JP6055263B2 - 自動車部品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、塗装前の被塗装物に対して表面処理を施すためのカチオン電着塗装工程を含む自動車部品の製造方法に関する。
金属基材の表面に電着塗装を施す場合、通常、耐食性や塗膜密着性等の性能を向上させる目的で、当該塗装前の金属基材の表面に化合物皮膜を化学的に形成する化成処理が施される。
従来、この化成処理に用いる化成処理液として、クロメート系化成処理液及びリン酸亜鉛系化成処理液が広く用いられている。しかし、クロメート系化成処理液は、クロムを含むため環境に負荷を与えるおそれがあり、リン酸亜鉛系化成処理液は、リン酸イオンを含むため河川や海洋の富栄養化のおそれがある。
そのため、これらクロメート系化成処理液及びリン酸亜鉛系化成処理液に代わる化成処理液として、ジルコニウム、チタン及びハフニウムの少なくとも1種を含む化成処理液が注目されている。
例えば、特許文献1には、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、フッ素、並びに、アミノ基含有シランカップリング剤からなる化成処理液が記載されている。
特許文献2には、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、フッ素、並びに水溶性樹脂からなり、水溶性樹脂がポリビニルアミン樹脂及び/又はポリアリルアミンである化成処理液が記載されている。
特許文献3には、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、フッ素、密着性付与剤、並びに、化成反応促進剤からなり、前記密着性付与剤は、水溶性樹脂、シランカップリング剤等からなる群から選ばれる少なくとも一種である化成処理液が記載されている。また特許文献3には、この水溶性樹脂としてポリビニルアミン樹脂やポリアリルアミン樹脂が挙げられており、シランカップリング剤としてアミノ基を有するアミノシランカップリング剤が挙げられている。
上記特許文献1〜3のような化成処理液で処理された金属基材の表面に対してカチオン電着塗装が施される。
特開2004−218070号公報 特許第4276530号公報 特開2004−218075号公報
自動車部品用の金属基材としては、鉄鋼板のみの金属基材、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(以下、GAということもある)のみの金属基材、また合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる部分と鉄系基材からなる部分とを有する複合金属基材、アルミニウム鋼板のみの金属基材、またアルミニウム鋼板、鉄鋼板及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる複合金属基材が用いられる場合がある。この場合、これらの複数の金属種の金属基材や、複数の金属種からなる複合金属基材をそれぞれの金属種毎に異なる条件で表面処理することは非効率であるため、同一の製造ラインにて、同一条件で製造するのが一般的である。しかしながら、既知のZr系化成処理を施したGAは鉄鋼板やアルミニウム鋼板を同一電圧でカチオン電着塗装すると、カチオン電着塗膜の膜厚に違いが生じることがあり、特に鉄鋼板との違いが著しいという問題があった。このため、部品の材質、サイズによって塗装電圧を切り替える必要があるなど、作業上、非効率的となっている。
しかしながら、特許文献1〜3には、当該問題については全く検討されていない。
すなわち、特許文献1の化成処理液は、ポリアリルアミンを含んでいないためカチオン電着塗膜の密着性の向上に改良の余地がある。また、特許文献1では、異なる材料よりなる部分を含む複合材料に対して、材料毎に条件を変えることなく、同一条件で化成処理及びカチオン電着処理した場合における、カチオン電着膜の各材料部分の膜厚差に関する記載もない。
特許文献2の化成処理液では、ポリアリルアミンを含んでいるものの、更にカップリング剤を含んだ化成処理液の実施例はないためカチオン電着塗膜の密着性の向上に改良の余地がある。また、特許文献2でも特許文献1と同様に、異なる材料よりなる部分を含む複合材料に対して、材料毎に条件を変えることなく、同一条件で化成処理及びカチオン電着処理した場合における、カチオン電着膜の各材料部分の膜厚差に関する記載もない。
特許文献3の化成処理液においても、異なる材料よりなる部分を含む複合材料に対して、材料毎に条件を変えることなく、同一条件で化成処理及びカチオン電着処理した場合における、カチオン電着膜の各材料部分の膜厚差に関する記載もない。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、GAを用いた金属基材と、鉄鋼板やアルミニウム鋼板を用いた金属基材とを同じ条件で化成処理して自動車部品とする場合であっても、後工程のカチオン電着塗装工程において、GA部材と他の金属部材との間でのカチオン電着塗膜の膜厚差が小さく、かつ密着性及び耐食性に優れるカチオン電着塗膜を形成することが可能な自動車部品の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、材料の異なる各金属種の金属基材に対して、アルカリ脱脂工程、水洗工程、化成処理工程、水洗工程、及びカチオン電着塗装工程をこの順に行う自動車部品の製造方法であって、化成処理液として所定濃度のジルコニウム、フッ素、所定のシランカップリング剤、所定の重量平均分子量及び濃度のポリアリルアミン、所定の金属イオン、並びに硝酸イオンからなる化成処理液を用いて化成処理すること等により、その目的を達成し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
合金化溶融亜鉛めっき鋼板を有する金属基材と、鉄鋼板及びアルミニウム鋼板の少なくとも1種を有する金属基材とに対し、アルカリ脱脂工程、水洗工程、化成処理工程、水洗工程、及びカチオン電着塗装工程をこの順に行って自動車部品とする自動車部品の製造方法であって、前記化成処理工程で用いる化成処理液は、ジルコニウム(A)、フッ素(B)、N−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシラン(C)、重量平均分子量が2000〜30000のポリアリルアミン(D)、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、及び鉄イオンから選ばれる少なくとも1種からなる金属イオン(E)、並びに硝酸イオン(F)からなるものであり、前記化成処理液中における前記ジルコニウム(A)の含有量が300〜600質量ppmであり、前記化成処理液中における前記フッ素(B)の含有量が300〜1000質量ppmであり、前記化成処理液中における前記N−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシラン(C)の固形分の含有量が100〜300質量ppmであり、前記化成処理液中における前記ポリアリルアミン(D)の固形分の含有量が10〜100質量ppmであり、前記化成処理液中における前記金属イオン(E)の合計含有量が、金属元素換算で10〜5000質量ppmである自動車部品の製造方法、
を提供するものである。
本発明によると、素材やサイズの異なる製品における膜厚差が小さく、かつ密着性及び耐食性に優れるカチオン電着塗膜を、複合自動車部品の表面に形成することが可能なカチオン電着塗装工程を含む自動車部品の製造方法を提供することができる。
本発明の自動車部品の製造方法は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を有する金属基材と、鉄鋼板及びアルミニウム鋼板の少なくとも1種を有する金属基材とに対し、アルカリ脱脂工程、水洗工程、化成処理工程、水洗工程、及びカチオン電着塗装工程をこの順に行って自動車部品とする自動車部品の製造方法であって、前記化成処理工程で用いる化成処理液は、ジルコニウム(A)、フッ素(B)、N−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシラン(C)、重量平均分子量が2000〜30000のポリアリルアミン(D)、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、及び鉄イオンから選ばれる少なくとも1種からなる金属イオン(E)、並びに硝酸イオン(F)からなるものであり、前記化成処理液中における前記ジルコニウム(A)の含有量が300〜600質量ppmであり、前記化成処理液中における前記フッ素(B)の含有量が300〜1000質量ppmであり、前記化成処理液中における前記N−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシラン(C)の固形分の含有量が100〜300質量ppmであり、前記化成処理液中における前記ポリアリルアミン(D)の固形分の含有量が10〜100質量ppmであり、前記化成処理液中における前記金属イオン(E)の合計含有量が、金属元素換算で10〜5000質量ppmである自動車部品の製造方法である。
本発明によると、化成処理工程において所定の化成処理液を用いるため、異なる材料部分における膜厚差が小さく、かつ密着性及び耐食性に優れる自動車部品を形成することが可能である。
次に、本発明の自動車部品の製造方法について詳細に説明する。
[自動車部品]
本発明の製造方法によって製造される自動車部品には、特に制限はなく、自動車ボディ、ドア、フード、フェンダー、バックドア等の外板部品、サスメン、中間ビーム、ロアアーム等の足回り部品、クロスメンバーなどの補強材等が挙げられる。
[金属基材]
本発明に係る自動車部品の製造方法で使用される金属基材としては、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を有する金属基材と、鉄鋼板及びアルミニウム鋼板の少なくとも1種を有する金属基材とが挙げられる。
上記の金属基材としては、例えば、
(1)合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、鉄鋼板及びアルミニウム鋼板の少なくとも1種とを有する複合金属基材;
(2)合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる金属基材と、鉄鋼板及びアルミニウム鋼板の少なくとも1種からなる金属基材とを含む複数種類の金属基材;
(3)(1)の複合金属基材と(2)の複数種類の金属基材との両方;
等が挙げられる。
詳しくは、これら金属基材としては、合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる金属基材;鉄鋼板からなる金属基材;アルミニウム鋼板からなる金属基材;鉄鋼板及びアルミニウム鋼板からなる金属基材;合金化溶融亜鉛めっき鋼板及び鉄鋼板からなる金属基材;合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びアルミニウム鋼板からなる金属基材;合金化溶融亜鉛めっき鋼板、鉄鋼板及びアルミニウム鋼板からなる金属基材等が挙げられる。
上記合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)には特に制限はなく、冷間圧延鋼板に合金化溶融亜鉛めっきを施したもの、熱間圧延鋼板に同様のめっきを施したものが挙げられる。
上記鉄系基材には特に制限はなく、冷間圧延鋼板(以下、SPCと称することがある)、熱間圧延鋼板等が挙げられる。
上記アルミニウム系基材には特に制限はなく、5000番系アルミニウム合金、6000番系アルミニウム合金等が自動車部品としては一般的である。
[アルカリ脱脂工程]
本工程では、上記金属基材の表面に付着している鉱物油や動物油等の油脂類を除去するため、アルカリ脱脂洗浄剤を用いて脱脂洗浄処理を行う。
上記アルカリ脱脂洗浄剤には特に制限はなく、アルカリを主体とするビルダーと、非イオン系または陰イオン系界面活性剤を主成分として含むものが一般的に用いられる。
アルカリビルダーとしては、増量剤としてのアルカリ炭酸塩のほかに、洗浄力・環境配慮の観点からアルカリ燐酸塩またはアルカリケイ酸塩を配合したものが好適である。
上記アルカリケイ酸塩としては、例えば、オルソケイ酸ソーダ、オルソケイ酸カリウム等のオルソケイ酸のアルカリ金属塩;メタケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリウム等のメタケイ酸のアルカリ金属塩;セスキケイ酸ナトリウム、セスキケイ酸カリウム等のセスキケイ酸のアルカリ金属塩等を挙げることができる。また、このようなアルカリケイ酸塩の中でも、より高い脱脂洗浄力が得られることから、メタ珪酸ソーダが好ましい。このようなアルカリケイ酸塩は1種を単独で使用してもよく或いは2種以上を混合して使用してもよい。
上記アルカリ炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムカリウム等のアルカリ金属炭酸塩等が挙げられる。
界面活性剤としては、上述のように非イオン系または陰イオン系界面活性剤が用いられるが、洗浄性と消泡性を考慮した、非イオン系界面活性剤が好適に用いられる。非イオン系界面活性剤としては、たとえば、従来公知のものが挙げられる。種々の非イオン系界面活性剤の中でも、洗浄力に優れ、魚毒性が低いという点からは、ポリエチレンオキサイドのモノアルキルエーテルが好ましく、洗浄力に優れ、魚毒性が低く、かつ、消泡性に優れている(低起泡性)という点からは、ポリエチレンオキサイドポリプロピレンオキサイドのモノアルキルエーテルが好ましい。これらのモノアルキルエーテルの中でも、脂肪族アルコールのアルキレンオキサイド付加物であって該アルキレンオキサイドの50モル%以上がエチレンオキサイドであり、50モル%未満がプロピレンオキサイドおよび/またはブチレンオキサイドであり、曇点が25〜50℃の範囲内にある非イオン系界面活性剤が好ましい。
本工程では、金属基材を上記アルカリ脱脂洗浄剤を用いて、通常30〜55℃において数分間程度、浸漬処理やスプレー処理で、脱脂・洗浄が行われる。
[水洗工程(化成処理前)]
次いで、上記複合自動車部品の表面のアルカリ脱脂洗浄剤を、常法により十分に水洗する。この水洗工程では、大量の洗浄水によって1回又はそれ以上スプレー処理することが好ましい。洗浄水としては、例えば、イオン交換水の他、工業用水等が好適である。
[化成処理工程]
本工程では、前記金属基材の表面に後述する化成処理液を接触させることにより、当該表面に化成皮膜を形成させる。
<化成処理液>
化成処理液は、ジルコニウム(A)、フッ素(B)、N−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシラン(C)、重量平均分子量が2000〜30000のポリアリルアミン(D)、亜鉛、アルミニウム、及び鉄から選ばれる少なくとも1種からなる金属イオン(E)、並びに硝酸イオン(F)からなるものである。
≪ジルコニウム(A)≫
ジルコニウム(A)は化成皮膜形成成分である。金属基材の表面にジルコニウム(A)を含む化成皮膜が形成されることにより、金属基材の耐食性や耐磨耗性を向上させ、更に、この化成皮膜上に形成されるカチオン電着塗膜との密着性を高めることができる。
上記ジルコニウム(A)の供給源としては特に限定されず、例えば、K2ZrF6等のアルカリ金属フルオロジルコネート;(NH42ZrF6等のフルオロジルコネート;H2ZrF6等のフルオロジルコネート酸等の可溶性フルオロジルコネート等;フッ化ジルコニウム;酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
上記ジルコニウム(A)の供給源としては、皮膜形成能が高いことからZrF6 2-、TiF6 2-、HfF6 2-からなる群より選ばれる1種又は2種以上を有する化合物が好ましい。
化成処理液中における上記ジルコニウム(A)の含有量は、下限300質量ppm、上限600質量ppmの範囲であることが必要である。上記範囲内であると化成皮膜の性能が充分なものとなる。上記下限は330質量ppmがより好ましく、350質量ppmが更に好ましい。上記上限は550質量ppmがより好ましく、500質量ppmが更に好ましい。
≪フッ素(B)≫
上記化成処理液に含まれるフッ素(B)は、金属基材のエッチング剤としての役割を果たすものである。上記フッ素(B)の供給源としては特に限定されず、例えば、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化ホウ素酸、フッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウム等のフッ化物を挙げることができる。また、錯フッ化物としては、例えば、ヘキサフルオロケイ酸塩が挙げられる。フッ素元素の供給源として、ジルコニウムの供給源でもある前記可溶性フルオロジルコネート、フッ化ジルコニウムを用いることもできる。
化成処理液中における上記フッ素(B)の含有量は、下限300質量ppm、上限1000質量ppmの範囲である。上記下限未満であるとエッチングが十分に得られず、良好な皮膜が得られない可能性がある。また上記上限を超えると、エッチング過多となり化成反応が十分進まない可能性がある。上記下限は300質量ppmがより好ましく、350質量ppmが更に好ましい。上記上限は900質量ppmがより好ましく、800質量ppmが更に好ましい。
≪N−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシラン(C)≫
上記化成処理液は、N−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシラン(C)を含む。このN−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシラン(C)が、化成皮膜とその上に形成されるカチオン電着塗膜の双方に作用することにより、両者の密着性が向上する。
このような効果は、加水分解してシラノールを生成する基が加水分解され金属基材の表面と水素結合的に吸着すること、及び、アミノ基の作用により化成皮膜と金属基材の密着性が高まるために生じると推測される。このように、N−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシランが金属基材及び塗膜の両方に働きかけることによって、相互の密着性を向上させる作用を有すると考えられる。
市販されているN−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシラン(C)としては、例えばKBM−603(信越化学工業株式会社製)を使用することができる。
上記化成処理液中におけるN−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシラン(C)の配合量は、固形分濃度で下限100質量ppm、上限300質量ppmの範囲内である必要がある。100質量ppm未満であると、充分な塗膜密着性を得ることができない。300質量ppmよりも多くしても、塗膜密着性は向上しない。上記下限は、120質量ppmがより好ましく、150質量ppmが更に好ましい。上記上限は、280質量ppmがより好ましく、250質量ppmが更に好ましい。
≪ポリアリルアミン(D)≫
上記化成処理液は、ポリアリルアミン(D)を含むものである。ポリアリルアミン(D)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法によって製造することができる。
このポリアリルアミン(D)を含む化成皮膜は、アミノ基の作用により、金属基材と塗膜との密着性が高くなると考えられる。特に、このポリアリルアミン(D)は、他のアミノ基含有水溶性有機化合物と比べて、密着性向上効果及び塗膜の平滑性向上効果により優れている。また、ポリアリルアミン(D)を用いることで、GA部材と他の金属部材(鉄系部材、アルミ系部材)との間でのカチオン電着塗膜の膜厚差を小さくすることができる。
上記ポリアリルアミン(D)は、重量平均分子量が2000〜30000である必要がある。上記範囲外であると、金属基材と塗膜との密着性が不十分なものとなり、また、塗膜の平滑性が不十分なものとなる。より好ましい下限は2500、特に好ましい下限は3000であり、より好ましい上限は25000、特に好ましい上限は20000である。重量平均分子量は、ポリスチレンを標準とするゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって求めることができる。
上記ポリアリルアミンとしては特に限定されず、例えば、PAA−15、PAA−15C(いずれも日東紡株式会社製)等の市販のポリアリルアミンを使用することができる。また、これらの2種以上を併用してもよい。
上記化成処理液は、上記ポリアリルアミン(D)を固形分で、下限が10質量ppm、上限100質量ppmの範囲内で含有することが必要である。10質量ppm未満であると、得られる化成皮膜中において、適正な塗装後性能が得られない。100質量ppmよりも多いと、効率的に化成皮膜を形成することができない。より好ましい下限は15質量ppm、特に好ましい下限は20質量ppmであり、より好ましい上限は90質量ppm、特に好ましい上限は80質量ppmである。
≪金属イオン(E)≫
上記化成処理液は、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、及び鉄イオンから選ばれる少なくとも1種からなる金属イオン(E)を含んでいる必要がある。この金属(E)を含むことにより、耐食性及び/又は塗膜の塗装性が向上する。特に、アルミニウムイオンを含むことにより、耐食性がより向上する。
この金属イオン(E)の供給源としては、これらの金属の硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、硫酸塩などが好適に用いられる。
上記化成処理液中における金属イオン(E)の含有量は、下限10質量ppm、上限5000質量ppmの範囲である。上記下限以上であると得られる化成皮膜の性能が充分なものとなり、上記上限以下であると、含有量が多くなるほど効果が高くなる。上記下限は15質量ppmがより好ましく、20質量ppmがより好ましい。上記上限は4000質量ppmがより好ましく、3000質量ppmがより好ましい。
≪硝酸イオン(F)≫
上記化成処理液は、硝酸イオン(F)を含んでいる必要がある。この硝酸イオン(F)は、化成皮膜形成反応を促進するための酸化剤として作用する。
この硝酸イオン(F)の供給源としては、上記金属(E)の硝酸塩の他、硝酸、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム等が好適に用いられる。
上記化成処理液中における硝酸イオン(F)の含有量は、下限100質量ppm、上限20000質量ppmの範囲であることが好ましい。上記下限以上であると得られる化成皮膜形成反応が充分に促進され、上記上限以下であると、pH調製のために他の薬剤を添加する必要が防止される。上記下限は1000質量ppmがより好ましく、2000質量ppmがより好ましい。上記上限は15000質量ppmがより好ましく、10000質量ppmがより好ましい。
≪化成処理液のpH≫
本発明の化成処理液は、pHが下限1.5、上限6.5での範囲内であることが好ましい。1.5以上であると、エッチング過剰となることが防止され、充分な皮膜形成ができる。6.5以下であると、エッチングが充分となり、良好な皮膜が得られる。上記下限は、2がより好ましく、2.5が更に好ましく、3が特に好ましい。上記上限は、5.5がより好ましく、5が更に好ましい。
≪化成処理液の製造方法≫
化成処理液は、工業用水等の水に対して、前述したジルコニウム(A)の供給源、フッ素(B)の供給源、N−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシラン(C)、ポリアリルアミン(D)、金属イオン(E)の供給源、及び硝酸イオン(F)の供給源を添加し、混合することによって好適に製造することができる。
その場合、水に対して各成分を同時に添加・混合してもよく、1種類又は複数種ずつ順番に添加・混合してもよい。順番に添加・混合する場合には、その順番には特に制限はない。
<化成処理条件等>
上記化成処理における処理温度は、下限20℃、上限70℃の範囲内であることが好ましい。上記下限は30℃であることがより好ましく、上記上限は50℃であることがより好ましい。上記化成処理における化成時間は、下限5秒、上限1200秒の範囲内であることが好ましい。上記下限は30秒がより好ましく、上記上限は120秒がより好ましい。
化成処理方法としては特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法、ロールコート法等を挙げることができる。
このようにして得られる化成皮膜は、下限0.1mg/m2、上限500mg/m2の範囲内であることが好ましい。0.1mg/m2以上であると、均一な化成皮膜が得られる。500mg/m2以下であると、経済的に有利である。上記下限は、5mg/m2がより好ましく、上記上限は、200mg/m2がより好ましい。
[水洗工程(化成処理後)]
本工程における水洗処理は、その後の各種塗装後の密着性、耐食性等に悪影響を及ぼさないようにするために、1回又はそれ以上行われる。最終の水洗は、純水で行われることが適当である。この化成後水洗処理においては、スプレー水洗又は浸漬水洗のどちらでもよく、これらの方法を組み合わせて水洗することもできる。
上記水洗工程(化成処理後)の後で乾燥工程を行ってもよいが、乾燥工程は必ずしも必要ではない。乾燥工程を行わず化成皮膜がウェットな状態のまま、後述の塗装を行っても得られる性能に影響は生じない。なお、乾燥工程を行う場合は、冷風乾燥、熱風乾燥等を行うことが好ましい。熱風乾燥を行う場合、有機分の分解を防ぐためにも、300℃以下が好ましい。
[カチオン電着塗装工程]
次いで、前述のようにして形成された表面処理金属に対して、カチオン電着塗装を行う。
カチオン電着塗装としては特に限定されず、アミノ化エポキシ樹脂、アミノ化アクリル樹脂、スルホニウム化エポキシ樹脂等からなる従来公知のカチオン電着塗料を塗布することができる。
得られるカチオン電着塗膜の厚さは、下限5μm、上限50μmの範囲内であることが好ましい。5μm以上であると、均一なカチオン電着塗膜が得られる。50μm以下であると、経済的に有利である。上記下限は、10μmがより好ましく、15μmが更に好ましい。上記上限は、40μmがより好ましく、30μmが更に好ましい。
また、GA部材と他の金属部材(鉄系部材、アルミ系部材)との間でのカチオン電着塗膜の膜厚差は小さいことが好ましく、具体的には3μm以下とすることが好ましく、2μm以下とすることがより好ましい。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。また、実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味し、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
実施例1
<基材>
基材として、市販の合金化溶融亜鉛めっき鋼板GA(日本テストパネル株式会社製、商品名「SCGA270D」、70mm×150mm×0.8mm)、冷間圧延鋼板(SPCC−SD、日本テストパネル株式会社製、70mm×150mm×0.8mm)、及びアルミニウム合金板(神戸製鋼株式会社製、商品名「6K21」、70mm×150mm×0.8mm)を用いた。
<アルカリ脱脂工程>
上記基材を、2質量%「サーフクリーナーEC92」(日本ペイント株式会社製脱脂剤)で40℃、2分間浸漬処理した。
<脱脂後水洗工程>
水道水で30秒間スプレー処理した。
<化成処理工程>
10L工業用水に対し、化成皮膜形成成分であるジルコニウム(A)及びフッ素(B)の供給源として40%ジルコンフッ化水素酸(H2ZrF6)17gを用い、N−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシラン(C)として(商品名「KBM−603」、有効濃度100%、信越化学工業株式会社製)(表中では「APS」と表記する)1gを用い、ポリアリルアミン(D)として日東紡株式会社製(商品名「PAA−03」、重量平均分子量3000、固形分20%)0.5gを用い、金属イオン(E)の供給源として硝酸亜鉛13.7gを用い、硝酸イオン(F)として上記硝酸亜鉛13.7gの他に67.5%硝酸を59g用い、表1に示す組成を有する化成処理液を調製した。表1に、調整した化成処理液のpHを示した。
調整した化成処理液の温度を38〜42℃に調整し、各基材を90秒間浸漬処理した。
なお、N−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシラン(C)及びポリアリルアミン(D)の濃度は、固形分換算で示している。
<水洗工程(化成後)>
水道水で30秒間スプレー処理した。更にイオン交換水で30秒間スプレー処理した。
水洗処理後の金属基材を乾燥せずにウェット状態のまま次の塗装工程を行った。
<カチオン電着塗装工程>
次いで、化成皮膜が形成された各基材に対して、カチオン電着塗料(日本ペイント株式会社製、商品名「パワーフロート1200」)を用い、以下の条件で電着塗装した。
電圧:100V
時間:30秒間立上げ、150秒間キープ
温度:30℃
水洗後、170℃で20分間加熱して焼き付け、試験板を作成した。
なお、電着塗装の膜厚の測定結果を表1に示す。
<評価試験>
(1)二次密着性試験(SDT)
得られた試験板を、5%NaCl水溶液中において50℃で840時間浸漬した。その後、塗装面全体にテープ剥離試験を施し、剥離した塗膜の面積(Cmm2)を測定した。次いで、塗装面積(10500mm2)に対する剥離した塗膜の面積(Cmm2)の面積率(C/10500×100%)を算出し、以下の基準で塗膜の剥離性を評価した。
◎:面積率5%以下
〇:面積率5%超かつ20%以下
△:面積率20%超かつ30%以下
×:面積率30%超
評価結果は、表1に示す。
(2)サイクル腐食試験(CCT)
得られた試験板のエッジと裏面とを耐水テープでシーリングし、試験板の表面にカッターナイフでクロスカット疵(基材にまで達する深さの疵)を入れた。
次いで、クロスカット疵を入れた試験板の表面に対して、35℃に保温した5質量%NaCl水溶液を2時間連続噴霧した後、60℃、湿度20〜30%の条件下で4時間乾燥し、その後、50℃、湿度95%以上の湿潤雰囲気下で2時間静置した。これを1サイクルとして、100サイクル繰り返した後に、クロスカット疵からの塗膜の膨れ幅(片側)の最大値を測定した。
◎:4mm以下
〇:4mm超かつ6mm以下
△:6mm超かつ8mm以下
×:8mm超
結果を表1に示す。
実施例2〜11及び比較例1〜5
表1に示す組成を有する化成処理液を調製したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果を表1に示す。
なお、金属イオン(E)としてのアルミニウム及び鉄は、それぞれ、硝酸アルミニウム、硝酸鉄として添加している。
Figure 0006055263
なお、表1に示す成分としては、下記のものを使用した。
PAA−03:日東紡株式会社製、重量平均分子量3000
PAA−05:日東紡株式会社製、重量平均分子量5000
PAA−15C:日東紡株式会社製、重量平均分子量15000
PAA−25:日東紡株式会社製、重量平均分子量25000
SPC:前述の冷間圧延鋼板(SPCC−SD)
GA:前述の合金化溶融亜鉛めっき鋼板(SCGA270D)
Al:前述のアルミニウム合金(6K21)
表1に示すとおり、実施例1〜11のカチオン電着塗膜は、密着性及び耐食性に優れており、また、材料の異なる各基材に対して同一条件にてカチオン電着塗膜を形成したときにおける、カチオン電着塗膜の膜厚差が小さかった。
これに対し、ポリアリルアミンを含まない化成処理液を用いた比較例1及びポリアリルアミンの含有量が本発明の規定範囲外である化成処理液を用いた比較例2、3にあっては、同一条件でSPC及びGAに形成されたカチオン電着塗膜の膜厚差が5μmと大きかった。
また、比較例2、4、5は、SPCに形成したカチオン電着塗膜の密着性及び耐食性に劣っていた。
本発明の自動車部品の製造方法によれば、基材の金属種がGA、鉄鋼板、Alと異なっても、カチオン電着塗膜の膜厚差が小さくできるため、本発明は、複数の金属種からなる複合自動車部品や、複数の金属種の自動車部品を同一製造ラインで製造する自動車部品の製造に好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. 合金化溶融亜鉛めっき鋼板を有する金属基材と、鉄鋼板及びアルミニウム合金板の少なくとも1種を有する金属基材とに対し、アルカリ脱脂工程、水洗工程、化成処理工程、水洗工程、及びカチオン電着塗装工程をこの順に行って自動車部品とする自動車部品の製造方法であって、
    前記化成処理工程で用いる化成処理液は、ジルコニウム(A)、フッ素(B)、N−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシラン(C)、重量平均分子量が2000〜30000のポリアリルアミン(D)、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、及び鉄イオンから選ばれる少なくとも1種からなる金属イオン(E)、並びに硝酸イオン(F)からなるものであり、
    前記化成処理液中における前記ジルコニウム(A)の含有量が300〜600質量ppmであり、
    前記化成処理液中における前記フッ素(B)の含有量が300〜1000質量ppmであり、
    前記化成処理液中における前記N−2(アミノエチル)3(アミノプロピル)トリアルコキシシラン(C)の固形分の含有量が100〜300質量ppmであり、
    前記化成処理液中における前記ポリアリルアミン(D)の固形分の含有量が10〜100質量ppmであり、
    前記化成処理液中における前記金属イオン(E)の合計含有量が、金属元素換算で10〜5000質量ppmである自動車部品の製造方法。
  2. 前記金属基材が、前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、前記鉄鋼板及びアルミニウム合金板の少なくとも1種とを有する複合金属基材である請求項1に記載の自動車部品の製造方法。
  3. 前記金属基材が、前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板からなる金属基材と、前記鉄鋼板及びアルミニウム合金板の少なくとも1種からなる金属基材とを含む複数種類の金属基材である請求項1に記載の自動車部品の製造方法。
  4. 前記複数種類の金属基材が、更に請求項2に記載の複合金属基材を含む請求項3に記載の自動車部品の製造方法。
  5. 前記化成処理液のpHが3〜5である請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車部品の製造方法。
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