以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜図4は、本発明の一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1は、表示装置を示す斜視図である。図2および図3は、それぞれ、立体画像または平面画像を表示する際の表示装置の作用を説明するための図である。図4は、光学シートの第1層および第2層の屈折率楕円体を示す斜視図である。
本実施の形態における表示装置10は、平面画像および裸眼で視認され得る立体画像を切り換え可能に表示することができる。図1に示すように、表示装置10は、画像表示ユニット15と、画像表示ユニット15に対向して配置された光学シート40と、を有している。画像表示ユニット15は、立体画像を表示するための一方の直線偏光成分の光と、平面画像を表示するための他方の直線偏光成分の光と、を射出するように構成されている。光学シート40は、光の偏光状態に応じて当該光の進行方向を制御するようになっている。より具体的には、光学シート40は、立体画像を表示するための一方の直線偏光成分の光の進行方向を制御し、一方の直線偏光成分の振動方向と直交する方向に振動する他方の直線偏光成分の光の進行方向を維持する。
ここで、平面画像とは、表示面10a上に二次元的に観察される画像であり、一方、立体画像とは、表示面10aとは異なる位置にも観察される奥行きを持った画像である。そして、ここで説明する表示装置10では、両眼視差と運動視差とを利用して立体画像を表示することができるようになっている。図2に示すように、立体画像を表示する場合、画像表示ユニット15の画像形成装置20の各画素21が、観察者の左目または右目が位置するようになると想定された複数の位置に割り振られる。同一の位置に割り振られた複数の画素21が、当該割り振られた位置で観察されるべき画像を形成する。一方、光学シート40は、各画素21から射出される光が、観察者の左目または右目が位置するようになると想定された複数の位置のうちの当該画素21が割り振られた位置に向かうよう、光路を制御する。この結果、観察者の右目および左目には異なる画像が観察され、観察者は画像を立体的に認識する。また、観察方向を変化させると、観察位置に応じた立体画像を観察することができる。
以下、各構成要素についてさらに詳述する。なお、以下の説明においては、立体画像を形成する一方の直線偏光成分を、光学シート40のシート面と平行なx軸方向(図1参照)に振動する第1偏光成分とする。平面画像を形成する他方の直線偏光成分を、x軸方向と直交し且つ光学シート40のシート面と平行なy軸方向(図1参照)に振動する第2偏光成分とする。
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「フィルム」はシートや板と呼ばれ得るような部材も含む概念であり、したがって、「光学シート」は、「光学フィルム」や「光学板」と呼ばれる部材と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「シート面(フィルム面、板面、パネル面)」とは、対象となるシート状(フィルム状、板状、パネル状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(フィルム状部材、板状部材、パネル状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。本実施の形態においては、画像形成装置20の画像形成面20a、液晶表示パネル25のパネル面、偏光制御装置30のパネル面、光学シート40のシート面、および、表示装置10の表示面10aは平行となっている。また、正面方向とは、光学シート40のシート面への法線方向のことを指す。
さらに、本件明細書において用いる形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「平行」、「直交」等の用語は、厳密な意味に縛られることなく、同様の光学的機能を期待し得る程度の誤差範囲を含めて解釈することとする。
まず、画像表示ユニット15は、画像形成装置20と、画像形成装置20からの光を透過させる偏光制御装置30と、を有している。偏光制御装置30は、画像形成装置20と光学シート40との間に配置されている。画像形成装置20は、画像形成面20aと平行な面内に配列された多数の画素21を含んでいる。図示された例では、多数の画素21は、ストライプ配列されている。以下では、画像形成装置20が、第1偏光成分の光によって画像を形成する例について説明する。この例では、偏光制御装置30は、画像形成装置20から投射された光の偏光状態を、立体画像を表示する場合に第1偏光成分に維持し、平面画像を表示する場合に第2偏光状態に変換する。ただし、この例に限られず、画像形成装置20が第2偏光成分の光を射出し、偏光制御装置30が、立体画像を表示する場合に画像形成装置20から投射された光の偏光状態を第1偏光成分に変換し且つ平面画像を表示する場合に第2偏光状態に維持するようにしてもよい。
図示された例において、画像形成装置20は、液晶表示装置として形成されている。すなわち、画像形成装置20は、液晶表示パネル25と、液晶表示パネル25の背面に配置されたバックライト24と、を有している。バックライト24は、エッジライト型や直下型等の既知の構成を採用して形成され得る。
一方、液晶表示パネル25は、一対の偏光板26,28と、一対の偏光板26,28間に配置された液晶セル27と、を有している。偏光板26,28は、入射した光を直交する二つの偏光成分に分解し、一方の方向の偏光成分を透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向の偏光成分を吸収する機能を有した偏光子を有している。ここで説明する一具体例では、バックライト24側に配置された下偏光板26は、第2偏光成分の光を透過させ、偏光制御装置30側に配置された上偏光板28は、第1偏光成分の光を透過させる。
液晶セル27は、一対の支持板と、一対の支持板間に配置された液晶分子(液晶材料)と、を有している。液晶セル27は、一つの画素を形成する領域毎に、電界印加がなされ得るようになっている。そして、電界印加された液晶セル27の液晶の配向は変化するようになる。下偏光板26を透過した第2偏光成分の光は、一例として、電界印加されていない液晶セル27を通過する際にその振動方向を90°回転させ、電界印加されている液晶セル27を通過する際にその偏光状態を維持する。このため、液晶セル27への電界印加の有無によって、下偏光板26を透過した第2偏光成分の光が、下偏光板26の出光側に配置された上偏光板28をさらに透過するか、あるいは、上偏光板28で吸収されて遮断されるか、を制御することができる。このようにして、上偏光板28を選択的に透過した各画素21からの第1偏光成分の光によって画像が形成される。
次に、偏光制御装置30について説明する。偏光制御装置30は、基本構成として、第1電極34および第2電極36と、第1電極34および第2電極36に配置された媒質層35と、を有している。媒質層35は、一対の電極34,36間において電圧を印加されることにより、屈折率の異方性を生じさせる。図示された例では、第1電極34、媒質層35および第2電極36は、第1支持フィルム33および第2支持フィルム37の間に配置されている。第1電極34、媒質層35および第2電極36は、一対の支持フィルム33,37によって支持および保護されている。以下では、媒質層が、液晶層35として構成された例について説明する。
一対の電極34,36および液晶層35は、画像形成装置20の画像形成面20aの全領域に対面する広さを有している。図2および図3に示すように、液晶層35は、液晶分子31を含んだ層として構成されている。一対の電極34,36は、図示しない電圧印加手段に電気的に接続されている。なお、一対の電極34,36は、スペーサー(図示せず)等によって、所定の間隔に保たれている。
液晶層35に含まれる液晶分子31が、典型例としてTN型の液晶分子である場合、一対の電極34,36間に電圧を印加すると、図2に示すように、液晶分子31は配向される。この場合、画像形成装置20からの光の偏光状態は、第1偏光成分のままに維持される。一方、一対の電極34,36間に電圧が印加されていない場合、図3に示すように、液晶分子31はツイスト状に90°旋回する。この場合、画像形成装置20からの光の偏光状態は、振動方向がx軸方向からy軸方向に変換される、すなわち、第1偏光成分から第2偏光成分に変換される。
ただし、以上における画像表示ユニット15、画像形成装置20および偏光制御装置30の説明は、一具体例に過ぎず、既知の手段を用いることができる。
次に、光学シート40について説明する。図1に示すように、光学シート40は、第1層51と、第1層51に隣接して設けられた第2層52と、第2層52に隣接して設けられた光学変換層61と、を有している。
第1層51と第2層52との間の境界面は、凹凸面として形成されている。この境界面は、少なくとも第1偏光成分の光の進行方向を変化させる光学界面55をなしている。図示された例では、第1層51と第2層52との境界をなす光学界面55は、複数の単位光学界面55aを含んだ面として構成されている。図1に示すように、単位光学界面55aは、ある配列方向に沿って配列されている。各単位光学界面55aは、当該配列方向と非平行な方向に延びている。とりわけ図示された例では、単位光学界面55aはx軸方向に隙間無く配列され、各単位光学界面55aはy軸方向に直線状に延びている。一つの単位光学界面55aは、y軸方向に沿った各位置で同一の形状を有している。また、複数の単位光学界面55aは、互いに同一に構成されている。
この単位光学界面55aは、上述したように、各画素21から射出される光が予め定められた位置に向かうよう、適宜設計される。図示された例では、正面方向および単位光学界面55aの配列方向の両方に平行な断面において、単位光学界面55aは凸レンズ状の輪郭を有し、各画素21からの発散光束LF1(図2)を予め設定された位置に集光させる。複数の単位光学界面55aの集合体としての光学界面55は、レンチキュラーレンズを形成している。
ただし、図示された単位光学界面55aおよび光学界面55は、単なる例示に過ぎず、種々の変更が可能である。例えば、単位光学界面55aの断面輪郭を適宜変更することが可能である。また、複数の単位光学界面55aが互いに異なる形状を有するようにしてもよい。一例として、光学界面55が、フレネルレンズを構成するようにしてもよい。さらに、単位光学界面55aが一次元配列された細長状の要素からなる例を示したがこれに限られず、単位光学界面55aが二次元配列されるようにしてもよい。
次に、第1層51および第2層52の屈折率について説明する。第1層51は、光学異方性であり、少なくとも面内における複屈折性を有している。すなわち、第1層51のx軸方向での屈折率n1xは、第1層51のy軸方向での屈折率n1yとは異なる値となっている。加えて、ここで説明する光学シート40では、第1層51のx軸方向での屈折率n1x、第2層52のx軸方向での屈折率n2x、第1層51のy軸方向での屈折率n1y、および、第2層52のy軸方向での屈折率n2yが、次の関係を満たす。
|n1x−n2x|≠|n1y−n2y|
これにより、光学シート40は、x軸方向に振動する第1偏光成分の光とy軸方向に振動する第2偏光成分の光とに対して、異なる光学機能を発揮するようになる。より具体的に説明すると、互いに同一方向に進む第1偏光成分の光および第2偏光成分の光は、光学シート40の光学界面55を通過すると、異なる方向へ進むようになる。
とりわけここで説明する例においては、次の関係が満たされるようになっている。
|n1x−n2x|>|n1y−n2y|=0
この場合、光学シート40の光学界面55は、y軸方向に振動する第2偏光成分の光に対して、もはや屈折率差を有した光学的な界面をなさない。したがって、第1偏光成分の光は、光学シート40の光学界面55から光学機能(例えば、レンズ機能)を及ぼされるが、第2偏光成分の光は、光学シート40の光学界面55を通過する際に、その進行方向を変化させることはない。なお本明細書において、屈折率の値は、小数第3位を四捨五入して小数第2位までの数値として取り扱うこととする。
ただし、平面画像および裸眼で視認され得る立体画像を切り換え可能に表示する表示装置への適用においては、|n1y−n2y|=0とすることは実用上における必須の条件ではなく、|n1x−n2x|>|n1y−n2y|且つ|n1y−n2y|≦0.02が満たされれば十分である。この場合、第2偏光成分の光が、ゴーストやクロストークといった不具合が生じる程度に、光学シート40の光学界面55にてその進行方向を変化させることはない。
また、平面画像および裸眼で視認され得る立体画像を切り換え可能に表示する表示装置への適用においては、第2偏光成分の光に及ぼされる光学作用の程度は、|n1y−n2y|の大きさのみだけでなく、後に詳述する光学シート40の光学界面55の形状等のその他の構成からも影響を受ける。このような観点から、光学シート40のシート面へ直交する方向(すなわち、正面方向)へ進むy軸方向に振動する偏光成分(第2偏光成分)の光が、第1層51および第2層52を透過した後に、正面方向に対して2°以下の角度をなす方向へ進むように、第1層51および第2層52が構成されていてもよい。この場合、不具合、例えば平面画像を表示した際におけるゴーストの発生等による画質劣化、を及ぼし得るような光学作用が、第1層51および第2層52を透過する第2偏光成分の光に及ぼされることを効果的に防止することができる。
図4は、第1層51および第2層52の各方向での屈折率分布を示す屈折率楕円体の一例が示されている。この例では、
(n1x−n2x)>|n1y−n2y|=0
なる関係が満たされている。第1層51のx軸方向での屈折率n1xは、第1層51のy軸方向での屈折率n1yよりも大きな値となっている。また、図3に示された例において、第2層52は、光学等方性の層として形成されている。すなわち、第2層52のx軸方向での屈折率n2xは、第2層52のy軸方向での屈折率n2yと等しい。したがって、第1層51のx軸方向での屈折率n1xは、第2層51のx軸方向での屈折率n2xよりも大きな値となっている。この結果、図1に示された光学界面55は、凸レンズと同様のレンズ機能を発揮することができる。
また、図1に示された例では、第1層51の面内において屈折率が最大となる遅相軸方向が、x軸方向と一致しており、第1層51の面内において屈折率が最小となる進相軸方向が、y軸方向と一致している。且つ、第1層51の面内におけるy軸方向(進相軸方向)の屈折率n2xと第2層52の面内におけるy軸方向の屈折率n2yとを一致させるよう構成される。したがって、y軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差を0にしながら、x軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差を大きく設定することができる。なお、家庭用の表示装置への適用においては、容易に製造可能な形状で光学界面55を作製することを条件とすると、第1層51の複屈折率Δn(=n1x−n1y)が0.13以上であることが好ましい。一方、後述するように延伸によって第1層51の光学異方性を付与する場合には、延伸工程での面内均一性等を考慮して、第1層51の複屈折率Δnを0.22以下とすることが好ましい。
なお、第1層51と第2層52の屈折率は、レンズ形状があると直接測定することが難しいので、各々レンズ成型条件と同じ条件でサンプルをシート状に作成し、裏面の反射をキャンセルする為に黒テープを裏面に貼って、日本分光(株)製「V−7100 2軸偏光フィルム測定装置VAP−7070D」を用い表面反射率から算出した屈折率を値とすることができる。また、第1層51および第2層52の屈折率は、王子計測機器製「KOBRA−WR」、日本分光(株)製「エリプソメーター M150」、或いは、アッベ屈折率計(アタゴ社製 NAR−4T)を用いて測定しても良い。
次に、光学変換層(偏光制御層)61について説明する。上述したように、ここで説明する例では、画像表示ユニット15から光学シート40へ入射する光は、主として一方の直線偏光成分の光および他方の直線偏光成分の光となる。そして、光学シート40の光学変換層61は、第1層51および第2層52の観察側(すなわち、画像表示ユニット15とは反対の側)に積層され、第1層51および第2層52を通過した光の偏光状態を変化させる機能を有している。好ましくは、光学変換層61は、第1層51および第2層52を通過した光の偏光状態を乱すように機能する。
図1によく示されているように、光学変換層61は、第2層52の第1層51の反対側に積層されている。そして、光学変換層61は、表示装置10の最出光側面、すなわち表示装置10の表示面10aを形成している。
本実施の形態では、光学変換層61は、光学異方性の層として形成され、少なくとも面内における複屈折性を有している。したがって、光学変換層61は、面内において屈折率が最大となる遅相軸と、当該遅相軸に直交する方向であって面内において屈折率が最小となる進相軸方向と、を有している。そして、第1層51および第2層52を通過した光の偏光状態が光学変換層61にて変換され得るよう、光学変換層61の主軸、すなわち、光学変換層61の遅相軸および進相軸は、第1層51の主軸、すなわち、第1層51の遅相軸および進相軸と非平行となっている。なお、第1層51および第2層52を通過した光の偏光状態を光学変換層61にて乱す観点からは、光学変換層61の主軸(遅相軸および進相軸)が、第1層51の主軸(遅相軸および進相軸)に対して45°傾斜していることが好ましい。
なお、光学変換層61に、透過光の偏光状態を変化させる機能以外の機能が付与されていてもよい。一例として、外光等の反射を防止する反射防止機能(AR機能)、防眩機能(AG機能)、耐擦傷性を向上させるハードコート機能(HC機能)、帯電防止機能(AS機能層)等の一以上を、光学変換層61に付与してもよい。
また、光学変換層61の表面に、特定の機能を発揮することを期待されたフィルム層が更に積層されてもよい。フィルム層は、一例として、外光に対する反射防止機能を有した反射防止層(AR層)、防眩機能を有した防眩層(AG層)、耐擦傷性を有したハードコート層(HC層)、帯電防止機能を有した帯電防止層(AS層)等の一以上を含むように構成され得る。
このような光学シート40は、次のようにして製造され得る。まず、図9に示すように、熱可塑性樹脂を用いて樹脂フィルム71を作製する。その後、樹脂フィルム71を延伸して、延伸された樹脂フィルム71からなる第1層51を作製する。その後、第1層51上に第2層52を形成し、第2層52上に第3樹脂フィルムからなる光学変換層61を形成することにより、光学シート40が得られる。まず、図9および図10を参照して、第1層51および第2層52の積層体を作製する方法について説明する。
樹脂フィルム71は、熱可塑性樹脂を主成分として含む樹脂材料、あるいは、熱可塑性樹脂そのものを成形加工することにより、作製され得る。成形加工としては、射出成形や溶融押し出し成形を採用することができる。これらの成形加工によれば、光学界面55を形成する凹凸を有した樹脂フィルム71を作製することができる。
なお、樹脂フィルム71の成形には、型面が金型あるいは樹脂で形成された型を用いることができる。特に樹脂で形成された型を用いた場合、金属製の型面を用いた場合と比較して、加熱した熱可塑性樹脂を塗布する際、熱可塑性樹脂から型面への急速な吸熱を抑制することができる。これにより、加熱した熱可塑性樹脂が型面上を十分に延び広がり、賦型率を向上させることができる。また、作製された樹脂フィルム71の型面からの離型性が良いため、離型時における欠損等を防止することができる。型面が樹脂で形成された型としては、長尺のフィルム状の型を用いることができる。
樹脂フィルム71の延伸は、樹脂フィルム71に光学異方性を付与するための加工であるため、光学異方性を付与できれば特に限定されず、一軸延伸であっても、逐次二軸延伸であっても、同時二軸延伸であってもよい。樹脂フィルム71がポリエステル系の樹脂からなる場合には、延伸方向(延伸軸)が遅相軸と一致するようになる。したがってこのような場合には、図9に示すように、光学界面55の単位光学界面55aをなすようになる樹脂フィルム71の凸部の配列方向と平行な方向に、樹脂フィルム71を延伸することになる。
樹脂フィルム71の延伸は、樹脂フィルム71をなす熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に当該樹脂フィルム71を加熱した状態で、実施される。樹脂フィルム71が溶融押し出し成形により作製される場合、押し出し直後の高温の樹脂フィルム71を延伸すればよい。すなわち、延伸のための樹脂フィルム71の加熱処理を別途に設ける必要がない。なお、図9に示すように、樹脂フィルム71は、延伸によって形状を変化させて、第1層51を形成するようになる。したがって、上述した樹脂フィルム71の成形工程では、延伸による変形を見込んだ形状で、樹脂フィルム71を作製することになる。
次に、作製された第1層51上に樹脂を塗布し、第1層51上で当該樹脂を硬化させることにより、第1層51上に第2層52を形成する。第1層51上に形成された第2層52は、第1層51に対面する面として、第1層51の凹凸に対応した凹凸、言い換えると、第1層51の凹凸と相補的な凹凸を有するようになる。また別の方法として、第1層51上に、別途に成形された第2層52を積層するようにしてもよい。第2層52をなすようになる樹脂は、複屈折性の無い、即ち屈折率等方性(n2x=n2y)の熱可塑性樹脂でもよいし、熱硬化性樹脂でもよいし、電離放射線硬化型樹脂でもよい。第2層を構成するこれら複屈折性の無い熱可塑性樹脂等の樹脂は、通常は、未延伸状態で固化されてなる。
また、別の方法として、図10に示された製造方法によっても、第1層51および第2層52を作製することができる。
図10に示された製造方法では、まず、上述した凹凸を有する樹脂フィルム71(図9参照)と、この樹脂フィルム71の凹凸に対応した凹凸、言い換えると、樹脂フィルム71の凹凸と相補的な凹凸を有する第2樹脂フィルム72と、を準備する。次に互いの凹凸が噛み合うようにして、樹脂フィルム71および第2樹脂フィルム72を、例えば接着剤又は粘着剤等を介して、積層する。その後、積層された樹脂フィルム71および第2樹脂フィルム72を延伸することにより、樹脂フィルム71からなる第1層51と第2樹脂フィルム72からなる第2層52とから構成される積層体が得られる。
図10に示された製造方法においても、樹脂フィルム71および第2樹脂フィルム72は、図9に示された上述の製造方法と同様にして、熱可塑性樹脂を用いた成形により、作製され得る。また、図10に示された製造方法においても、樹脂フィルム71の延伸により、樹脂フィルム71に面内に複屈折性を付与する。なお、第2樹脂フィルム72も樹脂フィルム71とともに延伸されることになるが、第2樹脂フィルム72に対しては積極的に光学異方性を付与する必要はない。したがって、第2樹脂フィルム72に面内の複屈折性が生じることを防止するため、第2樹脂フィルム72を構成する分子の電気双極子モーメントの大きさは小さい方が好ましい。とりわけ、第2樹脂フィルム72を構成する分子の電気双極子モーメントの大きさが、少なくとも樹脂フィルム71を構成する分子の電気双極子モーメントの大きさよりも小さくなっていることが好ましい。なお、電気双極子モーメントの測定は、まず、横河・ヒューレットパッカード社製のプレシジョンLCRメーターHP4284AのテストフィクスチャーHP16451B電極を用いて誘電率を測定し、次に、測定された誘電率を用いて電気双極子モーメントを特定することにより、行われ得る。
樹脂フィルム71及び第2樹脂フィルム72について、構成分子の電気双極子モーメントの大きさを斯くの如く選定することにより、樹脂フィルム71及び第2樹脂フィルム72に等量の延伸がかかり、等量の分子配向が生じたとしても、各フィルムに発現する複屈折率(屈折率異方性)の程度は構成分子の電気双極子モーメントの大きさに依存する為、 樹脂フィルム71の複屈折率Δn1>第2樹脂フィルム72の複屈折率Δn2
或いは両フィルムのx及びy軸方向の各屈折率で表記すると、
n1x−n1y>n2x−n2y
とすることができる。なお、理想的にはn2x−n2y≒0となることが好ましい。
以上のようにして、熱可塑性樹脂を含む光学異方性の第1層51と、第1層51に積層され第1偏光成分の光の進行方向を変化させる光学界面55を第1層51との間に形成する第2層52と、の積層体を作製することができる。
なお、第1層51に含まれる熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。このうち、ポリエステル樹脂は、コスト及び機械的強度の面において有利である。具体的なポリエステル樹脂としては、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを例示することができる。また、第1層50をなすポリエステル樹脂は、これらの上記ポリエステル樹脂の共重合体であってもよく、上記ポリエステルを主体(例えば80モル%以上の成分)とし、少割合(例えば20モル%以下)の他の種類の樹脂とブレンドしたものであってもよい。ポリエステル樹脂として、ポリエチレンナフタレートは、大きな複屈折率を確保し得る点において好ましい。また、ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートが力学的物性や光学物性等のバランスが良いので好ましい。なお、光学シート40の安定性の観点から、第1層51をなす材料のガラス転移温度は100℃以上であることが好ましい。
次に、第3樹脂フィルムからなる光学変換層61を第2層52上に作製する方法について説明する。光学変換層61は、例えば、熱可塑性樹脂を主成分として含む樹脂材料、あるいは、熱可塑性樹脂そのものをフィルム状に押出成形して第3樹脂フィルムを作製した後、当該第3樹脂フィルムをガラス転移温度以上の温度に加熱した状態にて延伸することにより作製され得る。第3樹脂フィルムの延伸は、第3樹脂フィルムに光学異方性を付与できればよいため、1軸延伸であっても、同時二軸延伸であっても、逐次二軸延伸であってもよく、また、斜め延伸であってもよい。その後、第3樹脂フィルムからなる光学変換層61を第2層52上に例えば接着剤又は粘着剤等を介して貼り合わせる。以上のようにして光学シート40が得られる。
なお、光学変換層61に含まれる熱可塑性樹脂としては、第1層51に含まれる熱可塑性樹脂と同様に、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。このうち、ポリエステル樹脂に含まれるポリエチレンテレフタレートは、所望の性能を発揮し、実用性に優れている。
このような光学シート40を含んだ表示装置10では、次のようにして、平面画像および裸眼で観察され得る立体画像を表示することができる。まず、図3を主に参照しながら、平面画像を表示する場合について説明する。
バックライト24が、液晶表示パネル25を背面側から面状に照明する。液晶表示パネル25は、バックライト24からの光を画素21毎に選択的に透過させる。このようにして形成された平面画像光L31〜L36は、画像形成装置20の画像形成面20aから射出した状態において、画像形成装置20の下偏光板28を透過し得る第1偏光成分となっている。その後、平面画像光L31〜L36は、偏光制御装置30へと入射する。平面画像を表示する場合、偏光制御装置30の一対の電極34,36間には、電圧が印加されていない。このため、図3に示すように、液晶分子31は、90°旋回した状態となる。この結果、偏光制御装置30を透過する平面画像光L31〜L36は、その偏光状態を変換させる。この結果、平面画像光L31〜L36は、画像表示ユニット15から射出した状態において、第2偏光成分となっている。
画像表示ユニット15から射出した平面画像光L31〜L36は、光学シート40へ入射する。光学シート40は、凹凸面として形成された光学界面55を有している。この光学界面55は、光学異方性の第1層51と、第2層52との境界面として構成されている。ただし、平面画像光L31〜L36をなす第2偏光成分の振動方向であるy軸方向における第1層51の屈折率n1yと、y軸方向における第2層52の屈折率n2yとは同一に設定されている。したがって、平面画像光L31〜L36は、光学シート40の光学界面55で進行方向を曲げられることなく進む。平面画像をなす光は、その後、光学変換層61を透過し、表示装置10から出射する。この結果、観察者は、平面画像を観察することが可能となる。
なお、液晶表示パネル25を照明するバックライト24からの光は、正面方向に光軸を有するとともに(つまり正面方向に明るさのピークを有するとともに)、正面方向を中心とした或る程度の角度域内の方向に進む。したがって、各画素21を通過した光は、発散光として、或る程度の角度範囲に向けて、表示装置10の表示面10aから出射する。この結果、図3に示すように、観察者は、表示面10aに形成される同一の平面画像を或る程度の角度範囲から観察することができる。
次に、裸眼で立体的に観察される立体画像を表示する場合について説明する。立体画像を表示する場合にも、平面画像を表示する場合と同様にして、画像形成装置20から立体画像光Ll1〜Ll6,Lr1〜Lr6が射出する。この立体画像光Ll1〜Ll6,Lr1〜Lr6は、次に、偏光制御装置30へと入射する。ただし、立体画像を表示する場合には、画像表示ユニット15の画像形成装置20の各画素21が、観察者の左目または右目が位置するようになると想定された複数の位置のうちのいずれかの位置に割り振られる。そして、画像表示ユニット15は、同一の位置に割り振れた複数の画素21からの光によって一つの画像が形成されるよう、画素21毎の光の透過および遮断を制御する。
図2に示すように、立体画像を表示する場合、偏光制御装置30の一対の電極34,36間には、電圧が印加される。このため、立体画像光Ll1〜Ll6,Lr1〜Lr6は、偏光状態を第1状態に維持しながら、偏光制御装置30を透過する。
画像表示ユニット15から射出した立体画像光Ll1〜Ll6,Lr1〜Lr6は、光学シート40へ入射する。そして、立体画像光Ll1〜Ll6,Lr1〜Lr6をなす第1偏光成分の振動方向であるx軸方向における第1層51の屈折率n1xは、x軸方向における第2層52の屈折率n2xよりも大きい値となっている。これにより、光学シート40の光学界面55は、各画素21からの立体画像光Ll1〜Ll6,Lr1〜Lr6の進行方向を制御する。
上述したように各画素21からの光は、発散光束をなして、光学シート40へ入射する。光学界面55の単位光学界面55aは、レンズ機能を発揮し、各画素21からの光を当該レンズ機能における焦点となる位置に収束させる。具体的には、単位光学界面55aは、対面する位置にある画素21からの発散光束(例えば図2の光束LF1)を、当該画素21が割り振られた位置、すなわち、観察者の左目または右目が位置するようになると想定されたいずれかの位置へ向けて収束させる。このようにして各画素21からの立体画像光Ll1〜Ll6,Lr1〜Lr6は、その後光学変換層61を透過して、それぞれ、予定された位置へ進む。
観察者が予め想定された位置から表示装置10を観察すると、観察者の右目によって、当該右目の位置から視認されるべき画像が観察され、観察者の左目によって、当該左目の位置から視認されるべき画像が観察され得る。この結果、観察者は、両眼視差により、裸眼で立体的な画像を視認することができる。また、図2に示すように、観察者が予め想定された別の位置から表示装置10を観察すると、当該位置から観察されるべき画像を、裸眼で立体的に視認することができる。すなわち、観察方向を変化させると、観察者は、当該観察方向に応じて観察されるべき異なる画像を裸眼で観察することができる。すなわち、観察者は、運動視差によって、より立体感を持って画像を視認することができる。
ところで、観察者の中には、特定の目的のために偏光眼鏡を装着した状態で表示装置10を観察する者も想定され得る。一具体例として、表示装置10が屋外に設置されるような場合には、多くの観察者がサングラスを装着している可能性もある。サングラスに代表される偏光眼鏡は、互いに直交する吸収軸および透過軸を有しており、吸収軸と平行な方向に振動する直線偏光成分の光を吸収し、透過軸と平行な方向に振動する直線偏光成分の光を透過させる、といった性質を有している。広く普及した偏光眼鏡は、その吸収軸が通常の装着状態で水平方向と平行な方向に延びるようになっている。このような吸収軸の配置は、水面や地面からの反射光が、垂直方向の直線偏光成分に比べて水平方向の直線偏光成分を多く含むことに対応しており、水面または地面での反射によるぎらつきがそのままの光強度で観察されることを防止しようとしている。
そして、ここで説明した表示装置10では、立体画像を表示する場合に画像表示ユニット15から一方の直線偏光成分としての第1偏光成分の光が投射され、平面画像を表示する場合に画像表示ユニット15から他方の直線偏光成分としての第2偏光成分の光が投射される。そして、画像表示ユニット15から投射される各画像光が、偏光状態を維持したまま光学シート40を透過して表示装置10から出射したとすると、観察者が装着した偏光眼鏡の吸収軸の向きに依存して、第1偏光成分からなる画像および第2偏光成分からなる画像のいずれか一方が偏光眼鏡で吸収される。この場合、偏光眼鏡を装着した観察者は、第1偏光成分からなる画像および第2偏光成分からなる画像のいずれか一方を明るく観察することができない。とりわけ、偏光眼鏡の吸収軸の向きが、いずれかの画像をなす偏光成分の光の振動方向と平行となっている場合には、もはや観察者は、偏光眼鏡を介して、当該画像を観察することができなくなる。また、偏光眼鏡を装着した観察者が首を傾ける等した場合には、偏光眼鏡の吸収軸の向きも変化する。したがって、観察者によって観察される画像の明るさが、観察者の動作に応じて、都度変化することにもなる。
一方、本実施の形態によれば、光学シート40は、透過光の偏光状態に応じて光路を制御する複屈折レンズ(光学界面)55をなす第1層51および第2層52の観察者側に、光学変換層(偏光制御層)61を有している。光学変換層61は、第1層51および第2層52を通過した光の偏光状態を変化させる機能を有している。すなわち、光学変換層61は、第1層51および第2層52を透過した第1偏光成分からなる立体画像光の偏光状態を乱し、また、第1層51および第2層52を透過した第2偏光成分からなる平面画像光の偏光状態を乱す。
すなわち、立体画像を形成する立体画像光は、光学変換層61から出射した後、第1偏光成分以外の偏光成分の光も含むようになる。同様に、平面画像を形成する平面画像光は、光学変換層61から出射した後、第2偏光成分以外の偏光成分の光も含むようになる。したがって、観察者が、偏光眼鏡を装着した状態で表示装置10によって表示される立体画像を観察した場合、当該偏光眼鏡の吸収軸の向きに依らず、立体画像をなす光の少なくとも一部が偏光眼鏡を透過する。同様に、観察者が、偏光眼鏡を装着した状態で表示装置10によって表示される平面画像を観察した場合、当該偏光眼鏡の吸収軸の向きに依らず、平面画像をなす光の少なくとも一部が偏光眼鏡を透過する。この際、立体画像を形成する立体画像光が偏光眼鏡を透過する光量および平面画像を形成する平面画像光が偏光眼鏡を透過する光量は、光学変換層61のリタデーションの大きさや光学変換層61の光軸の設定により、調節することができる。この結果、観察者は、偏光眼鏡を装着した状態で、表示装置10によって表示される平面画像および立体画像の両方を十分な明るさで安定して観察することができる。
ところで、光学変換層61は光学異方性を有しているが、光学変換層61と、画像表示ユニット15の側から光学変換層61に隣接する層との屈折率差は、立体画像をなす画像光として画像表示ユニット15から投射される直線偏光成分の振動方向と平行な方向において、当該方向と直交する方向よりも、小さくなっていることが好ましい。図示された例では、第2層52が、画像表示ユニット15の側から光学変換層61に隣接している。そして、画像表示ユニット15から投射される立体画像を形成するための第1偏光成分の光は、x軸方向に振動している。したがって、
|n3x−n2x|<|n3y−n2y|
なる関係が満たされていることが好ましい。このような屈折率の関係が満たされる場合、表示装置10によって表示される立体画像に生じる歪みを抑制することができる。
上述したように、立体画像を形成する各画素からの第1偏光成分の光は、第1層51と第2層52との間の光学界面55でのレンズ機能により、予め設計された所定の位置へと向けられる。この立体画像光は、第1偏光成分となっている偏光状態を維持したまま、第2層52と光学変換層61との間の第2光学界面62を通過する。この際、第1偏光成分の振動方向となるx軸方向における第2光学界面62の屈折率差(|n3x−n2x|)が大きいと、立体画像光は、第2光学界面62で大きく進路を曲げてしまうことになる。すなわち、x軸方向に沿った第2光学界面62での屈折率差が大きいと、各画素21からの立体画像をなす光が、光学界面55でのレンズ機能に方向付けられた所定の位置からおおきくずれた位置に進むようになる。このため、立体画像に歪みが生じることがないよう上述した関係が満たされることが好ましい。
更に、上述の関係に加えて、|n3x−n2x|≦0.02なる関係が満たされることがより好ましく、|n3x−n2x|=0なる関係が満たされることがさらに好ましい。すなわち、次の二式が満たされることがより好ましく、
|n3x−n2x|<|n3y−n2y|
|n3x−n2x|≦0.02
次の二式が満たされることがさらにより好ましい。
|n3x−n2x|<|n3y−n2y|
|n3x−n2x|=0
この場合、第2層52と光学変換層61との間に形成される第2光学界面62が、x軸方向に振動する第1偏光成分の光に対して、屈折率差を有した光学的な界面としてほとんど機能しない。したがって、第1偏光成分の光は、この第2光学界面62を通過する際に、その進行方向をほとんど変化させることはない。これにより、第1偏光成分の光が、ゴーストといった不具合が生じる程度に、第2光学界面62にてその進行方向を変化させられることを効果的に抑制することができる。なお、通常の表示装置の用途においては、|n2x−n3x|≦0.02が満たされれば充分である。
なお、y軸方向における第2光学界面62の屈折率差(|n3y−n2y|)が大きい場合、平面画像をなす平面画像光が、第2光学界面62で大きく光路を変化させることになる。平面画像光については、第2光学界面62で或る程度光路を曲げられても、画像の歪み等は生じず、むしろ視野角の増大につながる点で好ましい。
また、本実施の形態のように、特定の偏光成分の光によって画像を形成する画像表示ユニット15に対して、光学異方性を有したフィルムを積層した場合、例えば特開2011−107198号に開示されているように、とりわけ観察者が偏光眼鏡を介して画像を観察した際に、干渉色が発生し、画像を良好に視認することが困難になるおそれがある。このような干渉色の発生を抑制する観点から、光学変換層61は、3000nm以上のリタデーションReを有していることが好ましい。また、好ましくは、光学変換層61は、30000nm以下のリタデーションReを有している。リタデーションReが30000nmを越える場合、光学変換層61の厚みが相当に厚くなってしまい、工業材料としての取扱性が低下してしまう。なお、光学変換層61の屈折率は、王子計測機器製「KOBRA−WR」や日本分光(株)製「エリプソメーター M150」を用いて測定された値とすることができる。また、二枚の偏光板を用いて、ポリエステル基材の配向軸方向(主軸の方向)を求め、配向軸方向に対して直交する二つの軸の屈折率(nx、ny)を、アッベ屈折率計(アタゴ社製 NAR−4T)によって求める。ここで、より大きい屈折率を示す軸を遅相軸と定義する。ポリエステル基材厚みd(nm)は、電気マイクロメータ(アンリツ社製)を用いて測定し、単位をnmに換算する。屈折率差(nx−ny)と、フィルムの厚みd(nm)との積より、リタデーションを計算することもできる。
以上のように本実施の形態によれば、第1偏光成分の光または第2偏光成分の光が、第1層51および第2層52を通過した後、光学変換層61により偏光状態を変化させられる。具体的には、光学変換層61が光学異方性の層として形成されているため、第1層51および第2層52を通過した光は、当該光学変換層61を通過する際に乱れが生じ、振動方向が分散されるようになる。このため、観察者が偏光眼鏡を装着した状態でも、偏光眼鏡によりこれらの光が著しく吸収されることはなく、当該光により形成される画像を安定して視認することができる。
また、本実施の形態によれば、光学シート40の面内複屈折率を有した第1層51は、延伸された熱可塑性樹脂によって光学異方性を発現している。したがって、第1層51は、100°以上のガラス転移温度を有することも十分に可能である。このため、本実施の形態による光学シート40、並びに、この光学シート40を含んだ表示装置10は、優れた安定性を呈するようになる。一例として、本実施の形態による光学シート40は、150℃で30分加熱しJISC2151の規定にしたがって測定された寸法安定性を飛躍的に改善することができる。具体的には、本実施の形態によれば、150℃で30分加熱しJISC2151の規定にしたがって測定された光学シート40の寸法安定性を2%以下に抑えることができる。結果として、家庭用テレビ受像器等の一般用途の範囲内での使用環境において、大きな制約を受けることなく、本実施の形態による光学シート40を使用することができ、且つ、本実施の形態による光学シート40が、期待された光学機能を発現することができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
光学シート40は、例示に過ぎず適宜変更することができる。また、第1層51および第2層52よりも偏光制御装置30側に、何らかの機能を発揮することが期待されたフィルム層が設けられてもよい。さらに、上述したように、光学界面55および単位光学界面55aの構成は、期待される光学機能に応じて適宜変更することができる。さらに、光学異方性の第1層51が、第2層52よりも観察側に配置されていてもよい。
上述した実施の形態において、光学変換層61が光学異方性の層として形成された例を示したがこのような例に限定されない。一例として、光学変換層61が、λ/4位相差フィルムであってもよい。この場合、第1層51および第2層52を通過した光が、光学変換層61により、円偏光または楕円偏光成分の光に変換させられる。このような形態によっても、平面画像および立体画像を形成する光の少なくとも一部分が偏光眼鏡を透過し得る。このため、観察者が偏光眼鏡を装着した状態でも、平面画像および立体画像の両方を安定して観察することができる。なお、λ/4位相差フィルムは、例えば環状ポリオレフィン(COP)やポリカーボネイト(PC)を材料としてそれ自体既知の方法で作製され得る。
また、光学変換層61が、光拡散機能を有する層として形成されていてもよい。この場合、第1層51および第2層52を通過した光が、光学変換層61において拡散されると共に、その偏光状態を乱される。これにより、平面画像および立体画像を形成する光の少なくとも一部分が偏光眼鏡を透過し得る。このため、観察者が偏光眼鏡を装着した状態でも、平面画像および立体画像の両方を安定して観察することができる。なお、光拡散機能は、一例として、光学変換層61を主に構成する材料とは異なる屈折率を有した材料や光に対して反射作用を及ぼし得る材料からなる光拡散成分(光拡散剤)を光学変換層61内に分散させることにより、付与され得る。このような光拡散成分としては、例えば、平均粒径が0.5〜100μm程度であるシリカ(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂等の透明物質からなる粒子を用いることができる。また、光拡散成分は単なる気泡であってもよい。他の例として、コーティングによって成膜された光拡散層から、光学変換層61が形成されるようにしてもよい。なお、光拡散機能は、第1層51および第2層52を通過した光が拡散反射されることによりゴーストやクロストークといった不具合が生じないように光学変換層61に適宜付与される。
あるいは、他の例として、光学変換層61が、第1層51および第2層52を通過した光の偏光状態を無偏光状態に変化させる偏光解消手段であってもよい。具体的には、偏光解消手段として、それ自体既知のデポラライザを用いることができる。このような形態によれば、画像を形成する光の振動方向が均等に分散されるため、偏光眼鏡によりこれらの光が著しく吸収されることはない。このため、観察者が偏光眼鏡を装着した状態でも、当該光により形成される画像を安定して視認することができる。
また、上述した実施の形態において、第1層51のx軸方向の屈折率n1x、第1層51のy軸方向の屈折率n1y、第2層52のx軸方向の屈折率n2xおよび第2層51のy軸方向の屈折率n2yの関係を説明したが、上述した屈折率n1x,n1y,n2x,n2yの関係は例示に過ぎない。
例えば、上述した実施の形態において、第1層51のx軸方向の屈折率n1xが第2層52のx軸方向の屈折率n2xよりも大きくなっている例を示したがこれに限られず、第1層51のx軸方向の屈折率n1xが第2層52のx軸方向の屈折率n2xよりも小さくなっていてもよい。一例としての図5に示された例においては、次の関係が満たされる。
(n2x−n1x)>|n1y−n2y|=0
図5の関係が成り立つ場合、例えば、光学界面55の単位光学界面55aを凹レンズとして構成することにより、上述した実施の形態の光学シート40と概ね同様の光学機能を得ることが可能となる。なお、既に説明したように、図5に示された屈折率の関係に代えて、次の二条件が満たされるようにしてもよい。
(n2x−n1x)>|n1y−n2y|
|n1y−n2y|≦0.02
さらに、(n2x−n1x)>|n1y−n2y|が満たされるとともに、正面方向へ進む第2偏光成分の光が、第1層51および第2層52を透過した後に、正面方向に対して2°以下の角度をなす方向へ進むように、第1層51および第2層52が構成されてもよい。
また、上述した実施の形態においては、x軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差の大きさ(|n1x−n2x|)がy軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差の大きさ(|n1y−n2y|)よりも大きくなっている例を示したが、上述した例に代えて、x軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差の大きさがy軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差の大きさよりも小さくなっていてもよい。
一例として、次の関係が満たされるようにしてもよい。
|n1y−n2y|>|n1x−n2x|=0
この場合、y軸方向に振動する第2偏光成分の光の進行方向が、光学界面55によって制御される。その一方で、x軸方向に振動する第1偏光成分の光は、進行方向を維持して光学界面55を通過する。この例では、画像表示ユニット15が、例えば偏光制御装置30の切り換えにより、立体画像を表示するための光を第2偏光成分の光として射出し、平面画像を表示するための光を第1偏光成分の光として射出するようにすればよい。このような例によっても、上述した実施の形態と同様の作用効果を期待することができる。また、この例では、図6に示すように、第1層51のy軸方向の屈折率n1yが第2層52のy軸方向の屈折率n2yよりも大きくなり、次の関係が満たされるようにしてもよい。
(n1y−n2y)>|n1x−n2x|=0
あるいは、図7に示すように、第1層51のy軸方向の屈折率n1yが第2層52のy軸方向の屈折率n2yよりも小さくなり、次の関係が満たされるようにしてもよい。
(n2y−n1y)>|n1x−n2x|=0
なお、既に説明したように、図6に示された屈折率の関係に代えて、次の二条件が満たされるようにしてもよい。
(n1y−n2y)>|n1x−n2x|
|n1x−n2x|≦0.02
さらに、(n1y−n2y)>|n1x−n2x|が満たされるとともに、光学シート40のシート面へ直交する方向(すなわち、正面方向)へ進むx軸方向に振動する偏光成分(第1偏光成分)の光が、第1層51および第2層52を透過した後に、正面方向に対して2°以下の角度をなす方向へ進むように、第1層51および第2層52が構成されていてもよい。
同様に、図7に示された屈折率の関係に代えて、次の二条件が満たされるようにしてもよい。
(n2y−n1y)>|n1x−n2x|
|n1x−n2x|≦0.02
さらに、(n2y−n1y)>|n1x−n2x|が満たされるとともに、正面方向へ進む第1偏光成分の光が、第1層51および第2層52を透過した後に、正面方向に対して2°以下の角度をなす方向へ進むように、第1層51および第2層52が構成されていてもよい。
さらに、上述した実施の形態では、第1層51のみが光学異方性であり、第2層51は光学等方性である例を説明したが、第1層51および第2層52の両方とも光学異方性であるようにしてもよい。一例としての図8に示された例では、第1層51のx軸方向の屈折率n1x、第1層51のy軸方向の屈折率n1y、第2層52のx軸方向の屈折率n2xおよび第2層51のy軸方向の屈折率n2yが、次の関係を満たすようになっている。
(n1x−n2x)>|n1y−n2y|=0
n1x>n1y
n2x<n2y
図8に示された例によれば、y軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差を小さく、典型的には0に保ちながら、x軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差を大きくすることができる。これにより、光学シート40の光学界面55は、x軸方向に振動する偏光成分の光に対してのみ、強い光学機能を発揮することができる。なお、図8に示された例は、一例として、図10を参照しながら説明した製造方法により作製され得る。この際、延伸方向と遅相軸方向とが一致するようになる材料(例えばポリエチレンナフタレート樹脂)を用いて樹脂フィルム71を作製し、延伸方向と進相軸方向とが一致するようになる材料、例えば(スチレン系樹脂)を用いて第2樹脂フィルム72を作製すればよい。
なお、既に説明したように、図8に示された屈折率の関係に代えて、次の四条件が満たされるようにしてもよい。
(n1x−n2x)>|n1y−n2y|
|n1y−n2y|≦0.02
n1x>n1y
n2x<n2y
さらに、(n1x−n2x)>|n1y−n2y|、n1x>n1yおよびn2x<n2yが満たされるとともに、光学シート40のシート面へ直交する方向(すなわち、正面方向)へ進むy軸方向に振動する偏光成分(第2偏光成分)の光が、第1層51および第2層52を透過した後に、正面方向に対して2°以下の角度をなす方向へ進むように、第1層51および第2層52が構成されていてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、x軸方向およびy軸方向のいずれか一方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差が0となる例を説明した。しかしながら、x軸方向およびy軸方向のいずれの方向においても第1層51と第2層52との間での屈折率差が0とならないようにしてもよい。この例においても、光学界面55及び単位光学界面55aの構成を適宜設計することにより、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、上述した実施の形態において、光学変換層61のx軸方向の屈折率n3xおよび光学変換層61のy軸方向の屈折率n3yの関係を説明したが、上述した屈折率n3x,n3yの関係は例示に過ぎない。当然に、既に説明した屈折率n1x,n1y,n2x,n2yの関係の変形例に応じて、屈折率n3x,n3yが適宜決定され得る。
さらに、上述した実施の形態において、第1層51の面内における主軸(遅相軸および進相軸)が、立体画像を形成する光および平面画像を形成する光の振動方向と一致している例を示したが、一致していなくてもよい。この例においても、各屈折率n1x,n1y,n2x,n2yの大きさを適宜調節することにより、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
さらに、上述した実施の形態およびその変形例において、熱可塑性樹脂を含む樹脂フィルムを延伸することによって、光学シート40の第1層51および第2層52に光学異方性、言い換えると面内の複屈折性を付与する例を示した。しかしながら、光学シート40の第1層51および第2層52が、液晶(液晶分子、液晶材料)を含有する層として形成され、液晶の配向によって、光学異方性を付与されるようにしてもよい。このような光学シート40の第1層51または第2層52は、典型的には、ラビング等の配向処理をなされた基材上で、液晶(液晶分子、液晶材料)を含有する紫外線硬化型樹脂を硬化させることによって、作製され得る。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
まず、次に説明するようにして、光学変換層A〜Eを作製した。
(光学変換層Aの作製)
ビスフェノール成分としてビスフェノールAからなるポリカーボネイト(帝人化成社製 C−1400)を、塩化メチレンを溶剤として、固形分濃度が15%になるように溶解後、ガラス上に流延し、乾燥させた。得られたフィルムを160℃で1.15倍に延伸し、光学変換層Aを得た。光学変換層Aのリタデーション=140nm、膜厚=55μmであった。
(光学変換層Bの作製)
シクロオレフィンポリマーを用いた光学変換層Bして、日本ゼオン社製ゼオノアを用意した。光学変換層Bのリタデーション=140nm、膜厚=50μmであった。
(光学変換層Cの作製)
ポリエチレンテレフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置にて、120℃で1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.0倍に延伸した後、その延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.2倍にて延伸を行い、リタデーション=10000nm、膜厚=100μm光学変換層Cを得た。
(光学変換層Dの作製)
光学変換層Cの延伸倍率を変更し、リタデーション=3800nm、膜厚38μmの光学変換層Dを得た。
(光学変換層Eの作製)
光学変換層Cの延伸倍率を変更し、リタデーション=2400nm、膜厚24μmの光学変換層Eを得た。
以上のようにして得られた光学変換層A〜Eをそれぞれ用いて、実施例1〜5に係る光学シート(複屈折レンズシート)を作製した。実施例1〜5に係る光学シートは、上述の実施の形態で説明した光学シートと同様に構成した。また、光学変換層が設けられていない点においてのみ上述の実施の形態で説明した光学シートと異なる比較例に係る光学シート(複屈折レンズシート)を作製した。すなわち、比較例に係る光学シートは、光学異方性の第1層と光学等方性の第2層とからなるようにした。実施例1〜5に係る光学シートおよび比較例に係る光学シートの間で、光学変換層以外の構成は同一とした。
得られた各光学シート(複屈折レンズ)を用いて、上述の実施の形態で説明した表示装置を作製した。複屈折レンズ以外の表示装置の構成要素は、裸眼3Dに対応している東芝製DynabookT851/D8EBを用いた。より具体的には、DynabookT851/D8EBの画像表示ユニットのガラス基材上の最表面に設置されていた複屈折レンズを、ガラス基材を残して剥離し、その代わりに、実施例1〜5又は比較例で得られた光学シート(複屈折レンズシート)を厚みが合うようにして最表面に光学透明粘着を介して設置した。
(視認性評価)
得られた各表示装置で立体画像を表示した際に、偏光眼鏡であるサングラスを装着した観察者がさまざまな角度から当該立体画像を視認できるかの評価を行った。評価基準は以下のように設定し、評価結果を表1の「視認性」の欄に示す。
○:どのような位置、角度でも視認できる。
×:視認できない位置、角度がある。
(色味変化評価)
得られた各表示装置の表示面に試験用偏光板を配置し、暗所に配置された表示装置で全面白を表示した際の色味を評価した。より具体的には、試験用偏光板の吸収軸と、表示装置の最観察者側に配置された偏光板の吸収軸との角度が0°(パラレルニコル)となる時と、90°(クロスニコル)となる時の正面色味を、輝度計BM−5(トプコン社製)にて測定し、色差Δu’v’を算出した。同時に、10人で観察を行い、下記の基準に従い、評価した。最多数の評価を観察結果として、表1の「色味」の欄に示す。
◎:パラレルニコル時とクロスニコル時の色差がない。
○:パラレルニコル時とクロスニコル時の色差が少しあるが、実使用上問題ない。
×:パラレルニコル時とクロスニコル時の色差がある。