部に限らず、アンテナ7の全体に取り付けるようにしてもよい。この場合、アンテナ7の全体を複数の領域に区分し、領域毎に電波感度が異なるようにすればよい。また、シートに限らず、溶剤塗布によるコーティング、何らかの電波を発生する物質により電界を変化させる物質をアンテナ7に接近して設けるようにしてもよい。この場合もアンテナ7の全体をコーティングしたり、アンテナ7の全体を覆う空間に電界を発生させたりしてもよい。この場合、アンテナ7の全体を複数の領域に区分し、領域毎に電波感度が異なるようにすればよい。
上述した各実施形態においては、アンテナ7として平面ループアンテナを例示したが、ポール状など、その形状は問わず、また、複数のアンテナ7のいずれかに電波強度を変化させる物質を設けるようにしてもよい。また、非接触ICカード10に限らず、コイン型、ラベル型、スティック型のRFタグであってもよく、また、腕時計、携帯電話などにRFタグを埋め込んだものであってもよく、電波送信を行う無線ICデバイスであればよい。
また、上述した実施形態においては、通信端末装置として、自動改札装置やハンディターミナルに適用した場合を示したが、無線ICデバイスからアンテナを介して電波を受信する通信機能付きの携帯電話機・卓上電子計算機・腕時計・パーソナルコンピュータ・PDA・音楽プレイヤーなどに適用するようにしてもよい。
また、上述した実施形態においては、非接触ICカードが動く場合を例示したが、通信端末装置側が動く場合にも対応可能であり、勿論、非接触ICカードと通信端末装置の両方が動く場合であってもよい。
その他、上述した各実施形態において示した“装置”や“機”とは、機能別に複数の筐体に分離されていてもよく、単一の筐体に限らない。また、上述したフローチャートに記述した各ステップは、時系列的な処理に限らず、複数のステップを並列的に処理したり、別個独立して処理したりするようにしてもよい。