本発明における第1の実施形態の概要を図1に基づき説明する。その概要を説明すれば、半導体基板上に形成された少なくとも1層からなるコイル配線のコイル中央孔に別基板に形成されたコアを挿入する。コアをコイル中央孔に固定した後、別基板は分離する。コアは別基板に接合材を介してコア材(磁性体)の薄板を付着させて、パターニングする。半導体基板上に形成されたコイル中央孔は流動性接着剤が入っていて、コアを挿入した後に流動性接着剤が硬化してコアが固定される。コアが固定された後に接合剤の接着力を低下させて別基板を分離する。コア材はバルクと同じ高透磁率を有するので、非常に大きなインダクタンスを持つインダクタを形成できる。さらに説明すると、本発明のインダクタは、半導体基板、絶縁性基板、または導電性基板である第1の基板上に少なくとも1層のコイル配線を形成する工程と、第2の基板上に形成されたコアを前記コイル配線の内側に配置する工程と、第2の基板からコアを分離する工程とを含むコア付きインダクタの製造方法によって製造される。この場合、コイル配線を形成する工程の後で、流動性接着剤を塗布する工程か、コイル配線の内側の底部に接着層を形成する工程か、または第2の基板上に形成されたコアに接着層を形成する工程のいずれかの工程、或いはこれらを組み合わせた工程をさらに含む製造方法によって製造される。或いは、本発明のインダクタは、半導体基板、絶縁性基板、または導電性基板である第1の基板上に少なくとも1層のコイル配線を形成する工程と、コイル配線の内側に中央孔を形成する工程と、第2の基板上に形成されたコアを前記中央孔に挿入する工程と、第2の基板からコアを分離する工程とを含むコア付きインダクタの製造方法によって製造される。さらに、この場合、コイル配線の内側に中央孔を形成する工程の後で、流動性接着剤を塗布する工程か、中央孔の底部に接着層を形成する工程か、または第2の基板上に形成されたコアに接着層を形成する工程のいずれかの工程、或いはこれらを組み合わせた工程をさらに含む製造方法によって製造される。
図1(a)に示すように、シリコン基板11上の絶縁膜(SiO膜、SiN膜、SiON膜など)12上にコイル配線となる導電体配線13を形成する。図1(a)においては、2層の導電体配線13、15で示しているが、1層配線でも良いし、3層以上の配線でも良い。導電体膜として、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タングステン(W)、銅(Cu)、金(Au)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などの金属やこれらの合金、或いは、多結晶シリコン(PolySi)、アモルファスシリコン、或いは、タングステンシリサイド(WSi)、モリブデンシリサイド、チタンシリサイド等のシリサイド、導電性プラスチック、或いは、これらの複合材料を用いることができる。1層目と2層目の配線は連結しても良く、このときはスパイラル状、或いは螺旋状に連結する。すなわち、1層目の配線13の開始点は所望の電極に接続しているが、1層目の配線13の終点は2層目の配線15の開始点に接続する。1層目の配線13と2層目の配線15は層間絶縁膜14により隔絶しているが、1層目の配線13の終点は2層目の配線15の開始点が層間絶縁膜に形成されたコンタクト孔に形成された導電体膜により電気的に接続している。2層目の配線15の終端は所望の電極に接続している。尚、3層目以上の多層配線になったときもこの繰り返しで接続できる。これらの電極間に電圧を印加すれば、電流が1層目から2層目以降へ(または。この逆に)流れていく。また、各配線を接続せず、各配線ごとに電流を流してコイルを制御することもできる。また、縦に配線をスパイラル状に積層せずに、横、すなわち平面的に二重、三重にスパイラル状に巻いても良い。インダクタ(コイル)のインダクタンスは巻き数をnとすれば、ほぼn2に比例して大きくなる。
このようにスパイラ状或いは円形状或いは矩形形状の環状に形成した配線の中央部17を除去しコイル中央孔17を形成する。2層目の配線15(多層配線の場合は、その最上層)を形成した後、通常はその上に絶縁膜16を形成し、さらにコイルの中央部をフォトリソ法を用いて開口する。その開口部下にある絶縁膜をドライエッチングによりエッチングする。開口部下にある絶縁膜は、通常はシリコン基板11上の絶縁膜12、その上の絶縁膜14、その上の絶縁膜16の積層膜であるが、下地電極上のコンタクト孔や配線間の接続孔を形成するときにコイル中央孔17に存在する絶縁膜も除去することが可能であるから、その1部がないこともある。コイル配線13や15の内側ギリギリまでコイル中央孔17をあけても良い。この場合は、コイル中央孔17に入り込むコアと配線との距離をかなり接近させることができ、所望のインダクタンスを得る場合において、サイズを小さくできる。さらに、コイル配線13、15の内側部分も1部エッチング除去することもできる。この場合、コイル中央孔17にコイル配線13、15が露出し、コイル中央孔17に入り込むコアと接触しないように、コイル中央孔17を形成した後に、絶縁膜18を形成する。このような問題がない場合には、この絶縁膜18を形成しなくても良い。
尚、コイル中央孔17を形成するために、絶縁膜をエッチングしなくても形成される場合もある。たとえば、1層目のコイル配線を垂直形状にエッチングして形成し、その後CVD法でコンフォーマブルな絶縁膜を積層するとコイル配線の内側には中央孔が形成される。コイル配線の厚みが厚ければそれに対応した深い中央孔が形成される。2層以上のコイル配線を形成するときは、上下のコイル配線の間には絶縁膜が形成され、上下のコイル配線を接続する接続孔を形成するときに、もエッチングしておけば、特別に中央孔だけをあける工程を付加する必要はない。また、絶縁膜として感光性樹脂を使用したり、他の絶縁膜と感光性樹脂を併用したりするときにも、コイル配線同士の接続孔をフォトリソ法により形成するときにコイル配線の内側の中央孔に相当する部分も同様にフォトリソ法により開口すれば良い。
次に、流動性接着剤19を塗布する。コイル中央孔17は窪んでいるので、他の部分よりも流動性接着剤19は厚く塗布されている。次にサポート基板31に形成されたコア33をコイル中央孔17に挿入する。コア33はコイル中央孔17に挿入できるようにコイル中央孔17のサイズ(横方向に関して)より小さく形成されている。縦方向に関しては、コア33は柱状に形成されていて、コア33を完全にコイル中央孔17内部に入り込ませても良いし、高さを大きく作りコイル中央孔17から頭を出すようにしても良い。コア33はサポート基板31に接合剤により付着している。コア33を完全にコイル中央孔17内部に入り込ませる場合において、コイル中央孔17内部に入り込ませるためには、サポート基板31にコア33を付着させている接合剤の厚みを調節する必要がある。また、コイル中央孔17の底を1層目のコイル配線より低くして、挿入した磁性体33の底が1層目のコイル配線より低くすれば、コイル配線13がコア33を巻いている状態となり、インダクタンスやQ値も向上する。
サポート基板31上のコア33をシリコン基板11上のコイル中央孔17に正確に挿入するには、サポート基板31をシリコン基板11に正確に合わせこむ必要がある。シリコン基板11とサポート基板31にアライメントマークをそれぞれ形成したり、或いは、既に形成されたパターンに直接合わせ込んだりすることができる。また、合わせこんだ後、もしくは合わせこみながら、シリコン基板11を搭載した装置(或いは、基台)に対して、サポート基板31を搭載した装置を、平行を保持しながら、垂直に近づけていき、サポート基板31上のコア33をシリコン基板11上のコイル中央孔17に正確に挿入できる。現状でも、この合わせ誤差は6σで0.5μm程度であるが、将来はnm(ナノメートル)オーダーで合わせこむことができると言われている。従って、その時代の合わせ込み精度に応じてサポート基板31上のコア33のサイズとシリコン基板11上のコイル中央孔17の孔サイズを決める必要がある。サポート基板31上のコア33をシリコン基板11上のコイル中央孔17に挿入すると、コイル中央孔17内には流動性接着剤19が入っているので、コア33は流動性接着剤19の中に浸入する。コイル中央孔17内の流動性接着剤19は、コア33が入った分だけ外側に押出されてくる。
図1(b)に示すように、コア33がコイル中央孔17内の所定位置まで入り込んだときに、サポート基板31の接近を停止する。この後、サポート基板31からコア33を外す。サポート基板31からコア33を外す方法として、加熱して接合剤32の接合力を小さくしたり、解消したりすれば良い。たとえば、流動性接着剤19の硬化温度が80℃以上であり、接合剤32の軟化温度を90℃以上となるような材料を選定する場合には、まず、約80℃〜90℃で熱処理を行い、流動性接着剤19を硬化させてコアを固定する。次に90℃以上で熱処理を行えば、接合剤32の接合力は低下して、コア33をサポート基板31から分離できる。このような材料として、たとえば、流動性接着剤19として多数のエポキシ系接着剤がある。(田岡化学工業製のテクノダインAHは、80〜100℃で硬化する。)接合剤32としてアクリル系接着剤がある。(グルーラボ有限会社のGL−3005シリーズは、90〜100℃の熱水または加熱により容易に剥離する。)
或いは、接合剤32として金属系材料を用いても良い。たとえば、150℃〜300℃に融点を持つ半田合金を用いる。融点以下で硬化する流動性接着剤19を用いて、融点以下の熱処理で流動性接着剤19を硬化させて、コア33を固定し、次に融点以下の熱処理で接合剤32を融かしてコア33をサポート基板31から外す。
或いは、接合剤として紫外線照射により剥離する接着剤を用いても良い。流動性接着剤19を所定の条件で硬化させてコア33を固定した後、紫外線を照射して接合剤32の接着性を小さくして、コア33をサポート基板31から外す。
流動性接着剤19として、シラノール系等の無機系SOG(Spin On Glass)や水素化シルセシキオキサン(HSQ)タイプの無機系塗布膜を用いることもできる。またポリイミド等の有機系ポリマー塗布膜やメチルシルセスキシオキサン(MSQ)等の有機系SOG膜を用いることもできる。流動性接着剤を用いるときには、信頼性を向上させるために、CVD法やPVD法で積層した絶縁膜と併用しても良い。たとえば、CVD法やPVD法で絶縁膜を積層してから流動性接着剤を塗布するという方法もある。
以上のように、接合剤32や流動性接着剤19を上手に選定することにより、コア33をコイル中央孔17内に固定して、サポート基板31と分離できる。
或いは、サポート基板31を電磁石として、接合剤32を用いずにコア33を直接サポート基板に付着させておく。コア33は磁性体であるからサポート基板に付着する。コア33の挿入が完了してから、サポート基板32の電磁石を解除すれば、コア33は簡単にサポート基板31から分離する。この方法を用いれば、接合剤32の特性を考慮する必要がないので、種々の流動性接着剤19を用いることができる。
尚、流動性接着剤という用語を用いたが、ここでいう接着剤とは、コア33を固定しシリコン基板11上の絶縁膜に付着するという意味における接着性であり、通常の接着剤とは異なる意味も持つ。
図1(c)は、サポート基板31からコア33が分離した状態を示す。コア33はコイル中央孔17内に固定されている。硬化した流動性接着剤19の表面とコア33の上面は必ずしも同じレベルにはならず、表面が平坦とはならない。コア33は露出しているので、この後、保護膜としての絶縁膜を積層してコア33をカバーしても良い。この絶縁膜は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜などであるが、CVD法やPVD法により積層することができる。或いは、SOGやポリイミドなどの塗布膜をコートして熱処理を行い固化しても良い。耐湿性を向上させるには、シリコン窒化膜やシリコン酸窒化膜を積層するのが良い。或いは、これらの絶縁膜を併用しても良い。
表面を平坦化したいときは、図1(c)に示す状態の後に、SOGやポリイミドなどの有機系塗布膜を塗布して平坦にしたり、さらにCMP(Chemical−Mechanical Polishing)等により表面研磨したりして平坦化しても良い。
コア33の電位を安定化するために、コア33の下面および/または上面を他の電極へ接続しても良い。或いは、コイル配線を取り巻くようにコア33と下面電極および上面電極と接続しても良い。或いは、電気的に接続しなくともコイル配線を取り巻くように作っても良い。
図2は、図1とは異なる方法でコア33をコイル中央孔17内に固定する方法について説明する図である。図2に示す方法においては、流動性接着剤19を使用しない。その代わりに、サポート基板31に付着したコア33の底面に接着層34を付着させる。接着層34をコア33に付着させる方法も種々ある。たとえば、コア33がサポート基板31上にパターニングされた後で、接着液のある場所にサポート基板31を運び、コア33の底面を浸漬すれば良い。柱状のコア33の周り全体に接着液を付着させても良いし、図2(a)に示すようにコア33の底面のみに付着させても良い。この工程は、サポート基板の移動の一連の工程で行うことができるので、工程負荷が少ない。
次に、図2(b)に示すように、サポート基板31をシリコン基板11に接近させて、コイル中央孔17内の底面にコア33を接着層34を介して付着させる。接着層34は低融点金属や低融点合金であっても良い。シリコン基板11を融点以上の温度に加熱して低融点金属等を融かしてその後融点以下へシリコン基板11の温度を下げてシリコン基板11側へコア33を付着し固定させる。その後サポート基板31からコア33を分離する。この場合は、接合剤32の接着力が弱くなる温度が低融点金属などの融点より高いものを使用すれば良い。紫外線照射などにより接着力を弱くする材料を接合剤32に用いても良い。或いは、逆にサポート基板31からコア33を分離してコア33をコイル中央孔17内に置いてから、シリコン基板11を加熱してコア33をシリコン基板に付着させても良い。たとえば、接着層34が接着硬化する温度よりも低い温度で接着力が低下する材料を接合材32に用いると良い。コイル中央孔17内の底面にコア33を置いた後で、接合材の接着力が低下する温度以上にサポート基板を加熱してコア33をサポート基板31から分離する。その後接着層が接着硬化する温度よりも高い温度でシリコン基板を加熱してコア33をコイル中央孔17の底面に付着させる。
図2(c)は、コア33がコイル中央孔17内付着した状態を示す。この状態では、柱状のコア33の側壁部とコイル中央孔17の側壁部の間にはわずかに隙間が生じる。この隙間はサポート基板とシリコン基板の合わせ誤差を考慮する必要があるため必然的に生じる。このままの状態で使用すると水分がたまったりして不具合が生じる場合には、図2(d)に示すように絶縁膜20を積層してコア33や隙間をカバーする。この絶縁膜20は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜などであるが、CVD法やPVD法により積層することができる。或いは、SOGやポリイミドなどの塗布膜をコートして熱処理を行い固化しても良い。或いは、これらの絶縁膜を併用することもできる。
図3は、インダクタを記号で示したものである。インダクタはコイルとも呼ばれるが、コイルは、JISC5602「電子機器用受動部品用語」では、「コイル:一般的には、絶縁体の表面上に導体を巻いて作った自己インダクタンスを持つ部品」と定義されている。これに対して、インダクタは「誘導素子」を意味するが、「巻き線1個のコイル」をインダクタと呼ぶ場合もあり、インダクタとコイルの違いが明確ではない。本明細書および請求の範囲においては、コイルとインダクタの区別はせずに、「絶縁体の表面上に導体を巻いて作った自己インダクタンスを持つ部品(素子)」と考える。すなわち、巻き線1個の場合もコイルまたはインダクタと呼び、巻き線2個以上のものもコイルまたはインダクタと呼ぶ。
図3に示すインダクタ40の両端の端子AおよびBには交流または直流電圧がかかる。インダクタの中心には核(コア、芯)41が入っていて、このコア41を導体42が取り巻いている。このコア41を取り巻いている導体42をコイル配線42と呼ぶ。尚、コイル配線42は、両端の端子A〜Bを含めて用いる場合もある。このインダクタ40の自己インダクタンスLはだいたい、L=k*u*n2S/lと表され、巻き数nの二乗、巻き線の内部の断面積S、コアの透磁率uに比例し、コイルの長さlに反比例する。従って、コアの材質によってLの値が変化する。kは長岡係数である。u=(真空透磁率)*比透磁率で、比透磁率は空芯(空気)の場合は1.0、鉄芯では、約18000、Mn-Zn系フェライトでは1000〜20000、パーマロイでは約20000以上である。また、インダクタの品質を表すQ値は、Q=ωL/rで示され、各周波数ωとLに比例し、実効抵抗値rに反比例する。このことから、Lを大きくすることがインダクタの品質を向上させることが分かる。従って、コアに高透磁率μを持つ物質を使用できれば、高性能でしかもサイズの小さなインダクタを作製できる。
図4は、本発明の第1の実施形態を応用した別の実施形態を示す。図4(a)に示すように、シリコン基板51上の絶縁膜52上に電極・配線53が形成されている。シリコン基板51にはトランジスタ等の能動素子や抵抗等の受動素子が形成されているが、図4においては、インダクタに直接関係する部分のみを示す。すなわち、電極・配線53(53−1)および53(53−2)はインダクタの両端子(図3に示す、A,B、Aが53−1にBが53−2に対応すると仮定する)に接続する電極・配線である。53(53−3)はインダクタには接続していないが、インダクタの電磁界が外側に漏れるのを遮断する電極・配線である。この53(53−3)はフローティング(浮遊)状態でも良いが、電位を安定させたり制御したりするためにシリコン基板51や他の電極配線や半導体素子へ接続しても良い。本発明のインダクタは半導体装置が完成した後に組み込むこともできるので、電極・配線は、アルミニウム(Al)や銅(Cu)や金(Au)その他の金属或いはこれらの合金で形成される。或いは、本発明のインダクタは半導体装置が完成する前にも組み込むことができるので、その場合は、上記の材料に加えて、多結晶シリコン(Poly−Si)、タングステンシリサイド(WSi)やチタンシリサイド(TiSi)やモリブデンシリサイド(MoSi)等の金属シリサイド、クロウム(Cr)、タングステン(W)やチタニウム(Ti)やモリブデン(Mo)等の高融点金属、導電性炭素、或いは高導電性ポリマー、これらの複合物であっても良い。また、電極・配線53(53−1〜53−3)は絶縁膜54で被われていて、インダクタ端子に接続する部分55(55−1、55−2)は開口している。絶縁膜54は、CVDやPVD法により積層したシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、SOGやポリイミド膜等の絶縁膜を塗布して熱処理して硬化した絶縁膜やこれらの複合膜などである。開口部55を形成するときは、フォトリソ法とエッチング法により開口できる。或いは、感光性ポリミミド等の感光性絶縁膜を用いれば、フォトレジスト膜やエッチング法を用いなくても、感光性ポリイミド膜を塗布しプリベーク後開口部を露光法により形成でき、本熱処理により所望特性を有する絶縁膜54を形成できる。
53−3は電磁界を遮断する電極・配線であるが、他の電極・配線53−1、53−2と同時に同じ材料で形成しても良いし、或いは、シールド性を向上させるために別の材料(たとえば、磁性体)で形成しても良い。
次に、第1層目のコイル配線となる材料を積層し、フォトリソ法により所望のコイル配線を作る。この状態を図4(b)に示す。図4(a)の状態から、第1層目のコイル配線56となる材料を積層する。この材料は、Al,Cu、シリサイド、高融点金属、導電性炭素、高導電性ポリマー、或いはこれらの複合物である。Q値を高くするには、抵抗が低い方が良いので、好適にはAl、Cu、金(Au)、またはこれらの合金或いは複合物である。この材料56は、CVD法、PVD法、メッキ法、或いは塗布法により形成する。コイル配線56は電極・配線53と開口部55−1や55−2で接続している。この接続性を高めるために、開口部55(55−1、55−2)において電極・配線53(53−1、53−2)上に存在する不純物や残存絶縁膜を除去しても良い。たとえば、第1層目のコイル配線56の積層前に、ウエットエッチングやドライエッチングなどの前処理を行うことができる。或いは、スパッター法で積層する前には同じスパッター装置を用いて逆スパッター(スパッタエッチング)を行うこともできる。さらに、接続性や密着性を向上させるために電極・配線53(53−1、53−2)と56の間にバリアメタルを介在させても良い。このバイアメタルとして、チタンタングステン(TiW)やチタンナイトライド(TiN)やチタンタングステン(TiW)やチタニウム(Ti)、或いはこれらの複合物がある。もちろん、接続性や密着性を向上できる他の材料でも良い。
次に、所望のパターンのコイル配線56を形成形成するために、フォトレジストを塗布し光露光法によりコイル配線以外の除去したい部分を開口し、パターニングされたフォトレジストをベークして固める。この後、露出したコイル配線材料56をエッチングして所望のコイル配線56を得る。コイル配線上のレジストはウエット法またはドライ法(アッシング法)により取り除かれ、図4(b)に示すパターンが得られる。図4は、シリコン基板の断面を示しているので、図4(b)においては、コイル配線56−1と56−3は分離されて示されているが、実際にはコイル配線56はスパイラル状になっていて、コイル配線56−1と56−3は連続してつながっている。ただし、一方の電極・配線53−2は、コイル配線が多層構造になっている場合は、この1層目のスパイラル配線(56−1および56−3)とは接続しない。この段階で1層目のコイル配線層56−2を電極・配線53−2上に形成する目的は、深い接続孔を形成しないようにするためである。深い接続孔を形成する場合、接続孔を形成するときに、エッチング時間が長くなりエッチング装置に負荷がかかったり、深い接続孔において導電性膜の被覆性や接続性が困難となったりする可能性がある。そこで、電極・配線53−2を開口し(開口部55−2)第1層目のコイル配線56形成時にこの部分にコイル配線56−2をパターニングして残しておく。
図5はコイル配線パターンの平面図の1例である。図5(a)は、図4(b)の状態に対応する平面図の1例である。破線で示す73は電極・配線パターンであり、図4における53に対応する。73−1で示すパターンが電極・配線53−1に、73−2に示すパターンが電極・配線53−2に対応する。73−3は電極・配線53−3に対応する。75は図4における絶縁膜54に開けられた開口部であり、75−1が電極・配線73−1の上の開口部で、75−2が電極・配線73−2の上の開口部である。76は第1層目のコイル配線であり、四角形状にコイル配線が巻かれている。四角形状は円形状でも良いし、多角形状でも良いし、或いは楕円形状でも良い。第1層目のコイル配線76は、開口部75−1において電極・配線73−1とコンタクトしていて、この部分をコイル配線の端子部76−1と称する。第1層目のコイル配線76は、端子部76−1から始まって四角形状に1周分巻かれて、第1層目コイル配線76と第2層目のコイル配線79のコンタクト部分まで巻かれている。この部分を第1層目のコイル配線のコンタクト部分76−4と称する。この部分には、第2層目のコイル配線79とのコンタクト孔78が形成されている。
図3におけるインダクタの一方の端子Aは76−1に対応するが、他方の端子Bと接続する電極・配線である73−2には前述したように、接続配線を信頼性良く形成するために、開口部75−2が開けられ、第1層目のコイル配線がその開口部75−2を覆うように形成されている。このコイル配線を76−2と称する。図5(a)から分かるように、76−2は環状の第1のコイル配線76とは接続していない。図4(b)における56−3は、図5(a)における76−3に対応している。尚、コイル配線が1層だけの時には、図5(a)に示す1巻きでコイル配線は終了する。従って、76−2と76−4は一致する。コイル配線はできるだけ1周させた方が自己インダクタンスLが大きくなるので、一方の電極・配線73−1の近くに他方の電極・配線73−2を持ってくるのが良い。図5(a)においては、76−4の位置に73−2を持ってくると良い。本発明は、透磁率が10000以上のコアを用いることができるので、1巻きでも(すなわち、1層でも)所定のインダクタンスを得ることも可能である。1巻きの場合には、第2層目のコイル配線とのコンタクト孔78は不要なので、非常に簡単な工程で済む。
電極・配線73−3は電磁界をシールドすることが目的なので、できるだけコイル配線76全体を取り囲むようにパターニングする。すなわち、電極・配線73−1や73−2と接触しない程度に広い部分に敷き詰めるようにすると良い。ただし、余り広いとその上の絶縁膜の特性が劣化する場合(たとえば、絶縁膜にクラックを生ずる場合など)には、電極・配線73―3にスリットを入れたりすることが効果的である。尚、73−3を設ける必要がなければ不要であることは言うまでもない。
図4に戻って、次に図4(c)に示すように、絶縁膜(第2絶縁膜と称する)57を1層目のコイル配線56上に積層する。第2絶縁膜は、1層目のコイル配線56と2層目のコイル配線61が接続孔以外で接触しないようにするために積層される。第2絶縁膜として、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化幕、SOG塗布膜、ポリイミド膜や或いはこれらの複合膜を使用できる。平坦にする必要がある場合には、SOG膜やポリイミド膜などの塗布膜、バイアススパッターまたはバイアスCVDによる平坦化絶縁膜、或いはエッチバック法やCMPによる研磨法などを用いることができる。
次に図4(c)に示すように、フォトレジスト58を塗布し、露光法により、1層目のコイル配線56と2層目のコイル配線とのコンタクト孔を開けるべき部分のフォトレジスト58を開口する。59がこの開口部である。このフォトレジスト58をマスクとして、開口部59から下地の絶縁膜57をエッチングし、コンタクト孔60(図4(d)に示す)を開口する。このエッチングは、ウエットエッチングでもドライエッチングでも良い。コンタクト孔60のサイズを大きくしたくないときは、ドライエッチング特に異方性ドライエッチングを行う。コンタクト孔60を形成した後に、フォトレジストをウエットまたはドライ(アッシング)で除去する。尚、絶縁膜57を感光性ポリイミド膜などの感光性絶縁膜で形成すると、フォトレジスト58を用いなくても、直接絶縁膜57を露光法により、コンタクト孔60を形成できる。感光性ポリイミド膜は、フォトレジスト膜と同様な方法、すなわち塗布法によりシリコン基板51上にコートし、プリベークした後でマスクまたはレチクルを用いて露光する。露光後現像液などに浸漬しコンタクト孔60を開口する。その後熱処理し、ポリイミド膜を絶縁膜として要求される特性を得る。感光性絶縁膜を用いれば、CVDやPVD法による絶縁膜形成工程や、コンタクト孔エッチング工程を省略することができる。
尚、コイル配線が一層で良いときには、上記のコンタクト孔はパッド開口部として使用することもできる。この場合には、インダクタの端子自体をパッド開口部として使用し、半導体素子の外部から電圧(交流電圧や直流電圧)を印加することもできる。或いは、インダクタ素子のコイル配線は、電極・配線53に接続し、他の電極・配線の領域にパッド電極を設けることもできる。
次に図4(e)に示すように、2層目のコイル配線材料61を積層する。コンタクト孔60の内部にもコイル配線材料61が積層する。コイル配線材料61は1層目のコイル配線材料と同じ材料である方が、コンタクト抵抗を増大させないので好ましいが、余りコンタクト抵抗が増大させない場合は異なる導電体材料でも良い。異なる材料でも接触抵抗を下げる導電体材料を間に介在すれば良い。また、絶縁膜57に対して密着性が良くない場合には、密着性を向上させる導電体材料を積層すれば良い。たとえば、コイル配線材料がクロウム(Cr)やCuの場合には、Tiを薄く積層してからこれらの導電体膜を積層しても良い。コンタクト孔60へのコイル配線材料61の被覆性(ステップカバレッジ)が悪く、断線等の問題が発生するおそれがある場合には、コンタクト孔60を順テーパーにして被覆性を向上することができる。或いは、バイアススパッターやバイアスCVDで導電体膜を積層しても良い。或いは、メッキ法でコイル配線材料61を成長させても良い。メッキ法の場合には、シード層を形成してからメッキを行う方法がある。たとえば、コイル配線材料61がCuである場合、Cuは絶縁膜との密着性も良くなく、また、無電解メッキでは十分に成長できない場合があるので、最初にTiをPVD法で積層し、絶縁膜57との密着性を確保し、次にCuをPVD法で積層する。所望の厚みを積層した後、Cuメッキを行う。Cuの電解メッキは硫酸銅溶液等のメッキ液にシリコン基板51を浸漬して行う。
2層目のコイル配線61を積層した後に、フォトレジスト62を塗布してコイル配線として残したい部分以外のフォトレジスト62を露光法により除去して所望のフォトレジストパターン62を得る。このフォトレジストをマスクにして2層目のコイル配線61をエッチングし不要なコイル配線材料を除去する。エッチング終了後フォトレジスト62をウエットまたはドライ法によりリムーブする。この状態を図4(f)に示す。図4(f)に示すように、2層目のコイル配線は、1層目のコイル配線56の終端部(図5(a)における76−4)でコンタクト孔60−1を介して1層目のコイル配線56と接続している。この接続部が61−1である。この接続部61−1から61−3を通って環状に巻かれている。また、インダクタの他方の端子と接続する電極・配線53−2(ここには、既に開口部55−2を介して1層目のコイル配線材料56−2が形成されている)とコンタクト孔60−2を介して2層目の配線61−2が形成される。コイル配線が2層で終わるときは、この61−2と実質的なコイル配線61(61−1から61−3へ巻かれている配線)と連続的につながる。3層以上のコイル配線の場合には、この繰り返しがなされる。
図5(b)は、図4(f)における状態を平面的に見たものである。1層目のコイル配線76を破線で示している。環状に巻かれた1層目のコイル配線76の終端部76−4でコンタクト孔78−1(図4の60−1に対応)を介して2層目のコイル配線81(図4の61に対応)に接続する。この部分が81−1で、図4の61−1に対応する。2層目のコイル配線81も2層目のコイル配線81−3(図4の61−3に対応)を通って矩形形状に環状に巻かれる。矩形形状は、1層目のコイル配線と同様に、三角形形状、四角形形状、多角形形状、円形形状、楕円形形状等でも良い。コイル配線81は1周した後さらに巻かれて、他方の電極・配線73−2に1層目のコイル配線材料76−2およびコンタクト孔78−2を介して接続する。3層以上コイル配線があるときは、以上の繰り返しとなる。また、図4や図5においては、1層目のコイル配線は1周分、2層目のコイル配線は1周分(正確には図5においては、もう少し余分に)巻かれているが、インダクタンスLは巻き数の二乗に比例するので、もっと巻き数を増やしても良い。巻き数を増やす方法としては図5に示すように平面的に巻いていく方法と縦方向に積み重ねていく方法がある。
図4に戻る。次に図4(g)に示すように2層目のコイル配線61上に絶縁膜63を積層する。この絶縁膜は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、SOGやポリイミド膜などの塗布膜、或いはこれらの複合膜である。
次に、図4(h)に示すように、コイル配線の内側部分の絶縁膜を除去する(すなわち、コイル配線中央孔を形成する)ために、フォトレジスト64を塗布し、露光法によりコイル配線の内側部分65を窓明けする。この窓明け部分65のサイズは、絶縁膜を除去して、コア(芯9)を挿入して埋め込んだときにこのコアがコイル配線に接触しない程度であって、電気特性も信頼性も問題ないレベルのサイズにする必要があるとともに、インダクタ性能を向上させるために可能な限りコアがコイル配線に接近できる程度のサイズにする。
フォトレジスト64の窓明け部分65の下には、絶縁膜63、絶縁膜57、絶縁膜54、その下にさらに電極・配線53−3が存在する。ただし、これまで説明をしていないが、開口部55、接続孔60を形成するときに、同時に絶縁膜54、絶縁膜57を除去することができるので、その場合は、電極・配線53−3の上には絶縁膜63が存在するだけである。この窓明けされた部分65に存在する絶縁膜を除去して、図4(i)に示すように、コイル配線中央孔66を形成する。絶縁膜の除去は、ウエットエッチングまたはドライエッチングで行う。たとえば、絶縁膜がシリコン酸化膜(SiO)系である場合には、ウエットエッチングではフッ酸系エッチング液を用いたり、ドライエッチングではCF4ガス等のCF系ガスやCHF系ガス、SF系ガスなどを用いたりできる。電極・配線53−3は、絶縁膜のエッチングストッパーとなるが、電極・配線53−3上に少し絶縁膜を残すようにエッチングしても良い。
次にフォトレジスト64をリムーブした後に、流動性接着材67を塗布する。図4(j)に示すように、流動性接着材67はコイル中央孔66に厚くたまる。流動性接着剤67として、前述した材料以外に、ポリイミドやフォトレジストやSOG等の絶縁膜系塗布膜でも良い。この流動性接着剤がコイル中央孔66にたまっていて流動性がある状態で、コア71を付着させたサポート基板68を用意して、シリコン基板51に対してサポート基板68をパターン合わせしながら接近させていく。コア71は、高透磁率を持つ磁性体であり、コイル中央孔66に挿入できるようにあらかじめパターニングされている。シリコン基板51上には多数の半導体デバイスが形成されていて多数のコイル中央孔が存在する。これらの多数のコイル中央孔にコアを挿入するので、サポート基板68にも多数のコアが正確な位置に形成されている必要がある。図4(j)に示すサポート基板には、柱状のコア71の上端に磁気シールド材70が結合している。磁気シールド材70は、磁性体材料や導電体材料であるが、電磁気シールド効果を向上させるに高透磁率を持つ磁性体が良い。従って、コア71と同じ材料であっても良い。コア71と磁気シール材70は接着により付着していても良いし、一体物になっていても良い。同一材料である場合には、一体物として容易に作成できる。たとえば、サポート基板68に接合剤69を介してコアおよび磁気シールド材料となる高透磁率を持つ磁性体の薄板を張り付ける。磁性体薄板上にフォトレジストを塗布し露光法によりコアとなるべき部分にフォトレジストを残す。このフォトレジストをマスクにして薄板をウエット法またはドライ法によりエッチングする。コアが所望の厚さになった所でエッチングをやめる。次にこのフォトレジストをリムーブした後に、再度フォトレジストを塗布し、コアより大きいサイズで磁気シールドのサイズにフォトレジストをパターニングする。このフォトレジストをマスクにして磁性体を完全にエッチングする。エッチングが終了した後で、フォトレジストをリムーブして図4(j)に示すコア71および磁気シールド70のパターンを有するサポート基板68を得ることができる。コア71のサイズはコイル中央孔66に入る程度の大きさであるが、磁気シールドの大きさは、コイル配線をできるだけ広くカバーするようにすれば、電磁気シールドの効果が高まる。
次に図4(k)にしめすように、サポート基板68を下げていき、コア71をコイル中央孔66の中に挿入する。コイル中央孔66の中には流動性接着剤67が存在するので、コア71は流動性接着剤67の中に浸漬する。コア71の浸漬した分だけ流動性接着剤67はコイル中央孔66の外側に押し出される。所定の深さまで達したら、サポート基板68とシリコン基板51の接近を停止させる。図4(l)に停止状態における寸法を記載する。磁気シールド70の底面が流動性接着剤67に接触し少し浸漬した状態を停止位置とするのが良い。接触する前に停止すると磁気シールド70と流動性接着剤67との間に隙間ができて信頼性上問題を生じる場合がある。また、磁気シールド70の底面がシリコン基板51に接近しすぎるとシリコン基板51が損傷を受けたり割れたりする可能性がある。さらに、コア71の側面がコイル中央孔66の側壁に接触しないようにするとともに、コア底面が半導体基板51(すなわち、電極・配線53−3)に接触しないようにする。
コア71の厚みをa、コア71の底面と電極・配線53−3との距離をb、コア71の横幅をc、コア71とコイル中央孔66の一方の側面との距離をd、コア71とコイル中央孔66の一方の側面との距離をe、磁気シールド70の底面と絶縁膜63との距離(すなわち、その部分における流動性接着剤67の厚み)をf、磁気シールド70の底面と接触していない流動性接着剤67の厚みをg、磁気シールド70の厚みをhとする。f+i=a+bであるように、条件を定める。たとえば、a=20μmでb=0.3μmなら、i=20μm、f=0.3μmとする。中央孔66の横幅=c+d+eとなるが、d=e=1μmとして、中央孔66の横幅が102μmであれば、c=100μmとなる。磁気シールドの効果は、1μm程度あれば効果が出てくるので、hは1μm以上とする。尚、g>fとなるようにする。また、磁気シールドを用いないときは、コア71が直接接合材に付着しているので、コア71が完全に流動性接着剤67に浸漬しないようにするのが良い。従って、a+b>i+fとし、この場合は、f=gである。何故なら、この後熱処理して流動性接着剤67を固化するので、接合剤69やサポート基板68が流動性接着剤67に付着しないようにするのが良い。ただし、流動性接着剤67を固化する前に、接合剤69から磁気シールド70やコア71を外すこともできる場合には、この限りではない。a=2μmでb=0.3μmなら、たとえば、i=2μm、f=0.3μmとする。
磁気シールドがない場合には、コア71を流動性接着剤67中に完全に埋めても良いが、このときは、接合剤69を厚くつけて、コア71と接合していない接合剤69は除去しておくと良い。たとえば、i=3μmで、a=2.5μmであるときは、接合剤の厚みを0.5μm以上にしておく。このようにすれば、サポート基板68が半導体基板51上のパターンと接触することはない。また、コア71を流動性接着剤67の外側まで出しても良い。たとえば、i=1.5μmでb=0.3μm、aが3.0μm、f=0.5μmであるときは、コアが1.3μm外側へ出てくる。コア71が飛び出していても特に問題なければ、そのままでも良いが、耐湿性などの信頼性上問題があれば、SiNx膜やSiNxOy膜をCVD法で積層してコア71をカバーすれば良い。或いは、平坦化を行ったり、研磨してコアを削っても良い。
図4(k)または(l)の状態で、熱処理を行い流動性接着剤67を固化させコア71および磁気シールド70を固定させる。その後、接合剤69から磁気シールドを外し、サポート基板68も取り外す。たとえば、流動性接着剤67としてポリイミドを用いて、約150℃の温度である程度固化させる。150℃〜250℃で接着性が小さくなる材料を接合剤69として用いて、その後、150〜250℃で加熱して、サポート基板68からコア71、磁気シールド材70を分離させる。その後、約300℃で本熱処理を行い、ポリイミドを完全に固化させて安定化させる。たとえば、温度が上がると接着性が低下するものとして熱可塑性接着剤がある。
図4(m)は、サポート基板68を分離した後のシリコン基板51の状態を示す。コア71がコイル中央孔66に入り込んで固定されている。また、磁気シールド材70は、固化した流動性接着剤70の上に付着して固定されている。
次に、図4(n)に示すように、絶縁膜72を積層し、コア71、磁気シールド70をカバーする。コア71、磁気シールド70は磁性体であるから、外気に接触すると湿気により劣化する可能性がある。また、流動性接着剤67も吸湿する可能性もあるので、絶縁膜72でカバーする必要がある。絶縁膜としては、CVD法で形成したシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜が望ましい。尚、この後にパッド電極を開口するプロセスを行っても良い。この開口されたパッド電極を用いてインダクタを搭載した半導体装置の電気特性を測定することができる。
図6は、本発明の第1の実施形態におけるさらに別の例である。図6(a)は、半導体基板91に形成された半導体装置を示す。半導体基板91は、シリコン、ゲルマニウム等の単一元素半導体、ガリウムヒ素やインジウムリン等の二元系化合物半導体、三元系半導体等の基板、或いはSOI(Silicon On Insulator)等の貼り合わせ基板、炭素基板なども含む。また、基板とはウエハも含む。半導体基板上には多数の半導体チップが形成され、個々の半導体チップは半導体装置或いは半導体デバイスとして、通信用、プロセッサー用、メモリ用、画像処理用、電源用などの広範な用途のICまたは個別半導体装置として使用される。図6(a)に示す半導体装置は、本発明のインダクタを使用するすべての半導体装置を対象とする。図6(a)には、本発明のインダクタおよびその製造方法を説明するために必要な部分のみを示すが、他の半導体素子、たとえばトランジスタ等の能動素子、抵抗やコンデンサなどの受動素子、これらを含む回路や配線なども形成されている。
図6(a)において、半導体基板91上に絶縁膜92が存在し、その上に電極・配線93(93−1〜93−5)が形成されている。電極・配線93−1は、本発明のインダクタの1つの端子に接続する電極・配線であり、その上面が開口されている。電極・配線93−2は、本発明のインダクタの他方の端子に接続する電極・配線であり、その上面が開口されている。開口部を95と番号付けしているが、開口部95−1は電極・配線93−1の開口部であり、開口部95−2は電極・配線93−2の開口部である。電極・配線93−3は、コイルで発生する電磁界を遮断するために、コイル中央孔となる部分の下に設けている。
電極・配線93−4や93−5は、コイルで発生する電磁界を遮断するために、コイル配線の周辺となる部分の下に設けている。電極・配線93−3〜5は、電極。配線上の絶縁膜94をエッチングするときのエッチングストッパーとしても機能する。電極・配線93−3〜5の材料は、93−1および93−2と同じである場合は、93−1および03−2を形成するときに同時に形成できるので、工程増にはならずコストアップにはならない。しかし、磁界シールドの効果を高めるには、高透磁率の材料が良いので、53−1および53−2と異なる材料を用いても良い。尚、電磁界をシールドする必要がないとき、余り効果がないときには、93−3〜5を備えなくても良い。電磁界をシールドするためには、できるだけコイル配線をカバーした方が良いので、他の電極・配線とショートしたり、或いは絶縁膜にクラックが入ったりして、電気特性や信頼性に影響を与えないようにして、可能な限り広い面積をカバーした方が良い。
次に、図6(b)に示すように、シード層96を積層する。シード層96は導電体、特に金属膜であるが、メッキの起点になるので、メッキ金属と同じ材料とするのが望ましい。たとえば、銅メッキを行う場合には、銅または銅合金とするのが良い。シード層96の材料が絶縁膜96および電極・配線93に対して密着性が良くない場合やその後の熱処理などにより反応して特性が劣化する場合などは、バリアメタルを積層してからシード層96を積層する。このバリアメタルは電極・配線93との接合の改善にもなる。たとえば、電極・配線93がアルミニウムまたはアルミニウム合金でシード層96が銅または銅合金である場合には、バリアメタルとして、チタン(Ti)、TiN、TiW、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、タンタルタングステン(TaW)などを積層する。電極・配線93の膜厚は0.3μm〜2μm、バリアメタルの厚みは0.01〜0.5μm、シード層の厚みは0.1〜2μmである。シード層および/またはバリアメタルはスパッター法や蒸着法、或いはCVD法により積層される。
次に、図6(c)に示すように、シード層96上にフォトレジスト97を形成する。フォトレジストは塗布により形成しても良いし、感光性フィルムを半導体基板91上に添付しても良い。次に、図6(d)に示すように、露光法によりコイル配線を形成する部分98を窓明けする。たとえば、窓明け部98−1はコイル配線が半導体装置側の電極・配線93−1と接続する部分のコイル配線形成部分であり、窓明け部98−2はコイル配線形成部分であり、窓明け部98−3はコイル配線が半導体装置側の他方の電極・配線93−3と接続する部分のコイル配線形成部分である。窓明け部98の深さは、コイル配線の厚みと同程度か、それより小さくする。たとえば、厚さ10μmのコイル配線を形成するときは、レジスト97の厚みを約10μm以上とする。コイル配線の厚みはコイルのインダクタンスの値を決めるので、窓明け部98の深さ、すなわちフォトレジストまたはドライフィルム97の厚みを決定できる。フォトレジストやドライフィルム97は感光性ポリイミドその他の感光性ポリマーや感光性樹脂や感光性フィルムや感光性ソルダーレジストでも良い。
次に図6(e)に示すように、窓明け部分で露出したシード層96をもとにしてメッキ金属99を成長させる。メッキ金属が銅である場合には、たとえば、半導体基板を硫酸銅溶液に浸漬し、半導体基板を一方の電極にして他方の電極との間に電界を印加する。所定厚みのメッキ層99を成長させるが、窓明け部98の深さ(レジストの厚さ)以上に成長させるとメッキ天井部できのこ状に成長するので好ましくはない。メッキはウエットが一般的であるが、ドライメッキすなわち、選択CVD法を用いて金属膜99を成長させることもできる。
次に図6(f)に示すように、フォトレジスト97をウエット法またはドライ法(アッシング)により除去すると、メッキ層99のないシード層96が露出する。次に、図6(g)に示すように、シード層96をエッチングする。このエッチングは、半導体基板91の全面エッチングである。エッチング方法としては、ドライエッチングとウエットエッチングがある。ウエットエッチングにおいて、シード層が銅の場合には、硫酸―過酸化水素水系や塩化鉄系などのエッチング液に半導体基板91を浸漬するか、エッチング液をスプレー状に半導体基板91上にシャワーしたりして、エッチングする。バリアメタルが積層している場合には、バリアメタルはシード層より薄いので、シード層と同じエッチング液でエッチングできることが多い。たとえば、シード層が銅の場合にバリアメタルとしてチタンを使用したとき、上記のウエットエッチング液でチタンもエッチングできる。図6(f)の状態でエッチングを行うため、シード層96をエッチングしているときに、当然メッキ層99もエッチングされる。シード層96と同じ材料の場合は、シード層96とメッキ層99の形成方法が異なっていてもその両者のエッチング速度は余り異ならないが、大きく異なるとメッキ層99が極端にエッチングされたり、或いはシード層が極端にエッチングされてキノコ状の形状になったりするので、エッチング液の選定や条件出しが重要である。また、バリアメタルが存在する場合、バリアメタルのエッチング速度がシード層のエッチング速度より小さい場合には、メッキ層99やシード層96のエッチングされすぎないように注意する必要がある。或いは、バリアメタルのエッチング速度が速い場合には廂ができないように注意する執拗がある。上記のようにシード層96のエッチング時にメッキ層もエッチングされるので、そのエッチング量を考えてメッキ層の厚みを決定する。たとえば、バリアメタルも含めたシード層厚みを1μmとして、バリアメタルも含めたシード層のエッチング量をオーバーエッチングも含めて1.2μm行うとしたとき、コイル配線の全体の厚みを10μmにしたいとすれば、メッキ層の厚みを約10.2μmとすれば良い。以上のようにしてコイル配線が形成される。
次に、図6(h)に示すように、感光性ポリイミド膜100を塗布する。塗布後プリベークした後、図6(i)に示すように、露光法により、コイル中央孔101を開口する。また、露光法により、同時にコイル周辺部も開口する。このポリイミド開口部分102(102−1、102−2)にも磁性体が挿入されて、電磁シ−ルドの役割を果たす。ポリイミド開口部101および102を開口した後、熱処理を行いポリイミドを硬化させて安定化する。このように感光性ポリイミド膜を用いることにより、絶縁膜とフォトレジストの兼用ができるため、材料費が節約できるだけでなく、工程が簡略化できる。露光前のプリベークは80℃〜120℃で行われることが多い。ポリイミド膜の最終熱処理条件は、信頼性レベルにより異なるが、約250〜500℃で行われる。この工程後の熱処理温度も考慮して決定する。
次に、図6(j)に示すように、ポリイミド膜100の開口部101および102において電極・配線93上の絶縁膜94をエッチングする。エッチング方法には、ウエットエッチング法とドライエッチング法がある。絶縁膜94がシリコン酸化膜であるときは、ウエットエッチングの場合はたとえば、フッ酸系溶液でエッチングでき、ドライエッチングの場合はたとえば、CF4やC4F8等のフッ素系ガス、CHF3等のCHF系ガス、SF6等のSF系ガスなどがある。電極・配線93がエッチングストッパーとなるため、多少のオーバーエッチングを行っても電極・配線93を余りエッチングさせずにできる。また、半導体シリコン基板91の全面エッチングであるから、ポリイミド膜100もエッチングされるため、コイル配線99上のポリイミド膜100の厚みが薄くなるので、それを考慮してポリイミド膜100の厚みを決定する必要がある。また、熱処理によりポリイミド膜100の厚みは縮小するので、この縮小分も考慮してポリイミド膜100の厚みを決定する。
次に、図6(k)に示すように、流動性接着剤101を塗布する。流動性接着剤101は、使用状態で液体状である。流動性接着剤101を半導体基板91上にたとえば滴下して半導体基板91をスピンさせて半導体基板91上に均一に塗布する。窪みには厚く塗られ凸部分には薄く塗られる。たとえば、図6(k)に示すように、ポリイミド開口部101、102には厚くなり、コイル配線部99上には薄くなる。流動性絶縁膜101が電極・配線93上やポリイミド膜100上に直接形成すると特性が良くない場合には、流動性接着剤101を塗布する前に、CVD法やPVD法を用いて薄く(たとえば、0.1μm〜2μm)絶縁膜(SiOx、SiNx、SiOxNy膜等)を積層しても良い。一方、サポート基板107には、接合層106を介して、磁性体薄板105と柱状の磁性体104がパターニングされて付着している。磁性体104−3はコイル配線のコアとなる。また磁性体104−1および104−2は、コイル配線99の外側を取り囲む。また、磁性体薄板105はコア配線99の上部を覆う。磁性体104−1、104−2は半導体基板91のポリイミド開口部102−1、102−2に挿入できるようにパターニングされている。コア104−3はコイル中央孔101に挿入できるようにパターニングされている。
半導体基板91のアライメントマークまたは実パターンに対して、サポート基板107のアライメントマークまたは実パターンを正確に合わせて両基板を接近させて、コア104−3をコイル中央孔101へ、磁性体104−1、104−2をそれぞれポリイミド開口部102−1、102−2へ挿入する。
次に図6(l)に示すように、挿入が完了した後、流動性接着剤104を固化して、磁性体104−1〜104−3、および磁性体薄板105を固定する。さらに接合層106を軟化し接着力を低下させて磁性体薄板105を分離する。この状態を図6(l)に示す。この後、図6(n)に示すように、図5(n)に示す場合と同様に、絶縁膜106を積層して、磁性体104−1〜3を保護することができる。図6(n)に示すように、本実施形態におけるコイルは、縦方向に一巻きで横方向(平面方向)にも一巻き(正確には、図5(b)に示す場合から分かるように、約1巻き半)のコイルであり、コイル中心に磁性体コアが入っている。従って、コアがない場合(空芯コイル)に比較して透磁率の分だけインダクタンスが増大する。本発明は、たとえば、非常に大きな透磁率を持つ強磁性体であるFe、Co,Niやこれらの合金をコイル配線のコアに使うことができるので、高性能のコイルを作成できる。たとえば、パーマロイ(Fe−Ni合金)の薄板をコアとして使用すれば、透磁率が約20000以上であるから、同じサイズならば空芯コイルの約20000倍以上のインダクタンスを得ることができ、同じインダクタンスであるならば、サイズを1/20000以下とすることができる。また、Q値も非常に向上できる。さらに、本実施形態においては、コイル配線が磁性体で取り囲まれているので、電磁界をシールドできるので、高品質のコイルとなる。また、プロセスが非常に簡単なため、作製が容易であり、プロセス安定度も非常に高い。しかも通常の半導体装置に簡単にコイル(インダクタ)を接続し組み込みできるので、非常に小型のインダクタ付き半導体装置となる。また、磁性体としてフェライトなどの絶縁性を持つものを使うこともできる。その場合、絶縁体であるから、コイル配線にかなり接近させることができるし、或いはコイル配線と接触してもコイル配線から電気が流れることはないというメリットもある。
図7は、図6に示す製造方法の変形である。図7(a)〜図7(j)までは、図6(a)〜図6(j)と同じであるので、説明を省略する。図7(j)に示すように、コイル中央孔101、ポリイミド開口部102(102−1、102−2)、これらの開口部における電極・配線93上の絶縁膜94も除去されている。
次に、図7(k)に示すように、パターニングされた磁性体112(112−1〜112−3)が付着したサポート基板110を半導体基板91にパターン合わせを行いながら接近させる。サポート基板110が透明なガラス基板であるならば、ガラス基板110を通して光を透過させ半導体基板91とパターン合わせができる。サポート基板110が光に対して不透明な基板、たとえばシリコン基板やセラミック基板、或るいは金属製基板であるならば、反射光を用いたパターン合わせができる。或いは、サポート基板を通す電磁波、赤外線や紫外線やX線などを用いてアライメントできるし、或いは、半導体基板91の合わせマークに合わせたサポート基板110に貫通孔をあけてその孔を通してアライメント合わせが可能となる。いずれにしても非常に高精度にサポート基板110と半導体基板91を合わせることが可能である。半導体基板91に対して、サポート基板110を垂直方向に接近させることも高精度にできるので、パターニングされた磁性体をポリイミド開口部へ高精度に挿入することができる。また、垂直方向への移動距離のコントロールは現状でも0.1μmの制御が可能であるから、問題なく半導体基板91に磁性体を付着できる。
図7(k)から分かるように、図7における実施形態では、流動性接着剤を用いずに、磁性体112(112−1〜112−3)の底面に接着剤113(113−1〜113−3)を付着させる。この付着方法は種々考えられる。たとえば、接着剤液にサポート基板に付着した磁性体112の底面を浸漬して付着させる方法がある。接着剤113は、たとえば熱硬化性の接着剤である。たとえば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂がある。或いは、導電性接着剤も用いることができる。
また、図7においては、磁性体112を連結した電磁シールド用の磁性体を用いていない。この理由は、この電磁シールド用磁性体を用いると開口部101、102と磁性体112(112−1〜112−3)との間に生じる隙間(空間)114を埋めることができないからである。接着剤113を介して磁性体112が電極・配線93に接触したときにサポート基板91へのサポート基板110の接近を停止する。この状態が図7(l)に示されている。この図からも分かるように、サポート基板110は半導体基板91の最上部であるポリイミド100に接触しないようにする。この理由は、接触するとポリイミド100や、しいては半導体装置へ損傷を与えることを防止するためである。このために、磁性体112の厚みを調整し、半導体基板91の最上部であるポリイミド膜100の上面より少し上に来るようにする。
この後、熱処理を行い、接着剤113を硬化させて磁性体112を電極・配線93に固定する。その後接合剤111の接着力を弱めて、サポート基板110から磁性体112を分離する。たとえば、接着剤113を硬化させる温度よりも高い温度で軟化して接着力が低下する材料を接合剤111に使用すれば良い。たとえば、熱硬化性樹脂がある。この状態を示したものが図7(m)である。すなわち、磁性体112−3は、コイル中央孔101に入り込み、電極配線93−3の上に固定されている。磁性体112−1、112−2は、コイル周辺部を囲むようにして電極・配線93−1、93−2の上に固定される。導電性接着剤を用いれば、磁性体112と電極・配線93と電気的に接続するので、電磁界シールドの性能が向上する。電極・配線上の絶縁膜94を除去する目的は、この他に、磁性体112の底面の位置をできるだけ下げて、コイル配線を高さ方向にカバーできるようにすることもある。本発明のコイルは極めて性能が良いので、そこまでする必要がなければ、絶縁膜94をエッチング除去しなくても良い。このエッチング工程がなければプロセスがさらに簡略化される。
次に、図7(n)に示すように、絶縁膜115を形成し、隙間(空間)114を埋めるとともに、磁性体112を絶縁体でカバーして保護する。ポリイミドやSOGなどの流動性絶縁膜は、狭い隙間(空間)114を埋めることが比較的むずかしいので、その場合は、CVD法によって絶縁膜を形成することが良い。耐湿性を向上させるならば、SiNx膜やSiNxOy膜等の窒素含有膜が望ましい。
以上のように図7に示す方法によっても、コアをコイル中央孔およびコイル配線の周辺に配置することができる。この場合天井部には磁性体がないので、電磁シールドの効果は図6に示す場合に比較して少し弱い。
図8は、サポート基板に磁性体を付着させパターニングする方法について説明する図である。サポート基板の材料として、ガラス、セラミック、シリコン、金属板等を用いることができる。半導体基板側のサイズに対して、同程度の大きさであるが、大きくても良いし、小さくても良い。半導体基板の形状と必ずしも同じでなくても良い。通常半導体基板は円板(平面的には円形)状であるから、アライメントを考えると同一形状が良いが、矩形や楕円形でも良い。要は、多数のコイルを形成する必要がある半導体基板に対して、1回の操作でサポート基板からコイル中央孔および/またはコイル周辺の開口部へコア等の磁性体を挿入できるようにすることが必要である。ただし、サポート基板を小さくしてステップアンドリピート方式(ステッパーと同じ)で磁性体を搭載する方法を排除しない。
図8(a)に示すように、サポート基板121上に接合剤122を形成し、磁性体の薄板を貼り付ける。磁性体としては、所望の透磁率を持つ材料を選択する。すなわち、この材料は、インダクタの持つインダクタンスやインダクタのサイズ、コイルの巻き数、コイル配線の抵抗などによって決まる。たとえば、高透磁率の材料として、パーマロイ、強磁性体のFe、Co、Niなど種々のものがある。磁性体の厚みは、これまでの説明からも分かるように、コイル中央孔の深さと同程度の厚みとなる。最近は、10μm以下の非常に薄い薄板も形成できるので、本発明においてもサポート基板に貼り付けた状態で使用できるが、もっと薄くしたい場合とか、厚い磁性体を薄くしたときには、サポート基板121上に接合剤122を介して貼り付けた後で、全面エッチングを行って薄くしても良いし、グラインダーで研磨して薄くすることもできる。CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いることにより、精度の良い厚さの磁性体を得ることができる。
磁性体の薄板を貼り付ける方法でなくとも、スパッターや蒸着等のPVD(物理気相成長)やCVD(化学気相成長)を用いてサポート基板上に形成しても良い。このときも接合剤122上に積層する。スパッターの場合、ターゲットとして磁性体を用いて、タッゲートにAr等の不活性ガスでスパッターしてサポート基板上に積層する。ナノメートルレベルで厚みをコントロールできるので、正確な厚みの磁性体をサポート基板上に形成できる。
接合剤122として、熱処理、紫外線照射により接合力がなくなったり弱まったりする材料を用いる。たとえば、熱可塑性樹脂や、半田等の金属である。これまで説明したように磁性体を半導体基板側に接着するまでは、磁性体はサポート基板121に強固に付着している必要がある。磁性体124を半導体基板に硬く接着してから、サポート基板121から磁性体を分離させる方法として、磁性体を半導体基板側に接着する接着剤の硬化温度より接合剤122の軟化温度や融点が高いものを使用すれば良い。このような組合せの樹脂や金属はたくさんあるので、その中からより良いものを選択すれば良い。たとえば、250℃以下で固化する熱硬化性樹脂を半導体基板側と接着する接着剤に選定し、300℃以上で軟化する熱可塑性樹脂を接合剤122として用いれば良い。
次に、図8(b)に示すように、フォトレジストを塗布(あるいは感光性ドライフィルムを貼付して、磁性体を残すべき部分上にフォトレジスト等を露光法(プリベーク、現像、ポストベーク等を含む)により残すようにパターニングする。次に図8(c)に示すように、フォトレジストをマスクにして、磁性体をエッチングする。磁性体のエッチングにはウエットエッチングやドライエッチングがある。たとえば、鉄の場合、塩素ガスなどを用いたドライエッチングを行う。また、COガスとNH3ガスを混合してドライエッチングすることもできる。ウエットエッチングの場合は、希硫酸系や希塩酸系や塩化第二鉄系のエッチング液を用いれば良い。尚、ウエットエッチングの場合や等方性ドライエッチングの場合、フォトレジストのマスクに対してサイドエッチングとなりエッチング側面がテーパー状になる(すなわち、フォトレジスト側が幅が小さくなる)ので、このテーパー形状を考慮したコイル中央孔などを作製することもできる。たとえば、磁性体のこのテーパー形状がスムーズに挿入できるように、コイル中央孔などもテーパー形状(開口部上部(挿入側)は広く、開口部底部が狭くなるようなテーパー形状)とする。もちろん、コイル中央孔が垂直形状に近い孔でも、テーパー形状の磁性体パターンはスムーズに入る。異方性ドライエッチングの場合は、フォトレジスト124の形状に近いパターンが得られるので、サイズのコントロールが容易である。尚、Fe以外の強磁性体やパーマロイなども同様にエッチング可能である。
次にフォトレジストを除去して、図8(d)に示すように、磁性体パターン123(123−1〜123−3)が得られる。このようにして、サポート基板上に磁性体パターン123を形成できる。尚、磁性体のない部分の接合剤122は残しておいても良いが除去しても良い。接合剤の厚みは約0.1μm〜10μmで良いので、特に接合剤の厚みが薄い場合は、エッチング時(特にドライエッチング時)に接合剤が削れてなくなってしまう可能性もあるが特に問題はない。
図9は、磁気シールド材を有する場合のサポート基板を作製する方法を説明する図である。図9(a)に示すように、サポート基板131上に接合剤132を付着させる。接合剤132は、塗布用または貼付法により付着させる。その上に、磁気シールド材133となる材料を積層または付着する。磁気シールドは、高透磁率を持つ材料ほどその効果が大きいので、磁気シールド材133は高透磁率の材料が良い。従って、この後で積層または付着する磁性体の材料と同じ材料でも良い。もちろん、高透磁率の材料で異なる材料でも良い。次に磁性体の薄板134を積層または付着させる。磁気シールド材133や磁性体134はPVD法やCVD法で積層しても良い。
次に図9(b)に示すように、フォトリソ法により、フォトレジストのパターン135を形成する。次に図9(c)に示すように、フォトレジスト135をマスクとして磁性体134をエッチングし、磁性体134(134−1〜134−3)をパターニングする。磁気シールド材133と磁性体134が異なる材料のときは、エッチング速度がある程度異なるので、このエッチング速度差を利用して磁気シールド材133を余りエッチングしないようにする。同一材料のときでも、磁性体134と磁気シールド材133との境界においてエッチングが不連続となるので、磁気シールド材を余りエッチングしないようにすることができる。
次に磁性体134のエッチングが完了した後、フォトレジスト135を除去すると、図9(d)に示すようにな磁性体134(134−1〜134−3)のパターンを得る。次に、図9(e)に示すように、磁気シールド材133をパターニングするために、フォトレジスト136を所望のパターンにして、図9(f)に示すように、このフォトレジスト136をマスクにして磁気シールド材133をエッチングする。この後フォトレジスト136を除去して、図9(g)に示すように、磁気シールド133を所望のパターンに形成できる。このようにして、磁性体134(134−1〜134−3)のパターンと磁気シールド133のパターンを作製できる。
図10は、磁気シールド材を有する場合のサポート基板を作製する他の方法を説明する図である。図10(a)に示すように、磁気シールド材と磁性体を同一材料とする磁性体143を接合剤142を介してサポート基板141上に付着または積層する。次に、図10(b)に示すように、フォトレジストまたは感光性ドライフィルムでパターニング(144)する。このパターニング144をマスクにして磁性体143を所望の量だけエッチングする。磁性体143は磁気シールドとなる分(145で示す)だけ残す。このようにして、図10(c)に示すように、磁性体のパターン143(143−1〜143−3)を形成する。その後フォトレジスト144を除去した図が図10(d)である。次に図10(e)に示すように、磁気シールド材となる部分を形成するためにフォトレジスト146をパターニングする。次に図10(f)に示すように、このフォトレジスト146をマスクにして、磁気シールド材145をエッチングし、所望の形状のパターン145−1を得る。この後フォトレジスト146を除去して、図10(g)に示すように、磁気シールド145−1を所望のパターンに形成できる。このようにして、同じ磁性体材料を用いて、磁性体143(143−1〜143−3)のパターンと磁気シールド145(145−1)のパターンを作製できる。
図11は、本発明の第3の実施形態を示す図である。図11に示す図は、本発明のインダクタを搭載した半導体装置の構造を示している。図11に基いて、この第3の実施形態に示されるインダクタの製造方法を説明する。半導体基板501上に形成された絶縁膜502の上に電極・配線503が形成されている。503(503−1、503−2)は、インダクタの端子が接続される電極・配線である。
電極・配線503の上に絶縁膜504を形成し、電極・配線503の一部を開口する。電極・配線503は、この開口部505(505−1、505−2)を通してインダクタ(コイル)配線に接続する。次にコイル配線506を積層する。コイルの品質を向上するには、Q値を高くすると良い。Q値を高くするにはコイル配線の抵抗を下げると良い。コイル配線の材料が同じであれば、コイル配線の断面積を大きくすれば良い。横方向へサイズを大きくし、厚みを厚くすれば良い。厚みを厚くするためには、PVDやCVD法で導電体膜を厚く成長させる方法があるが、5μm以上の厚みは時間がかかり生産性が悪くなる。メッキ法も同様であり、20μm以上のメッキは時間がかかる。そこで、この第3の実施形態では、コイル配線もサポート基板にあらかじめ作成しておき、サポート基板に付着したコイル配線を半導体基板に付着させる。サポート基板に付着したコイル配線を厚いコイル配線508と称し、前述した半導体基板501上に積層したコイル配線506と区別する。
積層したコイル配線506をパターニングし、電極・配線503(503−1、503−2)と接続し、将来コアを配置する場所を巻くように、環状に形成する。次にサポート基板に付着した厚いコイル配線508をこのパターニングされたコイル配線506に付着させる。サポート基板に付着した厚いコイル配線508の底部に接着剤507を付着させ、この接着剤507を介して厚いコイル配線508をコイル配線506に付着させる。厚いコイル配線508とコイル配線506は電気的に接続する必要があるので、この接着剤507は導電性接着剤である。或いは、融点の低い金属や合金でも良い。サポート基板に厚いコイル配線508を形成する方法は、前述した磁性体を付着させた方法と同じ方法を使用できる。たとえば、所定の厚みを持つ導電体薄板をサポート基板に貼り付ける。この時の接合剤は熱可塑性(熱軟化性)接着剤などである。貼り付けた導電体膜を半導体基板501に搭載できるように、多数のコイル配線にパターニングする。このパターニングされたコイル配線が厚いコイル配線508である。尚、コイル配線506の材質と厚いコイル配線508の材質は同じでも良いし、異なっていても良い。また、コイル配線506は途中で切れていても良い。その後の導電は厚いコイル配線508に電気が流れるので問題はない。厚いコイル配線508を接着剤507を介してコイル配線506に付着し、この接着剤の硬化温度以上で熱処理して厚いコイル配線508をコイル配線506に固定する。その後でサポート基板に厚いコイル配線508を接合している接合剤の軟化温度まで上げて接合剤の接着力をなくすか弱めて、厚いコイル配線508とサポート基板を分離する。
次に、絶縁膜509を積層しコイル配線506および厚いコイル配線508をカバーする。次に、サポート基板に付着したパターニングされた磁性体511をコイルの内部空間(コイル中央孔)に挿入し、磁性体511底部に付着させた接着剤510を介して、コイルの内部空間(コイル中央孔)の底に付着する。サポート基板から磁性体511を分離する方法は前述したものと同様である。次に保護膜としての絶縁膜512を積層し、磁性体511をカバーする。第3の実施形態においても前述した流動性接着剤や感光性絶縁膜を使用することもできる。本発明においては、CVD法やPVD法により絶縁膜を積層すると厚いコイル配線508およびコイル配線506の形状にコンフォーマルに近いカバレッジで積層するので、厚いコイル配線508およびコイル配線506の内側には、これらのコイル配線の形状に近いコイル中央孔が形成されるので、容易に磁性体511を挿入できる。
次に、磁性体が付着された別のサポート基板の例を示す。半導体基板の上部はいろいろな凹凸があり、磁性体を半導体基板に磁性体を挿入し付着し分離するという一連の工程中に、半導体基板のこのような凹凸の最上部にサポート基板が接触しないようにしなければならない。特に、磁性体の厚みが薄く中央孔の深さより小さい厚みのときでも使用できるサポート基板について説明する。図12(a)に示すように、サポート基板151上に、接合剤152を付着する。この接合剤152の厚みは、挿入する磁性体の厚みと挿入されるコイル配線中央孔(ポリイミド開口部なども含む)の深さを考慮して、サポート基板151が半導体基板上のパターンに接触しないように決定する。たとえば、磁性体の厚みが2μm、コイル配線中央孔の深さが2.1μm、磁性体の底に付着する接着剤の厚みが0.1μm、全体のばらつきの最大値が0.3μm、サポート基板と半導体基板の上下方向の余裕度を0.2μmとすると、サポート基板141が半導体基板上のパターンに接触しないようにするためには、磁性体底部からサポート基板の平坦部(磁性体のない所)までの距離は、2.5μm以上なければならない。この場合は、接合剤152の厚みを0.5μm以上とする。
接合剤152は熱可塑性ポリマーのようにある温度以上で接着力が低下するものが良い。従って、プロセス可能な範囲内に融点を持つ金属や合金でも良い。或いは、無機物でも良い。塗布法で付着しても良いし、シート状のものを付着しても良い。次に磁性体153を接合剤152の上に付着させる。次に図12(b)に示すように、フォトリソ法により、フォトレジスト154を所望のパターンに形成する。
次に、このフォトレジスト154をマスクにして磁性体153をエッチングし、さらに接合剤152もエッチングする。この接合剤は完全にエッチングしても良いし、或いは所定の深さが得られたならば途中でエッチングを終了しても良い。また、接合剤152をエッチングしてもまだ深さが不足しているようでアレバ、サポート基板151もエッチングしても良い。磁性体153のパターンは余りサイドエッチングすると形状が変化し特性が変化する可能性もあるので、できるだけサイドエッチングを抑えた方が良い(尚、前述したように積極的にサイドエッチングを行う場合もある。)が、接合剤やサポート基板は、最終的には不要なので、しっかりと磁性体153がサポート基板に固定されていれば、多少のサイドエッチングは問題ない。
図12(d)は、フォトレジスト154を除去した後のサポート基板上に形成されたパターンを示す図である。磁性体153も接合剤152もパターニングされており、磁性体の底(ここでは上になっているが)からサポート基板までの距離が磁性体153の厚みよりも接合剤152の厚み分大きくなっている。この距離がもっと必要ならば、接合剤152の厚みを大きくしたり、さらにサポート基板151をエッチングすれば良い。この結果、サポート基板を半導体基板のパターンに接触させることがなく、コイル配線中央孔やポリイミド開口部へ磁性体153を挿入し付着し固定し、さらにサポート基板151から磁性体を分離できる。尚、接合剤152を半導体基板側に残し、軟化溶融させて、磁性体との間の隙間や空間へ流し込んで隙間や空間を埋めることもできる。
図13は、本発明の第4の実施形態を示す図である。この実施形態においては、サポート基板にコイル配線とコアをあらかじめ作製しておく。すなわち、コア付きのインダクタがサポート基板に形成されていて、このコア付きのインダクタを半導体基板に作製されている半導体装置(デバイス)に付着させるものである。図13においては、コイル配線が半導体基板に形成されるまでは、図11の場合と同様であるから、図11と同じ番号を用いる。すなわち、半導体基板501上にコイル配線506が積層され所望の形状にパターニングされている。
一方、サポート基板521上に接合剤522を介在してコイル配線523が形成される。このコイル配線523は、別基板で形成したコイル配線を本発明と同様の方法で付着させても良いし、このサポート基板521の上に接合剤522を形成した後に積層するかコイル配線の薄板を貼り付けるかして、その後でコイル配線となるようにパターニングしても良い。前者の場合は、サポート基板521上に磁性体524のパターンを形成しておく。この形成方法は、前述の方法を用いれば良い。次に、別の基板に形成されたパターニングされたコイル配線523(523−1、523−2)を付着させる。この時に用いる接着剤(接着剤Aとする)は熱硬化性樹脂である。別基板とコイル配線が接合している接合剤を接合剤Bとする。接合剤Bは熱可塑性樹脂である。接着剤Aの硬化温度をTA、接合剤Bの軟化温度をTBとする。TA<TBとなるような樹脂を選択する。コイル配線523をサポート基板に付着させ固定するときに、TAとTBの中間の温度で熱処理をする。次にTB以上で熱処理しコイル配線を別基板から分離する。このとき、サポート基板521上の接合剤522が軟化してしまうと良くないので、接合剤522の軟化温度TCはTBより高い材料を用いる。
後者の場合は、サポート基板521上にコイル配線パターンを形成する。次に、別の基板に形成されたパターニングされた磁性体524を付着させる。この時に用いる接着剤(接着剤Dとする)は熱硬化性樹脂である。別基板と磁性体524が接合している接合剤を接合剤Eとする。接合剤Eは熱可塑性樹脂である。接着剤Dの硬化温度をTD、接合剤Eの軟化温度をTEとする。TD<TEとなるような樹脂を選択する。磁性体524をサポート基板に付着させ固定するときに、TDとTEの中間の温度で熱処理をする。次にTE以上で熱処理しコイル配線を別基板から分離する。このとき、サポート基板521上の接合剤522が軟化してしまうと良くないので、接合剤522の軟化温度TCはTEより高い材料を用いる。
以上のようにしてサポート基板521上にコイル配線523と磁性体524を配置した後で、(磁性体524はコアであり、コイル配線の内側に入り込んでいる。)感光性樹脂(たとえば、感光性ポリイミド)を塗布し、コイル配線523の外側まで覆われるようにパターニングする。この後感光性樹脂の硬化温度以上で熱処理して感光性樹脂を硬化させる。コイル配線は複数サポート基板上に搭載されているが、この段階でコイル配線同士の間には感光性樹脂はなく、図13に示すように接合剤522が露出されている。次に、サポート基板521のコイル配線523および磁性体がある側(サポート基板521の表側)を研磨してコイル配線523の表面を露出させる。或いは全面エッチバックしてコイル配線523の表面上にある樹脂を取り除く。磁性体524の表面も露出する可能性があるが、露出したくないときは、磁性体の高さをコイル配線より低くすれば良い。この段階で単体のコイルまたはインダクタとして完成している。このコイルはコア524を有する。
次に露出したコイル配線523の表面に導電性接着剤を付着させる。この状態が図13に示されている。図13において、磁性体コア524がコイル配線523(523−1、523−2)の内側に挿入されている。コイル配線523と磁性体524の間には感光性樹脂が硬化して埋まっている。また、コイル配線523の外側も硬化した感光性樹脂526で被われている。尚、コイル配線523や磁性体524と感光性樹脂526を直接接触させたくないときは感光性樹脂526を形成する(塗布する)前に保護膜525、たとえばSiOxやSiNxやSIOxNy膜をCVD法で積層しても良い。コイル配線523の表面には導電性接着剤527が付着している。導電性接着剤527は半田等の金属または合金でも良い。フォトリソ法を用いてコイル配線523の表面付近以外を取り除く。図13においては、導電性接着剤527はコイル配線523の表面より少し大きめに記載しているが、確実に下地のコイル配線506と接続する必要がある。ただし、ショートして特性が得られなかったり、信頼性が悪くなるほど大きめにしてはならない。或いは異方性導電性接着剤を全面に塗布またはシート状のものを貼付しても良い。
図13に示すように、この後サポート基板521をさらに下げて、コイル配線506とコイル配線523を接着する。異方性導電性接着剤の場合は、縦方向に電流が流れるのでコイル配線506とコイル配線523の間は問題なく電気が伝導し、横方向は電気が流れるのでショートすることもない。さらに、磁性体コア524が露出したときには樹脂でカバーされるので保護膜としての機能も果たす。導電性接着剤の硬化温度TFは、接合剤のTCより低くする。このようにすることによりTF以上TC以下で熱処理をすることにより、まず、コイル配線523を半導体基板501に固定し、その後TC以上に熱処理してサポート基板521からコイル配線523および磁性体524を分離する。このときに接合剤522が半導体基板501側へ一部が残るが、この接合剤522はコイル配線523や磁性体をカバーするので保護膜としての役割もある。ただし除去したい場合には、全面ドライエッチングすることにより除去できる。尚、さらに磁性体524やコイル配線523、506を保護したいときには、CVD法またはPVD法で絶縁膜を積層すれば良い。耐湿性を向上させるにはシリコン窒化膜が最も良い。
図14は、第3の実施形態の変形例である。この実施例においては半導体基板501側の電極にはバンプ電極534が形成され、サポート基板521側のコイル配線の端子はバンプ電極537が形成されている。これらのバンプ電極534と537を接合させる。図13では506はコイル配線であったが、本実施形態では再配線層である。図13における506と少し目的が異なるので別の番号530を付けて区別する。この再配線層530は電極・配線503に接続している。再配線層530の上に絶縁膜531を積層し、再配線層530の外部への接続パッド532を開口する。この開口部532にシード金属533を積層する。セミアディティブ法、アディテイブ法、またはサブトラクト法によりシード層533やバンプ金属534を形成する。バンプ金属534はメッキ法により形成するが、印刷法などで形成することもできる。半導体基板501上に再配線530を形成しているが、本発明においてはインダクタを接続するだけなので、再配線層530および絶縁膜531を使用せず、直接電極・配線503上に形成することもできる。その場合は、プロセスが簡単になる。また、メッキを使わない場合は、たとえば、印刷法によりバンプを形成する場合には、シード層533が必要ない場合もある。
次に、サポート基板側であるが、コイル配線523および磁性体コア524を形成するところまでは図13に示す場合と同じ方法を使用できる。その後で、図13と同様に525で保護膜を形成してコイル配線523や磁性体コア524をカバーしても良い。その次に、感光性樹脂526を塗布し、コイル配線523同士、コイル配線523と磁性体コア524との間に存在する隙間を埋めるとともに表面をある程度平坦化する。これも図13と同様の工程であるが、この後、プリベークし、さらにコイル同士の間やコイル配線の表面部分535を露光法により開口する。開口後ポストベーク、本ベークを行い感光性樹脂を硬化させる。次に、シード層536を積層し、コイル配線523の開口部にバンプ金属を形成する。これでインダクタ単体としての素子ができる。サポート基板521には複数の(多数のと言っても良い)インダクタが搭載されている。それぞれに磁性体コアが挿入されている。
次に、サポート基板521を半導体基板501にアライメントしながら接近させて、半導体基板501側のバンプ534とサポート基板側のバンプ537を接触させる。バンプ534や537が半田金属の場合は、フラックスを介在させて半田金属の融点に近い温度で熱処理することにより簡単に接合する。銅バンプや金バンプの場合は、圧力を少しかけながら加熱すれば接合するが、超音波をかけて行うのも効果的である。上記の方法でも接合が困難であるときは、導電性接着剤をバンプ間に介在させれば良い。この場合に導電性接着剤は両方のバンプの頭につけても良いがどちらか一方でも良い。また、導電性接着剤シートをバンプの間に挟んで熱圧着しても良い。導電性接着剤は、樹脂に限らず半田金属などでも良い。すなわち、バンプの頭に溶融金属をつけて、他方のバンプへ熱圧着すれば接合できる。これらの作業を不活性ガスの雰囲気中や真空中で行えば、金属の酸化などを防止することもできる。
次に、接合剤522を軟化させてインダクタをサポート基板から分離する。接合剤522が紫外線などの電磁波で接着能力をなくすか弱くなるものを用いれば、紫外線などの電磁波を照射して分離する。この場合は、サポート基板が、その電磁波を透過するものを選択する。接合剤が熱可塑性樹脂や金属の場合は、その軟化温度や融点がバンプを接合する温度に近いものを選択して、バンプ同士を接合すると同時にサポート基板を分離する。或いは、サポート基板として熱伝導性の良いものを選択して短時間に接合剤522の接着力を弱めるという方法もある。熱硬化性の導電性接着剤の場合は、導電性接着剤の硬化温度よりも高い温度で軟化する接合剤を選択すれば良い。
図14に示す実施形態においては、インダクタ側にも半導体デバイス側にもバンプを形成したが、片方だけで接着できるときはどちらか一方だけでも良い。たとえば、相手側の開口部に露出した電極金属または電極導電体と簡単に接合できるときは相手側だけに凸状のバンプを形成できる。さらに、サポート基板は他の実施例と同様に、半導体基板、絶縁基板、或いは金属基板でも良い。相手側基板とアライメントがしやすく、また精度良くアライメントできる基板が良い。アライメントが精度良くできるにはできるだけ反りがないようにしなければならない。
本発明においては高い透磁率のコアを挿入できるので、非常に大きなインダクタンスを得ることができるが、コイル配線をスパイラル状に形成すれば、コイル配線の巻き数も簡単に増やすことが可能であるから、さらに大きなインダクタンスを得ることが可能となる。また、コイル配線の抵抗も材質を変えたりサイズを変えたりすることにより、容易に抵抗を下げることができるので、インダクタの品質(Q値)を飛躍的に向上することができる。言い方を変えれば、同じインダクタンスやQ値を持つインダクタはサイズが非常に小さくなるということである。
これまでに説明してきたインダクタは、コアが半導体基板表面に対して垂直にたっていてそのまわりをコイル配線が巻いているというもので、コイル配線が半導体基板表面に対してスパイラル状に(すなわち、渦巻き状に)平行に回っている(あるいは、スパイラル状に(すなわち螺旋的に)高さ方向にコアを巻いている)場合のものである。これをコアが半導体表面に対して縦(垂直)に立っているという意味で、縦型インダクタと呼ぶ。これに対して、コアが半導体基板表面に対して横に寝ている場合について説明する。これを横型インダクタと呼ぶ。
図15は、本発明の横型インダクタの基本的な構造を示す図である。図15(a)は本発明の横型インダクタを平面的に見たもので、図15(b)はその断面図である。(ただし、断面図図15(b)には関係する部分をすべて記載しているので、手前にあるものも、奥側にあるものも記載されている。)図15においては、インダクタに関係する部分のみを示している。本発明の横型インダクタは半導体基板に容易に組み込むことができるので、縦型インダクタと同じく半導体デバイスと同時並行的に半導体基板内に形成できる。たとえば、2層Al配線を有するLSIにおいて、下になるコイル配線603は1層目のAl配線で兼用でき、上になるコイル配線606は2層目のAl配線で兼用できる。ただし、コア604が厚いときは、1層目と2層目のコイル配線間の絶縁膜を厚くしなければならないので、微細なAl配線間ビアを形成できない場合がある(ビアのアスペクト比が大きくなる)。その時には上になるコイル配線606は別の配線として形成する。また、そのときにはコイル配線606をLSIの2層目のAl配線に接続するには新たな工程を付加しなければならないので、下になるコイル配線603とLSIの1層目のAl配線を接続すれば良い(コイル配線603も1層目のAl配線となっている。あるいは、コイル配線603をLSIの拡散層や配線(PolySiなど)へコンタクトしたり、2層目のAl配線へビアを経由して接続しても良い)
図15(b)から分かるように、半導体基板601上の絶縁膜602内にコイル配線603(603−1)があり、その上に磁性体コア604がある。コイル配線603はコンタクト孔605を通してコア604の上にあるコイル配線606へ接続する。コンタクト孔には導電体膜が積層されている。コイル配線606はコア604を横切って(またいで)、次のコンタクト孔607へ接続する。コンタクト孔605および607には導電体膜が存在する。この導電体膜は上層のコイル配線607と兼用することができる場合があるが、コンタクト孔のアスペクト比が大きくなり上層のコイル配線607がコンタクト孔に充分に入り込まない時は、上層のコイル配線607とは別に形成する。(たとえば、導電体膜を埋め込む。)このコンタクト孔607はコイル配線603−1の隣のコイル配線603−2へ接続する。これを繰り返していき、コア604を下層のコイル配線603とコンタクト孔605と上層のコイル配線606とコンタクト孔607で巻きながらスイラル状にコイル配線が形成されている。この状態は、図15(a)で平面的にみると理解しやすい。太い実線で記載している紙面に平行な配線が下層の配線603(手前から、603−1〜603−4)である。その上に破線で示されたコア604がある。斜めの薄い線で記載している配線は上層のコイル配線606(手前から、606−1〜606−5)である。右側のコンタクト孔605(手前から605−1〜605−4)や左のコンタクト孔607(手前から、607−1〜607−4)は下層のコイル配線603と上層のコイル配線606とつながっている。コア604は絶縁膜2で被われていて、コイル配線603や606、コンタクト孔605や607とは接触しない。本発明においては、サポート基板に付着したコアが半導体基板にアライメントしながら挿入されて配置される。上層のコイル配線606上には絶縁膜が形成され、さらにその上に外部への接続電極・配線610(610−1、2)が形成される。外部への接続電極・配線610(610−1、2)はコンタクト孔(608、609)を通じて上層のコイル配線606に接続する。この結果、外部への接続電極・配線610(610−1)はコンタクト孔608に存在する導電体膜(通常は、接続電極・配線610と同じ)を通り、上層のコイル配線606(606−1)からコンタクト孔605(605−1)に入り下層のコイル配線603(603−1)を通り、コンタクト孔607(607−1)から上層のコイル配線606(606−2)に入り、コンタクト孔605(605−2)から下層のコイル配線603(603−2)を通り、コンタクト孔607(607−2)から上層のコイル配線606(606−3)に入り、コンタクト孔605(605−3)から下層のコイル配線603(603−3)を通り、コンタクト孔607(607−3)から上層のコイル配線606(606−4)を通り、コンタクト孔605(605−4)から下層のコイル配線603(603−4)を通り、コンタクト孔607(607−4)から上層のコイル配線606(606−5)を通り、コンタクト孔609から外部への接続電極・配線610(610−2)へつながる。巻き数を増やすときはこの繰り返しでつないでいけば良い。
図15に示すこの基本形から分かるように、横型インダクタの場合には、コイル配線が二層となり、その間にコアが挟まれている。また下のコイル配線と上のコイル配線はコンタクト孔でつながっていく。従って、コイルの巻き数を簡単に増やすことができ、インダクタンスは巻き数の2乗に比例するので非常に大きくなっていく。かつ本発明の高透磁率のコアが挿入されているので、簡単なプロセスで非常に大きなインダクタンスを持つインダクタ(コイル)を作製できる。横型インダクタの製造方法の概要は、コアを内側にしてコイル配線をスパイラル状に巻くコア付きインダクタの製造方法であって、半導体基板、絶縁基板、または導電性基板である第1の基板上に第1のコイル配線を形成する工程と、第1の絶縁膜を形成する工程と、第2の基板に付着したコアを第1の基板に付着させる工程と、コアから第2の基板を分離する工程と、第2の絶縁膜を積層する工程と、第1の配線と第2の配線をスパイラル状に接続するための接続孔を形成する工程と、第2のコイル配線を形成する工程とを含む。第2の基板も半導体基板、絶縁性基板、または金属や導電性物質などの導電性基板で良い。また、第1の半導体基板には半導体デバイスやIC等の電子回路が形成されていて、それらに本発明のインダクタが接続しても良い。
図16は、横型インダクタの製造方法について説明する図である。
第1の基板である半導体基板上711に絶縁膜712(第1の絶縁膜)を形成する。絶縁膜は、シリコン酸化膜(SiOx)やシリコン窒化膜(SiNx)やシリコン酸窒化膜(SiOxNy)等であり、CVD法、PVD法などで生成される。或いは、塗布法による無機絶縁膜または有機絶縁膜でも良い。塗布絶縁膜の場合は、適当な熱処理を行う。この絶縁膜712上に導電体膜713を積層する。導電体膜は、導電性PolySi(P、B、AsなどをドープしたPolySi)、Al、Cu、Ti、Cr、Wなどの金属膜、金属シリサイド膜、またはこれらの合金、或いはこれらの導電体膜の複合膜である。この導電体膜を第1の導電体膜とする。
この第1の導電体膜713をフォトリソ法により所望のパターンに形成する。たとえば、図15(a)に示すような長方形状(直方体形状)を並べたパターンにする。この第1の導電体膜713がコイルの下部配線(図15の603)である。
次に第2の絶縁膜714を積層する。絶縁膜は、シリコン酸化膜(SiOx)やシリコン窒化膜(SiNx)やシリコン酸窒化膜(SiOxNy)等であり、CVD法、PVD法などで生成される。または、塗布法による無機絶縁膜または有機絶縁膜でも良い。塗布絶縁膜の場合は、適当な熱処理を行う。或いは、これらの絶縁膜の複合膜でも良い。平坦化が必要な場合は、塗布絶縁膜で平坦化したり、CMPなどで研磨して平坦化する。或いは、エッチバック法を用いる。導電体膜713上の絶縁膜の厚みを所望の厚みとする。たとえば、この上に形成される磁性体膜716が電気的に導通しない厚みとする。
次に接着層715を積層し、所望の部分以外を除去する。この接着層715上に、サポート基板718上に付着したパターニングされた磁性体膜716をアライメントし付着させる。接着層715は、磁性体層716上(この場合は、底面上)にあらかじめ接着させておき、そのまま絶縁膜714の所定の場所に接着しても良い。熱処理等により、磁性体層716と絶縁膜714を直接接着できる時には、接着層715は不要である。
たとえば、絶縁膜714として、有機系塗布膜(たとえば、ポリイミド膜や有機系SOG膜)や無機系塗布膜(たとえば、SOG膜)を用いても良い。塗布膜の場合には、塗布した状態で磁性体層716を載せて、塗布膜の中に磁性体層716を少し埋め込んでその後塗布膜を固化させ磁性体層716を固定する。あるいは、完全に固化する温度よりも低い温度で熱処理をして塗布膜が軟化している状態で磁性体層716を載せて少し押しつけて、塗布膜に磁性体層716を少し入れ込んで接着させた後、熱処理を行い塗布膜を固化させて磁性体層716を固定する。尚、導電体膜713に直接塗布膜を接着させて信頼性等の問題が懸念される場合には、CVD法等による絶縁膜を薄く積層した後に塗布膜を塗布しても良い。接着層715として、たとえば有機系塗布膜または無機系塗布膜を塗布し、(このような塗布する接着剤を流動性接着剤と呼ぶ。)熱処理(プリベーク)した後磁性体膜716を接着し、さらに熱処理(本ベーク)して固定しても良い。あるいはプリベークせずに塗布膜に直接磁性体膜716を接着した後に熱処理して固定しても良い。このように、接着層715が絶縁膜のときは、他の導電体と導通しないので、接着層715をパターニングしなくても良い。また、流動性接着剤の場合には表面の凹凸も埋めるので、絶縁膜714を平坦化しなくても良い。(もちろん、平坦化しても良い。)
磁性体膜716上にあらかじめ接着層715を形成する方法として、接着剤液へパターニングされた磁性体膜716の上部(図においては底部)を浸して、接着剤を磁性体膜716上に付着させた後、プリベークした後絶縁膜714に接着しても良い。プリベークが不要ならしなくても良い。接着後本ベークして磁性体716を、接着層715を介して絶縁膜714に固定する。
縦型インダクタの所でも説明したように、サポート基板718に磁性体膜716を接着層717で付着するときには、たとえば、接着層は熱可塑性(熱軟化性)樹脂または金属(半田等の合金を含む)の接着層とする。その軟化温度(または溶融温度)または融点をT5とする。また、接着層715が熱硬化性樹脂の接着層である場合には、その硬化温度をT6とする。サポート基板718に接着層717を介して付着した磁性体膜716を接着層715に付着して温度T6以上でT5より低い温度で熱処理を行い、磁性体膜716を接着層715にしっかりと固定させる。固定した後で、T5以上の温度で熱処理を行い、サポート基板から磁性体膜715を分離させることができる。接着層717を使用せず、真空吸着や電磁石で磁性体膜716をサポート基板718に付着するときには、温度の制約はない。
次に第3の絶縁膜719を積層する。(絶縁膜712が第1の絶縁膜、絶縁膜714が第2の絶縁膜である。)絶縁膜は、シリコン酸化膜(SiOx)やシリコン窒化膜(SiNx)やシリコン酸窒化膜(SiOxNy)等であり、CVD法、PVD法などで生成される。または、塗布法による無機絶縁膜または有機絶縁膜でも良い。塗布絶縁膜の場合は、適当な熱処理を行う。或いは、これらの絶縁膜の複合膜でも良い。平坦化が必要な場合は、塗布絶縁膜で平坦化したり、CMPなどで研磨して平坦化する。或いは、エッチバック法を用いる。
次にフォトリソ法により、所定部分にビアホール(コンタクト孔)720を形成する。このビアホール720は下部配線713と上部配線(図15の606、あるいは図16(c)の722)とをスパイラルに接続するコンタクト孔である。コンタクト孔720をCVD法、PVD法、或いはめっき法により金属膜を積層する。或いは塗布法により導電体膜を形成しても良い(たとえば、導電体ペーストを塗布する)。金属膜として、アルミニウム、Cu、Ti,Cr、半田、W、Mo等、或いはこれらの合金、或いは金属シリサイド膜、或いはこれらの複合膜が挙げられる。ビアホール720を完全に充填しても良いが、問題なければ充填しなくても良い。この721をプラグ配線と呼ぶ。
ここで、ビアホール(コンタクト孔)720のサイズとアスペクト比を見積もる。図19(c)に示す記号を用いる。下部配線713上の絶縁膜の厚みをp3(これはコンタクト孔の深さに等しい)、磁性体膜716と下部配線713の間の絶縁膜の厚さをq3、磁性体膜716の厚さをr、磁性体膜716上の絶縁膜の厚さをu3とすると、p3=q3+r+u3となる。q3およびu3は0.5μm以上なら充分であるから、それぞれ1μmとする。p3=4+r(μm)となる。磁性体膜の厚みを1μmとするとp3=5μmとなる。下部配線713および上部配線722の配線幅を5.5μmとするとコンタクト孔サイズは5μm{5μm*5μm(配線の長手方向にはもっと大きく取ることはできる)}は取ることができる。そうするとコンタクト孔のアスペクト比は約1.0となり、PVD法(たとえば、スパッター法)やCVD法で充分コンタクト孔にカバレッジ良好に積層できる。(従って、コンタクト孔内導電体膜と上層の第2の導電体膜と兼用も可能である。)
絶縁膜719は、感光性樹脂(たとえば、感光性ポリイミド膜)でも良い。感光性樹脂の場合には、塗布法で半導体基板711上に塗布する。或いは、感光性フィルムを用いても良い。感光性樹脂を塗布後プリベークし、露光法によりコンタクト孔720を開口する。その後、本ベークして感光性樹脂を硬化させて絶縁膜719を得る。感光性樹脂を用いた場合には、フォトリソ工程が不要となるし、感光性樹脂をそのまま絶縁膜719として使用できる。開口したコンタクト孔720の底には絶縁膜714が存在するので、ドライエッチングまたはウエットエッチングでコンタクト孔720底にある絶縁膜714を除去する。絶縁膜714のサイドエッチングを防止するためには、ドライエッチング特に異方性エッチングが良い。尚、絶縁膜714も感光性樹脂で形成することができ、この段階で露光法(現像等も含む露光を利用した一連の窓開け法)によりコンタクト孔720をあけておけば、この部分における絶縁膜714はなくなっているので、エッチングが不要になるか、短時間のエッチングで済む。(その後の処理で、コンタクト孔720におけるコイル配線713上に異物が形成されたり、接着剤715が入り込む可能性もあるので、これらの除去が必要となる場合もある。)感光性樹脂を用いる場合、コイル配線713や磁性体716に感光性樹脂を直接接触したくない場合には、感光性樹脂を形成する前にCVD法やPVD法により絶縁膜を所望の厚み積層しても良い。この場合は、コンタクト孔720を露光法により開口した後で、この絶縁膜の除去が必要となる。
磁性体膜716の下部に絶縁膜を付着しておけば、直接下部導電体膜(第1の導電体膜)716に直接磁性体膜716を付着させることができる。たとえば、図21に示す方法のようにより簡単なプロセスで実現できる。図21は本発明の横型インダクタにおける1つのプロセスを示す図であるが、図21(a)に示すように、磁性体膜716の下部に接着性絶縁膜787を付着させる。この接着性絶縁膜787を磁性体716に付着する方法として、たとえば、サポート基板718に磁性体膜716が付着した状態で、接着性絶縁膜の液状体へ磁性体膜716を浸漬(特に、磁性体膜の底部)して、磁性体膜716の底部に接着性絶縁膜787を付着させる。磁性体膜716の底部に付着した接着性絶縁膜の接着性を上げるために軽く熱処理や光照射等を行っても良い。
次に、サポート基板718と基板711を接近させて、磁性体膜713に接着性絶縁膜787を介して磁性体膜716を付着させる。サポート基板として特定波長(幅)の光を透過する基板(たとえば、透明ガラス基板や石英基板、透明プラスチック等)を用いれば、当該特定波長(幅)の光を透明ガラス基板の上部から照射して基板711との距離を光学的に正確に(nmオーダーかそれ以下の精度で)測定できるので、接着性絶縁膜787を確実に第1の導電体膜713に付着できる。また、接着性絶縁膜787はこの段階では柔らかいので、サポート基板718と基板711との距離を正確にコントロールして、接着性絶縁膜787の厚みも正確に制御できる。次に熱処理を行い接着性絶縁膜787を硬化させて磁性体膜716を基板711側に固定した後、接着層717の軟化点よりも高い温度にしてサポート基板718から磁性体層716を分離する。この状態が図21(b)である。
次に、図21(c)に示すように、CVD法やPVD法や塗布法により絶縁膜788を積層する。その後で、感光性絶縁膜789を塗布しプリベークするか、シート状の感光性絶縁膜を貼りつけて軟化処理を行い、平坦化する。この後のプロセスは前述あるいは後述の通りである。尚、感光性絶縁膜789を第1の導電体膜713や磁性多摩区716上に直接積層しても信頼性や特性上問題なければ、絶縁膜788は必要がない。以上のように、磁性体膜716に接着性絶縁膜を付着させることにより、プロセスがより簡単になる。
有機系塗布膜(たとえば、ポリイミド膜)を絶縁膜として使用するとプロセスをさらに簡単にすることができる。図18は、本発明の横型インダクタにおける製造方法の1実施形態を説明する図である。図18(a)において、第1の導電体膜713の形成までは図17で説明したプロセスと同じである。導電体膜713の上に有機系塗布膜760を厚く塗布する。この塗布された液状の有機系塗布膜760内に基板718に付着した磁性体膜716を挿入し、所定位置まで入れて基板718と基板711の距離を保持して停止させる。この状態で図18(d)に示すように、熱処理を行い有機系塗布膜を硬化させて磁性体膜716を固定させる。この後この熱処理温度よりも高い温度にして接着層717の接着力を弱めて基板718を磁性体716から離す。この他にも種々の方法があることは前述の通りである。ここで、基板718は固化した絶縁膜760と接触させないようにすることが重要である。基板718が絶縁膜760接触すると基板718と絶縁膜760も付着してしまうからである。すなわち、磁性体膜716の底面と導電体膜713の距離をq(磁性体膜716の下にある絶縁膜760の厚みと同じである)、磁性体膜716の厚みをr、接着層717の厚みをs、導電体膜713上の固化後の絶縁膜760の厚みをpとしたとき、p<q+r+sとなるように、有機系塗布膜760を導電体膜713の上に厚く塗布する。たとえば、q=1.0μm(qは0.1μmの厚みがあれば充分である)、r=5μm、s=2μmとすれば、p<8μmとなる。
図18(c)は基板718を分離した後の図を示している。接着層717を残しているが、接着層717が基板718と一緒に分離する場合もある。接着層717が残る場合も考えて、接着層717がデバイス特性や信頼性に影響を与えないような材料を選ぶ必要がある。多数の材料があるが、たとえば、前述した材料が挙げられる。また、接着層717は軟化あるいは溶融するので、絶縁膜760の表面は平坦になるが、凹凸が残る場合は、塗布絶縁膜で平坦化したり、エッチバック法やCMP法により平坦化しても良い。次に図18(d)に示すように絶縁膜762を形成する。この後のプロセスは図16と同様である。
感光性絶縁膜(たとえば、ポリイミド膜)を絶縁膜として用いるとさらにプロセスが簡便になる。図19は感光性膜770を下層のコイル配線となる第1の導電体膜713上に用いたプロセスを説明する図である。図19(a)に示すように、第1の導電体膜713を形成した後に、感光性膜770を塗布する(塗布後の感光性膜770の厚みをp0)この状態(すなわち、感光性膜は液状)で、パターニングされた磁性体膜716を付着した基板718を基板711に接近させる。図19(b)に示すように、磁性体膜716を感光性膜770の中にすべて浸入させる。基板718も感光性膜770と接触する。第1の導電体膜713と磁性体膜716の距離がq1になった所で基板718の移動を停止させる。(および/または基板711の基板718側への移動も停止する。)
この状態で磁性体膜716を基板718から分離させる。磁性体膜716を基板718内に搭載した電磁石で基板718に吸着しておけば電磁石の機能を停止すれば磁性体膜716は基板718から離れる。あるいは、磁性体膜716を基板718で真空吸着しておき、真空を解除すれば磁性体膜716は基板718から離れる。磁性体膜716のパターンだけを真空引きするには、磁性体膜716を吸着するマスクを基板718にあらかじめ付着させておくか、基板718に磁性体膜716を吸着する真空引き孔等を形成しておけば良い。あるいは、磁性体膜716を紫外線等の特殊な光や電磁波で付着力をなくすか弱めるタイプの接着層を用いて基板718に付着させておき、停止位置q1の所で当該紫外線等の特殊な光や電磁波を照射して磁性体膜716を基板718から離せば良い。この場合には、基板718は当該紫外線等の特殊な光や電磁波を透過するタイプの材料で構成され、感光性膜760は当該紫外線等の特殊な光や電磁波によって影響されない材料を使用する。
基板718および基板711が停止した状態を示す図19(b)において、第1の導電体膜713上の感光性膜770の厚みをp1とすると、p1=q1+rとなる。基板718と磁性体膜716との間に接着層がなければ、p1は基板718と第1の導電体膜713との距離でもある。基板718を距離測定用の光が透過する材料で形成しておけば、基板718の上部からこの測定光をあて基板718と基板711との距離sを光学的に測定できる。この距離sは極めて正確に測定できる(オングストロームのレベル)ので、基板718と基板711の停止時における距離をs1とすれば、s=s1のときに基板718と基板711を極めて正確に停止することができる。(この様子を、図19(b)において光学的測定器772および測定光773を記載)ここでは、測定光によって感光性膜770が影響されないように感光性膜の材料および測定光の波長や強度を選定する必要がある。(尚、この方法は、他の実施例や実施形態においても応用できることは言うまでもない。)
液状の感光性膜770内で基板718から分離した磁性体膜716はその自重で沈み第1の導電体膜713の上で停止するが、図19(c)に示すように、磁性体膜716と第1の導電体膜713の間に薄い感光性膜770が残る(厚みq2)。この状態における第1の導電体膜713上の感光性膜の厚みをp2、磁性体膜716上の感光性膜770の厚みをu2とすると、p2=q2+r+u2となり、p2はp1とほぼ等しい。図19(d)に示すように、次にプリベークを行い、マスクを用いて露光法(露光+現像)により感光性膜770の所定部分にコンタクト孔775の窓開けを行う。この後熱処理(硬化熱処理)を行い、感光性膜770を硬化させる。感光性膜770がたとえば、感光性ポリイミド膜(これも種々の種類がある)であるとき、100℃前後の温度でプリベークを行い、熱処理(硬化熱処理)温度は、たとえば。150℃〜200℃で1段目の熱処理を行い、次に300℃〜400℃の温度で2段目の熱処理を行う。この硬化熱処理後において、第1の導電体膜713上における感光性膜770の厚みをp3、第1の導電体膜713と磁性体膜716の間における感光性膜770の厚みをq3、磁性体膜716上の感光性膜770の厚みをu3とすれば、p3=q3+r+u3となる。プリベークや熱処理により感光性膜770は収縮するので、p3<p2、u3<u2、q3<q2となる。収縮度が大きいときや、u2が薄すぎてしまい、u3が薄くなる可能性があるとき(u3がなくなり、磁性体膜716が露出してしまうとき)には、再度感光性膜を塗布してプリベークを行い、再度露光法によりコンタクト孔を窓開けし、さらに硬化熱処理を行い、所定の厚みのu3を得ることができる。あるいは、1度の感光性膜770で所定の厚みu3を確保するために、所定の厚みとなるu2を確保するように感光性膜770の厚みをコントロールする方法もある。u3の厚みは0.1μm以上であれば特性上の問題は発生しないが、プロセス安定性も考慮すれば約0.5μm以上確保するようにすることが望ましい。
q3の厚みも0.1μmあれば特性上の問題は発生しないが、プロセス安定性も考慮すれば約0.5μm以上確保するようにすることが望ましい。しかし、磁性体膜716は自重で感光性膜770の中に沈んでいる状態なので、所望の厚みを確保できない場合には、第2の導電体膜713を形成した後、薄く(たとえば、約0.1μm〜1.0μm)絶縁膜(SiOx、SiNxやSiOxNy等)をCVD法やPVD法で積層した後で、感光性膜770を塗布する方法もある。この場合には、コンタクト孔775の形成は感光性膜770の窓開けを行った後の硬化熱処理後において、コンタクト孔775には第1の導電体膜上にこの絶縁膜が存在するので、この絶縁膜をエッチングする。エッチングはウエットエッチングとドライエッチングがある。たとえば、絶縁膜がSiOx膜のときには、ウエットエッチングの場合には、HF系のエッチング液を用いて行なうが、感光性膜770はこのエッチング液ではエッチングされないので、絶縁膜SiO2のサイドエッチングが発生するので注意が必要である。ドライエッチングの場合は、絶縁膜のサイドエッチングが起こらないように異方性エッチングが望ましい。ドライエッチング法では、マスクを用いずに全面エッチングを行う場合には、磁性体膜716上の感光性膜770もエッチングされる(選択性の高いエッチングを行えば、エッチング量を少なくすることができる)ので、その分も考慮して感光性膜の厚みu3を決定する必要がある。(前述のように、第2の導電体膜と磁性体膜716との間の厚みは、約0.1μmあれば特性上の問題は発生しないが、プロセス安定性も考慮すれば約0.5μm以上確保するようにすることが望ましい。)
所望の厚みq3を確保できない場合の他の方法として、基板718に付着した磁性体膜716の下部に絶縁膜をあらかしめ積層させておく方法もある。図20は本発明の横型インダクタにおける1実施形態のプロセスを説明する図である。図20(a)に示すように、所定厚み(v1)を有する絶縁膜780を積層した磁性体膜716を付着した基板718を感光性膜718に入れ込んで、第1の導電体膜713と絶縁膜780の距離q1が所定の値になったときに基板718および基板711の移動を停止して、磁性体膜716を基板718から分離させる。その後、図20(c)に示すように、自重で第1の導電体膜713に接近して第1の導電体膜713と絶縁膜780の距離q2で停止する。その後、図20(d)に示すように、コンタクト孔775を露光法により形成して、硬化熱処理を行う。この実施形態では、図20(b)において、p1=q1+v1+r、図20(c)において、p2=q2+v1+r+u2、図20(d)において、p3=q3+v1+r+u3となる。従って、第1の導電体膜713と磁性体膜716の間には必ず絶縁膜780が存在するので、第1の導電体膜713と磁性体膜716との電気的接続を懸念する必要がない。たとえ、q2やq3が0となっても問題はない。しかも、上述した第1の導電体膜713上に絶縁膜を形成してから感光性膜770を塗布せず、第1の導電体膜713上に直接感光性膜770を塗布するウロセスを採用できる。従って、コンタクト775を形成した後で、絶縁膜をエッチングするプロセスを取る必要もない。
磁性体膜716上に絶縁膜780を形成する方法も種々存在する。たとえば、磁性体膜716が基板718に付着している状態で、磁性体膜716の先端部(図20(a)では磁性体膜716の下部)を液状絶縁膜に浸漬して、磁性体膜716の先端部に付着させた後、熱処理を行い硬化させて、磁性体膜716上に絶縁膜780を形成することができる。また、たとえば、磁性体の薄板を基板718に付着させた後、磁性体膜上に絶縁膜を積層(CVD法、PVD法、塗布法)させて、所定形状に絶縁膜および磁性体膜をパターニングして、図20(a)に示すように磁性体膜716上に絶縁膜780を形成することができる。この熱処理で溶剤などがコンタクト孔において露出した第1の導電体膜713上に付着したり異物が形成される(これを残しておくと接続性が悪くなる)場合があるので、これを除去するためにコンタクト孔内に導電体膜を形成する前にライトエッチヌグをすることもある。このライトエッチングは逆スパッタやドライエッチングあるいは酸系や有機系溶液の処理などである。
次に、図16(c)に示すように、この上に導電体膜722を積層し所望の形状にパターニングする。(この導電体膜722は図15の606で上部配線である。)この導電体膜722も下層配線713と同様の材料で形成できる。同じ材料でも良いし、異なる材料でも良い。インダクタ(コイル)の特性に合わせて適宜選択すれば良い。導電体膜722はプラグ配線721と兼用することもできる。すなわち、プラグ配線721と導電体膜722を一緒に形成する。(ただし、コンタクト孔720において導電体膜722のステップカバレッジ(被覆性)が良くなければ、プラグ配線721を形成してから導電体膜722を形成した方が良い。)このようにして、下部配線からプラグおよび上部配線、その上部配線からプラグおよび下部配線にスパイラル状に接続でき、コイル配線が形成できる。このインダクタの中央部(内側部分)には磁性体716が存在するので、大きなインダクタンスと高いQ値を持つインダクタを作成できる。しかもLSI法により製造しているので、非常に高精度に微細なインダクタを形成できる。
次に、図16(d)に示すように、絶縁膜723を形成する。この絶縁膜723はコイル配線の保護膜となる。コイル全体を保護したければ、コイルの外側にある絶縁膜719、714、712を除去してから絶縁膜723を形成する。絶縁膜としてはCVD法、PVD法によって形成されるSiOx、SiNy、SiOxNyなど、或いはポリイミドなどの有機樹脂膜、SOGなどの無機塗布膜、或いはこれらの複合膜である。耐湿性などの信頼性を高めるためには、CVD法やPVD法による絶縁膜が良く特にCVD法によるSiNy、SiOxNy膜が良い。たとえば、パターニングされたコイル配線722上にCVD法によりSiOxNy膜を0.1μm〜1.0μm積層し、その上に感光性ポリイミドを形成して、フォトリソ法により開口し、その開口部をマスクにしてSiOxNy膜をエッチングし、開口部724(724−1、724−2)を形成することができる。もちろん感光性ポリイミドだけならば、エッチングは不要となる。(ただし、開口部724において露出した導電体膜722上に異物(たとえば、ポリイミド膜の熱処理時によるアウトガス成分が付着したり、開口時や熱処理時に導電体膜722が変質した場合)が存在して、接触が悪くなったときには、ライトエッチ(ウエットまたはドライエッチング、あるいは逆スパッター(Ar等によるスパッターエッチング)など)を行っても良い。)感光性樹脂を用いなければ、やはりフォトリソ法を用いて、絶縁膜723に開口部724を形成する。この開口部724はパッドとなり、プロバーなどでインダクタの特性を測定できる。
図16(d)においては、開口部724−1と724−2は同一のコイル配線722上に存在するように記載されているが、コイル配線722はスパイラル状に形成されているので、図15からも分かるように、異なるコイル配線にそれぞれ形成されている。すなわち、開口部724−1と724−2は図3で示すコイルの両端子A、Bに対応する。本発明を用いることにより、半導体装置や半導体デバイスが形成された半導体基板上に高性能のインダクタ素子を搭載できるし、或いは半導体装置や半導体デバイスを形成するプロセスに合わせて一緒に半導体基板上に高性能のインダクタ素子を形成できる。また、この後スクリーン印刷などで、パッド部724を導電体(たとえば、半田ペースト)で埋めて少し凸状(たとえば、バンプ)にすることもでき、チップ化した後で配線基板に搭載することもできる。この後、半導体装置としてチップ化(個片に)するためにダイシングして、インダクタを搭載した半導体チップができる。あるいは、パッド部724にシード層等を形成してメッキ法によりバンプを形成することもできる。
同じ基板上に形成された他の素子(たとえば、抵抗、インダクタ、コンデンサ、トランジスタ、IC等)と接続する場合は、下層(第1の)導電体膜713あるいは上層(第2の)導電体膜722と接続すれば良く、この場合には、開口部724の形成は不要となる。あるいは、同じチップ状の他の素子に接続するパッド部とこの開口部(パッド部)724とワイヤボンディングしてワイヤ接続することもできるし、この開口部724を形成後に再配線して接続しても良い。
本発明の横型インダクタ素子(縦型も同様)は、上記の構造で単独でもインダクタ素子パッケージとして使用できる。たとえば、図16(d)に示すような形状でダイシングして、プリント配線基板やICチップ上に実装して、インダクタンス素子として使用できる。この場合、開口部(パッド部)724は外部接続用電極となる。また、インダクタ素子のまわりは保護膜723で保護されているので、外部環境にも強い信頼性の良好なインダクタ素子となる。たとえば、ダイシングラインに沿ってインダクタ素子の周辺について、コンタクト孔720の形成時に同時に絶縁膜(714や712等、このときに基板711も一部エッチング除去される)を除去したり、各種導電体膜のエッチングの時に当該導電体膜を除去しておけば、工程の付加も(負荷も)なくインダクタ素子全体(基板711側を除く)を保護膜723で被覆することができる。
本発明の横型インダクタを用いた場合のインダクタンスを見積もってみる。コイル配線の太さを1μm(0.001mm)、コイルの幅1mm、コイルの高さを5μm(0.005mm)、基板厚み0.3mmとし、巻き数を500回(配線ピッチ2μm、コイルの長さが1mmに相当)とすれば、コアを入れない場合には、108.5μH、比透磁率10000の材料(厚さ約3μm)を入れると、1085000μH(1.085H)となる。コイルのサイズが1mm*1mm*0.005mm(パッケージサイズは1mm*1mm*0.3mm)と非常に小さいにもかかわらず、非常に大きなインダクタンスを持つことが分かる。本発明は、コイルサイズや巻き数やコアの材料を自由に選定できるので、広い範囲のインダクタンスを持つインダクタを半導体デバイスに容易に搭載できる。さらに、外部とコンタクト(たとえば、ワイアボンドで接続)することもできる。
本発明は、上述した製造方法からも分かるように、上述したようにインダクタ単体としても形成できる。しかもウエハレベルパッケージとしても使用できる。すなわち、図16(d)に示す構造のものを多数半導体基板(ウエハ)上に並べていけば良い。インダクタ単体にするときは、シリコン基板等の半導体基板に限らず、セラミックやガラスや石英などの絶縁基板、或いはアルミや銅や磁性体等の金属基板でも良い。絶縁基板の場合には絶縁膜712を省くこともできる。これを個片化すれば、チップインダクタができる。基板の厚さを0.3mmとすれば、(インダクタ自体の厚み自由に調節できるが、仮に3μmとすれば、基板の厚さに比べれば無視できる。)1mm*1mm*0.3mmのサイズで1Hの大きなインダクタンスを持つ非常に小さくて薄いチップインダクタとなる。このインダクタは周囲が基板と絶縁膜(保護膜)で囲まれていて、非常に強固なパッケージとなる。
図17は、横型インダクタの別の製造方法を説明する図である。
図17(a)に示すように、731は半導体基板、732は絶縁膜、下部配線733を形成する方法は、図16で説明した製造方法と同じである。次に絶縁膜734を厚く形成する。平坦化を行っても良い。フォトリソ法により、下部配線733の領域の上にある中央部(あるいは、コイル内側部)749を窓明けして(コイル配線中央孔749、と呼ぶ)、下部配線733の領域の上にある中央部の絶縁膜734をエッチングする。下部配線733上に所定の厚みを残してエッチングをストップする。或いは、全部エッチングした後で、下部配線733上に所定の厚みとなるように絶縁膜735を積層しても良い。このとき、下部配線733がエッチングストッパ材となるが、下部配線733のない領域(配線733と隣の配線733の間)には絶縁膜が存在するので、完全にエッチングした場合には、中央部(コイル配線中央孔749の底部)は凹凸が存在する可能性がある。そこで、絶縁膜をCVD法等で積層した後で、塗布法やエッチバック法などで平坦化しても良い。
或いは、734として感光性樹脂(感光性ポリイミドなど)を塗布し、プリベークした後露光法により下部配線733の中央部749を窓明けし、本ベークして感光性樹脂を硬化しても良い。この場合、下部配線733は露出しているので、下部配線733上に所定の厚みとなるように絶縁膜735を積層しても良い。
次に接着層736を絶縁膜735上に付着させる。接着層736が流動性を有していればこの段階で、コイル配線中央孔749の底における絶縁膜735の凹凸も埋まる。
次にこの中央部の凹み部分(コイル配線中央孔749)に磁性体膜737を位置合わせを行い、サポート基板739に付着した磁性体膜737をコイル配線中央孔に挿入し、接着層736に付着させる。磁性体膜737は、サポート基板739に接合剤738を介して付着している。磁性体膜737を接着層736に固定した後、磁性体膜737をサポート基板739から分離させる。
次に、図17(b)に示すように、絶縁膜740を所定厚み磁性体膜737上に積層する。形成前に絶縁膜734のくぼみ部の周囲(磁性体膜737と絶縁膜734の窪み部749の側面との間)に少し隙間ができているが、CVD法等で積層後は埋め込みが行われ、隙間がなくなる。ただし、ステップカバレッジが悪い場合は、内部にボイド(空洞)が形成される可能性がある。信頼性や特性が問題なければ、空洞が存在したままにしておいても良いが、空洞を塗布法を用いて埋めても良い。
また絶縁膜740の上面に凹凸が存在して問題となる場合には、塗布法、エッチバック法、研磨法等を用いて、絶縁膜740の表面を平たん化しても良い。
あるいは、コイル配線中央孔749を形成後に、流動性絶縁膜を塗布してコイル配線中央孔749を埋めて、流動性がある状態でコイル配線中央孔749の中に、サポート基板739に付着した磁性体膜737を挿入して、磁性体膜737を絶縁膜735に載せるか、流動性絶縁膜中に置き、流動性絶縁膜を固化させて磁性体膜737を固定し、その後で、接着層736の接着性を弱めて基板739を磁性体膜737から分離するという、前述したプロセスと同様のプロセスを採用することもできる。このプロセスによれば、接着層736は不要となるし、コイル配線中央孔749の側面と磁性体層737の間に生じる隙間もなくなる。さらに、磁性体膜737を自重で沈めた場合に流動性絶縁膜の粘度や比重との関係で磁性体膜737と下部配線733の間に流動性絶縁膜が残るので、あるいは磁性体膜737の下部(底部)に絶縁膜を付着させたものを流動性絶縁膜中に挿入し自重で沈めた場合にも、磁性体膜737と下部配線733の間に流動性絶縁膜と合わせて充分な厚みの絶縁膜が残るので、下部配線733と磁性体膜737の間の絶縁膜735も不要となり、プロセスが簡単となる。
これ以降のプロセスは、図16に示した製造方法と同じで、コンタクト孔741が形成され、コンタクト孔741にはプラグ配線742が形成される。さらに、図17(c)に示すように、上部配線金属743を形成する。また、上部配線金属を保護したり、絶縁したければ、この後、絶縁膜744を形成しても良い。
図22は図17に示す横型インダクタの製造方法のバリエーションである。図22(a)に示すように、絶縁膜732を形成し、第1の導電層733をパターニングし形成した後、絶縁膜734を積層し、コイル(インダクタ)のコアとなる磁性体膜を形成すべき領域および第1の導電層733と上部のコイル配線(第2の導電層)とのコンタクト孔を形成すべき領域を含む領域750の窓開けを行う。図17においては、少なくとも磁性体膜を形成すべき部分(コイル配線中央孔749)を形成したが、この実施形態では、この領域に加えてコンタクト孔を形成すべき領域も含むより大きな領域の窓開けを行う。この領域をコンタクト・磁性体膜形成領域750と呼ぶ。絶縁膜734はCVD法やPVD法あるいは塗布法による絶縁膜でも良いし、これらを複合した絶縁膜でも良い。次にフォトリソ法を用いて、感光性膜をパターニングし、これをマスクにして絶縁膜734をエッチングしてコンタクト・磁性体膜形成領域750を形成する。第1の導電層733に感光性の液状塗布膜を形成しても問題なければ、感光性絶縁膜(たとえば、感光性ポリイミド膜)を塗布して絶縁膜734としても良い。この場合には露光法(露光+現像)だけによりコンタクト・磁性体膜形成領域750を形成できる。たとえば、感光性ポリイミド膜を塗布し、100℃〜130℃でプリベークした後、露光法によりコンタクト・磁性体膜形成領域750を窓開けし、150℃〜200℃でキュアし、300℃〜350℃で硬化させ、図22(a)に示す絶縁膜パターン734を得る。
次に、感光性絶縁膜(たとえば、感光性ポリイミド膜)751を塗布すると、窓開けされたコンタクト・磁性体膜形成領域750に厚くたまる。このコンタクト・磁性体膜形成領域750における磁性体膜形成領域に、接着層738を介してサポート基板739に付着した磁性体膜737を挿入する。図22(b)に示すように、磁性体膜737の一部が浸漬した所で磁性体膜737の挿入を停止する。特に液状の感光性絶縁膜751が接着層738に接触しないようにして停止することが重要である。(正確には、液状の感光性絶縁膜751はプリベークにより少し収縮するので、プリベーク後に感光性絶縁膜751が接着層738に接触しない状態であれば良い。)
この状態で、感光性絶縁膜751をプリベークする。この温度をT13とする。このプリベークにより液状感光性絶縁膜751は少し固まるので、磁性体膜737も半固定される。プリベーク温度はある程度許容幅がある(低い方の温度をT11、高い方の温度をT12とする)ので、T13はT11に近い温度とする(T11=<T13<T12)。次にT13より高くT12に近い温度T14でプリベークする(T11<T13<T14=<T12)。接着層738の軟化温度をT15としたとき、T11<T15<T14となるようなT15を有する接着剤を接着層738として用いる。T13でプリベークしたときには、接着層738は軟化しないので、磁性体膜737が動くことなく感光性絶縁膜751に半固定され、T14で2回目のプリベークすることにより接着層738が軟化するので、磁性体膜737をサポート基板739から分離することができる。図22(c)はこの分離した状態を示す図である。磁性体膜737の上部は感光性絶縁膜751より上方へ出ていて、磁性体膜737の下部は感光性絶縁膜751の中に埋まっている。
磁性体膜737がサポート基板739から分離しても磁性体膜737は感光性絶縁膜751に半固定されているので、大きな衝撃が加わらない限り動くことはない。次に、図22(d)に示すように、プリベークした感光性絶縁膜751の上にさらに感光性絶縁膜752(2層目の感光性絶縁膜752)を塗布し、磁性体膜737全体を被覆する。次に、この感光性絶縁膜752をプリベーク(温度T15)する。感光性絶縁膜752と感光性絶縁膜751は同じ材料であるとプリベーク温度を管理しやすいが、異なる材料である場合は、プリベーク温度T15はT15<T12であるような材料を用いる。
次に、露光法により感光性絶縁膜752および751にコンタクト孔753を形成する。尚下側の感光性絶縁膜751は3回のプリベークを行っているので、露光による感度が低下している可能性がある。その場合には、露光量を増加させるなど、通常の条件とは異なる露光条件(現像条件の含む)を選定する必要がある。コンタクト孔753を形成した後、硬化熱処理を行い(必要なら、キュア処理などの熱処理も行なう)、感光性絶縁膜を硬化させる。このときの熱処理で、コンタクト孔753で露出した第1の導電体膜753が変質したり異物が付着したときには、コンタクト孔に導電体膜754を形成する前に、前述したようにライトエッチングなどを行って異物等を除去してから、コンタクト孔に導電体膜754を形成する。その後、図16や図17等で説明したように、第2導電体膜を形成する。
図22(c)に示す状態(プリベークした感光性絶縁膜751に磁性体膜737の一部が埋まっている状態)の後で、露光法により1回目のコンタクト孔を窓開けすることもできる。この窓開けをした後、硬化熱処理を行って(キュア処理も必要なら行なう)、感光性絶縁膜751を完全に固化して磁性体膜を感光性絶縁膜751に固定した後、2層目の感光性膜を塗布する。塗布により窓開けした1回目コンタクト孔も2層目の感光性絶縁膜が入り込むが、プリベーク後に露光法により、1回目のコンタクト孔と同じ場所に2回目のコンタクト孔を開ける。この方法により、エッチング等を使わずに、露光法だけによりコンタクト孔を形成することができる。この場合2回露光を行うので、合わせずれの問題が生じるが、2回目のコンタクト孔形成のときに1回目のコンタクト孔を含むように少し大きめにコンタクト孔を形成できるようにすれば、1回目にあけたコンタクト孔に入り込んだ感光性絶縁膜はすべてなくすことができ、しかも2回目のコンタクト孔(上層側)サイズが1回目のコンタクト孔(下層側)サイズより大きくなっているので、コンタクト孔への導電体膜754の形成は用意となる。
尚、図22(d)に示すように、磁性体膜737と第1の導電体膜の厚みをq5、第1の導電体膜上の厚みをu5としたとき、所定の厚みq5やu5が得られるように、サポート基板739に付着した磁性体膜737を挿入してプリベークして、適切なq4を確保し{図22(a)または図22(b)}、磁性体737上に適切な厚みの感光性絶縁膜752を塗布する{図22(c)}必要がある。
図23は縦型インダクタの1つの実施形態の製造方法を示す図である。
図23(a)に示すように、シリコンウエハ等の基板101上に絶縁膜102を形成して、さらに導電体膜102を形成して、所望の形状のパターン103(103−1)を形成する。(この配線はインダクタの一番下側の配線となるので、第1配線103とも呼ぶ。)基板101はガラス基板、石英基板、セラミック基板などでも良い。熱処理温度が余り高くなければプラスチック基板でも良い。ガラス基板や石英基板、あるいは透明プラスチック基板であれば、基板裏面からも観察できるし、後に形成する貫通ビア(孔)を形成するときは、パターン合わせが容易である。或いはポリイミド基板、ガラスエポキシ基板等のCOBに用いられる材料基板でも良い。基板が絶縁基板である場合には、絶縁膜102を形成しなくても良い場合もある。導電体パターン103(103−1、103−2)と基板が導通しないようにすることが必要である。この導電体パターン103(103−2)はインダクタの一方の電極となる。絶縁膜102は、シリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNx)やシリコン酸窒化膜(SiNxOy)等であり、熱酸化法、熱窒化法や、CVD法やPVD法などにより形成する。或いは、SOG膜などを塗布し熱処理で固化しても良い。或いは、ポリイミド膜やレジスト膜等の有機絶縁膜を形成して熱処理で固化しても良い。あるいはこれらの絶縁膜を組み合わせて積層しても良い。導電体膜103はアルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、金(Au)、クロウム(Cr)、ニッケル(Ni)、各種シリサイド膜(TiSix、CrSix、Wsix、NiSix等)、あるいはこれらの複合膜などであり、PVD法やCVD法などで形成される。導電体膜103のパターンは、環状にコアを囲んだ配線パターン103(103−1、103−2)となっていて、その端部が電極・配線103−2となっている。ここには後に基板裏面から貫通孔(ビア)が形成される。当然配線パターン103(103−1、103−2)はつながっている。配線パターン103の端部の電極・配線103−2は外側へ延びて外部電極へつながる電極・配線103−3となっている。
次に図23(a)に示すように、絶縁膜104を積層し、上下のインダクタ(コイル)配線103および107がコンタクト孔105以外では導通しないようにする。絶縁膜104は、シリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNx)やシリコン酸窒化膜(SiNxOy)等であり、CVD法やPVD法などにより形成する。或いは、SOG膜などを塗布し熱処理で固化しても良い。或いは、ポリイミド膜やレジスト膜等の有機絶縁膜を形成して熱処理で固化しても良い。あるいはこれらの絶縁膜を組み合わせて積層しても良い。既に導電体膜103を形成しているので、この導電体膜103が絶縁膜104の形成時やその後の熱処理プロセスにおいて変質しないように、絶縁膜104の種類や特にプロセス温度に注意が必要である。たとえば、導電体膜がアルミニウム(Al)の場合には、ヒロックやボイドの発生を軽減したり、ストレスマイグレーションを発生しないようにする必要がある。
下地の配線パターン103により絶縁膜104の凹凸が大きくなり、絶縁膜104上に形成する導電体膜107のパターニングが困難になる場合には、絶縁膜104を平坦化する必要がある。たとえば、絶縁膜104としてSOG(Spin On Glass)膜や有機系絶縁膜を塗布し固化することによって平坦化したり、絶縁膜をある程度厚く積んでCMP(化学的機械的研磨)法で絶縁膜を研磨して平坦化したり、あるいは、CVDやPVD法で絶縁膜を形成した後SOGや有機系絶縁膜を塗布して平坦化したり、あるいはさらにこれをCMP法やエッチバック法で平坦化したり、これらを組み合わせたりして平坦化することができる。
次にこの絶縁膜104にコンタクト孔105(105−1、105−2)を形成する。このコンタクト孔105は第2の配線107と第1の配線103との導通を取るためのコンタクト孔である。感光性膜を形成し所定箇所に露光法で窓開けをして、その窓を用いて露出している絶縁膜104をエッチング除去してコンタクト孔105を形成する。絶縁膜104のエッチングはドライエッチングやウエットエッチングで行なう。絶縁膜104がシリコン酸化膜(SiOx)であるときは、ドライエッチングの場合にはCF系(CF4等)やCHF(CHF3等)系等のエッチングガスを用いてエッチングできる。絶縁膜が感光性絶縁膜(たとえば感光性ポリイミド膜)である場合には、露光法(現像も含む)だけによりコンタクト孔105を形成することができ、プロセスも簡便になる。ただし、この場合、コンタクト孔形成後の熱処理により露出した導電体膜103の表面に薄い有機系膜が形成される場合があるので、導電体膜106や107を形成する前に軽いエッチングを行う必要がある。コンタクト孔105−1はインダクタ(コイル)配線105(105−1)およびその上のインダクタ(コイル)配線107(107−1)を接続するためのものであるが、コンタクト孔105−2は外部電極への接続を行うためのものである。
次に、コンタクト孔105へ導電体膜106(106−1、106−2)を形成する。この導電体膜106を介して第1の配線(電極)103と第2の配線(電極)107と接続する。従って、導電体膜106と107は兼用が可能であるが、コンタクト孔で導電体膜106を平坦化する場合には、別々に形成する。たとえば、選択CVD法でコンタクト孔部分だけに金属膜等を形成する場合や、メッキ法でコンタクト孔だけに金属メッキする場合である。導電体膜106や107は第1の配線・電極103と同様な導電体膜で適宜最適な導電体膜を選択すれば良い。第1の配線103も第2の配線107もインダクタ(コイル)配線であるから円形状や多角形状や楕円形状や曲線形状の環状でコアを囲んでいて、コンタクト孔105−1は配線103−2および107−2の近くに存在している。
次に図23(b)に示すように、第2の配線107の上に絶縁膜108を形成する。この絶縁膜108も絶縁膜104と同様の絶縁膜である。ただし、同じ絶縁膜である必要はなく、異なる絶縁膜でも良く適宜最適なものを選択すれば良い。次にコンタクト孔109(109−1、109−2)を形成し、導電体膜110(110−1、110−2)を形成し、さらに第3の{インダクタ(コイル)}配線111(111−1〜3)をパターニングし形成する。この内容も前述したコンタクト孔105、導電体膜106および第2の配線107の場合と同じである。第2の配線107は107−2の所でコンタクト孔109−1における導電体膜110−1を介して第3の配線111−2に接続し第3の配線111はコアの周りを環状に取り囲むように接続して111(111−1)へつながっている。また、外部電極へつながる電極・配線107−3はコンタクト孔109−2に形成された導電体膜110−2を介してパターニングされた導電体膜111−3へ接続する。
次に図23(c)に示すように、第3の配線111の上に絶縁膜112を形成する。この絶縁膜112も絶縁膜108と同様の絶縁膜である。ただし、同じ絶縁膜である必要はなく、異なる絶縁膜でも良く適宜最適なものを選択すれば良い。次にコンタクト孔113(113−1、113−2)を形成し、導電体膜114(114−1、114−2)を形成し、さらに第4の{インダクタ(コイル)}配線115(115−1〜3)をパターニングし形成する。この内容も前述したコンタクト孔109、導電体膜110および第3の配線111の場合と同じである。第3の配線111は111−1の所でコンタクト孔113−1における導電体膜114−1を介して第4の配線115−1に接続し第4の配線115はコアの周りを環状に取り囲むように接続して115(115−2)へつながっている。また、外部電極へつながる電極・配線111−3はコンタクト孔113−2に形成された導電体膜114−2を介してパターニングされた導電体膜115−3へ接続する。
次に図23(d)に示すように、第4の配線115の上に絶縁膜116を形成する。この絶縁膜116も絶縁膜108と同様の絶縁膜である。ただし、同じ絶縁膜である必要はなく、異なる絶縁膜でも良く適宜最適なものを選択すれば良い。次に、環状に形成されたインダクタ(コイル)配線103、107、111および115に囲まれた領域にコアを挿入するための穴を形成するために、感光性膜117を形成し、その穴になるべき領域の窓118を形成する。
次に図23(e)に示すように、この窓118の下に存在する絶縁膜116、112、108、104を順次エッチングして。コア挿入穴119を形成する。一番下の絶縁膜102の途中までエッチングする。尚、絶縁膜102を完全にエッチングして基板102まで達しても良い。コアが完全にインダクタ(コイル)配線の中央に入り込みコアを取り囲ませるためには、一番下のインダクタ(コイル)配線、すなわち第1の配線103のレベルよりも下方までコア挿入穴119を形成した方が良い。コアが第1配線103よりも下になればインダクタンス値も増加する。後述するように流動性の液状タイプの絶縁膜を塗布してコアを挿入すると、コアを押し込んでもコアの底に液状タイプの絶縁膜が残る可能性があるときには、基板101に達するまで絶縁膜102もエッチングしても良い。場合によっては、基板もエッチングした方が良い。ただし、その部分を別の目的で利用する場合(たとえば、トランジスタや抵抗などを形成している)には基板をエッチングすることはできないことは当然である。このようにすれば挿入するコアの底部を確実に第1配線のレベルより下に配置させることができる。液状タイプの絶縁膜を直接基板に接触させたくなければ、CVD法やPVD法で絶縁膜(SiOx、SiNx等)を形成後に液状タイプの絶縁膜を塗布すれば良い。
次に、図23(f)に示すように、液状タイプの絶縁膜120を塗布すると、液状タイプの絶縁膜120はコア挿入穴119の中にたまる。液状タイプの絶縁膜は、たとえばSOG膜などの無機系塗布絶縁膜(たとえば、シラノール系{Si(OH)4})や有機系塗布絶縁膜(たとえば、ポリイミド、有機SOG膜)がある。この状態で、別基板130に接着層132を介して接着しているコア134をコア挿入穴119へ入れていく。基板130としてガラスや石英や透明プラスチックなどの透明基板を用いれば、基板130の上方から基板101上のパターンが見えるので、コア134とコア挿入穴(孔)119の位置合わせを非常に正確に行なうことができ、コア挿入穴119の中にコア134を挿入することができる。コア挿入穴119に溜まっていた液状タイプの絶縁膜120は挿入されたコア134に押し出されて、挿入穴119の外側へ押し出される。尚、接着層132は熱可塑性の接着層である。
図23(g)はコア挿入孔119へコア134が挿入した状態を示す。コア挿入孔119の底面および側面の隙間には液状タイプの絶縁膜120が残り、液状タイプの絶縁膜120の中にコアが埋められたような状態になる。コア挿入孔119の底面部に存在する液状タイプの絶縁膜120は圧縮された状態で存在するが、液状タイプの絶縁膜120はコア134とインダクタ本体(基板101側)との緩衝材的な(クッション材としての)役目も果たし、コア134からインダクタ本体(基板101側)への挿入によるダメッジを除去している。の深さd1(図23(e)に記載するように、絶縁膜116の上面からコア挿入孔119の底面までの距離)がコアの高さhより大きいときは、接着層132が液状タイプの絶縁膜120に接触した状態か、接触する前にコア134の挿入を停止し、インダクタ本体(基板101側)へのダメッジを与えないようにする。コア134の挿入は基板130の基板101に対する移動の精度により支配(および/または基板130に対する基板101の移動精度)されるが、機械的な制御や電子的な制御を組み合わせることにより非常に精度良く制御できる。(たとえば、約0.1μmの制御も可能である。)hがd1より大きなときには、コア134の底部がコア挿入孔119の底面に達する前に停止させる。コア挿入孔119が基板101側に入り込んだ場合においても同様であり、この場合には、コアはインダクタ(コイル)の第1配線103よりも低い所に入るので、より大きなインダクタンスを得ることができる。
次に熱処理を行い液状タイプの絶縁膜120を固化させて、コア134をコア挿入孔119内に固定する。液状タイプの絶縁膜120の固化温度をT1とし、実際のプロセスの固化する熱処理温度をT2とし、接着層132の軟化温度をT3とする。T1<T2<T3とすることが重要である。すなわち、接着層が硬化している状態で液状タイプの絶縁膜120を固化させて、コア134をコア挿入孔119内に固定する。コア134がコア挿入孔199に固定された後に、プロセス温度T4をT3より高い温度に保持し、基板101に対して基板130を上方へ移動させれば、コア134は基板130から分離される。この状態を図23(h)に示す。液状タイプの絶縁膜120と接着層132についてT1<T2<T3を満足する材料は多数存在するので、適宜選択すれば良い。たとえば、液状タイプの絶縁膜120として使用する無機系塗布絶縁膜(シラノール系{Si(OH)4})は約350℃〜約400℃の温度で固化し、接着層132として使用する熱可塑性接着際STAYSTIC(商品名、CSPM社製)は約400℃以上で軟化する。従って、上記条件を満足している。あるいは、たとえば、液状タイプの絶縁膜120として有機系絶縁膜ポリイミド膜(350℃以上で硬化)を使用することもできる。
コア134がコア挿入孔119から食みだし、固化後の絶縁膜120の最上面120−1より出ている場合には、さらに液状タイプの絶縁膜を塗布して平坦化するか、或いは、その後エッチング法または研磨法により平坦化しても良い。プロセス上はみ出ていても問題なければそのままでも良い。コア134全部がコア挿入孔119内に入り込んでいる場合(接着層132の表面が平坦なときにはコア134全部がコア挿入孔119内に入り込むことは少ないが、コア134の部分だけ接着層を厚くするプロセスを行えばコア132全体をコア挿入孔119内に入れ込むことができる。)は、その部分が窪みになっているが、プロセス上問題がなければ、そのままでも良い。しかし窪みになっている状態がプロセス上問題あれば、上述の平坦化を行えば良い。
図23(e)で、コア挿入孔119を形成した後で、液状タイプの絶縁膜120をコア挿入孔119には余り多くためないようにして、(すなわち、薄く塗布する)コア134を挿入しても良い。この場合にはコア134とコア挿入孔119の間には液状タイプの絶縁膜120が入り込むようなるが、コア134の上部は液状タイプの絶縁膜120で覆われない恐れもある。その場合には、液状タイプの絶縁膜120を固化してコア134を固定させ、コア134を基板130から分離した後で、再度液状タイプの絶縁膜を塗布してコア134をカバーする。必要なら、CVD法やPVD法による絶縁膜と組み合わせても良い。また、この後平坦化しても良い。
図23(h)においては、厚さhのコア134がコア挿入孔119に入り、表面が平坦化され、コア134の表面が露出している。この後、図23(i)に示すように、絶縁膜123を積層する。この絶縁膜は、SiOx、SiNx、SiOxNy等の絶縁膜であり、CVD法やPVD法、塗布法、あるいはこれらの組みわせなどで形成される。その後、第4の{インダクタ(コイル)}配線115(115−1、3)(さらにコイル配線を重ねるときは、最上層のコイル配線)上に、コンタクト孔124(124−1、2)を形成し、コンタクト孔124に導電体膜125(125−1、2)を形成し、さらに外部への取り出し電極・配線となる導電体膜126を積層し、電極・配線126(126−1、162−2)をパターニングし形成する。これによって、電極126−1は最下層の第1のコイル配線103から、コア134を周りながら下から上へスパイラル状につながり、最上層のコイル配線115におけるコンタクト孔124−2の導電体膜125−2を介して他方の電極・配線126−2へつながり、コイル(インダクタ)が完成する。尚、コンタクト孔124内の導電体膜125と電極・配線126は兼用することができる。また、コンタクト孔内の導電体膜125および電極・配線126は形成せず、コンタクト孔124を最上層のコイル配線のパッド開口部とすることもできる。また、電極・配線126上に、またはこれと兼用してバンプ電極を形成することもできる。
図23に示す実施例では、最下層のコイル配線103に接続する電極・配線126−1が無理なく最上層に接続している。コンタクト孔も順次形成されていくので、余分な工程を付加することもないし、コンタクト孔のアスペクト比も高くないので、配線の信頼性も問題ない。コイル(インダクタ)配線の巻き数を多くするには、さらに上の方(縦)に配線を重ねても良いし、横方向(平面的)に配線を2重、3重あるいはn重(n=4、5、・・・)に増やしても良い。巻き数を増やすことにより、さらにインダクタンスやQ値を増大できる。
図24は図23のバリエーションを示す図である。図24に示すように、コイル配線の内側は配線のパターニングをしないで板状に重ねていく。図24(a)は、図23(d)と類似の図であるが、コイル配線103、107、111、115の内側はその都度パターニングしていないので、板状になっていて配線になっていない。この状態で、コア挿入穴119を形成するための感光性膜117をパターニングし、その穴になるべき領域の窓118を形成する。図24(b)に示すように、次にこれをマスクとしてコア挿入穴119を形成する。このとき、最初に絶縁膜116をエッチングし、次にコイル配線115をエッチングし、次に絶縁膜112をエッチングし、次にコイル配線111をエッチングし、次に絶縁膜108をエッチングし、次にコイル配線107をエッチングし、次に絶縁膜104をエッチングし、次にコイル配線103をエッチングし、最後に絶縁膜102をエッチングする。(コア134を最下層の配線103のレベルよりも下に入れ込むために基板101をエッチングする場合もある。)このエッチングはドライエッチングで行ない絶縁膜と導電体膜を順次エッチングしていくので、かなり選択比の高いエッチングが可能であり、各エッチングにおいてエッチング残りの非常に少ない条件で行なうことができる。しかもサイドエッチングの少ない垂直に近いパターン通りのエッチングが可能である。このようにして、コア挿入穴119が形成される。
次に、挿入穴119に露出した配線を被覆するために、絶縁膜121(たとえば、SiOx、SiNy、SiOxNy等)をCVD法やPVD法で積層する。コア挿入穴の深さは、約2μm〜約200μm(あるいは、〜約500μm)でしかも垂直壁であるが、コア挿入穴の直径は約50μm〜約200μm(あるいは、約200μm以上)と広く取ることができるので、アスペクト比もそれほど大きくないので、コア挿入穴の側面にコンフォーマルに近い状態で積層することができる。この側壁の絶縁膜の厚みは、この後で液状の絶縁膜も形成されるので、約0.1μm以上あれば良い。次に液状絶縁膜120をコア挿入穴119に塗布法で形成し、これまで説明したことと同様に、サポート基板190に付着したコア134を挿入する。この後のプロセスはこれまでに説明したことと同様である。図24に示すバリエーションは、コア挿入穴119がコイル配線と重なり、コア134を接近させることができ、よりインダクタンス値を高めることができる。しかも、垂直なコア挿入穴をパターン通りに形成できる。絶縁膜と導電体膜の繰り返しエッチングもガス条件やその他のエッチング条件を適宜変えていけば良いので、同一の装置で短時間に実現できるので、工程付加は少ないか殆どない。
図25は、本発明の横型インダクタを用いて作製したトロイダルコイルを示す。図25(a)は円板ドーナツ状のトロイダルコイル、図25(b)は矩形板ドーナツ状のコイルである。図25(a)に示すように、外部につながる下層のコイル配線1001(点線で示す)から上層のコイル配線1002に入り、次に点線で示す下層のコイル配線1003に入り、円板ドーナツ状のコア1005のまわりをまいて、上層のコイル配線1004から外部へ出ていく。(コイル配線1001は上層でも良い。コイル配線1004は下層でも良い。)本発明を使えば、このようなパターンも簡単にできる。まず基板上に絶縁膜を形成しその上にコイル配線1001、1003を形成し、次に絶縁膜を積層して、円板ドーナツ状のコア1005を付着し、次に絶縁膜を形成して、コンタクト孔を形成し導電体膜でコンタクト孔を埋めて、次に上層のコイル配線1002、1004を形成する。
また、図25(b)に示すように、外部につながる下層のコイル配線1006(点線で示す)から上層のコイル配線1007に入り、次に点線で示す下層のコイル配線1008に入り、矩形板ドーナツ状のコア1010のまわりをまいて、上層のコイル配線1009から外部へ出ていく。(コイル配線1006は上層でも良い。コイル配線1009は下層でも良い。)本発明を使えば、このようなパターンも簡単にできる。まず基板上に絶縁膜を形成しその上にコイル配線1006、1008を形成し、次に絶縁膜を積層して、矩形板ドーナツ状のコア1010を付着し、次に絶縁膜を形成して、コンタクト孔を形成し導電体膜でコンタクト孔を埋めて、次に上層のコイル配線1007、1009を形成する。この結果、図25に示すようなトロイダルコイルを簡単に作製できる。
図26は、本発明の縦型インダクタを用いて作製したパッケージの構造を示す図である。絶縁基板12上に第1の導電体配線14を形成し、その上に絶縁膜15を形成する。絶縁膜15にコンタク孔16を形成し、そのコンタクト孔16に導電体膜を形成し、さらに第2の導電体配線17を形成し、その上に絶縁膜18を形成する。絶縁膜18にコンタク孔19を形成し、そのコンタクト孔19に導電体膜を形成し、さらに第3の導電体配線20を形成し、その上に絶縁膜21を形成する。次に絶縁膜21にコンタク孔22を形成し、そのコンタクト孔22に導電体膜を形成し、さらに第4の導電体配線23を形成し、その上に絶縁膜24を形成する。もっと導電体配線層を重ねるときにはこのプロセスを繰り返す。次にこれらの導電体配線はスパイラル状(環状)にまわっていて、これらの導電体配線の内側にコア挿入孔を形成して、コア25を挿入する、その後絶縁膜26を形成してコア25を被覆する。次にコンタクト孔27を形成し、そのコンタクト孔27に導電体膜を形成し、さらに電極・配線28を形成する。この電極・配線28は外部の素子等への接続電極になる。一方、絶縁基板12の裏側から導電体配線14に対してコンタクト孔13を形成し、このコンタクト孔13に導電体膜を形成して、絶縁基板12の裏側に電極・配線11を形成する。この電極・配線11は外部の素子等への接続電極になる。尚、コンタクト孔13を絶縁基板12に形成してから、コンタクト孔に導電体膜を形成して導電体配線14を形成しても良い。絶縁基板はガラスや石英や透明プラスチチック等の透明絶縁基板でも良いし、セラミック基板やエポキシ基板等の絶縁基板でも良い。このようなプロセスで、本発明のインダクタ素子パッケージを形成できる。両側の電極11および28に電圧をかけ導電体配線に電流を流せば、インダクタとして動作させることができる。
図27は、基板上に多数形成した本発明のインダクタ(横型、縦型)素子パッケージを他の基板(たとえば、実装基板やIC基板上など)に実装する方法について説明する図である。図27(a)に示すように、インダクタ素子パッケージを多数形成した基板8001を接着層8003を介してサポート基板8005へ付着し、基板8001をダイシング等しインダクタ素子パッケージを個々に分離する。この段階では個々のインダクタ素子パッケージは接着層8003に付着しているのでバラバラになることはない。次に、パターニングした接着層8009を付着した基板8007を準備する。この接着層8009はインダクタ素子パッケージと接着できるような大きさにパターニングされている。また、インダクタ素子を実装する実装基板のピッチに合わせて接着層8009が形成されている。次に、27(b)に示すように、基板8007の接着層8009のパターンを接着すべきインダクタ素子パッケージ(図27では、8001−2や8002−5)にアライメントしながら接着層8009を接着すべきインダクタ素子パッケージ8001に付着させる。次に基板8007を持ちあげて(サポート基板8005を下げても良い)、紫外線をあてたり熱をかけるなどして接着層8003との接着力を弱めたインダクタ素子パッケージ8001(8001−2、8001−5)を接着層から分離する。次に図27(c)に示すように、実装基板8013上に形成されインダクタ素子パッケージを実装すべき電極・配線層8017(実装基板側の個々の実装単位8015(8015−1、2)に形成されている)のパターンに、基板8007に付着したインダクタ素子パッケージの電極・配線8011をアライメントしながら接近させて、図27(d)に示すようにインダクタ素子パッケージ8001(8001−2や8002−5)の電極・配線8011を実装基板8013の電極・配線8017に付着させる。次に、基板8007を持ちあげて(実装基板8013を下げても良い)、紫外線をあてたり熱をかけるなどして接着層8009の接着力を弱めたインダクタ素子パッケージを基板8007から分離する。この結果図27(e)に示すように個々のインダクタ素子パッケージ8001(8001−2、8001−5)が実装基板8013に一括で搭載される。次に、図27(f)に示すように、隣のインダクタ素子パッケージ8001(8001−3、8001−6)を基板8007に接着層8009に付着させて、実装基板8013に搭載していく。実装基板8013において実装単位8015をインダクタ素子パッケージのサイズの整数倍で設計しておけば、このように多数のインダクタ素子パッケージ8001を自動で一括で実装基板へ搭載することができる。尚、基板8007をガラス等の透明基板にすれば、インダクタ素子パッケージに合わせたり(図27(a)、図27(b))、実装基板の電極・配線8017に合わせたり(図27(c)、図27(d))するときにアライメントが容易となる。さらに、接着層8009はマスクを用いて真空吸着としたり、インダクタ素子パッケージは磁性体層を有するので、電磁石パターンや永久磁石パターンを用いたり、磁場カット層のマスクを用いることもできる。また接着層8003も真空吸着パターンや電磁石パターンを用いることもできる。さらに、図27では電極・配線同士を付着したが、パッケージを単純に搭載することもできることも言うまでもない。
図28は、本発明のインダクタ素子を実装する場合の別の方法について説明する図である。インダクタ素子9003が多数サポート基板9001に接着層9002を介して接着している。このインダクタ素子は、内側に磁性体コア9005が内蔵され、そのまわりをコイル9004(9004−1−1、9004−1−2、9004−2−1、9004−2−2)が取り巻いている。図では1巻きであるかのように記載されているが、複数巻いていると考えることもできる。9004−1−1の先端には1つの電極になっている。ここから始まって磁性体コア9005を周って9004−1−2につながりさらに周って、もう1巻きするために9004−2−1につながり、さらに周って9004−2−2につながる。次に上の配線に上がってこれを繰り返す。最後は、9004−2−2の先端にある他方の電極で終点となる。このようにインダクタ素子9003は、渦巻き状に平面的に磁性体コアの周りを複数回(n回)まわって、上層の方に複数回(m回)上がってこれを繰り返しているコイル(インダクタ)素子である。このインダクタ素子9003を複数搭載したサポート基板9001を実装基板(あるいはIC基板)9006に接近させる。必要であれば、9004−1−1および9004−2−2にある電極に接着層(導電性)を付着させておく。この接着層の付着方法として、サポート基板9001にインダクタ素子を付着させた状態で液状の接着剤溶液にサポート基板を下げて付着させるか、接着層(導電性)テープに付着させて接着層を付着させるなど種々の方法がある。電極にあらかじめ低融点合金(はんだなど)を形成しても良い。IC基板には能動素子9007が形成されており、この素子は導電層90011を介して電極9009(9009−1、9009−2)につながっている。9010(9010−1、2)は1つのICチップ(あるいは実装単位)である。(9008は絶縁膜である。)図28(b)に示すように、サポート基板900をIC基板へ接近させて、インダクタ素子の電極9004−1−2および9004−2−1をIC基板側の対応する電極9009−1および9009−2へ付着させる。接着剤がついているときは、その接着剤が接着し固定する温度に保持する。あるいは、低融点金属が形成されているときはその融点に近い温度かそれ以上にしてお互いの電極同士を接着する。電極同士を接着層で付着させるときは、接着層を熱硬化性材料(固化温度T51)とし、またインダクタ素子9003がサポート基板9001に接着している接着層9002を熱可塑性材料(軟化点T52)としたとき、電極同士を接着する温度をT53として、T51<T53<T52となるような温度T53で電極同士を接着する。完全に電極同士が接着してから、温度を上げてT54>T52となる温度T54で熱処理して接着層9002を軟化させてサポート基板9001からインダクタ素子9003を分離する。この方法はこれまで磁性体コアをインダクタ素子へ固定する方法と同じであるので、これまでに記載した他の方法も採用することができる。以上のようにして、図28(c)に示すように、IC基板(あるいは実装基板)9006へインダクタ素子を一括で搭載できる。その後、9003で示すライン(スクライブライン等)で分割すればインダクタ素子を搭載したICチップ(あるいは、実装単位)9010(9010−1、2)を分割できる。このように本発明を用いれば非常に簡単にチップ部品等を実装基板等に搭載できる。
図29は、本発明の縦型インダクタ素子の別の実施形態を示す図である。図29(a)は、この縦型インダクタ素子の正面図を透視的に模式図で見たものであるが、必ずしも同一断面上にあるわけではない。図29(b)は、その平面図を透視的に模式図で示したものであるが、この図も必ずしも同一平面上を示したものではない。。この実施形態においては、ベース基板1201は導電体基板である。図29(a)に示すように、ベース基板1201上に絶縁膜1202があり、その上に1層目のコイル配線(第1コイル配線)1204がある。第1コイル配線1204は、絶縁膜1202の一部に開口したスルーホール(コンタクト孔あるいはビアホールと呼んでも良い)1203を介してベース基板1201と接続している。第1コイル配線1204の上に絶縁膜1205があり、その上に2層目のコイル配線(第2コイル配線)1207がある。第2コイル配線1207は、絶縁膜1205の一部に開口したスルーホール1206を介して第1コイル配線1204と接続している。第2コイル配線1207の上に絶縁膜1208があり、その上に3層目のコイル配線(第3コイル配線)1210がある。第3コイル配線1210は、絶縁膜1208の一部に開口したスルーホール1209を介して第1コイル配線1207と接続している。さらに、コイル配線を重ねていくときには、以上の繰り返しを行っていく。最上層のコイル配線である第3コイル配線の上には絶縁膜1211があり、その上に導電体膜1213が存在する。導電体膜1213は、絶縁膜1211の一部に開口したスルーホール1212を介して第3コイル配線1210と接続している。ベース基板1201はコイルの一方の電極であり、導電体膜1213はコイルの他方の電極となる。コイル配線の内側(内部)の絶縁膜の中には磁性体コア1214が挿入されている。
図29(b)に示すように、縦型インダクタ素子の内側には磁性体コア1214が存在し、そのまわりを絶縁膜1216が囲んでいて、それをさらにコイル配線1204等が取り巻いている。一番下側にはベース基板1201が存在する。また、図には示していないが、一番上側には、導電体膜1213が存在する。一方の電極1201から、スルーホール1203(図29(b)ではスルーホール1217−1とする)を介して第1コイル配線1204へ接続する。第1コイル配線1204は磁性体コア1214の周囲をまわって、スルーホール1206(図29(b)ではスルーホール1217−2とする)で上に上がって第2コイル配線1207へ接続する。第2コイル配線1207も磁性体コア1214の周囲をまわってスルーホール1209で上に上がって第3コイル配線1210へ接続する。これを繰り返して、コイル配線を磁性体コア1214の周囲を回らせてターン数を増大していく。最上層の第3コイル配線1210のスルーホール1212から上に上がって他方の電極1213につながる。このように一方の電極1201から、コイル配線はスパイラル上に何度も磁性体コア1214のまわりを巻きながら他方の電極へつながる。図29では、横側には1周りしか記載していないが、平面的に渦巻き上に何回も巻くこともできる。この場合は、1層目のコイル配線を内側から外側へ巻いていき、その外側の所にスルーホールで上の(第2)コイル配線へ接続し、その上のコイル配線は外側から内側へ巻いていけば良く、さらにその上のコイル配線は内側から外側へ巻いていき、これを繰り返していけば良い。横側へm回、縦側へn回巻けば(縦側には、図29で示すようにn層を重ねていく)、合わせてm*n回巻いたことになる。インダクタンスは巻き数の2乗に比例して増大するので、横と縦に巻いていけば(m*n)の2乗に比例してインダクタンスが増大する。図29(a)においては、スルーホール1206、1209、1212等は平面的には同じ位置にあるように描いているが、実際には図29(b)に示すように、スルーホール1217(1217−1、2)は当然に重ならず、近接して存在する。また、簡単に分かるようにスルーホールの位置は少しずつ移動していく。
次に、図29に示す構造の製造方法を説明する。図30は図29に示す構造の製造方法を説明する図である。図30(a)に示すように、導電体基板1201上に絶縁膜1202を形成し、所定部分に第1コイル配線1204と導電体基板1201とを接続するスルーホール1203を開口する。スルーホール1203内には導電体膜が存在し第1コイル配線1204と導電体基板1201とを接続する。導電体基板1201は、たとえば銅や、鉄、アルミニウム、W、Mo、金、銀、ニッケル、クロウム、チタニウム、亜鉛、黄銅、ステンレス、各種鋼、青銅、半田等の金属や合金など、あるいはシリサイド(シリコンと金属の合金)、あるいはN+シリコン(高濃度N型不純物を含むシリコン)、P+シリコン(高濃度P不純物を含むシリコン)、導電プラスチック、導電性炭素、導電性グラフェン、導電性カーボンナノチューブ、導電性ゴム等である。この導電体基板1201はインダクタ(コイル)素子の1つの電極となり、厚みは約0.05mm〜0.2mm以上が好適である。厚みが0.05mmより薄い場合にも本プロセスを実行できるが、最終的にはメッキするなどして厚みを厚くしておいた方が実装(たとえば、実装基板側の電極との接続)が容易である。本実施例のインダクタ素子は個別素子としても用するが、取り扱い上に問題がなく小型化する必要がある場合には、厚みは薄い方が良い。厚みが薄くて単独の基板1201としてプロセスを行うのが困難であれば、ある程度の強度がある別基板にはりつけて行なっても良いし、別基板に薄い導電体膜1201を形成してプロセスを行っても良い。最終的にインダクタ素子を完成したときにこの別基板を分離して、単体のインダクタ素子として使用できれば良い。別基板は特に限定する必要はないが、プロセス上変形しない程度の強度が必要である。たとえば、約0.3mm以上の厚みを有するガラス基板、セラミック基板、シリコン基板、石英基板等である。
図30(a)に示すように、導電体基板1201上に絶縁膜1202を形成する。この絶縁膜1202は、スクリーン印刷によって形成するのがプロセス上簡単である。すなわち、所定部分に窓開けした(たとえば、スルーホール1203や磁性体コアの挿入孔に相当する開口部1221、さらにはスクライブラインとなる部分S領域)スクリーン印刷用マスクを使って、導電体基板1201上に絶縁体ペーストや絶縁体樹脂を塗布する。絶縁体ペーストや絶縁体樹脂としてたとえば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂やポリアミドイミド樹脂などの有機系樹脂がある。あるいは、アルミナ、窒化アルミ、ジルコニア、フェライト、チタニア等のセラミックス粒子にガラス粒子に有機バインダー、可塑剤、溶剤その他の添加材等を所定の割合で混合したセラミックス系ペーストを使用することができる。フェライト系のセラミック系ペーストは磁性体の性質を持つので、本発明の磁性体コアと一緒に用いれば、さらにインダクタンスやQ値を向上させることができる。セラミック系ペーストの場合は、スクリーン印刷して所望形状の絶縁膜(ペースト)パターンを得た後、加圧しながら(加圧しない場合もある)高温度で焼成する。
適度な熱処理(有機系樹脂では、約150℃〜約500℃の熱処理で、たとえば、ポリイミド系樹脂では、2〜数段階のステップ熱処理を行う。最高温度の熱処理温度は約300℃〜約500℃である。また、セラミックス系ペーストでは2〜数段階のステップ熱処理を行い、本焼成温度は約500℃〜約1000℃である。このように、セラミック系ペーストの場合には、熱処理温度が高いので、アルミニウム等の融点の低い金属を導電体膜として使用できないが、融点が比較的高く抵抗の低い銅(Cu)や銀(Ag)等は使用できる。)などを行って硬化させ絶縁体膜1202を形成し、同時にスルーホール窓開け1203も行なう。将来チップ個片化するときのスクライブラインにおいも絶縁体膜1202は不要なので除去しておく(S領域において)ことが望ましいが、基板反り等の防止用に必要であれば残しておく。また、将来磁性体コアを入れるべき場所も開口しておく。(開口部1221)
次に簡便な方法として、感光性絶縁膜を塗布(液状感光性膜の場合)あるいは接着(シート状感光性膜の場合)しプリベークした後、必要な個所をフォトリソグラフィ法(フォトレジストコート(あるいは感光性シート接着)〜プリベーク〜露光〜現像までの一連の感光性膜のパターニング)で窓開けする方法がある。これについては既に種々の所で説明した。他の絶縁膜およびスルーホール形成方法についてもこれまでに説明した方法を適用できる。
次に、図30(b)に示すように、スルーホール1203に導電体膜を形成する。たとえば、選択VCD法やメッキ法を用いてスルーホール部に導電体膜を形成することができる。このスルーホール1203内の導電体膜は第1コイル配線1204の導電体膜と兼用もできる。次に、この絶縁膜1202上に第1コイル配線1204を形成する。この形成法として最も簡便な方法として、マスクを用いたスクリーン印刷法がある。すなわち、第1コイル配線のパターンに合わせたマスクを用いて、導電体ペーストをスクリーン印刷する。導電体ペーストとして、たとえば、銀ペースト、カーボンペースト、銅ペーストなどがある。スルーホール内の露出した導電体基板1201に不純物や異物が形成され、コンタクト抵抗が大きくなる場合には、ドライエッチング、ウエットエッチング、あるいは逆スパッターエッチング等の前処理を行い、不純物や異物を除去すれば良い。酸化物等の畏物であれば、導電体ペーストに還元剤を含ませて熱処理を行い異物を還元する方法も有効である。適度な熱処理(加圧しながら熱処理をする場合もある)を行い硬化させて第1コイル配線1204を得る。スクリーン印刷法により形成される導電体膜の抵抗率は現状では約1〜10*10−5Ωcmであり、スパッター膜やメッキ法と比較すると現状では数倍〜10倍くらい高い。熱処理温度を高くすると抵抗が下がるので、使用する材料やプロセス全体を考えて選択する。導電体ペーストを用いたスクリーン印刷法の場合にもスルーホール内の導電体膜を形成しなくても第1コイル配線形成時にスルーホール内に導電性ペーストを入れて同時に形成できる。熱処理時に圧力をかけた方が配線抵抗やコンタクト抵抗を下げることができる。
あるいは、工程は増えるが、表面にPVD法(スパッター法、蒸着法など)やCVD法やまたは無電解メッキ法で金属膜を積層して、感光性膜をつけ第1コイル配線1204を形成すべき部分を開口して、この開口された部分に電解メッキを行い、所定の厚みを得られた後にレジストを剥離して、厚い電解メッキをマスクにしてレジスト下に存在した薄い金属膜をエッチングすることにより、第1コイル配線1204を作製する方法がある。あるいは、表面にPVD法(スパッター法、蒸着法など)やCVD法で金属膜を積層してパターニングした後で、その部分にメッキする方法がある。あるいは、PVD法(スパッター法、蒸着法など)やCVD法で金属膜を積層してパターニングする方法がある。
あるいは、薄い導電体フィルムを接着して(接着剤に導電性接着剤を使う場合もある)、その導電体フィルムを選択的に(マスク等を用いて)エッチングして第1コイル配線を形成する方法がある。薄い導電体フィルムといっても現状では5μm以下の薄い導電体フィルムの接着は困難であるが、バルクに近い低い抵抗を有する導電体膜を形成できる。また、接着するときにデバイスへ力を加えるためダメッジが入らないように注意する必要がある。
スクリーン印刷法は、簡単な作製法ではあるが、配線を薄く積層するのは困難であり、小さなスルーホールへの導電体膜形成は困難であり、低温処理では抵抗率が高く、高い温度の熱処理も必要である。また、加圧処理を行う場合もあるので、設備や治工具が必要である。メッキ法は比較的厚く積層できるが工程が複雑である。PVD法やCVD法は、工程数はその中間レベルだが厚く形成するのは時間がかかるが、クリーンな環境でプロセスを行うことができる。。以上の得失を考慮して最適なプロセスを選択すると良い。ただし、技術は日進月歩であり、上記の問題点が克服されれば、それらの得失関係も変化するのは当然である。
次に図30(b)に示すように、第1のコイル配線1204の上に絶縁膜1205を形成する。この絶縁膜1205もマスクを用いてスクリーン印刷で形成すれば、絶縁膜1205の形成と同時にスルーホール1206が形成される。この絶縁膜1205も上述した種々の方法で形成できる。また、磁性体コア1214の挿入孔となるべき部分1222にも絶縁膜1204は形成しないようにする。そうしないと後で厚い絶縁膜をエッチングするプロセスを行う必要がある。この領域は、1221と合わせて深い挿入孔となっている。また、スクライブラインとなる領域Sにも絶縁膜を1205を形成しないことが望ましい。厚い絶縁層を形成するとダイシングに負荷がかかる。適度な熱処理を行って、絶縁膜1205のプロセスや信頼性において安定できるように絶縁膜1205の強度を充分なものとする。
次に30(c)に示すように、スルーホール1206に導電体層を形成し、さらにスクリーン印刷法で導電体ペーストを用いて第2のコイル配線1207を形成する。スクリーン印刷法ではスルーホール内の導電体層も第2のコイル配線1207と一緒に形成できるので、工程が簡略化できる。第2コイル配線は磁性体コア挿入孔1222や1221は通らないので、スクリーン印刷時の第2コイル配線1207のパターニングの際は、この磁性体コア挿入孔はマスクされていて、導電体ペーストは入りこまない。また、スクライブラインSも大きな窪みが形成されているが、マスクでカバーされており、この部分にも導電体ペーストは入り込まない。すなわち、第1コイル配線1204と同様に、第2コイル配線1207も平坦な絶縁膜1205の上に形成されるので、形成された第2コイル配線1207が段差切れなどの問題を引き起こすことはない。その後適度な熱処理(加圧を付加する場合もある)を行い、スルーホール1206の導電体層および第2コイル配線の抵抗を下げて安定化させる。尚、プロセスは増えるが、上述したようにスルーホール1206内の導電体層や第2コイル配線は他の方法でも形成できる。
次に図30(c)に示すように、第2のコイル配線1207の上に絶縁膜1208を形成する。この絶縁膜1208もマスクを用いてスクリーン印刷で形成すれば、絶縁膜1208の形成と同時にスルーホール1209が形成される。あるいは、この絶縁膜1208も上述した種々の方法で形成できる。また、磁性体コア1214の挿入孔となるべき部分1223にも絶縁膜1208は形成しないようにする。そうしないと後で厚い絶縁膜をエッチングするプロセスを行う必要がある。この領域は、1221および1222と合わせて深い挿入孔となっている。また、スクライブラインとなる領域Sにも絶縁膜を1208を形成しないことが望ましい。その都度この部分の絶縁膜を除去しておけば、インダクタ(コイル)素子を個片化するときに、チッピング等を防止したり、ダイシング時の負荷を減らすことができるので、ダイシング等による分離がスムーズにできる。適度な熱処理を行って、プロセスや信頼性で安定できるように絶縁膜1208の強度を充分なものとする。
次に30(d)に示すように、スルーホール1209に導電体層を形成し、さらにスクリーン印刷法で導電体ペーストを用いて第3のコイル配線1210を形成する。スクリーン印刷法ではスルーホール内の導電体層も第3のコイル配線1210と一緒に形成できるので、プロセスを簡略化できる。第3コイル配線1210は磁性体コア挿入孔1223、1222や1221は通らないので、スクリーン印刷時の第3コイル配線パターニングの際は、この磁性体コア挿入孔はマスクされていて、導電体ペーストは入りこまない。また、スクライブラインSも大きな窪みが形成されているが、マスクでカバーされており、この部分にも導電体ペーストは入り込まない。すなわち、第1コイル配線1204や第2コイル配線1207と同様に、第3コイル配線1210も平坦な絶縁膜1208の上に形成されるので、形成された第3コイル配線1210が段差切れなどの問題を引き起こすことはない。その後適度な熱処理を行い、スルーホール1209の導電体層および第3コイル配線1210の抵抗を下げて安定化させる。尚、プロセスは増えるが、上述したようにスルーホール1209内の導電体層や第3コイル配線1210は他の方法でも形成できる。
以上のプロセスを繰り返すことにより、コイル配線をスパイラル式に何層も積み重ねることができる。最後のコイル配線が形成された後(ここでは、第3コイル配線1210が最後のコイル配線(すなわち、最上層のコイル配線)となっている)、図30(e)に示すように、サポート基板1215に接着層1216を介して付着させた磁性体コア1214を、磁性体コア挿入孔1224(1223、1222、1221)に挿入する。本願でいろいろな所に記載しているように、液状接着剤を磁性体コア挿入孔に入れて、その中に磁性体コア1214を挿入する方法や、磁性体コア1214に液状(あるいはペースト状)接着剤を付着させて挿入する方法など種々の挿入し固定する方法がある。ここでは、磁性体コア1214に液状(あるいはペースト状)接着剤を付着させる方法で詳細に説明する。
液状の絶縁性接着剤(あるいはペースト)1217を入れた容器内に磁性体コア1214を付着させたサポート基板1215を沈めていき、磁性体1214に液状接着剤(あるいはペースト)1217を付着させる。付着させる量は、磁性体コア1214をコア挿入孔1224へ入れたときにコア挿入孔1224から少し出るくらいの量が好ましい。この付着量は液状接着剤1217の粘度によって調整できる。また、液状接着剤1217はサポート基板1215には付着しないようにし、接着層1216にもできるだけ付着させないようにする。ベース基板である導電体基板1201側に対してサポート基板1215をアライメントしながら接近させていく。サポート基板がアライメント用光線を透過できる物質(たとえば、ガラス基板や石英基板など透明基板)ならばそのアライメント光線を用いてパターニングされた磁性体コア1214を直接コア挿入孔1224(1223、1222、1221)に常時アライメントできるので、非常に精度良く合わせこんで磁性体コア1214をコア挿入孔1224へ挿入することができる。あるいは、サポート基板がアライメント用光線を透過できる物質でなくとも、反射ミラー等を使いながらアライメントできる。ベース基板1201内には多数のインダクタ素子が一定のピッチdで繰り返しパターニングされていて(コア挿入孔1224もピッチdでパターニングされている)、サポート基板側1215に付着した磁性体コア1214もこのピッチdに合わせてパターニングされているので、サポート基板1215に搭載された多数の磁性体コア1214は、ベース基板1201側のパターンと接触することなく、コア挿入孔1224へ挿入される。
次に図30(f)に示すように、磁性体コア1214をコア挿入孔1224に挿入し適切な位置で挿入を停止する。この停止位置を導電体基板1201から磁性体コア1214の底面までの距離をt12とする。磁性体コア1214に付着させた接着剤の磁性体コア挿入孔1217の底面からの(底における)厚みをt11(平均厚みとする)としたとき、t12<t11として磁性体コア1214と導電体基板1201との間に接着剤が満たされるようにする。信頼性を向上するために、この部分には接着剤のない領域をできるだけ作らないようにする。そのために、磁性体コア1214のコア挿入孔1224への挿入プロセスは真空に近い低圧状態の環境で行ない、コア挿入孔1224内に気泡を入れないようにすることが望ましい。コア挿入孔1224に磁性体コア1214に挿入した停止した状態では、接着剤1217はコア挿入孔1224の上面(絶縁膜1208の表面位置)から少しあふれる状態が望ましい。磁性体コア1214の体積とコア挿入孔1224の内容積から、磁性体コアに付着する接着剤1217の量を調節すれば良い。尚、停止位置は、サポート基板1215を移動させる力を一定にして磁性体コアを挿入していき、接着剤1217が導電体基板1201と磁性体コア1214との間に満たされた状態になるとサポート基板1215は(上向きの)力を受けるので、この力を検知して、サポート基板1215の移動を停止することもできる。この力を受ける時の導電体基板1201から磁性体コア1214の底面までの距離もt12<t11の関係を満足する。
次にこの停止位置において、ベース基板1201側の温度(T16)を接着剤1217の固化温度T1以上とする。またこの温度は、熱可塑性樹脂である接着層1216の軟化温度T3よりも低くする。すなわち、T1=<T16<T3となるような温度T16で接着剤1217を固化させて、磁性体コア1214をコア挿入孔1224内に固定する。次にサポート基板1215側の温度(T17)を接着層1216の軟化温度T3より高くして熱処理を行う(T17>T3)と、接着層1216の接着力は弱くなるので、サポート基板1215を上方へ移動させてサポート基板1215から磁性体コア1214を分離する。
図30(g)に示すように、T17で熱処理した後における磁性体コア1214の底面とベース基板1201との距離t13(ここに存在する接着剤1217の厚みでもある)は、接着剤1217は通常固化すると液状時よりも体積が収縮するので、接着剤1217も収縮し、t13<t12となる。次に図30(g)に示すように、第3コイル配線1210の上に絶縁膜1211を形成する。この絶縁膜1211もマスクを用いてスクリーン印刷で形成すれば、絶縁膜1211の形成と同時にスルーホール1212が形成される。(このときにスクライブライン領域Sにも絶縁膜を形成しないようにすることもできる。)あるいは、この絶縁膜1211も上述した種々の方法で形成できる。たとえば、感光性絶縁膜を塗布するか、シート状感光性絶縁膜を接着するかして、プリベーク後必要な部分(たとえば、スルーホール部1212やスクライブライン領域S)を露光法(露光+現像)により除去し、その後所定の熱処理(キュアを含む)を行い所望の特性を有する絶縁膜1211を得る。磁性体コアの上部は図30(g)に示すように最上層の第3コイル配線1210より上に出ているが(出ないように作製することもできるが、出た方がコイルのインダクタンスは増大する。)、この磁性体コア1214も被覆するように絶縁膜1211を形成する。従って、最上層の絶縁膜1211はコア挿入孔となるべき部分は形成しない。これまでの下層の絶縁膜(1208、1205、1202)の表面は平坦であるが、この絶縁膜1211はスルーホール1212およびスクライブライン領域S以外の部分の表面は平坦に形成することが望ましい。電極となる導電体膜1213が形成される領域は、特に平坦性を要求される。(ただし、導電体膜1213との密着性などを向上する目的として、表面に凹凸を形成する場合もある。)磁性体コア1214上の絶縁膜1211の厚みをt14とする。
次に30(h)に示すように、スルーホール1212に導電体層を形成し、さらにスクリーン印刷法で導電体ペーストや液状タイプの導電性絶縁膜(感光性タイプを含む)を用いて上部電極(導電体基板1201を下部電虚とする)となる導電体膜1213を形成する。スクリーン印刷法ではスルーホール内の導電体層も第3のコイル配線1210と一緒に形成できるので、プロセスを簡略化できる。あるいは、スルーホール1212に導電体層を形成した後に、導電体フィルム(感光性タイプを含む)を貼りつけて(接着して)パターニングして上部電極1213を形成する。既にパターニングされた導電体フィルムを貼りつけて上部電極1213を形成しても良い。導電体フィルム1213はスルーホール内の導電体層1212と電気的に接続する必要があるので、特にこの部分は接着材料に導電性接着剤を用いた方が良い。あるいは、圧力や熱処理により電気的に接続するタイプの接着剤でも良い。その他、本願に記載した種々の方法で上部電極(スルーホール内導電体層を含む)を形成することもできる。ベース基板1201上にはこのようなインダクタ(コイル)素子が多数形成されるので、個々のチップインダクタ(パッケージ)とするには、ダイサー等を用いてスクライブラインSに沿って切断する。これまでに説明したように、スクライブラインSの領域には導電体基板1201以外のものは極力形成しないようにしているので、ここで切断する材料は主としてベース基板である導電体基板1201である。従って、ダイシングブレード等へ与える負荷を少なくしているので、ダイシングブレードの寿命を延ばすことができる。あるいは、切断する材料は1種類であるから、エッチング法やレーザーダイシングを用いることも容易である。エッチングの場合には、図30(h)で示す上部電極1211側を別基板に付着させ、導電体基板1201の表面(図30(h)では下面)にフォトリソ法を用いてスクライブライン領域を窓開けして導電体基板1201の方からエッチングすれば簡単である。たとえば、150℃〜200℃前後までの温度で簡単に固化して、かつその温度より少し高い温度で軟化する樹脂を用いて、上部電極側へその樹脂を塗布して別基板(たとえば、セラミック基板やガラス基板やその他の基板)を付着して、熱処理を行ってその樹脂を固化し、上部電極側を別基板に接着すれば良い。導電体基板1201のスクライブライン領域をエッチング除去した後で、(尚、ダイシング法も使用できる)その樹脂の軟化温度よりも高い温度(100℃前後またはそれ以下の温度)で熱処理すれば、個片化したチップインダクタ素子が多数製造できる。この樹脂は紫外線照射により接着力がなくなる材料でも良い。そうすれば熱処理も不要となる。また、ダイシングテープそのものや類似したものを用いることもできる。もちろん、ベース基板の上部側から上記のプロセスを行うこともできる。
また、上部電極1213をパターニングしないで全面に導電体膜1213を形成して、ダイシング法やエッチング法を用いて、スクライブライン領域Sに存在する導電体膜1213やベース基板1201を一度に切断またはエッチングすることもできる。あるいは、スクライブラインの絶縁膜(1202、1205、1208、1211など)はその都度除去せずに残しておき(スクリーン印刷法のときは、絶縁膜を形成する)、最後にダイシング法で、導電体膜1213や1201と一緒に切断する方法もある。(ただし、上述したようにダイシングブレード等への負荷は大きくなる)ベース基板1201は余り厚くはないので、インダクタ素子形成プロセスにおける反り等が発生する場合には、上述したようにサポート基板へベース基板を貼りつけて(接着層を介して)プロセスをする場合もある。この場合にはサポート基板に貼りつけたまま上部電極1213側からエッチングやダイシングして導電体基板1201まで切断すれば良い。このサポート基板をリサイクルする場合には、エッチングやダイシングは接着層の所で止めておけば良い。この接着層の材料として、軟化温度がインダクタ素子形成プロセスの最高温度よりも高い温度(T23とする)を有する熱可塑性樹脂(あるいは金属(たとえば半田)でも良く、このときはT23は融点となる)を用いることができ、ダイシングやエッチングした後で、T23以上の熱処理を行えばサポート基板からチップインダクタが分離される。あるいは、この接着層として紫外線照射により接着力が消失するタイプのものを使用することができ、ダイシングやエッチングした後で、紫外線照射を行えばサポート基板からチップインダクタが分離される。このときはサポート基板として紫外線が透過する基板を用いると良く、サポート基板側(図30(h)の下側)から紫外線照射を簡単に行なうことができる。
絶縁膜(1202、205、1208,1211等)にセラミック系ペーストを使用する場合、最終の焼成温度が高いので繰り返しの熱処理は材料の耐性上もプロセス上も負荷が大きい場合は、途中の熱処理では最終熱処理まで行なわずに、仮熱処理を行い最後の材料の熱処理の時に最終熱処理を行う方法を採用することもできる。たとえば、上記の実施形態では、絶縁膜1202、1205、1208の最終熱処理(高温焼成処理、たとえば、700℃〜950℃の加圧焼成)は行なわずに約500℃以下の仮熱処理を行うのみとして、最後の絶縁膜1211を形成した後(あるいは、導電体膜1213を導電性ペーストで形成した後)、最終熱処理である高温焼成処理を行う。このとき必要であれば加圧も行なうことができる。これらの熱処理で絶縁膜や導電体膜の体積が変化(主として収縮)する場合には、それを見越して絶縁性ペーストや導電性ペーストの塗布厚みを決定すれば良い。磁性体コアは熱処理後ももとのサイズにほぼ戻るので、熱処理前、仮熱処理後、最終熱処理後の絶縁膜や導電体膜の厚みと、磁性体コアの厚みおよび磁性体の位置を考慮した設計を行うことにより、最終製品としては磁性体膜がインダクタ素子内に挿入され、上下の電極のゆがみもない平坦な状態を実現できる。コア挿入孔への接着剤が高温焼成処理で問題を起こすような材料の場合には、セラミック系ペースト材料に類似した材料を接着剤として使用すれば良い。
図30では導電体基板1201へ段階的に絶縁膜形成、導電体膜形成、絶縁膜形成、導電体膜形成の繰り返しでインダクタ素子を形成したが、これらの工程を別々に行ない最後に一括して積層させる方法でも行なうことができる。たとえば、セラミック系ペーストで作製したグリーンシートにスルーホールおよびコア挿入孔を形成する。次にコイル配線の導電体パターンを導電性ペーストでスクリーン印刷法により形成する。これを第1層目のグリーンシート・コイルパターンとして、次に第1層目のグリーンシート・コイルパターンに合わせた第2のグリーンシート・コイルパターン、さらにこの第2のグリーンシート・コイルパターンに合わせた第3のグリーンシート・コイルパターンという繰り返しで所定の枚数のグリーンシート・コイルパターンを形成する。グリーンシートは磁性体グリーンシート(たとえば、フェライトグリーンシート)を用いればさらにインダクタンスやQ値を向上できる。これらのグリーンシートを導電体基板1201上に順番に積層し重ねていき、最上層のグリーンシート・コイルパターンを重ねた後に、コア挿入孔に磁性体コアを挿入する。コア挿入孔にはあらかじめ接着剤を入れておいても良いし、磁性体コアに付着させても良い。この後のプロセスでグリーンシートパターンは収縮する可能性もあるのでそれを考慮して磁性体コアの位置および磁性体コアの上面の位置を決める。最終製品として最上層のコイル配線より磁性体コアの上面が出ていることが良好なインダクタ素子特性を示すので、そのような磁性体コアの挿入孔内の位置を決める。磁性体コアの高さも重要なファクターとなる。ただし、磁性体コアが上部電極へ影響を与えない程度の高さにする必要があるので、場合によっては最終製品として最上層のコイル配線より磁性体コアの上面が出ないようにすることもある。
磁性体コアを挿入孔に固定する接着剤は高温焼成温度でも問題ない材料を選定する必要がある。たとえば、グリーンシート材料と同じ材料ペーストを使用しても良い。次に、最上層のグリーンシートを重ねる。このグリーンシートには上部電極パターンおよびスルーホールが形成されている。スルーホール内にはこれまでと同様に導電膜(上部電極材料と同じ導電体ペーストが入り込んだ)が入り込んでいる。グリーンシート状の電極だけでは強度的にあるいは信頼性的問題がある場合には導電体基板を、最上層のグリーンシートへ付着させる。密着性を向上させるために導電性接着剤を介在しても良い。このように重ねた基板(下部電極基板−(スルーホールおよびコイルパターン付き)グリーンシート群−スルーホール付きグリーンシート導電体基板)を所定の条件(たとえば、ステップ熱処理+最終焼成+加圧)で処理して、コア付きインダクタ素子を多数搭載した基板が完成する。この基板の上下の電極にメッキ処理などを施した後、ダイシング等で個片化する。あるいは、上下の電極をエッチングやダイシングして電極を分離して電極部の側面も露出させてメッキすれば、電極の表面だけでなく側面にもメッキが施される。その後に、電極間でグリーンシートをダイシング法等で切断すれば電極部はすべてメッキされたチップインダクタとして個片化できる。
尚、スクライブラインSの領域も形成(窓開け)したグリーンシートを作製すればグリーンシートの側面に電極を形成できる。たとえば、図34〜図37に示す方法に類似している。すなわち、グリーンシート内にスクライブラインで電極を形成する場所を窓開けしてその部分にコイル配線のスタート部分と終点部分を露出させておき、この側面に電極形成すれば、1方の電極から他方の電極へつながるコイル配線を作製できる。1層目のコイル配線作製のときにコイル配線のスタート箇所の配線をグリーンシートの窓開けしたスクライブライン(A部分と称す)と同じ部分に配置する。この部分をスクライブライン方向に長くしておけば、後に形成する電極との接触面積が増える。また、もう1つの電極を形成すべきスクライブラインの1部分(通常は、A部分と反対側のスクライブラインの1部であり、これをB部分と称す。B部分には終点のコイル配線が露出する。)も窓開けしておく。(尚、スクライブラインをすべて窓開けするとグリーンシートが分離するし、窓開け部分が多いとグリーンシートの強度が低下するので、必要な部分だけ窓開けをしておく。この窓開けはスルーホールやコア挿入孔と同時に形成できる。(たとえば、パンチング形成やドリル形成、レーザー法による形成、あるいはグリーンシート形成時にスクリーン印刷法で形成するなど種々の方法がある。)2層目以降のコイル配線を有するグリーンシートも1層目と同じ部分にスクライブラインの1部を窓あけしておく。これらを重ねていけば、窓開けしたスクライブラインA部分の溝には、1層目のコイル配線が露出している。最上層のグリーンシート・コイルパターンにおいては、コイル配線はB部分でコイル配線が露出するように形成する。B部分のスクライブラインに沿って配線を延ばせば広い面積で露出する。この後磁性体コアをコア挿入孔に挿入し、最上層のグリーンシートで最上層のコイル配線をカバーするが、B部分の近傍については少し内側の方へ後退しておけば、より広い面積でコイル配線と電極が接触できる。最上層のグリーンシートはコア挿入孔を形成する必要はない。最上層グリーンシート上に電極を形成しない場合にはスルーホール形成も必要がない。最上層グリーンシートにも電極を形成する場合にはスルーホールを形成して導通をとる。ただし、B部分およびその近傍において最上層コイル配線は露出しているので、この部分も含めて最上層グリーンシートへ電極を形成しておけば、B部分でも電極はコイル配線とコンタクトが取れるので、スルーホールを設けなくても良い。
以上のようにしてスクライブラインの1部に窓開けされたA部分およびB部分に1層目のコイル配線および最上層のコイル配線が露出している。焼成処理を行ってインダクタ素子が安定化してから、CVD法やPVD法で導電体膜を積層する。PVD法ではマスクを用いて必要な部分のみに導電体膜を積層しても良い。必要な部分とは、側面電極を形成したい部分で、窓開けしたスクライブラインのA部分およびB部分、さらにそこにつながる電極を広く形成したい部分である。ステップカバレッジの良い条件で行なえば、A部分やB部分が深くても側面に導電体膜が積層する。この導電体膜の不要な部分を除去してメッキすれば、導電体膜が露出している部分にメッキがなされる。あるいは、メッキした部分以外をフォトレジスト等でマスキングして開口した部分にメッキを行って、さらにフォトレジストをリムーブしてメッキ膜を利用してフォトレジストでカバーされていた(薄い)導電体膜をエッチングしても良い。このようにして側面電極を形成できる。最上層グリーンシート上にも導電体膜を残しておけばその部分にもメッキ電極が形成される。この後、スクライブラインで切断すれば、チップインダクタが完成する。尚ベース基板(グリーンシートをサポートした基板)は必要がなければ、分離すれば良い。そのためには、本焼成前に分離した方が良い場合もある。この場合にはA部分およびB部分のスルーホールは上下に貫通する。あるいは、ベース基板を残しておいてチップ部品の一部としても良い。導電体基板をベース基板とすれば、このベース基板も電極として使用できる。
上述した方法は、A部分およびB部分で露出した配線の面積は少ないのでCVD法やPVD法で積層した導電体膜とのコンタクトが心配であるが、次に側面全体に配線の導電膜を形成する方法について説明する。これも図36〜図37に示す方法に類似するが、第1層目のコイル配線をA部分では少しA部分の方に延ばしてはみださせておく。2層目のコイル配線を形成するときもA部分においてグリーンシートのA部分の端面に隣接して導電体膜を形成(パターニング)しておく。この導電体膜はコイル配線とはつながっていない。1層目のグリーンシート・コイルパターンと2層目のグリーンシート・コイルパターンを重ねると、1層目のはみ出て延ばしたコイル配線上に2層目のA部分の端面に隣接して形成した導電体膜が重なる。これを3層目以降のグリーンシート・コイルパターンに繰り返して行なえば、スクライブライン沿ったA部分の側面に導電体膜が積層されていく。つまり第1層目のコイル配線は側面電極・配線につながったことになる。同様にして、B部分側についても、1層目のときにB部分に窓開けされたグリーンシートに導電膜を形成しておき、2層目以降にも同様に形成して、最後に最上層のコイル配線の終端部と重ねれば、A部分の側面にも側面電極・配線を形成できる。焼成後にCVD法やPVD法で導電体膜を積層して上述した方法でメッキすれば側面電極が完成する。尚、側面へ導電膜を重ねていく方法では既に側面に関しては広く電極・配線が形成されているので、CVD法やPVD法による導電体膜積層は必要がなくメッキだけで良い場合もある。あるいは、実装形態によってはメッキも必要がない場合もある。この後、スクライブラインに沿ってダイシングあるいはエッチング等を行いチップ化する。このとき、側面電極を傷つけないように(ダメッジを与えないように)分割することは言うまでもない。本実施形態は、工程の負荷が全くないプロセスで側面電極を大きく形成できる優れた方法である。
グリーンシートを用いる方法で、グリーンシートを半分ずつの大きさで重ねながら導電膜を形成していく方法も本発明に適用できる。あるいは、第1層目のコイル配線用のグリーンシートの下に配線のないグリーンシートを重ねてコイルを保護する方法や、最上層で導電体パターンのないグリーンシートを重ねてコイルを保護する方法も本発明に使用できる。さらにスルーホールだけ形成されたグリーンシートにその都度導電体膜パターンをスクリーン印刷法で行ないさらにこれを繰り返してインフダクタ(コイル)素子を形成する方法も本発明に適用できる。
インダクタ素子を個片化した後、(さらに)電極にメッキ(半田メッキなど)やはんだディップして、チップインダクタ(コイル)素子が完成する。ここで、個片化してからメッキする方法は、メッキによりチップ部品が付着するという問題がある。これを防止する方法を以下に説明する。図31は図29および図30に示す本発明のインフダクタ素子の電極にメッキする方法について説明する図である。図31(a)は図30(h)に示す構造の後のプロセスと考えることができる。すなわち、図31(a)に示すように、電極1213にメッキするために、液状樹脂を塗布して電極1213を含む領域を開口する。特にスクライブライン領域Sの窪んだ領域においては、導電体基板1201が露出しているので、液状樹脂を入れて熱処理することにより絶縁膜1234を形成する。この液状樹脂はメッキしたくない部分にメッキさせないためのマスクであるから、メッキ後に簡単にリムーブできる材料が良い。たとえば、フォトレジストを塗布し100℃前後でプリベークし露光法(露光+現像)で電極1213を含む領域を開口し、導電体1201が露出しているスクライブライン領域にフォトレジスト1234を残す。その後本ベークを行ってフォトレジスト1234を固める。あるいは、フォトレジスト等の液状樹脂を塗布して本ベークしてから、エッチバック法で電極1213を被っている樹脂を除去すると、スクライブライン領域Sは深い窪みになっていてこの部分のフォトレジスト1234はかなり厚いので、スクライブライン領域Sで露出した導電体基板1201上にフォトレジスト膜1234を残すことができる。尚露光法を用いるときは、スクライブライン領域Sに存在する厚いレジストを残すために、光があたらなくても現像で残るポジレジストタイプが扱いやすい。何故なら、厚いレジストの奥の方まで光を照射するのは時間と光量が必要となるからである。もちろんネガタイプでも露光量を調節すれば問題ない。スクライブライン領域等において露出した導電体基板1201にメッキされても問題なければ上記の工程は不要となる。
次に、多数のインダクタ素子を搭載した導電体基板1201をメッキ液中に浸漬したり、あるいは、メッキしたい面である電極1213が形成された面にメッキ液を接触させたりして、電気メッキ法により電極1213にメッキ膜1230を形成する。導電体基板1201を一方の電極(通常は負電極)とすれば、この導電体基板1201はインダクタ素子の各電極1213へ接続しているので、均一性良く電極1213の露出面にメッキ金属を成長させることができる。メッキ金属としては、実装に適した金属、たとえば半田(Pbフリー半田を含む)、スズ、金、パラジウム、銅、ニッケルなどをメッキする。尚このメッキ時に導電体基板にメッキをしたくなければ、導電体基板1201にメッキ液を接触させない、たとえばスプレーメッキ法などを用いたり、あるいはメッキ液へ浸漬する方法でも治具を工夫して導電体基板1201の露出面を被ったり、あらかじめ導電体基板1201を樹脂等で被覆したりして、メッキ液が導電体基板に接触しないようにする。あるいは、導電体基板1201の底面(図31(a)においては、基板1201の下面)だけにメッキを行うこともできる。
所定厚みのメッキがなされた後に、インダクタ素子が形成された面に液状樹脂を塗布して熱処理して固めて樹脂層1231を得る。この樹脂1231は、有機系剥離液や熱処理、あるいは紫外線照射で簡単に除去できるものが扱いやすい。しかし、この後のベース基板1201分離プロセスやメッキプロセスで安定している(化学的および物理的に)ことが必要である。従って、フォトレジスト膜でも良いし、樹脂シートでも良いし、接着樹脂などでも良く、100℃〜200℃以下の温度で扱うことができる(塗布や付着したり、固化したり、軟化させたり、除去したりすることができる)材料が良い。尚、樹脂層1231だけではこの後のプロセスで強度的にもたなければ、サポート基板1232を樹脂層1231上に付着させても良い。このときは、サポート基板1232と密着性の良好な樹脂層1231を選定すると良い。(もちろん、この間に接着層をはさむ方法もある。)尚、絶縁膜(フォトレジスト膜)1234は残しておいて問題なければ残しておいても構わないが、樹脂層1231の形成に影響を与える場合には、樹脂層1231の形成前に除去しておく。
適度な熱処理等を行い、インダクタ素子上に樹脂層1231(必要なら、さらにサポート基板1232)を安定化させた後、図31(b)に示すように、導電体基板1201をパターニングして、下部電極1201(1201−1、2)を形成する。尚、導電体基板1201の下面にサポート基板が付着しているときは、導電体基板1201のパターニング前にサポート基板を分離させる必要があることは言うまでもない。導電体基板1201のパターニングは種々あるが、たとえば、フォトリソ法を用いてフォトレジストパターンを形成してから、導電体基板1201をエッチングする。導電体基板1201が銅の場合には、塩化第2鉄溶液等によるウエットエッチングや塩素系ガスによるドライエッチングを使用することができる。あるいは、ダイシングで導電体基板1201をスクライブラインSに沿って切断しても良い。(スクライブラインSの領域には、導電体基板1201の下には樹脂層1231が存在するだけである。)このダイシングのときには、導電体基板1201を完全に切断するが、樹脂層1231の切断は1部にとどめる。(サポート基板1232を使用しているときは、この段階で個片化しなければ樹脂層1231を完全に切断することもできる。ただし、後で分かるように樹脂層1231を完全に切断する必要はないし、サポート基板のリサイクルのためとダイシングブレードに負荷をかけないこと、ダイシング時間を短くすることなどのためには、樹脂層1231の切断は(厚み方向に)少しで良い。さらにレーザーダイシングや液体(水)ダイシングで導電体基板1201を切断することもできる。あるいは、プロセスの最初の段階で導電体基板1201を分離しておき、この分離領域には樹脂やペーストあるいは他の金属等で埋めて導電体基板1201が分離しないようにした基板からスタートすることもできる。あらかじめ分離している基板1201を使用した場合には、この段階におけるプロセスは分離領域に形成された樹脂等の物質を除去することである。たとえば、樹脂が熱可塑性樹脂であれば軟化温度以上に熱処理をすれば良いし、あるいはこの樹脂を剥離できる剥離液を用いれば良い。また、導電体基板1201の分離後の導電体電極1201(1201−1、2)の分離幅d30は、この後行なうメッキ形成においてメッキが付着しないような幅を取る必要がある。
次に図31(c)に示すように、メッキ液に浸漬するか、メッキスプレー法を用いて、電気メッキを行い、電極1201の露出した面にメッキを行う。電極1201の側面におけるメッキ厚みをt30としたとき、上述したように、d30>2t30となるようにする必要がある。メッキ材料は上部電極1213側のメッキ膜1230と同じで良い。もちろん、必要なら別の材料でも良い。次に樹脂層1231を剥離できる剥離液を用いて樹脂層1231をリムーブすれば、(サポート基板1232を用いているときはサポート基板1232からも分離して)インダクタ素子は個片化する。(すなわち、この段階では個々のインダクタ素子を支持しているのは、樹脂層1231だけである。)個片化したインダクタ素子の(上部)電極1213にも(下部)電極1201にもメッキが施されていて、簡単に実装基板等へ搭載できる。尚、この方法は必ずしも磁性体コアを搭載したインダクタ素子だけでなく、他のインダクタ素子、あるいは類似の構造をしたデバイス(抵抗やコンデンサ等の受動素子やIC等の能動素子など)に広く応用できる。
図32は、チップインダクタ素子の電極へメッキをする別の実施形態を示す図である。図図31に示すインダクタ素子では、コイル配線を上下に隔てる絶縁膜(1202、1205、1208、1211)はスクライブラインSの領域ではつながっていない。これに対して、図32における実施形態では絶縁膜(1202、1205、1208、1211)はスクライブラインSの領域において連続して形成する。すなわち、スクライブラインSの領域においては絶縁膜を形成しながらインダクタ素子を作製する。従って、図31(a)に示すプロセスにおいても、スクライブラインSの領域には絶縁膜が残っているので導電体基板が露出することはなく、絶縁膜1234を形成しなくても良い。従って、図30(h)に示すプロセスの後で、図32に示すように電極1213(1213−1、1213−2)にメッキ層1230を形成する。所定のメッキ厚みを形成した後、導電体基板1201をパターニングして下部電極1201(1201−1、1201−2)を形成する。インダクタ素子は、絶縁膜(1202、1205、1208、1211)で支持されているので、導電体基板1201がパターニングされてもしっかりと支えられていて、個片化することはない。従って、図31に示すような樹脂層1231やサポート基板1232を使用する必要はない。次に下部電極1201(1201−1、1201−2)の露出面にメッキを行う。所定厚みのメッキを得た後、電極間のスクライブラインSに沿って絶縁膜(1202、1205、1208、1211)をダイシング法により切断し、個片のチップインダクタ素子を製造することができる。
以上説明したように、インダクタ素子を個片化した後でメッキを行う必要がないので、メッキ面が傷ついたり、チップインダクタがメッキ工程で接続してメッキが剥がれたりするということはなく、非常に外観や品質の良いチップ部品を製造することができる。しかもプロセスは基板を使った一貫プロセスを採用できるので、LSIプロセスと同様な精度の良いチップを大量に作ることができる。プロセスも極めて簡単なので製造コストも大幅に低減できる。
図33は、2つのコイルを1つの磁性体コアを共通にしたインダクタ素子を示す図である。2つのコイルを並列に接続するときや直列に接続する場合、本発明を使用することにより、面積を増大させることなく作製できる。たとえば、コモンモードフィルターを作製するときに本実施形態を使用することができる。図33に示す2つのコイルを製造するプロセスは、図29および図30で説明したプロセスと同様であるが、これまでに説明した他のプロセスも使用することができる。
図33において作製する2つのコイルをAコイルとBコイルとする。BコイルはAコイルの上に作製されている。図33に示すように、導電体基板1301上に絶縁膜1302を形成し、その上にAコイルの第1コイル配線1304(1304−2)およびBコイルへ接続する配線1304(1304−1)を同時に形成する。Aコイルの第1コイル配線1304(1304−2)は環状に磁性体コア1317の周りを取り巻いているが、配線1304(1304−1)は導電体基板1301に接続する絶縁膜1302に形成されたスルーホール1303(1303−1)内の導電体層とコンタクトするための配線である。Aコイルの第1コイル配線1304(1304−2)はBコイルへ接続する配線1304(1304−1)とはつながっていない。Aコイルの第1コイル配線1304(1304−2)は絶縁膜1302に形成されたスルーホール1303(1303−2)内の導電体膜を介して導電体基板1301と接続する。
Aコイルの第1コイル配線1304(1304−2)およびBコイルへ接続する配線1304(1304−1)上には絶縁膜1305が形成され、その上にAコイルの第2コイル配線1307(1307−2)およびBコイルへ接続する配線1307(1307−1)を同時に形成する。Aコイルの第2コイル配線1307(1307−2)は環状に磁性体コア1317の周りを取り巻いているが、配線1307(1307−1)は配線1307(1307−1)に接続する絶縁膜1305に形成されたスルーホール1306(1306−1)内の導電体層とコンタクトするための配線である。Aコイルの第2コイル配線1307(1307−2)はBコイルへ接続する配線1307(1307−1)とはつながっていない。Aコイルの第2コイル配線1307(1307−2)は絶縁膜1305に形成されたスルーホール1306(1306−2)内の導電体膜を介して第1コイル配線1304(1304−2)と接続する。図33においては、Aコイルはこれで巻き数を終了するがさらに巻き数を増やすときはこのプロセスを繰り返していけば良い。そのときには、同様にBコイルもスルーホールと配線の製造を繰り返していけば良い。尚、第1コイル配線や第2コイル配線を平面的に渦巻き状に磁性体コア1317の周りを巻いていけば配線数を増やすことができる。コイル配線の渦巻きの開始点と終点においてその上下に存在する絶縁膜にスルーホールをあけてそこに導電体膜を形成して上と下のコイル配線をつないでいけば良い。すなわち、外側に開始点があれば内側へ磁性体コア1317を環状に巻いていき所定の回数巻いた終点においてその上の絶縁膜にスルーホールを形成してそこに導電体膜を形成してその上のコイル配線の開始点と接続する。このコイル配線は今度は内側から外側に向かって磁性体コア1317を環状に巻いていき、所定の回数巻いた終点においてその上の絶縁膜に形成されたスルーホール内の導電体膜を介して次のコイル配線の開始点に接続する。これを繰り返していけば、渦巻き状に磁性体コアを巻いたコイル配線を縦に所定回数重ねたコイルができる。(尚、巻き方は上下のコイルとも同じ方向に巻いていくことは当然である。)
Aコイルが完成した後は、Bコイルを形成する。Aコイルの第2コイル配線1307(1307−2)およびBコイルへ接続する配線1307(1307−1)上には絶縁膜1308が形成され、その上にAコイル配線1310(1310−2)およびBコイルの第1コイル配線1310(1310−1)を同時に形成する。Bコイルの第1コイル配線1310(1310−1)は環状に磁性体コア1317の周りを取り巻いているが、配線1310(1310−2)は第2コイル配線1307(1307−2)に接続する絶縁膜1308に形成されたスルーホール1309(1309−2)内の導電体層とコンタクトするための配線である。Bコイルの第1コイル配線1310(1310−1)はAコイルへ接続する配線1310(1310−2)とはつながっていない。Bコイルの第1コイル配線1310(1310−1)は絶縁膜1308に形成されたスルーホール1309(1309−1)内の導電体膜を介して配線1307(1307−1)と接続する。
Bコイルの第1コイル配線1310(1310−1)およびAコイルへ接続する配線1310(1310−2)上には絶縁膜1311が形成され、その上にBコイル配線1313(1313−1)およびAコイルの配線1313(1313−2)を同時に形成する。Bコイルの第1コイル配線1313(1313−1)は環状に磁性体コア1317の周りを取り巻いているが、配線1313(1313−2)は配線1310(1310−2)に接続する絶縁膜1311に形成されたスルーホール1312(1312−2)内の導電体層とコンタクトするための配線である。Bコイルの第2コイル配線1313(1313−1)はAコイルへ接続する配線1313(1313−2)とはつながっていない。Bコイルの第2コイル配線1313(1313−1)は絶縁膜1311に形成されたスルーホール1312(1312−1)内の導電体膜を介して配線1310(1310−1)と接続する。Bコイル配線はこれで終了するが、これを繰り返してコイル配線を重ねていけば良い。またAコイルについては、配線とスルーホールおよびスルーホール内導電体膜の形成を繰り返していけば良い。
次に、Bコイルの第2コイル配線1313(1313−1)およびAコイルへ接続する配線1313(1313−2)上には絶縁膜1314が形成され、その上にBコイル配線1313(1313−1)へつながる上部電極1316(1316−1)およびAコイルの配線1313(1313−2)へつながる上部電極1316(1316−2)を同時に形成する。Bコイル側の電極1316(1316−1)は絶縁膜1314に形成されたスルーホール1315(1315−1)内の導電体膜を介してBコイル配線1313(1313−1)へつながる。Aコイル側電極1316(1316−2)は絶縁膜1314に形成されたスルーホール1315(1315−2)内の導電体膜を介してAコイルの配線1313(1313−2)へつながる。
尚、各絶縁膜(1302、1305、1308、1311等)はコア挿入孔1318としてその都度開口されて、最後のコイル配線(図33では、1313)が形成された後に、磁性体コア1317がコア挿入孔1318へ挿入される。コア挿入孔1318内には接着層1319が充填されており、この接着層1319でコア挿入孔1318内に固定される。(磁性体コア1317の一部は最上層のコイル配線1313より出ている場合もある。)
また、導電体基板1301をBコイルへ接続する(下部)電極1301(1301−1)とAコイルへ接続する(下部)電極1301(1301−2)に分離すれば、(たとえば、Vの箇所で導電体基板1301をエッチングやダイシング等で分離する。)1つの磁性体コア1317を共有する2つのコイル配線AとBを一緒のインダクタ素子パッケージ(1つのチップインダクタとして)作ることができる。Aコイルは上部電極を1316−2、下部電極を1301−2とする。Bコイルは上部電極を1316−1、下部電極を1301−2とする。各電極へメッキを行う場合には、図31や32に示した方法などを用いれば良い。このプロセスを用いれば、3つ以上のインダクタ素子も1つのパッケーッジ(1つのチップ部品として)に作製することができる。
図34は、側面に電極を有するチップインダクタの製造方法を示す図である。図35は、側面に電極を有するチップインダクタの製造方法を平面的に示す図である。図34に示すように、本実施形態のベース基板は絶縁基板1331である。(尚、導電体基板でも作製できる。)絶縁基板1331上に絶縁膜1332を形成し、(絶縁基板なので絶縁膜1332を形成しなくても良いが、第1のコイル配線1334を形成しやすくする(たとえば、密着性向上)ために形成する場合もある。)絶縁膜1332のスクライブライン領域となる部分(後に示すy方向(図34の紙面では左右方向)のみ)の絶縁膜は除去する。(スクリーン印刷の場合には、形成しない。)次に第1コイル配線1334を形成する。このとき、y方向に存在する2つの端面のうちの1つの端面(図34では、右側の端面)のみ、第1コイル配線1334をスクライブラインSに合わせる。すなわち、第1コイル配線1334の端面1334−BはスクライブラインSに合わせている。絶縁膜1332の端面1332−Bもスクライブラインに合っている。一方第1コイル配線1334の反対側の端面1334−AはスクライブラインSの領域の内側になるようにする。絶縁膜1332の端面1332−AはスクライブラインSに合わせている。その他の絶縁膜1332の端面(後に示すx方向(図34の紙面では紙面に垂直方向)はない(絶縁膜1332がつながっている)。(最下層となる)第1コイル配線1334の端面1334−Bは、1334−Cに示すように、絶縁膜1332の端面1332−Bより外側に出して、スクライブライン領域Sに側に飛び出ていても良い。この方が後に形成する電極との接触面積が増える。この1334−Cの形成は、スクリーン印刷法を用いれば簡単である。たとえば、絶縁膜1332の端面1332−Bより外側にくるように導電体用のマスクを作って導電体膜をスクリーン印刷すれば良い。絶縁膜端面1332−Bを他の絶縁膜端面1335−Bより外側に形成することもできるので、スクライブライン領域の端面(1335−B)からはみ出るコイル配線の部分1334−Cをもっと広く形成することもできる。
次に第1コイル配線1334上に絶縁膜1335を形成する。次に、絶縁膜1335内にスルーホール1336およびスクライブラインの窓開けを行う。上述したようにスクリーン印刷方法を使えば絶縁膜1335形成、スルーホール形成やスクライブラインSの形成を同時に行なうことができるし、絶縁膜1335の表面の平坦化(第1コイル配線で凹凸がついている)も行なうことができる。このときに絶縁膜1335のy方向における1つの端面1335−Bは第1コイル配線1334の端面1334−Bに合わせる。絶縁膜1335のy方向における他方の端面1335−Aは第1コイル配線1334の端面1334−Aよりも外側になるようにする。従って、第1コイル配線1334の端面1334−Aは絶縁膜1335で被覆されている。すなわち、第1コイル配線1334は、端面1334−Bでスクライブライン側へ露出している。その他の第1コイル配線1334は、スルーホール部1336を除いて絶縁膜1335に被覆されている。
これを平面的に見た図35で説明する。図35は、図34お平面的に見た図である。絶縁膜1332はx方向に連続している(基板の端では切れている)が、これと直交するy方向にはスクライブラインS領域で切れていて端面を形成している。(絶縁膜1332の形状はx方向に長い長方形形状で繰り返しパターンとなっている。)第1コイル配線1334は絶縁膜1332上に形成され、コア挿入孔1338に挿入された磁性体コア1347の周りを巻いている(ただし、この時点ではまだ磁性体コアは挿入されていない。)面1334−Bと合っている。(絶縁膜1334―Bは少し大きくても良いし小さくても良い。)第1コイル配線1334は1周りして(渦巻き型なら、何周かして)スルーホール1336へつながる。第1コイル配線1334上の絶縁膜1335もx方向へ長い長方形状の形状をして、その内側にコア挿入穴1338およびスルーホール1336が窓開けされている。絶縁膜1335の右側の端面1335−Bは第1コイル配線1334の端面1334−Bや絶縁膜1332の右側の端面1332−Bの端面と合っている。また、第1コイル配線1334のもう一方の端面1334−Aは、絶縁膜1332のもう一方の端面1332−Aおよび絶縁膜1335のもう一方の端面1335−Aよりも内側に存在している。また、第1コイル配線1334の他の端面(すなわち、x方向の端面)は、絶縁膜1332も1334もx方向は連続しているので、絶縁膜1332も1334の中に入っている。従って、第1コイル配線1334は、1つの端面1334−BのみスクライブラインS側に露出していて、他は絶縁膜1335で覆われている(スルーホール1336部は除く)。x方向にはスクライブライン領域を形成するが、y方向にはスクライブライン領域を成しない。すなわち、各絶縁膜は窓開けせず、つながっている。基板1331上ではこの繰り返しで多数のコイル配線パターン、縁膜パパターン、スルーホールパターン、コア挿入孔パターンが形成されている。
次に絶縁膜13335の上に第2コイル配線1337、その上に絶縁膜1338、スルーホール1339、コア挿入孔1338およびスクライブライン領域S、さらにその上に第3イル配線13140、その上に絶縁膜1341、スルーホール1342、コア挿入孔1338およびスクライブライン領域Sを形成し、この繰り返しで重ねていき、コイル配線をスパイラル状に形成していく。第1コイル配線1334の上のコイル配線を中間コイル配線(最上層コイル配線は含まない。図34においては、1337、1340)と呼ぶと、中間コイル配線の端面はすべて絶縁膜の中に埋まっていて、(スルーホール部(図34においては、1336、1339、1342)を除いて)外部に露出していない。中間コイル配線を囲んでいる絶縁膜(図34においては、1335、1338、1340)の端面は図34および図35に示すようにx方向にそろっている。
絶縁膜1341の上には最上層のコイル配線1343が形成される。最上層のコイル配線1343の1つの端面1343−AはスクライブラインSと合っている。(少し内側に入っていても良い。)他方の端面1343−Bはスクライブライン領域Sよりも内側に存在する。最上層のコイル配線1343の上に絶縁膜1344が形成され、最上層コイル配線1343を被覆するが、絶縁膜1344の端面1344−AはスクライブラインSと合っているか少し内側に存在するので、コイル配線1343の端面1343−AはスクライブラインS側に露出している。端面1343−A側の部分1343−Cも露出させても良い。(電極面積を増大するには、コイル特性に影響を与えず(コイル配線が短くなったりしないようにし、また他の電極や、磁性体コア1347との接触をしないようにする)、実装や取扱上問題ない限りは、広い方が良い。)他方の端面1343―Bは絶縁膜1344で被覆されている。すなわち、端面1343―Bは、その下の絶縁膜1341の端面1341−Bより内側に存在し、その上の絶縁膜1344の端面1344−Bより内側に存在する。
図35(b)は、図34(a)における絶縁層1341、最上層コイル配線1343、その上の絶縁層1344を平面的に見たものである。最上層コイル配線1343の1つの端面1343−Aはその下の絶縁膜1341の端面1341−Aとそろっていて、その上の絶縁膜1344の端面1344−Aとそろっていて、最上層コイル配線1343の端面1343−AがスクライブラインS(S−A)側へ露出している。尚、正確に言えば、この部分で最上層コイル配線1343の端面1343−Aだけでなくその他の部分(たとえば、図34(a)に示す1343−Cの部分)も露出していても良い。たとえば、最上層コイル配線の端面1343−Aはその下の絶縁層の端面1341−Aよりも内側へ後退していても良いが、その場合には絶縁層の端面1344−Aは最上層コイル配線の端面1343−Aとそろっているか、内側へ後退していれば、最上層コイル配線の端面1343−Aおよびその近傍が露出することになる。1343−Cの領域を点線で示すが、スクライブラインに面した最上層コイル配線1343の露出部分(すなわち、絶縁膜1344がない所)は広い方が電極との接触面積が増大して好ましいが、点線で示すようにコイル配線1343の領域からはみ出さないようにする必要がある。もう一方のスクライブラインS側(S−B)については、絶縁膜1341の端面1341−Bおよび絶縁膜1344の端面1344−Bはそろっているが、最上層のコイル配線1343の端面1343−Bはそれよりも内側に入っていて、上下の絶縁膜1341および1344によって被覆されている。また、他の端面(x方向のに垂直な)は絶縁膜1341および1344によって被覆されている。
次に図34(a)に示すような、少なくとも最下層のコイル配線1334の端面1334−Bおよび少なくとも最上層コイル配線1343の端面1343−Aが露出している状態のインダクタ素子上において、コア付きインダクタ素子が多数搭載された基板1331のコイル配線が形成された面に、図34(b)に示すように導電体膜1351をCVD法および/またはPVD法で積層する。CVD法やPVD法によって形成した導電体膜は、平面には問題なく、垂直に近いインダクタ素子の端面部(1343−Aや1334―B等で示す部分を側面)であるスクライブ領域に面した側面部へも形成される。コイル配線の端面1343−Aや1334−Bと導電体膜1351との密着性が良好で、かつオーミックコンタクトが取れ(電気的接続性が良好)、さらにこの後行なうメッキ膜を密着性良くかつ電気的接続性が良好に形成できるような導電体膜1351を形成する。また、構造的には、この導電体膜1351と最上層コイル配線の端面1343−Aとのコンタクト面積を大きく取るために、図34(a)に示すような領域1343−Cを形成したり、および/または、この導電体膜1351と最下層(第1)コイル配線の端面1334−Bとのコンタクト面積を大きく取るために、図34(a)に示すような領域1334−Cを形成したりすることが効果的である。インダクタ素子形成プロセスを経て、露出したコイル配線部分(1343−A、1343−C、1334−B、1334−C)に付着した異物(有機系の付着物やパーティクルなど)や変質層(コイル配線材料の酸化膜など)を除去するために、前洗浄(水洗、酸洗浄、有機系液洗浄など)を行ったり、ドライエッチング(ドライ洗浄含む)を行ったり、逆スパッター(Arスパッターエッチングなど)を行ったりすることも有効である。導電体膜1351の材料としては、Ti、TiN、Cr、Pd、Cu、Al、W、Mo、Ta、TaN、Si、Ni、Co、Au,Ag、各種シリサイド等、あるいはこれらの合金や複合膜である。膜厚は、薄い所で約100nm〜約2μm程度である。
次に、外部へ接続する電極形成用のレジストパターンを形成する。種々の方法があるが、図34(b)には、レジストパターン1352を用いたメッキ法を示す。フォトリソグラフィ法を用いて、感光性膜(フォトレジスト膜)を塗布またはシート状感光性膜を貼り付け、プリベークした後、露光および現像を行い、分離すべき領域に感光性膜1352を形成する。図34(b)に示すように、主としてインダクタ素子の最上層コイリ配線の絶縁膜1344の上に感光性膜を残すので、パターン形成としては簡単である。光があたった部分が固まるネガタイプの感光性膜が適している。この感光性膜をマスクとして露出した導電体膜1351の面にメッキ膜1353(1353−1、1353−2)を電気メッキする。メッキ膜としては、Pb-Sn、各種Pbフリー半田、Cu、Ni、Zn、Au、Pd、Cr、Ag、Sn、Bi、Al、Pt、Zn、Fe等、これらの合金、あるいはこれらの複合金属などである。
次に感光性膜1352をリムーブした後、全面エッチングして感光性膜1352で被覆していた導電体膜1351を除去する。メッキ膜との選択性があるエッチング液やエッチングガス、エッチング条件などを適宜選択してエッチングすれば、メッキ膜1353はそれほどエッチングされずに導電体膜1351を除去できる。この状態(感光性膜をリムーブしてその下に存在した導電体膜1351をエッチングした状態)を図34(c)に示す。分離領域1354には導電体膜がなくなっているので、電極1353(1353−1)と電極1353(1353−2)が分離される。この図から分かるようにインダクタ素子の両側面に電極が形成される。電極の長さ(m)が短ければ、ショートしない程度に長くすることもできる。本実施形態では、基板1331を絶縁体として展開してきたが、導電体基板でも良い。導電体基板とした場合には、スクライブライン領域Sにおいて、導電膜1351およびメッキ膜1353と接触するので、導電体基板1331を分割する必要がある。たとえば、図34(c)に示すように、インダクタ素子の中央部分1331−3を除去(エッチングやダイシング等で)することにより、2つの電極1331−1と1331−2に分割できる。導電体基板1331−1、1331−2も電極となれば、電極の長さはかなり長くなるので、上述のmのぶぶんは余り長くする必要はなくなる。尚導電体基板1331を用いた場合には、これまでに説明してきたように最初にスルーホールを形成してコイル配線等と接続していけば、接続箇所が増えるので、安定した電極となる。また、本実施形態では、コイル配線の中央部(磁性体コアが入っている部分)の上下には電極のない領域1354および1331−3が存在するので、これらの電虚に起因する損失(たとえば、渦電流や浮遊容量)をより小さくできるので、チップ部品の小型化による浮遊容量等のインダクタ特性に与える影響を軽減でき、特に高周波特性が改善できる。
図35(c)は、スクライビングして個片化する前の基板1331の状態を平面的に見た図である。主要な部分だけを示している。コア挿入孔1363に磁性体コア1364が挿入されている。その周囲をコイル配線1361が取り巻いていて、スルーホール1362において、上および下へコイル配線がつながっている。スルーホール1362はうから見て一か所にあるわけではなく、少しずつ位置を移動していく。コイル配線1361は最終的に電極1365(1365−1、1365−2)へ接続する。領域1372はインダクタ素子の高い部分すなわち絶縁膜1344の上の領域を示す。色づけされていない白い部分は感光性マスク1352が形成されていた部分である。感光性マスクは絶縁膜1344上にのみ形成されるので、感光性膜1352の厚みも他に比べると薄く一定であるから非常に精度良く形成できる。ここでy方向のスクライブラインを形成する部分にもマスクが形成されるので、この部分にはメッキは形成されない。平坦な部分における電極1365の領域に最上層のコイル配線1343があればその配線の一部と電極1365とはコンタクトさせることができる。(すなわち、絶縁膜1344を形成しない部分をコイル配線1343上(特に、スクライブラインSの端面側の配線上)に形成できる。領域1366は側面部のメッキ層1353および導電体膜1351の領域を示す。この側面部の領域1366において最上層コイル配線1343の端面1343−Aが接触する。領域1343−Cを形成すれば、電極(導電体膜1351およびメッキ膜1353)はとの接触面積(接触部分は1365の領域)が増える。領域1367はスクライブラインSにおける底部になり、この部分にも導電体膜1351およびメッキ膜1353が形成されている。領域1368もスクライブラインSにおける底部になり実際にダイシングするラインとなる。(領域1365〜1368は図34(c)も参照のこと)
図35(c)から分かるように、x方向のスクライブライン全体に電極ラインが形成されている。このライン1369をダイシングすることにより、チップ間に接続した電極が分離される。次にこのx方向と直交するy方向のスクライブライン1370をダイシングすることにより、個々のチップインダクタ(パッケージ)となる。このy方向の切断は高い部分と低い部分が交互に現れるダイシングとなり、またメタル層を含む場合と厚い絶縁膜を含む部分のダイシングとなるので、チッピング等の発生を防止するダイシング条件を選択する必要がある。
図34に示した方法は、最上層のコイル配線の端面(および/または端面に続く上面の一部)および最下層のコイル配線の端面(および/または端面に続くコイル配線の飛び出し配線部に対する側面導体への接触によって導通した電極を使用している。この接触面積をさらに増やす方法について説明する。図36は、接触面積を増大した側面電極を形成する方法について説明する図である。まず、絶縁膜1332を形成する。絶縁膜1332の端面1332−Aおよび1332−Bはスクライブライン端面1335−Aおよび1335―B(絶縁膜1335の端面1335−Aおよび1335−Bで代表させる。)より少し大きめに形成しても良い。絶縁膜1332の端面1332−Aおよび1332−Bに隣接して導電体膜1333−2、1332−3を形成する。(スルーホールを形成した後の導電膜の形成工程があればこれと同時に行なうことができる。)次にこの上に第1コイル(最下層コイル)配線1334を形成する。第1コイル配線1334の端面1334−Bは、スクライブライン端面1335―Bよりもスクライブライン側に延ばして形成し導電体膜1333−3と接続する。(導電体膜1333は、スクリーン印刷法等であれば、第1コイル配線1334と同時に形成できる。)また、第1コイル配線1334のもう1つの端面1334−Aはスクライブライン端面1335−Aより内側にあり、絶縁膜で被覆されている。このとき、スクライブライン端面1335−Aの外側にも第1コイル配線と同じ導体1334−2を形成する。この導体1334−2は1333−2と接続する。第1コイル配線とは接続していない。
次に第1コイル配線の上に絶縁膜1335を形成し、その端面はスクライブライン端面1335−Aおよび1335―Bである。絶縁膜1335内に形成するスルーホール1336−2に導電膜を形成するが、そのときスクライブライン端面1335−Aおよび1335―Bに隣接して導電膜1336−2、3を形成する。導電膜1336−2、3は第1コイル配線の導電膜1334−2および1334−1に接触接続している。その上に第2コイル配線1337(1337−1)を形成するが、同時にスクライブライン端面1335−Aおよび1335―Bに隣接して導電膜1337−2、3を形成する。導電膜1337−2、3は導電膜1336−2、3の上に接触して形成され電気的にも接続している。導電膜1336−2、3は導電膜1337−2、3を形成するときに同時に形成することもできる。
次に第2コイル配線の上に絶縁膜を形成し、その端面はスクライブライン端面1335−Aおよび1335―Bである。絶縁膜内に形成するスルーホール1339−2に導電膜を形成するが、そのときスクライブライン端面1335−Aおよび1335―Bに隣接して導電膜1339−2、3を形成する。導電膜1339−2、3は第2コイル配線の導電膜1337−2および1337−3に接触接続している。その上に第3コイル配線1340(1340−1)を形成するが、同時にスクライブライン端面1335−Aおよび1335―Bに隣接して導電膜1340−2、3を形成する。導電膜1340−2、3は導電膜1339−2、3の上に接触して形成され電気的にも接続している。導電膜1339−2、3は導電膜1340−2、3を形成するときに同時に形成することもできる。
次に第3コイル配線の上に絶縁膜1341を形成し、その端面はスクライブライン端面1335−Aおよび1335―Bである。絶縁膜1341内に形成するスルーホール1342−2に導電膜を形成するが、そのときスクライブライン端面1335−Aおよび1335―Bに隣接して導電膜1342−2、3を形成する。導電膜1342−2、3は第3コイル配線の導電膜1340−2および1340−3に接触接続している。その上に最上層のコイル配線1343(1343−1)を形成するが、同時にスクライブライン端面1335−Aおよび1335―Bに隣接して導電膜1343−2、3を形成する。導電膜1343−3は導電膜1342−3の上に接触して形成され電気的にも接続している。また、導電膜1343−2は最上層コイル配線1343−1に直接接続する。1343−1の1部と考えても良い。導電膜1343−2は導電膜1342−2の上に接触して形成され電気的にも接続している。導電膜1342−2、3は導電膜1343−2、3を形成するときに同時に形成することもできる。
次にコイル挿入孔に磁性体コアを挿入して固定してから、最上層コイル配線1343上に絶縁膜1344を形成する。このときは磁性体コアの上やコア挿入孔の上にも形成し絶縁膜1344の表面を平坦化する、絶縁膜1344は、スクライブライン端面1335−Aおよび1335―Bに隣接して積層された導電膜上には形成しないようにパターニングする。最上層コイル配線の端面1343−Bの端面は絶縁膜1344で被覆するが、端面1343−A側はこの上に積層する導電膜と広く接触するために端面1343−Aの近傍の配線上面も開口しておくことが望ましい。スクリーン印刷法を用いれば、上記の方法は容易に実現できる。あるいは、感光性樹脂(たとえば、感光性ポリイミド膜)を用いてもフォトリソ法により簡単に絶縁膜1344を所望の形状に形成できる。感光性樹脂は特にネガタイプが良く、スクライブラインに厚く塗られた感光性樹脂を比較的簡単に現像により除去できる。
この後、図34で説明したように、導電膜1351を積層する。スクライブライン端面1335−Aおよび1335―Bに隣接して積層された導電膜全体に導電膜1351が積層され、さらにこの部分でメッキが行なわれるので、電極接続が良好に行なわれる。導電膜1351はCVD法やPVD法で行なわれるので、スクライブライン端面1335−Aおよび1335―Bは逆テーパーにならないようにすることが望ましい。スクライブライン端面1335−Aおよび1335―Bをテーパーにするために、下側の絶縁膜の端面ほど大きくなるようにしてテーパー化する。さらに積層し重ねていく導電膜についても下層ほど広くしてテーパー化することが望ましい。ただし、あまりテーパー化するとスクライブライン領域が大きくなるので、適度なテーパー化を行うと良い。尚。本実施形態は、スクライブライン端面1335−Aおよび1335―Bに確実に導電体膜が形成されるので、仮にCVD法やPVD法による導電膜のカバレッジが不十分でも必ず導通が取れているので問題はない。
図37は、図34〜36で説明した個片化したチップ部品の外観形状を斜視図で示す図である。図37(a)は絶縁体基板を用いた場合で、図37(b)は導電体基板を用いた場合である。どちらも略直方体形状のチップ部品が完成する。図37(a)に示すように、側面電極1381(1381−1)および1382(1382−1)は、1面が完全な電極となっているので、どの部分と接続しても良い。また、上部電極1381(1381−2)および1382(1382−2)も比較的大きな面積を有する。従って実装性が極めて良好となる。図37(b)に示すチップインダクタはさらに、下部電極1383(1383−1、1383−2)も広い面積を取れるので、さらに実装性が向上する。尚、個片化してからも必要であればさらに電極へメッキ法やディップ法ではんだ(Pbフリー含む)を付着することもできる。また、基板段階で本発明のチップ部品は完成しているので、スクライブ後等に基板から直接にチップ部品を別基板上に搭載(実装)することができるので、工程が単純化する。従ってコストダウンができるだけでなくチップ部品にダメッジを与えることがないので、信頼性も大幅に向上できる。尚、本発明はコア付きインダクタ素子として説明してきたが、特に実装に関連した所は他の部品やオアッケージ等に幅広く応用展開できる。
図29および図30に戻る。尚、サポート基板1215および導電体基板1201側は熱膨張係数が同じか類似する材料で作製されることが望ましい。何故なら、サポート基板側は多数のコア磁性体1214を搭載し、ベース基板である導電体基板1201も多数のコア挿入孔1224を有している。基板中心も周辺も合わせ込んで磁性体コアをコア挿入孔1224へ常温で挿入したとしても、加熱して接着剤1217を固化させる温度では、両方の基板が熱膨張により伸びる。従って、基板の中心ではパターン合わせが正確でも基板中心から離れた基板周辺ではパターン合わせがずれてくるので、接着剤1217が移動可能なときにはコア挿入孔1224の中でコア磁性体1214が少し移動して固定される。コア磁性体が移動する前に接着剤1217が固化すると内部応力が増大した状態で磁性体コア1214が固定される。サポート基板1215側の接着層1216もある程度は変形するので、サポート基板とベース基板の実際の熱膨張差ほどの移動や内部応力の増大はないが、サポート基板とベース基板の熱膨張による変化量を小さくすることが望ましい。サポート基板1215および導電体基板1201側は熱膨張係数を異なるものを使用する場合には、ベース基板1201は通常1mm以下(より小型パッケージの場合には約0.5mm以下、さらに小型化するには約0.2mm以下)の薄い厚みであるから、このベース基板1201をサポート基板1215と同じ材料か熱膨張係数が類似する材料で厚い支持基板に付着させてプロセスを行えば、接着剤1217や接着層1216の熱処理のときにもサポート基板1215側とベース基板1201側の熱膨張差による位置ずれを非常に小さくすることができる。
さらに、接着剤1217の固化温度T1は接着層1216の軟化温度T3より低いとしたが、熱膨張差によるベース基板1201およびサポート基板1215の変化量が大きすぎる場合には、T1をT3より高くする。すなわち、まず、T3<T21<T1となる温度T21で熱処理をして接着層1216の接着力を弱めてサポート基板1215を持ちあげて、磁性体コア1214をサポート基板1215から分離させる。T21はT1に近い温度にした方が接着剤1216の溶媒が蒸発して粘度が高くなるので、磁性体コア1214をサポート基板1215から分離させやすくなる。磁性体コア1214はサポート基板1215から分離した後、コア挿入孔1224内で接着剤1216に支えられているが、接着剤はまだ液状であり、ある程度移動可能な状態であるから、振動等を与えずに導電体基板1201を水平に保った状態で、T22>T1の温度T22で熱処理を行い、接着剤1217を固化して磁性体コア1214をコア挿入孔内に固定する。この接着剤1217の固化する過程において、磁性体コア1214は接着剤1217と重力によって力を受けている状態であるから、これらの力が釣り合った状態で磁性体コア1214は固定される。従ってベース基板の場所によって(多数のインダクタ素子が基板内には形成される)コア挿入孔1224内で磁性体コア1214が大きく移動することもなく、また内部応力が大きくなることもなく安定した状態で磁性体コア1214はコア挿入孔内に固定される。この方法の利点はさらに、磁性体コア1214がずれてコア挿入孔1224内に挿入されても(中心位置からずれる)、磁性体コア1214がサポート基板1215から分離された後は、磁性体コア1214が挿入孔1224内の釣り合った位置、すなわち挿入孔1224の中心付近に磁性体コア1214の中心が来て安定することである。
磁性体コア1214の幅をd11、コア挿入孔1224の幅をd12、これらのばらつきを合わせてd13としたとき、アライメント精度をd14(アライメント中心からのアライメントずれで、基板全体の合わせずれも含める)とすれば、d12>=d11+d13+d14としてコア挿入孔1224の幅d12を決定すれば良い。現状ではd13は約0.03*d11〜0.08*d11、d14は約1μm〜5μmであるから、d11が約300μmのときには、d12>=310〜330μmとすれば良い。
尚、導電体基板1201上に絶縁膜1202を形成するとき、導電体基板1201と絶縁膜1202との密着性が余り良くない時には、たとえば、両者に対して密着性が良好な導電性接着層を導電体基板1201上に形成した後で、絶縁膜1202の形成プロセスを行えば良い。あるいは、その他の密着性を向上させる処理(たとえば、導電体基板1201の表面を粗くするプロセス)をしてから絶縁膜1202を形成する。
磁性体コアの材料についてまとめると、基本的にはインダクタ素子のコアとして使用したときにインダクタンスやQ値を高める材料、すなわち、透磁率が大きな材料である。このような材料として、たとえば、スーパーマロイ、パーマロイ、ケイ素鋼、フェライト、純鉄、鉄系アモルファス、センダスト合金、鉄、ニッケル、コバルト、Fe-Ni系合金、Fe-Al系合金、アルパーム、MK鋼、高Co系非晶質合金、希土類系磁石(ネオジウム系、サマリウム系)、アルニコ合金、Fe-Co系合金、コバルト酸化鉄系、クロム酸化物系、鉄酸化物系、などの金属、合金、絶縁体がある。これらの材料を適宜本発明の磁性体コアとして使用することができる。
本発明の重要な点は、サポート基板に付着した高透磁率の磁性体を所望の形状にして半導体基板に付着させ、これをコイル配線のコアとして使用することである。横型インダクタの場合においても、コアがないものに比べてコイルのインダクタンスは比透磁率の分だけ大きくなる。本発明はコア材料としてバルク材と同じものを使用できるので、比透磁率が100倍以上、1000倍以上、10000倍以上の材料を用いて、非常に大きなインダクタンスを持つコイル(インダクタ)を作製でき、しかもLSI等の半導体プロセスと同じプロセスを使用できるので、ウエハレベルでインダクタ付き半導体デバイスを作製できる。
尚、本発明は縦型インダクタも横型インダクタも半導体基板に限らず、他の基板でも良いことも自明である。たとえば、プリント配線基板を用いることもできる。本発明の磁性体コア付きサポート基板を使用して、プリント配線基板に磁性体コアを挿入し取り付けても良い。さらに、単体のインダクタ(コイル)形成にも適用できることも自明である。本発明は、基板上に多数のコア付きインダクタ(コイル)を非常に簡便な方法で形成できるという効果もある。
尚、本発明を応用すると種々の物質を半導体基板に付着することができる。たとえば、非常に精度の良い抵抗体の薄い板を半導体基板に付着することができ、高精度の抵抗配線を半導体デバイスに組み込むことができる。
また、これまでいろいろな説明をしてきたが、実施例や実施形態の説明において、具体的に述べていないことでもお互いに矛盾しない限り他の所で説明した内容も適用できることは言うまでもない。