JP6041123B2 - ガラス容器用易貫通性蓋材 - Google Patents

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Description

本発明は、飲料やジャム等のゼリー状食品及び粉ミルクやインスタントコーヒー等の粉末嗜好品などのガラス容器の口を密封する蓋材に関し、詳しくは、ガラス容器を密封可能で、ストローや指等による突き刺し性(易貫通性)、デッドホールド性、開封性、防湿性、意匠性等も良好な、多層フィルムを用いたガラス容器用易貫通性蓋材に関する。
従来、飲料やゼリー状食品などの液体を充填した容器の開口部を密封する蓋材としては、簡単に手で剥離して開口できるようにシール表面に特殊樹脂フィルムや樹脂による塗工剤等を用いたものが一般的に使用されている。さらに1度で食べきれないため、再封性を加味したオーバーキャップや上蓋が使用された、2重包装になっている場合が多い。内蓋は開封しやすいように持ち手(タブ)が形成されているが、このタブ部のデッドホールド性が悪いと、タブ部が折り曲げた後の反発性が大きく、持ち上がった形態になりやすく、上蓋が入り難くなったり、キャップの密封が不十分になったりすることがあった。
上蓋適性を重視すると、タブのない、つまり持ち手が無い形状とすることが好ましいが、この形状では内蓋の手による開封は不可能となり、容器と内蓋とは完全シールの形態となる。このような形態は広く粉ミルクやインスタントコーヒー等の粉末嗜好品などには使用されている。完全シールのため、中身を出すためには指やスプーン等で孔を開け、取り出し口を確保する必要があるため、簡単・容易に貫通性を発現させるために、紙/アルミ箔/シール剤の多層構成の蓋材が一般的である。
しかし近年の環境対応意識の向上から、アルミ箔の削減が要望されている。単純にアルミ箔を取り除いた構成、すなわち紙/シール剤の内蓋構成の場合はガラス容器と内蓋とを分離することが困難であり、使用後のガラスを再生する際に付着した紙や紙に印刷されたインキやシール剤等の異種材料が混入する結果、再生ガラスの品質劣化の原因となっている。すなわち、上蓋装着適性が良好で、内蓋の易貫通性が良く、リサイクル回収時にガラスとの分別が容易な内蓋が要求されている。
また蓋材を容器から取り外すことなくストローや開封刃つきのオーバーキャップ等により直接蓋材に開口を形成して、内容物を取り出すタイプもある(例えば、特許文献1、2参照)。
この様なタイプの容器に使用される蓋材には、ストローの先端や開封刃による易貫通性が良好であると共に、開封箇所からの蓋材の破れ等が起きにくいこと(即ち開口部が突き刺し部に限られるということ)も要求される。また、オーバーキャップを用いる場合には、デッドホールド性が悪いと、キャップのはめ込み(勘合)が困難になり、作業効率が低下する。これらの要求を満たす蓋材としての構成は限られており、易貫通性を有する樹脂を用いたフィルムにアルミ箔層を設けたものが使用されてきた(例えば、特許文献2参照)。
しかし、デッドホールド性や易貫通適性の効果を得るためには、アルミニウム箔層を厚肉にする必要があり、また、アルミニウム箔層を最表面に用いると、ストロー等による貫通性は改善傾向であるが、蓋材表面に印刷を実施した場合、アルミニウム箔の金属光沢の影響でインキがくすむ上、インキの発色性に劣った蓋材になることから、意匠性及び印刷仕上がりのカラーマッチング性等の困難性があった。さらに廃棄時の分別及びリサイクルの観点から、また素材生産時のエネルギー消費量の大きさ、炭酸ガス排出量の大きさ等の観点より、アルミニウム箔を用いない、使用したとしても使用量の少ないアルミ蒸着程度の蓋材が要望されている。
上記の問題を解決するものとして、例えば、紙基材を中間層に配置しその片面に二軸延伸ポリプロピレン、もう片面にポリエチレンテレフタレート、さらにシーラント層を設けたラミネート構成の多層蓋材が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、防湿性がない紙を主体とするため透湿性を抑制するための複雑な構成であり、当該構成を形成するためには層数が複雑になる結果、生産工程数も増え、又最終的なフィルムの厚みも大きくなる傾向があり、易貫通性やデッドホールド性についてはアルミ箔を用いる蓋材と比較して悪化し、実用的ではない。
特開2010−222051号公報 特開2010−269848号公報 特開2004−136918号公報
本発明の課題は、上記のような問題に鑑みなされたものであり、ガラス容器に密封可能で、ストローや指等による突き刺し性(易貫通性)、デッドホールド性、開封性、防湿性、意匠性等も良好な、多層フィルムを用いたガラス容器用易貫通性蓋材を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、環状ポリオレフィンを主成分とする樹脂層と酸変性樹脂を主成分とする樹脂層とを積層させた多層構成を有する多層フィルムを用いることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ガラス容器を密閉するための易貫通性蓋材であって、環状ポリオレフィン系樹脂(a)を主成分とする樹脂層(A)と、酸変性樹脂(b)を主成分とする樹脂層(B)とが積層してなる多層構成を有することを特徴とするガラス容器用易貫通性蓋材を提供するものである。
本発明の蓋材は、アルミニウム箔を主成分に使用することなく、貫通性に優れた蓋材である。このため、金属光沢の影響でインキがくすむことなく、インキの発色性にも優れた蓋材になることから、意匠性及び印刷仕上がりのカラーマッチング性等が綺麗で作業効率も大幅に改善される。又、廃棄時にはガラスのみからなる廃棄物として取り扱うことが可能であり、環境対応型の包装材である。
本発明の蓋材は、環状ポリオレフィン系樹脂(a)を主成分とする樹脂層(A)と、酸変性樹脂(b)を主成分とする樹脂層(B)とが積層してなる多層構成を有するものであり、更に樹脂層(A)及び/又は樹脂層(B)の上に、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の層が積層されていても良い。尚、本願において「主成分とする」とは、当該樹脂層を形成するために用いる樹脂成分の全質量に対し、60質量%以上で当該特定の樹脂を含有することを言うものであり、好ましくは80質量%以上で含有することを言うものである。
前記樹脂層(A)で主成分として用いる環状ポリオレフィン系樹脂(a)としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」という。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」という。)等が挙げられる。さらに、COP及びCOCの水素添加物は、特に好ましい。また、環状ポリオレフィン系樹脂(a)の重量平均分子量は、5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは7,000〜300,000である。
前記ノルボルネン系重合体の原料となるノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体である。このようなノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデテトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ジメタノテトラヒドロフルオレン、フェニルノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、メトキシカルボニルテトラシクロドデセン等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
前記ノルボルネン系共重合体は、前記ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンとを共重合したものであり、このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20個を有するオレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエンなどが挙げられる。これらのオレフィンは、それぞれ単独でも、2種類以上を併用することもできる。
また、前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)のガラス転移点(Tg)は、得られる蓋材の耐熱性及び高剛性の点から100℃以上であることが好ましく、共押出積層法での製造が可能である点と、工業的原料入手容易性の観点からは、Tgが200℃以下であることが好ましい。特に望ましくは105℃〜180℃である。この様なTgを有する環状ポリオレフィン系樹脂としては、ノルボルネン系単量体の含有比率が40〜90重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜90重量%、更に好ましくは60〜85重量%である。含有比率がこの範囲にあれば、得られる蓋材の耐熱性、剛性、貫通性、防湿性、デッドホールド性が向上する。尚、本発明におけるガラス転移点(Tg)は、DSCにて測定して得られる値である。
しかし高ガラス転移点(Tg)のノルボルネン系共重合体は引っ張り強度が低く、極端に切れやすく、裂けやすい場合もあるため、成膜時・スリット時の引き取り適性を考慮すると高Tg品と100℃以下の低Tg品とをブレンドすることも可能である。
一方剛性が高すぎて、輸送時の落下により簡単に裂けたり、破袋したりする等の問題がある場合は、Tg100℃以下のCOCを配合することにより、落袋強度をも向上できる。またCOCと相溶性の良い、環状構造を有さないポリオレフィン系樹脂を配合することも有効である。この時併用できるポリオレフィン系樹脂としては、後述するその他の樹脂層(C)として用いることができるポリオレフィン系樹脂と同様のものである。
前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)として用いることができる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。
本発明の蓋材における樹脂層(B)で使用する樹脂としては、前述の樹脂層(A)との層間で、保存中に剥離を起こしにくい点、またはガラス容器との接着強度維持が良好である観点から、酸変性樹脂(b)を主成分とするものである。
前記酸変性樹脂(b)は、ポリオレフィン系樹脂骨格中にカルボン酸単位、又はカルボン酸エステル単位等の酸構造あるいは酸由来構造が組み込まれているものであり、特に不飽和カルボン酸共重合体樹脂、不飽和カルボン酸エステル共重合体樹脂であることが好ましい。
不飽和カルボン酸共重合体は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテンのようなα−モノオレフィンと、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸のようなα、β−不飽和カルボン酸とを共重合させて得られる樹脂をベースとするもので、例えばエチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体などが挙げられる。
不飽和カルボン酸共重合体の重量平均分子量としては、前述の樹脂層(A)と積層させる際に、共押出法を適用することが容易である点から1,000〜200,000の範囲であることが好ましく、また、得られる多層フィルムのガラス容器への接着性の観点並びに、易貫通性や耐湿性とを良好に兼備できる点から、共重合体中における不飽和カルボン酸の含有量は1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%の範囲である。
不飽和カルボン酸共重合体は、金属塩であってもよく、例えば、上記共重合体におけるカルボキシル基を、ナトリウム、カリウムのようなアルカリ金属イオン、または亜鉛、マグネシウムのようなアルカリ土類金属イオンで中和して得られるイオン架橋樹脂、すなわちアイオノマー樹脂が挙げられる。特にエチレン−メタアクリル酸共重合体の亜鉛塩よりなるアイオノマー樹脂を使用することが、多層フィルムとしての層間剥離を防止できると共に、ガラス容器への接着性(密封性)、環状ポリオレフィン系樹脂(a)が本来有する易貫通性(易引き裂き性)への悪影響が少ない点等の観点より好ましい。アイオノマー樹脂のカルボン酸含有量は5〜25wt%であり、イオン化度は2〜90モル%の範囲であることが好ましい。
不飽和カルボン酸エステル共重合体は、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸のようなα、β−不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプルピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル、およびイソアミルエステルのようなエステルとオレフィンとを共重合させて得られた樹脂をベースとするものであり、例えば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタアクリル酸エチル共重合体などが挙げられる。
更に、本発明の蓋材において樹脂層(B)をガラス容器と接する部分に配置する場合には、更に接着性を良好にするため上記樹脂にロジン、水添ロジン、ロジンエステル誘導体、重合ロジン、テルペン、変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、スチレン系樹脂等の1種以上を混合して用いてもよい。また、ガラス容器の素材や、耐湿性等の観点により、環状構造を有さないポリオレフィン系樹脂を併用してもよい。この時併用できるポリオレフィン系樹脂としては、後述するその他の樹脂層(C)として用いることができるポリオレフィン系樹脂と同様のものである。
本発明の蓋材においては、前述の環状ポリオレフィン系樹脂(a)を主成分とする樹脂層(A)及び酸変性樹脂(b)を主成分とする樹脂層(B)を少なくとも1層ずつ有するものであれば良く、樹脂層(A)、樹脂層(B)の何れか及び両者とも、複数の層として多層フィルム中に含まれていてもよい。この時、樹脂層(A)と樹脂層(B)とが接して積層されてなるものであっても、樹脂層(A)と樹脂層(B)の間にその他の樹脂を主成分とする樹脂層がはさまれていてもよい。特に、多層フィルムとしての剛性と柔軟性とのバランス、易貫通性等の性能を容易に発現できる点から、環状構造を有しないポリオレフィン系樹脂(c)を主成分とする樹脂層(C)を積層させることもできる。
前記ポリオレフィン系樹脂(c)としては、各種のポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂が挙げられ、前記樹脂層(A)の主成分として用いる環状ポリオレフィン系樹脂(a)との接着性や貫通性の制御容易性の観点から、当該樹脂の密度が0.880g/cm以上0.940g/cm未満のポリエチレン系樹脂やメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であることが好ましい。
前記ポリエチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状中密度ポリエチレン(LMDPE),中密度ポリエチレン(MDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられ、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。これらの中でもシール性、貫通性とのバランスが良好なことからVLDPE、LDPE、LLDPE、LMDPEが好ましい。
LDPEとしては高圧ラジカル重合法で得られる分岐状低密度ポリエチレンであれば良く、好ましくは高圧ラジカル重合法によりエチレンを単独重合した分岐状低密度ポリエチレンである。
LLDPEとしては、シングルサイト触媒を用いた低圧ラジカル重合法により、エチレン単量体を主成分として、これにコモノマーとしてブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン等のα−オレフィンを共重合したものである。LLDPE中のコモノマー含有率としては、0.5〜20モル%の範囲であることが好ましく、1〜18モル%の範囲であることがより好ましい。
前記シングルサイト触媒としては、周期律表第IV又はV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せ等のメタロセン触媒系などの種々のシングルサイト触媒が挙げられる。また、シングルサイト触媒は活性点が均一であるため、活性点が不均一なマルチサイト触媒と比較して、得られる樹脂の分子量分布がシャープになるため、フィルムに成膜した際に低分子量成分の析出が少なく、シール強度の安定性や耐ブロッキング適性に優れた物性の樹脂が得られるので好ましい。
前述のようにポリエチレン系樹脂の密度は0.880〜0.940g/cmであることが好ましい。密度がこの範囲であれば、適度な剛性を有し、ヒートシール強度や耐ピンホール性等の機械強度も優れ、フィルム成膜性、押出適性が向上する。また、融点は、前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)のTgよりも低いことが好ましく、使用する環状ポリオレフィン系樹脂(a)によって、好ましい融点の範囲が決定されるものであるが、一般的には60〜130℃の範囲であることが好ましく、70〜120℃がより好ましい。融点がこの範囲であれば、加工安定性(デッドホールド性)や環状ポリオレフィン系樹脂(a)との共押出加工性が向上する。また、前記ポリエチレン系樹脂のMFR(190℃、21.18N)は2〜20g/10分であることが好ましく、3〜10g/10分であることがより好ましい。MFRがこの範囲であれば、フィルムの押出成形性が向上する。
このようなポリエチレン系樹脂は前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)との相溶性も良いため、積層した際の透明性も維持することができる。また柔軟性も有しているため、耐ピンホール性も良好となる。さらに、耐ピンホール性を向上させる場合はVLDPE、LLDPEを用いることが好ましい。
前記ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、たとえばプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。望ましくはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であり、特にメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましい。これらのポリプロピレン系樹脂を樹脂層(C)として用いた場合には、フィルムの耐熱性が向上し、軟化温度を高くすることができるため、100℃以下のボイル、あるいはホット充填、または100℃以上のレトルト殺菌等の蒸気・高圧加熱殺菌特性にも優れた蓋材として好適に用いることが出来る。
また、これらのポリプロピレン系樹脂は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が110〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が115〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、蓋材の収縮が少なく、更にフィルムの成膜性も向上する。尚、融点については、前記ポリエチレン系樹脂について記載したように、環状ポリオレフィン系樹脂(a)のガラス転移点Tgとの関係において、選択することはもちろんである。
特に前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)として、ガラス転移点Tgが100℃以上であるものを選択した場合は、樹脂層(A)/樹脂層(B)で積層した多層フィルムを単体で蓋材として使用することも可能であり、この場合は、樹脂層(B)が開口部を有するガラス容器側に配置され、ヒートシール層となる。樹脂層(A)/樹脂層(B)の多層フィルムとする場合には、樹脂層(A)の厚みが全厚の20〜80%の範囲であることが、易貫通性とデッドホールド性とを兼備させる点から好ましく、特に好ましくは30〜70%である。
本発明の蓋材の多層構造は、前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)と前記樹脂層(C)とが、(A)/(C)/(B)の順になるように積層されたものであってもよい。即ち環状ポリオレフィン系樹脂(a)を主成分とする樹脂層(A)と酸変性樹脂(b)を主成分とする樹脂層(B)との間に樹脂層(C)を挟むことにより、貫通性・防湿性や、デッドホールド性を兼備する蓋材が得られる。
前記(A)/(C)/(B)の多層構造において、蓋材の剛性と易貫通性・防湿性をより高いレベルで兼備し、デッドホールド性にも優れたものとする観点からは、樹脂層(B)と樹脂層(C)との合計の厚さが、当該多層構成の全厚の20〜80%にすることが好ましく、30〜70%になるように積層することがより好ましい。
前述の(A)/(C)/(B)の多層構造のみからなる多層フィルムを蓋材として使用する場合、ヒートシール時のシールバーへの樹脂の張り付き等を防止するために、樹脂層(A)に用いる環状ポリオレフィン系樹脂のTgを前記と同様、100℃以上のものを使用し、樹脂層(B)に用いる酸変性樹脂(c)の融点が前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)のガラス転移点Tgよりも低いものとすることが好ましい。
又、易貫通性やデッドホールド性の向上のために、樹脂層(A)を2層以上で含む多層構成にすることも好ましい。即ち、樹脂層(A)上に前述の樹脂層(B)又は樹脂層(C)、即ち酸変性樹脂(b)やポリオレフィン系樹脂(c)を主成分とする樹脂層を積層してから更に樹脂層(A)を積層することによって、ガラス容器とのヒートシール性を保ちながらより易貫通性を向上させることが可能である。このとき、2層以上の樹脂層(A)に用いる樹脂は、同一のものであっても、異なるものであってもよい。
即ち、例えば、(A)/(C)/(A)/(B)の多層構造をとることができ、このような多層構成においては、フィルムの剛性と易貫通性・防湿性をより高いレベルで兼備し、デッドホールド性にも優れたものとする観点からは、樹脂層(B)と樹脂層(C)との合計厚さが、当該多層構成の全厚の30〜95%にすることが好ましく、40〜70%になるように積層することがより好ましい。
前記の各樹脂層(A)、(B)、又は(C)には、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。特に、成形時の加工適性を付与するため、表面の樹脂層(A)及び(B)の摩擦係数は1.5以下、中でも1.0以下であることが好ましいので、蓋材の表面層に相当する樹脂層には、滑剤やアンチブロッキング剤や帯電防止剤を適宜添加することが好ましい。
さらに、本発明の蓋材は、全厚が15〜100μmのものが好ましく、より好ましくは20〜90μmである。全厚がこの範囲であれば、安定した易貫通性、デッドホールド性、ヒートシール性等が得られやすくなる。
又、本発明の蓋材において、表層に前記樹脂層(A)を配置しその表面を処理し、最表面の表面張力を40dyne/cm以上、好ましくは42dyne/cm以上とすることが好ましい。この様な処理方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。この様な表面処理を行なうことにより、当該表層に印刷等の後工程を施す場合の、インキの塗工性が良好となり、密着性に優れ、インキの脱落やデラミ等の問題を回避することが容易となる。樹脂層(A)の主成分である環状ポリオレフィン系樹脂(a)は、ポリオレフィン系樹脂等のその他の樹脂よりも、前述の表面処理を行った際に、容易に表面張力を適正な範囲にすることができると同時に、その処理度の維持が良好であることによるものである。
本発明の蓋材の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂層(A)、樹脂層(B)、必要に良い併用される樹脂層(C)に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で(A)/(B)、(A)/(C)/(B)、または(A)/(C)/(A)/(B)等の順で積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。この共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた多層フィルムが得られるので好ましい。また、本発明で用いる環状ポリオレフィン系樹脂(a)と、酸変性樹脂(b)との間で融点とTgとの差が大きい場合、共押出加工時にフィルム外観が劣化したり、均一な層構成形成が困難になったりする場合がある。このような劣化を抑制するためには、比較的高温で溶融押出を行うことができるTダイ・チルロール法が好ましい。
又、(A)/(B)、(A)/(C)/(B)の多層構成を前述の共押出積層法を用いて積層した後、その他の樹脂層を積層させてもよく、この場合、接着剤を塗布することにより貼合するドライラミネート、加熱ロールの熱圧着で貼合する熱ラミネートや押出ラミネート等の各種積層法を適用しての多層構成を形成させることも可能である。
また、高ヒートシール強度、ホットタック性、易開封性(イージーピール性)や高速の包装スピードが必要な場合には、更に特殊なヒートシール性樹脂を共押出法を利用してヒートシール層を形成するか、特殊なヒートシール性樹脂を有するフィルムを押出ラミネートして、ヒートシール層を形成させても良い。
更に又、本発明の蓋材における表層上に接着性樹脂や接着剤を介して更に基材をラミネートすることもできる。前記基材としては、シール性や易貫通性、デッドホールド性を損なわないものであれば特に制限はないが、例えば、二軸延伸ポリエステル(PET)、易裂け性二軸延伸ポリエステル(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を中心層とした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)をコートした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ナイロン等が挙げられる。接着方法としては、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーション等の方法が挙げられる。
前記ドライラミネーションで用いる接着剤としては、例えば、ポリエーテル−ポリウレタン系接着剤、ポリエステル−ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。
又、アルミニウムを蒸着させてアルミニウム層を形成させても良い。このアルミニウム蒸着の蒸着手段としては、前述の多層フィルムに収縮、黄変等の劣化を招来することなくアルミニウムが蒸着できれば特に限定されるものではなく、(a)真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法;PVD法)、(b)プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法;CVD法)等が挙げられる。これらの蒸着法の中でも、生産性が高く良質なアルミニウム蒸着層が形成できる真空蒸着法やイオンプレーティング法が好ましい。
通常、アルミニウム蒸着を行なう際には、蒸着する面との層間密着性を維持するために、アンカーコート剤が塗布されている。しかしながら、成膜した多層フィルムの表面に当該アンカーコート剤を均一に塗布し、これを乾燥させることは、作業工程の煩雑さに加え、アンカーコート剤に含まれる有機成分からなる媒体の除去時に発生する揮発成分に拡散の防止、アンカーコート剤塗布・乾燥のための装置の必要性があり、生産性の観点からは、改良が望まれるものである。本発明においては、環状ポリオレフィン系樹脂(a)を主成分とする樹脂層(A)を表面とし、ここに蒸着を行なうことにより、アンカーコート剤を使用しなくでも、アルミニウムと当該樹脂層(A)との層間密着性を維持することが可能であり、デラミを防止することができる。
特に、多層構成の蓋材としてそのまま保存する場合には、表面層に配置される樹脂層(A)の表面を化学的、物理的な処理を行なっておくことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。
コロナ処理の方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、特公昭39−12838号、特開昭47−19824号、特開昭48−28067号、特開昭52−42114号の各公報に記載等の処理方法によって行うことができる。コロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。処理は空気中での常圧にて行うことができる。処理時の放電周波数は、5kV〜40kV、より好ましくは10kV〜30kVであり、波形は交流正弦波が好ましい。電極と誘電体ロールのギャップ透明ランスは0.1mm〜10mm、より好ましくは1.0mm〜2.0mmである。放電は、放電帯域に設けられた誘電サポートローラーの上方で処理し、処理量は、0.34kV・A・分/m〜0.4kV・A・分/m、より好ましくは0.344kV・A・分/m〜0.38kV・A・分/mである。
前述のように、樹脂層(A)に環状ポリオレフィン系樹脂(a)を主成分とすることにより、この様なコロナ処理における処理度が、環状構造を有さないポリオレフィン系樹脂を処理した場合よりも向上する。処理度については、例えば濡れ試薬による表面張力の測定によってその高低を判断することが可能であり、樹脂層(A)を表面層とする多層フィルムを用いた場合は、45dyne/cm以上にすることが容易であり、50dyne/cm以上にすることもできる。更に経時による処理度の低下も少ない。この様な理由から高いラミネート強度の発現に寄与すると共に、シール部を引き剥がした際のデラミの抑制をするものであると推定される。一方、通常のポリプロピレンフィルムで同様のコロナ処理を行なった場合は、経時変化による処理度の低下が著しく、40dyne/cm程度にしか維持できず、ポリエステルフィルムでも45dyne/cm程度である。更に前述のように、樹脂層(A)の表面はコロナ処理からの経時劣化が非常に少なく、フィルムとして数ヶ月程度保存してから、前述の方法でアルミニウム蒸着品やPET等の延伸基材を積層することも可能である。
本発明の蓋材は、その突き刺し強度が2〜10Nの範囲であるものを容易に得ることができ、特に4〜8Nの範囲のものを得ることができる。突き刺し強度がこの範囲であることにより、易貫通性を示すと共に、開口部を形成した後のその部分からの破れや裂けを防止することも可能であり、ストローを介して、又はオーバーキャップ本体の開口部からの液状内容物の取出しが可能であり、更に、容器が転倒した際にも、内容物の流出をある程度抑制することができる。
本発明の蓋材は、開口部を有するガラス容器への、ヒートシールにより密着させて密閉するための蓋材として使用するものであるが、この開口部を有する容器の素材として、珪素を主成分とするガラスからなるものであることが好ましい。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳しく説明する。
(実施例1)
樹脂層(A)用樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル APL6015T」、MFR:10g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移温度:145℃;以下、「COC(1)」という。〕を用いた。樹脂層(B)用樹脂として、エチレン−アクリル酸共重合体〔ダウケミカル株式会社製「プリマコール 1430」、MFR:5g/10分(190℃、21.18N)〕86.5質量部、二塩基酸変性ロジンエステル〔理化ファインテック式会社製「ルイゾール28」〕10質量部、ステアリン酸3質量部と、フェノール系酸化防止剤0.5質量部を二軸押出機で均一に混合しペレット化した樹脂〔以下、この樹脂を「EAA(1)」という。〕を用いた。また、これらの樹脂をそれぞれ、樹脂層(A)用押出機(口径50mm)及び樹脂層(B)用押出機(口径50mm)に供給して200〜230℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)/(B)の2層構成で、各層の厚さが10μm/40μm(合計50μm)である共押出多層フィルム(X1)を得た。
(実施例2)
実施例1において、フィルムの各層の厚さが(A)/(B)=25μm/25μm(合計50μm)となるようにした以外は、実施例1と同様にして共押出多層フィルム(X2)を得た。
(実施例3)
樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)を用いた。また、樹脂層(B)用樹脂としてエチレン−メタクリル酸共重合体の亜鉛塩よりなるアイオノマー〔三井デュポンケミカル株式会社製「ハイミラン 1702」、MFR:4g/10分(190℃、21.18N)〕86.5質量部、二塩基酸変性ロジンエステル〔理化ファインテック式会社製「ルイゾール28」〕10質量部、ステアリン酸3質量部と、フェノール系酸化防止剤0.5質量部を二軸押出機で均一に混合しペレット化した樹脂〔以下、この樹脂を「ION(1)という。」を用いた。フィルムの各層の厚さが(A)/(B)=10μm/40μm(合計50μm)となるように実施例1と同様にして、共押出多層フィルム(X3)を得た。
(実施例4)
実施例1で作成した共押出多層フィルム(X1)の樹脂層(A)にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は45dyne/cmであった。処理面側にウレタン系接着剤を2g/mになるよう塗工後、易引き裂き性の二軸延伸ポリエステル(厚さ14μm)(東洋紡製TF110)をドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
(実施例5)
樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)60質量部及びノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル APL8008T」、MFR:15g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移温度:70℃;以下、「COC(3)」という。〕40質量部の樹脂混合物を用いた。また、樹脂層(C)用樹脂として、直鎖状中密度ポリエチレン〔密度:0.930g/cm、融点125℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N);以下、「LMDPE」という。〕を用いた。フィルムの層構成が(A)/(C)/(A)の3層構成で、各層の厚さが2μm/16μm/2μm(合計20μm)となるように実施例1と同様にして共押出多層フィルム(X4)を得た。共押出多層フィルム(X4)の樹脂層(A)の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による処理直後の表面張力は45dyne/cmであった。共押出多層フィルム(X4)の、表面処理を行った樹脂層(A)上に、実施例1で作成したEAA(1)99質量部に帯電防止剤〔花王製「エレストマスター」〕を1質量部配合した混合樹脂〔以下、これをEAA(2)という。〕を溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
(実施例6)
樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)を用いた。また、樹脂層(C)用樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン〔密度:0.900g/cm、融点85℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N)、;以下、「LLDPE」という。〕を用いた。フィルムの各層の厚さが4μm/12μm/4μm(合計20μm)となるように実施例1と同様にして共押出多層フィルム(X6)を得た。得た共押出多層フィルム(X6)に対して、実施例5と同様にしてEAA(2)を溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
(実施例7)
樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)50質量部及びCOC(3)50質量部の樹脂混合物を用いた。また、樹脂層(C)用樹脂としてLMDPEを用いた。フィルムの各層の厚さが5μm/10μm/5μm(合計20μm)となるように実施例1と同様にして、共押出多層フィルム(X7)を得た。得られた共押出多層フィルム(X7)の一方の樹脂層(A)上に実施例1で作成したEAA(1)99.5質量部に帯電防止剤を0.5質量部配合した混合樹脂〔以下、これをEAA(3)という。〕を溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
(実施例8)
表面の樹脂層(A)用樹脂としてCOC(1)70質量部とCOC(3)30質量部の樹脂混合物を、樹脂層(C)用樹脂として、メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体〔密度:0.900g/cm、融点135℃、MFR:4g/10分(230℃、21.18N)、;以下、「MRCP」という。)を用いた。内層の樹脂層(A)には、COC(3)を用いた。フィルムの各層の厚さが2μm/16μm/2μm(合計20μm)となるように実施例1と同様にして共押出多層フィルム(X8)を得た。得た共押出多層フィルム(X8)の内層の樹脂層(A)上にEAA(3)を溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
(実施例9)
表面の樹脂層(A)用樹脂としてCOC(1)、内層の樹脂層(A)用樹脂としてCOC(3)を用いた。樹脂層(C)用樹脂として、LMDPEを用いた。フィルムの各層の厚さが2.5μm/20μm/2.5μm(合計25μm)となるように実施例1と同様にして共押出多層フィルム(X9)を得た。得られた共押出多層フィルム(X9)の内層の樹脂層(A)上にEAA(2)を溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
(実施例10)
樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)20質量部及びCOC(3)40質量部及びノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル AP6013T」、MFR:15g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移温度:125℃;以下、「COC(2)」という。〕40質量部の樹脂混合物を用いた。また樹脂層(C)用樹脂として、LLDPEを用いた。フィルムの各層の厚さが8μm/9μm/8μm(合計25μm)となるように実施例1と同様にして共押出多層フィルム(X10)を得た。得られた共押出多層フィルム(X10)の一方の樹脂層(A)に、実施例3で作成したION(1)99.5質量部に帯電防止剤を0.5質量部配合した混合樹脂〔以下、これをION(2)という。〕を溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
(実施例11)
表面の樹脂層(A)用樹脂として、COC(2)70質量部及び高密度ポリエチレン〔密度:0.960g/cm、融点128℃、MFR:10g/10分(190℃、21.18N);以下、「HDPE」という。〕30質量部の樹脂混合物を用いた。また樹脂層(C)用樹脂として、LLDPEを用いた。内層の樹脂層(A)用樹脂としては、COC(1)50質量部とCOC(3)50質量部の樹脂混合物を用いた。フィルムの各層の厚さが9μm/12μm/9μm(合計30μm)となるように実施例1と同様にして、共押出多層フィルム(X11)を得た。得られた共押出多層フィルム(X11)の内層の樹脂層(A)上にEAA(3)を前述同様にして溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
(実施例12)
樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)50質量部、COC(3)50質量部の樹脂混合物を用いた。また、樹脂層(C)用樹脂として、LMDPEを用いた。フィルムの層構成が(A)/(C)/(A)の3層構成で、各層の厚さが2μm/16μm/2μm(合計20μm)となるように実施例1と同様にして共押出多層フィルム(X12)を得た。得られた共押出多層フィルム(X12)の一方の樹脂層(A)上に、EAA(2)を溶融押出により20μmの押出ラミネートを実施した。
(実施例13)
表面の樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)を、内層の樹脂層(A)用樹脂として、COC(3)を用いた。中間の樹脂層(C)用樹脂として、LMDPEを用いた。更に内層の樹脂層(A)上に積層する樹脂層(B)用樹脂として、EEA(2)を用いた。フィルムの各層の厚さが18μm/40μm/18μm/14μm(合計90μm)となるように実施例1と同様にして、共押出多層フィルム(X13)を得た。
(実施例14)
樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)50質量部及びCOC(3)50質量部の樹脂混合物を用いた。中間の樹脂層(C)用樹脂として、LMDPEを用いた。樹脂層(B)用樹脂として、実施例3で作成したION(1)を用いた。フィルムの構成が(A)/(C)/(A)(B)であり、各層の厚さが10μm/25μm/10μm/5μm(合計50μm)となるように実施例1と同様にして共押出多層フィルム(X14)を得た。
(実施例15)
表面の樹脂層(A)用樹脂として、COC(1)を、内層の樹脂層(A)用樹脂として、COC(3)を用いた。中間の樹脂層(C)用樹脂として、LMDPEを用いた。更に内層の樹脂層(A)上に積層する樹脂層(B)用樹脂として、EAA(2)を用いた。フィルムの各層の厚さが18μm/40μm/18μm/14μm(合計90μm)となるように実施例1と同様にして共押出多層フィルム(X15)を得た。
上記の実施例1〜15で得られたフィルムを用いて、下記の試験及び評価を行った。
突刺し強度試験
上記で得られたフィルムを、食品衛生法に定められた試験方法に準拠し、測定針の代わりに市販のストロー(先端角度45度、直径4.84mm)を使用し、突き刺し角度は垂直方向(90°)から、突刺し強度を測定した。
○:突き刺し強度が9N未満。
×:突き刺し強度が9N以上。
デッドホールド性試験
上記で得られたフィルムを、タブ部(13mm)を有する75mmφで打ち抜いた蓋材(内蓋)として、各容器(APET、PP、PE、PS、厚み700μm)に140℃から170℃で最適ヒートシール強度になるよう調整シールした。その上から二軸延伸ポリスチレンシートを成形したオーバーキャップ用の蓋(外蓋)を勘合し、1時間放置。オーバーキャップ用の外蓋を外し、内蓋のタブの戻り角を測定し、下記により評価した。
タブの戻り角 0° 戻らない ◎
0〜20° 戻る ○
20〜45° 戻る △
45°以上 戻る ×
又、ヒートシールした後の開封強度については、下記により評価を行なった。タブ部を、チャックではさみ、引っ張り試験機で強度を測定した。
○:5N/1カップ 以上
×:5N/1カップ 未満
Figure 0006041123
Figure 0006041123
Figure 0006041123
(比較例1)
アルミニウム箔9μmの処理面側にウレタン系接着剤を2g/mになるよう塗工後、実施例4と同様に二軸延伸ポリエステルをドライラミネートし、帯電防止剤を0.2%配合したMRCPを溶融押出により40μmの押出ラミネートを実施してラミネートフィルムを得た。アルミニウム箔を基材としていることにより、突刺し強度は5N(○)、PP容器を用いた際の開封強度は○、デッドホールド性は◎(戻らない)であることを確認したが、当然アルミニウム箔の使用により、リサイクル性、環境負荷の観点より実用性ではない。
(比較例2)
二軸延伸ポリエステル12μmに、帯電防止剤を0.2%配合したMRCPを溶融押出により50μmの押出ラミネートを実施し、ラミネートフィルムを得た。突刺し強度は25N(×)、PP容器を用いた際の開封強度は○であったが、デッドホールド性は×(80°)で実用的でないことを確認した。

Claims (11)

  1. ガラス容器を密閉するための易貫通性蓋材であって、
    環状ポリオレフィン系樹脂(a)を主成分とする樹脂層(A)と、
    酸変性樹脂(b)を主成分とする樹脂層(B)とを有し、前記樹脂層(B)がガラス容器との接着層であることを特徴とするガラス容器用易貫通性蓋材。
  2. 前記酸変性樹脂(b)が不飽和カルボン酸共重合体樹脂及び/又は不飽和カルボン酸エステル共重合体樹脂である請求項1記載のガラス容器用易貫通性蓋材。
  3. 更に、ポリオレフィン系樹脂(c)を主成分とする樹脂層(C)が積層されてなる請求項1又は2に記載のガラス容器用易貫通性蓋材。
  4. 前記ポリオレフィン系樹脂(c)がポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂である請求項に記載のガラス容器用易貫通性蓋材。
  5. 前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)のガラス転移点Tgが100℃以上であり、前記酸変性樹脂(b)の融点が前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)のガラス転移点Tgよりも低いものであって、(A)/(B)の順に積層された多層構成を有し、且つ樹脂層(B)をガラス容器側に配置して密閉するものである請求項1〜4の何れか1項記載のガラス容器用易貫通性蓋材。
  6. 前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)と前記樹脂層(C)が、(A)/(C)/(B)の順に積層された多層構成を有する請求項3又は4に記載のガラス容器用易貫通性蓋材。
  7. 前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)と前記樹脂層(C)が、(A)/(C)/(A)/(B)の順に積層された多層構成を有する請求項3又は4に記載のガラス容器用易貫通性蓋材。
  8. 前記環状ポリオレフィン系樹脂(a)が、ノルボルネン系重合体である請求項1〜の何れか1項記載のガラス容器用易貫通性蓋材。
  9. 全厚が15〜100μmである請求項1〜の何れか1項記載のガラス容器用易貫通性蓋材。
  10. 突刺し強度が4〜8Nの範囲である請求項1〜9の何れか1項記載のガラス容器用易貫通性蓋材
  11. ガラス容器の開口部が珪素を主成分とするガラスからなるものである請求項1〜10の何れか1項記載のガラス容器用易貫通性蓋材。
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