JP6061345B2 - 心臓修復のための骨髄由来cd271前駆細胞 - Google Patents

心臓修復のための骨髄由来cd271前駆細胞 Download PDF

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Description

[関連出願の相互参照]
本出願は、2010年8月27日に出願された米国仮出願第61/377,661号の優先権を主張し、その仮出願の全内容を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
[発明の分野]
本発明の実施形態は、骨髄由来間葉系前駆細胞を用いて、心血管疾患を処置するための方法に関する。
心不全は、米国医療制度にかかる直接経費および間接経費において332億ドルを占め(1、2)、この診断を下された患者の大部分は、陳旧性MIから心筋が損なわれている。左心室機能は、心筋梗塞(MI)を患っている患者において生存および生活の質の最も重要な決定因子である(1、3)。心筋は、梗塞後、非常に限られた再生潜在能しか有さず、医学における重要な探求は、細胞に基づいた組織再生の探求である。この探求は、多数の慢性病の処置を変容させることが期待できる。慢性虚血性心筋症(400万人を超える米国人が罹患している障害)の領域において、細胞に基づいた治療の成功は、患者の罹患率および死亡率に大きな影響をもたらし、この障害の社会的負担を低下させるであろう。この分野を発展させるために、過去5年間にわたって細胞治療の成功を達成させようとかなりの努力がなされてきており、骨髄由来細胞を用いるストラテジーは早期臨床試験において試験されている(4、5)。これらの臨床試験は、細胞送達方法の理解を促進し、安全性プロフィールを確立することに大きく貢献しているが、理想的な細胞供給源は、まだ完全には確立されていない。
本概要は、本発明の概要を提示して、本発明の本質と実体を簡単に示すために提供される。それは、特許請求の範囲の、範囲または意味を解釈し、または限定するために用いられるものではないという理解の下で提出される。
本発明の実施形態は、間葉系幹細胞の成体骨髄由来前駆体を含む組成物に関する。これらの細胞は、インビボで、例えば心臓などに投与され、心筋を再生する。
好ましい実施形態において、心血管疾患もしくは心血管障害を防止または処置する方法は、対象の骨髄からCD271間葉系幹細胞前駆体(MSC)を単離するステップと、治療有効量の単離されたCD271間葉系幹細胞(MSC)前駆体を患者に投与するステップとを含む。
一実施形態において、CD271MSCは、低親和性神経成長受容体(NGFR、CD271)を有する骨髄細胞から単離される。CD271幹細胞は、自己、同系、同種異系、または異種を含むドナー(または供給源)から単離される。MSC前駆細胞は、心筋、血管、または内皮系統を含む少なくとも1つの系統へ分化する。
別の実施形態において、単離された前駆体間葉系幹細胞は、患者への投与前に、エクスビボで培養され、増殖される。一実施形態において、非接着性幹細胞が増殖され、患者に投与される。別の実施形態において、前駆体間葉系幹細胞は、任意選択的に、ある期間にわたって様々な濃度で患者に投与される。一実施形態において、前駆体間葉系幹細胞は、任意選択的に、心臓由来間質細胞によって条件付けられた培地で条件付けられる。
別の実施形態において、1つまたは複数の作用物質が、任意選択的に患者に投与され、その作用物質は、サイトカイン、走化性因子、成長因子、または分化因子の少なくとも1つを含む。
好ましい実施形態において、成体幹細胞は、CD271表現型を有する骨髄間葉系幹細胞(MSC)前駆体由来細胞を含む。
他の態様は以下に記載されている。
CD271細胞の形態を示す図である。サイトスピンを調製し、ライト・ギムサで染色した。 CD271細胞(図2A、T75cmフラスコあたり170,000個の細胞)、BM MNC(図2B、T75cmフラスコあたり1500万個の細胞)、およびCD271細胞(図2C、T75cmフラスコあたり1700万個の細胞)からのMSC形成を示す図である。 10日目の培養における典型的なCFU−Fコロニーを示す図である。 7日間、14日間、および21日間のテフロンバッグ内でのCD271細胞の培養を示す図である。 非接着性間葉系幹細胞(NA−MSC)のフロー分析を示す図である。アイソタイプ対照染色は、緑色の線で示され、CD105−FITCは陰影部分で示されている。 ヒト骨髄CD271細胞からの骨形成分化および脂肪細胞分化を示す。骨形成分化および脂肪細胞分化は、方法に記載されているように実施された。骨形成分化の存在は、14日目におけるFAST BCIP/NBTにより染色されたアルカリホスファターゼ(AP)の発現によって示された(図6A、x/100)。脂肪細胞への分化は、11日目におけるOil Red O染色によって示された(図6B、x/100)。3つの実験の代表的な例が示されている。 培養されたCD271細胞における心臓マーカーの発現を示す図である。 処置群の心エコーの比較を示す図である。 CD271細胞を注射されたNOD/SCIDマウス由来の心臓切片の免疫組織化学的検査を示す図である。心臓切片を、Alu配列に関して染色し、心臓マーカー(αSA、トロポニンI(TnI)、コネキシン43(Cx))と共染色した(40X)。図9Aは境界域からの部分を示し、陽性細胞は血管壁に包埋され、また宿主筋細胞間にも存在した。図9Bは、注射されたヒト細胞をまだ示している、心臓の基底部方向への遠隔域を示す。図9Cは、遠隔領域においてalu陽性細胞を有する大血管を示す。図9Dは、多数の陽性細胞を有する別の心臓の境界域を示す。
幹細胞は、保健研究および医学研究の多くの異なる領域への潜在性を示している。癌および先天性欠損症などの最も重篤な病状のうちのいくつかは、幹細胞分化または維持の過程のどこかで起こる問題によって引き起こされる。大まかには、胚性幹細胞と成体幹細胞の2つの異なる型の幹細胞がある。胚性幹細胞は、胚盤胞内に見出され、特定化された胚組織の全てへと分化する能力をもつ。成体幹細胞は、胚発生後に全身中に見出される未分化細胞である。成体幹細胞は、分裂して、死に行く細胞を補充し、損傷組織を再生することができる。さらに、成体幹細胞は、血液、皮膚、および腸組織などの再生器官の正常な代謝回転を維持することができる。成体幹細胞は、無制限に、分裂して、自己複製する能力をもち、それらの起源である器官の細胞型の全てを発生させることができる。
幹細胞は、異なる細胞型へ分化するそれらの潜在能に基づいて、全能性、多能性、多分化能、または単能性であるとして分類することができる。全能性幹細胞は、配偶子の融合体および最初の数回分割した受精卵から産生される。これらの細胞は、胚性細胞型および胚外性細胞型へ分化することができる。多能性幹細胞は、3つの胚葉のいずれかから細胞へ分化することができる。多分化能細胞は、密接に関連したファミリーの細胞のみを産生することができる。単能性細胞は、1つの細胞型のみを産生することができるが、自己複製の性質をもち、それにより単能性細胞は非幹細胞と区別される。ほとんどの成体幹細胞は、系統限定型多分化能幹細胞であり、それらの起源の組織で呼ばれる。多能性成体幹細胞はまれであり、一般的に数は少ないが、臍帯血を含むいくつかの組織に見出すことができる(Ratajczak M.Z.ら、Leukemia 21(5):860〜867(2007))。いくつかの異なる型の成体幹細胞があり、それらには、脂肪由来幹細胞(Zuk,P.A.ら、Tissue Engineering 7:211〜216)(2001))、上皮幹細胞、造血幹細胞、乳房幹細胞(Shackleton,M.ら、Breast Cancer R E.7:86〜95(2005))、間葉系幹細胞、内皮幹細胞、神経幹細胞(Alvarez−Bullta,A.ら、Brain Res.Bull.57:751〜758(2002))、嗅覚系幹細胞(Murrel,W.ら、Dev.Dyn.233:496〜515(2005))、精巣幹細胞、歯髄由来幹細胞、および臍帯血造血前駆細胞が挙げられるが、それらに限定されない。
成体幹細胞が分裂するとき、それは、それ自身のような別の細胞、およびそれ自身よりさらに分化した細胞を生み出す。この非対称的な細胞分裂の過程は、1つの同一の娘細胞、および高い増殖能力を有する、1つの初期一過性増幅細胞(初期TA)を生じる。一連の細胞分裂を通して、初期TA細胞は、後期TA細胞、続いて、組織特異的前駆細胞、最後に、器官または組織を構成する分化細胞の塊を生じる(Ribacka,C.ら、Ann.Med.epub ahead of print:1〜10(2008))。
本発明のいくつかの態様は、例証として実例応用を参照しながら、以下に記載されている。多数の特定の詳細、関係、および方法が本発明の完全な理解を提供するために示されていることは理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本発明が、特定の詳細の1つもしくは複数を用いることなく、または他の方法を用いて、実施することができることは容易に認識するであろう。本発明は、例証された行為または事象の順序付けによって限定されず、それゆえ、いくつかの行為は、異なる順序で、および/または他の行為もしくは事象と同時に起こってもよい。さらに、全ての例証された行為または事象が、本発明に従って方法を実行するために必要とされるわけではない。
本発明の実施形態は、提示された理論的態様なしに実施してもよい。さらに、理論的態様は、出願人らが、提示された理論に縛られようと求めたわけではないという理解の下で提示されている。
[定義]
本明細書に用いられる用語は、特定の実施形態のみを記載することを目的とし、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書に用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明らかに他の指示がない限り、複数形もまた含むことを意図する。さらに、用語「含むこと(including)」、「含む(includes)」、「有すること(having)」、「有する(has)」、「と共に(with)」、またはそれらの変形が、詳細な説明および/または特許請求の範囲のいずれかに用いられる限りにおいて、そのような用語は、用語「含むこと(comprising)」と類似した様式で包含的であることを意図する。
用語「約」または「およそ」は、当業者によって決定されたような特定の値について許容可能な誤差範囲内にあることを意味し、その誤差範囲は、その値がどのように測定または決定されるか、すなわち、測定系の限界にある程度、依存するであろう。例えば、「約」は、当技術分野における実施によれば、1以上の標準偏差内を意味することができる。あるいは、「約」は、所定の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、さらにより好ましくは1%までの範囲を意味することができる。あるいは、特に生物学的系または工程に関して、その用語は、値の10倍以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内にあることを意味することができる。特定の値が本出願および特許請求の範囲に記載されている場合、他に明示されていない限り、用語「約」が特定の値についての許容可能な誤差範囲内にあることを意味することは当然とされるべきである。
本明細書で用いられる場合、「幹細胞」は、インビボまたはエクスビボのいずれかで本質的に無制限に増殖する能力があり、かつ他の細胞型へ分化する能力がある未分化細胞である。これは、それが単離された組織内に存在する、いくらか分化した、コミットした、未成熟の、前駆体の、もしくは成熟の細胞型、または例えば、一般的な前駆細胞に由来する赤血球およびリンパ球などの劇的に分化した細胞型、またはさらに、その幹細胞が得られる組織とは完全に異なる組織における任意の時期における細胞型でもあり得る。例えば、幹細胞が多能性であるならば、血液幹細胞は、脳細胞または肝臓細胞になり得、神経幹細胞は血液細胞になることができ、それらの環境から適切なシグナルがあるとすれば、それらは身体中の任意の組織へ分化することができる。
「増殖」は、例えば、単離された幹細胞が、細胞培養系において少なくとも50回、好ましくは100回、さらに最高200回以上の細胞分裂を通して増殖する能力によって決定することができる。幹細胞は、生殖細胞に関して、それらが生物の細胞全てを生じ得ることを意味する、「全能性」であり得る。幹細胞は、それらが、生物の細胞全てというわけではないが、多くの異なる細胞型を生じ得ることを意味する、「多能性」であり得る。幹細胞が分化するとき、それは一般的に、より成熟した細胞型を生じ、その細胞型は、前駆細胞、分化細胞、または高分化型細胞などの部分的に分化した細胞であり得る。幹細胞は高運動性であり得る。
幹細胞を「単離すること」とは、組織試料から幹細胞を取り出し、その組織の幹細胞ではない他の細胞から分離する工程を指す。単離された幹細胞は、一般的に、他の細胞型による混入を含まず、すなわち、「均一」または「純粋」であり、一般的に、それが単離された組織の成熟細胞を産生する増殖および分化の能力を有する。単離された幹細胞は、その幹細胞の分析または他の分化細胞型の産生のための利用に干渉しない、わずかな他の細胞型の存在下で存在することができる。単離された幹細胞は、一般的に、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または99.9%純粋である。好ましくは、本発明による単離された幹細胞は、少なくとも98%または少なくとも99%純粋である。
本明細書で用いられる場合、「培養すること」とは、細胞、細胞の収集物、組織、または器官を、細胞生存または増殖を支える環境中および条件下で、ある期間インキュベートすることによって増殖または養育することを指す。培養することは、本発明によれば、細胞、細胞の収集物、組織、または器官を拡大および増殖するステップのうちの1つまたは複数を含むことができる。
「骨髄由来前駆細胞」(BMDC)または「骨髄由来幹細胞」とは、自己複製に関する機構が恒常的に活性である、原始的な幹細胞を指す。この定義には、全能性、多能性、および前駆体である幹細胞が含まれる。「前駆細胞」は、より成熟した細胞へ分化する能力がある細胞分化経路における任意の細胞であり得る。それとして、用語「前駆細胞集団」とは、より成熟した細胞へ発達する能力がある細胞群を指す。前駆細胞集団は、全能性である細胞、多能性である細胞、および限定された幹細胞系統である細胞(すなわち、全部には及ばないが造血系統へ、または例えば、赤血球系統の細胞のみへ発達する能力がある細胞)を含むことができる。
本明細書で用いられる場合、用語「自己の」とは、その同じ個体に由来した任意の物質を指し、それは後でその個体に再導入される。
用語「異種細胞」とは、移植またはワクチン接種手順において、レシピエント動物宿主になる動物種とは異なる動物種に由来する細胞を指す。
用語「同種異系細胞」とは、「レシピエント宿主」になる動物と同じ動物種のものであるが、1つまたは複数の遺伝子座において遺伝的に異なる細胞を指す。これは、通常、ある1つの動物から、同じ種の別の非同一の動物へ移植される細胞に当てはまる。
用語「同系細胞」とは、同じ動物種のものであり、かつ大部分の遺伝子型マーカーおよび表現型マーカーについて、移植またはワクチン接種手順においてその細胞系のレシピエント宿主になる動物と同じ遺伝子構成を有する細胞を指す。これは、通常、同一の双子から移植される細胞に当てはまり、または高度に近交系の動物間で移植される細胞に適用されてもよい。
本明細書で用いられる場合、用語「安全かつ有効な量」または「治療量」とは、本発明の様式で用いられる場合、妥当な受益度/危険度の比で釣り合った、過度の有害な副作用(毒性、刺激作用、またはアレルギー応答など)なしに所望の治療応答を生むのに十分である構成要素の量を指す。「治療有効量」とは、所望の治療応答を生むのに有効な本発明の化合物の量を意味する。特定の安全かつ有効な量または治療有効量は、処置されている特定の状態、患者の身体的状態、処置されている哺乳類または動物の型、処置期間、併用治療の性質(もしあれば)、ならびに用いられる特定の製剤および化合物またはその誘導体の構造などの因子で変わる。
「患者」または「対象」とは、哺乳類を指し、それには、ヒトおよび獣医学の対象が挙げられる。
本明細書で用いられる場合、語句「診断すること」とは、疾患または症状を分類すること、疾患の重症度を決定すること、疾患進行をモニターすること、疾患の予後および/または回復の見込みを予測することを指す。用語「検出すること」もまた、任意選択的に、上記のいずれかを含んでもよい。下記に、より詳細に記載されているように、「対象から得られた生体試料」はまた任意選択的に、対象から物理的に取り出されていない試料を含んでもよいことは留意されるべきである。
「処置」は、障害の発生を防止すること、または障害の病態もしくは症状を変化させることの意図をもって実行される治療介入である。したがって、「処置」とは、治療処置と予防または防止措置の両方を指す。処置を必要としている者には、すでに障害をもつ者、および障害が防止されるべきであるものが挙げられる。本明細書で用いられる場合、「寛解した」または「処置」とは、正常化値(例えば、健康な患者または個体において得られた値)に近づいている、例えば、日常的な統計的検定を用いて決定した場合、正常化値と50%未満異なり、好ましくは正常化値と約25%未満異なり、より好ましくは正常化値と10%未満異なり、さらにより好ましくは正常化値と有意には異ならない、症状を指す。
本明細書で定義されているように、作用物質または化合物、細胞などの「治療有効量」(すなわち、有効用量)とは、治療的に(例えば、臨床的に)望ましい結果を生じるのに十分な量を意味する。組成物は、1日あたり1回または複数回から、1日おきに1回を含む、1週間あたり1回または複数回まで投与することができる。特定の因子が、対象を効果的に処置するのに必要とされる用量およびタイミングに影響を及ぼし得ることは、当業者は認識しているであろうし、その因子には、疾患または障害の重症度、前処置、対象の一般的健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患が挙げられるが、それらに限定されない。さらに、治療有効量の本発明の化合物での対象の処置には、単回の処置または一連の処置を挙げることができる。「予防有効量」とは、心臓疾患または心臓障害、例えば虚血の再発、または非限定的に、心臓疾患に罹りやすい者、例えば、心臓疾患、発作に遺伝的に罹りやすい者などを含む患者におけるそのようなものの発生を防止するのに十分な前駆体間葉系幹細胞の量を指す場合がある。予防有効量はまた、疾患の防止において予防的利益を提供する予防用物質の量を指す場合がある。
用語「試料」は、その最も広い意味で解釈されるものとする。「試料」は、例えば、個体から、または細胞培養構成物から単離された1つまたは複数の細胞、組織、または(非限定的に、血漿、血清、全血、脳脊髄液、リンパ液、涙、尿、唾液、乳、膿汁、ならびに組織滲出液および分泌物を含む)体液などの生体試料、および例えば、検査法から得られた試料を指す。生体試料は、細胞から単離された染色体(例えば、分裂中期の染色体のスプレッド)、細胞から単離されたオルガネラまたは膜、細胞全体または組織全体、溶液中またはサザン分析についてなどの固体支持体に結合したゲノムDNA、溶液中またはノーザン分析についてなどの固体支持体に結合したRNA、溶液中または固体支持体に結合したcDNAなどの核酸、溶液中または固体支持体に結合したオリゴヌクレオチド、溶液中または固体支持体に結合したポリペプチドまたはペプチド、組織、組織プリントなどを含んでもよい。
対象において関心対象となる変異体のDNA、RNA、および/またはポリペプチドのレベルを決定するために対象から生体試料を収集するのに、多数のよく知られた組織または体液収集方法を利用することができる。例として、細針生検、針生検、コア針生検、および外科生検(例えば、脳生検)、ならびに洗浄液が挙げられるが、それらに限定されない。用いられる手順に関わらず、いったん生検/試料が得られたならば、変異体のレベルを決定することができ、それに従って、診断を行うことができる。
本明細書で用いられる場合、「心臓疾患もしくは心臓障害」または「心血管疾患もしくは心血管障害」とは、任意の型の心臓疾患または心臓障害を指し、それには、心筋症、肥大型心筋症、拡張型心筋症、アテローム性動脈硬化、冠動脈疾患、虚血性心疾患、心筋炎、ウイルス感染症、創傷、高血圧性心疾患、弁膜疾患、先天性心疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、不整脈、心臓のリモデリングを生じる疾患、心不全、虚血、心筋梗塞、移植、高血圧、再狭窄、狭心症、リウマチ性心疾患、または先天性心血管欠損が挙げられる。心臓の疾患または障害は、例えば、(例えば、駆出率減少によって実証されるように)収縮力の損失などの心臓組織への損傷などの任意の理由に起因し得る。
不十分な心機能によって特徴づけられる心臓損傷または障害には、正常な心機能の任意の機能障害もしくは欠如、または異常な心機能の存在が挙げられる。異常な心機能は、疾患、傷害、および/または加齢の結果であり得る。本明細書に用いられる場合、異常な心機能には、心筋細胞、心筋細胞集団、または心臓それ自体の形態学的および/または機能的異常が挙げられる。形態学的および機能的異常の非限定的な例には、心筋細胞の物理的劣化および/または死、心筋細胞の異常な成長パターン、心筋細胞間の物理的結合の異常、心筋細胞による1つまたは複数の物質の産生不足または過剰産生、心筋細胞が正常には産生する1つまたは複数の物質を産生できないこと、ならびに異常なパターンまたは異常な時点での電気インパルスの伝達が挙げられる。より総合的なレベルでの異常には、ジスキネジア、駆出率の低下、心エコー検査によって観察されるような変化(例えば、拡張)、EKGの変化、運動耐容能の変化、毛細血管灌流の低下、および血管造影法によって観察されるような変化が挙げられる。異常な心機能は、多くの障害と共に見られ、その障害には、例えば、虚血性心疾患、例えば、狭心症、心筋梗塞、慢性虚血性心疾患、高血圧性心疾患、肺心症(肺性心)、心臓弁膜症、例えば、リウマチ熱、僧帽弁逸脱症、僧帽弁輪石灰化、カルチノイド心疾患、感染性心内膜炎、先天性心疾患、心筋疾患、例えば、心筋炎、拡張型心筋症、高血圧型心筋症、うっ血性心不全を生じる心障害、および心臓の腫瘍、例えば、原発性肉腫および二次性腫瘍が挙げられる。心臓損傷にはまた、例えば、切創、生物学的創傷(例えば、ウイルス、自己免疫疾患)または化学的創傷(例えば、化学療法、薬物)、手術、移植などの創傷が挙げられる。
「心筋虚血」とは、結果として心筋の虚血性損傷を生じる、心臓への酸素流の欠乏を指す。本明細書で用いられる場合、心筋虚血性損傷という語句は、心筋への血流の低下によって引き起こされる損傷を含む。心筋虚血および心筋虚血性損傷の原因の非限定的な例には、大動脈拡張期圧の減少、脳室内圧の増加および心筋収縮、冠動脈狭窄(例えば、冠動脈結紮、固定冠動脈狭窄、急性プラーク変化(例えば、破裂、出血)、冠動脈血栓症、血管収縮)、大動脈弁狭窄および大動脈弁逆流、ならびに右心房圧の増加が挙げられる。心筋虚血および心筋虚血性損傷の有害作用の非限定的な例には、筋細胞損傷(例えば、筋細胞喪失、筋肥大、筋細胞の過形成)、アンギナ(例えば、安定狭心症、異型狭心症、不安定狭心症、心臓性突然死)、心筋梗塞、およびうっ血性心不全が挙げられる。心筋虚血による損傷は、急性の場合も慢性の場合もあり、結果には、瘢痕形成、心臓リモデリング、心肥大、壁菲薄化、拡張、および関連した機能的変化を挙げることができる。急性または慢性の心筋損傷および/または心筋虚血の存在および原因は、当技術分野においてよく知られた様々な方法および技術のいずれかを用いて診断することができ、その方法および技術には、例えば、非侵襲性画像診断(例えば、MRI、心エコー検査)、血管造影法、ストレス試験、心筋トロポニンなどの心臓特異的タンパク質についてのアッセイ、および臨床症状が挙げられる。これらの方法および技術、加えて他の適切な技術は、どの対象が、本明細書に記載された処置方法に適した候補であるかを決定するために用いてもよい。
[骨髄由来CD271細胞]
虚血性心筋症は、先進国において心不全の主な原因であり、いったん梗塞リモデリングが起こったならば、心機能を改善するための治療はほとんど存在せず、心筋梗塞(MI)後の心臓の有害なリモデリングを実際に逆転させる処置は欠けている。成体骨髄由来前駆細胞の心臓への投与は、心筋を再生することが期待できる。本発明者らは、前臨床モデルにおいて(および予備的データとしてヒトにおいて初めて)、外科的およびカテーテル送達系を通して心臓へ送達された骨髄(BM)由来間葉系幹細胞(MSC)が生着し、逆リモデリングを援助し、心機能を改善し、および瘢痕サイズを低下させる能力を実証している。MSCは大きな見込みを示したと同時に、これらの細胞は、注射される十分な量を得るのに4〜5週間の培養を必要とする。MSCの前駆体は、低親和性神経成長因子受容体(NGFR、CD271)の発現に基づいて骨髄から単離することができ、CD271細胞は、治療的使用として容易に入手可能な細胞供給源である。重要なことには、骨髄由来CD271細胞は、骨髄吸引から得て、4〜5時間で十分な量まで単離することができ、即時使用に物流的有利性を提供する。さらに、これらの細胞は、培養されたMSCより効力において劇的に優れている。研究の目標は、齧歯類およびブタの心筋梗塞モデルにおいてBM−CD271細胞を試験する前臨床試験を行い、冠動脈バイパス手術後のCD−271細胞の直接的外科的注射の臨床試験へこの研究を移すことである。理論によって束縛されることを望まないが、中心的な仮説は、外科的注射によって送達されたBM−CD271細胞は生着し、心機能を改善し、瘢痕サイズを低下させるであろうということである。
慢性虚血性心筋症についての細胞治療は、心不全を引き起こすであろうさらなる組織損傷を防止する潜在性を提供する。本発明者らは、ヒトCD271細胞が実際に、MSCの前駆体であり、マウスの心筋梗塞(MI)モデルにおいて虚血組織を修復する潜在能を有することを実証している。CD271細胞は、培養されたMSCより強力であり、かつ心筋細胞への分化についてより大きい能力を有する。重要なことには、十分な数のCD271細胞は、4〜5時間でBMから単離することができ、自己骨髄由来治療を用いてすぐに患者を処置するために大きな物流的進歩を提供する。
好ましい実施形態において、骨髄(BM)由来前駆体間葉系CD271幹細胞が、心不全をもつ患者における虚血組織の処置に利用される。
別の好ましい実施形態において、心血管疾患もしくは心血管障害を防止または処置する方法は、有効量のCD271幹細胞を患者に投与することを含む。好ましくは、CD271細胞は、低親和性神経成長受容体(NGFR、CD271)を有する骨髄細胞から単離される。
別の好ましい実施形態において、CD271幹細胞は、自己、同系、同種異系、異種、またはそれらの組み合わせである。投与された幹細胞は損傷組織、例えば、心臓組織に存在しそれを修復する。これらの細胞は、様々な系統へ分化し、その結果として、損傷組織の再生および修復を生じる。
別の好ましい実施形態において、1つまたは複数の作用物質が任意選択的に患者へ投与され、その作用物質は、サイトカイン、走化性因子、成長因子、または分化因子の少なくとも1つを含む。
一態様において、心臓疾患または心臓障害を有する患者を処置するための方法が本明細書に提供され、その方法は、心臓または循環器系の疾患または傷害を有する患者に治療用細胞組成物を投与するステップと、心機能の改善について患者を評価するステップとを含み、前記細胞組成物は本明細書に記載されているようにCD271を含む。一実施形態において、心臓疾患は心筋症である。特定の実施形態において、心筋症は、特発性かまたは公知の原因をもつ心筋症のいずれかである。他の実施形態において、心筋症は、本来、虚血性かまたは非虚血性かのいずれかである。別の実施形態において、心臓または循環器系の疾患は、血管形成、動脈瘤、アンギナ(狭心症)、大動脈狭窄、大動脈炎、不整脈、動脈硬化、動脈炎、非対称性心室中隔肥大(ASH)、アテローム性動脈硬化、心房細動および心房粗動、細菌性心内膜炎、バーロー症候群(僧帽弁逸脱症)、徐脈、バージャー病(閉塞性血栓血管炎)、心拡大、心筋症、心炎、頸動脈疾患、大動脈縮窄、先天性心疾患(先天性心臓欠損)、うっ血性心不全(心不全)、冠動脈疾患、アイゼンメンゲル症候群、塞栓症、心内膜炎、紅痛症、細動、線維筋性異形成症、心ブロック、心雑音、高血圧、低血圧、特発性乳児動脈石灰化、川崎病(皮膚粘膜リンパ節症候群、皮膚粘膜リンパ節疾患、乳児多発動脈炎)、メタボリックシンドローム、微小血管性狭心症、心筋梗塞(心臓発作)、心筋炎、発作性心房頻拍(PAT)、結節性動脈周囲炎(多発動脈炎、結節性多発性動脈炎)、心膜炎、末梢血管疾患、重篤性肢虚血、糖尿病性脈管障害、静脈炎、肺動脈弁狭窄(肺動脈狭窄)、レイノー病、腎動脈狭窄、腎血管性高血圧、リウマチ性心疾患、中隔欠損症、無症候性虚血、シンドロームX、頻拍症、高安動脈炎、ファロー四徴症、大血管転位症、三尖弁閉鎖、心臓弁膜症、静脈瘤性潰瘍、静脈瘤、血管炎、心室中隔欠損、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群、または心内膜床欠損症の1つまたは複数を含む。
他の実施形態において、心臓または循環器系の疾患は、急性リウマチ熱、急性リウマチ性心膜炎、急性リウマチ性心内膜炎、急性リウマチ性心筋炎、慢性リウマチ性心疾患、僧帽弁疾患、僧帽弁狭窄、リウマチ性僧帽弁閉鎖不全、大動脈弁疾患、他の心内膜構造の疾患、虚血性心疾患、(急性および亜急性)、狭心症、肺循環疾患(急性肺性心、肺塞栓症、慢性肺性心)、脊柱後側弯性心疾患、心筋炎、心内膜炎、心内膜心筋線維症、心内膜線維弾性症、房室伝導障害、不整脈、心筋変性、脳血管疾患を含む循環器系の疾患、脳実質外動脈(precerebral arteries)の閉塞および狭窄、脳動脈の閉塞、動脈、臍動脈、および毛細血管の疾患(アテローム性動脈硬化、動脈瘤)、静脈およびリンパ管の疾患の1つまたは複数を含む。
一実施形態において、処置は、心筋症をもつ患者の、別の細胞型を含むかまたは含まないかのいずれかの、CD271細胞を含む治療用細胞組成物での処置を含む。他の好ましい実施形態において、患者は、その治療による恩恵、例えば、心臓に存在する幹細胞または前駆細胞を含む他の細胞の成長を援助するその細胞の能力による、組織内殖または組織の血管新生による、および有益な細胞因子、ケモカイン、サイトカインなどの存在による恩恵を経験する。
本明細書に提供されたCD271細胞または治療用組成物を投与されている、循環器系の疾患または障害を有する個体における改善は、循環器系の疾患または障害の1つまたは複数の症状の検出可能な改善によって評価または実証することができる。
別の実施形態において、本明細書に提供されたCD271細胞または治療用組成物を投与されている、循環器系の疾患または障害を有する個体における改善は、CD271細胞の投与前の個体と比較した場合、1つまたは複数の心機能の指標の検出可能な改善、例えば、胸部心拍出量(CO)、心係数(CI)、肺動脈楔入圧(PAWP)、および心係数(CI)、%短縮率(%FS)、駆出率(EF)、左室駆出率(LVEF)、左室拡張末期径(LVEDD)、左室収縮末期径(LVESD)、収縮力(例えば、dP/dt)、圧容積ループ、心仕事量の測定値の1つまたは複数における検出可能な改善の実証、心房機能または心室機能の増加、ポンピング効率の増加、ポンピング効率の損失率の減少、血行動態機能の損失の減少、ならびに心筋症に関連した合併症の減少によって評価または実証することができる。
本明細書に提供された治療用組成物を受けた個体における改善はまた、主観的な測定基準、例えば、個体の、投与後の彼または彼女の健康状態についての自己評価によって評価することができる。
特定の実施形態において、本明細書に提供された処置方法は、治療用CD271細胞が間葉系統に沿って、例えば、心筋原性、血管新生、もしくは血管形成表現型へ、または筋細胞、心筋細胞、内皮細胞、心筋の細胞、心外膜細胞、血管内皮細胞、平滑筋細胞(例えば、血管平滑筋細胞)などの細胞へ分化するように誘導することを含む。
CD271細胞またはそのような細胞を含む治療用組成物の、それを必要としている個体への投与は、例えば、移植、(例えば、細胞自体、またはマトリックス−細胞の組み合わせの一部としての細胞の)植え込み、(例えば、疾患または病的状態の部位へ直接的に、例えば心筋梗塞に罹患している個体の心臓における虚血性部位へ直接的に)注射、注入、カテーテルによる送達、または細胞治療を提供するための当技術分野で知られた任意の他の手段によって、達成することができる。
一実施形態において、治療用細胞組成物は、それを必要としている個体へ、例えば、個体における1つまたは複数の部位への注射によって、供給される。特定の実施形態において、治療用細胞組成物は、例えば、心臓における虚血性領域への、心臓内注射によって供給される。他の特定の実施形態において、細胞は、心臓の表面上へ、隣接領域へ、またはさらにより遠隔の領域へも注射される。好ましい実施形態において、細胞は、疾患領域または傷害領域へホーミングすることができる。
冠動脈系または血管系の疾患または病的状態を有する個体に、CD271細胞を、その細胞が治療的に有益であろういかなる時点でも投与することができる。特定の実施形態において、例えば、本発明の細胞または治療用組成物は、心筋梗塞発生から1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、9時間以内、10時間以内、11時間以内、12時間以内、13時間以内、14時間以内、15時間以内、16時間以内、17時間以内、18時間以内、19時間以内、20時間以内、21時間以内、22時間以内、23時間以内、もしくは24時間以内に、または1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、5日以内、6日以内、7日以内、8日以内、9日以内、10日以内、11日以内、12日以内、13日以内、14日以内、15日以内、16日以内、17日以内、18日以内、19日以内、20日以内、21日以内、22日以内、23日以内、24日以内、25日以内、26日以内、27日以内、28日以内、29日以内、もしくは30日以内に投与される。心筋梗塞発生時点に近い、例えば、1〜3日以内または1〜7日以内の投与は、心筋梗塞発生時点から遠い、例えば、3日後または7日後の投与より好ましい。他の実施形態において、本発明の細胞または治療用組成物は、疾患または病的状態の最初の診断から1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、9時間以内、10時間以内、11時間以内、12時間以内、13時間以内、14時間以内、15時間以内、16時間以内、17時間以内、18時間以内、19時間以内、20時間以内、21時間以内、22時間以内、23時間以内、もしくは24時間以内に、または1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、5日以内、6日以内、7日以内、8日以内、9日以内、10日以内、11日以内、12日以内、13日以内、14日以内、15日以内、16日以内、17日以内、18日以内、19日以内、20日以内、21日以内、22日以内、23日以内、24日以内、25日以内、26日以内、27日以内、28日以内、29日以内、もしくは30日以内に投与される。
心筋梗塞の処置に用いるキットもまた本明細書で提供される。キットは、例えば、薬学的に許容される担体およびアプリケータと混合することによって薬学的に許容される形で調製することができる治療用細胞組成物を、使用説明書と共に提供する。理想的には、キットは、心筋梗塞もしくは類似した心イベントを発症していると診断された患者に適用されるように、現場で、例えば、診療所で、または救急医療供給者によって用いることができる。
本明細書に提供された処置の方法のいくつかの態様において、CD271細胞は、CD271細胞ではない幹細胞、筋芽細胞、筋細胞、心筋芽細胞、心筋細胞、または筋芽細胞、筋細胞、心筋芽細胞、および/もしくは心筋細胞の前駆体と共に投与される。
特定の実施形態において、本明細書に提供される処置方法は、CD271細胞、例えば、その細胞を含む治療用組成物を、心臓または循環器系の疾患を有する患者に投与するステップと、心機能の改善について患者を評価するステップとを含み、前記治療用細胞組成物が、マトリックス−細胞複合体として投与される。特定の実施形態において、マトリックスは、少なくともその細胞を含む足場、好ましくは、生体吸収性足場である。
いくつかの実施形態において、CD271細胞集団は、幹細胞または前駆細胞の分化を心原性、血管新生、血管原性、または血管形成経路に沿って刺激する1つまたは複数の因子の存在下でインキュベートされ、または患者に投与される。そのような因子は当技術分野において知られている。分化のための適切な条件の決定は、日常的実験で達成することができる。そのような因子には、成長因子、ケモカイン、サイトカイン、細胞性産物、脱メチル化剤、および心原性、血管新生、血管原性、または血管形成経路または系統に沿って、例えば幹細胞の、分化を刺激することが現在知られている、または後に決定される他の刺激が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、CD271細胞は、脱メチル化剤、BMP、FGF、Wnt因子タンパク質、ヘッジホッグ、および/または抗Wnt因子の少なくとも1つを含む因子の存在下での細胞の培養により、心原性、血管新生、血管原性、または血管形成経路または系統に沿って分化してもよい。
脱メチル化剤の包含は、細胞を間葉系に沿って心筋原性経路へ分化させる傾向にある。分化は、例えば、心筋ミオシン、骨格ミオシン、もしくはGATA4の少なくとも1つの発現により、または自発的もしくは別の方法で誘導される拍動リズムの獲得により、または不整脈を誘発することなく患者の心筋へ少なくとも部分的に統合される能力により、決定することができる。そのような分化を惹起するために用いることができる脱メチル化剤には、5−アザシチジン、5−アザ−2’−デオキシシチジン、ジメチルスルホキシド、塩化チェレリスリン、レチノイン酸またはその塩、2−アミノ−4−(エチルチオ)酪酸、プロカインアミド、およびプロカインが挙げられるが、それらに限定されない。
本明細書における特定の実施形態において、細胞は、心筋原性、血管新生、血管原性、または血管形成細胞または前駆体になる。好ましくは、細胞はレシピエントの心血管系へ統合され、心血管系には、心筋、心臓の血管構造物または他の構造物、心臓血管または末梢血管などが挙げられるが、それらに限定されない。特定の他の実施形態において、CD271細胞は、心筋原性細胞またはそれらの前駆体の指標の2つ以上を獲得する細胞へ分化し、レシピエントの心臓または脈管構造へ統合され得る。特定の実施形態において、個体に投与された細胞は、不整脈、心臓欠損、血管欠損、または個体の循環器系もしくは健康状態の他の異常の増加を生じない。特定の実施形態において、CD271細胞は、患者の心筋、血管、血液などに自然に存在する幹細胞の分化を促進し、かつ例えば、心筋細胞へ、または少なくとも心筋原性系、血管新生系、血管芽系、または血管原系に沿ってそれ自体、分化するように働く。
CD271細胞およびそのような細胞の集団は、個体、例えば、心臓もしくは循環器系の疾患、障害、もしくは病的状態を有し、または心臓もしくは循環器系を冒されている個体へ治療的にまたは予防的に提供することができる。そのような疾患、障害、または病的状態には、アテローム性動脈硬化によるうっ血性心不全、心筋症、または心筋梗塞もしくは創傷からなどの心外傷、例えば、虚血傷害を挙げることができる。
CD271細胞は、その細胞、ならびにインスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、肝細胞成長因子(HGF)、IL−8、抗血栓剤(例えば、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、およびPPack(デキストロフェニルアラニン プロリン アルギニン クロロメチルケトン)、アンチトロンビン化合物、血小板受容体アンタゴニスト、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジンインヒビター、および/または血小板インヒビター)、抗アポトーシス剤(例えば、EPO、EPO誘導体および類似体、ならびにそれらの塩、TPO、IGF−I、IGF−II、肝細胞成長因子(HGF)、またはカスパーゼインヒビター)、抗炎症剤(例えば、P38 MAPキナーゼインヒビター、スタチン、IL−6インヒビターおよびIL−1インヒビター、ペミロラスト、トラニラスト、レミケード、シロリムス、非ステロイド抗炎症化合物、例えば、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、テポキサリン、トルメチン、またはスプロフェン)、免疫抑制剤または免疫調節剤(例えば、カルシニュリンインヒビター、例えば、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムスまたはエベロリムスなどのmTORインヒビター、アザチオプリンおよびミコフェノール酸モフェチルなどの抗増殖剤、コルチコステロイド、例えば、プレドニソロンまたはヒドロコルチゾン、モノクローナル抗IL−2Rα受容体抗体、バシリキシマブ、ダクリズマブ、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗リンパ球グロブリン(ALG)などのポリクローナル抗T細胞抗体、およびモノクローナル抗T細胞抗体OKT3などの抗体)、ならびに/または抗酸化剤(例えば、プロブコール、ビタミンA、C、およびE、補酵素Q−10、グルタチオン、L−システイン、N−アセチルシステイン、または前記の抗酸化誘導体、類似体、もしくは塩)などの別の治療剤を含む治療用組成物の形で個体に投与してもよい。特定の実施形態において、CD271細胞を含む治療用組成物は、1つまたは複数の追加の細胞型、例えば、成熟細胞(例えば、線維芽細胞または内皮細胞)、または幹細胞もしくは前駆細胞をさらに含む。そのような治療剤および/または1つもしくは複数の追加の細胞は、それを必要としている個体に、個々に、または2つ以上のそのような化合物もしくは作用物質を組み合わせて投与することができる。
特定の実施形態において、処置される個体は哺乳類である。特定の実施形態において、処置される個体はヒトである。特定の実施形態において、個体は、畜産動物または家畜動物である。他の特定の実施形態において、処置される個体は、ウマ、ヒツジ、ウシもしくは去勢ウシ、ブタ、イヌ、またはネコである。
別の好ましい実施形態において、幹細胞の集団は、心臓組織から単離された細胞の対照試料と比較して、少なくとも約80%純粋であり、好ましくは、幹細胞集団は、細胞の対照試料と比較して約90%純粋であり、好ましくは、幹細胞集団は、細胞の対照試料と比較して約95%、96%、97%、98%、99%、99.9%純粋である。
別の好ましい実施形態において、単離されたCD271幹細胞集団は、例えば、その細胞において活性化され得る、または活性化され得ない、非天然または外来分子、天然分子を発現させることなどの、エンドユーザーによって望まれる任意のアッセイに用いることができる。そのような分子の例は、成長因子、受容体、リガンド、治療剤などであり得る。分子は、エンドユーザーの必要性に応じて、単離された幹細胞による発現についてエンドユーザーによって選択され得る。分子は、例えば、ポリペプチド、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、有機分子または無機分子を含む。
別の好ましい実施形態において、幹細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞、臍帯血幹細胞、体性幹細胞、または癌幹細胞であってもよい。好ましい実施形態において、幹細胞は、成体幹細胞、好ましくは心筋幹細胞である。
追加として、本発明の幹細胞は、造血幹細胞または間葉系幹細胞であってもよい。本発明の幹細胞は、全能性幹細胞、多能性幹細胞、多分化能幹細胞、または単能性幹細胞であってもよい。本発明による幹細胞は、1つまたは複数の幹細胞マーカーの存在によって選択することができ、その幹細胞マーカーには、CD133、CD34、CD38、CD117/c−kit、OCT3/4、Nanog、RUNX2、SOX9、インテグリン、SPARC、オステオカルシン、エンドグリン、およびSTRO−1が挙げられるが、それらに限定されない。
本発明の幹細胞は、一次幹細胞であってもよく、または株化幹細胞系、前癌性幹細胞系、癌細胞系、もしくは任意の幹細胞マーカーを顕在化させる任意の細胞系に由来してもよい。一次幹細胞は、癌患者に由来してもよく、または健康な患者に由来してもよい。
[投与]
CD271幹細胞集団の単離は、多くの型の適用、例えば、損傷した心筋などの心臓疾患または心臓障害の処置のための心臓または他の器官への移植に有用である。本明細書で用いられる場合、「損傷した心筋」とは、虚血状態に曝された心筋細胞を指す。これらの虚血状態は、心筋梗塞、または他の心血管疾患もしくは関連した病気によって引き起こされ得る。酸素の欠乏は、周囲領域において細胞の死を引き起こし、梗塞を残し、それは最終的には瘢痕になるであろう。本明細書で用いられる場合、「加齢関連心筋症」とは、生物が加齢するにつれて起こる内因性機構の結果としての心筋の劣化を指す。
好ましい実施形態において、幹細胞は、単離された幹細胞を損傷した心筋の領域に投与することにより、それを必要としている対象において損傷した心筋または加齢関連心筋症を修復および/または再生する方法に用いられ、投与された幹細胞が筋細胞、内皮細胞、または平滑筋細胞の1つまたは複数に分化する。分化した細胞は、増殖し、心臓における適切な機能に必須の全ての構造である、冠動脈、細動脈、毛細血管、および心筋を含む様々な心臓構造を形成し得る。機能的完全性と構造的完全性の両方を回復する能力は、本発明のさらに別の態様である。好ましい実施形態において、幹細胞は、成体心筋幹細胞である。別の実施形態において、成体心筋幹細胞は、心臓または脈管構造の病的状態の1つについての治療的処置を必要としている対象から収集された心臓組織から単離され、対象へ戻して植え込まれる。
別の好ましい実施形態において、単離されたCD271幹細胞は、その幹細胞の患者への投与前にエクスビボで培養および増殖される。細胞は、例えば、自己、同系、同種異系、異種、またはそれらの組み合わせである。連続的投与が必要とされる場合には、幹細胞の同じ供給源を、必ずしも用いる必要はない。
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、治療有効用量または有効量の幹細胞を心臓に投与することを含む。有効用量は、有益な、または所望の臨床結果をもたらすのに十分な量である。用量は、1回または複数回の投与で投与することができる。何が有効用量とみなされるかということの正確な決定は、患者のサイズ、年齢、心筋損傷の領域、損傷から経過した時間量を含む、各患者に個別の因子に基づき得る。当業者、具体的には、医師または心臓専門医は、過度の実験なしに、有効用量を構成する幹細胞の数を決定することができるであろう。
本発明のいくつかの実施形態において、単離された幹細胞は、対象への投与前に活性化される。幹細胞の活性化は、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、またはそれらの変異体などの1つまたは複数のサイトカインに単離された幹細胞を曝すことにより達成してもよい。HGFは、c−Met受容体の活性化を通して幹細胞遊走およびホーミングにポジティブに影響を及ぼす(Kolletら(2003)J.Clin.Invest.112:160〜169、Linkeら(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:8966〜8971、Rosu−Mylesら(2005)J.Cell.Sci.118:4343〜4352、Urbanekら(2005)Circ.Res.97:663〜673)。同様に、IGF−1およびその対応する受容体(IGF−1R)は、心筋幹細胞分裂を誘導し、テロメラーゼ活性を上方制御し、複製老化を妨げ、心臓において機能的にコンピテントな心筋幹細胞のプールを保存する(Kajsturaら(2001)Diabetes 50:1414〜1424、Torellaら(2004)Circ.Res.94:514〜524、Davisら(2006)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:8155〜8160)。好ましい実施形態において、単離された幹細胞を、肝細胞成長因子(HGF)および/またはインスリン様成長因子(IGF−1)と接触させる。
単離された幹細胞の活性化に適するサイトカインのいくつかの他の非限定的な例には、Kanemuraら(2005)Cell Transplant.14:673〜682、Kaplanら(2005)Nature 438:750〜751、Xuら(2005) Methods Mol.Med.121:189〜202、Quinnら(2005)Methods Mol.Med.121:125〜148、Almeidaら(2005)J Biol.Chem.280:41342〜41351、Bamabe−Heiderら(2005)Neuron 48:253〜265、Madlambayanら(2005)Exp Hematol 33:1229〜1239、Kamanga−Solloら(2005)Exp Cell Res 311:167〜176、Heeseら(2005)Neuro−oncol.7:476〜484、Heら(2005)Am J.Physiol.289:H968〜H972、Beattieら(2005)Stem Cells 23:489〜495、Sekiyaら(2005)Cell Tissue Res 320:269〜276、Weidt(2004)Stem Cells 22:890〜896、Encaboら(2004)Stem Cells 22:725〜740、およびBuytaeri−Hoefenら(2004)Stem Cells 22:669〜674(それぞれの全文は引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載されているように、アクチビンA、骨形成タンパク質2、骨形成タンパク質4、骨形成タンパク質6、カルジオトロフィン−1、線維芽細胞成長因子1、線維芽細胞成長因子4、Flt3リガンド、グリア由来神経栄養因子、ヘパリン、インスリン様成長因子−II、インスリン様成長因子結合タンパク質−3、インスリン様成長因子結合タンパク質−5、インターロイキン−3、インターロイキン−6、インターロイキン−8、白血病抑制因子、ミッドカイン、血小板由来成長因子AA、血小板由来成長因子BB、プロゲステロン、プトレシン、幹細胞因子、間質由来因子−1、トロンボポエチン、トランスフォーミング成長因子−α、トランスフォーミング成長因子−β1、トランスフォーミング成長因子−P2、トランスフォーミング成長因子−β3、血管内皮成長因子、Wnt1、Wnt3a、およびWnt5aが挙げられる。
上記で挙げられたサイトカインの機能性変異体もまた、本発明に用いることができる。機能性サイトカイン変異体は、それらの対応する受容体を結合し、活性化する能力を保持する。変異体には、天然タンパク質のアミノ酸置換体、アミノ酸挿入体、アミノ酸欠失体、オルタナティブスプライス変異体、または断片を挙げることができる。例えば、NK1およびNK2は、c−MET受容体に結合することができるHGFの天然のスプライス変異体である。機能を保持する、サイトカインタンパク質の自然発生したスプライス変異体および操作された変異体のこれらの型は、本発明によって企図される。
いくつかの実施形態において、幹細胞のそれを必要としている対象への投与は、1つまたは複数のサイトカインの心臓への投与を伴う。サイトカインは、幹細胞因子(SCF)、顆粒球刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、間質細胞由来因子−1、造血幹細胞因子、血管内皮成長因子、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ刺激因子、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、インターロイキン−3、または幹細胞を刺激および/もしくは動員する能力がある任意のサイトカインからなる群から選択することができる。好ましい実施形態において、サイトカインは、HGF、IGF−1、HGFもしくはIGF−1の機能性変異体、またはそれらの組み合わせから選択される。サイトカインは、CD271幹細胞集団と同時に送達してもよい。あるいは、サイトカインの投与は、幹細胞の投与から特定の期間、先行するか、または後にするかのいずれかであってもよい。期間は、約15分間、約30分間、約1時間、約3時間、約6時間、約12時間、約24時間、約36時間、約1週間、約2週間、約1カ月間、または約6カ月間であってもよい。
サイトカインは、1回または複数回の投与によって心臓へ送達してもよい。一実施形態において、サイトカインは、単回投与によって送達される。別の実施形態において、同じ用量のサイトカインの複数回の投与が心臓に送達される。本発明の好ましい実施形態は、走化性勾配が形成されるような、複数回用量のサイトカインの心臓への投与を含む。心臓の心房および/または心尖部から左心室の中央領域へ広がる走化性勾配は、複数回用量の増加性サイトカイン濃度を投与することによって確立してもよい。あるいは、走化性勾配は、幹細胞の植え込みの部位から左心室の中央領域または梗塞性心筋の境界領域へ形成することができる。
一実施形態において、少なくとも2つのサイトカインが、走化性勾配の形成に用いられる。別の実施形態において、第1のサイトカインの濃度は一定のままであるが、第2のサイトカインの濃度は可変であり、それにより走化性勾配を形成する。
好ましい実施形態において、走化性勾配は、IGF−1およびHGFの複数回投与によって形成され、IGF−1の濃度は一定のままであり、HGFの濃度は可変である。いくつかの実施形態において、HGFの可変性濃度は、約0.1ng/mlから約400ng/mlまでの範囲であってもよい。他の実施形態において、IGF−1の濃度は、約0.1ng/mlから約500ng/mlまでであってもよい。
単離されたCD271幹細胞集団およびサイトカインは、注射により心臓に投与してもよい。注射は、好ましくは心筋内注射である。当業者が気づいているように、これは、心臓が機能する筋肉であるため、幹細胞および/またはサイトカインの好ましい送達方法である。この経路による注射は、注射された物質が、心臓の収縮運動によって失われないことを保証している。
本発明のさらなる態様において、幹細胞および/またはサイトカインは、注射により経心内膜性に、または経心外膜性に投与される。この好ましい実施形態は、サイトカインが心筋内に注射される実施形態に必要とされる、サイトカインが保護性周囲膜を透過することを可能にする。本発明の別の好ましい実施形態は、経心内膜注射剤を送達するためのカテーテルに基づいたアプローチの使用を含む。カテーテルの使用により、胸腔の切開が必要とされる、より侵襲性の高い送達方法が排除される。当業者が理解しているように、より侵襲性の低い手順によって最適な回復時間が可能になるであろう。カテーテルアプローチは、NOGAカテーテルまたは類似したシステムのような技術の使用を含む。NOGAカテーテルシステムは、標的化注射剤を送達するために、または標的領域を治療用物質に浸すために用いることができる、関心対象となる領域の電気機械的マッピングおよび伸縮自在型針を提供することにより、誘導投与を容易にする。本発明の実施形態のいずれも、注射剤を送達するための、または治療用物質を供給するためのそのようなシステムの使用を通して投与することができる。当業者は、本発明と共に用いることができる画像化システムおよびカテーテル送達システムの統合により標的処置を与える能力をまた提供する代替システムを認識するであろう。NOGAおよび類似したシステムの使用に関する情報は、例えば、Sherman(2003)Basic Appl.Myol.13:11〜14、Patelら(2005)The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery 130:1631〜38、およびPerrinら(2003)Circulation 107:2294〜2302(それぞれの本文は全体として本明細書の一部をなすものとする)に見出すことができる。別の実施形態において、単離された心筋幹細胞は、冠内投与経路によって投与される。当業者は、本発明と共に利用することができる他の有用な送達方法または植え込み方法を認識するであろう。その方法には、Dawnら(2005)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102、3766〜3771に記載されているものが挙げられ、その内容は全体として本明細書の一部をなすものとする。
本発明の方法は、心血管疾患の処置に有用であり、その心血管疾患には、アテローム性動脈硬化、虚血、高血圧、再狭窄、狭心症、リウマチ性心疾患、先天性心血管欠損、加齢関連心筋症、および動脈炎、ならびに動脈、細動脈、および毛細血管の他の疾患が挙げられるが、それらに限定されない。具体的には、本発明の方法は、上記で列挙された疾患の1つ、または加齢に伴う心筋細胞の一般的な衰えから生じる損傷した心筋の修復および/または再生を提供する。
本発明はまた、対象において心不全を防止または処置する方法を含み、その方法は、単離されたCD271成体心筋幹細胞集団を対象の心臓に投与するステップと、アンジオテンシンII受容体アンタゴニストを投与するステップとを含む。一実施形態において、CD271成体心筋幹細胞集団は、本明細書に記載されているような1つまたは複数のサイトカインへの暴露によって投与前に活性化される。別の実施形態において、1つまたは複数のサイトカインは、投与された成体心筋幹細胞が心筋損傷の領域に遊走することを引き起こす走化性勾配を形成するように心臓に投与される。別の実施形態において、1つまたは複数のサイトカインはHGF、IGF−1、またはその変異体である。レニン−アンジオテンシン系(RAS)は、身体において血圧および細胞外液量の制御を促進するホルモン系である。腎灌流が降下する場合、腎臓における細胞は、酵素レニンを放出する。レニンは、肝臓により分泌される不活性前駆体ペプチドであるアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンIへと切断する。アンジオテンシンIは、その後、主に肺に見出されるアンジオテンシン変換酵素(ACE)により、アンジオテンシンII(Ang II)へ変換される。Ang IIは、AT1受容体の活性化を通して、血管収縮ならびにアルドステロンおよびバソプレッシンの分泌を含む多くの効果を生じる。Ang IIは、心臓において酸化障害の加齢依存性蓄積に関与しており(Fiordalisoら(2001)Diabetes 50:2363〜2375、Kajsturaら(2001)Diabetes 50:1414〜1424)、老化を誘導し、内皮前駆細胞の数および機能を減少させることが報告されている(Kobayashiら(2006)Hypertens.Res.29:449〜455)。加えて、Ang IIは、筋細胞においてアポトーシスを引き起こし(Leriら(1998)J.Clin.Invest.101:1326〜1342)、心不全の進行に寄与する可能性がある(McMurrayら(2003)Lancet 362:767〜771)。実際、AT1受容体の阻害は、慢性心不全をもつ患者の臨床転帰を改善し、ヒトの寿命を延ばすことが示されている(McMurrayら(2003)Lancet 362:767〜771)。
本発明は、成体心筋幹細胞の対象の心臓への投与と組み合わせて、Ang II受容体アンタゴニストを投与することにより対象において心不全を防止し、および/または慢性心不全を処置する方法を提供する。好ましくは、Ang II受容体アンタゴニストは、AT1受容体のアンタゴニストである。本発明に含まれるであろうAng II受容体アンタゴニストのいくつかの非限定的な例には、バルサルタン、テルミサルタン、ロサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、カンデサルタン、およびエプロサルタンが挙げられる。
加えて、アンジオテンシン変換酵素(ACE)のインヒビターが、Ang II受容体アンタゴニストに加えて、またはそれの代わりに投与されてもよい。上記のように、ACEは、アンジオテンシンIをアンジオテンシンIIに変換する。この酵素の阻害は、Ang IIのレベルの減少をもたらし、それに従って、Ang IIの心筋幹細胞への悪影響を低下させるであろう。本発明の方法に用いられ得るACEインヒビターには、ベナゼプリル、エナラプリル、リシノプリル、カプトプリル、フォシノプリル、ラミプリル、ペリンドプリル、キナプリル、モエキシプリル、およびトランドラプリルが挙げられるが、それらに限定されない。
Ang II受容体アンタゴニストまたはACEインヒビターは、成体心筋幹細胞の投与後に複数回用量で対象に投与してもよい。そのアンタゴニストまたはインヒビターは、設定時間の間、日常的なスケジュールで服用してもよい。例えば、インヒビターは、成体心筋幹細胞の投与後、約1カ月間、約2カ月間、約3カ月間、約6カ月間、約12カ月間、または約24カ月間、1日1回、服用してもよい。他の投薬スケジュールを用いてもよい。当業者、特に医師または心臓専門医は、ACEインヒビターまたはAng II受容体アンタゴニストの投与についての適切な用量およびスケジュールを決定することができるであろう。好ましくは、心不全の1つまたは複数の症状は、心筋幹細胞、ならびにアンジオテンシンII受容体アンタゴニストおよび/またはACEインヒビターの投与後、低下または軽減される。心不全の症状には、疲労、脱力、頻拍または不整脈、呼吸困難、持続性の咳または喘鳴、脚および足における浮腫、ならびに腹部の膨満が挙げられるが、それらに限定されない。
本発明はまた、例えば、心血管疾患、心不全、または他の心臓の病的状態を処置するための本発明の方法に用いる、成体幹細胞および/または少なくとも1つのサイトカインを含む薬学的組成物などの組成物を調製するための方法を含む。一実施形態において、薬学的組成物は、単離されたヒト心筋幹細胞および薬学的に許容される担体を含む。好ましい態様において、方法、および/または薬学的組成物を含む組成物は、心臓および/または血管の病的状態を処置するのに有用な適切な薬剤と併用して、有効量の成体心筋幹細胞または2つ以上のサイトカインを含む。
追加の好ましい態様において、本発明の薬学的組成物は注射により送達される。これらの投与(送達)経路には、皮下、または静脈内、動脈内(例えば、冠内)、筋肉内、腹腔内、心筋内、経心内膜、経心外膜、鼻腔内の投与、およびクモ膜下腔内を含む非経口、ならびに注入技術が挙げられるが、それらに限定されない。したがって、薬学的組成物は、好ましくは、注射に適している形をとる。本発明の治療用物質を非経口で投与する場合、それは、一般的に、単位用量の注射可能な形(溶液、懸濁液、乳濁液)に製剤化される。注射に適した薬学的製剤には、滅菌水溶液または水分散液、および滅菌注射用溶液または分散液への再構成のための滅菌粉末が挙げられる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。
適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤の使用により、分散の場合において必要とされる粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。綿実油、ゴマ油、オリーブ油、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、または落花生油などの非水性媒体、およびミリスチン酸イソプロピルなどのエステルもまた、化合物組成物のための溶媒系として用いてよい。追加として、抗菌保存剤、抗酸化剤、キレート化剤、および緩衝剤を含む、組成物の安定性、無菌性、および等張性を増強する様々な添加物を加えることができる。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって保証することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましい。注射用剤形の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によりもたらすことができる。しかしながら、本発明に従って、用いられるいかなる媒体、希釈剤、または添加物も、本化合物と適合性でなければならない。滅菌注射用溶液は、本発明を実施するのに利用される化合物を、必要とされる量の適切な溶媒中に、必要に応じて様々な量の他の成分と共に、組み入れることにより、調製することができる。
例えば治療的用量のCD271幹細胞を含む、本発明の薬学的組成物は、様々な媒体、補助剤、添加物、および希釈剤などの任意の適合性担体を含有する注射用製剤において対象に投与することができる。または本発明に利用される化合物は、モノクローナル抗体、イオン泳動的なポリマーマトリックス、リポソーム、およびミクロスフェアなどの徐放性皮下インプラントまたは標的化送達系の形をとって対象に非経口で投与することができる。本発明に利用される薬学的組成物は、対象に経口で投与することができる。錠剤、懸濁液、溶液、乳濁液、カプセル、粉末、シロップなどにおける化合物を投与することなどの通常の方法が使用できる。化合物を経口で、または静脈内に送達し、かつ生物学的活性を保持する公知の技術が好ましい。
一実施形態において、本発明の組成物は、最初に投与され、その後、さらなる投与によって維持することができる。例えば、本発明の組成物は、1つの型の組成物において投与され、その後、異なる型または同じ型の組成物においてさらに投与することができる。例えば、本発明の組成物は、血中レベルを適切なレベルまでもってくるように静脈内注射によって投与することができる。その後、対象のレベルは、経口剤形によって維持されるが、対象の状態に応じて他の投与の形を用いることができる。投与される薬学的組成物の量は、処置される対象について様々である。好ましい実施形態において、2×10個〜約1×10個の成体心筋幹細胞、および任意選択的に、1日あたり50〜500μg/kgのサイトカインまたは前記サイトカインの変異体が対象に投与される。しかしながら、何が有効用量とみなされるかの正確な決定は、対象のサイズ、年齢、損傷した心筋の領域、および損傷から経過した時間量を含む、各対象に個別の因子に基づき得る。したがって、当業者は、本発明の方法において投与される組成物中の化合物ならびに任意の添加物、媒体、および/または担体の用量および量を容易に決定することができる。典型的には、(活性幹細胞(複数可)および/またはサイトカイン(複数可)に加えての)任意の添加物は、リン酸緩衝食塩水中0.001重量%〜50重量%溶液の量で存在し、活性成分は、約0.0001重量%〜約5重量%、好ましくは約0.0001重量%〜約1重量%、最も好ましくは約0.0001重量%〜約0.05重量%、または約0.001重量%〜約20重量%、好ましくは0.01重量%〜約10重量%、最も好ましくは約0.05重量%〜約5重量%などのマイクログラム〜ミリグラムのオーダーで存在する。もちろん、動物またはヒトに投与される任意の組成物について、および任意の特定の投与方法については、それゆえに、適切な動物モデル、例えば、マウスなどの齧歯類において致死量(LD)およびLD50を決定することによるなどの毒性、ならびに組成物(複数可)の用量、その中の構成要素の濃度、および適切な応答を誘発する、組成物(複数可)を投与するタイミングを決定することが好ましい。そのような決定は、当業者の知識、本開示、および本明細書に引用された文献から過度の実験を必要としない。連続投与についての時間は、過度の実験なしに、確認することができる。本発明の治療用物質を含む組成物の例には、懸濁液、シロップ、またはエリキシル剤などの、開口部、例えば、口腔、鼻腔、肛門、膣、経口、胃内、粘膜(例えば、舌下粘膜、歯槽粘膜、歯肉粘膜、嗅粘膜、または呼吸粘膜)などの投与のための液体調製物、および滅菌懸濁液または乳濁液などの、非経口、皮下、皮内、筋肉内、または静脈内の投与(例えば、注射投与)のための調製物が挙げられる。そのような組成物は、滅菌水、生理食塩水、グルコースなどの適切な担体、希釈剤、または賦形剤と混合してもよい。組成物はまた、凍結乾燥することができる。組成物は、望まれる投与経路および調製に応じて、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、ゲル化添加剤または粘性増強添加剤、保存剤、香味剤、着色剤などの補助的な物質を含有することができる。過度の実験なしに適切な調製物を調製するために、参照により本明細書の一部をなすものとする、「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCE」第17版、1985などの標準テキストを調べてもよい。
本発明の薬学的組成物は、便利には、液体調製物、例えば、選択されたpHに緩衝することができる、等張性水溶液、懸濁液、乳濁液、または粘性組成物として提供される。
明らかに、適切な担体および他の添加物の選択は、正確な投与経路および特定の剤形の性質、例えば、(例えば、組成物の製剤化されることになっている形が溶液、懸濁液、ゲル、または別の液体形に関わらず)液体剤形、または(例えば、組成物の製剤化されることになっている形が丸薬、錠剤、カプセル、キャプレッツ、徐放性形、または液体充填形に関わらず)固形剤形に依存する。溶液、懸濁液、およびゲルは、通常、活性化合物に加えて、多量の水(好ましくは精製水)を含有する。pH調整剤(例えば、NaOHなどの塩基)、乳化剤または分散剤、緩衝剤、保存剤、湿潤剤、ゼリー化剤(例えば、メチルセルロース)、着色剤、および/または香料などの少量の他の成分も存在していてよい。組成物は等張性であり得、すなわち、それらは、血液および涙液と同じ浸透圧を有し得る。本発明の組成物の望ましい等張性を、塩化ナトリウム、あるいはデキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、または他の無機もしくは有機の溶質などの他の薬学的に許容される作用物質を用いて達成してもよい。塩化ナトリウムは、特にナトリウムイオンを含有する緩衝液について、好ましい。
組成物の粘性は、薬学的に許容される増粘剤を用いて、選択されたレベルに維持することができる。容易かつ経済的に入手でき、扱うのが簡単であるため、メチルセルロースが好ましい。他の適切な増粘剤には、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマーなどが挙げられる。薬学的に許容される保存剤は、組成物の有効期間を増加させるために用いることができる。ベンジルアルコールが適し得るが、例えば、パラベン、チメロサール、クロロブタノール、または塩化ベンザルコニウムを含む様々な保存剤もまた用いてよい。保存剤の適切な濃度は、全重量に基づいて0.02%から2%までであるが、選択される作用物質に依存して、かなりの変動があってもよい。当業者は、組成物の構成要素が、活性化合物に対して化学的に不活性であるように選択されるべきであることを認識するであろう。これは、化学的および薬学的原理において当業者にとって問題にはならず、または標準テキストの参照により、もしくは(過度の実験を含まない)簡単な実験により、本開示および本明細書に引用された文献から、問題を容易に避けることができる。
組成物は、特定の対象の年齢、性別、体重、および健康状態、ならびに投与に用いられる組成物の形(例えば、固体対液体)のような因子を考慮する、医学および獣医学分野の業者によく知られた用量および技術で投与することができる。ヒトまたは他の哺乳類についての用量は、本開示、本明細書に引用された文献、および当技術分野における知識から、当業者により過度の実験なしに決定することができる。初回投与およびさらなる投薬について、または連続投与についての適切な投与計画もまた変えることができ、初回投与、続いて連続投与を含んでもよい。しかし、とはいえ、当業者が、本開示、本明細書に引用された文献、および当技術分野における知識から確認してもよい。
本発明の薬学的組成物は、非限定的にアテローム性動脈硬化、虚血、高血圧、再狭窄、狭心症、リウマチ性心疾患、先天性心血管欠損、および動脈炎、ならびに動脈、細動脈、および毛細血管の他の疾患を含む、心不全および心血管疾患、または関連した病気を処置するために用いられる。したがって、本発明は、心臓疾患または心臓障害を含むこれらの病的状態または他の病的状態の任意の1つまたは複数の処置または防止のための、本明細書で論じられているような成体幹細胞の、単独で、または本明細書で論じられているような1つもしくは複数のサイトカインもしくは前記サイトカインの変異体との併用での投与を含む。有利な投与経路は、非限定的に、皮下、または静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、心筋内、経心内膜、経心外膜、鼻腔内、およびクモ膜下腔内を含む非経口を含む注射、ならびに注入技術によるものなどのこれらの病的状態を処置するのに最も良く適したものを含む。
本発明の様々な実施形態が上記されているが、それらは、例としてのみ提示されているのであって、限定としてではないことは理解されるはずである。本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本明細書の開示に従って、開示された実施形態へ多数の変更を加えることができる。したがって、本発明の広範さおよび範囲は、上記の実施形態のいずれにも限定されるべきではない。
本明細書に挙げられた全ての文献は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。本出願に引用された全ての刊行物および特許文献は、あたかも各個々の刊行物または特許文献が個々に表示されているかのような同じ程度まで、全ての目的のために参照により組み入れられている。本文書における様々な参考文献の引用により、出願人は、いかなる特定の参考文献も彼らの発明の「先行技術」であることを認めるものではない。発明の組成物および方法の実施形態は、以下の実施例に例証される。
以下の非限定的な実施例は、本発明の選択された実施形態を例証する役割を果たす。構成要素のエレメントの割合および選択肢のバリエーションは当業者にとって明らかであり、本発明の実施形態の範囲内である。
[材料および方法]
非標準的略語および頭字語
骨髄(BM)、コロニー形成単位線維芽細胞(CFR−F)、冠動脈バイパス移植(CABG)、駆出率(EF)、拡張末期容積(EDV)、収縮末期容積(ESV)、間葉系幹細胞(MSC)、単核細胞(MNC)、マウス心臓間質細胞条件培地(MsHrtStr CM)、心筋梗塞(MI)、非接着性MSC(NA−MSC)、組換えヒト塩基性線維芽細胞成長因子(rhbFGF)。
マウス
ヒト細胞を、左冠動脈結紮および心筋梗塞(MI)の誘導を受けたNOD/SCIDマウスへ移植した。月齢2カ月の雄マウスのみを研究した。コホートは以下のとおりであった。1)ヒトMSCを注射された10匹のマウス、2)ヒトBM−CD271細胞を注射された10匹のマウス。
左冠動脈の結紮の方法
マウスを、導入として5%イソフルランを用い、その後、腹腔内にエトミデート20mg/kgを用いて麻酔した。気管内挿管を実施し、その後、心臓モニター上にマウスを置き、機械的に人工呼吸させた。左外側開胸術の部位にわたる皮膚を準備し、ポピドンヨード10%溶液を用いて無菌様式で覆った。熱損失を防ぐために手順中、加温パッドを用いてマウスを暖かく保った。外科的に、滅菌非薬物的眼軟膏剤を、角膜乾燥を防ぐために手術前に目に塗布した。
十分な鎮静に達した時点で、左外側開胸術により胸部を切開した。左冠動脈を露出させ、前壁MIを生じるように結紮した。閉塞から10分後、エリスロポイエチン(2〜6μg/kg)を、内頸カテーテルを通して注入した。胸部を、0および3.0(筋肉用)の吸収性縫合糸で層を成すように閉じ、ブプレノルフィン(0.05〜0.1mg/kg皮下)を、手術後、疼痛のために与えた。マウスに包帯を巻き、標準的な無菌の隔てられた飼育室に置き、そこで、マウスは、手術後3〜4日間で回復する。疼痛コントロールを、ブプレノルフィン0.05〜0.1mg/kg皮下、12時間ごと×6回投与で達成した。動物を、術後期において疼痛および感染について綿密に(1日4回)モニターし、食欲不振、毛づくろいの障害、攻撃性、および呼吸困難などの兆候を探した。麻痺、宿弊、呼吸困難、または動きたがらないことを示す動物を、研究から外し、安楽死させた。
冠動脈結紮糸の設置を除く全てを経験する偽手術されたマウスは対照の役割を果たす。周術期死亡率は、偽群において低く(15%未満)、梗塞を起こしたコホートについてわずかに高かった。残りのマウスについては、約75%が、MIから少なくとも2カ月後、生存していた。典型的には、マウスを、手術後4週間、研究した。
幹細胞を、30ゲージ針を用いて直接的心筋内注射により投与した。梗塞の当日において、胸部をMI誘導のために切開すると同時に、細胞を心筋へ直接、注射した。100μlの3回の注射を行った。
血行動態測定のための方法
無傷の心臓血行動態分析を、小型化コンダクタンス微圧測定を用いて実施した。動物を以下のとおり麻酔した。イソフルランガス、続いてエトミデート12mg/kg腹腔内、ウレタン600mg/kg腹腔内、およびモルフィン1mg/kg腹腔内。気管内挿管を実施し、その後、心臓モニター上にマウスを置き、機械的に人工呼吸させた。左内頸静脈を露出させ、薬物の投与のために30ゲージ針でカニューレ処置した。4電極の圧容積カテーテル(SPR−839、Millar Instruments Inc)を右頸動脈へ挿入し、左心室へと進めた。圧容積ループの測定をベースラインおよびイソプロテレノールの注入(1〜100ng/分)後、行った。最後に、胸郭切開により下大静脈をクランプすることによって前負荷を減少させた。麻酔深度を、胸壁の動き、心拍数、血圧、筋緊張、および刺激知覚を観察することによってモニターした。実験の終わりに、動物を(上記のような深い麻酔下で)安楽死させ、将来的な分子生物学的研究および免疫組織化学的検査のために心臓を摘出した。
慢性虚血性心筋症のモデル
ゲッティンゲン(Gottingen)ミニブタ(25〜30kg、雌、月齢10〜12カ月)を用い、虚血性心不全の大型動物モデルに供した。慢性虚血性心筋症の前臨床モデルを作製するために、ミニブタに、麻酔導入のためにケタミンを与え、気管内挿管を実施し、全身麻酔の維持のためにイソフルランを与えた。ブタは、非侵襲的BP、心拍数、体温、パルスオキシメトリ、およびカプノグラフィーの連続的モニタリングを受けた。中央頸部に縦切開を行い、右の総頸動脈および内頸静脈を露出させた。血管ループに関する近位および遠位のコントロールが得られ、その後、7Fr血管アクセスシースを、右総頸動脈と右内頸静脈の両方に置いた。IVC閉塞に関する圧容積ループを、MI前およびMI後に得た。左および右の冠血管造影を、JR4カテーテルを用いて行った。その後、ミニブタは、第1対角枝のすぐ遠位の冠動脈左前下行枝(LAD)の2.5時間のバルーン閉塞により、実験的前壁梗塞を起こした。ブタを、不整脈についてモニターし、必要に応じて二次救命処置を開始した。バルーン血管形成術の完了時点で、頸動脈を、6−0 prolene縫合糸で修復し、内頸静脈を結紮した。頸部切開を、3層を成すように閉じる。筋膜、皮下組織、および皮膚が3−0 polysorbを用いて再び接近する。その後、ミニブタを回復させ、瘢痕、典型的には、左心室の約20%で、前壁中隔に位置した貫壁性梗塞を、心臓がリモデリングを起こすように、3カ月間、治癒させた。
ヒトBM−MSCまたはヒトBM−CD271細胞の送達
MIから3カ月後、ミニブタに、麻酔導入のためにケタミンを与え、手術台に仰臥位に置き、マスクによってイソフルランを与え、気管挿管を実施し、全身麻酔の維持のためにイソフルランを継続した。左の総頸動脈および内頸静脈の血管アクセスを上記のように得て、圧容積ループを用いて血行動態評価を行った。左前側方開胸切開を、No.10のメスで第5〜第6肋間腔に行った。軟組織を、出血をコントロールするために電気焼灼術で解剖した。壁側胸膜を同定した。メッツェンバウム(metzenbaum)ハサミを用いて、肺実質を傷つけないように注意して、左胸膜腔に入るようにそれを切開した。開胸器を用いて、肋骨を拡げた。心膜を同定し、メッツェンバウムハサミを用いて、横隔神経より前で止め、かつ心筋を傷つけないように注意して、縦切開を行った。心臓を露出させ、瘢痕および境界域の領域への10回の注射を、0.5ccのMSCまたはCD271細胞で満たされた注射器で行った。注射された総容積は、5ccであった。いかなる出血領域も綿撒糸縫合でコントロールした。開胸切開を、2−0polysorb縫合糸で3層を成すように閉じ、水中吸引への18Fr胸腔チューブを切開の外側面に配置した。その後、ブタを人工呼吸器から引き離し、回復させた。次の日、胸腔チューブを取り外した。コホートは以下のとおりであった。1)MI後3カ月目における2億個のMSCの注射(n=6)、2)MI後3カ月目における200万個のCD271細胞の注射(n=6)。
心機能の評価
移植されたCD271細胞およびMSCの効果を、左心室圧容積ループおよび連続心臓MRを用いて評価した。左心室(LV)血行動態を、LVへ設置されたMillar圧容積トランスデューサーカテーテルを用いて、心臓カテーテル法中、急性MI前およびMI後、注射時点、ならびに屠殺時点において評価した。同時の非侵襲的心機能データを、Siemens 1.5T MRIスキャナを用いて得た。心臓MRは、全体機能、局所機能、瘢痕サイズ、および灌流パラメータを評価する、包括的かつ高度に正確な画像診断法として登場した。心臓MRについて、多数の心臓パラメータが1回の調査で評価されるので、心臓を画像化するためのワンストップショップであると多数の人にみなされている。心臓MRプロトコールは、ECGゲート化シネ画像、初回通過ガドリニウム灌流画像化、タグ付きMR画像、および遅延型超増強画像を含む。典型的なMRスキャンは、大量の後処理分析を必要とする心臓の約1,200枚の画像を得る。全画像は、University of Miami WebPaxシステム上に維持され、各研究をDell Precision 690ワークステーションへダウンロードした。2つのFDA認可ソフトウェアプログラム、Segment(Medviso AB and Lund University、Lund、Sweden)およびDiagnosoft(Cary、NC)を分析のために用いた。シネ画像および遅延型超増強画像を、Segmentソフトウェアを用いて分析した。タグ付き画像および初回通過灌流画像を、Diagnosoftプログラムを用いて分析して、ピークのオイラー周方向ひずみおよび心筋上り勾配ならびに濃度曲線下面積がそれぞれ得られた。
屠殺および組織診断
細胞の注射後3カ月目において、各動物を、上記で論じられているように、深い麻酔下で屠殺した。心臓を拡張期に停止させる40mEqの塩化カリウムの中心静脈注入により心臓を停止させた。ブタの心臓を摘出し、ホルムアルデヒド中に保存した。各心臓を短軸に切片化し、梗塞域、境界域、および遠隔域の生検を、共焦点顕微鏡法で生着および分化について分析した。加えて、ブタの全身剖検を行い、異所性組織形成について評価した。
マウス
免疫不全であり、かつヒト幹細胞の適切なレシピエントであるという理由から、NOD−SCIDマウスを用いた。MIを起こしているマウスの心機能は、手術後4週間以内において、偽手術されたマウスより低かった。計算に基づいて、0.90の検出力およびα=0.05に達するために、8匹のマウスが各コホートに含まれる必要がある。しかしながら、野生型マウスについてのMI後の死亡率は、手術後の最初の6週間に関して約25%であった。したがって、MI研究を実施するために、少なくとも10匹のマウスを各コホートに用いた。
ブタ
ヒトと類似した冠動脈解剖学的形態を理由に、ゲッティンゲンミニブタを前臨床研究に用いた。月齢約12〜15カ月において、それは、安定な成長曲線を描き、そのことが、長期生存研究において、心臓の交絡する成長を最小限にしながらの追跡を可能にした。計算により、0.90の検出力およびα=0.05に達するために、6匹のブタが各コホートに含まれる必要があることが示された。
マウス手術
マウス手術を、疼痛および不快感の防止を配慮して実施した。上記で示されているように、麻酔および鎮痛を与えるために、いかなる手術手順中でも適切な作用物質を用いた。冠動脈結紮について、マウスを、導入のために5%イソフルランで、その後、エトミデート20mg/kg腹腔内で麻酔した。疼痛コントロールを、ブプレノルフィン0.05〜0.1mg/kg皮下に12時間ごとで達成した。加えて、マウス体温を、加温毛布またはランプを用いて維持した。幾匹かのマウスは、異なる手術手順のせいで、心肥大および心不全を発症したが、過剰な体重減少、呼吸困難、チアノーゼ、および非応答性を経験したマウスを評価し、適切な場合、早期に安楽死させた。
ブタ手術
全てのブタ手順を、疼痛および苦痛の防止を考慮して行った。上記で論じられているように、全手順を全身麻酔下で行う。術後の疼痛を、ブプレノルフィン0.05〜0.1mg/kgの皮下注射の術後注射でコントロールし、フェンタニール25mcgパッチを、ブタの背側に72時間置く。研究過程のいかなる時点でもブタが苦しんでいる場合には、獣医チームおよび調査チームがそれを評価した。苦悩の多くの場合は、創傷または肺の感染によるものであり、それは、経口または筋肉内抗生物質で管理することができる。
安楽死
これらの方法は、2007 American Veterinary Medical Association Guidelines on Euthanasiaの推奨と一致している。
全てのブタおよびマウスを、以下の2つの指標のうちの1つについて安楽死させた。1)鎮痛剤、抗生物質、および他の手段によって軽減されなかったかなりの術後疼痛または苦悩を示すこと、2)生理学の研究のために設計された時間量を完了したこと。マウスを、ケタミン(150mg/kg)およびキシラジン(10mg/kg)の過量投与、ならびにその後、頚椎脱臼により、安楽死させた。ブタを、前に論じられているように、深い麻酔下に置き、心臓を、40mEqの塩化カリウムで停止させる。
[実施例1]
マウスの心筋梗塞のモデル(NOD/SCID)におけるヒトBM−MSCとBM−CD271細胞の比較
これを試験するために、確立されたマウスの心筋梗塞のモデルを、NOD/SCIDマウスにおける冠動脈左前下行枝(LAD)の開胸一時的結紮により用いた。虚血の1時間後、縫合結紮をLADから除去し、完全な再灌流を可能にした。その後、マウスを、ヒトBM−MSCまたはBM−271細胞に対して1:1形式でランダム化した。追加の動物群を用いて、適切な対照および比較を確立した。これらは、造血幹細胞/前駆細胞、および内皮前駆体を含有する、CD34およびCD133骨髄由来細胞を含む。その後、再灌流後、細胞を、瘢痕および境界域の領域に直視下で10μLの総注射容積を注射した。その後、マウスを、細胞治療の効力を評価するために連続心エコー検査によって8週間、追跡した。注射後8週間目において、マウスは、詳細な血行動態評価を受け、屠殺され、注射された細胞の生着および分化を決定する免疫組織化学的分析のために心臓を摘出された。
病理組織診断
研究の終了時点での血行動態測定後、マウス心臓に、免疫組織化学的研究のために、塩化カリウムおよび固定剤を灌流した。非梗塞性心室組織の肥大を検出するために、死体全体、心臓、肺、および肝臓の重量、ならびに頸骨長を測定した。心臓切片を、全般検査のためにヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。Massonによる青色染色された横断面における左心室の外周の割合は、梗塞サイズの測定を提供する。
分化した幹細胞を免疫染色によってトラッキングした。ヒト細胞を、alu染色を用いてマウス心臓内に検出した。トロポニンI、α−サルコメアアクチン、心筋細胞、デスミン、α−心臓アクチニン、コネキシン−43、GATA−4、Nkx−2.5、およびMEF2の染色は筋細胞を示した。CD31染色およびビメンチン染色を用いて、内皮細胞を同定し、一方、α−平滑筋アクチンおよびSMA22を用いて平滑筋細胞を同定した。このように、ヒトCD271またはMSCの注射に起因する全ての細胞、およびこれらの細胞の異なる系統に再生する潜在能を同定することができる。
心臓再生の十分な記載にはまた、筋細胞の総数およびサイズの測定も含まれた。左心室あたりの筋細胞数を、BruelおよびNyengaardの方法を用いて核を数えることにより推定した。筋細胞断面積を測定するために、スライドを、フルオレセイン連結型コムギ胚芽凝集素(Invitrogen)およびHoechst 33258で染色した。筋細胞容積を、カヴァリエリの原理と解剖用器具の原理の組み合わせを用いて計算した。あるいは、個々の筋細胞は、形態計測ソフトウェアを用いる急速分離後の共焦点顕微鏡法により測定することができる。病的リモデリングに関連した線維症を検出するために、切片を、シリウスレッド(コラーゲン)およびファストグリーン(細胞)で染色した。結果は、マッソントリクロームによって実証された。進行中のリモデリングに関連している可能性がある任意のアポトーシス性筋細胞を検出するために、パラフィン包埋切片を、間接TUNEL法に基づいたApoptag Red In Situ Apoptosis Detection Kit(Millipore)を用いて染色した。他のアッセイには、切断されたカスパーゼ−3に特異的な抗体を用いる免疫組織化学的方法、カスパーゼ依存性PKCδ切断のウェスタンブロッティングによる検出、およびDNAラダー法が挙げられる。
マウス研究
実験的MI後にNOD/SCIDマウスの心臓へ注射されたヒトBM−CD271細胞は、プラセボおよび間葉系幹細胞と比較して、駆出率(EF)および短縮率を改善する。重要なことには、CD271細胞は、はるかに多数の培養MSCより、EFを改善し、かつ心腔サイズの増加をより大きい程度で回復させることに非常に強力であった。CD271細胞注射はまた、収縮末期圧容積曲線の傾きの増加および左方シフトにより証明されているように、プラセボと比較して心筋収縮力の改善を引き起こした。組織学的に評価した場合、CD271細胞は、高度の生着および筋細胞分化の証拠を示し、心臓回復が、傷害された心筋における細胞生着によるという考えを支持した。これらの研究は、CD271 MSC前駆体が、培養MSCより高い程度での、筋細胞分化および血管分化、ならびに傷害心臓の修復の能力があるという仮説を明らかに判定している。
[実施例2]
ブタの心筋梗塞のモデルにおけるヒトBM−MSCとBM−CD271細胞の比較
大型動物の慢性虚血性心筋症のモデルが用いられ、CD271細胞が生着し、筋細胞、内皮細胞、および血管平滑筋細胞へ分化するかどうかを試験するのに当研究室において十分確立されている(7、8)。CD271細胞の心機能、瘢痕サイズ、および心筋灌流への効果を試験するために心臓MRIもまた用いられた。本発明者らは、ブタの様々な品種において、虚血性心筋症のモデルを作製する経験を豊富にもっている(8、9)。この研究について、10匹の成体ゲッティンゲンミニブタは、冠動脈左前下行枝の実験的バルーン血管形成術を2.5時間受け、結果として、左心室心筋の約20%を網羅する前隔壁の貫壁性梗塞を生じ、続いて、バルーン収縮による完全な再灌流を受ける。その後、動物は回復し、心臓が広範なリモデリングを起こすときに、連続的心臓MRで追跡された。MI後3カ月目において、ブタを、ヒトBM−MSCまたはBM−CD271細胞に対して1:1形式でランダム化した。その後、動物は、左ミニ開胸術を受け、そこで、ヒト骨髄由来CD271細胞またはMSCを、22ゲージ針を用いて直視下で注射された。出血のいかなる領域も縫合結紮した。その後、胸部を閉じ、動物を心臓MRで連続的に追跡した。全てのミニブタを、ヒト細胞のブタ心臓への異種移植からの免疫拒絶を防ぐために経口シクロスポリンA(CsA)で免疫抑制した(10、11)。
CD271細胞の効力を、連続的心臓磁気共鳴画像法(MRI)を用いて評価した。この画像診断法は、全心機能、HARPを用いる局所心機能、遅延型超増強画像法を用いる瘢痕サイズ、ならびにガドリニウムの初回通過灌流による心筋灌流上り勾配および濃度曲線下面積の詳細な表現型分析を可能にした。注射後3カ月目において、動物を屠殺し、CD271細胞の生着および分化を決定する免疫組織化学的分析のために心臓を摘出した。異所性組織形成を評価するために、各動物に全身剖検を実施した。
詳細な安全性および効力の評価を、記載されているように(7〜9)、これらの動物研究において実施した。全体的な目的は、腫瘍症または異所性組織形成が存在しないことを含む長期安全性を確立すること、および心不全への細胞の緊急の外科的送達が安全であったということを増大するデータベースへ加えることであった。さらに、並行して、CD271細胞注射が、慢性虚血性心筋症において逆リモデリングを生じることに非常に効果的であるという仮説、ならびにこの効果の機構が、細胞生着および分化に少なくとも一部、起因したという仮説を試験するために、詳細な機構的研究を、画像法、血行動態評価、および免疫組織化学的方法を用いて実施した。
慢性虚血性心筋症における自己間葉系幹細胞が逆リモデリングを生じる
心筋梗塞後、瘢痕が完全に治癒した大型動物モデルにおける当研究室の研究は、MSC投与が、意義のある修復を表す、左心室構造および機能指標を有意に改善できることを示した。画像技術を用いたこの実験の活用を通して、MSCの植え込みにより誘発された表現型の改善は、ブタの慢性虚血性心筋症のモデルにおいてトラッキングされ、これらの変化を形態計測的に定量化された。MIがブタにおいて発症した。12週間後、梗塞域セグメントは薄くなり、貫壁性瘢痕が残った。自己MSCを各動物から増殖し、これらの細胞またはプラセボを、この時点で梗塞域および周囲の境界域へ送達した。さらなる12週間の追跡調査期間中、心臓MRIにより、MSCの心筋内注射が、瘢痕負荷(LVの質量)を21.8+3.9%(p<0.05対プラセボ、および12週間目対24週間目)低下させただけでなく、局所収縮力、全体LV機能、駆出率、および心筋血流を有意に改善したことが明らかにされた。重要なことには、その治療は逆リモデリングを生じ、梗塞域瘢痕の円周範囲を縮小した。この一連の効果は、虚血性心筋症における非常に効果的な修復を証明している。
同種異系間葉系幹細胞は、3血球系分化能力により、慢性虚血性心筋症において心機能を回復させる
MSCに基づいた心臓修復が、長期生着を含む機構により、および心筋要素と血管要素の両方への分化により、心臓を再生するかどうか、仮説を試験した。同種異系MSCを、雄ブタのドナーから産生し、MIから12週間後、性別不一致の細胞を、雌ブタへ経心内膜注射によって投与した。動物を連続MRIで追跡し、12週間後、免疫組織化学的評価のために心臓を収集した。雄ドナー細胞の運命を、Y染色体(YPOS)細胞の心臓、血管、および内皮系統のマーカーとの共局在によって決定した。GATA−4、Nkx2.5、およびα−サルコメアアクチンのマーカーとの共局在によって確認されるように、MSCは、梗塞域および境界域に生着し、心筋細胞へ分化した。加えて、YPOS MSCは、大血管および小血管形成に寄与する、血管平滑筋細胞および内皮細胞の分化を示した。生着した細胞の数は、生じた機能変化と相関した。長期MSC生存、生着、および心筋、血管、および内皮系統への分化が、慢性的に瘢痕化した心筋への移植後、示された。これらの細胞の心筋形成と血管形成の両方についての能力が、慢性的に瘢痕化した心筋をそれらが修復できるということに寄与している可能性が高い。
[実施例3]
バイパス手術を受けた、MIを有する患者の臨床試験におけるCD271細胞の試験、およびバイパス手術を受けた患者におけるCD271細胞の臨床試験
取り掛かるのは、第I/II相臨床試験である[「心臓手術を受けた患者におけるCD271細胞治療の前向き無作為化研究」(PROMETHEUS−II)と呼ばれる]。それは、バイパス手術を受けた15人の患者においてCD271細胞をプラセボと比較する、二重盲検無作為化プラセボ対照臨床試験である。この臨床試験のエンドポイントは、安全性および効力である。効力エンドポイントは、心筋梗塞サイズ、局所および全体の左心室(LV)機能、ならびに心筋灌流を評価するために心臓磁気共鳴画像法(MRI)を利用する。患者の骨髄および循環血液試料のバイオレポジトリーもまた、治療に対する応答の成功を予測する可能性があるバイオマーカーを決定するために収集される。この臨床試験に用いられるCD271細胞産物は、University of MiamiのCell Manufacturing Program施設において単離されている。この臨床試験に用いるCD271細胞は、MSCの前駆体である、骨髄由来成体幹細胞である。
予備臨床試験データ
虚血性心不全臨床試験における経心内膜自己細胞(TAC−HFT)、TAC−HFTは、2009年に登録についてFood and Drug Administrationによって認可された第I/II相無作為化二重盲検研究である。この研究は、心筋梗塞に続発する慢性虚血性左心室機能障害(20〜50%の間のEF)を有する60人の患者を登録する。Helix Infusion Catheter(BioCardia、San Jose、CA)が、心臓カテーテル法中、MSC、全骨髄、またはプラセボのいずれかの経心内膜注射によって送達するために用いられる。
TAC−HFT臨床試験は、60人の患者の二重盲検無作為化相の前に予備安全性データを確立するために、同相での非盲検実行として8人の患者を登録するように設計された。これらの最初の8人の患者は、非盲検形式において全骨髄(n=4)か、または骨髄由来間葉系幹細胞(n=4)かのいずれかを受けた。全ての8人の患者は、いかなる大きな有害事象もなく、幹細胞注射を許容し、二重盲検相に続いて患者を登録することが可能になった。最初の8人の患者は全て、細胞注射を受けたため、彼らの心臓MR画像を分析した。シネ画像および遅延型増強画像を、ソフトウェアSegment(Medviso AB and Lund University、Lund、Sweden)を用いて分析し、タグ付き心臓画像を、HARPソフトウェア(Diagnosoft,Inc.)を用いて分析した。これらの患者からの予備データより、幹細胞注射後6カ月目において、全体機能の改善は、11.2±3.4%(p<0.05)の拡張末期容積の減少、収縮末期容積における13.5±4.2%(p<0.01)の減少、および平均4.9±6.7%の駆出率の増加を示したことが明らかになる。遅延型増強画像において、左心室質量のパーセントとしての瘢痕サイズは、平均13.3±7.2%(p=0.06)を減少した。タグ付きMR画像は、オイラー周方向ひずみにより示されるように、梗塞域および境界域の領域における収縮力の局所改善を示した。これらのデータは、MSCが安全であり、心機能を改善し、逆リモデリングを援助し、瘢痕サイズを低下させることを示している。
心筋瘢痕の実際の縮小を伴うこの程度の逆リモデリングを達成する他の治療ストラテジーがないため、これらのデータは先例を作るものである。これらの興奮させる所見は、この分野において臨床研究を加速させる要請を大いに支援するものである。
急性心筋梗塞後の静脈内成体ヒト間葉系幹細胞(Prochymal)の無作為化二重盲検プラセボ対照用量漸増研究
登録された53人の患者の第I相研究の安全性および効力のデータは、最近、Journal of the American College of Cardiology(18)に公開され、同種異系MSCの極めて重要な安全性データを提供した。この臨床試験において、プラセボ、またはレシピエントとヒト白血球抗原が適合していない単一の血縁関係をもたないドナーから得られた骨髄吸引液から単離されたヒトMSCの単回の静脈内注入に、再灌流された急性MIを有する患者を無作為に割り付けた。有害事象率は、hMSC処理(患者あたり5.3)およびプラセボ処理(患者あたり7.0)において類似していた。携帯式ECG記録は、プラセボと比較して、hMSC処理された患者において心室頻拍エピソードの数の低下を示した。前壁MI患者における心エコー検査は、hMSC処理患者における駆出率の改善を示した。重要なことには、この臨床試験は、虚血性心臓疾患における同種異系MSCの使用について極めて重要な安全性データを提供した。
本発明者らの研究室からの追加の前臨床の安全性および効力データ(7、8、15)は、急性および慢性MIを有する様々な品種のブタモデルにおいて得られている。カテーテルによる梗塞組織へのMSC注射は、心筋梗塞サイズを低下させ、全体および局所のLV機能を改善し、心臓エネルギー特性を正常化し、組織灌流を回復させる(7、8、16)。
正常ヒトBMからのCD271細胞の単離
骨髄吸引液を、熟練した血液学者/腫瘍学者により意識下鎮静法および局所無痛法下で患者の腸骨稜から得た。BM単核細胞を、密度勾配遠心分離を用いて単離し、その後、細胞を、CD271に対する抗体を付着したマイクロビーズで標識し、CliniMACS臨床装置(Miltenyi Biotech、Cologne、Germany)でCD271細胞を単離した。その後、細胞を洗浄し、注入のために調製した。この工程は約4〜5時間かかる。全てのCD271細胞(1〜5M)を患者の注射に用いた。
当研究室からの以前の研究は、CD271細胞を単離することの実現可能性を実証している。CD271細胞を、正常ドナー骨髄細胞から、抗CD271−APCおよび抗APCマイクロビーズでの細胞の間接的標識を用いて単離した。出発のBM MNCの細胞数中央値は、1.4×10個の有核細胞であり(2.9×10〜3.3×10の範囲、N=7)、選択後、4.2×10個のCD271細胞の中央値(3.9×10〜9.4×10の範囲)を生じた。これは、BM MNC産物において0.3%のCD271細胞の頻度を表す。単離されたCD271細胞は、核に対する細胞質の低比率をもつ原始的な形態を示した。液体培養へ入れた場合、CD271細胞は、7日以内にMSCを形成し、一方、BM MNC全体は、より少ないMSCを形成した。CD271細胞からのMSCの生成をCD271細胞と比較し、170,000個のCD271細胞は、T162cmフラスコ内での7日間の培養後、有意なMSCを生成したが、100倍多いCD271細胞(T162cmフラスコにおける1.7×10個の細胞)は、7日経っても有意なMSCを生成することができなかった。しかしながら、CD271細胞の培養物においていくらかの接着細胞があり、これらは、MSCではなく、内皮細胞であるように思われた。CD271細胞はCFU−Fについて濃縮されており、12,500個のBM MNC中1個と比較して、222個のCD271細胞中1個がCFU−Fを形成した。また、CD271陰性画分は、ほんのわずかしかCFU−Fを含有せず、100,000個の細胞中1個未満であった。
細胞送達
冠動脈バイパス手術の完了時点に、自己BM−CD271細胞またはプラセボが、瘢痕および境界域の領域に心外膜を通して直視下で心臓外科医によって注射された。いかなる出血領域も綿撒糸縫合でコントロールされた。
心臓MRI
当グループは、最先端の非侵襲性画像化技術を利用することにより心臓の構造および機能を決定する経験が豊富である(17、19、20)。心臓MRを用いて、細胞治療の効力を評価した。心筋機能、組織灌流、および梗塞サイズの非侵襲的決定を、高調波位相(HARP)組織タグ付け、ガドリニウム取り込み速度、および遅延型コントラスト増強MRIプロトコール、それぞれによって決定した。患者は、磁気テーブルの上に仰臥位で横たわり、全ての画像は、12〜15の心拍中、平均して10〜15秒間の呼気の最後に息を止めて得られ、息止めの間に十分な休息時間(10〜15秒間)をとった。画像化プロトコールは最初、心臓を限局化するように、矢状方向、軸方向、および斜め方向のスカウト画像を含んだ。各MRIセッションは、45〜60分間続くと推定される。心筋機能を決定するために、組織タグ付けプロトコールを、前に記載されているように、実施した。そのプロトコールは、ECGトリガー型高速勾配エコーパルスシークエンスに基づき、結果として心筋の6mmタグ付け分離を生じた。この方法は、治療介入後の異なる時点における対象全体にわたる比較に用いることができる、局所に基づいた定量的な運動パラメータおよびひずみパラメータを生じ、それに従って、連続的かつ定量的なLV機能を評価する迅速かつ反復可能な方法を提供する。次に、患者は、0.2mmol/kgのガドリニウム−DTPAのボーラス静脈内注射を受けた。高解像度遅延型増強画像が、反転回復調製ゲート型高速勾配エコーシークエンスを用いて、(心臓の全範囲を保証する)LVの8個〜10個の短軸断面から得られた。この方法で得られた取得の超増強領域は、塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)染色による死後に測定された梗塞サイズの10%以内にあることが示されており、それゆえに、この方法が、梗塞サイズを決定するための非常に正確な方法であることを示している(19)。
[実施例4]
骨髄CD271MSC前駆細胞の心臓潜在能
方法
CD271細胞の単離
骨髄吸引液(25〜50ml)を、適切なインフォームドコンセントおよびIRB認可の下、AllCells LLC(Emeryville、CA)から得た。骨髄(BM)細胞を、PBS+1%FCSで1:1に希釈し、フィコールの上に重層し、低密度単核細胞画分(MNC)を単離した。その後、MNCをCD271マイクロビーズ(Miltenyi Biotech、Cologne、Germany)で標識し、CD271細胞を、Miltenyi MACS細胞選択装置(VarioMACS)を用いて製造会社の推奨手順に従い、単離した。CD271細胞を数え、形態学的分析のためにサイトスピンを調製した。
間葉系幹細胞(MSC)の単離および増殖
BM MNCを上記のように単離し、細胞を、20%FBS、加えて1%グルタミン、ペニシリン、およびストレプトマイシンを含有するαMEMの1mlあたり100万〜300万個のMNCの割合で、T162cm培養フラスコ内で培養した。非接着細胞を廃棄しながら、3〜4日ごとに培地を交換した。MSCは、フラスコの表面上で接着細胞として成長し、コンフルエントになったとき、トリプシン処理を用いて培養物を継代した。継代4回目または5回目においてMSCを収集し、液体窒素中に凍結した。注射前に細胞を解凍し、洗浄した。
CFU−Fアッセイ
BM MNC、CD271細胞、およびCD271細胞のクローン形成潜在能を、コロニー形成単位−線維芽細胞(CFU−F)アッセイを用いて評価した。細胞を、35mmのディッシュ中2mlの間葉系幹細胞刺激培地+サプリメント(Stem Cell technologies、Vancouver、Canada)内に蒔いた。細胞を、プレートあたり10,000個の細胞からプレートあたり100万個までの範囲である異なる細胞密度で蒔いた。培養物を、5%CO中37℃で10日間、インキュベートし、その後、ギムザ染色で染色し、手術用顕微鏡を用いてスコア化した。典型的には、CFU−Fコロニーは、直径が1mmから8mmの間であり、巨視的にスコア化することができる。
脂肪細胞および骨形成分化潜在能の誘導および評価
CD271細胞を、テフロンバッグ内で、非接着条件下、培養し、細胞を収集し、分化アッセイのために6ウェル細胞培養ディッシュ(Nunc, Roskilde, Denmark)内に蒔いた。脂肪細胞分化を、これらの細胞をNH AdipoDiff Medium(Miltenyi Biotec Inc.、Auburn、CA、USA)中、5×10個の細胞/mlの濃度で2週間培養することにより誘導した。その後、細胞を、Oil Red O(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)を用いる脂肪滴染色に用いた。骨形成分化を、これらの細胞をNH OsteoDiff Medium(Miltenyi Biotec Inc.)中、3×10個の細胞/mlの濃度で3週間、培養することにより誘導した。その後、細胞を、アルカリホスファターゼ(AP)(骨基質ミネラル化に関与する酵素)のそれらの発現を検出するためにSIGMA FAST BCIP/NBT Buffered Substrate Tablet(Sigma)で染色した。α−MEM中この期間に培養された細胞を、対照として用いた。
動物モデル、心筋梗塞、および細胞移植
生きている動物での全ての実験は、University of Miamiの実験動物プログラムによって認可されたプロトコールに従って実施された。動物を、麻酔レベルを体温および心拍数でコントロールしながら、気管内挿管を通してのイソフルラン吸入(1〜2%)を用いて麻酔した。ブプレノルフィン(0.3mg/kg、皮下注射)を、疼痛管理のために手術時間の前および後(6時間ごと)に用いた。左前開胸術を用いて、週齢8〜10週間のNOD/SCID雌マウス(NOD/SCID、Jackson Laboratory、Bar Harbor、ME)の心臓を露出させ、LAD動脈を7−0 prolen縫合糸で永久に結紮した。梗塞を、結紮より遠位の視覚性ブランキングおよび心電図(ECG)上でのSTセグメント上昇により確認した。全ての動物が等しいサイズのMIを有するように、研究のための登録判定基準として、最初の経過観察ECGを手術後48時間目に用いた。対照としてリン酸緩衝食塩水(PBS)注射、CD271細胞(1.2×10個の細胞)注射、1.2×10個の細胞(低用量)または1×10個の細胞(高用量)の2つの異なる用量でのヒトBM MSC注射を受けた動物からなる4つの実験群を確立した。梗塞後すぐに、各動物は、梗塞領域の境界および中心に、30ゲージ針を用いたPBSまたは細胞の3回の注射(10μl/注射)を受けた。手術による死亡率は11.5%であり、細胞注射後最初の48時間における死亡率は5%であった(手術時間前後の全死亡率は16.5%である)。移植後8週間目、動物を屠殺し、心臓を免疫組織化学的分析のために調製した。
心エコー検査
心機能を、Vevo 770画像化システム(VisualSonic Inc.、Toronto、Canada)により手術前のベースライン、梗塞および細胞注射後48時間目、1週間目、2週間目、4週間目、および8週間目においてモニターした。画像は、イソフルラン吸入(1〜2%)での麻酔下、400bpmより上の心拍数、および37±10Cの体温において記録された。拡張末期容積(EDV)、収縮末期容積(ESV)、および駆出率(EF)を含む心臓構造および解剖学的形態の超音波検査のパラメータを、2次元画像を用いて計算した。
圧容積ループ分析
細胞注射後8週間目、右頸動脈アプローチを用いて、Millarコンダクタンス圧測定カテーテル(SPR 839)(Millar Instruments、TX)は左心室へ進んだ。その手順中、希釈された6.25%アルブミン溶液を5μ/分の速度で頸静脈へ注入し、気管挿管を通しての1〜2%イソフルラン吸入を用いて麻酔状態にした。圧容積データは、MPVS Ultraシステム(Millar Instruments、TX)を用いて、ベースラインにおいて、および下大静脈(IVC)閉塞後に得られた。容積較正を、キュベット法および高張食塩水を用いて行った。
組織調製および病理組織診断
PVループ記録を終了した後、心臓を摘出し、心臓を拡張期において固定するために、大動脈カニューレ挿入を通して塩化カリウム20μM溶液およびホルマリン10%で1ml/分、10分間、灌流した。心臓をスライスし、組織診断切断部をマッソントリクローム(TM)およびH&Eで染色し、または免疫組織化学的検査に用いた。
マウス組織において注射されたヒト細胞をトレースするために、ヒト特異的DNAプローブ(Human Alu Probe、BioGenex、CA)および蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)法を用いた(AntiFluorescein−HRP Conjugate、Perkin Elmer、Boston、MA)。ヒト胎児心臓由来の試料、およびPBSを注射されたマウス由来の試料を、それぞれ、陽性対照および陰性対照として用いた。Alu染色スライドを、Zeiss蛍光レーザースキャナでスキャンし、画像を、Miraxビューアーソフトウェアを用いて20Xの倍率で分析した。画像を別々に撮影し、CS3 Adobe Photoshopを用いて併合し、同じ切断面の2つの別々の領域において陽性細胞を数えた。
免疫組織化学的検査
試料を、心臓特異的抗体(α−サルコメアアクチン(α−SA)(Sigma、St.Louis、MO)、トロポニンI(TnI)(Abcam、Cambridge、MA)、およびコネキシン43(Cx43)(Santa Cruz、CA))で染色した。細胞を描写するためにラミニン(Abcam)染色を用いた。染色された試料を、最初に免疫蛍光顕微鏡法により、その後、共焦点顕微鏡Zeiss LSM710により研究し、画像を調製した。
統計解析
データを、Graph Pad Prismソフトウェアを用いて解析し、値を、平均±標準誤差(SEM)として表した。分散分析を反復測定と共に用いた(エコーデータを解析するためのBonferoniポストホック検定での二元配置ANOVA、および末端血行動態データを比較するためのNewman−Keuls多重比較ポストホック検定での一元配置ANOVA)。
結果
正常ヒトBMからのCD271細胞の単離
CD271細胞を、抗CD271−APCおよび抗APCマイクロビーズでの細胞の間接的標識を用いて、正常ドナーBM細胞から単離した。出発のBM MNCの細胞数中央値は、1.4×10個の有核細胞であり(2.9×10〜3.3×10の範囲、N=7)、選択後、4.2×10個のCD271細胞の中央値(3.9×10〜9.4×10の範囲)を生じた。これは、BM MNC産物において0.3%のCD271細胞の頻度を表す。単離されたCD271細胞は、核に対する細胞質の低比率をもつ原始的な形態を示した(図1)。
液体培養へ入れた場合、CD271細胞は、7日以内にMSCを形成し(図2A)、一方、BM MNC全体は、より少ないMSCを形成した(図2B)。CD271細胞からのMSCの生成をCD271細胞と比較し、170,000個のCD271細胞は、T162cmフラスコ内での7日間の培養後、有意なMSCを生成したが、100倍多いCD271細胞(T162cmフラスコ内において1.7×10個の細胞)は、7日間経っても有意なMSCを生成することができなかった(図2C)。しかしながら、図2Cに示されているように、CD271細胞の培養物においていくらかの接着細胞があり、これらは、MSCではなく、内皮細胞であるように思われた。
CD271細胞はCFU−Fについて濃縮されており(図3)、12,500個のBM MNC中1個と比較して、250個のCD271細胞中1個がCFU−Fを形成した。また、CD271陰性画分は、ほんのわずかしかCFU−Fを含有せず、100,000個の細胞中1個未満であった。
非接着条件におけるCD271細胞のインビトロ培養
CD271細胞を、テフロンバッグ内で非接着条件下、1〜3カ月間成長させた。成長の初期段階が図4に示されている。これらの培養のための培地は、20ng/mlの組換えヒト塩基性線維芽細胞成長因子(rhbFGF)を含むα−MEM+20%FCSからなっていた。最初の週において、細胞のクラスターを観察することができ、いくらかの細胞が、プラスチック接着性MSCと形態学的に類似して、テフロンバッグの表面上に形成した。接着細胞を脱離させるためにバッグをもみ、培地を毎週、交換した。細胞のクラスターは、図4に示されているように、増殖して、球を形成し続け、21日目までには大きな球が発生した。これらの細胞を、培養中の4週間後、フローサイトメトリーによって分析し、図5は、大部分が、典型的なMSCマーカーであるCD105を発現したことを示している。
非接着条件下で成長したCD271細胞の脂肪細胞および骨芽細胞分化潜在能もまた評価した。細胞を培養バッグから収集し、分化アッセイのために6ウェル細胞培養ディッシュ(Nunc、Roskilde、Denmark)に蒔いた。図6に示されているように、培養されたCD271細胞は、脂肪細胞および骨芽細胞の両方へ分化した。
細胞をまた、典型的なMSC培養条件下で培養し、すなわち、20%FCSを加えたα−MEM培地を含む組織培養フラスコ内で培養した。図4に示された球は、フラスコのプラスチック表面に付着し、典型的なMSCが球から成長し、1〜2週間後、コンフルエントな培養物を形成した。
これらの結果は、非接着条件下で培養されたCD271細胞は、CD105である細胞の球を形成し、脂肪細胞および骨芽細胞の潜在能を有し、MSC性質と一致した、プラスチック接着性MSC様細胞を形成することを実証している。
心臓組織に由来したマウス間質細胞によって条件付けられた培地(MsHtStr CM)を用いて、非接着条件下で2週間培養されたCD271細胞の心臓潜在能を評価した。非接着性MSC(NA−MSC)は、α−サルコメアアクチン、Nkx2.5およびコネキシン−43、GAT−4、ならびにN−カドヘリンを発現した(図7)。これらの結果は、CD271細胞が、脂肪細胞および骨芽細胞と同様に心臓細胞へ分化する潜在能を有することを示し、かつCD271細胞が、プラスチック接着性細胞として産生したMSCと比較してより大きい分化潜在能を有することを証明している。CD271が神経受容体であるため、これらの細胞はまた、神経分化潜在能を有する可能性があることが提案され、現在、この問題を評価するために実験に着手している。
BM−CD271細胞のインビボ潜在能
BM CD271細胞のインビボ心臓潜在能を評価するために、新たに単離されたヒトCD271細胞を、NOD/SCIDマウスの梗塞性心臓へ注射した。MI傷害は、時間依存性心室拡張および機能障害を生じた(図8)。全群の間での梗塞の最初の影響は等しかった。拡張末期における心室容積(EDV)の比較(図8)により、対照(128.1±15.7μl)と比較して、CD271細胞で処理されたマウス(112.8±13.6μl)において顕著な逆リモデリングが示された(P=0.02)。CD271処理群はまた、等用量(低用量、145.5±14.9μl)のMSCで処理された動物より著しく良くなったが(p=0.0001)、高用量(116.5±14.5μl)のMSCで処理された動物とは同じくらいであった。用量反応は、MSC処理された動物において示され、低用量のMSCで処理された動物を高用量と比較して有意差があった(p=0.0001)。同じ傾向は収縮末期容積(ESV)に生じた−CD271処理動物は、対照動物(119.7±17.8μl、p<0.0001)および低用量MSC処理動物(117.1±13.4μl、p<0.0001)と比較して有意に低いESV(81.5±12.4μl)を有したが、高用量MSC処理動物(91.2±12.6μl)と比較してそうではなかった。CD271処理動物は、対照処理動物(17.6±4.1%、p<0.0001)および低用量MSC処理動物(19.7±3.1%、p=0.0005)と比較して8週間の終了時点においてより高い駆出率(EF)(32.3±3.7%)を示したが、高用量MSC処理動物(24.7±2.9%)と比較してそうではなかった。
圧容積ループ分析
処理された心臓および対照心臓の血行動態評価を、注射後8週間目において実施した。コンダクタンス圧測定を、経頸動脈アプローチを通して用いた。動脈エラスタンス(Ea)を計算し、CD271処理マウスは対照動物(4.7±0.2mmHg/μL、p<0.05)と比較してより低いEa(3.0±0.2mmHg/μL)を有したが、低用量または高用量MSC処理マウス(それぞれ、4.3±0.6mmHg/μLおよび3.5±0.4mmHg/μL)のいずれとも有意には異ならなかった。等容性弛緩の定数(Tau_ Weiss)は、対照(15.2±1.0ミリ秒、p<0.05)よりCD271心臓(12.3±0.8ミリ秒)の改善された拡張期性質を示した。
免疫組織化学的検査
CD271細胞、MSC、およびプラセボで処理された動物の心臓由来の組織切片を、注射から8週間後、ヒト特異的Aluプローブで染色した。図9A〜9Dに示されているように、CD271細胞を注射された動物は、心臓の遠隔域と境界域の両方においてヒト細胞の存在を示した。多数のヒト細胞が、血管壁に包埋された状態かまたは宿主細胞間かのいずれかで検出された。加えて、いくらかの心筋細胞は、Alu陽性であり、Alu陽性細胞は、トロポニンI(図9B)およびα−平滑筋アクチニン(図9D)を発現した。これは、CD271細胞のいくらかの心臓分化潜在能を証明している。ヒト細胞はまた、高用量のMSCを注射された動物の心臓において検出され、この場合もまた、これらの細胞は、血管壁に包埋されているかまたは宿主心筋細胞間にあるかのいずれかであった。高用量のMSCを注射された動物の心臓において、Alu染色心筋細胞の検出またはAlu陽性細胞における心臓マーカーの発現がなかった。
考察
CD271細胞は、BM細胞において低頻度で存在し、BM MNC集団の約0.3%からなる。Miltenyi MACS選択試薬および装置を用いて、90%より大きい純度を有する高度に精製されたCD271細胞集団を単離し、25ccのBM吸引液から平均4.2×10個の細胞の回収があった。CD271細胞の形態は、核に対する細胞質の低い比率からなる均一な芽細胞の原始的表現型を示した。データにより、CD271集団におけるMSC形成細胞の濃縮が確認され、BM MNCと比較して、CD271細胞において60倍高いレベルのCFU−Fがあった。加えて、CD271陰性集団におけるCFU−Fの頻度は、BM MNC集団における12,500個中1個と比較して、100,000個の細胞中1個で大幅に低下し、CD271集団の500分の1であった。プラスチックフラスコへの接着によりCD271細胞から生成したMSCは、BM MNCから生成したMSCと同一のインビトロ性質を示し、CD105の発現を有し、かつ脂肪細胞および骨芽細胞をインビトロで形成する能力があった。以前の研究より、MSCの潜在能が、CD271CD45細胞集団に存在することが実証されている。さらに、表現型分析により、CD271細胞が、CD105およびCD90を含む典型的なMSCマーカーについて陰性であるが、培養後、その細胞が、古典的MSCマーカー、CD105、CD90、およびCD73を発現することが示された。さらに、CD271発現は、MSCの骨形成、脂肪生成、軟骨形成、および筋原系統への分化を抑制する。本明細書におけるデータは、その文献と一致し、CD271細胞が、MSCの前駆体である幹細胞集団であること、ならびにCD271細胞のプラスチック接着性MSCへの分化が脂肪形成、軟骨形成、および骨形成系統へのコミットメントを生じることの提案を支持している。
非接着培養条件下でMSCを生成するための方法を評価するために追加の実験をインビトロで実施した。心臓修復への当研究室の焦点を考慮して、プラスチック接着性細胞として生成したMSCが心臓再生に最適ではないと仮定した。BMにおいて、MSCは、接着細胞成長のための基質として働く骨表面を有するが、心臓組織において等価の基質は存在しない。それゆえに、培養条件を、非接着条件下でのMSCの増殖のために開発した(NA−MSC)。CD271細胞を、細胞の接着を最小限にしたテフロンバッグ内で培養し、バッグを定期的にもむことにより、細胞を懸濁状態で維持した。結果のセクションに示されているように、MSCは、バッグ内で増殖して、MSC性質を有する細胞の球を形成し、標準プラスチックフラスコ内に置いた場合、古典的な接着性MSC様細胞を形成して、CD105を発現した。NA−MSCはまた、適切な培養条件下で脂肪細胞および軟骨細胞へ分化した。NA−MSCの骨形成能は、現在、評価中である。加えて、CD271細胞が、マウス心臓由来間質細胞によって条件付けられた培地の存在下で培養された場合、心臓特異的遺伝子を発現するように誘導することができることが本明細書で実証された。ヒト胎児心臓組織に由来した間質細胞によって条件付けられた培地もまた、心臓遺伝子発現を刺激する。これらのデータより、CD271細胞が、同一の条件下で培養された場合、心臓遺伝子を発現することができなかったプラスチック接着性の生成したMSCと比較して、より大きい分化能を有し得ることを証明している。
ヒトCD271細胞のインビボ潜在能を、免疫不全NOD/SCIDマウスにおいて心筋梗塞の誘導後、評価した。比較のために、単離し、プラスチックフラスコへの標準接着性を用いて増殖したヒトMSCを注射し、対照の動物群はプラセボの注射を受けた。120,000個のCD271細胞の注射により、同数のMSCを注射されたマウスおよび対照動物と比較して、駆出率が増加して、心機能の改善が生じた。同等の結果が、より高い用量のMSCを注射された動物について得られた。これらのデータより、CD271細胞の潜在能が、等価の細胞用量におけるMSCより大きいことが証明された。加えて、心臓マーカーの発現が、CD271細胞を注射された動物においてヒト細胞に検出されたが、MSCを注射された動物においては検出されず、このことは、CD271細胞の心臓潜在能を示したがMSCについては示さなかったインビトロデータと一致している。
いくつかのグループは、単核細胞、CD34細胞、CD133細胞、およびMSCを含むいくつかの骨髄由来集団の潜在能を評価している。本研究において、BM由来MSCの潜在能を、大型動物前臨床研究で評価し、MSCが、慢性梗塞瘢痕の中およびそれに隣接して生着し、梗塞サイズの実質的低下、傷害された心臓の逆リモデリング、および心筋収縮力と組織灌流の両方における増加を含む有意な心筋回復を刺激することが実証された。これらの前臨床研究は、University of Miamiにおいて進行中のMSCの臨床試験へと至った。これらの研究の1つは、冠動脈バイパス移植(CABG)の心臓手術を受けることになっている、心筋梗塞に続発した慢性虚血性左心室機能障害を有する患者において行われた。患者がバイパス手術を受ける緊急性により、この臨床試験への登録は、制限されており、少数の患者のみが、自己MSCを産生するために必要とされる5〜6週間を待つことができる。これらのBM由来CD271細胞は、これらの患者にとって理想的な自己細胞供給源を表す。CD271細胞は、4〜5時間以内にBM吸引液から単離することができ、緊急手術を必要とするCABG患者の処置のための容易に入手できる細胞集団を提供している。これらの研究は、BM由来CD271細胞が、心臓修復の研究のための独特の細胞集団を与えるという証拠を提供している。プラスチック接着性により単離されたMSCと比較して、CD271細胞は、より大きいインビトロ心臓分化潜在能を有し、MI後のマウスの処置が、心機能のより大きい改善を生じる。CD271細胞は、磁気細胞選択を用いて迅速に単離することができ、それに従って、バイパス手術を必要とする患者にとって潜在的な細胞供給源であり得る。
本発明は、1つまたは複数の実行に関して例示および記載されているが、本明細書および付属の図面を読み、理解することで、当業者は等価の変更および改変を思いつくであろう。加えて、本発明の特定の特徴は、いくつかの実行のうちの1つのみに関して開示されているが、任意の所定または特定の適用について望ましく、または有利である場合には、そのような特徴を他の実行の1つまたは複数の他の特徴と組み合わせてもよい。
本開示の要約は、読者が技術的開示の本質を迅速に確認することを可能にするであろう。それは、以下の特許請求の範囲の、範囲または意味を解釈または限定するために用いるものではないという理解の下に提出される。
[文献リスト]
Figure 0006061345
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Claims (12)

  1. 心血管疾患または心血管障害を処置するための組成物であって、
    治療有効量の、対象の骨髄から単離され、非接着条件下で培養されたCD271間葉系幹細胞(MSC)前駆細胞を含み、かつ前記培養されたCD271MSC前駆細胞は、インビボで心臓において梗塞域および境界域に生着可能な細胞であり、心臓における梗塞域および境界域への前記培養されたCD271 MSC前駆細胞の生着が心血管疾患または心血管障害を処置する、組成物。
  2. 前記CD271MSC前駆細胞が、低親和性神経成長受容体(NGFR、CD271)を有する骨髄細胞から単離されたCD271MSC前駆細胞である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記CD271MSC前駆細胞が、自己、同系、同種異系、または異種を含むドナーから単離されたCD271MSC前駆細胞である、請求項1に記載の組成物。
  4. 前記CD271MSC前駆細胞が、心筋、血管、または内皮系統を含む少なくとも1つの系統へ分化するCD271MSC前駆細胞である、請求項1に記載の組成物。
  5. 前記CD271MSC前駆細胞が、心筋、血管、または内皮系統を含む系統へ分化するCD271MSC前駆細胞である、請求項1に記載の組成物。
  6. 前記心筋細胞が、GATA−4、Nkx2.5、またはα−サルコメアアクチンを含むマーカーによって識別される、請求項4に記載の組成物。
  7. 前記血管細胞が、α−平滑筋アクチンまたはSMA22を含むマーカーによって識別される、請求項4に記載の組成物。
  8. 前記内皮細胞が、CD31またはビメンチンを含むマーカーによって識別される、請求項4に記載の組成物。
  9. 1つまたは複数の作用物質を更に含み、前記作用物質が、サイトカイン、走化性因子、成長因子、または分化因子の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
  10. 前記心血管疾患もしくは心血管障害が、心不全、アテローム性動脈硬化、虚血、心筋梗塞、移植、高血圧、再狭窄、狭心症、リウマチ性心疾患、または先天性心血管欠損を含む、請求項1に記載の組成物。
  11. 前記培養されたCD271MSC前駆細胞が、ある期間にわたって様々な濃度で患者に投与するために用いられる、請求項1に記載の組成物。
  12. 前記CD271MSC前駆細胞が、骨髄から単離されたCD271MSC前駆細胞を、心臓由来間質細胞によって条件付けられた培地で培養された細胞である、請求項1に記載の組成物。
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