次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
A−1.印刷装置の構成:
A−2.印刷処理:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
D.第4実施例:
E.第5実施例:
F.変形例:
A.第1実施例:
A−1.印刷装置の構成:
図1は、本発明の第1実施例における印刷装置100の概略構成を示す説明図である。本実施例の印刷装置100は、インクを吐出することによって印刷媒体PM上にインクドット群を形成し、これにより、ホストコンピューター200から供給された画像データIDに応じた画像(文字、図形等を含む)を印刷するインクジェットプリンターである。
図1に示すように、印刷装置100は、印刷ヘッド140を搭載するキャリッジ130と、キャリッジ130をプラテン176の軸に平行な方向(主走査方向)に沿って往復移動させる主走査を行う移動機構と、印刷媒体PMを主走査方向に直交する方向(副走査方向)に搬送する副走査を行う搬送機構と、印刷に関する種々の指示・設定操作を受け付ける操作パネル104と、印刷装置100の各部を制御する制御ユニット110と、を備えている。印刷ヘッド140を有するキャリッジ130は、図示しないフレキシブルフラットケーブル(FFC)を介して制御ユニット110と接続されている。なお、副走査方向は、主走査方向に交差する方向であれば、必ずしも主走査方向に直交する方向でなくてよい。
印刷媒体PMを搬送する搬送機構は、紙送りモーター172を有している。紙送りモーター172の回転は、ギヤトレイン(不図示)を介して印刷媒体搬送ローラー(同)に伝達され、印刷媒体搬送ローラーの回転により印刷媒体PMは副走査方向に沿って搬送される。
キャリッジ130を主走査方向に沿って往復移動させる移動機構は、キャリッジモーター132と、プラテン176の軸と平行に架設されキャリッジ130を摺動可能に保持する摺動軸134と、キャリッジモーター132との間に無端の駆動ベルト136を張設するプーリー138と、を有している。キャリッジモーター132の回転は、駆動ベルト136を介してキャリッジ130に伝達され、これによりキャリッジ130が摺動軸134に沿って往復移動する。また、キャリッジ130を往復移動させる移動機構は、キャリッジモーター132の回転を制御して、キャリッジ130を主走査方向に沿った所望の位置に停止させることもできる。以下では、主走査方向に沿った一方の方向(キャリッジ130のホームポジション側から反対側に向かう方向)を主走査往方向とも呼び、他方の方向(主走査往方向と反対の方向)を主走査復方向とも呼ぶ。主走査往方向は、請求項における主走査第1方向に対応し、主走査復方向は、請求項における主走査第2方向に対応する。なお、印刷装置100は、印刷ヘッド140を有するキャリッジ130の主走査方向に沿った位置を検出するために、キャリッジモーター132の回転に伴ってパルス状の信号を制御ユニット110に出力するエンコーダー(不図示)を備えている。制御ユニット110は、エンコーダーから出力されたパルス状の信号に基づき、後述するシフトレジスター162への駆動信号選択信号SI&SPの入力タイミングを規定するタイミング信号PTSを生成する。
キャリッジ130には、それぞれ所定の色(例えば、シアン(C)、ライトシアン(Lc)、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(Lm)、イエロー(Y)、ブラック(K))のインクが収容された複数のインクカートリッジ102が搭載されている。キャリッジ130に搭載されたインクカートリッジ102に収容されたインクは、印刷ヘッド140に供給される。印刷ヘッド140は、インクを吐出する複数のノズルと、各ノズルに対応して設けられたアクチュエーター(ノズルアクチュエーター)を有している。本実施例では、ノズルアクチュエーターとして、容量性負荷であるピエゾ素子(圧電素子)が用いられる。複数のノズルは、インク色毎に、副走査方向に沿ったノズル列を構成している。なお、各ノズル列を構成する複数のノズルは、副走査方向に沿って直線状に並んで配置されている必要はなく、例えば副走査方向に沿って千鳥状に並んで配置されているとしてもよい。ノズルアクチュエーターが後述する駆動信号により駆動されると、ノズルに連通するキャビティー(圧力室)内の振動板が変位してキャビティー内に圧力変化を生じさせ、その圧力変化によって対応するノズルからインクが吐出される。ノズルアクチュエーターの駆動に用いる駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することで、インクの吐出量(すなわち形成するドットの大きさ)を調整することができる。
図2は、印刷装置100の制御ユニット110を中心とした概略構成を示す説明図である。制御ユニット110は、ホストコンピューター200から画像データID等を入力するためのホストインターフェイス(IF)112と、ホストインターフェイス112を介して入力された画像データIDに基づいて画像の印刷のための所定の演算処理を実行するメイン制御部120と、紙送りモーター172を駆動制御する紙送りモータードライバー114と、印刷ヘッド140を駆動制御するヘッドドライバー116と、キャリッジモーター132を駆動制御するキャリッジモータードライバー118と、各ドライバー114、116、118と紙送りモーター172、印刷ヘッド140、キャリッジモーター132とをそれぞれ接続するメインインターフェイス(IF)119と、を有している。
メイン制御部120は、各種演算処理を実行するCPU122と、プログラムやデータを一時的に格納・展開するRAM124と、CPU122が実行するプログラム等を格納するROM126と、を含んでいる。メイン制御部120の各種の機能は、CPU122がROM126に格納されたプログラムをRAM124上に読み出して実行することによって実現される。なお、メイン制御部120は電気回路を備えていてもよく、メイン制御部120の機能の少なくとも一部はメイン制御部120が備える電気回路がその回路構成に基づいて動作することによって実現されてもよい。
メイン制御部120は、ホストコンピューター200からホストインターフェイス112を介して画像データIDを取得すると、画像データIDに基づいて画像展開処理、色変換処理、インク色分版処理、ハーフトーン処理といった印刷実行のための演算処理を行うことにより、印刷ヘッド140の何れのノズルからインクを吐出するか、あるいは、どの程度の量のインクを吐出するかを規定するノズル選択データ(駆動信号選択データ)を生成し、駆動信号選択データ等に基づいて各ドライバー114、116、118に制御信号を出力する。なお、メイン制御部120が実行する印刷実行のための各演算処理の内容は、印刷装置の技術分野において周知の事項であるため、ここでは説明を省略する。各ドライバー114、116、118は、それぞれ紙送りモーター172、印刷ヘッド140、キャリッジモーター132を駆動するための駆動信号を出力する。例えば、ヘッドドライバー116は、印刷ヘッド140に対して、後述する基準クロック信号SCKとラッチ信号LATと駆動信号選択信号SI&SPとチャンネル信号CHと駆動信号COMとを供給する。印刷ヘッド140は、ヘッドインターフェイス(IF)142と電気回路により構成されるヘッド制御部150とを有しており、ヘッド制御部150に含まれるスイッチングコントローラー160(後述)がヘッドインターフェイス142を介して制御ユニット110から入力される各種信号に基づき動作することにより、ノズルからのインク吐出が実行される。なお、ヘッド制御部150の機能の一部または全部は、ソフトウェアによって実現されてもよい。紙送りモーター172およびキャリッジモーター132は、制御ユニット110から供給される駆動信号に応じて動作する。これにより、印刷媒体PM上に画像を形成する印刷処理が実現される。
図3は、印刷ヘッド140に供給される各種信号の一例を示す説明図である。駆動信号COMは、印刷ヘッド140に設けられたノズルアクチュエーターを駆動するための信号である。駆動信号COMは、ノズルアクチュエーターを駆動する駆動信号の最小単位(単位駆動信号)としての駆動パルスPCOM(駆動パルスPCOM1ないしPCOM4)が時系列的に連続した信号である。駆動パルスPCOM1ないしPCOM4の4つの駆動パルスPCOMの組は、1つの画素(印刷画素)に対応している。
各駆動パルスPCOMは、電圧台形波から構成されている。各駆動パルスPCOMの立ち上がり部分は、ノズルに連通するキャビティーの容積を拡大してインクを引き込む(インクの吐出面で考えればメニスカスを引き込むとも言える)ための部分であり、駆動パルスPCOMの立ち下がり部分は、キャビティーの容積を縮小してインクを押し出す(インクの吐出面で考えればメニスカスを押し出すとも言える)ための部分である。そのため、ノズルアクチュエーターを駆動パルスPCOMに従って駆動することにより、ノズルからインクが吐出される。
駆動信号COMにおいて、駆動パルスPCOM2ないしPCOM4の波形(電圧増減傾きや波高値)は、互いに異なっている。ノズルアクチュエーターに供給される駆動パルスPCOMの波形が異なると、インクの引き込み量や引き込み速度、インクの押し出し量や押し出し速度が異なり、これによりインクの吐出量(すなわちインクドットの大きさ)が異なることとなる。駆動パルスPCOM2ないしPCOM4の中から1つまたは複数の駆動パルスPCOMを選択してノズルアクチュエーターに供給することにより、種々の大きさのインクドットを形成することができる。なお、本実施例では、駆動信号COMに、微振動と呼ばれる駆動パルスPCOM1が含まれる。駆動パルスPCOM1は、インクを引き込むのみで押し出しを行わない場合、例えばノズルの増粘を抑制する場合に用いられる。
駆動信号選択信号SI&SPは、インクを吐出するノズルを選択すると共に、ノズルアクチュエーターの駆動信号COMへの接続タイミングを決定する信号である。ラッチ信号LATおよびチャンネル信号CHは、全ノズル分のノズル選択データが入力された後、駆動信号選択信号SI&SPに基づいて駆動信号COMと印刷ヘッド140のノズルアクチュエーターとを接続させる信号である。図3に示すように、ラッチ信号LATおよびチャンネル信号CHは、駆動信号COMに同期した信号である。すなわち、ラッチ信号LATは、駆動信号COMの開始タイミングに対応してハイレベルとなる信号であり、チャンネル信号CHは、駆動信号COMを構成する各駆動パルスPCOMの開始タイミングに対応してハイレベルとなる信号である。ラッチ信号LATに応じて一連の駆動信号COMの出力が開始され、チャンネル信号CHに応じて各駆動パルスPCOMが出力される。また、基準クロック信号SCKは、駆動信号選択信号SI&SPをシリアル信号として印刷ヘッド140に送信するための信号である。すなわち、基準クロック信号SCKは、印刷ヘッド140のノズルからインクを吐出するタイミングの決定に使用される信号である。
図4は、印刷ヘッド140のスイッチングコントローラー160の構成を示す説明図である。スイッチングコントローラー160は、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をノズルアクチュエーター169に供給するために、印刷ヘッド140のヘッド制御部150内に構築されている。スイッチングコントローラー160は、駆動信号選択信号SI&SPを保存するシフトレジスター162と、シフトレジスター162のデータを一時的に保存するラッチ回路164と、ラッチ回路164の出力をレベル変換して選択スイッチ168に供給するレベルシフター166と、駆動信号COMをノズルアクチュエーター169に接続する選択スイッチ168とを有している。
シフトレジスター162には、駆動信号選択信号SI&SPが順次入力され、基準クロック信号SCKの入力パルスに応じて記憶される領域が順次後段にシフトする。なお、シフトレジスター162への駆動信号選択信号SI&SPの入力は、上述したタイミング信号PTSに従い実行される。ラッチ回路164は、ノズル数分の駆動信号選択信号SI&SPがシフトレジスター162に格納された後、入力されるラッチ信号LATに従いシフトレジスター162の各出力信号をラッチする。ラッチ回路164に保存された信号は、レベルシフター166によって次段の選択スイッチ168を切り替え(オン/オフ)できる電圧レベルに変換される。レベルシフター166の出力信号により閉じられる(接続状態となる)選択スイッチ168に対応するノズルアクチュエーター169は、駆動信号選択信号SI&SPの接続タイミングで駆動信号COM(駆動パルスPCOM)に接続される。また、シフトレジスター162に入力された駆動信号選択信号SI&SPがラッチ回路164にラッチされた後、次の駆動信号選択信号SI&SPがシフトレジスター162に入力され、インクの吐出タイミングに合わせてラッチ回路164の保存データを順次更新する。この選択スイッチ168によれば、ノズルアクチュエーター169を駆動信号COM(駆動パルスPCOM)から切り離した後も、当該ノズルアクチュエーター169の入力電圧は切り離す直前の電圧に維持される。なお、図4中の符号HGNDは、ノズルアクチュエーター169のグランド端である。
図2に示すように、印刷ヘッド140は、印刷ヘッド140の温度を検出するサーミスター144を有しており、印刷ヘッド140のヘッド制御部150は、サーミスター144により検出された温度に基づきノズルからのインク吐出動作制限を実行する吐出制限部152を含んでいる。図5は、印刷ヘッド140によるインク吐出動作と印刷ヘッド140の温度Tとの関係を概念的に示す説明図である。図5には、主走査方向に沿って印刷媒体PMの一方の端(開始位置)から他方の端に向かって印刷ヘッド140を有するキャリッジ130を移動させながら印刷装置100の最高解像度でインク吐出動作を連続して実行した場合(すなわち、当該最高解像度により定まる印刷画素のすべてにおいてインク吐出動作を実行した場合)における、開始位置からキャリッジ130の位置までの距離Lと印刷ヘッド140の温度Tとの関係を概念的に示している。ノズルからのインク吐出動作が実行されている期間には、ノズルアクチュエーターを始めとする各種素子や駆動回路からの発熱によって印刷ヘッド140の温度は上昇する。そのため、図5に示すように、印刷ヘッド140の温度は、開始位置の初期温度Ti(インク吐出動作終了後、十分な時間が経過したときの定常温度)から、インク吐出動作を連続して実行する距離Lが大きくなるにつれて上昇する。一方、インク吐出動作が実行されていない期間には、印刷ヘッド140の温度は初期温度Tiに向けて下降する。なお、図5では、距離Lと温度Tとの関係を便宜的に線形として表現しているが、距離Lと温度Tとの関係は印刷ヘッド140の構成やキャリッジ130の移動速度によって異なり、必ずしも線形にならない場合もある。
本実施例では、印刷ヘッド140の正常動作が保証される上限温度Tthが予め設定されている。上限温度Tthは、印刷ヘッド140を構成する各部品(各種素子や回路)の耐熱温度や、各部品の組み立てに用いられる接着剤の耐熱温度等に基づき決められる。印刷ヘッド140の吐出制限部152(図2)は、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthを超えないように、ノズルからのインク吐出動作制限を実行する。具体的には、サーミスター144により検出される印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthに達すると、吐出制限部152は、制御ユニット110から供給されるインク吐出ノズルを選択する駆動信号選択信号SI&SPを、すべてのノズルからインクを吐出しないことを表す信号に変更する。これにより、制御ユニット110から供給された駆動信号選択信号SI&SPの内容にかかわらず、ノズルからのインク吐出動作は停止され、印刷ヘッド140の温度は下降する。吐出制限部152は、インク吐出動作制限を開始した後、サーミスター144により検出される印刷ヘッド140の温度が所定の復帰温度Tr(図5)まで下降すると、インク吐出動作制限を解除する。復帰温度Trは、初期温度Ti以上、かつ、上限温度Tthより小さい範囲で予め設定されている。復帰温度Trは、初期温度Tiと同じであってもよい。このような吐出制限部152によるインク吐出動作制限により、印刷ヘッド140の過度の温度上昇による故障の発生や印刷不良が回避される。なお、吐出制限部152によるインク吐出動作制限は、必ずしもサーミスター144による温度検出結果を利用した方法により実行される必要はなく、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthを超えるようなインク吐出動作が回避される方法であれば、他のどのような方法により実行されてもよい。
本実施例では、また、上限温度Tthに基づき、連続印刷上限距離Lthが設定されている(図5参照)。連続印刷上限距離Lthは、印刷ヘッド140が最も温度上昇しやすい条件でインク吐出動作を実行した場合、すなわち、印刷装置100の最高解像度でインク吐出動作を連続して実行した場合に、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthに達するような距離Lである。なお、キャリッジ130の移動速度が定まればキャリッジ130が連続印刷上限距離Lthだけ移動するのに要する時間も定まるため、連続印刷上限距離Lthは、印刷装置100の最高解像度でインク吐出動作を連続して実行した場合に印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthに達するような時間として捉えることも可能である。
A−2.印刷処理:
図6は、印刷装置100による印刷処理の流れを示すフローチャートである。印刷装置100による印刷処理は、メイン制御部120による制御の下、ホストコンピューター200から入力された画像データIDに基づき、画像データIDに応じた画像を印刷媒体PM上に形成する処理である。なお、印刷装置100は、インクを吐出することによって印刷媒体PM上にインクドット群を形成し、これにより画像を印刷するインクジェットプリンターであるため、「画像」は「インクドット群」と言い換えることもできる。
はじめに、印刷装置100のメイン制御部120(図2)は、印刷処理に用いられる印刷媒体PMの主走査方向に沿った幅Wmを取得し(ステップS110)、印刷媒体幅Wmが上述した連続印刷上限距離Lth(図5参照)以下であるか否かを判定する(ステップS120)。メイン制御部120は、印刷データ(印刷コマンド)に含まれる印刷媒体幅Wmを取得する。あるいは、メイン制御部120は、印刷媒体PMを実測して印刷媒体幅Wmを取得するとしてもよい。あるいは、メイン制御部120は、印刷データ(印刷コマンド)に含まれる印刷媒体幅Wmと印刷媒体PMを実測して得られた印刷媒体幅Wmとを用いて算出された印刷媒体幅Wmを取得するとしてもよい。印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lth以下である場合には(ステップS120:YES)、メイン制御部120は、通常印刷処理を実行する(ステップS130)。
通常印刷処理は、印刷ヘッド140を有するキャリッジ130を主走査往方向に連続的に移動させつつ画像データIDに応じたインク吐出動作を実行して印刷媒体PM上に画像を形成する動作と、インク吐出を行うことなくキャリッジ130を主走査復方向にホームポジションまで移動させるホームポジション戻り動作および副走査方向への印刷媒体PMの搬送動作(副走査)とを、繰り返し実行することにより、印刷媒体PMに画像データIDに応じた画像を印刷する処理である。なお、本実施例の通常印刷処理では、1回の画像形成動作で、単位バンド領域(主走査方向に沿った幅が印刷媒体PMの全幅Wmであり、副走査方向に沿った長さが印刷ヘッド140のノズル列長さである領域)に対する画像形成が完了するものとしている。従って、副走査における印刷媒体PMの搬送量は、ノズル列長さ分である。なお、単位バンド領域に形成される画像は、複数のラスター(主走査方向に沿って並んだ複数のインクドットにより形成されるライン)により構成される。
図5に示すように、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lth以下である場合には、印刷媒体幅Wm全体にわたってキャリッジ130を主走査往方向に連続的に移動させつつ画像形成動作を行っても、印刷ヘッド140の温度Tが上限温度Tthまで達することはない。また、ホームポジション戻り動作や搬送動作が実行される期間には、インク吐出動作は行われないため、印刷ヘッド140の温度は下降する。そのため、上述のような通常印刷処理を行っても、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthを超える事態の発生を回避しつつ、印刷媒体PM全体に対する画像形成を完了することができる。なお、通常印刷処理において、各単位バンド領域に対する画像形成動作は、請求項における第1画像形成動作に相当する。
一方、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthより大きい場合には(ステップS120:NO)、メイン制御部120は、分割印刷処理を実行する(ステップS140)。図7は、分割印刷処理の流れを示すフローチャートである。また、図8は、分割印刷処理の概要を示す説明図である。図8には、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である所定サイズの画像を表す画像データID(すなわち、黒色ベタ画像に対応する画像データ)がホストコンピューター200から入力された場合に、当該画像データIDに基づき印刷装置100によって実行される分割印刷処理の概要を示している。印刷装置100に黒色ベタ画像に対応する画像データIDが入力された場合は、画像形成動作の際に、すべての印刷画素(主走査方向および副走査方向に沿った印刷解像度により定まる画素)において印刷ヘッド140のノズルからのインク吐出動作が実行されるため、印刷ヘッド140が最も温度上昇しやすい条件に該当する。なお、図8(a)ないし図8(d)では、図示する動作により形成される画像をシングルハッチングを付して示し、図示する動作より以前に形成された画像をクロスハッチングを付して示している(以降の同様の図においても同様)。
はじめに、メイン制御部120は、第1画像形成動作PA1を実行する(ステップS210)。図8(a)に示すように、第1画像形成動作PA1は、印刷ヘッド140を有するキャリッジ130を主走査往方向に幅Wp1だけ移動させながら、印刷媒体PM上の領域AR1に第1印刷画像PI1を形成する動作である。なお、図8(a)には、符号「PA1」の後ろに括弧付き番号「(1)」を付しているが、この括弧付き番号は、当該第1画像形成動作PA1が何番目の単位バンド領域に対応する第1画像形成動作PA1であるかを示すものである(以降の同様の図においても同様)。本実施例では、第1画像形成動作PA1によって、単位バンド領域の内の幅Wp1の部分に対する画像形成が完了するものとしている。従って、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である画像を表す画像データIDに基づく印刷処理では、第1画像形成動作PA1により形成される第1印刷画像PI1は、黒色ベタ画像となる。ここで、領域AR1の主走査方向に沿った幅Wp1は、連続印刷上限距離Lth以下に設定される。そのため、印刷ヘッド140の温度Tは、第1画像形成動作PA1によって上昇するものの、上限温度Tthには達しない。なお、領域AR1の副走査方向に沿った長さは、印刷ヘッド140のノズル列長さと同じ長さである。
次に、メイン制御部120は、停止動作STを実行する(ステップS220)。図8(b)に示すように、停止動作STは、印刷媒体PM上の所定の停止位置でキャリッジ130の移動停止状態を所定時間維持する動作である。このときには、当然、インク吐出動作も行われない。なお、移動停止状態とは、キャリッジ130の主走査方向に沿った位置が実質的に変化しない状態を意味する。すなわち、ここでいうキャリッジ130の移動には、キャリッジ130の積極的な移動制御が実行されていないときにおけるキャリッジ130の微振動は含まれない。本実施例では、停止動作STにおける停止位置は、第1画像形成動作PA1の完了時におけるキャリッジ130の位置(すなわち、第1画像形成動作PA1により形成された第1印刷画像PI1における主走査往方向側の境界に対応する位置)である。停止動作STにおいてキャリッジ130の移動停止状態を維持する時間は、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthから初期温度Tiまで下降するのに十分な時間として予め設定されている。そのため、停止動作STの完了時には、印刷ヘッド140の温度は、停止動作STの開始時(すなわち、第1画像形成動作PA1の完了時)の温度にかかわらず、初期温度Tiまで下降していることとなる。
次に、メイン制御部120は、第2画像形成動作PA2を実行する(ステップS230)。図8(c)に示すように、第2画像形成動作PA2は、印刷ヘッド140を有するキャリッジ130を、直前の停止動作STにおける停止位置から主走査往方向に幅Wp2だけ移動させながら、印刷媒体PM上の領域AR2に第2印刷画像PI2を形成する動作である。本実施例では、第2画像形成動作PA2によって、単位バンド領域の内の幅Wp2の部分に対する画像形成が完了するものとしている。そのため、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である画像を表す画像データIDに基づく印刷処理では、第2画像形成動作PA2により形成される第2印刷画像PI2は、黒色ベタ画像となる。ここで、領域AR2の主走査方向に沿った幅Wp2は、連続印刷上限距離Lth以下に設定される。また、上述したように、第2画像形成動作PA2の直前の停止動作STにより、第2画像形成動作PA2の開始時点では、印刷ヘッド140の温度は初期温度Tiまで下降している。そのため、印刷ヘッド140の温度Tは、第2画像形成動作PA2によって上昇するものの、上限温度Tthには達しない。なお、領域AR2の主走査方向に沿った幅Wp2は、領域AR1の主走査方向に沿った幅Wp1と同じであってもよいし、異なっていてもよい。領域AR2の副走査方向に沿った長さは、印刷ヘッド140のノズル列長さと同じ長さである。
次に、メイン制御部120は、キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達したか否かを判定する(ステップS232)。キャリッジ130がまだ印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達していないと判定された場合には(ステップS232:NO)、メイン制御部120は、再度、停止動作ST(ステップS220)および第2画像形成動作PA2(ステップS230)の組を実行し、再度、ステップS232の判定を行う。このように、メイン制御部120は、キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達したと判定されるまで、停止動作STおよび第2画像形成動作PA2の組を繰り返し実行する。このときの停止動作STおよび第2画像形成動作PA2の組は、上述した1回目の停止動作STおよび第2画像形成動作PA2の組と同様に実行される。なお、停止動作STにおける停止位置は、直前の第2画像形成動作PA2の完了時におけるキャリッジ130の位置である。また、停止動作STにおける移動停止状態維持時間は、印刷ヘッド140の温度が初期温度Tiまで下降するのに十分な時間であれば、各回で同じであってもよいし、各回で異なっていてもよい。同様に、第2画像形成動作PA2における領域AR2の主走査方向に沿った幅Wp2は、連続印刷上限距離Lth以下であれば、各回で同じであってもよいし、各回で異なっていてもよい。このように停止動作STおよび第2画像形成動作PA2の組を繰り返し実行しても、印刷ヘッド140の温度Tが上限温度Tthに達することはない。
停止動作STと第2画像形成動作PA2との組が1回または複数回実行されると、キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達したと判定される(ステップS232:YES)。このとき、図8(c)に示すように、1つの単位バンド領域における画像形成が完了したことになる。この場合には、メイン制御部120は、印刷媒体PMの全領域に対する画像形成が完了したか否かを判定する(ステップS240)。まだ印刷媒体PMの全領域に対する画像形成が完了していないと判定された場合には(ステップS240:NO)、メイン制御部120は、インク吐出を行うことなくキャリッジ130を印刷媒体PMにおける主走査復方向側の端まで移動させるホームポジション戻り動作と、印刷媒体PMを副走査方向に搬送する搬送動作(副走査)とを実行し(ステップS250)、図8(d)に示すように、次の単位バンド領域(図8(d)の例では2番目の単位バンド領域)を対象として、第1画像形成動作PA1(ステップS210)以降の処理を行う。副走査における印刷媒体PMの搬送量は、ノズル列長さ分である。このような処理が繰り返し実行され、印刷媒体PMの全領域に対する画像形成が完了したと判定されると(ステップS240:YES)、分割印刷処理は完了となる。
以上説明したように、本実施例の印刷装置100は、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthより大きい場合には、分割印刷処理(図7)を実行する。分割印刷処理では、まず、キャリッジ130を主走査往方向に移動させながら印刷媒体PM上の領域AR1に第1印刷画像PI1を形成する第1画像形成動作PA1が行われる。その後、印刷媒体PM上の所定の停止位置でキャリッジ130の移動停止状態を所定時間維持する停止動作STと、キャリッジ130を直前の停止動作STにおける停止位置から主走査往方向に移動させながら印刷媒体PM上の領域AR2に第2印刷画像PI2を形成する第2画像形成動作PA2と、の組が、N回(Nは1以上の整数)実行される。例えば、図8に例示するように、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthより大きく、かつ、連続印刷上限距離Lthの2倍以下の場合には、1回の第1画像形成動作PA1と、1回の停止動作STと、1回の第2画像形成動作PA2とが順に実行されることにより、1つの単位バンド領域における画像形成が完了する。この場合に、第1画像形成動作PA1は請求項における第1ドット形成動作に相当し、第2画像形成動作PA2は請求項における第2ドット形成動作に相当し、停止動作STは請求項における調整動作に相当する。ここで、図8(c)からも明らかなように、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である所定サイズの画像を表す画像データIDに基づく印刷処理であっても、第1印刷画像PI1における明度が最も低い領域と、N(図8の例ではN=1)回の第2画像形成動作PA2により形成されるN個の第2印刷画像PI2のそれぞれにおける明度が最も低い領域は、主走査方向において重複すると共に、副走査方向において重複しない。なお、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である所定サイズの画像を表す画像データIDに基づき形成される画像(インクドット群)は、通常は一様な黒色画像(黒色ベタ画像)となるため、画像の各領域における明度は実質的に同一となる。ただし、第1印刷画像PI1により形成される画像と第2印刷画像PI2により形成される画像とを、互いに一部が重なり合うように形成してもよく、この場合には、各画像における重複領域では、ドット密度(いわゆるデューティ)が低くされるため、他の領域(非重複領域)と比べて明度が高くなる。そのため、上述した各画像形成動作により形成される画像における明度が最も低い領域とは、各画像が他の画像と重ならない場合には画像の全領域であり、各画像が他の画像と一部重複する場合には画像における非重複領域である。また、複数の画像領域が主走査方向において重複するとは、複数の画像領域のすべてに重なる主走査方向に平行な直線が存在すること、すなわち、複数の画像領域のそれぞれの少なくとも一部分の副走査方向に沿った位置が同一であることを意味する。また、複数の画像領域が副走査方向において重複しないとは、複数の画像領域の内の少なくとも2つに重なる副走査方向に平行な直線が存在しないこと、すなわち、一の画像領域の各部分の主走査方向に沿った位置が他の画像領域の一部分の主走査方向に沿った位置と同じとなることがないことを意味する。例えば、図8に示す例では、第1印刷画像PI1と第2印刷画像PI2は、互いに重なり合う部分を有していないため、主走査方向において重複すると共に、副走査方向において重複しない。本実施例の印刷装置100は、上述のような分割印刷処理を実行することができるため、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である画像を表すデータIDに基づく印刷処理のように印刷ヘッド140の温度が上昇しやすい場合であって、かつ、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthより大きい場合であっても、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthに達することを回避しつつ、印刷媒体PM全体に対する画像形成を実現することができる。すなわち、本実施例の印刷装置100は、印刷対象の画像の内容や印刷媒体PMの大きさにかかわらず、印刷媒体PM全体に対する画像形成を実現することができる。
また、本実施例の印刷装置100による分割印刷処理では、各単位バンド領域の画像は複数回の画像形成動作により形成されるが、各画像形成動作は予め決められた通りに実行されるため、従来のようなサーミスター144の温度検出結果に基づく突発的な印刷動作停止のように、画像の印刷不良が発生することがない。
また、本実施例の印刷装置100による分割印刷処理において、停止動作STにおけるキャリッジ130の停止位置は、第1画像形成動作PA1または直前の第2画像形成動作PA2の完了時の位置であるため、第1画像形成動作PA1と直後の第2画像形成動作PA2との間や、第2画像形成動作PA2と直後の第2画像形成動作PA2との間でのキャリッジ130の不要な移動が回避され、印刷処理に要する時間の増加や消費電力の増加を抑制することができる。
また、本実施例の印刷装置100は、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lth以下の場合には、通常印刷処理を実行する。すなわち、この場合には、分割印刷処理における停止動作STや第2画像形成動作PA2のような動作は実行されない。そのため、この場合には、印刷処理に要する時間の増加を抑制することができる。
なお、印刷装置100は、分割印刷処理の際に実行される第1画像形成動作PA1および第2画像形成動作PA2の回数や印刷媒体PM上での位置(領域AR1,AR2)を決定し、それらに基づき画像データID(もしくは印刷データ)を分割し、分割されたデータを利用することで、上述のような分割印刷処理を実行することができる。
B.第2実施例:
図9は、第2実施例における分割印刷処理の流れを示すフローチャートである。また、図10は、第2実施例における分割印刷処理の概要を示す説明図である。図10には、図8と同様に、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である所定サイズの画像を表す画像データID(すなわち、黒色ベタ画像に対応する画像データ)がホストコンピューター200から入力された場合に、当該画像データIDに基づき印刷装置100によって実行される分割印刷処理の概要を示している。第2実施例における分割印刷処理は、第1実施例と同様に、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthより大きい場合(図6のステップS120:NO)に実行される印刷処理(同、ステップS140)である。なお、以下では、第2実施例における上述した第1実施例とは異なる点を中心に説明するものとし、第1実施例と共通する点については説明を適宜省略するものとする(第3実施例以降についても同様)。
はじめに、印刷装置100のメイン制御部120(図2)は、図10(a)に示すように、第1画像形成動作PA1を実行する(ステップS210)。第1画像形成動作PA1は、第1実施例における第1画像形成動作PA1と同様に実行される。第1画像形成動作PA1によって第1印刷画像PI1が形成される領域AR1の主走査方向に沿った幅Wp1は、連続印刷上限距離Lth以下に設定される。そのため、印刷ヘッド140の温度Tは、第1画像形成動作PA1によって上昇するものの、上限温度Tthには達しない。
次に、メイン制御部120は、戻り動作MAを実行する(ステップS222)。図10(b)に示すように、戻り動作MAは、画像形成動作(インク吐出動作)を伴わずに、直前の画像形成動作(ここでは、第1画像形成動作PA1)の完了時の位置から主走査復方向に所定の移動量だけキャリッジ130を移動させる動作である。本実施例では、戻り動作MAにおけるキャリッジ130の主走査復方向への移動量は、直前の画像形成動作において画像が形成された印刷媒体PM上の領域(ここでは、領域AR1)の主走査復方向側の境界に対応する位置までである。すなわち、ここでは、戻り動作MAによってキャリッジ130はホームポジションまで移動する。なお、図10では、画像形成動作を伴わないキャリッジ130の移動を、太い破線で表している(以降も、同様の図においては同様)。
次に、メイン制御部120は、送り動作SAを実行する(ステップS226)。図10(c)に示すように、送り動作SAは、画像形成動作(インク吐出動作)を伴わずに、直前の戻り動作MAの完了時の位置から主走査往方向に所定の移動量だけキャリッジ130を移動させる動作である。本実施例では、送り動作SAにおけるキャリッジ130の主走査往方向への移動量は、直前の画像形成動作(ここでは、第1画像形成動作PA1)の完了位置までである。すなわち、送り動作SAは、キャリッジ130に、既に第1印刷画像PI1が形成されている領域AR1上を通過させる動作である。
次に、メイン制御部120は、図10(c)に示すように、第2画像形成動作PA2を実行する(ステップS230)。第2画像形成動作PA2は、キャリッジ130を主走査往方向に移動させながら直前の画像形成動作(ここでは、第1画像形成動作PA1)の完了位置から印刷媒体PM上の領域AR2に第2印刷画像PI2を形成する動作である。本実施例では、送り動作SAおよび第2画像形成動作PA2は、共にキャリッジ130を主走査往方向に連続的に移動させる動作であり、2つの動作はそれらの間にキャリッジ130の移動停止を挟むことなく連続して実行される。
ここで、第2画像形成動作PA2により画像形成が行われる領域AR2の主走査方向に沿った幅Wp2は、連続印刷上限距離Lth以下に設定される。また、上述の戻り動作MAにおけるキャリッジ130の主走査復方向への移動量は、戻り動作MAに要する時間と、それに続く送り動作SAに要する時間との合計が、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthから初期温度Tiまで下降するのに十分な時間となるように、予め設定されている。例えば、本実施例では、上述したように、戻り動作MAにおけるキャリッジ130の主走査復方向への移動量を、直前の画像形成動作(ここでは、第1画像形成動作PA1)において画像が形成された印刷媒体PM上の領域(ここでは、領域AR1)の主走査復方向側の境界に対応する位置までとすれば、上記合計時間は十分である。そのため、第2画像形成動作PA2が開始される時点では、印刷ヘッド140の温度は、戻り動作MAの開始時(すなわち、第1画像形成動作PA1の完了時)の温度にかかわらず、初期温度Tiまで下降していることとなる。そのため、印刷ヘッド140の温度Tは、第2画像形成動作PA2における画像形成動作(インク吐出動作)によって上昇するものの、上限温度Tthには達しない。なお、戻り動作MAにおけるキャリッジ130の主走査復方向への移動量は、上記条件を満たしていれば、必ずしも直前の画像形成動作において画像が形成された印刷媒体PM上の領域の主走査復方向側の境界に対応する位置までとする必要はなく、より小さい移動量としてもよい。また、領域AR2の主走査方向に沿った幅Wp2は、領域AR1の主走査方向に沿った幅Wp1と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
次に、メイン制御部120は、キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達したか否かを判定し(ステップS232)、キャリッジ130がまだ印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達していないと判定された場合には(ステップS232:NO)、再度、戻り動作MA(ステップS222)、送り動作SA(ステップS226)および第2画像形成動作PA2(ステップS230)の組を実行し、再度、ステップS232の判定を行う。このように、メイン制御部120は、キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達したと判定されるまで、戻り動作MA、送り動作SAおよび第2画像形成動作PA2の組を繰り返し実行する。このときの戻り動作MA、送り動作SAおよび第2画像形成動作PA2の組は、上述した1回目の戻り動作MA、送り動作SAおよび第2画像形成動作PA2の組と同様に実行される。このように戻り動作MA、送り動作SAおよび第2画像形成動作PA2の組を繰り返し実行しても、印刷ヘッド140の温度Tが上限温度Tthに達することはない。
キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達したと判定されると(ステップS232:YES)、図10(c)に示すように、1つの単位バンド領域における画像形成が完了したことになる。この場合には、メイン制御部120は、印刷媒体PMの全領域に対する画像形成が完了したか否かを判定し(ステップS240)、まだ印刷媒体PMの全領域に対する画像形成が完了していないと判定された場合には(ステップS240:NO)、インク吐出を行うことなくキャリッジ130を印刷媒体PMにおける主走査復方向側の端まで移動させるホームポジション戻り動作と、印刷媒体PMを副走査方向に搬送する搬送動作(副走査)とを実行し(ステップS250)、図10(d)に示すように、次の単位バンド領域(図10(d)の例では2番目の単位バンド領域)を対象として、第1画像形成動作PA1(ステップS210)以降の処理を行う。このような処理が繰り返し実行され、印刷媒体PMの全領域に対する画像形成が完了したと判定されると(ステップS240:YES)、分割印刷処理は完了となる。
以上説明したように、第2実施例の印刷装置100による分割印刷処理では、まず、キャリッジ130を主走査往方向に移動させながら印刷媒体PM上の領域AR1に第1印刷画像PI1を形成する第1画像形成動作PA1が行われる。その後、画像形成動作を伴わずにキャリッジ130を主走査復方向に所定の移動量だけ移動させる戻り動作MAと、画像形成動作を伴わずにキャリッジ130を主走査往方向に直前の画像形成動作の完了位置まで移動させる送り動作SAと、キャリッジ130を主走査往方向に移動させながら印刷媒体PM上の領域AR2に第2印刷画像PI2を形成する第2画像形成動作PA2と、の組が、N回(Nは1以上の整数)実行される。例えば、図10に例示するように、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthより大きく、かつ、連続印刷上限距離Lthの2倍以下の場合には、1回の第1画像形成動作PA1と、1回の戻り動作MAと、1回の送り動作SAと、1回の第2画像形成動作PA2とが順に実行されることにより、1つの単位バンド領域における画像形成が完了する。この場合に、第1画像形成動作PA1は請求項における第1ドット形成動作に相当し、第2画像形成動作PA2は請求項における第2ドット形成動作に相当し、戻り動作MAおよび送り動作SAは請求項における調整動作に相当する。ここで、図10(c)からも明らかなように、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である所定サイズの画像を表す画像データIDに基づく印刷処理であっても、第1印刷画像PI1における明度が最も低い領域と、N(図10の例ではN=1)回の第2画像形成動作PA2により形成されるN個の第2印刷画像PI2のそれぞれにおける明度が最も低い領域は、主走査方向において重複すると共に、副走査方向において重複しない。例えば、図10に示す例では、第1印刷画像PI1と第2印刷画像PI2は、互いに重なり合う部分を有していないため、主走査方向において重複すると共に、副走査方向において重複しない。本実施例の印刷装置100は、上述のような分割印刷処理を実行することができるため、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である画像を表す画像データIDに基づく印刷処理のように印刷ヘッド140の温度が上昇しやすい場合であって、かつ、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthより大きい場合であっても、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthに達することを回避しつつ、印刷媒体PM全体に対する画像形成を実現することができる。すなわち、本実施例の印刷装置100は、印刷対象の画像の内容や印刷媒体PMの大きさにかかわらず、印刷媒体PM全体に対する画像形成を実現することができる。
また、第2実施例の分割印刷処理では、各単位バンド領域の画像は複数回の画像形成動作により形成されるが、各画像形成動作は予め決められた通りに実行されるため、従来のようなサーミスター144の温度検出結果に基づく突発的な印刷動作停止のように、画像の印刷不良が発生することがない。
また、第2実施例の分割印刷処理では、第1実施例の停止動作STのように印刷媒体PM上でキャリッジ130の移動停止状態を維持する動作が行われることがないため、使用者が誤って装置の故障と認識してしまう事態の発生を防止することができる。
また、第2実施例の分割印刷処理では、戻り動作MAにおけるキャリッジ130の主走査復方向への移動量は、直前の画像形成動作において画像が形成された印刷媒体PM上の領域の主走査復方向側の境界に対応する位置までであるため、戻り動作MAおよび送り動作SAに続く第2画像形成動作PA2を開始する時点のキャリッジ130の移動速度を安定させることができ、第1印刷画像PI1と第2印刷画像PI2との間、あるいは、2つの第2印刷画像PI2間の境界が目立つような画質の低下を抑制することができる。
なお、印刷装置100は、分割印刷処理の際に実行される第1画像形成動作PA1および第2画像形成動作PA2の回数や印刷媒体PM上での位置(領域AR1,AR2)を決定し、それらに基づき画像データID(もしくは印刷データ)を分割し、分割されたデータを利用することで、上述のような分割印刷処理を実行することができる。
C.第3実施例:
図11は、第3実施例における分割印刷処理の流れを示すフローチャートである。また、図12は、第3実施例における分割印刷処理の概要を示す説明図である。図12には、図8と同様に、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である所定サイズの画像を表す画像データID(すなわち、黒色ベタ画像に対応する画像データ)がホストコンピューター200から入力された場合に、当該画像データIDに基づき印刷装置100によって実行される分割印刷処理の概要を示している。第3実施例における分割印刷処理は、第1実施例と同様に、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthより大きい場合(図6のステップS120:NO)に実行される印刷処理(同、ステップS140)である。
はじめに、印刷装置100のメイン制御部120(図2)は、図12(a)に示すように、第1画像形成動作PA1を実行する(ステップS210)。第1画像形成動作PA1は、キャリッジ130を主走査往方向に移動させながら印刷媒体PM上の領域AR1に第1印刷画像PI1を形成する動作である。第1画像形成動作PA1によって第1印刷画像PI1が形成される領域AR1の主走査方向に沿った幅Wp1は、連続印刷上限距離Lth以下に設定される。そのため、印刷ヘッド140の温度Tは、第1画像形成動作PA1によって上昇するものの、上限温度Tthには達しない。
次に、メイン制御部120は、第1送り動作SA1を実行する(ステップS214)。図12(a)に示すように、第1送り動作SA1は、画像形成動作を伴わずにキャリッジ130を主走査往方向に所定の移動量だけ移動させる動作である。第1送り動作SA1と直前の画像形成動作(ここでは、第1画像形成動作PA1)とは、それらの間にキャリッジ130の移動停止を挟むことなく連続的に実行される。第1送り動作SA1におけるキャリッジ130の移動量は、第1送り動作SA1に要する時間が、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthから初期温度Tiまで下降するのに十分な時間となるような移動量に、予め設定されている。そのため、第1送り動作SA1の完了時には、印刷ヘッド140の温度は、第1送り動作SA1の開始時(すなわち、第1画像形成動作PA1の完了時)の温度にかかわらず、初期温度Tiまで下降していることとなる。
次に、メイン制御部120は、キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達したか否かを判定し(ステップS216)、キャリッジ130がまだ印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達していないと判定された場合には(ステップS216:NO)、再度、第1画像形成動作PA1(ステップS210)および第1送り動作SA1(ステップS214)の組を実行し、再度、ステップS216の判定を行う。このように、メイン制御部120は、キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達したと判定されるまで、キャリッジ130を主走査往方向に連続的に移動させつつ、第1画像形成動作PA1および第1送り動作SA1の組を繰り返し実行する。このように第1画像形成動作PA1および第1送り動作SA1の組を繰り返し実行しても、印刷ヘッド140の温度Tが上限温度Tthに達することはない。
キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達したと判定されると(ステップS216:YES)、メイン制御部120は、第2画像形成動作PA2を実行する(ステップS230)。図12(b)に示すように、第2画像形成動作PA2は、印刷ヘッド140を有するキャリッジ130を主走査復方向に幅Wp2だけ移動させながら、印刷媒体PM上の領域AR2に第2印刷画像PI2を形成する動作である。ここで、領域AR2の主走査方向に沿った幅Wp2は、連続印刷上限距離Lth以下に設定される。そのため、印刷ヘッド140の温度Tは、第2画像形成動作PA2によって上昇するものの、上限温度Tthには達しない。なお、第2画像形成動作PA2は、印刷媒体PM上の第1送り動作SA1が実行される領域と同一の領域で実行される。そのため、第2画像形成動作PA2におけるキャリッジ130の移動量(幅Wp2)は、第1送り動作SA1におけるキャリッジ130の移動量と同一である。従って、幅Wp2は、連続印刷上限距離Lth以下であるという第1の条件と、キャリッジ130が幅Wp2だけ移動するために要する時間が印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthから初期温度Tiまで下降するのに十分な時間となるという第2の条件と、が両立するように設定される。
次に、メイン制御部120は、第2送り動作SA2を実行する(ステップS234)。図12(b)に示すように、第2送り動作SA2は、画像形成動作を伴わずにキャリッジ130を主走査復方向に所定の移動量だけ移動させる動作である。第2送り動作SA2と直前の画像形成動作(ここでは、第2画像形成動作PA2)とは、それらの間にキャリッジ130の移動停止を挟むことなく連続的に実行される。なお、第2送り動作SA2は、印刷媒体PM上の第1画像形成動作PA1が実行される領域と同一の領域で実行される。そのため、第1画像形成動作PA1におけるキャリッジ130の移動量(幅Wp1)は、第2送り動作SA2におけるキャリッジ130の移動量と同一である。従って、幅Wp1は、連続印刷上限距離Lth以下であるという第1の条件と、キャリッジ130が幅Wp1だけ移動するために要する時間が印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthから初期温度Tiまで下降するのに十分な時間となるという第2の条件と、が両立するように設定される。
次に、メイン制御部120は、キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査復方向側の端まで達したか否かを判定し(ステップS236)、キャリッジ130がまだ印刷媒体PMにおける主走査復方向側の端まで達していないと判定された場合には(ステップS236:NO)、再度、第2画像形成動作PA2(ステップS230)および第2送り動作SA2(ステップS234)の組を実行し、再度、ステップS236の判定を行う。このように、メイン制御部120は、キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査復方向側の端まで達したと判定されるまで、キャリッジ130を主走査復方向に連続的に移動させつつ、第2画像形成動作PA2および第2送り動作SA2の組を繰り返し実行する。このように第2画像形成動作PA2および第2送り動作SA2の組を繰り返し実行しても、印刷ヘッド140の温度Tが上限温度Tthに達することはない。
キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査復方向側の端まで達したと判定されると(ステップS236:YES)、図12(b)に示すように、1つの単位バンド領域における画像形成が完了したことになる。この場合には、メイン制御部120は、印刷媒体PMの全領域に対する画像形成が完了したか否かを判定し(ステップS240)、まだ印刷媒体PMの全領域に対する画像形成が完了していないと判定された場合には(ステップS240:NO)、印刷媒体PMを副走査方向に搬送する搬送動作(副走査)を実行し(ステップS250)、図12(c)に示すように、次の単位バンド領域(図12(c)の例では2番目の単位バンド領域)を対象として、第1画像形成動作PA1(ステップS210)以降の処理を行う。このような処理が繰り返し実行され、印刷媒体PMの全領域に対する画像形成が完了したと判定されると(ステップS240:YES)、分割印刷処理は完了となる。
以上説明したように、第3実施例の印刷装置100による分割印刷処理では、まず、キャリッジ130を主走査往方向に移動させながら印刷媒体PM上の領域AR1に第1印刷画像PI1を形成する第1画像形成動作PA1と、画像形成動作を伴わずにキャリッジ130を主走査往方向に所定の移動量だけ移動させる第1送り動作SA1と、の組が、N回(Nは1以上の整数)実行される。その後、キャリッジ130を主走査復方向に移動させながら印刷媒体PM上の領域AR2に第2印刷画像PI2を形成する第2画像形成動作PA2と、画像形成動作を伴わずにキャリッジ130を主走査復方向に所定の移動量だけ移動させる第2送り動作SA2と、の組が、N回実行される。第1送り動作SA1は、第2画像形成動作PA2の実行領域において第2画像形成動作PA2とは反対の方向にキャリッジ130を移動する動作であり、第2送り動作SA2は、第1画像形成動作PA1の実行領域において第1画像形成動作PA1とは反対の方向にキャリッジ130を移動する動作である。例えば、図12に例示するように、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthより大きく、かつ、連続印刷上限距離Lthの2倍以下の場合には、1回の第1画像形成動作PA1と、1回の第1送り動作SA1と、1回の第2画像形成動作PA2と、1回の第2送り動作SA2とが順に実行されることにより、1つの単位バンド領域における画像形成が完了する。この場合に、第1画像形成動作PA1は請求項における第1ドット形成動作に相当し、第2画像形成動作PA2は請求項における第2ドット形成動作に相当し、第1送り動作SA1は請求項における調整動作に相当する。ここで、図12(b)からも明らかなように、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である所定サイズの画像を表す画像データIDに基づく印刷処理であっても、N(図12の例ではN=1)回の第1画像形成動作PA1により形成されるN個の第1印刷画像PI1のそれぞれにおける明度が最も低い領域とN回の第2画像形成動作PA2により形成されるN個の第2印刷画像PI2のそれぞれにおける明度が最も低い領域とは、主走査方向において重複すると共に、副走査方向において重複しない。例えば、図12に示す例では、第1印刷画像PI1と第2印刷画像PI2は、互いに重なり合う部分を有していないため、主走査方向において重複すると共に、副走査方向において重複しない。本実施例の印刷装置100は、上述のような分割印刷処理を実行することができるため、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である画像を表す画像データIDに基づく印刷処理のように印刷ヘッド140の温度が上昇しやすい場合であって、かつ、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthより大きい場合であっても、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthに達することを回避しつつ、印刷媒体PM全体に対する画像形成を実現することができる。すなわち、本実施例の印刷装置100は、印刷対象の画像の内容や印刷媒体PMの大きさにかかわらず、印刷媒体PM全体に対する画像形成を実現することができる。
また、第3実施例の分割印刷処理では、各単位バンド領域の画像は複数回の画像形成動作により形成されるが、各画像形成動作は予め決められた通りに実行されるため、従来のようなサーミスター144の温度検出結果に基づく突発的な印刷動作停止のように、画像の印刷不良が発生することがない。
また、第3実施例の分割印刷処理では、第1実施例の停止動作STのように印刷媒体PM上でキャリッジ130の移動停止状態を維持する動作が行われることがないため、使用者が誤って装置の故障と認識してしまう事態の発生を防止することができる。また、第3実施例の分割印刷処理では、第1実施例の停止動作STや第2実施例の戻り動作MAのような動作がなく、キャリッジ130の主走査方向に沿った連続的な1回の往復移動で単位バンド領域の画像形成が完了するため、印刷処理に要する時間の増加を抑制することができる。
また、第3実施例の分割印刷処理では、第1画像形成動作PA1も第2画像形成動作PA2もキャリッジ130を連続的に移動させつつ実行されるため、各画像の境界部分を形成する際のキャリッジ130の移動速度を安定させることができ、第1印刷画像PI1と第2印刷画像PI2との間の境界が目立つような画質の低下を抑制することができる。
なお、印刷装置100は、分割印刷処理の際に実行される第1画像形成動作PA1および第2画像形成動作PA2の回数や印刷媒体PM上での位置(領域AR1,AR2)を決定し、それらに基づき画像データID(もしくは印刷データ)を分割し、分割されたデータを画像形成動作順に従い読み出して利用することで、上述のような分割印刷処理を実行することができる。
また、第3実施例の分割印刷処理では、第1印刷画像PI1はキャリッジ130の主走査往方向への移動に伴い形成される画像であり、第2印刷画像PI2はキャリッジ130の主走査復方向への移動に伴い形成される画像であるため、第1印刷画像PI1と第2印刷画像PI2との境界部分が目立つ場合がある。そのため、第3実施例の分割印刷処理では、第1印刷画像PI1と第2印刷画像PI2との境界部分を目立たせなくするための公知の画質調整技術を採用するとしてもよい。
図13は、第3実施例の変形例における分割印刷処理の概要を示す説明図である。図13に示す変形例の分割印刷処理は、図12に示す第3実施例の分割印刷処理において、第1画像形成動作PA1と第1送り動作SA1との関係、および、第2画像形成動作PA2と第2送り動作SA2との関係を逆にした変形例である。すなわち、図13に示す変形例では、図13(a)に示すように、メイン制御部120は、キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達したと判定されるまで、キャリッジ130を主走査往方向に連続的に移動させつつ、第1送り動作SA1および第1画像形成動作PA1の組を繰り返し実行する。次に、メイン制御部120は、キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査復方向側の端まで達したと判定されるまで、キャリッジ130を主走査復方向に連続的に移動させつつ、第2送り動作SA2および第2画像形成動作PA2の組を繰り返し実行する。例えば、図13に例示するように、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthより大きく、かつ、連続印刷上限距離Lthの2倍以下の場合には、1回の第1送り動作SA1と、1回の第1画像形成動作PA1と、1回の第2送り動作SA2と、1回の第2画像形成動作PA2とが順に実行されることにより、1つの単位バンド領域における画像形成が完了する。この場合に、第1画像形成動作PA1は請求項における第1ドット形成動作に相当し、第2画像形成動作PA2は請求項における第2ドット形成動作に相当し、第2送り動作SA2は請求項における調整動作に相当する。このように、図13に示す変形例の分割印刷処理においても、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である画像を表す画像データIDに基づく印刷処理のように印刷ヘッド140の温度が上昇しやすい場合であって、かつ、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthより大きい場合であっても、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthに達することを回避しつつ、印刷媒体PM全体に対する画像形成を実現することができる。
D.第4実施例:
図14は、第4実施例における分割印刷処理の流れを示すフローチャートである。また、図15は、第4実施例における分割印刷処理の概要を示す説明図である。図15には、図8と同様に、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である所定サイズの画像を表す画像データID(すなわち、黒色ベタ画像に対応する画像データ)がホストコンピューター200から入力された場合に、当該画像データIDに基づき印刷装置100によって実行される分割印刷処理の概要を示している。第4実施例における分割印刷処理は、第1実施例と同様に、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthより大きい場合(図6のステップS120:NO)に実行される印刷処理(同、ステップS140)である。
はじめに、印刷装置100のメイン制御部120(図2)は、図15(a)に示すように、第1画像形成動作PA1を実行し(ステップS210)、続けて第1送り動作SA1を実行し(ステップS214)、さらに続けて第2画像形成動作PA2を実行する(ステップS224)。第1画像形成動作PA1は、印刷ヘッド140を有するキャリッジ130を主走査往方向に幅Wp1だけ移動させながら印刷媒体PM上の領域AR1に第1印刷画像PI1を形成する動作であり、第2画像形成動作PA2は、キャリッジ130を主走査往方向に幅Wp2だけ移動させながら印刷媒体PM上の領域AR2に第2印刷画像PI2を形成する動作である。また、第1送り動作SA1は、画像形成動作を伴わずにキャリッジ130を主走査往方向に所定の移動量だけ移動させる動作である。第1画像形成動作PA1と第1送り動作SA1と第2画像形成動作PA2とは、それらの間にキャリッジ130の移動停止を挟むことなく連続的に実行される。第2画像形成動作PA2の完了時には、キャリッジ130は印刷媒体PMの主走査往方向側の端に達している。
次に、メイン制御部120は、図15(b)に示すように、第2送り動作SA2を実行し(ステップS228)、続けて第3画像形成動作PA3を実行し(ステップS231)、さらに続けて第3送り動作SA3を実行する(ステップS233)。第2送り動作SA2および第3送り動作SA3は、画像形成動作を伴わずにキャリッジ130を主走査復方向に所定の移動量だけ移動させる動作である。また、第3画像形成動作PA3は、キャリッジ130を主走査復方向に幅Wp3だけ移動させながら印刷媒体PM上の領域AR3に第3印刷画像PI3を形成する動作である。第2送り動作SA2と第3画像形成動作PA3と第3送り動作SA3とは、それらの間にキャリッジ130の移動停止を挟むことなく連続的に実行される。第3送り動作SA3の完了時には、キャリッジ130は印刷媒体PMの主走査復方向側の端(すなわち、ホームポジション)に達している。
ここで、図15(a)および図15(b)に示すように、第2送り動作SA2が実行される印刷媒体PM上の領域は第2画像形成動作PA2が実行される印刷媒体PM上の領域(領域AR2)と同じであり、第3画像形成動作PA3が実行される印刷媒体PM上の領域(領域AR3)は第1送り動作SA1が実行される印刷媒体PM上の領域と同じであり、第3送り動作SA3が実行される印刷媒体PM上の領域は第1画像形成動作PA1が実行される印刷媒体PM上の領域(領域AR1)と同じである。
第1画像形成動作PA1が実行される領域AR1の主走査方向に沿った幅Wp1と第2画像形成動作PA2が実行される領域AR2の幅Wp2と第3画像形成動作PA3が実行される領域AR3の幅Wp3とは、いずれも、連続印刷上限距離Lth以下に設定される。また、第1送り動作SA1におけるキャリッジ130の移動量は、第1送り動作SA1に要する時間が、第1画像形成動作PA1の終了時に想定される印刷ヘッド140の温度が初期温度Tiまで下降するのに十分な時間となるような移動量に、予め設定されている。また、第2送り動作SA2におけるキャリッジ130の移動量は、第2送り動作SA2に要する時間が、第2画像形成動作PA2の終了時に想定される印刷ヘッド140の温度が初期温度Tiまで下降するのに十分な時間となるような移動量に、予め設定されている。そのため、印刷ヘッド140の温度Tは、第1画像形成動作PA1によって上昇するものの上限温度Tthには達せず、続く第1送り動作SA1の期間に初期温度Tiまで下降し、続く第2画像形成動作PA2によって上昇するものの上限温度Tthには達せず、続く第2送り動作SA2の期間に初期温度Tiまで下降し、続く第3画像形成動作PA3によって上昇するものの上限温度Tthには達せず、続く第3送り動作SA3の期間に初期温度Tiまで下降する。なお、本実施例では、幅Wp1および幅Wp2は共に印刷媒体幅Wmの約4分の1であり、幅Wp3は印刷媒体幅Wmの約2分の1であるとしている。このようにすれば、上記条件を満足する。
第3送り動作SA3が完了すると、図15(b)に示すように、1つの単位バンド領域における画像形成が完了したことになる。メイン制御部120は、印刷媒体PMの全領域に対する画像形成が完了したか否かを判定し(ステップS240)、まだ印刷媒体PMの全領域に対する画像形成が完了していないと判定された場合には(ステップS240:NO)、印刷媒体PMを副走査方向に搬送する搬送動作(副走査)を実行し(ステップS250)、図15(c)に示すように、次の単位バンド領域(図15(c)の例では2番目の単位バンド領域)を対象として、第1画像形成動作PA1(ステップS210)以降の処理を行う。このような処理が繰り返し実行され、印刷媒体PMの全領域に対する画像形成が完了したと判定されると(ステップS240:YES)、分割印刷処理は完了となる。
以上説明したように、印刷装置100による第4実施例の分割印刷処理では、まず、キャリッジ130を主走査往方向に移動させながら印刷媒体PM上の領域AR1に第1印刷画像PI1を形成する第1画像形成動作PA1と、第1画像形成動作PA1に続き画像形成動作を伴わずにキャリッジ130を主走査往方向に所定の移動量だけ移動させる第1送り動作SA1と、第1送り動作SA1に続きキャリッジ130を主走査往方向に移動させながら印刷媒体PM上の領域AR2に第2印刷画像PI2を形成する第2画像形成動作PA2と、の組が実行される。次に、画像形成動作を伴わずにキャリッジ130を主走査復方向に所定の移動量だけ移動させる第2送り動作SA2と、第2送り動作SA2に続きキャリッジ130を主走査復方向に移動させながら印刷媒体PM上の領域AR3に第3印刷画像PI3を形成する第3画像形成動作PA3と、第3画像形成動作PA3に続き画像形成動作を伴わずにキャリッジ130を主走査復方向に所定の移動量だけ移動させる第3送り動作SA3と、の組が実行される。なお、第1画像形成動作PA1は請求項における第1ドット形成動作に相当し、第2画像形成動作PA2は請求項における第2ドット形成動作に相当し、第3画像形成動作PA3は請求項における第3ドット形成動作に相当し、第1送り動作SA1は請求項における第1調整動作に相当し、第2送り動作SA2は請求項における第2調整動作に相当し、第3送り動作SA3は請求項における第3調整動作に相当する。ここで、第2送り動作SA2が実行される印刷媒体PM上の領域は第2画像形成動作PA2が実行される領域と同じであり、第3画像形成動作PA3が実行される領域は第1送り動作SA1が実行される領域と同じであり、第3送り動作SA3が実行される領域は第1画像形成動作PA1が実行される領域と同じである。図15(b)からも明らかなように、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である所定サイズの画像を表す画像データIDに基づく印刷処理であっても、第1印刷画像PI1と第2印刷画像PI2と第3印刷画像PI3とのそれぞれにおける明度が最も低い領域は、主走査方向において重複すると共に、副走査方向において重複しない。例えば、図15に示す例では、第1印刷画像PI1と第2印刷画像PI2と第3印刷画像PI3とは、互いに重なり合う部分を有していないため、主走査方向において重複すると共に、副走査方向において重複しない。本実施例の印刷装置100は、上述のような分割印刷処理を実行することができるため、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である画像を表す画像データIDに基づく印刷処理のように印刷ヘッド140の温度が上昇しやすい場合であって、かつ、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthより大きい場合であっても、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthに達することを回避しつつ、印刷媒体PM全体に対する画像形成を実現することができる。すなわち、本実施例の印刷装置100は、印刷対象の画像の内容や印刷媒体PMの大きさにかかわらず、印刷媒体PM全体に対する画像形成を実現することができる。
また、第4実施例の分割印刷処理では、各単位バンド領域の画像は複数回の画像形成動作により形成されるが、各画像形成動作は予め決められた通りに実行されるため、従来のようなサーミスター144の温度検出結果に基づく突発的な印刷動作停止のように、画像の印刷不良が発生することがない。
また、第4実施例の分割印刷処理では、第1実施例の停止動作STのように印刷媒体PM上でキャリッジ130の移動停止状態を維持する動作が行われることがないため、使用者が誤って装置の故障と認識してしまう事態の発生を防止することができる。また、第4実施例の分割印刷処理では、第1実施例の停止動作STや第2実施例の戻り動作MAのような動作がなく、キャリッジ130の主走査方向に沿った連続的な1回の往復移動で単位バンド領域の画像形成が完了するため、印刷処理に要する時間の増加を抑制することができる。
また、第4実施例の分割印刷処理では、第1画像形成動作PA1も第2画像形成動作PA2も第3画像形成動作PA3もキャリッジ130を連続的に移動させつつ実行されるため、各画像の境界部分を形成する際のキャリッジ130の移動速度を安定させることができ、各画像間の境界が目立つような画質の低下を抑制することができる。さらに、第4実施例の分割印刷処理では、各画像の境界部分が印刷媒体PMの中央から外れた位置に配置されるように各幅Wpを設定することができるため、各画像間の境界をより目立たなくすることができる。
なお、印刷装置100は、画像データID(もしくは印刷データ)を分割し、分割されたデータを画像形成動作順に従い読み出して利用することで、上述のような分割印刷処理を実行することができる。
また、第4実施例の分割印刷処理では、第1印刷画像PI1および第2印刷画像PI2はキャリッジ130の主走査往方向への移動に伴い形成される画像であり、第3印刷画像PI3はキャリッジ130の主走査復方向への移動に伴い形成される画像であるため、各画像間の境界部分が目立つ場合がある。そのため、第4実施例の分割印刷処理では、各画像間の境界部分を目立たせなくするための公知の画質調整技術を採用するとしてもよい。
なお、第4実施例では、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthの2倍以上である場合には、エラーとして印刷処理を実行しないものとしてもよい。
また、図15に示した第4実施例の分割印刷処理において、画像形成動作と送り動作との関係を逆にすることも可能である。すなわち、キャリッジ130を主走査往方向に移動させつつ、図15(a)における第1画像形成動作PA1の代わりに第1送り動作SA1を実行し、続けて第1送り動作SA1の代わりに第1画像形成動作PA1を実行し、さらに続けて第2画像形成動作PA2の代わりに第2送り動作SA2を実行し、次に、キャリッジ130を主走査復方向に移動させつつ、図15(b)における第2送り動作SA2の代わりに第2画像形成動作PA2を実行し、続けて第3画像形成動作PA3の代わりに第3送り動作SA3を実行し、さらに続けて第3送り動作SA3の代わりに第3画像形成動作PA3を実行するとしてもよい。この場合には、第1画像形成動作PA1は請求項における第1ドット形成動作に相当し、第2画像形成動作PA2は請求項における第2ドット形成動作に相当し、第3画像形成動作PA3は請求項における第3ドット形成動作に相当し、第1送り動作SA1は請求項における第1調整動作に相当し、第2送り動作SA2は請求項における第2調整動作に相当し、第3送り動作SA3は請求項における第3調整動作に相当する。このようにしても、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthに達することを回避しつつ、印刷媒体PM全体に対する画像形成を実現することができる。
E.第5実施例:
図16は、第5実施例における印刷処理の流れを示すフローチャートである。また、図17は、第5実施例における印刷処理の概要を示す説明図である。図17には、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である所定サイズの画像を表す画像データID(すなわち、黒色ベタ画像に対応する画像データ)がホストコンピューター200から入力された場合に、当該画像データIDに基づき印刷装置100によって実行される印刷処理の概要を示している。なお、第5実施例では、上述した第1実施例ないし第4実施例と異なり、印刷媒体幅Wmと連続印刷上限距離Lthとの大小関係とは無関係に、図16に示したフローチャートに従い印刷処理が行われる。
はじめに、印刷装置100のメイン制御部120(図2)は、図17(a)に示すように、第1画像形成動作PA1を開始する(ステップS310)。第1画像形成動作PA1は、印刷ヘッド140を有するキャリッジ130を主走査往方向に連続的に移動させながら、印刷媒体PM上に第1印刷画像PI1を形成する動作である。また、メイン制御部120は、印刷ヘッド140のサーミスター144により検出される印刷ヘッド140の温度Tが、上述した印刷ヘッド140の正常動作が保証される上限温度Tth以上となったか否かを監視すると共に(ステップS320)、キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達したか否かを監視する(ステップS330)。
印刷ヘッド140の温度Tが上限温度Tth以上となると(ステップS320:YES)、印刷ヘッド140の吐出制限部152がインク吐出動作の制限を行うため、インク吐出は中断される。つまり、キャリッジ130は、画像形成動作を続行できなくなる。そのため、これ以降は、キャリッジ130の動作は、画像形成動作を伴わずに主走査往方向に移動する第1送り動作SA1となる(図17(a)参照)。このとき、メイン制御部120は、キャリッジ130の位置(第1位置)を記憶すると共に、画像形成に用いられるデータの所定の記憶領域への保存を開始する(ステップS340)。なお、キャリッジ130の位置は、上述したように、キャリッジモーター132の回転に伴ってパルス状の信号を出力するエンコーダーからの出力信号に基づき特定可能である。
その後、メイン制御部120は、印刷ヘッド140の温度Tが上述した印刷ヘッド140の復帰温度Tr以下となったか否かを監視すると共に(ステップS350)、キャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達したか否かを監視する(ステップS360)。温度Tが復帰温度Tr以下となると(ステップS350:YES)、印刷ヘッド140の吐出制限部152がインク吐出動作の制限を解除するため、インク吐出は再開される。つまり、キャリッジ130は、画像形成動作を再開できる。そのため、これ以降は、キャリッジ130の動作は、第1画像形成動作PA1となる(図17(a)参照)。このとき、メイン制御部120は、キャリッジ130の位置(第2位置)を記憶すると共に、画像形成に用いられるデータの所定の記憶領域への保存を終了する(ステップS370)。
メイン制御部120は、上述のような処理を繰り返し実行する。すなわち、第1画像形成動作PA1と第1送り動作SA1とが繰り返し実行される。各画素のR,G,B値が(0,0,0)である画像を表す画像データIDに基づく印刷処理の場合には、各第1画像形成動作PA1で第1印刷画像PI1が形成される領域AR1の幅Wp1は、連続印刷上限距離Lthと実質的に同じとなる。
第1画像形成動作PA1の実行中にキャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達したと判定された場合(ステップS330:YES)、メイン制御部120は、上述した記憶領域に画像形成に用いられるデータが保存されているか否かを判定する(ステップS380)。画像形成に用いられるデータが保存されている場合には(ステップS380:YES)、記憶されたキャリッジ130の第1位置および第2位置と、保存された画像形成に用いられるデータとを読み込み(ステップS390)、第2画像形成動作PA2を実行する(ステップS400)。第2画像形成動作PA2は、図17(b)に示すように、キャリッジ130を印刷媒体PMの主走査往方向側の端から主走査復方向側の端まで主走査復方向に移動させながら、印刷媒体PM上の第1送り動作SA1が実行された領域(領域AR2)に第2印刷画像PI2を形成する動作である。なお、第2画像形成動作PA2中における画像形成が実行されていない時間は、送り動作が実行されているとも言える。このとき、メイン制御部120は、読み込んだキャリッジ130の第1位置および第2位置に基づき、印刷媒体PM上の第1送り動作SA1が実行された領域(すなわち、第2印刷画像PI2を形成すべき領域AR2)を特定する。また、第2印刷画像PI2を表すデータは、記憶領域から読み込まれたデータである。従って、メイン制御部120は、第1位置および第2位置と画像形成に用いられるデータとを用いて、第2画像形成動作PA2を実行することができる。第2画像形成動作PA2の完了により、図17(b)に示すように、1つの単位バンド領域における画像形成が完了する。
一方、画像形成に用いられるデータが保存されていない場合は(ステップS380:NO)、第1送り動作SA1が一度も行われることなくキャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達した場合、すなわち、1回の第1画像形成動作PA1のみで1つの単位バンド領域における画像形成が完了した場合である。各画素のR,G,B値が(0,0,0)である画像を表す画像データIDに基づく印刷処理では、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lth以下である場合に、1回の第1画像形成動作PA1のみで1つの単位バンド領域における画像形成が完了する。この場合には、メイン制御部120は、第2画像形成動作PA2を行う必要がないため、インク吐出を行うことなくキャリッジ130を主走査復方向に移動させるホームポジション戻り動作を実行して、後述のステップS410の判定を行う。
また、第1送り動作SA1の実行中にキャリッジ130が印刷媒体PMにおける主走査往方向側の端まで達したと判定された場合には(ステップS360:YES)、必ず記憶領域に画像形成に用いられるデータが保存されているため、メイン制御部120は、上述と同様に、記憶されたキャリッジ130の第1位置および第2位置と、保存された画像形成に用いられるデータとを読み込み(ステップS390)、第2画像形成動作PA2を実行する(ステップS400)。これにより、1つの単位バンド領域における画像形成が完了する。
1つの単位バンド領域における画像形成が完了すると、メイン制御部120は、印刷媒体PMの全領域に対する画像形成が完了したか否かを判定し(ステップS410)、まだ印刷媒体PMの全領域に対する画像形成が完了していないと判定された場合には(ステップS410:NO)、印刷媒体PMを副走査方向に搬送する搬送動作(副走査)を実行し(ステップS420)、図17(c)に示すように、次の単位バンド領域(図17(c)の例では2番目の単位バンド領域)を対象として、第1画像形成動作PA1(ステップS310)以降の処理を行う。このような処理が繰り返し実行され、印刷媒体PMの全領域に対する画像形成が完了したと判定されると(ステップS410:YES)、印刷処理は完了となる。
以上説明したように、第5実施例の印刷装置100による印刷処理では、まず、キャリッジ130を主走査往方向に移動させながら印刷媒体PM上の領域AR1に第1印刷画像PI1を形成する第1画像形成動作PA1と、画像形成動作を伴わずにキャリッジ130を主走査往方向に移動させる第1送り動作SA1とが、キャリッジが印刷媒体PMの主走査往方向側の端まで移動するまで繰り返し実行される。その後、キャリッジ130を印刷媒体PMの主走査往方向側の端から主走査復方向側の端まで主走査復方向に移動させながら印刷媒体PM上の第1送り動作SA1が実行された領域に第2印刷画像PI2を形成する第2画像形成動作PA2が実行される。例えば、図17の例では、第1画像形成動作PA1の前半と、1回の第1送り動作SA1と、第1画像形成動作PA1の後半と、1回の第2画像形成動作PA2(送り動作+画像形成動作+送り動作)とが順に実行されることにより、1つの単位バンド領域における画像形成が完了する。この場合に、第1画像形成動作PA1の前半は請求項における第1ドット形成動作に相当し、第1画像形成動作PA1の後半は請求項における第2ドット形成動作に相当し、第2画像形成動作PA2における実際に画像形成を行う動作は請求項における第3ドット形成動作に相当し、第1送り動作SA1は請求項における第1調整動作に相当し、第2画像形成動作PA2における実際に画像形成を行う動作の前の送り動作は請求項における第2調整動作に相当し、第2画像形成動作PA2における実際に画像形成を行う動作の後の送り動作は請求項における第3調整動作に相当する。ここで、図17(b)からも明らかなように、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である所定サイズの画像を表す画像データIDに基づく印刷処理であっても、第1画像形成動作PA1により形成される第1印刷画像PI1と第2画像形成動作PA2により形成される第2印刷画像PI2とのそれぞれにおける明度が最も低い領域は、主走査方向において重複すると共に、副走査方向において重複しない。例えば、図17に示す例では、第1印刷画像PI1と第2印刷画像PI2とは、互いに重なり合う部分を有していないため、主走査方向において重複すると共に、副走査方向において重複しない。本実施例の印刷装置100は、上述のような印刷処理を実行することができるため、各画素のR,G,B値が(0,0,0)である画像を表す画像データIDに基づく印刷処理のように印刷ヘッド140の温度が上昇しやすい場合であって、かつ、印刷媒体幅Wmが連続印刷上限距離Lthより大きい場合であっても、印刷媒体PM全体に対する画像形成を実現することができる。すなわち、本実施例の印刷装置100は、印刷対象の画像の内容や印刷媒体PMの大きさにかかわらず、印刷媒体PM全体に対する画像形成を実現することができる。
また、第5実施例の印刷処理では、第1実施例の停止動作STのように印刷媒体PM上でキャリッジ130の移動停止状態を維持する動作が行われることがないため、使用者が誤って装置の故障と認識してしまう事態の発生を防止することができる。また、第5実施例の印刷処理では、第1実施例の停止動作STや第2実施例の戻り動作MAのような動作がなく、キャリッジ130の主走査方向に沿った連続的な1回の往復移動で単位バンド領域の画像形成が完了するため、印刷処理に要する時間の増加を抑制することができる。
また、第5実施例の印刷処理では、第1画像形成動作PA1も第2画像形成動作PA2もキャリッジ130を連続的に移動させつつ実行されるため、各画像の境界部分を形成する際のキャリッジ130の移動速度を安定させることができ、第1印刷画像PI1と第2印刷画像PI2との間の境界が目立つような画質の低下を抑制することができる。
なお、上記説明では、メイン制御部120は、印刷ヘッド140の温度Tが上限温度Tth以上となると、画像形成に用いられるデータの所定の記憶領域への保存を開始し(ステップS340)、温度Tが復帰温度Tr以下となると、画像形成に用いられるデータの保存を終了する(ステップS370)としているが、画像形成に用いられるデータの保存開始のタイミングを、印刷ヘッド140の温度Tが上限温度Tthより所定の余裕温度だけ低い第2上限温度以上となったタイミングとしてもよいし、画像形成に用いられるデータの保存終了のタイミングを、印刷ヘッド140の温度Tが復帰温度Trより所定の余裕温度だけ高い第2復帰温度以下となったタイミングとしてもよい。このようにすれば、第2画像形成動作PA2の際に必要なデータを確実に保存することができる。
また、第5実施例の印刷処理では、第1印刷画像PI1はキャリッジ130の主走査往方向への移動に伴い形成される画像であり、第2印刷画像PI2はキャリッジ130の主走査復方向への移動に伴い形成される画像であるため、第1印刷画像PI1と第2印刷画像PI2との境界部分が目立つ場合がある。そのため、第5実施例の印刷処理では、第1印刷画像PI1と第2印刷画像PI2との境界部分を目立たせなくするための公知の画質調整技術を採用するとしてもよい。
F.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
F1.変形例1:
上記実施例における印刷装置100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施例では、印刷装置100は、ホストコンピューター200から画像データIDを受信して印刷処理を行うとしているが、これに代えて、印刷装置100は、例えば、メモリーカードから取得した画像データや所定のインターフェイスを介してデジタルカメラから取得した画像データ、スキャナーによって取得した画像データ等に基づき印刷処理を行うものとしてもよい。
また、上記実施例では、画像データIDを受信した印刷装置100のメイン制御部120が、画像展開処理、色変換処理、インク色分版処理、ハーフトーン処理といった印刷実行のための演算処理を行うものとしているが、これらの演算処理はホストコンピューター200により実行されるとしてもよい。この場合には、印刷装置100は、ホストコンピューター200による演算処理によって生成された印刷コマンドを受信して、印刷コマンドに従った印刷処理を実行する。この場合にも、印刷装置100は、上述した実施例と同様の印刷処理を実行することができる。
また、上記実施例では、印刷ヘッド140が吐出制限部152を有するとしているが、印刷ヘッド140は吐出制限部152を有さず、制御ユニット110が吐出制限部152と同様の機能部を有するとしてもよい。この場合には、サーミスター144による印刷ヘッド140の温度検出結果が制御ユニット110に送られ、制御ユニット110は、受け取った温度検出結果に基づき上述した実施例と同様のインク吐出動作制限を実行する。
また、上記第1実施例ないし第4実施例では、メイン制御部120による制御によって、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthを超えるような事態の発生が回避されるため、サーミスター144や吐出制限部152を省略して装置構成の簡素化・コストダウンを図ることも可能である。あるいは、メイン制御部120による制御を、サーミスター144や吐出制限部152の動作不具合の際のバックアップとして利用することも可能である。
また、上記実施例では、印刷装置100は、インクカートリッジ102がキャリッジ130と共に主走査方向に往復移動する、いわゆるオンキャリッジ方式のプリンターであるとしているが、本発明は、インクカートリッジ102を装着するホルダーがキャリッジ130とは別の場所に設けられ、インクカートリッジ102から可撓性チューブ等を介して印刷ヘッド140にインクを供給する、いわゆるオフキャリッジ方式のプリンターにも適用することが可能である。また、本発明は、インク以外の液体(機能材料の粒子が分散された液状体やジェルなどの流状体を含む)を用いて印刷媒体PMに画像を形成する印刷装置にも適用可能である。
また、上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
また、本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータープログラム)は、コンピューター読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。この発明において、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピューター内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピューターに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
F2.変形例2:
上記第1実施例における分割印刷処理では、停止動作STにおいてキャリッジ130の移動停止状態を維持する時間は、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthから初期温度Tiまで下降するのに十分な時間であるとしているが、キャリッジ130の移動停止状態維持時間は、必ずしもこれに限られない。例えば、停止動作STにおける移動停止状態維持時間は、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthから復帰温度Trまで下降するのに十分な時間であるとしてもよいし、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthから初期温度Tiより所定温度だけ高い温度まで下降するのに十分な時間であるとしてもよい。また、停止動作STにおける移動停止状態維持時間は、直前の画像形成動作の対象である領域AR1の幅Wp1に応じて変動するとしてもよい。例えば、幅Wp1が小さいほど、停止動作STにおける停止状態維持時間を短くするものとしてもよい。
同様に、上記第2実施例では、戻り動作MAの際のキャリッジ130の主走査復方向への移動量は、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthから初期温度Tiまで下降するのに十分な時間が確保されるように決められているが、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthから復帰温度Trまで下降するのに十分な時間が確保されるように決められるとしてもよいし、印刷ヘッド140の温度が上限温度Tthから初期温度Tiより所定温度だけ高い温度まで下降するのに十分な時間が確保されるように決められるとしてもよい。また、戻り動作MAの際のキャリッジ130の主走査復方向への移動量は、直前の画像形成動作の対象領域の幅に応じて変動するとしてもよい。上記第3実施例における第1送り動作SA1および第2送り動作SA2の際のキャリッジ130の移動量や、上記第4実施例における第1送り動作SA1ないし第3送り動作SA3の際のキャリッジ130の移動量についても同様である。
F3.変形例3:
上記第1実施例および第2実施例における分割印刷処理では、1回の第1画像形成動作PA1およびN回の第2画像形成動作PA2によって単位バンド領域における画像形成が完了するとしているが、必ずしもこれに限られない。例えば、1回の第1画像形成動作PA1およびN回の第2画像形成動作PA2によって単位バンド領域に形成すべき画像を構成する一部のラスター(主走査方向に沿って並んだ複数のドットにより形成されるライン)のみが形成され、別の1回の第1画像形成動作PA1およびN回の第2画像形成動作PA2によって、当該単位バンド領域に形成すべき画像を構成する別のラスターが形成されるものとしてもよい。すなわち、いわゆるインターレース方式での印刷処理が行われるとしてもよい。第3実施例および第4実施例における分割印刷処理や、第1実施例ないし第4実施例における通常印刷処理、第5実施例における印刷処理においても、同様に、いわゆるインターレース方式での印刷処理が行われるとしてもよい。
F4.変形例4:
上記第1実施例および第2実施例における分割印刷処理では、第1画像形成動作PA1および第2画像形成動作PA2におけるキャリッジ130の移動方向が常に主走査往方向であるとしている(すなわち、いわゆる片方向印刷が行われるとしている)が、これに限られない。例えば、キャリッジ130を主走査往方向に移動させる1回の第1画像形成動作PA1およびN回の第2画像形成動作PA2と、キャリッジ130を主走査復方向に移動させる1回の第1画像形成動作PA1およびN回の第2画像形成動作PA2とが繰り返し実行されるいわゆる双方向印刷が行われるとしてもよい。上記各実施例における通常印刷処理においても、同様に、いわゆる双方向印刷が行われるとしてもよい。また、上記実施例において、主走査往方向は請求項における主走査第1方向に対応し、主走査復方向は請求項における主走査第2方向に対応するとしてもよいし、反対に、主走査往方向は請求項における主走査第2方向に対応し、主走査復方向は請求項における主走査第1方向に対応するとしてもよい。
F5.変形例5:
上記実施例において、各画像形成動作により形成される画像の一部が互いに重なるとしてもよい。例えば、上記第1実施例において、第1画像形成動作PA1により第1印刷画像PI1を形成した後、キャリッジ130を主走査復方向に少し移動させ、第2画像形成動作PA2によって第1印刷画像PI1と一部が重なるような第2印刷画像PI2を形成するものとしてもよい。この場合にも、第1印刷画像PI1および第2印刷画像PI2における重複部分のドット密度は低いため、第1印刷画像PI1における明度が最も低い領域と第2印刷画像PI2における明度が最も低い領域とは、主走査方向において重複すると共に、副走査方向において重複しない。