JP6051781B2 - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents
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Description
通常、加熱ローラーは、熱源により加熱され、温度センサーにより加熱ローラーのほぼ中央部の表面温度を検出し、この温度が所定の定着温度になるように制御されている。
加熱ローラーのうち、記録シートが通紙される部分(通紙領域)は、記録シートに多く熱を奪われ、通紙されない部分(非通紙領域)は、熱がほとんど奪われない。そのため、通紙領域の温度を定着温度に維持するため加熱ローラーの回転軸方向(以下、「長手方向」という。)全域を加熱していくと、非通紙領域の温度が異常に昇温して、加熱ローラーやその周辺部品の耐久性を劣化させる結果となる。また、小サイズの記録シートを連続通紙した後、大サイズの記録シートを通紙すると、小サイズの記録シートの非通紙領域における異常昇温の箇所に接触した大サイズの記録シートのトナーが、高温になり過ぎて加熱ローラー表面に付着する現象(ホットオフセット)が生じ、画像不良の原因となる。
消磁コイルを動作させるタイミングを決定すべく、各通紙幅ごとに非通紙領域のピーク位置の温度(以下、「ピーク温度」という。)を複数の温度センサーで検出することが考えられるが、そうするとコストアップが避けられない。
そのため、最悪の場合には、非通紙領域におけるピーク温度が加熱ローラーを始め、定着装置を構成する各部材の耐熱温度を超えるおそれもあり、定着装置の耐久性の劣化や画像不良を惹起する。
本願発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、加熱回転体の温度を検出するための温度センサーの数を増やすことなく、的確に非通紙領域の異常昇温を抑制することが可能な定着装置および当該定着装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明の別の一態様に係る定着装置は、加熱回転体の周面に、押圧部材を圧接して定着ニップを形成し、当該定着ニップに未定着像を担持した記録シートを通紙して定着する定着装置であって、前記加熱回転体の回転軸方向における加熱強度の分布を複数のパターンに切り替えて加熱可能な加熱手段と、前記加熱回転体の通紙領域における表面温度を検出する第1の温度検出手段と、前記加熱回転体の非通紙領域における表面温度を検出する第2の温度検出手段と、記録シートの前記回転軸方向におけるサイズ情報を取得するサイズ情報取得手段と、装置の蓄熱状態を指標する蓄熱情報を取得する蓄熱情報取得手段と、前記加熱手段に供給する電力および加熱強度の分布のパターンの切り替えを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、第1の温度検出手段の検出結果に基づき、通紙領域が目標定着温度に維持されるように制御する第1の制御を行うと共に、第2の温度検出手段の検出結果と記録シートのサイズ情報と装置の蓄熱情報に基づき、非通紙領域におけるピーク温度が所定温度よりも高くならないように前記加熱手段の加熱強度分布のパターンを切り替える第2の制御を実行し、前記蓄熱情報取得手段により取得される蓄熱情報として、ウォームアップ開始時に第1の温度検出手段により検出された温度、第1の温度検出手段により検出された温度の上昇率およびウォームアップ開始からの経過時間が含まれることを特徴とする。
本発明のさらに別の一態様に係る定着装置は、加熱回転体の周面に、押圧部材を圧接して定着ニップを形成し、当該定着ニップに未定着像を担持した記録シートを通紙して定着する定着装置であって、前記加熱回転体の回転軸方向における加熱強度の分布を複数のパターンに切り替えて加熱可能な加熱手段と、前記加熱回転体の通紙領域における表面温度を検出する第1の温度検出手段と、前記加熱回転体の非通紙領域における表面温度を検出する第2の温度検出手段と、記録シートの前記回転軸方向におけるサイズ情報を取得するサイズ情報取得手段と、装置の蓄熱状態を指標する蓄熱情報を取得する蓄熱情報取得手段と、前記加熱手段に供給する電力および加熱強度の分布のパターンの切り替えを制御する制御手段と、定着ニップを通過する記録シートの前記回転軸方向における正規の通紙位置からの位置ずれ量を取得する位置ずれ情報取得手段とを備え、前記制御手段は、第1の温度検出手段の検出結果に基づき、通紙領域が目標定着温度に維持されるように制御する第1の制御を行うと共に、第2の温度検出手段の検出結果と記録シートのサイズ情報と装置の蓄熱情報と前記位置ずれ情報とに基づき、非通紙領域におけるピーク温度が所定温度よりも高くならないように前記加熱手段の加熱強度分布のパターンを切り替える第2の制御を実行することを特徴とする。
さらに、定着ニップを通過する記録シートの前記回転軸方向における正規の通紙位置からの位置ずれ量を取得する位置ずれ情報取得手段を備え、前記制御手段は、前記第2の温度検出手段の検出結果と記録シートのサイズ情報と装置の蓄熱情報に加えて、前記位置ずれ情報に基づき、非通紙領域におけるピーク温度が所定温度よりも高くならないように前記加熱手段の加熱強度の分布のパターンを切り替える第2の制御を実行することを特徴とすることとしてもよい。
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラープリンター(以下、単に「プリンター」という。)に適用した場合を例にして説明する。
(1)プリンターの構成
図1は、本実施の形態に係るプリンター1の構成を示す図である。
プリンター1は、ネットワーク(例えばLAN)に接続され、外部の端末装置(不図示)からプリントジョブを受け付けると、そのプリント条件に従ってイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナー像を形成し、これらを記録シートへ多重転写してフルカラーの画像を形成することにより、記録シートへの印刷処理を実行する。以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成要素の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
作像部3Yは、感光体ドラム31Yと、その周囲に配設された帯電器32Y、現像器33Y、一次転写ローラー34Y、および感光体ドラム31Yを清掃するためのクリーナー35Yなどを有しており、感光体ドラム31Y上にY色のトナー像を作像するものである。
中間転写ベルト11は、無端状のベルトであり、駆動ローラー12と従動ローラー13に張架されて矢印A方向に周回駆動される。
上記各感光体ドラム上に形成された形成されたトナー像は、作像部3Y、3M、3C、3Kの各一次転写ローラー(図1では、作像部3Yに対応する一次転写ローラーのみ符号34Yを付し、他の一次転写ローラーについては、符号を省略している。)により、中間転写ベルト11上の同じ位置で重ね合わされるように、中間転写ベルト11上にタイミングをずらして順次一次転写されてカラーのトナー像が形成される。
タイミングローラー44は、中間転写ベルト11上の同じ位置で重ね合わされるように中間転写ベルト11上に一次転写されたトナー像が二次転写位置46に搬送されるタイミングに合わせて、記録シートを二次転写位置46に搬送する。そして、二次転写位置46において、二次転写ローラー45により中間転写ベルト11上のカラートナー像が一括して記録シート上に二次転写される。
なお、モノクロ画像のプリントの際には、4つの作像部のうち作像部3Kのみ動作させる。
本実施の形態において、プリンター1のシステム速度は、たとえば310[mm/秒]であって、生産性は、A4サイズ横通しで70[枚/分]である。
(2)定着器の構成
図2は、定着器5の要部とその制御系統を示す図であり、定着器5は、長手方向における消磁コイル50b、50cの重なった位置における断面で示されている。
加熱ローラー51は、円柱状の軸心511を有する芯金512の周面に弾性体層513を形成してなり、弾性体層513のさらに外周面には、電磁誘導発熱層514、離型層515が積層され、全体として外径が35mmとなっている。
加圧ローラー52は、加熱ローラー51と平行に配され、芯金521の周面に、弾性体層522、離型層523がこの順で積層されており、全体の外径が30mm程度のソフトローラーとして構成される。
なお、加熱ローラー51および加圧ローラー52の各軸部の両端は、それぞれの不図示の支持枠にボールベアリングなどの軸受を介して回転自在に軸支されており、加圧ローラー52を弾性部材を有する公知の加圧機構により加熱ローラー51側に付勢することにより、加熱ローラー51と加圧ローラー52間に定着ニップ部Nが形成されている。
磁束発生部53は、電磁誘導コイル50a、消磁コイル50b、50cと、これらを保持するコイルボビン531などからなり、加熱ローラー51の軸方向に沿って配置される。
電磁誘導コイル50a、消磁コイル50b、50cは、例えば、それぞれ表面に融着層と絶縁層を有する銅線が、複数回巻かれて構成される。
電磁誘導コイル531は、後述のIH電源6から高周波電力の供給を受けて、加熱ローラー51の電磁誘導発熱層513を発熱させるための交番磁束を発生させる。
加熱ローラー51の表面に導かれた磁束は、加熱ローラー51の電磁誘導発熱層513の磁束発生部53に対向する部分を主として通過し、この部分に渦電流を発生させて電磁誘導発熱層513を誘導加熱する。これにより、加熱ローラー51の長手方向全体が加熱される。
同図に示すように電磁誘導コイル50aは、加熱ローラー51の長手方向におけるほぼ全域を覆うように配され、その両端部に重なるようにして大小の一対の消磁コイル50b、消磁コイル50cが配設されている。
また、中央温度センサーS1は、定着ローラー51の長手方向のほぼ中央部に配され、端部温度センサーS2は、定着ローラー51の長手方向における一方の端部に配される。共に接触型の接触型サーミスターからなり、不図示の支持部材により定着器5のハウジングに保持されて各位置で軽く加熱ローラー51の周面に接触して、加熱ローラー51の表面温度を検出するようになっている。
図2に戻り、中央温度センサーS1、端部温度センサーS2の検出値は、制御部60に送られ、制御部60は、それらの検出値に基づき、IH電源6を制御して電磁誘導コイル50aの出力を変化させて定着ローラー51の温度を所望の温度になるように制御すると共に、リレースイッチからなる消磁コイル駆動部54を介して、消磁コイル50b、50cをON/OFF制御して定着ローラー51の非通紙領域に異常昇温が発生しないようにする。詳しくは後述する。
図4は、上記制御部60の具体的な構成と、制御部60による制御対象となる主構成要素との関係を示すブロック図である。
図4に示すように、制御部60は、CPU(Central Processing Unit)601、ROM(Read Only Memory)602、RAM(Random Access Memory)603、通信インターフェース(I/F)部604、画像データ記憶部605、消磁コイル切替テーブル記憶部606、補正テーブル記憶部607、通電タイマー608などを備えている。
ROM602は、CPU601により実行される各種プログラムを格納するストレージである。RAM603は、CPU601がプログラムを実行するときのワークエリアである。通信I/F部604は、LANカード、LANボードといったLANに接続するためのインターフェースである。画像データ記憶部605は、通信I/F部604を介して入力された印刷用の画像データを記憶する。
CPU601は、ROM602から必要なプログラムを読み出して、画像プロセス部3、給紙部4などを統一的に制御(プリント制御)し、円滑なプリント動作を実行させると共に、定着器5における加熱ローラー51の表面温度が目標の温度に維持されるように制御し、あるいは非通紙領域におけるピーク温度が異常昇温しないように消磁コイル50b、50cのON/OFF制御を実行する。
(4)定着温度制御の内容
まず、制御部60により実行される加熱ローラー51の定着温度制御の概要について説明する。
白抜きの四角(□)のプロットは、通紙前の温度分布を示し、黒塗りの四角(■)のプロットは、その後、通紙領域の温度を定着温度(180℃)に維持しつつ、A4Tサイズ(A4サイズをその縦方向に搬送したときのサイズ)を連続通紙して、端部温度センサーS2の検出温度が200℃になったときの温度分布を示す。
同図に示すように、通電開始30分経過した場合、通紙前では、加熱ローラー51の温度分布が安定してほぼ平坦となる。両端部がやや温度が下がっているのは、端部から放熱が生じやすいためである。
ところが、両端部の非通紙領域においては、記録シートにより熱が奪われないため徐々に温度が高くなるが、両縁部では周辺部位への放熱により、また、通紙領域に近い部分では、より低い温度の低い通紙領域に熱が流れるため、非通紙領域における温度分布の変化は、図5(a)の黒塗り四角(■)のプロットで示すようにほぼ左右対称な山なり形状となる。
このピーク温度の位置は、非通紙領域の長手方向の長さ、すなわち、通紙する記録シートの通紙幅により異なり、通紙幅が小さいほど、中央寄りに移動し、通紙幅が大きくなるほど外側に移動する。
図5(b)は、そのことを示す実験データであり、朝一番にプリンター1に電源を投入してウォームアップ完了直後の加熱ローラー51の長手方向における温度分布を示すグラフである。
同グラフを見てまず理解できるのは、通紙前の温度分布において、両端部における温度の落ち込みが大きいということである。これは、まだ、定着器5における加熱ローラー51周囲の部材が温まっておらず、特に加熱ローラー51の両端からの放熱量が多いことに起因する。
つまり、同じ通紙幅の記録シートを通紙しても、そのときの定着器5の温まりの程度、すなわち蓄熱状態によっては、加熱ローラー51の非通紙領域における温度分布が大きく異なるため、従来のシートの通紙サイズや端部温度センサーS2のみによっては、十分な制御が行えないということが分かる。
以下、本実施の形態に係る定着器における定着温度制御の具体的な内容について、図6のフローチャートに基づき説明する。
まず、消磁コイル50b、50cを全てOFF状態にして、磁束発生部53の電磁誘導コイル50aの最大出力にてウォームアップを開始する(ステップS11)。このウォームアップ開始時における中央温度センサーS1の検出温度T1を取得し(ステップS12)、同時に通電タイマー608(図4)による計時を開始する。
ウォームアップが完了すれば(ステップS17;YES)、定着温度よりやや低い温度(本実施の形態のでは「160℃」)で加熱ローラー51の温度を維持するスタンバイ制御を実行する(ステップS18)。
なお、「プリント制御」は、プリントジョブから画像データを読み出して、画像プロセス部3、給紙部4を動作させて記録シート上にトナー像を形成するための制御をいい、本来メインフローチャートで実行されるべきものであるが、制御部60で実行される制御の時間的な流れが理解しやすいように敢えてこのフローチャートに挿入している。
そして、消磁コイル切替テーブル記憶部606から、消磁コイル50b、50cをON/OFF制御するために用意された消磁コイル切替基本テーブルを読み出す。
各テーブルは、プリンター1を、35℃未満の環境温度の下に長時間放置した後に、通電してウォームアップを開始し、当該ウォームアップ開始から1200秒(20分)経過して、定着器5の各部品が十分定着温度付近に温まった後に、通紙幅の異なる記録シートをそれぞれ連続通紙する実験を繰り返して得られたものである。
図9(a)は、消磁コイルをONに切替える際に参照される基本テーブル(消磁コイルON切替テーブル)であり、記載されている温度は、連続通紙により非通紙領域の温度が上昇してピーク温度が、耐熱温度(例えば、230℃)に到達したときの端部温度センサーS2の実測値に基づき決定された温度である。この閾値温度は、端部温度センサーS2の実測値より安全率を見越してやや低めに設定されている。
反対に記録シートの通紙幅Wが、最下欄の190mm未満の場合には、その分非通紙領域が大きく、消磁コイル50b、50cともに常時ONにしておいても、通紙領域における温度制御には影響がない。
図10は、定着器5が十分温まった状態で、A4Tサイズを連続通紙したとき加熱ローラー51の長手方向の温度分布を示す図である。端部温度センサーS2の検出温度が200℃のとき、ピーク温度が220℃を超えていないので、このとき消磁コイル50b、50cをONにすることにより、ピーク温度がそれ以上に加熱されるのが抑制される。
これは、消磁コイルをONさせるとその部分における電磁誘導コイル50a磁束密度が小さくなって、対応する部分の温度が低下してくるので(図10の破線のグラフ参照)、所定温度のときにON状態の消磁コイルをOFFにするための温度を設定している。消磁コイル50b、50cをONのまま放置すると、非通紙領域の温度がさらに低下し、これにより通紙領域の熱が奪われて通紙領域の端部で温度が低下し定着不良が生じるおそれがあるからである。この観点から、各通紙幅に対して消磁コイル50b、50cをOFFにするための適当な閾値温度が決定されている。
図6に戻り、次のステップS23において、上記基本テーブルの閾値温度の補正量を取得する処理を実行する。
しかしながら、図5(b)によって説明したように、ウォームアップが完了して加熱ローラー51が定着温度に達しても、定着器5の蓄熱が十分でない状態で連続通紙を実行すると、非通紙領域の温度分布における温度ピークがより急峻になっていく傾向にあり、端部温度センサーS2の温度が、図9(a)のテーブルに示す閾値温度よりも小さな値で、ピーク温度が耐熱温度を超えるおそれがある。
図7は、図6のステップS23における閾値温度補正量取得処理のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
そして、検出温度T1および温度差ΔTに基づき、上記蓄熱時間を補正し(ステップS102)、この補正された蓄熱時間に基づいて、図9(a)(b)の消磁コイル切替基本ンテーブルにおける各閾値温度の補正量を求めるようにしている(ステップS103)。
連続通紙が、もし、ウォームアップ開始から1200秒以降に実行されたのであるならば、定着器5は十分蓄熱されているので、その前提条件は図9(a)(b)と同じとなり、閾値温度補正量は「0」となる。そのため、図9(a)(b)のテーブルの値がそのまま使用できる。
例えば、現在通紙している記録シートサイズが、A4Tサイズであるならば、図9(a)の基本テーブルによれば、基本となる閾値温度は、「195℃」であるが、実際の消磁コイル50bをONにするタイミングは、195℃から10.5℃だけ減じた184.5℃のときに実行される。
ただし、図11(a)は、あくまでも電源OFF後、長時間放置された状態の装置に電源投入してウォームアップ開始したことを前提としているので、それ以外の条件下でウォームアップが開始された場合には調整を要する。そこで、本実施の形態では、さらに、ウォームアップ開始時における定着器5の温まり具合(蓄熱状態)の程度を推定して、上記閾値温度補正量をより正確に求めるようにしている。
すなわち、検出温度T1には加熱ローラー51の通紙領域における蓄熱状態が反映されている。そして、加圧ローラー52、磁束発生部53、ハウジングなど加熱ローラー51の周辺の部材も加熱ローラー51の通紙領域と同程度に温まっていれば、加熱ローラー51加熱時において加熱ローラー51から外部に逃げる放熱量が少ないので、通紙領域の温度上昇率は大きくなるし、反対に、周辺部材の温まり状態が悪ければ、放熱量が多いため、通紙領域の温度上昇率が小さくなる。
同テーブルにおいて左上の欄ほど、ウォームアップ開始時おける定着器5の蓄熱状態が悪く、右下にいくほど蓄熱状態がよくなる。
反対に、例えば初期温度T1が120≦T1<150℃で、温度差ΔTが、25≦ΔT<30であるような場合には、前回の連続通紙後IH電源6をOFFにしてからあまり時間が経過しておらず、ウォームアップ開始時にそれだけ定着器5が温まっていたことになるので、その温まりの程度を図11(a)の蓄熱時間に換算した時間(150秒)を同テーブルから補正量として読み取って、これを通電タイマーによる計時時間にプラスして蓄熱時間を補正する(ステップS102)。
具体的に、通電タイマーで計測されたウォームアップ開始からの経過時間が600秒のときに通紙を開始したのであれば、上記の例における補正量150秒を加えた750秒を、図11(a)の実験条件における実質的な蓄熱時間として、同グラフから、閾値温度の補正量(約−7.5℃)を取得し、この値をRAM603に保持する。
図8は、この消磁コイルON/OFF制御のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
まず、全ての消磁コイルがOFFの状態であるか否かを確認し(ステップS201)、そうであれば、消磁コイルON切替テーブル(図9(a))を参照して(ステップS202)、現在通紙している記録シートの通紙幅における各消磁コイル50b、50cの閾値温度の欄を読み取る。
そして、閾値温度の値を図7のステップS103で求めた閾値温度補正量で補正する(ステップS203)。上記の例では、消磁コイル(大)の閾値温度は、195℃−7.5℃=187.5℃と補正される。
そして、ステップS204で、端部温度センサーS2による検出温度が、上記補正後の閾値温度以上になったか否かを判定する。但し、上記例では、但し消磁コイル50cについては、「常時ON」なので、即座にONにすべきものと判定する。
ステップS204においてYESと判定されれば、ONにすべき対象となる消磁コイルをONに切り替えて(ステップS205)、図6のフローチャートにリターンする。
(1)本実施の形態2では、図9(a)(b)に示す、基本となる消磁コイルON切替テーブルもしくは消磁コイルOFF切替テーブルにおける各閾値温度の補正を実施の形態1における定着器5の蓄熱状態に加えて、定着器5を記録シートが通過すべき幅方向の正規の位置(例えば、中央通紙の場合、記録シートの幅方向の中央が、設計上のセンター位置に重なって通紙される位置)に対する幅方向のずれ量(以下、「通紙位置シフト量」という。)によっても補正している点が異なる。
このシフト量検出センサーS3は、例えば、適当な画素数のCCDラインセンサーを、その長手方向が、記録シートの幅方向と平行であって、かつ、全てのサイズの記録シートの幅方向の一方の端部が検出可能な位置に配し、これにより通過する記録シートの端部を撮像する構成とすることができる。
破線(イ)は、記録シートが正規の位置から端部温度センサーS2のある位置と反対方向(正方向)に8mmシフトした位置を通過するときの温度分布を示しており、縦の一点鎖線(エ)が、このときの記録シートの端の位置を示す。
なお、本例では、レターサイズ(LTR)の記録シートを横通しで通紙して実験した(以下、図12の説明において同じ。)。
同図に示すように、図12(a)では、ピーク温度がほぼ同じであるにもかかわらず、記録シートのシフトに伴ってそのピーク位置も右方向にシフトするため、端部温度センサーS2の検出位置の温度が約25℃も異なる。
このようにシフトした場合には、端部温度センサーS2の検出温度が同じ200℃でも、シフトした場合のピーク温度は、230℃となり正規通紙の場合のピーク温度210℃より20℃も高くなっている。
位置シフト量が正の場合が、非通紙領域が大きくなる方向(図12(a)の右方向へのシフトを示し、位置シフト量が負の場合は、その反対方向へのシフトを示している。
同グラフに示すように通紙位置が右方向にシフトするとピーク温度が高くなり、反対に通紙位置が左方向にシフトすると実際のピーク温度が低くなる。
両図に示すようにピーク温度の変化はほぼ線形比例に近いが、通紙位置が端部温度センサーS2側にシフトしたときのピーク温度の変化量は、通紙位置が端部温度センサーS2と反対側にシフトしたときのピーク温度の変化量より小さくなっているのが分かる。これは非通紙領域が狭くなるほど、その中での温度分布のピークの移動できる範囲が限られてくるからであると考えられる。
図14は、図11に相当する蓄熱時間と閾値温度の補正量との関係を、シフト量が、−8mm、0mm、8mmの場合について、求めたときのグラフである。
もっとも、図13(b)で述べたように、通紙位置シフト量とピーク温度のズレ量は、ほぼ線形比例の関係にあるため、すべての通紙位置シフト量について図14の関係を求めなくても代表的な通紙位置シフト量についてだけ実験により求め、残りの通紙位置シフト量については、線形補間により閾値温度補正量を求めるようにしても構わない。
(2)定着温度制御
以下、実施の形態2における定着温度制御の内容について、フローチャートに基づき説明する。
ステップS20のプリント制御に際し、記録シートのサイズと蓄熱状態量の取得(ステップS21、S22)に合わせて、上記シフト量センサーS3により通紙位置シフト量を取得する(ステップS31)。
図16は、この閾値温度補正処理のサブルーチンの内容を示すものであって、図7とステップ番号の同じものは同じ内容を示す。
そして、ウォームアップ開始時における中央温度センサーS1の検出温度T1(図6のステップS12参照)、およびウォームアップ開始直後の温度上昇時における温度差ΔT(同図ステップS16参照)によって定着器5の温まり具合の程度(蓄熱状態)を推定し、図11(b)の補正テーブルに基づき上記蓄熱時間を補正する(ステップS102)。
ステップS121で選択したグラフに基づき、閾値温度補正量を取得する(ステップS103)。
その後、図15のフローチャートにリターンして、上記閾値温度補正量に基づきステップS24の消磁コイルのON/OFF制御を実行する。このステップS24の処理については実施の形態1と全く同じなので説明を省略する。
(ア)のグラフは、消磁コイルON切替テーブル(図9(a)参照)の閾値温度を一切補正がない場合(従来技術)において、朝一番にウォームアップ開始直後に連続通紙したときピーク温度を示しており、特に通紙位置シフト量が8mmの際には、ピーク温度が250℃を大きく超えている。
(イ)のグラフは、同じく従来技術において、通電後30分経過した後に連続通紙したときのピーク温度を示している。通紙位置シフト量が8mmの際には、やはりピーク温度が耐熱温度の230℃を超えている。
(ウ)のグラフは、朝一番にウォームアップ開始直後に連続通紙したとき、本実施の形態2(消磁コイルON切替テーブルの閾値温度を、装置の蓄熱状態および通紙位置シフト量によって補正)による消磁コイルのON制御した場合におけるピーク温度を示す。図に示すようにピーク温度が220℃から230℃の範囲内に収まっている。
(エ)のグラフは、通電後30分経過した後に連続通紙したとき、同じく実施の形態2において、消磁コイルのON制御した場合におけるピーク温度を示す。(ウ)の場合よりもさらにピーク温度が抑制されているのが分かる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(1)上記実施の形態では、定着器5として、消磁コイル50b、50cの2種類のサイズの消磁コイルを設けたが、使用する記録シートのサイズが少なければ、1種類のサイズでも構わないし、反対にさらに他種類のサイズについて、細かく非通紙領域の異常温度を制御するため、必要に応じ3種類以上のサイズの消磁コイルを設けても構わない。それらの消磁コイルの種類に応じて、消磁コイル切替基本テーブル(図9(a)(b)))が修正される。
(2)上記実施の形態における各補正用のテーブルは、各記録シートのサイズに共通であったが、各記録シートサイズごとに補正用テーブルを設けておけば、さらにきめ細かい定着温度制御が可能となる。
(3)上記実施の形態では、消磁コイル50b、50cのみで、非通紙領域が異常昇温するのを抑制するようにした。しかし、例えば、A5Tサイズのような通紙幅が極端に小さな記録シートの通紙をする場合には、その非通紙領域を上記消磁コイル50b、50cではとてもカバーしきれない。
(4)なお、上記実施の形態における各テーブルにおける数値などは、あくまでも本発明を説明するための実施例の一例であって、具体的には、装置の仕様、定着器の構成部品、磁束発生部の加熱能力などにより、予め実験により最適な値が決定されるべきものである。
(5)上記実施の形態では、加熱ローラー51の表面温度を検知する中央温度センサーS1、端部温度センサーS2として接触型サーミスターを使用したが、温度センサーの種類は、これだけに限らず、他の種類の温度センサー(例えば、非接触型サーミスター)も使用可能である。
(6)上記実施の形態では、加熱回転体として、電磁誘導発熱層513を有する加熱ローラー51を用いた構成を示したが、これに限定するものではない。例えば、電磁誘導発熱層を有する定着ベルトの内側に、別体のローラーを遊挿した構成とすることもできる。
加熱回転体の表面を押圧して定着ニップを形成するため、上記実施の形態では加圧ローラーを用いたが、長手方向に延びる板状の押圧部材であっても構わない。ただし、この場合には、押圧部材の加熱回転体と接触する面に耐摩耗、低摩擦化のための表面処理を施すのが望ましい。
(7)また、上記実施の形態では、定着器5における加熱方式として電磁誘導方式を用いて、消磁コイルにより非通紙領域における加熱能力を低下させて、長手方向の加熱強度の分布のパターンを変更できるようにしたが、他の加熱方式であっても通紙領域における加熱能力に対し非通紙領域における加熱能力を低下させる機能を有しさえすれば構わない。
(8)上記実施の形態では、画像形成装置として、タンデム型カラープリンターを用いて説明したが、本発明の適用範囲は、これに限らず、定着器を有する複写機、ファクシミリ装置、プリンターなどに適用することができる。
3 画像プロセス部
4 給紙部
5 定着器
6 IH電源
50a 電磁誘導コイル
50a、50b 消磁コイル
51 加熱ローラー
52 加圧ローラー
53 磁束発生部
60 制御部
606 消磁コイル切替テーブル記憶部
607 補正テーブル記憶部
608 通電タイマー
S1 中央温度センサー
S2 端部温度センサー
S3 シフト量検出センサー
Claims (8)
- 加熱回転体の周面に、押圧部材を圧接して定着ニップを形成し、当該定着ニップに未定着像を担持した記録シートを通紙して定着する定着装置であって、
前記加熱回転体の回転軸方向における加熱強度の分布を複数のパターンに切り替えて加熱可能な加熱手段と、
前記加熱回転体の通紙領域における表面温度を検出する第1の温度検出手段と、
前記加熱回転体の非通紙領域における表面温度を検出する第2の温度検出手段と、
記録シートの前記回転軸方向におけるサイズ情報を取得するサイズ情報取得手段と、
装置の蓄熱状態を指標する蓄熱情報を取得する蓄熱情報取得手段と、
前記加熱手段に供給する電力および加熱強度の分布のパターンの切り替えを制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
第1の温度検出手段の検出結果に基づき、通紙領域が目標定着温度に維持されるように制御する第1の制御を行うと共に、
第2の温度検出手段の検出結果と記録シートのサイズ情報と装置の蓄熱情報に基づき、非通紙領域におけるピーク温度が所定温度よりも高くならないように前記加熱手段の加熱強度分布のパターンを切り替える第2の制御を実行し、
さらに、強度分布のパターンを切り替える際に第2の温度検出手段により検出されるべき温度を、パターン切替温度として前記記録シートのサイズ情報に関連付けて格納する基本テーブルを保持し、
前記第2の制御において、前記基本テーブルのパターン切替温度を前記蓄熱情報に基づいて補正し、補正されたパターン切替温度に基づいて前記強度分布のパターンを切り替えるタイミングを決定することを特徴とする定着装置。 - 加熱回転体の周面に、押圧部材を圧接して定着ニップを形成し、当該定着ニップに未定着像を担持した記録シートを通紙して定着する定着装置であって、
前記加熱回転体の回転軸方向における加熱強度の分布を複数のパターンに切り替えて加熱可能な加熱手段と、
前記加熱回転体の通紙領域における表面温度を検出する第1の温度検出手段と、
前記加熱回転体の非通紙領域における表面温度を検出する第2の温度検出手段と、
記録シートの前記回転軸方向におけるサイズ情報を取得するサイズ情報取得手段と、
装置の蓄熱状態を指標する蓄熱情報を取得する蓄熱情報取得手段と、
前記加熱手段に供給する電力および加熱強度の分布のパターンの切り替えを制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
第1の温度検出手段の検出結果に基づき、通紙領域が目標定着温度に維持されるように制御する第1の制御を行うと共に、
第2の温度検出手段の検出結果と記録シートのサイズ情報と装置の蓄熱情報に基づき、非通紙領域におけるピーク温度が所定温度よりも高くならないように前記加熱手段の加熱強度分布のパターンを切り替える第2の制御を実行し、
前記蓄熱情報取得手段により取得される蓄熱情報として、ウォームアップ開始時に第1の温度検出手段により検出された温度、第1の温度検出手段により検出された温度の上昇率およびウォームアップ開始からの経過時間が含まれることを特徴とする定着装置。 - 加熱回転体の周面に、押圧部材を圧接して定着ニップを形成し、当該定着ニップに未定着像を担持した記録シートを通紙して定着する定着装置であって、
前記加熱回転体の回転軸方向における加熱強度の分布を複数のパターンに切り替えて加熱可能な加熱手段と、
前記加熱回転体の通紙領域における表面温度を検出する第1の温度検出手段と、
前記加熱回転体の非通紙領域における表面温度を検出する第2の温度検出手段と、
記録シートの前記回転軸方向におけるサイズ情報を取得するサイズ情報取得手段と、
装置の蓄熱状態を指標する蓄熱情報を取得する蓄熱情報取得手段と、
前記加熱手段に供給する電力および加熱強度の分布のパターンの切り替えを制御する制御手段と、
定着ニップを通過する記録シートの前記回転軸方向における正規の通紙位置からの位置ずれ量を取得する位置ずれ情報取得手段と
を備え、
前記制御手段は、
第1の温度検出手段の検出結果に基づき、通紙領域が目標定着温度に維持されるように制御する第1の制御を行うと共に、
第2の温度検出手段の検出結果と記録シートのサイズ情報と装置の蓄熱情報と前記位置ずれ情報とに基づき、非通紙領域におけるピーク温度が所定温度よりも高くならないように前記加熱手段の加熱強度分布のパターンを切り替える第2の制御を実行することを特徴とする定着装置。 - 前記蓄熱情報取得手段により取得される蓄熱情報として、ウォームアップ開始時に第1の温度検出手段により検出された温度、第1の温度検出手段により検出された温度の上昇率およびウォームアップ開始からの経過時間が含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。 - 定着ニップを通過する記録シートの前記回転軸方向における正規の通紙位置からの位置ずれ量を取得する位置ずれ情報取得手段を備え、
前記制御手段は、前記第2の温度検出手段の検出結果と記録シートのサイズ情報と装置の蓄熱情報に加えて、前記位置ずれ情報に基づき、非通紙領域におけるピーク温度が所定温度よりも高くならないように前記加熱手段の加熱強度の分布のパターンを切り替える第2の制御を実行することを特徴とする請求項1、2または4に記載の定着装置。 - 前記加熱手段は、
加熱回転体の回転軸方向に沿って配された励磁コイルから発する交番磁界により加熱回転体に含まれる発熱層を誘導加熱する方式であって、
非通紙領域に該当する領域に消磁コイルを配して、当該消磁コイルの駆動をオン・オフ制御することにより、回転軸方向における加熱強度の分布のパターンが切り替えられること
を特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の定着装置。 - 前記加熱手段は、
通電により加熱回転体の回転軸方向における異なる範囲を加熱する複数の発熱体を含み、通電する発熱体を選択することにより回転軸方向における加熱強度の分布のパターンが切り換えられること
を特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の定着装置。 - 前記請求項1から7までのいずれかに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
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