JP6044989B2 - アクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法 - Google Patents
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金属系のアクチュエーターとしては、例えばNi−Ti系の形状記憶合金のアクチュエーターが知られている(例えば特許文献1参照)。
また、高分子系のアクチュエーターとしては、例えばイオン伝導性高分子膜の両面を導電性材料で被覆した複合体の一側に電圧を印加することで、イオン伝導性高分子膜の内部でイオンが移動して、イオン伝導性高分子膜が変形する高分子アクチュエーターが知られている。さらに、イオン交換樹脂に電極として金を特殊化学めっきにより形成し、電極表面積を非常に大きくしたことにより変位性能を大きく向上させた複合材料のシート状アクチュエーターが知られている(例えば特許文献2,3参照)。
これらアクチュエーターの本体部分の厚さは一般に0.1mm〜10mm程度、駆動電圧0.5〜5V程度で、本体部分の変形に伴い起電力が発生することから、変位センサとしての用途も拡がっている。
モータやシリンダ等のアクチュエーターの駆動力を評価する方法としては、例えば接触式の荷重センサを用いることができるが、このような荷重センサは、微細な膜状,シート状又は線状のアクチュエーターの発生駆動力を正確に評価するには不向きである。また、この種のアクチュエーターは、計測する位置によって発生する駆動力が異なり、かつ、アクチュエーターの本体部分が変形して全体で駆動力を発生させているため、あるポイントの駆動力を計測する荷重センサではアクチュエーターの正確な駆動力を求めることはできないという問題がある。
本発明は、このような要求に応えるべくなされたもので、アクチュエーターの発生駆動力を簡単かつ正確に評価することが可能なアクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法の提供を目的とする。
前記弾性部材の変形量は、レーザー変位計、超音波変位計、CCDカメラ等を用いて非接触で計測することができる。
また、レーザー変位計等を用いて非接触で弾性部材の変形量を計測するので正確に変形量を計測することができ、例えばアクチュエーターを所定の温度や湿度等に保ったチャンバー内に設置した状態で、アクチュエーターの発生駆動力を求めることも可能である。
このように、本発明では簡単な方法で正確、かつ、非接触でアクチュエーターの駆動力評価が可能になることから、アクチュエーターを使った人工筋肉等の設計や開発が容易になるほか、この種のアクチュエーターの用途を拡大することが可能になる。
なお、この実施形態において評価の対象となるシート状のアクチュエーターは、イオン伝導性高分子膜の両面を導電性材料で被覆して本体部分を形成し、この導電性材料を電極として電圧を印加することで、本体部分を構成するイオン伝導性高分子膜が変形する高分子アクチュエーターとして説明する。
イオン伝導性高分子膜を得るための材料であるイオン伝導性高分子膜材料としては、疎水場と親水性ドメイン構造とを併せ持つ構造であり、かつ、変形可能な柔軟性を有し、加水分解性が少なく、大気中で安定な高分子化合物を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマー;ポリスチレン;ポリイミド;ポリパラフェニレンオキサイド、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキサイド)、ポリパラフェニレンスルフィド等のポリアリーレン類(芳香族系ポリマー)等に、スルホン酸基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)、リン酸基、スルホニウム基、アンモニウム基、ピリジニウム基等を導入したもの;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系のポリマー;含フッ素系のポリマーの骨格にスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホニウム基、アンモニウム基、ピリジニウム基等を導入したパーフルオロスルホン酸ポリマー、パーフルオロカーボン酸ポリマー、パーフルオロリン酸ポリマー、ポリブタジエン系化合物;エラストマーやゲルなどのポリウレタン系化合物;シリコーン系化合物;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタレート;ナイロン;ポリアリレート等、4級窒素カチオンを有するアイオネン類を挙げることができる。
また、疎水場と親水性ドメイン構造とを併せ持つ構造であれば、イオン伝導性高分子膜材料は上記に限られず、誘電性材料、例えばポリフッ化ビニリデンのようなものであってもよい。ポリフッ化ビニリデン膜からなるイオン伝導性高分子膜にイオン液体を含浸させれば、電界下、膜内の物質(イオン液体のイオン)の移動により、イオン伝導性高分子膜は変形を生ずることができる。
図1に、上記構成のアクチュエーターの発生駆動力を求めるための評価方法の一実施形態を概念図で示す。なお、説明の便宜のため、図1においてアクチュエーターの軸線と同方向をX方向とし、これに直交する方向をY方向とする。
この実施形態におけるアクチュエーター1は、断面矩形状の短冊形に形成されたイオン伝導性高分子膜の表裏全面に電極を形成して本体部分とし、前記電極に電圧を印加することで、図1に示すように一方向(Y方向)に前記本体部分が湾曲するものである。なお、この実施形態では、電圧の印加によって変形する「本体部分」とアクチュエーター1とが同義であることから、以下では「アクチュエーター1」と記載して説明する。
このアクチュエーター1に発生する駆動力はその全長に亘って一様と考えられるから、図1に示すような湾曲形態におけるアクチュエーター1の変形量と発生駆動力との関係は、図2に示すような等分布荷重を受けた片持ち弾性梁の荷重と変形量との関係と同一視することができる。
そこで、この実施形態では、評価の対象となるアクチュエーター1の変形方向と交叉する一方の面1aに、弾性部材2を密着して設けている。弾性部材2としては、弾性範囲内(材料力学上の弾性限度内、好ましくは比例限度内)にアクチュエーター1の変形範囲を含み、かつ、前記弾性範囲内で片持ち弾性梁の荷重・たわみ式が適用できるものを用いる。この条件を満たすのであれば、弾性部材2の材質は樹脂や金属、セラミック等を問わない。この実施形態のアクチュエーター1はその両面に電極が形成されていることから、弾性部材2は非導電性の樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等)で形成するのがよい。
図3及び図4において(a)は変形前の状態を、(b)は変形後の招待を示している。
図3の例では、アクチュエーター1と弾性部材2との間に水やアルコール等の粘性の小さい液体を介在させ、その表面張力によって弾性部材2をアクチュエーター1の一方の面1aに密着させている。水やアルコールは粘性が小さいので、アクチュエーター1が変形する際に、弾性部材2が前記一方の面内でほとんど抵抗無く滑ることができる。
図4の例では、弾性部材2の先端をU字形に折り曲げてクリップ部2aを形成し、アクチュエーター1の先端にこのクリップ部2aを嵌め込んで係止させている。アクチュエーター1の先端を嵌め込むクリップ部2aの開口幅を前記先端の肉厚とほぼ同じか僅かに小さくすることで、嵌め込みによる抵抗を可能な限り小さくし、アクチュエーター1の変形の際に弾性部材2が前記一方の面に沿って滑らかに滑ることができるようにする。
アクチュエーター1の変形量は、レーザー変位計3を用いて非接触で計測することができる。チャンバ10にはアクリル製又はガラス製の窓10aが形成されているので、この窓10aからチャンバ10外に配置されたレーザー変位計3のレーザー光をチャンバ10内に導入し、弾性部材2に照射させる。レーザー変位計3の位置は、位置計測器4により計測する。レーザー変位計3及び位置計測器4としては市販されている公知のものを用いることができる。
上記の計測結果から、アクチュエーター1の駆動力が計算によって求められる。すなわち、上述したように、この実施形態のアクチュエーター1の駆動力と弾性部材2の変形量との関係は、図2に示すような片持ち弾性梁に作用する荷重と変形量と同一視することができるから、片持ち弾性梁の荷重・たわみ式を利用して、アクチュエーター1の駆動力を求めることができる。
アクチュエーター1の駆動力を表す荷重wは、例えば位置Iにおいてレーザー変位計3によって計測された変位δ1と、距離X1とを式1に代入することで求めることができる。より正確な荷重wの値を得るには、他の一つ又は複数の位置(例えば位置II)においても変位δ2と距離X2とから荷重wを求め、これら多くの計測点のデータから荷重wを求めて平均してもよい。長さLのアクチュエーター1の全体に発生する駆動力はw×Lである。
なお、このようにして得られたwを式1に代入することで、任意の位置xにおける変形量δxを求める式を得ることができる。
アクチュエーター1は、電圧降下等によって実際にはアクチュエーター1の先端に向かうに従ってその駆動力が低下すると考えられる。電圧降下が基部から先端に向けてほぼ直線的に生じるのであれば、駆動力の分布は図5に示すような台形荷重と同一視されると考えられる。
台形荷重が作用した場合における弾性部材2の変位の公式は、等分布荷重の公式と三角荷重の公式とを合わせることで得ることができる。図5に示す荷重wは台形荷重のうちの等分布荷重分、qxは三角荷重分である。
この式2を使って求めるのは等分布荷重のwと三角荷重の最大値qである。少なくとも二つの位置I,IIの距離X1,X2と変形量δ1,δ2とから、これら二つの未知数w,qを求めることができる。
任意の位置Xにおける三角荷重の大きさqxは、q×x/lによって求めることができるから、任意の位置Xにおける駆動力の大きさはw+qxである。長さLのアクチュエーター1の全体に発生する駆動力は、(w+q/2)Lである。
なお、このようにして得られたw及びqを式2に代入することで、任意の位置xにおける弾性部材2の変形量δxを求める式を得ることができる。
この実施形態では、第一及び第二の実施形態のようなクランパ11は使用せず、アクチュエーター1及び弾性部材2の両端を自由端として電圧を印加し、アクチュエーター1及び弾性部材2を変形させる。この実施形態の弾性部材2は、図6に示すような分布荷重(図6の例では等分布荷重)を受ける単純支持梁とみなすことができる。
等分布荷重を受ける弾性部材2(単純支持梁)の変位の式は、
なお、この実施形態において弾性部材2の変形量の計測は、アクチュエーター1及び弾性部材2を吊り下げた状態で行ってもよいが、図6に示すように両端を支持させた状態で水平に配置しても中央に生じる初期撓みが無視できるくらい微小であるなら、アクチュエーター1及び弾性部材2を水平に配置した状態で計測を行ってもよい。
第一〜第三の実施形態では、アクチュエーター1に発生する駆動力を等分布荷重又は台形分布荷重とみなして発生駆動力の評価を行った。しかし、実際のアクチュエーター1の発生駆動力は、材料の不均一性や場所による印加電圧の不均一性などによって、等分布荷重又は台形分布荷重とは異なる荷重形態となり得る。
そこで、この第三の実施形態では、一つ又は複数の計測点での計測結果に基づいて、第一の実施形態及び第二の実施形態と同様の手順で弾性部材2の任意の位置xにおける変形量δxの式を得た後、他の複数の計測点の位置データを前記変形量δxの式に代入し、得られた変形量δ1,2,3・・・と、実際の計測によって得られた変形量Δ1,2,3・・・との差を求めるようにしている。そして、両者の差が予め設定した閾値の範囲内に収束していれば、前記変形量δxの式をそのままアクチュエーター1の発生駆動力の評価に用いることができる。
差が前記閾値の範囲から外れていれば、そのばらつきの分布から補正係数を求め、前記変形量δxの式の修正を行う。
第一の実施形態の方法により変形量の計測を行った。クランパ11のみを用いてアクチュエーター1と弾性部材2とを全面に亘って密着させた。
アクチュエーター:パーフルオロカーボン酸ポリマーであるデュポン社製のナフィオン(「NAFION」は登録商標)膜の両面に白金の電極層を無電解メッキにより形成した高分子アクチュエーター
アクチュエーターの寸法及び形状:幅4mm、長さ20mm、厚さ180μmの断面矩形状のもの
弾性部材:PET
弾性部材のヤング率:4GPaのものを用いた
弾性部材の寸法及び形状:幅b=4mm、長さL=20mm、厚さh=100μmの断面矩形状のもの
計測:3Vの電圧を電極に印加し、15秒経過後に15〜30秒の間でレーザー変位計3を原点Oから基部Sに向けてX方向に移動させつつ弾性部材の変形量δxを計測した。
温度及び湿度:温度25℃、相対湿度60%
上記条件で計測した計測結果を図7に示す。
図7において縦軸は弾性部材2のY方向の変形量、横軸は時間を示す。図7に示すように、電圧印加後15秒を経過したあたりから変形量が安定する。そこで、15秒〜30秒の間でレーザー変位計3を原点Oから基部Sに向けて移動させつつ、変形量を計測した。その結果、弾性部材2の変形量の分布は、図7に示すように等分布荷重を受ける弾性梁の変形形状とほぼ一致したものとなった。
弾性部材2の自由端の変形量δoは約1.7mmであることから、式1を用いてアクチュエーター1の発生駆動力w=2.2mN/cmを得た。単位長さ当たり、0.2gf(アクチュエーター1全体で0.4gf)の力が発生していることになる。
このアクチュエーター1の発生駆動力を、錘を使って計測してみたところ、0.4gの錘を持ち上げることができ、0.5gの錘を動かすことができる程度の力であったことから、この数値が妥当なものであることが確かめられた。
例えば、本発明のアクチュエーターの評価方法は、上記した湾曲の場合に限らず、屈曲や捩り等及びこれらの複合的な変形にも適用が可能である。複合的な変形を生じるアクチュエーターの発生駆動力の評価を行う場合は、第二の実施形態で説明したように、湾曲,屈曲又は捩り等のそれぞれの荷重・変形量の公式を適宜に組み合わせればよい。
また、分布荷重の式に限らず、適宜に集中荷重や集中荷重と分布荷重の式を用いるようにしてもよい。
さらに、上記の説明でアクチュエーター1の断面形状は矩形状であるとして説明したが、本発明は円形、楕円形、三角形、多角形、不定形など、あらゆる断面形状のアクチュエーターに適用が可能である。
また、上記の説明でアクチュエーター1と弾性部材2とを密着させるための手段として液体による表面張力や静電力、クリップ等を例に挙げて説明したが、基部をクランパ11,11によってクランプさせるだけで両者の密着を保てるのであれば、特に表面張力や静電力、クリップ等を用いる必要はない。
また、非接触で弾性部材2の変位を計測できるのであれば、レーザー変位計に限らず、超音波変位計やCCDカメラなど他の公知の変位計を使用することができる。
1a:一方の面
2:弾性部材
2a:クリップ部
3:レーザー変位計
4:位置計測器
5:液体
10:チャンバ
10a:窓
w:等分布荷重
q:三角荷重
Claims (6)
- 動力源の供給によって本体部分が変形して駆動力を発生させるアクチュエーターの発生駆動力を評価する方法において、
前記アクチュエーターの本体部分の変形方向と交叉する面に弾性部材を密着させて配置し、
前記アクチュエーターを駆動させて前記本体部分とともに前記弾性部材を変形させ、
前記弾性部材の変形量を非接触で計測し、
前記弾性部材の変形量と計測位置とから、前記弾性部材の荷重とたわみの関係に基づいて前記アクチュエーターの発生駆動力を求めること、
を特徴とするアクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法。 - 前記本体部分と前記弾性部材とを、前記面内で滑りが生じるように密着させたことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法。
- 前記本体部分の基部と前記弾性部材の基部とを、前記本体部分と前記弾性部材とが密着するようにクランプしたことを特徴とする請求項2に記載のアクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法。
- 前記本体部分と前記弾性部材とを液体の表面張力又は静電力によって密着させたことを特徴とする請求項2又は3に記載のアクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法。
- 前記本体部分の先端と前記弾性部材の先端とをクリップ状の部材で係止し、かつ、係止部分で前記本体部分と前記クリップとの間で滑りが生じるようにしたことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のアクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法。
- 所定位置の実測値から前記弾性部材のたわみ式を求め、他の位置の実測値と前記たわみ式との差から補正値を求め、前記たわみ式から得られた発生駆動力を、前記補正値を使って補正することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法。
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