JP6048867B2 - X線光学システム - Google Patents

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Description

本発明は、X線光学システムに係わり、更に詳しくはX線を高い分解能で収差なく縮小又は拡大させて結像型X線顕微鏡やX線計測装置を構成するためのX線光学システムに関するものである。
X線顕微鏡は、非常に短い波長を用いるので、光学顕微鏡を遥かに凌ぐサブnmの究極的な分解能を得ることができ、またX線の高い透過力によって透過型電子顕微鏡では不可能な厚いサンプルの三次元断層画像を観察することができ、更にその場測定に有用である様々な環境(例えば、水溶液と気体の雰囲気中)での観測に適している。更に、蛍光X線分析とX線吸収分光法のようなX線分析技術を組み合わせることにより、電子密度分布だけでなく、局所的結合状態と元素の分布をも明らかにすることができる。このように、高分解能で収差のないX線顕微鏡は、様々な科学分野のために開発されることが強く期待されている。
結像型X線顕微鏡を実現するための光イメージングデバイスの有望な候補としては、フレネルゾーンプレート、X線屈折レンズ、Kirkpatrick−Baez(KB)ミラー、Wolterミラーがある。フレネルゾーンプレートとX線屈折レンズは、サブ50nmの分解能を実現するために十分に正確に製造することができる。しかし、フレネルゾーンプレートは、屈折と回折によって生じる色収差のため多色のイメージングには適してない。KBミラーは、全反射を採用しているので、色収差はない。しかし、KBミラーのような斜入射光学系における単枚の反射ではアッベの正弦条件を満たすことができないため、コマ収差が生じて分解能と視野(FOV)を減少させる。Wolterミラーは、色収差やコマ収差が生じることはないので、理想的なX線結像システムである。しかし、最先端の超精密加工技術を使用した場合でも、Wolterミラーのミラー面が筒状の内面上に配置された回転楕円面と回転双曲面で構成されているため、回折限界の分解能を実現するために必要な形状精度でWolterミラーを作製することが困難である。更に、形状は、1nmオーダーの精度にしなければならない。従って、Wolterミラーにおいて、形状誤差に基づく波面収差は、現在避けられない深刻な問題であり、これまで高分解能性能(100nm以下)を発揮できるほどの形状精度でミラーを作製したという報告例はない。
非特許文献1では、色収差、コマ収差、波面収差の問題を克服するため、2つの楕円ミラーと2つの双曲ミラー(即ち、2つの1次元Wolterミラー)を、KBミラーのように互いに垂直に配向させて構成されるAdvanced Kirkpatrick-Baez(AKB)ミラーが提案されている。AKBミラーは、アッベの正弦条件を満たし、前述の収差の問題は解消されたが、非特許文献1ではμmオーダーの分解能を達成することを目的としていたので、X線ミラーの形状精度とアライメント性能に対するスペックは低く、そのままX線顕微鏡の結像光学シシテムに適用することはできない。KBミラーでは、2枚の水平楕円ミラーと垂直楕円ミラーを正確に直交するように調節できるX線集光装置が提案されている(特許文献1)。
前述のAKBミラーは、ほぼ平面に近いX線ミラーを使用しているので、各々のミラーは、数値制御EEM(elastic emission machining)等の既存の技術を使用して1nmオーダーの形状精度で作製することができる(非特許文献2)。従って、AKBミラーは、色収差がなく、回折限界の分解能を備えた結像型X線顕微鏡を実現する能力を備えている。
特開2007−271595号公報
R.Kodama et al.,Optics Letters Vol.21,1321(1996). K.Yamauchi et al.,Rev.Sci.Instrum.,73,4028-4033(2002).
しかしながら、4つの全反射X線ミラーを高精度にアライメントできるX線光学システムはこれまで提供されてない。特に、硬X線領域では、高性能な結像素子が開発されていないため、高分解能且つ色収差のない結像光学系の開発はこれまで報告されていない。次世代硬X線結像光学系を開発できれば、極短時間(ナノ秒〜100フェムト秒)の硬X線発光の様子をフルカラー(多波長)且つナノ分解能で可視化することも不可能ではない。
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、高分解能且つ色収差のないX線顕微鏡を実現するために、4つの全反射X線ミラーからなるAKBミラー光学系を高精度に構築することが可能なアライメントシステムを含んだX線光学システムを提供する点にある。
本発明は、前述の課題解決のために、エネルギーが2keV以上のX線を200nm以下の高い分解能で収差なく縮小又は拡大させるためのX線光学システムであって、水平楕円ミラーと垂直楕円ミラー及び水平双曲ミラーと垂直双曲ミラーの4つの斜入射全反射X線ミラーを用い、X線の光軸方向に沿って水平ステージと垂直ステージを配置し、X線の光軸方向に沿って前記水平楕円ミラー、前記垂直楕円ミラー、前記水平双曲ミラー、前記垂直双曲ミラーを順に配置した状態で、前記水平ステージに前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーを微調節可能に設けるとともに、前記垂直ステージに前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーを微調節可能に設け、光軸方向における前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーの前後位置関係及び前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーの前後位置関係を同じに設定したミラーマニピュレータと、オフラインで前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーの水平姿勢及び前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーの垂直姿勢をそれぞれ誤差内で理想姿勢になるように微調節するための基準を与えるべく、光軸方向に沿って水平基準リニアガイドと垂直基準リニアガイドを配置するとともに、各リニアガイドに沿って移動する走査ステージにそれぞれオートコリメータと変位計からなる2組のセンサーを設け、前記水平基準リニアガイドに沿って水平用センサーを走査して前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーの傾斜角と形状を測定するとともに、前記垂直基準リニアガイドに沿って垂直用センサーを走査して前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーの傾斜角と形状を測定するアライメント監視手段と、を備えたことを特徴とするX線光学システムを構成した。
そして、X線の光軸方向に沿ってY軸、Y軸と直交する水平軸をX軸、垂直軸をZ軸とし、各ミラーにおいて、光軸方向の軸周りの回転をローリング、光軸方向に直交しミラーの短辺方向に向いた軸周りの回転をピッチング、光軸方向に直交しミラーの反射面の法線方向を向いた軸周りの回転をヨーイングとし、前記ミラーマニピュレータは、前記水平ステージが水平軸周りにピッチング可能であり、該水平ステージの上面に、前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーとを、それぞれ水平第1調節ステージと水平第2調節ステージを介して設けるとともに、該水平第1調節ステージと水平第2調節ステージの何れか一方は水平軸周りにピッチング可能で、他方は少なくともZ軸方向(垂直方向)に調節可能であり、更に前記垂直ステージが垂直軸周りにピッチング可能であり、該垂直ステージの側面に、前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーとを、それぞれ垂直第1調節ステージと垂直第2調節ステージを介して設けるとともに、該垂直第1調節ステージと垂直第2調節ステージの何れか一方は垂直軸周りにピッチング可能で、他方は少なくともX軸方向(水平方向)に調節可能であり、加えて4つの前記X線ミラーのうち、少なくとも3つのX線ミラーを水平軸周りにローリング可能としたものであることが好ましい。
更に、前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーは、それぞれ前記水平第1調節ステージと水平第2調節ステージに対して垂直軸周りにヨーイング可能であるとともに、前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーは、それぞれ前記垂直第1調節ステージと垂直第2調節ステージに対して水平軸周りにヨーイング可能であることがより好ましい。
また、前記水平第1調節ステージと水平第2調節ステージの何れか一方は水平軸周りにピッチング可能で、他方は少なくともZ軸方向(垂直方向)とX軸方向(水平方向)に調節可能であり、前記垂直第1調節ステージと垂直第2調節ステージの何れか一方は垂直軸周りにピッチング可能で、他方は少なくともX軸方向(水平方向)とZ軸方向(垂直方向)に調節可能であることがより好ましい。
更に、ベース板上にXYZ軸調節可能な水平ベースステージとXYZ軸調節可能な垂直ベースステージを設け、該水平ベースステージに前記水平ステージを保持するとともに、該垂直ベースステージに前記垂直ステージを保持してなることも好ましい。
また、前記水平楕円ミラー、垂直楕円ミラー、水平双曲ミラー及び垂直双曲ミラーの反射面は、3nm以下の形状精度、0.3nmRMS以下の表面粗さであるとより好ましい。
本発明のX線光学システムは、エネルギーが2keV以上のX線を200nm以下の高い分解能で収差なく縮小又は拡大させるためのX線光学システムであって、水平楕円ミラーと垂直楕円ミラー及び水平双曲ミラーと垂直双曲ミラーの4つの斜入射全反射X線ミラーを用い、X線の光軸方向に沿って水平ステージと垂直ステージを配置し、X線の光軸方向に沿って前記水平楕円ミラー、前記垂直楕円ミラー、前記水平双曲ミラー、前記垂直双曲ミラーを順に配置した状態で、前記水平ステージに前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーを微調節可能に設けるとともに、前記垂直ステージに前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーを微調節可能に設け、光軸方向における前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーの前後位置関係及び前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーの前後位置関係を同じに設定したミラーマニピュレータと、オフラインで前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーの水平姿勢及び前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーの垂直姿勢をそれぞれ誤差内で理想姿勢になるように微調節するための基準を与えるべく、光軸方向に沿って水平基準リニアガイドと垂直基準リニアガイドを配置するとともに、各リニアガイドに沿って移動する走査ステージにそれぞれオートコリメータと変位計からなる2組のセンサーを設け、前記水平基準リニアガイドに沿って水平用センサーを走査して前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーの傾斜角と形状を測定するとともに、前記垂直基準リニアガイドに沿って垂直用センサーを走査して前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーの傾斜角と形状を測定するアライメント監視手段と、を備えたので、水平と垂直におけるそれぞれ2つのX線ミラーの姿勢を独立して調節することができ、調節後のミラーの姿勢も安定であり、更にアライメント監視手段により、マシンタイムに限りがあるSPring-8等の大型放射光施設やX線自由電子レーザー(XFEL)施設等のX線ビームラインを使わずに、予め4つのX線ミラーを理想的な姿勢に近い状態にまで調節することができ、最終的なX線ビームラインを利用して行う微調節を比較的短い時間で最小限の労力で行うことができ、回折限界に近い分解能を達成できるようになる。また、4つのX線ミラーは、ほとんど平面に近い形状であるので、高精度に形状加工することが容易である。
そして、前記アライメント監視手段が、光軸方向に沿って水平基準リニアガイドと垂直基準リニアガイドを配置するとともに、各リニアガイドに沿って移動する走査ステージにそれぞれオートコリメータと変位計からなる2組のセンサーを設け、前記水平基準リニアガイドに沿って水平用センサーを走査して前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーの傾斜角と形状を測定するとともに、前記垂直基準リニアガイドに沿って垂直用センサーを走査して前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーの傾斜角と形状を測定するものであると、リニアガイドと走査ステージの公差を、直交度と平坦度に優れたガラスブロックで予め校正しておくことで、ガラスブロックの直交度と平坦度を基準として、水平ステージ上の水平楕円ミラーと水平双曲ミラー及び垂直ステージ上の垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーの傾斜角(ピッチング角、ローリング角)と形状及び相対位置を測定することができ、それによって4つのX線ミラーを理想的な姿勢に近い状態にまで比較的簡単に微調節することができる。
そして、X線の光軸方向に沿ってY軸、Y軸と直交する水平軸をX軸、垂直軸をZ軸とし、各ミラーにおいて、光軸方向の軸周りの回転をローリング、光軸方向に直交しミラーの短辺方向に向いた軸周りの回転をピッチング、光軸方向に直交しミラーの反射面の法線方向を向いた軸周りの回転をヨーイングとし、前記ミラーマニピュレータは、前記水平ステージが水平軸周りにピッチング可能であり、該水平ステージの上面に、前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーとを、それぞれ水平第1調節ステージと水平第2調節ステージを介して設けるとともに、該水平第1調節ステージと水平第2調節ステージの何れか一方は水平軸周りにピッチング可能で、他方は少なくともZ軸方向(垂直方向)に調節可能であり、更に前記垂直ステージが垂直軸周りにピッチング可能であり、該垂直ステージの側面に、前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーとを、それぞれ垂直第1調節ステージと垂直第2調節ステージを介して設けるとともに、該垂直第1調節ステージと垂直第2調節ステージの何れか一方は垂直軸周りにピッチング可能で、他方は少なくともX軸方向(水平方向)に調節可能であり、加えて4つの前記X線ミラーのうち、少なくとも3つのX線ミラーを水平軸周りにローリング可能としたものであるので、水平と垂直においてそれぞれ独立して楕円ミラーと双曲ミラーの相対的な角度(ピッチング角)を調節することができるとともに、楕円ミラーと双曲ミラーの相対的な高さ(垂直姿勢のミラーでは側方への突出量)を調節することができ、それから楕円ミラーと双曲ミラーの相対的な位置を固定して全体の斜入射角(ピンチング角)を正確且つ簡単に調節することができ、4つのX線ミラーを所望の姿勢になるように高精度で調節することができる。
前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーは、それぞれ前記水平第1調節ステージと水平第2調節ステージに対して垂直軸周りにヨーイング可能であるとともに、前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーは、それぞれ垂直第1調節ステージと垂直第2調節ステージに対して水平軸周りにヨーイング可能であると、より正確な姿勢に各ミラーを調節することができ、それにより各ミラーの反射面の正確な位置にX線を反射させることができる。
また、前記水平第1調節ステージと水平第2調節ステージの何れか一方は水平軸周りにピッチング可能で、他方は少なくともZ軸方向(垂直方向)とX軸方向(水平方向)に調節可能であり、前記垂直第1調節ステージと垂直第2調節ステージの何れか一方は垂直軸周りにピッチング可能で、他方は少なくともX軸方向(水平方向)とZ軸方向(垂直方向)に調節可能であると、より正確な姿勢に各ミラーを調節することができ、それにより各ミラーの反射面の正確な位置にX線を反射させることができる。
更に、ベース板上にXYZ軸調節可能な水平ベースステージとXYZ軸調節可能な垂直ベースステージを設け、該水平ベースステージに前記水平ステージを保持するとともに、該垂直ベースステージに前記垂直ステージを保持してなると、水平楕円ミラーと垂直楕円ミラーの相対位置、水平双曲ミラーと垂直双曲ミラーの相対位置を調節することができるとともに、水平楕円ミラーと水平双曲ミラー及び垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーのX線に直交する面内での位置を調節することができる。
また、前記水平楕円ミラー、垂直楕円ミラー、水平双曲ミラー及び垂直双曲ミラーの反射面は、3nm以下の形状精度、0.3nmRMS以下の表面粗さに超精密に加工することで、回折限界ぎりぎりまで分解能を高めることができる。
本発明のX線光学システムを用いれば、拡大X線画像を得ることができる結像型X線顕微鏡を構成できる。本発明のX線光学システムを用いれば、X線を集光することができ、X線測定装置を構成できる。更に、本発明の色収差のないX線光学システムに、蛍光X線分析法とフォトンカウンティングCCDカメラを用いることにより、ワンショットで多色X線画像を取得できる可能性を秘めている。
本発明のX線光学システムを用いることで、4枚ミラーのアライメント問題を解決でき、色収差のない結像型X線顕微鏡やX線測定装置の開発が可能となり、これを用いることでX線領域の顕微分光法の分野を新たに開拓することが可能となる。200nm以下の分解能でX線分光ができれば、試料の電子密度、結合状態、元素組成の分布を可視化可能であり、既存の分析技術において空間分解能の飛躍的な向上が期待できる。
X線顕微鏡のためのX線ミラーの配置図を示した説明図である。 楕円ミラーと双曲ミラーの反射面形状を決定するための説明図である。 作製した4つのX線ミラーの反射面の形状と形状誤差を示している。 本発明のX線光学システムの斜視図である。 本発明の要部を示す簡略斜視図である。 同じく本発明の要部を示す簡略斜視図である。 本発明のX線光学システムを縮小イメージングシステムとした場合のPSFの垂直方向と水平方向の1Dプロファイルを、実験結果とシミュレーション結果を併せて示したグラフである。 同じくPSFのFWHMと斜入射角との関係をシミュレーション結果と一緒に示したグラフである。 図8の−70と80μradの場合のPSFを実験結果とシミュレーション結果と一緒に示したグラフである。 縮小イメージングシステム全体のPSFをシミュレーションした結果を示し、(a)は理想曲面のミラー形状を用いた結果であり、(b)は実測したミラー形状を用いた結果である。
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。本発明のX線光学システムは、それを用いて縮小又は拡大光学系を構成し、結像型X線顕微鏡やX線計測装置を構築するために使用することができ、またその他のX線光学系のコンポーネントとして用いることができる汎用性を備えたものである。図1は、X線顕微鏡のX線ミラーの配置図を示し、SPring-8等の放射光施設等によって発生した高輝度のX線をKirkpatrick-Baez(KB)ミラー光学系1で集光して観察物Sに照射し、観察物SからのX線をAdvanced Kirkpatrick-Baez(AKB)ミラー光学系2で拡大して観察するようになっている。図中符号M1は水平楕円ミラー、M2は垂直楕円ミラー、M3は水平双曲ミラー、M4は垂直双曲ミラーをそれぞれ示している。
一般的に、X線は、エネルギーによって、軟X線(約0.1〜2keV)、X線(約2〜20keV)、硬X線(約20〜100keV)と分類されるが、利用分野によってその分類はまちまちであり、X線の一部を軟X線に入れたり硬X線に入れる場合もある。本発明では、従来技術では成し得なかった透過性の高い最高性能のX線顕微鏡を構成することを目的としているので、対象とするX線のエネルギーは、2keV以上である。
AKBミラー光学系2は、楕円ミラーM1,M2と双曲ミラーM3,M4(もしくは放物ミラーと双曲ミラー)を2組直交するように組み合わせた斜入射光学系であり、それぞれ反射面が平面に近い全反射X線ミラーである。図2に示すように、楕円3と双曲線4の焦点を一致させることで、光路長一定と反射光がすべて同一焦点に集まるという性質を併せ持っている。図2において、楕円3の焦点E1,E2とし、双曲線4の焦点をH1,H2とするとき、焦点E2と焦点H2を一致させる。そして、楕円3と双曲線4の交点を挟んで接近した位置の曲線を用いて一次元の楕円ミラー5と双曲ミラー6の反射面を決定する。例えば、縮小光学系で説明すれば、楕円3の一方の焦点E1から放射されたX線は、楕円3と双曲線4の前記交点の手前に形成した前記楕円ミラー5の中心で反射させれば、他方の焦点E2の方向へ反射する。この反射X線と前記双曲線4の交点を中心として前記双曲ミラー6を形成すれば、この面で反射されたX線は焦点H1に到達する。つまり、焦点E1を物点すれば、焦点H1は結像点となる。逆に、拡大光学系であれば、焦点H1を物点とし、焦点E1を結像点とする。
E1から楕円ミラー5の中心までの距離をa、E2から楕円ミラー5の中心までの距離をa’とし、H1から双曲ミラー6の中心までの距離をb、H2から双曲ミラー6の中心までの距離をb’とすれば、
光路長=a+(a’−b’)+b=(a+a’)+(b−b’)=一定
となる。つまり、光源E1から放出されたX線が楕円ミラー5と双曲ミラー6で反射されて焦点H1に至る光路長は全て同じになり、アッベの正弦条件も満たしているという特長を備えている。
ここで、前記楕円3の代わりに放物線を用いることも可能である。この場合、放物線は楕円の焦点E1が無限遠にあるのと同じと見なされ、例えば宇宙のX線発生源を観測するために用いるX線光学系となる。
200nm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくはサブ50nmの分解能を達成するために重要な点は、水平楕円ミラーM1、垂直楕円ミラーM2、水平双曲ミラーM3、垂直双曲ミラーM4のそれぞれの反射面が誤差なく作製されていること、高い精度で配置されていることである。本発明で用いる前記水平楕円ミラーM1、垂直楕円ミラーM2、水平双曲ミラーM3及び垂直双曲ミラーM4の反射面は、3nm以下の形状精度、0.3nmRMS以下の表面粗さを要求する。先ず、本実施形態ではX線結像光学システムを設計する際に、ここではX線のエネルギーが11.5keVで、43nmの回折限界の空間分解能と50mmの作動距離を持つようにした。システム全体の反射率を高めるため、楕円ミラーM1,M2は、小さな斜入射角を持つように設計したので、長い楕円形のミラーとした。
4つのミラーは、合成石英基板上に数値制御EEM(elastic emission machining)によって、P−V値で2nm以下の形状精度で作製した。図3に、作製した水平楕円ミラーM1、垂直楕円ミラーM2、水平双曲ミラーM3、垂直双曲ミラーM4の反射面の形状と形状誤差を示している。横軸はミラーの反射面に沿った方向(光軸方向)の位置を示し、右縦軸は反射面の高さ、即ち形状を示し、左縦軸は除去できない形状誤差を示している。形状誤差は、大阪大学で開発されたMSI(microstitching interferometer)とRADSI(relative angle determinable stitching interferometer)を用いて測定した。反射面の特性は、位相シフト干渉顕微鏡(ZYGO、NewView200CHR)を使用して、加工面が64×48μmの領域にわたって、0.2nmRMSより優れた表面粗さであることを確認した。これは、対象とするX線において表面粗さに起因する反射率の低下を無視するのに十分小さい値である。その形状を把握した後、マグネトロンスパッタリング法によって、ミラーの表面を薄いクロムバインダー層と約30nm厚の白金層で被覆した。
次に、本発明のX線結像光学システムには、図4に示すような4つのX線非球面ミラーを容易且つ高精度にアライメントできるミラーマニピュレータ10を備えている。ミラーマニピュレータ10は、波動光学に基づいたシミュレータでアライメント許容誤差を正確に調べ、各部の精度と可動部の駆動機構を決定した。更に、アライメント状態を可視化できるアライメント監視手段20を備え(図5参照)、4つのミラーの位置・角度を高精度に調整できるようにした。つまり、本発明のX線光学システムは、4つのミラーの位置・角度を高精度に調整するために、弾性ヒンジ機構とアクチュエータを備えたミラーマニピュレータ10と、ミラーの位置・角度分布を測定するためのアライメント監視手段20から構成されている。
図4〜図6に基づいて、本発明のX線結像光学システムを説明する。ここでは、X線の光軸方向をL、光軸方向Lに沿ってY軸、Y軸と直交する水平軸をX軸、垂直軸をZ軸とする。尚、光軸方向Lとは、実際のX線の軌跡を示しているのではなく、X線の軌跡に近い基準となる直線を意味している。実際、X線は各ミラーで次々に反射してジグザグの軌跡を取るが、斜入射角はmradのオーダーであるので、その程度の違いは微調節の範囲内である。また、各ミラーにおいて、光軸方向Lの軸周りの回転をローリング、光軸方向Lに直交しミラーの短辺方向に向いた軸周りの回転をピッチング、光軸方向Lに直交しミラーの反射面の法線方向を向いた軸周りの回転をヨーイングとする。ピッチング角は、斜入射角を決定するので最も重要な調節軸であり、ローリング角は反射したX線の方向が変わるのでその次に重要な調節軸であり、ヨーイング角は反射面の幅が十分に広い場合にはあまり重要ではないが、反射面の幅が狭い場合には調節する必要がある調節軸である。
本発明のX線光学システムは、水平楕円ミラーM1と垂直楕円ミラーM2及び水平双曲ミラーM3と垂直双曲ミラーM4の4つの斜入射全反射X線ミラーを用い、これらの4つのX線ミラーの姿勢を高精度に調節することが可能なミラーマニピュレータ10と、各X線ミラーの姿勢を測定し、その結果を前記ミラーマニピュレータ10の調節のためにフィードバックして全体を高精度且つ簡単に調節することを補助するアライメント監視手段20とから構成されている。
前記ミラーマニピュレータ10は、X線の光軸方向Lに沿って水平ステージ11と垂直ステージ12を配置し、前記水平ステージ11に前記水平楕円ミラーM1と水平双曲ミラーM3を微調節可能に設けるとともに、前記垂直ステージ12に前記垂直楕円ミラーM2と垂直双曲ミラーM4を微調節可能に設けたものである。ここで、光軸方向Lにおける前記水平楕円ミラーM1と水平双曲ミラーM3の前後位置関係及び前記垂直楕円ミラーM2と垂直双曲ミラーM4の前後位置関係を同じに設定した。この場合、各ミラーを配置する順序は複数存在する。例えば、本実施形態のように、M1,M2,M3,M4配置の他に、M1,M3,M2,M4配置やM1,M2,M4,M3配置があり、更に水平と垂直を入れ替えたような配置も可能である。M1,M3,M2,M4配置の場合には、水平と垂直のミラーが接近するので、水平ステージ11と垂直ステージ12の光軸方向Lの長さを短くでき、装置のコンパクト化を図ることが可能である。
そして、アライメント監視手段20は、オフラインで前記水平楕円ミラーM1と水平双曲ミラーM3の水平姿勢及び前記垂直楕円ミラーM2と垂直双曲ミラーM4の垂直姿勢をそれぞれ誤差内で理想姿勢になるように微調節するための基準を与えるものである。
更に詳しくは、図5に示すように、前記ミラーマニピュレータ10は、前記水平ステージ11が水平軸周りにピッチング可能であり、該水平ステージ11の上面に、前記水平楕円ミラーM1と水平双曲ミラーM3とを、それぞれ水平第1調節ステージ13と水平第2調節ステージ14を介して設けるとともに、該水平第1調節ステージ13と水平第2調節ステージ14の何れか一方は水平軸周りにピッチング可能で、他方は少なくともZ軸方向(垂直方向)に調節可能であり、更に前記垂直ステージ12が垂直軸周りにピッチング可能であり、該垂直ステージ12の側面に、前記垂直楕円ミラーM2と垂直双曲ミラーM4とを、それぞれ垂直第1調節ステージ15と垂直第2調節ステージ16を介して設けるとともに、該垂直第1調節ステージ15と垂直第2調節ステージ16の何れか一方は垂直軸周りにピッチング可能で、他方は少なくともX軸方向(水平方向)に調節可能であり、加えて4つの前記X線ミラーのうち、少なくとも3つのX線ミラーを水平軸周りにローリング可能としたものである。本実施形態では、X線入射側端に位置する前記水平楕円ミラーM1はローリング調節できないようにしたが、4つの全てのミラーをローリング可能としても良い。
本実施形態では、前記ミラーマニピュレータ10は、前記水平第1調節ステージ13を水平軸周りにピッチング可能とし、前記水平第2調節ステージ14をZ軸方向(垂直方向)に調節可能とした。また、前記垂直第1調節ステージ15を垂直軸周りにピッチング可能とし、前記垂直第2調節ステージ16をX軸方向(水平方向)に調節可能とした。これによって、前記水平楕円ミラーM1と水平双曲ミラーM3の相対的な角度(ピッチング角)を調節することができるとともに、水平楕円ミラーM1と水平双曲ミラーM3の相対的な高さを調節することができ、それから水平楕円ミラーM1と水平双曲ミラーM3の相対的な位置を固定して全体の斜入射角(ピンチング角)を正確且つ簡単に調節することができる。同様に、前記垂直楕円ミラーM2と垂直双曲ミラーM4の相対的な角度(ピッチング角)を調節することができるとともに、垂直楕円ミラーM2と垂直双曲ミラーM4の相対的な側方への突出量を調節することができ、それから垂直楕円ミラーM2と垂直双曲ミラーM4の相対的な位置を固定して全体の斜入射角(ピンチング角)を正確且つ簡単に調節することができる。
ここで、前記水平双曲ミラーM3は、光軸方向Lに直交するX軸方向に並進移動させて調節できるようにすることが望ましく、そのため前記水平第2調節ステージ14は、XZ軸移動ステージで構成する。同様に、前記垂直双曲ミラーM4は、光軸方向Lに直交するZ軸方向に並進移動させて調節できるようにすることが望ましく、そのため前記垂直第2調節ステージ16は、XZ軸移動ステージで構成する。尚、前記X線ミラーの各反射面が理想的な形状に形成されていれば、各X線ミラーを所定位置に正確に保持すれば済むが、前記水平楕円ミラーM1と水平双曲ミラーM3の相対距離及び前記垂直楕円ミラーM2と垂直双曲ミラーM4の相対距離を調節することが必要な場合も生じる。その場合には、前記水平第2調節ステージ14及び垂直第2調節ステージ16をXYZ軸移動ステージで構成する。前記水平第1調節ステージ13と水平第2調節ステージ14の関係を逆にしても良く、同様に前記垂直第1調節ステージ15と垂直第2調節ステージ16の関係を逆にしても良い。
更に、前記水平楕円ミラーM1と水平双曲ミラーM3は、それぞれ前記水平第1調節ステージ13と水平第2調節ステージ14に対して垂直軸周りにヨーイング可能であるとともに、前記垂直楕円ミラーM2と垂直双曲ミラーM4は、それぞれ前記垂直第1調節ステージ15と垂直第2調節ステージ16に対して水平軸周りにヨーイング可能である。図中符号Pはピッチングの軸、Rはローリングの軸、Yはヨーイングの軸をそれぞれ示している。
更に、図6に示すように、ベース板19上にXYZ軸調節可能な水平ベースステージ17とXYZ軸調節可能な垂直ベースステージ18を設け、該水平ベースステージ17に前記水平ステージ11を保持するとともに、該垂直ベースステージ18に前記垂直ステージ12を保持する。ミラーマニピュレータ10の回転と並進移動を合せた自由度は最大24となるが、本実施形態では自由度20で構成している。これによって、各ミラーは、高精度で所望の姿勢にアライメントできる。前記水平楕円ミラーM1と水平双曲ミラーM3の対と、前記垂直楕円ミラーM2と垂直双曲ミラーM4の対の相対位置は、前記水平ベースステージ17と垂直ベースステージ18で調節できる。
また、前記アライメント監視手段20は、図5に示すように、光軸方向Lに沿って水平基準リニアガイド21と垂直基準リニアガイド22を配置するとともに、各リニアガイドに沿って移動する走査ステージ23,24にそれぞれオートコリメータ25,26と変位計27,28からなる2組のセンサー29,30を設け、前記水平基準リニアガイド21に沿って水平用センサー29を走査して前記水平楕円ミラーM1と水平双曲ミラーM3の傾斜角と形状を測定するとともに、前記垂直基準リニアガイド22に沿って垂直用センサー30を走査して前記垂直楕円ミラーM2と垂直双曲ミラーM4の傾斜角と形状を測定するものである。ここで、本実施形態では変位計27,28にレーザー変位計を用いた。このアライメント監視手段20によって測定した各ミラーの傾斜角と形状に基づいて、前記ミラーマニピュレータ10を更に調節して理想の姿勢にアライメントするのである。尚、図4には、前記アライメント監視手段20は記載してなく、ミラーマニピュレータ10の外側に別途設けた架台に設けられている。
各ミラーの斜入射角(ピッチング角)と相対角度の調整は、特に慎重に調整する必要がある。これには、弾性ヒンジと高分解能リニアアクチュエータで構成された角度調節ステージが用いられる。本実施形態の角度調節ステージは、角度調整が十分細かい約0.2μradの分解能を持っている。ローリング(角度調整)のため、約5μradの分解能を持つ差動マイクロメータヘッドと弾性ヒンジを使用した。ヨーイング(つまり、ミラーの中心を通る垂直軸周りの回転)では、約500μrad分解能でマイクロメータヘッドとピボットポイントを使った簡単な角度調整を使用した。
そして、前記アライメント監視手段20では、水平基準リニアガイド21と垂直基準リニアガイド22のそれぞれの走査ステージ23,24上に配置されたオートコリメータ25,26とレーザー変位計27,28によって4つのミラーの配置を正確に測定することができる。この情報を基に4つのミラーの相対配置を、ミラーマニピュレータ10を用いて許容アライメント誤差以上の精度で調整することができる。ここで、前記レーザー変位計27,28の分解能は0.5μmであり、オートコリメータ25,26の分解能は19μradである。アライメント時に走査ステージ23とオートコリメータ25及び走査ステージ24とオートコリメータ26におけるうねりの影響を排除するために、ミラーを正確な姿勢に調節するための基準として、ガラスブロック(上面と側面の平坦度がP−V値で<300nm;上面と側面の間の垂直度が+3秒角)を使用して校正されている。
また、他の実施形態として、図示しないが、前記アライメント監視手段20は、光軸方向Lに沿って基準リニアガイドを配置するとともに、該基準リニアガイドに沿って移動する走査ステージに前記ミラーマニピュレータ10を保持し、それぞれオートコリメータと変位計からなる水平用センサー29と垂直用センサー30を固定的に設け、前記基準リニアガイドに沿ってミラーマニピュレータ10を走査して前記水平用センサー29で前記水平楕円ミラーM1と水平双曲ミラーM3の傾斜角と形状を測定するとともに、前記垂直用センサー30で前記垂直楕円ミラーM2と垂直双曲ミラーM4の傾斜角と形状を測定するようにしても良い。この場合、前述のような水平基準リニアガイド21と垂直基準リニアガイド22を保持する大掛かりな架台は必要なく、また測定系が固定され、基準点の移動がないので、より正確にミラーの傾斜角と形状を測定することができる。
前記ミラーマニピュレータ10とアライメント監視手段20を用いることにより、X線を使用しないオフラインで4つのミラーを正確に調整することができる。そのアライメント手順は、2段階の手順を採用している。この手順には、予めシミュレートで算出したアライメント許容値に応じてミラーのすべての自由度を調整するために使用することができるミラーマニピュレータ10を必要とし、またミラーの形状や傾斜を監視することができるアライメント監視手段20を必要とする。このオフラインのアライメント手順を適用した後、アライメント監視手段20を含むX線結像光学システムは、実際のビームラインに設置され、最小限の努力でX線を用いて最終のアライメントすることができる。
本発明のX線結像光学システムの性能を評価するために、SPring-8のBL29XULに縮小イメージングシステムとしてセッティングし、つまり水平楕円ミラーM1の側からX線を入射し、集光するように実験配置を構築した。X線は、SPring-8の標準アンジュレータによって生成され、二結晶〔Si(111)〕モノクロメータ(DCM)で11.5keVの単色化し、4Dスリットを通して点光源とした。スリットのサイズは、点光源と見なされるために十分に小さい10×5μm(H×V)である。スリットの縮小された画像は、45メートル下流に配置された前記X線結像光学システムで集光されて観測される。垂直方向と水平方向のX線強度のプロファイルは、直径200μmの金ワイヤー、XZステージ(シグマテックFS-1050SPXY、位置決め分解能:1nm)、PINフォトダイオードを用いたワイヤースキャニング法で測定した。この実験配置によって、簡単に実用的な点光源を生成し、正確に実験的なPSF(point spread function )を評価することができる。実験的に縮小イメージングシステムのPSFを評価することによって、拡大イメージングシステムの性能を決定することができる。
全反射率は、最初にPINフォトダイオードを用いて評価した。空気による吸収を補正後の反射率は62%であった。これは理論的に表面粗さから推定された理想的な反射率(11.5keVで65.7%)とほぼ一致している。その後、視野(field of view :FOV)の中心における結像系のPSFの垂直方向と水平方向の画像の1Dプロファイルを別々に測定し、図7に示した。図7において白丸は測定値であり、ピークのフィッティング曲線(太線)とシミュレーション結果(細線)を実験結果と一緒に示している。実験的なPSFの半値全幅(FWHM)は、ガウス関数でフィッティングすることにより得られた。実験的で得られたFWHMは47×41nm(H×V)であり、計算したFWHM(43×43nm)をとよく一致した。
X線結像光学システムのFOVは、水平方向及び垂直方向にX線結像光学システム全体を傾斜してPSFを一連の測定により評価した。ここでは、複数のピークを持つPSFのFWHMは、半値最大幅(サテライトピークを含む)として定義されている。図8は、PSFのFWHMと入射傾斜角との関係をシミュレーション結果と一緒に示している。尚、PSFのシミュレーションには、フレネルキルヒホッフ積分に基づいた波動光学シミュレータを用いた。これらの結果は、X線結像光学システムは、シミュレートしたFOVと同じように、大きな視野を持っていることを示している。FOVは、水平方向と垂直方向において、得られた角度120μrad×80μradの距離から約12μm×約14μmと見積もられる。これらの結果は、4つのミラーが正確なイメージングシステムとして機能することを示している。一方、シミュレートされたものより小さいFWHMは、垂直FOVの外側に得られた。FOVの外側のPSFは、複数のサテライトピークを持つ複雑な構造と小さな光子密度を持つ傾向がある。ワイヤスキャン法によって正確にそのようなイメージを測定することは一般に困難である。更に、ここで定義されたFWHMは、強くサテライトピークの高さに影響される。従って、外側のFWHMにおける実験とシミュレートの間の食い違いは、特にサテライトピークを測定する際の測定誤差に起因すると思われる。FOVの外側(図8の−70と80μrad)のPSFを詳細に調べるために、実験得られたPSFをシミュレーション結果と直接比較した(図9)。サテライトピークを含むビームプロファイルの特性は、FWHMの間に相違があるにも係わらず、シミュレートされたものと合理的な一致があることが判明した。
最後に、図10は、縮小イメージングシステム全体のPSFをシミュレーションした結果を示している。点光源は、1の強度と0ラジアンの初期位相を持つ単一のデータポイントを使用してモデル化されている。11.5keVのX線エネルギーを仮定した。計算に使用される幾何学的配置は、上記の配置と同じとした。約200万データポイントは、各ミラーで使用された。図10(a)は、理想曲面のミラー形状を用いてシミュレーションしたPSFであり、(b)は実測したミラー形状を用いてシミュレーションしたPSFである。それぞれの画像の範囲は800×800nmであり、メッシュサイズは2nmである。実測したミラー形状を用いて計算されたPSFは、理想的なPSFと同様の形状と幅を持っていることが分かる。シミュレータは、作製したミラーは、形状誤差が原因で劣化させずに画像を形成することができることを明らかにした。
以上のように、X線ミラーの超精密加工と、波動光学シミュレータを用いた性能予測と、正確なアライメントにより、ほぼ回折限界の分解能を有する4つのミラーのX線結像光学システムを開発できた。開発したX線結像光学システムは、50nm以下の高分解能と約12×約14μm(H×V)のFOVを達成できた。理論的にも予想されたものと一致したこれらの結果は、4つのミラーが高精度に作製され、ほぼ完璧にアライメントされたことを示している。本発明の色収差なしで高分解能のX線結像光学システムに照明光学系を追加することにより、結像型の硬X線顕微鏡を構築できる。それにより、蛍光X線画像等の拡大多色X線画像を得ることができるようになる。本発明のX線結像光学システムは、間違いなくシンクロトロン放射X線用だけでなく、高輝度で超短パルスのX線自由電子レーザーにおいても、分光顕微鏡ための新しいツールとなる。
本発明のX線光学システムは、X線領域のレンズに相当するものであり、拡大結像顕微鏡やX線検出器等の幅広い用途に適用することができる。中でも、試料から発せられる蛍光X線を拡大結像する蛍光X線顕微鏡への応用が期待される。
M1 水平楕円ミラー
M2 垂直楕円ミラー
M3 水平双曲ミラー
M4 垂直双曲ミラー
1 KBミラー光学系
2 AKBミラー光学系
3 楕円
4 双曲線
5 楕円ミラー
6 双曲ミラー
10 ミラーマニピュレータ
11 水平ステージ
12 垂直ステージ
13 水平第1調節ステージ
14 水平第2調節ステージ
15 垂直第1調節ステージ
16 垂直第2調節ステージ
17 水平ベースステージ
18 垂直ベースステージ
19 ベース板
20 アライメント監視手段
21 水平基準リニアガイド
22 垂直基準リニアガイド
23 走査ステージ
24 走査ステージ
25 オートコリメータ
26 オートコリメータ
27 変位計
28 変位計
29 水平用センサー
30 垂直用センサー
P ピッチング軸
R ローリング軸
Y ヨーイング軸
E1,E2 楕円の焦点
H1,H2 双曲線の焦点
L 光軸方向
S 観察物

Claims (6)

  1. エネルギーが2keV以上のX線を200nm以下の高い分解能で収差なく縮小又は拡大させるためのX線光学システムであって、
    水平楕円ミラーと垂直楕円ミラー及び水平双曲ミラーと垂直双曲ミラーの4つの斜入射全反射X線ミラーを用い、X線の光軸方向に沿って水平ステージと垂直ステージを配置し、X線の光軸方向に沿って前記水平楕円ミラー、前記垂直楕円ミラー、前記水平双曲ミラー、前記垂直双曲ミラーを順に配置した状態で、前記水平ステージに前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーを微調節可能に設けるとともに、前記垂直ステージに前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーを微調節可能に設け、光軸方向における前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーの前後位置関係及び前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーの前後位置関係を同じに設定したミラーマニピュレータと、
    オフラインで前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーの水平姿勢及び前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーの垂直姿勢をそれぞれ誤差内で理想姿勢になるように微調節するための基準を与えるべく、光軸方向に沿って水平基準リニアガイドと垂直基準リニアガイドを配置するとともに、各リニアガイドに沿って移動する走査ステージにそれぞれオートコリメータと変位計からなる2組のセンサーを設け、前記水平基準リニアガイドに沿って水平用センサーを走査して前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーの傾斜角と形状を測定するとともに、前記垂直基準リニアガイドに沿って垂直用センサーを走査して前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーの傾斜角と形状を測定するアライメント監視手段と、
    を備えたことを特徴とするX線光学システム。
  2. X線の光軸方向に沿ってY軸、Y軸と直交する水平軸をX軸、垂直軸をZ軸とし、各ミラーにおいて、光軸方向の軸周りの回転をローリング、光軸方向に直交しミラーの短辺方向に向いた軸周りの回転をピッチング、光軸方向に直交しミラーの反射面の法線方向を向いた軸周りの回転をヨーイングとし、前記ミラーマニピュレータは、前記水平ステージが水平軸周りにピッチング可能であり、該水平ステージの上面に、前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーとを、それぞれ水平第1調節ステージと水平第2調節ステージを介して設けるとともに、該水平第1調節ステージと水平第2調節ステージの何れか一方は水平軸周りにピッチング可能で、他方は少なくともZ軸方向(垂直方向)に調節可能であり、更に前記垂直ステージが垂直軸周りにピッチング可能であり、該垂直ステージの側面に、前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーとを、それぞれ垂直第1調節ステージと垂直第2調節ステージを介して設けるとともに、該垂直第1調節ステージと垂直第2調節ステージの何れか一方は垂直軸周りにピッチング可能で、他方は少なくともX軸方向(水平方向)に調節可能であり、加えて4つの前記X線ミラーのうち、少なくとも3つのX線ミラーを水平軸周りにローリング可能としたものである請求項記載のX線光学システム。
  3. 前記水平楕円ミラーと水平双曲ミラーは、それぞれ前記水平第1調節ステージと水平第2調節ステージに対して垂直軸周りにヨーイング可能であるとともに、前記垂直楕円ミラーと垂直双曲ミラーは、それぞれ前記垂直第1調節ステージと垂直第2調節ステージに対して水平軸周りにヨーイング可能である請求項記載のX線光学システム。
  4. 前記水平第1調節ステージと水平第2調節ステージの何れか一方は水平軸周りにピッチング可能で、他方は少なくともZ軸方向(垂直方向)とX軸方向(水平方向)に調節可能であり、前記垂直第1調節ステージと垂直第2調節ステージの何れか一方は垂直軸周りにピッチング可能で、他方は少なくともX軸方向(水平方向)とZ軸方向(垂直方向)に調節可能である請求項2又は3記載のX線光学システム。
  5. ベース板上にXYZ軸調節可能な水平ベースステージとXYZ軸調節可能な垂直ベースステージを設け、該水平ベースステージに前記水平ステージを保持するとともに、該垂直ベースステージに前記垂直ステージを保持してなる請求項2〜4何れかに記載のX線光学システム。
  6. 前記水平楕円ミラー、垂直楕円ミラー、水平双曲ミラー及び垂直双曲ミラーの反射面は、3nm以下の形状精度、0.3nmRMS以下の表面粗さである請求項1〜何れかに記載のX線光学システム。
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