特許文献2記載の技術は、ヘキサベンゾコロネン(HBC)に官能基を結合するとともに、この官能基を介して自己集積化させることで、いわゆるナノチューブ状の集積体を得ようとするものである。従って、最終的な半導体を得るための工程数が多く、しかも、得られた集積体がp型(ドナー)であるのか、又はn型(アクセプタ)であるのかが明確ではない。
特許文献3には、HBCの集積体であるナノチューブは、正孔及び電子の伝導経路を同時に有する、との示唆がある。この特許文献3記載の技術は、ナノチューブの内面及び外面をフラーレンで被覆するとともに、その被覆率でHBCにおける正孔移動度を制御するものであるが、このことから諒解されるように、特許文献2、3記載の技術では、HBCそれ自体のドナーとしての特性を向上させることはできない。
また、特許文献4記載の技術は、グラフェン誘導体に対し、フッ素原子を有する官能基を結合させ、これにより、n型半導体を得るものである。すなわち、この技術では、アクセプタが得られるに留まり、ドナーを得ることはできない。
さらに、特許文献2〜5のいずれにおいても、低分子有機化合物が開示されるのみである。周知のように、低分子有機化合物は有機溶媒に溶解し難く、このため、光電変換層を得る際にロールツーロール法等を行うことが困難となるという不具合が顕在化している。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、ドナー(電子供与体)あるいはアクセプタ(電子受容体)として優れた特性を示し、しかも、有機溶媒に対して易溶であり、光電変換層を簡便且つ容易に得ることが可能となる光電変換材料の製造方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、電子を供与する電子供与体(ドナー)あるいは電子を受容する電子受容体(アクセプタ)として機能する光電変換材料であって、一般式(1)で表されるポリフェニレンがさらに反応したポリマーからなることを特徴とする。
ただし、一般式(1)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。
一般式(1)で示すポリフェニレンが反応する際、R1〜R6に導入されたアルコキシ基が、複数のポリフェニレンの構成単位同士が接近することを抑制する立体障害となる。また、一般式(1)中のR7〜R10にアルコキシ基及びアルキル基の少なくとも一方が側鎖として導入されている場合、該側鎖も上記のアルコキシ基と同様に立体障害となる。これによって、複数のポリフェニレンの構成単位同士の間に架橋結合が形成されることを抑制しつつ、各構成単位内の反応を十分に進行させることができる。その結果、全体にわたって十分にπ電子雲が広がった縮合芳香環を構成単位とするπ共役系ポリマーが形成される。
また、このπ共役系ポリマーは、可溶性のアルコキシ基が導入された状態で得られる。ポリフェニレンがR7〜R10に上記の側鎖を備える場合は、可溶性の側鎖がさらに導入された状態でπ共役系ポリマーが得られる。
すなわち、本発明の光電変換材料は、上記のπ共役系ポリマーからなる。以下、該ポリマーを「ナノグラフェンポリマー」ともいう。このナノグラフェンポリマーでは、主鎖に沿ってπ電子雲が広がっている。これによって、吸光係数が大きくなり、励起子が活発に生成されるようになる。また、HOMOとLUMOとの間のエネルギー準位差であるバンドギャップEgが小さい。さらに、極大吸収波長が長波長側にシフトし、長波長(近赤外側)の光が良好に吸収されるようになる。つまり、太陽光の利用効率を良好に向上させることができる。
また、ナノグラフェンポリマーのLUMOのエネルギー準位は、P3HT等に比して低い(深い)。従って、PCBMをアクセプタとし、ナノグラフェンポリマーをドナーとする場合、P3HTをドナーとする場合に比してエネルギー損失が小さくなる。すなわち、ナノグラフェンポリマーを光電変換層のドナーとする有機薄膜太陽電池では、開放電圧Vocが大きくなる。
以上のような理由から、ナノグラフェンポリマーを光電変換材料とする有機薄膜太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
また、ナノグラフェンポリマーは、上記のように架橋構造の形成が抑制されていることに加え、可溶性のアルコキシ基が導入されている。これによって、ナノグラフェンポリマーを有機溶媒に溶解することが著しく容易となる。
さらに、上記の通り、一般式(1)中のR7〜R10に、上記の側鎖が導入されたナノグラフェンからナノグラフェンポリマーを得た場合、該ナノグラフェンポリマーが有する可溶性基の割合が高くなる。これによって、有機溶媒に対する溶解度を向上させることが可能になる。特に、ナノグラフェンポリマーが上記の側鎖としてアルコキシ基を備える場合、該ナノグラフェンポリマーの有機溶媒に対する溶解度をさらに効果的に高めることができる。
その結果、ナノグラフェンポリマーについて、上記の通り太陽光の利用効率を向上させるべく縮合芳香環の分子量を増大させても、有機溶媒に容易に溶解することができる。従って、スピンコート法やロールツーロール法等を用いて光電変換層を簡便且つ容易に形成することができる。
上記のアルコキシ基は、一般式(1)中のR1〜R10の全ての位置に結合していることが好ましい。また、この可溶性基はC1〜C20のアルコキシ基であることがより好ましい。なお、後述する一般式(2)、(3)についても同様である。
R1〜R10の全てにアルコキシ基を結合させることによって、ポリフェニレンの複数の構成単位同士が接近することが一層有効に抑制される。従って、ナノグラフェンポリマーに架橋構造が形成されることをより効果的に抑制することができる。さらに、R1〜R10の全てにアルコキシ基を結合させることによって、ナノグラフェンポリマーと有機溶媒との親和性がさらに向上する。このため、有機溶媒に対して、ナノグラフェンポリマーを一層易溶とすることができる。
なお、アルコキシ基の炭素数を1〜20とすることで、ポリフェニレンの構成単位同士の接近を抑制しつつ、ナノグラフェンポリマーの有機溶媒に対する溶解性を十分に高くすることができる。すなわち、アルコキシ基の炭素数を上記の範囲内に設定することにより、ドナーとして優れた特性を示し、且つ良好に有機溶媒に溶解させて容易に成膜可能なナノグラフェンポリマーを効率よく得ることができる。
上記のナノグラフェンポリマーの好適な例としては、下記の一般式(2)、(3)で表されるグラフェンの少なくともいずれか1つを構成単位とするものが挙げられる。
ただし、一般式(2)、(3)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。
なお、本発明においては、前記特許文献4と同様に、縮合芳香環を「グラフェン」といい、一般式(2)、(3)に示されるような構成単位がナノメートルスケールであるグラフェンを「ナノグラフェン」ともいう。
ナノグラフェンポリマーの重合度(構成単位の個数)は、2〜1000であることが好ましい。重合度を2以上とすることで、吸光係数を十分に高くすることや、Egを十分に小さくすることができる。一方、1000以下とすることで、重合に要する時間を短縮して、ナノグラフェンポリマーの生産効率を向上させることができる。すなわち、重合度を上記の範囲内に設定することにより、ドナーとして優れた特性を示すナノグラフェンポリマーを効率よく得ることができる。
ここで、ナノグラフェンポリマーの構成単位が上記したグラフェンである場合、該ナノグラフェンポリマーの分子量は1500〜4000000である。
また、本発明は、電子を供与する電子供与体(ドナー)あるいは電子を受容する電子受容体(アクセプタ)として機能する光電変換材料を製造する方法であって、
フェニレン誘導体を重合して、一般式(1)で表されるポリフェニレンを生成する工程と、
前記ポリフェニレンを反応させて、光電変換材料であるポリマーを生成する工程と、
を有することを特徴とする。
ただし、一般式(1)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。
このような過程を経ることで、光電変換材料(ドナーあるいはアクセプタ)として機能するナノグラフェンポリマーを構造上のばらつきなく且つ容易に作製することができる。
また、上記のR1〜R10の全てにアルコキシ基を結合させることが好ましい。この場合、ナノグラフェンポリマーに架橋構造が形成されることをより効果的に抑制することができるとともに、ナノグラフェンポリマーと有機溶媒との親和性を向上させることができる。その結果、有機溶媒に対して、ナノグラフェンポリマーを一層易溶とすることができる。
この際、アルコキシ基の炭素数を1〜20とすることで、ドナーとして優れた特性を示し、且つ良好に有機溶媒に溶解させて容易に成膜可能なナノグラフェンポリマーを効率よく得ることができる。
上記のナノグラフェンポリマーの構成単位は、典型的には、下記の一般式(2)、(3)で表されるグラフェンの少なくともいずれか1つである。
ただし、一般式(2)、(3)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。
本発明によれば、例えば、先ず、アルコキシ基が導入されたフェニレン誘導体を得て、該フェニレン誘導体を重合することでアルコキシ基を備えるポリフェニレンを得る。このポリフェニレンをさらに反応させることで、アルコキシ基を備えるナノグラフェンを構成単位とするナノグラフェンポリマー(光電変換材料)を生成することが可能である。
上記した理由から、ナノグラフェンポリマーの重合度が2〜1000となるように制御することが好ましい。このためには、例えば、重合反応時の反応温度や反応時間を、重合度が2〜1000となるような条件に設定すればよい。
さらに、本発明は、前記光電変換材料を用いた有機薄膜太陽電池であって、該光電変換材料を電子供与体として含む光電変換層を具備することを特徴とする。
この有機薄膜太陽電池では、例えば、PCBMをアクセプタとしたときのドナーとしてナノグラフェンポリマーを用いることで、P3HTを用いる場合に比して、光電変換層の吸光係数を大きくし、極大吸収波長を長波長側にシフトすることができる。また、ドナーのバンドギャップEgを小さくすることができる。その上、ドナーのLUMOのエネルギー準位を、アクセプタであるPCBMのLUMOの準位に近くすることができる。
従って、この有機薄膜太陽電池では、励起子の生成の活発化、太陽光の利用効率の向上、開放電圧Vocの増大が可能となり、光電変換効率を向上させることができる。
このように光電変換効率が大きな有機薄膜太陽電池では、同一の発電量が得られる太陽電池に比して、その面積を小さくすることができる。従って、重量を低減させることができるため、設置場所に加わる負荷も小さくすることができる。また、設置面積が小さくなるので、設置レイアウトの自由度も向上する。
また、ナノグラフェンポリマーは、アルコキシ基を有することで、有機溶媒に易溶であるため、該ナノグラフェンポリマーを用いて簡便且つ容易に光電変換層を得ることができる。すなわち、有機薄膜太陽電池自体を簡便且つ容易に得ることができる。
有機薄膜太陽電池の好適な例は、ドナードメインとアクセプタドメインが混在する光電変換層を備えるバルクへテロ接合型のものである。この場合、例えば、ドナーからなる層と、アクセプタからなる層とが個別に形成される平面ヘテロ接合型のものに比して、ドナードメインとアクセプタドメインとの接触面積が大きい。有機薄膜太陽電池では、主にドナードメインとアクセプタドメインの界面で励起子が電子と正孔に分離して発電に関与するので、両者の接触面積が大きいバルクへテロ接合型として構成することにより、光電変換効率を向上させることが可能となる。
また、ナノグラフェンポリマーを用いてバルクへテロ接合型の有機薄膜太陽電池の光電変換層を作製する場合、該ナノグラフェンポリマーが有機溶媒に易溶であるため、容易に成膜を行うことができる。これによって、良好に相分離したドナードメインとアクセプタドメインとが互いに混在した光電変換層を得ることができる。すなわち、光電変換層における電荷の分離効率を向上させることができるため、光電変換効率を向上させた有機薄膜太陽電池を得ることができる。
本発明によれば、π電子雲の広がりが大きいπ共役系ポリマー(ナノグラフェンポリマー)を構成して光電変換材料とする。これによって、光電変換材料の吸光係数を大きくできるとともに、HOMOとLUMOとのエネルギー準位差(バンドギャップEg)を小さくすることができる。また、極大吸収波長を長波長側にシフトさせて、光の吸収領域を可視光側へ広くすることができる。
さらに、HOMOのエネルギー準位が低いドナーとして用いることができるため、PCBMをアクセプタとしたとき、ドナー及びアクセプタのLUMOのエネルギー準位を互いに近づけることができる。
このため、ナノグラフェンポリマーをドナー、PCBMをアクセプタとして有機薄膜太陽電池を構成すると、励起子が活発に生成される。また、長波長(近赤外側)の光が良好に吸収されるようになり、太陽光の利用効率が向上する。さらに、開放電圧Vocが大きくなる。従って、光電変換効率が大きく、小面積で軽量な有機薄膜太陽電池を構成することができる。
また、このナノグラフェンポリマーは有機溶媒に著しく容易に溶解するので、光電変換層の成膜作業を容易且つ高精度に行うことができる。これによって、この光電変換層を備える有機薄膜太陽電池の製造効率及び光電変換効率を良好に向上させることができる。
以下、本発明に係る光電変換材料及びその製造方法につき、該光電変換材料を含む光電変換層を具備するバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池との関係で好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池(BHJ太陽電池)10の要部概略縦断面図である。このBHJ太陽電池10は、透明電極12に対し、正孔輸送層14、光電変換層16、裏面電極18が下方からこの順で重畳されることで構成される。
透明電極12は、正極として機能する。すなわち、該透明電極12には、正孔24が移動する。なお、透明電極12としては、例えばインジウム−スズ複合酸化物(ITO)等、太陽光をはじめとする光を十分に透過するものが選定される。
正孔輸送層14は、光電変換層16にて生成した正孔24が透明電極12に移動することを支援する層である。この正孔輸送層14は、一般的には、ポリスチレンスルホン酸でドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、すなわち、いわゆるPEDOT:PSSから形成することができる。
光電変換層16は、電子供与体(ドナー)として作用する光電変換材料からなるドナードメイン26と、電子受容体(アクセプタ)として作用する光電変換材料からなるアクセプタドメイン28とが混在する層として形成されている。この中、アクセプタとなる光電変換材料の好適な例としては、上記のPCBMが挙げられる。
一方、ドナーとなるp型半導体、すなわち、本実施形態に係る光電変換材料は、一般式(1)で示すポリフェニレンがさらに反応したナノグラフェンポリマーからなる。
なお、一般式(1)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。
ここで、官能基を具備しない無置換のポリフェニレンを反応させてポリマーを形成する場合、図2の(a)に示すように、一つの構成単位内の芳香環同士が全て反応してナノグラフェン構造を形成することが理想的である。
これに対し、ポリフェニレンの反応が十分に進行しなかった場合、図2の(b)に示すように、ポリマーの構成単位内に反応していない芳香環が含まれることとなる。このため、π共役系ポリマーのπ電子雲の広がりが十分に得られないことがある。
さらに、ポリフェニレンの反応の進行を過剰に促進させた場合、図2の(c)に示すように、構成単位内における芳香環同士が反応するに留まらず、複数の構成単位同士が架橋結合してしまうことがある。すなわち、ポリマーに架橋構造が形成されるため、ポリマーが有機溶媒等に対して難溶、場合によっては不溶となる。この場合、ポリマーの溶液を用いての成膜が困難となる。
本実施形態に係るポリフェニレンは、上記のように少なくともアルコキシ基が可溶性基として導入されている。この可溶性基は、例えば、図3に示すように、ポリフェニレンの構成単位30同士の反応において立体障害となる。これによって、該構成単位30同士が互いに接近することを抑制できる。
なお、図3に例示のポリフェニレンでは、一般式(1)中のR1、R3、R4、R6にアルコキシ基としてOC10H21が導入され、R7及びR8にアルキル基としてC12H25が導入され、R9及びR10にアルキル基としてCH3が導入されているが、これらに限定されるものではない。
すなわち、可溶性基R1〜R10が導入されたポリフェニレンでは、複数の構成単位同士の間で反応が生じることが抑制され、1つの構成単位内における芳香環同士の反応を効果的に進行させることができる。つまり、複数の構成単位間が架橋構造で結合されたポリマーが発生することを抑制し、十分にπ電子雲が広がったナノグラフェンポリマーを得ることができる。
このように、側鎖として可溶性基が導入されたポリフェニレンを反応させてナノグラフェンポリマーが得られるため、該ナノグラフェンポリマー自体にも可溶性基が導入されている。これによって、ナノグラフェンポリマーを有機溶媒に対して易溶とすることができる。
なお、ナノグラフェンポリマーの溶解度を向上させる観点からは、式(1)中のR1〜R10の全てにアルコキシ基が導入されていることが好ましい。この場合、ナノグラフェンポリマーに導入されるアルコキシ基の割合を増やすことができるため、上記溶解度を一層効果的に高めることができる。
また、アルコキシ基としては、炭素数が1〜20個であるものが好ましい。アルコキシ基の炭素数を上記の範囲とすることで、ポリフェニレンの構成単位同士の接近を抑制しつつ、ナノグラフェンポリマーの有機溶媒に対する溶解性を向上させることができる。すなわち、ドナーとして優れた特性を示し、且つ有機溶媒に易溶であり良好に成膜することが可能なポリマーを効率よく得ることができる。
ここで、ポリフェニレンから得られるナノグラフェンポリマーの構造異性体について説明する。このポリフェニレンでは、図4に示すように、構成単位中のベンゼン核32が、ベンゼン核34の34a、34bのいずれにも結合し得る。このため、ナノグラフェンポリマーは、下記の一般式(2)、(3)で示されるナノグラフェンが構成単位となる。
なお、一般式(2)、(3)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。
以上のように、本実施形態に係る光電変換材料は、一般式(2)、(3)で示すナノグラフェンのうち、少なくともいずれか1つを構成単位とするナノグラフェンポリマーである。すなわち、このナノグラフェンポリマーは、一般式(2)、(3)で示すナノグラフェンのいずれか1つのみが互いに結合したものに限定されることなく、例えば、一般式(2)、(3)で示すナノグラフェンがランダムに結合したものであってもよい。
なお、このナノグラフェンポリマーの重合度は、2〜1000であることが好ましい。重合度を2以上、すなわち、互いに結合したナノグラフェンの個数nを2個以上とすることによって、吸光係数を大きくすることができる。また、重合度を1000以下、すなわち、互いに結合したナノグラフェンの個数nを1000個以下とすることによって、ナノグラフェンポリマーを得るまでの重合に要する時間を短縮して、生産効率を向上させることができる。つまり、重合度を上記の範囲に設定することで、吸光係数が十分に向上した光電変換材料を効率よく作製することができる。
一般式(2)、(3)で示すナノグラフェンのいずれにおいても、分子量は750〜4000である。従って、ナノグラフェンポリマーの重合度を2〜1000としたとき、該ナノグラフェンポリマーの分子量は1500〜4000000の範囲内となる。
BHJ太陽電池10(図1参照)においては、このようなナノグラフェンポリマーからなる光電変換材料を含む光電変換層16上に、裏面電極18が重畳される。該裏面電極18は、電子36が到達する負極として機能する。なお、光電変換層16と裏面電極18の間には、バトクプロインやフッ化リチウム等からなる電子輸送層(不図示)を介在させてもよい。これによって、光電変換層16にて生成した電子36が裏面電極18に移動することを促進させることができる。
本実施形態に係るBHJ太陽電池10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき説明する。
BHJ太陽電池10の透明電極12に光(例えば、太陽光)が照射されると、該光は、正孔輸送層14を通過して光電変換層16に到達する。その結果、該光電変換層16において、励起子38が生成する。
生成した励起子38は、ドナードメイン26内を移動して、該ドナードメイン26とアクセプタドメイン28との界面に到達する。そして、この界面において、電子36と正孔24に分離する。上記と同様に、この中の電子36は、アクセプタドメイン28内を移動し、電子輸送層を経由した後、負極である裏面電極18に到達する。一方、正孔24は、ドナードメイン26内を移動し、正孔輸送層14を経由した後、正極である透明電極12に到達する。
ここで、本実施形態では、光電変換層16中のドナードメイン26が、一般式(2)、(3)で示すナノグラフェンの少なくともいずれか1つを構成単位とするナノグラフェンポリマー(光電変換材料)からなる。
一般式(2)、(3)から諒解される通り、ナノグラフェンにおいては、その全体にπ電子雲が広がっている。ドナードメイン26は、このナノグラフェンを構成単位とするナノグラフェンポリマーからなる。つまり、ドナードメイン26では、ナノグラフェン単体(モノマー)からなる場合に比して、π電子雲がより一層広範囲にわたって広がっている。
このようにπ電子雲の広がりが大きいドナードメイン26では、極大吸収波長が長波長側にシフトするとともに吸光係数が大きくなる。すなわち、HOMO−LUMO間のエネルギー準位差に相当するバンドギャップ(Eg)が小さくなる。従って、ドナードメイン26において、励起子38の生成が活発となるとともに、太陽光の利用効率が向上する。
以上のことが相俟って、BHJ太陽電池10は、優れた光電変換効率を示す。このため、該BHJ太陽電池10では、同一の発電量が得られる他の太陽電池に比して面積を小さくすることができる。従って、重量が低減するので設置場所に加わる負荷が小さくなり、また、設置レイアウトの自由度が向上する。
次に、本実施形態に係る光電変換材料の製造方法、すなわち、ナノグラフェンポリマーの製造方法について説明する。
上記した通り、ナノグラフェンポリマーは、ポリフェニレンの反応生成物として得ることができる。以下、図3に示すポリフェニレン、すなわち、一般式(1)中のR1、R3、R4、R6にOC10H21が導入され、R7及びR8にC12H25が導入され、R9及びR10にCH3が導入されたポリフェニレンからナノグラフェンポリマーを形成する場合を例に挙げて説明する。
先ず、上記のポリフェニレンを得るべく、アルコキシ基(OC10H21)を導入したジベンジルケトンを形成する。具体的には、反応式(4)で示すように、4−ヒドロキシベンゼン酢酸メチルと1−ヨードデカンとを反応させて4−デシルオキシベンゼン酢酸メチルを得る。
そして、反応式(5)で示すように、4−デシルオキシベンゼン酢酸メチルに、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)を加え、これによって得られる中間生成物にさらに塩酸を加える。その結果、アルコキシ基を導入したジベンジルケトンとして、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノンを形成することができる。
次に、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノンと、1,4−ビスベンジルとからアルコキシ基を備える3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)(フェニレン誘導体)を得る。具体的には、反応式(6)で示すように、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノン、1,4−ビスベンジル、n−ブタノールを混合した溶液を加熱しながら、TritonBのメタノール溶液を添加する。なお、TritonBは、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムである。これによって、アルコキシ基を備える3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)を得ることができる。
次に、反応式(7)で示すように、上記の通り得られた3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)と、1,4−ビス(1−プロピニル)−2,5−ジドデシルベンゼンをディールスアルダー重合させる。これによって、上記の可溶性基を備えるポリフェニレンを得ることができる。この際、アルコキシ基を備える3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)と、アルキル基を備える1,4−ビス(1−プロピニル)−2,5−ジドデシルベンゼンとを反応させることによって、効率的にポリフェニレンを得ることができる。また、ポリフェニレンにアルコキシ基及びアルキル基の両方を導入することが可能になり、有機溶媒に対するポリフェニレンの可溶性を一層高めることができる。
上記のようにして得られたポリフェニレンを、例えば、反応式(8)で示すように、塩化鉄(FeCl3)等のルイス酸触媒を用いて反応させる。その結果、アルコキシ基及びアルキル基が導入されたナノグラフェンポリマーが得られる。具体的には、このナノグラフェンポリマーには、上記の通り構造異性体が含まれるため、一般式(2)、(3)中のR1、R3、R4、R6にOC10H21が導入され、R7及びR8にC12H25が導入され、R9及びR10にCH3が導入されたナノグラフェンポリマーを得ることができる。
このようにポリフェニレンを反応させる際、該ポリフェニレンには、アルコキシ基及びアルキル基が導入されているため、複数の構成単位間のカップリング(分子間カップリング)が抑制される。従って、例えば、触媒としての塩化鉄の量を調整することで、構成単位内の芳香環を全て反応させつつ、複数の構成単位間に架橋構造が形成されることを抑制できる。これによって、構成単位全体にわたって十分にπ電子雲が広がった縮合芳香環からなるナノグラフェンポリマーを得ることができる。
また、ナノグラフェンポリマーの重合度は、例えば、重合反応時の反応温度や反応時間を設定することで調整することが可能であり、上記したように2〜1000とすることが好ましい。これによって、吸光係数が十分に向上した光電変換材料(ナノグラフェンポリマー)を効率よく作製することができる。
なお、例えば、上記の反応式(6)において、1,4−ビスベンジルと反応させる物質として、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノンに代えて他の物質を選択することで、一般式(2)、(3)中のR1〜6に導入される側鎖についても選択することができる。
また、上記の反応式(7)で示すディールスアルダー重合において、3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)と反応させる物質として、1,4−ビス(1−プロピニル)−2,5−ジドデシルベンゼンに代えて他の物質を選択することで、一般式(2)、(3)中のR7〜R10に導入される側鎖についても選択することができる。
図5は、上記の可溶性基を備えるポリフェニレン(図3に示すポリフェニレン)と、該ポリフェニレンが反応して得られたナノグラフェンポリマーの1H−核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。スペクトル中、0〜2ppmに現れているピークは、アルコキシ基の水素に由来している。また、6〜8ppmに現れているピークは、フェニル基の水素に由来している。
図5から、ポリフェニレンのスペクトル中に出現しているアルコキシ基の水素に由来するピークは、ナノグラフェンポリマーのスペクトル中にも出現していることが分かる。すなわち、上記のように、アルコキシ基を備えるポリフェニレンを反応させることで、該アルコキシ基を備えるナノグラフェンポリマーが生成されていると判断し得る。
また、フェニル基の水素に由来するピークは、ポリフェニレンのスペクトル中には出現しているが、ナノグラフェンポリマーのスペクトル中には出現していない。このため、上記のように得られたナノグラフェンポリマーでは、ポリフェニレンの構成単位内のフェニル基が互いに反応して縮合芳香環が形成されていること、つまり、ナノグラフェンポリマーがπ共役系ポリマーであることが分かる。
図6は、上記の可溶性基を備えるポリフェニレン(図3に示すポリフェニレン)と、該ポリフェニレンが反応して得られたナノグラフェンポリマーの紫外・可視分光法(UV−Vis)の吸収スペクトルである。
図6から、長波長側の吸収端が、ポリフェニレンでは略330nmであるのに対し、ナノグラフェンポリマーでは、略585nmであることが分かる。すなわち、ナノグラフェンポリマーでは、ポリフェニレンに比して、極大吸収波長が長波長側にシフトしている。π電子共役系では、その分子量が増え、π電子の数が増大するにつれて、極大吸収波長が長波長側にシフトし、光の吸収領域が可視光側へ広くなる。従って、図6からも、上記のように得られたナノグラフェンポリマーは、構成単位全体にわたって十分にπ電子雲が広がった縮合芳香環からなるπ共役系ポリマーであると判断し得る。
図7に、上記のナノグラフェンポリマー、P3HT、PCBMのそれぞれについて、紫外・可視分光法(UV−Vis)、光電子収量分光法(PYS)を用いて測定したHOMO及びLUMOのエネルギー準位を示す。
図7に示すように、HOMOとLUMOとのエネルギー準位差であるバンドギャップEgは、ナノグラフェンポリマーが2.1eVであり、P3HTが2.2eVである。従って、ナノグラフェンポリマーのバンドギャップEgは、P3HTに比して、小さいことが分かる。
また、ナノグラフェンポリマーのLUMOのエネルギー準位は約−3.2eVであり、P3HTのLUMOのエネルギー準位(約−2.5eV)に比して深い。すなわち、ナノグラフェンポリマーのLUMOのエネルギー準位は、P3HTに比して、PCBM(フラーレン誘導体)のLUMOのエネルギー準位に近い。この理由は、ナノグラフェンポリマーの構成単位であるナノグラフェンが炭化水素芳香環を基本骨格とする縮合芳香環であり、PCBMの構造に類似するためであると推察される。このため、ナノグラフェンポリマーをドナーとし、PCBMをアクセプタとして光電変換層16を形成したBHJ太陽電池10では、P3HTをドナーとする場合に比して、開放電圧Vocを大きくすることができる。
なお、上記のナノグラフェンポリマーを含む光電変換層16は、以下のようにして形成することができる。
先ず、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン等の適切な溶媒に、ナノグラフェンポリマーとPCBMとを混合して、又はそれぞれ個別に添加する。ナノグラフェンポリマー及びPCBMは有機溶媒に易溶であるため、混合溶液を容易に調整することができる。
次に、この混合溶液を、スピンコーティング、インクジェット印刷、ローラキャスティング、ロールツーロール法等のいずれかの手法によって、正孔輸送層14上に塗布する。
次に、該正孔輸送層14上の混合溶液を加熱すると、該混合溶液が硬化し、光電変換層16が得られる。必要に応じて、アニール処理を施すことでドナードメイン26とアクセプタドメイン28との相分離をさらに促進することが可能である。その結果、ドナードメイン26とアクセプタドメイン28の接合界面の面積が増大し、発電性能を向上させることも可能である。
ドナーとしてモノマーを用いる場合、モノマーが有機溶媒に溶解し難いことから、光電変換層16を得る際に上記したような手法を採用することは困難である。これに対し、本実施形態では、上記のように可溶性基が導入されたナノグラフェンポリマーをドナーとして用いる。ナノグラフェンポリマーが所定の溶媒に易溶であることから、上記したプロセスによって、光電変換層16を容易且つ簡便に、しかも、低コストで形成することが可能である。また、ドナードメイン26とアクセプタドメイン28との相分離を一層良好に促進することができる。すなわち、ドナードメイン26とアクセプタドメイン28とが良好に混在され、互いの界面の面積を増大させることができる。これによって、光電変換層16において、電荷が電子36と正孔24に分離する効率を高めることができ、BHJ太陽電池10の光電変換効率を向上させることができる。
以上の通り、本実施形態に係るナノグラフェンポリマーは、π電子雲の広がりが大きいπ共役系ポリマーからなるため、吸光係数が大きい。また、長波長(近赤外側)の光が良好に吸収されるようになり、太陽光の利用効率が向上する。さらに、バンドギャップEgが小さく、HOMOのエネルギー準位が低い。すなわち、LUMOのエネルギー準位が、PCBMのLUMOのエネルギー準位に近い。
このため、ナノグラフェンポリマーをドナー、PCBMをアクセプタとしたBHJ太陽電池10では、励起子38が活発に生成される。また、開放電圧Vocが大きくなる。従って、光電変換効率を良好に向上させることができる。
なお、本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
上記した実施形態では、一般式(1)中のR1、R3、R4、R6にOC10H21が導入され、R7及びR8にC12H25が導入され、R9及びR10にCH3が導入されたポリフェニレンから形成されたナノグラフェンポリマーについて説明した。しかしながら、ポリフェニレンに導入されるアルコキシ基及びアルキル基は上記のものに限定されるものではない。一般式(1)のR1〜R6の少なくとも一つがアルコキシ基であればよく、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかであればよい。
例えば、一般式(1)のR1〜R6の全てにアルコキシ基としてOC10H21が導入され、R7及びR8にC12H25が導入され、R9及びR10にCH3が導入されたポリフェニレンからナノグラフェンポリマーを形成することもできる。この場合、先ず、反応式(9)で示すように、ヨードフェノールとブロモデカンとを反応させて、1−デキシルオキシ−4−ヨードベンゼンを得る。
次に、反応式(10)で示すように、1−デキシルオキシ−4−ヨードベンゼンと、1,4−ビス(1−プロピニル)ベンゼンとを反応させて、1,4−ビス(デシルオキシフェニルエチニル)ベンゼンを得る。
次に、反応式(11)で示すように、パラジウム(Pd)錯体等を触媒に用いて、1,4−ビス(デシルオキシフェニルエチニル)ベンゼンを酸化反応させることでアルコキシ基を導入した1,4−ビスベンジルを得る。
このアルコキシ基を導入した1,4−ビスベンジルと、上記の反応式(5)によって得られるアルコキシ基を導入したジベンジルケトン(1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノン)とを反応させる。すなわち、反応式(12)で示すように、アルコキシ基を導入した1,4−ビスベンジル、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノン、n−ブタノールを混合した溶液を加熱しながら、TritonBのメタノール溶液を添加する。
これによって得られたアルコキシ基を備える3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)について、上記の反応式(6)で得られた3,3’−(1,4−フェニレン)ビス(2,4,5,−トリフェニル−2,4−シクロペンタジエン−1−オン)と同様に、1,4−ビス(1−プロピニル)−2,5−ジドデシルベンゼンとディールスアルダー重合させる。その結果、一般式(1)のR1〜R6の全てにアルコキシ基を導入し、R7及びR8にアルキル基を導入し、R9及びR10にCH3を導入したポリフェニレンを得ることができる。
このポリフェニレンを、さらに、上記の通り、塩化鉄(FeCl3)等のルイス酸を触媒として反応させる。これによって、一般式(2)、(3)中のR1〜R6にOC10H21が導入され、R7及びR8にC12H25が導入され、R9及びR10にCH3が導入された構成単位を有するナノグラフェンポリマーを得ることができる。
上記のように一般式(1)のR1〜R6の全てにアルコキシ基を導入し、且つR7及びR8にアルキル基を導入したポリフェニレンの反応では、複数の構成単位同士が接近することが一層有効に抑制される。このため、得られたナノグラフェンポリマーに架橋構造が形成されることを一層効果的に抑制することができる。また、有機溶媒との親和性を一層向上させて、該有機溶媒に対する溶解度をさらに大きくしたナノグラフェンポリマーを得ることができる。
また、上記した実施形態では、光電変換層16にドナーとアクセプタが混在するBHJ太陽電池10を例示して説明している。しかしながら、ナノグラフェンポリマー(光電変換材料)は、ドナーからなる層と、アクセプタからなる層とが個別に形成された光電変換層を有する平面ヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池に用いることもできる。この場合、ドナーからなる層を、ナノグラフェンポリマーから形成するようにすればよい。
また、この実施形態では、ナノグラフェンポリマーを有機薄膜太陽電池のドナーとして用いる例について説明したが、特にこれに限定されるものではない。ナノグラフェンポリマーを有機薄膜太陽電池のアクセプタとして採用することも可能である。
さらに、ナノグラフェンポリマーの用途は、有機薄膜太陽電池の光電変換層16に限定されるものではない。例えば、光センサに採用することも可能である。
光電変換層のドナーにナノグラフェンポリマーを採用し、アクセプタにPCBMを採用してBHJ太陽電池セルを作製した。
具体的には、先ず、ITO電極がパターニングされたガラス基板を洗浄し、該基板をスピンコータに固定する。次に、基板上にPEDOT:PSS水分散液を滴下し、4000rpmで回転させる。これによって、膜厚が40nm程度の正孔輸送層を形成する。
これとは別に、図3に示す構成単位30からなるナノグラフェンポリマー4mgと、PCBM16mgとを、1.0mlのオルトジクロロベンゼンに溶解させて混合溶液を調整する。
この混合溶液を、グローブボックス内に設置したスピンコータに固定した上記基板の正孔輸送層上に滴下し、1000rpmで回転させる。これによって、膜厚が40nm程度の光電変換層を形成する。
次に、真空蒸着装置内に、上記のように正孔輸送層及び光電変換層を形成した基板をセットし、該光電変換層上にバトクプロインやフッ化リチウム等を電子輸送層として蒸着する。さらに、電子輸送層上に200nmの膜厚となるようにアルミニウム電極を蒸着して、BHJ太陽電池セルを得た。
このBHJ太陽電池セルについて発電性能を測定した結果を図8に示す。なお、発電性能は、疑似太陽光として、エアマスフィルタを装着したソーラーシミュレータの光AM1.5G(100mW/cm2)をBHJ太陽電池セルに照射して行った。すなわち、BHJ太陽電池セルに対して、ソースメータユニット(Keithley2400)を用いて電圧を印加しつつ、上記の光照射時に流れる電流の測定を行った。そして、この測定結果から、短絡電流密度Isc(mA/cm2)、開放電圧Voc(V)、曲線因子FF、光電変換効率(%)を求めた。
図8に示すように、BHJ太陽電池セルでは、短絡電流密度Iscが3.27mA/cm2、開放電圧Vocが0.80V、曲線因子FFが0.5であり、光電変換効率が1.3%であった。
従って、本実施形態に係るナノグラフェンポリマーをドナーとするBHJ太陽電池では、開放電圧Vocが大きく、十分な光電変換効率が得られることが確認された。すなわち、発電性能を良好に向上させることが可能である。