以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
<実施の形態例1>
図1〜図9に基づき、本発明の実施の形態例1に係る圧力開放弁1について詳細に説明する。図1〜図3には圧力開放弁1の待機(閉止)時の状態を示し、図4〜図6には圧力開放弁1の作動(開放及び開放状態維持)時の状態を示し、図7〜図9には圧力開放弁1の復旧時の状態を示している。
まず、図1〜図3に基づき、本実施の形態例1の圧力開放弁1の構成について説明する。
圧力開放弁1は、弁箱2と、弁箱2の上に設置されたばね箱3と、ばね箱3の上に設置されたクサビ箱4(一般に帽子とも称される)とを有し、これらによって弁全体を覆う構成となっている。弁箱2とばね箱3はボルト5及びナット6によって結合され、ばね箱3とクサビ箱4はボルト7及びナット8によって結合されている。
弁棒11は、弁箱2内、ばね箱3内及びクサビ箱4内において中央部に位置し、これらの弁箱2からクサビ箱4に亘って上下方向(即ち鉛直方向)に延びている。弁箱2内に設けられた弁体12は、弁棒11の下端に固定されており、弁棒11とともに上下方向に移動することができる。
弁箱2の下面2cには流体入口2aが形成され、弁箱2の側面2dには流体出口2bが形成されている。弁箱2の流体入口2aは、内部に気体(例えば不活性ガス)を有する容器などの機器(図示せず)に接続された配管10に接続されている。なお、本発明の圧力開放弁1は、不活性ガスなどの気体の圧力を開放する場合に限定するものではなく、水などの液体の圧力を開放する場合にも適用することができ、且つ配管10を介さず、溶接又はフランジにより直接容器などの機器に接続することも可能である。
弁箱2内には、流体入口2aの周囲を囲むようにして弁座2eが形成されている。この弁座2eに弁体12の下面12aが当接(着座)すると、圧力開放弁1は閉止状態となる一方、弁体12の下面12aが弁座2eから離れると、圧力開放弁1は開放状態となる。
弁箱2の上面2fに形成された貫通穴2gには、円筒状の弁棒ガイド13が嵌挿されている。弁棒11は、この弁棒ガイド13に軸方向(即ち鉛直方向)へ移動可能に挿通されている。また、弁箱2内に設けられたベローズ14は、弁棒ガイド13及び弁棒11の周囲を囲み、上端が弁箱2の上面2fに接続され、下端が弁体12の上面12bに接続されている。このため、弁箱2内を流れる流体が弁棒ガイド13内を通ってばね箱3へ流出するのを、ベローズ14によって防ぐことができる。なお、本実施の形態例1は、このベローズ14の設置有無によらない。
ばね箱3内に設けられた弁体用ばね15は、コイル状のものである。ばね箱3内において、弁体用ばね15の上端には円環状のばね押え座16が設けられ、弁体用ばね15の下端には円環状のばね受け座17が設けられている。
ばね箱3内において、弁棒11の外周面には円板状のステップリング21が突設されている(弁棒11と一体に形成されている)。ステップリング21は、ばね受け座17の下側からばね受け座17を支持している。
一方、ばね箱3の上面3aには、調整ネジ18のためのネジ穴3bが形成されている。調整ネジ18は円筒状のものであり、外周面にネジ部18aが形成されている。調整ネジ18は、そのネジ部18aがネジ穴3bに螺合されてネジ穴3bに挿通されている。また、クサビ箱4内において、調整ネジ18の外周面(ネジ部)18aには調整ネジロックナット19が螺合されている。従って、調整ネジ18の位置は、調整ネジロックナット19によって固定される。また、ばね箱3内において、調整ネジ18はばね押え座16に回転可能に連結されている。
調整ネジ18は、弁体用ばね15の弾性力(ばね力)を調整することによって圧力開放弁1の設定圧力(吹き出し圧力)を調節するためのものである。調整ネジ18を一方向へ回転させると、調整ネジ18が下方へ移動してばね押え座16が押し下げられることにより、弁体用ばね15が縮んで弁体用ばね15の弾性力が大きくなるため、前記設定圧力が高くなる。調整ネジ18を他方向へ回転させると、調整ネジ18が上方へ移動してばね押え座16が上方へ移動することにより、弁体用ばね15が伸びて弁体用ばね15の弾性力が小さくなるため、前記設定圧力が低くなる。
ばね押え座16には回り止めピン20が突設されている。回り止めピン20は、ばね箱3に形成されたピン穴3cに挿通され、ばね箱3に係止される。このため、調整ネジ18を回転させたとき、ばね押え座16が調整ネジ18とともに回転するのを、回り止めピン20によって防止する機能を有している。
弁棒11は、調整ネジ18、ばね押え座16、弁体用ばね15及びばね受け座17に軸方向(即ち鉛直方向)へ移動可能に挿通されている。
弁棒11の外周面の上部には、ネジ部11aが形成されている。この弁棒11のネジ部11aには、下から上へ順に開放状態維持金具22(開放状態維持部材)と、開放状態維持金具ロックナット23と、揚弁金具24(揚弁部材)と、揚弁金具ロックナット25とが螺合されている。開放状態維持金具22の位置は開放状態維持金具ロックナット23によって固定され、揚弁金具24の位置は揚弁金具ロックナット25によって固定される。
また、クサビ箱4には、第1開放レバー26と、第2開放レバー27とが設けられている。
第1開放レバー26は水平に延びており、揚弁金具24の下側に配設されている。第1開放レバー26の先端部26aと、クサビ箱4の側面の一方側に形成された回動軸支持部4aには回動軸28が挿通されている。従って、第1開放レバー26は、回動軸28回りに上下に回動することができる。また、第1開放レバー26は、基端側が1本の棒状である一方、先端側が二股に分かれて第1レバー部26cと第2レバー部26dとになっており、こられの第1レバー部26cと第2レバー部26dがそれぞれ弁棒11の左右両側において揚弁金具24の下側に位置している。
第2開放レバー27はL字状に屈曲されており、第1開放レバー26の下側に配設されている。第2開放レバー27の先端部27aと、クサビ箱4の側面の他方側に形成された回動軸支持部4bには、回動軸29が挿通されている。従って、第2開放レバー26は、回動軸29回りに上下に回動することができる。また、第2開放レバー27の屈曲部27bは、第1開放レバー26の基端部26bの下側から当該基端部26bに当接している。
そして、本実施の形態例1の圧力開放弁1では、作動(開放)後の圧力開放弁1の開放状態を維持するためのクサビ31が、開放状態維持金具22の側方に配設されている。
クサビ31は、先端側の本体部31aと基端部31bとを有し、水平に配設されている。クサビ31の本体部31aは、側面視(図1,図3)における上下方向の厚さが一定になっている。また、クサビ31の本体部31aは、平面視(図2)がU字状になっている。即ち、クサビ31の本体部31aは、先端側が二股に分かれて第1支持部31cと第2支持部31dとになっている。
クサビ箱4の側面には、クサビ挿入用の開口4cが形成されている。クサビ挿入用の開口4cは、クサビサポート取付部材32によって塞がれている。クサビサポート取付部材32は断面がコの字状の部材であり、その開口側にフランジ部32aが形成されている。クサビサポート取付部材32のフランジ部32aと、クサビ挿入用開口4cのフランジ部4dは、ボルト43とナット34によって結合されている。
クサビ用ばね35はコイル状のものであり、クサビサポート取付部材32内においてクサビ31の基端部31bと、クサビサポート取付部材32の側面32bとの間に介設され、クサビ31を開放状態維持金具22に向かって水平方向に押圧している。
圧力開放弁1が閉止状態(待機状態)のとき、即ち弁体12が弁体用ばね15に押圧されて着座(弁座2eに当接)しているとき、クサビ31は、クサビ用ばね35に押圧されて、第1支持部31cと第2支持部31dが開放状態維持金具22の外周面22aに当接する。換言すると、弁棒11(ネジ部11a)に対する開放状態維持金具22の取り付け位置(螺合位置)を調節することによって、圧力開放弁1が閉止状態のときに開放状態維持金具22とクサビ31とが互いに当接するようにしている。
また、クサビ31は、二股の底面(第1支持部31cと第2支持部31dの間の面)31eが、弁棒11と対向している。
クサビ31の基端部31bには、クサビ引き出し金具33(クサビ引き出し部材)が設けられている。クサビ引き出し金具33は、クサビ31の基端部31bに水平に突設された軸部33aと、この軸部33aの先端に設けられた頭部33bとを有して成るものである。軸部33aはクサビサポート取付部材32の側面32bに形成された貫通穴32cに挿通されてクサビサポート取付部材32の外側へと延びており、頭部33bはクサビサポート取付部材32の外側に位置している。頭部33bはクサビ引き出し用治具42(図7〜図9を参照:詳細後述)に係合させるための部分である。
また、クサビ31の下側にはクサビサポート41(クサビ支持部材)が設けられている。クサビ31は、クサビサポート41の上に設置され、クサビ箱4のクサビ挿入用開口4cを通ってクサビ箱4内にまで水平に延びている。クサビサポート41はクサビ31の下側からクサビ31を支持するためのものであり、クサビサポート取付部材32内においてクサビサポート取付部材32の下面32dに設けられている。また、クサビサポート41はクサビ箱4のクサビ挿入用開口4cに挿通され、開放状態維持金具22に向かって水平に延びている。また、クサビサポート41は、先端側が二股に分かれて第1支持部41aと第2支持部41bとになっている。従って、クサビサポート41は、クサビ31を支持するだけでなく、圧力開放弁1が作動(開放)したときにクサビ31が水平方向に移動(詳細後述)するように案内するクサビガイド部材としての機能も有している。
また、クサビ箱4の側面には、クサビ箱の外からクサビ31を覗くための覗き窓36(図2)が設けられている。詳述すると、クサビ箱4の側面には覗き窓用の開口4eが形成されている。そして、透明な窓ガラス36(ガラスに限らず、透明な材質のものであればよい)を、覗き窓用の開口4eのフランジ部4fと押え板38とで挾持した状態でボルト39とナット40とで締結することにより、覗き窓36が構成されている。
次に、図4〜図6に基づき、圧力開放弁1の作動(開放及び開放状態維持)について説明する。
圧力開放弁1が設置されている容器等の機器内の流体(気体又は液体)の圧力が何らかの要因により上昇し、配管10及び弁箱2の流体入口2aを介して弁体12に作用する前記流体の圧力が設定圧力(吹き出し圧力)以上になると、弁体12が前記流体の圧力により、弁体用ばね15の弾性力(下方への押圧力)に抗して(弁体用ばね15を縮めて)押し上げられるため、図4に示す矢印a1のように上方へ移動して開放する(弁座2eから離れる)。かくして圧力開放弁1は開放状態となる。その結果、前記流体が、図4に示す矢印c1のように流体入口2aから弁箱2内に流入した後、図4に示す矢印d1のように流体出口2bから弁箱2外へと流出するため、前記機器内の流体の圧力が開放される。そして、この作動後の圧力開放弁1の開放状態は、次のようにして維持される。
前記流体の圧力によって弁体12が上方へ移動すると、この弁体12とともに弁棒11も上方へ移動する。従って、これらの弁体12及び弁棒11とともにステップリング21、ばね受け座17、開放状態維持金具22、開放状態維持金具ロックナット23、揚弁金具24及び揚弁金具ロックナット25も上方へ移動する。
その結果、開放状態維持金具22へのクサビ31の当接が解除される。従って、クサビ31は、クサビ用ばね35に押圧されることにより、図4〜図6に示す矢印b1のように開放状態維持金具22の下側へと水平方向に移動し、クサビサポート41とともに開放状態維持金具22の下側から開放状態維持金具22を支持する。具体的には、弁棒11の左右両側において、クサビ31の第1支持部31cと第2支持部31dとが、開放状態維持金具22の下側へ移動して開放状態維持金具22を支持する。なお、図4〜図6ではクサビ31が、二股の底面31eが弁棒11に当接するまで水平移動した実施例を示しているが、クサビ31により開放状態維持金具22を支持すれば、圧力開放弁1の開放状態を維持することが可能なため、必ずしも底面13eを弁棒11に当接させる必要はない。
クサビ31とクサビサポート41によって開放状態維持金具22を支持するため、弁体12に作用する前記流体の圧力が低下した後も、弁体用ばね15の弾性力(下方への押圧力)に抗して、開放状態維持金具22が下方へ移動するのを防止することができ、これに伴って弁体12、弁棒11、ステップリング21、ばね受け座17、開放状態維持金具ロックナット23、揚弁金具24及び揚弁金具ロックナット25の下方への移動も防止される。かくして、弁体12が着座しないようにすることができ、圧力開放弁1の開放状態が維持される。
また、このときにクサビサポート41は、クサビ31を支持するだけでなく、クサビ用ばね35に押圧されてクサビ31が確実に水平移動するようにクサビ31を案内する機能も果たす。
また、作業員が、直接目視で或いは監視カメラなどを用いて、圧力開放弁1の覗き窓36からクサビ31の作動状態を監視することにより、前記流体の圧力が設定圧力以上になって圧力開放弁1(弁体12)が開放したこと、及び、圧力開放弁1(弁体12)の開放状態がクサビ31及びクサビサポート41によって維持されていることを、圧力開放弁1の外部から確認する。
次に、図7〜図9に基づき、圧力開放弁1の復旧について説明する。
圧力開放弁1を復旧させる際には、まず、作業員の手動操作によって第2開放レバー27を、図7に示す矢印e1のように先端部27aの回動軸29回りに上方へ回動させる。その結果、第2開放レバー27の屈曲部27bが第1開放レバー26の基端部26bを押し上げるため、第1開放レバー26も図7に示す矢印f1のように先端部26aの回動軸28回りに上方へ回動する。このため、第1開放レバー26によって揚弁金具24が押し上げられ、且つ、この揚弁金具24とともに弁体12、弁棒11、ステップリング21、ばね受け座17、開放状態維持金具22、開放状態維持金具ロックナット23及び揚弁金具ロックナット25も押し上げられる。
従って、開放状態維持金具22などを介してクサビ31に作用していた弁体用ばね15の弾性力(下方への押圧力)が、解除される。
このままの状態で、次に作業員はクサビ引き出し金具33とクサビ引き出し用治具42とを用いて、クサビ31の引き出しを行う。クサビ引き出し用治具42は、側面視(図7,図9)においてL字状に屈曲している。また、クサビ引き出し用治具42は、基端側が1本である一方、先端側が二股に分かれて第1係合部42aと第2係合部42bとになっている。
クサビ31を引き出す際には、まず、図9に2点鎖線で示すようにクサビ引き出し用治具42を配置することにより、クサビ引き出し金具33の軸部33aの左右両側において、クサビ引き出し用治具42の第1係合部42aと第2係合部42bを、クサビ引き出し金具33の頭部33bに係合させる。この状態で、クサビサポート取付部材32の側面32bに当接している屈曲部42cを支点にして、図7及び図9に示す矢印g1のようにクサビ引き出し用治具42を下方へ回動させる。
その結果、このクサビ引き出し用治具42により、クサビ引き出し金具33が開放状態維持金具22と反対の方向へ引っ張られるため、図7〜図9に示す矢印h1のようにクサビ31が、開放状態維持金具22の下側から引き出されて作動前の状態(待機状態)に復旧する。
このままの状態で、次に作業員は第2開放レバー27を、図7に示す矢印i1のように下方へ回動させる。その結果、第1開放レバー26及び第2開放レバー27による揚弁金具24や開放状態維持金具22などの押し上げが解除される。このため、弁体用ばね15の弾性力(下方への押圧力)によって、図7に示す矢印j1のように第1開放レバー26は下方へ回動し、図7に示す矢印k1のように揚弁金具ロックナット25、揚弁金具24、開放状態維持金具ロックナット23、開放状態維持金具22、ばね受け座17、ステップリング21、弁棒11及び弁体12は下方へ移動する。その結果、弁体12は弁体用ばね15により下方へ押圧されて弁座2eに当接(着座)した状態になり、ここでクサビ引き出し用治具42をクサビ引き出し金具33から取り外せば、クサビ31はクサビ用ばね35により水平に押圧されて開放状態維持金具22に当接した状態になる。かくして、圧力開放弁1は作動前の待機状態(閉止状態)に復旧する。
以上のように、本実施の形態例1の圧力開放弁1によれば、弁棒11と弁棒11の下端に固定された弁体12とを弁体用ばね15によって下方へ押圧することにより、弁体12が着座して閉止状態となる構成の圧力開放弁1において、弁棒11に設けられた開放状態維持金具22と、クサビ31と、クサビ31の下側からクサビ31を支持するクサビサポート41と、クサビ31を開放状態維持金具22に向かって水平方向に押圧するクサビ用ばね35とを有しており、弁体12が着座して閉止状態となっているときには、クサビ31が開放状態維持金具22の外周面22aに当接している一方、弁体12及び弁棒11が上方へ移動して開放状態となったときには、弁棒11とともに開放状態維持金具22が上方へ移動して開放状態維持金具22へのクサビ31の当接が解除されるため、クサビ31が、クサビ用ばね35に押圧されて開放状態維持金具22の下側へと水平方向に移動してクサビサポート41とともに開放状態維持金具22の下側から開放状態維持金具22を支持することにより、前記開放状態を維持する構成であることを特徴としているため、前記4つの要求を全て満足することができる。
即ち、圧力開放弁1は、電源や空気などの駆動源が無くとも、圧力開放弁1が設置された機器の内圧が設定圧力(吹き出し圧力)以上になると、自動的に作動して圧力を開放することができる。従って、圧力開放弁1は前記第1要求を満足する。
また、圧力開放弁1は、機器に設置する圧力開放弁1自身の作動試験を行うことができる。従って、圧力開放弁1は前記第2要求も満足する。
また、圧力開放弁1は、作動後に開放状態維持金具22の下側からクサビ31を引き出せば待機状態(閉止状態)に復旧するため、再使用が可能である。従って、圧力開放弁1は前記第3要求も満足する。
また、圧力開放弁1は、作動(開放)後にクサビ31及びクサビサポート41によって開放状態維持金具22を支持するため、作動(開放)後に機器内の圧力が低下しても開放状態を維持し、雰囲気圧力まで低下させることができる。従って、圧力開放弁1は前記第4要求も満足する。
また、本実施の形態例1の圧力開放弁1によれば、クサビ支持部材として用いたクサビサポート41は水平に延びており、クサビ31を支持するとともにクサビ31の水平移動を案内することを特徴としているため、クサビサポート41によって、クサビ31を支持するだけなく、より確実にクサビ31を開放状態維持金具22の下側へ水平方向に移動させることができる。
また、本実施の形態例1の圧力開放弁1によれば、クサビ31は、クサビ31の基端部31bに水平に突設された軸部33aと、軸部33aの先端に設けられてクサビ引き出し用治具42と係合する頭部33bとを有して成るクサビ引き出し金具33を有していることを特徴としているため、クサビ引き出し金具33とクサビ引き出し用治具42とを用いて、クサビ31を開放状態維持金具22の下側から容易に引き出すことができる。
また、本実施の形態例1の圧力開放弁1によれば、クサビ31はクサビ箱4内に設けられており、クサビ箱4には、クサビ箱4の外からクサビ31を覗くための覗き窓36が設けられていることを特徴としているため、覗き窓36からクサビ31の状態を観察することにより、圧力開放弁1が作動(開放)したこと及び圧力開放弁1の開放状態が維持されていることを外部から容易に確認することができる。
また、本実施の形態例1の圧力開放弁1によれば、クサビ31は、先端側が二股に分かれて第1支持部31cと第2支持部31dとになっており、クサビ31がクサビ用ばね35に押圧されて水平方向に移動したとき、弁棒11の左右両側において第1支持部31cと第2支持部31dとが開放状態維持金具22を支持する構成であることを特徴としているため、クサビ31の第1支持部31cと第2支持部31dとによって、より確実に開放状態維持金具22を支持することができる。
また、本実施の形態例1の圧力開放弁1によれば、開放状態維持部材として用いた開放状態維持金具22は、弁棒11のネジ部11aに螺合されて弁棒11に取り付けられることを特徴としているため、弁棒11のネジ部11aに対する開放状態維持金具22の螺合位置を調整することにより、開放状態維持金具22とクサビ31との位置関係を容易に調整することができる。
また、本実施の形態例1の圧力開放弁1によれば、弁棒11に設けられた揚弁金具24と、水平に延びており、先端部26aの回動軸28回りに上方へ回動して揚弁金具24を押し上げる構成の第1開放レバー26と、L字状に屈曲しており、先端部27aの回動軸29回りに上方へ回動して屈曲部27bが第1開放レバー26の基端部26bを押し上げる構成の第2開放レバー27とを有することを特徴としているため、第1開放レバー26と第2開放レバー27によって揚弁金具24を押し上げると、開放状態維持金具22も上がるため、弁体用ばね15の弾性力が非常に強くても、クサビ31を開放状態維持金具22の下側から容易に引き出すことができる。
<実施の形態例2>
本実施の形態例2における上記実施の形態例1との主な相違点は、クサビの形状が異なることと、覗き窓に代えてクサビ確認用の開口を設けていることである。
図10〜図18に基づき、本発明の実施の形態例2に係る圧力開放弁101について詳細に説明する。図10〜図12には圧力開放弁101の待機(閉止)時の状態を示し、図13〜図15には圧力開放弁101の作動(開放及び開放状態維持)時の状態を示し、図16〜図18には圧力開放弁101の復旧時の状態を示している。
まず、図10〜図12に基づき、本実施の形態例2の圧力開放弁101の構成について説明する。
圧力開放弁101は、弁箱102と、弁箱102の上に設置されたばね箱103と、ばね箱103の上に設置されたクサビ箱104(一般に帽子とも称される)とを有し、これらによって弁全体を覆う構成となっている。弁箱102とばね箱103はボルト105及びナット106によって結合され、ばね箱103とクサビ箱104はボルト107及びナット108によって結合されている。
弁棒111は、弁箱102内、ばね箱103内及びクサビ箱104内において中央部に位置し、これらの弁箱102からクサビ箱104に亘って上下方向(即ち鉛直方向)に延びている。弁箱102内に設けられた弁体112は、弁棒111の下端に固定されており、弁棒111とともに上下方向に移動することができる。
弁箱102の下面102cには流体入口102aが形成され、弁箱102の側面102dには流体出口102bが形成されている。弁箱102の流体入口102aは、内部に気体(例えば不活性ガス)を有する容器などの機器(図示せず)に接続された配管110に接続されている。なお、本発明の圧力開放弁101は、不活性ガスなどの気体の圧力を開放する場合に限定するものではなく、水などの液体の圧力を開放する場合にも適用することができ、且つ配管110を介さず、溶接又はフランジにより直接容器などの機器に接続することも可能である。
弁箱102内には、流体入口102aの周囲を囲むようにして弁座102eが形成されている。この弁座102eに弁体112の下面112aが当接(着座)すると、圧力開放弁101は閉止状態となる一方、弁体112の下面112aが弁座102eから離れると、圧力開放弁101は開放状態となる。
弁箱102の上面102fに形成された貫通穴102gには、円筒状の弁棒ガイド113が嵌挿されている。弁棒111は、この弁棒ガイド113に軸方向(即ち鉛直方向)へ移動可能に挿通されている。また、弁箱102内に設けられたベローズ114は、弁棒ガイド113及び弁棒111の周囲を囲み、上端が弁箱102の上面102fに接続され、下端が弁体112の上面112bに接続されている。このため、弁箱102内を流れる流体が弁棒ガイド113内を通ってばね箱103へ流出するのを、ベローズ114によって防ぐことができる。なお、本実施の形態例2は、このベローズ114の設置有無によらない。
ばね箱103内に設けられた弁体用ばね115は、コイル状のものである。ばね箱103内において、弁体用ばね115の上端には円環状のばね押え座116が設けられ、弁体用ばね115の下端には円環状のばね受け座117が設けられている。
また、ばね箱103内において、弁棒111の外周面には円板状のステップリング121が突設されている(弁棒111と一体に形成されている)。ステップリング121は、ばね受け座117の下側からばね受け座117を支持している。
一方、ばね箱103の上面103aには、調整ネジ118のためのネジ穴103bが形成されている。調整ネジ118は円筒状のものであり、外周面にネジ部118aが形成されている。調整ネジ118は、そのネジ部118aがネジ穴103bに螺合されてネジ穴103bに挿通されている。また、クサビ箱104内において、調整ネジ118の外周面(ネジ部)118aには調整ネジロックナット119が螺合されている。従って、調整ネジ118の位置は、調整ネジロックナット119によって固定される。また、ばね箱103内において、調整ネジ118はばね押え座116に回転可能に連結されている。
調整ネジ118は、弁体用ばね115の弾性力(ばね力)を調整することによって圧力開放弁101の設定圧力(吹き出し圧力)を調節するためのものである。調整ネジ118を一方向へ回転させると、調整ネジ118が下方へ移動してばね押え座116が押し下げられることにより、弁体用ばね115が縮んで弁体用ばね115の弾性力が大きくなるため、前記設定圧力が高くなる。調整ネジ118を他方向へ回転させると、調整ネジ118が上方へ移動してばね押え座116が上方へ移動することにより、弁体用ばね115が伸びて弁体用ばね115の弾性力が小さくなるため、前記設定圧力が低くなる。
ばね押え座116には回り止めピン120が突設されている。回り止めピン120は、ばね箱103に形成されたピン穴103cに挿通され、ばね箱103に係止される。このため、調整ネジ118を回転させたとき、ばね押え座116が調整ネジ118とともに回転するのを、回り止めピン120によって防止する機能を有している。
弁棒111は、調整ネジ118、ばね押え座116、弁体用ばね115及びばね受け座117に軸方向(即ち鉛直方向)へ移動可能に挿通されている。
弁棒111の外周面の上部には、ネジ部111aが形成されている。この弁棒111のネジ部111aには、下から上へ順に開放状態維持金具122(開放状態維持部材)と、開放状態維持金具ロックナット123と、揚弁金具124(揚弁部材)と、揚弁金具ロックナット125とが螺合されている。開放状態維持金具122の位置は開放状態維持金具ロックナット123によって固定され、揚弁金具124の位置は揚弁金具ロックナット125によって固定される。
また、クサビ箱104には、第1開放レバー126と、第2開放レバー127とが設けられている。
第1開放レバー126は水平に延びており、揚弁金具124の下側に配設されている。第1開放レバー126の先端部126aと、クサビ箱104の側面の一方側に形成された回動軸支持部104aには回動軸128が挿通されている。従って、第1開放レバー126は、回動軸128回りに上下に回動することができる。また、第1開放レバー126は、基端側が1本の棒状である一方、先端側が二股に分かれて第1レバー部126cと第2レバー部126dとになっており、こられの第1レバー部126cと第2レバー部126dがそれぞれ弁棒111の左右両側において揚弁金具124の下側に位置している。
第2開放レバー127はL字状に屈曲されており、第1開放レバー126の下側に配設されている。第2開放レバー127の先端部27aと、クサビ箱104の側面の他方側に形成された回動軸支持部104bには、回動軸129が挿通されている。従って、第2開放レバー126は、回動軸129回りに上下に回動することができる。また、第2開放レバー127の屈曲部127bは、第1開放レバー126の基端部126bの下側から当該基端部126bに当接している。
また、クサビ箱104の側面には、クサビ確認用の開口104eが形成されている。
そして、本実施の形態例2の圧力開放弁101では、作動(開放)後の圧力開放弁101の開放状態を維持するためのクサビ131が、開放状態維持金具22の側方に配設されている。クサビ確認用の開口104eは、クサビ131の先端側であって、クサビ131に対応した位置に設けられている。
クサビ131は、先端部131aと、基端部131bとを有し、水平に配設されている。また、クサビ131は、平面視(図11)がコ字状になっている。即ち、クサビ131は、先端側が二股に分かれて第1支持部131cと第2支持部131dとになっている。クサビ131の基端部131bは、側面視(図10,図12)における上下方向の厚さが一定になっている。一方、クサビ131の先端部131aは、傾斜面131e,131fを有する部分と、これらの傾斜面131e,131fの先から水平に延びた延長部131g,131hとを有している。傾斜面131e及び延長部131gは第1支持部131c側に設けられ、傾斜面131f及び延長部131hは第2支持部131d側に設けられている。
傾斜面131e,131fは、開放状態維持金具122へ向かうにしたがって下方へ傾斜している。延長部131g,131hは、側面視(図10,図12)における上下方向の厚さが一定になっている。
クサビ箱104の側面には、クサビ挿入用の開口104cが形成されている。クサビ挿入用の開口104cは、クサビサポート取付部材132によって塞がれている。クサビサポート取付部材132は断面がコ字状の部材であり、その開口側にフランジ部132aが形成されている。クサビサポート取付部材132のフランジ部132aと、クサビ挿入用開口104cのフランジ部104dは、ボルト143とナット134によって結合されている。
クサビ用ばね135はコイル状のものであり、クサビサポート取付部材132内においてクサビ131の基端部131bと、クサビサポート取付部材132の側面132bとの間に介設され、クサビ131を開放状態維持金具122に向かって水平方向に押圧している。
圧力開放弁101が閉止状態(待機状態)のとき、即ち弁体112が弁体用ばね115に押圧されて着座(弁座102eに当接)しているとき、クサビ131は、クサビ用ばね135に押圧されて、傾斜面131e,131fが開放状態維持金具122の外周面122aに当接する。換言すると、弁棒111(ネジ部111a)に対する開放状態維持金具122の取り付け位置(螺合位置)を調節することによって、圧力開放弁101が閉止状態のときに開放状態維持金具122とクサビ131の傾斜面131e,131fとが互いに当接するようにしている。
また、クサビ131は、二股の底面(第1支持部131cと第2支持部131dの間の面)131iが、弁棒111と対向している。
クサビ131の基端部131bには、クサビ引き出し金具133(クサビ引き出し部材)が設けられている。クサビ引き出し金具133は、クサビ131の基端部131bに水平に突設された軸部133aと、この軸部133aの先端に設けられた頭部133bとを有して成るものである。軸部133aはクサビサポート取付部材132の側面132bに形成された貫通穴132cに挿通されてクサビサポート取付部材132の外側へと延びており、頭部133bはクサビサポート取付部材132の外側に位置している。頭部133bはクサビ引き出し用治具142(図16〜図18を参照:詳細後述)に係合させるための部分である。
また、クサビ131の下側にはクサビサポート141(クサビ支持部材)が設けられている。クサビ131は、クサビサポート141の上に設置され、クサビ箱104のクサビ挿入用開口104cを通ってクサビ箱104内にまで水平に延びている。クサビサポート141はクサビ131の下側からクサビ131を支持するためのものであり、クサビサポート取付部材132内においてクサビサポート取付部材132の下面132dに設けられている。また、クサビサポート141はクサビ箱104のクサビ挿入用開口4cに挿通され、開放状態維持金具122に向かって水平に延びている。また、クサビサポート141は、先端側が二股に分かれて第1支持部141aと第2支持部141bとになっている。従って、クサビサポート141は、クサビ131を支持するだけでなく、圧力開放弁101が作動(開放)したときにクサビ131が水平方向に移動(詳細後述)するように案内するクサビガイド部材としての機能も有している。
クサビ131の延長部131g,131hは、上側の開放状態維持金具122と下側のクサビサポート141との間に位置している。換言すると、弁棒111(ネジ部111a)に対する開放状態維持金具122の取り付け位置(螺合位置)を調節することによって、圧力開放弁101が閉止状態のときにクサビ131の延長部131g,131hを、開放状態維持金具122とクサビサポート141の間に配置することができるようにしている。
次に、図13〜図15に基づき、圧力開放弁101の作動(開放及び開放状態維持)について説明する。
圧力開放弁101が設置されている容器等の機器内の流体(気体又は液体)の圧力が何らかの要因により上昇し、配管110及び弁箱102の流体入口102aを介して弁体112に作用する前記流体の圧力が設定圧力(吹き出し圧力)以上になると、弁体112が前記流体の圧力により、弁体用ばね115の弾性力(下方への押圧力)に抗して(弁体用ばね115を縮めて)押し上げられるため、図13に示す矢印a2のように上方へ移動して開放する(弁座102eから離れる)。かくして圧力開放弁101は開放状態となる。その結果、前記流体が、図13に示す矢印c2のように流体入口102aから弁箱102内に流入した後、図13に示す矢印d2のように流体出口102bから弁箱102外へと流出するため、前記機器内の流体の圧力が開放される。そして、この作動後の圧力開放弁101の開放状態は、次のようにして維持される。
前記流体の圧力によって弁体112が上方へ移動すると、この弁体112とともに弁棒111も上方へ移動する。従って、これらの弁体112及び弁棒111とともにステップリング121、ばね受け座117、開放状態維持金具122、開放状態維持金具ロックナット123、揚弁金具124及び揚弁金具ロックナット125も上方へ移動する。
その結果、開放状態維持金具122へのクサビ131(傾斜面131e,131f)の当接が解除される。従って、クサビ131は、クサビ用ばね135に押圧されることにより、図13〜図15に示す矢印b2のように開放状態維持金具122の下側へと水平方向に移動する。しかも、クサビ131は傾斜面131e,131fを有しており、この傾斜面131e,131fが開放状態維持部材122に当接しているため、弁体112及び弁棒111とともに開放状態維持金具122が上昇し始めると直ぐにクサビ131も、クサビ用ばね135に押圧されて水平方向に移動し始め、且つ、開放状態維持金具122の上昇量(リフト量)が増加するのに応じてクサビ131の水平方向への移動量も増加する。また、このときクサビ131の延長部131g,131hの先端部分が、クサビ箱104のクサビ確認用開口104eからクサビ箱104の外へ出る。
水平方向に移動したクサビ131は、クサビサポート141とともに開放状態維持金具122の下側から開放状態維持金具122を支持する。具体的には、弁棒111の左右両側において、クサビ131の第1支持部131cの基端部131bと第2支持部131dの基端部131bとが、開放状態維持金具122の下側へ移動して開放状態維持金具122を支持する。なお、図13〜図15ではクサビ131が、二股の底面131iが弁棒111に当接するまで水平移動した実施例を示しているが、クサビ131により開放状態維持金具122を支持すれば、圧力開放弁101の開放状態を維持することが可能なため、必ずしも底面131iを弁棒111に当接させる必要はない。
クサビ131とクサビサポート141によって開放状態維持金具122を支持するため、弁体112に作用する前記流体の圧力が低下した後も、弁体用ばね115の弾性力(下方への押圧力)に抗して、開放状態維持金具122が下方へ移動するのを防止することができ、これに伴って弁体112、弁棒111、ステップリング121、ばね受け座117、開放状態維持金具ロックナット123、揚弁金具124及び揚弁金具ロックナット125の下方への移動も防止される。かくして、弁体112が着座しないようにすることができ、圧力開放弁101の開放状態が維持される。
また、このときにクサビサポート141は、クサビ131を支持するだけでなく、クサビ用ばね135に押圧されてクサビ131が確実に水平移動するようにクサビ131を案内する機能も果たす。
また、作業員が、直接目視で或いは監視カメラなどを用いて、クサビ箱104のクサビ確認用開口104eからクサビ131の延長部131g,131hの先端部分がクサビ箱104の外へ出ていること監視することにより、前記流体の圧力が設定圧力以上になって圧力開放弁101(弁体112)が開放したこと、及び、圧力開放弁101(弁体112)の開放状態がクサビ131及びクサビサポート141によって維持されていることを、圧力開放弁101の外部から確認する。
次に、図16〜図18に基づき、圧力開放弁101の復旧について説明する。
圧力開放弁101を復旧させる際には、まず、作業員の手動操作によって第2開放レバー127を、図16に示す矢印e2のように先端部127aの回動軸129回りに上方へ回動させる。その結果、第2開放レバー127の屈曲部127bが第1開放レバー126の基端部126bを押し上げるため、第1開放レバー126も図16に示す矢印f2のように先端部126aの回動軸128回りに上方へ回動する。このため、第1開放レバー126によって揚弁金具124が押し上げられ、且つ、この揚弁金具124とともに弁体112、弁棒111、ステップリング121、ばね受け座117、開放状態維持金具122、開放状態維持金具ロックナット123及び揚弁金具ロックナット125も押し上げられる。
従って、開放状態維持金具122などを介してクサビ131に作用する弁体用ばね115の弾性力(下方への押圧力)が、解除される。
このままの状態で、次に作業員はクサビ引き出し金具133とクサビ引き出し用治具142とを用いて、クサビ131の引き出しを行う。クサビ引き出し用治具142は、側面視(図16,図18)においてL字状に屈曲している。また、クサビ引き出し用治具142は、基端側が1本である一方、先端側が二股に分かれて第1係合部142aと第2係合部142bとになっている。
クサビ31を引き出すには、まず、図18に2点鎖線で示すようにクサビ引き出し用治具142を配置することにより、クサビ引き出し金具133の軸部133aの左右両側において、クサビ引き出し用治具142の第1係合部142aと第2係合部142bを、クサビ引き出し金具133の頭部133bに係合させる。この状態で、クサビサポート取付部材132の側面132bに当接している屈曲部142cを支点にして、図16及び図18に示す矢印g2のようにクサビ引き出し用治具142を下方へ回動させる。
その結果、このクサビ引き出し用治具142により、クサビ引き出し金具133が開放状態維持金具122と反対の方向へ引っ張られるため、図16〜図18に示す矢印h2のようにクサビ131が、開放状態維持金具122の下側から引き出されて作動前の状態(待機状態)に復旧する。
このままの状態で、次に作業員は第2開放レバー127を、図16に示す矢印i2のように下方へ回動させる。その結果、第1開放レバー126及び第2開放レバー127による揚弁金具124や開放状態維持金具122などの押し上げが解除される。このため、弁体用ばね115の弾性力(下方への押圧力)によって、図16に示す矢印j2のように第1開放レバー126は下方へ回動し、図16に示す矢印k2のように揚弁金具ロックナット125、揚弁金具124、開放状態維持金具ロックナット123、開放状態維持金具122、ばね受け座117、ステップリング121、弁棒111及び弁体112は下方へ移動する。その結果、弁体112は弁体用ばね115により下方へ押圧されて弁座102eに当接(着座)した状態になり、ここでクサビ引き出し用治具142をクサビ引き出し金具133から取り外せば、クサビ131(傾斜面131e,131f)はクサビ用ばね135により水平に押圧されて開放状態維持金具122に当接した状態になる。かくして、圧力開放弁101は作動前の待機状態(閉止状態)に復旧する。
以上のように、本実施の形態例2の圧力開放弁101によれば、弁棒111と弁棒111の下端に固定された弁体112とを弁体用ばね135によって下方へ押圧することにより、弁体112が着座して閉止状態となる構成の圧力開放弁101において、弁棒111に設けられた開放状態維持金具122と、クサビ131と、クサビ131の下側からクサビを支持するクサビサポート141と、クサビ131を開放状態維持金具122に向かって水平方向に押圧するクサビ用ばね135とを有しており、弁体112が着座して閉止状態となっているときには、クサビ131が開放状態維持金具122の外周面122aに当接している一方、弁体112及び弁棒111が上方へ移動して開放状態となったときには、弁棒111とともに開放状態維持金具122が上方へ移動して開放状態維持金具122へのクサビ131の当接が解除されるため、クサビ131が、クサビ用ばね135に押圧されて開放状態維持金具122の下側へと水平方向に移動してクサビサポート141とともに開放状態維持金具122の下側から開放状態維持金具122を支持することにより、前記開放状態を維持する構成であることを特徴としているため、前記4つの要求を全て満足することができる。
即ち、圧力開放弁101は、電源や空気などの駆動源が無くとも、圧力開放弁101が設置された機器の内圧が設定圧力(吹き出し圧力)以上になると、自動的に作動して圧力を開放することができる。従って、圧力開放弁101は前記第1要求を満足する。
また、圧力開放弁101は、機器に設置する圧力開放弁101自身の作動試験を行うことができる。従って、圧力開放弁101は前記第2要求も満足する。
また、圧力開放弁101は、作動後に開放状態維持金具122の下側からクサビ131を引き出せば待機状態(閉止状態)に復旧するため、再使用が可能である。従って、圧力開放弁101は前記第3要求も満足する。
また、圧力開放弁101は、作動(開放)後にクサビ131及びクサビサポート141によって開放状態維持金具122を支持するため、作動(開放)後に機器内の圧力が低下しても開放状態を維持し、雰囲気圧力まで低下させることができる。従って、圧力開放弁101は前記第4要求も満足する。
また、本実施の形態例2の圧力開放弁101によれば、開放状態維持金具122の外周面122aに当接するクサビ131の当接面が、開放状態維持金具122へ向かうにしたがって下方へ傾斜している傾斜面131e,131fであることを特徴としており、クサビの形状を変更しても圧力開放弁101の開放状態を維持することができる。
また、本実施の形態例2の圧力開放弁101によれば、クサビ支持部材として用いたクサビサポート141は水平に延びており、クサビ131を支持するとともにクサビ131の水平移動を案内することを特徴としているため、クサビサポート141によって、クサビ131を支持するだけなく、より確実にクサビ131を開放状態維持金具122の下側へ水平方向に移動させることができる。
また、本実施の形態例2の圧力開放弁101によれば、クサビ131は、クサビ131の基端部131bに水平に突設された軸部133aと、軸部133aの先端に設けられてクサビ引き出し用治具142と係合する頭部133bとを有して成るクサビ引き出し金具133を有していることを特徴としているため、クサビ引き出し金具133とクサビ引き出し用治具142とを用いて、クサビ131を開放状態維持金具122の下側から容易に引き出すことができる。
また、本実施の形態例2の圧力開放弁101によれば、クサビ131はクサビ箱104内に設けられており、クサビ131の先端側には延長部131g,131hが設けられ、クサビ131がクサビ用ばねに押圧135されて水平方向に移動したとき、延長部131gの先端部分が、クサビ104に形成されたクサビ確認用の開口104eからクサビ箱101の外へ出る構成であることを特徴としているため、クサビ延長部131g,131hの先端部分がクサビ確認用の開口104eから外へ出ている状態を観察することにより、圧力開放弁101が作動(開放)したこと及び圧力開放弁101の開放状態が維持されていることを外部から容易に確認することができる。
また、本実施の形態例2の圧力開放弁101によれば、クサビ131は、先端側が二股に分かれて第1支持部131cと第2支持部131dとになっており、クサビ131がクサビ用ばね135に押圧されて水平方向に移動したとき、弁棒111の左右両側において第1支持部131cと第2支持部131dとが開放状態維持金具122を支持する構成であることを特徴としているため、クサビ131の第1支持部131cと第2支持部131dとによって、より確実に開放状態維持金具122を支持することができる。
また、本実施の形態例2の圧力開放弁101によれば、開放状態維持部材として用いた開放状態維持金具122は、弁棒111のネジ部111aに螺合されて弁棒111に取り付けられることを特徴としているため、弁棒111のネジ部111aに対する開放状態維持金具122の螺合位置を調整することにより、開放状態維持金具122とクサビ131との位置関係を容易に調整することができる。
また、本実施の形態例2の圧力開放弁101によれば、弁棒111に設けられた揚弁金具124と、水平に延びており、先端部126aの回動軸128回りに上方へ回動して揚弁金具124を押し上げる構成の第1開放レバー126と、L字状に屈曲しており、先端部127aの回動軸129回りに上方へ回動して屈曲部127bが第1開放レバー126の基端部126bを押し上げる構成の第2開放レバー127とを有することを特徴としているため、第1開放レバー126と第2開放レバー127によって揚弁金具124を押し上げると、開放状態維持金具122も上がるため、弁体用ばね115の弾性力が非常に強くても、クサビ131を開放状態維持金具122の下側から容易に引き出すことができる。
<実施の形態例3>
本実施の形態例3における上記実施の形態例1との主な相違点は、クサビの取り付け位置が異なることと、ステップリングを開放状態維持部材として利用していることと、クサビが露出しているために覗き窓などが不要であることである。
図19〜図27に基づき、本発明の実施の形態例3に係る圧力開放弁201について詳細に説明する。図19〜図21には圧力開放弁201の待機(閉止)時の状態を示し、図22〜図24には圧力開放弁201の作動(開放及び開放状態維持)時の状態を示し、図25〜図27には圧力開放弁201の復旧時の状態を示している。
まず、図19〜図21に基づき、本実施の形態例3の圧力開放弁201の構成について説明する。
圧力開放弁201は、弁箱202と、弁箱202の上に設置されたヨーク203と、ヨーク203の上に設置された帽子204とを有している。弁箱202とヨーク203はボルト及びナット(図示省略)によって結合され、ヨーク203と帽子204はボルト207及びナット208によって結合されている。ヨーク203は、左右に2本設けられて上下方向に延びた脚部203a,203bを有している。従って、これら2本のヨーク脚部203a,203bの間に設けられている弁体用ばね215やステップリング221などは、露出している。
弁棒211は、弁箱202内、ヨーク203内(脚部203a,203bの間)及び帽子204内において中央部に位置し、これらの弁箱202から帽子204に亘って上下方向(即ち鉛直方向)に延びている。弁箱202内に設けられた弁体212は、弁棒211の下端に固定されており、弁棒211とともに上下方向に移動することができる。
弁箱202の下面202cには流体入口202aが形成され、弁箱202の側面202dには流体出口202bが形成されている。弁箱202の流体入口202aは、内部に気体(例えば不活性ガス)を有する容器などの機器(図示せず)に接続された配管210に接続されている。なお、本発明の圧力開放弁201は、不活性ガスなどの気体の圧力を開放する場合に限定するものではなく、水などの液体の圧力を開放する場合にも適用することができ、且つ配管210を介さず、溶接又はフランジにより直接容器などの機器に接続することも可能である。
弁箱202内には、流体入口202aの周囲を囲むようにして弁座202eが形成されている。この弁座202eに弁体212の下面212aが当接(着座)すると、圧力開放弁201は閉止状態となる一方、弁体212の下面212aが弁座202eから離れると、圧力開放弁201は開放状態となる。
弁箱202の上面202fに形成された貫通穴202gには、円筒状の弁棒ガイド213が嵌挿されている。弁棒211は、この弁棒ガイド213に軸方向(即ち鉛直方向)へ移動可能に挿通されている。また、弁箱202内に設けられたベローズ214は、弁棒ガイド213及び弁棒211の周囲を囲み、上端が弁箱202の上面202fに接続され、下端が弁体212の上面212bに接続されている。このため、弁箱202内を流れる流体が弁棒ガイド213内を通ってヨーク203へ流出するのを、ベローズ214によって防ぐことができる。なお、本実施の形態例3は、このベローズ214の設置有無によらない。
ヨーク脚部203a,203bの間に設けられた弁体用ばね215は、コイル状のものである。ヨーク脚部203a,203bの間において、弁体用ばね215の上端には円環状のばね押え座216が設けられ、弁体用ばね215の下端には円環状のばね受け座217が設けられている。
ヨーク脚部203a,203bの間において、弁棒211の外周面には円板状のステップリング221が突設されている(弁棒211と一体に形成されている)。ステップリング221は、ばね受け座217の下側からばね受け座217を支持している。
一方、ヨーク203の上面203dには、調整ネジ218のためのネジ穴203cが形成されている。調整ネジ218は円筒状のものであり、外周面にネジ部218aが形成されている。調整ネジ218は、そのネジ部218aがネジ穴203cに螺合されてネジ穴203cに挿通されている。また、帽子204内において、調整ネジ218の外周面(ネジ部)218aには調整ネジロックナット219が螺合されている。従って、調整ネジ218の位置は、調整ネジロックナット219によって固定される。また、ヨーク脚部203a,203bの間において、調整ネジ218はばね押え座216に回転可能に連結されている。
調整ネジ218は、弁体用ばね215の弾性力(ばね力)を調整することによって圧力開放弁201の設定圧力(吹き出し圧力)を調節するためのものである。調整ネジ218を一方向へ回転させると、調整ネジ218が下方へ移動してばね押え座216が押し下げられることにより、弁体用ばね215が縮んで弁体用ばね215の弾性力が大きくなるため、前記設定圧力が高くなる。調整ネジ218を他方向へ回転させると、調整ネジ218が上方へ移動してばね押え座216が上方へ移動することにより、弁体用ばね215が伸びて弁体用ばね215の弾性力が小さくなるため、前記設定圧力が低くなる。
ばね押え座216には回り止めピン220が突設されている。回り止めピン220は、ヨーク脚部203a,203bに係止される。このため、調整ネジ218を回転させたとき、ばね押え座216が調整ネジ218とともに回転するのを、回り止めピン220によって防止する機能を有している。
弁棒211は、調整ネジ218、ばね押え座216、弁体用ばね215及びばね受け座217に軸方向(即ち鉛直方向)へ移動可能に挿通されている。
弁棒211の外周面の上部には、ネジ部211aが形成されている。この弁棒211のネジ部211aには、揚弁金具224(揚弁部材)と、揚弁金具ロックナット225とが螺合されている。揚弁金具224の位置は、揚弁金具ロックナット225によって固定される。
また、帽子204には、第1開放レバー226と、第2開放レバー227とが設けられている。
第1開放レバー226は水平に延びており、揚弁金具224の下側に配設されている。第1開放レバー226の先端部226aと、帽子204の側面の一方側に形成された回動軸支持部204aには回動軸228が挿通されている。従って、第1開放レバー226は、回動軸228回りに上下に回動することができる。また、第1開放レバー226は、基端側が1本の棒状である一方、先端側が二股に分かれて第1レバー部226cと第2レバー部226dとになっており、こられの第1レバー部226cと第2レバー部226dがそれぞれ弁棒211の左右両側において揚弁金具224の下側に位置している。
第2開放レバー227はL字状に屈曲されており、第1開放レバー226の下側に配設されている。第2開放レバー227の先端部227aと、帽子204の側面の他方側に形成された回動軸支持部204bには、回動軸229が挿通されている。従って、第2開放レバー226は、回動軸229回りに上下に回動することができる。また、第2開放レバー227の屈曲部227bは、第1開放レバー226の基端部226bの下側から当該基端部226bに当接している。
そして、本実施の形態例3の圧力開放弁201では、作動(開放)後の圧力開放弁201の開放状態を維持するためのクサビ231が、ステップリング221の側方に配設されている。即ち、本実施の形態例3では、ステップリング221を開放状態維持部材として利用している。
クサビ231は、先端側の本体部231aと、基端部231bとを有し、水平に配設されている。クサビ231の本体部231aは、側面視(図19,図21)における上下方向の厚さが一定になっている。また、クサビ231の本体部231aは、平面視(図20)がU字状になっている。即ち、クサビ231の本体部231aは、先端側が二股に分かれて第1支持部231cと第2支持部231dとになっている。
ヨーク脚部203a,203bの間において、弁箱202の上面202fには、クサビサポート取付部材232がボルト205及びナット206によって結合されている。
クサビ用ばね235はコイル状のものであり、クサビ231の基端部231bと、クサビサポート取付部材232の側面232aとの間に介設され、クサビ231をステップリング221に向かって水平方向に押圧している。
圧力開放弁201が閉止状態(待機状態)のとき、即ち弁体212が弁体用ばね215に押圧されて着座(弁座202eに当接)しているとき、クサビ231は、クサビ用ばね235に押圧されて、第1支持部231cと第2支持部231dがステップリング221の外周面221aに当接する。換言すると、クサビサポート取付部材232の高さを適宜に設定することによって、圧力開放弁201が閉止状態のときにステップリング221と、クサビサポート取付部材232のクサビサポート241上に設けられたクサビ231とが互いに当接するようにしている。
また、クサビ231は、二股の底面(第1支持部231cと第2支持部231dの間の面)231eが、弁棒211と対向している。
クサビ231の基端部231bには、クサビ引き出し金具233(クサビ引き出し部材)が設けられている。クサビ引き出し金具233は、クサビ231の基端部231bに水平に突設された軸部233aと、この軸部233aの先端に設けられた頭部233bとを有して成るものである。軸部233aはクサビサポート取付部材232の側面232aに形成された貫通穴232bに挿通されてクサビサポート取付部材232(側面232a)の外側へと延びており、頭部233bはクサビサポート取付部材232(側面232a)の外側に位置している。頭部233bはクサビ引き出し用治具242(図25〜図27を参照:詳細後述)に係合させるための部分である。
また、クサビ231の下側にはクサビサポート241(クサビ支持部材)が設けられている。クサビ231は、クサビサポート241の上に設置され、ステップリング221に向かって水平に延びている。クサビサポート241はクサビ231の下側からクサビ231を支持するためのものであり、クサビサポート取付部材232の下面232c上に設けられている。また、クサビサポート241は、ステップリング221に向かって水平に延びている。また、クサビサポート241は、先端側が二股に分かれて第1支持部241aと第2支持部241bとになっている。従って、クサビサポート241は、クサビ231を支持するだけでなく、圧力開放弁201が作動(開放)したときにクサビ231が水平方向に移動(詳細後述)するように案内するクサビガイド部材としての機能も有している。
なお、本実施の形態例3ではクサビ231が露出しているため、覗き窓やクサビ確認用の開口は不要である。
次に、図22〜図24に基づき、圧力開放弁201の作動(開放及び開放状態維持)について説明する。
圧力開放弁201が設置されている容器等の機器内の流体(気体又は液体)の圧力が何らかの要因により上昇し、配管210及び弁箱202の流体入口202aを介して弁体212に作用する前記流体の圧力が設定圧力(吹き出し圧力)以上になると、弁体212が前記流体の圧力により、弁体用ばね215の弾性力(下方への押圧力)に抗して(弁体用ばね215を縮めて)押し上げられるため、図22に示す矢印a3のように上方へ移動して開放する(弁座202eから離れる)。かくして圧力開放弁201は開放状態となる。その結果、前記流体が、図22に示す矢印c3のように流体入口202aから弁箱202内に流入した後、図22に示す矢印d3のように流体出口202bから弁箱202外へと流出するため、前記機器内の流体の圧力が開放される。そして、この作動後の圧力開放弁201の開放状態は、次のようにして維持される。
前記流体の圧力によって弁体212が上方へ移動すると、この弁体212とともに弁棒211も上方へ移動する。従って、これらの弁体212及び弁棒211とともにステップリング221、ばね受け座217、揚弁金具224及び揚弁金具ロックナット225も上方へ移動する。
その結果、ステップリング221へのクサビ231の当接が解除される。従って、クサビ231は、クサビ用ばね235に押圧されることにより、図22〜図24に示す矢印b3のようにステップリング221の下側へと水平方向に移動し、クサビサポート241とともにステップリング221の下側からステップリング221を支持する。具体的には、弁棒211の左右両側において、クサビ231の第1支持部231cと第2支持部231dとが、ステップリング221の下側へ移動してステップリング221を支持する。なお、図22〜図24ではクサビ231が、二股の底面231eが弁棒211に当接するまで水平移動した実施例を示しているが、クサビ231によりステップリング221を支持すれば、圧力開放弁201の開放状態を維持することが可能なため、必ずしも底面231eを弁棒211に当接させる必要はない。
クサビ231とクサビサポート241によってステップリング221を支持するため、弁体212に作用する前記流体の圧力が低下した後も、弁体用ばね215の弾性力(下方への押圧力)に抗して、ステップリング221が下方へ移動するのを防止することができ、これに伴って弁体212、弁棒211、ばね受け座217、揚弁金具224及び揚弁金具ロックナット225の下方への移動も防止される。かくして、弁体212が着座しないようにすることができ、圧力開放弁201の開放状態が維持される。
また、このときにクサビサポート241は、クサビ231を支持するだけでなく、クサビ用ばね235に押圧されてクサビ231が確実に水平移動するようにクサビ231を案内する機能も果たす。
また、作業員が、直接目視で或いは監視カメラなどを用いてクサビ231の作動状態を監視することにより、前記流体の圧力が設定圧力以上になって圧力開放弁201(弁体212)が開放したこと、及び、圧力開放弁201(弁体212)の開放状態がクサビ231及びクサビサポート241によって維持されていることを確認する。
次に、図25〜図27に基づき、圧力開放弁201の復旧について説明する。
圧力開放弁201を復旧させる際には、まず、作業員の手動操作によって第2開放レバー227を、図25に示す矢印e3のように先端部227aの回動軸229回りに上方へ回動させる。その結果、第2開放レバー227の屈曲部227bが第1開放レバー226の基端部226bを押し上げるため、第1開放レバー226も図25に示す矢印f3のように先端部226aの回動軸228回りに上方へ回動する。このため、第1開放レバー226によって揚弁金具224が押し上げられ、且つ、この揚弁金具224とともに弁体212、弁棒211、ステップリング221、ばね受け座217及び揚弁金具ロックナット225も押し上げられる。
従って、ステップリング221などを介してクサビ231に作用していた弁体用ばね215の弾性力(下方への押圧力)が、解除される。
このまま状態で、次に作業員はクサビ引き出し金具233とクサビ引き出し用治具242とを用いて、クサビ231の引き出しを行う。クサビ引き出し用治具242は、側面視(図25,図27)においてL字状に屈曲している。また、クサビ引き出し用治具242は、基端側が1本である一方、先端側が二股に分かれて第1係合部242aと第2係合部242bとになっている。
クサビ231を引き出す際には、まず、図27に2点鎖線で示すようにクサビ引き出し用治具242を配置することにより、クサビ引き出し金具233の軸部233aの左右両側において、クサビ引き出し用治具242の第1係合部242aと第2係合部242bを、クサビ引き出し金具233の頭部233bに係合させる。この状態で、クサビサポート取付部材232の側面232aに当接している屈曲部242cを支点にして、図25及び図27に示す矢印g3のようにクサビ引き出し用治具242を下方へ回動させる。
その結果、このクサビ引き出し用治具242により、クサビ引き出し金具233がステップリング221と反対の方向へ引っ張られるため、図25〜図27に示す矢印h3のようにクサビ231が、ステップリング221の下側から引き出されて作動前の状態(待機状態)に復旧する。
このままの状態で、次に作業員は第2開放レバー227を、図25に示す矢印i3のように下方へ回動させる。その結果、第1開放レバー226及び第2開放レバー227による揚弁金具224やステップリング221などの押し上げが解除される。このため、弁体用ばね215の弾性力(下方への押圧力)によって、図25に示す矢印j3のように第1開放レバー226は下方へ回動し、図25に示す矢印k3のように揚弁金具ロックナット225、揚弁金具224、ばね受け座217、ステップリング221、弁棒211及び弁体212は下方へ移動する。その結果、弁体212は弁体用ばね215により下方へ押圧されて弁座202eに当接(着座)した状態になり、ここでクサビ引き出し用治具242をクサビ引き出し金具233から取り外せば、クサビ231はクサビ用ばね235により水平に押圧されてステップリング221に当接した状態になる。かくして、圧力開放弁201は作動前の待機状態(閉止状態)に復旧する。
以上のように、本実施の形態例3の圧力開放弁201によれば、弁棒211と弁棒211の下端に固定された弁体212とを弁体用ばね251によって下方へ押圧することにより、弁体212が着座して閉止状態となる構成の圧力開放弁201において、弁棒211に設けられたステップリング221と、クサビ231と、クサビ231の下側からクサビ231を支持するクサビサポート241と、クサビ231をステップリング221に向かって水平方向に押圧するクサビ用ばね235とを有しており、弁体212が着座して閉止状態となっているときには、クサビ231がステップリング221の外周面221aに当接している一方、弁体212及び弁棒211が上方へ移動して開放状態となったときには、弁棒211とともにステップリング221が上方へ移動してステップリング221へのクサビ231の当接が解除されるため、クサビ231が、クサビ用ばね235に押圧されてステップリング221の下側へと水平方向に移動してクサビサポート241とともにステップリング221の下側からステップリング221を支持することにより、前記開放状態を維持する構成であることを特徴としているため、前記4つの要求を全て満足することができる。
即ち、圧力開放弁201は、電源や空気などの駆動源が無くとも、圧力開放弁201が設置された機器の内圧が設定圧力(吹き出し圧力)以上になると、自動的に作動して圧力を開放することができる。従って、圧力開放弁201は前記第1要求を満足する。
また、圧力開放弁201は、機器に設置する圧力開放弁201自身の作動試験を行うことができる。従って、圧力開放弁201は前記第2要求も満足する。
また、圧力開放弁201は、作動後にステップリング221の下側からクサビ231を引き出せば待機状態(閉止状態)に復旧するため、再使用が可能である。従って、圧力開放弁201は前記第3要求も満足する。
また、圧力開放弁201は、作動(開放)後にクサビ231及びクサビサポート241によってステップリング221を支持するため、作動(開放)後に機器内の圧力が低下しても開放状態を維持し、雰囲気圧力まで低下させることができる。従って、圧力開放弁201は前記第4要求も満足する。
また、本実施の形態例3の圧力開放弁201によれば、クサビ支持部材として用いたクサビサポート241は水平に延びており、クサビ231を支持するとともにクサビ231の水平移動を案内することを特徴としているため、クサビサポート241によって、クサビ231を支持するだけなく、より確実にクサビ231をステップリング221の下側へ水平方向に移動させることができる。
また、本実施の形態例3の圧力開放弁201によれば、クサビ231は、クサビ231の基端部231bに水平に突設された軸部233aと、軸部233aの先端に設けられてクサビ引き出し用治具と係合する頭部233bとを有して成るクサビ引き出し金具233を有していることを特徴としているため、クサビ引き出し金具233とクサビ引き出し用治具242とを用いて、クサビ231をステップリング221の下側から容易に引き出すことができる。
また、本実施の形態例3の圧力開放弁201によれば、クサビ231は、先端側が二股に分かれて第1支持部231cと第2支持部231dとになっており、クサビ231がクサビ用ばね235に押圧されて水平方向に移動したとき、弁棒211の左右両側において第1支持部231cと第2支持部231dとがステップリング221を支持する構成であることを特徴としているため、クサビ231の第1支持部231cと第2支持部231dとによって、より確実にステップリング221を支持することができる。
また、本実施の形態例3の圧力開放弁201によれば、弁棒211に設けられて弁体用ばね215のばね受け座217を支持しているステップリング221を、開放状態維持部材として利用していることを特徴としているため、開放状態を維持するための専用の部材を開放状態維持部材として設ける場合に比べて、部品点数の低減などを図ることができる。
また、本実施の形態例3の圧力開放弁201によれば、弁棒211に設けられた揚弁金具224と、水平に延びており、先端部226aの回動軸228回りに上方へ回動して揚弁金具224を押し上げる構成の第1開放レバー226と、L字状に屈曲しており、先端部227aの回動軸229回りに上方へ回動して屈曲部227bが第1開放レバー226の基端部226bを押し上げる構成の第2開放レバー227とを有することを特徴としているため、第1開放レバー226と第2開放レバー227によって揚弁金具224を押し上げると、ステップリング221も上がるため、弁体用ばね215の弾性力が非常に強くても、クサビ231をステップリング221の下側から容易に引き出すことができる。
<実施の形態例4>
本実施の形態例4における上記実施の形態例1との主な相違点は、クサビの形状が異なることと、クサビの取り付け位置が異なることと、ステップリングを開放状態維持部材として利用していることと、クサビが露出しているために覗き窓などが不要であることである。
図28〜図36に基づき、本発明の実施の形態例4に係る圧力開放弁301について詳細に説明する。図28〜図30には圧力開放弁301の待機(閉止)時の状態を示し、図31〜図33には圧力開放弁301の作動(開放及び開放状態維持)時の状態を示し、図34〜図36には圧力開放弁301の復旧時の状態を示している。
まず、図28〜図30に基づき、本実施の形態例4の圧力開放弁301の構成について説明する。
圧力開放弁301は、弁箱302と、弁箱302の上に設置されたヨーク303と、ヨーク303の上に設置された帽子304とを有している。弁箱302とヨーク303はボルト及びナット(図示省略)によって結合され、ヨーク303と帽子304はボルト307及びナット308によって結合されている。ヨーク303は、左右に2本設けられて上下方向に延びた脚部303a,303bを有している。従って、これら2本のヨーク脚部303a,303bの間に設けられている弁体用ばね315やステップリング321などは、露出している。
弁棒311は、弁箱302内、ヨーク303内(脚部303a,303bの間)及び帽子304内において中央部に位置し、これらの弁箱302から帽子304に亘って上下方向(即ち鉛直方向)に延びている。弁箱302内に設けられた弁体312は、弁棒311の下端に固定されており、弁棒311とともに上下方向に移動することができる。
弁箱302の下面302cには流体入口302aが形成され、弁箱302の側面302dには流体出口302bが形成されている。弁箱302の流体入口302aは、内部に気体(例えば不活性ガス)を有する容器などの機器(図示せず)に接続された配管310に接続されている。なお、本発明の圧力開放弁301は、不活性ガスなどの気体の圧力を開放する場合に限定するものではなく、水などの液体の圧力を開放する場合にも適用することができ、且つ配管310を介さず、溶接又はフランジにより直接容器などの機器に接続することも可能である。
弁箱302内には、流体入口302aの周囲を囲むようにして弁座302eが形成されている。この弁座302eに弁体312の下面312aが当接(着座)すると、圧力開放弁301は閉止状態となる一方、弁体312の下面312aが弁座302eから離れると、圧力開放弁301は開放状態となる。
弁箱302の上面302fに形成された貫通穴302gには、円筒状の弁棒ガイド313が嵌挿されている。弁棒311は、この弁棒ガイド313に軸方向(即ち鉛直方向)へ移動可能に挿通されている。また、弁箱302内に設けられたベローズ314は、弁棒ガイド313及び弁棒311の周囲を囲み、上端が弁箱302の上面302fに接続され、下端が弁体312の上面312bに接続されている。このため、弁箱302内を流れる流体が弁棒ガイド313内を通ってヨーク303へ流出するのを、ベローズ314によって防ぐことができる。なお、本実施の形態例4は、このベローズ314の設置有無によらない。
ヨーク脚部303a,303bの間に設けられた弁体用ばね315は、コイル状のものである。ヨーク脚部303a,303bの間において、弁体用ばね315の上端には円環状のばね押え座316が設けられ、弁体用ばね315の下端には円環状のばね受け座317が設けられている。
ヨーク脚部303a,303bの間において、弁棒311の外周面には円板状のステップリング321が突設されている(弁棒311と一体に形成されている)。ステップリング321は、ばね受け座317の下側からばね受け座317を支持している。
一方、ヨーク303の上面303dには、調整ネジ318のためのネジ穴303cが形成されている。調整ネジ318は円筒状のものであり、外周面にネジ部318aが形成されている。調整ネジ318は、そのネジ部318aがネジ穴303cに螺合されてネジ穴303cに挿通されている。また、帽子304内において、調整ネジ318の外周面(ネジ部)318aには調整ネジロックナット319が螺合されている。従って、調整ネジ318の位置は、調整ネジロックナット319によって固定される。また、ヨーク脚部303a,303cの間において、調整ネジ318はばね押え座316に回転可能に連結されている。
調整ネジ318は、弁体用ばね315の弾性力(ばね力)を調整することによって圧力開放弁301の設定圧力(吹き出し圧力)を調節するためのものである。調整ネジ318を一方向へ回転させると、調整ネジ318が下方へ移動してばね押え座316が押し下げられることにより、弁体用ばね315が縮んで弁体用ばね315の弾性力が大きくなるため、前記設定圧力が高くなる。調整ネジ318を他方向へ回転させると、調整ネジ318が上方へ移動してばね押え座316が上方へ移動することにより、弁体用ばね315が伸びて弁体用ばね315の弾性力が小さくなるため、前記設定圧力が低くなる。
ばね押え座316には回り止めピン320が突設されている。回り止めピン320は、ヨーク脚部303a,303bに係止される。このため、調整ネジ318を回転させたとき、ばね押え座316が調整ネジ318とともに回転するのを、回り止めピン320によって防止する機能を有している。
弁棒311は、調整ネジ318、ばね押え座316、弁体用ばね315及びばね受け座317に軸方向(即ち鉛直方向)へ移動可能に挿通されている。
弁棒311の外周面の上部には、ネジ部311aが形成されている。この弁棒311のネジ部311aには、揚弁金具324(揚弁部材)と、揚弁金具ロックナット325とが螺合されている。揚弁金具324の位置は、揚弁金具ロックナット325によって固定される。
また、帽子304には、第1開放レバー326と、第2開放レバー327とが設けられている。
第1開放レバー326は水平に延びており、揚弁金具324の下側に配設されている。第1開放レバー326の先端部326aと、帽子304の側面の一方側に形成された回動軸支持部304aには回動軸328が挿通されている。従って、第1開放レバー326は、回動軸328回りに上下に回動することができる。また、第1開放レバー326は、基端側が1本の棒状である一方、先端側が二股に分かれて第1レバー部326cと第2レバー部326dとになっており、こられの第1レバー部326cと第2レバー部326dがそれぞれ弁棒311の左右両側において揚弁金具324の下側に位置している。
第2開放レバー327はL字状に屈曲されており、第1開放レバー326の下側に配設されている。第2開放レバー327の先端部327aと、帽子304の側面の他方側に形成された回動軸支持部304bには、回動軸329が挿通されている。従って、第2開放レバー326は、回動軸329回りに上下に回動することができる。また、第2開放レバー327の屈曲部327bは、第1開放レバー326の基端部326bの下側から当該基端部326bに当接している。
そして、本実施の形態例4の圧力開放弁301では、作動(開放)後の圧力開放弁301の開放状態を維持するためのクサビ331が、ステップリング321の側方に配設されている。即ち、本実施の形態例3では、ステップリング321を開放状態維持部材として利用している。
クサビ331は、先端部331aと、基端部331bとを有し、水平に配設されている。また、クサビ331は、平面視(図29)がコ字状になっている。即ち、クサビ331は、先端側が二股に分かれて第1支持部331cと第2支持部331dとになっている。クサビ331の基端部331bは、側面視(図28,図30)における上下方向の厚さが一定になっている。一方、クサビ331の先端部331aは、傾斜面331e,331fを有する部分と、これらの傾斜面331e,331fの先から水平に延びた延長部331g,331hとを有している。傾斜面331e及び延長部331gは第1支持部331c側に設けられ、傾斜面331f及び延長部331hは第2支持部331d側に設けられている。
傾斜面331e,331fは、ステップリング321へ向かうにしたがって下方へ傾斜している。延長部331g,331hは、側面視(図28,図30)における上下方向の厚さが一定になっている。
ヨーク脚部303a,303bの間において、弁箱302の上面302fには、クサビサポート取付部材332がボルト305及びナット306によって結合されている。
クサビ用ばね335はコイル状のものであり、クサビ331の基端部331bと、クサビサポート取付部材332の側面332aとの間に介設され、クサビ331をステップリング321に向かって水平方向に押圧している。
圧力開放弁301が閉止状態(待機状態)のとき、即ち弁体312が弁体用ばね315に押圧されて着座(弁座302eに当接)しているとき、クサビ331は、クサビ用ばね335に押圧されて、傾斜面331e,331fがステップリング321の外周面321aに当接する。換言すると、クサビサポート取付部材332の高さを適宜に設定することによって、圧力開放弁301が閉止状態のときにステップリング321と、クサビサポート取付部材332のクサビサポート341上に設けられたクサビ331とが互いに当接するようにしている。
また、クサビ331は、二股の底面(第1支持部331cと第2支持部331dの間の面)331iが、弁棒311と対向している。
クサビ331の基端部331bには、クサビ引き出し金具333(クサビ引き出し部材)が設けられている。クサビ引き出し金具333は、クサビ331の基端部331bに水平に突設された軸部333aと、この軸部333aの先端に設けられた頭部333bとを有して成るものである。軸部333aはクサビサポート取付部材332の側面332aに形成された貫通穴332bに挿通されてクサビサポート取付部材332(側面332a)の外側へと延びており、頭部333bはクサビサポート取付部材332(側面332a)の外側に位置している。頭部333bはクサビ引き出し用治具342(図34〜図36を参照:詳細後述)に係合させるための部分である。
また、クサビ331の下側にはクサビサポート341(クサビ支持部材)が設けられている。クサビ331は、クサビサポート341の上に設置され、ステップリング321に向かって水平に延びている。クサビサポート341はクサビ331の下側からクサビ331を支持するためのものであり、クサビサポート取付部材332の下面332c上に設けられている。また、クサビサポート341は、ステップリング321に向かって水平に延びている。また、クサビサポート341は、先端側が二股に分かれて第1支持部341aと第2支持部341bとになっている。従って、クサビサポート341は、クサビ331を支持するだけでなく、圧力開放弁301が作動(開放)したときにクサビ331が水平方向に移動(詳細後述)するように案内するクサビガイド部材としての機能も有している。
クサビ331の延長部331g,331hは、上側のステップリング321と下側のクサビサポート341との間に位置している。換言すると、クサビサポート取付部材332の高さを適宜に設定することによって、圧力開放弁301が閉止状態のときにクサビ331の延長部331g,331hを、ステップリング321とクサビサポート341の間に配置することができるようにしている。
なお、本実施の形態例4ではクサビ331が露出しているため、クサビ331の作動状態を監視するという観点からは、クサビ331の延長部331g,331hは必ずしも必要ではなく、削除してもよい。
また、本実施の形態例4ではクサビ331が露出しているため、覗き窓やクサビ確認用の開口は不要である。
次に、図31〜図33に基づき、圧力開放弁301の作動(開放及び開放状態維持)について説明する。
圧力開放弁301が設置されている容器等の機器内の流体(気体又は液体)の圧力が何らかの要因により上昇し、配管310及び弁箱302の流体入口302aを介して弁体312に作用する前記流体の圧力が設定圧力(吹き出し圧力)以上になると、弁体312が前記流体の圧力により、弁体用ばね315の弾性力(下方への押圧力)に抗して(弁体用ばね315を縮めて)押し上げられるため、図31に示す矢印a4のように上方へ移動して開放する(弁座302eから離れる)。かくして圧力開放弁301は開放状態となる。その結果、前記流体が、図31に示す矢印c4のように流体入口302aから弁箱302内に流入した後、図31に示す矢印d4のように流体出口302bから弁箱302外へと流出するため、前記機器内の流体の圧力が開放される。そして、この作動後の圧力開放弁301の開放状態は、次のようにして維持される。
前記流体の圧力によって弁体312が上方へ移動すると、この弁体312とともに弁棒311も上方へ移動する。従って、これらの弁体312及び弁棒311とともにステップリング321、ばね受け座317、揚弁金具324及び揚弁金具ロックナット325も上方へ移動する。
その結果、ステップリング321へのクサビ331(傾斜面331e,331f)の当接が解除される。従って、クサビ331は、クサビ用ばね335に押圧されることにより、図31〜図33に示す矢印b4のようにステップリング321の下側へと水平方向に移動し、クサビサポート341とともにステップリング321の下側からステップリング321を支持する。具体的には、弁棒311の左右両側において、クサビ331の第1支持部331cの基端部331bと第2支持部331dの基端部331bとが、ステップリング321の下側へ移動してステップリング321を支持する。なお、図31〜図33ではクサビ331が、二股の底面331iが弁棒311に当接するまで水平移動した実施例を示しているが、クサビ331によりステップリング321を支持すれば、圧力開放弁301の開放状態を維持することが可能なため、必ずしも底面331iを弁棒311に当接させる必要はない。
また、クサビ331は傾斜面331e,331fを有しており、この傾斜面331e,331fがステップリング321に当接しているため、弁体312及び弁棒311とともにステップリング321が上昇し始めると直ぐにクサビ331も、クサビ用ばね335に押圧されて水平方向に移動し始め、且つ、開放状態維持金具322の上昇量(リフト量)が増加するのに応じてクサビ331の水平方向への移動量も増加する。
クサビ331とクサビサポート341によってステップリング221を支持するため、弁体312に作用する前記流体の圧力が低下した後も、弁体用ばね315の弾性力(下方への押圧力)に抗して、ステップリング321が下方へ移動するのを防止することができ、これに伴って弁体312、弁棒311、ばね受け座317、揚弁金具324及び揚弁金具ロックナット325の下方への移動も防止される。かくして、弁体312が着座しないようにすることができ、圧力開放弁301の開放状態が維持される。
また、このときにクサビサポート341は、クサビ331を支持するだけでなく、クサビ用ばね335に押圧されてクサビ331が確実に水平移動するようにクサビ331を案内する機能も果たす。
また、作業員が、直接目視で或いは監視カメラなどを用いてクサビ331の作動状態を監視することにより、前記流体の圧力が設定圧力以上になって圧力開放弁301(弁体312)が開放したこと、及び、圧力開放弁301(弁体212)の開放状態がクサビ331及びクサビサポート341によって維持されていることを確認する。
次に、図34〜図36に基づき、圧力開放弁301の復旧について説明する。
圧力開放弁301を復旧させる際には、まず、作業員の手動操作によって第2開放レバー327を、図34に示す矢印e4のように先端部327aの回動軸329回りに上方へ回動させる。その結果、第2開放レバー327の屈曲部327bが第1開放レバー326の基端部326bを押し上げるため、第1開放レバー326も図34に示す矢印f4のように先端部326aの回動軸328回りに上方へ回動する。このため、第1開放レバー326によって揚弁金具324が押し上げられ、且つ、この揚弁金具324とともに弁体312、弁棒311、ステップリング321、ばね受け座317及び揚弁金具ロックナット325も押し上げられる。
従って、ステップリング321などを介してクサビ331に作用していた弁体用ばね315の弾性力(下方への押圧力)が、解除される。
このまま状態で、次に作業員はクサビ引き出し金具333とクサビ引き出し用治具342とを用いて、クサビ331の引き出しを行う。クサビ引き出し用治具342は、側面視(図34,図36)においてL字状に屈曲している。また、クサビ引き出し用治具342は、基端側が1本である一方、先端側が二股に分かれて第1係合部342aと第2係合部342bとになっている。
クサビ331を引き出す際には、まず、図36に2点鎖線で示すようにクサビ引き出し用治具342を配置することにより、クサビ引き出し金具333の軸部333aの左右両側において、クサビ引き出し用治具342の第1係合部342aと第2係合部342bを、クサビ引き出し金具333の頭部333bに係合させる。この状態で、クサビサポート取付部材332の側面332aに当接している屈曲部342cを支点にして、図34及び図36に示す矢印g4のようにクサビ引き出し用治具342を下方へ回動させる。
その結果、このクサビ引き出し用治具342により、クサビ引き出し金具333がステップリング321と反対の方向へ引っ張られるため、図34〜図36に示す矢印h4のようにクサビ331が、ステップリング321の下側から引き出されて作動前の状態(待機状態)に復旧する。
このままの状態で、次に作業員は第2開放レバー327を、図34に示す矢印i4のように下方へ回動させる。その結果、第1開放レバー326及び第2開放レバー327による揚弁金具324やステップリング321などの押し上げが解除される。このため、弁体用ばね315の弾性力(下方への押圧力)によって、図34に示す矢印j4のように第1開放レバー326は下方へ回動し、図34に示す矢印k4のように揚弁金具ロックナット325、揚弁金具324、ばね受け座317、ステップリング321、弁棒311及び弁体312は下方へ移動する。その結果、弁体312は弁体用ばね315により下方へ押圧されて弁座302eに当接(着座)した状態になり、ここでクサビ引き出し用治具342をクサビ引き出し金具333から取り外せば、クサビ331(傾斜面131e,131f)はクサビ用ばね335により水平に押圧されてステップリング321に当接した状態になる。かくして、圧力開放弁301は作動前の待機状態(閉止状態)に復旧する。
以上のように、本実施の形態例4の圧力開放弁301によれば、弁棒311と弁棒311の下端に固定された弁体312とを弁体用ばね315によって下方へ押圧することにより、弁体312が着座して閉止状態となる構成の圧力開放弁301において、弁棒311に設けられたステップリング321と、クサビ331と、クサビ331の下側からクサビ331を支持するクサビサポート341と、クサビ331をステップリング321に向かって水平方向に押圧するクサビ用ばね335とを有しており、弁体312が着座して閉止状態となっているときには、クサビ331がステップリング321の外周面321aに当接している一方、弁体312及び弁棒311が上方へ移動して開放状態となったときには、弁棒311とともにステップリング321が上方へ移動してステップリング221へのクサビ331の当接が解除されるため、クサビ331が、クサビ用ばね335に押圧されてステップリング321の下側へと水平方向に移動してクサビサポート341とともにステップリング321の下側からステップリング321を支持することにより、前記開放状態を維持する構成であることを特徴としているため、前記4つの要求を全て満足することができる。
即ち、圧力開放弁301は、電源や空気などの駆動源が無くとも、圧力開放弁301が設置された機器の内圧が設定圧力(吹き出し圧力)以上になると、自動的に作動して圧力を開放することができる。従って、圧力開放弁301は前記第1要求を満足する。
また、圧力開放弁301は、機器に設置する圧力開放弁301自身の作動試験を行うことができる。従って、圧力開放弁301は前記第2要求も満足する。
また、圧力開放弁301は、作動後にステップリング321の下側からクサビ331を引き出せば待機状態(閉止状態)に復旧するため、再使用が可能である。従って、圧力開放弁301は前記第3要求も満足する。
また、圧力開放弁301は、作動(開放)後にクサビ331及びクサビサポート341によってステップリング321を支持するため、作動(開放)後に機器内の圧力が低下しても開放状態を維持し、雰囲気圧力まで低下させることができる。従って、圧力開放弁301は前記第4要求も満足する。
また、本実施の形態例4の圧力開放弁301によれば、ステップリング321の外周面321aに当接するクサビ331の当接面が、ステップリング321へ向かうにしたがって下方へ傾斜している傾斜面331e,331fであることを特徴としており、クサビの形状を変更しても圧力開放弁301の開放状態を維持することができる。
また、本実施の形態例4の圧力開放弁301によれば、クサビ支持部材として用いたクサビサポート341は水平に延びており、クサビ331を支持するとともにクサビ331の水平移動を案内することを特徴としているため、クサビサポート341によって、クサビ331を支持するだけなく、より確実にクサビ331をステップリング321の下側へ水平方向に移動させることができる。
また、本実施の形態例4の圧力開放弁301によれば、クサビ331は、クサビ331の基端部331bに水平に突設された軸部333aと、軸部333aの先端に設けられてクサビ引き出し用治具342と係合する頭部333bとを有して成るクサビ引き出し金具333を有していることを特徴としているため、クサビ引き出し金具333とクサビ引き出し用治具342とを用いて、クサビ331をステップリング321の下側から容易に引き出すことができる。
また、本実施の形態例4の圧力開放弁301によれば、クサビ331は、先端側が二股に分かれて第1支持部331cと第2支持部331dとになっており、クサビ331がクサビ用ばね335に押圧されて水平方向に移動したとき、弁棒311の左右両側において第1支持部331cと第2支持部331dとがステップリング321を支持する構成であることを特徴としているため、クサビ331の第1支持部331cと第2支持部331dとによって、より確実にステップリング321を支持することができる。
また、本実施の形態例4の圧力開放弁301によれば、弁棒311に設けられて弁体用ばね315のばね受け座317を支持しているステップリング321を開放状態維持部材として利用していることを特徴としているため、開放状態を維持するための専用の部材を開放状態維持部材として設ける場合に比べて、部品点数の低減などを図ることができる。
また、本実施の形態例4の圧力開放弁301によれば、弁棒311に設けられた揚弁金具324と、水平に延びており、先端部326aの回動軸328回りに上方へ回動して揚弁金具324を押し上げる構成の第1開放レバー326と、L字状に屈曲しており、先端部327aの回動軸329回りに上方へ回動して屈曲部327bが第1開放レバー326の基端部326bを押し上げる構成の第2開放レバー327とを有することを特徴としているため、第1開放レバー326と第2開放レバー327によって揚弁金具324を押し上げると、ステップリング321も上がるため、弁体用ばね315の弾性力が非常に強くても、クサビ331をステップリング321の下側から容易に引き出すことができる。
なお、上記実施の形態例3,4のようにステップリングを開放状態維持部材として利用する場合、圧力開放弁はヨーク型でステップリングが露出しているほうが望ましいが、必ずしもこれに限定するものではない。ばね箱内にステップリングが設けられている場合であっても、ばね箱の形状を変えれば(例えば上記実施の形態例1,2のクサビ箱と同様にばね箱にクサビ挿入用の開口を設け、この開口にクサビサポート取付部材を結合した形状にすれば)、ステップリングを開放状態維持部材として利用することができる。
また、上記実施の形態例2では傾斜面を有するクサビに延長部を設け、この延長部がクサビ確認用の開口から箱外へ出るようにしたが、これに限定するものではなく、上記実施の形態例1のような傾斜面を有しないクサビに延長部を設け、この延長部がクサビ確認用の開口から箱外へ出るようにしてもよい。
また、上記実施の形態例1〜4では、クサビ支持部材としてクサビサポートを用いているが、必ずしもこれに限定するものではなく、クサビを設ける位置などによっては、クサビ専用のクサビサポートではなく、圧力開放弁を構成する部材(クサビ専用ではない部材)をクサビ支持部材とて利用するようにしてもよい。
また、本発明の圧力開放弁は、特に高度の安全性が要求される原子力発電所などの原子力施設に適用して有用なものであるが、これに限定するものではなく、一般産業でも採用することが可能である。