JP6054900B2 - アルコキシアミン化合物、アルコキシアミン型アルコール酸化触媒及びそれを用いたアルコール酸化方法 - Google Patents

アルコキシアミン化合物、アルコキシアミン型アルコール酸化触媒及びそれを用いたアルコール酸化方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルコキシアミン化合物、アルコキシアミン型アルコール酸化触媒及びそれを用いたアルコール酸化方法に関する。
アルコールをカルボニル化合物へ酸化せしめるアルコール酸化反応は、医薬、農薬、香料、化成品等の高付加価値化合物を有機合成する際に用いられる最も基本的な反応の1つであり、これまでに様々な手法が開発されてきている。しかしながら、従来の手法においては、高温に加熱する必要があったり、毒性や爆発性を有する酸化剤を使用する必要があったり、重金属等の廃棄物が大量に生じたりするといった、安全性や環境負荷の面からの問題を抱えていた。
このような問題を背景として、近年では、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(2,2,6,6−tetramethylpiperidine 1−oxyl、以下「TEMPO」という。)が、毒性の高い危険な試薬を使うことなく、種々の共酸化剤を用いて0度から室温という極めて温和な条件下においてアルコールを酸化せしめることができるという観点から、大量スケールにおいてもアルコールの酸化を実施可能な触媒として注目を集めている。
前記共酸化剤としては、例えば、工業プロセスでも利用される安価かつ環境調和性に優れた次亜塩素酸ナトリウム水溶液(Pier Lucio Anelliら、ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、1987年、52巻、12号、p.2559−2562(非特許文献1))、二重結合や電子豊富な芳香環を有するアルコールにも適用可能な広い官能基共存性を有するヨードベンゼンジアセテート(PhI(OAc))(Antonella De Micoら、ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、1997年、62巻、20号、p.6974−6977(非特許文献2))を始め、多くの酸化剤が利用できることが報告されている。
さらに、最近、本発明者らは、アザアダマンタン骨格を有するN−オキシル(ニトロキシルラジカル)化合物(2−azaadamantane N−oxyl(以下「AZADO」という)、及び、1−methyl−2−azaadamantane N−oxyl(以下「1−Me−AZADO」という。))、アザビシクロ[3.3.1]ノナン骨格を有するN−オキシル化合物(9−azabicyclo[3.3.1]nonane N−oxyl、以下「ABNO]という。)、ノルアザアダマンタン骨格を有するN−オキシル化合物(9−norazaadamantane N−oxyl、以下「Nor−AZADO」という。)といった多環式N−オキシル化合物が、TEMPOに比較して高いアルコール酸化触媒活性を有すること、及び、TEMPOでは酸化が進行しない嵩高い第2級アルコールの酸化も速やかに進行させることが可能であることを報告している(澁谷正俊ら、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー、2006年、128巻、26号、p.8412−8413(非特許文献3)、澁谷正俊ら、ケミカル・コミュニケーションズ、2009年、13号、p.1739−1741(非特許文献4)、澁谷正俊ら、ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、2009年、74巻、12号、p.4619−4622(非特許文献5)、澁谷正俊ら、シンセシス、2011年、21号、p.3418−3425(非特許文献6)、林政樹ら、ケミカル・アンド・ファーマシューティカル・ブリテン、2011年、59巻、12号、p.1570−1573(非特許文献7)、国際公開第2006/001387号(特許文献1)、特開2009−114143号公報(特許文献2)、特開2008−212853号公報(特許文献3)、国際公開第2012/008228号(特許文献4))。
国際公開第2006/001387号 特開2009−114143号公報 特開2008−212853号公報 国際公開第2012/008228号
Pier Lucio Anelliら、ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、1987年、52巻、12号、p.2559−2562 Antonella De Micoら、ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、1997年、62巻、20号、p.6974−6977 澁谷正俊ら、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー、2006年、128巻、26号、p.8412−8413 澁谷正俊ら、ケミカル・コミュニケーションズ、2009年、13号、p.1739−1741 澁谷正俊ら、ザ・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、2009年、74巻、12号、p.4619−4622 澁谷正俊ら、シンセシス、2011年、21号、p.3418−3425 林政樹ら、ケミカル・アンド・ファーマシューティカル・ブリテン、2011年、59巻、12号、p.1570−1573
本発明は、従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、第2級アルコールの酸化においても十分に高い触媒活性を発揮することができるアルコール酸化触媒として好適に適用可能であり、かつ、製造が容易で、上記多環式N−オキシル化合物(AZADO、1−Me−AZADO、ABNO、Nor−AZADO)とは異なる、新規のアルコキシアミン化合物、アルコール酸化触媒及びそれを用いたアルコール酸化方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ホモアダマンタン骨格の4位及び5位の位置にアルコキシアミン骨格(−ONH−)を有する環状の新規のアルコキシアミン化合物を見出し、これをアルコール酸化触媒として用いることにより、基質が嵩高い第2級アルコールに対しても十分に高いアルコール酸化触媒活性が発揮されることを見出した。
なお、これまで、上記のようなホモアダマンタン骨格を有するアルコキシアミン化合物に関する報告は無く、前記ホモアダマンタン骨格を有するアルコキシアミン化合物、並びに、これを用いてアルコールを酸化できることは、本発明者らが初めて見出した。さらに、本発明者らは、前記ホモアダマンタン骨格を有するアルコキシアミン化合物は保護基を使用せずとも数工程で容易に製造が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のアルコキシアミン化合物は、
下記一般式(1):
Figure 0006054900
[式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子及び置換されていてもよいアルキル基からなる群から選択されるいずれか一種を示す。]
で表わされることを特徴とする、ホモアダマンタン骨格を有するアルコキシアミン化合物である。
本発明のアルコキシアミン化合物としては、前記式(1)中、R及びRが、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1〜5のアルキル基からなる群から選択されるいずれか一種を示すことが好ましい。
本発明のアルコール酸化触媒は、アルコールを酸化せしめるアルコール酸化触媒であって、前記本発明のアルコキシアミン化合物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするものである。
本発明のアルコール酸化方法は、前記本発明のアルコール酸化触媒及び共酸化剤の存在下でアルコールを酸化せしめることを特徴とするものである。
また、本発明のアルコール酸化方法においては、前記アルコキシアミン化合物の添加量が前記アルコールにおける全ヒドロキシ基100モルに対して0.1〜150モルであることが好ましい。
本発明によれば、第2級アルコールの酸化においても十分に高い触媒活性を発揮することができるアルコール酸化触媒として好適に適用可能であり、かつ、製造が容易な新規のアルコキシアミン化合物、アルコール酸化触媒及びそれを用いたアルコール酸化方法を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[ホモアダマンタン骨格を有するアルコキシアミン化合物]
先ず、本発明のアルコキシアミン化合物について説明する。本発明のアルコキシアミン化合物は、
下記一般式(1):
Figure 0006054900
[式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子及び置換されていてもよいアルキル基からなる群から選択されるいずれか一種を示す。]
で表わされることを特徴とする、ホモアダマンタン骨格を有するアルコキシアミン化合物である。
本発明のアルコキシアミン化合物は前記一般式(1)で表わされる化合物であって、ホモアダマンタン骨格の4位及び5位の位置にアルコキシアミン骨格(−ONH−)を有するアルコキシアミン化合物である。前記一般式(1)中、R及びRは酸化反応に影響を及ぼさない限り特に制限はされないが、アルコール酸化触媒として用いた際、第2級アルコールの酸化においてより高い触媒活性を発揮することができ、かつ、製造がより容易であるという観点から、それぞれ独立に、水素原子及び置換されていてもよいアルキル基からなる群から選択されるいずれか一種であることが好ましい。前記アルキル基としては、炭素数1以上のアルキル基が挙げられる。また、前記アルキル基の置換基としては、酸化反応に影響を及ぼさない限り特に制限はされず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基等の炭素数2〜6のアルキニル基;ヒドロキシ基;置換されていてもよいアミノ基;置換されていてもよいスルホニル基;シアノ基;ニトロソ基;置換されていてもよいアミジノ基;カルボキシ基;炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;置換されていてもよいカルバモイル基;芳香族基;芳香族複素環基;アシル基(置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基)が挙げられる。
これらの中でも、製造が更に容易であるという観点から、R及びRとしては、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることがより好ましい。前記炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基が挙げられる。
また、本発明のアルコキシアミン化合物としては、アルコール酸化触媒として用いた際、第2級アルコールの酸化においてより高い触媒活性を発揮することができ、かつ、製造が特に容易であるという観点から、前記式(1)中のRがメチル基、Rが水素原子である3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタン(3−Methyl−4−Oxa−5−Azahomoadamantane、以下場合により「3−Me−4−Oxa−5−Azahomoadamantane」という。)、又は、前記式(1)中のR及びRがいずれも水素原子である4−オキサ−5−アザホモアダマンタン(4−Oxa−5−Azahomoadamantane)が特に好ましい。
前記一般式(1)で表わされるアルコキシアミン化合物は、例えば、N−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミン、N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミン等のビシクロ環を有するヒドロキシルアミン化合物を酸処理し、アルコキシアミン(−ONH−)を有するホモアダマンタン骨格を形成させることで得ることができる。なお、前記ビシクロ環を有するヒドロキシルアミン化合物は、例えば、ビシクロ[3.3.1]ノナノンオキシム化合物やアミノビシクロ[3.3.1]ノナン化合物を原料として得ることができる。前記酸処理の方法としては特に制限されず、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホンイミド等の酸を前記ビシクロ環を有するヒドロキシルアミン化合物に添加して温度−20〜40℃において0.5〜3時間攪拌する方法が挙げられる。また、前記酸処理においては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等の溶媒を用いてもよい。このように、本発明のアルコキシアミン化合物は、保護基を使用せずに数工程で容易に製造が可能である。
[アルコール酸化触媒]
次いで、本発明のアルコール酸化触媒について説明する。本発明のアルコール酸化触媒は、アルコールを酸化せしめるアルコール酸化触媒であって、前記本発明のアルコキシアミン化合物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするものである。
本発明のアルコール酸化触媒は、前記アルコキシアミン化合物及び/又はその誘導体を含有するものである。前記アルコール酸化触媒としては、これらのうちの1種が単独で含有されていても2種以上が組み合わされて含有されていてもよい。前記アルコキシアミン化合物の誘導体としては、例えば、前記式(1)で表わされる前記アルコキシアミン化合物の水和物、塩(塩酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等)が挙げられる。
本発明のアルコール酸化触媒としては、前記アルコキシアミン化合物を、アルコキシアミン化合物としての含有量が触媒としての有効量となるように含有するものであればよく、前記アルコキシアミン化合物及び/又はその誘導体からなるものであっても、本発明の効果を阻害しない範囲内において、前記アルコキシアミン化合物の合成に用いた試薬由来の不純物、精製により生じた不純物等を更に含有するものであってもよい。
[アルコール酸化方法]
次いで、本発明のアルコール酸化触媒を用いたアルコール酸化方法について説明する。本発明のアルコール酸化方法において、基質となるアルコールは下記一般式(2)で表わされる第1級アルコールであっても下記一般式(3)で表わされる第2級アルコールであってもよい。
Figure 0006054900
Figure 0006054900
前記一般式(2)及び(3)中、X及びYは、それぞれ独立に、酸化反応に悪影響を及ぼさない置換基を示し、例えば、置換されていてもよい直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基、置換されていてもよい環状アルキル基、置換されていてもよい芳香族基、及び置換されていてもよい複素環基が挙げられる。また、本発明のアルコール酸化方法に係るアルコールとしては、前記一般式(2)及び(3)で表わされる構造単位を同一分子内に複数有する多価アルコールであってもよいが、アルコール酸化反応がより十分に進行するという観点から、ヒドロキシ基を1つ有するモノアルコールであることが好ましい。
前記「置換されていてもよい直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基」におけるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜16のアルキル基が挙げられ、これらの中でも、炭素数が1〜8のアルキル基が好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、n−へキシル基、イソへキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、ヘプチル基、1−メチルへキシル基、2−メチルへキシル基、3−メチルへキシル基、4−メチルへキシル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、6−メチルヘプチル基、1−プロピルペンチル基、2−エチルへキシル基、及び5,5−ジメチルへキシル基が挙げられる。
前記アルキル基の置換基としては、酸化反応に影響を及ぼさない限り特に制限はされず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基等の炭素数2〜6のアルキニル基;ヒドロキシ基;置換されていてもよいアミノ基;置換されていてもよいスルホニル基;シアノ基;ニトロソ基;置換されていてもよいアミジノ基;カルボキシ基;炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;置換されていてもよいカルバモイル基;芳香族基;芳香族複素環基;アシル基(置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアリールカルボニル基)が挙げられる。
前記「置換されていてもよい環状アルキル基」における環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペプチル基等の炭素数3〜7のシクロアルキル基が挙げられる。また、前記環状アルキル基の置換基としては、上記の「置換されていてもよいアルキル基」における置換基と同様のものを挙げることができる。
前記「置換されていてもよい芳香族基」における芳香族基としては、例えば、単環式若しくは縮合多環式の芳香族炭素環基が挙げられ、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、フェナントリル基、アセナフチレニル基等の炭素数が2〜14のアリール基が挙げられる。
前記「置換されていてもよい複素環基」における複素環としては、5員環の単環式であっても、6員環の単環式であっても、6−5又は6−6の縮合環形式でありかつ複素原子として酸素原子、硫黄原子及び窒素原子からなる群から選択される1〜3の複素原子を有する芳香族複素環であってもよい。このような複素環基としては、具体的には、フリル基、チエニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、1,2,3−オキサジアジゾリル基、1,2,4−オキサジアゾリル基、1,3,4−オキサジアゾリル基、フラザニル基、1,2,3−チアジアゾリル基、1,2,4−チアジアゾリル基、1,3,4−チアジアゾリル基、1,2,3−トリアゾリル基、1,2,4−トリアゾリル基、テトラゾニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基等の単環式芳香族複素環基;ベンゾフラニル基、イソベンゾオキサリル基、1,2−ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾピラニル基、1,2−ベンゾイソチアゾリル基、1H−ベンゾトリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリニル基、キナゾリル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、プリニル基、ブテリジニル基、カルバゾリニル基、α−カルボリニル基、β−カルボリニル基、γ−カルボリニル基、アクリジニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、フェナジニル基、フェノキサチイニル基、チアントレニル基、フェナトリジニル基、フェナトロリニル基、インドリジニル基、ピロロ[1,2−b]ピリダジニル基、ピラゾロ[1,5−a]ピリジル基、イミダソ[1,2−a]ピリジル基、イミダゾ[1,5−a]ピリジル基、イミダゾ[1,2−b]ピリダジニル基、イミダゾ[1,2−a]ピリミジニル基、1,2,4−トリアゾロ[4,3−a]ピリジル基、1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジニル基等の8〜12員の縮合多環式芳香族複素環基等が挙げられる。また、前記芳香族基及び前記複素環基の置換基としては、上記の「置換されていてもよいアルキル基」における置換基と同様のものを挙げることができる。
本発明のアルコール酸化方法としては、反応基質である前記アルコールに本発明のアルコール酸化触媒を添加するものであっても、本発明のアルコール酸化触媒に前記アルコールを添加するものであってもよい。前記アルコール酸化触媒と前記アルコールとの混合比としては、前記アルコール酸化触媒中に含まれる前記アルコキシアミン化合物としての添加量が前記アルコールにおける全ヒドロキシ基100モルに対して0.1〜150モルであることが好ましく、0.1〜15モルであることがより好ましい。前記アルコキシアミン化合物の添加量が前記下限未満である場合には、反応が進行しない、反応速度が低下する、あるいは反応が途中で停止するといった傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、反応速度を制御することが困難となる傾向にある。また、本発明においては、前記アルコキシアミン化合物の添加量が少量(例えば、前記アルコールにおける全ヒドロキシ基100モルに対して0.1〜1モル)であっても十分に高いアルコール酸化触媒活性が発揮される。
本発明のアルコール酸化方法としては、前記アルコール酸化触媒と共に、共酸化剤の存在下において前記アルコールを酸化せしめることが好ましい。
このような共酸化剤としては、例えば、TEMPOを使用する酸化反応で一般に利用されているものから適宜選択することができ、特に制限はされず、過酸素酸、過酸化水素、次亜ハロゲン酸及びその塩、過ハロゲン酸及びその塩、過硫酸塩、ハロゲン化物、N−ブロモコハク酸イミド等のハロゲン化剤、トリハロゲン化イソシアヌル酸類、ジアセトキシヨードアレン類、酸素、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、前記共酸化剤としては、過酢酸、m−クロロ過安息香酸、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜臭素酸ナトリウム、次亜臭素酸リチウム、次亜臭素酸カリウム、次亜臭素酸カルシウム、過硫酸水素ナトリウム、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸、トリクロロイソシアヌル酸、トリブロモイソシアヌル酸、N−ブロモコハク酸イミド、N−クロロコハク酸イミド、塩素、臭素、ヨウ素、ジアセトキシヨードベンゼンが好ましい。
前記共酸化剤の添加量としては、前記共酸化剤の種類にも依存するため一概には言えないが、通常、前記アルコールにおける全ヒドロキシ基100モルに対して100モル以上であることが好ましく、120〜150モルであることがより好ましい。また、例えば、前記共酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合には、前記アルコールにおける全ヒドロキシ基100モルに対して次亜塩素酸ナトリウムが100モル以上であることが好ましい。前記共酸化剤の添加量が前記下限未満である場合には、反応が進行しない、反応速度が低下する、あるいは反応が途中で停止するといった傾向にある。
さらに、例えば、前記共酸化剤として前記次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合には、反応を更に促進させることを目的として、アルカリ金属のハロゲン化物等の他の共酸化剤や、四級アンモニウム塩等の添加剤を更に組み合わせて用いることが好ましい。このように次亜塩素酸ナトリウムと組み合わせて用いるものとしては、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、及びこれらの混合物が好ましい。また、これらの添加量としては、前記次亜塩素酸ナトリウム100モルに対して10モル以下であることが好ましい。
さらに、本発明のアルコール酸化方法においては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、公知の溶媒を適宜用いてもよい。このような溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸ジエチル等のエステル類;スルホラン;水が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記溶媒としては、反応効率がより向上する傾向にあるという観点から、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ニトリル類、ハロゲン化炭化水素類、エステル類、水、及びこれらの混合物が好ましく、ジクロロメタン、アセトニトリル、トルエン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、水、及びこれらの混合溶液がより好ましく、ジクロロメタン、アセトニトリル、ジクロロメタン−水混合溶液、アセトニトリル−水混合溶液、トルエン−水混合溶液、酢酸エチル−水混合溶液が更に好ましい。
また、本発明のアルコール酸化方法においては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、緩衝剤を更に添加してもよい。このような緩衝剤としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の重炭酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のリン酸塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酢酸塩等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記緩衝剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸塩が好ましい。これらの緩衝剤を添加する場合、その添加量としては、前記アルコール酸化触媒に含まれるアルコキシアミン化合物100モルに対して500モル以下であることが好ましい。
本発明のアルコール酸化方法における反応温度としては、前記アルコール及び用いる前記共酸化剤の種類に依存するため一概には言えないが、通常、−80〜120℃であり、0〜40℃であることが好ましい。また、反応時間としても、前記反応温度に依存するため一概には言えず、本発明においては、特に速やかに反応が進行するが、通常、0.3〜3時間であることが好ましい。
このような本発明のアルコール酸化方法により、前記アルコールを酸化せしめることができ、前記アルコールに対応するアルデヒド又はケトンを高収率で得ることができる。また、酸化して得られた反応生成物は、反応終了後に抽出、再結晶、及びカラムクロマトグラフィー等の単離操作によって単離することができる。前記単離操作は、2種以上を組み合わせてもよい。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
各実施例において得られた化合物は、核磁気共鳴分析法(NMR:H−NMR、13C−NMR)、赤外線吸収分析法(IR)、質量分析法(MS)、高分解能質量分析法(電子イオン化)(HRMS(EI))、元素分析法(Anal.)により分析した。なお、H−NMRにおける多重度は、s=singlet(一重線)、d=doublet(二重線)、t=triplet(三重線)、q=quintet(四重線)、m=multiplet(多重線)、dd=double doublet(ダブルダブレット)、br s=broad singlet(ブロードシングレット)を示す。また、Jは結合定数を示す。なお、各NMRにおいては、CDClを溶媒として用いた。
(実施例1)
<3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタン(3−Me−4−Oxa−5−Azahomoadamantane)の合成>
Figure 0006054900
前記式に示す反応経路のとおり、3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタンを合成した。なお、出発原料の7−メチレビシクロ[3.3.1]ノナン−3−オンオキシムは澁谷正俊らが報告している方法で合成した(澁谷正俊ら、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー、2006年、128巻、26号、p.8412−8413(非特許文献3))。
(1−1)7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−オンオキシムの合成
Figure 0006054900
前記式に示す反応経路のとおり、7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−オンオキシムを合成した。すなわち、先ず、7−メチレビシクロ[3.3.1]ノナン−3−オンオキシム(2.90g、17.6mmol)のメタノール(MeOH、59mL)溶液に、10%パラジウム炭素(290mg)加え、水素雰囲気下にて室温で4時間攪拌した。次いで、反応溶液をセライトろ過し、減圧下で溶媒を除去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−オンオキシム(2.89mg、収率99%)を白色結晶として得た。
以下に得られた7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−オンオキシムについてのH−NMR、13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)の結果を示す。
H−NMR(400MHz):δ 8.26(br s、 1H)、5.42 and 5.36(each d、J=5.4Hz、total 1H)、3.24−3.17(m、1H)、2.49(br s、1H)、2.41−2.15(m、4H)、2.05−1.70(m、 4H)、 1.61(s、 3H);
13C−NMR(100MHz):δ 159.1、158.9、133.91、133.89、124.12、124.05、39.4、37.5、36.80、36.76、31.5、31.1、30.2、29.8、29.4、29.1、28.1、23.3、23.2;
IR(neat[cm−1]):3235、2910、1664、1454、1432;
MS[m/z]:165(M)、165(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C1015NO:165.1154、found:165.1144。
(1−2)N−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンの合成
Figure 0006054900
前記式に示す反応経路のとおり、N−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンを合成した。すなわち、先ず、上記(1−1)で得られた7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−オンオキシム(500mg、3.03mmol)の1:1エタノール−テトラヒドロフラン(EtOH−THF、1:1、15mL)溶液に、室温下、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN、571mg、9.09mmol)及びトリフルオロ酢酸(TFA、450μL、6.06mmol)を加えた。この溶液を3時間攪拌した後、室温下、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN、381mg、6.06mmol)及びトリフルオロ酢酸(TFA、225μL、3.03mmol)を更に加え、3時間攪拌した。反応液に飽和重曹水を加え、クロロホルムで水層を抽出して除き、有機層を更に飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下において濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、N−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンのエンド体及びエキソ体の混合物(エンド体:エキソ体=2.5:1、507mg、3.03mmol、収率100%)の無色液体を得た。N−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンのエンド体及びエキソ体の混合物は、一部、分離することができた。
以下に得られたN−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンのエンド体についてのH−NMR、13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)の結果を示す。
H−NMR(400MHz):δ5.69(d、J=6.0Hz、1H)、3.17(t、J=6.4Hz、1H)、2.36−2.26(m、2H)、2.16(br s、1H)、2.02−1.80(m、4H)、1.68−1.51(m、3H)、1.65(s、3H);
13C−NMR(100MHz):δ134.4、128.7、56.6、37.6、33.5、31.4、30.7、27.8、25.8、23.4;
IR(neat[cm−1]):3289、2917、1434;
MS[m/z]:167(M)、150(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C1017NO:167.1310、found:167.1301。
以下に得られたN−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンのエキソ体についてのH−NMR、13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)の結果を示す。
H−NMR(400MHz):δ5.47(d、J=6.0 Hz、1H)、3.19−3.10(m、1H)、2.39−2.22(m、3H)、1.90−1.74 (m、3H)、1.62−1.51(m、3H)、1.65(s、3H)、1.33(dt、J=3.8、12.2Hz、1H)、1.20(dt、J=3.8、12.2Hz、1H);
13C−NMR(100MHz):δ135.8、125.3、54.6、38.1、37.2、34.0、31.6、29.4、27.6、23.1;
IR(neat[cm−1]):3250、2921、1434;
MS[m/z]:167(M)、150(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C1017NO:167.1310、found:167.1297。
(1−3)3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタンの合成
Figure 0006054900
前記式に示す反応経路のとおり、3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタンを合成した。すなわち、先ず、上記(1−2)で得られたN−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンのエンド体及びエキソ体の混合物(507mg、3.03mmol)のジクロロメタン(CHCl、30mL)溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH、1.35mL、15.2mmol)を0℃にてゆっくりと加え、その後、同温度で1時間攪拌した。その後、反応液に飽和重曹水を加え、クロロホルムで水層を抽出して除き、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下において濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタン(338mg、2.02mmol、収率67%)を白色個体として得た。その際に、N−(7−メチルビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンのエキソ体(132mg、0.79mmol、26%)を分離した。
以下に得られた3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタンのH−NMR、13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)、Anal.の結果を示す。
H−NMR(400 MHz):δ4.68(br s、1H)、3.56(s、1H)、2.05−2.02(m、2H)、1.93−1.69(m、8H)、1.59−1.48(m、2H)、1.22(s、3H);
13C−NMR(100MHz):δ81.1、55.5、42.4、37.2、34.7、30.2、26.7;
IR(neat[cm−1]):3243、2905;
MS[m/z〕:167(M)、150(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C1017NO:167.1310、found:167.1302;
Anal.:Calcd. for C1017NO:C、71.81;H、10.25.84;N、8.37、found:C、71.65;H、10.33;N、8.39。
(実施例2)
<4−オキサ−5−アザホモアダマンタン(4−Oxa−5−Azahomoadamantane)の合成>
Figure 0006054900
前記式に示す反応経路のとおり、4−オキサ−5−アザホモアダマンタンを合成した。なお、出発原料のビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イルアミンは澁谷正俊らが報告している方法で合成した(澁谷正俊ら、シンセシス、2011年、21号、p.3418−3425(非特許文献6))。
(2−1)O−ベンゾイル−N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンの合成
Figure 0006054900
前記式に示す反応経路のとおり、O−ベンゾイル−N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンを合成した。すなわち、先ず、ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イルアミン(1.00g、7.29mmol)のジメチルホルムアミド(DMF、15mL)溶液に、氷冷下、過酸化ベンゾイル((PhCO、1.94g、8.02mmol)及びリン酸水素二カリウム(KHPO、1.91g、10.94mmol)を加えた後、室温にて5時間攪拌した。次いで、ピペリジン(2mL、1.5mmol)と水とを加え、30分間攪拌した。その後、ジエチルエーテルで水層を抽出して除き、有機層を更に飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下において濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、O−ベンゾイル−N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミン(970mg、3.77mmol、収率52%)を白色個体として得た。その際に、N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ベンズアミド(427mg、1.77mmol、収率24%)も得られた。
以下に得られたビシクロO−ベンゾイル−N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンについてのH−NMR、13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)の結果を示す。
H−NMR(400MHz):δ8.46(br s、1H)、8.05−7.98(m、2H)、7.59−7.55(m、1H)、7.55−7.36(m、2H)、6.15−6.10(m、1H)、5.95−5.85(m、1H)、3.59(s、1H)、2.48−2.37(m、1H)、2.34(s、1H)、2.21−2.07(m、2H)、2.05−1.92(m、3H)、1.88−1.78(m、1H)、1.73(d、J=12.0、1H)、1.59(d、J=12.0、1H);
13C−NMR(100MHz):δ166.1、134.4、132.9、129.1、128.7、128.4、128.0、54.4、33.5、32.7、31.8、31.0、27.4、25.2;
IR(neat[cm−1]):3246、2922、1715、1271;
MS[m/z]:257(M)、136(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C1019NO:257.1416,found:257.1418。
以下に得られたN−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ベンズアミドについてのH−NMR、13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)の結果を示す。
H−NMR(400MHz):δ7.80−7.60(m、2H)、7.60−7.30(m、3H)、7.53(br s、1H)、6.28−6.16(m、1H)、6.02−5.92(m、1H)、4.58−4.46(m、1H)、2.57−2.45(m、1H)、2.44(s、1H)、2.26(s,1H)、2.16−2.03(m、2H)、2.00−1.90(m、2H)、1.88−1.73(m、2H)、1.67−1.59(m、1H);
13C−NMR(100MHz):δ165.4、135.3、135.2、131.0、128.9、128.5、126.6、43.1、37.4、34.1、32.7、31.1、27.9、25.6;
IR(neat[cm−1]):3344、2916、1629;
MS[m/z]:241(M)、241(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C1619NO:241.1467、found:241.1445。
(2−2)N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンの合成
Figure 0006054900
前記式に示す反応経路のとおり、N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンを合成した。すなわち、先ず、上記(2−1)で得られたO−ベンゾイル−N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミン(268mg、1.04mmol)のエタノール(EtOH)溶液(10mL)に三ヒドラジン一水和物(1.5mL、31.2mmol)を加えて室温下で3時間攪拌した。その後、減圧下において溶媒を留去し、残渣を水及びクロロホルムで薄め、クロロホルムで水層を抽出して除き、有機層を炭酸カリウムで乾燥させ、減圧下において濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、N−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミン(140mg、0.91mmol、収率88%)を白色個体として得た。
以下に得られたN−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミンについてのH−NMR、13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)の結果を示す。
H−NMR(400MHz):δ6.11−5.95(m、1H)、5.75−5.65(m、1H)、3.28−3.15(m、1H)、2.48−2.35(m、1H)、2.29(s、1H)、2.16(s,1H)、2.05−1.85(m、4H)、1.75−1.60(m、2H)、1.59−1.50(m、1H);
13C−NMR(100MHz):δ135.0、127.7、56.5、33.5、32.9、31.1、30.5、27.6、25.4;
IR(neat[cm−1]):3235、2905、1432;
MS[m/z]:153(M)、136(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C15NO:153.1154、found:153.1144。
(2−3)4−オキサ−5−アザホモアダマンタンの合成
Figure 0006054900
前記式に示す反応経路のとおり、4−オキサ−5−アザホモアダマンタンを合成した。すなわち、先ず、上記(2−2)で得られたN−(ビシクロ[3.3.1]ノン−6−エン−3−イル)ヒドロキシルアミン(220mg、1.38mmol)のジクロロメタン(CHCl、14mL)溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH、637μL、7.20mmol)を0℃にてゆっくりと加え、その後、同温度で30分間攪拌した。その後、反応液に飽和重曹水を加え、クロロホルムで水層を抽出して除き、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下において濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、4−オキサ−5−アザホモアダマンタン(212mg、1.38mmol、収率99%)を白色個体として得た。
以下に得られた4−オキサ−5−アザホモアダマンタンについてのH−NMR、13C−NMR、IR、MS、HRMS(EI)、Anal.の結果を示す。
H−NMR(400 MHz):δ4.54(br s、1H)、4.45−4.40(m、1H)、3.61(s、1H)、2.08−2.00(m、2H)、C、1.88−1.80(m、4H)、1.73(br d、J=13.6、2H)、1.58(s、2H);
13C−NMR(100MHz):δ77.0、55.3、37.6、36.4、34.8、26.2;
IR(neat[cm−1]):2901;
MS[m/z〕:153(M)、136(100%);
HRMS(EI):Calcd. for C15NO:153.1154、found:153.1149;
Anal.:Calcd. for C15NO:C、70.55;H、9.87.;N、9.13、found:C、70.22;H、9.87;N、9.03。
実施例1〜2の結果から、数工程で容易に本発明のアルコキシアミン化合物を製造できることが確認された。
<活性評価1>
実施例1で得られた3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタンをそのまま触媒として用い、種々のアルコールに対する酸化触媒としての機能を調べた。
Figure 0006054900
前記式に示す反応経路のとおり、種々のアルコールに対する酸化反応を行った。すなわち、表1に示すアルコール(substrate、1.00mmol)、3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタン(1.67mg、10μmol)、臭化カリウム(KBr、11.9mg、0.100mmol)を、ジクロロメタン(CHCl、2.7mL)及び飽和重曹水溶液(1mL)の混合溶液に溶かし氷冷下攪拌した。反応液に1.45mol/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液(1.00mL、1.50mmol)の飽和重曹水溶液(1.7mL)をゆっくりと滴下し、同温で20分間激しく攪拌した。その後、反応液に20%亜硫酸ナトリウム水溶液(3mL)を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的化合物(product、収率84−100%)を得た。
ただし、表1中、aは次亜塩素酸ナトリウムがアルコールのヒドロキシ基100モルに対して120モルとなるように添加したことを示し、bは次亜塩素酸ナトリウムがアルコールのヒドロキシ基100モルに対して250モルとなるように添加したことを示す。なお、表1中、Phはフェニル基を示し、Cbzはベンジルオキシカルボニル基を示す。
Figure 0006054900
表1に示した結果から明らかなように、本発明のアルコール酸化触媒(3−メチル−4−オキサ−5−アザホモアダマンタン)は、種々の第1級及び第2級アルコールに対して酸化触媒として機能し、目的化合物として各アルコールに対応するアルデヒド又はケトンを高収率で得ることができることが確認された。また、立体的に嵩高く、かつ複雑な構造のアルコールにおいても高収率で目的化合物が得られており、単純なベンジルアルコールや脂肪族アルコールのみならず、ヘテロ原子を有するアルコールや糖アルコール等の幅広いアルコールも基質として酸化せしめることができることが確認された。
<活性評価2>
実施例2で得られた4−オキサ−5−アザホモアダマンタンをそのまま触媒として用い、アルコールに対する酸化触媒としての機能を調べた。
Figure 0006054900
前記式に示す反応経路のとおり、l−メントールを基質として酸化反応を行った。すなわち、l−メントール(156mg、1.00mmol)、4−オキサ−5−アザホモアダマンタン(1.53mg、10μmol)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO、167.7、2.00mmol)をジクロロメタン(CHCl、5mL)に溶かし氷冷下攪拌した。反応液にトリクロロイソシアヌル酸(TCCA、122.1mg、0.50mmol)を加え、同温で反応させた。
次いで、反応後の反応液を12.5μlとり、アセトン0.5mlで希釈したものをサンプルとし、このサンプルについてガスクロマトグラフィー(カラム:HP−5(30×0.32mm(i.d);Agilent technologies社製)、機器:Agilent 7890 GC system、製造社:Agilent technologies、水素炎イオン検出器(FID):270℃、インジェクション:250℃、キャリアーガス:ヘリウム、キャリアーガス速度:25mL/min、カラム温度:70℃ (2分間)、昇温条件:20℃/minで210℃まで昇温後210℃で1分間)を用いて得られたピークから残存基質エリア面積(残存基質量)、生成したケトン及び/又はアルデヒドのエリア面積(生成物量)を求め、変換率を次式:
変換率(%)=(生成物量/(残存基質量+生成物量))×100
により算出した。その結果、速やかに酸化反応が進行し、反応開始から1.5時間経過した時点で変換率が100%となった。
以上の結果より、本発明に係るホモアダマンタン骨格を有するアルコキシアミン化合物はいずれも、アルコールを基質として酸化せしめることができ、十分に高いアルコール酸化触媒活性を発揮することが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、第1級及び第2級アルコールに対して、十分に高い酸化触媒活性を発揮することができるアルコール酸化触媒として好適に適用可能であり、かつ、製造が容易な新規のアルコキシアミン化合物、アルコール酸化触媒及びそれを用いたアルコール酸化方法を提供することが可能となる。したがって、本発明は、医薬品、医薬品原料、農薬、化粧品、有機材料等の高付加価値有機化合物を環境調和的に合成する手段であるアルコールの触媒的酸化反応に適用することができ、非常に有用である。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 0006054900
    [式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子及び置換されていてもよいアルキル基からなる群から選択されるいずれか一種を示す。]
    で表わされることを特徴とする、ホモアダマンタン骨格を有するアルコキシアミン化合物。
  2. 前記式(1)中、R及びRが、それぞれ独立に、水素原子及び炭素数1〜5のアルキル基からなる群から選択されるいずれか一種を示すことを特徴とする、請求項1に記載のアルコキシアミン化合物。
  3. アルコールを酸化せしめるアルコール酸化触媒であって、請求項1又は2に記載のアルコキシアミン化合物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするアルコール酸化触媒。
  4. 請求項3に記載のアルコール酸化触媒及び共酸化剤の存在下でアルコールを酸化せしめることを特徴とするアルコール酸化方法。
  5. 前記アルコールが第1級アルコール又は第2級アルコールであることを特徴とする請求項4に記載のアルコール酸化方法。
  6. 前記アルコキシアミン化合物の添加量が前記アルコールにおける全ヒドロキシ基100モルに対して0.1〜150モルであることを特徴とする請求項4又は5に記載のアルコール酸化方法。
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