以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜図6は、本発明の一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1は、表示装置を示す斜視図である。図2〜4は、それぞれ、立体画像または平面画像を表示する際の表示装置の作用を説明するための図である。図5および図6は、光学シートの第1層および第2層の屈折率の関係を説明するための図である。
本実施の形態における表示装置10は、平面画像および裸眼で視認され得る立体画像を切り換え可能に表示することができる。図1に示すように、表示装置10は、画像表示ユニット15と、画像表示ユニット15に対向して配置された光学シート40と、を有している。画像表示ユニット15は、立体画像を表示するための一方の直線偏光成分の光と、平面画像を表示するための他方の直線偏光成分の光と、を射出するように構成されている。光学シート40は、光の偏光状態に応じて当該光の進行方向を制御するようになっている。より具体的には、光学シート40は、立体画像を表示するための一方の直線偏光成分の光の進行方向を制御し、一方の直線偏光成分の振動方向と直交する方向に振動する他方の直線偏光成分の光の進行方向を維持する。
ここで、平面画像とは、表示面10a上に二次元的に観察される画像であり、一方、立体画像とは、表示面10aとは異なる位置にも観察される奥行きを持った画像である。そして、ここで説明する表示装置10では、両眼視差と運動視差とを利用して立体画像を表示することができるようになっている。図2に示すように、立体画像を表示する場合、画像表示ユニット15の画像形成装置20の各画素21が、観察者の左目または右目が位置するようになると想定された複数の位置に割り振られる。同一の位置に割り振られた複数の画素21が、当該割り振られた位置で観察されるべき画像を形成する。一方、光学シート40は、各画素21から射出される光が、観察者の左目または右目が位置するようになると想定された複数の位置のうちの当該画素21が割り振られた位置に向かうよう、光路を制御する。この結果、観察者の右目および左目には異なる画像が観察され、観察者は画像を立体的に認識する。また、観察方向を変化させると、観察位置に応じた立体画像を観察することができる。
以下、各構成要素についてさらに詳述する。なお、以下の説明においては、立体画像を形成する一方の直線偏光成分を、光学シート40のシート面と平行なx軸方向(図1参照)に振動する第1偏光成分とする。平面画像を形成する他方の直線偏光成分を、x軸方向と直交し且つ光学シート40のシート面と平行なy軸方向(図1参照)に振動する第2偏光成分とする。
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「フィルム」はシートや板と呼ばれ得るような部材も含む概念であり、したがって、「光学シート」は、「光学フィルム」や「光学板」と呼ばれる部材と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「シート面(フィルム面、板面、パネル面)」とは、対象となるシート状(フィルム状、板状、パネル状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(フィルム状部材、板状部材、パネル状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。本実施の形態においては、画像形成装置20の画像形成面20a、液晶表示パネル25のパネル面、偏光制御装置30のパネル面、光学シート40のシート面、および、表示装置10の表示面10aは平行となっている。また、正面方向とは、光学シート40のシート面への法線方向のことを指す。
さらに、本件明細書において用いる形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「平行」、「直交」等の用語は、厳密な意味に縛られることなく、同様の光学的機能を期待し得る程度の誤差範囲を含めて解釈することとする。
まず、画像表示ユニット15は、画像形成装置20と、画像形成装置20からの光を透過させる偏光制御装置30と、を有している。偏光制御装置30は、画像形成装置20と光学シート40との間に配置されている。以下では、画像形成装置20が、第1偏光成分の光によって画像を形成する例について説明する。この例では、偏光制御装置30は、画像形成装置20から投射された光の偏光状態を、立体画像を表示する場合に第1偏光成分に維持し、平面画像を表示する場合に第2偏光状態に変換する。ただし、この例に限られず、画像形成装置20が第2偏光成分の光を射出し、偏光制御装置30が、立体画像を表示する場合に画像形成装置20から投射された光の偏光状態を第1偏光成分に変換し且つ平面画像を表示する場合に第2偏光状態に維持するようにしてもよい。
図1に示すように、画像形成装置20は、画素21をなす開口領域を画成するように構成された隔壁22を有している。隔壁22は、画像形成面20aと平行な面内に配列されている。隔壁22は、マトリクス状に構成されている。画素21は、第1配列方向da1に一定ピッチで配列されるとともに、第1配列方向da1と非平行な第2配列方向da2にも一定ピッチで配列されている。図示された例において、第1配列方向da1は、第2配列方向da2と直交している。また、第1配列方向da1および第2配列方向da2は、それぞれ、立体画像をなす第1偏光成分の振動方向であるx軸方向および平面画像をなす第2偏光成分の振動方向であるy軸方向のいずれとも非平行となっている。
図示された例において、画像形成装置20は、液晶表示装置として形成されている。すなわち、画像形成装置20は、液晶表示パネル25と、液晶表示パネル25の背面に配置されたバックライト24と、を有している。バックライト24は、エッジライト型や直下型等の既知の構成を採用して形成され得る。
一方、液晶表示パネル25は、一対の偏光板26,28と、一対の偏光板26,28間に配置された液晶セル27と、を有している。偏光板26,28は、互いに直交する透過軸および吸収軸AD1,AD2を画成し、吸収軸AD1,AD2と平行な方向に振動する直線偏光成分の光を吸収し、透過軸と平行な方向に振動する直線偏光成分の光を透過させる、といった性質を有している。ここで説明する一具体例では、バックライト24側に配置された下偏光板26は、x軸方向と平行な方向に吸収軸AD1を画成するともにy軸方向と平行な方向に透過軸を画成し、結果として、第2偏光成分の光を透過させる。一方、偏光制御装置30側に配置された上偏光板28は、y軸方向と平行な方向に吸収軸AD2を画成するとともにx軸方向と平行な方向に透過軸を画成し、結果として、第1偏光成分の光を透過させる。
液晶セル27は、一対の支持板と、一対の支持板間に配置された液晶分子(液晶材料)と、を有している。液晶セル27は、一つの画素を形成する領域毎に、電界印加がなされ得るようになっている。そして、電界印加された液晶セル27の液晶の配向は変化するようになる。下偏光板26を透過した第2偏光成分の光は、一例として、電界印加されていない液晶セル27を通過する際にその振動方向を90°回転させ、電界印加されている液晶セル27を通過する際にその偏光状態を維持する。このため、液晶セル27への電界印加の有無によって、下偏光板26を透過した第2偏光成分の光が、下偏光板26の出光側に配置された上偏光板28をさらに透過するか、あるいは、上偏光板28で吸収されて遮断されるか、を制御することができる。このようにして、上偏光板28を選択的に透過した各画素21からの第1偏光成分の光によって画像が形成される。
次に、偏光制御装置30について説明する。偏光制御装置30は、基本構成として、第1電極34および第2電極36と、第1電極34および第2電極36に配置された媒質層35と、を有している。媒質層35は、一対の電極34,36間において電圧を印加されることにより、屈折率の異方性を生じさせる。図示された例では、第1電極34、媒質層35および第2電極36は、第1支持フィルム33および第2支持フィルム37の間に配置されている。第1電極34、媒質層35および第2電極36は、一対の支持フィルム33,37によって支持および保護されている。以下では、媒質層が、液晶層35として構成された例について説明する。
一対の電極34,36および液晶層35は、画像形成装置20の画像形成面20aの全領域に対面する広さを有している。図2および図3に示すように、液晶層35は、液晶分子31を含んだ層として構成されている。一対の電極34,36は、図示しない電圧印加手段に電気的に接続されている。なお、一対の電極34,36は、スペーサー(図示せず)等によって、所定の間隔に保たれている。
液晶層35に含まれる液晶分子31が、典型例としてTN型の液晶分子である場合、一対の電極34,36間に電圧を印加すると、図2に示すように、液晶分子31は配向される。この場合、画像形成装置20からの光の偏光状態は、第1偏光成分のままに維持される。一方、一対の電極34,36間に電圧が印加されていない場合、図3に示すように、液晶分子31はツイスト状に90°旋回する。この場合、画像形成装置20からの光の偏光状態は、振動方向がx軸方向からy軸方向に変換される、すなわち、第1偏光成分から第2偏光成分に変換される。
ただし、以上における画像表示ユニット15、画像形成装置20および偏光制御装置30の説明は、一具体例に過ぎず、既知の手段を用いることができる。例えば、画像形成装置20からの光の振動方向を45°旋回させて第1の偏光成分の光を生成し、画像形成装置20からの光の振動方向を−45°旋回させて第2の偏光成分の光を生成するようにしてもよい。
次に、光学シート40について説明する。図1に示すように、光学シート40は、第1層51と、第1層51に隣接して設けられた第2層52と、を有している。また、図示された例では、光学シート40は、第2層52上に設けられたフィルム層43を、さらに有している。
フィルム層43は、単一の層、または、複数の積層された層として形成される。フィルム層43は、特定の機能を発揮することを期待された層であって、表示装置10の最出光側面、すなわち表示装置10の表示面10aを形成している。フィルム層43は、一例として、反射防止機能を有した反射防止層(AR層)、防眩機能を有した防眩層(AG層)、耐擦傷性を有したハードコート層(HC層)、帯電防止機能を有した帯電防止層(AS層)等の一以上を含むように構成され得る。
第1層51と第2層52との間の境界面は、凹凸面として形成されている。この境界面は、少なくとも第1偏光成分の光の進行方向を変化させる光学界面55をなしている。図示された例では、第1層51と第2層52との境界をなす光学界面55は、複数の単位光学界面55aを含んだ面として構成されている。図1に示すように、単位光学界面55aは、ある配列方向に沿って配列されている。各単位光学界面55aは、当該配列方向と非平行な方向に延びている。図1および図4に示すように、単位光学界面55aの長手方向ldは、画像表示ユニット15の画像形成装置20によって画成された画素21の第1配列方向da1および第2配列方向da2の両方と非平行となっている。
とりわけ図示された例では、各単位光学界面55aは直線状に延び、複数の単位光学界面55aは、図4に示すように、その長手方向ldが互いに平行となるように、配列されている。単位光学界面55aの長手方向ldの直交する断面における単位光学界面55aの断面形状は、一つの単位光学界面55a内において、その長手方向ldに沿った各位置で同一の形状を有している。また、複数の単位光学界面55aは、互いに同一に構成されている。
ここで本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、表示装置10の表示面10aへの法線方向からの観察において、各単位光学界面55aの長手方向ldと、画素21の第2配列方向da2と、によってなされる角度θx(図4参照)が、次の式(x)または式(y)を満たすことが、モワレが無く、且つ水平解像度の劣化が少ない、視認されやすい立体表示を可能とする上で有効であることが確認された。
80°>(θx)>50° ・・・式(x)
130°>(θx)>100° ・・・式(y)
この単位光学界面55aは、上述したように、各画素21から射出される光が予め定められた位置に向かうよう、適宜設計される。図示された例では、正面方向および単位光学界面55aの配列方向の両方に平行な断面において、単位光学界面55aは凸レンズ状の輪郭を有し、各画素21からの発散光束LF1(図2)を予め設定された位置に集光させる。複数の単位光学界面55aの集合体としての光学界面55は、レンチキュラーレンズを形成している。
ただし、図示された単位光学界面55aおよび光学界面55は、単なる例示に過ぎず、種々の変更が可能である。例えば、単位光学界面55aの断面輪郭を適宜変更することが可能である。一例として、単位光学界面55aが、フレネルレンズを構成するようにしてもよい。また、複数の単位光学界面55aが互いに異なる形状を有するようにしてもよい。
次に、第1層51および第2層52の屈折率について説明する。第1層51は、光学異方性であり、少なくとも面内における複屈折性を有している。第1層51のx軸方向での屈折率n1xは、第1層51のy軸方向での屈折率n1yとは異なる値となっている。加えて、ここで説明する光学シート40では、第1層51のx軸方向での屈折率n1x、第2層52のx軸方向での屈折率n2x、第1層51のy軸方向での屈折率n1y、および、第2層52のy軸方向での屈折率n2yが、次の関係を満たす。
|n1x−n2x|≠|n1y−n2y|
これにより、光学シート40は、x軸方向に振動する第1偏光成分の光とy軸方向に振動する第2偏光成分の光とに対して、異なる光学機能を発揮するようになる。より具体的に説明すると、互いに同一方向に進む第1偏光成分の光および第2偏光成分の光は、光学シート40の光学界面55を通過すると、異なる方向へ進むようになる。
とりわけここで説明する例においては、次の関係が満たされるようになっている。
|n1x−n2x|>|n1y−n2y|=0
この場合、光学シート40の光学界面55は、y軸方向に振動する第2偏光成分の光に対して、もはや屈折率差を有した光学的な界面をなさない。したがって、第1偏光成分の光は、光学シート40の光学界面55から光学機能(例えば、レンズ機能)を及ぼされるが、第2偏光成分の光は、光学シート40の光学界面55を通過する際に、その進行方向を変化させることはない。なお本明細書において、屈折率の値は、小数第3位を四捨五入して小数第2位までの数値として取り扱うこととする。
ただし、平面画像および裸眼で視認され得る立体画像を切り換え可能に表示する表示装置への適用においては、|n1y−n2y|=0とすることは実用上における必須の条件ではなく、
|n1x−n2x|>|n1y−n2y|且つ|n1y−n2y|≦0.02
が満たされれば十分である。この場合、第2偏光成分の光が、ゴーストやクロストークといった不具合が生じる程度に、光学シート40の光学界面55にてその進行方向を変化させることはない。
また、平面画像および裸眼で視認され得る立体画像を切り換え可能に表示する表示装置への適用においては、第2偏光成分の光に及ぼされる光学作用の程度は、|n1y−n2y|の大きさのみだけでなく、後に詳述する光学シート40の光学界面55の形状等のその他の構成からも影響を受ける。このような観点から、光学シート40のシート面へ直交する方向(すなわち、正面方向)へ進むy軸方向に振動する直線偏光成分(第2偏光成分)の光が、光学シート40を透過した後に、正面方向に対して2°以下の角度をなす方向へ進むように、光学シート40が構成されていてもよい。この場合、不具合、例えば平面画像を表示した際におけるゴーストの発生等による画質劣化、を及ぼし得るような光学作用が、光学シート40を透過する第2偏光成分の光に及ぼされることを効果的に防止することができる。
図5は、第1層51および第2層52の各方向での屈折率分布を示す屈折率楕円体の一例が示されている。この例では、
(n1x−n2x)>|n1y−n2y|=0
なる関係が満たされている。第1層51のx軸方向での屈折率n1xは、第1層51のy軸方向での屈折率n1yよりも大きな値となっている。また、図5に示された例において、第2層52は、光学等方性の層として形成されている。すなわち、第2層52のx軸方向での屈折率n2xは、第2層52のy軸方向での屈折率n2yと等しい。したがって、第1層51のx軸方向での屈折率n1xは、第2層51のx軸方向での屈折率n2xよりも大きな値となっている。この結果、図1に示された光学界面55は、凸レンズと同様のレンズ機能を発揮することができる。
ところで、図5に示された例では、第1層51の面内において屈折率が最大となる遅相軸SDの方向が、x軸方向と一致しており、第1層51の面内において屈折率が最小となる進相軸の方向が、y軸方向と一致している。且つ、第1層51の面内におけるy軸方向(進相軸方向)の屈折率n2xと第2層52の面内におけるy軸方向の屈折率n2yとを一致させるよう構成されている。したがって、y軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差を0にしながら、x軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差を大きく設定することができる。なお、家庭用の表示装置への適用においては、容易に製造可能な形状で光学界面55を作製することを条件とすると、第1層51の複屈折率Δn(=n1x−n1y)が0.13以上であることが好ましい。一方、後述するように延伸によって第1層51の光学異方性を付与する場合には、延伸工程での面内均一性等を考慮して、第1層51の複屈折率Δnを0.22以下とすることが好ましい。
また、図1に示された例では、第1層51の遅相軸方向SDが、光学シート40の単位光学界面55aの長手方向ldと平行になっている。後述するように延伸によって第1層51の光学異方性を付与する場合には、単位光学界面55aの長手方向ldに沿った断面形状の変化を抑制する上で有利である。この結果、光学シート40の光学界面55aが、第1偏光成分の光に対して、所望の光学機能を安定して発揮することが可能となる。ただし、第1層51の遅相軸方向SDが単位光学界面55aの長手方向ldと平行となることは必須ではなく第1層51の遅相軸方向SDが単位光学界面55aの長手方向ldと非平行となっていてもよい。
また、後に詳述するように、第1層51の遅相軸SDが、画像表示ユニット15から投射される第1の偏光成分の光の振動方向と、平行または直交となっていることが、立体表示において非常に好ましい。すなわち、ここで例示した透過光の振動方向を維持または90°旋回させる機能を有した偏光制御装置30との組み合わせにおいては、第1層51の遅相軸SDが、画像表示ユニット15に含まれた偏光板26,28のうちの最も観察者側に配置された最観察者側偏光板28の吸収軸AD2と、平行または直交となっていることが、立体表示において非常に好ましい。ただし、第1層51の遅相軸SDが、第1の偏光成分の光の振動方向と、平行または直交となっていることは必須ではなく、図6に示すように、第1層51の遅相軸SDが、第1の偏光成分の光の振動方向や画像表示ユニット15に含まれた偏光板26,28のうちの最も観察者側に配置された最観察者側偏光板28の吸収軸AD2に対して傾斜していてもよい。
図6は、光学シート40に含まれる第1層51の遅相軸方向SDと、画像表示ユニット15に含まれた偏光板26,28のうちの最も観察者側に配置された最観察者側偏光板28の吸収軸AD2と、の関係を、表示装置10の表示面10aへの法線方向からの視野にて、示している。なお、ここで説明は、上述した機能を有する偏光制御装置30を用いた例についてであり、最観察者側偏光板28の吸収軸AD2は、第1の偏光成分の光の振動方向と直交し、第2の偏光成分の光の振動方向と平行となる。図6に示された例において、第1層51の面内における屈折率が最も大きくなる遅相軸方向SDは、第1偏光成分の振動方向であるx軸方向から傾斜し、第1層51の面内における屈折率が最も小さくなる進相軸方向FDは、第2偏光成分の振動方向であるy軸方向から傾斜している。したがって、x軸方向における第1層51の面内の屈折率n1xは、遅相軸方向SDにおける第1層51の屈折率na1よりも小さくなっている。また、y軸方向における第1層51の面内の屈折率n1yは、進相軸方向FDにおける第1層51の屈折率nb1よりも大きくなっている。
本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、表示装置10の表示面10aへの法線方向からの観察において、第1層51の遅相軸SDと、第1の偏光成分の光の振動方向、この例では画像表示ユニット15に含まれた偏光板26,28のうちの最も観察者側に配置された最観察者側偏光板28の吸収軸AD2と、によってなされる角度θa(図6参照)が、次の式(a)または式(b)を満たすことが、視認されやすい立体表示を可能とする上で有効であることが確認された。
−10°<(θa)<10° ・・・式(a)
80°<(θa)<100° ・・・式(b)
さらに、本件発明者らの確認では、表示面10aへの法線方向からの観察において第1層51の第1の偏光成分の光の振動方向(遅相軸SDと最観察者側偏光板28の吸収軸AD2に直交する方向)とによってなされる角度θaが、次の式(c)または式(d)を満たす場合、テレビ受像機としての表示装置10によって表示される画像を通常の注意力で観察する際に、映像を十分に立体的に観察することが可能となった。
−5°<(θa)<5° ・・・式(c)
85°<(θa)<95° ・・・式(d)
なお、第1層51と第2層52の屈折率は、レンズ形状があると直接測定することが難しいので、各々レンズ成型条件と同じ条件でサンプルをシート状に作成し、裏面の反射をキャンセルする為に黒テープを裏面に貼って、日本分光(株)製「V−7100 2軸偏光フィルム測定装置VAP−7070D」を用い表面反射率から算出した屈折率を値とすることができる。また、第1層51および第2層52の屈折率は、王子計測機器製「KOBRA−WR」、日本分光(株)製「エリプソメーター M150」、或いは、アッベ屈折率計(アタゴ社製 NAR−4T)を用いて測定された値とすることができる。
このような光学シート40は、次のようにして製造され得る。まず、図11に示すように、熱可塑性樹脂を用いて樹脂フィルム71を作製する。その後、樹脂フィルム71を延伸して、延伸された樹脂フィルム71からなる第1層51を作製する。その後、第1層51上に第2層52を形成することにより、光学シート40が得られる。
樹脂フィルム71は、熱可塑性樹脂を主成分として含む樹脂材料、あるいは、熱可塑性樹脂そのものを成形加工することにより、作製され得る。成形加工としては、射出成形や溶融押し出し成形を採用することができる。これらの成形加工によれば、光学界面55を形成する凹凸を有した樹脂フィルム71を作製することができる。図11に示すように、樹脂フィルム71は、各々長手方向を有する複数の凸部71aを当該長手方向と非平行な方向に配列するようにして含んでいる。
なお、樹脂フィルム71の成形には、型面が金型あるいは樹脂で形成された型を用いることができる。特に樹脂で形成された型を用いた場合、金属製の型面を用いた場合と比較して、加熱した熱可塑性樹脂を塗布する際、熱可塑性樹脂から型面への急速な吸熱を抑制することができる。これにより、加熱した熱可塑性樹脂が型面上を十分に延び広がり、賦型率を向上させることができる。また、作製された樹脂フィルム71の型面からの離型性が良いため、離型時における欠損等を防止することができる。型面が樹脂で形成された型としては、長尺のフィルム状の型を用いることができる。
樹脂フィルム71の延伸は、樹脂フィルム71に光学異方性を付与するための加工であるため、光学異方性を付与できれば特に限定されず、一軸延伸であっても、逐次二軸延伸であっても、同時二軸延伸であってもよい。樹脂フィルム71がポリエステル系の樹脂からなる場合には、延伸方向(延伸軸)が遅相軸と一致するようになる。したがって、単位光学界面55aの長手方向ldと第1層51の遅相軸SDとを平行にするには、図11に示すように、光学界面55の単位光学界面55aをなすようになる樹脂フィルム71の凸部71aの長手方向ld1と平行な方向に、樹脂フィルム71を延伸することになる。
樹脂フィルム71の延伸は、樹脂フィルム71をなす熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上に当該樹脂フィルム71を加熱した状態で、実施される。樹脂フィルム71が溶融押し出し成形により作製される場合、押し出し直後の高温の樹脂フィルム71を延伸することもできる。この場合、延伸のための樹脂フィルム71の加熱処理を別途に設ける必要がなくなる。なお、図11に示すように、樹脂フィルム71は、延伸によって形状を変化させて、第1層51を形成するようになる。したがって、上述した樹脂フィルム71の成形工程では、延伸による変形を見込んだ形状で、樹脂フィルム71を作製することになる。
次に、作製された第1層51上に樹脂を塗布し、第1層51上で当該樹脂を硬化させることにより、第1層51上に第2層52を形成する。第1層51上に形成された第2層52は、第1層51に対面する面として、第1層51の凹凸に対応した凹凸、言い換えると、第1層51の凹凸と相補的な凹凸を有するようになる。また別の方法として、第1層51上に、別途に成形された第2層52を積層するようにしてもよい。第2層52をなすようになる樹脂は、複屈折性の無い、即ち屈折率等方性(n2x=n2y)の熱可塑性樹脂でもよいし、熱硬化性樹脂でもよいし、電離放射線硬化型樹脂でもよい。以上のようにして、光学シート40が得られる。第2層を構成するこれら複屈折性の無い熱可塑性樹脂等の樹脂は、通常は、未延伸状態で固化されてなる。
また、別の方法として、図12に示された製造方法によっても、光学シート40を作製することができる。
図12に示された製造方法では、まず、上述した凹凸を有する樹脂フィルム71(図11参照)と、この樹脂フィルム71の凹凸に対応した凹凸、言い換えると、樹脂フィルム71の凹凸と相補的な凹凸を有する第2樹脂フィルム72と、を準備する。次に互いの凹凸が噛み合うようにして、樹脂フィルム71および第2樹脂フィルム72を、例えば接着剤又は粘着剤等を介して、積層する。その後、積層された樹脂フィルム71および第2樹脂フィルム72を、例えば樹脂フィルム71の凸部71aの長手方向ld1に、延伸することにより、樹脂フィルム71からなる第1層51と第2樹脂フィルム72からなる第2層52とを有する光学シート40が得られる。
図12に示された製造方法においても、樹脂フィルム71および第2樹脂フィルム72は、図11に示された上述の製造方法と同様にして、熱可塑性樹脂を用いた成形により、作製され得る。また、図12に示された製造方法においても、樹脂フィルム71の延伸により、樹脂フィルム71に面内の複屈折性を付与する。なお、第2樹脂フィルム72も樹脂フィルム71とともに延伸されることになるが、第2樹脂フィルム72に対しては積極的に光学異方性を付与する必要はない。したがって、第2樹脂フィルム72に面内の複屈折性が生じることを防止するため、第2樹脂フィルム72を構成する分子の電気双極子モーメントの大きさは小さい方が好ましい。とりわけ、第2樹脂フィルム72を構成する分子の電気双極子モーメントの大きさが、少なくとも樹脂フィルム71を構成する分子の電気双極子モーメントの大きさよりも小さくなっていることが好ましい。なお、電気双極子モーメントの測定は、まず、横河・ヒューレットパッカード社製のプレシジョンLCRメーターHP4284AのテストフィクスチャーHP16451B電極を用いて誘電率を測定し、次に、測定された誘電率を用いて電気双極子モーメントを特定することにより、行われ得る。
樹脂フィルム71及び第2樹脂フィルム72について、構成分子の電気双極子モーメントの大きさを斯くの如く選定することにより、樹脂フィルム71及び第2樹脂フィルム72に等量の延伸がかかり等量の分子配向が生じたとしても、各フィルムに発現する複屈折率(屈折率異方性)の程度は構成分子の電気双極子モーメントの大きさに依存する為、 樹脂フィルム71の複屈折率Δn1>第2樹脂フィルム72の複屈折率Δn2或いは両フィルムのx及びy軸方向の各屈折率で表記すると、
n1x−n1y>n2x−n2y(理想的には→0)とすることが出來る。
以上のようにして、熱可塑性樹脂を含む光学異方性の第1層51と、第1層51に積層され第1偏光成分の光の進行方向を変化させる光学界面55を第1層51との間に形成する第2層52と、を有する光学シート40を作製することができる。
なお、第1層51に含まれる熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。このうち、ポリエステル樹脂は、コスト及び機械的強度の面において有利である。具体的なポリエステル樹脂としては、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを例示することができる。また、第1層50をなすポリエステル樹脂は、これらの上記ポリエステル樹脂の共重合体であってもよく、上記ポリエステルを主体(例えば80モル%以上の成分)とし、少割合(例えば20モル%以下)の他の種類の樹脂とブレンドしたものであってもよい。ポリエステル樹脂として、ポリエチレンナフタレートは、大きな複屈折率を確保し得る点において好ましい。また、ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートが力学的物性や光学物性等のバランスが良いので好ましい。なお、光学シート40の安定性の観点から、第1層51をなす材料のガラス転移温度は100℃以上であることが好ましい。
このような光学シート40を含んだ表示装置10では、次のようにして、平面画像および裸眼で観察され得る立体画像を表示することができる。まず、図3を主に参照しながら、平面画像を表示する場合について説明する。
バックライト24が、液晶表示パネル25を背面側から面状に照明する。液晶表示パネル25は、バックライト24からの光を画素21毎に選択的に透過させる。このようにして形成された平面画像光L31〜L36は、画像形成装置20の画像形成面20aから射出した状態において、画像形成装置20の上偏光板28を透過し得る第1偏光成分となっている。その後、平面画像光L31〜L36は、偏光制御装置30へと入射する。平面画像を表示する場合、偏光制御装置30の一対の電極34,36間には、電圧が印加されていない。このため、図3に示すように、液晶分子31は、90°旋回した状態となる。この結果、偏光制御装置30を透過する平面画像光L31〜L36は、その偏光状態を変換させる。したがって、平面画像光L31〜L36は、画像表示ユニット15から射出した状態において、第2偏光成分となっている。
画像表示ユニット15から射出した平面画像光L31〜L36は、光学シート40へ入射する。光学シート40は、凹凸面として形成された光学界面55を有している。この光学界面55は、光学異方性の第1層51と、第2層52との境界面として構成されている。ただし、平面画像光L31〜L36をなす第2偏光成分の振動方向であるy軸方向における第1層51の屈折率n1yと、y軸方向における第2層52の屈折率n2yとは同一に設定されている。したがって、平面画像光L31〜L36は、光学シート40の光学界面55で進行方向を曲げられることなく進む。このようにして、平面画像をなす光L31〜L36が、表示装置10の表示面10aから出射する。この結果、観察者は、平面画像を観察することが可能となる。
なお、液晶表示パネル25を照明するバックライト24からの光は、正面方向に光軸を有するとともに(つまり正面方向に明るさのピークを有するとともに)、正面方向を中心とした或る程度の角度域内の方向に進む。したがって、各画素21を通過した光は、発散光として、或る程度の角度範囲に向けて、表示装置10の表示面10aから出射する。この結果、図3に示すように、観察者は、表示面10aに形成される同一の平面画像を或る程度の角度範囲から観察することができる。
次に、裸眼で立体的に観察される立体画像を表示する場合について説明する。立体画像を表示する場合にも、平面画像を表示する場合と同様にして、画像形成装置20から立体画像光Ll1〜Ll6,Lr1〜Lr6が射出する。この立体画像光Ll1〜Ll6,Lr1〜Lr6は、次に、偏光制御装置30へと入射する。ただし、立体画像を表示する場合には、画像表示ユニット15の画像形成装置20の各画素21が、観察者の左目または右目が位置するようになると想定された複数の位置のうちのいずれかの位置に割り振られる。そして、画像表示ユニット15は、同一の位置に割り振れた複数の画素21からの光によって、割り振られた位置から観察され得る一つの画像が形成されるよう、画素21毎の光の透過および遮断を制御する。
図2に示すように、立体画像を表示する場合、偏光制御装置30の一対の電極34,36間には、電圧が印加される。このため、立体画像光Ll1〜Ll6,Lr1〜Lr6は、偏光状態を第1偏光状態に維持しながら、偏光制御装置30を透過する。
画像表示ユニット15から射出した立体画像光Ll1〜Ll6,Lr1〜Lr6は、光学シート40へ入射する。そして、立体画像光Ll1〜Ll6,Lr1〜Lr6をなす第1偏光成分の振動方向であるx軸方向における第1層51の屈折率n1xは、x軸方向における第2層52の屈折率n2xよりも大きい値となっている。これにより、光学シート40の光学界面55は、各画素21からの立体画像光Ll1〜Ll6,Lr1〜Lr6の進行方向を制御する。
上述したように各画素21からの光は、発散光束をなして、光学シート40へ入射する。光学界面55の単位光学界面55aは、レンズ機能を発揮し、各画素21からの光を当該レンズ機能における焦点となる位置に収束させる。具体的には、単位光学界面55aは、対面する位置にある画素21からの発散光束(例えば図2の光束LF1)を、当該画素21が割り振られた位置、すなわち、観察者の左目または右目が位置するようになると想定されたいずれかの位置へ向けて収束させる。このようにして各画素21からの立体画像光Ll1〜Ll6,Lr1〜Lr6は、それぞれ、予定された位置へ進む。
観察者が予め想定された位置から表示装置10を観察すると、観察者の右目によって、当該右目の位置から視認されるべき画像が観察され、観察者の左目によって、当該左目の位置から視認されるべき画像が観察され得る。この結果、観察者は、両眼視差により、裸眼で立体的な画像を視認することができる。また、図2に示すように、観察者が予め想定された別の位置から表示装置10を観察すると、当該位置から観察されるべき画像を、裸眼で立体的に視認することができる。すなわち、観察方向を変化させると、観察者は、当該観察方向に応じて観察されるべき異なる画像を裸眼で観察することができる。すなわち、観察者は、運動視差によって、より立体感を持って画像を視認することができる。
ところで、光学シート40の光学界面55は、長手方向ldを有した単位光学界面55aを当該長手方向ldに直交する方向に配列することによって、形成されている。このような光学界面55の単位光学界面55aは、図2に示すように、その長手方向ldに直交する方向に沿って異なる位置に配置された複数の画素21から光の進行方向を、当該長手方向ldに直交する面内において、互いに異なる方向に向けることができる。このため、従来の多くの表示装置では、リニア配列された単位光学界面55aの長手方向ldに直交する方向に沿って、互いに異なる観察位置に割り振れた画素21、より詳しくは、互いに異なる方向に進むことを意図された画素21が並べられ、その一方で、リニア配列された単位光学界面55aの長手方向ldに沿って、同一の観察位置に割り振れた画素21が並べられている。
したがって、このような従来の表示装置では、任意の一つの観察位置に割り振れた画素は、単位光学界面55aの長手方向ldに沿って密に配置されるものの、単位光学界面55aの長手方向ldに直交する方向に沿って非常に疎に配置される。このため、従来の表示装置で立体画像を観察する場合、単位光学界面55aの長手方向ldに直交する方向に対応する特定方向への解像度が、集中的に低下してしまうという不具合が生じていた。
一方、本実施の形態では、図4に示すように、光学シート40の光学界面55を形成する単位光学界面55aの長手方向ldは、画像表示ユニット15の画素21の第1配列方向da1および第2配列方向da2の両方と非平行になっている。このため、一つの単位光学界面55aに対面する画素21について検討すると、第1配列方向da1に配列された画素21の間で、単位光学界面55aの長手方向に直交する方向での当該単位光学界面55aに対する相対位置が互いに異なり、且つ、第2配列方向da2に配列された画素21の間でも、単位光学界面55aの長手方向に直交する方向での当該単位光学界面55aに対する相対位置が互いに異なる。言い換えると、図4に示すように、一つの単位光学界面55aに対面する画素21について検討した場合、単位光学界面55aの長手方向に直交する方向に沿った当該単位光学界面55aの端部から各画素21の中心までの長さlg1〜lg9が、第1配列方向da1に配列された画素21の間で異なるとともに、第2配列方向da2に配列された画素21の間でも異なるようになる。
したがって、第1配列方向da1に配列された複数の画素21からの光を、光学シート40の光学界面55によって異なる位置へ向けることが可能となるとともに、第2配列方向da2に配列された複数の画素21からの光を、光学シート40の光学界面55によって異なる位置へ向けることも可能となる。これにより、一方向に沿った解像度が集中的に低下してしまうといった不具合を効果的に防止することができる。とりわけ、各観察位置に割り振れた画素についての第1配列方向da1における配列ピッチおよび第2配列方向da2における配列ピッチを、それぞれ、人間の目で判別不可能な程度にまで十分小さくすることにより、極めて高画質な立体画像を表示することが可能となる。
なお、図4に示された例では、単位光学界面55aの長手方向ldは、第1配列方向da1における画素配列ピッチの三つ分に対して、第2配列方向da2における画素配列ピッチの一つ分ずれるようにして、第1配列方向da1および第2配列方向da2に対して傾斜している。このような表示装置10では、一つの単位光学界面55aに対面する位置に配置された多数の画素21のうち、第2配列方向da2における三列分の画素21から射出する光が、光学シート40の光学界面55によって、互いに異なる方向へと向けられるようになる。また図4に示された例では、一つの単位光学界面55aに対して、第1配列方向da1に並んだ三つの画素21が対面する。したがって、図4において二点鎖線で囲まれた九つの画素21から射出される光が、同一の単位光学界面55aによって、互いに異なる方向へと進められるようになる。
なお、立体画像を観察する際における観察位置は、テレビ受像機での用途に代表されるように、水平方向に分散していることが好ましい。この点からすれば、単位光学界面55aの長手方向ldは、水平方向に対して90°近傍の角度をなしていることが好ましい。一般的な表示装置のように、画素21の二つの配列方向da1,da2が互いに直交し、且つ、一つの配列方向が水平方向と平行である場合には、水平方向に延びる画素の配列方向と、単位光学界面55aの長手方向ldと、によってなされる角度が、10°以上40°以下となっていることが好ましい。
なお、本実施の形態では、単位光学界面55aの長手方向ldと第1層51の遅相軸SDとが平行となっている。したがって、単位光学界面55aの長手方向ldが、画素21の配列方向da1,da2と非平行であることから、第1層51の遅相軸SDも画素21の配列方向da1,da2と非平行となっている。本実施の形態では、画像表示ユニット15に含まれた偏光板26,28のうちの最も観察者側に配置された最観察者側偏光板28の吸収軸AD2及び第1の偏光成分の光の振動方向も、第1層51の遅相軸SDとともに、画素21の配列方向da1,da2と非平行となっている。そして、本件発明者らが鋭意実験を行ったところ、立体画像を崩してしまうことなく高画質で表示する観点からは、上述したように、表示装置10の表示面10aへの法線方向からの観察において、第1層51の遅相軸SDと、画像表示ユニット15に含まれた偏光板26,28のうちの最も観察者側に配置された最観察者側偏光板28の吸収軸AD2及び第1の偏光成分の光の振動方向とが、平行となっていること又は直交していることが最も好ましいことが知見された。
ただし、本件発明者らが確認したところ、表示装置10の表示面10aへの法線方向からの観察において、第1層51の遅相軸SDと、最も観察者側に配置された最観察者側偏光板28の吸収軸AD2及び第1の偏光成分の光の振動方向と、によってなされる角度θa(図6参照)が、次の式(a)または式(b)を満たす場合、視認されやすい立体画像を十分に表示することができた。
−10°<(θa)<10° ・・・式(a)
80°<(θa)<100° ・・・式(b)
さらに、この角度θaが、次の式(c)または式(d)を満たす場合には、テレビ受像機としての表示装置10によって表示される画像を通常の注意力で観察する際に、映像を十分に立体的に観察することが可能となった。
−5°<(θa)<5° ・・・式(c)
85°<(θa)<95° ・・・式(d)
加えて、本件発明者らの研究によれば、第1層51の遅相軸SDと、第1の偏光成分の光の振動方向(本例では、画像表示ユニット15に含まれた偏光板26,28のうちの最も観察者側に配置された最観察者側偏光板28の吸収軸AD2)とが、高画質での立体表示を可能にするための上述した条件を満たす場合、干渉色(ニジムラ等)を目立たなくする上でも有効であることが確認された。
一方の直線偏光成分の光によって画像を形成する液晶表示パネルのような表示デバイスに、光学異方性フィルムを重ねると、干渉色(ニジムラ等)が発生してしまうことが知られている。例えば特開2011−107198号によれば、光学異方性フィルムの遅相軸を第1の偏光成分の光の振動方向(本例では、液晶表示パネルの観察者側の偏光板の吸収軸)に対して45°傾斜させるとともに、異方性フィルムのリタデーションReを所定の値以上に設定することにより、干渉色を解消し得る旨が開示されている。
本件発明者らが調査したところ、ここで説明した表示装置10、すなわち、平面画像および裸眼で視認され得る立体画像を切り換え可能に表示する表示装置にも、表示画質を劣化させる干渉色が発生した。干渉色の濃さ、すなわち、干渉色の視認されやすさは、偏光板の吸収軸と複屈折フィルムの遅相軸とのなす角度を45度とした時に、目立たなくなるが、この場合、光学シート40が複屈折レンズとして有効に機能せず、立体画像を視認可能に表示することができなかった。すなわち、特開2011−107198号に開示された対策では、ここで説明した表示装置10における干渉色を十分に発見し難くすることはできたが、立体画像の表示品位が著しく低下した。より具体的には、像が立体的に観察されず、且つ、表示される像自体が大きくぼけてしまった。
その一方で、ここで説明した表示装置10においては、上述した式(a)および(b)の一方が満たされる場合に、干渉色を目立たなくさせるとともに、立体画像を裸眼で認識できた。また、上述した式(c)および(d)の一方が満たされる場合には、テレビ受像機としての表示装置10によって表示される画像を通常の注意力で観察する際に、表示面10a上に干渉色の発生に気付くことはなく、立体画像を裸眼でさらに認識しやすくなった。さらに、第1の偏光成分の光の振動方向(本例では、最観察者側偏光板28の吸収軸方向AD2)と第1層51の遅相軸方向SDとによってなされる角度θaが0°または90°となった場合には、注意深く観察したとしても、干渉色を発見し難くなったとともに、立体画像を最も良く裸眼で認識できた。
特開2011−107198号によれば、液晶表示装置上に設けられた光学異方性フィルムを透過して干渉色をなす光の強度I(λ)が、次の式(x)で表されるとされている。
I(λ)=I0(λ)×sin2(2×θ)×sin2(π×Re/λ)・・式(x)
式(x)中において、「I(λ)」は光学異方性フィルムを透過して干渉色の原因となり得る光の強度であり、「I0(λ)」は液晶表示パネルの観察者側の偏光板に入射した光の強度である。「θ」は光学異方性フィルムの遅相軸と液晶表示パネルの観察者側の偏光板の吸収軸とによってなされる角度である。「λ」は透過光の波長であり、「Re」は、光学異方性フィルムのリタデーションである。
特開2011−107198号に開示された対策では、θが45°に設定され且つリタデーションが高く設定される。この対策によれば、可視光全域の種々の波長の光についての透過光強度が高められる。すなわち、干渉色として視認されていた光が、全体的に、より連続的なスペクトル分布を有するようになり、結果として、もはや特異な色を呈するムラとしての干渉色が視認されないようにしている。
しかしながら、このような特開2011−107198号に開示された方法を採用した場合には、光学異方性フィルムの遅相軸と液晶表示パネルの観察者側の偏光板の吸収軸とによってなされる角度が45°に設定されるため、立体画像光の偏光状態が光学シート40の光学異方性の第1層51にて大きく乱されてしまう。このため、当該立体画像光が、もはや光学界面55から意図したレンズ機能を及ぼされなくなる、すなわち、各画素からの立体画像光が、当該画素に対して割り振られた位置に集められなくなることが予想される。結果として、特開2011−107198号に開示された対策を上述した表示装置10に採用した場合、干渉色を十分に発見し難くすることはできるが、像が立体的に観察されず、そもそも表示される像自体が大きくぼけてしまっていると想定される。
これに対して、上述した条件の(a)および(b)の一方が満たされる場合、画像表示ユニット15から投射された立体画像光の偏光状態が、光学シート40の光学異方性の第1層51によって大きく乱されてしまうことを防止することができる。すなわち、上述した条件の(a)および(b)の一方が満たされる場合には、立体画像の画質が大きく劣化してしまうことを効果的に防止することができる。
また、上述した条件の(a)および(b)の一方が満たされる場合、式(x)における「sin2(2×θ)」が0.12未満となる。すなわち、干渉色を構成する各波長の光の強度を1/10以下程度にまで低下させることができる。このため、式(a)または(b)が満たされる場合に、干渉色を効果的に目立たなくさせることができるものと推定される。
加えて、以上の推定によれば、第1層51の遅相軸SDと第1の偏光成分の光の振動方向(本例では、最観察者側偏光板28の吸収軸AD2)とによってなされる角度θaが0°または90°に近付く程、式(x)における「sin2(2×θ)」が0に近づく。すなわち、干渉色を構成する各波長の光が、発生しなくなる。これにより、極めて有効にムラ模様を目立たなくすること、さらには、干渉色の発生自体を防止することが可能になるものと推定される。
なお、第1層51の遅相軸SDの向きは、第1層51内において、厳密には一定とならないこともある。ただし、一般的に、ここで対象とするニジムラ等の干渉色は、表示面10aの中央に発生する際に観察者によって感知されやすく、逆に、表示面10の縁部に発生する干渉色は観察者によって感知されにくい。したがって、干渉色を目立たなくさせる目的からは、第1層51の遅相軸SDの向きを表示面10aの中央にて評価することが重要であり、本発明において、第1層51の遅相軸SDの向きは、第1層51のうちの、表示面10aの中央に対応する部分で特定することとする。例えば、表示面10aが矩形状に形成されていれば、当該矩形状に関する一対の対角線の交点の位置において、第1層51の遅相軸SDの向きを特定することとする。
なお、本件発明者らは、上述した実施の形態に係る表示装置(サンプルA〜F)を実際に作製し、複屈折レンズをなす光学シート40以外の表示装置の構成要素は、裸眼3Dに対応している東芝製DynabookT851/D8EBを用いた。より具体的には、DynabookT851/D8EBの画像表示ユニットのガラス基材上の最表面に設置されていた複屈折レンズを、ガラス基材を残して剥離し、その代わりに、各サンプルA〜Fで得られた光学シート(複屈折レンズシート)をシート厚みが合うようにして最表面に光学透明粘着を介して設置した。
まず、サンプルA〜Fに係る表示装置を用いて、第1層51の遅相軸SDと最観察者側偏光板28の吸収軸AD2(すなわち、光学シートに入射する偏光成分の光の振動方向)とによってなされる角度θaと、干渉色の発生および画像の立体化と、の関係を調査した。作製した表示装置のサンプルA〜Fの間で、第1層51の遅相軸SDと最観察者側偏光板28の吸収軸AD2(光学シートへ入射する偏光成分の光の振動方向)とによってなされる角度θaが表1に示すように異なっているが、第1層51のリタデーション等の光学シート40のその他の構成は互いに同一とした。第1層51の複屈折率Δnは0.20とした。光学シートの法線方向に沿った断面を観察したところ、第1層51の最も膜厚の厚い部分は65μmであり、リタデーションは13000nmとなった。また、第1層51の最も膜厚の薄い部分は20μmであり、リタデーションは4000nmとなった。すなわち、サンプルA〜Fに組み込まれた光学シート40の第1層51は、凸部の高さが45μmであり、凸部を支持するシート状基部の厚みが20μmであった。また、第1層51の凸部の配列ピッチは、260μmであった。
各表示装置のサンプルで立体画像を表示して、立体画像の表示品位を調査した。表1の「立体画像」の欄に、立体画像の表示品位の評価結果を示す。評価方法は次のようにした。
◎:立体的に画像を観察することができた。
○:注意深く観察すると若干のクロストークが確認されたが、立体的に画像を観察する上での実用上の問題は無かった。
×:クロストークが確認され、実質上、立体的に画像を観察することができなかった。
また、各表示装置のサンプルで画像を表示して、干渉色の発生を目視と偏光サングラス越しにて調査した。表1の「干渉色」の欄に、干渉色の評価結果を示す。評価方法は次のようにした。
◎:干渉色が確認されなかった。
○:注意深く観察すると若干の干渉色が確認されたが、実用上の問題は無かった。
×:実用上許容され得ない程度の干渉色が発生した。
以上のようにして、本実施の形態によれば、平面画像および裸眼で視認され得る立体画像を切り換え可能に表示する表示装置において、立体画像を表示する際に特定方向に沿った解像度が集中的に低下してしまうことを回避することができる。
また、本実施の形態によれば、像および裸眼で視認され得る立体画像を切り換え可能に表示する表示装置において、干渉色が十分に目立たなく、かつ、立体画像表示可能とさせることができる。
さらに、本実施の形態によれば、光学シート40の光学界面55をなす単位光学界面55aの長手方向に直交する方向が、すなわち、単位光学界面55aが最短ピッチで配列されている配列方向が、画像表示ユニット15によって画成される画素21の配列方向da1,da2と非平行となっている。したがって、単位光学界面55aの配列の規則性と画素21の配列の規則性とに起因したモアレを目立たなくさせ上でも有利である。
さらに、本実施の形態によれば、光学シート40の面内複屈折率を有した第1層51は、延伸された熱可塑性樹脂によって光学異方性を発現している。したがって、第1層51は、100°以上のガラス転移温度を有することも十分に可能である。このため、本実施の形態による光学シート40、並びに、この光学シート40を含んだ表示装置10は、優れた安定性を呈するようになる。一例として、本実施の形態による光学シート40は、150℃で30分加熱しJISC2151の規定にしたがって測定された寸法安定性を飛躍的に改善することができる。具体的には、本実施の形態によれば、150℃で30分加熱しJISC2151の規定にしたがって測定された光学シート40の寸法安定性を2%以下に抑えることができる。結果として、家庭用テレビ受像器等の一般用途の範囲内での使用環境において、大きな制約を受けることなく、本実施の形態による光学シート40を使用することができ、且つ、本実施の形態による光学シート40が、期待された光学機能を発現することができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
光学シート40は、例示に過ぎず適宜変更することができる。まず、フィルム層43は、必須の層ではなく、光学シート40から省略することができる。また、第1層51および第2層52よりも偏光制御装置30側に、何らかの機能を発揮することが期待されたフィルム層が設けられてもよい。さらに、上述したように、光学界面55および単位光学界面55aの構成は、期待される光学機能に応じて適宜変更することができる。さらに、光学異方性の第1層51が、第2層52よりも観察側に配置されていてもよい。
また、上述した実施の形態において、第1層51のx軸方向の屈折率n1x、第1層51のy軸方向の屈折率n1y、第2層52のx軸方向の屈折率n2xおよび第2層51のy軸方向の屈折率n2yの関係を説明したが、上述した屈折率n1x,n1y,n2x,n2yの関係は例示に過ぎない。以下、図7〜図10を参照して、屈折率n1x,n1y,n2x,n2yの関係についての変形例を説明する。なお、以下に説明する図7〜図10の例では、屈折率n1x,n1y,n2x,n2yの関係を理解する上での便宜から、第1層51の遅相軸SDを、第1の偏光成分の光の振動方向(最観察者側偏光板28の吸収軸AD2に直交するx軸方向)と平行にしている。しかしながら、以下の屈折率n1x,n1y,n2x,n2yの関係は、第1層51の遅相軸SDの向きに依らず、成立する。したがって、立体画像をなす第1の偏光成分の光の振動方向と、光学シート40の第1層51の遅相軸方向SDと、が直交する又は平行となる必要はない。第1の偏光成分の光の振動方向と、光学シート40の第1層51の遅相軸方向SDと、によってなされる角度θaが、上述した式(a)および(b)の一方を満たすようにしてもよく、或いは、上述した式(c)および(d)の一方を満たすようにしてもよい。
例えば、上述した実施の形態において、第1層51のx軸方向の屈折率n1xが第2層52のx軸方向の屈折率n2xよりも大きくなっている例を示したがこれに限られず、第1層51のx軸方向の屈折率n1xが第2層52のx軸方向の屈折率n2xよりも小さくなっていてもよい。一例としての図7に示された例においては、次の関係が満たされる。
(n2x−n1x)>|n1y−n2y|=0
図7の関係が成り立つ場合、例えば、光学界面55の単位光学界面55aを凹レンズとして構成することにより、上述した実施の形態の光学シート40と概ね同様の光学機能を得ることが可能となる。なお、既に説明したように、図7に示された屈折率の関係に代えて、次の二条件が満たされるようにしてもよい。
(n2x−n1x)>|n1y−n2y|
|n1y−n2y|≦0.02
さらに、(n2x−n1x)>|n1y−n2y|が満たされるとともに、正面方向へ進む第2偏光成分の光が、光学シート40を透過した後に、正面方向に対して2°以下の角度をなす方向へ進むように、光学シート40が構成されてもよい。
また、上述した実施の形態においては、x軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差の大きさ(|n1x−n2x|)がy軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差の大きさ(|n1y−n2y|)よりも大きくなっている例を示したが、上述した例に代えて、x軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差の大きさがy軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差の大きさよりも小さくなっていてもよい。
一例として、次の関係が満たされるようにしてもよい。
|n1y−n2y|>|n1x−n2x|=0この場合、
y軸方向に振動する第2偏光成分の光の進行方向が、光学界面55によって制御される。その一方で、x軸方向に振動する第1偏光成分の光は、進行方向を維持して光学界面55を通過する。この例では、画像表示ユニット15が、例えば偏光制御装置30の切り換えにより、立体画像を表示するための光を第2偏光成分の光として射出し、平面画像を表示するための光を第1偏光成分の光として射出するようにすればよい。このような例によっても、上述した実施の形態と同様の作用効果を期待することができる。また、この例では、図8に示すように、第1層51のy軸方向の屈折率n1yが第2層52のy軸方向の屈折率n2yよりも大きくなり、次の関係が満たされるようにしてもよい。
(n1y−n2y)>|n1x−n2x|=0
あるいは、図9に示すように、第1層51のy軸方向の屈折率n1yが第2層52のy軸方向の屈折率n2yよりも小さくなり、次の関係が満たされるようにしてもよい。
(n2y−n1y)>|n1x−n2x|=0
なお、既に説明したように、図8に示された屈折率の関係に代えて、次の二条件が満たされるようにしてもよい。
(n1y−n2y)>|n1x−n2x|
|n1x−n2x|≦0.02
さらに、(n1y−n2y)>|n1x−n2x|が満たされるとともに、光学シート40のシート面へ直交する方向(すなわち、正面方向)へ進むx軸方向に振動する偏光成分(第1偏光成分)の光が、光学シート40を透過した後に、正面方向に対して2°以下の角度をなす方向へ進むように、光学シート40が構成されていてもよい。
同様に、図9に示された屈折率の関係に代えて、次の二条件が満たされるようにしてもよい。
(n2y−n1y)>|n1x−n2x|
|n1x−n2x|≦0.02
さらに、(n2y−n1y)>|n1x−n2x|が満たされるとともに、正面方向へ進む第1偏光成分の光が、光学シート40を透過した後に、正面方向に対して2°以下の角度をなす方向へ進むように、光学シート40が構成されていてもよい。
さらに、上述した実施の形態では、第1層51のみが光学異方性であり、第2層51は光学等方性である例を説明したが、第1層51および第2層52の両方とも光学異方性であるようにしてもよい。一例としての図10に示された例では、第1層51のx軸方向の屈折率n1x、第1層51のy軸方向の屈折率n1y、第2層52のx軸方向の屈折率n2xおよび第2層51のy軸方向の屈折率n2yが、次の関係を満たすようになっている。
(n1x−n2x)>|n1y−n2y|=0
n1x>n1y
n2x<n2y
図10に示された例によれば、y軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差を小さく、典型的には0に保ちながら、x軸方向における第1層51と第2層52との間での屈折率差を大きくすることができる。これにより、光学シート40の光学界面55は、x軸方向に振動する偏光成分の光に対してのみ、強い光学機能を発揮することができる。なお、図10に示された例は、一例として、図12を参照しながら説明した製造方法により作製され得る。この際、延伸方向と遅相軸方向とが一致するようになる材料(例えばポリエチレンナフタレート樹脂)を用いて樹脂フィルム71を作製し、延伸方向と進相軸方向とが一致するようになる材料、例えば(スチレン系樹脂)を用いて第2樹脂フィルム72を作製すればよい。
なお、既に説明したように、図10に示された屈折率の関係に代えて、次の四条件が満たされるようにしてもよい。
(n1x−n2x)>|n1y−n2y|
|n1y−n2y|≦0.02
n1x>n1y
n2x<n2y
さらに、(n1x−n2x)>|n1y−n2y|、n1x>n1yおよびn2x<n2yが満たされるとともに、光学シート40のシート面へ直交する方向(すなわち、正面方向)へ進むy軸方向に振動する偏光成分(第2偏光成分)の光が、光学シート40を透過した後に、正面方向に対して2°以下の角度をなす方向へ進むように、光学シート40が構成されていてもよい。
さらに、上述した実施の形態およびその変形例において、熱可塑性樹脂を含む樹脂フィルムを延伸することによって、光学シート40の第1層51および第2層52に光学異方性、言い換えると面内の複屈折性を付与する例を示した。しかしながら、光学シート40の第1層51および第2層52が、液晶(液晶分子、液晶材料)を含有する層として形成され、液晶の配向によって、光学異方性を付与されるようにしてもよい。このような光学シート40の第1層51または第2層52は、典型的には、ラビング等の配向処理をなされた基材上で、液晶(液晶分子、液晶材料)を含有する紫外線硬化型樹脂を硬化させることによって、作製され得る。このような変形例において、第1層51または第2層52の賦型時に、単位光学界面55をなすようになる凹部または凸部をうねらせて成形すること可能であり、この場合、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。