以下に添付図面を参照して、画像読取装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は、実施形態にかかる画像読取装置1の構成を示すブロック図である。また、図2は、画像読取装置1を構成する各部の配置の概要を示した配置図である。画像読取装置1は、凹凸読取部10、照射位置決定部12、照射位置変更部14、照射部20、受光部30、画像処理部40及び制御部50を有する。なお、画像読取装置1は、画像処理部40の機能を有する画像処理装置が独立して設けられる構成であってもよい。
凹凸読取部10は、読取りの対象物の表面凹凸を読取る。照射部20は、対象物に対して光を照射する。受光部30は、対象物によって反射された反射光を受光する。照射位置決定部12は、凹凸読取部10が読取った対象物の表面凹凸に応じて、照射部20が対象物に対して光を照射する照射位置を決定する。照射位置変更部14は、照射位置決定部12が決定した照射位置へ照射部20を移動させ、照射部20の照射位置を変更する。
画像処理部40は、受光部30が受光した反射光に応じて画像データを生成する。制御部50は、照射位置決定部12が決定した照射位置から照射部20が光を照射して、受光部30が反射光を受光するように制御する。
画像読取装置1は、例えば図2に示した移動方向Aに移動しつつ、支持台60に載置された対象物を走査して画像データを得るスキャナとして機能する。画像読取装置1が移動することに代えて、支持台60が移動するように構成されてもよい。また、画像読取装置1は、例えば図示しないPC(Personal computer)などが接続され、PCの制御に応じて動作し、画像データなどをPCに対して出力するように構成されてもよい。また、PCが画像処理部40の機能を有していてもよい。
次に、画像読取装置1を構成する各部の詳細について説明する。図3は、凹凸読取部10の短手方向の断面を示す断面図である。図3に示すように、凹凸読取部10は、レーザ光を発光するレーザ光発光部100と、対象物から反射されるレーザ光を受光するレーザ光受光部102とを有する。そして、凹凸読取部10は、対象物にレーザ光を走査しながら照射し、対象物からの反射光を受光する構成にされている。
レーザ光発光部100が発光(照射)するレーザ光は、例えば波長が685nmの赤色レーザ光である。レーザ光発光部100は、レーザ光が325mm×250mm(図3において左右方向)の領域を走査可能に構成されている。凹凸読取部10は、レーザ光発光部100による照射角度と、レーザ光受光部102が反射光を受光するまでの所要時間とを用いて対象物の高さ情報(対象物までの距離)を取得することにより、対象物の表面凹凸を読取る。例えば、凹凸読取部10は、表面方向の解像度(対象物の表面方向)が600dpi、高さ方向の分解能(深さ方向)が16bit(1ステップあたりの高さが20umに相当)として対象物の表面凹凸の読み取りを行う。
図4は、照射部20の短手方向の断面を示す断面図である。図4に示すように、照射部20は、例えば光源22及び拡散板24を有する。光源22は、例えば高演色性の蛍光灯又はLEDなどである。拡散板24は、対象物に照明ムラが発生することを防止するために設けられているが、設けられていなくてもよい。照射部20は、図4に示した破線矢印(円弧)のように対象物への光の照射角度を変更することができるように移動可能に支持されている。例えば、照射部20は、円弧上の移動可能域が鉛直方向に対して0〜80度の範囲で設定されており、不図示の駆動装置によって照射位置を変更することが可能にされている。
図5は、受光部30の短手方向の断面を示す断面図である。図5に示すように、受光部30は、例えば集光レンズ32、カラーフィルタ34及びラインCCD(ラインセンサ)36を有する。集光レンズ32は、照射部20が照射した光に対して対象物が反射した光を集光する。カラーフィルタ34は、対象物が反射した光の波長選択を行う。ラインCCD36は、波長選択された光を電気信号に変換する。つまり、受光部30は、集光レンズ32が集光した光に対し、カラーフィルタ34がレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の色成分に対応する波長選択を行い、各色成分の反射光量に応じた電気信号をラインCCD36が生成する構成となっている。
ここで、R、G、Bの色成分の波長域はそれぞれ、400〜500、500〜580、575〜700nmである。また、受光部30は、例えば表面方向の解像度が1800dpiにされ、RGB各色をそれぞれ16bitの分解能で反射光量に対応した電気信号に変換して出力する構成にされている。
照射位置決定部12は、まず、凹凸読取部10が読取りを行った対象物の高さ方向のデータを用いて、いわゆる算術平均粗さRaを算出する。この算術平均粗さRaは、JIS B0601に記載された計算方法により算出される。そして、照射位置決定部12は、図6に示した対照表を参照し、算出した算術平均粗さRaの平均値に応じて照射部20の照射位置を決定する。なお、照射位置決定部12は、対照表に代えて、関係式に応じて照射位置を決定するように構成されてもよい。
ここで、照射部20の照射位置とは、対象物からの照射部20の位置を示す角度(照射角度θ1)により表されるものとする。つまり、対象物から照射位置を指し示すベクトルと、対象物を配置している支持台60の法線ベクトルとのなす角を、照射位置を示す角度とみなしている。図7は、照射位置を指し示すベクトルと支持台60の法線ベクトル、及び照射位置を示す角度θ1との関係を示す図である。このように、照射角度θ1により、照射光が対象物に対してどの角度から照射されているが表されている。
照射位置変更部14は、照射部20に連結された回転駆動装置などにより構成される。そして、照射位置変更部14は、照射位置決定部12が決定した照射位置(照射角度:θ1の位置)へ照射部20を移動させて、照射部20による照射位置の変更を行う。
画像処理部40は、受光部30が受光した電気信号を受けて画像データの生成を行う。例えば、画像処理部40は、受光部30から受入れた電気信号に応じて、RGB各色成分に対する16bitのデータ値を画像データとする。また、画像処理部40は、画像データを汎用形式であるTIFFデータにしてファイル出力を行うようにされている。
制御部50は、図1に示すように、凹凸読取部10、照射位置決定部12及び照射位置変更部14を順に動作させ、照射位置変更部14が変更した照射位置から照射部20が照射する光の反射光を受光部30が受光するように制御を行う。
つまり、画像読取装置1は、支持台60上に対象物を載置した状態で、凹凸読取部10、照射部20及び受光部30が対象物の上方を支持台60に対して平行移動して走査する構成にされている(図2参照)。このように、凹凸読取部10は、対象物の表面凹凸の読取りを対象物の全表面について行うことになる。また、照射部20及び受光部30は、互いに相対的な位置関係を固定した状態で(一体の状態で)対象物の上方を平行移動して走査する。これにより、画像読取装置1は、対象物表面からの反射光を対象物表面の全面に亘って得ることができ、対象物表面の全面の画像データを得ることができるようになる。
従来は、対象物表面を実際にスキャンして採取した画像データを確認するまでは、対象物の表面凹凸が再現された画像データとなっているか否かが判別しないといった問題があった。こうした、実際にスキャンしないと対象物の表面凹凸が再現された画像データであるか否かが判別しない理由は、対象物の表面凹凸の状態によってそれに適したスキャン条件(照射位置条件など)が異なるためであった。
これに対して、画像読取装置1は、対象物をスキャンして画像データを得る前に、始めに凹凸読取部10によって対象物の表面凹凸を読取る構成になっている。照射位置決定部12は、その後に、凹凸読取部10からの読取り結果を受けて、対象物のスキャンを行う際に対象物の表面凹凸が再現された画像データが採取できるように照射部20の照射位置を決定する。そして、照射位置変更部14は、照射位置決定部12によって決定された照射位置を受けて、照射部20の照射位置を変更する。画像読取装置1は、照射位置変更部14が照射部20の照射位置を変更した後に、従来技術と同様に対象物表面をスキャンし画像データをファイル出力する。
このように、画像読取装置1は、対象物表面をスキャンする前に、対象物の表面凹凸を読取り、適切な位置に照射位置を設定する構成になっているため、従来装置にように、照射位置などのスキャン条件の変更と対象物のスキャンとを何度も繰り返して、対象物の表面凹凸が再現されるようなスキャン条件を見出すといった面倒な作業を使用者が強いられるようなことがなくなる。
スキャンによって採取した画像データにおいて、対象物の表面凹凸が良好に再現された画像データとなっているか否かが、照射条件によって変化してしまうといった現象については、次のように考えることができる。実物の対象物(対象物そのもの)を見ることができる場合には、観察者は、対象物自体を動かしてみたり、照射位置を変更したりすることで、対象物の表面状態に関して多くの情報を得ることができると考えられる。つまり、さまざまな照明状態での対象物を観察することで、対象物の表面凹凸を認識している状態にある。このとき特に、対象物の凹凸に起因して対象物の表面に発生する陰影を通じて、対象物の表面凹凸を知覚することができると考えている。
一方で、スキャン画像などの2次元画像データでは、スキャンを行った際のスキャン条件での反射光が対象物の表面凹凸に関する唯一の情報となる。(単一の照射条件のみが画像データには反映される。)このときに、対象物の凹凸に起因する陰影が画像データにうまく反映されていないと、対象物の表面凹凸が再現されていない2次元画像データとなってしまう。2次元画像データにおいて対象物の表面凹凸を反映させた画像データを得ることは容易なことではないため、2次元画像データにおいて表面凹凸に関する情報が失われてしまうといった問題がしばしば発生する。このため、照射位置を工夫して対象物の凹凸に起因する陰影を発生させた状態で2次元画像データを採取することが、対象物のスキャンを行う際に必要となるのである。
画像読取装置1は、このような点を鑑みてなされたものであり、対象物表面をスキャンする前に、対象物の表面凹凸を読み取り、適切な位置に照射位置を設定する構成になっている。従って、スキャン条件の変更と対象物のスキャンとを何度も繰り返して適切なスキャン条件を見出すといった従来装置では回避することができなかった煩わしい問題を解決し、1度のスキャンのみで対象物の表面凹凸が再現された画像データを採取することができるようになる。
画像読取装置1は、対象物の表面凹凸を読取る凹凸読取部10が、レーザタイプの表面凹凸読取り装置である。レーザタイプの表面凹凸読取り装置では、レーザ光を象物に照射することで発生する対象物からの反射光の情報から、対象物の表面凹凸の算出を行う。このレーザタイプの凹凸読取部10は、光を利用した方法であるため対象物の表面凹凸の算出を非接触で行うことができる。これにより、対象物の表面凹凸の際に、対象物の表面を変質・変形・破壊してしまう恐れがない。画像読取装置1は、表面凹凸の読取りの後に対象物のスキャン画像を採取するため、対象物の表面への接触による変形や汚れといった問題は許容できるものではなく、このレーザ式は画像読取に好適な表面凹凸の読取り方法である。
このように、凹凸読取部10によって、非接触の読取り方式で対象物表面の表面凹凸の読取りを実現することができる。さらに、凹凸読取部10は、高精度で高速に表面凹凸を読取ることが可能である。つまり、画像読取装置1は、対象物などの変形などの恐れがなく、高精度かつ短時間で対象物の表面凹凸を再現した画像データの採取を可能とするスキャナ装置を実現することができる。
(第1の変形例)
画像読取装置1の第1の変形例においては、照射位置決定部12は、算術平均粗さRaの平均値に基づいて照射部20の照射位置を決定するのではなく、後述の計算手順によって算出する平均傾斜角度に基づいて照射部20の照射位置を決定する。
まず、凹凸読取部10が読取った対象物の表面凹凸をf(x,y)と表すことにする。ただし、x,yは、対象物の表面の位置を表すx,y座標の値であり、f(x,y)は対象物の高さに対応している。対象物の表面凹凸をこのようにf(x,y)によって表現すると、位置(x,y)における対象物表面の法線ベクトルn(=n(x,y))は下式1のように示される。
対象物の表面凹凸を表すf(x,y)は離散的な値であるため、実際には下式2のように計算を行う。なお、f(x,y)は、解像度600dpiで読取った離散的な値である。
ここで、Δx、Δyは、表面凹凸データにおける、x方向及びy方向のデータ間隔を意味する。例えば解像度600dpiで表面凹凸を読取る場合、Δx=Δy=42.3μmである。
次に、照射位置決定部12は、下式3に示すように、この法線ベクトルnについて、対象物のスキャン領域に亘って平均をとった後に単位ベクトル化することにより、平均法線ベクトルnaveを算出する。ここで、照射位置決定部12は、対象物の表面の位置を表すx,yについて、スキャン領域に含まれるすべてのx,yの平均をとる。
次に、照射位置決定部12は、対象物の各場所における傾斜角度θ(x,y)(単位:deg.)を下式4により算出する。(演算・はベクトルの内積を表す。)
さらに、照射位置決定部12は、この傾斜角度θ(x,y)を対象物のスキャン領域に亘って平均をとることにより、下式5に示すように平均傾斜角度θaveを算出する。
また、照射位置は、上述したように照射角度θ1を用いて表される(図7参照)。照射位置決定部12は、上述した平均傾斜角度θaveと、照射角度θ1との関係が下式6の条件式を満たすように照射位置を決定する。
画像読取装置1は、照射部20の照射条件をこのように設定することにより、対象物の表面凹凸に応じた陰影を発生させる。即ち、上式6は、対象物の表面に照射光が照射されない条件を反映したものとなっている。
また、下式7は、θ(x,y)を有する座標(x,y)で表される場所では、照射光が照射されない箇所に対応している。
これは、対象物の表面の傾斜が大きく、照射光が照射されない程度に表面が傾いているために、影となって対象物の表面に照射光が照射されないことに対応している。このように、照射光が照射されない部分を対象物表面に形成することにより、対象物表面に表面凹凸に起因した陰影を形成することができる。上式6は上式7のθ(x,y)をθave(x,y)に置き換えたものであるが、上式6を満たすことにより、対象物表面の多くの部分に陰影が形成される。上式6に示した状態は、傾斜角度の平均値が用いられているため、およそ半分の領域に陰影が形成された状態であると考えられる。
第1の変形例では、照射位置決定部12は、実際には下式8によって照射角度(θ1)を算出する。
第1の変形例は、対象物表面の各場所における法線ベクトルnを算出し、またこの法線ベクトルを対象物のスキャン領域に亘って平均をとった平均法線ベクトルnaveを算出する。そして、第1の変形例は、法線ベクトルnと平均法線ベクトルとのなす角である傾斜角度θを対象物表面の各場所において算出し、この傾斜角度θについて対象物のスキャン領域に亘って平均をとった平均傾斜角度θaveを算出し、この平均傾斜角度θaveの値に応じて照射位置の変更を行う。なお、第1の変形例において、傾斜角度θについて対象物のスキャン領域に亘って平均をとることに代えて、最大値や最小値、又は部分的に重み付けを行った値を用いるように構成されてもよい。
第1の変形例は、対象物表面をスキャンする前に、対象物の表面凹凸を読み取り、適切な位置に照射位置を設定する構成になっているため、従来装置にように、照射位置などのスキャン条件の変更と対象物のスキャンとを何度も繰り返して、対象物の表面凹凸が再現されるようなスキャン条件を見出すといった面倒な作業を使用者が強いられるようなことがなくなる。
第1の変形例では、凹凸読取部10において、前述した計算手順によって平均傾斜角度θaveを算出し、この平均傾斜角度θaveに応じて照射位置の変更を行うようにしている。上述したように、2次元画像において対象物の表面凹凸を再現させるためには、表面凹凸の状態を反映した陰影を発生させた照射状態で2次元画像データの採取を行う必要がある。対象物の表面に発生する陰影に関係する表面凹凸の特性は、表面の傾きがどのようになっているかということが関係する。つまり、単に高さの大きな凸部や、高さの小さな凹部であるということは、対象物の表面に発生する陰影とは関係しない。凹凸が急激に発生している箇所、つまり対象物の表面の傾きが大きなところで陰影が発生しやすいといったことにつながる。
陰影が発生しないような対象物では、照射部20の照射位置を陰影が発生しやすいように低い位置から対象物表面を照射するようにして、反対に陰影が発生しやすいような対象物の場合には高い位置から対象物表面を照射するようにすることで、表面凹凸の再現がよい2次元画像データを採取することができるようになる。
このように、第1の変形例は、対象物の表面に発生する陰影と関係が大きい平均傾斜角度を算出して、この算出結果に基づいて照射位置の変更を行うことから、対象物表面に効果的に陰影を発生させた状態で、対象物表面のスキャンを行うことができるようになる。これにより、スキャン条件の変更と対象物のスキャンとを何度も繰り返して適切なスキャン条件を見出すといった従来装置では回避することができなかった煩わしい問題を解決し、1度のスキャンのみで対象物の表面凹凸が再現された画像データを採取することができるようになる。
さらに、第1の変形例においては、対象物の表面凹凸の状態に対応して照射位置を変更するといった構成になっているが、上述した6式が対象物の表面に凸部分の陰影が発生する条件となっていると考えている。このことは7式のように説明することができる。即ち、対象物の場所ごとに陰影が形成されるか否かの条件は7式によって示される。ここで、θ1は照射位置と平均法線ベクトルとのなす角、θは対象物表面の各位置での法線ベクトルである。これらの関係式を満足する状態では、対象物表面における傾斜角度θを持つ傾斜面には照射光が照射できない。このため、平均傾斜角度θaveで用いて表される6式は、対象物表面の多く(約半数)の部分に照射光が照射しておらず陰影が発生している状態に対応している。
第1の変形例では、6式の条件を満足する構成とすることにより、対象物表面の多くの領域において表面凹凸に起因する陰影が発生した状態で、対象物のスキャンを行うことができるため、表面凹凸を反映したスキャン画像を採取することができるようになる。これにより、スキャン条件の変更と対象物のスキャンとを何度も繰り返して適切なスキャン条件を見出すといった従来装置では回避することができなかった煩わしい問題を解決し、1度のスキャンのみで対象物の表面凹凸が再現された画像データを採取することができるようになる。
また、第1の変形例では、対象物表面の傾斜角度の算出が必要であるため高精度の表面凹凸の読取りが必要である。レーザ式の凹凸読取部10は、こうした要求にも適しており、高精度で対象物表面の表面凹凸の読み取りを実現することができる。
なお、第1の変形例において、照射位置決定部12は、表面凹凸における複数の異なる位置の法線ベクトルを用いて平均法線ベクトルを算出し、複数(例えば3つ以上)の法線ベクトルと平均法線ベクトルとがなす角である傾斜角度それぞれの平均傾斜角度を算出して、平均傾斜角度に応じて照射位置を決定するように構成されてもよい。
また、照射位置決定部12は、照射部20が光を照射する方向と鉛直方向とがなす角度が、90度から平均傾斜角度を差し引いた値以上の角度であるように構成されてもよい。
(第2の変形例)
画像読取装置1の第2の変形例においては、受光部30は、受光位置が変更可能にされている。図8は、第2の変形例における受光部30の短手方向の断面を示す断面図である。図8に示すように、第2の変形例における受光部30は、破線矢印(円弧)のように移動可能に支持されており、対象物からの反射光に対する受光角度が変更可能にされている。例えば、受光部30は、円弧上の移動可能域が鉛直方向に対して0〜70度の範囲で設定されており、不図示の駆動装置によって受光位置を変更することが可能にされている。
ここで、受光位置は、受光部30の受光角度φを用いて表すものとする。この受光角度φは、対象物から受光部30の位置を示した位置ベクトルと、対象物を配置する支持台60の法線ベクトルとのなす角によって表される。つまり受光角度φは、対象物からの反射光の中でどの角度へ反射した光を受光部30が受光しているかを表している。
画像読取装置1の第2の変形例においては、受光部30の受光位置を変更することにより、受光にともなう不具合が発生することなく対象物の表面をスキャンすることができる。ここでの受光にともなう不具合とは、照射角度(θ1:図7)と受光角度(φ:図8)とが同じになる場合などのように、照射光の正反射光が反射される位置に受光部30が配置されることを指す。即ち、受光部30が受光する反射光に正反射光が混入すると、正反射光が非常に大きな光量であるために、対象物のスキャンを行う際の感度調整が難しく、対象物の表面凹凸の再現された画像データを採取できないといった問題が発生する。画像読取装置1の第2の変形例においては、こうした不具合が発生しないように、照射位置が決定された後に受光位置を決定する。これにより、受光位置が照射光の正反射する位置にならないように、受光部30は配置される。
第2の変形例においても、対象物表面をスキャンする前に、対象物の表面凹凸を読み取り、適切な位置に照射位置を設定する構成になっているため、従来装置にように、照射位置などのスキャン条件の変更と対象物のスキャンとを何度も繰り返して、対象物の表面凹凸が再現されるようなスキャン画像を採取することが可能なとなるスキャン条件を見出すといった面倒な作業を使用者が強いられるようなことがなくなる。
また、第2の変形例においても、対象物の表面凹凸に応じて照射位置を変更するようにしてあるが、照射位置の変更により正反射光が反射される位置も変化してしまう。正反射光とは鏡面反射光とも呼ばれ、反射体(この場合は対象物)の表面におい入射角と反射角とが等しくなる反射によって生じる反射光のことである。正反射光は反射光量としては大きな光量を持つため、もしも正反射光が反射される位置に受光装置が配置されてしまうと、対象物のスキャン時に受光感度が設定しにくいといった問題がある。これは受光装置において感度調整を行うことなく受光可能な光量が実際の反射物からの反射される光量に対して非常に狭いレンジに対応しているためである。これにより適切なスキャン画像を採取することが困難となるといった問題を引き起こす。より具体的には、受光感度を正反射光に合わせた場合には正反射が発生しない領域では暗いスキャン画像となってしまい、反対に、受光感度を正反射が発生しない領域に合わせると今度は正反射発生領域が白く飛んでしまい、どちらの場合であって実物の対象物の表面凹凸を再現したスキャン画像とはなり得ないためである。
このような問題を鑑みて、第2の変形例では照射位置の変更とともに、受光装置の位置も変更可能となるように構成している。これにより、照射位置を変更した際には受光装置の位置も適切に配置することで、照射光の正反射光が受光装置に入らないように受光装置を配置することが可能となる。そして、正反射光が原因となって発生する受光感度の問題が発生することなく、正反射光の影響を受けずに受光感度を設定できるようになるため、対象物の表面凹凸の再現性にすぐれたスキャン画像を採取することができるようになる。
このように、第2の変形例では、照射光の正反射光を回避して対象物表面のスキャンを行うことができるようになる。これにより、正反射光が入った画像で問題となる受光感度の問題によって、対象物の表面凹凸が反映された画像データの採取が困難であるといった問題が発生することを防止することができるようになる。
(第3の変形例)
画像読取装置1の第3の変形例は、照射位置と対向する位置に反射板70を有する。ここで、照射位置と対向する位置とは、対象物表面が鏡面の場合に照射光の正反射光が反射される位置のことである。
図9は、第3の変形例における照射部20、受光部30及び反射板70の短手方向の断面を示す断面図である。図9に示すように、第3の変形例において、反射板70は、照射位置と対向する位置に配置されている。反射板70は、例えば白色の拡散板(光沢のない白色板)である。
照射位置と対向する位置に反射板70が配置されると、対象物に照射された照射光の中で対象物によって反射された光を、反射板70が反射させて対象物にふたたび照射する。従って、照射部20の反対側から光を対象物に照射させることができる。これにより、照射部20からの直接光では照射することが難しい箇所にも光を照射することができる。このため、対象物表面に形成される照射部20からの照射光によって形成される陰影の中にも、表面凹凸にともなう陰影を形成することができるようになり、対象物の表面凹凸をより認識することができるような画像データを得ることができるようになる。
また、第3の変形例においては、反射板70として、上述の白色の拡散板の他、反射率50%、反射率30%、反射率10%、反射率0%(黒色板)の白色板を交換して配置できるようにされている。画像読取装置1は、このように反射率の異なる反射板70を配置することが可能な構成とされているため、照射部20の反対側から対象物の表面を照射する光(反射板70で反射する光)の量をコントロールすることができる。これにより、対象物表面に発生する陰影を消失させてしまうことなく、照射部20からの直接光で発生させた陰影中でも表面の凹凸が認識できる程度の適度な光量で、照射部20とは反対側から対象物表面に光を当てることができ、陰影の部分においても表面凹凸に関する情報を認識できるようになるため、対象物の表面凹凸を再現した画像データの取得に貢献する。
第3の変形例においても、対象物表面をスキャンする前に、対象物の表面凹凸を読み取り、適切な位置に照射位置を設定する構成になっているため、従来装置にように、照射位置などのスキャン条件の変更と対象物のスキャンとを何度も繰り返して、対象物の表面凹凸が再現されるようなスキャン条件を見出すといった面倒な作業を使用者が強いられることがなくなる。
第3の変形例では、照射位置と対応する位置に反射板70などを配置する構成になっている。これにより、反射板70で反射された光が、照射位置とは反対側から対象物を照射することになる。なお、この反射板70で反射される光の経路は、照射部20→対象物→反射板70→対象物となっている。第3の変形例においても、対象物表面には表面凹凸に起因する陰影が形成される。すでに説明したように、この陰影により、対象物の表面凹凸を再現したスキャン画像を得ることが可能になる。しかしながら、対象物表面に形成される陰影部分には照射光がほとんど差し込まない。(完全に影となっている部分には照射光はほとんど届いていない)。このため、陰影部分では対象物の表面凹凸が認識できず、表面凹凸に関する細かな情報がほとんど認識できないといった問題がある。このような問題を解消するために、第3の変形例では、反射板70を照射位置とは対向する位置に配置して、反射板70による反射光をこの陰影部分へ照射することで、陰影部分でも表面凹凸が認識できるような光照射条件を実現している。
ただし、反射板70から(照射位置の対向する位置から)の光量が大きくなりすぎると、せっかく照射位置を工夫することで形成した対象物の表面凹凸に起因する陰影が消失してしまうため、反射板70からの光量は大きくなりすぎないことが重要である。反射板70の代わりに新たな照射部を配置することも考えられるが、新たな照射部を配置すると光量が大きくなりすぎるため、あえて反射板を使用して、光量が大きくなりすぎることを防止している。これにより、陰影を消失させることなく、かつ陰影部の表面凹凸が判別するような照明状態を実現し、対象物の表面凹凸がより再現されたスキャン画像の採取を実現している。
このように、第3の変形例では、対象物の表面凹凸の陰影部分においても、対象物の表面凹凸が判別するようなスキャン画像を採取することを実現する。これにより、対象物の表面凹凸をより良好に再現した画像データの採取を可能とするスキャナ装置を実現することができる。
(第4の変形例)
画像読取装置1の第4の変形例は、複数の反射板が設けられている。図10は、第4の変形例における照射部20、受光部30及び反射板72−1〜72−3の短手方向の断面を示す断面図である。反射板は、対象物と受光部30との間には配置することができない。第4の変形例においては、例えば図10に示すように、反射板72−1〜72−3が受光部30の前後(上下)に配置されている。
第4の変形例では、受光部30及び反射板72−1〜72−3は、例えば互いに連結されて構成され、移動可能にされている。このため、受光部30の受光位置の変更に連動して、反射板72−1〜72−3の位置も変更される。このように、第4の変形例では、対象物表面に発生する陰影を消失させてしまうことなく、照射部20からの直接光で発生させた陰影中でも表面の凹凸が認識できる程度の適度な光量で、照射部20とは反対側から対象物表面に光を当てることができるため、陰影の部分においても表面凹凸に関する情報を認識できるようになる。この結果、対象物の表面凹凸を再現した画像データの取得に貢献する。
第4の変形例においても、対象物表面をスキャンする前に、対象物の表面凹凸を読取り、適切な位置に照射位置を設定する構成になっているため、従来装置にように、照射位置などのスキャン条件の変更と対象物のスキャンとを何度も繰り返して、対象物の表面凹凸が再現されるようなスキャン条件を見出すといった面倒な作業を使用者が強いられることがなくなる。
上述したように、反射板から対象物へ向かう光量は大きすぎると、表面凹凸が再現されるように形成した陰影が消失してしまうといった問題がある。また反射板から対象物へ向かう光量が小さすぎると、陰影領域に光が差し込まないことになるため、この部分における表面凹凸を認識できないといった問題が発生する。第4の変形例は、こうした問題へ対応するために考案されたものである。第4の変形例では、反射率の異なる反射板72−1〜72−3の中からから適当なものを選択して使用する構成となっている。これにより、反射板から対象物に照射される光が大きすぎたり小さすぎたりすることがなくなり、適当な光量を対象物に照射することできるようになる。この結果、対象物の表面凹凸をよりよく反映したスキャン画像を採取することに貢献できるようになる(陰影を消失させることなく、陰影中の表面凹凸をも再現したスキャン画像の採取に貢献することができる。)。
このように、第4の変形例は、対象物の表面凹凸の陰影部分においても、対象物の表面凹凸が判別するようなスキャン画像を採取することを実現する。これにより、より対象物の表面凹凸を再現した画像データの採取を可能とするスキャナ装置を実現することができる。