JP6044581B2 - 金属管の熱処理方法、金属管および真空熱処理炉 - Google Patents

金属管の熱処理方法、金属管および真空熱処理炉 Download PDF

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Description

本発明は、曲がりおよびすり疵の発生を抑制することができる金属管の熱処理方法、その熱処理方法により処理された金属管およびその熱処理方法に用いる真空熱処理炉に関する。
金属管は、原子力プラントにおいて、蒸気発生器の伝熱管および給水ヒータ等の熱交換器の伝熱管として用いることができる。以下では、原子力プラントの蒸気発生器用伝熱管および熱交換器用伝熱管を総称して原子力プラント用金属管とも呼ぶ。このような原子力プラント用金属管は、塩化物を含む環境での耐食性に優れたステンレス鋼や、高温水環境で耐粒界腐食性に優れたニッケル基合金からなる。
原子力プラント用金属管の製造は、一般的に、所定の寸法の管に加工した後、固溶化(第1)熱処理を施し、さらに第2熱処理を施して仕上げられる。第2熱処理は、固溶化(第1)熱処理後に行われる曲り矯正および研磨加工による残留応力を金属管から除去することを目的とする場合がある。また、第2熱処理は、上述の残留応力の除去とともに粒界にCr炭化物を析出させることにより、金属管の耐粒界腐食性を高めることを目的とする場合がある。
残留応力の除去とともに粒界へのCr炭化物の析出を目的とする場合、第2熱処理は、690〜740℃程度で2時間以上、好ましくは5時間以上均熱することにより施される。また、残留応力の除去のみを目的とする場合、第2熱処理は、690〜740℃程度で0.5時間以上、好ましくは2時間以上均熱することにより施される。
このような第2熱処理は、複数の金属管をカートやトレー等に載置した状態で、炉内に収容して熱処理を施すバッチ式により行うことができる。
図1は、熱処理炉が備える金属管を載置するカートを示す図であり、同図(a)は正面図、同図(b)は側面図である。同図に示すカート2は、車輪を有する台車21と、台車に固定された支柱23と、2本の支柱23の間に架けられた梁22とから構成される。同図に示すカートを用いて、熱処理炉により金属管に熱処理を施す場合は、複数の金属管1が、梁22に載置された状態で、カートを熱処理炉に収容し、金属管を加熱して行う。
ここで、金属管1は、同図に示すような直管に限らず、曲げ加工が施された曲管も梁22に載置された状態で熱処理炉に収容すれば、熱処理を施すことができる。また、金属管1は同図に示すように、梁に載置された金属管上に金属管を載置することにより2段にして載置することができる。
原子力プラント用金属管は、一般的に、直径15〜22mm、肉厚0.9〜1.3mm、長さ15,000〜27,000mmであることから、長尺である。このため、カート2には、載置された金属管がたわむことによって熱処理時に変形するのを防止するために、金属管の長手方向に複数の梁22が配置される。また、金属管の全長にわたって梁を配置するため、カート2は複数の台車21を連結して構成される。
原子力プラント用金属管では、第2熱処理の際にたわみにより変形して曲がりが生じると、蒸気発生器に伝熱管として据え付ける場合に管支持板と干渉することとなり、運転時に破損して重大な事故を引き起こすおそれがある。そのため、原子力プラントの蒸気発生器用の伝熱管では、通常、曲がり量を長手方向1000mmあたり0.50〜1.0mm以下とすることが要求される。
曲がり量が許容範囲を超える場合は金属管を矯正して曲がりを除去する必要がある。矯正する際に、冷間圧延や矯正機(ストレートナー)に通すと、第2熱処理により金属管から取り除かれた残留応力を、再び生じさせることになる。そのため、矯正はもっぱら手作業により局部的に矯正する方法で行われるので、第2熱処理でたわみによる曲がりが生じると金属管の製造効率が著しく悪化する。
一方、熱処理において、金属管は、高温に加熱されて管の長手方向に熱膨張する。この際、金属管の載置に用いられるカートやトレーも熱膨張するが、金属管と熱膨張率が異なり、長尺の金属管はその変形量が大きいので、金属管とカートまたはトレーの載置部が擦れ、金属管外面が削られて凹部が形成される。
このような凹部からなるすり疵は、金属管の腐食の起点となり、原子力プラントに金属管を用いる場合は重大な事故を引き起こすおそれがある。このため、原子力プラント用金属管では、すり疵は限度見本以下の深さおよび長さであることが求められる。すり疵の限度見本は、通常、人工的に金属管の外面を削ってすり疵を形成することにより作製され、形成されたすり疵は、深さが0.01〜0.1mm、長さが10〜100mmである。
第2熱処理で金属管外面に生じたすり疵の深さおよび長さが限度見本を超える場合は金属管外面を研磨してすり疵を除去する必要がある。この研磨を機械加工により行うと、第2熱処理により金属管から取り除かれた残留応力を、再び生じさせることになるので、研磨はもっぱら手作業により行われる。したがって、金属管の製造効率が著しく悪化する。
このような熱処理に起因する曲がりまたはすり疵の抑制に関し、従来から種々の提案がなされており、例えば特許文献1〜5がある。特許文献1では、支柱に所定間隔で複数のトレーを取り付け、そのトレーが厚さ方向よりも長さ方向の熱伝導性に優れる板材からなる段積みトレーが提案されている。このような段積みトレーに被処理材を載置して熱処理を施すと、加熱された被処理材で温度ばらつきを小さくでき、高品質の処理材を得ることができるとしている。
ここで、段積みトレーを用いて金属管に熱処理を施せば、トレーにより金属管が長手方向にわたって支持されるとともに、温度のばらつきが小さいことから、得られる金属管の曲がりを抑制できる。しかしながら、特許文献1で提案される段積みトレーでは、トレーとの接触によって金属管の外面の長手方向にわたってすり疵が形成されて問題となる。
また、特許文献2では、耐熱性繊維と無機質繊維とを相互に混綿または層状に配置し、ニードルパンチングによって一体化したシート状のクッション材が提案されている。特許文献3では、複数枚積層した耐熱シートを耐熱性糸または耐熱性接着剤により一体化した耐熱性クッション材が提案されている。これらのクッション材を介在させて金属管を梁に載置すれば、すり疵を防止する効果が大きいが、クッション材を加熱することによって発生するガスで金属管外面が着色する。
金属管に着色が生じると、美観が害されて商品価値が低下する。また、原子力プラント用金属管では、腐食の起点となって重大な事故を引き起こすおそれがある。このため、金属管の着色を手作業の研磨により除去する必要があり、金属管の製造効率が著しく悪化する。
特許文献4では、厚さ0.1〜1.2mmの耐熱布を介在させて金属管を梁上に載置する金属管の熱処理方法が提案されている。また、特許文献4では、着色の原因となる耐熱布に残存する水分を除去するため、熱処理の際に100から300℃までの温度範囲を30分以上かけて加熱するのが好ましいとしている。このため、特許文献4で提案される金属管の熱処理方法では、金属管の製造効率が悪化するおそれがある。
特許文献5では、被処理材を載置する部分に格子状の部材が配設された棒鋼収納台が提案されている。格子状の部材は、構造上、剛性が高く耐久性に優れることから、最小限の部材重量で被処理材を支承できるとともに、被処理材への入熱の妨害を最小限にできるとしている。このような格子状の部材が配設された収納台に金属管を載置して熱処理を施せば、曲がりの抑制を期待できるが、金属管が格子状の部材と接触する面積が増加することから、金属管にすり疵が形成される。
実開平4−13653号公報 実開昭60−362号公報 実開平5−85840号公報 WO2011/093059号公報 特開2003−247023号公報
前述の通り、金属管の熱処理では、処理された金属管の曲がりおよびすり疵が問題となる。前記特許文献1および5に提案される熱処理方法では、曲がりの抑制は期待できるが、すり疵が形成される。また、特許文献2および3に提案されるクッション材は、曲がりおよびすり疵の抑制が期待できるが、着色が生じて問題となる。特許文献4で提案される熱処理方法は、着色を生じさせることなく、曲がりおよびすり疵の抑制が期待できるが、100から300℃までの温度範囲を30分以上かけて加熱するのが好ましいことから、金属管の製造効率が悪化するおそれがある。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、着色および製造効率の悪化を生じさせることなく、曲がりおよびすり疵を抑制できる金属管の熱処理方法を提供することを目的とする。また、その処理方法を用いた金属管およびその処理方法に用いる金属管の真空熱処理炉を提供することを目的とする。
本発明者らは、着色の問題を回避するため、クッション材および耐熱布を用いることなく、曲がりおよびすり疵を抑制する方法を検討し、その結果、長手方向に複数配置される梁の配置に着目した。具体的には、前記図1に示すカートを用いて熱処理を行い、その際に隣り合う梁の間隔d(前記図1参照)を100〜3000mmで変化させる試験を行った。金属管が載置される梁の上面形状は下記図2に示すように平面とした。
図2は、上面形状が平面である梁を示す正面断面図である。同図には、上面形状が平面である梁22と、梁22に載置された金属管1とを示す。このような上面が平面の梁を用いた試験では、金属管上に金属管を載置することなく、梁上に11本の金属管を1段で載置して熱処理を施した。金属管の条件および熱処理条件は、後述する実施例の直管を用いた試験と同じ条件とした。処理後の金属管について、1000mmあたりの曲がり量、および、深さ0.01mm以上かつ長さ10mm以上であるすり疵の個数を調査した。1000mmあたりの曲がり量およびすり疵の個数の調査は、後述する実施例の試験と同じ手順で行った。
図3は、上面形状が平面である梁を用いた場合の梁の間隔と、曲がりおよびすり疵との関係を示す図である。同図から、処理された金属管の曲がり量は梁の間隔と相関関係を有し、梁の間隔が広くなるほど金属管の曲がり量が増加する傾向が確認される。これは、梁の間隔が広くなるほど、載置時の金属管のたわみが大きくなることによる。
一方、処理された金属管に発生するすり疵の個数も梁の間隔と相関関係を有し、梁の間隔が狭くなるほどすり疵の発生個数が増加する傾向が確認される。これは、梁の間隔が狭くなるほど、金属管が梁と接触する面積が増加し、すなわち、すり疵が形成される領域が増加することによる。
ここで、1000mmあたりの曲がり量が0.5mm以下であれば、前述した要求される曲がり量より小さいことから、原子力プラント用金属管の製造において第2熱処理後に曲がりを矯正する作業が不要となる。一方、深さ0.01mm以上かつ長さ10mm以上のすり疵の個数が20個以下であれば、形成されたすり疵は軽微であり、限度見本よっては研磨によるすり疵の除去が不要となる。また、すり疵に対する要求が厳しい場合でも、手作業の研磨で容易に除去できることから、原子力プラント用金属管の製造効率がほとんど悪化しない。
このような1000mmあたりの曲がり量が0.5mm以下、かつ、すり疵の個数が20個以下の条件を満足するには、同図より、梁の間隔を200〜2500mmの範囲に制限する必要があることを見出した。
本発明者らは、曲がりおよびすり疵をさらに抑制するため、金属管が載置される面の形状に着目し、金属管が載置される梁の面を凸状とすることを試みた。具体的には、金属管が載置される梁の上面を凸状にすること、および、金属管と梁との間に上面が凸状のスペーサーを介在させることを試みた。
図4は、上面が凸状の梁を示す図あり、同図(a)は正面断面図、同図(b)は上面図である。同図には、上面が円弧、すなわち、凸状の曲面である梁22と、梁22に載置された金属管1とを示す。同図(a)に示すように、金属管1を上面が凸状の梁22に載置すると、載置される金属管の外面の上下方向位置が最も低い底部1aと、梁22の上面の上下方向位置が最も高い頂部22aとが接触した状態となる。また、同図(b)に示すように、金属管の外面の直線状である底部1aと梁の上面の直線状である頂部22aとが直交する。
図5は、上面が凸状のスペーサーを示す正面断面図である。同図には、上面が平面の梁22と、梁22に載置された金属管1と、金属管1と梁22との間に介在する上面が円弧、すなわち、上面が凸状の曲面であるスペーサー24とを示す。上面が凸状の梁の場合と同様に、金属管1の外面の直線状底部とスペーサー24の上面の直線状頂部とが直交するようにスペーサー24を介在させて金属管1を梁22に載置する。
そこで、本発明者らは、上記の上面が凸状のスペーサーを用いて熱処理を行い、処理された金属管の曲がりおよびすり疵を調査する試験を行った。その際、スペーサーの上面の曲率半径は100mmとし、隣り合う梁の間隔dを100〜3000mmで変化させた。スペーサー以外の条件は、上面が平面の梁を用いた試験と同じ条件とした。
図6は、上面が凸状のスペーサーを用いた場合の梁の間隔と、曲がりおよびすり疵との関係を示す図である。同図および前記図3から、金属管が載置される面の形状は、金属管の曲がりにほとんど影響を及ぼさないことが判明した。一方、すり疵は、金属管が載置される面の形状の影響を受け、金属管が載置される面の形状を凸状とすることにより、すり疵をさらに抑制できることが明らかになった。
これは、前述の通り、金属管の外面の直線状底部と、スペーサーの上面の直線状頂部が直交する形となることから、金属管とスペーサーとの接触面積が極めて小さくなってほぼ点接触となり、金属管の外面ですり疵が発生する領域がさらに減少することによる。
本発明者らは、前記図4に示すような上面が凸状の梁を用いた場合でも、上面が凸状のスペーサーを用いた場合と同様の傾向であることを確認した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、下記(1)および)の金属管の熱処理方法、ならびに下記(3)および)の真空熱処理炉を要旨としている:
真空熱処理炉に収容され、その組成が、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Ni:8.0〜80.0%、Ti:0.5%以下、Cu:0.6%以下、Al:0.5%以下およびN:0.20%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、さらにその寸法が直径15〜22mm、肉厚0.9〜1.3mmおよび長さ15,000〜27,000mmである金属管を、その長手方向に複数個並べて配置された梁上に載置して熱処理を行う金属管の熱処理方法であって、前記梁の上面は曲率半径が50mm〜300mmの凸状であり、その長手方向の間隔を200〜2500mmとし、処理後の当該金属管の管全長にわたり、1000mmあたりの曲がり量が0.5mm以下および深さ0.01mm以上かつ長さ10mm以上であるすり疵の個数が20個以下の条件を満たすことを特徴とする、金属管の熱処理方法。
真空熱処理炉に収容され、その組成が、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Ni:8.0〜80.0%、Ti:0.5%以下、Cu:0.6%以下、Al:0.5%以下およびN:0.20%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、さらにその寸法が直径15〜22mm、肉厚0.9〜1.3mmおよび長さ15,000〜27,000mmである金属管を、その長手方向に複数個並べて配置された梁上に載置して熱処理を行う金属管の熱処理方法であって、前記梁の上面は平面であり、その長手方向の間隔を200〜2500mmとし、前記金属管を梁上に載置する際に、曲率半径が50〜300mmの凸状の上面を有するスペーサーを介在させて金属管を梁上に載置し、当該スペーサーが、前記梁に固定または前記金属管の長手方向に移動可能に配置し、処理後の当該金属管の管全長にわたり、1000mmあたりの曲がり量が0.5mm以下および深さ0.01mm以上かつ長さ10mm以上であるすり疵の個数が20個以下の条件を満たすことを特徴とする、金属管の熱処理方法。
金属管を、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属管の熱処理方法を用いて熱処理することにより得てもよい。
組成が、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Ni:8.0〜80.0%、Ti:0.5%以下、Cu:0.6%以下、Al:0.5%以下およびN:0.20%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、さらに寸法が直径15〜22mm、肉厚0.9〜1.3mmおよび長さ15,000〜27,000mmである金属管を載置した状態で収容して熱処理を行うため、載置される金属管の長手方向に複数個並べて配置される梁を備える、真空熱処理炉であって、前記梁の上面は曲率半径が50mm〜300mmの凸状であり、200〜2500mmの間隔で配置され、処理後の金属管が全長にわたり、1000mmあたりの曲がり量が0.5mm以下および深さ0.01mm以上かつ長さ10mm以上であるすり疵の個数が20個以下の条件を満たすことを特徴とする、真空熱処理炉。
組成が、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Ni:8.0〜80.0%、Ti:0.5%以下、Cu:0.6%以下、Al:0.5%以下およびN:0.20%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、さらに寸法が直径15〜22mm、肉厚0.9〜1.3mmおよび長さ15,000〜27,000mmである金属管を載置した状態で収容して熱処理を行うため、載置される金属管の長手方向に複数個並べて配置される梁を備える、真空熱処理炉であって、前記梁の上面は平面であり、200〜2500mmの間隔で配置され、前記金属管を梁上に載置する際に、曲率半径が50〜300mmの凸状の上面を有するスペーサーを介在させて金属管が梁上に載置され、当該スペーサーを前記梁に固定または前記金属管の長手方向に移動可能に配置され、処理後の金属管が全長にわたり、1000mmあたりの曲がり量が0.5mm以下および深さ0.01mm以上かつ長さ10mm以上であるすり疵の個数が20個以下の条件を満たすことを特徴とする、真空熱処理炉。
本発明の金属管の熱処理方法は、下記の顕著な効果を有する。
(1)200〜2500mmの間隔で複数個並べて配置された梁上に金属管を載置することにより、処理された金属管の曲がりを抑制でき、熱処理後の曲がり矯正が不要となる。
(2)また、処理された金属管のすり疵を抑制でき、限度見本によっては熱処理後の研磨によるすり疵の除去が不要になり、すり疵の除去が必要な場合でも負荷を軽減できる。
(3)金属管に着色が生じることなく、かつ、加熱に時間を要することによる製造効率の悪化が生じることなく、金属管に熱処理を施すことができる。
本発明の金属管は、上述の本発明の金属管の熱処理方法を用いて熱処理が施され、曲がりおよびすり疵が抑制されていることから、耐食性に優れる。
本発明の金属管の真空熱処理炉は、梁が200〜2500mmの間隔で複数個並べて配置されていることから、上述の本発明の金属管の熱処理方法を容易に実施できる。
熱処理炉が備える金属管を載置するカートを示す図であり、同図(a)は正面図、同図(b)は側面図である。 上面形状が平面である梁を示す正面断面図である。 上面形状が平面である梁を用いた場合の梁の間隔と、曲がりおよびすり疵との関係を示す図である。 上面が凸状の梁を示す図あり、同図(a)は正面断面図、同図(b)は上面図である。 上面が凸状のスペーサーを示す正面断面図である。 上面が凸状のスペーサーを用いた場合の梁の間隔と、曲がりおよびすり疵との関係を示す図である。
以下に、本発明の金属管の熱処理方法、その熱処理方法により処理された金属管およびその熱処理方法に用いる真空熱処理炉について説明する。
[金属管の熱処理方法]
本発明の金属管の熱処理方法は、真空熱処理炉に収容される金属管を、その長手方向に200〜2500mmの間隔で複数個並べて配置された梁上に載置して熱処理を行うことを特徴とする。本発明において、梁の間隔dは、梁の上面が平面の場合、前記図1に示すように載置される金属管の長手方向の中央位置を基準とし、梁の上面が凸状の場合、梁の上面の頂部を基準とする。また、スペーサーを介在させて金属管を梁に載置する際の梁の間隔dは、スペーサーの上面が平面の場合、載置される金属管の長手方向の中央位置を基準とし、スペーサーの上面が凸状の場合、スペーサーの上面の頂部を基準とする。
梁の間隔を200〜2500mmとすることにより、前記図3および6によって明らかにしたように、処理された金属管の曲がりおよびすり疵を抑制できる。このため、処理された金属管が原子力プラント用金属管である場合でも、手作業による曲がりの矯正が不要である。また、限度見本によっては第2熱処理後の研磨によるすり疵の除去が不要になり、すり疵の除去が必要な場合でも負荷を軽減できる。したがって、本発明の金属管の熱処理方法は、原子力プラント用金属管の製造効率を向上できる。
本発明の金属管の熱処理方法は、クッション材を用いないことから、金属管が着色する問題を回避することができる。また、本発明の金属管の熱処理方法は、耐熱布を用いないことから、100から300℃までの温度範囲を30分以上かけて加熱する必要が無く、加熱に時間を要することによる製造効率の悪化が生じない。
梁の間隔が200mm未満では、すり疵の発生が著しく多くなる。一方、梁の間隔が2500mmを超えると、金属管の曲がりが大きくなる。そのため、梁の間隔を200〜2500mmとする。好ましい梁の間隔は、300〜2000mmである。より好ましくは、500〜1500mmである。
本発明の金属管の熱処理方法は、梁として、前記図4に示すように、凸状の上面を有する梁を用いるのが好ましい。これにより、処理された金属管のすり疵をさらに抑制することができる。梁は少なくとも上面が凸であればよく、下面の形状はいずれでもよい。例えば、断面が円状や楕円状の梁を用いることができる。また、断面が半円状の部材を上下に張り合わせることによって円状の断面を形成した梁を用いることもできる。
本発明の金属管の熱処理方法は、梁が金属管と直接接触しなくてもよく、スペーサーを介在させて金属管を梁に載置してもよい。スペーサーの上面は平面でもよいが、処理された金属管のすり疵をさらに抑制するため、前記図5に示すように、上面を凸状とするのが好ましい。上面が凸状のスペーサーとして、例えば、曲げ加工により上面を凸状にした金属板からなるスペーサーや断面が半円状のスペーサーを用いることができる。
スペーサーは梁に固定してもよいが、スペーサーを長手方向に移動可能に配置するのが好ましい。前記図5に示すように、載置される金属管の長手方向に移動可能にスペーサーを配置することにより、金属管の熱膨張に応じてスペーサーが移動することから、金属管外面とスペーサーが擦れる長さを抑制でき、発生するすり疵の長さを低減できる。
梁およびスペーサーの材質は熱処理温度に応じて適宜設定することができ、例えば金属製の梁および金属製のスペーサーを採用できる。梁およびスペーサーの材質は、被処理材である金属管と熱膨張係数が近いものがより好ましく、例えば、被処理材である金属管と同材質の梁およびスペーサーがより好ましい。具体的には、被処理材と同じ材質の金属管を所定長さに切断して梁として用いることができる。また、スペーサーとして、被処理材と同じ材質の金属管を所定長さに切断し、それを扁平にした後、上面が凸状になるように曲げ加工を施すことにより得られたスペーサーを用いることもできる。
本発明の金属管の熱処理方法は、上面が凸状の梁に金属管を載置する場合および上面が凸状のスペーサーを介在させて金属管を梁に載置する場合のいずれでも、凸状の上面の曲率半径を50〜300mmとするのが好ましい。凸状の上面の曲率半径が50mm未満であると、金属管が梁またはスペーサーと接触する面積が減少するのに伴ってすり疵が形成される領域も減少するが、深いすり疵が形成されやすい傾向となる。その結果、後述する実施例に示すように、すり疵の個数がやや増加する傾向となる。一方、凸状の上面の曲率半径が300mmを超えると、上面を凸状にすることによりすり疵を抑制する効果が小さくなる。
本発明の金属管の熱処理方法は、複数個並べて配置された梁上に載置できれば、被処理材である金属管に特に制限はなく、直管および曲管のいずれにも熱処理を施すことができる。
以上に説明したように本発明の金属管の熱処理方法は、処理された金属管の曲がりおよびすり疵を抑制できることから、曲がりおよびすり疵について厳しい管理が要求される原子力プラントの熱交換器用伝熱管の第2熱処理に好適である。蒸気発生器用伝熱管は曲がりおよびすり疵についてより厳しい管理が要求されるので、本発明の金属管の熱処理方法は、原子力プラントの蒸気発生器用伝熱管の第2熱処理に特に好適である。
[金属管の組成]
本発明の金属管の熱処理方法では、金属管の組成が、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Ni:8.0〜80.0%、Ti:0.5%以下、Cu:0.6%以下、Al:0.5%以下およびN:0.20%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる金属管を用いる。
なお、不純物とは、金属管を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等から混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.15%以下
Cは、0.15%を超えて含有させると、耐応力腐食割れ性が劣化するおそれがある。したがって、Cを含有させる場合には、その含有量を0.15%以下にするのが好ましく、さらに好ましいのは、0.06%以下である。なお、Cは、合金の粒界強度を高める効果を有する。この効果を得るためには、Cの含有量は0.01%以上とするのが好ましい。
Si:1.00%以下
Siは製錬時の脱酸材として使用され、合金中に不純物として残存するので、1.00%以下に制限するのが好ましい。その含有量が0.50%を超えると合金の清浄度が低下することがあるため、Si含有量は0.50%以下に制限するのがより好ましい。
Mn:2.0%以下
Mnは、不純物元素であるSをMnSとして固定し、熱間加工性を改善すると共に、脱酸剤として有効な元素である。その含有量が2.0%を超えると合金の清浄性を低下させるので、2.0%以下とするのが好ましい。より好ましいのは1.0%以下である。また、Mnによる熱間加工性の改善効果を得たい場合は0.1%以上含有させるのが好ましい。
P:0.030%以下
Pは合金中に不純物として存在する元素であり、その含有量が0.030%を超えると耐食性に悪影響を及ぼすことがある。したがって、P含有量は0.030%以下に制限するのが好ましい。
S:0.030%以下
Sは合金中に不純物として存在する元素であり、その含有量が0.030%を超えると耐食性に悪影響を及ぼすことがある。したがって、S含有量は0.030%以下に制限するのが好ましい。
Cr:10.0〜40.0%
Crは、合金の耐食性を維持するのに必要な元素であり、10.0%以上含有させるのが好ましい。しかし、40.0%を超えると相対的にNi含有量が少なくなり、合金の耐食性や熱間加工性が低下するおそれがある。したがって、Crの含有量は10.0〜40.0%が好ましい。特に、Crを14.0〜17.0%含有する場合には、塩化物を含む環境での耐食性に優れ、Crを27.0〜31.0%含有する場合には、さらに、高温における純水やアルカリ環境での耐食性にも優れる。
Ni:8.0〜80.0%
Niは、合金の耐食性を確保するために必要な元素であり、8.0%以上含有させるのが好ましい。一方、Niは高価であるため、用途に応じて必要最小限含有させれば良く、80.0%以下とするのが好ましい。
Ti:0.5%以下
Tiは、その含有量が0.5%を超えると、合金の清浄性を劣化させるおそれがあるので、その含有量は0.5%以下とするのが好ましく、より好ましいのは0.4%以下である。ただし、合金の加工性向上および溶接時における粒成長の抑制の観点からは、0.1%以上の含有させることが好ましい。
Cu:0.6%以下
Cuは合金中に不純物として存在する元素であり、その含有量が0.6%を超えると合金の耐食性が低下することがある。したがって、Cu含有量は0.6%以下に制限するのが好ましい。
Al:0.5%以下
Alは製鋼時の脱酸材として使用され、合金中に不純物として残存する。残存したAlは、合金中で酸化物系介在物となり、合金の清浄度を劣化させ、合金の耐食性および機械的性質に悪影響を及ぼすおそれがある。したがって、Al含有量は0.5%以下に制限するのが好ましい。
N:0.20%以下
Nは、添加しなくてもよいが、本発明が対象とする合金中には、通常、0.01%程度のNが不純物として含有されている。一方、Nを積極的に添加すれば、耐食性を劣化させることなく、強度を高めることができる。ただし、0.20%を超えてNを含有させると耐食性が低下するので、含有させる場合の上限は0.20%とするのが好ましい。
前記組成からなる金属管の中でも、特に、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Fe:15.0%以下、Ti:0.5%以下、Cu:0.6%以下およびAl:0.5%以下を含有し、残部がNiおよび不純物からなる組成のNi基合金管が、耐食性により優れるため好ましい。さらに、耐食性を高める観点から、残部Niの一部を、Ca,Mg,Bおよび希土類元素の1種もしくは2種以上で置換してもよい。この場合の好ましい添加範囲は、これらの合計が0.001〜0.1%である。
上記組成からなり、金属管に用いるのが好ましいNi基合金は、代表的なものとして以下の二種類が挙げられる。
(a)C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:14.0〜17.0%、Fe:6.0〜10.0%、Ti:0.5%以下、Cu:0.6%以下およびAl:0.5%以下を含有し、残部がNiおよび不純物からなるNi基合金。
(b)C:0.06%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:27.0〜31.0%、Fe:7.0〜11.0%、Ti:0.5%以下、Cu:0.6%以下およびAl:0.5%以下を含有し、残部がNiおよび不純物からなるNi基合金。
上記(a)の合金は、Crを14.0〜17.0%含み、Niを75%程度含むため塩化物を含む環境での耐食性に優れる合金である。この合金においては、Ni含有量とCr含有量のバランスの観点からFeの含有量は6.0〜10.0%とするのが好ましい。
上記(b)の合金は、Crを27.0〜31.0%含み、Niを60%程度含むため、塩化物を含む環境のほか、高温における純水やアルカリ環境での耐食性にも優れる合金である。この合金においてもNi含有量とCr含有量のバランスの観点からFeの含有量は7.0〜11.0%とするのが好ましい。
[金属管]
本発明の金属管は、上述の本発明の金属管の熱処理方法を用いて熱処理されたことを特徴とする。このため、本発明の金属管は、熱処理に起因する着色の発生がなく、曲がりおよびすり疵が抑制されている。本発明の金属管は、直管であっても曲管であってもよい。このような本発明の金属管は、耐食性に優れることから、原子力プラント用金属管に好適である。
[真空熱処理炉]
本発明の真空熱処理炉は、金属管を載置した状態で収容して熱処理を行うため、載置される金属管の長手方向に複数個並べて配置される梁を備える、真空熱処理炉であって、梁が200〜2500mmの間隔で配置されていることを特徴とする。本発明の真空熱処理炉は、金属管をその長手方向に複数個並べて配置された梁上に載置した状態で収容するために、例えば前記図1に示すカートを採用し、その隣り合う梁の間隔を200〜2500mmにすることによって構成できる。このような本発明の真空熱処理炉は、上述の本発明の金属管の熱処理方法を容易に実施することができ、処理された金属管に着色を生じさせることなく、曲がりおよびすり疵を抑制できる。また、耐熱布を用いないことから、加熱に時間を要することによる製造効率の悪化を生じさせることがない。
本発明の真空熱処理炉は、図2に示すような上面が平面の梁を採用できるが、すり疵をさらに抑制するため、図4に示すような上面が凸状の梁を用いるのが好ましい。
本発明の真空熱処理炉は、梁と載置される金属管との間に介在させるスペーサーを備えてもよい。スペーサーは、上面が平面のスペーサーを採用できるが、すり疵をさらに抑制するため、図5に示すような上面が凸状のスペーサーを用いるのが好ましい。また、スペーサーを梁に固定してもよいが、長手方向に移動可能なスペーサーを配置するのが好ましい。このようなスペーサーを真空熱処理炉が備えれば、スペーサーを取り外すことにより容易に洗浄できるとともに、スペーサーが損傷した場合に新品に容易に取り替えることができ、熱処理炉のメンテナンス性を向上できる。
本発明の金属管の熱処理方法および真空熱処理炉により、第2熱処理を施して金属管を得る試験を行い、本発明の効果を検証した。
[試験方法]
前記図1に示すカートの梁22上に管を載置した後、カートを熱処理炉に収容した。熱処理炉を真空引きした後、炉内を加熱して管に熱処理を施すことにより、金属管を得た。本試験に用いた管の条件は下記の通りである。
管:外径19.05mm、肉厚1.067mm、長さ20,000mm、
材質 ASME SB−163 UNS N06690のNi基合金
(代表組成:30質量%Cr−60質量%Ni−10質量%Fe)
本試験では、前記図2に示すように金属管を上面が平面の梁に載置する場合、前記図4に示すような上面が凸状の梁に載置する場合、および、スペーサーを介在させて梁に載置する場合を設けた。いずれの場合でも、梁の幅(載置される金属管の長手方向における梁の長さ)は、35mmとした。また、スペーサーは、上面が平面のスペーサーと、前記図5に示すような上面が凸状のスペーサーとを用い、いずれのスペーサーも管の長手方向に移動可能に配置した。梁およびスペーサーの材質は被処理材の管と同じとし、すなわち、上記Ni基合金とした。
管は、上記寸法の直管と、U字状の曲管とを準備した。直管の場合、梁上に11本の直管を1段で載置し、曲管の場合、梁上に3本の曲管を1段で載置した。直管の熱処理は、常温から熱処理温度725℃まで加熱した後、熱処理温度を10時間保持し、その後、常温まで10時間かけて冷却することにより行った。曲管の熱処理は、熱処理温度の保持時間を2時間とし、それ以外の条件は直管と同じ条件とした。
[評価指標]
処理により得られた金属管についてすり疵の個数および曲がり量を調査し、その結果を評価した。調査は、直管では1段に載置した11本の管のうちで中央の管を対象とし、曲管では1段に載置した3本の管のうちで中央の管を対象とした。曲がり量は、1000mmあたりの曲がり量を金属管の全長にわたって測定し、その最大値とした。また、すり疵の個数は、深さ10μmかつ長さ10mmの限度見本を準備し、金属管外面に形成された限度見本以上(深さ10μm以上かつ長さ10mm以上)のすり疵の有無を管全長にわたって確認し、限度見本以上のすり疵の個数をカウントした。
表1の処理により得られた金属管の「評価」欄の記号の意味は次の通りである:
○:1000mmあたりの曲がり量が0.5mm以下、かつ、すり疵の個数が20個以下であることを示す。
×:1000mmあたりの曲がり量が0.5mm以下、および、すり疵の個数が20個以下の条件のうちで、いずれかの条件を満たさなかったことを示す。
表1に、試験区分、管の形状、隣り合う梁の間隔d(mm)、スペーサーによる介在の有無、梁またはスペーサーの上面の曲率半径および処理により得られた金属管を調査した結果を示す。また、得られた金属管を調査した結果として、処理により得られた金属管の1000mmあたりの曲がり量、すり疵の個数およびその評価を示す。
Figure 0006044581
[試験結果]
表1に示す結果から、本発明例1〜15では、梁の間隔を200〜2500mmとし、いずれの条件でも処理により得られた金属管の曲がり量が0.5mm以下、かつ、すり疵の個数が20個以下となり、その評価が○となった。一方、比較例1および3では、梁の間隔を本発明で規定する範囲を超えて100mmとし、いずれの条件でも処理により得られた金属管のすり疵の個数が20個を超え、その評価が×となった。また、比較例2および4では、梁の間隔を本発明で規定する範囲を超えて3000mmとし、いずれの条件でも処理により得られた金属管の曲がり量が0.5mmを超え、その評価が×となった。
さらに、本発明例1〜15で処理により得られた金属管外面の着色を調査したところ、着色は認められなかった。これらから、梁の間隔を200〜2500mmとすることにより、処理により得られた金属管で、着色を生じさせることなく、曲がりおよびすり疵を抑制できることが明らかになった。
本発明例1〜3では、梁の間隔を500mmで一定として梁の上面の形状を変化させた。その結果、処理により得られた金属管の曲がり量に有意差は認められなかったが、梁の上面が平面である本発明例1と比べ、梁の上面を凸状とした本発明例2および3ですり疵の個数が減少した。これらから、凸状の上面を有する梁を用いることにより、すり疵をさらに抑制できることが明らかになった。
本発明例4〜7では、スペーサーを介在させて管を載置し、梁の間隔を500mmで一定とする一方でスペーサーの上面の形状を変化させた。その結果、処理により得られた金属管の曲がり量に有意差は認められなかったが、スペーサーの上面が平面である本発明例4と比べ、梁の上面を凸状とした本発明例5〜7ですり疵の個数が減少した。これらから、凸状の上面を有するスペーサーを用いることにより、すり疵をさらに抑制できることが明らかになった。
以上に説明したように、本発明の金属管の熱処理方法は、処理された金属管の曲がりおよびすり疵を抑制することができる。このため、本発明の金属管の熱処理方法およびそれに用いる真空熱処理炉を、金属管の製造に適用すれば、優れた耐食性を有する本発明の金属管を得ることができる。得られた金属管は、原子力プラント用金属管に好適であるので、本発明は原子力プラント用金属管の製造で有効に利用できる。
1:金属管、 1a:金属管の底部、 2:カート、 21:台車、 22:梁、
22a:梁の凸状上面の頂部、 23:支柱、 24:スペーサー、

Claims (4)

  1. 真空熱処理炉に収容され、その組成が、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Ni:8.0〜80.0%、Ti:0.5%以下、Cu:0.6%以下、Al:0.5%以下およびN:0.20%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、さらにその寸法が直径15〜22mm、肉厚0.9〜1.3mmおよび長さ15,000〜27,000mmである金属管を、その長手方向に複数個並べて配置された梁上に載置して熱処理を行う金属管の熱処理方法であって、
    前記梁の上面は曲率半径が50mm〜300mmの凸状であり、その長手方向の間隔を200〜2500mmとし、
    処理後の当該金属管の管全長にわたり、1000mmあたりの曲がり量が0.5mm以下および深さ0.01mm以上かつ長さ10mm以上であるすり疵の個数が20個以下の条件を満たすことを特徴とする、金属管の熱処理方法。
  2. 真空熱処理炉に収容され、その組成が、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Ni:8.0〜80.0%、Ti:0.5%以下、Cu:0.6%以下、Al:0.5%以下およびN:0.20%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、さらにその寸法が直径15〜22mm、肉厚0.9〜1.3mmおよび長さ15,000〜27,000mmである金属管を、その長手方向に複数個並べて配置された梁上に載置して熱処理を行う金属管の熱処理方法であって、
    前記梁の上面は平面であり、その長手方向の間隔を200〜2500mmとし、
    前記金属管を梁上に載置する際に、曲率半径が50〜300mmの凸状の上面を有するスペーサーを介在させて金属管を梁上に載置し、当該スペーサーが、前記梁に固定または前記金属管の長手方向に移動可能に配置し、
    処理後の当該金属管の管全長にわたり、1000mmあたりの曲がり量が0.5mm以下および深さ0.01mm以上かつ長さ10mm以上であるすり疵の個数が20個以下の条件を満たすことを特徴とする、金属管の熱処理方法。
  3. 組成が、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Ni:8.0〜80.0%、Ti:0.5%以下、Cu:0.6%以下、Al:0.5%以下およびN:0.20%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、さらに寸法が直径15〜22mm、肉厚0.9〜1.3mmおよび長さ15,000〜27,000mmである金属管を載置した状態で収容して熱処理を行うため、載置される金属管の長手方向に複数個並べて配置される梁を備える、真空熱処理炉であって、
    前記梁の上面は曲率半径が50mm〜300mmの凸状であり、200〜2500mmの間隔で配置され、
    処理後の金属管が全長にわたり、1000mmあたりの曲がり量が0.5mm以下および深さ0.01mm以上かつ長さ10mm以上であるすり疵の個数が20個以下の条件を満たすことを特徴とする、真空熱処理炉。
  4. 組成が、質量%で、C:0.15%以下、Si:1.00%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:10.0〜40.0%、Ni:8.0〜80.0%、Ti:0.5%以下、Cu:0.6%以下、Al:0.5%以下およびN:0.20%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、さらに寸法が直径15〜22mm、肉厚0.9〜1.3mmおよび長さ15,000〜27,000mmである金属管を載置した状態で収容して熱処理を行うため、載置される金属管の長手方向に複数個並べて配置される梁を備える、真空熱処理炉であって、
    前記梁の上面は平面であり、200〜2500mmの間隔で配置され、
    前記金属管を梁上に載置する際に、曲率半径が50〜300mmの凸状の上面を有するスペーサーを介在させて金属管が梁上に載置され、当該スペーサーを前記梁に固定または前記金属管の長手方向に移動可能に配置され
    処理後の金属管が全長にわたり、1000mmあたりの曲がり量が0.5mm以下および深さ0.01mm以上かつ長さ10mm以上であるすり疵の個数が20個以下の条件を満たすことを特徴とする、真空熱処理炉。
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