JP6059886B2 - 水素発生装置 - Google Patents

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Description

本発明は、水素を発生せしめる水素発生装置に関し、特に効率よく水素を発生させることができるとともに、装置寿命が長く且つ、効率良く水素を回収することができる水素発生装置に関する。
ステンレスの反応容器内にアルカリ金属溶融塩などの反応剤を収納せしめ、この反応容器を500℃前後に加熱し、前記溶融塩の液面から微細粒子を飛散せしめ、この微細粒子群に水蒸気を接触せしめて水から水素を採集する技術に関して本件出願人はPCT出願を行っている。アルカリ金属溶融塩に投入される金属材料としては、酸化皮膜を有する金属が好適に用いられ、例えばステンレス(SUS304)や鉄などが好適に用いられる。
国際公開第2012/011499号
しかしながら、前記出願に係る技術においては、反応容器をステンレスや鉄などの金属で形成したものを用いていた。また、反応容器は、反応容器の内部に金属材料や反応剤を収納するために中空円筒状に形成されており、該形状を成すために円柱パイプの両端に蓋部材を溶接して閉塞することで形成されている。このように形成された反応容器を上記方法によって500℃前後に加熱すると、蓋部材の溶接部が加熱されることで早期に損傷してしまい、反応容器の製品寿命を延ばすことができないという問題があった。
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、反応容器の製品寿命を延ばすことができる水素発生装置を提供することを目的とする。
本発明に係る水素発生装置は、内部が無酸素状態の反応容器内に酸化皮膜を有する金属と反応剤を収納し、該反応容器を加熱手段によって加熱して水素を発生させる水素発生装置であって、前記反応容器は、中空に形成されるとともに、該反応容器の端部を閉塞部材によって溶接する溶接部を備え、前記溶接部は、前記溶接部の加熱を防止するために前記加熱手段よりも長手方向に沿って離れて配置されることを特徴とする。
また、本発明に係る水素発生装置において、前記閉塞部材は、前記反応容器の端部側の内部に挿入される栓部を備えていることが好ましい。
また、本発明に係る水素発生装置において、前記栓部は、前記反応容器の内壁と間隙を介して挿入されると好適である。
また、本発明に係る水素発生装置において、前記加熱手段は、筐体の下方に配置され、前記反応容器のうち、前記加熱手段によって加熱される部位は前記筐体に収納されるとともに、前記溶接部は、前記筐体の外部に露出していることが好ましい。
また、本発明に係る水素発生装置において、前記筐体は、前記反応容器の長手方向を水平方向から傾斜せしめる傾斜手段を備えることが好ましい。
また、本発明に係る水素発生装置において、前記間隙は、前記栓部に形成された溝によって形成されることが好ましい。
また、本発明に係る水素発生装置において、前記反応容器は、複数配置されることが好ましい。
また、本発明に係る水素発生装置において、前記反応容器は、千鳥状に配列されることが好ましい。
本発明に係る水素発生装置は、反応容器が中空筒状に形成されるとともに、該反応容器の端部を閉塞部材によって溶接する溶接部を備え、溶接部が該溶接部の加熱を防止するために加熱手段よりも長手方向に沿って離れて配置されるので、加熱手段による加熱によって溶接部が破損することを防止することができ、反応容器の製品寿命を延ばすことができる。
本発明の実施形態に係る水素発生装置の概要を説明するための斜視図である。 反応容器の構成を説明するための断面図である。 本発明の実施形態に係る水素発生装置の概略図である。 本発明の実施形態に係る水素発生装置の縦断面図である。 閉塞部材の変形例を説明するための斜視図である。 本実施形態に係る水素発生装置から取り出された気体の解析結果を示すグラフである。
図1は、本発明の実施形態に係る水素発生装置の概要を説明するための斜視図であり、図2は、反応容器の構成を説明するための断面図であり、図3は、本発明の実施形態に係る水素発生装置の概略図であり、図4は、本発明の実施形態に係る水素発生装置の縦断面図であり、図5は、閉塞部材の変形例を説明するための斜視図であり、図6は、本実施形態に係る水素発生装置から取り出された気体の解析結果を示すグラフである。
図1に記載されているように、本実施形態に係る水素発生装置1は、円筒状に形成された複数の反応容器10…が筐体2を貫通するように配列されている。また、筐体2の下方には、加熱手段30が配置されており、筐体2は、さらに筐体2を支持する4本の脚部2´…を備えている。なお、脚部2´の先端には筐体2の高さを調整する傾斜手段40が取り付けられている。
図2に示すように、密閉された反応容器10の内部には、反応剤20が酸化皮膜を有する金属からなるトレイ部材21に載置されて収納されている。トレイ部材21は、反応容器10の長手方向の中央部10aに配置されている。
トレイ部材21は、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)等の板状構造体となり得る単体金属、あるいは、ステンレス鋼(SUS304、430、316等)、ニッケル合金(インコネル)、チタン合金(航空機用)、アルミニウム合金(ジェラルミン)、銅合金(黄銅、青銅、白銅)等の合金、更には、鉄に亜鉛(Zn)、スズ(Sn)をメッキしたトタン、ブリキ等が用いられる。
これらは、その表面に酸化鉄(Fe23、Fe34)、酸化銅(CuO)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化クロム(Cr23)、酸化チタン(TiO2)、酸化ニッケル(NiO)の酸化皮膜をそれぞれ形成する。
また、合金としてのステンレス鋼は酸化クロムの不動態膜、ニッケル合金は酸化ニッケル(NiO)チタン合金は酸化チタン(TiO2)、アルミニウム合金は酸化アルミニウム(Al23)、銅合金又は酸化銅、トタンは酸化亜鉛(ZnO)、ブリキは酸化スズ(SnO2)の膜をそれぞれ形成する。
反応剤20は、300℃以上で溶融塩を作る水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)が最も好ましい。固体反応剤としては、チタン酸カリウム(K2TiO3)、チタン酸ナトリウム(Na2TiO3)が好ましい。これらの反応剤は大きな親水性を示す。すなわち、反応剤はアルカリ金属と酸素を含むものである。
また、反応剤20は、反応空間を確保するために、反応容器10を略水平に配置した状態で、反応容器10の径方向の高さが半分を超えない分量を収納することが望ましい。
反応容器10は、上記トレイ部材21と同様に酸化皮膜を有する金属によって中空円筒状に形成されており、その開口端を閉塞部材11によって閉塞することで密閉されている。閉塞部材11は、上記開口端において溶接されて、溶接部12を形成している。反応容器10は、長手方向に延びて形成されており、溶接部12は、後述する加熱手段30によって加熱される部位よりも長手方向に沿って十分に離れて配置されている。
閉塞部材11は、開口端からトレイ部材21までの空間を閉塞するように反応容器10の端部側の内部に挿入される栓部13が形成されている。栓部13は、後述する導入口15および取出口16を閉塞しないように反応容器の内壁と間隙gを介して挿入されている。
また、反応容器10は、反応容器10内で生じた水素を外部に排出する取出口16と、反応容器10の外部に設置された水タンク50からポンプなどの揚水手段によって反応容器10の内部に水を間欠供給するための導入口15が形成されている。なお、図3に示すように、反応容器10内部は、取出口16に取り付けられた図示しない真空ポンプによって真空引きされて無酸素状態とされている。さらに、反応容器10内で生じた水素は、水素タンク70に収容される。
本実施形態に係る水素発生装置1は、反応容器10が複数配置されているので、水タンク50から揚水された水は、分配手段60によって所定の分量に分配されて各反応容器10…に分配供給されている。なお、各反応容器10は、導入口15から供給された水が円滑に反応容器10の内部に供給されるように、水平方向から2〜3度程度傾斜して配置されている。この傾斜は、筐体2の脚部2´に取り付けられた傾斜手段40によって導入口15側の高さが取出口16側の高さよりも高くなるように調整することで規定される。なお、傾斜手段40は周知のねじ式の高さ調整機構を用いても構わないし、厚みの異なる板材を脚部2´の端部に取り付けても構わない。
図4に示すように、本実施形態に係る水素発生装置1は、筐体2の縦断面が略六角形に形成されており、天面2a側には反応容器10が鉛直方向に複数段配置されており、隣り合う段において反応容器10が鉛直方向に重複しないように千鳥状に配列されている。本実施形態においては、反応容器10は5段配列され、合計で15本配列されている。
また、筐体2の底面2bには、加熱手段30が複数配置されており、筐体2の内部において反応容器10の中央部10aを加熱している。反応容器10は加熱手段30によって、中央部10aの内部,トレイ部材21及び反応剤20が350℃以上に加熱され、特に500℃程度の温度に加熱されるのが好ましい。加熱手段30は、面状ヒータやバーナなど種々の構成を採用することが可能である。また、後述する反応容器10内で発生した水素を燃料とした水素バーナを採用すればランニングコストの抑制に寄与するため好適である。
上述したように加熱手段30は、反応容器10の外部から加熱するように構成されているので、反応容器10の内部まで十分に加熱するために、反応容器10の直径は、80〜100mmに形成されることが好ましく、さらに、反応容器10の肉厚は3〜5mmに形成されることが好ましい。このような寸法で反応容器10を形成することで、加熱手段30によって反応容器10の内部まで十分に加熱することが可能となり、効率よく水素を発生させることができる。
反応容器10の加熱される位置となる中央部10a及び、加熱手段30は、筐体2に収納されており、反応容器10の加熱効率を高めるほか、加熱手段30による高熱によって周囲の環境を悪化させることなく、また火傷などの事故を防止することができる。また、反応容器10の開口端側は、筐体2から外部に露出して構成されている。このような構成とすることで、溶接部12が反応容器10の長手方向に沿って加熱手段30よりも離れて配置されることで、加熱手段30による加熱によって溶接部12を損傷することを防止している。
また、反応容器10…は、鉛直方向に複数段配置されており、隣り合う段において反応容器10が鉛直方向に重複しないように千鳥状に配列されているので、底面2bに配置された加熱手段30によって上段の反応容器10まで十分に加熱することが可能となる。なお、天面2aには、排気口3が形成されており、余分な熱を外部に放出することができるように形成されている。排気口3から放出された熱は、他の水素発生装置に熱源として供給しても構わないし、他の熱利用に用いても構わない。
また、溶接部12は筐体2の外部に露出しているので、加熱手段30によって反応容器10の中央部10aが加熱されても、溶接部12への熱の伝搬を抑制している。なお、反応容器10の外部に露出した部位に断熱材などを巻回して熱の伝搬をより抑制するように構成することも可能である。さらに、開口端を閉塞する閉塞部材11は、反応容器10内を閉塞する栓部13を備えているので、開口端側の内部空間が反応空間として作用することがなくなり、溶接部12への熱の伝搬をさらに抑制している。
また、上記実施例においては、脚部2´に取り付けた傾斜手段40によって、反応容器10を水平方向から傾斜して配置し、導入口15から供給された水を反応容器10内に円滑に導入する構造について説明を行ったが、図5に示すように、閉塞部材11´の栓部13に長手方向に沿った溝14を形成し、該溝14が水平方向から傾斜した傾斜面14aを有するように形成して間隙を構成しても構わない。
このように構成された本実施形態に係る水素発生装置1は、取出口16に取り付けられた図示しない真空ポンプを駆動することで、反応容器10内からは操作開始前に完全に空気、特に空気中の酸素が除去される。
このように反応容器10内が無酸素状態で加熱手段30によって反応容器10を350℃以上、特に500℃前後に加熱されると、トレイ部材21および反応容器10の内壁の表面から水素が発生してくる。このとき、反応容器10内に空気中の酸素が存在すると、この酸素がトレイ部材21および反応容器10の表面に当初から存在した酸化膜とは別の新たな酸化膜を生じ、反応を短時間で停止させてしまう。したがって、上述したように本実施形態に係る水素発生装置1を操作する前に、反応容器10内の空気を十分に除去する必要がある。
さらに、所定の間隔で導入口15から水を反応容器10内に供給すると、水は直ちに120℃程度の水蒸気となり、反応容器10内の水蒸気は、トレイ部材21および反応容器10の内壁に接触し電離して水素を放出する。
また、反応剤20は、加熱手段30で加熱されることで、反応剤20の表面からは、ナノオーダーの目には見えない無数の微細粒子が飛散し、この微細粒子がトレイ部材21および反応容器10の表面と反応して水素が発生する。
反応剤20は、加熱手段30で加熱されることにより300℃以上で溶融塩となり、その液面から無数のナノオーダーの微細粒子がトレイ部材21および反応容器10の近傍に充満している。図6に示すように、本実施形態に係る水素発生装置1の取出口16から取り出された気体を解析すると、水素が大量に発生している。これは、反応剤20の溶融塩がトレイ部材21および反応容器10の酸化皮膜と反応を起こすことで水素が発生するものであると考えられる。
なお、反応容器10内で発生した気体を質量分析器で分析したところ、図6に示すような結果となり、水素が95%以上であり、酸素は殆んど生じていないという結果が得られた。このように、本実施形態に係る水素発生装置1は、簡単な構成で大量の水素を得られることがわかる。なお、図6に示す結果は、トレイ部材21および反応容器10をSUS304で形成し、反応剤20として水酸化ナトリウムを用いた。
上述した本実施形態に係る水素発生装置1は、反応剤として水酸化ナトリウムを用い、トレイ部材21および反応容器10をSUS304で形成した場合について説明を行ったが、反応剤やトレイ部材および反応容器の材質はこれらに限られず、上述した種々の金属および反応剤を用いても構わない。
また、本実施形態に係る水素発生装置1は、反応容器10を5段配列して合計15本用いた場合について説明を行ったが、反応容器10の数はこれに限られず、段数を適宜増減して反応容器10の数を変更することが可能である。また、配列の方法も図4に示すように上方に向かって配列数が減少する三角形状に配置する場合に限られず、任意の配置に変更することが可能である。
さらに、トレイ部材21は皿状に形成し、その上面に反応剤20を載置した場合について説明を行ったが、トレイ部材21を中空円柱状に形成し、上部に長手方向に沿った溝を形成して反応容器10の内部と連通するように形成しても構わない。
さらにまた、反応容器10は中空円筒状に限られず、例えば内部を中空に形成した平らな矩形筒状とすることも可能である。また、加熱手段30は筐体2の下方に設置した場合について説明を行ったが、加熱手段30に面状ヒータを適用し、該面状ヒータを各反応容器10に巻回して配置しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
1 水素発生装置,
2 筐体,
10 反応容器,
10a 中央部,
11 閉塞部材,
12 溶接部,
13 栓部,
14 溝,
15 導入口,
16 取出口,
20 反応剤
21 トレイ部材,
30 加熱手段,
50 水タンク,
60 分配手段,
70 水素タンク。

Claims (7)

  1. 筐体と、この筐体を略水平方向に貫通する円筒状の反応容器と、この反応容器を加熱する加熱手段とを有し、
    前記反応容器はその内部が無酸素状態で、その両端部分が筐体から外部に張出し、前記反応容器の長手方向中央部にトレイ部材が載置され、このトレイ部材は酸化皮膜を有する金属からなり、このトレイ部材内にアルカリ金属と酸素を含む反応剤が収納され、前記反応容器の両端部が閉塞部材を溶接することにより閉塞され、前記反応容器のうち、前記加熱手段によって加熱される部位は、前記筐体内に収納され、
    前記反応容器の一端部には、水を供給する導入口を備え、その他端部には発生した水素を外部に排出する取出口を備え、
    前記閉塞部材は、反応容器の端部側の内部に挿入される栓部を備えていることを特徴とする水素発生装置。
  2. 請求項1に記載の水素発生装置において、
    前記栓部は、前記導入口および取出口を閉塞しないように前記反応容器の内壁と間隙を介して挿入されることを特徴とする水素発生装置。
  3. 請求項1又は2のいずれか1項に記載の水素発生装置において、
    前記加熱手段は、筐体の下方に配置されることを特徴とする水素発生装置。
  4. 請求項3に記載の水素発生装置において、
    前記筐体は、前記反応容器の長手方向を水平方向から傾斜せしめる傾斜手段を備えることを特徴とする水素発生装置。
  5. 請求項2に記載の水素発生装置において、
    前記間隙は、前記栓部に形成された溝によって形成されることを特徴とする水素発生装置。
  6. 請求項1に記載の水素発生装置において、
    前記反応容器は、筐体に複数配置されることを特徴とする水素発生装置。
  7. 請求項6に記載の水素発生装置において、
    前記反応容器は、千鳥状に配列されることを特徴とする水素発生装置。
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