JP6043031B2 - 中性子シンチレーター及び中性子検出器 - Google Patents

中性子シンチレーター及び中性子検出器 Download PDF

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Description

本発明は、中性子シンチレーター及び該中性子シンチレーターを用いる中性子検出器に関する。詳しくは、フッ化リチウムと無機蛍光材との共晶体粒子を含んでなる樹脂組成物からなる中性子シンチレーターに関する。
中性子検出器は、中性子利用技術を支える要素技術であって、貨物検査等の保安分野、中性子回折による構造解析等の学術研究分野、非破壊検査分野、或いはホウ素中性子捕捉療法等の医療分野等における中性子利用技術の発展に伴い、より高性能な中性子検出器が求められている。
中性子検出器に求められる重要な特性として、中性子検出効率及び中性子とγ線との弁別能(以下、n/γ弁別能ともいう)が挙げられる。中性子検出効率とは、検出器に入射した中性子の数に対する検出器でカウントした中性子の数の比であって、検出効率が低い場合には、計測される中性子の絶対数が少なくなり、計測精度が低下する。
また、γ線は、自然放射線として自然界に存在する他、中性子が中性子を検出するための検出系の構成部材、或いは被検査対象物に当たった際にも発生する。従って、n/γ弁別能が低いとγ線を中性子として計数することになるので、中性子計数の精度が低下する。
本発明者らは、前記中性子検出効率及びn/γ弁別能に優れたシンチレーターとして、層状のフッ化リチウム結晶と層状のフッ化カルシウム結晶とが特定の構造で積層してなる共晶体からなる中性子用シンチレーターを提案した(特許文献1参照)。
フッ化リチウムと無機蛍光材とからなり、特有の組織構造を有する共晶体は、中性子シンチレーターとして用いることができる。
前記特許文献1に記載の共晶体においては、無機蛍光材がフッ化カルシウム結晶であり、組織構造の態様は積層構造である。かかる共晶体において、LiF中のLi−6同位体が中性子と捕獲反応を起こし、反応によって生じた2次粒子がそのエネルギーを無機蛍光材に付与して発光を生じさせ、中性子シンチレーターとして作用する。
上記共晶体からなる中性子用シンチレーターは、中性子に対する検出効率が高く、かつn/γ弁別能に優れているという利点を有するものの、一様な組織構造を有する共晶体を得ることが困難であり、シンチレーターとしての特性が不均一になりやすいという問題があった。具体的には、例えば前記例示した積層構造において、層の厚みが一様でない、層構造そのものが均一でない、層の向きが異なるなどの問題が生じる。
上記問題を解決するため、前記特許文献1では、ブリッジマン法、温度勾配固化法、チョクラルスキー法、或いはマイクロ引下げ法等を用いた一方向凝固法によって一様な組織構造を有する共晶体を得て、これを中性子シンチレーターに用いることが提案されている。
しかしながら、このような一方向凝固法を採用しても均質な組織構造の共晶体を効率的に、再現性良く得ることはなかなか難しい。更に、この方法で使用される装置は高価であり、且つ、製造に要する時間が長いという問題があり、製造コストの低減に改善の余地があった。
さらに、前記共晶体は、構成成分であるフッ化リチウムとフッ化カルシウムとの熱膨張係数が異なるため、製造中の冷却過程において歪によるクラックが生じやすく、大型のシンチレーターを製造することが困難であるという問題があった。
特許第5501088号公報
本発明は、上記のような問題点を解決することを目的としてなされた。
本発明の目的は、中性子に対する検出効率が高く、バックグラウンドノイズとなるγ線の線量が高い場においても両者を弁別して中性子のみを精度よく計測することができる、即ち、n/γ弁別能に優れる技術を提供することである。
本発明の他の目的は、一様な特性を有し、大型化が容易な中性子シンチレーターを提供することである。
本発明者等は、フッ化リチウムと無機蛍光材との共晶体を用いて、一様な特性を有する中性子シンチレーターを得るべく種々検討した。その結果、前記共晶体の形状を粒子状とし、かかる共晶体粒子を樹脂中に含有させた樹脂組成物が、シンチレーターとしての特性を平均化でき、一様性に優れた中性子シンチレーターになりえることを見出した。更に、当該樹脂組成物を用いることにより、大型のシンチレーターを容易に得ることができるばかりでなく、複雑な形状のシンチレーターも作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
樹脂および共晶体粒子を含んでなる樹脂組成物からなる中性子シンチレーターであって、樹脂は、共晶体粒子の発光波長における内部透過率が10%/cm以上であり、共晶体粒子は、フッ化リチウム(LiF)と無機蛍光材とからなり、共晶体粒子の等比表面積球相当径が、50〜1000μmの範囲にあることを特徴とする前記中性子シンチレーターが提供される。
上記中性子シンチレーターにおいて、
1)無機蛍光材が、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、及びイッテルビウム(Yb)からなる群から選ばれた少なくとも一種のランタノイド元素を含有する無機材料であること、
2)無機蛍光材の屈折率(n)に対する樹脂の屈折率(n)の比(n/n)が、0.90〜1.10の範囲にあること、
3)充填材粒子を、更に含有するとこと、
4)充填材粒子の屈折率(n)に対する樹脂の屈折率(n)の比(n/n)が、0.90〜1.10の範囲にあること、
5)中性子不感蛍光体を、更に含むこと
が好適である。
本発明によれば、更に、
上記各中性子シンチレーターと光検出器を具備することを特徴とする中性子検出器が提供される。
上記中性子検出器において、
6)中性子シンチレーターと光検出器が、波長変換ファイバ又は波長変換シートからなる波長変換部位によって光学的に接続されていること
が好適である。
本発明によれば、中性子に対する検出効率が高く、n/γ弁別能に優れ、しかも、一様な特性を有し、大型化が容易な中性子シンチレーター及び該中性子シンチレーターを用いた中性子検出器が提供される。
当該中性子検出器はバックグラウンドノイズとなるγ線の線量が高い場においても中性子を精度よく計測することができ、特に中性子透過像を撮像する用途において、中性子シンチレーターの不均一性に由来する像の歪みを低減でき、また大型の撮像装置用の中性子検出器を提供することができる。
かかる中性子シンチレーターは、貨物検査等の保安分野、中性子回折による構造解析等の学術研究分野、非破壊検査分野、或いはホウ素中性子捕捉療法等の医療分野等において、好適に使用できる。
本図は、中性子シンチレーターと光検出器が、波長変換部位によって光学的に接続される態様を模式的に示す図である。 本図は、実施例1で得られた波高分布スペクトルである。 本図は、実施例2で得られた波高分布スペクトルである。 本図は、実施例3で得られた発光スペクトルである。 本図は、実施例4で得られた波高分布スペクトルである。 本図は、実施例5で得られた中性子検出器に中性子を照射した際の信号波形を表す図である。 本図は、実施例5で得られた中性子検出器にγ線を照射した際の信号波形を表す図である。
〈中性子シンチレーター〉
本発明の中性子シンチレーターは、フッ化リチウム(LiF)と無機蛍光材との共晶体粒子を第一の構成要素とする。
共晶体粒子において、LiFと無機蛍光材は、それぞれ独立した相に相分離しており、各相が交互に積層した多層構造、或いは、一方の相からなるマトリックス中に、円柱状の他方の相が多数配列したハニカム構造等の組織構造を形成している。
当該共晶体粒子は、中性子の入射によって、以下の過程に基づくシンチレーション光を発する。まず、中性子がLiFに入射すると、中性子がLiF中のLi−6同位体に捕獲され、捕獲反応を起こして2次粒子であるα粒子及びトリチウムを生じる。次いで、かかる2次粒子が共晶体中を遊走し、無機蛍光材に到達して無機蛍光材を励起する。最終的に、励起された無機蛍光材がシンチレーション光を発する。
[フッ化リチウム]
前記共晶体粒子において、構成成分の一つであるLiFは、Li−6同位体比を20〜99%とすることが好ましい。Li−6同位体比を20%以上とすることによって、前記捕獲反応の確率が高まり中性子に対する検出効率が向上する。一方、同位体濃縮に係るコストに鑑みて、Li−6同位体比を99%以下とすることが好ましい。
[無機蛍光材]
本発明において、無機蛍光材は、捕獲反応を起こして生じた2次粒子によって蛍光を生じるものであれば特に制限されないが、フッ化物(ただし、LiFを除く)であることが好ましい。
フッ化物以外の無機蛍光材、例えば、陰イオンとして酸素イオン、塩素イオンまたは炭酸イオンを有する無機蛍光材を用いた場合には、共晶体の製造過程において、該陰イオンがLiFと反応して、それぞれ酸化リチウム、塩化リチウムまたは炭酸リチウムを生じる場合がある。これらのリチウム化合物は潮解性であるため、大気中で潮解して中性子シンチレーターの性能が低下するおそれがある。
無機蛍光材として好適なフッ化物を具体的に例示すれば、MgF、CaF、SrF、LaF、LiBaF、LiYF、LiLuF、及びこれらの固溶体が挙げられる。
当該無機蛍光材は、材中に、Ti、Cr、Mn、Cu、Ag、Zn、Cd、Sn及びランタノイド元素等の遷移元素からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を、発光中心元素として含有せしめることが好ましい。発光中心元素を含有せしめることによって、無機蛍光材より発せられたシンチレーション光の強度を高めることができる。前記発光中心元素の中でも、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選ばれるランタノイド元素の内、少なくとも一つのランタノイド元素を含有せしめることが特に好ましい。
これら発光中心元素は、その種類によって発光特性が異なるため、適用する中性子検出器に応じて発光中心元素の種類を選択することが好ましい。具体的には、Ce、Pr、Nd、Eu等の発光中心元素は、蛍光寿命の短い発光を呈するため、シンチレーションカウンティング型の中性子検出器に好適に採用できる。一方、Tb、Dy、Yb等の発光中心元素は、極めて強い発光を呈するため、積分型の中性子検出器に好適に採用できる。
無機蛍光材中に発光中心元素を含有せしめる態様としては、無機蛍光材の母材となる化合物に発光中心元素を添加する態様、或いは無機蛍光材の母材となる化合物の元素の一部を発光中心元素で置換する態様がある。
具体的に例示すれば、無機蛍光材の母材となるCaF、SrF等の化合物に、CeF、EuF等の発光中心元素からなる化合物を混合した原料を調製し、該原料を溶融・凝固する等して無機蛍光材の母材となる化合物に発光中心元素を添加すれば良い。或いは無機蛍光材の母材となるLiYFをLiFとYFから合成する際に、YFを量論比から減じ、減じたYFと当モルのTbF等の発光中心元素からなる化合物を加えた原料を調製し、該原料を溶融・固化する等して無機蛍光材の母材となる化合物の元素の一部を発光中心元素で置換しても良い。
発光中心元素を無機蛍光材に含有せしめる量は、特に制限されない。発光中心元素の種類に応じて、最適な量を選択することが好ましい。一般には発光中心元素を含有せしめる量が多い程、シンチレーション光の強度が高くなるが、過剰に多い場合には、濃度消光によるシンチレーション光の減退が生じたり、共晶体が顕著に白濁したりする恐れがある。
発光中心元素の最適な量は、発光中心元素の種類によって異なり、例えば、発光中心元素がCeやEuである場合には、無機蛍光材に対して0.05〜5mol%とすることが好ましく、発光中心元素がTbである場合には、無機蛍光材に対して1〜20mol%とすることが好ましい。
また、無機蛍光材の屈折率は、無機蛍光材の発光波長において、LiFの屈折率に近いことが好ましい。無機蛍光材の屈折率が、LiFの屈折率に近いことにより、無機蛍光材とLiFの界面での光の散乱が抑制されるため、無機蛍光材より発せられた光を、光検出器に効率よく伝搬させることができる。
具体的には、LiFの屈折率に対する無機蛍光材の屈折率の比が、0.90〜1.10であることが好ましく、0.95〜1.05であることが特に好ましい。例えば、ナトリウムD線の波長において、LiFの屈折率は1.39であるのに対して、MgF、CaF及びSrFの屈折率はそれぞれ1.39、1.43及び1.44である。したがって、MgF、CaF及びSrFを無機蛍光材に用いた場合には、LiFの屈折率に対する無機蛍光材の屈折率の比は、それぞれ1.00、1.03及び1.04であるため、これらアルカリ土類金属のフッ化物からなる無機蛍光材は特に好適に用いることができる。
これらLiF及び無機蛍光材の屈折率は、本発明のシンチレーターを用いる温度域での屈折率である。例えば、本発明のシンチレーターを100℃近辺で用いる場合、上記屈折率比は、100℃で求める必要がある。
なお、本発明において、無機蛍光材が複屈折性を有する場合には、通常光線に対する屈折率で代表してよい。
[共晶体粒子]
共晶体粒子において、LiFを微細な形状とすることが好ましい。前述したように、LiF中のLi−6と中性子の捕獲反応により生じた2次粒子は、共晶体中を遊走し、無機蛍光材に到達して無機蛍光材を励起する。ここで、2次粒子は、LiF中を遊走する過程でもエネルギーの一部を失うため、中性子が入射する事象毎にLiF中を遊走する距離が異なると、無機蛍光材に付与されるエネルギーに変動が生じる。
本発明者らの検討によれば、LiFを微細な形状とすることによって、核反応で生じた2次粒子から無機蛍光材に付与されるエネルギーの変動を抑制でき、結果として無機蛍光材より発せられるシンチレーション光の強度の変動を抑制することができる。
種々検討した結果によると、層状のLiFについてはその厚さを、円柱状のLiFについてはその直径を、0.1〜5μmとすることが好ましく、0.1〜3μmとすることが特に好ましい。層状のLiFの厚さ、或いは円柱状のLiFの直径を5μm以下、特に好ましくは3μm以下とすることによって、前記シンチレーション光の強度の変動が小さくなるため、中性子による信号とγ線によるノイズを容易に弁別する性能、すなわちn/γ弁別能に優れた中性子検出器を得ることができる。
なお、層状のLiFの厚さ、或いは円柱状のLiFの直径の下限は、特に制限されないが、0.1μm未満とすることは技術的に困難であり、特段の手段を講じる必要が生じる。共晶体粒子中のLiFを微細な形状とする方法については後述する。
共晶体粒子の組織構造は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて反射電子組成像を観察することにより同定できる。すなわち、反射電子組成像においては、LiFと無機蛍光材が、それぞれの原子番号の差異に基づく明瞭なコントラストを呈するため、組織構造を反映した像を容易に得ることができる。
かかる反射電子組成像より、層状のLiFの厚さ、或いは円柱状のLiFの直径の計測を行うことができる。なお、該計測においては、SEMの測長機能を用い、間隔の長さが既知の標準グリッドを用いて校正して計測する。
共晶体粒子を構成する相の同定は、粉末X線回折測定によって行うことができる。すなわち、共晶体粒子の粉末について粉末X線回折測定を行い、得られた回折パターンを解析することにより、LiFと所定の無機蛍光材からなる共晶体であることを同定する。
共晶体粒子の形状は、特に制限されず、平板状、角柱状、円柱状、球状、或いは不定形の共晶体粒子を任意に用いることができる。
共晶体粒子の大きさは、特に制限されないが、共晶体粒子の等比表面積球相当径(球相当径)が50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることが特に好ましい。共晶体粒子の等比表面積球相当径が50μm未満である場合には、前記Li−6と中性子との中性子捕獲反応で生じた2次粒子の飛程距離が数十μmであるため、該2次粒子が共晶体粒子にその全エネルギーを付与する前に共晶体粒子から逸脱する事象が生じるおそれがある。かかる事象が生じる場合、中性子の入射によって共晶体粒子に与えられるエネルギーが低下するため、共晶体粒子の発光の強度が低下する。
共晶体粒子の大きさの上限は、特に制限されないが、共晶体の組織構造の微細さの変動及び組織構造の向きを平均化する効果を充分に得るためには、共晶体粒子の等比表面積球相当径が1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることが特に好ましい。
[共晶体粒子の製造方法]
本発明で使用される共晶体粒子の製造方法は特に限定されない。LiF及び無機蛍光材の粉末からなる原料混合物を加熱して溶融せしめ、融液とする工程、当該融液を冷却して凝固せしめ、共晶体インゴットを得る工程、及び該共晶体インゴットを粉砕、分級して共晶体粒子を得る工程からなる製造方法を好適に採用することができる。
前記原料混合物中のLiF及び無機蛍光材の混合比は、共晶体中の各々の組成比(共晶組成)に一致させることが好ましい。共晶組成に対して一方が過剰である場合には、過剰な成分が独立して析出し、得られるシンチレーターの一様性を損なう恐れがある。
共晶組成は、用いる無機蛍光材の種類によって異なるが、熱分析等の手法によって求めることができる。例えば、無機蛍光材としてMgF、CaF、SrF、LaF、LiBaF、或いはLiYFを用いた場合における共晶組成の混合比は、それぞれLiF/無機蛍光材が80/20、81/19、83/17、65/35及び61/39(mol/mol)である。
LiBaF及びLiYF等の複塩化合物を用いる場合には、当該複塩化合物の粉末を原料に用いても良く、当該複塩化合物の各成分(LiFとBaF及びLiFとYF等)の粉末を、複塩化合物の量論組成に合わせて混合したものを原料に用いても良い。また、無機蛍光材中に前記発光中心元素を含有せしめる場合には、所期の量の発光中心元素のフッ化物等を原料混合物中に添加すれば良い。
前記共晶体インゴットを得る工程において、融液が凝固する際に、融液中のLiFと無機蛍光材がそれぞれ独立した相に相分離して組織構造を形成する。
組織構造の態様は、無機蛍光材の種類によって異なり、例えば、無機蛍光材がCaF或いはSrFの場合には、層状のLiFと層状のCaF或いはSrFが交互に積層した多層構造であり、無機蛍光材がLiYF或はLiLuFの場合には、LiYF或いはLiLuFからなるマトリックス中に、円柱状のLiFが多数配列したハニカム構造である。
融液を冷却する際の冷却速度を高めることによって、共晶体中のLiFを微細な形状とすることができる。前記層状のLiFの厚さ、或いは円柱状のLiFの直径を5μm以下とし、良好な特性を有するシンチレーターを得るためには、該冷却速度を5℃/hr以上とすることが好ましく、20℃/hr以上とすることが特に好ましく、100℃/hr以上とすることが最も好ましい。
融液を冷却する際には、融点を約200℃下回る温度までは高い冷却速度で冷却し、それ以下の温度では低い冷却速度で冷却してもよい。冷却速度の上限は、特に制限されないが、急冷による製造装置の破損を避けるため、3000℃/hr以下とすることが好ましい。
従来、前記共晶体インゴットを加工して所定形状の中性子シンチレーターとして用いた場合に、共晶体の部位によって特性が変動するという問題があった。
本発明者らは、この問題の原因は、前記共晶体インゴットを得る工程において、共晶体の部位によって冷却速度及び冷却が進行する向きが異なるため、それぞれ組織の微細構造が変動すること、及び組織構造の向きが異なることにより、無機蛍光材から発せられた光の伝搬効率が異なるためであると考えた。
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであって、粒子状の共晶体を用い、かかる共晶体粒子を含んでなる樹脂組成物を中性子シンチレーターとして用いることを最大の特徴とする。かかる態様においては、共晶体の組織構造の微細さの変動及び組織構造の向きが平均化されるため、一様な特性を有する中性子シンチレーターを得ることができるものと推察している。
共晶体粒子の製造方法は特に限定されず、共晶体インゴットを粉砕及び分級して所期の形状の共晶体粒子を得る方法、原料混合物を溶融せしめた融液を噴霧または滴下しながら冷却して所期の形状の共晶体粒子を得る方法、或いは、LiF及び無機蛍光材の溶液を出発原料として粒子生成反応により所期の形状の共晶体粒子を直接得る方法が挙げられる。
上記製造方法の中でも、共晶体インゴットを粉砕及び分級する方法が、生産効率が高く、所期の共晶体粒子を安価に得られるため好ましい。
共晶体インゴットを粉砕する方法は特に限定されず、ハンマーミル、ローラーミル、ロータリーミル、ボールミル、或いはビーズミル等の公知の粉砕機をなんら制限なく用いることができる。中でも、微粉末の発生を抑制し、且つ、等比表面積球相当径が50μm以上、或いは100μm以上である共晶体粒子を効率的に得るために、ハンマーミル及びローラーミルを用いることが好ましい。
共晶体インゴットを粉砕した共晶体粒子を分級する方法は、乾式ふるい、湿式ふるい、或いは風力分級等の公知の方法を特に制限なく適用することができる。
ふるい分けにより所期の共晶体粒子を分級する場合、上側に位置する目開きが500μm〜1000μmのふるいを通過し、下側に位置する50μm〜100μmのふるいに残留する粒子を集めることにより、好適な大きさの共晶体粒子を得ることができる。
[樹脂]
本発明の中性子シンチレーターにおいては、第二の構成要素として樹脂が必要である。当該樹脂中に前記共晶体粒子を含有せしめ、樹脂組成物とすることに特徴がある。
樹脂としては、前記無機蛍光材からの発光を効率よく光検出器に伝搬させるため、無機蛍光材の発光波長における内部透過率(以下、単に内部透過率という)が高い樹脂を用いることが好ましい。
なお、中性子シンチレーターの厚みが薄い場合には、内部透過率の影響は少ない。従って、当該内部透過率は、中性子シンチレーターの厚みによって変えることができ、最適な樹脂を適宜選択して用いればよい。例えば0.2〜1mm程度の薄いシンチレーターである場合は、内部透過率が10%/cm以上の樹脂であればよい。しかし、厚さが1mmを超えるシンチレーターである場合は、内部透過率が50%/cm以上である樹脂が好ましく、3mmを超える厚いシンチレーターである場合は、内部透過率が80%/cm以上である樹脂が好ましく、90%/cm以上である樹脂が特に好ましい。
当該樹脂を具体的に例示すれば、メチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂、フッ素化シリコーン樹脂、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、及びポリビニルアルコール等があげられる。これらの樹脂は、屈折率を調整するなどの目的で、複数の樹脂を混合して用いてもよい。
本発明において、内部透過率とは、樹脂に光を透過せしめた際に樹脂の入射側および出射側の表面で生じる表面反射損失を除いた透過率であって、光路長1cm当りの値で表す。
該光路長1cm当りの内部透過率(τ10)は、厚さの異なる一対の樹脂について、それぞれの表面反射損失を含む透過率を測定し、以下の式(1)に代入することによって求めることができる。
log(τ10)={log(T2)−log(T1)}/(d2−d1)・・・(1)
(式中、d1及びd2は、一対の前記樹脂のcm単位の厚さを示し、d2>d1である。T1及びT2は、それぞれ厚さがd1及びd2の樹脂の表面反射損失を含む透過率を示す)
樹脂の屈折率も中性子の検出効率に影響を与えるので、無機蛍光材の発光波長における樹脂の屈折率(以下、単に屈折率という)が、無機蛍光材の屈折率に近い樹脂を用いることが好ましい。
具体的には、無機蛍光材の屈折率(n)対する樹脂の屈折率(n)の比(n/n)が、0.90〜1.10であることが好ましく、0.95〜1.05であることが特に好ましく、0.98〜1.02であることが最も好ましい。比(n/n)をかかる範囲とすることによって、無機蛍光材と樹脂との界面における光の散乱を抑制することができ、無機蛍光材からの発光を効率よく光検出器に伝搬させることができる。
これら無機蛍光材及び樹脂の屈折率は、本発明のシンチレーターを用いる温度域での屈折率である。例えば、本発明のシンチレーターを100℃近辺で用いる場合、上記屈折率比は、100℃で求める必要がある。
無機蛍光材の発光波長における無機蛍光材及び樹脂の屈折率は、屈折率計を用いて測定することができる。一般に、屈折率計の光源として、Heランプのd線(587.6nm)、同r線(706.5nm)、H2ランプのF線(486.1nm)、同C線(656.3nm)、Hgランプのi線(365.0nm)、同h線(404.7nm)、同g線(435.8nm)、及び同e線(546.1nm)を用いることができる。
これら光源の中から、無機蛍光材の発光波長より短波長側の光源及び長波長側の光源を適宜選択し、各光源の波長及び該波長において測定された屈折率を、それぞれ以下のセルマイヤーの式(2)に代入して定数A及びBを求めた後、同式に無機蛍光材の発光波長を代入して所期の屈折率を求めることができる。無機蛍光材の発光波長が、前記いずれかの光源の波長と一致する場合は、当該光源を用いて屈折率を求めれば良い。
−1=Aλ/(λ−B)・・・・・(2)
(式中、nは波長λにおける屈折率を表し、A及びBは定数である)
かかる屈折率の測定においては、測定に適した形状の無機蛍光材のバルク体及び樹脂のバルク体を用いて良い。
本発明において、樹脂組成物中の共晶体粒子の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物中の共晶体粒子の体積分率を10%〜70%とすることが好ましく、20%〜60%とすることが特に好ましい。樹脂組成物中の共晶体粒子の体積分率をかかる範囲とすることによって、樹脂組成物の単位体積当たりの中性子検出効率を向上させることができる。一方、樹脂組成物の製造の容易さに鑑みて、前記樹脂組成物中の共晶体粒子の体積分率は70%以下とすることが好ましく、60%以下とすることが特に好ましい。
本発明において、樹脂は分散材及びバインダーとしての働きをなす。従って、樹脂組成物中における樹脂の含有量は、体積分率で1%以上、好ましくは5%以上とすればよく、樹脂の含有量およびその性状によって、スラリー状、ペースト状、或いは固体状のシンチレーターとなすことができる。
スラリー状またはペースト状のシンチレーターとする場合は、液体または粘性体の樹脂と共晶体粒子とを混合すればよい。固体状のシンチレーターは、共晶体粒子と液体または粘性体の樹脂前駆体とを混合した後に、該樹脂前駆体を硬化せしめて作製する。
当該樹脂組成物の製造方法は特に制限されないが、以下に具体的な製造を例示する。
樹脂組成物を、スラリー状またはペースト状のシンチレーターとして用いる場合には、まず、共晶体粒子と液体または粘体の樹脂を混合する。かかる混合操作においては、プロペラミキサー、プラネタリーミキサー、またはバタフライミキサー等の公知の混合機を特に制限なく用いることができる。
次いで、混合操作において樹脂組成物中に生じた気泡を脱泡する。かかる脱泡操作においては、真空脱泡機、または遠心脱泡機等の脱泡機を特に制限なく用いることができる。脱泡操作を行うことによって、気泡による光の散乱を抑制することができ、無機蛍光材からの発光を効率よく光検出器に伝搬させることができる。
なお、前記混合操作及び脱泡操作において、樹脂組成物の粘度を低下せしめ、混合及び脱泡を効率よく行う目的で、樹脂組成物に、トルエン、ヘキサン、エタノール、アセトンなどの有機溶媒を、樹脂組成物全質量に対して20質量%以下、好ましくは10質量%以下の量で添加しても良い。
樹脂組成物を固体状シンチレーターとして用いる場合は、液体または粘性体の樹脂前駆体を用いて前記と同様に混合操作及び脱泡操作を行う。次いで、得られた共晶体粒子と樹脂前駆体の混合物を所望の形状の鋳型に注入し、該樹脂前駆体を硬化せしめる。硬化せしめる方法は特に制限されないが、加熱、紫外線照射、或いは触媒添加により、樹脂前駆体を重合する方法が好適である。
本発明の樹脂組成物からなる中性子シンチレーターは、任意の形状を取りうるスラリー状またはペースト状で用いることができる。他方、固体状で用いる場合にも所望の形状の鋳型によって成型できるため、任意の形状とすることが容易である。従って、本発明によれば、用途に応じてファイバ状、中空チューブ状、或いは大面積などの、様々な形状及び大きさの中性子シンチレーターを提供することができる。
[充填材粒子]
共晶体粒子と樹脂の比重が異なる場合には、共晶体粒子が液状樹脂又は硬化前の樹脂前駆体中で沈降または浮上して分離し、中性子シンチレーターとしての特性が不均一となる恐れがある。かかる共晶体粒子の分離を抑制し、特に一様な特性の中性子シンチレーターを得るために、樹脂組成物中に充填材粒子をさらに含有させることが好ましい。
充填材粒子が共晶体粒子同士の間隙に充填されることによって、共晶体粒子の分離を抑制することができる。充填効果を発現させるためには、体積比で、共晶体粒子100体積部当たり20体積部以上の充填材を配合することが好ましい。上限は、液状の樹脂組成物又は硬化前の樹脂前駆体の粘度が過度に高くならないようにするために、500体積部以下、好ましくは200体積部以下、特に好ましくは120体積部以下にするとよい。
充填材粒子の比重を共晶体粒子と同等とすることが特に好ましい。充填材粒子の比重を共晶体粒子と同等とすることによって、充填材粒子と共晶体粒子とが、樹脂中で沈降または浮上する速度が一致し、充填材粒子が共晶体粒子同士の間隙に精緻に充填される。この結果、共晶体粒子が樹脂組成物中に均一に分散され、中性子シンチレーターの一様性がさらに向上する。
さらに、充填材粒子は、共晶体粒子の発光波長における屈折率(n)が、樹脂の屈折率(n)に近いものを用いることが好ましい。具体的には充填材粒子の屈折率に対する樹脂の屈折率の比(n/n)が、0.90〜1.10であることが好ましく、0.95〜1.05であることが特に好ましく、0.98〜1.02であることが最も好ましい。
比(n/n)をかかる範囲とすることによって、充填材粒子と樹脂との界面における光の散乱を抑制することができ、無機蛍光材からの発光を効率よく光検出器に伝搬させることができる。
これら充填材粒子及び樹脂の屈折率は、本発明のシンチレーターを用いる温度域での屈折率である。例えば、本発明のシンチレーターを100℃近辺で用いる場合、上記屈折率比は、100℃で求める必要がある。
充填材粒子は、共晶体粒子同士の間隙に充填せしめるため、その形状が、共晶体粒子と同等、あるいは共晶体粒子より小さい形状であることが好ましい。
具体的には、共晶体粒子と同様にして粒度を調整した充填剤粒子、あるいは共晶体粒子の場合よりも目開きの小さいふるいで分級する等して共晶体粒子より小さい粒子となるように粒度を調整した充填剤粒子が、それぞれ好適に用いられる。
充填材粒子としては、具体的には、シリカ、酸化チタン、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、LiF、炭酸マグネシウム、フッ化ストロンチウム、雲母(マイカ)、及び各種ガラス等の無機物粒子;シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン及びスチレンブタジエン等の有機物粒子等が挙げられる。
なお、有機物粒子が樹脂組成物に配合される樹脂と同一の場合は、成形後に、有機物粒子と樹脂は一体化され充填材粒子としては存在しない。
[中性子不感蛍光体]
本発明において、共晶体粒子及び樹脂に加えて、Li−6等の中性子捕獲反応を生じる同位体を含有せず、中性子に反応しない蛍光体(以下、中性子不感蛍光体ともいう)をさらに混合して、中性子シンチレーターとすることが好ましい。
以下、中性子不感蛍光体の配合効果について説明する。γ線が中性子シンチレーターに入射した際に、中性子シンチレーター中で高速電子が生じ、該高速電子が共晶体粒子にエネルギーを付与し、共晶体粒子中の無機蛍光材が発光する場合がある。かかるγ線による発光の強度が、中性子が入射した際の発光の強度と同等である場合には、γ線の入射を中性子の入射として誤って検出してしまい、中性子の計数に誤差を生じる。
γ線によって生じる高速電子の飛程距離は数mmであり、共晶体粒子の大きさに比較して充分に長い。従って、中性子不感蛍光体が併存する場合は、高速電子は共晶体から逸脱し、当該中性子不感蛍光体に到達してエネルギーを付与し、中性子不感蛍光体も蛍光を発する。すなわち、γ線が入射した際には、共晶体粒子と中性子不感蛍光体の双方がエネルギーを付与され蛍光を発する。一方、中性子が入射した際には、共晶体粒子で生じた2次粒子は共晶体粒子から逸脱しないため、共晶体粒子のみが蛍光を発する。
従って、前記共晶体粒子と中性子不感蛍光体の蛍光特性の差異を利用して中性子とγ線を弁別することができる。即ち、蛍光寿命や発光波長等の蛍光特性の差異を識別できる機構を中性子検出器に設けておき、共晶体粒子に由来する蛍光と中性子不感蛍光体に由来する蛍光の双方が検出された場合にはγ線が入射した事象とし、共晶体粒子に由来する蛍光のみが検出された場合には中性子が入射した事象として処理することができる。かかる処理を講じることによって、n/γ弁別能が一層優れた中性子検出器とすることができる。
蛍光特性の差異を識別できる機構を具体的に例示すれば、前記共晶体粒子と中性子不感蛍光体の蛍光寿命の差異を識別でき得る波形解析機構、或いは、共晶体粒子と中性子不感蛍光体の発光波長を識別でき得る波長解析機構が挙げられる。
以下、波形解析機構について具体的に説明する。この波形解析機構は、前置増幅器、主増幅器、波形解析器及び時間振幅変換器により構成される。
本発明の中性子シンチレーターと光検出器と組み合わせてなる中性子検出器において、光検出器より出力された信号を、前置増幅器を介して主増幅器へ入力し、増幅・整形する。主増幅器で増幅・整形された、主増幅器より出力される信号の強度は経時的に増加する。かかる増加に要する時間(以下、立ち上がり時間ともいう)は、記共晶体粒子あるいは中性子不感蛍光体の蛍光寿命を反映しており、蛍光寿命が短い程、立ち上がり時間が短くなる。
当該立ち上がり時間を解析するため、主増幅器で増幅・整形された信号を波形解析器に入力する。波形解析器は、前記主増幅器より入力された信号を時間積分し、当該時間積分された信号強度が所定の閾値を超えた際にロジック信号を出力する。ここで、波形解析器には二段階の閾値が設けられており、第一のロジック信号と第二のロジック信号がある時間、間隔を以て出力される。
次に波形解析器から出力される二つのロジック信号を時間振幅変換器(Time to amplitude converter;TAC)に入力し、波形解析器から出力される二つのロジック信号の時間差をパルス振幅に変換して出力する。該パルス振幅は、波形解析器から出力される第一のロジック信号と第二のロジック信号の時間間隔、すなわち立ち上がり時間を反映する。
上記説明から理解されるように、該時間振幅変換器から出力されるパルス振幅が小さい程、立ち上がり時間が短くなり、共晶体粒子あるいは中性子不感蛍光体の蛍光寿命が短いと識別される。
前記中性子不感蛍光体を具体的に例示すれば、2,5−Dipheniloxazole、1,4−Bis(5−phenyl−2−oxazolyl)benzene、1,4−Bis(2−methylstyryl)benzene、アントラセン、スチルベン、ナフタレン、ならびにこれらの誘導体等の有機蛍光体が挙げられる。
かかる有機蛍光体は、一般に前記共晶体粒子に比較して蛍光寿命が短いため、この蛍光寿命の差異を利用して、n/γ弁別能を向上させることができる。
本発明の中性子シンチレーターにおける中性子不感蛍光体の含有量は、前記の効果を発揮し得る範囲内で適宜に設定することができる。中性子不感蛍光体が高速電子からのエネルギーによって効率よく励起され、高強度の発光を得るためには、樹脂100質量部に対して、0.005質量%以上とすることが好ましく、0.01質量%以上とすることが特に好ましい。本発明の中性子シンチレーターにおける中性子不感蛍光体の含有量の上限は、特に制限されるものではない。しかしながら濃度消光による発光強度の減少を防止し、短寿命の蛍光を確実に観測してn/γ弁別の精度を確保する観点から、樹脂100質量部に対して、10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましく、2質量%以下とすることが特に好ましい。
〈中性子検出器〉
本発明の中性子検出器は、前記中性子シンチレーターと光検出器と組み合わせてなる。即ち、中性子の入射によって中性子シンチレーターから発せられた光は、光検出器によって電気信号に変換され、中性子の入射が電気信号として計測され中性子計数等に用いることができる。
光検出器は特に限定されず、光電子増倍管、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、ガイガーモードアバランシェフォトダイオード等の従来公知の光検出器を何ら制限なく用いることができる。
中性子シンチレーターは、光検出器に対向する光出射面を有し、当該光出射面は平滑な面であることが好ましい。かかる光出射面を有することによって、中性子シンチレーターで生じた光を効率よく光検出器に入射できる。
また、光検出器に対向しない面に、アルミニウム或いはポリテトラフロロエチレン等からなる光反射膜を施すことは、中性子シンチレーターで生じた光の散逸を防止することができため好ましい態様である。
本発明の中性子検出器を製作する方法は特に限定されず、例えば、光検出器の光検出面に中性子シンチレーターの光出射面を光学グリース或いは光学セメント等で光学的に接着し、光検出器に電源および信号読出し回路を接続して中性子検出器を製作することができる。なお、信号読出し回路は、一般に前置増幅器、整形増幅器、及び多重波高分析器などで構成される。
また、光反射膜が施された中性子シンチレーターを多数配列し、光検出器として、マルチアノード光電子増倍管、フォトダイオードアレイ、ガイガーモードアバランシェフォトダイオードアレイ及びCCD検出器等の位置敏感型光検出器を用いることにより、中性子検出器に位置分解能を付与することができる。
〈波長変換部位設置中性子検出器〉
本発明において、中性子シンチレーターと光検出器が、波長変換ファイバ又は波長変換シート(以下、波長変換部位という)によって光学的に接続される態様も好適に採用できる。
波長変換部位は、樹脂組成物中の共晶体粒子からの発光を光検出器へ導くためのライトガイドとして作用する。
当該波長変換部位の作用機構を、図1を用いて説明する。共晶体粒子から発せられた光が波長変換部位に到達すると、波長変換部位が該共晶体粒子の発光を吸収し、もとの波長とは異なる波長で再発光する。この波長変換部位の発光は等方的に生じるが、波長変換部位の外面に対してある角度で発せられた光は、波長変換部位の内部を全反射しながら伝搬し、波長変換部位の端部へ到達する。そして、該波長変換部位の端部に光検出器を設置することにより、共晶体粒子からの発光を、波長変換部位を介して収集することができる。
かかる態様は、大面積のシンチレーターから小型の光検出器に集光する場合に特に好適に採用できる。また、多数の波長変換部位を配置しておき、どの波長変換部位を介してシンチレーション光が到達したかを識別できる機構を設けることにより、中性子の入射位置を特定できる位置敏感型の中性子検出器とすることができる。
波長変換ファイバ又は波長変換シートは、プラスチック製またはガラス製の基材に蛍光体を含有せしめ、ファイバ状又はシート状に成型したものであって、該蛍光体の作用によって、ある波長の光を吸収し、もとの波長とは異なる波長で再発光する。
波長変換ファイバ又は波長変換シートの材質は特に制限されないが、一般にはポリスチレン、ポリメチルメタクリレート及びポリビニルトルエン等のプラスチック製の基材に、2,5−Dipheniloxazole、1,4−Bis(5−phenyl−2−oxazolyl)benzene、1,4−Bis(2−methylstyryl)benzene、アントラセン、スチルベン、ナフタレン並びにこれらの誘導体などの、種々の吸収波長を有する有機蛍光体を含有せしめたものが市販されている。
本発明において、共晶体粒子の発光波長に適合した吸収波長の波長変換ファイバ又は波長変換シートを選択して用いることが好ましい。
当該波長変換ファイバ及び波長変換シートの形状は特に制限されない。波長変換ファイバとしては、その断面が、直径が0.1〜5mmの円形のもの、或いは1辺が0.1〜5mmの四角形のものが好適に使用できる。波長変換シートとしては、厚さが0.1〜5mmのものが好適に使用できる。
波長変換部位の内部を光が伝搬する効率を高めるため、前出の有機蛍光体を含有せしめた基材をコア材とし、その表面にコア材より屈折率の低いクラッド材を設けたものが好適である。
波長変換部位はシンチレーターである樹脂組成物に当接して配置されるのが一般的である(図1参照)。しかし、当該波長変換部位を樹脂組成物中に内包させて使用することは好ましい態様である。
かかる態様とすることによって、樹脂組成物からの発光が、波長変換部位に到達せずに消光することによる損失を大幅に低減でき、光の収集効率が向上する。即ち、波長変換部位が樹脂組成物の外周に配置される場合、樹脂組成物で生じた発光が、一旦樹脂組成物から出射した後、中間相を介して再度波長変換部位に入射する必要がある。これに対して、波長変換部位が樹脂組成物中に内包されている場合、樹脂組成物からの発光が中間相を介することなく波長変換部位に入射するため、損失を大幅に低減できる。
樹脂組成物中に波長変換部位が内包される位置は、特に制限されない。樹脂組成物の中心部や周縁部等、樹脂組成物の形状に応じて光の収集効率が良好となる位置に内包することが好ましい。
波長変換部位を使用する場合、共晶体粒子の発光波長における、樹脂組成物中の樹脂の屈折率に対する波長変換部位の屈折率の比が、0.95以上であることが好ましい。共晶体粒子で生じた発光は、樹脂を介して波長変換部位に入射するが、ある臨界角を超える入射角で波長変換部位に入射しようとする光は、樹脂と波長変換部位の界面で全反射され、入射することができない。
屈折率の比を0.95以上とすることによって、該臨界角を約70度以上とすることができ、樹脂組成物から波長変換部位への入射の効率を高めることができる。屈折率の比を1以上とすることは、樹脂と波長変換部位の界面において全反射が起こらなくなるため、特に好ましい。さらに、屈折率の比を1.05以上とすることが、波長変換部位で再発光した光が、波長変換部位と樹脂組成物の界面で全反射しながら波長変換部位の内部を伝搬する効率が高まるため、最も好ましい。
かかる屈折率の比とすることは、波長変換部位が樹脂組成物の外周に配置される場合にも効果を発揮する。すなわち、前記中間相として、その屈折率が樹脂組成物と波長変換部位との間にあるものを用いれば、前記説明のとおり、樹脂組成物から中間相への出射、及び中間相から波長変換部位への入射の効率が向上する。
こうした樹脂組成物中の樹脂の屈折率及び波長変換部位の屈折率は、中性子検出器を用いる温度域での屈折率である。例えば、中性子検出器を100℃近辺で用いる場合、シンチレーター及び波長変換部位も同温度下になるため、上記屈折率比は、100℃で求める必要がある。
当該中間層として、樹脂組成物中に配合される樹脂を用いた場合が、以下の理由により最も好ましい。樹脂組成物と中間層の界面で光の全反射が起こらず、波長変換部位が樹脂組成物に内包されている場合と同様の効果が得られる。
前記したように、波長変換部位は、一般にポリスチレン、ポリメチルメタクリレート及びポリビニルトルエンからなる。これらのナトリウムD線における屈折率(nD)は約1.5〜1.6である。したがって、前記屈折率の比の要件を満たすためには、これらよりも屈折率が低い低屈折率樹脂を樹脂組成物中の樹脂として用いることが好ましい。
かかる低屈折率樹脂としては、メチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂、フッ素化シリコーン樹脂及びフッ素樹脂が好適に使用でき、nDが約1.3〜1.5のものが市販されている。
また、前記したように、無機蛍光材の屈折率は、当該低屈折率樹脂と同程度に低いことが好ましい。従って、無機蛍光材としては、MgF、CaF及びSrFが好ましい。これらのnDは、それぞれ1.39、1.43及び1.44であり、前記屈折率の比の要件を満たすことができる。
なお、ここでは便宜上ナトリウムD線における屈折率を例にとって説明したが、無機蛍光材の発光波長においても同様である。
波長変換部位を樹脂組成物に内包せしめることによって、波長変換部位の使用量を削減することができる。即ち、波長変換部位が樹脂組成物の外周に配置される場合、樹脂組成物から出射した光を効率よく波長変換部位に入射するためには、樹脂組成物から光が出射する面を多量の波長変換部位で隙間なく覆う必要がある。
これに対して、波長変換部位が樹脂組成物に内包されている場合、樹脂組成物の外周を反射材で覆う等、従来公知の簡便な手法によって光を樹脂組成物の内部に封じ込めるだけで、樹脂組成物の内部で縦横に走行する光が波長変換部にいずれ到達するため、樹脂組成物から出射した光を波長変換部位に効率よく入射することができる。
上述のとおり、内包によって波長変換部位の使用量を削減することができるが、使用量が過度に少ない場合には、光量の損失が増大するおそれがあるため、適切な使用量とすることが好ましい。
本発明者らの検討によれば、適切な使用量は、波長変換ファイバについてはその体軸に垂直な断面、波長変換シートについてはそのシート面に垂直な断面における、樹脂組成物の断面積に対する波長変換部位の断面積の比によって規定することができる。
樹脂組成物から出射した光を効率よく波長変換部位に入射するためには、該断面積の比を0.005以上とすることが好ましく、0.05以上とすることが特に好ましい。一方、波長変換部位の使用量を削減するためには、該断面積の比を5以下とすることが好ましく、0.5以下とすることが特に好ましい。
波長変換部位が複数ある場合には、複数ある波長変換部位の断面積の和(総断面積)を求め、樹脂組成物の断面積に対する波長変換部位の総断面積の比が、前記範囲となるようにすれば良い。しかしながら、本発明者らの知見によれば、個々の波長変換部位について前出の断面積の比が満たされるように、樹脂組成物を反射材で区切り、できるだけ狭い領域に光を封じ込めることによって、波長変換部位により効率よく光を入射することができる。
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
実施例1
<共晶体粒子の製造>
本実施例では、Euを含有するCaFを無機蛍光材として用い、LiFと該無機蛍光材との共晶体粒子を製造した。当該無機蛍光材の発光波長は430nmであった。
原料のLiFを150g(6.0mol)、CaFを120g(1.5mol)及びEuFを1.6g(0.008mol)混合して原料混合物を調製した。なお、各原料はそれぞれ純度が99.99%以上の粉末を用いた。また、LiFについては、Li−6同位体比が95%の原料を用いた。当該原料混合物において、LiFとCaFの混合比は、LiF/CaFが80/20(mol/mol)であり、共晶組成の混合比とした。当該共晶組成の原料混合物の融点は、770℃である。また、発光中心元素であるEuをCaFに含有せしめる量は、CaFに対して0.5mol%とした。
次いで、前記原料混合物を内寸法が100mmx100mmx100mmのカーボン製の坩堝に充填し、抵抗加熱方式の加熱ヒーター、断熱材、及び真空排気装置を備えたチャンバー内にセットした。真空排気装置を用いて、チャンバーの内部を2.0×10−4Pa以下まで真空排気した後、5vol%の四フッ化メタンを混合した高純度アルゴンガスをチャンバー内に導入してガス置換操作を行った。ガス置換操作後のチャンバー内の圧力は大気圧とした。
ガス置換操作を行った後、加熱ヒーターによって原料混合物を加熱して溶融せしめた。加熱ヒーターの出力は、坩堝の温度が830℃となるように調整した。
次いで、加熱ヒーターの出力を低下し、溶融した原料混合物の融液を冷却した。冷却速度は坩堝の温度が500℃に到達するまでは300℃/hrとし、坩堝の温度が500℃未満の範囲では100℃/hrとした。かかる操作により、融液を全て凝固せしめ、共晶体インゴットを得た。
当該共晶体インゴットを、ハンマーによって約2cm角の不定形の形状に粗粉砕した後、ハンマーミルによって粉砕した。得られた粉砕物を乾式分級により分級して300μmの上側ふるいを通過し、150μmの下側ふるいに残留したものを集め不定形の共晶体粒子を得た。
得られた共晶体粒子について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて反射電子組成像を観察した。該共晶体粒子は、層状のLiFと層状のCaFが交互に積層した多層構造を有し、層状のLiFの厚さは約1μmであった。
得られた共晶体粒子を粉砕した粉末について粉末X線回折測定を行い、結晶相を同定した。LiFとCaFに由来する回折ピークが確認でき、当該共晶体がLiFとCaFからなる共晶体であることが分かった。
<中性子用シンチレーターの作製>
本実施例では、樹脂として、無機蛍光材の発光波長である430nmにおいて、屈折率が1.45であるメチルフェニルシリコーン樹脂を用いた。430nmにおける無機蛍光材の屈折率は1.44であり、無機蛍光材の屈折率に対する樹脂の屈折率の比は、1.01であった。なお、かかる屈折率は、前記説明した通り、屈折率計を用いて測定した値であって、本実施例における中性子シンチレーターの使用温度である室温で測定した値である。
当該樹脂はA液とB液の2液からなり、等量の2液を混合して樹脂前駆体を調製した後、該樹脂前駆体を加熱により硬化せしめることができる。該樹脂の内部透過率は、無機蛍光材の発光波長である430nmにおいて、95%/cmであった。
前記共晶体粒子5.7g(2.0mL)を、予め等量のA液とB液を混合したメチルフェニルシリコーン樹脂の樹脂前駆体3.0mLに加え、撹拌棒を用いてよく混合した後、該混合操作において混合物中に生じた気泡を、真空脱泡機を用いて脱泡して樹脂組成物の前駆体を得た。
次いで、樹脂組成物の前駆体 2.5mLを、50mm×50mm×1mmのポリテトラフロロエチレン製の鋳型に注入し、60℃で24時間加熱して樹脂前駆体を硬化せしめ、本発明の共晶体粒子を含む樹脂組成物からなる固体状の中性子シンチレーターを得た。該中性子シンチレーターの形状は、50mm×50mm×1mmのシート状であり、樹脂組成物中の共晶体粒子の体積分率は40%であった。
<中性子検出器の作製と特性評価>
得られた中性子用シンチレーターの中性子に対する応答特性を以下の方法によって評価した。
まず、中性子シンチレーターの50mm×50mmの面を光出射面とし、光出射面を光電子増倍管(浜松ホトニクス社製 R877UVHA)の光検出面に、光学グリースで接着した。次いで、中性子シンチレーターの光出射面以外の面に未焼成のポリテトラフロロエチレンのシートからなる反射材を設置した。
光電子増倍管に電源を接続し、また、信号読出し回路として、光電子増倍管側から前置増幅器、整形増幅器及び多重波高分析器を接続し、中性子検出器を製作した。
光電子増倍管の光検出面に外部からの光が入射しないように、中性子検出器を黒色のビニールシート製の遮光材で覆った後、2.4MBqの放射能のCf−252を20cm角の立方体形状の高密度ポリエチレンの中心に設置し、該Cf−252からの中性子を高密度ポリエチレンで減速して中性子検出器に照射した。
中性子用シンチレーターより発せられたシンチレーション光を計測するため、光電子増倍管には電源供給線より1000Vの高電圧を印加し、光電子増倍管より出力される電気信号を信号出力線から読み出した。ここで、光電子増倍管より出力される電気信号は、シンチレーション光を反映したパルス状の信号であり、パルスの波高がシンチレーション光の発光強度を表す。かかる光電子増倍管より出力された電気信号を、前置増幅器を介して整形増幅器に入力し、整形増幅器で整形、増幅した後、多重波高分析器に入力して解析し、波高分布スペクトルを作成した。
次に、中性子に替えて、0.8MBqの放射能のCo−60を中性子シンチレーターから10cmの距離に設置し、該Co−60からのγ線を照射する以外は、前記と同様にして波高分布スペクトルを作成した。
得られた波高分布スペクトルを図2に示す。図2の実線および点線は、それぞれ中性子およびγ線照射下での波高分布スペクトルである。なお、当該波高分布スペクトルにおいて、横軸を中性子ピークの波高値を1とした相対値で示した。図2より、明瞭な中性子ピークが確認でき、また、γ線の入射によって生じる電気信号の波高値は、中性子ピークの波高値に比較して低いため、容易にγ線と中性子を弁別できることが分かる。
<中性子シンチレーターの一様性の評価>
前記50mm×50mm×1mmの中性子シンチレーターを、5mm×5mm×1mmのサイズの100個の小片に細断した。各々の小片を用いて、中性子照射下での波高分布スペクトルを作成し、該波高分布スペクトルにおける中性子ピークの波高値及び面積について、分布を調査した。当該中性子ピークの波高値及び面積は、それぞれ中性子シンチレーターの発光強度及び中性子検出効率を示す指標となる。
その結果、中性子ピークの波高値及び面積の標準偏差はそれぞれ5.1%及び3.0%であり、本発明の中性子シンチレーターは、各部位における特性が均一であり、一様性に優れた中性子シンチレーターであることが分かった。
比較例1
実施例1と同様にして共晶体インゴットを作製し、当該共晶体インゴットを切断、研磨して、50mm×50mm×1mmのプレート状の中性子シンチレーターを得た。該中性子シンチレーターは、共晶体インゴットの冷却過程においてクラックが生じていた。
該中性子シンチレーターを、5mm×5mm×1mmのサイズの100個の小片に細断した。各々の小片を用いて、実施例1と同様にして中性子照射下での波高分布スペクトルを作成し、該波高分布スペクトルにおける中性子ピークの波高値及び面積について、分布を調査した。その結果、中性子ピークの波高値及び面積の標準偏差はそれぞれ11%及び4.8%であり、本比較例の中性子シンチレーターは、実施例1に示した本発明の中性子シンチレーターに比較して、各部位における特性が不均一であり、一様性に問題があることが分かった。
実施例2
<共晶体粒子の製造>
本実施例では、Ceを含有するSrFを無機蛍光材として用い、LiFと無機蛍光材との共晶体粒子を製造した。当該無機蛍光材の発光波長は330nmであった。
原料のLiF 150g(6.0mol)、SrF 180g(1.4mol)、及びCeF 1.4g(0.007mol)を混合して原料混合物を調製する以外は、実施例1と同様にして共晶体インゴットを作製し、該共晶体インゴットを粉砕して共晶体粒子を得た。なお、当該原料混合物において、LiFとSrFの混合比は、LiF/SrFが81/19(mol/mol)であり、共晶組成の混合比とした。共晶組成の原料混合物の融点は、770℃である。また、発光中心元素であるCeをSrFに含有せしめる量は、SrFに対して0.5mol%とした。
得られた共晶体粒子について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて反射電子組成像を観察した。該共晶体粒子は、層状のLiFと層状のSrFが交互に積層した多層構造を有し、層状のLiFの厚さは約1μmであった。共晶体粒子を粉砕した粉末について粉末X線回折測定を行い、結晶相を同定した。LiFとSrFに由来する回折ピークが確認でき、当該共晶体がLiFとSrFからなる共晶体であることが分かった。
<中性子用シンチレーターの作製>
本実施例では、樹脂として、前記無機蛍光材の発光波長である330nmにおいて、屈折率が1.45であるメチルフェニルシリコーン樹脂を用いた。330nmにおける無機蛍光材の屈折率は1.45であり、無機蛍光材の屈折率に対する樹脂の屈折率の比は、1.00であった。なお、かかる屈折率は、前記説明した通り、屈折率計を用いて測定した値であって、本実施例における中性子シンチレーターの使用温度である室温で測定した値である。該樹脂はA液とB液の2液からなり、等量の2液を混合して樹脂前駆体を調製した後、該樹脂前駆体を加熱により硬化せしめることができる。また、該樹脂の内部透過率は、前記無機蛍光材の発光波長である330nmにおいて、87%/cmであった。
前記共晶体粒子6.6g(2.0mL)を、予め等量のA液とB液を混合したメチルフェニルシリコーン樹脂の樹脂前駆体3.0mLに加え、撹拌棒を用いてよく混合した後、混合操作において混合物中に生じた気泡を、真空脱泡機を用いて脱泡して樹脂組成物の前駆体を得た。
次いで、当該記樹脂組成物の前駆体 2.5mLを、50mm×50mm×1mmのポリテトラフロロエチレン製の鋳型に注入し、60℃で24時間加熱して樹脂前駆体を硬化せしめ、本発明の共晶体粒子を含む樹脂組成物からなる中性子シンチレーターを得た。該中性子シンチレーターの形状は、50mm×50mm×1mmのシート状であり、樹脂組成物中の共晶体粒子の体積分率は40%であった。
<中性子検出器の作製と特性評価>
当該中性子用シンチレーターの中性子に対する応答特性を、実施例1と同様にして評価した。得られた波高分布スペクトルを図3に示す。図3の実線および点線は、それぞれ中性子およびγ線照射下での波高分布スペクトルである。なお、当該波高分布スペクトルにおいて、横軸は、中性子ピークの波高値を1とした相対値で示した。図3より、明瞭な中性子ピークが確認でき、また、γ線の入射によって生じる電気信号の波高値は、中性子ピークの波高値に比較して低いため、容易にγ線と中性子を弁別できることが分かる。
<中性子シンチレーターの一様性の評価>
当該中性子シンチレーターを5mm×5mm×1mmのサイズの100個の小片に細断し、各々の小片を用いて、実施例1と同様にして、中性子照射下での波高分布スペクトルを作成し、該波高分布スペクトルにおける中性子ピークの波高値及び面積について、分布を調査した。その結果、中性子ピークの波高値及び面積の標準偏差はそれぞれ6.2%及び2.8%であり、本発明の中性子シンチレーターは、各部位における特性が均一であり、一様性に優れた中性子シンチレーターであることが分かった。
比較例2
実施例2と同様にして共晶体インゴットを作製し、当該共晶体インゴットを切断、研磨して、50mm×50mm×1mmのプレート状の中性子シンチレーターを得た。該中性子シンチレーターは、共晶体インゴットの冷却過程においてクラックが生じていた。
当該中性子シンチレーターを、5mm×5mm×1mmのサイズの100個の小片に細断した。各々の小片を用いて、実施例2と同様にして中性子照射下での波高分布スペクトルを作成し、該波高分布スペクトルにおける中性子ピークの波高値及び面積について、分布を調査した。その結果、中性子ピークの波高値及び面積の標準偏差はそれぞれ11%及び5.8%であり、本比較例の中性子シンチレーターは、実施例1に示した本発明の中性子シンチレーターに比較して、各部位における特性が不均一であり、一様性に問題があることが分かった。
実施例3
<共晶体粒子の製造>
本実施例では、Tbを含有するLiYFを無機蛍光材として用い、LiFと無機蛍光材との共晶体粒子を製造した。なお、無機蛍光材は、LiYFのYの10%をTbで置換したLi(Y0.9Tb0.1)Fであり、該無機蛍光材の発光波長は550nmであった。
原料のLiF 150g(6.0mol)、YF 190g(1.3mol)、及びTbF 31g(0.14mol)を混合して原料混合物を調製する以外は、実施例1と同様にして共晶体インゴットを作製し、該共晶体インゴットを粉砕して共晶体粒子を得た。なお、当該原料混合物において、LiFとLi(Y0.9Tb0.1)Fの混合比は、LiF/Li(Y0.9Tb0.1)Fが61/39(mol/mol)であり、共晶組成の混合比とした。当該共晶組成の原料混合物の融点は、710℃である。また、発光中心元素であるTbをLiYFに含有せしめる量は、LiYFに対して10mol%とした。
得られた共晶体粒子について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて反射電子組成像を観察した。該共晶体粒子は、LiYFからなるマトリックス中に、円柱状のLiFが多数配列したハニカム構造を有し、円柱状のLiFの直径は約1μmであった。
また、得られた共晶体粒子を粉砕した粉末について粉末X線回折測定を行い、結晶相を同定した。LiFとLi(Y0.9Tb0.1)F4に由来する回折ピークが確認でき、当該共晶体がLiFとLi(Y0.9Tb0.1)Fからなる共晶体であることが分かった。
<中性子用シンチレーターの作製>
本実施例では、樹脂として、前記無機蛍光材の発光波長である550nmにおいて、屈折率が1.45であるメチルフェニルシリコーン樹脂を用いた。550nmにおける無機蛍光材の屈折率は、1.45であり、無機蛍光材の屈折率に対する樹脂の屈折率の比は、1.00であった。なお、かかる屈折率は、前記説明した通り、屈折率計を用いて測定した値であって、本実施例における中性子シンチレーターの使用温度である室温で測定した値である。
該樹脂はA液とB液の2液からなり、等量の2液を混合して樹脂前駆体を調製した後、当該樹脂前駆体を加熱により硬化せしめることができる。該樹脂の内部透過率は、前記無機蛍光材の発光波長である550nmにおいて、96%/cmであった。
前記共晶体粒子7.3g(2.0mL)を、予め等量のA液とB液を混合したメチルフェニルシリコーン樹脂の樹脂前駆体3.0mLに加え、撹拌棒を用いてよく混合した後、該混合操作において混合物中に生じた気泡を、真空脱泡機を用いて脱泡して樹脂組成物の前駆体を得た。
次いで、前記樹脂組成物の前駆体 2.5mLを、50mm×50mm×1mmのポリテトラフロロエチレン製の鋳型に注入し、60℃で24時間加熱して樹脂前駆体を硬化せしめ、本発明の共晶体粒子を含む樹脂組成物からなる中性子シンチレーターを得た。該中性子シンチレーターの形状は、50mm×50mm×1mmのシート状であり、樹脂組成物中の共晶体粒子の体積分率は40%であった。
<中性子シンチレーターの特性評価>
当該中性子用シンチレーターの中性子に対する応答特性を以下の方法によって評価した。
まず、中性子シンチレーターの50mm×50mmの面を光出射面とし、該光出射面を分光光度計の入射スリットに向けて設置した。該分光光度計は、回折格子とCCD検出器からなる。次いで、中性子シンチレーターの光出射面以外の面に未焼成のポリテトラフロロエチレンのシートからなる反射材を設置した。
分光光度計に外部からの光が入射しないように、黒色のビニールシート製の遮光材で覆った後、密度ポリエチレンで減速した中性子を中性子シンチレーターに照射した。
中性子用シンチレーターより発せられたシンチレーション光を計測するため、該シンチレーション光を分光光度計の回折格子で分光し、CCD検出器で各波長における発光強度を測定し、発光スペクトルを作成した。
得られた発光スペクトルを図4に示す。図4より、本発明の中性子シンチレーターは、発光強度が極めて高く、CCD検出器のような光検出器と組み合わせて積分型の中性子検出器を提供できることが分かる。
<中性子シンチレーターの一様性の評価>
当該中性子シンチレーターを5mm×5mm×1mmのサイズの100個の小片に細断し、各々の小片を用いて、実施例3と同様にして、発光スペクトルを作成し、該発光スペクトルにおける発光強度について、分布を調査した。その結果、発光強度の標準偏差は2.5%であり、本発明の中性子シンチレーターは、各部位における特性が均一であり、一様性に優れた中性子シンチレーターであることが分かった。
比較例3
実施例3と同様にして共晶体インゴットを作製し、当該共晶体インゴットを切断、研磨して、50mm×50mm×1mmのプレート状の中性子シンチレーターを得た。該中性子シンチレーターは、共晶体インゴットの冷却過程においてクラックが生じていた。
該中性子シンチレーターを、5mm×5mm×1mmのサイズの100個の小片に細断した。各々の小片を用いて、実施例3と同様にして中性子照射下での発光スペクトルを作成し、該発光スペクトルにおける発光強度について、分布を調査した。その結果、発光強度の標準偏差は7.8%であり、本比較例の中性子シンチレーターは、実施例3に示した本発明の中性子シンチレーターに比較して、各部位における特性が不均一であり、一様性に問題があることが分かった。
実施例4
本実施例においては、共晶体粒子及び樹脂以外に、更に充填材粒子としてCaFからなる粒子をさらに含む樹脂組成物からなる中性子シンチレーター及びこれを用いた中性子検出器を製造して評価した。
<共晶体粒子の製造>
実施例1と同様にして、Euを含有するCaFを無機蛍光材として用い、LiFと該無機蛍光材との共晶体粒子を製造した。
<充填材を含む中性子用シンチレーターの作製>
CaFからなる充填材粒子は、予め溶融・凝固したCaFインゴットを、ハンマーによって約2cm角の不定形の形状に粗粉砕した後、ハンマーミルによって粉砕し、得られた粉砕物を乾式分級により分級して100μmのふるいを通過したものを集めて得た。
前記共晶体粒子5.7g(2.0mL)及び充填材粒子3.2g(1.0mL)を、予め等量のA液とB液を混合したメチルフェニルシリコーン樹脂の樹脂前駆体2.0mLに加える以外は、実施例1と同様にして、本発明の共晶体粒子及び充填材粒子を含む樹脂組成物からなる固体状の中性子シンチレーターを得た。
該中性子シンチレーターの形状は、50mm×50mm×1mmのシート状であり、樹脂組成物中の共晶体粒子の体積分率は40%であり、共晶体粒子に対する充填材粒子の体積比は、共晶体粒子100体積部当たり50体積部であった。また、無機蛍光材の発光波長である430nmにおいて、充填材粒子の屈折率は1.44であり、充填材粒子の屈折率に対する樹脂の屈折率の比は、1.01であった。
<中性子シンチレーターの特性評価>
当該中性子用シンチレーターの中性子に対する応答特性を、実施例1と同様にして評価した。得られた波高分布スペクトルを図5に示す。図5の実線および点線は、それぞれ中性子およびγ線照射下での波高分布スペクトルである。なお、当該波高分布スペクトルにおいて、横軸は、中性子ピークの波高値を1とした相対値で示した。図5より、明瞭な中性子ピークが確認でき、また、γ線の入射によって生じる電気信号の波高値は、中性子ピークの波高値に比較して低いため、容易にγ線と中性子を弁別できることが分かる。
<中性子シンチレーターの一様性の評価>
当該中性子シンチレーターを5mm×5mm×1mmのサイズの100個の小片に細断し、各々の小片を用いて、実施例1と同様にして、中性子照射下での波高分布スペクトルを作成し、該波高分布スペクトルにおける中性子ピークの波高値及び面積について、分布を調査した。その結果、中性子ピークの波高値及び面積の標準偏差はそれぞれ6.0%及び2.8%であり、本発明の中性子シンチレーターは、各部位における特性が均一であり、一様性に優れた中性子シンチレーターであることが分かった。
実施例5
本実施例においては、共晶体粒子及び樹脂以外に、更に中性子不感蛍光体として1,4−Bis(5−phenyl−2−oxazolyl)benzeneを含有する中性子シンチレーター及びこれを用いた中性子検出器を製造して評価した。
<共晶体粒子の製造>
実施例1と同様にして、Euを含有するCaFを無機蛍光材として用い、LiFと該無機蛍光材との共晶体粒子を製造した。
<中性子不感蛍光体を含む中性子用シンチレーターの作製>
前記共晶体粒子5.7g(2.0mL)を、予め等量のA液とB液を混合し、次いで0.02質量%の1,4−Bis(5−phenyl−2−oxazolyl)benzeneを添加したメチルフェニルシリコーン樹脂の樹脂前駆体3.0mLに加える以外は、実施例1と同様にして中性子シンチレーターを製造した。
<中性子シンチレーターの特性評価>
この中性子シンチレーターを用い、実施例1と同様にして中性子検出器を製造した。ただし、光電子増倍管から出力される信号の波形を観測する目的で、前置増幅器、整形増幅器及び多重波高分析器からなる信号読出し回路に代えて、光電子増倍管にオシロスコープを直接に接続した。
当該中性子検出器に対して、実施例1と同様にして中性子及びγ線を照射し、光電子増倍管から出力される信号の波形をオシロスコープにより記録した。中性子照射下或いはγ線照射下で得られた信号波形を図6及び図7にそれぞれ示した。これら各図の右上の挿入図は、時間0付近の拡大図である。
図6から、中性子が入射した際には共晶体粒子からの寿命の長い蛍光のみが観測されるのに対して、図7からは、γ線が入射した際には共晶体粒子からの寿命の長い蛍光以外に、中性子不感蛍光体からの寿命の短い蛍光が観測されることが分かる。従って、本実施態様による中性子検出器に、前記した波形解析機構を設けることによって、n/γ弁別能に特に優れた中性子検出器を得ることができる。

Claims (8)

  1. 樹脂および共晶体粒子を含んでなる樹脂組成物からなる中性子シンチレーターであって、
    樹脂は、共晶体粒子の発光波長における内部透過率が10%/cm以上であり、
    共晶体粒子は、フッ化リチウム(LiF)と無機蛍光材とからなり、共晶体粒子の等比表面積球相当径が、50〜1000μmの範囲にあることを特徴とする前記中性子シンチレーター。
  2. 無機蛍光材が、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、及びイッテルビウム(Yb)からなる群から選ばれた少なくとも一種のランタノイド元素を含有する無機材料であることを特徴とする請求項1記載の中性子シンチレーター。
  3. 無機蛍光材の屈折率(n)に対する樹脂の屈折率(n)の比(n/n)が、0.90〜1.10の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載の中性子シンチレーター。
  4. 充填材粒子を、更に含有するとことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の中性子シンチレーター。
  5. 充填材粒子の屈折率(n)に対する樹脂の屈折率(n)の比(n/n)が、0.90〜1.10の範囲にあることを特徴とする請求項5に記載の中性子シンチレーター。
  6. 中性子不感蛍光体を、更に含むことを特徴とする請求項1〜3、及び5、6の何れか一項に記載の中性子シンチレーター。
  7. 請求項1〜3、および5〜7の何れか一項に記載の中性子シンチレーターと光検出器を具備することを特徴とする中性子検出器。
  8. 中性子シンチレーターと光検出器が、波長変換ファイバ又は波長変換シートからなる波長変換部位によって光学的に接続されていることを特徴とする請求項8に記載の中性子検出器。
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