JP6045995B2 - 車両用制動力発生装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両に制動力を発生させる車両用制動力発生装置に関する。
例えばハイブリッド車両では、油圧回路を媒介して制動力を発生させる既存のブレーキシステムに加えて、電気回路を媒介して制動力を発生させる、バイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムが採用されている。かかるバイ・ワイヤ式のブレーキシステムでは、運転者のブレーキペダルの操作量を電気信号に変換して、スレーブシリンダ(以下、“モータシリンダ装置”という。)のピストンを駆動する電動アクチュエータに与える。すると、電動アクチュエータによるピストンの駆動によって、ブレーキ液圧がモータシリンダ装置に発生する。こうして発生したブレーキ液圧が、ホイールシリンダを作動させて車両に制動力を発生させる(例えば、特許文献1参照)。
一方、最近の車両には、衝突被害軽減システムと呼ばれる装置が搭載されている(例えば、特許文献2参照)。衝突被害軽減システムは、車両の進行方向の物体を検出するレーダ装置と、走行速度等を検出する車両状態検出部と、車両が前記物体と衝突する危険度を判定する判定部と、他の車両との間で無線通信を行う無線通信部と、などを備える。衝突被害軽減システム(液圧自動制御システム)は、例えば自車両の進行方向に衝突危険度の高い物体が存在する場合に、運転者による制動操作とは無関係に、モータシリンダ装置を用いてブレーキ液圧を自動的に発生させ、これをもって物体との衝突を回避する機能を有する。
特許文献1に係るバイ・ワイヤ式のブレーキシステムにおいて、マスタシリンダとモータシリンダ装置間を連通接続する液圧路には、マスタカットバルブと呼ばれる遮断弁が介在するように設けられる。この遮断弁は、常開型の電磁弁からなり、開放時に液圧路を連通させる一方、閉止時に液圧路を遮断させるように動作する。
仮に、特許文献1に係るバイ・ワイヤ式のブレーキシステムに、特許文献2に係る衝突被害軽減システムなどの液圧自動制御システムを組み合わせて適用したとする。この場合において、液圧自動制御システムの作動中に、例えば、モータシリンダ装置のピストンを駆動する電動アクチュエータに何らかの異常が生じたとする。すると、制動制御装置は、遮断弁を開放させることでブレーキシステムをバイ・ワイヤシステムからバックアップシステムの側へ切り替えて、運転者による制動操作を(バイ・ワイヤシステムを媒介することなく)車両の制動力に直結させるように動作する。
特開2009−227023号公報 特開2008−181200号公報
前記のとおり、特許文献1に係るバイ・ワイヤ式のブレーキシステムに、特許文献2に係る液圧自動制御システムを組み合わせて適用した場合、バイ・ワイヤ式のブレーキシステムでは、液圧自動制御システムが自動制御中(運転者による制動操作によらない)に、モータシリンダ装置のピストンを駆動する電動アクチュエータに何らかの異常が生じて遮断弁が開放されると、モータシリンダ装置の圧力室がリザーバ(大気圧に略等しい)と連通する。すると、モータシリンダ装置のピストンに作用する液圧力が大気圧付近まで急激に低下する。その結果、ピストンを初期位置の側に戻すための液圧力が失われるため、ピストンが初期位置まで戻り切らないおそれがある。
かかる場合において、遮断弁が開放された直後に運転者が制動操作を行うと、マスタシリンダで発生したブレーキ液圧が、戻り切っていないモータシリンダ装置のピストンを初期位置の側に戻すために消費される、いわゆる液損が生じる。すると、前記遮断弁が開放された直後の制動操作時において、制動操作に応じた制動力が通常時と比べて低下する(ブレーキペダルを踏み込んだ際の制動力が通常時と比べて低下する)ため、運転者に違和感を抱かせるおそれがあった。
本発明は、前記の実情に鑑みてなされたものであり、液圧自動制御システムの自動制御中に、モータシリンダ装置のピストンを駆動する電動アクチュエータに何らかの異常が生じた場合であっても、運転者による制動操作感を良好に維持可能な車両用制動力発生装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、(1)に係る発明は、運転者による制動操作を受け付ける液圧発生装置と、少なくとも前記制動操作に応じた電気信号に基づく電動アクチュエータの作動に伴うピストンの移動によってブレーキ液圧を発生させるモータシリンダ装置と、前記制動操作とは無関係に、前記モータシリンダ装置を用いてブレーキ液圧の自動制御を行う液圧自動制御部と、前記液圧発生装置及び前記モータシリンダ装置間の液圧路に設けられ、当該液圧路を、開放時に連通させる一方、閉止時に遮断させるように動作する開閉弁と、前記モータシリンダ装置の異常診断を行う異常診断部と、前記異常診断部により前記モータシリンダ装置が異常である旨の診断が下された場合、前記開閉弁を開放させる制御を行う制御部と、を備え、前記開閉弁は、励磁コイルの電磁力によって該開閉弁を閉止する方向に駆動される弁体、及び、当該弁体を、該開閉弁を開放する方向に付勢する弾性部材を有し、前記制御部によって前記開閉弁を開放させる制御が行われ、かつ、前記液圧自動制御部の自動制御によって発生した二次液圧に係る力及び前記弾性部材に係る荷重が前記弁体に作用している際であって、前記ピストンが初期位置近辺まで戻ってきたときに前記開閉弁が開放するように、当該開閉弁を開放可能とする開放圧を設定する、ことを最も主要な特徴とする。
(1)に係る発明では、制御部によって開閉弁を開放させる制御が行われ、かつ、液圧自動制御部の自動制御によって発生した二次液圧に係る力及び弾性部材に係る荷重が弁体に作用している際であって、ピストンが初期位置近辺まで戻ってきたときに開閉弁が開放するように、当該開閉弁を開放可能とする開放圧を設定することとした。
仮に、例えば、液圧自動制御部による比較的緊急度の高い自動制動制御が行われた結果、比較的大きい二次液圧に係る力が発生したとする。この場合、ピストンの現在位置は、初期位置に対して比較的大きく離れている。また、開閉弁を開放させる制御に反して、開閉弁は、閉止状態を維持する。
開閉弁が閉止状態を維持している間、ピストンを初期位置の側に戻すための二次液圧に係る力が維持される。このため、ピストンが初期位置の側に付勢されて、初期位置近辺まで戻ってゆく。このピストンの初期位置近辺への戻り移動に伴って、二次液圧に係る力も漸減してゆく。
ここで、開閉弁を開放可能とする開放圧(開放力を含む)は、ピストンが初期位置近辺まで戻ってきたときに開閉弁を開放するように設定されている。そのため、開閉弁は、開閉弁を開放させる制御の開始時点から所定の遅延時間を経て、閉止状態から開放状態へと切り替わる。
(1)に係る発明によれば、液圧自動制御システムの自動制御中に、電動アクチュエータに何らかの異常が生じた場合であっても、ピストンが初期位置まで戻り切らない中途半端な位置で停止する事態を未然に防止することができる。
その結果、ブレーキシステムがバイ・ワイヤシステムからバックアップシステムへと切り替えられた直後の初回の制動操作時であっても、運転者による制動操作感を良好に維持することができる。
また、(2)に係る発明は、(1)に係る発明に記載の車両用制動力発生装置であって、前記制御部は、当該車両用制動力発生装置の起動時に、運転者による制動操作に応じて前記液圧発生装置で発生する一次液圧が、前記開閉弁の開放圧を超える場合に、当該車両用制動力発生装置の起動を禁止する、ことを特徴とする。
(2)に係る発明によれば、開閉弁がセルフロック状態に陥る懸念のあるケースにおいて、車両用制動力発生装置の起動を禁止するため、(1)に係る発明の作用効果に加えて、開閉弁を開放できない事態の発生を予防することができる。
また、(3)に係る発明は、(1)に係る発明に記載の車両用制動力発生装置であって、前記ピストンが初期位置近辺まで戻ってきたときに、前記二次液圧に係る力から前記開閉弁の上流側の液圧である一次液圧に係る力を差し引いた偏差を、前記弾性部材に係る荷重が超えるように、当該弾性部材のセット荷重を設定する、ことを特徴とする。
(3)に係る発明によれば、(1)に係る発明の作用効果に加えて、ピストンが初期位置近辺まで戻ってきたときに開閉弁が開放することを考慮して弾性部材のセット荷重を設定する際の具体的な設計指針を提供することができる。
本発明に係る車両用制動力発生装置によれば、液圧自動制御システムの自動制御中に、モータシリンダ装置のピストンを駆動する電動アクチュエータに何らかの異常が生じた場合であっても、運転者による制動操作感を良好に維持することができる。
本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置の概要を表す構成図である。 閉止時における第1遮断弁の内部構造を模式的に表す説明図である。 開放時における第1遮断弁の内部構造を模式的に表す説明図である。 本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置が有するESB−ECUの周辺構成を表すブロック図である。 本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置の時系列動作の説明に供するタイムチャート図である。
以下、本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に示す図において、共通の機能を有する部材間、又は、相互に対応する機能を有する部材間には、原則として共通の参照符号を付するものとする。また、説明の便宜のため、部材のサイズ及び形状は、変形又は誇張して模式的に表す場合がある。
〔本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10の概要〕
はじめに、本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10の概要について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10の概要を表す構成図である。
本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10は、油圧回路を媒介して制動力を発生させる既存のブレーキシステムに加えて、電気回路を媒介して制動力を発生させる、バイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムを備えている。
車両用制動力発生装置10は、図1に示すように、運転者による制動操作をブレーキペダル12を通して受け付ける液圧発生装置14と、少なくとも運転者による制動操作に応じた電気信号に基づくブレーキ液圧を発生するモータシリンダ装置16と、モータシリンダ装置16で発生したブレーキ液圧に基づき車両(不図示)の挙動の安定化を支援するビークル・スタビリティ・アシスト装置18(以下、“VSA装置18”と省略する。ただし、VSAは登録商標)と、を備えて構成されている。
液圧発生装置14、モータシリンダ装置16、及び、VSA装置18のそれぞれは、図1に示すように、配管チューブ22a〜22fを介して相互に分離するように設けられている。バイ・ワイヤ式のブレーキシステムを構成する液圧発生装置14及びモータシリンダ装置16は、不図示の電線を介して、後記するECU(Electronic Control Unit)111(図2参照)と電気的に接続されている。液圧発生装置14及びモータシリンダ装置16の内部構成について、詳しくは後記する。
VSA装置18は、制動操作時の車輪ロックを防ぐABS(アンチロック・ブレーキ・システム)機能、加速時等の車輪空転を防ぐTCS(トラクション・コントロール・システム)機能、旋回時の横すべりを抑制する機能等を備えて構成されている。
なお、VSA装置18について、本発明とは直接的な関係が薄いため、その内部構成の説明を省略する。
本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10には、衝突被害軽減システム19(図3参照:例えば、特開2008−181200号公報参照)が搭載されている。衝突被害軽減システム19は、自車両の進行方向に衝突危険度の高い物体が存在する場合に、運転者による制動操作とは無関係に、モータシリンダ装置16を用いてブレーキ液圧を自動的に発生させ、これをもって物体との衝突を回避する機能を有する。衝突被害軽減システム19は、モータシリンダ装置16を用いてブレーキ液圧を自動的に発生させる機能を有する点で、液圧自動制御システム(本発明の“液圧自動制御部”に相当する。)の範疇に属する。液圧自動制御システムとしては、衝突被害軽減システム19の他にも、クルーズコントロールシステム、液圧保持システム、追従制御システムなどが含まれる。
(液圧路の構成)
まず、液圧路の構成について説明する。液圧路は、大別すると、液圧発生装置14に属するマスタシリンダ34の第1液圧室56aと複数のホイールシリンダ32FR,32RLとを接続する第1液圧系統70a、及び、液圧発生装置14に属するマスタシリンダ34の第2液圧室56bと複数のホイールシリンダ32RR,32FLとを接続する第2液圧系統70bから構成される。
第1液圧系統70aは、液圧発生装置14に属するマスタシリンダ34(シリンダ部38)の出力ポート54a及び接続ポート20a間を接続する第1液圧路58aと、液圧発生装置14の接続ポート20a及びモータシリンダ装置16の出力ポート24a間を(第1連結点A1を介して)接続する第1及び第2配管チューブ22a,22bと、モータシリンダ装置16の出力ポート24a及びVSA装置18の導入ポート26a間を(第1連結点A1を介して)接続する第2及び第3配管チューブ22b,22cと、VSA装置18の第1及び第2導出ポート28a,28b並びに各ホイールシリンダ32FR,32RL間をそれぞれ接続する第7及び第8配管チューブ22g,22hと、を有する。
第2液圧系統70bは、液圧発生装置14に属するマスタシリンダ34(シリンダ部38)の出力ポート54b及び他の接続ポート20b間を接続する第2液圧路58bと、液圧発生装置14の他の接続ポート20b及びモータシリンダ装置16の出力ポート24b間を(第2連結点A2を介して)接続する第4及び第5配管チューブ22d,22eと、モータシリンダ装置16の出力ポート24b及びVSA装置18の導入ポート26b間を(第2連結点A2を介して)接続する第5及び第6配管チューブ22e,22fと、VSA装置18の第3及び第4導出ポート28c,28d並びに各ホイールシリンダ32RR,32FL間をそれぞれ接続する第9及び第10配管チューブ22i,22jと、を有する。
なお、第1液圧路58a及び第2液圧路58bは、本発明の“液圧路”に相当する。
ディスクブレーキ機構30a〜30dを構成する各ホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FLのそれぞれには、各導出ポート28a〜28dに接続される配管チューブ22g〜22jを介して、ブレーキ液(ブレーキフルード)が供給される。ブレーキ液が供給されると、各ホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL内の液圧が上昇する。これにより、各ホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FLが作動し、対応する車輪(右側前輪、左側後輪、右側後輪、左側前輪)に対して制動力が付与される。
(液圧発生装置14の構成)
液圧発生装置14は、運転者によるブレーキペダル12の操作量に応じて液圧を発生させるタンデム式のマスタシリンダ34と、マスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36とを有する。第1リザーバ36は、ブレーキ液を貯留する容器である。第1リザーバ36は、配管チューブ86を介して、モータシリンダ装置16に付設された後記する第2リザーバ84に連通接続されている。第1及び第2リザーバ36,84は、その内圧が大気圧に略等しくなっている。
マスタシリンダ34のシリンダ部38内には、第1マスタピストン40a及び第2マスタピストン40bが、シリンダ部38の軸線方向に沿って所定間隔離間した状態で摺動自在に設けられている。第1マスタピストン40aは、ブレーキペダル12の側に近接して配設され、プッシュロッド42を介してブレーキペダル12と連結される。また、第2マスタピストン40bは、第1マスタピストン40aと比べてブレーキペダル12から離間して配設される。
なお、第1マスタピストン40a及び第2マスタピストン40bを総称する場合、“マスタピストン40a,40b”と呼ぶことがある。
マスタピストン40a,40bの外周面には、環状段部を介して一対のピストンパッキン44a,44bがそれぞれ設けられている。一対のピストンパッキン44a,44bの間には、それぞれ、後記するサプライポート46a,46bと連通する背室48a,48bが形成される。第1マスタピストン40aと第2マスタピストン40bとの間には、マスタピストン40a,40bの間を連結する第1ばね部材50aが設けられている。第2マスタピストン40bとシリンダ部38の内壁部との間には、第2マスタピストン40b及びシリンダ部38の内壁部の間を連結する第2ばね部材50bが設けられている。
マスタシリンダ34のシリンダ部38には、2つのサプライポート46a,46bと、2つのリリーフポート52a,52bと、2つの出力ポート54a,54bと、がそれぞれ設けられている。各サプライポート46a,46b及び各リリーフポート52a,52bは、それぞれ合流して第1リザーバ36内の不図示のリザーバ室と連通するようになっている。
また、マスタシリンダ34のシリンダ部38内には、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み力(踏力)に対応したブレーキ液圧を発生させる第1液圧室56a及び第2液圧室56bがそれぞれ設けられている。第1液圧室56aは、第1液圧路58aを介して接続ポート20aと連通するようになっている。また、第2液圧室56bは、第2液圧路58bを介して他の接続ポート20bと連通するようになっている。
マスタシリンダ34と接続ポート20aとの間であって、第1液圧路58aの上流側には、ブレーキ液圧センサPmが設けられている。また、第1液圧路58aの下流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第1遮断弁60aが設けられている。このブレーキ液圧センサPmは、第1液圧路58a上において、第1遮断弁60aよりもマスタシリンダ34側の一次液圧を検知する機能を有する。
マスタシリンダ34と他の接続ポート20bとの間であって、第2液圧路58bの上流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第2遮断弁60bが設けられている。また、第2液圧路58bの下流側には、圧力センサPpが設けられている。この圧力センサPpは、第2液圧路58b上において、第2遮断弁60bよりもホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL側の二次液圧を検知する機能を有する。
なお、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bは、本発明の“開閉弁”に相当する。
第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bにおけるノーマルオープンとは、ノーマル位置(非励磁(非通電)時の弁体の位置)が開放位置の状態(常時開)となるように構成されたバルブをいう。なお、図1において、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bは、励磁時の状態を示す(後記する第3遮断弁62も同様)。
(第1遮断弁60aの内部構造)
ここで、第1遮断弁60aの内部構造について、図2A及び図2Bを参照して説明する。図2Aは、閉止時における第1遮断弁60aの内部構造を模式的に表す説明図である。図2Bは、開放時における第1遮断弁60aの内部構造を模式的に表す説明図である。
なお、第2遮断弁60bの内部構造は、第1遮断弁60aのそれと同じである。そのため、第1遮断弁60aの内部構造を説明することで、第2遮断弁60bの内部構造の説明に代えることとする。
第1遮断弁60aは、略円筒形状の外観を呈する中空ハウジング211の内部区間に、開閉弁機構213を収容して構成されている。中空ハウジング211の一側には、蓋部材215が固着される。開閉弁機構213は、球状の弁体217、蓋部材215に形成されたすり鉢状の弁座219、コイルばね(本発明の“弾性部材”に相当する)221、円板状のスライダ223、ロッド225、及び、励磁コイル227を備えて構成される。
弁体217は、弁座219に着座した閉止位置(図2A参照)と、弁座219から離れた開放位置(図2B参照)との間を、往復動可能に支持されている。弁体217は、励磁コイル227が励磁されると弁座219に着座することで、第1遮断弁60aを閉止させるように動作する。弁体217と、スライダ223との間は、ロッド225を介して連結されている。弁体217、ロッド225、及び、スライダ223は、固定鉄心としての励磁コイル227の電磁力によって第1遮断弁60aを閉止する方向に駆動される可動鉄心231を構成する。弁体217及びロッド225の周囲には、コイルばね221が設けられている。コイルばね221は、蓋部材215の内壁と、蓋部材215に対向するスライダ223の内壁との間に介挿されている。
本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10では、第1遮断弁60aにおける開閉弁機構213の一部を構成するコイルばね(弾性部材)221のセット荷重は、衝突被害軽減システム(液圧自動制御システム)19の作動開始後にモータシリンダ装置16が異常状態に陥って第1及び第2遮断弁60a,60bの通電が遮断された後において、液圧自動制御システム19の自動制御によって発生した二次液圧に係る力F1(図2A参照、単位:N)及びコイルばね221に係る荷重F3(図2A参照、単位:N)が弁体217に作用している際に、弁体217に対し、モータシリンダ装置16の側の二次液圧に係る力F1から、液圧発生装置14の側の一次液圧に係る力F2(図2A参照、単位:N)を差し引いた偏差(F1−F2)を、コイルばね221に係る荷重F3が超えることを考慮して設定される。コイルばね221のセット荷重とは、コイルばね221の製造工程で初期設定される荷重を意味する。
ここで、一次液圧に係る力F2とは、第1遮断弁60aを境として液圧発生装置14の側(上流側)で生じるブレーキ液圧(一次液圧)が、第1遮断弁60aの弁体217に作用することで生じる力を意味する。また、二次液圧に係る力F1とは、第1遮断弁60aを境としてモータシリンダ装置16の側(下流側)で生じるブレーキ液圧(二次液圧)が、第1遮断弁60aの弁体217に作用することで生じる力を意味する。そして、コイルばね221に係る荷重F3とは、コイルばね221で生じる荷重を意味する。
中空ハウジング211の胴体部229における内壁には、可動鉄心231の周りを囲むように、励磁コイル(固定鉄心)227が設けられている。励磁コイル(固定鉄心)227が励磁されると、可動鉄心231には、図2A中の矢印233で示す方向の力が作用する。つまり、可動鉄心231の一部を構成する弁体217にも、第1遮断弁60aを閉止する方向の力が作用する。その結果、励磁コイル227が励磁されると、弁体217は、図2Aに示すように、弁座219に着座することで第1遮断弁60aを閉止させるように動作する。
一方、励磁コイル(固定鉄心)227が消磁されると、可動鉄心231に作用していた図2A中の矢印233で示す方向の力も消失する。このとき、コイルばね221は、弁体217に連結されたスライダ223を、第1遮断弁60aを開放する方向に付勢している。したがって、弁体217に連結されたスライダ223は、コイルばね221に係る荷重(図2A及び図2Bに示す符号F3参照)を受けて、図2Bに示す開放位置まで移動する。その結果、弁体217は、弁座219から離間することで第1遮断弁60aを開放させるように動作する。
図1に戻って説明を続けると、マスタシリンダ34と第2遮断弁60bとの間の第2液圧路58bには、前記第2液圧路58bから分岐する分岐液圧路58cが設けられている。この分岐液圧路58cには、ノーマルクローズタイプ(常閉型)のソレノイドバルブからなる第3遮断弁62と、ストロークシミュレータ64と、が直列に接続されている。この第3遮断弁62におけるノーマルクローズとは、ノーマル位置(非励磁(非通電)時の弁体の位置)が閉止位置の状態(常時閉)となるように構成されたバルブをいう。
マスタシリンダ34(シリンダ部38)の出力ポート54bに連なる第2液圧路58bには、分岐液圧路58cを介して、ストロークシミュレータ64が連通接続されている。ストロークシミュレータ64は、分岐液圧路58cに連通する反力液圧室65を有する。この反力液圧室65に対し、マスタシリンダ34の第2液圧室56bで生じたブレーキ液圧が印加される。ストロークシミュレータ64は、そのハウジングに、シミュレータピストン67と、第1のリターンスプリング68aと、第2のリターンスプリング68bとを備える。
〔モータシリンダ装置16の構成〕
次に、モータシリンダ装置16の構成について、図1を参照して説明する。
モータシリンダ装置16は、図1に示すように、電動モータ(本発明の“電動アクチュエータ”に相当する)72の回転駆動力によって第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88b(本発明の“ピストン”に相当する)を軸方向に駆動し、これをもってブレーキ液圧を発生させる機能を有する。
なお、以下の説明において、第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bを総称する場合、“スレーブピストン88a,88b”と呼ぶことがある。
モータシリンダ装置16において、スレーブピストン88の移動方向のうち、図1中の矢印で示すX1方向を前進方向(液圧発生方向)とし、前進方向(液圧発生方向)とは逆の、図1中の矢印で示すX2方向を後退方向と定義する。
モータシリンダ装置16は、図1に示すように、シリンダ部76と、電動モータ72と、電動モータ72の駆動力をスレーブピストン88に伝達するための駆動力伝達部73と、を備えている。
シリンダ部76は、図1に示すように、略円筒形状のシリンダ本体82と、シリンダ本体82に付設された第2リザーバ84とを有する。第2リザーバ84は、配管チューブ86を介して、液圧発生装置14のマスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36に連通接続されている。これにより、第1リザーバ36内に貯留されたブレーキ液が、配管チューブ86を介して、第2リザーバ84内に供給されるように構成されている。
シリンダ本体82内には、スレーブピストン88a,88bが、シリンダ本体82の軸線方向に所定間隔離間した状態で、この軸線方向に沿って摺動自在に設けられている。第1スレーブピストン88aは、ボールねじ構造体80の側に配設される一方、第2スレーブピストン88bは、第1スレーブピストン88aよりもボールねじ構造体80側から離間して配設される。
電動モータ72は、後記するブレーキペダルセンサ125(図3参照)で検出される運転者によるブレーキペダル12の操作量(ストローク量)に応じて、次述する動力伝達機構74を介して、スレーブピストン88a,88bを駆動する機能を有する。電動モータ72としては、例えば、ブラシレスDCモータやACサーボモータのような永久磁石同期モータを採用することができる。以下の説明では、本実施形態で用いられる電動モータ72として、埋め込み構造の永久磁石(界磁に永久磁石を埋め込んだ、空隙を有する常磁性体)により励磁される三相交流モータを例示して説明する。
電動モータ72は、不図示の固定子コイル及び回転子を有している。電動モータ72では、固定子コイルの三相巻線に三相交流電流が流れると回転磁界を生じる。この回転磁界を回転子の回転角度に合わせて制御することによって、回転子に取り付けられた永久磁石が回転磁界に作用してトルクが生まれるようになっている。電動モータ72には、後記するホールセンサ133(図3参照)が内蔵されている。ホールセンサ133は、電動モータ72の回転角度(スレーブピストン88a,88bの軸線方向における現在位置情報)を検出する機能を有する。
駆動力伝達部73は、図1に示すように、電動モータ72の回転駆動力を伝達する減速機構78、及び、電動モータ72の回転駆動力をボールねじ軸部80aの軸方向に沿った直線方向駆動力に変換するボールねじ構造体80を含む動力伝達機構74を有している。
第1スレーブピストン88aにおける後退方向の端部は、運転者によるブレーキペダル12の操作がなされていない状態において、後記する第1及び第2のリターンスプリング96a,96bのばね力を受けて、シリンダ本体82内に形成された環状段部に突き当てられるように位置している。要するに、第1スレーブピストン88aは、後退方向に付勢されている。
第1スレーブピストン88aにおける後退方向の端部には、図1に示すように、略円筒形状の穴部が設けられている。この穴部に、ボールねじ軸部80aにおける略円筒形状の前端部が収容されるようになっている。ボールねじ軸部80aは、運転者によるブレーキペダル12の操作がなされていない状態において、図1に示す初期位置IPに位置付けられている。
なお、運転者によるブレーキペダル12の操作がなされていない状態において、ボールねじ軸部80aを初期位置IP(図1参照)に位置付けるために、この初期位置IPに対応する電動モータ72の回転角度情報が、後記する制御部155(図3参照)に記憶されている。
第1スレーブピストン88aにおける前端側の外周面には、図1に示すように、環状段部を介してスレーブピストンパッキン90aが設けられる。また、第1スレーブピストン88aにおける前端側及び後端側の中間における外周面には、環状凹部による第1背室94aが形成されている。第1背室94aは、後記するリザーバポート92aと連通している。第1背室94aの後端側には、スレーブピストンパッキン90bが設けられる。スレーブピストンパッキン90bは、第1背室94a及び動力伝達機構74間を液密状態でシールする機能を有する。
第1及び第2スレーブピストン88a,88bの間には、第1のリターンスプリング96aが設けられている。
一方、第2スレーブピストン88bの外周面には、図1に示すように、環状段部を介して一対のスレーブピストンパッキン90c、90dがそれぞれ設けられる。一対のスレーブピストンパッキン90c、90dの間には、後記するリザーバポート92bと連通する第2背室94bが形成される。そして、第2スレーブピストン88bとシリンダ本体82の前端部との間には、第2のリターンスプリング96bが設けられている。
シリンダ部76のシリンダ本体82には、2つのリザーバポート92a、92b、及び、2つの出力ポート24a,24bがそれぞれ設けられている。リザーバポート92a,92bは、第2リザーバ84内のリザーバ室と連通するようになっている。
また、シリンダ本体82内には、出力ポート24aからホイールシリンダ32FR,32RL側へ出力されるブレーキ液圧を発生させる第1液圧室98a、及び、他の出力ポート24bからホイールシリンダ32RR,32FL側へ出力されるブレーキ液圧を発生させる第2液圧室98bがそれぞれ設けられている。
第1スレーブピストン88a及び第2スレーブピストン88bの間には、これら88a,88bの間の最大離間区間と最小離間区間とを規制する規制部材100が設けられている。また、第2スレーブピストン88bには、第2スレーブピストン88bの摺動範囲を規制して、第1スレーブピストン88a側へのオーバーリターンを阻止するストッパピン102が設けられている。これにより、例えばマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧で制動するときのバックアップ時において、仮にある系統で失陥が発生しても、他の系統にまでその影響を及ぼさないようになっている。
VSA装置18の導入ポート26aに近接する液圧路上には、モータシリンダ装置16の第1液圧室98aで発生したブレーキ液圧を検知する圧力センサPhが設けられる。圧力センサPhの圧力検知信号は、VSA装置18の統括制御を行うVSA−ECU(不図示)に送られる。
〔車両用制動力発生装置10の基本動作〕
次に、車両用制動力発生装置10の基本動作について説明する。
車両用制動力発生装置10の正常作動時には、マスタシリンダ34にブレーキ液圧が発生しているか否かにかかわらず、ノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bが励磁されて閉止状態となると共に、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第3遮断弁62が励磁されて開放状態となる(図1参照)。
したがって、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bによって第1液圧系統70a及び第2液圧系統70bが遮断されるため、液圧発生装置14のマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧がディスクブレーキ機構30a〜30dのホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FLに伝達されない。車両用制動力発生装置10の正常作動時には、モータシリンダ装置16による電動式のブレーキシステムが実働するからである。
このとき、マスタシリンダ34の第2液圧室56bにおいてブレーキ液圧が発生すると、発生したブレーキ液圧は、分岐液圧路58c及び開放状態にある第3遮断弁62を経由してストロークシミュレータ64の反力液圧室65に伝達される。この反力液圧室65に供給されたブレーキ液圧によってシミュレータピストン67がリターンスプリング68a、68bのばね力に抗して変位することにより、ブレーキペダル12のストロークが許容されると共に、擬似的なペダル反力が創り出されてブレーキペダル12にフィードバックされる。この結果、運転者にとって違和感のない制動操作感が得られる。
このようなシステム状態において、ESB−ECU111(図3参照)は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込みを検出すると、モータシリンダ装置16の電動モータ72を駆動させ、電動モータ72の駆動力を、動力伝達機構74を介して伝達し、第1のリターンスプリング96a及び第2のリターンスプリング96bのばね力に抗してスレーブピストン88a,88bを図1中の矢印X1方向に向かって変位させる。このスレーブピストン88a,88bの変位によって第1液圧室98a及び第2液圧室98b内のブレーキ液がバランスするように加圧されて所望のブレーキ液圧が発生する。
こうして発生したブレーキ液圧は、VSA装置18を介してディスクブレーキ機構30a〜30dのホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FLに伝達され、各ホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FLが作動することで各車輪に所望の制動力が付与される。
換言すると、車両用制動力発生装置10では、モータシリンダ装置16やバイ・ワイヤの制御を行うESB−ECU111(図3参照)の正常作動時において、運転者がブレーキペダル12を踏むと、いわゆるバイ・ワイヤ式のブレーキシステムがアクティブになる。具体的には、正常作動時の車両用制動力発生装置10では、運転者がブレーキペダル12を踏むと、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bが、マスタシリンダ34と各車輪を制動するディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)との連通を遮断した状態で、モータシリンダ装置16が発生するブレーキ液圧を用いてディスクブレーキ機構30a〜30dを作動させる。
一方、車両用制動力発生装置10では、モータシリンダ装置16や制御部155の異常時において、運転者がブレーキペダル12を踏むと、既存の油圧式のブレーキシステムがアクティブになる。具体的には、異常時の車両用制動力発生装置10では、運転者がブレーキペダル12を踏むと、第1遮断弁60a及び第2遮断弁60bをそれぞれ開放状態とし、かつ、第3遮断弁62を閉止状態として、マスタシリンダ34で発生するブレーキ液圧をディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)に伝達して、ディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR,32RL,32RR,32FL)を作動させる。
〔本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10が有するESB−ECU111の周辺構成〕
次に、本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10が有するESB−ECU111の周辺構成について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10が有するESB−ECU111の周辺構成を表す説明図である。
本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10が有するESB(電動サーボブレーキ)のESB−ECU111には、図3に示すように、入力系統として、イグニッションキースイッチ(以下“IGキースイッチ”と省略する。)121、車輪速センサ123、ブレーキペダルセンサ125、ホールセンサ133、及び、ブレーキ液圧センサPm,Ppが接続されている。
IGキースイッチ121は、車両の各部に、車載バッテリ(不図示)から電源を供給する際に操作されるスイッチである。IGキースイッチ121がオン操作されると、ESB−ECU111に電源が供給されて、ESB−ECU111が起動されるように構成されている。
車輪速センサ123は、各車輪それぞれの回転速度(車輪速)を検出する機能を有する。車輪速センサ123で検出された各車輪毎の車輪速信号は、ESB−ECU111へと送られる。
ブレーキペダルセンサ125は、運転者によるブレーキペダル12の操作量(ストローク量)を検出する機能を有する。ブレーキペダルセンサ125で検出されたブレーキペダル12の操作量(ストローク量)に係る信号は、ESB−ECU111へと送られる。
なお、ブレーキペダルセンサ125は、単にON(踏まれている)・OFF(踏まれていない)を検出する機能を有するブレーキSWであってもよい。
ホールセンサ133は、電動モータ72の回転角度(スレーブピストン88a,88bの軸線方向における現在位置情報)を検出する機能を有する。ホールセンサ133で検出された電動モータ72の回転角度に係る信号は、ESB−ECU111へと送られる。
ブレーキ液圧センサPm,Ppは、ブレーキ液圧系統における各部の圧力を検出する機能を有する。ブレーキ液圧センサPm,Ppで検出されたブレーキ液圧系統における各部の圧力信号は、ESB−ECU111へと送られる。
一方、ESB−ECU111には、図3に示すように、出力系統として、前記の電動モータ72、及び、第1〜第3遮断弁60a,60b,62が接続されている。さらに、ESB−ECU111には、入出力系統として、VSA装置18、及び、衝突被害軽減システム19が接続されている。
ESB−ECU111は、図3に示すように、後記する位置情報取得部151、異常診断部153、及び、制御部155を備えて構成されている。
ESB−ECU111は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。このマイクロコンピュータは、ROMに記憶されているプログラムやデータを読み出して実行し、ESB−ECU111が有する、スレーブピストン88a,88bの軸線方向における現在位置情報取得機能、モータシリンダ装置16(液圧系統及び電気系統を含む)の異常診断機能、及び、制動力制御機能を含む各種機能に係る実行制御を行うように動作する。
位置情報取得部151は、ホールセンサ133を介して入力される、電動モータ72の初期位置IP(図1参照)からの回転角度に基づいて、スレーブピストン88a,88bの軸線方向における現在位置情報を取得する機能を有する。
なお、スレーブピストン88a,88bの軸線方向における現在位置情報を取得するに際しては、電動モータ72の初期位置IPからの回転角度を検出するホールセンサ133に代えて、スレーブピストン88a,88bそれ自体のストロークを検出するセンサを用いてもよい。
位置情報取得部151で取得されたスレーブピストン88a,88bの軸線方向における現在位置情報は、異常診断部153に送られる。
異常診断部153は、液圧系統及び電気系統を含むモータシリンダ装置16の異常診断を行う機能を有する。詳しく述べると、異常診断部153は、例えば、位置情報取得部151から送られてくるスレーブピストン88a,88bの軸線方向における現在位置情報、及び制御部155で求められるスレーブピストン88a,88bの目標位置情報を時々刻々と比較し、スレーブピストン88a,88bの現在位置及び目標位置間の位置偏差が、予め定められる位置偏差閾値を超えた場合に、モータシリンダ装置16に何らかの異常が生じている旨の診断を下すように動作する。
前記の位置偏差閾値としては、例えば、実車による実験や、コンピュータ・シミュレーションの結果に基づいて、スレーブピストン88a,88bの目標位置に対する現在位置の位置偏差が生じているとみなすのに相応しい値を適宜設定すればよい。
ただし、異常診断部153が行う異常診断方法は、前記の例に限定されない。異常診断部153は、例えば、電動モータ72や駆動力伝達部73に関する現在の稼働状態を各種センサの検出値に基づいて推定(数値演算による推定を含む)し、こうして推定した電動モータ72や駆動力伝達部73に関する現在の稼働状態及び目標状態を比較することにより、モータシリンダ装置16の異常診断を行ってもよい。
制御部155は、異常診断部153によりモータシリンダ装置16が異常である旨の診断が下された場合、運転者による制動操作を(バイ・ワイヤシステムを媒介することなく)制動力に直結させるため、第1及び第2遮断弁60a,60bを開放させる制御を行う機能を有する。
〔本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10の時系列動作〕
次に、本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10の時系列動作について、図4(a)〜(d)を参照して説明する。図4は、本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10の時系列動作の説明に供するタイムチャート図である。このうち、図4(a)は電動モータ72のトルクの推移を時系列的に描いたタイムチャート図、図4(b)は第1及び第2遮断弁60a,60bの開閉制御信号の推移を時系列的に描いたタイムチャート図、図4(c)はスレーブピストン88a,88bの現在位置の推移を時系列的に描いたタイムチャート図、図4(d)はモータシリンダ装置16の内圧の推移を時系列的に描いたタイムチャート図、図4(e)は第1及び第2遮断弁60a,60bの開閉状況の変化を時系列的に描いたタイムチャート図である。
ただし、前提として、車両のIGキースイッチ(121)はオンされており、車両は定速で徐行走行中であるとする。
図4に示す時刻t0〜t1において、電動モータ72のトルクはゼロである(図4(a)参照)。このとき、制御部155は、第1及び第2遮断弁60a,60bの開放制御信号を出力(例えば、第1及び第2遮断弁60a,60bの通電を遮断)する(図4(b)参照)。本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10の正常動作時(制動操作なし、又は、衝突被害軽減システム19による自動制動制御なし)には、第1及び第2遮断弁60a,60bを開放状態に制御するのが原則だからである。スレーブピストン88a,88bの現在位置は初期位置IPにある(図4(c)参照)。モータシリンダ装置16の内圧はゼロである(図4(d)参照)。第1及び第2遮断弁60a,60bの開閉状況は、開放制御信号に従う開放状態にある(図4(e)参照)。
図4に示す時刻t1〜t2において、電動モータ72のトルクはゼロから制動トルク(制動時のトルク)近辺に至るまで緩やかに立ち上がっている(図4(a)参照)。図4に示す時刻t1以降において、衝突被害軽減システム(液圧自動制御システム)19が、自動制御(運転者による制動操作によらない)をはじめたからである。このとき、制御部155は、第1及び第2遮断弁60a,60bの閉止制御信号を出力する(図4(b)参照)。スレーブピストン88a,88bの現在位置は、初期位置IPから制動位置(制動時の位置)BP近辺に至るまで緩やかに立ち上がっている(図4(c)参照)。モータシリンダ装置16の内圧も、ゼロから制動圧(制動時の圧力)近辺に至るまで緩やかに立ち上がっている(図4(d)参照)。第1及び第2遮断弁60a,60bの開閉状況は、閉止制御信号に従う閉止状態へと切り替わっている(図4(e)参照)。
図4に示す時刻t2〜t3において、電動モータ72のトルクは制動トルクを維持している(図4(a)参照)。つまり、本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10の衝突被害軽減システム(液圧自動制御システム)が、自動制御を継続している。このとき、制御部155は、第1及び第2遮断弁60a,60bの閉止制御信号を出力する(図4(b)参照)。スレーブピストン88a,88bの現在位置は、制動位置BPを維持している(図4(c)参照)。モータシリンダ装置16の内圧も、制動圧(制動時の圧力)近辺を維持している(図4(d)参照)。第1及び第2遮断弁60a,60bの開閉状況は、閉止制御信号に従う閉止状態を維持している(図4(e)参照)。
図4に示す時刻t3において、電動モータ72に何らかの異常が生じたとする。すると、同時刻t3において、ESB−ECU111の異常診断部153は、電動モータ72に異常が生じた旨の診断を下す。これを受けて、制御部155は、電動モータ72の駆動制御を停止(電動モータ72への給電を停止)すると共に、第1及び第2遮断弁60a,60bの開放制御信号を出力する(図4(b)参照)。これにより、図4に示す時刻t3において、電動モータ72のトルクが、制動トルクからゼロへと急激に落ち込んでいる(図4(a)参照)。
同時刻t3〜t4において、スレーブピストン88a,88bの現在位置は、電動モータ72への給電が停止しているにもかかわらず、制動位置BPから初期位置IP近辺に至るまで徐々に戻ってきている(図4(c)参照)。その理由は次の通りである。
すなわち、同時刻t3において、第1及び第2遮断弁60a,60bの開放制御が行われているのにかかわらず、第1及び第2遮断弁60a,60bの開閉状況は、依然として閉止状態を維持している。これは、モータシリンダ装置16の側の二次液圧に係る力F1が、液圧発生装置14の側の一次液圧に係る力F2及びコイルばね(弾性部材)221に係る荷重F3の合力(F2+F3)を超えている(F1>(F2+F3))ため、弁体217が弁座219に押しつけられた状態を維持しているからである(図2A参照)。このため、モータシリンダ装置16のスレーブピストン88a,88bに作用する二次液圧に係る力F1も、時刻t3の直前の状態に維持される。
要するに、時刻t3〜t4において、スレーブピストン88a,88bの現在位置が、制動位置BPから初期位置IP近辺に至るまで徐々に戻るのは、モータシリンダ装置16の側の二次液圧に係る力F1が、液圧発生装置14の側の一次液圧に係る力F2及びコイルばね(弾性部材)221に係る荷重F3の合力(F2+F3)を超えている(F1>(F2+F3))ため、スレーブピストン88a,88bを初期位置IPの側に戻すための二次液圧に係る力F1が維持され、スレーブピストン88a,88bが初期位置IPの側に付勢されるからである。
同時刻t3〜t4以降において、モータシリンダ装置16の内圧は、制動圧から漸減している。その理由は以下の通りである。すなわち、第1及び第2遮断弁60a,60bが閉止状態を維持しているため、モータシリンダ装置16の第1及び第2液圧室98a,98bは、ほぼ密閉状態を維持している。
ここで、モータシリンダ装置16のスレーブピストン88a,88bは、前記した通り、初期位置IPの側へと徐々に戻されている。そのため、モータシリンダ装置16の内圧(第1及び第2液圧室98a,98bの圧力)も、スレーブピストン88a,88bの初期位置IPの側への戻り移動に伴って漸減することになる。
なお、本発明でいう“初期位置IP近辺”とは、モータシリンダ装置16が異常状態に陥って、運転者の制動操作に応じて直接的に制動力を発生させるため第1及び第2遮断弁60a,60bを開放した直後の、運転者の制動操作時において、モータシリンダ装置16で生じる液損の程度が、安全基準などに則して許容可能な(十分な制動力を発生可能な)、初期位置IPに近い(初期位置IPそのものを含む)スレーブピストン88a,88bの戻り位置を意味する。
図4に示す時刻t4において、第1及び第2遮断弁60a,60bは、開放制御信号の出力時点(時刻t3)から遅延時間DT(図4(e)参照)を経て、閉止状態から開放状態へと切り替わる。モータシリンダ装置16の側の二次液圧に係る力F1が、液圧発生装置14の側の一次液圧に係る力F2及びコイルばね(弾性部材)221に係る荷重F3の合力(F2+F3)を下回った(F1>F2+F3)からである(図2B参照)。言い換えると、モータシリンダ装置16の側の二次液圧に係る力F1から、液圧発生装置14の側の一次液圧に係る力F2を差し引いた偏差(F1−F2)が、コイルばね(弾性部材)221に係る荷重F3を下回った(F1−F2<F3)からである。その後、同時刻t4以降において、第1及び第2遮断弁60a,60bは、開放状態を維持する(図4(e)参照)。
〔本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10の作用効果〕
次に、本発明の実施形態に係る車両用制動力発生装置10の作用効果について説明する。
第1の観点(請求項1)に基づく車両用制動力発生装置10では、制御部155によって第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bを開放させる制御が行われ、かつ、衝突被害軽減システム(液圧自動制御システム)の自動制御によって発生した二次液圧に係る力F1及びコイルばね(弾性部材)221に係る荷重F3が弁体217に作用している際であって、スレーブピストン(ピストン)88a,88bが初期位置IP近辺まで戻ってきたときに前記開閉弁が開放するように、当該開閉弁を開放可能とする開放圧を設定する、構成を採用することとした。
第1の観点(請求項1)に基づく車両用制動力発生装置10では、第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bを開放させる制御が行われ、かつ、衝突被害軽減システム(液圧自動制御システム)の自動制御によって発生した二次液圧に係る力F1及びコイルばね(弾性部材)221に係る荷重F3が弁体217に作用している際であって、スレーブピストン(ピストン)88a,88bが初期位置IP近辺まで戻ってきたときに第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bが開放するように、当該開閉弁を開放可能とする開放圧を設定する。
ここで、第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bを開放可能とする開放圧とは、開放圧に由来する開放力を含む概念である。具体的には、第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bの開放圧(開放力を含む)は、例えば、“弾性部材221のセット荷重”に相当する。
仮に、衝突被害軽減システム(液圧自動制御システム)による比較的緊急度の高い自動制動制御が行われた結果、比較的大きい二次液圧に係る力F1が発生したとする。この場合、スレーブピストン(ピストン)88a,88bの現在位置は、初期位置IPから比較的大きく離れている。また、第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bを開放させる制御に反して、第1及び第2遮断弁60a,60bは、閉止状態を維持する。
第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bが閉止状態を維持している間、スレーブピストン(ピストン)88a,88bを初期位置IPの側に戻すための二次液圧に係る力F1が維持される。このため、スレーブピストン88a,88bが初期位置IPの側に付勢されて、初期位置IP近辺まで戻ってゆく。かかるスレーブピストン88a,88bの初期位置IP近辺への戻り移動に伴って、二次液圧に係る力F1も漸減してゆく。
ここで、第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bを開放可能とする開放圧(開放力を含む)は、ピストン88a,88bが初期位置IP近辺まで戻ってきたときに第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bを開放するように設定されている。そのため、第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bは、開放制御の開始時点から所定の遅延時間(例えば図4(e)参照)を経て、閉止状態から開放状態へと切り替わる。
第1の観点(請求項1)に基づく車両用制動力発生装置10によれば、衝突被害軽減システム(液圧自動制御システム)19の自動制御中に、電動モータ(電動アクチュエータ)72に何らかの異常が生じたとしても、スレーブピストン(ピストン)88a,88bが初期位置IPまで戻り切らない中途半端な位置で停止する事態を未然に防止することができる。
その結果、ブレーキシステムがバイ・ワイヤシステムからバックアップシステムへと切り替えられた直後の初回の制動操作時であっても、液損(無効ストローク)がほとんど生じないため、運転者による制動操作感を良好に維持することができる。
また、第2の観点(請求項2)に基づく車両用制動力発生装置10では、車両用制動力発生装置10を起動するに際し、運転者による制動操作に応じて液圧発生装置14で発生する一次液圧が、第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bの開放圧を超えるケースにおいて、第1及び第2遮断弁60a,60bが、いわゆるセルフロック状態に陥ることがないようにしている。
前記のケースとしては、例えば、運転者による制動操作が強く行われている(ブレーキペダルが深く踏み込まれている)状態で、IGキースイッチ121をオンするケースや、モータシリンダ装置16を駆動するための電源(不図示)の電圧が低下した異常状態から正常な状態に復帰することで、モータシリンダ装置16が異常状態から正常状態に切り替わったケースなどを想定することができる。
前記のケースでは、第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bが、閉弁されたままのセルフロックされた状態に陥る。運転者が制動操作を解除(ブレーキペダルをオフ操作)した後でも(スレーブピストン88a,88bが初期位置IPまで戻った後でも)、第1及び第2遮断弁60a,60bを開放可能とする開放圧を超えた二次液圧がモータシリンダ装置16の側に残り、第1及び第2遮断弁60a,60bの開放動作を妨げるからである(詳しくは、例えば特開2012−131393号公報の段落0007〜段落0010参照)。
かかるセルフロック状態に第1及び第2遮断弁60a,60bが陥ると、例えば、ブレーキの引き摺りなどの制動異常を招く要因となる。
そこで、第2の観点(請求項2)に基づく車両用制動力発生装置10では、制御部155は、車両用制動力発生装置10を起動するに際し、運転者による制動操作に応じて液圧発生装置14で発生する一次液圧が、第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bを開放可能とする開放圧を超える場合に、車両用制動力発生装置10の起動を禁止することとした。
第2の観点(請求項2)に基づく車両用制動力発生装置10によれば、第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bが、セルフロック状態に陥る懸念のあるケースにおいて、車両用制動力発生装置10の起動を禁止するため、第1の観点(請求項1)に係る発明の作用効果に加えて、第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bを開放できない事態の発生を予防することができる。
また、第3の観点(請求項3)に基づく車両用制動力発生装置10では、スレーブピストン(ピストン)88a,88bが初期位置IP近辺まで戻ってきたときに、二次液圧に係る力F1から第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bの上流側の液圧である一次液圧に係る力F2を差し引いた偏差(F1−F2)を、弾性部材221に係る荷重F3が超えるように、当該弾性部材221のセット荷重を設定する。
仮に、衝突被害軽減システム(液圧自動制御システム)による比較的緊急度の高い自動制動制御が行われた結果、比較的大きい二次液圧に係る力F1が発生したとする。この場合、前記の偏差(F1−F2)は、コイルばね(弾性部材)221に係る荷重F3を大きく超える程度の比較的大きい値をとる。また、スレーブピストン(ピストン)88a,88bの現在位置は、初期位置IPから比較的大きく離れている。こうしたケースでは、第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bを開放させる制御に反して、第1及び第2遮断弁60a,60bは、閉止状態を維持する。第1及び第2遮断弁60a,60bに係る開放条件(F1<(F2+F3))を充足しないからである。
第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bが閉止状態を維持している間、スレーブピストン(ピストン)88a,88bを初期位置IPの側に戻すための二次液圧に係る力F1が維持される。このため、スレーブピストン88a,88bが初期位置IPの側に付勢されて、初期位置IP近辺へと戻ってゆく。このスレーブピストン88a,88bの初期位置IP近辺への戻り移動に伴って、二次液圧に係る力F1も漸減してゆく。
そして、二次液圧に係る力F1が低減した結果、二次液圧に係る力F1から一次液圧に係る力F2を差し引いた偏差(F1−F2)を、弾性部材221に係る荷重F3が超えると、すなわち、第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bに係る開放条件(F1<(F2+F3))を充足すると、第1及び第2遮断弁60a,60bは、開放制御の開始時点から所定の遅延時間(例えば図4(e)参照)を経て、閉止状態から開放状態へと切り替わる。
ちなみに、本実施形態の例では、衝突被害軽減システム(液圧自動制御システム)19による自動制御(運転者による制動操作によらない)中が前提であるから、一次液圧に係る力F2は、実質的にゼロとみなすことができる。そうすると、前記の開放条件(F1<(F2+F3))は、二次液圧に係る力F1が、コイルばね221に係る荷重F3よりも小さいこと(F1<F3)と置き換えることができる。
第3の観点(請求項1)に基づく車両用制動力発生装置10によれば、第1の観点(請求項1)に係る発明の作用効果に加えて、スレーブピストン(ピストン)88a,88bが初期位置IP近辺まで戻ってきたときに第1及び第2遮断弁(開閉弁)60a,60bが開放することを考慮して弾性部材221のセット荷重を設定する際の具体的な設計指針を提供することができる。
〔その他の実施形態〕
以上説明した複数の実施形態は、本発明の具現化の例を示したものである。したがって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
10 車両用制動力発生装置
14 液圧発生装置
16 モータシリンダ装置
19 衝突被害軽減システム(液圧自動制御システム;液圧自動制御部)
58a 第1液圧路(液圧路)
58b 第2液圧路(液圧路)
60a 第1遮断弁(開閉弁)
60b 第2遮断弁(開閉弁)
72 電動モータ(電動アクチュエータ)
88a 第1スレーブピストン(ピストン)
88b 第2スレーブピストン(ピストン)
153 異常診断部
155 制御部
217 弁体
221 コイルばね(弾性部材)
227 励磁コイル
F1 二次液圧に係る力
F2 一次液圧に係る力
F3 コイルばね(弾性部材)に係る荷重

Claims (3)

  1. 運転者による制動操作を受け付ける液圧発生装置と、
    少なくとも前記制動操作に応じた電気信号に基づく電動アクチュエータの作動に伴うピストンの移動によってブレーキ液圧を発生させるモータシリンダ装置と、
    前記制動操作とは無関係に、前記モータシリンダ装置を用いてブレーキ液圧の自動制御を行う液圧自動制御部と、
    前記液圧発生装置及び前記モータシリンダ装置間の液圧路に設けられ、当該液圧路を、開放時に連通させる一方、閉止時に遮断させるように動作する開閉弁と、
    前記モータシリンダ装置の異常診断を行う異常診断部と、
    前記異常診断部により前記モータシリンダ装置が異常である旨の診断が下された場合、前記開閉弁を開放させる制御を行う制御部と、
    を備え、
    前記開閉弁は、励磁コイルの電磁力によって該開閉弁を閉止する方向に駆動される弁体、及び、当該弁体を、該開閉弁を開放する方向に付勢する弾性部材を有し、
    前記制御部によって前記開閉弁を開放させる制御が行われ、かつ、前記液圧自動制御部の自動制御によって発生した二次液圧に係る力F1及び前記弾性部材に係る荷重が前記弁体に作用している際であって、前記ピストンが初期位置近辺まで戻ってきたときに前記開閉弁が開放するように、当該開閉弁を開放可能とする開放圧を設定する、
    ことを特徴とする車両用制動力発生装置。
  2. 請求項1記載の車両用制動力発生装置であって、
    前記制御部は、当該車両用制動力発生装置の起動時に、運転者による制動操作に応じて前記液圧発生装置で発生した一次液圧が、前記開閉弁の開放圧を超えている場合に、当該車両用制動力発生装置の起動を禁止する、
    ことを特徴とする車両用制動力発生装置。
  3. 請求項1記載の車両用制動力発生装置であって、
    前記ピストン88a,88bが初期位置IP近辺まで戻ってきたときに、前記二次液圧に係る力F1から前記開閉弁60a,60bの上流側の液圧である一次液圧に係る力F2を差し引いた偏差(F1−F2)を、前記弾性部材221に係る荷重F3が超えるように、当該弾性部材221のセット荷重を設定する、
    ことを特徴とする車両用制動力発生装置。
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