実施の形態1.
実施の形態1に係る電力変換装置2の制御装置1(以下、単に制御装置1と称す)について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係る電力変換装置2及び制御装置1の構成図である。
電力変換装置2は、入力端子10と出力端子11との間で直流電圧を降圧又は昇圧する、スイッチング素子を備えた直流電力変換器とされている。制御装置1は、図2に示すように、PWM周期ΔTcの矩形パルス波信号(PWM信号)のデューティ比Dtを変化させるPWM制御によりスイッチング素子をオンオフ制御して、電力変換装置2の出力電圧Voを変化させる出力電圧制御を実行するように構成されている。PWM制御は、パルス幅変調(Pulse Width Modulation)制御である。デューティ比Dtは、PWM周期ΔTcに対する、スイッチング素子(矩形パルス波信号)がオンされているオン期間ΔTonの比である(Dt=ΔTon/ΔTc×100%)。
本実施の形態では、制御装置1は、図3に示すように、PWM周期ΔTcで振動する搬送波とコンペアレベルVcとを比較して、矩形パルス波信号を生成するように構成されている。具体的には、制御装置1は、図1に示すように、PWM周期ΔTcで振動する搬送波を生成する搬送波生成手段30と、コンペアレベルVcを設定するコンペアレベル設定手段31と、搬送波とコンペアレベルVcとを比較して、スイッチング素子をオン又はオフさせる矩形パルス波信号(PWM信号)を生成するPWM信号生成手段32と、を備えている。そして、コンペアレベル設定手段31は、コンペアレベルVcを変化させることにより、矩形パルス波信号のデューティ比Dtを変化させる。
本実施の形態では、制御装置1は、電力変換装置2の出力電圧Voを検出する出力電圧検出手段33と、出力電圧Voの電圧指令Vrを設定する電圧指令設定手段34とを備えている。そして、コンペアレベル設定手段31は、出力電圧Voが電圧指令Vrに近づくように、コンペアレベルVcを変化させるフィードバック制御を行うように構成されている。
PWM信号生成手段32は、図3に搬送波が対称三角波である場合の例を示すように、搬送波がコンペアレベルVcに対してオン側(本例では下側)になった場合に、矩形パルス波信号をオン側に反転させてスイッチング素子をオンさせるオン信号を生成し、搬送波がコンペアレベルVcに対してオン側とは反対側のオフ側(本例では上側)になった場合に、矩形パルス波信号をオフ側に反転させてスイッチング素子をオフさせるオフ信号を生成するように構成されている。
本実施の形態では、コンペアレベル設定手段31は、搬送波におけるオン側(下側)の頂点のタイミングで、デューティ比Dtの指令値を更新して、コンペアレベルVcを更新するように構成されている。すなわち、コンペアレベル設定手段31は、搬送波におけるオン側(下側)の頂点のタイミングで、デューティ比Dtの指令値を変化させてコンペアレベルVcを変化させ、次のオン側(下側)の頂点のタイミングまで、変化させたデューティ比Dtの指令値及びコンペアレベルVcを維持する。搬送波におけるオン側(下側)の頂点のタイミングが、PWM周期ΔTc毎に設定される基準タイミングTbsとされる。
コンペアレベルVc及び搬送波の形状の変化に応じて、スイッチング素子をオンさせるオンタイミングTonから、PWM周期ΔTc毎に設定される基準タイミングTbsまでの期間である前期間ΔTbと、基準タイミングTbsからスイッチング素子をオフさせるオフタイミングToffまでの期間である後期間ΔTaとが変化する。搬送波の形状の変化に応じて、前期間ΔTbと後期間ΔTaとの比である前後期間比Rbaが変化する。前後期間比Rbaは、前期間ΔTbを、前期間ΔTbと後期間ΔTaの合計値で除算した比であるものとする(Rba=ΔTb/(ΔTb+ΔTa))。
ここで、搬送波として、対称三角波、前傾三角波、後傾三角波、逆のこぎり波、のこぎり波を用いる場合について説明する。対称三角波は、オン側(下側)に変化する傾きとオフ側(上側)に変化する傾きとが等しい三角波である。前傾三角波は、オフ側(上側)に変化する傾きがオン側(下側)に変化する傾きよりも大きい三角波である。後傾三角波は、オン側(下側)に変化する傾きがオフ側(上側)に変化する傾きよりも大きい三角波である。逆のこぎり波は、オフ側(上側)にステップ的に変化した後、オン側(下側)に次第に変化する三角波であり、逆のこぎり波は、前傾三角波に含まれる。のこぎり波は、オン側(下側)にステップ的に変化した後、オフ側(上側)に次第に変化する三角波であり、のこぎり波は、後傾三角波に含まれる。なお、これらの三角波では、オフ側(上側)に変化する傾き、及びオン側(下側)に変化する傾きは、一定の傾きとされている。
搬送波を対称三角波とした場合は、前期間ΔTbと後期間ΔTaとが等しくなり、前後期間比Rbaは0.5になる。搬送波を前傾三角波とした場合は、前期間ΔTbは後期間ΔTaよりも長くなり、前後期間比Rbaは0.5よりも大きくなる。搬送波を逆のこぎり波とした場合は、前期間ΔTbはゼロよりも長くなり、後期間ΔTaはゼロになり、前後期間比Rbaは1.0になる。搬送波を後傾三角波とした場合は、前期間ΔTbは後期間ΔTaよりも短くなり、前後期間比Rbaは0.5よりも小さくなる。のこぎり波では、前期間ΔTbはゼロになり、後期間ΔTaはゼロよりも長くなり、前後期間比Rbaは0.0になる。
ところで、デューティ比Dtの指令値(コンペアレベルVc)を変化させてから、矩形パルス波信号に反映されるまでには遅れ時間が生じる。この遅れ時間は、搬送波の形状及びデューティ比Dtの値によって変化する。遅れ時間が変化すると、デューティ比Dtの指令値(コンペアレベルVc)を変化させてから、矩形パルス波信号に反映され、電力変換装置2のリアクトル5等を流れる電流及び出力電圧Voが変化するまでの応答性が変化し、通常、遅れ時間が小さい方が、制御系の応答性及び安定性が向上するため好ましい。
以下で、デューティ比Dtが50%よりも大きい場合と、デューティ比Dtが50%よりも小さい場合のそれぞれについて、搬送波が、対称三角波、前傾三角波、後傾三角波、逆のこぎり波、のこぎり波である場合の遅れ時間について説明する。
<デューティ比Dtが50%よりも大きい場合>
まず、デューティ比Dtが50%よりも大きい場合について説明する。
図4に、搬送波が対称三角波である場合を示す。時刻t01の基準タイミングTbsで、デューティ比Dtの指令値が60%から80%に変更され、コンペアレベルVcが0.6から0.8に変更されている。時刻t01の基準タイミングTbsからしばらく経過した時刻t02で、スイッチング素子をオフさせるオフタイミングToffが生じており、オフタイミングToffは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオフタイミングから変化時間ΔTCoffだけ遅くなっている。その後、時刻t03で、スイッチング素子をオンさせるオンタイミングTonが生じており、オンタイミングTonは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオンタイミングから変化時間ΔTConだけ早くなっている。オフタイミングToffの変化時間ΔTCoffと、オンタイミングTonの変化時間ΔTConとは等しくなっている。また、オフタイミングToffとオンタイミングTonの変化は、基準タイミングTbs間の中心タイミングTcnを中心に前後対称に生じている。
図5に、搬送波が前傾三角波である場合を示す。図4の場合と同様に、時刻t11の基準タイミングTbsで、デューティ比Dtの指令値が60%から80%に変更され、コンペアレベルVcが0.6から0.8に変更されている。その後、図4の対称三角波の場合の時刻t02よりも早い時刻t12で、オフタイミングToffが生じており、オフタイミングToffは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオフタイミングから変化時間ΔTCoffだけ遅くなっている。その後、図4の対称三角波の場合の時刻t03よりも早い時刻t13で、オンタイミングTonが生じており、オンタイミングTonは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオンタイミングから変化時間ΔTConだけ早くなっている。オンタイミングTonの変化時間ΔTConは、オフタイミングToffの変化時間ΔTCoffよりも長くなっている。また、オフタイミングToffとオンタイミングTonの変化は、基準タイミングTbs間の中心タイミングTcnに対して全体的に前側に寄って生じている。このように、前傾三角波の場合は、図4の対称三角波の場合よりも、オフタイミングToff及びオンタイミングTonが早くなっており、デューティ比Dtの指令値(コンペアレベルVc)を変化させてから矩形パルス波信号に反映されるまでの遅れ時間を、対称三角波の場合よりも短くすることができる。
図6に、搬送波が、前傾三角波に含まれる逆のこぎり波である場合を示す。図4の場合と同様に、時刻t21の基準タイミングTbsで、デューティ比Dtの指令値が60%から80%に変更され、コンペアレベルVcが0.6から0.8に変更されている。また、オフタイミングToffは、基準タイミングTbsで生じるため、コンペアレベルVcの変化によりオフタイミングToffは変化していない。その後、図4の対称三角波の場合の時刻t03及び図5の前傾三角波の時刻t13よりも早い時刻t22で、オンタイミングTonが生じており、オンタイミングTonは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオンタイミングから変化時間ΔTConだけ早くなっている。オンタイミングTonの変化時間ΔTConは、ゼロとなるオフタイミングToffの変化時間よりも長くなっている。また、オンタイミングTonの変化は、基準タイミングTbs間の中心タイミングTcnに対して全体的に前側に寄って生じている。このように、逆のこぎり波の場合は、図4の対称三角波及び図5の前傾三角波の場合よりも、オフタイミングToff及びオンタイミングTonが全体として早くなっており、デューティ比Dtの指令値(コンペアレベルVc)を変化させてから矩形パルス波信号に反映されるまでの遅れ時間を、対称三角波及び前傾三角波の場合よりも短くすることができる。
図7に、搬送波が後傾三角波である場合を示す。図4の場合と同様に、時刻t31の基準タイミングTbsで、デューティ比Dtの指令値が60%から80%に変更され、コンペアレベルVcが0.6から0.8に変更されている。その後、図4の対称三角波の場合の時刻t02よりも遅い時刻t32で、オフタイミングToffが生じており、オフタイミングToffは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオフタイミングから変化時間ΔTCoffだけ遅くなっている。その後、図4の対称三角波の場合の時刻t03よりも遅い時刻t33で、オンタイミングTonが生じており、オンタイミングTonは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオンタイミングから変化時間ΔTConだけ早くなっている。オフタイミングToffの変化時間ΔTCoffは、オンタイミングTonの変化時間ΔTConよりも長くなっている。また、オフタイミングToffとオンタイミングTonの変化は、基準タイミングTbs間の中心タイミングTcnに対して全体的に後側に寄って生じている。このように、後傾三角波の場合は、図4の対称三角波の場合よりも、オフタイミングToff及びオンタイミングTonが遅くなっており、デューティ比Dtの指令値(コンペアレベルVc)を変化させてから矩形パルス波信号に反映されるまでの遅れ時間が、対称三角波の場合よりも長くなっている。
図8に、搬送波が、後傾三角波に含まれるのこぎり波である場合を示す。図4の場合と同様に、時刻t41の基準タイミングTbsで、デューティ比Dtの指令値が60%から80%に変更され、コンペアレベルVcが0.6から0.8に変更されている。その後、図4の対称三角波の場合の時刻t02及び図7の後傾三角波の場合の時刻t32よりも遅い時刻t42で、オフタイミングToffが生じており、オフタイミングToffは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオフタイミングから変化時間ΔTCoffだけ遅くなっている。オンタイミングTonは、基準タイミングTbsで生じるため、コンペアレベルVcの変化によりオンタイミングTonは変化していない。オフタイミングToffの変化時間ΔTCoffは、ゼロとなるオンタイミングTonの変化時間よりも長くなっている。また、オフタイミングToffの変化は、基準タイミングTbs間の中心タイミングTcnに対して全体的に後側に寄って生じている。このように、のこぎり波の場合は、図4の対称三角波及び図7の後傾三角波の場合よりも、オフタイミングToff及びオンタイミングTonが全体として遅くなっており、デューティ比Dtの指令値(コンペアレベルVc)を変化させてから矩形パルス波信号に反映されるまでの遅れ時間が、対称三角波及び後傾三角波の場合よりも長くなっている。
<デューティ比Dtが50%よりも小さい場合>
次に、デューティ比Dtが50%よりも小さい場合について説明する。
図9に、搬送波が対称三角波である場合を示す。時刻t51の基準タイミングTbsで、デューティ比Dtの指令値が40%から20%に変更され、コンペアレベルVcが0.4から0.2に変更されている。時刻t51の基準タイミングTbsからしばらく経過した時刻t52で、オフタイミングToffが生じており、オフタイミングToffは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオフタイミングから変化時間ΔTCoffだけ早くなっている。その後、時刻t53で、スイッチング素子をオンさせるオンタイミングTonが生じており、オンタイミングTonは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオンタイミングから変化時間ΔTConだけ遅くなっている。オフタイミングToffの変化時間ΔTCoffと、オンタイミングTonの変化時間ΔTConとは等しくなっている。また、オフタイミングToffとオンタイミングTonの変化は、基準タイミングTbs間の中心タイミングTcnを中心に前後対称に生じている。
図10に、搬送波が前傾三角波である場合を示す。図9の場合と同様に、時刻t61の基準タイミングTbsで、デューティ比Dtの指令値が40%から20%に変更され、コンペアレベルVcが0.4から0.2に変更されている。その後、図9の対称三角波の場合の時刻t52よりも早い時刻t62で、オフタイミングToffが生じており、オフタイミングToffは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオフタイミングから変化時間ΔTCoffだけ早くなっている。その後、図9の対称三角波の場合の時刻t53よりも遅い時刻t63で、オンタイミングTonが生じており、オンタイミングTonは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオンタイミングから変化時間ΔTConだけ遅くなっている。オンタイミングTonの変化時間ΔTConは、オフタイミングToffの変化時間ΔTCoffよりも長くなっている。オフタイミングToffは、図9の対称三角波の場合よりも早まっているものの、オフタイミングToffの変化時間ΔTCoffは短く、変化時間ΔTConの長いオンタイミングTonは、図9の対称三角波の場合よりも遅くなっている。よって、オフタイミングToffとオンタイミングTonの変化は、基準タイミングTbs間の中心タイミングTcnに対して全体的に後側に寄って生じている。このように、前傾三角波の場合は、図9の対称三角波の場合よりも、オフタイミングToff及びオンタイミングTonが全体として遅くなっており、デューティ比Dtの指令値(コンペアレベルVc)を変化させてから矩形パルス波信号に反映されるまでの遅れ時間が、対称三角波の場合よりも長くなっている。
図11に、搬送波が、前傾三角波に含まれる逆のこぎり波である場合を示す。図9の場合と同様に、時刻t71の基準タイミングTbsで、デューティ比Dtの指令値が40%から20%に変更され、コンペアレベルVcが0.4から0.2に変更されている。また、オフタイミングToffは、基準タイミングTbsで生じるため、コンペアレベルVcの変化によりオフタイミングToffは変化していない。その後、図9の対称三角波の場合の時刻t53及び図10の前傾三角波の時刻t63よりも遅い時刻t72で、オンタイミングTonが生じており、オンタイミングTonは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオンタイミングから変化時間ΔTConだけ遅くなっている。オンタイミングTonの変化時間ΔTConは、ゼロとなるオフタイミングToffの変化時間よりも長くなっている。また、オンタイミングTonの変化は、基準タイミングTbs間の中心タイミングTcnに対して全体的に後側に寄って生じている。このように、逆のこぎり波の場合は、図9の対称三角波及び図10の前傾三角波の場合よりも、オフタイミングToff及びオンタイミングTonが全体として遅くなっており、デューティ比Dtの指令値(コンペアレベルVc)を変化させてから矩形パルス波信号に反映されるまでの遅れ時間が、対称三角波及び前傾三角波の場合よりも長くなっている。
図12に、搬送波が後傾三角波である場合を示す。図9の場合と同様に、時刻t81の基準タイミングTbsで、デューティ比Dtの指令値が40%から20%に変更され、コンペアレベルVcが0.4から0.2に変更されている。その後、図9の対称三角波の場合の時刻t52よりも早い時刻t82で、オフタイミングToffが生じており、オフタイミングToffは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオフタイミングから変化時間ΔTCoffだけ早くなっている。その後、図9の対称三角波の場合の時刻t53よりも遅い時刻t83で、オンタイミングTonが生じており、オンタイミングTonは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオンタイミングから変化時間ΔTConだけ遅くなっている。オフタイミングToffの変化時間ΔTCoffは、オンタイミングTonの変化時間ΔTConよりも長くなっている。オンタイミングTonは、図9の対称三角波の場合よりも遅くなっているものの、オンタイミングTonの変化時間ΔTConは短く、変化時間ΔTCoffの長いオフタイミングToffは、図9の対称三角波の場合よりも早くなっている。よって、オフタイミングToffとオンタイミングTonの変化は、基準タイミングTbs間の中心タイミングTcnに対して全体的に前側に寄って生じている。このように、後傾三角波の場合は、図9の対称三角波の場合よりも、オフタイミングToff及びオンタイミングTonが全体として早くなっており、デューティ比Dtの指令値(コンペアレベルVc)を変化させてから矩形パルス波信号に反映されるまでの遅れ時間を、対称三角波の場合よりも短くすることができる。
図13に、搬送波が、後傾三角波に含まれるのこぎり波である場合を示す。図9の場合と同様に、時刻t91の基準タイミングTbsで、デューティ比Dtの指令値が40%から20%に変更され、コンペアレベルVcが0.4から0.2に変更されている。その後、図9の対称三角波の場合の時刻t52及び図12の後傾三角波の場合の時刻t82よりも早い時刻t92で、オフタイミングToffが生じており、オフタイミングToffは、破線で示すコンペアレベルVcを変化させていないと仮定した場合のオフタイミングから変化時間ΔTCoffだけ早くなっている。オンタイミングTonは、基準タイミングTbsで生じるため、コンペアレベルVcの変化によりオンタイミングTonは変化していない。オフタイミングToffの変化時間ΔTCoffは、ゼロとなるオンタイミングTonの変化時間よりも長くなっている。また、オフタイミングToffの変化は、基準タイミングTbs間の中心タイミングTcnに対して全体的に前側に寄って生じている。このように、のこぎり波の場合は、図9の対称三角波及び図12の後傾三角波の場合よりも、オフタイミングToff及びオンタイミングTonが全体として早くなっており、デューティ比Dtの指令値(コンペアレベルVc)を変化させてから矩形パルス波信号に反映されるまでの遅れ時間を、対称三角波及び後傾三角波の場合よりも短くすることができる。
<まとめ>
図14に以上のまとめを示す。デューティ比Dtが50%よりも大きい場合(Dt>50%)は、前傾三角波の遅れ時間が、対称三角波及び後傾三角波の遅れ時間よりも短くなる。すなわち、前期間ΔTbを後期間ΔTaよりも長く設定する場合(ΔTb>ΔTa)の遅れ時間は、前期間ΔTbと後期間ΔTaとを等しく設定する場合(ΔTb=ΔTa)及び前期間ΔTbを後期間ΔTaよりも短く設定する場合(ΔTb<ΔTa)の遅れ時間よりも短くなる。前傾三角波の中でも、オフ側(上側)に変化する傾きが最も大きい、逆のこぎり波の遅れ時間が最も短くなる。すなわち、前期間ΔTbをゼロよりも長く設定し、後期間ΔTaをゼロに設定する場合(ΔTb>ΔTa=0)の遅れ時間が最も短くなる。
一方、デューティ比Dtが50%よりも小さい場合(Dt<50%)は、後傾三角波の遅れ時間が、対称三角波及び前傾三角波の遅れ時間よりも短くなる。すなわち、前期間ΔTbを後期間ΔTaよりも短く設定する場合(ΔTb<ΔTa)の遅れ時間は、前期間ΔTbと後期間ΔTaとを等しく設定する場合(ΔTb=ΔTa)及び前期間ΔTbを後期間ΔTaよりも長く設定する場合(ΔTb>ΔTa)の遅れ時間よりも短くなる。後傾三角波の中でも、オン側(下側)に変化する傾きが最も大きい、のこぎり波の遅れ時間が最も短くなる。すなわち、前期間ΔTbをゼロに設定し、後期間ΔTaをゼロよりも長く設定する場合(0=ΔTb<ΔTa)の遅れ時間が最も短くなる。
デューティ比Dtが50%の場合(Dt=50%)は、対称三角波、前傾三角波、及び後傾三角波の遅れ時間は中間的な状態になる。すなわち、前期間ΔTbと後期間ΔTaの大小にかかわらず、遅れ時間は大きく変化しない。
このように、前期間ΔTb及び後期間ΔTaの前後期間比Rba(搬送波の形状)を変化させることにより、動作条件に応じて、デューティ比Dtの指令値(コンペアレベルVc)を変化させてから矩形パルス波信号に反映されるまでの遅れ時間が変化する。よって、動作条件に応じて、前後期間比Rbaを変化させ、遅れ時間を適切に調節することが望まれる。
そこで、制御装置1は、PWM制御において、スイッチング素子をオンさせるオンタイミングTonから、PWM周期ΔTc毎に設定される基準タイミングTbsまでの期間である前期間ΔTbと、基準タイミングTbsからスイッチング素子をオフさせるオフタイミングToffまでの期間である後期間ΔTaとの比である前後期間比Rbaを、動作条件に応じて変更するように構成されている。
この構成によれば、動作条件に応じて、前後期間比Rbaを適切に変更させて、デューティ比Dtの指令値を変化させてから矩形パルス波信号に反映されるまでの遅れ時間を適切に調節することができる。よって、デューティ比Dtの指令値(コンペアレベルVc)を変化させてから電力変換装置2を流れる電流及び出力電圧Voが変化するまでの応答性を適切に調節することができ、制御系の応答性及び安定性を向上させることができる。
また、制御装置1は、動作条件としてのデューティ比Dtに応じて、前後期間比Rbaを変更するように構成されている。上記のように、デューティ比Dt及び前後期間比Rbaに応じて矩形パルス波信号の遅れ時間が変化する。上記の構成によれば、デューティ比Dtに応じて、前後期間比Rbaを適切に変化させて、遅れ時間を適切に変化させることができる。
制御装置1は、動作条件としてのデューティ比Dtが、予め設定された第一閾値以上の場合に、前期間ΔTbを後期間ΔTaよりも長くし、デューティ比Dtが、第一閾値以下の値に予め設定された第二閾値未満の場合に、前期間ΔTbを後期間ΔTaよりも短くするように構成されている。上記のように、デューティ比Dtが高い場合は、前期間ΔTbが後期間ΔTaよりも長い方が、遅れ時間が短くなり、デューティ比Dtが低い場合は、前期間ΔTbが後期間ΔTaよりも短い方が、遅れ時間が短くなる。上記の構成によれば、デューティ比Dtが第一閾値以上の場合に、前期間ΔTbを後期間ΔTaよりも長くすることにより、遅れ時間を短くすることができ、デューティ比Dtが第二閾値未満の場合に、前期間ΔTbを後期間ΔTaよりも短くすることにより、遅れ時間を短くすることができる。
本実施の形態では、第一閾値は50%に設定され、第二閾値は第一閾値と等しい50%に設定されている。よって、デューティ比Dtが50%以上又は50%未満であるかに応じて、前期間ΔTbと後期間ΔTaとの前後期間比Rbaを変化させて、遅れ時間を短くすることができる。なお、第一閾値及び第二閾値を用いた判定に、ヒステリシスを設けてもよい。
制御装置1は、デューティ比Dtが、第一閾値以上の場合に、前期間ΔTbをゼロより長くすると共に後期間ΔTaをゼロにし、デューティ比Dtが、第二閾値未満の場合に、前期間ΔTbをゼロにすると共に後期間ΔTaをゼロより長くするように構成されている。この構成によれば、デューティ比Dtが第一閾値以上又は第二閾値未満であるかに応じて、遅れ時間の短縮効果の最も高い前後期間比Rbaに変更して、遅れ時間を最大限に短くすることができる。
制御装置1は、基準タイミングTbsで、デューティ比Dtの指令値を更新すると共に、更新したデューティ比Dtの指令値に応じて当該基準タイミングTbs以降のオフタイミングToff及びオンタイミングTonを設定して、前後期間比Rbaを変更するように構成されている。
本実施の形態では、制御装置1は、上記のように、搬送波とコンペアレベルVcとを比較して、矩形パルス波信号を生成するように構成されている。そのため、搬送波生成手段30は、動作条件に応じて、搬送波が増加する傾きと、搬送波が減少する傾きとを変更することにより、搬送波における谷又は山の頂点のタイミングを基準タイミングTbsとした前後期間比Rbaを変更するように構成されている。この構成によれば、搬送波の増加傾きと減少傾きとを変更することにより、容易に前後期間比Rbaを変更することができる。
また、搬送波生成手段30は、デューティ比Dtが第一閾値以上の場合に、搬送波を前傾三角波とし、デューティ比Dtが第二閾値未満の場合に、搬送波を後傾三角波とすることにより、搬送波におけるオフ側(下側)の頂点のタイミングを基準タイミングTbsとした前後期間比Rbaを変更するように構成されている。
搬送波生成手段30は、デューティ比Dtが第一閾値以上の場合に、搬送波を前傾三角波の中でも逆のこぎり波とし、デューティ比Dtが第二閾値未満の場合に、搬送波を後傾三角波の中でものこぎり波とするように構成されている。
コンペアレベル設定手段31は、コンペアレベルVcを変化させることにより、デューティ比Dtを変化させるように構成されている。そのため、搬送波生成手段30は、動作条件としてコンペアレベルVcに応じて、搬送波が増加する傾きと、搬送波が減少する傾きとを変更するように構成されている。なお、コンペアレベルVcは、デューティ比Dtの指令値に相当する。
コンペアレベル設定手段31は、搬送波におけるオン側(下側)の頂点のタイミング(基準タイミングTbs)で、コンペアレベルVcを更新する。PWM信号生成手段32は、更新されたコンペアレベルVcに応じて、当該基準タイミングTbs以降のオフタイミングToff及びオンタイミングTonを設定して、前後期間比Rbaを変更するように構成されている。
図1に示すように、電力変換装置2は、入力端子10から出力端子11に直流電圧を降圧する降圧用スイッチング素子3dを備えた降圧チョッパ回路12と、入力端子10から出力端子11に直流電圧を昇圧する昇圧用スイッチング素子3uを備えた昇圧チョッパ回路13と、を備えている。具体的には、電力変換装置2は、入力端子10から出力端子11に直流電圧を降圧して電力を供給する降圧動作のための降圧用スイッチング素子3d及び降圧用整流器4dと、入力端子10から出力端子11に直流電圧を昇圧して電力を供給する昇圧動作のための昇圧用スイッチング素子3u及び昇圧用整流器4uと、降圧動作及び昇圧動作のためのリアクトル5と、を備えている。本実施の形態では、降圧用及び昇圧用スイッチング素子3d、3uには、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられている。なお、降圧用及び昇圧用スイッチング素子3d、3uには、フリーホイールダイオードが逆並列接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の他の種類のスイッチング素子が用いられてもよい。降圧用及び昇圧用整流器4d、4uには、ダイオードが用いられている。入力端子10には、直流電源7が接続され、出力端子11には電気負荷8が接続されている。
降圧チョッパ回路12は、降圧用スイッチング素子3d、降圧用整流器4d、及びリアクトル5により構成されている。降圧用スイッチング素子3dのドレイン端子は、入力端子10の正極に接続され、降圧用スイッチング素子3dのソース端子が、リアクトル5の第一端子に接続され、リアクトル5の第二端子が、出力端子11の正極側(本例では、昇圧用整流器4uのアノード端子)に接続されている。降圧用整流器4dのカソード端子は、降圧用スイッチング素子3dのソース端子とリアクトル5の第一端子を接続する接続線に接続され、降圧用整流器4dのアノード端子は、入力端子10の負極と出力端子11の負極を接続する負極接続線に接続されている。
昇圧チョッパ回路13は、昇圧用スイッチング素子3u、昇圧用整流器4u、及びリアクトル5により構成されている。リアクトル5の第一端子は、入力端子10の正極側(本例では、降圧用スイッチング素子3dのソース端子)に接続され、リアクトル5の第二端子は、昇圧用整流器4uのアノード端子に接続され、昇圧用整流器4uのカソード端子は、出力端子11の正極に接続されている。昇圧用スイッチング素子3uのドレイン端子は、リアクトル5の第二端子と昇圧用整流器4uのアノード端子を接続する接続線に接続され、昇圧用スイッチング素子3uのソース端子は、入力端子10の負極と出力端子11の負極を接続する負極接続線に接続されている。本実施の形態では、平滑コンデンサ6が、出力端子11の正極と負極との間に並列接続されている。
制御装置1は、降圧動作を行う場合は、降圧用スイッチング素子3dをPWM制御によりオンオフ制御すると共に、当該降圧用スイッチング素子3dのPWM制御において、動作条件に応じて前後期間比Rbaを変更するように構成されている。一方、制御装置1は、昇圧動作を行う場合は、昇圧用スイッチング素子3uをPWM制御によりオンオフ制御すると共に、当該昇圧用スイッチング素子3uのPWM制御において、動作条件に応じて前後期間比Rbaを変更するように構成されている。この構成によれば、降圧用及び昇圧用スイッチング素子3d、3uのそれぞれについて、矩形パルス波信号の前後期間比Rbaを適切に変更させて、遅れ時間を適切に調節することができる。
搬送波生成手段30は、複数のスイッチング素子(本例では、降圧用及び昇圧用スイッチング素子3d、3u)のそれぞれについて、予め設定されたシフト量ずつ互いにシフトした搬送波を生成するように構成されている。コンペアレベル設定手段31は、比較させる搬送波に対応してシフトさせた、複数のスイッチング素子に対して共通のコンペアレベルVcを生成するように構成されている。
本実施の形態では、シフト量は、搬送波の振幅と等しくされている。図18から図21に示すように、昇圧用スイッチング素子3uの搬送波は、降圧用スイッチング素子3dの搬送波に対して、搬送波の振幅(本例では1.0)と等しいシフト量だけオフ側(上側)にシフトされている。そのため、降圧用スイッチング素子3dの搬送波は、0.0から1.0の間を振動し、昇圧用スイッチング素子3uの搬送波は、1.0から2.0の間を振動する。この構成によれば、共通のコンペアレベルVcを変化させることにより、昇圧動作と降圧動作とを継ぎ目なく切り替えることができる。
共通のコンペアレベルVcは、降圧用スイッチング素子3dの搬送波及び昇圧用スイッチング素子3uの搬送波に対応して、0.0から2.0の間を変化する。制御装置1は、コンペアレベルVcが1.0よりも大きい場合は、昇圧用搬送波とコンペアレベルVcとの比較により昇圧用スイッチング素子3uをオンオフ制御して、昇圧動作を行わせると共に、降圧用スイッチング素子3dを常時オンにして昇圧チョッパ回路13に入力電圧を供給するように構成されている。制御装置1は、コンペアレベルVcが1.0に等しい場合は、降圧用スイッチング素子3dを常時オンにすると共に、昇圧用スイッチング素子3uを常時オフにして、昇圧動作及び降圧動作を行わずに、入力端子10と出力端子11とを直結させるように構成されている。制御装置1は、コンペアレベルVcが1.0より小さい場合は、降圧用搬送波とコンペアレベルVcとの比較により降圧用スイッチング素子3dをオンオフ制御して、降圧動作を行わせると共に、昇圧用スイッチング素子3uを常時オフにするように構成されている。
この場合の制御装置1の構成を図15に示す。制御装置1は、昇圧用スイッチング素子3u用の搬送波を生成する昇圧用搬送波生成手段30uと、降圧用スイッチング素子3d用の搬送波を生成する降圧用搬送波生成手段30dと、昇圧及び降圧共通のコンペアレベルVcを生成するコンペアレベル設定手段31と、昇圧用搬送波及び共通のコンペアレベルVcに基づいて昇圧用スイッチング素子3u用の矩形パルス波信号を生成する昇圧用PWM信号生成手段32uと、降圧用搬送波及び共通のコンペアレベルVcに基づいて降圧用スイッチング素子3d用の矩形パルス波信号を生成する降圧用PWM信号生成手段32dと、を備えている。昇圧用PWM信号生成手段32uが生成した昇圧用矩形パルス波信号は、昇圧用スイッチング素子3uのゲート端子に入力され、降圧用PWM信号生成手段32dが生成した降圧用矩形パルス波信号は、降圧用スイッチング素子3dのゲート端子に入力される。
また、制御装置1は、電力変換装置2の出力電圧Voを検出する出力電圧検出手段33と、出力電圧Voの電圧指令Vrを設定する電圧指令設定手段34とを備えている。コンペアレベル設定手段31は、出力電圧Voが電圧指令Vrに近づくように、コンペアレベルVcを変化させるフィードバック制御を行うように構成されている。なお、出力電圧検出手段33は、制御装置1に入力される電圧センサ9の出力信号に基づいて、出力端子11の電圧である出力電圧Voを検出する。電圧指令設定手段34は、電気負荷8の状態や、外部からの指令に基づいて、電圧指令Vrを設定する。
昇圧用搬送波生成手段30uは、図16のフローチャートに示すように、コンペアレベルVcが、昇圧用搬送波の振幅中心値1.5に設定された昇圧用第一閾値以上になった場合(ステップS01:Yes)に、昇圧用搬送波として逆のこぎり波を生成し(ステップS02)、コンペアレベルVcが、昇圧用第一閾値と同じ値に設定された昇圧用第二閾値未満になった場合(ステップS01:No)に、昇圧用搬送波としてのこぎり波を生成する(ステップS03)ように構成されている。
降圧用搬送波生成手段30dは、図17のフローチャートに示すように、コンペアレベルVcが、降圧用搬送波の振幅中心値0.5に設定された降圧用第一閾値以上になった場合(ステップS11:Yes)に、降圧用搬送波として逆のこぎり波を生成し(ステップS12)、コンペアレベルVcが、降圧用第一閾値と同じ値に設定された降圧用第二閾値未満になった場合(ステップS11:No)に、降圧用搬送波としてのこぎり波を生成する(ステップS13)ように構成されている。
図18及び図19に、昇圧動作の場合のタイムチャートを示す。
図18のタイムチャートは、コンペアレベルVcが、昇圧用第一閾値(1.5)以上であって、降圧用第一閾値(0.5)以上である場合(本例では、Vc=1.7)の例である。この場合は、昇圧用搬送波生成手段30uは、1.0から2.0の間を振動する逆のこぎり波を生成し、降圧用搬送波生成手段30dは、0.0から1.0の間を振動する逆のこぎり波を生成している。
降圧用PWM信号生成手段32dは、降圧用搬送波とコンペアレベルVcとを比較して、コンペアレベルVc(1.7)に応じたデューティ比Dt(本例では100%)の降圧用スイッチング素子3d用の矩形パルス波信号を生成している。当該降圧用の矩形パルス波信号に応じて、降圧用スイッチング素子3dが常時オン状態にされ、入力端子10に供給された入力電圧が降圧されずに、昇圧チョッパ回路13側に直接供給される。
一方、昇圧用PWM信号生成手段32uは、昇圧用搬送波とコンペアレベルVcとを比較して、コンペアレベルVc(1.7)に応じたデューティ比Dt(本例では70%)の昇圧用スイッチング素子3u用の矩形パルス波信号を生成している。当該昇圧用の矩形パルス波信号に応じて、昇圧用スイッチング素子3uがオン状態又はオフ状態にされ、昇圧チョッパ回路13に入力電圧の昇圧動作を行わせる。
図19のタイムチャートは、コンペアレベルVcが、昇圧用第二閾値(1.5)未満であって、降圧用第一閾値(0.5)以上である場合(本例では、Vc=1.3)の例である。この場合は、昇圧用搬送波生成手段30uは、1.0から2.0の間を振動するのこぎり波を生成し、降圧用搬送波生成手段30dは、0.0から1.0の間を振動する逆のこぎり波を生成している。
降圧用PWM信号生成手段32dは、図18の場合と同様に、昇圧用搬送波とコンペアレベルVcとを比較して、コンペアレベルVc(1.3)に応じたデューティ比Dt(本例では100%)の降圧用スイッチング素子3d用の矩形パルス波信号を生成している。当該降圧用の矩形パルス波信号に応じて、降圧用スイッチング素子3dが常時オン状態にされ、入力電圧が降圧されずに、昇圧チョッパ回路13側に直接供給される。
一方、昇圧用PWM信号生成手段32uは、昇圧用搬送波とコンペアレベルVcとを比較して、コンペアレベルVc(1.3)に応じたデューティ比Dt(本例では30%)の昇圧用スイッチング素子3u用の矩形パルス波信号を生成している。当該昇圧用の矩形パルス波信号に応じて、昇圧用スイッチング素子3uがオン状態又はオフ状態にされ、昇圧チョッパ回路13に入力電圧の昇圧動作を行わせる。
図20及び図21に、降圧動作の場合のタイムチャートを示す。
図20のタイムチャートは、コンペアレベルVcが、昇圧用第二閾値(1.5)未満であって、降圧用第一閾値(0.5)以上である場合(本例では、Vc=0.7)の例である。この場合は、昇圧用搬送波生成手段30uは、1.0から2.0の間を振動するのこぎり波を生成し、降圧用搬送波生成手段30dは、0.0から1.0の間を振動する逆のこぎり波を生成している。
降圧用PWM信号生成手段32dは、降圧用搬送波とコンペアレベルVcとを比較して、コンペアレベルVc(0.7)に応じたデューティ比Dt(本例では70%)の降圧用スイッチング素子3d用の矩形パルス波信号を生成している。当該降圧用の矩形パルス波信号に応じて、降圧用スイッチング素子3dがオン状態又はオフ状態にされ、降圧チョッパ回路12に入力電圧の降圧動作を行わせる。
一方、昇圧用PWM信号生成手段32uは、昇圧用搬送波とコンペアレベルVcとを比較して、コンペアレベルVc(0.7)に応じたデューティ比Dt(本例では0%)の昇圧用スイッチング素子3u用の矩形パルス波信号を生成している。当該昇圧用の矩形パルス波信号に応じて、昇圧用スイッチング素子3uが常時オフ状態にされ、降圧チョッパ回路12により降圧された電圧が昇圧されずに出力端子11に供給される。
図21のタイムチャートは、コンペアレベルVcが、昇圧用第二閾値(1.5)未満であって、降圧用第二閾値(0.5)未満である場合(本例では、Vc=0.3)の例である。この場合は、昇圧用搬送波生成手段30uは、1.0から2.0の間を振動するのこぎり波を生成し、降圧用搬送波生成手段30dは、0.0から1.0の間を振動するのこぎり波を生成している。
降圧用PWM信号生成手段32dは、降圧用搬送波とコンペアレベルVcとを比較して、コンペアレベルVc(0.3)に応じたデューティ比Dt(本例では30%)の降圧用スイッチング素子3d用の矩形パルス波信号を生成している。当該降圧用の矩形パルス波信号に応じて、降圧用スイッチング素子3dがオン状態又はオフ状態にされ、降圧チョッパ回路12に入力電圧の降圧動作を行わせる。
一方、昇圧用PWM信号生成手段32uは、昇圧用搬送波とコンペアレベルVcとを比較して、コンペアレベルVc(0.3)に応じたデューティ比Dt(本例では0%)の昇圧用スイッチング素子3u用の矩形パルス波信号を生成している。当該昇圧用の矩形パルス波信号に応じて、昇圧用スイッチング素子3uが常時オフ状態にされ、降圧チョッパ回路12により降圧された電圧が昇圧されずに出力端子11に供給される。
本実施の形態では、制御装置1の搬送波生成手段30u、30d、コンペアレベル設定手段31、PWM信号生成手段32u、32d、出力電圧検出手段33、及び電圧指令設定手段34は、アナログ電子回路により構成されており、それぞれ、搬送波生成回路、コペアレベル設定回路、PWM信号生成回路、出力電圧検出回路、電圧指令設定回路と称することができる。具体的には、PWM信号生成手段32u、32dには、入力された搬送波とコンペアレベルとの比較結果に応じて出力信号が切り替わるコンパレータ等が用いられる。PWM信号生成手段32u、32dの出力信号は、それぞれスイッチング素子3u、3dのゲート端子に入力されてスイッチング素子3u、3dをオンオフさせる。搬送波生成手段30u、30dには、逆のこぎり波及びのこぎり波等の複数の三角波を生成する、オペアンプ等を備える三角波生成回路と、入力されたコンペアレベルに応じて、生成した逆のこぎり波及びのこぎり波等の複数の三角波を切り替えて出力する切替回路と、出力する搬送波をシフトさせるためのバイアス回路等が用いられる。コンペアレベル設定手段31には、出力電圧Voを表す電気信号と電圧指令Vrを表す電気信号との差分を所定係数で増幅する差動増幅回路と、増幅された差分信号を降圧用及び昇圧用搬送波に対応してシフトさせるバイアス回路等が用いられる。出力電圧検出手段33には、入力された電圧センサ9の出力信号に応じた電気信号を出力する電圧検出回路等が用いられる。電圧指令設定手段34には、外部からの入力信号又は動作条件に応じて、電圧指令Vrを表す電気信号を出力する信号出力回路等が用いられる。
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係る電力変換装置2の制御装置1について図面を参照して説明する。図22は、本実施の形態に係る電力変換装置2及び制御装置1の構成図である。
なお、上記の実施の形態1と同様の部分は、説明を省略する。
本実施の形態では、電力変換装置2は、図22に示すように、入力端子10から出力端子11に直流電圧を昇圧する昇圧用スイッチング素子3uを備えた昇圧チョッパ回路13と、出力端子11から入力端子10に直流電圧を降圧する降圧用スイッチング素子3dを備えた降圧チョッパ回路12と、を備えた双方向の電力変換装置とされている。具体的には、電力変換装置2は、入力端子10から出力端子11に直流電圧を昇圧して電力を供給する昇圧動作のための昇圧用スイッチング素子3uと、出力端子11から入力端子10に直流電圧を降圧して電力を供給する降圧動作のための降圧用スイッチング素子3dと、昇圧動作及び降圧動作のためのリアクトル5と、を備えている。本実施の形態でも、降圧用及び昇圧用スイッチング素子3d、3uには、パワーMOSFETが用いられている。パワーMOSFETは、ドレイン端子とソース端子との間に逆並列接続された整流器(ダイオード)の機能も有している。なお、降圧用及び昇圧用スイッチング素子3d、3uには、フリーホイールダイオードが逆並列接続されたIGBT等の他の種類のスイッチング素子が用いられてもよい。
昇圧チョッパ回路13は、昇圧用スイッチング素子3u、リアクトル5、及び降圧用スイッチング素子3dの逆並列ダイオードにより構成されている。リアクトル5の第一端子は、入力端子10の正極に接続され、リアクトル5の第二端子は、昇圧用スイッチング素子3uのドレイン端子及び降圧用スイッチング素子3dのソース端子(逆並列ダイオードのアノード端子)に接続されている。昇圧用スイッチング素子3uのドレイン端子は、リアクトル5の第二端子及び降圧用スイッチング素子3dのソース端子(逆並列ダイオードのアノード端子)に接続され、昇圧用スイッチング素子3uのソース端子は、入力端子10の負極と出力端子11の負極を接続する負極接続線に接続されている。
降圧チョッパ回路12は、降圧用スイッチング素子3d、リアクトル5、及び昇圧用スイッチング素子3uの逆並列ダイオードにより構成されている。降圧用スイッチング素子3dのソース端子は、リアクトル5の第二端子及び昇圧用スイッチング素子3uのドレイン端子(逆並列ダイオードのカソード端子)に接続され、降圧用スイッチング素子3dのドレイン端子は、出力端子11の正極に接続されている。本実施の形態では、平滑コンデンサ6が、出力端子11の正極と負極との間に並列接続されている。
例えば、電力変換装置2の入力端子10は、蓄電装置等の直流電源7に接続され、出力端子11は、電気負荷8として、電力変換を行うインバータを介して交流回転電機に接続される。交流回転電機は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。制御装置1は、交流回転電機を力行させる場合に、電力変換装置2に昇圧動作を行わせ、直流電源7から入力端子10に供給された直流電力を昇圧させ、出力端子11に接続されたインバータを介して交流回転電機に供給する。制御装置1は、交流回転電機に回生させる場合に、電力変換装置2に降圧動作を行わせ、交流回転電機からインバータを介して出力端子11に供給された直流電力を降圧させ、入力端子10に接続された直流電源(蓄電装置)に供給(蓄電)する。
制御装置1は、昇圧動作を行う場合は、昇圧用スイッチング素子3uをPWM制御によりオンオフ制御すると共に、当該昇圧用スイッチング素子3uのPWM制御において、動作条件に応じて前後期間比Rbaを変更するように構成されている。一方、制御装置1は、降圧動作を行う場合は、降圧用スイッチング素子3dをPWM制御によりオンオフ制御すると共に、当該降圧用スイッチング素子3dのPWM制御において、動作条件に応じて前後期間比Rbaを変更するように構成されている。この構成によれば、降圧用及び昇圧用スイッチング素子3d、3uのそれぞれについて、矩形パルス波信号の前後期間比Rbaを適切に変更させて、遅れ時間を適切に調節することができる。
搬送波生成手段30は、上記の実施の形態1と同様に、複数のスイッチング素子(本例では、降圧用及び昇圧用スイッチング素子3d、3u)のそれぞれについて、予め設定されたシフト量ずつ互いにシフトした搬送波を生成するように構成されている。コンペアレベル設定手段31は、比較させる搬送波に対応してシフトさせた、複数のスイッチング素子に対して共通のコンペアレベルVcを生成するように構成されている。
本実施の形態では、シフト量は、搬送波の振幅と等しくされている。図25から図28に示すように、降圧用スイッチング素子3dの搬送波は、昇圧用スイッチング素子3uの搬送波に対して、搬送波の振幅(本例では1.0)と等しいシフト量だけオン側(下側)にシフトされている。そのため、降圧用スイッチング素子3dの搬送波は、−1.0から0.0の間を振動し、昇圧用スイッチング素子3uの搬送波は、0.0から1.0の間を振動する。
共通のコンペアレベルVcは、降圧用スイッチング素子3dの搬送波及び昇圧用スイッチング素子3uの搬送波に対応して、−1.0から1.0の間を変化する。制御装置1は、コンペアレベルVcが0.0よりも大きい場合は、昇圧用搬送波とコンペアレベルVcとの比較により昇圧用スイッチング素子3uをオンオフ制御して、昇圧動作を行わせると共に、降圧用スイッチング素子3dを常時オフにして降圧用スイッチング素子3dを逆並列ダイオードとして機能させるように構成されている。制御装置1は、コンペアレベルVcが0.0に等しい場合は、降圧用スイッチング素子3dを常時オンにすると共に、昇圧用スイッチング素子3uを常時オフにして、昇圧動作及び降圧動作を行わずに、入力端子10と出力端子11とを直結させるように構成されている。制御装置1は、コンペアレベルVcが0.0より小さい場合は、降圧用搬送波とコンペアレベルVcとの比較により降圧用スイッチング素子3dをオンオフ制御して、降圧動作を行わせると共に、昇圧用スイッチング素子3uを常時オフにして昇圧用スイッチング素子3uを逆並列ダイオードとして機能させるように構成されている。
図15に示すように、制御装置1は、上記の実施の形態1と同様に、昇圧用スイッチング素子3u用の搬送波を生成する昇圧用搬送波生成手段30uと、降圧用スイッチング素子3d用の搬送波を生成する降圧用搬送波生成手段30dと、昇圧及び降圧共通のコンペアレベルVcを生成するコンペアレベル設定手段31と、昇圧用搬送波及び共通のコンペアレベルVcに基づいて昇圧用スイッチング素子3u用の矩形パルス波信号を生成する昇圧用PWM信号生成手段32uと、降圧用搬送波及び共通のコンペアレベルVcに基づいて降圧用スイッチング素子3d用の矩形パルス波信号を生成する降圧用PWM信号生成手段32dと、を備えている。
また、制御装置1は、電力変換装置2の出力電圧Voを検出する出力電圧検出手段33と、出力電圧Voの電圧指令Vrを設定する電圧指令設定手段34とを備えている。コンペアレベル設定手段31は、出力電圧Voが電圧指令Vrに近づくように、共通のコンペアレベルVcを変化させるフィードバック制御を行うように構成されている。
昇圧用搬送波生成手段30uは、図23のフローチャートに示すように、コンペアレベルVcが、昇圧用搬送波の振幅中心値(0.5)に設定された昇圧用第一閾値以上になった場合(ステップS21:Yes)に、昇圧用搬送波として逆のこぎり波を生成し(ステップS22)、コンペアレベルVcが、昇圧用第一閾値と同じ値に設定された昇圧用第二閾値未満になった場合(ステップS21:No)に、昇圧用搬送波としてのこぎり波を生成する(ステップS23)ように構成されている。
降圧用搬送波生成手段30dは、図24のフローチャートに示すように、コンペアレベルVcが、降圧用搬送波の振幅中心値(−0.5)に設定された降圧用第一閾値以上になった場合(ステップS31:Yes)に、降圧用搬送波として逆のこぎり波を生成し(ステップS32)、コンペアレベルVcが、降圧用第一閾値と同じ値に設定された降圧用第二閾値未満になった場合(ステップS31:No)に、降圧用搬送波としてのこぎり波を生成する(ステップS33)ように構成されている。
図25及び図26に、昇圧動作の場合のタイムチャートを示す。
図25のタイムチャートは、コンペアレベルVcが、昇圧用第一閾値(0.5)以上であって、降圧用第一閾値(−0.5)以上である場合(本例では、Vc=0.7)の例である。この場合は、昇圧用搬送波生成手段30uは、0.0から1.0の間を振動する逆のこぎり波を生成し、降圧用搬送波生成手段30dは、−1.0から0.0の間を振動する逆のこぎり波を生成している。
降圧用PWM信号生成手段32dは、コンペアレベルVcが降圧用搬送波の振動範囲外である(本例では振動範囲よりも高い)場合は、降圧用スイッチング素子3dを逆並列ダイオードとして機能させるため、降圧用の矩形パルス波信号のデューティ比Dtを0%に設定し、降圧用スイッチング素子3dを常時オフ状態にさせる。
一方、昇圧用PWM信号生成手段32uは、昇圧用搬送波とコンペアレベルVcとを比較して、コンペアレベルVc(0.7)に応じたデューティ比Dt(本例では70%)の昇圧用スイッチング素子3u用の矩形パルス波信号を生成している。当該昇圧用の矩形パルス波信号に応じて、昇圧用スイッチング素子3uがオン状態又はオフ状態にされ、昇圧チョッパ回路13に入力電圧の昇圧動作を行わせる。
図26のタイムチャートは、コンペアレベルVcが、昇圧用第二閾値(0.5)未満であって、降圧用第一閾値(−0.5)以上である場合(本例では、Vc=0.3)の例である。この場合は、昇圧用搬送波生成手段30uは、0.0から1.0の間を振動するのこぎり波を生成し、降圧用搬送波生成手段30dは、−1.0から0.0の間を振動する逆のこぎり波を生成している。
降圧用PWM信号生成手段32dは、コンペアレベルVcが降圧用搬送波の振動範囲外である(本例では振動範囲よりも高い)場合は、降圧用スイッチング素子3dを逆並列ダイオードとして機能させるため、降圧用の矩形パルス波信号のデューティ比Dtを0%に設定し、降圧用スイッチング素子3dを常時オフ状態にさせる。
一方、昇圧用PWM信号生成手段32uは、昇圧用搬送波とコンペアレベルVcとを比較して、コンペアレベルVc(0.3)に応じたデューティ比Dt(本例では30%)の昇圧用スイッチング素子3u用の矩形パルス波信号を生成している。当該昇圧用の矩形パルス波信号に応じて、昇圧用スイッチング素子3uがオン状態又はオフ状態にされ、昇圧チョッパ回路13に入力電圧の昇圧動作を行わせる。
図27及び図28に、降圧動作の場合のタイムチャートを示す。
図27のタイムチャートは、コンペアレベルVcが、昇圧用第二閾値(0.5)未満であって、降圧用第一閾値(−0.5)以上である場合(本例では、Vc=−0.3)の例である。この場合は、昇圧用搬送波生成手段30uは、0.0から1.0の間を振動するのこぎり波を生成し、降圧用搬送波生成手段30dは、−1.0から0.0の間を振動する逆のこぎり波を生成している。
昇圧用PWM信号生成手段32uは、コンペアレベルVcが昇圧用搬送波の振動範囲外である(本例では振動範囲よりも低い)場合は、昇圧用スイッチング素子3dを逆並列ダイオードとして機能させるため、昇圧用の矩形パルス波信号のデューティ比Dtを0%に設定し、昇圧用スイッチング素子3uを常時オフ状態にさせる。
一方、降圧用PWM信号生成手段32dは、降圧用搬送波とコンペアレベルVcとを比較して、コンペアレベルVc(−0.3)に応じたデューティ比Dt(本例では70%)の降圧用スイッチング素子3d用の矩形パルス波信号を生成している。当該降圧用の矩形パルス波信号に応じて、降圧用スイッチング素子3dがオン状態又はオフ状態にされ、降圧チョッパ回路12に出力電圧の降圧動作を行わせる。
図28のタイムチャートは、コンペアレベルVcが、昇圧用第二閾値(0.5)未満であって、降圧用第二閾値(−0.5)未満である場合(本例では、Vc=−0.7)の例である。この場合は、昇圧用搬送波生成手段30uは、0.0から1.0の間を振動するのこぎり波を生成し、降圧用搬送波生成手段30dは、−1.0から0.0の間を振動するのこぎり波を生成している。
昇圧用PWM信号生成手段32uは、上記のように、コンペアレベルVcが昇圧用搬送波の振動範囲外である(本例では振動範囲よりも低い)場合は、昇圧用スイッチング素子3dを逆並列ダイオードとして機能させるため、昇圧用の矩形パルス波信号のデューティ比Dtを0%に設定し、昇圧用スイッチング素子3uを常時オフ状態にさせる。
降圧用PWM信号生成手段32dは、降圧用搬送波とコンペアレベルVcとを比較して、コンペアレベルVc(−0.7)に応じたデューティ比Dt(本例では30%)の降圧用スイッチング素子3d用の矩形パルス波信号を生成している。当該降圧用の矩形パルス波信号に応じて、降圧用スイッチング素子3dがオン状態又はオフ状態にされ、降圧チョッパ回路12に出力電圧の降圧動作を行わせる。
本実施の形態では、上記の実施の形態1と同様に、制御装置1の搬送波生成手段30u、30d、コンペアレベル設定手段31、PWM信号生成手段32u、32d、出力電圧検出手段33、電圧指令設定手段34は、アナログ電子回路により構成されており、それぞれ、搬送波生成回路、コペアレベル設定回路、PWM信号生成回路、出力電圧検出回路、電圧指令設定回路と称することができる。具体的には、PWM信号生成手段32u、32dには、入力された搬送波とコンペアレベルとの比較結果に応じて出力信号が切り替わるコンパレータ等が用いられる。PWM信号生成手段32u、32dの出力信号は、それぞれスイッチング素子3u、3dのゲート端子に入力されてスイッチング素子3u、3dをオンオフさせる。搬送波生成手段30u、30dには、逆のこぎり波及びのこぎり波等の複数の三角波を生成する、オペアンプ等を備える三角波生成回路と、入力されたコンペアレベルに応じて、生成した逆のこぎり波及びのこぎり波等の複数の三角波を切り替えて出力する切替回路と、出力する搬送波をシフトさせるためのバイアス回路等が用いられる。コンペアレベル設定手段31には、出力電圧Voを表す電気信号と電圧指令Vrを表す電気信号との差分を所定係数で増幅する差動増幅回路と、増幅された差分信号を降圧用及び昇圧用搬送波に対応してシフトさせるバイアス回路等が用いられる。出力電圧検出手段33には、入力された電圧センサ9の出力信号に応じた電気信号を出力する電圧検出回路等が用いられる。電圧指令設定手段34には、外部からの入力信号又は動作条件に応じて、電圧指令Vrを表す電気信号を出力する信号出力回路等が用いられる。
〔その他の実施の形態〕
最後に、本発明のその他の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する各実施の形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施の形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の各実施の形態においては、電力変換装置2に、それぞれスイッチング素子3u、3dが備えられた降圧チョッパ回路12及び昇圧チョッパ回路13が備えられ、各スイッチング素子3u、3dが制御装置1によりPWM制御される場合を例に説明した。しかし、電力変換装置2に、一つ又は三つ以上のスイッチング素子が備えられ、各スイッチング素子が制御装置1によりPWM制御されるように構成されてもよい。また、電力変換装置2には、入力端子10と出力端子11との間で直流電圧を降圧又は昇圧する、スイッチング素子を備えた直流電力変換器であれば、様々な種類の直流電力変換器を用いることができる。
(2)上記の各実施の形態においては、電力変換装置2の入力端子10に直流電源7が接続され、直流電力が供給される場合を例に説明した。しかし、電力変換装置2の入力端子10に、交流電源の交流電力を直流電力に変換する、整流器を備えた交流直流電力変換装置の出力端子が接続されてもよい。
(3)上記の各実施の形態においては、制御装置1が備える搬送波生成手段30、コンペアレベル設定手段31、PWM信号生成手段32、出力電圧検出手段33、及び電圧指令設定手段34等の各手段は、アナログ電子回路により構成されている場合を例に説明した。しかし、制御装置1の各手段31、32、33、34の一部又は全部は、デジタル電子回路により構成されてもよい。この場合は、制御装置1は、図29に示すように、処理回路として、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置70(コンピュータ)、演算処理装置70とデータのやり取りする記憶装置71、演算処理装置70に外部の信号を入力する入力回路72、及び演算処理装置70から外部に信号を出力する出力回路73等を備える。記憶装置71として、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等が備えられている。入力回路72は、電圧センサ9等のセンサやスイッチが接続され、これらセンサやスイッチの出力信号を演算処理装置70に入力するA/D変換器等を備える。出力回路73には、スイッチング素子3u、3dのゲート端子等の電気負荷が接続され、これらの電気負荷に演算処理装置70から制御信号を出力する駆動回路等を備えている。そして、制御装置1が備える搬送波生成手段30、コンペアレベル設定手段31、PWM信号生成手段32、出力電圧検出手段33、及び電圧指令設定手段34等の各機能の一部又は全部は、演算処理装置70が、ROM等の記憶装置71に記憶されたソフトウェア(プログラム)を実行し、記憶装置71、入力回路72、及び出力回路73等の制御装置の他のハードウェアと協働することにより実現される。例えば、搬送波生成手段30、コンペアレベル設定手段31、出力電圧検出手段33、及び電圧指令設定手段34がデジタル電子回路により構成され、PWM信号生成手段32がコンパレータ等のアナログ電子により構成されてもよい。例えば、搬送波生成手段30は、クロック周期を用いたタイマー処理による値のインクリメント処理又はデクリメント処理により搬送波を生成する。コンペアレベル設定手段31は、基準タイミングTbsの割り込み処理により、デューティ比Dtの指令値を更新し、コンペアレベルVcを更新する。なお、PWM信号生成手段32もデジタル電子回路により構成されてもよい。
(4)上記の各実施の形態においては、搬送波生成手段30は、複数のスイッチング素子3d、3uのそれぞれについて、予め設定されたシフト量ずつ互いにシフトした搬送波を生成し、コンペアレベル設定手段31は、比較させる搬送波に対応してシフトさせた、複数のスイッチング素子に対して共通のコンペアレベルを生成するように構成されている場合を例に説明した。しかし、搬送波生成手段30は、複数のスイッチング素子のそれぞれについて、互いにシフトしていない搬送波を生成し、コンペアレベル設定手段31は、複数のスイッチング素子のそれぞれの搬送波に対応したコンペアレベルを個別に設定するように構成されてもよい。
(5)上記の各実施の形態においては、制御装置1は、搬送波とコンペアレベルVcとを比較して矩形パルス波信号を生成するように構成されている場合を例に説明した。しかし、制御装置は、基準タイミングTbsを基準にしたタイマー処理によりオンタイミングTonとオフタイミングToffを設定し、動作条件に応じて、オンタイミングTonから基準タイミングTbsまでの前期間ΔTbと、基準タイミングTbsからオフタイミングToffまでの後期間ΔTaとを変化させ、前後期間比Rbaを変化させるように構成されてもよい。なお、基準タイミングTbsも、タイマー処理によりPWM周期ΔTc毎に設定される。この場合は、デジタル電子回路によりタイマー処理が実行されるように構成されてもよいし、アナログ電子回路によりタイマー処理が実行されるように構成されてもよい。
(6)上記の各実施の形態においては、搬送波生成手段30は、デューティ比Dtが第一閾値以上の場合に、搬送波を逆のこぎり波とし、デューティ比Dtが第二閾値未満の場合に、搬送波をのこぎり波とする場合を例に説明した。しかし、搬送波生成手段30は、デューティ比Dtが第一閾値以上の場合に、搬送波を逆のこぎり波とし、デューティ比Dtが第二閾値未満の場合に、搬送波を対称三角波とするように構成されてもよい。この構成によれば、デューティ比Dtが第一閾値以上の場合に、遅れ時間を、対称三角波の場合よりも短くすることができる。
或いは、搬送波生成手段30は、デューティ比Dtが第一閾値以上の場合に、搬送波を対称三角波とし、デューティ比Dtが第二閾値未満の場合に、搬送波をのこぎり波とするように構成されてもよい。この構成によれば、デューティ比Dtが第二閾値未満の場合に、遅れ時間を、対称三角波の場合よりも短くすることができる。
(7)上記の実施の形態1においては、昇圧用スイッチング素子3uの搬送波が、降圧用スイッチング素子3dの搬送波に対してシフト量だけオフ側(上側)にシフトされ、実施の形態2においては、降圧用スイッチング素子3dの搬送波が、昇圧用スイッチング素子3uの搬送波に対してシフト量だけオン側(下側)にシフトされている場合を例として説
明した。しかし、実施の形態1において、降圧用スイッチング素子3dの搬送波が、昇圧用スイッチング素子3uの搬送波に対してシフト量だけオン側(下側)にシフトされてもよく、実施の形態2において、昇圧用スイッチング素子3uの搬送波が、降圧用スイッチング素子3dの搬送波に対してシフト量だけオフ側(上側)にシフトされてもよい。
(8)上記の各実施の形態においては、シフト量は、搬送波の振幅と等しくされている場合を例に説明した。しかし、シフト量は、搬送波の振幅よりも小さくされてもよい。この構成によれば、部品のばらつき等の影響により、搬送波の振幅と等しい量をシフトさせることが困難な場合でも、共通のコンペアレベルVcを変化させることにより、昇圧動作と降圧動作とを継ぎ目なく切り替えることができる。なお、実施の形態2では、昇圧用スイッチング素子3uが常時オンされることによるアーム短絡が生じるため、シフト量を、搬送波の振幅よりも小さくすることができない。
或いは、シフト量は、搬送波の振幅よりも大きくされてもよい。この構成によれば、昇圧動作と降圧動作との間に、入力電圧を昇圧も降圧も行わずにそのまま出力端子11に伝達する直結動作を設けることができる。
(9)上記の各実施の形態においては、搬送波生成手段30は、複数のスイッチング素子3d、3uのそれぞれについて、予め設定されたシフト量ずつ互いにシフトした搬送波を生成し、コンペアレベル設定手段31は、比較させる搬送波に対応してシフトさせた共通のコンペアレベルVcを生成する場合を例に説明した。しかし、搬送波生成手段30は、複数のスイッチング素子のそれぞれについて、互いにシフトしていない搬送波を生成し、コンペアレベル設定手段31は、複数の搬送波のそれぞれについて、予め設定されたシフト量ずつ互いにシフトしたコンペアレベルを生成するように構成されてもよい。このようにコンペアレベルを互いにシフトさせる構成であっても、搬送波を互いにシフトさせる構成と同様の効果を得ることができる。
(10)上記の各実施の形態においては、制御装置1は、動作条件として、デューティ比Dt(コンペアレベルVc)に応じて、降圧用スイッチング素子3d及び昇圧用スイッチング素子3uの前後期間比Rbaを変更するように構成されている場合を例に説明した。しかし、制御装置1は、動作条件として、降圧動作又は昇圧動作の実行に応じて、降圧用スイッチング素子3d又は昇圧用スイッチング素子3uの前後期間比Rbaを変更するように構成されてもよい。具体的には、制御装置1は、降圧動作を行う場合は、降圧用スイッチング素子3dのPWM制御において、前期間ΔTbをゼロより長くすると共に後期間ΔTaをゼロにし、昇圧動作を行う場合は、昇圧用スイッチング素子3uのPWM制御において、前期間ΔTbをゼロにすると共に後期間ΔTaをゼロより長くするように構成されてもよい。なお、制御装置1が搬送波とコンペアレベルVcとを比較して矩形パルス波信号を生成するように構成される場合は、搬送波生成手段30は、降圧動作を行う場合は、降圧用スイッチング素子3d用の搬送波を逆のこぎり波に設定し、昇圧動作を行う場合は、昇圧用スイッチング素子3u用の搬送波をのこぎり波に設定するように構成されてもよい。例えば、入力電圧に対する出力電圧Voの昇圧量及び降圧量が小さいため、昇圧動作及び降圧動作の双方の動作範囲が狭い場合は、昇圧用スイッチング素子3uのデューティ比Dtは低くなり、降圧用スイッチング素子3dのデューティ比Dtは高くなる。上記の構成によれば、これらの動作範囲に合った、昇圧用スイッチング素子3uの前後期間比Rba及び降圧用スイッチング素子3dの前後期間比Rbaを設定することができ、遅れ時間を短縮することができると共に、デューティ比Dt(コンペアレベルVc)に応じた前後期間比Rbaの切替や搬送波の切替をなくすことができる。
或いは、制御装置1は、降圧動作を行う場合は、降圧用スイッチング素子3dのPWM制御において、前期間ΔTbをゼロより長くすると共に後期間ΔTaをゼロにし、昇圧動作を行う場合は、昇圧用スイッチング素子3uのPWM制御において、前期間ΔTbと後期間ΔTaとを等しくするように構成されてもよい。なお、制御装置1が搬送波とコンペアレベルVcとを比較して矩形パルス波信号を生成するように構成される場合は、搬送波生成手段30は、降圧動作を行う場合は、搬送波を逆のこぎり波に設定し、昇圧動作を行う場合は、搬送波を対称三角波に設定するように構成されてもよい。例えば、入力電圧に対する出力電圧Voの昇圧量の変化範囲が広く、降圧量が小さいため、昇圧動作の動作範囲が広く及び降圧動作の動作範囲が狭い場合は、昇圧用スイッチング素子3uのデューティ比Dtは広範囲に変化し、降圧用スイッチング素子3dのデューティ比Dtは高くなる。上記の構成によれば、昇圧用スイッチング素子3uの前後期間比Rbaを、デューティ比Dt(コンペアレベルVc)の変化により遅れ時間が変化しない安定性の高い対称三角波のものにすることができると共に、降圧用スイッチング素子3dの前後期間比Rbaを、遅れ時間を短縮することができる逆のこぎり波のものにすることができる。また、デューティ比Dt(コンペアレベルVc)に応じた前後期間比Rbaの切替や搬送波の切替のない、連続的な動作を行わせることができる。
或いは、制御装置1は、降圧動作を行う場合は、降圧用スイッチング素子のPWM制御において、前期間ΔTbと後期間ΔTaとを等しくし、昇圧動作を行う場合は、昇圧用スイッチング素子3uのPWM制御において、前期間ΔTbをゼロにすると共に後期間ΔTaをゼロより長くするように構成されてもよい。なお、制御装置1が搬送波とコンペアレベルVcとを比較して矩形パルス波信号を生成するように構成される場合は、搬送波生成手段30は、降圧動作を行う場合は、搬送波を対称三角波に設定し、昇圧動作を行う場合は、搬送波をのこぎり波に設定するように構成されてもよい。例えば、入力電圧に対する出力電圧Voの昇圧量が小さく、降圧量の変化範囲が広いため、昇圧動作の動作範囲が狭く及び降圧動作の動作範囲が広い場合は、昇圧用スイッチング素子3uのデューティ比Dtは低くなり、降圧用スイッチング素子3dのデューティ比Dtは広範囲に変化する。上記の構成によれば、昇圧用スイッチング素子3uの前後期間比Rbaを、遅れ時間を短縮することができるのこぎり波のものにすることができると共に、降圧用スイッチング素子3dの前後期間比Rbaを、デューティ比Dt(コンペアレベルVc)の変化により遅れ時間が変化しない安定性の高い対称三角波のものにすることができる。また、デューティ比Dt(コンペアレベルVc)に応じた前後期間比Rbaの切替や搬送波の切替のない、連続的な動作を行わせることができる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。