以下、詳細にわたって本発明を説明する。
まず、一般式[1]におけるA1〜A4は、それぞれ独立に、下記一般式[2]で表される基であり、
R1〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基、置換シリル基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、または、置換アミノ基である。
一般式[2]
(式中、R 29 〜R 33 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基、置換シリル基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、または、置換アミノ基を表し、R 29 〜R 33 は、隣接した基が互いに結合して環を形成しても良い。)
ここで、脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基を指し、そのようなものとしては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基が挙げられる。
また、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基といった炭素数1〜18のアルキル基が挙げられる。
また、アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−オクテニル基、1−デセニル基、1−オクタデセニル基といった炭素数2〜18のアルケニル基が挙げられる。
また、アルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−オクチニル基、1−デシニル基、1−オクタデシニル基といった炭素数2〜18のアルキニル基が挙げられる。
また、シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクタデシル基といった炭素数3〜18のシクロアルキル基が挙げられる。
ここで、芳香族炭化水素基としては、単環、縮合環、環集合炭化水素基が挙げられる。
また、単環芳香族炭化水素基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,4−キシリル基、p−クメニル基、メシチル基等の炭素数6〜18の単環芳香族炭化水素基が挙げられる。
また、縮合環炭化水素基としては、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アンスリル基、2−アンスリル基、5−アンスリル基、1−フェナンスリル基、9−フェナンスリル基、1−アセナフチル基、2−アズレニル基、1−ピレニル基、2−トリフェニレル基等の炭素数10〜18の縮合環炭化水素基が挙げられる。
また、環集合炭化水素基としては、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基等の炭素数12〜18の環集合炭化水素基が挙げられる。
また、脂肪族複素環基としては、2−ピラゾリノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、2−モルホリニル基といった炭素数3〜18の脂肪族複素環基が挙げられる。
また、芳香族複素環基としては、トリアゾリル基、3−オキサジアゾリル基、2−フラニル基、3−フラニル基、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、1−ピロ−リル基、2−ピロ−リル基、3−ピロ−リル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピラジル基、2−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、2−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、2−イミダゾリル基、3−ピラゾリル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、N−インドリル基、N−カルバゾリル基、N−アクリジニル基、2−チオフェニル基、3−チオフェニル基、ビピリジル基、フェナントロリル基といった炭素数2〜18の芳香族複素環基が挙げられる。
また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
また、アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基といった炭素数1〜8のアルコキシル基が挙げられる。
また、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、9−アンスリルオキシ基といった炭素数6〜14のアリ−ルオキシ基が挙げられる。
また、置換シリル基としては、置換もしくは未置換のアルキル基、または、置換もしくは未置換のアリール基によって置換されたシリル基であり、モノアルキルシリル基、モノアリールシリル基、ジアルキルシリル基、ジアリールシリル基、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基等といった置換シリル基が挙げられる。
また、モノアルキルシリル基としては、モノメチルシリル基、モノエチルシリル基、モノブチルシリル基、モノイソプロピルシリル基、モノデカンシリル、モノイコサンシリル基、モノトリアコンタンシリル基等のモノアルキルシリル基が挙げられる。
また、モノアリールシリル基としては、モノフェニルシリル基、モノトリルシリル基、モノナフチルシリル基、モノアンスリルシリル基等のモノアリールシリルが挙げられる。
また、ジアルキルシリル基としては、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジイソプロピルシリル基、ジブチルシリル基、ジオクチルシリル基、ジデカンシリル基等のジアルキルシリル基が挙げられる。
また、ジアリールシリル基としては、ジフェニルシリル基、ジトリルシリル基等のジアリールシリルが挙げられる。
また、トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリオクチルシリル基等のトリアルキルシリル基が挙げられる。
また、トリアリールシリル基としては、トリフェニルシリル基、トリトリルシリル基等のトリアリールシリル基が挙げられる。
また、置換アミノ基としては、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基、N−フェニルアミノ基、N−フェニル−N−メチルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ビス(m−トリル)アミノ基、N,N−ビス(p−トリル)アミノ基、N,N−ビス(p−ビフェニリル)アミノ基、ビス[4−(4−メチル)ビフェニリル]アミノ基、N−α−ナフチル−N−フェニルアミノ基、N−β−ナフチル−N−フェニルアミノ基等の炭素数2〜26の置換アミノ基が挙げられる。
これら、R1〜R28おける、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂肪族複素環基、および、芳香族複素環基は、さらに他の置換基によって置換されていても良い。そのような置換基としては、前述の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂肪族複素環基、芳香族複素環基が挙げられる。
さらに、一般式[2]におけるR29〜R33は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基、置換シリル基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、または、置換アミノ基である。
ここで示す置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、および、置換もしくは未置換の芳香族複素環基の例としては前述のものが挙げられる。
本発明の一般式[1] におけるA1〜A4として、好ましいものとしては、未置換の1価の芳香族炭化水素基、未置換の1価の芳香族複素環基が挙げられ、さらに好ましいものは、未置換の1価の芳香族炭化水素基が挙げられ、特に好ましいものとしては、フェニル基が挙げられる。
また、一般式[1]におけるR1〜R28として、好ましいものとしては、水素原子、1価の脂肪族炭化水素基、または、1価の芳香族炭化水素基が挙げられ、さらに好ましいものは、水素原子、または、1価の芳香族炭化水素基が挙げられ、特に好ましいものは、水素原子が挙げられる。
以下に3−カルバゾリル基を有することについての優位性を説明する。
一般に、アミノ基は電子ドナ−として働くことは知られているが、カルバゾ−ル骨格中の窒素原子は、窒素原子上に結合した置換基に対してはドナ−性をほとんど有さない。これはカルバゾ−ル環と結合した、窒素原子上の置換基と平面構造をとりにくい事に起因していると考えられる。
逆に、3 位で結合したカルバゾ−ル環は環の平面性があるため、そのベンゼン環部分に対しては電子ドナ−性となりうる(化4参照) 。それらのため、中心骨格であるピレンとの置換位置としては、電子的な相互作用が期待できる、3位で結合したカルバゾリル基に着目した。
また、3位に置換したカルバゾリル基は、9位に置換したカルバゾリル基に比較して、
分子の対称性が低いので、分子の結晶性が低くなり、アモルファス性が高くなるため、薄
膜形成した際の安定性向上にも大きく寄与することが可能である。
故に、本発明のカルバゾ−ル化合物は、非対称であるのでアモルファス性が高くなり、
その結果として結晶化が起こりにくい。この性状は、有機E L 素子用の材料として用いる場合、薄膜の安定性が向上し、ダ−クスポットが起き難くなり、有機EL素子寿命が長くなる。
さらに、溶解性を向上させる為には、R29〜R33のいずれかに置換基を導入することが好ましく、その種類としては、立体障害の大きい脂肪族炭化水素基が最も好ましい。
以上、本発明の一般式[1]で表される有機EL素子用材料について説明したが、これらの有機EL素子用材料を用いて蒸着によって有機EL素子を作成する場合、有機EL素子用材料の分子量としては、1500以下が好ましく、1200以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましく、800以下が特に好ましい。この理由として、分子量が大きいと、蒸着による素子の作製が困難になる懸念があるためである。
本発明の有機EL素子用材料の代表例を、以下の表1に示すが、本発明は、この代表例に限定されるものではない。
次に、本発明で、ホスト材料として用いられる化合物の代表例を、以下の表2、表3に示すが、本発明は、この代表例に限定されるものではない。
尚、本発明における、湿式成膜法とは、塗布法、インクジェット法、ディップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコーター法、湿漬塗布法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷、スクリーン印刷法、LB法等などにより、組成物を塗布して成膜するものである。
有機EL素子用材料は、高純度の材料が要求されるが、本発明の化合物は、昇華精製法や再結晶法、再沈殿法、ゾーンメルティング法、カラム精製法、吸着法など、あるいはこれら方法を組み合わせて行うことができる。これら精製法の中でも再結晶法によるのが好ましい。昇華性を有する化合物においては、昇華精製法によることが好ましい。昇華精製においては、目的化合物が昇華する温度より低温で昇華ボートを維持し、昇華する不純物を予め除去する方法を採用するのが好ましい。また昇華物を採集する部分に温度勾配を施し、昇華物が不純物と目的物に分散するようにするのが望ましい。以上のような昇華精製は不純物を分離するような精製であり、本発明に適用しうるものである。また、昇華精製を行うことにより、材料の蒸着性の難易度を予測するのに役立つ。
次に、有機EL素子用インキ組成物について説明する。
本発明における有機EL素子用インキ組成物は、少なくとも本発明の有機EL素子用材料と溶剤を含有する。
上記、有機EL素子用インキ組成物に含まれる溶剤としては種々の溶剤が適用可能であり、特に限定されない。例えば、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル;シクロヘキサノン、シクロオクタノン等の脂環を有するケトン;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン;メチルエチルケトン、シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環を有するアルコール;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル等が挙げられる。
これらのうち、水の溶解度が低い点、容易には変質しない点で、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素が好ましい。
また、これらの溶媒は単独で使用しても複数混合して用いてもよい。尚、使用可能な溶媒はこれらに限定されるものではない。
有機電界発光素子には、陰極等の水分により著しく劣化する材料が多く使用されているため、組成物中の水分の存在は、乾燥後の膜中に水分が残留し、素子の特性を低下させる可能性が考えられ好ましくない。
また、湿式成膜時における組成物からの溶剤蒸発による、成膜安定性の低下を低減するためには、有機EL素子用組成物の溶剤として、沸点が100℃以上、好ましくは沸点が150℃以上、より好ましくは沸点が200℃以上の溶剤を用いることが効果的である。
本発明の有機EL素子用インキ組成物は、発光材料が低分子材料であって、湿式成膜法によりこの発光材料を含有する層が形成される有機EL発光素子に用いられることが好ましい。
本発明の有機EL素子用インキ組成物は、主に、発光材料を含有させ、発光層を形成するために用いられるが、正孔輸送層などの他の層に用いてもよい。
本発明においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により発光層に本発明のインキ組成物に、他の公知の発光材料を含有させても良く、また、本発明の組成物を湿式成膜法により成膜した発光層に、他の公知の発光材料を含む発光層を積層しても良い。尚、この場合、他の公知の発光材料を含む発光層は真空蒸着法等の乾式法で形成してもよい。
一般に有機EL素子は透光性の基板上に作製する。ここでいう透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上で、平滑な基板が好ましい。
具体的には、ガラス板、ポリマー板等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等が挙げられる。またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。
本発明の有機EL素子用インキ組成物は、本発明の有機EL素子用材料の含有量が0.5wt%以上であることが好ましい。通常、有機EL素子の発光層膜厚は10〜100nmであるが、一般的には50nm以上の場合が多い。50nmよりも薄い膜厚になると発光性能の低下や大幅な色調のずれ等の不具合を生じてしまう。50nm以上の膜厚を容易に形成するには0.5wt%以上の溶液濃度であることが好ましい。0.5wt%よりも濃度が低い場合は厚膜形成が困難となる。
本発明の有機EL素子用インキ組成物には、上述した有機EL素子用材料と溶剤の他に、必要に応じて公知の添加剤を添加してもよい。
本発明の有機EL素子用インキ組成物は、公知の湿式成膜法、例えば、塗布法、インクジェット法、ディップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコーター法、湿漬塗布法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷、スクリーン印刷法、LB法等により成膜でき
ここで、本発明の有機EL素子用材料を用いて作成することができる有機EL素子について詳細に説明する。
有機EL素子は、陽極と陰極間に一層または多層の有機層を形成した素子から構成されるが、ここで、一層型有機EL素子とは、陽極と陰極との間に発光層のみからなる素子を指す。一方、多層型有機EL素子とは、発光層の他に、発光層への正孔や電子の注入を容易にしたり、発光層内での正孔と電子との再結合を円滑に行わせたりすることを目的として、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子注入層などを積層させたものを指す。また、発光層と陽極との間で発光層に隣接して存在し、発光層と陽極、又は発光層と、正孔注入層若しくは正孔輸送層とを隔離する役割をもつ層であるインターレイヤー層を挿入しても良い。したがって、多層型有機EL素子の代表的な素子構成としては、(1)陽極/正孔注入層/発光層/陰極、(2)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極、(3)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極、(4)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極、(5)陽極/正孔注入層/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(7)陽極/発光層/正孔阻止層/電子注入層/陰極、(8)陽極/発光層/電子注入層/陰極等(9)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/インターレイヤー層/発光層/陰極、(10)陽極/正孔注入層/インターレイヤー層/発光層/電子注入層/陰極、(11)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/インターレイヤー層/発光層/電子注入層/陰極、の多層構成で積層した素子構成が考えられる。
また、上述した各有機層は、それぞれ二層以上の層構成により形成されても良く、いくつかの層が繰り返し積層されていても良い。そのような例として、近年、光取り出し効率の向上を目的に、上述の多層型有機EL素子の一部の層を多層化する「マルチ・フォトン・エミッション」と呼ばれる素子構成が提案されている。これは例えば、ガラス基板/陽極/正孔輸送層/電子輸送性発光層/電子注入層/電荷発生層/発光ユニット/陰極から構成される有機EL素子に於いて、電荷発生層と発光ユニットの部分を複数層積層するといった方法が挙げられる。
正孔注入層には、発光層に対して優れた正孔注入効果を示し、かつ陽極界面との密着性と薄膜形成性に優れた正孔注入層を形成できる正孔注入材料が用いられる。また、このような材料を多層積層させ、正孔注入効果の高い材料と正孔輸送効果の高い材料とを多層積層させた場合、それぞれに用いる材料を正孔注入材料、正孔輸送材料と呼ぶことがある。本発明の有機EL素子用材料は、正孔注入材料、正孔輸送材料いずれにも好適に使用することができる。これら正孔注入材料や正孔輸送材料は、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.5eV以下と小さい必要がある。このような正孔注入層としては、より低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば104 〜106 V/cmの電界印加時に、少なくとも10-6cm2 /V・秒であるものが好ましい。本発明の有機EL素子用材料と混合して使用することができる、他の正孔注入材料および正孔輸送材料としては、上記の好ましい性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝材料において正孔の電荷輸送材料として慣用されているものや、有機EL素子の正孔注入層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
このような正孔注入材料や正孔輸送材料としては、具体的には、例えばトリアゾール誘導体(米国特許3,112,197号明細書等参照)、オキサジアゾール誘導体(米国特許3,189,447号明細書等参照)、イミダゾール誘導体(特公昭37−16096号公報等参照)、ポリアリールアルカン誘導体(米国特許3,615,402号明細書、同第3,820,989号明細書、同第3,542,544号明細書、特公昭45−555号公報、同51−10983号公報、特開昭51−93224号公報、同55−17105号公報、同56−4148号公報、同55−108667号公報、同55−156953号公報、同56−36656号公報等参照)、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体(米国特許第3,180,729号明細書、同第4,278,746号明細書、特開昭55−88064号公報、同55−88065号公報、同49−105537号公報、同55−51086号公報、同56−80051号公報、同56−88141号公報、同57−45545号公報、同54−112637号公報、同55−74546号公報等参照)、フェニレンジアミン誘導体(米国特許第3,615,404号明細書、特公昭51−10105号公報、同46−3712号公報、同47−25336号公報、特開昭54−53435号公報、同54−110536号公報、同54−119925号公報等参照)、アリールアミン誘導体(米国特許第3,567,450号明細書、同第3,180,703号明細書、同第3,240,597号明細書、同第3,658,520号明細書、同第4,232,103号明細書、同第4,175,961号明細書、同第4,012,376号明細書、特公昭49−35702号公報、同39−27577号公報、特開昭55−144250号公報、同56−119132号公報、同56−22437号公報、西独特許第1,110,518号明細書等参照)、アミノ置換カルコン誘導体(米国特許第3,526,501号明細書等参照)、オキサゾール誘導体(米国特許第3,257,203号明細書等に開示のもの)、スチリルアントラセン誘導体(特開昭56−46234号公報等参照)、フルオレノン誘導体(特開昭54−110837号公報等参照)、ヒドラゾン誘導体(米国特許第3,717,462号明細書、特開昭54−59143号公報、同55−52063号公報、同55−52064号公報、同55−46760号公報、同55−85495号公報、同57−11350号公報、同57−148749号公報、特開平2−311591号公報等参照)、スチルベン誘導体(特開昭61−210363号公報、同第61−228451号公報、同61−14642号公報、同61−72255号公報、同62−47646号公報、同62−36674号公報、同62−10652号公報、同62−30255号公報、同60−93455号公報、同60−94462号公報、同60−174749号公報、同60−175052号公報等参照)、シラザン誘導体(米国特許第4,950,950号明細書)、ポリシラン系(特開平2−204996号公報)、アニリン系共重合体(特開平2−282263号公報)、特開平1−211399号公報に開示されている導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)等をあげることができる。
正孔注入材料や正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物(米国特許第4,127,412号明細書、特開昭53−27033号公報、同54−58445号公報、同54−149634号公報、同54−64299号公報、同55−79450号公報、同55−144250号公報、同56−119132号公報、同61−295558号公報、同61−98353号公報、同63−295695号公報等参照)を用いることもできる。例えば、米国特許第5,061,569号に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有する4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル等や、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン等をあげることができる。また、正孔注入材料として銅フタロシアニンや水素フタロシアニン等のフタロシアニン誘導体も挙げられる。さらに、その他、芳香族ジメチリデン系化合物、p型Si、p型SiC等の無機化合物も正孔注入材料や正孔輸送材料として使用することができる。
さらに、正孔注入層に使用できる材料としては、酸化モリブデン(MnOx)、酸化バナジウム(VOx)、酸化ルテニウム(RuOx)、酸化銅(CuOx)、酸化タングステン(WOx)、酸化イリジウム(IrOx)などの無機酸化物もあげられる。
芳香族三級アミン誘導体の具体例としては、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−フェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−(4−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−(メチルフェニル)−N,N’−(4−n−ブチルフェニル)−フェナントレン−9,10−ジアミン、N,N−ビス(4−ジ−4−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサン、N,N’−ビス(4’−ジフェニルアミノ−4−ビフェニリル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ビス(4’−ジフェニルアミノ−4−フェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ビス(4’−ジフェニルアミノ−4−フェニル)−N,N’−ジ(1−ナフチル)ベンジジン、N,N’−ビス(4’−フェニル(1−ナフチル)アミノ−4−フェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン、N,N’−ビス(4’−フェニル(1−ナフチル)アミノ−4−フェニル)−N,N’−ジ(1−ナフチル)ベンジジン等があげられ、これらは正孔注入材料、正孔輸送材料いずれにも使用することができる。
正孔注入材料として、特に好ましい例を表4に示す。
また、本発明の化合物(有機EL素子用材料)と共に用いることが出来る正孔輸送材料としては、下記表5に示す化合物も挙げられる。
上に説明した正孔注入層を形成するには、上述の化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法により薄膜化する。正孔注入層の膜厚は、特に制限はないが、通常は5nm〜5μmである。
インターレイヤー層に用いる材料として、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体、アリールアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等の芳香族アミンを含むポリマーが例示される。また、インターレイヤー層の成膜方法は、高分子量の材料を用いる場合には、溶液からの成膜による方法が例示される。
溶液からのインターレイヤー層の成膜には、公知の湿式成膜法、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、キャピラリ−コート法、ノズルコート法等の塗布法を用いることができる。
インターレイヤー層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよく、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2〜500nmであり、より好ましくは5〜200nmである。
一方、電子注入層には、発光層に対して優れた電子注入効果を示し、かつ陰極界面との密着性と薄膜形成性に優れた電子注入層を形成できる電子注入材料が用いられる。そのような電子注入材料の例としては、金属錯体化合物、含窒素五員環誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ペリレンテトラカルボン酸誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導体、シロール誘導体、トリアリールホスフィンオキシド誘導体、カルシウムアセチルアセトナート、酢酸ナトリウムなどが挙げられる。また、セシウム等の金属をバソフェナントロリンにドープした無機/有機複合材料(高分子学会予稿集,第50巻,4号,660頁,2001年発行)や、第50回応用物理学関連連合講演会講演予稿集、No.3、1402頁、2003年発行記載のBCP、TPP、T5MPyTZ等も電子注入材料の例として挙げられるが、素子作成に必要な薄膜を形成し、陰極からの電子を注入できて、電子を輸送できる材料であれば、特にこれらに限定されるものではない。
上記電子注入材料の中で好ましいものとしては、金属錯体化合物、含窒素五員環誘導体、シロール誘導体、トリアリールホスフィンオキシド誘導体が挙げられる。本発明に使用可能な好ましい金属錯体化合物としては、8−ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体が好適である。8−ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体の具体例としては、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(5−シアノ−8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)クロロアルミニウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(o−クレゾラート)アルミニウム等のアルミニウム錯体化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、トリス(2−メチル−5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2、4−ジメチル−8−ヒドロキシキノリナート)(1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2、5−ジメチル−8−ヒドロキシキノリナート)(2−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−5−フェニル−8−ヒドロキシキノリナート)(フェノラート)ガリウム、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−ヒドロキシキノリナート)(4−シアノ−1−ナフトラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)クロロガリウム、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム等のガリウム錯体化合物の他、8−ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)マンガン、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛等の金属錯体化合物が挙げられる。
また、本発明に使用可能な電子注入材料の内、好ましい含窒素五員環誘導体としては、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体があげられ、具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5 −フェニルオキサジアゾリル)]ベンゼン、1,4−ビス[2−(5−フェニルオキサジアゾリル)−4−tert−ブチルベンゼン]、2−(4’−tert− ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)−1,3,4−トリアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルトリアゾリル)]ベンゼン等が挙げられる。
さらに、正孔阻止層には、発光層を経由した正孔が電子注入層に達するのを防ぎ、薄膜形成性に優れた層を形成できる正孔阻止材料が用いられる。そのような正孔阻止材料の例としては、ビス(8−ヒドロキシキノリナート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム等のアルミニウム錯体化合物や、ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)(4−フェニルフェノラート)ガリウム等のガリウム錯体化合物、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)等の含窒素縮合芳香族化合物が挙げられる。
本発明の有機EL素子の発光層としては、以下の機能を併せ持つものが好適である。
注入機能;電界印加時に陽極または正孔注入層より正孔を注入することができ、陰極または電子注入層より電子を注入することができる機能
輸送機能;注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能
発光機能;電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能
ただし、正孔の注入されやすさと電子の注入されやすさには、違いがあってもよく、また正孔と電子の移動度で表される輸送能に大小があってもよい。
本発明の有機EL素子用材料は、発光層として好適に用いることが出来る。本発明の有機EL素子用材料を発光層中のドーパント材料として使用し、他の化合物と組み合わせて発光層を形成することができる。
本発明の有機EL素子用材料を用いて、青色の発光を得るために、表2に示したアントラセン系化合物の他に、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物を用いることができる。これら化合物の具体例としては、例えば特開昭59−194393号公報に開示されている化合物をあげることができる。さらに他の有用な化合物は、ケミストリー・オブ・シンセティック・ダイズ(1971)628〜637頁および640頁に列挙されている。
前記金属キレート化オキシノイド化合物としては、例えば、特開昭63−295695号公報に開示されている化合物を用いることができる。その代表例としては、トリス(8−キノリノール)アルミニウム等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体や、ジリチウムエピントリジオン等が好適な化合物としてあげることができる。
また、前記スチリルベンゼン系化合物としては、例えば、欧州特許第0319881号明細書や欧州特許第0373582号明細書に開示されているものを用いることができる。そして、特開平2−252793号公報に開示されているジスチリルピラジン誘導体も、発光層の材料として用いることができる。このほか、欧州特許第0387715号明細書に開示されているポリフェニル系化合物も発光層の材料として用いることができる。
さらに、上述した蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物およびスチリルベンゼン系化合物等以外に、例えば12−フタロペリノン(J. Appl. Phys.,第27巻,L713(1988年))、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン(以上Appl. Phys. Lett.,第56巻,L799(1990年))、ナフタルイミド誘導体(特開平2−305886号公報)、ペリレン誘導体(特開平2−189890号公報)、オキサジアゾール誘導体(特開平2−216791号公報、または第38回応用物理学関係連合講演会で浜田らによって開示されたオキサジアゾール誘導体)、アルダジン誘導体(特開平2−220393号公報)、ピラジリン誘導体(特開平2−220394号公報)、シクロペンタジエン誘導体(特開平2−289675号公報)、ピロロピロール誘導体(特開平2−296891号公報)、スチリルアミン誘導体(Appl. Phys. Lett., 第56巻,L799(1990年)、クマリン系化合物(特開平2−191694号公報)、国際特許公報WO90/13148やAppl. Phys. Lett.,vol58,18,P1982(1991)に記載されているような高分子化合物、PPV(ポリパラフェニレンビニレン)誘導体、ポリフルオレン誘導体やそれら共重合体等、例えば、下記一般式[5]〜一般式[7]の構造をもつものが挙げられる。
一般式[5]
(式中、Rx1およびRX2は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基を、n1は、3〜100の整数を表す。)
一般式[6]
(式中、Rx3およびRX4は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基を、n2およびn3は、それぞれ独立に、3〜100の整数を表す。)
一般式[7]
(式中、RX5およびRX6は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基を、n4およびn5は、それぞれ独立に、3〜100の整数を表す。Phはフェニル基を表す。)
また、特開平5−258862号公報等に記載されている一般式(Rs−Q)2 −Al−O−L3(式中、L3はフェニル部分を含んでなる炭素原子6〜24個の炭化水素であり、O−L3はフェノラート配位子であり、Qは置換8−キノリノラート配位子を示し、Rsはアルミニウム原子に置換8−キノリノラート配位子が2個を上回り結合するのを立体的に妨害するように選ばれた8−キノリノラート環置換基を示す〕で表される化合物も挙げられる。具体的には、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラ−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III)等が挙げられる。
白色の発光を得る場合の発光層としては特に制限はないが、下記のものを用いることができる。
有機EL積層構造体の各層のエネルギー準位を規定し、トンネル注入を利用して発光させるもの(欧州特許第0390551号公報)。
同じくトンネル注入を利用する素子で実施例として白色発光素子が記載されているもの(特開平3−230584号公報)。
二層構造の発光層が記載されているもの(特開平2−220390号公報および特開平2−216790号公報)。
発光層を複数に分割してそれぞれ発光波長の異なる材料で構成されたもの(特開平4−51491号公報)。
青色発光体(蛍光ピーク380〜480nm)と緑色発光体(480〜580nm)とを積層させ、さらに赤色蛍光体を含有させた構成のもの(特開平6−207170号公報)。
青色発光層が青色蛍光色素を含有し、緑色発光層が赤色蛍光色素を含有した領域を有し、さらに緑色蛍光体を含有する構成のもの(特開平7−142169号公報)。
これらの中では、上記の構成のものが特に好ましい。
さらに、本発明の有機EL素子の陽極に使用される材料は、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物またはこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、ITO、SnO2 、ZnO等の導電性材料が挙げられる。この陽極を形成するには、これらの電極物質を、蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることができる。この陽極は、上記発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の発光に対する透過率が10%より大きくなるような特性を有していることが望ましい。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下としてあるものが好ましい。さらに、陽極の膜厚は、材料にもよるが通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選択される。
また、本発明の有機EL素子の陰極に使用される材料は、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム・銀合金、アルミニウム/酸化アルミニウム、アルミニウム・リチウム合金、インジウム、希土類金属などが挙げられる。この陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。ここで、発光層からの発光を陰極から取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、さらに、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmである。
本発明の有機EL素子を作製する方法については、上記の材料および方法により陽極、発光層、必要に応じて正孔注入層、および必要に応じて電子注入層を形成し、最後に陰極を形成すればよい。また、陰極から陽極へ、前記と逆の順序で有機EL素子を作製することもできる。
この有機EL素子は、透光性の基板上に作製する。この透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、その透光性については、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上、好ましくは90%以上であるものが望ましく、さらに平滑な基板を用いるのが好ましい。
これら基板は、機械的、熱的強度を有し、透明であれば特に限定されるものではないが、例えば、ガラス板、合成樹脂板などが好適に用いられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などで成形された板が挙げられる。また、合成樹脂板としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルファイド樹脂、ポリサルフォン樹脂などの板が挙げられる。
本発明の有機EL素子の各層の形成方法としては、真空蒸着、電子線ビーム照射、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法、もしくはスピンコーティング、ディッピング、フローコーティング等の湿式成膜法のいずれかの方法を適用することができる。また、特表2002−534782や、S.T.Lee, et al., Proceedings of SID’02, p.784(2002)に記載されているLITI(Laser Induced Thermal Imaging、レーザー熱転写)法や、印刷(オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷)、インクジェット等の方法を適用することもできる。
有機層は、特に分子堆積膜であることが好ましい。ここで分子堆積膜とは、気相状態の材料化合物から沈着され形成された薄膜や、溶液状態または液相状態の材料化合物から固体化され形成された膜のことであり、通常この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区分することができる。また特開昭57−51781号公報に開示されているように、樹脂等の結着剤と材料化合物とを溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法等により薄膜化することによっても、有機層を形成することができる。各層の膜厚は特に限定されるものではないが、膜厚が厚すぎると一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要となり効率が悪くなり、逆に膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生し、電界を印加しても充分な発光輝度が得にくくなる。したがって、各層の膜厚は、1nmから1μmの範囲が適しているが、10nmから0.2μmの範囲がより好ましい。
また、有機EL素子の温度、湿度、雰囲気等に対する安定性向上のために、素子の表面に保護層を設けたり、樹脂等により素子全体を被覆や封止を施したりしても良い。特に素子全体を被覆や封止する際には、光によって硬化する光硬化性樹脂が好適に使用される。
本発明の有機EL素子に印加する電流は通常、直流であるが、パルス電流や交流を用いてもよい。電流値、電圧値は、素子破壊しない範囲内であれば特に制限はないが、素子の消費電力や寿命を考慮すると、なるべく小さい電気エネルギーで効率良く発光させることが望ましい。
本発明の有機EL素子の駆動方法は、パッシブマトリクス法のみならず、アクティブマトリックス法での駆動も可能である。また、本発明の有機EL素子から光を取り出す方法としては、陽極側から光を取り出すボトム・エミッションという方法のみならず、陰極側から光を取り出すトップ・エミッションという方法にも適用可能である。これらの方法や技術は、城戸淳二著、「有機ELのすべて」、日本実業出版社(2003年発行)に記載されている。
本発明の有機EL素子のフルカラー化方式の主な方式としては、3色塗り分け方式、色変換方式、カラーフィルター方式が挙げられる。3色塗り分け方式では、シャドウマスクを使った蒸着法や、インクジェット法や印刷法が挙げられる。また、特表2002−534782や、S.T.Lee, et al., Proceedings of SID’02, p.784(2002)に記載されているレーザー熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI法ともいわれる)も用いることができる。色変換方式では、青色発光の発光層を使って、蛍光色素を分散した色変換(CCM)層を通して、青色より長波長の緑色と赤色に変換する方法である。カラーフィルター方式では、白色発光の有機EL素子を使って、液晶用カラーフィルターを通して3原色の光を取り出す方法であるが、これら3原色に加えて、一部白色光をそのまま取り出して発光に利用することで、素子全体の発光効率をあげることもできる。
さらに、本発明の有機EL素子は、マイクロキャビティ構造を採用しても構わない。これは、有機EL素子は、発光層が陽極と陰極との間に挟持された構造であり、発光した光は陽極と陰極との間で多重干渉を生じるが、陽極及び陰極の反射率、透過率などの光学的な特性と、これらに挟持された有機層の膜厚とを適当に選ぶことにより、多重干渉効果を積極的に利用し、素子より取り出される発光波長を制御するという技術である。これにより、発光色度を改善することも可能となる。この多重干渉効果のメカニズムについては、J.Yamada等によるAM−LCD Digest of Technical Papers,OD−2,p.77〜80(2002)に記載されている。
以上述べたように、本発明の有機EL素子用材料を用いた有機EL素子は、低い駆動電圧で長時間の青色発光を得ることが可能である。故に、本有機EL素子は、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや各種の平面発光体として、さらには、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等への応用が考えられる。
まず、本発明の合成例を説明するが、本発明はこれら合成例になんら限定されるものではない。
合成例1
化合物(1)の合成方法
反応式1〜反応式2に従って化合物(1)を合成した。
反応式1
以下、反応式1を参照しながら合成方法を説明する。窒素雰囲気下、−78℃にて、テトラヒドロフラン(100ml)中、3−ブロモ−9−フェニルカルバゾール(I)9.63g(0.03mol)と、n−ブチルリチウム(1.52Mヘキサン溶液)33mlを反応させ、3−ブロモ−9−フェニルカルバゾールの3位をリチオ化した。2時間攪拌した後、−78℃にて、ほう酸トリメチル10.39g(0.1mol)をゆっくりと滴下し、同温度で2時間攪拌、さらに室温にて3時間攪拌を行った。その後、反応生成物に、1%塩酸水溶液200mlを加え、30分攪拌したのち、1%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、エーテルで抽出、乾燥、エバポレーターにより濃縮し、8.65gの9−フェニルカルバゾール−3−ボロン酸(II)を得た。
反応式2
以下、反応式2を参照しながら合成方法を説明する。窒素雰囲気下、1、3、6、8−テトラブロモピレンを5.17g(0.01mol)、9−フェニルカルバゾール−3−ボロン酸(II)14.35g(0.05mol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.5g、炭酸カリウム(2M水溶液)50g、ジオキサン200gを4つ口フラスコに加え、5時間加熱還流した。その後、反応液をメタノール400ml中に注入し、析出した固体を濾取し、熱真空乾燥させて、粗生成物として(化合物(1))が10.20g得られた。得られた粗成生物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに昇華精製を行った。化合物(1)は、マススペクトル(ブルカーダルトニクス社製、AutoflexII)、 1H‐NMR、および13C‐NMR(日本電子製、ECX−400P)によって同定した。化合物(1)のUVスペクトル、蛍光(PL)スペクトルを、それぞれ図1〜図2示す。尚、UVスペクトルは、日立分光(株)製光度計(U−3500),蛍光(PL)スペクトルは、日本分光(株)製蛍光分光光度計(FP−6500)により測定した。
尚、化合物(1)の合成に使用した3−ブロモ−9−フェニルカルバゾール(I)は、WO2007/43484記載の方法に従って合成したものを用いた。1、3、6、8−テトラブロモピレン(III)は、市販の試薬を用いた。
合成例2〜60
以下に示す反応式(3)および、反応式(4)を組み合わせて、表1中の化合物を合成した。
反応式3
反応式3中、A1は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、または、置換もしくは未置換の芳香族複素環基を表し、R1〜R7は、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基、置換シリル基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、または、置換アミノ基を表し、R1〜R4は、隣接した基が互いに結合して環を形成しても良い。
合成方法としては、常法に従い、窒素気流下、−78℃において、3−ブロモ−9−フェニルカルバゾール誘導体(IV)にn-ブチルリチウム(n-BuLi)を反応させてリチオ化し、生成したLi誘導体に、B(OMe)3を反応させて、目的とするボロン酸誘導(V)体を合成した。
反応式4
反応式4中、A1は、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、または、置換もしくは未置換の芳香族複素環基を表し、R1〜R7は、水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは未置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは未置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは未置換の脂肪族複素環基、置換もしくは未置換の芳香族複素環基、置換シリル基、シアノ基、アルコキシル基、アリ−ルオキシ基、または、置換アミノ基を表し、R1〜R4は、隣接した基が互いに結合して環を形成しても良い。
合成方法としては、1、3、6、8−テトラブロモピレン誘導体(III)1当量に対して、ボロン酸誘導体(V)を5当量用いる以外は、合成例1と同様の操作で本発明の化合物(VI)を得ることができる。
以上の反応式3および、反応式4を組み合わせて得られた本発明の化合物の構造については、合成例1と同様、マススペクトル、1H−NMR、13C−NMRによって同定した。合成した化合物のマススペクトルの測定結果を表6に示す。尚、化合物番号は本明細書中の表1に記載したものと同じである。
以下、本発明の有機EL素子用材料を用いた有機EL素子について下記実施例により説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。実施例においては、特に断りのない限り、混合比は全て重量比を示す。蒸着(真空蒸着)は10-6Torrの真空中にて、基板の加熱や冷却といった温度制御はしない条件下で行った。また、素子の発光特性は、発光素子面積2mm×2mmの有機EL素子を用いて特性を測定した。
実施例1
洗浄したITO電極付きガラス板上に、表4のHTM4を真空蒸着して膜厚60nmの正孔注入層を得た。次いで、本発明の表1中の化合物(1)を真空蒸着して膜厚20nmの発光層を得た。さらに、トリス(8−ヒドロキシキノリノ)アルミニウム錯体(Alq3)を真空蒸着して膜厚20nmの電子注入層を作成し、その上に、まずフッ化リチウムを1nm、次いでアルミニウム(Al)を150nm蒸着して電極を形成し、有機EL素子を得た。この素子を6Vに駆動させた際の色度は、CIE(x,y)=(0.14,0.15)の青色発光であった。この素子を発光輝度500(cd/m2)で室温にて定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表7に示す。
実施例2〜26
化合物(1)のかわりに、表1中に示す化合物のうち表7に示す化合物を用いて発光層を作成した以外は実施例1と同様に素子を作成した。この素子を発光輝度500(cd/m2)で室温にて定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度15mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表7に示す。
なお、実施例11〜13、16、19、21、25は、参考例である。
比較例1
以下に示す化合物(A)を用いて発光層を作成した以外は実施例1と同様に素子を作成した。この素子を6Vに駆動させた際の色度は、CIE(x,y)=(0.28,0.30)の青色発光であった。この素子を発光輝度500(cd/m2)で室温にて定電流駆動したときの輝度と半減寿命を測定した。また、電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表7に示す。
表7から明らかなように、本発明の有機EL素子用材料を用いた素子はいずれも、比較例1で作成した素子よりも、長寿命で且つ、高い輝度が得られた。
実施例27
ITO電極付きガラス板上に、表3のHIM4を真空蒸着して膜厚60nmの正孔注入層を得た。次に、表1の化合物(1)と表1の化合物(3)との85:15の混合物を蒸着して膜厚40nmの発光層を形成した。さらにAlq3を蒸着して膜厚15nmの電子注入層を形成した。その上に、フッ化リチウム(LiF)を0.1nm、さらにAlを200nm蒸着によって陰極を形成して有機EL素子を得た。この素子を、直流10Vで駆動させた際の外部量子効率は5.0%を示した。また、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度13.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表8に示す。
実施例28〜40
表1の化合物のうち2種(化合物(a)と化合物(b)とする)を表8に示す割合で混合した混合物を蒸着して膜厚40nmの発光層を形成した代わりに、表1の化合物と表1の化合物を用いた以外は、実施例27と同様に素子を作成した。これらの素子は、直流電圧10Vでの外部量子効率がいずれも4%以上を示した。また、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表8に示す。
なお、実施例33、34、36、37は、参考例である。
表8から明らかなように、本発明の有機EL素子用材料を用いた素子はいずれも、比較例2で作成した素子よりも、長寿命で且つ、高い輝度が得られた。
実施例41
ITO電極付きガラス板上に、表3のHIM2を真空蒸着して膜厚70nmの正孔注入層を得た。次に、表1の化合物(2)と表2の化合物(H−45)とを 5:95の組成比で共蒸着して膜厚40nmの発光層を形成した。さらにAlq3を蒸着して膜厚20nmの電子注入層を形成した。その上に、酸化リチウム(Li2O)を1nm、さらにAlを100nm蒸着によって陰極を形成して有機EL素子を得た。この素子を、直流10Vで駆動させた際の外部量子効率は4.5%を示した。また、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度13.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表9に示す。
実施例42〜66
表1の化合物と表2の化合物とを5:95の組成比で共蒸着して膜厚40nmの発光層を形成した代わりに、表1の化合物と表2の化合物のうち表9に示す化合物を用いた以外は、実施例27と同様に素子を作成した。これらの素子は、直流電圧10Vでの外部量子効率がいずれも4%以上を示した。また、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表9に示す。
なお、実施例52〜57、59、62は、参考例である。
比較例2
表1の化合物(2)の代わりに、化合物(A)を用いた以外は実施例41と同様に素子を作成した。電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表9に示す。
表9から明らかなように、本発明の有機EL素子用材料を用いた素子はいずれも、比較例2で作成した素子よりも、長寿命で且つ、高い輝度が得られた。
実施例67
ITO電極付きガラス板上に、表3のHIM3を真空蒸着して膜厚70nmの正孔注入層を得た。次に、表1の化合物(4)と表2の化合物(H−46)とを 3:97の組成比で共蒸着して膜厚40nmの発光層を形成した。さらに化合物(B)を蒸着して膜厚20nmの電子注入層を形成した。その上に、酸化リチウム(Li2O)を1nm、さらにAlを100nm蒸着によって陰極を形成して有機EL素子を得た。この素子を、直流10Vで駆動させた際の外部量子効率は4.6%を示した。また、発光輝度500(cd/m2)で定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度13.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表10に示す。
実施例68〜79
表1の化合物と表2の化合物とを3:97の組成比で共蒸着して膜厚40nmの発光層を形成した代わりに、表1の化合物と表2の化合物のうち表10に示す化合物を用いた以外は、実施例67と同様に素子を作成した。これらの素子は、直流電圧10Vでの外部量子効率がいずれも4%以上を示した。また、電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および80℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表10に示す。
なお、実施例78、79は、参考例である。
表10から明らかなように、本発明の有機EL素子用材料を用いた素子はいずれも、長寿命で且つ、高い輝度が得られた。
以下、本発明の化合物と有機溶剤からなる有機EL素子用インキ組成物を用いた有機EL素子について説明するが、本発明もまた、下記実施例に限定されるものではない。スピンコートは溶媒種や目標の膜厚に合わせて、500rpm〜2500rpmの間の回転速度で1分間の回転動作をさせた。また、素子の発光特性は、発光素子面積2mm×2mmの有機EL素子を用いて特性を測定した。
実施例80
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン/ポリスチレンスルホン酸、Bayer社製BAYTRON P VP CH8000)をスピンコート法にて製膜し、膜厚40nmの正孔注入層を得た。次いで、PVK(ポリビニルカルバゾール)を60%および、表1の化合物(27)を3%および電子輸送材料(化合物(C))37%を2.0wt%の濃度でトルエンに溶解させ、スピンコーティング法により70nmの膜厚の発光層を得た。さらにその上に、Caを20nm蒸着した後、Alを200nm蒸着して電極を形成して有機EL素子を得た。この素子について通電試験を行ったところ、最大発光輝度830cd/m2の青色発光が得られた。
実施例81〜100
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン/ポリスチレンスルホン酸、Bayer社製BAYTRON P VP CH8000)をスピンコート法にて製膜し、膜厚40nmの正孔注入層を得た。次いで、PVK(ポリビニルカルバゾール)を60%および、表1の化合物と表2の化合物のうち、表11に示す組み合わせのものを3:97の割合で混合した発光材料を3%、および電子輸送材料(化合物(D))37%を2.0wt%の濃度でトルエンに溶解させ、スピンコーティング法により70nmの膜厚の発光層を得た。さらにその上に、Caを20nm蒸着した後、Alを200nm蒸着して電極を形成して有機EL素子を得た。この素子について通電試験を行ったところ、最大発光輝度610cd/m2の青色発光が得られた。電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および40℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表11に示す。
なお、実施例86、87、90〜92は、参考例である。
表11から明らかなように、本発明の有機EL素子用材料を用いた素子はいずれも、長寿命で且つ、高い輝度が得られた。
実施例101
洗浄したITO電極付きガラス板上に、以下に示す化合物(E)と化合物(F)を、9:1の割合で0.5wt%の濃度でトルエンに溶解させ、スピンコーティング法により40nmの膜厚の正孔輸送層を製膜し、200℃にて重合させた。ついで、表1の化合物(11)と表2の化合物(H−10)とを2:98の組成比で混合し、1.0wt%の濃度でトルエンに溶解させ、スピンコーティング法により60nmの膜厚の発光層を製膜した。100℃にて乾燥させた。さらにその上に、以下に示す化合物(B)を、真空蒸着して膜厚20nmの電子注入層を作成し、その上に、まずフッ化リチウムを1nm、次いでアルミニウム(Al)を150nm蒸着して電極を形成し、有機EL素子を得た。この素子について通電試験を行ったところ、最大発光輝度580cd/m2の青色発光が得られた。この素子を6Vに駆動させた際の色度は、CIE(x,y)=(0.14,0.14)の青色発光であった。この素子を発光輝度500(cd/m2)で室温にて定電流駆動したときの輝度半減寿命を測定した。また、電流密度12.5mA/cm2で駆動させた時の初期輝度、および60℃の環境で100時間連続駆動させた後の輝度を測定した。結果を表12に示す。
実施例102〜110
洗浄したITO電極付きガラス板上に、以下に示す化合物(E)と化合物(F)を、9:1の割合で0.5wt%の濃度でトルエンに溶解させ、スピンコーティング法により40nmの膜厚の正孔輸送層を製膜し、200℃にて重合させた。ついで、表1の化合物と表2の化合物のうち、表12に示す組み合わせのものを2:98の割合で混合した発光材料1.0wt%の濃度でトルエンに溶解させ、スピンコーティング法により60nmの膜厚の発光層を製膜した。100℃にて乾燥させた。さらにその上に、以下に示す化合物(B)を、真空蒸着して膜厚20nmの電子注入層を作成し、その上に、まずフッ化リチウムを1nm、次いでアルミニウム(Al)を150nm蒸着して電極を形成し、有機EL素子を得た。この素子について通電試験を行った。結果を表12に示す。
なお、実施例107、109、110は、参考例である。
表12から明らかなように、本発明の有機EL素子用材料を用いた素子はいずれも、長寿命で且つ、高い輝度が得られた。
実施例111
化合物(1)の溶解度測定
この本発明の化合物(1)のトルエンへの溶解度を調べ、その結果を表13に示した。表1に示すが如く、化合物(1)はトルエンに対して成膜に十分必要な溶解性を示した。
実施例112〜176
化合物(1)のかわりに、表1中に示す化合物を用いてトルエンへの溶解度を調べた。
その結果を表13に示す。
なお、実施例129〜136、138、141、142、146、150、153〜159、172、174は、参考例である。
比較例3
化合物(G)を用いてトルエンへの溶解度を調べた。その結果を表13に示す。
表13から明らかなように、本発明の有機EL素子用材料はいずれも、高い溶解度を示した。
以上のように、本発明の有機EL素子用材料を用いることにより、高い性能のEL素子が作成できる。比較化合物に対して格段に高い性能が発揮されることは明らかであり、有機EL素子の高い発光効率、低駆動電圧化、長寿命化、高色純度な青色発光が達成できる。