JP6057830B2 - 熱間鍛造金型 - Google Patents
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Description
このような純チタンやチタン合金を用いて上述した鍛造品を鍛造する際には、一般に金型を用いた熱間の据え込み鍛造方法が用いられる。据え込み鍛造方法は、予め製品形状を模して形成された金型内に加熱された被加工材を装入し、挿入した被加工材を高温状態に保持したまま押し出すことで、金型に沿った形状に引き伸ばすように変形させながら鍛造するものである。据え込み鍛造方法を用いれば、鍛造中の変形において製品形状に沿ったメタルフローが得られるため他の加工方法に比べてより粘り強く、耐衝撃破壊性に優れた鍛造品を得ることができる。
特許文献1に開示の前方押出鍛造方法は、筒形のブランクをダイス内に挿入し且つ前方に押出して縮径するに際し、上記ダイス内の収容部に挿入したブランクの後端面を押圧するパンチの先端面に、該先端面の周辺から斜めに凹む傾斜縁とこれに隣接する凹リングとを設け、上記ブランクにパンチが当接した際に上記先端面の傾斜縁によりブランクの後端面における周縁をその中心寄りに流動させ且つ上記凹リング内に進入させると共に、上記ブランクをダイス内の前方寄りの縮径部に押出して縮径する、ことを特徴とするものである。
このように、ダイスに挿入されるブランクのサイズがダイスとほぼ同一である場合、特許文献1の技術ではバリの発生を抑制することはできず、据え込み鍛造を円滑に進行させるのは困難である。
即ち、本発明の熱間鍛造金型は、下金型と前記下金型に押し付けられる上金型からなり、前記上金型を前記下金型に押し付けることによって前記下金型内に装入された被加工材
を据え込み鍛造する熱間鍛造金型であって、前記上金型は、柱状のポンチ部と、前記ポンチ部の端部に形成されて前記被加工材に押し付けられる柱状の接触部とを備え、前記接触部は、前記柱状のポンチ部の側面よりも前記ポンチ部の内部側に後退した側面を有すると共に、前記下金型に押し付けられたときに前記下金型及び前記ポンチ部と共に前記接触部を取り囲む空間であるポケット部を形成することを特徴とする。
また、前記ポケット部が、前記ポンチ部の側面と前記下金型との間の隙間よりも大きい断面高さを有するとよい。
なお、本発明にかかる熱間鍛造金型の最も好ましい形態は、下金型と前記下金型に押し付けられる上金型からなり、前記上金型を前記下金型に押し付けることによって前記下金型内に装入された被加工材を据え込み鍛造する熱間鍛造金型であって、前記上金型は、柱状のポンチ部と、前記ポンチ部の端部に形成されて前記被加工材に押し付けられる柱状の接触部とを備え、前記接触部は、前記柱状のポンチ部の側面よりも前記ポンチ部の内部側に後退した側面を有すると共に、前記下金型に押し付けられたときに前記下金型及び前記ポンチ部と共に前記接触部を取り囲む空間であるポケット部を形成するものであって、前記ポケット部が、前記ポンチ部の側面と前記下金型との間の隙間よりも大きく且つ前記ポンチ部の寸法の5%以下の断面幅を有すると共に、前記ポンチ部の側面と前記下金型との間の隙間よりも大きい断面高さを有することを特徴とする。
本実施形態による熱間鍛造金型1は、図1に示す手順の熱間鍛造(据え込み鍛造)で用いられる。なお、図1〜図3の紙面に向かっての上下方向は重力方向と一致している。つまり、以下の説明で用いる「上」、「下」の語について、「上」は熱間鍛造金型1が設置された空間における天井側に対応し、「下」は同空間における床面などの設置面側に対応する。
ここで、図1は、本実施形態による熱間鍛造金型1を用いた熱間鍛造の手順を説明する模式図であり、(a)は鍛造開始前の熱間鍛造金型1の状態、(b)は鍛造中の熱間鍛造金型1の状態、(c)は鍛造完了後の熱間鍛造金型1及び鍛造品Wの状態を示している。また、図2は、熱間鍛造金型1の上金型5を下方から見た斜視図である。
熱間鍛造金型1は、上金型5と下金型4の上下2つの金型に分割できる構成を有しており、下金型4は、装入された荒地2を載置し、後述する上金型5で押下された荒地2を目的の形状に成形する型であり、上金型5は、下金型4に装入された荒地2を上方から圧下(押下)するものである。
図1に示すように、下金型4は、内部に荒地2を装入可能な円筒状の型上部6と、この型上部6の下側に設けられて型上部6内の荒地2を下方より支持する型下部7とを有している。型上部6は、荒地2の外径とほぼ同じ大きさの内径を有すると共に下金型4の上下
方向に沿って貫通状に形成された柱状の孔部8を有している。荒地2は、この孔部8の上方から孔部8内に装入可能である。
接続孔部9aは、貫通孔9の上側の開口縁の周囲の全周を取り囲むと共に孔部8の下側の開口縁の周囲の全周を取り囲むように、貫通孔9から孔部8に向かって内径が大きくなる傾斜面で構成される孔である。型上部6の孔部8に装入された荒地2は、接続孔部9aの傾斜面に接して支持されることで下方への移動が規制される。
さらに、下金型4の下側には、鍛造が終了した鍛造品Wを排出するノックアウト棒(図示せず)と、このノックアウト棒を上下方向に移動させるシリンダ機構(図示せず)とが設けられている。ノックアウト棒は、下金型4のさらに下方において上下方向への移動が可能な状態で、型下部7の貫通孔9に対応する位置に配置されている。このノックアウト棒は、上方に移動することで、鍛造後に貫通孔9内に存在する鍛造品Wを押し上げて、該鍛造品Wを下金型4(孔部8、接続孔部9a及び貫通孔9)の成形面から引き剥がす。ノックアウト棒の上下方向への移動は、油圧シリンダ機構などを用いて実現することができる。
図1に示すように、上金型5は、下金型4の孔部8に装入された荒地8を押圧して接続孔部9a及び貫通孔9に押し込むものである。この上金型5は、下金型4に装入された荒地8に対して近接及び離反が可能となるように下金型4の上方に配置されている。上金型5を下降させて下金型4に押し付けることで荒地2を上方から押しつぶすように圧下すると、荒地2を接続孔部9a及び貫通孔9に押し込むことができる。
ポンチ部11は、型上部6の孔部8の断面形状とほぼ同じ形状及び大きさの断面形状を有する柱形状の部材であり、本実施形態では円柱形状を有している。この柱状のポンチ部11の高さは下金型4の孔部8の深さ以下であって、下金型4で成形される鍛造品Wの形状に合わせて選択される。
11の2つの端部のうち、一方の端部においてポンチ部11とほぼ同心となる位置に設けられてポンチ部11と一体の鍔となる。下金型4に装入された荒地2を押圧するためにポンチ部11を孔部8に挿入すると、鍔である頭部12が下金型4と接触する位置でポンチ部11の挿入が止まって上金型5による荒地2の押圧が止まる。頭部12と下金型4を接触せずに、もしくは頭部12を設けずに、所定の圧下位置で押圧を止めてもよい。
ポケット部14は、上金型5が下金型4に押し付けられたときに下金型4及びポンチ部11と共に接触部13を取り囲むように形成される空間である。図3に示すように、ポケット部14は、ポンチ部11の接触面13に押圧されて変形する荒地2の一部である上端の周縁部分が逃げ込む空間である。このポケット部14に逃げ込んだ荒地2の上端の周縁部分が接触部13の側面と下金型4の孔部8の壁面に触れることで冷却されて硬化すると、荒地2の上端の周縁部分の更なる変形が起こらなくなる。この周縁部分の硬化は、荒地2が、ポケット部14の上方にわずかに存在するポンチ部11と孔部8の壁面との間の隙間に入り込んでバリとなることを防ぐ効果を生む。言い換えれば、ポンチ部11の押圧を妨げる抵抗となるバリの発生を防ぐ効果が得られる。
そこで、ポケット部14を接触部13の側面と交差(例えば、直交)する平面で切断したときの断面において、ポンチ部11の側面からの接触部13の側面の後退距離D1に基づいて(対応して)決まる幅(断面幅)SD1を適切に選択する必要がある。つまり、後退距離D1に基づいて決まる幅SD1が狭ければ、ポケット部14とポケット部14の上方に存在する隙間との違いが無くなってしまい、幅の狭いポケット部14で硬化した荒地2が、バリと同じくポンチ部11の押圧を妨げる抵抗となってしまう。従って、後退距離D1に基づいて決まる幅SD1には下限がある。
間が必要となる。逃げ込んだ荒地2の硬化が遅ければ、逃げ込んだ荒地2が、ポケット部14の上方に存在する隙間にも入り込んでバリとなってしまうので、後退距離D1に基づいて決まる幅SD1には上限もある。
ここで、ポケット部14の幅SD1を、ポンチ部11の側面と孔部8との間の隙間よりも大きく、ポンチ部11の寸法の5%以下の範囲で選択すればよいと説明したが、上述の構成を有する熱間鍛造金型1であれば、ポケット部14の幅SD1と接触部13の側面の後退距離D1はほぼ同一となる。従って、接触部13の側面の後退距離D1を、ポンチ部11の側面と孔部8と間の隙間よりも大きく、ポンチ部11の寸法の5%以下の範囲で選択してもよい。
実際の鍛造においては、ポケット部14への荒地2の流動やバリの出方は、熱間鍛造金型1のセンタリング精度や潤滑状態等の影響により解析とは異なって不均一になる。また、鍛造形状や金型形状によってバリの出易さは異なり、潤滑状態が良好で摩擦が小さい場合や、鍛造前の荒地2の表面温度が低下している場合などは、バリが発生しないことも考えられる。そこで今回は、単純な鍛造形状・金型形状で、金型と荒地2の摩擦定数を比較的高め(せん断摩擦mf=0.35)にしてバリが発生する条件で解析を行い、ポケット部14を設けていない場合のバリ高さと相対比較することで、バリ抑止効果があるか否かを判断した。
金型について、孔部8の内径をφ300mmとし、ポンチ部11の外径をφ296mmとした。ポンチ部11と下金型4(孔部8)との間の隙間を2mmとし、押出比を約4とし、接続孔部9aの傾斜面の傾斜角を45°とした。
被加工材である荒地2は、Ti-64合金であり、寸法をφ294mm×280mmとし、加熱温度を950℃とした。
バリ高さの解析結果は、下の表1の通りである。
の範囲であればよいといえる。
なお、ポケット部14の断面の面積が150mm2を超えると、多くの荒地2がポケット部14に流入して荒地2の冷却、つまり硬化に時間がかかってしまう。そのため、ポンチ部11と下金型4との間の隙間に入り込む荒地2の量も多くなり、多くのバリが発生し易くなるので、本実施例に関しては、ポケット部14の断面の面積が150mm2を超えることは望ましくない。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
2 被加工材(荒地)
4 下金型
5 上金型
6 型上部
7 型下部
8 孔部
9 貫通孔
9a 接続孔部
11 ポンチ部
12 頭部
13 接触部
14 ポケット部
D1 後退距離
D2 側面高さ
SD1 断面幅
SD2 断面高さ
W 鍛造品
Claims (1)
- 下金型と前記下金型に押し付けられる上金型からなり、前記上金型を前記下金型に押し付けることによって前記下金型内に装入された被加工材を据え込み鍛造する熱間鍛造金型であって、
前記上金型は、柱状のポンチ部と、前記ポンチ部の端部に形成されて前記被加工材に押し付けられる柱状の接触部とを備え、前記接触部は、前記柱状のポンチ部の側面よりも前記ポンチ部の内部側に後退した側面を有すると共に、前記下金型に押し付けられたときに前記下金型及び前記ポンチ部と共に前記接触部を取り囲む空間であるポケット部を形成するものであって、
前記ポケット部が、前記ポンチ部の側面と前記下金型との間の隙間よりも大きく且つ前記ポンチ部の寸法の5%以下の断面幅を有すると共に、前記ポンチ部の側面と前記下金型との間の隙間よりも大きい断面高さを有する
ことを特徴とする熱間鍛造金型。
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