JP6044734B1 - アスタキサンチンの繊維への固定化方法 - Google Patents
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Abstract
Description
酸化ストレスは、活性酸素によるタンパク質、核酸、脂質など生体成分への酸化修飾であり、その結果として種々の臓器機能障害が惹起される(出展:日本抗加齢医学会HP http://www.anti-aging.gr.jp/anti/)。この酸化ストレスの原因は活性酸素であり、発生した活性酸素を捕捉して無毒化する物質を抗酸化物質と呼ぶ。また、その発生を抑える物質もこのカテゴリーに含めることが出来る。グルタチオン、ビタミンEやビタミンC、尿酸、ビリルビンなどがあり、抗酸化性能の高い化合物はアスタキサンチンである(下表参照)。
特許文献1には、「繊維および/またはテキスタイル材料の処理方法において、以下のステップ:a)2つの親水コロイドを、これらが溶解できる溶媒中に溶解させ、少なくとも1つの活性成分を添加して、この溶液中の前記活性成分の懸濁液を形成するステップと、b)pHを調整し、そして/あるいは前記懸濁液を希釈して、前記コロイドのコアセルベーションを引き起こし、カプセル化される前記活性成分上に沈着させるステップと、c)前記懸濁液のpHを上昇させ、架橋剤を添加して、形成されたマイクロカプセルを硬化させるステップと、d)前記マイクロカプセルをカチオン性ポリマーまたはモノマーによりカチオン化するステップと、e)前記マイクロカプセルを繊維および/またはテキスタイル材料に連結または結合させるステップと、f)前記繊維および/またはテキスタイル材料を乾燥させるステップと、を含むことを特徴とする方法。(請求項1)」が開示され、その活性成分(抗酸化剤)にアスタキサンチンが含まれることが記載されている(段落0057)。
また、特許文献2には、「レーヨン繊維内に脂肪酸及び/又はその塩と機能剤(但し、脂溶性の抗酸化剤及び茶由来成分を除く)とが含まれ、前記レーヨン繊維内のセルロースと脂肪酸及び/又はその塩とは非相溶状態であり、前記レーヨン繊維内において、前記脂肪酸及び/又はその塩は微分散されてセル状領域を形成し、前記機能剤は前記セル状領域中に含まれていることを特徴とするレーヨン繊維。(請求項1)」と、「前記機能剤が、水溶性及び/又は脂溶性の機能剤である請求項1に記載のレーヨン繊維。(請求項2)と、「前記機能剤が、前記レーヨン繊維外に徐々に放出される及び/又は徐々に脱離する機能剤である請求項1又は2に記載のレーヨン繊維。(請求項3)」が開示され、上記機能剤(水溶性抗酸化剤)にアスタキサンチンが含まれることが記載されている(段落0020)。
また、特許文献3には、「有効成分含有シート状繊維構造体であって、繊維状で、ポリマーで、可溶性および/または分解性の有効成分担体と、前記担体と結合し前記シート状繊維構造体より放出させることができる少なくとも1種の有効成分とを含むシート状繊維構造体であり、前記担体が、さらに化学的および/または酵素的に修飾されていてもよい少なくとも1種のバイオポリマーをポリマー成分として含むことを特徴とする、シート状繊維構造体。(請求項1)」と、「紡糸プロセスによって、とりわけ、少なくとも1種のバイオポリマーおよび少なくとも1種の有効成分を含むエレクトロスピニング可能な溶液のエレクトロスピニングによって得られることを特徴とする、請求項1に記載のシート状繊維構造体。(請求項2)」が開示され、その有効成分(効果物質としての色素)にアスタキサンチンが含まれることが記載されている(段落0132)。
また、アスタキサンチンのようなキサントフィル類の繊維製品への応用については、キサントフィル類の吸着率・充填率を高めるとともに、キサントフィル類の徐放性を発揮させることが望まれる。また、洗濯耐久性をもたせることなど様様な課題がある。
しかしながら、上記特許公報にはキサントフィル類の繊維への実用化を達成できたことは記載されていない。本願発明者等は、例えば、繊維製品への実用化の目標としては、キサントフィル類の徐放性を発揮させること、洗濯堅牢度がJIS4級以上であり、耐光堅牢度がJIS3級以上であることを掲げている(これは理想的な値であり、実用的には、洗濯堅牢度がJIS3級以上であり、耐光堅牢度がJIS2級以上であることを掲げている)。
そこで本発明の目的は、洗濯堅牢度がJIS3級以上であり、耐光堅牢度がJIS2級以上であり、また、徐放量を調整可能なアスタキサンチンの繊維への固定化方法を提供することにある。また本明細書での洗濯堅牢度とは、JIS L−0844 A−1法の変退色であり、耐光堅牢度とは、JIS L−0843 A法(キセノンアーク灯光)を指す。
オレフィン系繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等からなる繊維が挙げられる。
アスタキサンチンを例にすると、本願発明者等の実験によれば、加熱試験で220℃にすると、アスタキサンチンの成分が分解することが判明した。これに対して、オレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等)であれば融点も低く、溶融混練した後、紡糸することができる。本発明において、キサントフィル類とは、水酸基、カルボニル基、エポキシドなどの形で酸素を含む一群のカロチノイドをいい、例えば、エキネノン、カンタキサンチン、カプサンチン、ルティン、ミキソキサントフィル、フェニコキサンキン、3−ハイドロキシエキネノン、3’−ハイドロキシエキネノン、β−クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、4−ケトゼアキサンチン、アスタキサンチン等を意味する。
アスタキサンチンを単独で使用しても良く、アスタキサンチンを含む混合物やキサントフィル類の混合物を使用しても良い。前記混合物としては、アスタリール50F〔富士化学工業社製、アスタキサンチン5%含有〕、アスタッツ−S〔武田紙器社製、アスタキサンチン約20%含有〕、アスタッツ−10O〔武田紙器社製、アスタキサンチン約10%含有〕などでも良い。前記キサントフィル類の形態としては特に制限は無いが、エマルジョン組成物でも他の油脂成分を含むオイル状でも良い。前記アスタキサンチンとは、アスタキサンチン及び/又はアスタキサンキチンのエステル等の誘導体をいう。
以下にアスタキサンチンの化学構造を示す。また、β―カロテン、リコペン、ルチンの化学構造を示す。
上記マスターバッチを作製するには、混練装置内で樹脂を融点以上に加熱し、溶融させた状態でキサントフィル類を混合し、これを融点以下に冷却させることで得られる。一方で、キサントフィル類がオイル状の場合には、必ずしも樹脂を融点以上に加温し、溶融する必要は無く、樹脂とオイル状のキサントフィル類を撹拌しながら融点以下で加温し、樹脂表面からオイル状のキサントフィル類を樹脂内部に浸透処理させることでマスターバッチを得ることが出来る。
溶融混練でマスターバッチを作る際、あるいは紡糸時の溶融温度は、樹脂の融点以上でかつキサントフィル類の分解温度以下にする必要がある。
本発明の前記オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの樹脂の融点は、ポリプロピレンが約160℃、メタロセン系ポリプロピレンが約140℃、低密度ポリエチレンが約110℃、高密度ポリエチレンが約130℃、エチレン−ビニルアルコール共重合体が約160〜190℃、エチレン−酢酸ビニル共重合体が約90〜110℃であるため、溶融混練および紡糸をする温度の下限はその融点以上であり、溶融混練および紡糸をする温度の上限は多くのキサントフィル類が分解を始める温度である200℃以下であることが好ましい。本発明によれば洗濯堅牢度がJIS3級以上であり、耐光堅牢度がJIS2級以上である本願発明者等の目的とする繊維を製造することが出来る。
また、これらオレフィン系樹脂の耐光性を向上させるため、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系等の酸化防止剤や、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤を溶融混練あるいは紡糸時に添加しても良い。さらに、繊維からのキサントフィル類の徐放性を制御するため、溶融混練あるいは紡糸時にオイル成分を添加しても良い。ここでのオイル成分とは、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の脂肪酸でも良く、あるいは菜種油、オリーブオイル、大豆油、紅花油、ごま油、パームオイル、ひまわり油、ココナッツ油、カカオバター、ひまし油などの脂肪酸混合物でも良い。
本発明によれば、前記紡糸した合成繊維に更にアスタキサンチンなどのキサントフィル類をコーティングすることにより、徐放量を抑制する方向での調節することが可能になる。
本願発明者らの実験によれば、合成繊維を上記加工液でパッドドライ法により染色して最も染色率が高かったものはナイロンであった。そして、このように製造された合成繊維は、アルコール液ではアスタキサンチンが溶出するが、水ではアスタキサンチンが溶出しないことが確認された。
本発明によれば、アスタキサンチンを徐放するとともに、洗濯堅牢度がJIS3級以上であり、耐光堅牢度がJIS2級以上であることにより、肌着・下着などの被服として実用化が十分に可能である。
なお、本明細書において、被服とは、スポーツ用アンダーウェア、婦人インナー業界では体形矯正下着、ストッキング(レギンス)、婦人衣料業界でのブラウスなどを含む。
本発明としては、キサントフィル類の固定化された繊維の洗濯堅牢度がJIS4級以上であり、耐光堅牢度がJIS3級以上であることを特徴とする。
樹脂を用いない場合に比べ、いずれの樹脂を用いた場合も耐光性が向上、空気中で暴露した場合でも耐光性の向上が確認できた。
また、二酸化炭素媒体中での染色で加工すると、ポリプロピレン又はナイロン繊維などにも固定化することができ、アスタキサンチンの徐放効果を発揮することができるが、これらで前記溶融混練して紡糸した繊維にキサントフィル類をコーティングすることで、徐放量を調整したり、耐光性や耐洗濯性を向上させたりすることができる。
アスタキサンチンをオレフィン系繊維に混練機により加熱溶融させて混練して紡糸する。図1および図2は使用した混練機(株式会社ムサシノキカイ製)と紡糸機(ユニプラス株式会社製、UM−2002R型)を示す。混練機は樹脂ペレットに熱をかけ、溶融した状態の樹脂にオイル状のアスタキサンチンを練り込み、これを冷却し、アスタキサンチン入り樹脂ペレット(マスターバッチ)を作製し、引き続き、アスタキサンチン入り樹脂ペレットのみ、またはアスタキサンチン入り樹脂ペレットと樹脂ペレットをドライブレンドし、紡糸する。アスタキサンチンは、アスタリールオイル50F(富士化学工業株式会社製:暗赤色で粘凋性のオイル)を用いた。オレフィン系繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
上記アスタキサンチン入り樹脂ペレット(マスターバッチ)の作製には、ポット染色機による浸透処理も有効であった。染色ポットにオレフィン系樹脂とオイル状のアスタキサンチンを添加し、加温することで、樹脂表面からオイル状のアスタキサンチンを樹脂内部に浸透処理させることが可能であり、本操作でマスターバッチを得ることが出来る。
混練機による実験では、前記樹脂がポリプロピレンの場合、混練温度が180℃で混練時間が10分である実施例2が良好であった。アスタキサンチンは赤色を呈しているために、含有率が高いほど濃い赤色を呈するが、アルコール中に赤色或いはピンク色として溶出することが確認できた。
また、ポット染色機による実験では、前記樹脂がポリプロピレンの場合、温度が130℃で加温時間が1時間である実施例4が良好であった。
表2に示す条件で、混練機を用い、メタロセン系ポリプロピレンまたはポリプロピレンとアスタキサンチン含有オイル(富士化学工業株式会社製、アスタリールオイル50F:アスタキサンチン濃度5%)を5wt%で混練した。結果、アスタキサンチンは樹脂重量に対して0.25wt%である。
実施例1は、予め160℃に加熱した混練機に、メタロセン系ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、商品名ウインテック)とアスタキサンチン(富士化学工業株式会社製、アスタリールオイル50F:アスタキサンチン濃度5%)を5wt%で混練機に投入し、混練温度160℃で10分間加熱した。混練された樹脂はストランド状で混練機から押し出し、水浴で冷却し、ペレット状に破砕した。実施例2は樹脂としてポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、商品名SA−08)を使用して混練温度を180℃とし、実施例3は樹脂としてポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、商品名SA−08)を使用し混練温度を200℃にした。実施例2,実施例3のその他の条件は実施例1と同様である。
実施例4では、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、商品名SA−08)150gとアスタキサンチン(富士化学工業株式会社製、アスタリールオイル50F:アスタキサンチン濃度5%)3gを赤外線加熱ポット染色機(辻井染機工業株式会社製、MCD−306EP)に投入し、温度130℃で1時間加熱した。添加したアスタキサンチンはほぼ全て樹脂であるポリプロピレンが吸収し、アスタキサンチンを0.1wt%含むポリプロピレン樹脂を作製できた。このアスタキサンチンが浸透処理した樹脂はそのままマスターバッチとして使用できた。
比較例1は、樹脂としてポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、商品名SA−08)を使用し混練温度を170℃とし、比較例2は樹脂としてポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、商品名SA−08)を使用して混練温度を220℃にとした。比較例1,比較例2のその他の条件は実施例1と同様である。
混練温度が樹脂融点に近すぎると樹脂が十分に融解せず、混練不良を起こした(比較例1)。また、混練温度が高すぎる場合、例えば220℃ではアスタキサンチンが分解し、アスタキサンチンの色が消失することが分かった(比較例2)。一方で、混練温度が200℃まではアスタキサンチンの分解はほとんど進行せず、アスタキサンチンの色が残存したまま効率良く樹脂に混練することができた(実施例1、2、3)。
表3に示す条件で、紡糸機に実施例1で得られたアスタキサンチン0.25wt%含有のメタロセン系ポリプロピレンとメタロセン系ポリプロピレンを重量割合1:4で混合し、紡糸した。
実施例5は実施例1で得られたアスタキサンチン含有メタロセン系ポリプロピレンとアスタキサンチン未含有のメタロセン系ポリプロピレンを重量割合1:4でドライブレンドし、さらに紡糸機の押出機内で加熱溶融し、紡糸した。押出機内の温度は180℃、紡糸ノズルは24ホール、最終巻き取り速度は750m/minとし、得られた糸の繊度は190dtexであった。結果、アスタキサンチンは樹脂重量に対して0.05wt%である。
実施例6は樹脂としてポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、商品名SA−08)を使用して紡糸温度を180℃とし、実施例7は樹脂としてポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、商品名SA−08)、紡糸温度を200℃とした。実施例6,実施例7のその他の条件は実施例5と同様である。
比較例3は紡糸温度を160℃とし、比較例4は樹脂としてポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、商品名SA−08)を使用して紡糸温度を170℃とした。比較例5は樹脂としてポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、商品名SA−08)、紡糸温度を220℃とした。比較例3,比較例4,比較例5のその他の条件は実施例5と同様である。
紡糸温度が樹脂融点に近すぎると樹脂が十分に融解せず、紡糸ノズルから樹脂を押し出すことが困難であった(比較例3、4)。また、紡糸温度が高すぎる場合、例えば220℃ではアスタキサンチンが分解し、アスタキサンチンの色が消失することが分かった(比較例5)。一方で、紡糸温度が200℃まではアスタキサンチンの分解はほとんど進行せず、アスタキサンチンの色が残存したまま効率良く紡糸することができた(実施例5、6、7)。
図3は実施例3および実施例7により得られたアスタキサンチン0.05wt%含有の繊維である。橙色であるアスタキサンチンが繊維に含有されていることが視覚的に認識できた。また、得られた繊維の洗濯堅牢度と耐光堅牢度は、それぞれ4級と3級以上となり、通常の衣料用途として十分な耐久性を持った繊維であることを確認した。
水に分散させたアスタキサンチンをポリプロピレン又はナイロン繊維に樹脂エマルジョンと水で加工液を調整し、パッドドライ法によりアスタキサンチンを繊維に固着した。具体的には、樹脂エマルジョン(20wt%)、アスタキサンチンとしてアスタリール10WS(富士化学工業株式会社製:アスタキサンチン含有量10wt%、水に分散可能)を5wt%、水(75wt%)の加工液を調整した。結果、アスタキサンチンは加工液中に0.5wt%含まれている。この加工液をピックアップ率100%になるように含浸・パディングを行った。これを風乾し、170℃で2分間乾燥を行った。樹脂としては水に分散できるものならば何でも良いが、エバール(エチレン/酢酸ビニル共重合体)、アクリル系、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
実施例8はエバールエマルジョン(エチレンビニルアルコール:20wt%)、アスタキサンチンとしてアスタリール10WS(富士化学工業株式会社製)を5wt%とし、水(75wt%)の加工液を調整し、6ナイロンの生地にピックアップ率100%になるように含浸・パディングを行った。これを風乾し、170℃で2分間乾燥を行った。実施例9は加工液に紫外線吸収剤チヌビン(登録商標)を1wt%添加した。実施例9のその他の条件は実施例8と同様である。
比較例6はエバールエマルジョン(エチレンビニルアルコール:20wt%)を使用しないで実施し、比較例6のその他の条件は実施例8と同様である。
樹脂を用いると洗濯堅牢度および耐光堅牢度は向上し、通常の衣料用途として十分な耐久性を持った繊維が得られることを確認した。一方で樹脂量を20wt%から減らすと、これに比例して耐光性も低下した。すなわち樹脂量が多いと耐光性や洗濯耐久性は向上し、アスタキサンチンの徐放量は低下することを表しており、コーティング樹脂量でアスタキサンチン徐放量を調節することが可能である。さらに耐光性を向上させるため、紫外線吸収剤を加工液に添加しても良い。ここでの紫外線吸収剤とは、ユビナール(登録商標)、キマソーブ(登録商標)、チヌビン(登録商標)(BASF社製)等が挙げられる。
ここで、図5(a)(b)は、アスタキサンチン入り繊維で交編した編み物11の写真である。編み方を工夫し、裏面(図5(b))にはアスタキサンチン入り繊維が多く出るようにし、表面(図5(b))にはアスタキサンチン入り繊維がほとんど見えていない工夫がされている。裏面に肌に接触するようにする肌着等とする。交編のほか、混紡、混繊、交織、又は、交編するものでも良い。本製品としては、繊維製品(夏用の下着)11などの一方側面(肌と接触する側)1に散点状に固定したものである。
二酸化炭素媒体中における染色は、耐圧テクノ社製、TAS−03リアクターを使用し、アスタキサンチンオイル(アスタリール50F〔富士化学工業社製、アスタキサンチン5%含有〕)をナイロン中空糸からなる編物に、温度40℃、圧力5MPaの二酸化炭素媒体中で60分処理した。アスタキサンチンオイルは編物に対して、重量比で2.5%owfになるように加えた。結果、アスタキサンチンは編物に対して重量比で0.125%owfである。
実施例10は二酸化炭素媒体染色装置内に、ナイロン中空糸からなる編物にアスタキサンチンオイル(アスタリール50F〔富士化学工業社製、アスタキサンチン5%含有〕)を2.5%owfで温度40℃、圧力5MPaの二酸化炭素媒体中で60分処理した。装置を常圧にした後、編物を取り出し、アスタキサンチン加工布を得た。
実施例11は実施例10と同様に、二酸化炭素媒体染色装置内に、ナイロン中空糸からなる編物にアスタキサンチンオイル(アスタリール50F〔富士化学工業社製、アスタキサンチン5%含有〕)を2.5%owfで温度80℃、圧力25MPaの二酸化炭素媒体中で60分処理した。装置を常圧にした後、編物を取り出し、アスタキサンチン加工布を得た。
比較例7は繊維として通常のナイロン繊維を使用し、比較例8は加工条件を、温度125℃、圧力25MPa、処理時間40分とした。比較例7と比較例8のその他の条件は実施例10と同様である。
この二酸化炭素媒体中での染色法でアスタキサンチンを中空糸の中に入れることができた(図4)。図4は、二酸化炭素媒体中での染色法で、アスタキサンチンが繊維に入った中空糸の断面の顕微鏡写真である。
被験者にはアスタキサンチン加工品およびプラセボ品であるアスタキサンチンを含ない加工布(エチレンビニルアルコール、紫外線吸収剤のみを含む)を各4組ずつアルミ製パック内に密封した状態で支給し、おおよそ1週間毎に新品と取り替えるように依頼した。
肌質測定は、環境試験室において行った。両腕(観察部位)をぬるま湯にて洗い、環境試験室(湿度50±10%、室温22℃±1℃に設定)にて30分以上安静に待機させた上で測定した。測定項目は皮膚弾力性である。皮膚弾力性はキュートメータ(Courage+Khazaka社製、MPA580型)を用いた。
11 繊維製品(肌着)
Claims (2)
- アスタキサンチンを繊維に固定化する方法において、アスタキサンチンをオレフィン系繊維又はナイロン繊維の中空糸に80℃以下で圧力25MPa以下の二酸化炭素媒体中で染色固定化することを特徴とするアスタキサンチンの繊維への固定化方法。
- 前記オレフィン系繊維またはナイロン繊維が中空糸の繊維又は編物であり、温度40℃以上で圧力5MPa以上から80℃以下で圧力25MPa以下の二酸化炭素媒体中で装置を常圧にして取り出すことを特徴とする請求項1記載のアスタキサンチンの繊維への固定化方法。
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