以下の各実施形態では、火災の発生を感知して警報音を鳴動する火災感知器を無線局とし、複数の無線局(火災感知器)間で無線信号を伝送するように構成された火災報知システムを、無線通信システムの例として説明する。
(実施形態1)
本実施形態の無線通信システム(火災報知システム)は、図1に示すように火災感知器からなる複数台の無線局1を備えている。図1の例では無線局1を2台のみ図示しているが、実際には無線通信システムは3台以上の無線局1を備えている。
無線局1は、アンテナ部2と、無線信号を送受信する送受信部3と、火災の発生を検知する火災感知部4と、火災感知時に報知を行う報知部5と、各部に動作電源を供給する電源部6と、各部の動作を制御する制御部7とを、1つの筐体(図示せず)に有している。ここでは、電源部6は乾電池等の電池を電源として各部に動作電源を供給する。各無線局1は、筐体がたとえば住宅等における室内の壁や天井に取り付けられた状態で使用される。
送受信部3は、無線信号をアンテナ部2から送信(放射)し、且つ、他の無線局1から送信された無線信号をアンテナ部2にて受信する。ここでは、送受信部3は、電波法施行規則第6条に規定される「特定小電力無線局」に準拠して、電波(電磁波)を媒体とした無線信号を送受信する。火災感知部4は、たとえば火災に伴って煙や熱、炎などを検出することにより、火災を感知する。火災感知部4は、火災を感知すると、制御部7に対して感知信号を出力する。なお、送受信部3および火災感知部4の具体的な構成については、従来周知であるからここでは詳しい説明は省略する。
報知部5は、感知信号を受けた制御部7から報知を行うよう指示があると、音声メッセージやブザー音などによる警報音をスピーカ(図示せず)から鳴動することによって火災の発生の報知を行う。報知部5は、火災感知部4で火災が感知されなくなった場合や、図示しない操作入力部にて、報知を停止させるための操作入力が受け付けられた場合に、火災の報知を終了する。報知部5は、警報音だけでなく、光や文字等により報知を行う構成であってもよい。
制御部7は、マイコン(図示せず)を主構成としており、図示しないメモリ(ROMやEEPROMなど)に格納されたプログラムをマイコンで実行することによって、上記報知部5への指示の他、後述する各種の機能を実現する。
本実施形態では、制御部7は、火災感知部4で火災の発生が感知されると、報知部5を駆動して警報音を鳴動させ、且つ、他の無線局1においても火災警報が報知されるように火災警報メッセージを含む無線信号を送受信部3より送信させる。また、制御部7は、他の無線局1から送信された無線信号を送受信部3で受信することにより火災警報メッセージを受け取った場合、報知部5を駆動して警報音を鳴動させる。つまり、無線局1は、自身の火災感知部4で火災を感知したときに報知部5にて火災の報知を行うだけでなく、他の無線局1の火災感知部4で火災が感知されたときにも、火災警報メッセージを受けて報知部5にて火災の報知を行う。
また、本実施形態の無線通信システムでは、複数台の無線局1のうちの一つが親器、残りが子器として使用されている。そこで、以下の説明では、親器として使用される無線局1を必要に応じて「親器11」と表記し、子器として使用される無線局1を必要に応じて「子器12」と表記する。
親器11と子器12とは、親器11が全ての子器12と通信可能となるような位置関係で配置されている。すなわち、本実施形態では子器12が複数台ある場合を想定しているので、親器11はこれら複数台の子器12全ての無線信号の送信範囲が重複する領域に配置され、親器11の無線信号の送信範囲に複数の子器12全てが配置されている。したがって、親器11は全ての子器12との間で無線信号による通信が可能である。なお、子器12においては、他の子器12に対しても通信可能な位置関係にあってもよいし、親器11に対してのみ通信可能な位置関係にあってもよい。
ここにおいて、親器11の制御部7は、自身の火災感知部4で火災が感知されたときには、全ての子器12に対して、火災警報メッセージを含む無線信号を送受信部3より送信させる。さらに、親器11の制御部7は、他の無線局(子器12)1から火災警報メッセージを含む無線信号を送受信部3で受信すると、この無線信号の送信元の子器12以外の全ての子器12に対し火災警報メッセージを含む無線信号を送受信部3より送信させる。つまり、親器11は、自ら火災を感知した場合、全ての子器12に火災警報メッセージを送信し、いずれかの子器12から火災警報メッセージを受け取った場合、この火災警報メッセージを送信元の子器12以外の全ての子器12に転送する機能を有している。
一方、子器12の制御部7は、自身の火災感知部4で火災が感知されたときに、親器11のみに対して火災警報メッセージを含む無線信号を送受信部3より送信させる。つまり、子器12は、自ら火災を感知した場合、自分以外の全ての子器12に対して火災警報メッセージを送信する機能を有している。なお、子器12の制御部7は、自身の火災感知部4で火災が感知されたときに、親器11だけでなく他の子器12全てに対して、火災警報メッセージを含む無線信号を送受信部3より送信させる構成であってもよい。この構成では、親器11の故障等により親器11にて火災警報メッセージが転送されない場合でも、子器12は、無線信号の送信範囲内にある他の子器12に対しては火災警報メッセージを送ることができる。
また、子器12の制御部7は、火災警報メッセージを含む無線信号を送受信部3で受信すると、上述したように報知部5を駆動して警報音を鳴動させる。さらに、子器12の制御部7は、親器11から送信された火災警報メッセージを含む無線信号を送受信部3で受信すると、この火災警報メッセージに対する応答メッセージを含む無線信号を送受信部3より送信させる。
すなわち、上記構成によれば、親器11が火災を感知した場合、親器11から全ての子器12に対して火災警報メッセージが送信されるので、親器11並びに子器12は連動して報知部5を鳴動させ火災を報知する。また、いずれかの子器12が火災を感知した場合、この子器12からの火災警報メッセージが親器11に送信され且つ親器11から他の子器12へ転送されるので、親器11並びに子器12は連動して報知部5を鳴動させ火災を報知する。結果的に、親器11と子器12とのいずれで火災が感知されたとしても、全ての無線局1は連動して報知を行うことになる。
ここで、無線設備の標準規格(ARIB等)においては、無線信号を連続して送信してもよい期間(送信期間)、並びに送信期間と送信期間との間に設けられた無線信号を送信してはいけない期間(休止期間)が定められている。したがって、制御部7は、これらの規格に適合する送信期間に無線信号を送信させ、休止期間には送信を停止して受信可能な状態となるように送受信部3を制御する。つまり、火災が発生していないときには、各無線局1は間欠受信動作を行うこととなり、非同期で無線信号を伝送する。
そして、親器11の制御部7は、火災感知部4で火災を感知した場合には、全ての子器12から応答メッセージを受信したときに、送受信部3より一定周期で同期信号を送信させる。また、親器11の制御部7は、子器12から火災警報メッセージを受信した場合には、火元(火災警報メッセージの送信元)の子器12を除く全ての子器から応答メッセージを受信したときに、送受信部3より一定周期で同期信号を送信させる。この同期信号は、無線局1間で時分割多重伝送を行うために必要なタイムスロットを規定する信号であって、その1周期(サイクル)が複数(無線局1の総数)のタイムスロットに分割されている。
無線局1は、各々異なるタイムスロットが割り当てられている。各無線局1の制御部7は、無線信号を送信する場合、自局に割り当てられているタイムスロットに格納して送信することにより、他の無線局1からの無線信号との衝突を回避できる。なお、タイムスロットの割り当ては固定的であってもよいし、親器11から送信される同期信号によってタイムスロットの割当情報が子器12に通知される構成であってもよい。
このように構成された本実施形態の無線通信システムでは、いずれの無線局1でも火災が感知されていない場合、各無線局1は非同期で無線信号を伝送する。一方、いずれかの無線局1で火災が感知された場合、親器11は一定周期の同期信号を送信し、各子器12は同期信号によって規定されるタイムスロットに割り当てられて無線信号を時分割多重伝送する。
そのため、火災が発生しておらず無線信号を伝送する頻度が低いときには、各無線局1は非同期で無線信号を伝送することにより、無線信号の伝送についての電力消費を抑えて、電源部6の電池寿命を延ばすことができる。また、いずれかの無線局1で火災が感知され、無線信号を伝送する頻度が相対的に高くなると、無線局1は無線信号を時分割多重伝送することで、無線信号同士の衝突を回避して情報伝送の遅延を少なくする。なお、無線局1は、火災感知部4で火災が感知されなくなった場合や、報知を停止させるための操作入力が受け付けられた場合に火災の報知を終了し、これによって、通常の間欠受信動作に復帰する(非同期となる)。
ところで、本実施形態の無線通信システムにおいては、親器11の制御部7は少なくとも、電波チェックを行う電波チェック部71、および通信用のアンテナを選択する選択部72としての機能を有している。
電波チェック部71は、各無線局1の施工時(無線通信システムの構築時、無線局1の増設時)や設置場所の移動時に、親器11と子器12との通信品質(通信状態)の良否を判定する電波チェックを実行する。つまり、親器11は、電波チェックを実行することにより、全ての子器12と通信可能な位置関係にあるか否かを判定する。以下に、電波チェック時の親器11および子器12の動作について説明する。
親器11の電波チェック部71は、筐体に設けられているチェック釦(図示せず)が操作されると、無線信号の送信範囲内に全ての子器12が位置するか否かを確認するための返信要求メッセージを含む無線信号(返信要求信号)を送受信部3より送信させる。子器12の制御部7は、送受信部3で返信要求信号を受信すると、返信要求信号に対する応答として返信メッセージを含む無線信号(返信信号)を送受信部3より親器11に送信させる。親器11の電波チェック部71は、返信要求信号の送信後、全ての子器12から返信信号(ACK)が得られたか否かによって、通信品質の良否を判定する。なお、親器11は、チェック釦が操作(たとえば長押し)されることによって電波チェックを開始する構成に限らず、たとえば電源投入時に自動的に電波チェックを実行する構成であってもよい。
電波チェック部71は、全ての子器12から返信信号が得られた場合、電波チェックの結果が正常、つまり親器11が全ての子器12と通信可能な状態にあると判定する。一方、少なくとも一部の子器12から返信信号が得られなかった場合、電波チェック部71は、所定の上限回数に達するまで繰り返し返信要求信号の送信を行う。返信要求信号を上限回数繰り返して送信しても、依然として少なくとも一部の子器12から返信信号が得られなかった場合、電波チェック部71は、電波チェックの結果が異常、つまり親器11が少なくとも一部の子器12と通信可能でないと判定する。
ここで、電波チェック部71は、単に返信信号を受信したか否かだけでなく、受信した返信信号の強度の大小に比例した直流電圧である受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)に基づいて、返信信号が得られたか否かを判定してもよい。この場合、電波チェック部71は、返信信号を一応受信したときであっても、返信信号の受信信号強度が所定の閾値未満であれば、返信信号を得られなかったと判定する。なお、親器11の制御部7は、電波チェック部71での判定結果(正常、異常の別)が報知部5から報知されるように報知部5を駆動する構成であってもよい。
ここにおいて、親器11は、図1に示すように第1のアンテナ21と第2のアンテナ22とをアンテナ部2に具備している。すなわち、親器11はアンテナ部2として2種類のアンテナ(21,22)を有している。これら第1のアンテナ21と第2のアンテナ22とは、ダイバーシティ(ダイバーシチ)アンテナを構成していればよく、たとえば互いに指向性(要するに偏波の向き)が異なっていればよい。
アンテナ部2は、送受信部3に対して第1のアンテナ21と第2のアンテナ22とが択一的に接続されるように、送受信部3に接続されるアンテナを第1のアンテナ21と第2のアンテナ22とで切り替える切替部23をさらに具備している。これにより、送受信部3は、第1のアンテナ21と第2のアンテナ22とのいずれかを用いて、無線信号の送受信を行うことになる。
電波チェック部71は、アンテナ部2の切替部23を制御することにより、送受信部3の接続先を第1のアンテナ21と第2のアンテナ22とで切り替えて、各々のアンテナ21,22から子器12に対して返信要求信号を送信する。つまり、電波チェック部71は、返信要求信号を第1のアンテナ21から子器12に送信して通信品質を判定し、さらに切替部23を切り替え、返信要求信号を第2のアンテナ22から子器12に送信して通信品質を判定する。
このとき、電波チェック部71は、まず第1のアンテナ21からの返信要求信号に対して全ての子器12から返信信号を得られたか否かを判断し、次に、第2のアンテナ22からの返信要求信号に対して全ての子器12から返信信号が得られたか否かを判断する。すなわち、電波チェック部71は、第1のアンテナ21を用いた場合の通信品質と、第2のアンテナ22を用いた場合の通信品質とを個別に判定する。ここで、電波チェック部71は、単に全ての子器12から返信信号が得られたか否かだけでなく、第1のアンテナ21と第2のアンテナ22との間で通信品質の優劣をも判定する。
具体的には、電波チェック部71は、図2に示すように、返信要求信号としてのパケットを複数回繰り返し送信し、パケットごとに第1のアンテナ21と第2のアンテナ22とを切り替える。図2の例では、親器11は、パケットを送受信部3から4回繰り返して送信し、そのうち第1のパケットP1、第3のパケットP3の2回を第1のアンテナ21から送信し、第2のパケットP2、第4のパケットP4の2回を第2のアンテナ22から送信する。
電波チェック部71は、最後のパケット(ここでは第4のパケットP4)を送信後の所定期間を、返信信号を受信するためのタイムスロットとして設定する。図2の例では、親器11は、タイムスロットT1〜T4のうちタイムスロットT1,T3の2回を第1のアンテナ21で受信し、タイムスロットT2,T4の2回を第2のアンテナ22で受信している。なお、図2では親器11の動作を示し、横軸を時間軸として、時間軸の上側が送信(Tx)、下側が受信(Rx)を表している。
子器12は、最後のパケットを受信後、親器11に対して返信信号の送信を開始する。このとき、子器12は、第1〜4のパケットP1〜P4の各々に対し個別に返信信号を送信する。たとえば、子器12は各パケットを受信後、所定の遅延時間が経過した時点でそれぞれ返信信号を送信することにより、各パケットに対する返信信号を順次送信する。この場合、電波チェック部71は、タイムスロットを各パケットP1〜P4に対応付けて分割しておくことで、いずれのタイムスロットT1〜T4で返信信号を受信したかを識別することによりいずれのパケットP1〜P4に対する返信信号かを判断できる。つまり、電波チェック部71は、タイムスロットT1に受信される返信信号は第1のパケットP1に対する返信信号と判断でき、タイムスロットT2に受信される返信信号は第2のパケットP2に対する返信信号と判断できる。
ここで、電波チェック部71は、第1のアンテナ21と第2のアンテナ22との各々について、子器12での返信要求信号の受信信号強度(RSSI)と、親器11での返信信号の受信信号強度(RSSI)との少なくとも一方に基づいて通信品質を判定する。前者(返信要求信号)の受信信号強度については、各子器12がそれぞれ測定し、測定結果を返信信号に含めて親器11に送信することにより、電波チェック部71にて収集される。後者(返信信号)の受信信号強度については、親器11が子器12ごとに測定することにより、電波チェック部71にて収集される。
前者の受信信号強度は親器11から子器12への信号伝送時の通信品質を表し、後者の受信信号強度は子器12から親器11への信号伝送時の通信品質を表している。したがって、電波チェック部71は、これら2種類の受信信号強度の少なくとも一方についてアンテナ21,22ごとに収集し、その代表値(平均値等)や最小値を評価値として求め、評価値が大きい方の通信品質が高い(優れている)と判定する。このとき、電波チェック部71は、子器12が複数台あれば、全ての子器12についての受信信号強度の代表値や最小値を評価値として求める。また、電波チェック部71は、上述のように各アンテナ21,22からパケットを複数回ずつ送信しているのであれば、全てのパケットについての受信信号強度の代表値や最小値を評価値として求める。
ただし、電波チェック部71は、受信信号強度に基づいて通信品質を判定する構成に限らず、受信信号強度以外のパラメータを用いた他の方法で、親器11−子器12間の通信品質を判定する構成であってもよい。たとえば、電波チェック部71は、各アンテナ21,22から返信要求信号を複数回ずつ送信し、受信信号を正常に受信した回数をアンテナ21ごとに測定して、この回数が多い方の通信品質が高いと判定する構成であってもよい。また、フェージングにより電波の受信状態が時間経過に伴って変動するような場合には、電波チェック部71は、各アンテナ21,22からパケットを複数回ずつ送信することで、時間経過に伴う変動の大小も含めて通信品質を判定してもよい。つまり、電波チェック部71は、たとえ受信信号強度の最小値が同じであっても、時間経過に伴う受信信号強度の変動が小さくフェージングの影響が小さい方の通信品質が高いと判定する。
選択部72は、電波チェック部71の判定結果を受けて、第1のアンテナ21および第2のアンテナ22のうち、電波チェック時の通信品質が高い(優れている)方のアンテナを、以降の子器12との通信に用いるアンテナとして選択する。つまり、電波チェック部71が、第1のアンテナ21を用いた場合と、第2のアンテナ22を用いた場合とで通信品質の優劣を判定し、選択部72は、通信品質が高いと判定された方のアンテナを選択する。選択部72は、選択したアンテナが送受信部3に接続されるように、アンテナ部2の切替部23を制御することにより送受信部3の接続先を第1のアンテナ21と第2のアンテナ22とで切り替える。
選択部72は、切替部23を制御して送受信部3の接続先のアンテナ21,22を一旦切り替えると、その後、再びチェック釦が操作されて電波チェックが行われない限り、送受信部3の接続先のアンテナ21,22を切り替えることはない。要するに、切替部23は、電波チェックの結果に応じて選択部72により制御されると、その後、再び電波チェックが行われるまで、送受信部3の接続先を不変とするように維持する。
以上説明した構成の無線通信システムによれば、親器11は、電波チェック以降、第1のアンテナ21と第2のアンテナ22とのうち通信品質の高い方を用いて子器12と通信するので、システム運用時において安定した通信品質を確保できる。要するに、第1のアンテナ21と第2のアンテナ22とのどちらの通信品質が高いかは、各無線局1の設置場所や取り付けられる向きなどの種々の条件によって異なる。親器11は、電波チェック時に通信品質の高いアンテナ21,22を判定し、以降はそのアンテナ21,22を用いて子器12と通信を行うので、アンテナが1つしかない場合に比べると、システム運用時において高い通信品質を確保できる。その結果、電波チェック後のシステムの運用時において、たとえば人の動き等によるフェージングなどに起因して電波の受信状態が変動しても無線局1間の通信品質が不安定になりにくく、安定した通信品質を確保できる。
しかも、親器11は、電波チェックの結果を受けて選択部72にてアンテナが選択されると、その後に電波チェックが行われるまでは、使用するアンテナを変更することなく、選択された1つのアンテナを使用し続ける。したがって、親器11は、運用時にも2つのアンテナを併用するダイバーシティアンテナに比べて、通信にかかる消費電流を大幅に抑えることができ、電源部6電池寿命が長くなる。
ここで、上述した電波チェックは、無線通信システムを構成する全ての無線局1が実際の設置場所(壁や天井など)に取り付けられた状態で行われることが望ましい。すなわち、親器11−子器12間の通信品質はアンテナ21,22の位置並びに向きによって変動するので、施工者は、運用時と同じ条件で電波チェックを行うことにより、運用時においても通信品質が高い方のアンテナ21,22を使用可能になる。その結果、無線通信システムは、運用時において、より安定した通信品質を確保することができる。
また、電波チェック部71は返信要求信号としてのパケットを複数回繰り返し送信し、パケットごとにアンテナ21,22を切り替えているので、2つのアンテナ21,22の通信品質を比較しながらも電波チェックにかかる時間を比較的短く抑えることができる。さらにこの構成によれば、電波チェック部71は、第1のアンテナ21を用いた電波チェックと第2のアンテナ22を用いた電波チェックとを殆ど間隔を空けずに行えるので、時間経過に伴う条件の変動がある場合でも、略同じ条件下で通信品質の対比が可能である。
さらにまた、電波チェック部71は、子器12での返信要求信号の受信信号強度と、子器12が送信する返信信号の受信信号強度との少なくとも一方を収集し、収集した受信信号強度に基づいて通信品質を判定するので、通信品質の優劣を細かく判定できる。要するに、いずれのアンテナ21,22を用いても同じように返信要求信号に対し返信信号が受信された場合でも、電波チェック部71は、返信要求信号と返信信号との少なくとも一方の受信信号強度の大小から通信品質の優劣を判定することが可能である。
なお、上記実施形態では、親器11のアンテナ部2はアンテナを2つ(第1のアンテナ21および第2のアンテナ22)を有する場合を例示したが、この例に限らず、アンテナ部2は3つ以上のアンテナを有していてもよい。この場合、親器11は、電波チェック時に第1のアンテナ21、第2のアンテナ22、第3のアンテナ・・・の各々について、電波チェック部71にて通信品質を判定し、最も通信品質が高いアンテナを選択部72で選択する。
また、無線通信システムは、火災感知器を無線局とする火災報知システムに限らず、たとえば、火災感知器と空気質センサと人センサとの少なくとも1つを無線局として構成されるシステムであってもよい。つまり、上述した無線局についての構成は、日本国でいうところの住宅用火災警報器をはじめとする煙感知式、熱感知式、炎感知式の各種火災警報器(火災感知器)だけに限らず、これに類する無線局全般に適用可能である。
その一例として、いわゆる空気質を測る空気質センサを無線局として用いてもよい。ここでいう空気質センサは、空気中の所望ガス成分や湿度を測定する。空気質センサの一種としては、ガスセンサなる感知器や、空気中の浮遊粒子を検知するセンサなどがある。ガスセンサには、可燃性ガスのガス漏れを感知するガス警報器だけでなく、二酸化炭素や一酸化炭素など環境を測る指標となるCOx系の気体成分(ガス成分)を測定するタイプのセンサも含まれる。
また、無線局は、監視領域の人(人体)の存在を検知する人センサであってもよい。人センサは、たとえば人体から発せられる赤外線を感知する方式(赤外線感知式)と、監視領域を撮像した画像を画像処理解析する方式(画像解析式)との一方、またはこれらの方式の組み合わせにより人を検知するように構成される。
さらに、これら空気質センサや人センサを、上述した火災感知器と混合して無線局として用い、火災感知のみならず人検知(侵入者検知等)や換気警鐘の目的も兼ねた無線通信システムを実現してもよい。
なお、無線局は、筐体からアンテナ(アンテナ部2)が突き出したデザインであってもよいが、アンテナが目立たないように筐体にアンテナを内蔵したデザインであってもよい。
(実施形態2)
本実施形態の無線通信システムは、子器12が、親器11からの返信要求信号に含まれている識別子に応じて、返信信号を送信するタイミングを決めている点が実施形態1の無線通信システムと相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
本実施形態においては、親器11は、図3に示すように返信要求信号S1,S2を1回送信する度に、返信信号を受信するためのタイムスロット(受信区間)を設定している。各タイムスロットは2分割されており、電波チェック部71は、タイムスロットT1,T2のうち前半のタイムスロット(第1の受信区間)T1を第1のアンテナ21で受信し、後半のタイムスロット(第2の受信区間)T2を第2のアンテナ22で受信する。なお、図3では、(a)が親器11、(b)が子器12の動作を示し、横軸を時間軸として、時間軸の上側が送信(Tx)、下側が受信(Rx)を表している。図3の例では、第1のアンテナ21から送信された返信要求信号を「S1」、第2のアンテナ22から送信された返信要求信号を「S2」で表している。
子器12は、返信要求信号S1,S2を受信すると、返信要求信号S1,S2に含まれている識別子としてのフレーム番号に応じて、この返信要求信号S1,S2の送信元が第1のアンテナ21と第2のアンテナ22とのいずれであるかを識別する。この子器12は、第1のアンテナ21から送信された返信要求信号S1を受信した場合、返信要求信号S1の受信時点から所定の第1遅延時間経過後に返信信号を送信することによって、第1の受信区間たるタイムスロットT1に返信信号を送信する。一方、子器12は、第2のアンテナ22から送信された返信要求信号S2を受信した場合、返信要求信号S2の受信時点から所定の第2遅延時間(>第1遅延時間)経過後に返信信号を送信することで、第2の受信区間たるタイムスロットT2に返信信号を送信する。
図3の例で説明すると、子器12は、間欠的に送受信部3を駆動して間欠受信動作を行っている。このとき、第1のアンテナ21から返信要求信号S1が送信されるものの、子器12はこの返信要求信号S1の受信に失敗しており(図中×印)、そのため、タイムスロットT1には返信信号の送信は行わない。一方、第2のアンテナ22から返信要求信号S2が送信されると、子器12はこの返信要求信号S2の受信に成功しており(図中○印)、返信要求信号S2に含まれるフレーム番号に応じて、返信信号を送信するタイミングを決定する。そのため、子器12は、返信要求信号S2を受信した時点から第2遅延時間経過後の第2の受信区間たるタイムスロットT2に返信信号を送信する。この場合、親器11においては、第2のアンテナ22から送信した返信要求信号S2に対してのみ返信信号が返信されていることから、電波チェック部71は第2のアンテナ22の方が第1のアンテナ21より通信品質が高いと判定する。
以上説明した本実施形態の構成によれば、子器12は、返信要求信号に含まれている識別子に応じて、返信信号の送信タイミングを決定するので、第1のアンテナ21と第2のアンテナ22とを確実に区別して電波チェックを行うことができる。すなわち、電波チェック部71においては、第1のアンテナ21からの返信要求信号に対する返信信号は第1のアンテナ21で受信でき、第2のアンテナ22からの返信要求信号に対する返信信号は確実に第2のアンテナ22で受信できる。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。