JP6052927B2 - 試料の分析方法及びそれに用いる溶液 - Google Patents

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Description

本開示は、試料の分析方法、キャピラリ電気泳動用溶液、及び試料分析用キットに関する。
臨床検査の現場においてヘモグロビン(Hb)の分析が日常的に行われている。分析対象となるヘモグロビン種は検査の目的に応じて異なる。糖尿病の診断や病状把握のための分析対象としてはHbA1cが良く知られている。異常ヘモグロビン症の診断のための分析対象としては、HbS(鎌状赤血球ヘモグロビン)、HbC、HbD及びHbEなどに代表される変異ヘモグロビン類が使用されている。また、βサラセミアの診断のための分析対象としては、HbA2やHbF(胎児ヘモグロビン)が広く用いられている。
ヘモグロビンの分析は、イオン交換クロマトグラフィー法等の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法や、キャピラリ電気泳動(CE)法により行われている(例えば、特許文献1〜4及び非特許文献1等)。
特許文献1には、陽イオン交換クロマトグラフィー法によるヘモグロビンの分析方法が記載されている。非特許文献1には、陰イオン交換クロマトグラフィー法によるヘモグロビンの分析方法が記載されている。しかしながら、HPLC法は、大型で高価な専用の装置を必要とし、装置の小型化及び低コスト化が困難である。
特許文献2には、アルカリpHでの自由溶液キャピラリ電気泳動法(キャピラリーゾーン電気泳動、CZE)による、ヘモグロビンの分析方法が記載されている。特許文献3には、アルカリpHかつボロネート化合物の共存下でキャピラリ電気泳動を行う、ヘモグロビンの分析方法が記載されている。特許文献4には、擬似固定相としてアニオン性ポリマーを含有する溶液を用いた、陽イオン交換動電クロマトグラフィーによる、ヘモグロビンの分析方法が記載されている。
特開2014−95638号公報 特開2006−145537号公報 特表2012−531609号公報 特開2009−109230号公報
Xuezhen Kang et al. Anal. Chem. 2002, 74, 1038−1045
特許文献1及び非特許文献1の方法は、いずれもHPLC法であるため、大型で高価な専用の装置を必要とし、装置の小型化および低コスト化が困難であるという問題がある。
特許文献2及び3の方法は、分析完了までに長時間を要し(例えば、8分以上)、また必要とされるキャピラリ長が長い(例えば、20cm以上)ことから装置の小型化が困難であるという問題がある。
βサラセミア症患者は同時にHbSなどの異常ヘモグロビン症を合併していることが多く、HbSとHbA2を分離することが求められるが、特許文献4の方法は、HbA2と、比較的メジャーな変異ヘモグロビンであるHbSとの分離が困難であるという問題がある。
そこで、本開示は、一態様において、HbS又はHbA2の少なくとも一方の分離精度の向上及び分析時間の短縮及び装置の小型化が可能な試料の分析方法、キャピラリ電気泳動用溶液、及び試料分析用キットを提供する。
本開示は、一態様において、キャピラリ電気泳動により前記試料中のヘモグロビンを分離することを含み、前記ヘモグロビンの分離を、カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液中で行うことを含む試料の分析方法に関する。
本開示は、一態様において、泳動液が充填されたキャピラリ流路に試料を導入すること、及び、前記流路の全体又は一部に電圧を印加してキャピラリ電気泳動を行い前記試料中のヘモグロビンの分離を行うことを含む試料の分析方法であって、前記泳動液がカチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液である試料分析方法に関する。
本開示は、一態様において、カチオン性ポリマー及び水を含有し、アルカリ性である、ヘモグロビン分離分析用のためのキャピラリ電気泳動用溶液に関する。
本開示は、一態様において、本開示のキャピラリ電気泳動用溶液を含む容器と、試料保持槽、泳動液保持槽及びキャピラリ流路を有し、前記試料保持槽と前記泳動液保持槽とが前記キャピラリ流路により連通している電気泳動チップとを含む試料分析用キットに関する。
本開示によれば、装置の小型化が可能で、かつHbS又はHbA2の少なくとも一方の分離精度を向上可能な試料の分析方法、キャピラリ電気泳動用溶液、及び試料分析用キットを提供できる。
図1Aは、キャピラリ電気泳動チップの一実施形態を示す上面図である。図1Bは、図1Aに示す電気泳動チップの断面図である。 図2A及びBは、実施例1におけるキャピラリ電気泳動法によるエレクトロフェログラムの一例を示し、図2Aはサンプルがβサラセミア患者由来の全血であり、図2Bはサンプルがコントロール検体である。 図3A及びBは、実施例2におけるキャピラリ電気泳動法によるエレクトロフェログラムの一例を示し、図3Aはサンプルがβサラセミア患者由来の全血であり、図3Bはサンプルがコントロール検体である。 図4は、実施例3におけるキャピラリ電気泳動法によるエレクトロフェログラム(サンプル:コントロール検体)の一例を示す。 図5は、実施例4におけるキャピラリ電気泳動法によるエレクトロフェログラム(サンプル:コントロール検体)の一例を示す。 図6は、比較例1におけるキャピラリ電気泳動法によるエレクトロフェログラム(サンプル:コントロール検体)の一例を示す。 図7は、比較例2におけるキャピラリ電気泳動法によるエレクトロフェログラム(サンプル:コントロール検体)の一例を示す。
本開示は、一態様において、カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液中で、キャピラリ電気泳動による試料中のヘモグロビンの分離を行うことによって、試料中のヘモグロビンの各分画(HbS又はHbA2の少なくとも一方)を短時間で精度よく分離できるという知見に基づく。
カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液中でキャピラリ電気泳動によるヘモグロビンの分離を行うことにより、試料中のHbS又はHbA2の少なくとも一方を短時間で精度よく分離できるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。ヘモグロビンの等電点は中性付近であることから、アルカリ性溶液中ではヘモグロビンはマイナスにチャージする。マイナスにチャージしたヘモグロビンは、試料導入側に負電極を接触させて電圧を印加することにより正電極側へ移動する。一方、カチオン性ポリマーは正電極側から負電極側へ移動する。電気泳動中はマイナスチャージを有するヘモグロビンとプラスチャージを有するカチオン性ポリマーの間で相互作用が生じる。アルカリ溶液中では各ヘモグロビン画分のマイナスチャージの程度に差が存在するため、そのチャージの差が各ヘモグロビン画分とカチオン性ポリマーとの相互作用の差に反映される。この結果、HbA2とHbSの電気泳動速度に違いが生じることから、HbA2又はHbSの少なくとも一方の分離精度が向上するものと考えられる。ただし、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
[カチオン性ポリマー]
本開示において「カチオン性ポリマー」とは、カチオン性基又はカチオン性基にイオン化されうる基を有するポリマーをいう。カチオン性ポリマーは、一又は複数の実施形態において、カチオン性基を有するモノマーの単独重合体やその他のモノマーとの共重合体又は縮重合体であってもよい。カチオン性基としては、一又は複数の実施形態において、窒素を含む基が挙げられる。カチオン性基としては、一又は複数の実施形態において、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、イミノ基、第4級アンモニウム塩基等のカチオン性基を有するポリマー等が挙げられ、分析精度の向上の観点から、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基を有するポリマーが好ましく、より好ましくは第1級アミノ基を有するポリマーである。カチオン性ポリマーは、一又は複数の実施形態において、水溶性であることが好ましい。カチオン性ポリマーは、分析精度の向上の観点から、一又は複数の実施形態において、直鎖であることが好ましい。カチオン性ポリマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第1級〜第3級アミノ基又は第1級〜第3級アミノ基にイオン化されうる基を有するカチオン性ポリマーとしては、一又は複数の実施形態において、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリジアリルアミン、ポリメチルジアリルアミン等が挙げられる。
イミノ基又はイミノ基にイオン化されうる基を有するカチオン性ポリマーとしては、一又は複数の実施形態においてポリエチレンイミン等が挙げられる。
第4級アンモニウム塩基又は第4級アンモニウム塩基にイオン化されうる基を有するカチオン性ポリマーとしては、一又は複数の実施形態において、ポリクオタニウム、ジメチルアミン−エピクロロヒドリンコポリマー等が挙げられる。本開示において「ポリクオタニウム」とは、第4級アンモニウム基を有するモノマーに由来する構成単位を含むカチオン性ポリマーをいう。ポリクオタニウムは、INCI(International Nomenclature for Cosmetic Ingredients) directoryで確認できる。ポリクオタニウムとしては、一又は複数の実施形態において、ポリクオタニウム−6(poly(diallyldimethylammonium chloride)、ポリクオタニウム−7(copolymer of acrylamide and diallyldimethylammonium chloride)、ポリクオタニウム−4(Diallyldimethylammonium chloride-hydroxyethyl cellulose copolymer)、ポリクオタニウム−22(copolymer of acrylic acid and diallyldimethylammonium chloride)等のポリジアリルジメチルアンモニウム塩、及びポリクオタニウム−2(poly[bis(2-chloroethyl)ether-alt-1,3-bis[3-(dimethylamino)propyl]urea])等が挙げられる。ジメチルアミン−エピクロロヒドリンコポリマーとしては、一又は複数の実施形態において、ジメチルアミン−エピクロロヒドリン以外の構成単位を含んでいてもよく、例えばエチレンジアミン等を含んでいてもよい。
また、カチオン性ポリマーとしては、上記アンモニウム塩以外にも、一又は複数の実施形態において、ホスホニウム塩、オキソニウム塩、スルホニウム塩、フルオロニウム塩、クロロニウム塩などのオニウム塩のカチオンポリマーも利用できる。
ヒドラジド基又はヒドラジド基にイオン化されうる基を有するカチオン性ポリマーとしては、一又は複数の実施形態において、アミノポリアクリルアミド等が挙げられる。
カチオン性ポリマーとしては、分析精度の向上と測定時間の短縮化の観点から、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリリジン及びこれらの組み合わせが好ましく、より好ましくはポリアリルアミンである。
カチオン性ポリマーの重量平均分子量は、一又は複数の実施形態において、分析精度の向上の観点から、1000以上、5000以上、又は10000以上であり、溶液の粘性増加を抑える観点から、500000以下、又は300000以下である。
[カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液]
本開示において「カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液」とは、カチオン性ポリマーが媒体に分散又は溶解したアルカリ性の溶液をいう。媒体としては、一又は複数の実施形態において、水等が挙げられる。水としては、一又は複数の実施形態において、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等が挙げられる。カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液としては、一又は複数の実施形態において、カチオン性ポリマー及び水を含むアルカリ性水溶液である。
アルカリ性溶液のpHは、一又は複数の実施形態において、ヘモグロビンの等電点よりも高いことが好ましく、HbS又はHbA2の少なくとも一方の等電点よりも高いことがより好ましい。HbSの等電点が7.2〜7.3であり、HbA2の等電点が7.4〜7.5であることから、アルカリ性溶液のpHは、一又は複数の実施形態において、7.5以上であり、分析精度の向上と測定時間の短縮化の観点から、8.5以上、又は9.5以上が好ましく、ヘモグロビン変性の抑制の点から、12.0以下又は11.0以下が好ましい。なお、上記のpHは、25℃におけるアルカリ性溶液のpHであり、pHメータを用いて測定でき、電極の浸漬後30分後の数値である。
アルカリ性溶液におけるカチオン性ポリマーの含有量は、一又は複数の実施形態において、分析精度の向上の点から、0.01%(W/V)以上、0.05%(W/V)以上又は0.1%(W/V)以上であり、溶液の粘性増加の抑制の点から、10.0%(W/V)以下、8.0%(W/V)以下又は5.0%(W/V)以下である。
[試料]
本開示において「試料」としては、限定されない一又は複数の実施形態において、試料原料から調製したもの、又は試料原料そのものが挙げられる。試料原料としては、限定されない一又は複数の実施形態において、ヘモグロビンを含むもの又は生体試料が挙げられる。生体試料としては、限定されない一又は複数の実施形態において、血液、赤血球成分を含む血液由来物等が含まれる。血液としては、生体から採取された血液が挙げられ、限定されない一又は複数の実施形態において、動物の血液、哺乳類の血液、ヒトの血液が挙げられる。赤血球成分を含む血液由来物としては、血液から分離又は調製されたものであって赤血球成分を含むものが挙げられ、限定されない一又は複数の実施形態において、血漿が除かれた血球画分、血球濃縮物、血液又は血球の凍結乾燥物、全血を溶血処理した溶血試料、遠心分離血液、自然沈降血液、洗浄血球等が挙げられる。
[試料分析方法]
本開示は、一態様において、試料の分析方法に関する。本開示の試料分析方法は、一態様において、キャピラリ電気泳動による前記試料中のヘモグロビンの分離を、カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液中で行うことを含む。また、本開示の試料分析方法は、一態様において、泳動液が充填されたキャピラリ流路に試料を導入すること、及び、前記流路の全体又は一部に電圧を印加してキャピラリ電気泳動を行い前記試料中のヘモグロビンの分離を行うことを含み、前記泳動液がカチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液である。
本開示によれば、試料中のヘモグロビンの分離をカチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液中で行うことから、一又は複数の実施形態において、HbS又はHbA2の少なくとも一方の分離精度を向上できる。本開示によれば、特に限定されない一又は複数の実施形態において、HbS又はHbA2の少なくとも一方の分離を小型の装置で短時間で行うことができ、好ましくはHbS及びHbA2の分離精度及び分離速度を向上できるという効果を奏しうる。
ヘモグロビンの分離は、一又は複数の実施形態において、HbS又はHbA2の少なくとも一方を分離することを含み、好ましくはHbS及びHbA2を分離することを含む。また、ヘモグロビンの分離は、一又は複数の実施形態において、HbS又はHbA2の少なくとも一方、及びHbF、HbC、HbD又はHbEの少なくとも一つを分離することを含む。
本開示の試料分析方法は、一又は複数の実施形態において、ヘモグロビンの分離を、カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液である泳動液を用いて行うことを含む。
ヘモグロビンの分離は、一又は複数の実施形態において、キャピラリ流路を用いて行う。キャピラリ流路は、一又は複数の実施形態において、内径が100μm以下である管である。管の断面形状は、特に制限されず、円でも、矩形でも、その他の形状でもよい。また、キャピラリ流路の長さは、一又は複数の実施形態において、10mm以上又は20mm以上であり、150mm以下又は60mm以下である。キャピラリ流路の内径は、一又は複数の実施形態において、10μm以上又は25μm以上であり、100μm以下又は75μm以下である。
キャピラリ流路は、一又は複数の実施形態において、カチオン性物質又はアニオン性物質で被覆された流路であることが好ましい。カチオン性物質で被覆することによってキャピラリ流路の内壁をプラスに帯電させることができ、その結果、キャピラリ流路内に負電極側から正電極側に向かう電気浸透流を容易に生じさせることができる。アニオン性物質で被覆した場合、キャピラリ流路はマイナスに帯電するが、アルカリ性溶液に含まれるカチオン性ポリマーがマイナスに帯電したキャピラリ流路に結合することによってキャピラリ流路の内壁はプラスに帯電され、上記と同様にキャピラリ流路内に負電極側から正電極側に向かう電気浸透流を容易に生じさせることができる。本開示の試料分析方法は、一又は複数の実施形態において、キャピラリ流路内に負電極側から正電極側に向かう液流を生じさせることを含む。液流は、一又は複数の実施形態において、電気浸透流であることが好ましい。
カチオン性物質としては、一又は複数の実施形態において、上述のカチオン性ポリマー、カチオン性官能基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。分析精度の向上の観点から、第4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましい。
アニオン性物質としては、一又は複数の実施形態において、アニオン性基を有する多糖類、アニオン性官能基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。アニオン性基を有
する多糖類としては、一又は複数の実施形態において、硫酸化多糖類、カルボン酸化多糖類、スルホン酸化多糖類、及びリン酸化多糖類が挙げられる。硫酸化多糖類としては、限定されない一又は複数の実施形態において、コンドロイチン硫酸、へパリン、へパラン、フコイダン、又はその塩等が挙げられる。カルボン酸化多糖類としては、アルギン酸、ヒアルロン酸又はその塩等が挙げられる。アニオン性基を有する多糖類が塩である場合、対イオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アミン化合物、有機塩基等のイオンが挙げられる。カルボン酸化多糖類の塩としては、一又は複数の実施形態において、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、トリス塩、アルギニン塩、リジン塩、ヒスチジン塩、トリスヒドロキシメチルアミノメタン塩、ジメチルアミノエタノール塩、トリエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、クレアチニン塩等が挙げられる。カルボン酸化多糖類としては、限定されない一又は複数の実施形態において、アルギン酸又はその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)が挙げられる。
本開示の試料分析方法は、一又は複数の実施形態において、キャピラリ流路がマイクロチップ化されたキャピラリ電気泳動チップを用いて行うことが好ましい。電気泳動チップの大きさは、一又は複数の実施形態において、長さ10mm〜200mm、幅1mm〜60mm、厚み0.3mm〜5mmであり、又は、長さ30mm〜70mm、幅1mm〜60mm、厚み0.3mm〜5mmである。キャピラリ電気泳動チップの限定されない実施形態は後述する。
本開示の試料分析方法は、一又は複数の実施形態において、キャピラリ流路の全体又は一部に電圧を印加してキャピラリ電気泳動を行うこと含む。本開示の試料分析方法は、一又は複数の実施形態において、試料導入側に負電極を接触させて電圧を印加することを含み、好ましくは試料導入側に負電極を接触させ、泳動液供給側に正電極を接触させて電圧を印加することを含む。
試料は、分離精度の向上の観点から、一又は複数の実施形態において、カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液を用いて調製された試料であることが好ましい。本開示の試料分析方法は、一又は複数の実施形態において、カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液を用いて試料原料を希釈して試料を調製することを含む。希釈率は、一又は複数の実施形態において、1.2倍〜100倍、2倍〜60倍、又は3倍〜50倍である。試料原料に分離能に影響を及ぼし得る程度にイオン成分が含まれている場合、希釈率は、一又は複数の実施形態において、2倍〜1000倍、5倍〜300倍、又は10倍〜200倍である。試料の調製に用いるカチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液は、一又は複数の実施形態において、キャピラリ流路に充填される液(ランニングバッファ)と同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
アルカリ性溶液は、一又は複数の実施形態において、非界面活性剤型の両イオン性物質又はpH緩衝物質の少なくとも一方や、微生物の繁殖などを抑制するための保存剤等を含んでいてもよい。保存剤としては、一又は複数の実施形態において、アジ化ナトリウム、エチルパラベン、プロクリン等が挙げられる。
非界面活性剤型の両イオン性物質としては、一又は複数の実施形態において、分析精度の向上の観点から、pH緩衝作用を有さない物質であることが好ましく、泳動条件のpHにおいてpH緩衝作用を発揮しない又は実質的に発揮しない物質であることがより好ましい。非界面活性剤型の両イオン性物質としては、一又は複数の実施形態において、分析精度の向上の観点から、非界面活性剤型のベタインが好ましく、より好ましくは非界面活性剤型のスルホベタイン及びカルボキシベタインが挙げられ、さらに好ましくは四級アンモニウムカチオンとスルホ基(−SO3−)若しくはカルボキシル基(−COO−)とを同一分子内の隣り合わない位置に有する非界面活性剤型の物質、さらにより好ましくは非界面活性剤型スルホベタイン(NDSB)である。NDSBの限定されない一又は複数の実施形態として、NDSB−201(3−(1−Pyridinio)−1−propanesulfonate、C811NO3S)、NDSB−211(Dimethyl(2−hydroxyethyl)ammonium propane sulfonate、C717NO4S)、NDSB−221(3−(1−methylpiperidin−1−ium−1−yl)propane−1−sulfonate、C919NO3S)、NDSB−195(Dimethylethylammonium propane sulfonate、C717NO3S)、及びNDSB−256(Dimethylbenzylammonium propane sulfonate、C1219NO3S)等が挙げられる。
pH緩衝物質としては、限定されない一又は複数の実施形態において、泳動条件のpHにおいてpH緩衝作用を有するものであればよい。pH緩衝物質としては、限定されない一又は複数の実施形態において、BES(N,N−Bis(2−hydroxyethyl)−2−aminoethanesulfonic acid)、MOPS(3−Morpholinopropanesulfonic acid)、TES(N−Tris(hydroxymethyl)methyl−2−aminoethanesulfonic acid)、HEPES(2−[4−(2−Hydroxyethyl)−1−piperazinyl]ethanesulfonic acid)、TRICINE(N−[Tris(hydroxymethyl)methyl]glycine)、PIPES(Piperazine−1,4−bis(2−ethanesulfonic acid)),POPSO(Piperazine−1,4−bis(2−hydroxy−3−propanesulfonic acid), dihydrate)、炭酸、リン酸、ホウ酸、グリシン、アラニン、ロイシン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、タウリン、アスパラギン酸、アスパラギン、ヒドロキシプロリン、プロリン、トレオニン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、バリン、システイン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、オルニチン、トリプトファン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、N−メチルアミノエタノール、クレアチニン、イミダゾール、バルビタール、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。その他のpH緩衝物質としては、限定されない一又は複数の実施形態において、1,4−ジアミノブタン等のジアミン化合物が挙げられる。
本開示の試料分析方法は、一又は複数の実施形態において、キャピラリ電気泳動によって分離されたヘモグロビン画分を検出することを含む。検出は、一又は複数の実施形態において、キャピラリ電気泳動により分離されたヘモグロビン画分を光学的手法により検出することにより行うことができる。光学的手法による検出としては、例えば、吸光度の測定が挙げられる。吸光度の波長としては、一又は複数の実施形態において、415nmが挙げられる。
本開示の試料分析方法は、一又は複数の実施形態において、さらに、光学的手法により得られたエレクトロフェログラムを解析する工程を含んでいてもよい。連続的にサンプリングしながら分離(キャピラリ電気泳動)を行う場合、得られるエレクトロフェログラムからは試料中のヘモグロビンを個別に分析することは因難であるが、解析処理を行うことにより、試料中のヘモグロビンを個別に分離・分析できる。解析工程は、エレクトロフェログラムを演算処理することにより、移動度(分離時間)に応じて分離したエレクトロフェログラムを得ることを含んでいてもよく、処理後のエレクトロフェログラムにおける各ピークの高さ及び/又はピークの面積に基づき、試料中のヘモグロビンの成分比を求めることを含んでいてもよい。演算処理としては、例えば、微分処理、差分処理が挙げられる。
本開示は、一態様において、本開示の試料分析方法を用いて試料中のヘモグロビンを測定することを含む試料中のヘモグロビンの測定方法に関する。試料は上記のとおりである。本開示の測定方法は、限定されない一又は複数の実施形態において、異常ヘモグロビン症の指標となるHbS又はβサラセミアの指標となるHbA2の少なくとも一方を測定することを含む。したがって、本開示は、その他の態様として、本開示の試料分析方法を用いてHbS又はHbA2の少なくとも一方を測定することを含むヘモグロビンの測定方法に関する。本開示の測定方法は、βサラセミア及び異常ヘモグロビン症の診断を同時に行う観点から、本開示の試料分析方法を用いてHbS及びHbA2を分離して測定することが好ましい。
[キャピラリ電気泳動用溶液]
本開示は、一態様において、カチオン性ポリマー及び水を含有し、アルカリ性であるキャピラリ電気泳動用溶液に関する。本開示において「キャピラリ電気泳動用溶液」とは、一又は複数の実施形態において、キャピラリ電気泳動においてキャピラリ流路に充填される液をいう。本開示のキャピラリ電気泳動用溶液は、一又は複数の実施形態において、試料を調製するための溶液として使用してもよい。本開示のキャピラリ電気泳動用溶液は、一又は複数の実施形態において、本開示の試料分析方法に使用でき、それにより試料の分析精度の向上に寄与でき、好ましくは分析精度の向上と測定時間の短縮に寄与できる。
本開示のキャピラリ電気泳動用溶液としては、上述したカチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液が使用できる。
[試料分析用キット]
本開示は、一態様において、本開示のキャピラリ電気泳動用溶液を含む容器、及びキャピラリ電気泳動チップを含む試料分析用キットに関する。本開示の試料分析用キットにおいて、キャピラリ電気泳動チップは、試料保持槽、泳動液保持槽及びキャピラリ流路を有し、試料保持槽と前記泳動液保持槽とが前記キャピラリ流路により連通している電気泳動チップである。本開示の試料分析用キットは、一又は複数の実施形態において、本開示の試料分析方法に使用でき、それにより試料の分析精度の向上に寄与でき、好ましくは分析精度の向上と測定時間の短縮に寄与できる。キャピラリ電気泳動用溶液、キャピラリ流路及びキャピラリ泳動チップについての説明及び実施形態については上述したとおりである。
[試料分析システム]
本開示は、一態様において、キャピラリ電気泳動チップを用いて試料を分析するシステムであって、本開示のキャピラリ電気泳動用溶液を含む容器及びキャピラリ電気泳動チップを保持する保持部と、前記キャピラリ電気泳動チップに電圧を印加する電源部と、分析の実施項目に応じて前記キャピラリ電気泳動チップに印加する電圧の極性の切り換えを制御する制御部とを備える試料の分析システムに関する。
以下、本開示の試料分析方法について、限定されない一実施形態を説明する。
(実施の形態1)
図1に示すキャピラリ電気泳動チップを用い、試料原料が全血である場合を例にとり説明する。
図1は、本開示の試料分析方法に使用するキャピラリ電気泳動チップの構成の限定されない一又は複数の実施形態を示す概念図である。図1Aは、キャピラリ電気泳動チップの一実施形態を示す上面図であり、図1Bは、図1Aに示す電気泳動チップの断面図である。
図1A及びBに示すキャピラリ電気泳動チップは、キャピラリ流路10、試料保持槽11及び泳動液保持槽12を備え、試料保持槽11及び泳動液保持槽12は、キャピラリ流路10で連通している。キャピラリ流路10には検出部13が形成されている。キャピラリ流路10の長さ及び内径、並びにキャピラリ電気泳動チップの大きさは上述したとおりである。
試料保持槽11及び泳動液保持槽12の容積は、キャピラリ流路10の内径及び長さ等に応じて適宜決定されるが、一又は複数の実施形態において、それぞれ、1mm3〜1000mm3であり、好ましくは5mm3〜100mm3である。試料保持槽11及び泳動液保持槽12は、キャピラリ流路10の両端に電圧を印加するための電極をそれぞれ備えていてもよい。
測定を行う位置、すなわち、分離に要する長さ(試料保持槽11から検出部13までの距離、図1Aにおけるx)は、キャピラリ流路10の長さ等に適宜決定できる。キャピラリ流路10の長さ(図1Aにおけるx+y)が10mm〜150mmである場合、検出部13までの距離(x)は、5mm〜140mm、10mm〜100mm又は15mm〜50mmである。
キャピラリ流路10の材質は、ガラス、溶融シリカ、プラスチック等が挙げられる。プラスチックとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
キャピラリ流路10は、市販のキャピラリであってもよい。キャピラリ電気泳動チップは、市販のHbA1c用チップを用いてもよい。
つぎに、図1に示すキャピラリ電気泳動チップを用いた試料の分析方法の一例について説明する。
まず、キャピラリ電気泳動チップの泳動液保持槽12に本開示のキャピラリ電気泳動用溶液(カチオン性ポリマーを含有するアルカリ性水溶液)を泳動液として充填し、毛細管現象により泳動液をキャピラリ流路10に充填する。
つぎに、泳動液が充填されたキャピラリ電気泳動チップの試料保持槽11に試料を配置する。
c
試料保持槽11に配置する試料は、試料原料である全血を本開示のキャピラリ電気泳動用溶液により希釈することにより調製できる。
ついで、試料保持槽11に負電極、泳動液保持槽12に正電極を接触させ、キャピラリ流路10の両端、すなわち、試料保持槽11及び泳動液保持槽12との間に電圧を印加する。これにより、試料保持槽11からキャピラリ流路10に試料が導入され、ヘモグロビンを含む試料が試料保持槽11から泳動液保持槽12に向かって移動するとともに、ヘモグロビンの分離が行われる。キャピラリ流路10の両端に印加する電圧は、限定されない一又は複数の実施形態において、500V〜10000V、又は500V〜5000Vである。
そして、検出部13において測定を行う。測定は、例えば、波長415nmの吸光度の測定等の光学的手法により行うことができる。
上述のように分析を行うことによって、ヘモグロビンの測定を行うことができ、好ましくは異常ヘモグロビン症の診断の指標となるHbSや、βサラセミア診断の指標となるHbA2を分離して測定することができる。さらに、得られたエレクトロフェログラムを解析することにより、例えば、分離された各ヘモグロビンの比率(%)やその量を測定することができる。このため、本開示の試料分析方法は、異常ヘモグロビン症やβサラセミアの予防、診断及び治療等の用途に利用することができる。
本開示は、以下の一又は複数の実施形態に関しうる。
〔1〕 試料の分析方法であって、
キャピラリ電気泳動により前記試料中のヘモグロビンを分離することを含み、
前記ヘモグロビンの分離を、カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液中で行うことを含む、試料分析方法。
〔2〕 泳動液が充填されたキャピラリ流路に試料を導入すること、及び、
前記流路の全体又は一部に電圧を印加してキャピラリ電気泳動を行い前記試料中のヘモグロビンの分離を行うことを含む、試料の分析方法であって、
前記泳動液が、カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液である、試料分析方法。
〔3〕 カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液を用いて前記試料を調製することを含む、〔1〕又は〔2〕に記載の試料分析方法。
〔4〕 前記カチオン性ポリマーが、第1〜第3級アミノ基、イミノ基、第4級アンモニウム塩基又はヒドラジド基及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを有する、〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の試料分析方法。
〔5〕 前記アルカリ性溶液のpHが、7.5〜12.0である、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の試料分析方法。
〔6〕 前記アルカリ性溶液が、非界面活性剤型の両イオン性物質、pH緩衝物質及びこれらの組合せからなる群から選択される一つをさらに含む、〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の試料分析方法。
〔7〕 前記キャピラリ流路は、カチオン性物質又はアニオン性物質が固定化されている、〔2〕から〔6〕のいずれかに記載の試料分析方法。
〔8〕 前記キャピラリ流路内に負電極側から正電極側に向かう液流を生じさせることを含む、〔2〕から〔7〕のいずれかに記載の試料分析方法。
〔9〕 前記試料導入側に負電極を接触させて電圧を印加することを含む、〔2〕から〔8〕のいずれかに記載の試料分析方法。
〔10〕 カチオン性ポリマー及び水を含有し、アルカリ性である、ヘモグロビン分離分析用のためのキャピラリ電気泳動用溶液。
〔11〕 前記カチオン性ポリマーが、第1〜第3級アミノ基、イミノ基、第4級アンモニウム塩基又はヒドラジド基及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを有する、〔10〕記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
〔12〕 非界面活性剤型の両イオン性物質、pH緩衝物質及びこれらの組合せからなる群から選択される一つをさらに含む、〔10〕又は〔11〕に記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
〔13〕 〔10〕から〔12〕のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液を含む容器と、
試料保持槽、泳動液保持槽及びキャピラリ流路を有し、前記試料保持槽と前記泳動液保持槽とが前記キャピラリ流路により連通している電気泳動チップとを含む、試料分析用キット。
以下に、実施例及び比較例を用いて本開示をさらに説明する。但し、本開示は以下の実施例に限定して解釈されない。
(実施例1)
<電気泳動用溶液の調製>
電気泳動用溶液1は、純水に下記の各物質を添加して調製した。
[電気泳動用溶液1]
1.0%(W/V) ポリエチレンイミン(Wako製、重量平均分子量70000)
0.02%(W/V) アジ化ナトリウム
500mM NDSB−201(Non−detergent Sulfobetain、3−(1−Pyridinio)−1−propanesulfonate)
3−ヒドロキシプロパンスルホン酸(pH調整用)
pH9.0
<ヘモグロビンサンプル>
ヘモグロビンサンプルとして、以下の2種類を準備した。
・HbSを含まないβサラセミア患者由来の全血
・HbA,HbA2,HbS及びHbFを含むコントロール検体(バイオラッド社製)
<分離デバイスと測定機器>
分離デバイスとしては、図1に示す構造のキャピラリ流路10を有する樹脂製のチップ(流路幅40μm、流路高さ40μm、流路長:30mm、分離長20mm)を用いた。試料保持槽11及び泳動液保持槽12の容量は10μLとした。キャピラリ流路の内壁は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドで被覆した。
測定装置は、自社製の電気泳動装置を用いた。
<キャピラリ電気泳動>
キャピラリ電気泳動は、以下の手順で連続試料導入法にて行った。
1.チップの泳動液保持槽12に電気泳動用溶液1を9μL添加して、キャピラリ流路10内に電気泳動用溶液1を充填した。
2.電気泳動用溶液1で41倍に希釈したサンプル9μLを、チップの試料保持槽11に添加した。
3.試料保持槽11に負電極、泳動液保持槽12に正電極を接触させ、1000Vの電圧を印加して電気泳動を開始した。
4.検出部13にて415nmの吸光度を測定し、エレクトロフェログラムを得た。電気泳動は60秒間行った。
この結果を図2A及びBに示す。図2Aがβサラセミア患者由来の全血を用いた結果であり、図2Bがコントロール検体を用いた結果である。
図2A及びBに示すように、いずれのサンプルでも、ポリエチレンイミンを含むアルカリ性の電気泳動用溶液を用いることによって、20mmの有効キャピラリ長で、60秒以内に、HbA2、HbS、HbA及びHbFの分離が可能であった。
(実施例2)
泳動液保持槽12に添加する電気泳動用溶液1に替えて下記の電気泳動用溶液2を使用し、サンプルの希釈に用いた電気泳動用溶液1に替えて下記の電気泳動用溶液3を使用し、測定時間を75秒とした以外は、実施例1と同様に測定を行った。
[電気泳動用溶液2]
1.0%(W/V) ポリアリルアミン(ニットーボーメディカル製、重量平均分子量25000)
0.02%(W/V) アジ化ナトリウム
500mM NDSB−201
3−ヒドロキシプロパンスルホン酸(pH調整用)
pH9.8
[電気泳動用溶液3]
1.0%(W/V) ポリアリルアミン(ニットーボーメディカル製、重量平均分子量25000)
0.02%(W/V) アジ化ナトリウム
3−ヒドロキシプロパンスルホン酸(pH調整用)
pH9.8
この結果を図3A及びBに示す。図3Aがβサラセミア患者由来の全血を用いた結果であり、図3Bがコントロール検体を用いた結果である。
図3A及びBに示すように、いずれのサンプルでも、ポリアリルアミンを含むアルカリ性の電気泳動用溶液を用いることによって、20mmの有効キャピラリ長で、75秒以内に、HbA2、HbS、HbA、HbFの分離が可能であった。
(実施例3)
電気泳動用溶液1に替えて下記の電気泳動用溶液4を使用し、印加する電圧を1500Vとし、測定時間を45秒とした以外は、実施例1と同様に測定を行った。ヘモグロビンサンプルとしては、実施例1のコントロール検体を使用した。
[電気泳動用溶液4]
100mM アルギニン
1.0%(W/V) ポリL−リジン塩酸塩(ペプチド研究所製、重量平均分子量8000以上)
0.02%(W/V)アジ化ナトリウム
3−ヒドロキシプロパンスルホン酸(pH調整用)
pH9.8
この結果を図4に示す。図4に示すように、ポリL−リジンを含むアルカリ性の電気泳動用溶液を用いることによって、20mmの有効キャピラリ長で、45秒以内に、HbA2、HbS、HbA及びHbFの分離が可能であった。
(実施例4)
電気泳動用溶液4に替えて下記の電気泳動用溶液5を使用し、測定時間を80秒とした以外は、実施例3と同様に測定を行った。
[電気泳動用溶液5]
100mM アルギニン
0.25%(W/V) ポリエチレンイミン(Wako製、重量平均分子量1800)
0.75%(W/V) ポリアリルアミン(ニットーボーメディカル製、重量平均分子量150000)
3−ヒドロキシプロパンスルホン酸(pH調整用)
pH9.8
この結果を図5に示す。図5に示すように、ポリエチレンイミン及びポリアリルアミンを含むアルカリ性の電気泳動用溶液を用いることによって、20mmの有効キャピラリ長で、70秒以内に、HbA2、HbS、HbA及びHbFの分離が可能であった。
(比較例1)
電気泳動用溶液1に替えて下記の電気泳動用溶液6を使用し、印加する電圧を1500Vとし、測定時間を70秒とした以外は、実施例1と同様に測定を行った。ヘモグロビンサンプルとしては、実施例1のコントロール検体を使用した。
[電気泳動用溶液6]
20mM MES
1.0%(W/V) ポリエチレンイミン(Wako製、重量平均分子量70000)
0.02%(W/V) アジ化ナトリウム
3−ヒドロキシプロパンスルホン酸(pH調整用)
pH6.0
この結果を図6に示す。図6に示すように、カチオン性ポリマーであるポリエチレンイミンを含むものの、アルカリ性ではない電気泳動用溶液(pH6.0)では、HbA2、HbS、HbA及びHbFのすべてについて分離が確認できなかった。
(比較例2)
電気泳動用溶液1に替えて下記の電気泳動用溶液7を使用し、試料保持槽11に正電極、泳動液保持槽12に負電極を接触させた以外は、比較例1と同様に測定を行った。
[電気泳動用溶液7]
100mM アルギニン
1.0%(W/V) コンドロイチン硫酸Cナトリウム(Wako製)
0.02%(W/V) アジ化ナトリウム
3−ヒドロキシプロパンスルホン酸(pH調整用)
pH9.8
この結果を図7に示す。図7に示すように、カチオン性ポリマーに替えてアニオン性ポリマーを含む電気泳動用溶液では、HbA2、HbS、HbA及びHbFのすべてについて分離が確認できなかった。

Claims (13)

  1. 試料の分析方法であって、
    キャピラリ電気泳動により前記試料中のヘモグロビンを分離することを含み、
    前記ヘモグロビンの分離を、カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液中で行うことを含む、試料分析方法。
  2. 泳動液が充填されたキャピラリ流路に試料を導入すること、及び、
    前記流路の全体又は一部に電圧を印加してキャピラリ電気泳動を行い前記試料中のヘモグロビンの分離を行うことを含む、試料の分析方法であって、
    前記泳動液が、カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液である、試料分析方法。
  3. カチオン性ポリマーを含むアルカリ性溶液を用いて前記試料を調製することを含む、請求項1又は2に記載の試料分析方法。
  4. 前記カチオン性ポリマーが、第1〜第3級アミノ基、イミノ基、第4級アンモニウム塩基、ヒドラジド基及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを有する、請求項1から3のいずれかに記載の試料分析方法。
  5. 前記アルカリ性溶液のpHが、7.5〜12.0である、請求項1から4のいずれかに記載の試料分析方法。
  6. 前記アルカリ性溶液が、非界面活性剤型の両イオン性物質、pH緩衝物質及びこれらの組合せからなる群から選択される一つをさらに含む、請求項1から5のいずれかに記載の試料分析方法。
  7. 前記キャピラリ流路は、カチオン性物質又はアニオン性物質が固定化されている、請求項2から6のいずれかに記載の試料分析方法。
  8. 前記キャピラリ流路内に負電極側から正電極側に向かう液流を生じさせることを含む、請求項2から7のいずれかに記載の試料分析方法。
  9. 前記試料導入側に負電極を接触させて電圧を印加することを含む、請求項2から8のいずれかに記載の試料分析方法。
  10. カチオン性ポリマー及び水を含有し、アルカリ性である、ヘモグロビン分離分析用のためのキャピラリ電気泳動用溶液。
  11. 前記カチオン性ポリマーが、第1〜第3級アミノ基、イミノ基、第4級アンモニウム塩基、ヒドラジド基及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つを有する、請求項10記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
  12. 非界面活性剤型の両イオン性物質、pH緩衝物質及びこれらの組合せからなる群から選択される一つをさらに含む、請求項10又は11に記載のキャピラリ電気泳動用溶液。
  13. 請求項10から12のいずれかに記載のキャピラリ電気泳動用溶液を含む容器と、
    試料保持槽、泳動液保持槽及びキャピラリ流路を有し、前記試料保持槽と前記泳動液保持槽とが前記キャピラリ流路により連通している電気泳動チップとを含む、試料分析用キット。
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